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深いお尻

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深いお尻
http://www.tmd.ac.jp/med/plas/plas-J.html
褥瘡
褥瘡とは
1度:皮膚の紅斑と硬結
褥瘡とは主に身体の骨が突出した部位に
2度:真皮におよぶ浅い潰
「きず」を生じたもので、昔から「床ずれ」
瘍
とも呼ばれ寝たきりの方によくみられます。
3度:皮下組織におよぶ潰瘍
原因
4度:筋を通過し骨突出部に達する深い潰瘍
長時間にわたって皮膚や皮下組織が自分の
比較的早期なものでは保存的に治癒します
体の重さで圧迫されてしまい、局所の血流が
が、進行したものでは筋肉や骨が露出し、な
遮断されて壊死してしまうことにあります。つ
かなか治らな
まり同じ姿勢でずっといると圧迫されて血液が
い傷となりま
巡らなくなって皮膚がダメになってしまうとい
す。しかし褥
うことです。通常、局所の圧迫継続時間が2時
瘡の重症度は
間を超えると褥瘡が発生するとされています。
深さだけで決
仰向けの姿勢で長時間過ごしていると背中
まるものでは
(肩甲骨)やお尻(仙骨)、踵などの骨突出
なく、
部に生じます。また不適切な体位変換では腰や
大きさ、感染
太もも(腸骨・大転子)にも多くみられます。
の有無、ポケ
脊髄損傷などの方で車椅子での生活時間が長
ット形成など
い場合には、座っている姿勢のときに当たる
の要素も関係
坐骨部に発生します。老人性精神障害、老衰、
します。その
脳血管障害、悪性腫瘍の終末期などに合併症
ため各項目に
としてよく見られますが、その他にもアルコー
よる重症度の点
ル中毒や薬物中毒など意識を喪失して自分自
数化の試みも行われています。
身で体位変換が不可能な場合にはできる可能
傷の部分にスポンジを置き、専用
の医療機器を用いて吸引します
性がありますので、決して高齢者に限ったもの
治療
ではありません。
一般的に1,2度までの浅い傷では、手術をす
分類
ることなく局所の圧迫を除去して外用剤で治
療します。しかしそれ以上の深い傷でも、原因
褥瘡は深さによって表現されます。これには
となっている病気が進行性な場合、全身の状
いくつかの分類がありますが、以下の4型に
態が良くなくて手術に耐えられない場合、ま
分けると分かりやすいでしょう。
た手術後に十分な介護が受けられず再発が容
易に予測される場合などにも保存的治療を選択
を中心として、皮膚科医師、看護師、栄養士、
します。
リハビリ療法士などによる褥瘡対策チームを作
保存的治療を行う場合には様々な外用薬剤お
よび創傷被覆材を使用します。これらの薬剤は
り、褥瘡発生予防、発生時の管理・評価、院内
スタッフへの教育などを行っています。
種類も多くまたそれぞれの薬効も異なり、各時
点での傷の状態に応じて最適なものを使い分け
ていく必要があります。形成外科医は創傷治療
のスペシャリストであり、これらの薬剤の使用
方法に習熟しています。
近年では、褥瘡などの難治性潰瘍に対して陰
手術前
圧閉鎖療法という方法が注目されています。こ
れは傷に常に陰圧をかけ続けることで創部の治
癒能力を促進させるものです。以前は様々な医
療材料を組み合わせることで持続吸引装置を作
成してきましたが、2010年4月より専用の医
療機器V.A.C.systemが我が国でも保険診療内
で使用可能となりました。当院でもこれを導入
し治療に活用しています。
3度以上の深さの褥瘡は患者さんの状態が許
手術後
§主な業績
せば外科的治療を行います。つまり手術によっ
て体の他の部分から組織を移動してきて傷をふ
*田中顕太郎, 岡崎 睦. partⅠ老年症候群 9褥瘡. 病棟
さぐという方法です(下図)。
レジデント、病棟医のための高齢患者診療マニュアル. メ
ディカルサイエンスインターナショナル. 2013, 69-78
現在までに仙骨部、大転子部、坐骨部などの
部位別に多くの手術方法が開発されています。
*秦 維郎. 褥瘡「2」. 医学書院 医学大辞典. 医学書院
当科ではこれらの手術手技に精通しております
2003; 1196
ので、患者さんそれぞれの状態を総合的に判断
Copyright 2010 dp't of Plast Reconstr Surg, TMDU
して、最適と思われる手術方法を選択します。
手術後も必要に応じてエアーフローティングベ
ッドなどの特殊な医療機器を使用し、万全の術
後管理を行っています。
保存的治療でも外科的治療でも、常に傷その
ものだけを診るのではなく、全身状態や療養環
境など大きな視点にたって治療を続けることが
大切です。そのため合併症の治療や栄養状態の
改善、日常ケアにも注意する必要があります。
また褥瘡は予防が大切です。例えば、2時間毎
に規則的な体位変換を行うことや、エアーマッ
トなどの適切な寝具を選択したりすることは重
要です。このためには職種を超えた医療従事者
間の連携が必要となります。当院では形成外科
記事・写真の無断転載を禁じます。
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