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黒川・堀川の 河川環境について

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黒川・堀川の 河川環境について
黒川・堀川の
河川環境について
−清流への道−
名古屋工業大学・都市社会工学科
冨永晃宏
地球上の水
地球上の水の割合
„
利用可能な水 0.015%
極地の氷・氷河
2.1%
地下水
0.89%
湖沼水
0.009%
海水
97.0%
河川水
0.00018%
地球上の水循環量
水資源は絶対量でなく循環量が重要
大気中の
水蒸気量:25mm
36
70mm相当
36
36
正味の輸送量
36
世界の水問題①
水が足らない
„
„
20世紀中に世界人口は3倍に増加し、人間の
ために使用される水は6倍に増加
2025年には48ヶ国で水が不足する見込み
地下水が危ない
„
過剰な地下水くみ上げによる地下水位低下や
地盤沈下
水の輸送と貯留
スペイン・ゼゴビアの水道橋
重力式ダム
(下久保ダム,利根川水系)
自然の川、人工の川
荒川
関東平野を流れる荒川の流路を
付け替え、水位を下げ、低地を
洪水から守った結果、このような
高度な土地利用が可能となった
釧路湿原
古来、日本の河川の多くは
このような人跡未踏の湿原
の様相を呈していた
世界と日本の降水量
日本は世界平均の約2倍の降水量
一人あたりでは世界平均の約1/5
一人あたりの貯水量
日本は諸外国に比べ少ない
中部圏は特に少ない
世界の水と日本
世界の水問題は、日本に無関係ではない
日本は水の輸入大国
„
„
大量の水を使ってつくられる農産物をはじめ、
工業製品、木材などの多くを世界中の国々から
輸入している(バーチャルウォーター)
その量は年間約50億m3の水を消費することに相当
Š 4,000万人の水使用量に匹敵
日本の経済や社会は、この目に見えない
大量の水の輸入によって成り立っている
世界の水問題②
洪水で多くの生命と財産が失われている
„
„
都市化が、洪水時の流出量を増大させている
氾濫の起こりやすい地域に多くの人が居住
温暖化が水の循環を変える
„
洪水や渇水による被害をより大きく頻発させる
世界の水問題③
水が汚れている−人間による水の使用−
„
„
淡水魚の20%の種は絶滅の危機
世界の湿地の半分は、20世紀中に破壊され、
生物多様性が著しく失われた
人間によって使用されない水
„
森林、湖沼、湿地、海岸の潟湖など、水生・陸地
生態系により無数の方法で利用される
都市化と水環境の悪化
都市化と水環境の悪化
経済高度成長→都市化→水環境の悪化
„
排水の増加−工場、家庭排水
Š 水質汚濁、排水路、どぶ川
„
都市用水の需要増大
Š 渇水、河川流量減少
Š 水資源開発による環境改変
„
不浸透面積の増大
Š 流域の保水機能低下→洪水流量増大、内水災害
Š ヒートアイランド現象
„
河川工事
Š 河川の単調化、生態系への悪影響
都市化による流域の保水・遊水機能の低下とは
開発が進む前
雨水の大半は地中に浸透したり(保水機能)
水田やため池に貯留され(遊水機能),
下流への流出は抑えられる.
開発が進んだ後
地表がコンクリートやアスファルトで覆われたり,
森林や水田やため池がなくなることにより,
下流への流出が増大し.
低地部での氾濫被害が増大する
都市の再生
利便性がもたらす快適を享受してきた
自然を消費し尽くした→自然再生→豊かさ
社会的厚生
(生活の満足度)
W0
W1
三崎規宏著 環境再生と
日本経済(岩波新書)より
0
A
B 環境許容 C 現在
限度
D
自然の利用
水辺の再生
水を利用し尽くしてきた都市
„
„
„
水を生態系から横取り
水を使う=水を汚す
水を見えなくした
水辺の与える効用の評価
„
„
人間には潤いと安らぎ,レジャー,文化
生物には生息場
都市河川の機能①
流水機能
„
治水機能
Š 洪水の排除,平水の排除
Š 地下水の供給・排除
Š 土砂の排除
Š 下水の排除
„
利水機能
Š 用水源(上水,工業用水,農業用水.消防水利)
Š 産業の場(水産業,染色工業,貯木場)
Š 水運(舟運)
都市河川の機能②
親水機能(流水面の存在を条件とする)
„
„
„
心理的満足
水辺レクレーション
景観
空間機能(流水面の存在を条件としない)
„
„
„
„
広場・運動場・放牧場
交通路
防災(延焼防止,避難路,避難場所)
通風,採光,騒音低下
自然生態機能
„
„
„
„
生物の生息
微気候調整
地下水涵養
水質浄化,大気浄化
減少する水辺
各都市の水辺面積の推移
水辺までの到達距離
水辺から
遠い
名古屋
名古屋古地図に描かれた水辺
名古屋の地形と水辺
隠れた水辺
名古屋市の
下水道網
堀川の水辺の意義は?
堀川ってどんな川
400年前
名古屋城築城のた
めに掘削した
人工の川
物資を運ぶため船が
多く行き来していた
名古屋城
熱田神宮
名古屋市中心部を
南北に貫く水辺空間
名古屋港
堀川の水質について
40年前汚濁のピーク
下水道普及,排水対策で急激な水質改善
60
50
BOD
D
O
B
40
30
20
10
0
63
65
67
69
71
73
75
77
年
79
81
83
85
87
89
堀川の水質(BOD)
環境基準(D類型) 8mg/L 以下
8
7
BOD(mg/l)
6
猿投橋
小塩橋
納屋橋
尾頭橋
港新橋
5
4
3
2
1
地下水導水
庄内川導水
0
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16
年
(年間平均値)
堀川の水質(DO)
環境基準(D類型) 2mg/L 以上
10
9
8
DO(mg/l)
7
猿投橋
小塩橋
納屋橋
尾頭橋
港新橋
6
5
4
3
2
1
地下水導水
庄内川導水
0
H4
H5
H6
H7
H8
H9
H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16
年
(年間平均値)
堀川の水はきれ
いになったのか?
しかし・・・
„
„
„
臭い、黒い
ごみが浮き、
生きものが少ない
水質計測方法
港新橋、小塩橋は毎月、その他の箇所は、2月に1回
測定箇所は表層のみ
しかし、 DOは1年間でこのような変化を示す(日変化も大きい)
20
18
16
DO (mg/l)
14
12
10
8
6
4
2
0
1
2
3
4
5
6
7
month
8
9
10
11
12
2003年の港新橋水質環境観測局のDOデータ
堀川の水質の前提条件
汚濁源
„
„
„
下水処理水−普及率98%、高度処理はまだ
下水処理水
合流式下水道→雨天時の未処理水越流
合流式下水道
面源負荷→未解明
堀川
„
„
„
„
乏しい良好な水源→ほとんどが下水処理水
乏しい良好な水源
河道の大部分が感潮域→汚濁の停滞と底層
河道の大部分が感潮域
の貧酸素化
名古屋港の水質→良くない水質の遡上
名古屋港の水質
ヘドロの堆積→酸素消費と汚濁湧出
ヘドロの堆積
雨天時の
未処理水負荷
流量とBODの
水源別割合
水源別流量割合
松重ポンプ所
16%
庄内川
2%
松重ポンプ所
4%
庄内川
1%
ポンプ所排水
11%
処理場高級処理水
30%
処理場簡易処理
3%
処理場ポンプ
4%
ポンプ所排水
5%
雨水吐越流
11%
工場系直接排水
8%
工場系直接排水
12%
処理場高級処理水
47%
処理場簡易処理
7%
処理場ポンプ
7%
雨水吐越流
32%
水源別負荷量割合
降雨量とCODの関係
港新橋水質自動観測所のデータとの比較
COD
降水量
堀川の河道縦断図
最深河床高
朔望平均満潮位
朔望平均干潮位
10
計画高水位
松重閘門
計画堤防高
8
計画河床高
6
住吉橋
巾下橋
猿投橋
納屋橋
新堀川合流点
標高(T.P. m)
4
2
0
-2
-4
-6
塩水遡上
-8
感潮域
-10
0
2000
4000
6000
8000
距離(m)
10000
12000
14000
16000
堀川の水は逆流する?
海では潮汐作用により1日2回 水面が2メートル近くも上下する
・上げ潮時には、水は上流へ向かって逆流する
堀川の潮汐流動調査
潮汐流動の観測
計測項目
„
„
巾下
橋
水深,流速,DO,pH
水温,塩分濃度,濁度
景雲
橋
納屋
橋
観測日時
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第10回
第11回
2003.12.23
2004.1.8
2004.1.22
2004.4.10
2004.5.19
2004.6.10
2004.8.2
2004.9.14
2004.10.28
2004.11.19
2004.11.26
0:00~24:00
6:00~18:00
0:00~18:00
8:00~20:00
8:00~20:00
8:00~20:00
0:00~24:00
0:00~24:00
7:00~19:00
9:00~17:00
9:00~17:00
納屋橋
大潮
岩井橋
大潮
景雲橋
大潮
納屋橋
大潮
納屋橋
大潮
納屋橋
小潮
納屋橋
大潮
岩井橋
大潮
尾頭橋 幅下橋大潮
河口∼幅下橋 大潮
河口∼幅下橋 小潮
3
0.3m /s
3
0.3m /s
3/s
0.3m
3/s
0.5m
3/s
1.0m
3/s
0.3m
3/s
0.3m
3/s
0.3m
3/s
0.3m
3/s
0.3m
3/s
0.3m
岩井
橋
尾頭
橋
計測方法
橋の上から電磁流速計と
多項目水質計を下ろし,
水面から0.5m間隔で
鉛直分布を測定した
電磁流速計
多項目水質計
観測風景
塩分・DO縦断分布
2004/11/19 小潮(満潮時)
塩分
新堀川合流点
DO
住吉橋
松重閘門
納屋橋
巾下橋
巾下橋
z (m)
塩分とDOの時間変化
景雲橋
納屋橋
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
8 6 4
10
12
14
16
0.0
納屋橋(9.1km) 2003/12/23 大潮
2
6
0.0
2
0.0
4
18
20
16
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20
22
24
time (hour)
岩井橋
塩分 psu
z (m)
尾頭橋
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0.0
3.5
3.0
0.0
0.0
3.5
3.0
4.5
2.5
3.5
4.0 3.0
6.05.0 3.5
0
2
4
4.0
3.0 4.5
4.0 5.0
4.0
2.0
6
8
10
12
14
time (hour)
DO mg/l
16
18
2.0
20
22
24
鉛直方向流速分布
4
上げ潮
下げ潮
3.5
3
z (m)
2.5
2
納屋橋上げ潮
納屋橋下げ潮
岩井橋上げ潮
岩井橋下げ潮
景雲橋上げ潮
景雲橋下げ潮
納屋橋上げ潮(増水)
納屋橋下げ潮(増水)
1.5
1
0.5
-40.0
-20.0
底層流速は上げ潮
時の方が速い
0
0.0
20.0
U (cm/s)
40.0
60.0
導水量増加により
底層流速が増大
潮汐流動のまとめ
塩水の遡上特性
„
„
大潮時には,巾下橋の上流まで塩水が遡上
塩水くさびの先端は河口から12∼13km地点にまで達する
全体として緩混合の鉛直混合形態であるが,塩水先端部は弱混
合状態となる
DOの分布特性
„
„
底層の塩水層はDO値が低く,これが潮汐に伴い遡上・流下を
繰り返している
小潮時は成層状態が継続し,下層部DOが低い
導水量増加の影響
„
導水量増加により,中流域では,塩水を下流へ押し下げる効果が認
められ,下層まで強い順流を示す
堆積ヘドロの層厚の計測結果
水深
cm
0.0
No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7
ヘドロ
No.8 No.9 No.10 No.11 No.12 No.13 No.14 No.15 No.16 No.17 No.18 No.19 No.20 No.21 No.22 No.23 No.24 No.25 No.26 No.27 No.28 No.29 No.30 No.31 No.32 No.33 No.34 No.35 No.36 No.37 No.38 No.39 No.40 No.41 No.42 No.43 No.44
50.0
城北橋
猿投橋
100.0
150.0
200.0
250.0
350.0
水深が増すとともにヘドロの堆積が多くなる傾向が見られ、特に景雲橋
以南においてヘドロの堆積が多くなっている様子がわかる。
天王崎橋
景雲橋
300.0
0
浚渫後
現 況 (魚 探 計 測 )
浚渫前
計画河床高
浚渫年度
-1
-2
-3
z (m)
-4
-5
-6
-7
-8
新堀川合流点
住吉橋
松重閘門 納屋橋
巾下橋
猿投橋
-9
-10
0
2000
4000
6000
8000
x (m )
10000
12000
14000
26
25
24
23
22
21
20
19
18
17
16
15
14
13
12
11
10
9
8
7
6
16000
浚渫年度
現河床高と浚渫河床高の比較 濁度
縦断分布
11‐19
小潮
(満潮時)
11‐26
大潮
(満潮から
下げ潮時)
ヘドロの強熱減量と河川形状
30
第一回採取
第二回採取
15
鷹匠橋
強熱減量値(%)
20
10
下流 上流
中 城 金 北 北 志
土 北 城 清 清 賀
戸 橋 橋 水 水 橋
上 橋 橋
橋
流 ・ ・
広 狭
名古屋港へ
岩 新 天 納 伝 景 小 幅 鷹 筋 筋
井 州 王 屋 馬 雲 塩 下 匠 違 違
橋 崎 崎 橋 橋 橋 橋 橋 橋 橋 橋
下 上
橋 橋
流 流
↓
0
↓
景雲橋 5
北清水橋
名古屋城
筋違橋
25
堀川の汚濁のメカニズム
負荷の
削減
汚濁の流入
分解・吸収
流下
導水
庄
内
川
微生物
水の汚れ
沈殿
水質観測の充実
現状と効果の目安
浄化方法
の開発
溶出
巻上
名
古
屋
港
酸素
遡上
塩水
ヘドロ
分解
砂・土
汚濁の流れ
の量的把握
堀川の
目標水質
魚の泳ぐ姿が
見える川
上流部の水辺で遊
べる川
中下流部の沿川で
くつろげる川
舟遊びができる川
名古屋市の施策
下水道の高度処理化−露橋処理場工事中
合流式下水道改善−雨水滞水池
導水
„
„
„
„
庄内川0.3m3/s、浅層地下水0.01m3/s
鍋屋上野浄水場作業用水の放流0.04m3/s
地下鉄湧水の利用0.01m3/s
木曽川からの導水に0.4m3/s(鍋屋上野浄水場から)
DO補給施設の設置、運用
ヘドロの除去、浚渫
河道内のゴミ収集設備の設置
堀川の水質の問題点
水質改善の頭打ち
„
„
„
下水道普及による水質の改善は一段落
流域からの負荷は変わらずか漸増
水質観測がおざなり
水域への汚濁負荷の蓄積
„
„
„
汚濁の収支の未解明
浄化技術の適用限界が不明
水質維持にはコストがかかる
流域住民の環境意識の希薄さ
„
„
河川流域の住民という意識がない
汚濁負荷を与えているという意識がない
市民参加の必要性
汚濁負荷の削減に不可欠
„
„
„
下水道の改善:施設整備+市民の税負担
生活排水負荷の削減:市民の環境行動
面源負荷の削減:除去・軽減施設+市民活動
水域の直接浄化への関与
„
„
浄化効果の目標達成度
Š 市民の感覚
浄化方法の効果・コストの提示,維持管理
Š 市民が選択,貢献できる浄化策
都市における水の循環
流域を越えた導水ー汚濁負荷量の増大
下水道網の発達ー地表水の減少
不浸透面積の増大ー洪水流出増大,温熱環境
の悪化
浸透面積の拡大
地表水の増大
地下水の活用
環境導水
汚濁負荷量の削減
堀川の水収支
水道用水はBOD75%値が1mg/L以下の木曽川から取水し、生活によりBOD年平均値で100
mg/L程度に汚し、下水道処理場でBOD年平均値10mg/L以下に処理し、河川に放流している。
導水の経緯①
木曽川導水事業の中止
地下鉄工事に伴う湧出水の活用
„
„
„
放流期間:平成10年9月24日∼平成13年8月24日
放流地点:堀川夫婦橋直上地点
放流量:最大0.3m3/s
庄内川からの暫定導水
„
平成13年7月より地下水導水量と同程度の0.3m3/sを
最大として導水が行われている
Š 庄内川枇杷島地点において5m3/sを超える範囲において
導水の経緯②
鍋屋上野浄水場作業用水の導水
„
0.04m3/s
浅層地下水の放流
„
0.02m3/s
木曽川の上水用水の導水(予定)
„
猿投橋下流へ0.4m3/s
浸透面積拡大の効果
洪水ピーク流量の減少
合流式下水道越流頻度の減少
„
河川への汚濁負荷減少
平常時流量の増大
温熱緩和効果
地下水の涵養
黒川の課題
導入水の水質(庄内川)
雨天時の下水未処理水の流出
より自然な河道へ
„
„
生物多様性
自浄作用促進
河川美化と水辺の利用
北清水親水広場の水質は何とかしたい
多自然川づくり
生態系が豊かな川→その他の環境面を満足
河岸,河床の多様性が必要
効果
„
„
生物が増える
自浄作用が促進される
問題点
„
„
出水時に抵抗となり水位を増大させる
出水により破壊されないか
直線化された河道の改善①
水制を用いた水はねによる蛇行を創出する
Type A
Type B
直線化された河道の改善②
石により早瀬を作る
直線化された河道の改善③
広くしすぎた河川を安価な水制を用いて狭くする
韓国の水環境事業(清渓川)
韓国ソウルで高速道路下に埋もれた河川を再生するプロジェクト
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