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若 い 感 性 × " 木 地 の 山 中 " の 技
GOOD PRODUCT STORY vol.5 せん 有 限 会社浅田漆器工芸(石川県加賀市) 高 校 卒 業 後、「 と く に な り た いものもなく、父に言われるが さと薄さ、親しみやすい形のこ れないが、木目の見える軽やか な印象を重ねる方が多いかもし 塗り、蒔絵を施したきらびやか る漆器には、艶めく黒や朱の真 英語で"japan"と訳さ れる漆器。日本の伝統工芸であ いう思いが強くなっていた。 ちに「形をつくってみたい」と も漆の塗りや蒔絵を習得するう づくりの基礎を勉強し、なかで き込まれていく。2年間、漆器 にその奥深さ、おもしろさに引 ままに」京都伝統工芸大学校の の「ウッドプレート」も漆器で 帰郷後、山中温泉にある石川 ひきものろく ろ 県挽物轆轤技術研修所でさらに 漆器でパスタや カレーを食べたい ある。 成 年、家業に入った。 2年間、挽物の基本を学び、平 漆芸コースに入学したが、次第 手がけたのは、石川県南西部 の山中温泉で山中漆器を製造・ はるひこ 販売する、有限会社浅田漆器工 芸の浅田明彦専務だ。 真っ先に取り組んだのが、パ スタ用のプレートだった。実は、 軽さと持ちやすさを 追求し、試行錯誤の日々 えるものをつくり、若い世代に 研修所での修業時代、そのベー 「普段の暮らしのなかで木の温 もっと漆器を知ってもらいた もないし、フォークやスプーン た。漆器なら軽くて割れる心配 でつくりたいと思ったことでし やカレーライス用のお皿を漆器 「きっかけは、大好きなパスタ させた"デビュー作"でもある。 年から取り組み、約1年で完成 「提案力育成講座」だった。 ん だ の が、 石 川 県 が 主 催 す る いいのだろうかと考えながら臨 をどのように商品化していけば うな形だったが、そのイメージ も高台もないサラダボウルのよ た。 リ ム( 皿 の 縁 に あ る つ ば ) スとなるプレートをつくってい が当たってもカチャカチャとい い」と、同社に入社した平成 もりが伝わるような、身近に使 22 講座ではまず、コンセプトや ターゲットなど、商品づくりの う音もしないのでいいなぁと」 O CTOBER 2016 33 22 ウッドプレート 若い感 性× " 木 地の山 中 "の技 パスタはもちろん、スープやサラダ、チャーハンなどにも合わせやすい「ウッドプレート」。材質は栓 まるでマカロンのような形とパステル 浅田漆器工芸の浅田孝社長(左)と、 カラーが目を引く「うるしマカロン」 浅田明彦専務 工房兼ショップ「うるしの器 あさだ」。浅田孝社長が平成10年、使い手の声を直接商品開発に生かしたいとオープン に考えるべきという鉄則を学ん ルし、買ってもらうのかを最初 く、どういう人に向けてアピー 誰に売ろうかと考えるのではな 骨組みを学んだ。つくってから るまで妥協せず、木地師と二人 とくにこだわったのが、縁の 薄さだった。最終的に5㎜にな を重ねた。 自ら考え、悩みながら試行錯誤 「 何 か 違 う ……」 と、 3 度 目 は 「 斬 新 だ ね 」「 も の す ご く 軽 表、発売された。 専務が商品化したウッドプレー ップを続けた。苦労の末、浅田 実用性の両面からブラッシュア など、根本的なデザインを何度 しだったが、途中で形や大きさ 微妙な調整をする。その繰り返 いてもらいながら形状を確認し、 れをもとに、木地師に木地を挽 まず、ラフスケッチを図案に し、方眼紙に実寸で起こす。そ かった。 つけた急カーブに変えたり、実 を、緩やかなカーブから角度を すさを左右する高台の外側部分 改良したのはデザインだけで はない。手にしたとき、もちや という現在のかたちだ。 う形状にして、わずか150g さ3・5㎝、リム部分4㎝とい 上げた。それが、直径 輪 島 」「 蒔 絵 の 金 沢 」 と、 そ れ 石川県内には3つの漆器産地 があり、「木地の山中」「塗りの ある。 と薄さは木地師のなせる技でも 評価の声が聞かれた。この軽さ 山中漆器ならではの 伝統の技 も見直すことになった。 際に使ったうえで、リムの端に ぞれに特徴がある。山中漆器の たまぶち 玉縁を付けることによって指で 真価が木地にあるといわれる所 皿で、さらにリムの縁がせり上 が っ て い た。「 大 き す ぎ て 使 い にくいうえ、デザイン的にも良 ふ くない」と、デザイナーのアド バイスのままに修正した次の試 作品は、少し小ぶりにした直径 ㎝。リム部分を約5㎝と、や や 幅 広 に と っ た。 ス タ イ リ ッ シュなプレートになったが、パ スタなどの料理を盛る中央部分 が小さくなりすぎ、普段使いに ゆ 最初のデザインは、リム部分 を含めた直径が ㎝ほどある大 もちやすくするなど、美しさと トは、同社の新しい顔として発 代に照準 い 」「 木 で で き て い る な ん て 驚 40 を定め、本格的な試作に取りか ~ 三脚で納得のいくプレートに仕 き!」など、あちらこちらで高 だ浅田専務は、 ㎝、高 30 30 向かないものになってしまった。 生漆を摺り込み、余分な漆を拭き取る「拭き 漆」工程。乾燥とその作業を数回繰り返すと 透明感が出る うるし 24 24 34 O CTOBER 2016 木地師の第一歩で、ベテランな ジ ナ ル の 鉋 を 手 に す る こ と が、 市場のニーズを捉えつつ、日常 デ ュ ー ス す る" 商 人 " と し て、 代 目 を 継 い だ 後、 漆 器 を プ ロ と、親子で笑う。 と呼ばれるようになりました」 えん 以は、そのルーツが木地師にあ 本はもっているという。道 越前国から山伝いに入国し、住 おり、製作のあらゆる部分に関 具づくりから独創性は始まって ニッポンセレクトでも好評な 器を広めてきた。その代表作が 生活のなかで身近に使える木の あきんど るからだ。安土桃山時代の天正 ら み着いた木地師集団が、江戸時 わる重要で、かつ、木地の山中 ける"加飾挽き"の技芸を生ん がら木地の表面に鉋で模様を付 高さと、全国の漆器用木地生産 技法のひとつ。こうした技術の さ ら に、"山 中 式 " と 呼 ば れ る轆轤の駆動システムも独自の ある。 術を生かしながら、もっと個性 当時、浅田社長が全国の展示 会などで感じた「山中の轆轤技 茶入れである。 柿や栗、たけのこをかたどった 手がけた「欅茶入れ」シリーズ。 試作品ができあがると、女性 の視点を生かすために朝礼で意 極的に提案している。 器"と名付け、現代の生活スタ 展開し始めた。これらを"洋漆 ップ、ランチョンマットなどを その前年、ウッドプレートに 続いてスプーン&フォーク、カ 日常使いの "洋漆器"をアピール 年 間( 1 5 7 3 ~ 1 5 9 2)、 代中期に伝わった轆轤挽物の技 「天然木お茶ミル」、約 年前に を支える他に類を見ない技法で だ。わずか3㎜の間に十数本の をほぼ一手に引き受ける「山中 のあるものをつくらなければ」 見を聞き、必ず家でも使ってみ けやき 細 い 線 を 描 く「 千 筋 」 、無数の 漆器木地協同組合」の出荷量が という思いをかたちにしたもの るという。つくり手と多くの目 間が透けて見えるほどの「薄挽 かんな 稲 穂 が 垂 れ る「 稲 穂 筋 」 な ど、 誇るように、山中は日本一の挽 だ。 そ の 後、「 欅 り ん ご っ 子 利きたちが吟味してできあがる ど空気に晒し、乾燥させる 2 海外にもデビューさせたいとい おり、洋菓子のマカロンを題材 「うるしマカロン」。その名のと を得た浅田専務が挑戦したのが、 本橋三越でのイベントに、山中 援事業として主催した東京・日 合会が地域力活用市場獲得等支 平成 年3月、北陸新幹線の 開業に合わせ、石川県商工会連 う目標がある。 に し た キ ュ ー ト な 小 物 入 れ で、 商工会の支援を受け、出展。手 年 に 発 表 す る と、「 そ れ ま で の クがチャンス」と、4代目は夢 「新幹線の次は東京オリンピッ 応えを感じた。 『お茶ミルの浅田さん』から ミントの5色が揃う。平成 ローズ、レモン、バニラ、抹茶、 そんな父の手がけた"かわい い商品"にインスピレーション イルに合う普段使いの漆器を積 種類以上ある加飾や、木目の 物産地だという背景がある。 シュガー入れ」など、女性向け き」などを施す際には、模様や にし、桟積みで2~3ヵ月ほ しずつ増やしてきた。 商 品 を、 浅 田 専 務 は 近 い 将 来、 技法ごとに使用する鉋を変える という。そして、その鉋をつく 同社も元々は木地師の家系だ。 浅田専務の父・浅田孝社長は3 完成! ! るのは木地師自身だ。 まず、自ら鍛冶を行い、オリ 材料になる栓の材木を板取り キュートな漆器で 話題づくり のかわいさのあるアイテムも少 産 地 と し て の 発 展 と と も に、 技は進化し続け、轆轤を挽きな 術を磨き、広めたとされる。 50 荒型の形を削る刃物と、仕上 げの刃物の2本の鉋を使って、 ウッドプレートの内側を削る 20 1 27 を着実に手繰り寄せている。 26 PRODUCT 製作工程 20 『マカロンカラーの浅田さん』 O CTOBER 2016 35 拭き漆で仕上げる 3 GOOD STORY