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Departmental Bulletin Paper / 紀要論文
被害者供述と対質権
Confrontation right and forfeiture of misconduct
伊藤, 睦
Itoh, Mutsumi
三重大学法経論叢. 2010, 27(2), p. 34-44.
裏表紙からのページ付け
http://hdl.handle.net/10076/11316
三重大学法経論叢
第2
7巻
第 2号
3
ト4
42
01
0年 3月
被害者供述 と対質権
伊
は じめに
藤
は,その種の事例では,被害者 とされる者の
供述が唯一の証拠であるのに,被害者 自身が
アメリカ連邦憲法修正 6条は,すべての刑
公判廷 で証言す ることが困難な場合 も多いた
事被告人 に対 して,「自己に不利益 な証人 と
め,被 害者 が公判前 に医療機 関,カウ ンセ
」を
対質せ しめる権利 (
以下,対質権 とい う)
ラー,親や知人等 に物語 ったことが,「
一方的
保 障 す る。 2
0
0
4 年 の Crawf
ord 判 決 (
1
)
な宣誓供述書」 に類似す る 「
証言的」供述で
(
cr
a
wf
b
r
dv.
Wa
s
hi
ngt
on) は, この権利の
あるとい う理由で証拠 として使用で きな くな
目的を,
被告人 に対す る不利益証拠 として「
一
るとすると,訴追が非常 に困難になるか らで
方的な宣誓供述書」 を使用する過去の悪名高
ある それゆえ,少 な くともこの種の事例 に
い裁判実務 を阻止す る こ とにおいた。そ し
おいては,対質権の分析 において も特別な配
て,対質手続 な しに公判外供述 を使用するこ
慮が必要であることが強 く主張 されてきた。
とが対質権侵害 に当たるか否かの基準は,当
特 に最近示唆 されて きているのは,被告人
該供述が以前 に対質の機会 を与 えられること
wr
o
ngdo
i
ng)」
が証人威迫等の 「
違法 な行為 (
な く録取 された 「
証言的」 な供述 にあた り,
を行 ったことによって証人 を出廷不可能にし
それを用いることが,「
一方的な宣誓供述書」
f
o
r
f
e
i
t
ur
e
)
」 させ る
た場合,対質権 を 「
喪失 (
を用いたの と同 じ結果 をもた らすか否かにあ
べ きであるとい う論理 を,公判廷 で証言する
ること,そ して原則 として,権利創設時点で
ことがで きなかった被害者等の公判外供述 に
起草者が例外 として予定 した以外の例外 は認
あて はめ る可 能性 であ る 実際,2
0
0
8年 の
め られない ことを示 した。
Gi
l
e
s判決 (5) (
Gi
l
e
sv.Ca
l
i
f
o
r
ni
a
)では,被告
。
。
この Cr
awf
or
d判決 は,「
事実認定過程 の
人が現 に今訴追 されてい る ところの DV行
正確性」 を確保す るとい う究極 目的を達成す
為 を行 ったことが,被害者等の証言不能をも
るための手段 として対質手続 を捉 えていた従
た らした とい う点で,証人威迫 と同等の 「
違
2
) よりも,対質 とい う手続 自体の価
来の判例 (
法 な行為」 にあた り,対質権 を 「
喪失」 させ
値 を厳格 に保障 しようとした もの として好意
る理由 となるか とい うことが問題 となった。
的に受け止め られている一方で(
3
)
,児童虐待,
犯罪被害者の供述 を獲得するために被告人の
性犯罪,DV等の被害者保護 を重視す る立場
憲法上の権利 を制限す る動 きは,近年 日本で
か らは厳 しい批 判 も相 次 い だ4̀
)
。 とい うの
もみ られているところであるが,連邦最高裁
(31)
● 論
説
が これを是認 して しまうと,訴追 を円滑 に行
の,エクイテ ィの原理や,Re
yno
l
ds判決 と依
うための何 らかの必要性があれば,安易 に被
拠 した先例 のいずれ もが,証人の証言 を妨げ
告人の対質権 を失わせて もよい とす る傾向が
ることを意図 した行為 に関係す るものであっ
助長 されかねない し,そ こでの結論 は, この
たこと等か ら,このルールは一般 に,「
権利放
種 の問題 をめ ぐる日本の議論 にも影響 を及ぼ
wa
i
ve
r
)
」 とい う,自己の権利 について熟
秦 (
す可能性が強い。そ こで以下では,権利喪失
知 した上での 「
意図的な譲渡 ない し放棄」で
ルールの適用範囲をめ ぐる学説 ・判例上の議
あ るこ とを要求す る法理 (8) の もとで扱 われ
l
e
s判決 における連邦最高裁の結論 に
論 と Gi
て きた。す なわち,証人の証言 を妨げること
ついて概観 し,その議論が意味す るところを
を意図 し,当該証人への対質の機会がな くな
明 らかにしたい。
ることを認識 した行為 に適用す るもの とされ
て きたのである
。
これに対 して,Cr
a
wf
or
d判決 は,被告人
対質権 喪失ル ール
の 「
違法 な行為 (
wr
o
ngdo
i
ng)
」 に基づいて
被告人が証言威迫等の 自らの違法 な行為 に
権利
対質権 を失 わせ る とい うこの法理 を,「
よって,公判外供述 の原供述者 に対 して公判
喪失 (
f
o
r
f
e
i
t
ur
e
)
」 ルール と表現 した。「
権利
廷 で尋 問 をす る こ とが不 可能 になった場合
喪失」は,「
権利放棄」の概念 とは異な り,過
に,対質権 の保障が及 ばない ことは,かねて
常 は,行為者 の意図を問題 とす ることな く適
か ら判例上認め られて きた。連邦最高裁 も,
a
wf
o
r
d判決 自体 は,Re
yno
l
ds
用 される。 Cr
1
8
7
8年の Re
yno
l
d
s判決 (
Re
yno
l
dsv.
U.
S.
)(
6)
判決 を引用 した上で,エ クイティの原理に基
においてすでに,憲法が被告人 に対 して対質
づいて従来か ら認め られて きた対質権例外 と
権 を保障 した として も,「自らの違法 な行為
して 「
権利喪失」ルールを位置づ けているの
か ら合理的に生 じる結果か らの保護 を与 える
yno
l
ds判決 における 「
権利放棄」の法
で,Re
ことはない」 ことか ら,被告人が 「自ら違法
理 を踏襲す る趣 旨であった ことに疑いはない
に招 いた (
pr
o
c
ur
e
me
nt
)結果 として証人が
が,「
権利喪失」とい う文言があ らわす とお り,
不在 になった場合」 には,それによって生 じ
行為者の意図的な行為以外 にも適用範囲を拡
た穴 を埋 めるために別の証拠が許容 された と
張すべ きか否かについては見解がわかれて き
して も,憲法上の異議 を申 し立てることはで
た(
9
)
。実際,Cr
awf
or
d判決以降の下級審判
きない こ とを示 していた7̀
)
。 R
eynol
ds判決
例の中には,エクイティの原理の もとでは被
の この判 旨は,「
人 は 自己の違法 な振 る舞い
告人が不法 な行為か ら利益 を得 ることは許 さ
か ら利益 を得 て はい けない」 とい うエ クイ
れないので,被告人の行為 によって証言が妨
ティの原理 と, 自らの行為 の結果 に異議 を唱
げ られる限 り,意図的な行為でな くて も権利
え られない とい う禁反言の原理 とを示す もの
喪失ルールを適用すべ きだ と結論づけるもの
その言 う ところの
)
。 しか しこの点 につ き,連邦最高裁
もある`10
と して理解 され てい る
。
「自らが招 く」 とい う文言が どこまでの内容
を含 む ものかは必ず しも明 らかではない もの
(32)
s -Hammon 判 決 (
Davi
s v.
は,Davi
wa
s
hi
ngt
o
n,Ha
mmo
nv.I
ndi
a
na
)1̀
1
)におい
被害者供述 と対質権 ⑳
て,Cr
a
wf
o
r
d判決の もとでの 「
権利喪失」
結果 を甘受 した以上 は 「
権利喪失」が生 じて
b)
ルールの根拠 と基準が,連邦証拠規則 804(
もやむを得 ないことを示唆するようにも見 え
(
6)
と同様 である と述べ ることによ り,「
権利
る。 しか しこれは,組織犯罪や共謀関係の事
喪失」ルールが,「
権利放棄」ルールの もとで
例 においては,証人威迫等の行為 を第三者 に
扱われて きた もの と同 じく,被告人の 「
意図」
依頼するとか共謀者の一人に行わせ ることに
的な行為 に限定 されることを示唆 した。
よって責任 を免れ ようとす る例が往 々にして
連邦証拠規則 804(
b)
(
6)
は,Cr
a
wf
or
d判決
見 られるとい う認識の もとで,別の共謀者が
wr
o
ngdo
i
ng)
が用いたの と同 じく「
違法行為 (
証人 を殺 害す る こ とを知 りなが ら阻止 しな
による権利喪失 (
f
o
r
f
e
i
t
ur
e
)
」 とい う文言 を
)
,
かった場合1̀
3
)等 を想定 した ものであ り(14
原供述者が利用不能であ
タイ トル として, 「
単に 「
証人の不在 によって利益 を受けた」 と
り」,かつ 「
原供述者 を証人 として利用不能に
い うだけで安易 に被告人の責任 を間お うとす
することを意図 し,そ して実際に利用不能に
るものではない。諮問委員会が用いた 「
刑事
する違法な行為 に関与 した,あるいは違法 な
司法 システムの尊厳 を崩壊 させ る」 とい う文
a
c
qui
e
s
c
ed) した当事者 に対 し
行為 を黙認 (
言 も,ルールの適用範囲が,証人威迫等の行
て不利益 なもの として提 出される供述」 を伝
為 のように,将来の公判で対質する機会 を失
聞例外 と認 め る。 この規定 は,1
9
9
0年代以
うことを明確 に意識 して, まさしくその証拠
降,組織犯罪や麻薬関係犯罪等 における証人
を失わせて訴追 を不可能にさせ る目的で行わ
威迫事例 の増加 が問題視 された こ とを受 け
れ,刑事司法 システムを直接攻撃する悪質な
9
9
7年の規則改正時に,その種の 「
刑事
て,1
行為 に限定 されることを示唆 している(15'。
司法 システムの尊厳 を崩壊 させ る」忌 まわ し
b)
(
6)
条の理解 をもとにする
このような 804(
い行為 を阻止するために,国家の統一的な予
と,対質権喪失の範囲 も,従来の 「
権利放棄」
防的ルール として創設 された ものである
こ
法理の もとでの もの と同 じく,当事者が証人
の立法趣 旨か らすれば,「
権利喪失」とい う文
の証言 を妨げる意図を持たなかった場合 を含
言が用い られたの も,国家の強い対応 を示す
まない と解す るのが適切 となる 審理にかけ
ためであった と考 え られるが,立法者 は文字
られている事件がいかに凶悪な犯罪に関する
通り 「
権利喪失」 といえるところまで適用範
ものであろうと,対質権 は,その犯罪か ら生
囲 を拡張す るこ とを狙 っていたわけで はな
じた 「
違法な収益」 としてではな くて(16), 審
い。諮問委員会 は, この規定が従来か ら 「
不
理 を受ける際に必須の,防御権の中核 となる
法な行為 (
mi
s
c
o
nduc
t
)
」 による 「
権利放棄」
基本的権利 として,全 ての人に保障されてい
の原理 として判例上認め られて きた ものを成
るものである。 しか も, もともと,被告人に
文化 した ものにす ぎないことを明 らかにして
とって不利益 な証人 を提 出 して対質の機会 を
お り(12),条文上 も,当事者の 「
意図」が明確
実現 させ る義務 は,原則 として訴追側 にある
に要求 されている 条文 に含 まれている 「
黙
訴追側が証人に証言拒絶権 を告知 した結果,
認」 とい う文言 は,一見すると,行為者が意
証人が権利 を行使 して証言 を拒絶 した として
図 しない場合 にも,証人が不在 となるという
も,証人の証言 を妨げたことの責任 をとって
。
。
。
。
(3
3)
● 論
説
訴追側の立証 を不可能 にすべ きと言われるこ
提 として,Da
vi
s判決 における連邦最高裁 も,
とはない こと(17)とのバ ランスか らみて も,証
連邦証拠規則 8
0
4(
bX
6
)
の諮問委員会 も,対質
人が不在 になった とい うだけでむやみに被告
権喪失ルールの もとでの証明には 「
証拠の優
人にその責任 を負 わされることがあってはな
越」基準が適切 であることを認めて きた (21)。
らない ことは明 らかである(
1
8
)
。
この ような証明基準 の媛和 は,「
意図」が状況
証拠 か ら推 認 され うる こ と(22) 等 と もあ い
まって,安易 な運用 を導 きかねない。
権 利喪失 ルールの緩和
特 に最近,DV事例や児童虐待事例 の よう
上述の とお り,Cr
a
wf
b
r
d判決 ,Da
vi
s判決
な特定の類型の審理 に関 しては,通常の場合
の もとでの権利喪失ルールは,証言 を妨げる
以上 に濃やかに 「
意図」要件 の充足 を認める
被告人の 「
意図」 を前提 とす る
しか し判例
可 能性 が示 唆 され て きてい る。論者 に よる
は,被告人が証人の不在 を引 き起 こした とい
と,虐待行為等 は反復 されるのが常であ り,
う事実の証明や,証言 を妨げる 「
意図」の証
被害者 を支配す るために,
被害者 を孤立 させ,
明に関す る基準 を引 き下げ,あるいは適用の
被害者が周囲に被害 を訴 えて救済 を求めるこ
段 階で緩やかな認定 をすることによ り,事実
とを阻止す る行為が含 まれる場合が多い2̀
3
)
。
上ルールを媛和 して きた。
もちろん,被害者 に対す る攻撃 は,通常は,
。
例 えば,かつて先例 とされた The
vi
s判決
怒 りや妬み,不適切 な欲求等か ら生 じるもの
(
U.
S.
V.
The
vi
s
)では,証言 を妨げる被告人
であ り,特別 に将来の公判 を意識 して行 われ
の「
意図」を証明す るためには,「明白かつ確
るものではない。 しか し,被害者-の攻撃の
信 を抱 くに足 る証 明」が必要 だ とされてい
「
主たる」 目的や 「
唯一」の 目的 とはいえな
た(
1
9
)
。その理 由は,対質権 とい う事実認定手
い として も,「
複数の 目的の うちの一つ」とし
続の正確性 を担保す るための中核 的な権利 を
て,被害者の告発 を阻止す る気持 ちがあると
喪失 させ ることと,証拠 を排 除す ることにか
推定 される場合 には,継続的な虐待行為 を証
かる国家の利益 とのバ ランス を考慮す るため
明す ることによって,証言 を妨 げる 「
意図」
には,「
合理的疑いを超 える証明」ほ ど厳格 に
を認定 して よい`24), とい うのがその主張であ
す る必要 はない として も,「
証拠 の優越」より
る。
は高い レベルでの証明を訴追側 に対 して要求
しか し,虐待者が行為後 に,「
誰かに話 した
すべ きであることにあった。 ところが,近年
ら, もっと怖 い 目に遭 うぞ」等 と児童 を脅す
の判例 は,行為時の被告人の 「
意図」 を証明
ような場合 は ともか くとして,現 に今,存在
す ることは困難であ り,厳格 な 「明白かつ確
したか どうかが審理の対象 となっているとこ
信 を抱 くに足 る証明」 を要求す ると,権利喪
ろの DV行為や児童虐待行為その ものを,被
失ルールの適用が不可能 となるため,被告人
害者の証言 を妨 げる 「
意図」 に基づ く行為 と
が不法 な行為か ら利益 を得 て しまうことを根
認定 して,それを理 由 として被告人の対質権
拠 として,む しろより嬢やかな 「
証拠 の優越」
を喪失 させ ることが可能だろうか。 この点,
)
。そ してその判例 を前
基準 を採用 して きた (20
権利喪失ルールの媛和 を主張す る論者等 は,
(34)
被害者供述 と対質権 ⑳
被害者が証言 を固辞す る理 由は,怯 えや心理
う一つの中核 的価値 であるところの,事実認
的 トラウマ等様 々であるとして も,そ もそ も
定の正確性 を確保す る価値 までを失 うことは
その ような状態 に被害者 を陥 らせた責任 は被
で きない として,内在 的に信頼性 を欠 く証拠
告人の行為 にあるので,何 の問題 もない と主
について十分 な吟味 を受 ける権利 を被告人は
張す る(25)。 しか しすでに指摘 されているとお
持 ち続 けることを指摘す るもの もあるが,一
り,少 な くとも現 に審理 にか け られてい る
般 に判例 は,対質権喪失の結果 は,対質権 に
DV行為や虐待行為が問題 となる限 り,被告
関す る異議 を唱 える地位 を完全 に失 うと同時
人が DV行為 や虐待行為 を した こ とを理 由
に,伝 聞証拠 に関 して異議 を述べ る権利 も失
として権利喪失ルール を適用 し,DV行為や
うとしている(31
'
。従 って,権利喪失ルールの
虐待行為 に関す る証拠 を許容す ることは,明
もとで一旦公判外供述 が許容 された場合 に
らかに循環論法である 判例上,共謀の証明
は,供述 についての証人尋問や信頼性 につい
に関 して も同 じ方法 をとることが認め られて
ての疑い も挙 げることがで きない(32)。勿論 こ
お り(26
)
, また陪審制度の もとでは証拠採否 に
の場合 で も,完全 に関連性 のない証拠 までが
関わる判断 と事実認定 とでは判断者が異 なる
採用 されるわけではないので,明 らかに証拠
ので問題がない とい う見方 もあるが (27
)
,少 な
価値 を上回るほ どに誤 りの危険性が高い公判
くとも DV行為 や虐待 行為 を裏付 け る独 立
外供述 は排除 されるとして も, もともと関連
2
8
)
,事実認定
した証拠 を別 に要求 しない限 り(
性ルールが証拠排除に関 して持 ちうる機能は
を誤 る危険は払拭 で きないであろう
また,
高い ものではない し(33),その危 険性 を証明す
特 定 の犯罪類 型 に当た る全 ての事例 におい
る挙証責任が被告人側 に課 されていることか
て, 自動的に対質権が ない とす ることが適切
らして も(34',問題が残 ることは否定で きない。
。
。
であるとは到底思われない(29)。
さらに,学説の中に も,権利喪失ルールの
さらに,権利喪失ルールの媛和 は,事実認
もとで証拠の信頼性 に問題が生 じること自体
定の正確性の観点か らも重大 な問題 を生 じさ
を否定す るものがある つ ま り,被告人が証
せ る 権利喪失ルールが適用 された初期の判
人 を遠 ざけて公判廷 での証言の吟味 を不可能
例 は,主 として以前の公判証言等,信頼性 の
にした とい う事実が,証言が真実であること
情況的保障が一定程度認め られる手続 におい
を裏付 けるとい う見解 である(35)。 しか し,共
てなされた供述 をめ ぐるものであったために
犯者 とされる者 の供述や被害者 とされる者の
問題 は顕在化 してこなかったが(
3
0
)
,権利喪失
供述 は,た とえその供述が虚偽や誤 りを含 む
ルールは, もともと公判外供述 の信頼性 を考
ものであって も,被告人 にとって致命的な効
慮 す る こ とな く例外 的使 用 を許す ものであ
果 を持つ(
3
6
)
。む しろ無実の被告人の方が,虚
り,現 に連邦証拠規則 8
0
4(
b)
(
6)
も信頼性の情
偽であるとか誤 りを含 む証言 によって有罪 と
況的保障の存在 を例外要件 とは していない。
されることを回避 したい とい う気持 ちは強い
学説の中には,対質権 の重要性 に鑑みて,被
か もしれない。 また,共謀 に関す る事例 にお
告人は,面 と向か って証人 を対質す る権利 は
いては,証人 自身が犯罪 に関与 していたか,
放棄す ることがで きる として も,対質権の も
知 りなが ら傍観 していた場合が多 く3̀
7
)
, 自己
。
。
(35)
● 論
説
の責任 を回避す るために責任転嫁的な供述 を
点 については疑問 も挙 げ られている
す る動機 がある(
3
8
)ため,慎重 な吟味が必要
ら,被告人は,審理 にかけ られているのが軽
であるし,第三者や被害者 の供述であって も
微 な犯罪で しかない場合 には,不利益 を覚悟
信頼性の問題か ら完全 に免 れるわけではない
してまで証人威迫 を行 うことはないであろう
ことは,従来それ らの供述 を信用性 の保障 を
か ら,権利喪失ルールはただ不必要ない しは
欠 くもの として排 除 して きた連邦最高裁判例
過剰 な手段 とな り, また逆 に,審理 にかけら
か らみて明 らかであるだろう(39)。
れているのが重大犯罪である場合 には,た と
。
なぜ な
上記の学説は, この点 について も,た とえ
え将来 の対 質 の機会 を失 う危 険 を冒 してで
権利喪失ルールの もとで証拠 の信頼性 に疑問
も,著 しい不利益 を与 えるはずの証人 を退け
が生 じて も問題 はない と答 える すなわち,
ることで訴追ない しは重大 な刑罰 を免れ よう
被告人は,証人が捜査機 関に対 して供述す る
とす る可能性があるため,権利喪失ルールで
ところか ら,大陪審証言,予備審問証言,公
は不十分だか らである(42)。
。
判証言へ と至るまでの手続の過程 を,通常遇
しか も,権利喪失ルールの適用範囲の拡張
りに見守 っていれば,その証言の信頼性 を確
は,訴追側 の不適正 な行為 を招 く可能性 もあ
保す る機会 を得 ることがで きたはずであるの
る
に,敢 えてそれを阻止 したのであるか ら,信
対 して対質権 を保障す るために,利用可能な
用性 の情況的保障のない公判外供述 を使用 さ
証人 を提 出する義務 を負 う 通常の場合,証
れるのは自己責任 であるとい うのである`40)。
人威迫等の行為 と被告人の意図 を証明す るこ
しか し,た とえ証人 を利用不能 な状態 に した
とよりも,証人の供述の信頼性 を証明す るこ
ことにつ き被告人 に非がある として も,公正
との方が訴追側 に とっては容易であるので,
な裁判や適正手続 を受ける権利 までが失われ
た とえ捜査段 階で証人の供述が得 られている
て良いわけではない し,信頼で きる証拠 に基
として も,訴追側 は,証人 を提 出する義務 を
づ く有罪判決 を受ける権利 を放棄 させ ること
果たすための誠実 な努力 をす る。 しか し,権
も到底許 されないだろう(
4
1
)
。そ もそ も,信頼
利喪失ルールの証明基準が媛和 され,証人が
で きる証拠 に基づかない,誤判の可能性 のあ
利用不能 となった責任 を被告人 に負 わせ るこ
る有罪判決 は,真実発見の見地や正義の観点
とが容易 になると,証人の証言 を対質 と尋問
か らも受け入れがたいはずである
による攻撃 にさらす よりも,取調官等 による
。
。
とい うの も,訴追側 は,本来,被告人に
。
結局,権利喪失ルールの拡張 を正当化す る
揺 らぎに くい証言 を通 じて伝 聞供述 を提 出す
根拠 は,いずれ も,証人威迫等 を未然 に阻止
る方が訴追側 にとって利益 をもた らす ことに
す る必要性 であるとか,被害者たる証人の供
なる 従 って,訴追側 は,証言的伝 聞が利用
述 を確保す る必要性 などの政策的理 由にす ぎ
で きる状況があれば証人尋問を求めない実務
ない。確かに,刑事司法の適正 な運営 を守 る
を奨励 されることにな り,それによって適正
ために,証人威迫等の悪質 な行為 は妨げ られ
な司法運営がかえって妨げ られる可能性があ
るべ きである。 しか しなが ら,権利喪失ルー
るのである(43)。勿論,訴追側が実際に不適正
ルがそのための十分かつ必要な手段か とい う
な行為 を選択す る とは限 らない として も,被
(36)
。
被害者供述 と対質権 ⑳
告人の違法行為 を妨げるとい う政策的利益 だ
きである 被告人が明 らかに児童の証言 を妨
けで,ルール緩和 を正当化す ることには疑問
げるような脅迫的な行為 を行い,児童が証言
も残 る
を拒否す る原因がその年齢 に起 因す るもので
。
。
また被害者たる証人の供述が問題 となる場
はな く,被告人の行為 による ものであること
合 に,供述 を確保す る必要があることは間違
が証明 された場合 には,権利喪失ルールを用
いがない として も,それを理 由 として権利喪
い る こ とは当然 許 され る こ とになる として
失ルールを媛和 して よいかはまた別の問題で
も,その証明が なされる前 に,被告人が犯人
あ る 例 えば,謀殺 事件 の被 害者 や重傷 を
であるとい う推定 に基づいて,被告人に権利
負 って入院中の被害者の供述が問題 となる場
を宣言 してお きなが らその行使 を一律 に禁ず
合 に,か りに被告人が真犯人であるとす るな
ることでバ ランス的な解決が図 られてはなら
らば,た しかに証人が公判で証言で きないこ
ない(47)。大 人 の DV事例 等 の場 合 に も同様
との責任 は被告人 にあることになるが, しか
の ことが言い うるであろ う
。
。
しどの ような裁判 において も,被告人 に対 し
て対質権 を保障す る責任 は訴追側 にある。 訴
追側 は,証人が死亡す る等 して本 当に利用不
五
連邦最高裁 GH
es判決
(
48)
能 になるまでの間に,速やかに被告人 に通知
上記の ような議論のある中で,連邦最高裁
して,被告人に対 して尋問の機会 を保障 した
が扱 ったのが,DVがエス カ レー トした結果
形で証言 を録取 してお くな ど,責任 を果たす
として被害者 の殺害 に至 った とみ られる事件
ための努力 をしなければな らない。そ してそ
の審理 において,当該殺害行為 を理 由 として,
の ような努力 を訴追側が怠 る場合 には,被告
被告人 に対 して権利喪失ルールを適用で きる
人が敢 えてそれを阻止す るような悪質 な行為
か とい う上記の問題である
。
を行 わない限 り,証人が利用不能 となった責
殺害 されたのは,被告人の元 ガールフレン
任 が明確 に被告 人側 にあ る とはい えないの
ドA であ り,被 告人 も殺 害 の事 実 自体 は争
で,挙証責任の原則 に従 って訴追側が危険 を
わなかった。 しか し,被告人 は,審理 におい
負担すべ きである`44)。児童虐待等の事例 にお
て,殺害の故意 を否定 し,正 当防衛 を主張 し
いて も,児童 を重大 な トラウマ等か ら保護す
た。すなわち,Aは非常 に嫉妬深 い性格で,
ることは必要だ として も(
4
5
)
,訴追側が,児童
以前 にもナイフで人 を脅 した り,被告人の車
の証言 な しでは訴追が不可能であるとわかっ
や家 を壊すな どの行動 をとったことがあ り,
ていなが ら,敢 えて児童 に証言 させ ないこと
事件当 日も,A は祖母の家 にいた被告人の と
を選択す るのであれば,本来は訴追 を断念す
ころまで押 しかけて きて被告人 を呼び出 し,
べ きである(46)。唯一の有罪証拠が失われる場
被告人 と被告人の新 しいガールフレン ドを殺
合 に訴追が不可能 になるのは どの裁判で も同
す と脅迫 した とい う。 そ して被告人が 自分の
じである それを避 けたいのであれば,少 な
身を守 ろうとして銃 を手 に とった ところ,A
くとも, ビデオ リンクを通 じた証言等の,二
が手 に何か をもって襲いかかって きた ように
次的な証拠 を獲得す るための努力 を先 にすべ
見 えたため,発砲 したのだ と
。
。
(37)
● 論
説
しか し A が何 も武器 にあた る もの を携帯
喪失ルールの適用 を主張 していた。それによ
していなかったこと,発砲 は 6度 にわたって
ると,認識 を超 えて,証言 を妨 げることを 「目
いて,その うちの何発かは,横側か ら,ある
的」 としていた ことや行動の 「
動機」 として
いは A が地面 に倒 れてか らの ものであ る こ
いた ところまでの証明を求めると,被告人は
とは証拠か ら明 らかになっていた。
自らの行為か ら利益 を得 ることとなって しま
訴追側 は,被告人の主張 を否定す る証拠 と
うし,妻 を暴行 した後で証言 しない よう脅迫
して,事件の 3週間ほ ど前 に録取 された,響
した場合 には権利喪失ルールが通用 されるの
察官 に対す る A の供述 を提 出 しようとした。
に,暴行 した後で怒 りにまかせて殺害 にまで
A の この公判外供述 は,A の浮気 を疑 った被
及 んだ場合 は権利 を喪失 しない とい う矛盾
告人が口論の末 に逆上 し,A を吊 り上 げて首
や,被告人は正当防衛 について様 々な発言 を
を絞め,また倒れた A の顔や腹部 を殴 り,ナ
す ることがで きるのに対 して,死 んだ方 は反
イ フを突 きつ けて脅迫す る等 の DV行為 を
論で きない とい う矛盾等が生 じるので,その
行 った ことにつ き詳述す るものだった。
ような矛盾 を増大 させ ないためには,将来の
カリフォルニア州の控訴審裁判所 と最高裁
公判 を念頭 においていた とい う証拠がないだ
wr
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ngdo
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ng)による権利喪
は,「
違法行為 (
けで公判外供述 を排 除すべ きではないのだ と
失 (
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)
」 理論の もとで,A に対す る
いう
。
対質の機会 を被告人 に与 えな くて も,A の公
また Br
e
ye
r裁判官 は,権利喪失 ルールが
判外供述 を許容で きると判断 した(49)。その理
主 として関係 す るの は DV事例 にお ける被
由は,公判外供述 の原供述者 であ る A を公
害者の過去の供述であ り,その被害者の多 く
判廷 で証人 として出廷 させ ることが不可能 に
が,反復的な暴力 を受 けた結果 として,殺害
なったのは,Aを殺害す るとい う,被告人 自
や傷害の被害 を受けるとい う最悪の状況 をも
身の行為 の結果 であ った とい うこ とであ っ
た らされてお り, しか も被害者が証言 を拒否
た。
するか供述不能であるため加害者の訴追が困
e
ye
r裁判官等 は,
連邦最高裁の中で も,Br
難であることに 目を向けた。そ して,DV事
権利喪失ルールの根拠 となる ところのエクイ
例の被害者が とりわけ,証言 を妨げるために
ティの原理か らすれば,人 を殺害す ることほ
脅迫 された り,証言拒否 を唆 された りしやす
ど違法 な振 る舞いはないのだか ら,そ こか ら
い ことを考 える と,DV事例 においてはなお
被告人が利益 を受けてはいけないことは当然
さら,被告人の殺害の 「目的」 を強調 して被
である し,A を殺 害すれば A の証言 を妨 げ
告人 を不 当に有罪か ら免れ させ るべ きではな
る結果 となることは被告人 自身 もわかってい
いことを主張 した。
たはずであ り,殺害行為が人の証言 を妨げる
法廷意見 を書いた Sc
a
l
i
a裁判官 も,本件が
最 も確実な手段 であることは合理的な人であ
れば誰で もわかるはずだか ら,その ような結
DV事例であるとい う点 に関 しては配慮 を示
DVは しば しば被 害者 が外 に助 け を
して, 「
果の認識 をもって,証言 を妨 げる 「
意図」 と
求め,警察や刑事訴追の協力者 に証言す るこ
認定す ることに問題 は生 じない として,権利
とを妨げる行為 を含 む」ので,「
虐待関係がエ
(38)
被害者供述 と対質権 ⑳
スカレー 下して謀殺 にまで至 った場合」には,
られて きた,被告人が用いた 「
手段 」により,
当該審理の対象 となった犯罪その ものが,
「
被
あるいは被告人が 「
唆 した」 ことにより証人
害者 を孤立 させ,刑事訴追の協力者や訴追当
が 「出廷 を妨 げ られた」か 「
遠 ざけ られた」
局に虐待 を報告することを妨げる意図」 を証
とい う文言は,権利喪失ルールが,被告人が
明す る こ とが あ り得 る こ とを述べ た。従 っ
証人 に証言 させ ない ことを 「
企図 した」行為
て,DV事例 においては,当該事件が発生す
に従事 した ときだけに適用 されることを示唆
る前か ら,被害者 に対 して外 に助 けをもとめ
被告人が証人 に証言 させ ない ことを
す る。 「
る気持 ちを失わせ ることを意図 した継続的な
企図 した とい う証明 を抜 きに して,対質手続
虐待行為が行 われるか,その脅威 に被害者が
を経ていない証言 を許容 してはな らないこと
さらされていたことが証明 されれば,審理 に
は,そのルールが適用 されて きたこれ までの
かけ られている当該行為が,
証言 を妨 げる「
意
や り方 を見れば明 らかである 被告人が証人
図」をもって行 われた ものであると認定 され,
の不在 を引 き起 こしたが, しか し証言 を妨げ
権利喪失ルールの対象 となる可能性があると
ようとしたわけで はなか った こ とが証拠 に
いう(
5
0
)
。
よって明 らかな場合 には,証人 による公判外
c
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i
a裁判官 は,上記 の ように,
しか し S
DV事例 において,証言 を妨 げる 「意図」の
。
供述 は臨終の供述の例外 に含 まれない限 り,
排除 される」。
証明に特別 な判断方法が用い られ得 ることを
Sc
a
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i
a裁判官 はまた,臨終 の供述 の例外が
認めなが らも,DV事例 であるか らとい う理
適用 され なか った事例 にお い て,権 利喪失
由で憲法上の基準 を引 き下げることを拒否 し
ルールを適用 した例 は存在 しないことを指摘
c
a
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i
a裁判官 は,DVがい くら
た。そ して,S
し,違法 な行為 を犯 した被告人が利益 を受け
甘受 しがたい犯罪であ り,立法者がそれを撲
ることは許 されない として も, ここでの 「
違
滅す るためのあ らゆる措置 をとることを求め
法 な行為」は証言 を妨 げることを 「
企 図 した」
られるのだ として も,現 に審理 にかけ られて
行為 を意味 し,「
被告人が起訴 された とお り
いるところの犯罪が立証 される前 に,憲法上
の犯罪 を行 った とい う事前 の評価 に基 づい
の権利 を失わせてはな らない と述べ て,本件
て,憲法が公正 な審理の本質 とみな している
の ような DV事例の場合 にも,通常の場合 と
権利 を奪 って よい とい う考 えは-- 『
被告人
同 じく,権利喪失ルールを適用す るためには
が明 らかに有罪であるために審理無 しで済 ま
証言 を妨 げる被告人の 「
意図」が証明 されな
せて良い』 とい うの と同 じである」 ことを述
ければな らない ことを明確 に述べ,DV事例
べている。
であることを念頭 においてそれだけで「
意図」
判官等がい う,結果 を認知 していたな ら 「
意
の有無 を考慮す ることな く権利喪失ルールの
図」が認定で きるとい う緩やかなルールは,
適用 を認めた州最高裁の判断 を覆 した。
判例 によって支持 されず,権利喪失ルールの
S
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a裁判官 は, まず は権利喪失ルールの
歴 史 的沿 革 につ いて検 討 す る
。
それ に よる
と, コモ ンローでこのルールをめ ぐって用い
S
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a裁判官 による と,Br
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r裁
「
基本的 目的 と対象」か らも否定 される
。
な
ぜ な ら,権利喪失ルールの 「
基本的 目的 と対
象」は,証人威迫等の動機 を被告人か ら奪い,
(39)
● 論
説
それにより 「
裁判所が手続の尊厳 を保護す る
は, この種 の犯罪被害者が証人 となる場合 に
ことを可能にす ること」 に根拠づけ られてお
も,証人 を保護す るためにむやみに被告人の
り,
権利喪失ルールが対象 を限定 した理 由は,
権利 を制 限す る とい う考 え方 は認 めて こな
「陪審裁判 を前提 とした我 々の憲法上の刑事
かった(51
)
。勿論,被告人 は,不必要なプライ
司法 シス テム との原理 的 な矛盾 を避 け るた
ヴァシーを暴露す る権利や,不 当に被害者の
め」であるので,被告人は,た とえ裁判官が
落ち度 を追求す る権利 を与 え られるわけでは
有罪 と判断 した として も,公正 な審理 を受け
ないが,被害者の供述が犯罪の立証 に とって
る権利 を奪 われるべ きではないか らである
重要である限 り,その供述 を公判廷 で吟味す
。
「
裁判官が前 もって有罪 と判断 した ことを理
ることは,被告人の正当な防御権 の行使 であ
由 として裁判上の権利が失われるとい うルー
り,公正な裁判のために必要不可欠な もので
ルが規範 た り得 ない こ とは極 めて確 実 であ
52)。 虐待等 によ り深刻 な被害
あるか らである(
り,-州 立法者 は,陪審の面前で,憲法が信
を受けた者の多 くが, 自分の受けた被害 につ
頼で き,許容で きるとした証拠 に基づいて,
いて公 の場 で は語 りたが らない とい う事 実
刑事手続 において有罪 と判断 させ る権利 を被
は,確かに,従来の裁判 と同 じ方法では対処
告人か ら奪 うことにより,被告人の邪悪 な行
し得 ない との印象 を与 えるか もしれないが,
為を 『
処罰』す ることはで きない」。
これ まで被害が埋 没 して きた原 因の一端 に
そ して Sc
a
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i
a裁判官 は,その時々で裁判所
は,被害 を受けた女性 に対す る偏見であると
が 「
公正」 と考 える例外 を採用す ることは対
か,DVや児童虐待等 を家庭 内の問題 とみて
質権 の保障の実質 を失わせ るため,適切 では
適切 な対処 を怠 って きた ことなどの社会的な
ない ことを述べ て,結論 として, カリフォル
問題 もあるので,被告人の権利 を制限すれば
ニア州が認めた,「
証人の証言 を妨げる意図」
それで全 ての問題が解決す るとい うことには
を証明することな く広範囲に権利喪失ルール
ならない。 しか も被告人が犯罪者であること
を及 ぼすや り方 は,対質権創設時点で予定 さ
はまだ証明されていないのであるか ら,犯罪
れた例外 とはいえないため,対質権 の もとで
者であることを前提 とした ような憲法上の権
是認で きない として,有罪判決 を破棄 したの
利の制限は到底許 されない。犯罪被害者の保
である
護 を強 く主張す る立場か らの批判が,下級審
。
の判断にも影響 を生 じさせて きている現時点
六
おわ りに
において,連邦最高裁があ くまで原則論 を貫
き,被害者保護や訴追上の政策的利益 だけで
DVや性犯罪,児童虐待等の被害か ら女性
は,被告人にとって最 も基本的で重要 な権利
や子 どもを保護す るこ とは当然必要 で あ る
である対質権 を失わせ ることを論理的に正当
し,また,犯罪被害者の精神 的 ・身体的ダメー
化 しえない ことを示 した ことは,極 めて意義
ジを理解 し,不適切 な対応 による二次的被害
深い
。
を与 えることを避 ける必要があることにも疑
日本 において も,近年,犯罪被害者保護の
いはない。 しか しアメリカ連邦法域 において
必要性が強調 され,公判廷 での証人尋問の際
(4
0)
被害者供述 と対 質権 ⑳
に遮蔽措置 な どの特別 な措置 を設 けた り,被
いる現状 の実務 こそが まず は反省 され るべ き
害者 とい う特別 な立場 で訴訟 に参加す るこ と
であるだろう。
を認 める等,様 々な形でその利益 に配慮す る
ことが法律 によって認 め られ,それ との対比
なお,本論文 は,科学研 究費補助金 「
裁判員制度の
で,無罪推定原則 や黙秘権,証人審問権等 の
下 にお ける証 人尋 問の意義 と調書 の用 い方 に関す る
被告人の権利が制 限 され ざるを得 な くなって
平成 1
9-2
2年若手研 究(
B)
課題番号 1
9
7
3
0
0
5
5
)
研 究」 (
きてい る。 犯罪被害者 を支援す る立場 か らの
による研 究の一部である。
主張 の中には,犯罪被害者 を保護す る施策 に
注
よって被告人の権利行使 に萎縮効果が生 じる
として も,被告人が真犯人である以上 は仕方
(
1
)5
41U.
S.
3
6(
2
0
0
4
)謀殺事件 の審理 において,
が ない との見方があるように もみ えるが, そ
目撃者 であ る被 告人 の妻が配偶者特権 を主張 し
の ような考 え方が妥 当た り得 ない ことは, ア
て公判証言 を拒 否 したため,警察 官 に対 す る公
判外供述 が使用 で きるか どうかが 問題 とされた
メ リカ連邦法域 における議論か らも明 らかで
あろ う。
事例。
(
2) Oh
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4
8U.S.
5
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また, 日本 においては,被告人の責任 を強
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調 してその権利 を制限す る以前 に,そ もそ も
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被告人 に対 す る十分 な権利保 障が実現 されて
きていない ことも注意す る必要がある。 とい
うのは, 日本 においては,公判廷 で供述不 能
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して特信性 の要件 を問題 とす ることな く用 い
られて しまっているか らである。 しか しアメ
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リカ連邦法域 における議論か らは,犯罪被害
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d判決の 「証言的」 とい う枠組 みが, こ
者等 の保護 を考 える政策的立場 を重視 した と
の種 の事例 で は判 断が 困難 であ る こ とを指摘 す
して も,被告人が ことさ らに証人 を威迫 して
供述不能 に陥 らせ た場合 で もない限 り,その
ような公判外供述 を用 いることは被告人 の防
御権 を不 当 に侵害す ることにな り, またた と
る もの も少 な くな い。例 え ば J
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え用 い られ る として も,信頼性 のない供述 に
(
5)
基づいて有罪判決 を下す ことは許 されない と
(
6) 9
8U.
S.1
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8)重婚罪 のか どで訴追 を受 け
考 え られ るべ きであることが明 らか になる。
U.S.
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5
3)
た被告人 に対 し,妻 による以前 の証言 (
同 じ犯罪
に関す る別 の審理 で の証 言) を不利益 証拠 とし
安易 に現状以上 の権利制 限 を認める前 に,証
て許容 で きるか どうかが 問 われ た際 に,証 人 と
人が利用不 能 になった とい うだけで公判外供
して出廷 を求 め られていた妻 の居所 を故 意 に隠
述 に安易 に依拠 し,被告人の権利 を制 限 して
し,官吏 が再 三召 喚 のための努力 を した に もか
(41)
● 論
説
かわ らず,出廷 させ ることがで きなか った とい
知 りなが ら捜査機 関に対 して連絡す るな どの阻
う点が問題 とされていた。
止行為 を何 ら行 わなか った ことが権利放棄 とみ
(
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なされた。 この ような結論 に対 しては,共謀 に
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あ ま り深 く関与 していなか ったため に情報 を認
(
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b)
(
6)
の制定
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DV事例 における被害者 の供述が問題 となる
に係 わった ことか ら, この趣 旨が条文 に盛 り込
や
場合 には拡張的な権利剥奪 ルールが適用 され る
こ とを Cr
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ordの もとで結論づ け られ る と主
張 して い る。 反 対 に,J
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まれていることが うかがわれる。
(
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) 実 際, こ の 趣 旨 を受 け て,例 え ば U.S.V.
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)では,証人 を不在 にさ
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)は,エクイティの原理か ら,権利喪失ルー
結果 として合理的に予見可能 な ものである限 り
ルには被告人の悪質 な意図が必要 であることを
では,被告人が証人威迫 の実行犯 で はな くとも
示す。
権利放棄 とみなす ことを認めている (
但 し,具体
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)また,被告人が被害者 を殺
)
。 もっ とも, この点 につ いて
認定 しなか った。
害 した とい う証拠 が存在す る場合 には,被告人
は,被告人 に殺害阻止義務等 を科す と,共謀 に深
の殺害の意図 を問わず に権利喪失 ルールを適用
く関与 していな くて情報 を認知 していなか った
して被害者の供述 を用いようとす るもの もある。
被告人 ほ ど不利益 を被 るこ とを指摘 して,被告
例 え ば St
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質権喪失 に至 るべ きではない ことも主張 されて
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は,駆 けつ けた警察官 に対 して事件 の説明 を し
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。判例 において も,個別の被告人
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た供述が問題 とされた。連邦最高裁 は,前者 に
につ き 「
証言 を妨げる意図」が証明 されるべ きと
ついては,差 し迫 った危機 を回避す るため に救
する例 も少な くない。た とえば U.
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済 を求めるための供述であ り,「
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) 下級審の中には,現 に今審理 されてい る殺 人
は,事件後 に行われた 「
証言的」供述であ り,権
事件が,別事件 の 目撃者 を抹殺 す るために行 わ
利喪失 に該 当す る事実 も認定 されていない こと
れたためである可能性が強いことを理由 として,
か ら,対 質権 の例外 には当た らないため供述 を
証言
殺人事件の審理で証人 と対質す る権利 を, 「
許容で きない と結論づけた。
を妨 げる意図 を もって行為 した」 とい う理 由で
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用 い られて きた,「
重 大 な トラウマ を被 るお それが あ るの は児 童 に
ル は適用 され ない ため,そ れ以外 の公 判外 供 述
限 られ ない し,む しろ児童 の場合 には,大人の性
の許容性 はそれ に よって左 右 され ない と も主 張
犯 罪被 害者 等 に比べ て,公判 その ものか ら受 け
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a裁判官 は,かつ て用 い られて
していたが,S
る トラウマ は少 ない可 能性 もあ る こ と等 か ら,
きたルー ル に関す る説 明が,以前 の供 述 が対 質
児 童 を特 別 に扱 うこ と自体 に疑 問 を投 げか けて
を経 て い た か ど うか を考 慮 して い な い こ と,
い る。
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r裁判官等 の説 明 を採用 す る と, 自身等 が
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て も,被害者 た る証人の保護 は,被告人 の権利 を
制 限 しない限 りで認め られ る もの となってい る。
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意 したが,S
この点 につ い て は拙稿 「
刑 事 手続 にお け る性 犯
部 に留保 をつ けたため,その部分 で は法廷 意見
罪被害者 の権利」斉藤豊治 ・
青井秀夫編 『
セクシュ
が形成 されず, また Br
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r裁判官 は,DV事例
東北大学 2
1世紀 COEプログラ
ア リテ ィと法 』 (
に は別 の基 準 が 当て は まる こ とを主張 して反対
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01ム ジ ェ ンダー法 ・政 策研 究 叢 書,2
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意見 を書 き, S
31
8頁。
も反対 意見 に同調 した。判例 につ い て紹介 した
(44)
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