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2015年6月号

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2015年6月号
審査番号: 150602-A2
アイザワ証券 投資リサーチセンター
アジア・マンスリー / 2015年6月号 (2015年6月08日発行)
(今月号は 6 月 1 日時点の情報を基に作成しています。)
CONTENTS
中国、追加利下げで景気下支えへ
● 中国
姚 莉
2~5
中国の景気は徐々に底入れへ
中国株の業種別動向
中国本土市場の株高と資本市場の活
性化
● コラム
5
中国人民銀行(中央銀行)は5月10日に、政策金利である預金基準金
利と貸出基準金利を0.25%引き下げると発表した。同時に、金融機関預金
金利の上限を基準金利の130%から150%まで拡大させた。過去半年の間
に政策金利と預金準備率を2度ずつ引き下げたのに次いで、予想外の利
下げに踏み切った背景としては中国経済の減速が挙げられる。今回の措
置の狙いとしては、①一段と減速した景気の下支え、②不動産市場のテコ
入れ、③過剰な債務負担の軽減といった点が考えられる。
ワインブームで生産も消費も世界のワ
イン市場を揺るがす
● グローバル
6~7
タイ企業の 1~3 月決算と足元の経済
状況
● 銘柄研究
8~10
株洲南車時代電気[CSR タイムズ・エレクトリ
ック]
深セン市中興通訊[ZTE]
キャピタランド
● 経済統計&ランキング
主要株価指数
11
4月に発表した第1四半期のGDP成長率が前年同期比7.0%とリーマン・
ショック以来の低水準を記録した。4月の貿易統計では輸出と輸入共に大
きく落ち込み、消費者物価指数(CPI)も同1.5%の上昇に留まり、内需の弱
さと企業製造活動の低迷が明らかとなり、予想以上に景気が鈍化した。ま
た、国家統計局の発表によると、主要70都市の新築住宅の販売価格が
2014年4月をピークに11ヵ月連続で下落した。4月は前月比僅かな上昇に
転じたものの、全体の下落傾向が続いている。更に、ここ数年企業や地方
政府がこれまで増加させてきた債務の返済に苦慮するなど中国は今、
様々な問題を抱えている。今回の政策金利の引下げは企業などの資金調
達コストの軽減や住宅ローン金利の低下を通じて、不動産市場のテコ入れ
と内需押上げに向けた追加緩和措置である。
なお、このまま低インフレ状態が続くようであれば、より積極的な景気刺
激策が実施される可能性が高いと見てよいだろう。
2014年12月末 2015年5月末
NYダウ工業株30種
日経平均225
上海総合指数
香港ハンセン指数
香港H株指数
韓国総合株価指数
台湾加権指数
シンガポールST指数
FTSEブルサマレーシア KLCI指数
タイSET指数
ジャカルタ総合指数
フィリピン総合指数
ベトナムVN指数
イスラエルテルアビブ25種指数
17,823.07
17,450.77
3,234.68
23,605.04
11,984.69
1,915.59
9,307.26
3,365.15
1,761.25
1,497.67
5,226.95
7,230.57
545.63
1,464.99
18,010.68
20,563.15
4,611.74
27,424.19
14,103.81
2,114.80
9,701.07
3,392.11
1,747.52
1,496.05
5,216.38
7,580.46
569.56
1,688.15
年初来
時価総額
為替レート(5月29日)
実績PER
騰落率
(百万米ドル)
1ドル= 124.150 円
1.05%
15.55
24,867,156
―
17.84%
23.25
5,069,160
1元= 20.030 円
42.57%
22.92
8,868,743
16.18%
10.63
5,134,341 1香港ドル= 16.014 円
17.68%
10.21
10.40%
18.41
1,295,990 100ウォン= 11.140 円
4.23%
14.61
1,037,863 1台湾ドル=
4.044 円
0.80%
15.31
568,693 1シンガポールドル= 92.110 円
-0.78%
17.14
444,981 1リンギット= 33.765 円
-0.11%
19.98
411,487 1バーツ=
3.684 円
100ルピア=
-0.20%
23.14
398,667
0.939 円
1ペソ=
4.84%
20.96
265,573
2.777 円
100ドン=
4.39%
12.74
56,345
0.572 円
15.23%
18.25
165,377 1シェケル= 32.138 円
*時価総額は各国・各地域の市場全体の時価総額を記載
[出所:ブルームバーグ、アイザワ証券作成]
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
2
中国
経済
中国の景気は徐々に底入れへ
柳 林
中国の景気は徐々に底入れに向かっている。5月の製造業
PMIは依然低水準にとどまったものの、4月に比べて若干改善
の傾向が見られている。また、利下げや預金準備率に加えて、
中国人民銀行が量的緩和を始めたことで市場金利は急低下
した。金利の指標である7日銀行間金利は5月に入ってから
2%を割り込み、銀行貸出金利も低下し始めた(右図参照)。
その背景には、中国政府は金融緩和を通じて景気の失速を
防ぐと同時に、債務負担の軽減や金融リスクの低下を促す狙
いがあったと考えられる。金融緩和の効果が徐々に表れてい
るほか、原油など商品市況の下落に伴う企業の生産・在庫調
整、不動産市況の減速も一巡したため、この先中国の景気は
緩やかに回復局面を迎えると予想される。
金融緩和によって景気回復期待が高まっている一方、資本市場の活況も経済に好影響をもたらしている。
2015年1~5月、中国本土株式市場で新規上場(IPO)を果たした企業の数は168社、上場企業によるM&A(買
収・合併)件数は170件に達したほか、IPOや増資による資金調達金額は4400億元(約8.8兆円)と前年同期から
ほぼ倍増した。株式市場で調達した資金は、企業の負債返済やM&Aに充てられ、これをきっかけに企業の株
価が上昇するケースが多く見られた。今後はIPO登録制への移行や国有企業改革の加速を背景に、IPO・M&A、
株式による資金調達が更に盛り上がることが予想される。当面、上海総合指数は節目の5000ポイントが壁にな
ると予想されるものの、中長期的には政府当局の資本市場活性化政策や金融緩和に後押しされて強気な相場
見通しに大きな変化は無さそうだ。
中国株の業種別動向
/
王 曦
5 月の香港市場は本土市場の株価調整に連れ安して反落
5月の香港市場は、月中旬頃まで堅調に推移したものの、月末に中国本土市場の株価調整に連れ安した形
で主要指数が反落した。香港ハンセン指数と香港H株指数の月間騰落率はそれぞれ前月比-2.3%、-2.5%と
なっており、香港メインボードの1日当たり売買代金は1527億香港ドルと前月に比べて約23%減少した。
アイザワ中国株業種別指数(ACSI)(注)の業種別月間騰落率(5月1日~5月31日)を見ると、5月の株価上昇
率上位は「家電」、「空運」、「食品」の順となっている。このうち「家電」は、中国国内でスマートテレビや4Kテレビ
など高付加価値製品の販売好調が、「空運」は航空大手3社の1~3月好決算と合併観測がそれぞれ株価の押
し上げ要因になったようだ。また、「食品」は政府系大手穀物グループであるコフコ・グループの再編観測が高ま
ったことで、中国糧油控股[チャイナ・アグリ・インダストリーズ・ホールディングス]や中国食品[チャイナ・フーズ]、中国蒙牛乳業
[チャイナ・メンニウ・カンパニー]などのグループ会社の株価上昇が目立った。
一方、5月に株価が最も下落した業種は「新エネルギー」となっており、その原因としては太陽光発電設備メー
カーの漢能薄膜発電集団[ハネジー・シンフィルム・パワー・グループ]の株価急落が考えられる。同社は中国本土の投資
家が好む銘柄として知られているが、5月20日に原因不明の株価急落(前日比-47%)に見舞われた後、現在取
引停止状態になっている。最近香港市場では中国本土資金の流入を背景に同社の様なケースが散見されるた
め、今後は値動きの激しい低位株などに対してリスク認識を深めた上で、株価水準を慎重に見極めてから投資
判断する必要があるだろう。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
中国
3
経済
/ 6 月は「メイドイン・チャイナ 2025」と「中国本土・香港間のファンド相互販売」に注目
6月の香港市場は、欧米などの外部環境に不透明感が漂う中、中国本土市場の動向に左右されやすい相
場展開が続くと予想される。その中で、「メイドイン・チャイナ2025」と「中国本土・香港間のファンド相互販売」が
新たな投資テーマとして市場の注目を集めそうだ。このうち「メイドイン・チャイナ2025」は、中国国務院(内閣)
が5月19日に発表した産業高度化の構想を指している。具体的には、2025年までに①半導体と情報機器製造、
ソフトウェア、②NC工作機械とロボット、③航空と宇宙設備、④海洋エンジニアリングと船舶技術、⑤高度な鉄
道交通設備、⑥省エネとエコカー、⑦電力設備、⑧農機、⑨新素材、⑩バイオ・医療機器など10の分野で国産
化比率の向上を目指すとしている。これらの分野はいずれも中国の産業構造転換を象徴する分野であり、鉄道
車両システムメーカーの株洲南車時代電気[CSRタイムズ・エレクトリック]やプラスチック射出成型機メーカーの海天
国際[ハイティエン・インターナショナル・ホールディングス]、大手原発キャリアの中国広核電力[CGNパワー]などの関連銘柄を
中心に今後の業績成長が期待できそうだ。
一方、「中国本土・香港間のファンド相互販売」は、昨年11月から開始した上海・香港間株式相互取引に続
いて、中国本土と香港間の証券取引活発化を促す重大イベントとして注目を集めている。「中国本土・香港間
のファンド相互販売」は5月22日に正式発表された後、7月1日から中国本土と香港の現地で販売されている株
式ファンドや債券ファンド、指数連動型のETFが相互に売買できるようになる見通しだ。現在、ファンド相互販売
の投資枠は中国本土、香港とも上限3000億元に設定されているが、昨年11月に開始した上海・香港間株式相
互取引の投資枠(上海株3000億元、香港株2500億元)を上回る規模となっている。また、このファンド相互販売
の開始に加えて、年末までに深セン・香港間の株式相互取引が始まるとの観測も高まっていることから、今後は
ファンドや株式の売買を通じて中国本土と香港間の株式相互取引が更に活発になりそうだ。その中で、香港証
券取引決済所や中信証券、中国平安保険(集団)[ピンアン・インシュアランス]、招商銀行などの金融株が最も恩恵を
受けると予想される。
(注): アイザワ中国株業種別指数(ACSI)の構成については11ページをご覧下さい。
アイザワ中国株業種別指数の月間騰落率(5月1日~5月31日)
5月の上海・香港間相互取引の銘柄別売買状況
家電
空運
食品
ホテル・その他サービス
上海総合指数
機械
医薬品
産業用設備
小売
証券
非鉄金属
鉄鋼
保険
一般素材
陸運
電子機器
銀行
石炭
IT
-2.3 香港H株指数
-2.5 香港ハンセン指数
電力
娯楽・カジノ
公益事業
輸出関連
日用品
自動車
インフラ建設
石油化学
通信
-9.2
海運
-10.5
不動産
新エネルギー
北上取引(香港経由→上海)の売買代金上位10銘柄
順
位
銘柄コード
(上海)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
601318
600104
600036
600519
600030
600585
601166
601398
600887
601668
順
位
銘柄コード
(香港)
銘柄名
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
493
3333
2727
388
1816
3888
1060
981
566
6837
国美電器
恒大地産
上海電気
香港証券取引所
中国広核電力
キングソフト
アリババ・ピクチャーズ
SMIC
漢能薄膜発電
海通証券
銘柄名
中国平安保険
上海汽車集団
招商銀行
貴州茅台(モータイ)
中信証券
安徽コンチセメント
興業銀行
中国工商銀行
内蒙古伊利実業集団
中国建築
月間売買代金 2015年 上海・香港 A/H倍率
(億人民元)
予想PER 同時上場 5月末時点
105.8
46.5
44.9
41.0
38.2
37.7
29.7
29.2
28.5
27.9
15.5
8.3
7.5
17.7
20.8
11.5
6.6
6.4
21.9
10.4
○
○
○
○
○
-
0.94
0.96
1.15
0.98
0.94
-
南下取引(上海経由→香港) 売買代金上位10銘柄
月間売買代金 2015年 上海・香港 A/H倍率
(億香港ドル) 予想PER 同時上場 5月末時点
46.0
45.5
38.6
33.5
32.0
21.0
18.6
18.1
15.7
15.1
20.0
9.4
34.2
38.3
27.8
33.9
(赤字)
16.4
35.6
17.0
-
○
-
3.31
-
-20.4
○
※2015年予想PERは2015年予想EPSと2015年5月29日の終値をもとに算出
[出所:香港証券取引所、アイザワ証券作成]
-25
-20
-15
-10
-5
4.8
4.1
6.3
3.8
0
5
%
10
[出所:ブルームバーグ、アイザワ証券作成]
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
4
中国
トピックス
中国本土市場の株高と資本市場の活性化
柳 林
/ 株高のきっかけは信託商品のデフォルトだった
ちょうど1年前、信託商品のデフォルトや金利急騰をきっかけに、中国の金融危機説が海外で盛んに報じら
れたことはまだ記憶に新しい。しかし実際のところ、中国政府が信託商品のデフォルトを容認したのは「金融機
関に対する見せしめ」の意味合いが強く、その後金融緩和に伴って市場金利も低下傾向をたどった。市場金利
が低下したのに伴って、中国本土株式市場は上昇トレンドに転換し、近年稀に見る大相場を形成した。
/ 経済構造転換や改革期待が株高を後押し
現在、中国の金融情勢は2008年の米国に類似しており、金
融緩和が株高を後押ししている構図だ(右図参照)。信託商品
のデフォルトをきっかけに、商業銀行の総資産の対GDP比は
拡大から横ばいに転じ始めている。その一方、中央銀行の総
資産の対GDP比は縮小から再び拡大に転じ始めており、政府
は景気を下支えるために財政出動を拡大させ、地方債の起債
を認可している。足元では、銀行と企業の負債圧縮によって、
国内経済は悪化しているものの、実体経済からの資金需要減
退や金融緩和、金利低下を背景に株式市場に余剰資金が流
入する構図となっている。
中国本土株高の1番目の要因としては、中国の経済構造転
換に伴う金余りが考えられる。30年間に及ぶ投資・輸出主導型
の成長によって、中国国内には膨大な貯蓄が積み上がっており、
2015年3月末の時点で中国の預貯金残高は140兆元(約2800兆
円)と世界最大規模に達している。こうした潤沢な国内貯蓄は、
これまで国内の投資に吸収されてきたが、消費主導型成長モ
デルへの転換に伴って国内の貸出需要の伸びが鈍化し、現在
の金余りにつながったと考えられる。この金余りによって、中国
本土市場の株高が形成されたと言える。
中国本土株高の2番目の要因としては、改革に対する投資家
の期待が考えられる。中国では、「経済成長は改革のたまもの」
であることが深く理解されており、海外投資家よりも国内投資家
のほうが改革の動向に敏感である。国内景気が悪化すればす
るほど、危機感から国内投資家は改革への期待を強める傾向
が強く、足元の景気悪化にもかかわらず、中国本土市場を押し
上げる原動力となっている。
中国本土株高の3番目の要因として、国内投資家の資産配分の見直しが考えられる。信託商品のデフォルト
や金利の低下に伴って、国内の投資家は資産の一部を不動産や金利商品から株式にシフトさせている。この資
金シフトによって、中国本土株式市場の時価総額は約60兆元(うち浮動株は4割程度)に急増したものの、住宅
市場(約300兆元)や銀行の預金残高(140兆元)の規模に比べてまだ小さく、今後株式市場の規模の拡大余地は
依然大きいと見ている。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
中国
5
トピックス
/ 資本市場の活性化は様々な政策課題を解くカギになる
現在、中国にとって主な政策課題と言えば、不動産市場のテコ入れや債務の削減、生産性の向上、改革の
推進などが挙げられるが、資本市場の活性化はこれらの政策課題を解決するために重要な役割を果たすだろう。
中国本土株式市場の株高に伴う資産効果は不動産市況低迷の悪影響を和らげ、株式市場での資金調達活発
化は上場企業の負債削減やM&Aを後押ししている。株式による資金調達が急増したことで、上場企業の負債
比率は昨年後半をピークに低下し始めており、国有資本の持ち株比率低下に伴って一部民営化の動きも加速
している。今後民間資本に対する割当増資や資産注入、M&A(買収・合併)が活発に行われれば、市場原理に
基づく資源配分によって国有企業の効率化が期待できそうだ。また、資本市場の活性化を背景に、新興企業の
資金調達も容易になり、今後生産性の向上につながる投資や技術開発が加速すると予想される。中国のベン
チャー市場である深セン創業ボードの上場企業数は既に460社を突破したが、店頭市場でも登録企業数が
3000社を突破しており、その数は2~3年後に数万社に増加する見通しだ。
前述のように資本市場の活性化は企業の負債削減や効率化、企業の技術革新を促進することで中国の経
済構造転換に大きな役割を果たしている。今の中国にとって豊富な貯蓄を資本市場に誘導し、資本市場を活
性化させることが重要な経済政策になりつつある。今後、こうした資本市場活性化政策のもとで、持続的な金融
緩和や投資家の資産配置転換、資本市場の対外開放が進むと予想され、中国本土株式市場の上昇トレンドは
息の長い相場になる可能性を秘めていると言えよう。
コラム:
ワインブームで生産も消費も世界のワイン市場を揺るがす
― 姚 莉
ワインの産地と言えば、フランスのボルドーやスペインのカタルーニャ、イタリアなどの国
や地域が名高い。しかし、今、中国もワイン生産大国として注目を浴びている。フランスの政
府機関「ぶどう・ワイン国際機構(OIV)
」2014 年の資料によると、中国のぶどう畑の面積が 79.9
万ヘクタールでフランスの 79.2 万ヘクタールを抜いて世界 2 位になった。現在、世界有数のワ
インメーカーがぶどう畑の開拓や自社高級ワインの投入などを通じて、中国のワイン市場の参
入を本格化させている。背景には空前のワインブームで中国は今や世界のワイン市場を左右す
る一大消費国へと変貌したからだ。
2000 年代半ばから大都市の富裕層の間から始まったワインブームは今や地方都市にも拡大・
浸透している。特に赤ワインの人気が絶大。中国では、赤はめでたい色で贈答用に赤ワインが
好まれることが多い。また、赤ワインには強い抗酸化作用を持つポリフェノールが多く含まれ
ていて、アンチエイジングや生活習慣病などの予防にも効果があると知られているため、今ま
で飲まれていたアルコール度数の高い白酒より体に良いからなどの理由で赤ワインの消費量が
年々拡大し、2013 年にフランスやイタリアを抜いて世界最大の赤ワイン消費国(Vinexpo
の調査)になった。しかし、一人当たりの消費量で見ると、わずか 1.24 リットルで、フラン
スの 45 リットルやイタリアの 38 リットル(日本は 2.7 リットル)などと比べると、更なる拡
大の余地があると見込まれている。
消費されているワインの約 2 割強が輸入で、フランス産が中心。輸
入ワインに約 40%の関税がかかるとのこともあり、国産ワインの品
質もかなり向上していることなどから、約 7 割が国産。国産ワイン市
場は「長城」
、
「王朝」
、
「張裕」という国内 3 大メーカーがある。近年、
これらの国内メーカーは海外のワイン醸造元を買収するなど、海外で
長い歳月をかけて蓄えてきたノウハウや販売網を獲得し、自社製品の
品質アップを図りながら、海外での販売拡大を目指している。
近い将来、日本でも中国産の高級ワインを楽しめる日が来る
写真:王朝ワイン(白)と通化ワイン(赤)
かもしれない。
[アイザワ証券上海駐在員事務所撮影]
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
6
グローバル
トピックス
タイ企業の 1~3 月決算と足元の経済状況
明松 真一郎
5 月 15 日辺りを最後に、タイの主な企業の 1~3 月期決算が出そろった。各社の決算の概況などを確認した
うえで、今回の決算の特徴や足元のタイの経済状況などについて考えてみたい。
/ 2015 年 1~3 月期決算の状況
タイ企業の2015年1~3月期決算が出そろった。タイでは国内の景気減速が指摘されているが、そのなかで予
想を上回る決算となった企業が目立っている。予想を下回った企業も散見されるが、全体的には健闘している
といえるであろう。今後徐々に景気回復基調が鮮明になってくると予想されるなかで、4~6月期以降の企業業
績回復が期待できよう。
タイ個別企業の2015年1-3月期決算概況 (売上高と純利益の単位は億バーツ)
コード
AP
銘柄名
APタイランド
CENTEL セントラル・プラザ・ホテル
業種
売上高 前年同期比 純利益 前年同期比
不動産
52.2
48.2%
5.6
ホテル
50.5
11.1%
8.3
コメント
115.5% 利益率の高い物件の販売が好調で大幅増益に
66.1% 国内ホテル需要減退のなかで、予想を上回る好決算に
TUF
タイ・ユニオン・フローズン
食品
286.1
2.4%
15.1
BH
バムルンラード病院
病院
43.8
22.0%
9.7
MINT
マイナー・インターナショナル
小売
108.4
8.6%
21.6
51.9% 好調な海外事業や特別利益計上で大幅増益に
CPF
チャルーン・ポカパン・フーズ
食品
962.2
-1.9%
29.6
44.2% 国内の不動産物件売却が増益に寄与した
SCC
サイアム・セメント
建材
1092.8
-10.3%
110.7
小売
955.5
10.9%
34.1
26.3% 好調な既存店売り上げと高マージン商品の販売増が増益に寄与
不動産
57.6
9.3%
21.5
25.5% 好立地物件への積極的な投資拡大によって増収増益を確保
小売
321.4
2.1%
14.4
14.7% 国内景気低迷にも関わらず、コスト削減などで増収増益に
小売
60.4
1.6%
6.1
電子部品
109.9
2.0%
15.6
11.8% 製品マージンの増加は販管費の減少が増益に寄与した
BDMS バンコク・ドゥシット・メディカル
病院
148.5
6.8%
22.9
10.3% ヘルスケア事業好調で、6四半期連続の増益に
BBL
銀行
265.9
9.6%
94.1
通信
405.4
11.2%
99
4.4% 高い通信需要を背景に予想を上回る増益に
KBANK カシコーン銀行
銀行
583.3
13.4%
124
3.9% 増収増益を確保したものの、予想を下回った
HMPRO ホーム・プロダクト・センター
小売
126.2
10.8%
7.3
1.1% 不動産、住宅市況の低迷が収益の重石になった
CPALL CPオール
CPN
セントラル・パタナ
BIGC
ビッグC・スーパーセンター
ROBINS ロビンソン百貨店
DELTA デルタ電子
バンコク銀行
ADVANC アドバンスト・インフォ・サービス
58.7% 金融費用の減少と外貨評価益の増加で大幅増益に
52.6% 旺盛なヘルスケア関連需要を背景に四半期ベースの最高益に
32.1% 原油市況価格下落による石化部門の低迷が主な減収要因に
14.0% 国内景気低迷のなかで、コスト削減などで増益を確保
4.9% 手数料収入の増加で予想を上回る増益を確保した
THAI
タイ国際航空
空運
512.2
3.4%
45.4
KTB
クルンタイ銀行
銀行
267.7
16.1%
78.6
-5.2% 中小企業向けビジネスは好調だったもののコスト増で減益に
電力
150.1
-14.6%
21.8
-5.3% 国内景気低迷のなかで電力需要が伸び悩み、減収減益に
不動産
56.9
-6.7%
13.5
-5.3% 不動産市況低迷のなかで予約販売が15%減小し減収減益に
石油化学
1000.9
-29.7%
56.3
-10.9% 原油市況価格の低迷の影響で、減収減益となった
石油
5155.8
-28.0%
225.8
STEC シノ・タイ・エンジニアリング
建設
42.2
-20.3%
3.2
DTAC トータル・アクセス・コミュニケーション
通信
228.2
2.1%
22.9
-30.6% 4G開始に向けた投資拡大が利益を押し下げた
PTTEP タイ石油開発公社
石油
483.4
-18.3%
86.2
-30.7% 原油市況価格の低迷を受けて減収減益に
BANPU バンプー
石炭
225.1
-17.1%
4.6
GLOW グロウ・エネルギー
LH
ランド・アンド・ハウジズ
PTTGC PTTグローバル・ケミカル
PTT
タイ石油公社
黒字転換 燃料安などで黒字転換ながら、航空需要低迷が続いている
-17.7% 原油市況低迷で大幅減収減益ながら利益は予想を上回った
-22.9% 国内の建設需要低迷のなか減収減益に
-74.6% 世界的な石炭需要減退のなか大幅減益となった
[出所:会社発表資料等、アイザワ証券作成]
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
グローバル
7
トピックス
/ 予想を上回る好決算であった企業
このたびの決算で予想を上回る好決算を記録した主な企業をいくつか紹介したい。
① CP オール・・国内景気低迷にも関わらず既存店売上は微増を維持し、新規出店分も大幅増益に寄与した。
なお、同社は 2013 年 4 月に買収していたサイアム・マクロ株の一部売却を計画。
② セントラル・パタナ・・配送の効率化などコストの低減によって、粗利益率は 50.3%に上昇。好立地物件へ
の積極出店も収益に寄与した。
③ マイナー・インターナショナル・・アフリカのホテルに資本参加した際の特別利益を含めて 51.9%増益に。
安定した国内外食事業と海外ホテル事業が収益を押し上げ。
/ 2015 年 1~3 月期 GDP 成長率は+3.0%
れた。前年同期比+3.0%と、市場予想の+3.4%よりは低
い水準だったものの、一部の項目には改善の兆しが出始め
ている。そのひとつが、投資の回復だ。景気低迷が長期化
するなかで、タイ中央銀行は3月、4月と2か月連続の利下げ
タイの四半期GDP成長率
(前年同期比:%)
20
15
10
5
を実施しており、直近の政策金利は2010年7月以来となる
0
1.5%となっている。低金利や金融機関の貸し出し姿勢の軟
-5
化などを背景に、建設投資や設備投資がそろって大幅に
-10
改善している。主力産業のひとつである観光においても、タ
-15
イを訪れる訪タイ客が増加基調で、2014年12月の月間外国
-20
94年1Q
95年1Q
96年1Q
97年1Q
98年1Q
99年1Q
00年1Q
01年1Q
02年1Q
03年1Q
04年1Q
05年1Q
06年1Q
07年1Q
08年1Q
09年1Q
10年1Q
11年1Q
12年1Q
13年1Q
14年1Q
15年1Q
5月18日に、タイの2015年1~3月期GDP成長率が発表さ
[出所:ブルームバーグ、アイザワ証券作成]
人訪タイ客は284万人と月間過去最高を記録した。国内の
景気は最悪期を脱しているといえよう。
タイの政策金利とCPIの推移
(%)
産業を育成することで対応する、と述べた。今後、タイ経済
に占める高付加価値産業の比重が高まってくると予想され
-4
15年1月
-2
14年1月
えることに関して、医療機器や航空機など付加価値の高い
13年1月
①の点については、人件費が安い新興国からの輸入が増
12年1月
0
11年1月
2
今後の民政移管スケジュール、などについて言及した。まず、
10年1月
ン副首相は、①ASEAN経済共同体設立のタイへの影響、②
09年1月
4
08年1月
来」が開催された。会議に出席していたタイのプリディヤトー
05年1月
CPI
04年1月
6
03年1月
5月21、22日の両日、東京で国際交流会議「アジアの未
02年1月
政策金利
01年1月
8
07年1月
/ ASEAN 経済共同体設立による波及効果に期待
06年1月
10
-6
[出所:ブルームバーグ、タイ人民銀行、アイザワ証券作成]
る。なお、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の正式運用開始を控えて、第1号の投資案件がどのプロジェクトにな
るかが注目されている。候補のひとつが、バンコク―チェンマイ間の高速鉄道だ。現時点では、同区間751キロ
を鉄道で移動すれば10時間以上かかっているが、高速鉄道であれば3時間半弱にまで短縮でき、利便性は大
きい。また、中国にとっても南シナ海へのアクセス改善という効果が期待できる案件で、AIIBの第一弾プロジェク
トになる可能性がありそうだ。また、②の点について同副首相は、「暫定議会で新憲法が承認されれば、その3ヶ
月後にも国民投票を実施する」と説明した。総選挙の日程については、これまで何度となく延期されてきたが、
直近プラユット暫定首相も総選挙を2016年9月に実施するとの意向を明らかにしており、ようやく民政移管に向
けたスケジュールが確定しそうだ。今後、ASEAN経済共同体設立による経済発展が見込まれるだけに、国内の
早期民政移管、政治の安定が期待される。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
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Asia Monthly
8
銘柄研究
香港:3898/Z4555
株洲南車時代電気[CSR タイムズ・エレクトリック]
王 曦
業種: 機械
/ 中国の鉄道向け車両システムメーカー
株洲南車時代電気 [CSRタイムズ・エレクトリック](以下同社)は
中国の鉄道向け車両システムメーカー。同社の親会社は中
国最大の鉄道車両メーカーである中国南車[CSR]で、日本の
三菱電機やドイツのシーメンスと合弁会社を設立している。
2014年の売上構成は、鉄道車両向けのパワーコンバーター、
補助電源装置、制御システムが76.3%、鉄道メンテナンス機
械が9.1%、列車安全装置が4.5%、電力関連の半導体部品
が3.4%、その他が6.7%で、このうちパワーコンバーターは国
内トップの市場シェアを誇っている。
/ 2014 年本決算は大幅増益、2015 年 1~3 月も堅調
2014年本決算は、売上高が前年比43.1%増の126.8億元、
純利益が同63.2%増の23.9億人民元と大幅増益。好業績の
要因としては、中国における高速鉄道車両の需要増加によっ
て、高速車両向けのパワーコンバーター、補助電源装置、制
御システムの販売金額が前年の約2.1倍の47.6億元に急増し
たことが考えられる。これらの製品は比較的粗利益率が高い
ため、同社の大幅増益に最も寄与したと言える。また、高速車
両向け以外では、機関車や都市鉄道車両向けのパワーコン
バーター、補助電源装置、制御システムの販売金額も前年比
25%増と好調に推移した。また、2015年の1~3月期決算は、
売上高は前年同期比0.4%減の20.1億元と微減だったものの、
粗利益率の高い製品の販売が伸びたことで純利益は同
26.4%増の4億元と好調だった。
/ 中国南車と中国北車の合併で恩恵を受ける見通し
株式データ
2015/6/1 現在
株価
売買単位
時価総額
実績 PER
PBR
52 週高値
52 週安値
65.85香港ドル
500株
774億513万香港ドル
25.80倍
5.56倍
75.00香港ドル
22.70香港ドル
業績推移
【連結】
決算期 売上高 前年比 純利益 前年比 1株利益 1株配当
‘13/12
8,856 22.2% 1,467
19.9%
1.33
0.35
‘14/12 12,676 43.1% 2,395
63.2%
2.04
0.40
単位:百万元、ただし 1 株利益、1 株配当は元
株価チャート(週足2014年6月13日~2015年5月29日)
200
出来高
(百万株)
180
160
株価
(香港 ドル)
80
70
140
60
120
50
100
80
40
60
30
40
20
0
20
10
[出所:株式データ、業績推移、株価チャート共にブルームバーグ等、
アイザワ証券作成]
その他
現在、同社の親会社である中国南車[CSR]と同業大手の中
国北車[CNR]は合併手続きを進めており、完了すれば中国南
車を存続会社とする世界最大の鉄道車両メーカーが誕生す
る見通しだ。今まで中国南車と中国北車はそれぞれ独自系
列の子会社に車両システムを発注していたが、両社の合併を
きっかけに系列会社間の統合が進み、上場会社である同社
は有力な統合先として受注拡大の恩恵が期待できよう。また、
中国政府は今年も国内の鉄道整備に8000億元以上の資金を
投入すると表明したほか、アジア・インフラ投資銀行の設立に
伴って海外のインフラ整備期待も高まっている。これらのこと
から、同社を取り巻く事業環境は明るく、業績の拡大余地は
大きいと見ている。一方、同社リスク要因としては、予想外の
鉄道投資減速や海外市場での競争激化などが考えられる。
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Asia Monthly
銘柄研究
9
香港:763/Z4330
深セン市中興通訊[ZTE]
柳 林
業種: 通信機器
/ 中国を代表する通信機器メーカー
深セン市中興通訊[ZTE] は中国を代表する通信機器メー
カー。同社は無線・有線のネットワーク通信機器、ネットワーク
アクセス・光通信機器、スマートフォンなどの製造販売を手掛
けており、国内では華為技術に次ぐ業界第2位、世界でも業
界トップ5の一角に数えられる。売上高全体に占める海外比
率は50.2%と高く、世界160の国と地域で事業を展開している。
また、同社は研究開発にも力を入れており、国際特許の登録
出願件数は5年連続で世界トップ3にランクインしている。
/ 2014 年は 4G 向けの設備投資増加で大幅増益
2014年本決算は、売上高が前年比8.3%増の815億元、純
利益は同94%増の26億元と大幅増益。2015年1~3月期決算
も前年同期比10.2%増収、同41.9%増益と好調。好業績の背
景としては、4G(第4世代移動技術)サービスの開始に伴って、
中国3大通信キャリアが設備投資を加速させたことが考えられ
る。これを受けて、同社の通信ネットワーク設備部門の売上高
と粗利益はそれぞれ前年比15%と18%増加し、同時に粗利
益率は前年の34.6%から35.6%に改善した。また、通信端末
部門の売上高は4Gスマートフォンの出荷増加を背景に前年
比6.5%増加し、粗利益率も前年の14.6%から15.2%に改善
した。さらに、費用の面でもコスト削減措置や為替差損減少に
よって、同社の管理費用と財務費用はそれぞれ前年比7.8%
と14.6%減少し、今期の大幅増益に寄与した。そのほか、同
社は国際競争力を維持するための施策の一つとして、売上高
の約11%に相当する90億元を研究開発費に投じるなど、新
製品や新技術の開発に力を入れている。
/ 4G 向けの設備投資と海外展開が業績を後押し
株式データ
2015/6/1 現在
株価
売買単位
時価総額
実績 PER
PBR
52 週高値
52 週安値
23.65香港ドル
200株
1300億4251万香港ドル
29.54倍
3.13倍
24.250香港ドル
12.167香港ドル
業績推移
【連結】
決算期 売上高 前年比 純利益 前年比 1株利益 1株配当
‘13/12 75,234 -10.6% 1,358 黒字転換
0.330
0.03
‘14/12 81,471
8.3% 2,633
93.9%
0.640
0.20
単位:百万元、ただし 1 株利益、1 株配当は元
株価チャート(週足2014年6月13日~2015年5月29日)
500
出来高
(百万株)
450
400
350
株価
(香港ドル)
26
24
22
300
20
250
18
200
16
150
100
14
50
12
0
10
[出所:株式データ、業績推移、株価チャート共にブルームバーグ等、
アイザワ証券作成]
その他
2015年、中国3大通信キャリアの4G向け設備投資は昨年に
比べて減速すると予想されるものの、依然として高い水準を維
持する見通し。今後は企業や政府部門向けのネットワーク構
築のほか、ビックデータ、クラウドなど新規事業も同社の業績
を押し上げる可能性がある。また、会社側は今年米国市場で
通信端末の販売台数が前年比20%増の2000万台に達すると
予想しており、海外市場を中心に通信端末部門の成長が期
待できよう。直近の動きとして、同社は5月8日にロシアで12億
元に上るスマート・シティ・ソリューション関連の通信システムを
受注するなど、海外の通信ネットワーク事業も概ね順調に推
移している。一方、リスク要因としては通信機器業界の競争激
化や海外の貿易保護主義などが考えられるが、今のところそ
の影響は限定的と見ている。
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Asia Monthly
10
銘柄研究
シンガポール:CAPL/CATL/Y0574
キャピタランド
北野 ちぐさ
業種: 不動産
/ アジア最大規模の不動産デベロッパー
2000年にDBS銀行傘下のDBSランドと政府系不動産大手の
ピデムコ・ランドが合併し設立。主に4つの子会社を通じて24ヵ
国141都市で、住居、オフィス、サービスアパートメント、ショッピ
ングモールなどの不動産開発等を手掛けるほか、不動産投資
信託(REIT)など不動産金融サービスにも従事する。2015年1
~3月期の主な地域別売上高比率はシンガポールが49%、中
国が30%、シンガポール及び中国を除くアジアが13%などと、
シンガポールと中国を主力市場に定める。そのほか、5つの
REITをシンガポールとマレーシアに上場させている。
/ 商業施設部門が足元の業績を牽引
株式データ
2015/6/1 現在
株価
売買単位
時価総額
実績 PER
PBR
52 週高値
52 週安値
3.49Sドル
100株
148億9398万Sドル
12.93倍
0.86倍
3.79Sドル
2.93Sドル
業績推移
【連結】
決算期
‘13/12
‘14/12
売上高 前年比 純利益 前年比 1株利益 1株配当
3,511
6.3%
840 -9.7%
0.20
0.08
3,925 11.8%
1,161 38.2%
0.27
0.09
単位:百万 S ドル、ただし 1 株利益、1 株配当は S ドル
2015年1~3月期決算は、売上高が前年同期比49.4%増の
9億1500万Sドル、純利益が同11.8%減の1億6126万Sドルとな 株価チャート(週足2014年6月13日~2015年5月29日)
った。ただし、前年同期に計上したオーストラリア子会社の売
株価
出来高
(SGドル)
(百万株)
300
4.0
却益を除くと、純利益は同9.4%増となっている。シンガポール
3.8
250
とベトナムの住宅販売が堅調に推移したほか、ショッピングモ
3.6
ールとサービスアパートメントの好調な賃料収入が増収に寄与。 200
3.4
加えて、商業施設部門を担う子会社キャピタモールズ・アジア
150
3.2
3.0
を昨年7月に完全子会社化したことも利益を押し上げた。
100
2.8
/ 持続的な成長を目指し海外事業強化へ
50
2.6
0
2.4
外国人居住者数が全人口に4割に達し、外国人の流出入と
住宅市場の連動性が強いシンガポールでは、2010年以降の
住宅価格抑制策と、外国人労働者の受け入れを抑制する近 [出所:株式データ、業績推移、株価チャート共にブルームバーグ等、
アイザワ証券作成]
年の動きが住宅市場の重石となっている。同社の国内事業は、
その他
足元1~3月期に2つのマンション販売が好調に推移し業績を
キャピタランド
押し上げたものの、回復傾向にあるとは言い難い。一方でオフ
2015年1~3月期事業別EBIT(※)構成比
ィス市場は、ASEAN経済共同体の発足を控え、東南アジア進
出の足掛かりとしてシンガポールに進出する外国企業が増え
11%
ていることから、強含みの状況が続いている。ただ、2016年以
34%
降オフィスの供給量が増加するため、今後は警戒も必要だ。
23%
国内不動産市場の不透明感がある一方で、もうひとつの主
力市場である中国の金融緩和と住宅市場規制緩和は、同社
にとって追い風となろう。また、中国で60以上のショッピングモ
ールを展開するキャピタモールズ・アジアを完全子会社化した
のも、中国事業強化の一環とみられる。さらに会社側は、今後
ベトナム、インドネシア、マレーシア事業も戦略事業として育成
していくことも表明した。バランスのとれた事業構成と海外事業
の強化により、持続的な成長を目指す考えだ。
32%
ショッピングモール開発・運営
住宅及びオフィス販売など
分譲マンション・オフィス・商業施設など複合施設開発・運営
サービスアパートメント開発・運営
※EBIT(利払い・税引前利益)は不動産評価替えに伴う評価益や減損損失
等を含まない継続事業のみ
[出所:キャピタランド、アイザワ証券作成]
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Asia Monthly
DATA
11
経済統計&ランキング
/ アジア各国の経済統計 (2015年6月1日現在)
日本
2012
中国
2013
2014
2012
2013
台湾
2014
2012
2013
韓国
2014
2012
シンガポール
2013
2014
2012
2013
2014
実質GDP成長率(%) 1.5
1.5
-0.1
7.7
7.7
7.4
1.5
2.1
3.7
2.3
3.0
3.3
2.5
3.9
2.9
1人当りGDP(米ドル) 46,531 38,468 37,540 6,194 6,959 7,572 20,386 20,925 21,572 24,454 25,975 28,739 54,007 55,182 56,113
外貨準備高(億米ドル) 11,930 12,024 11,997 33,120 38,213 38,430 4,030 4,168 4,190 3,270 3,465 3,636 2,590 2,731 2,569
経常収支(億米ドル)
587
336
243
2,154 1,828 2,098 506
573
601
508
799
842
502
546
540
鉱工業生産(%)
消費者物価指数(%)
政策金利(%)
2015年
3月
2015年
4月
2015年
5月
2015年
3月
-1.70
2.30
0.10
-0.10
0.60
0.10
タイ
―
―
0.10
5.60
1.40
5.35
2012
2013
2014
2012
2015年
4月
2015年
5月
―
―
1.50
―
5.35
5.10
マレーシア
2013
2014
2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年
3月
4月
5月
3月
4月
5月
3月
4月
5月
6.49 1.06
― -0.10 2.70
―
-0.61 -0.8
―
0.40 0.40 0.50
1.875 1.875 1.875 1.75 1.75 1.75
インドネシア
フィリピン
2012
2013
2014
2012
2013
-5.50 -8.70
-0.30 -0.50
―
―
ベトナム
2014
2012
2013
―
―
―
2014(予)
実質GDP成長率 %
6.5
2.9
0.7
5.6
4.7
6.0
6.3
5.8
5.0
6.8
7.2
6.1
5.2
5.4
6.0
1人当りGDP(米ドル) 5,390 5,676 5,550 10,331 10,457 11,062 3,591 3,510 3,404 2,612 2,791 2,913 1,753 1,902 2,073
外貨準備高(億米ドル) 1,710 1,590 1,491 1,340 1,318 1,215 1,130 994 1,119 838
832 798
256
259
経常収支(億米ドル)
-15
-25
142
176
123
151 -244 -291 -262
69
94
92
93
95
78
2015年
3月
2015年
4月
2015年
5月
2015年
3月
2015年
4月
2015年
5月
2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年 2015年
3月
4月
5月
3月
4月
5月
3月
4月
5月
―
―
1.50
6.90
0.90
3.25
―
1.80
3.25
―
―
3.25
―
6.38
7.50
鉱工業生産(%)
162.5 159.3
消費者物価指数(%) -0.57 -1.04
政策金利(%)
1.75 1.50
※
―
6.79
7.50
―
7.15
7.50
―
2.40
4.00
―
2.20
4.00
―
―
4.00
9.10
0.93
6.50
9.50
0.99
6.50
7.50
0.95
6.50
鉱工業生産は前年同期比を掲示していますが、タイは鉱工業生産指数の原数値を掲示しています。
[出所:各種データ、アイザワ証券作成]
/ アイザワ証券 アジア株売買代金上位ランキング (2015年5月1日~5月29日統計)
アジア株式(買い手口)
順位 コード
1
2333
2
390
3
698
4
2318
5
1800
6
371
7
8
9
銘柄名
長城汽車 [グレート・ウォール・
モーター]
中国中鉄[チャイナ・レールウェイ・
グループ]
Tongda Group Holdings
Ltd
中国平安保険(集団) [ピン
アン・インシュアランス]
中国交通建設 [チャイナ・コミュ
ニケーションズ・コンストラクション]
北控水務集団 [ペキンエンター
プライゼス・ウォーター・グループ]
LPKR リッポー・カラワチ
シノ・タイ・エンジニアリン
STEC
グ
バンコク・ドゥシット・メディ
BDMS
カル・サービス
アジア株式(売り手口)
終値
50.05
市場
騰落率
香港
13.5%
順位 コード
1
銘柄名
終値
CPALL CPオール
騰落率
45.75
タイ
7.6%
13.40
香港
43.6%
23.50
香港
27.3%
9.92
香港
55.5%
2
1800
1.64
香港
78.3%
3
1169
中国交通建設 [チャイナ・コミュニ
ケーションズ・コンストラクション]
海爾電器集団 [ハイアール・エレク
トロニクス・グループ]
114.10
香港
44.2%
4
8126
GA Holdings Ltd
1.25
香港
201.2%
4.80
香港
133.0%
13.40
香港
43.6%
5
819
天能動力国際[ティエンノン・パ
ワー・インターナショナル]
6.55
香港
24.7%
6
1211
比亜迪 [BYD]
54.50
香港
79.6%
27.5%
7
1398
中国工商銀行
6.75
香港
19.3%
1300 インドネシア
23.10
タイ
-0.9%
8
3988
中国銀行 [バンク・オブ・チャイナ]
5.15
香港
17.8%
19.30
タイ
12.2%
9
1398
中国工商銀行
6.75
香港
19.3%
155.70
香港
38.4%
10
1816
中国広核電力[CGNパワー]
4.84
香港
43.6%
114.10
香港
44.2%
1.51
香港
147.5%
1.96
香港
78.2%
700
騰訊 [テンセン・ホールディングス]
11
3898
株洲南車時代電気 [CSRタ
イムズエレクトリック]
63.70
香港
40.8%
11
2318
中国平安保険(集団) [ピンア
ン・インシュアランス]
12
3968
招商銀行
23.60
香港
21.3%
12
1075
Capinfo Co Ltd
13
3988
中国銀行 [バンク・オブ・チャイ
ナ]
14
2202
万科企業
15
1893
中国中材 [チャイナ・ナショナル・
マテリアルズ]
10
市場
金衛医療集団[ゴールデン・メ
ディテック・ホールディングス]
7-Eleven Malaysia Holdings
Bhd
5.15
香港
17.8%
13
801
20.45
香港
18.2%
14
SEM
2.94
香港
25.6%
15 900932 上海陸家嘴金融貿易区開発
☆終値は現地通貨 ☆騰落率は年初来
1.72 マレーシア 16.6%
4.01
中国
53.3%
(2015 年 5 月 29 日現在のデータ)
☆アジア株売買代金上位ランキングは当社取扱いのアジア株式市場(香港、中国 B 株、上海 A 株を含む)すべてを対象としています。
(注)アイザワ中国株業種別指数(ACSI)は、アイザワ証券が独自に作成した大分類 8 区分 30 の業種別指数です。
当指数は、香港市場と中国本土の上海 B 株および深セン B 株市場から中国関連銘柄を選定し、構成銘柄の浮動
株時価総額の加重平均で算出しています。2015 年 5 月 1 日時点で選定した 342 銘柄の時価総額合計は、約 38
兆香港ドル(約 590 兆円)に上り、中国・香港両市場の約 5 割強を占めています。当指数は不定期に構成銘柄の調
整を行うことがありますのでご留意ください。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
12
各市場の取引時間(日本時間)
日本(東証)
中国
香港
台湾
前場: 9:00~11:30
前場:10:30~12:30
前場:10:30~13:00
後場:12:30~15:00
後場:14:00~16:00
後場:14:00~17:00
マレーシア
タイ
インドネシア
10:00~14:30
フィリピン
前場:10:00~13:30
前場:12:00~14:30
月~木
金
前場:10:30~13:00
後場:15:30~18:00
後場:16:30~18:30
11:00~14:00
15:30~18:00
11:00~13:30
16:00~18:00
後場:14:30~16:30
韓国
9:00~15:00
シンガポール
10:00~18:00
ベトナム
イスラエル
16:45~24:15
前場:11:00~13:30
後場:15:00~17:00
(現地サマータイム時)
15:45~23:15
外国株投資の主なリスクと留意点
株価・為替の変動リスク:
株式は株価の変動等により、損失が生じるおそれがあります。外国株式は、為替の変動等により、損失が生じ
るおそれがあります。
時価総額リスク:
時価総額による企業の社会的信用度、規模の把握をお勧めします。小型株は、流動性の低さ/企業の情報開示
/コーポレートガバナンス等に問題がある場合があります。また、客観的投資情報が不足しているため、投資
対象として安全なのは、情報量が豊富で、時価総額の大きな代表企業と思われます。
政策リスク:
突発的な政情変化や政策変更など、また、各国の慣習や文化などの違いにご注意ください。
会計基準変更リスク:
国や企業により会計基準が違いますので、ご注意ください。
投資家の皆様へ
■
■
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