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東京都教育ビジョン (第3次・一部改定)

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東京都教育ビジョン (第3次・一部改定)
東京都教育ビジョン
(第3次・一部改定)
平 成 2 5 年 4 月
(平成28年4月 一部改定)
東 京 都 教 育 委 員 会
一部改定に当たって
東京都教育委員会は、平成 25 年4月に、これまでの教育改革の成果と課題、これからの
10 年間に予想される社会の変化等を踏まえ、東京都における教育振興基本計画として、
「東
京都教育ビジョン(第3次)」を策定し、同ビジョンで掲げた基本理念の実現に向けて、様々
な方々の協力を得ながら、東京の教育行政を推進してまいりました。
その後、平成 27 年 4 月に、「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正す
る法律」が施行され、地方公共団体の長が、教育委員会と相互の連携を図りつつ、より一
層民意を反映した教育行政を推進していくため、総合教育会議を設置・招集し、地域にお
ける教育等の根本的な方針となる「大綱」を策定することとなりました。
「東京都長期ビジョン」で掲げる「世界一の都市・東京」を実現し、20 年、30 年先の東
けん
京を夢や希望をもてる明るい都市にしていくには、それを支え、牽引する人材が必要であ
り、それが正に、今の小・中学生や高校生の世代に期待したいことです。こうした意味で
も、子供たちへの教育が東京の未来を創るといっても過言ではありません。
そこで、東京都では、知事が招集する総合教育会議における協議を経て、
「東京都長期ビ
ジョン」で掲げる 10 年後の東京で活躍する子供たち、さらには、その先の 2040 年代を見
据えてこれからの時代を担う子供たちを育成するため、平成 29 年度までに取り組むべき方
針として「東京都教育施策大綱」を策定しました。
東京都教育委員会では、この大綱の策定を受け、「東京都教育ビジョン(第3次)」の一
部改定に取り組み、今後の東京、そして日本の発展を担う人材を育成していくべく、新た
な時代を生きる子供たちに必要な教育施策の展開を図っていくこととしました。
今後、東京都教育委員会は、一部改定後の「東京都教育ビジョン(第3次・一部改定)」
に基づき、国、区市町村教育委員会、学校及び保護者や地域を中心とする全ての都民の協
力を得ながら、東京の教育の充実を図っていきます。都民の皆様の一層の御支援、御協力
をお願いいたします。
平成 28 年4月
東 京 都 教 育 委 員 会
目
第1章
基本的な考え方
次
…………………………………………………………………
…………………
2
………………………………………………
6
……………………………………………
6
………………………………………………………
7
………………………………………………
9
…………………………………………
9
1
東京都教育ビジョン(第3次)の策定及び一部改定の経緯
2
社会の変化と教育が果たす役割
(1)今後、予想される社会の変化
(2)教育が果たす役割
3
東京都が目指すこれからの教育
(1)第3次・一部改定の基本理念
………………………………
10
………………………………………………
11
(4)第3次・一部改定の計画期間 ………………………………………………
11
(2)基本理念を実現するための五つの視点
(3)第3次・一部改定の体系
第2章
1
取組の方向と主要施策
…………………………………………………
…………………… 16
取組の方向1 個々の子供に応じたきめ細かい教育の充実
……………………………
17
…………………………………………………
19
主要施策1 基礎・基本の定着と学ぶ意欲の向上
主要施策2 理数教育の推進
……………………………………… 20
取組の方向2 世界で活躍できる人材の育成
………………… 21
主要施策3 「使える英語」を習得させる実践的教育の推進
…………………………
22
……………………………
23
主要施策4 豊かな国際感覚を醸成する取組の推進
かん
主要施策5 日本人としての自覚と誇りの涵養
…………………………………… 24
取組の方向3 社会的自立を促す教育の推進
主要施策6 人権教育の推進
…………………………………………………
25
……………………… 26
主要施策7 道徳心や社会性を身に付ける教育の推進
………………………… 27
主要施策8 社会的・職業的自立を図る教育の推進
…………………………………………… 29
主要施策9 不登校・中途退学対策
主要施策1 0 子供たち一人一人に応じた手厚い支援体制の構築
…………… 30
………………………………… 31
取組の方向4 子供たちの健全な心を育む取組
……………………
32
……………………………
34
主要施策1 1 いじめ、暴力行為、自殺等防止対策の強化
主要施策1 2 SNS 等の適正な使い方の啓発強化
取組の方向5 体を鍛え健康に生活する力を培う
……………………………… 35
………………………………………
36
…………………………………………………
37
主要施策1 3 体力向上を図る取組の推進
主要施策1 4 健康づくりの推進
15
取組の方向6 オリンピック・パラリンピック教育の推進
主要施策1 5 オリンピック・パラリンピック教育の推進
取組の方向7 教員の資質・能力を高める
…………………… 38
……………………
39
……………………………………… 41
主要施策1 6 優秀な教員志望者の養成と確保
…………………………………
42
主要施策1 7 現職教員の資質・能力の向上
…………………………………
43
主要施策1 8 優秀な管理職等の確保と育成 …………………………………………
45
取組の方向8 質の高い教育環境を整える
…………………………………………
主要施策1 9 都立高校改革の推進
……………………………………………… 47
主要施策2 0 特別支援教育の推進
……………………………………………… 48
主要施策2 1 学校運営力の向上
主要施策2 2 学校の教育環境整備
取組の方向9 家庭の教育力向上を図る
………………………………………………… 49
……………………………………………… 50
…………………………………………… 51
主要施策2 3 家庭教育を担う保護者への支援体制の充実
…………………… 52
主要施策2 4 学校と家庭が一体となった教育活動の充実
…………………… 53
取組の方向10 地域・社会の教育力向上を図る
………………………………… 54
主要施策2 5 地域等の外部人材を活用した教育の推進
主要施策2 6 学校と地域社会が連携した教育活動の充実
第3章
46
参考資料
………………………… 55
…………………… 56
…………………………………………………………………… 57
「東京都教育ビジョン(第3次)一部改定(案)骨子に対するパブリックコメントの結果について」
第1章
基本的な考え方
-1-
1 東京都教育ビジョン(第3次)の策定及び一部改定の経緯
○ 東京都教育委員会は、平成 16 年4月に「東京都教育ビジョン」
(※1)を、平成 20 年5
月に「東京都教育ビジョン(第2次)
」
(※2)を策定し、着実に教育改革を推進してきた。
○ その後、東京都は、平成 23 年 12 月、新たな長期ビジョンとして平成 32(2020)年の東
京が目指す姿と日本を牽引していく都政運営の道筋等を示した「2020 年の東京」を策定した。
けん
○ 一方、国においては、平成 18 年に、約 60 年ぶりに教育基本法が改正され、新しい時代の
教育の基本理念が明示され、この改正を踏まえ、平成 20 年3月、平成 21 年3月には、
「生き
る力」を育むことを基本的な考え方として、学習指導要領の改訂が行われた。
○ こうした中、東京都教育委員会は、平成 25 年4月に、東京都の教育振興基本計画として、
平成 29 年度までの5年間を中心に、今後取り組むべき基本的な方向性と主要施策を示す「東
京都教育ビジョン(第3次)
」
(以下「第3次ビジョン」という。
)を策定した。
○ 第3次ビジョン策定後、平成 25 年9月に 2020 年オリンピック・パラリンピック競技大会
(以下「東京 2020 大会」という。
)を東京で開催されることが決定した。東京都は、平成 26
年 12 月に東京 2020 大会成功に向けた取組や大会後の東京の将来を見据えたグランドデザイ
ンを描いた「東京都長期ビジョン」を策定し、
「世界一の都市・東京」の創造を目指した都政
の大方針を明らかにした。
○ また、国において、平成 27 年4月の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部
を改正する法律」の施行により、従前の教育委員長と教育長を一本化した新「教育長」の設
置、
「総合教育会議」の設置や教育に関する「大綱」を首長が策定すること等を内容とする、
教育委員会制度の改正が行われた。さらに、新しい時代にふさわしい教育の在り方について
も議論が進められており、教育課程における生きる力の育成の一層の具体化・浸透を図る学
習指導要領改訂の検討や、大学入試改革・高大接続改革の実現に向けた具体的方策の検討等
も進められている。
○ 東京都では、こうした状況の中で、総合教育会議における協議を経て、知事が平成 27 年
11 月に「東京都教育施策大綱」を策定した。これは、
「東京都長期ビジョン」で掲げる 10 年
後の東京で活躍する子供たち、さらには、その先の 2040 年代を支える子供たちを育成するた
め、特に重要で優先的に取り組むべき七つの重点事項について、平成 29 年度までの3年間で
取り組むべき根本方針を示したものである。具体的には、
「Ⅰ 個々の子供に応じたきめ細か
い教育の充実」
、
「Ⅱ 社会的自立を促す教育の推進」
、
「Ⅲ 世界で活躍できる人材の育成」
、
「Ⅳ
オリンピック・パラリンピック教育の推進」
、
「Ⅴ 不登校・中途退学対策」
、
「Ⅵ 子供たちの
健全な心を育む取組」
、
「Ⅶ 特別支援教育の推進」を掲げ、それらに係る今後の取組を提示し
ている。
(※1)
「東京都教育ビジョン」では、乳幼児期、学童期、思春期、青年期の年齢段階別に、東京都における今後の取組を12の方向とそれに基
づく33の提言としてまとめている。
(※2)
「東京都教育ビジョン(第2次)
」では、東京都が目指すこれからの教育の柱として、
「社会全体で子供の教育に取り組む」ことと「生き
る力をはぐくむ教育を推進する」ことを挙げ、取組の方向と主要施策をまとめた。
-2-
○ 「東京都教育施策大綱」の策定を受け、東京都教育委員会は、第3次ビジョンの一部改定
に取り組むこととした。一部改定後の第3次ビジョン(以下「第3次・一部改定」という。
)
は、
「東京都教育施策大綱」
、東京 2020 大会の開催、学習指導要領改訂に向けた国の教育改革
の動向等を踏まえ、平成 30 年度までの3年間を中心に、今後、中・長期的に取り組むべき基
本的な方向性と主要施策を示すものである。
○ 主な改定の内容は、次のとおりである。
なお、第3次ビジョンで掲げた基本理念や、基本理念を実現するための五つの視点は、第3
次ビジョンを策定した平成 25 年4月以後も変わらない理念や視点であると考え、変更しない
こととした。
(1)
「知」
「徳」
「体」
「学校」
「家庭」
「地域・社会」の六つの柱に、
「オリンピック・パラリ
ンピック教育」を柱の一つに加え、七つの柱の構成とした。
(2)
「取組の方向」
「主要施策」等を、
「東京都教育施策大綱」の七つの重点事項を基本とし
て再構成し、
「施策の内容」等の整理を行った。
(3)計画期間を、次期「東京都教育施策大綱」の策定時期が平成 30 年度であることから、
平成 28 年度から 30 年度までとした。
-3-
東京都教育ビジョン(第3次)の体系 (旧)
取組の方向
柱
1 学びの基礎を徹底する
知
2
個々の能力を最大限に伸ば
す
主要施策
1 基礎・基本の定着と学ぶ意欲の向上
2
思考力・判断力・表現力等を育成し、時代の変化
や社会の要請に応える教育の推進
3 国際社会で活躍する日本人の育成
4 人権教育の推進
3
豊かな人間性を培い、規範
意識を高める
4
社会の変化に対応できる力 6 社会の変化に自律的に対応できる力の育成
を高める
7 社会的・職業的自立を図る教育の推進
徳
5 体を鍛える
体
6
健康・安全に生活する力を
培う
5 道徳心や社会性を身に付ける教育の推進
8 体力向上を図る取組の推進
9 競技力向上を図る取組の推進
10 健康づくりの推進
11 安全教育の推進
12 優秀な教員志望者の養成と確保
7 教員の資質・能力を高める
13 現職教員の資質・能力の向上
14 優秀な管理職等の確保と育成
15 都立高校改革推進計画の着実な推進
学校
16 東京都特別支援教育推進計画の着実な推進
8 質の高い教育環境を整える
17 子供たち一人一人に応じた手厚い支援体制の構築
18 学校の組織力の向上
19 学校の教育環境整備
家庭
9 家庭の教育力向上を図る
20 家庭教育を担う保護者への支援体制の充実
21 仕事と生活の調和による保護者の教育参加の推進
地域・
地域・社会の教育力向上を 22 地域等の外部人材を活用した教育の推進
10
社会
図る
23 地域における多様な活動の充実
-4-
東京都教育ビジョン(第3次・一部改定)の体系 (新)
※ (重点○)は、「東京都教育施策大綱」に示した七つの重点事項(重点Ⅰ~Ⅶ)
取組の方向
柱
1
個々の子供に応じたきめ細
かい教育の充実(重点Ⅰ)
知
主要施策
1 基礎・基本の定着と学ぶ意欲の向上
2 理数教育の推進
3 「使える英語」を習得させる実践的教育の推進
世界で活躍できる人材の育
2
成(重点Ⅲ)
4 豊かな国際感覚を醸成する取組の推進
かん
5 日本人としての自覚と誇りの涵養
6 人権教育の推進
7 道徳心や社会性を身に付ける教育の推進
社会的自立を促す教育の推
3
進(重点Ⅱ)
徳
8 社会的・職業的自立を図る教育の推進
9 不登校・中途退学対策(重点Ⅴ)
10 子供たち一人一人に応じた手厚い支援体制の構築
4
子供たちの健全な心を育む 11 いじめ、暴力行為、自殺等防止対策の強化
取組(重点Ⅵ)
12 SNS等の適正な使い方の啓発強化
体
5
体を鍛え、健康に生活する
力を培う
オリンピッ
ク・パラリン
ピック教育
6
オリンピック・パラリン
15 オリンピック・パラリンピック教育の推進
ピック教育の推進(重点Ⅳ)
13 体力向上を図る取組の推進
14 健康づくりの推進
16 優秀な教員志望者の養成と確保
7 教員の資質・能力を高める
17 現職教員の資質・能力の向上
18 優秀な管理職等の確保と育成
学校
19 都立高校改革の推進
8 質の高い教育環境を整える
20 特別支援教育の推進(重点Ⅶ)
21 学校運営力の向上
22 学校の教育環境整備
家庭
9 家庭の教育力向上を図る
23 家庭教育を担う保護者への支援体制の充実
24 学校と家庭が一体となった教育活動の充実
地域・
地域・社会の教育力向上を 25 地域等の外部人材を活用した教育の推進
10
社会
図る
26 学校と地域社会が連携した教育活動の充実
-5-
2 社会の変化と教育が果たす役割
(1)今後、予想される社会の変化
○ 東京都の人口は、今後も当分の間増加を続けるが、徐々に増加幅は狭まっていくと予想さ
れる。平成 32 年頃には、1,336 万人程度に達するが、これをピークに減少に転ずると推測さ
れており、東京も人口減少社会へと突入する。
我が国は、世界に類を見ないスピードで超高齢社会へ突入している。東京都の年少人口(0
~14 歳人口)は、既に老年人口を下回っており、平成 37 年には、東京に住む4人に1人が
高齢者となると見込まれている。さらに、東京都の生産年齢人口(15~64 歳人口)も、既に
減少に転じており、当分の間は 800 万人を超える水準を維持する見込みであるものの長期的
に減少していく見通しである。
○ 東京都の教育人口等推計では、公立小学校児童数は、全都で平成 25 年度まで減少し、約
55 万 4 千人となるが、その後増加に転じ、平成 31 年度には、約 57 万 1 千人となる見込みで
ある。また、公立中学校生徒数は、全都では平成 25 年度まで増加を続け、約 23 万 6 千人と
なるが、その後、減少に転じ、平成 31 年度には約 22 万 7 千人となる見込みである。
○ 我が国の企業を取り巻く環境においては、経済のグローバル化やサービス産業化、情報通
信技術(ICT)の進展といった経済・産業構造の変化が進んでいる。
近年、中国に代表される新興国が台頭すると同時に、新興国及び途上国を巻き込んだ自由
貿易協定の拡大や、世界的な知識経済化が進み、各国間の競争と連携が活発化している。ま
た、多くの先進国では潜在成長率が時の経過とともに低下しており、その反転上昇のために
はイノベーションを通じた生産性の向上が鍵と考えられる。
○ グローバル化の進展等により企業間競争は一層厳しくなり、企業はコスト縮減の努力を行
っている。このため、終身雇用ではなく、不安定な就労形態を余儀なくされている若年者は
依然として多く、フリーターの数も増加している。我が国の将来を担う若者の資質・能力の
向上を図るとともに、その意欲や能力を十分に発揮でき、安心・納得して働ける環境づくり
が引き続き求められる。
○ ICTはより一層社会に深く浸透し、国民生活や企業活動を支える社会的基盤となり、誰
もがいつでも簡単にICTを活用できるようになり、世代や地域を越え、人と人とを結び付
け、また、個人の身近な不安や問題を解決するなど、実社会にますますなくてはならないも
のとなる。しかし一方で、技術の進展に伴い、有害情報の氾濫、個人情報の漏えい、ネット
上の悪徳商法、ネット依存症等といったICTの「影」の部分への対応がより一層求められ
る。
-6-
○ 世界的な環境危機が一層深刻化し、持続可能な社会システムの構築が急務となっている。
環境問題の解決には、単に制度を整えるのみならず、一人一人が環境についての問題意識を
もち、自らのライフスタイルを見直すなど、積極的に行動することが不可欠である。このた
め、持続可能な社会システムの構築においても、人材育成が大きな鍵となる。
○ 平成 23 年3月 11 日の東日本大震災は、各地に甚大な被害をもたらした。
東日本大震災の経験により、
「自助」
「共助」
「公助」の重要性が再認識され、それを実践
する意識と力を、全ての人が身に付けることが求められている。
(2)教育が果たす役割
○ 我が国では、明治期における近代学校教育制度の成立以来、国民の教育水準の向上に国を
挙げて取り組み、国家の近代化を大きく加速させてきた。戦後においても、国民の知的水準
の高さが、高度経済成長の大きな原動力となり、今日の豊かな社会の実現につながった。こ
うした歴史が示すように、教育は、いつの時代においても国家・社会の発展の礎となるもの
である。先に述べた今後 10 年間の社会の変化を見据えたとき、これからの時代を切り拓き、
次代を担う力を持った子供たちを育成することは、資源に恵まれない我が国にとって、何よ
りも重要なことである。
ひら
○ 教育基本法第1条では、教育の目的を「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国
家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われ
なければならない」と規定している。教育により、個人の能力を伸長し、自立した人間を育
てるとともに、国家や社会の形成者たる国民を育成しなければならない。このことはいかに
時代が変化しても変わらないものである。国家の発展に努めるとともに、世界の平和と人類
の幸福に貢献しようとする人間を育成していくことは、教育の重要な使命である。また、先
人たちの努力と英知によって築かれ、継承されてきた我が国の伝統や文化に対する理解を深
め、それらを育んできた国や郷土を愛する態度を養い、後の世代に受け継ぎ、より豊かなも
のへと発展させていくことも教育の重要な使命である。
○ また、教育基本法第2条には、教育の目標として次の五項目が規定されている。
一 幅広い知識と教養を身に付け、真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、
健やかな身体を養うこと。
二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うととも
に、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。
三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体
的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。
四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。
五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、
国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。
-7-
○ 東京都教育委員会は、時代の変化に対応し、日本の未来を担う人間を育成する教育が重要
であるとの認識に立ち、教育目標において下記のように目指す人間像を示している。この教
育目標は、教育が普遍的な使命を果たすとともに、新しい時代の大きな変化の潮流を踏まえ
た人間形成を行うことを理念としている。
○ 東京都教育委員会は、教育基本法の基本理念の実現、東京都教育委員会の教育目標の達成
を目指し、次代を担う子供たちの教育に取り組んでいく。
【東京都教育委員会の教育目標】
教育は、常に、普遍的かつ個性的な文化の創造と豊かな社会の実現を目指し、平和的な国
家及び社会の形成者として自主的精神にみちた健全な人間の育成と、わが国の歴史や文化を
尊重し国際社会に生きる日本人の育成とを期して、行われなければならない。
同時に、教育は、社会の変化に対応して絶えずそのあり方を見直していかなければならな
いものであり、経済・社会のグロ-バル化、情報技術革命、地球環境問題、少子高齢化など、
時代の変化に主体的に対応し、日本の未来を担う人間を育成する教育が、重要になっている。
東京都教育委員会は、このような考え方に立って、以下の「教育目標」に基づき、区市町
村教育委員会と連携して、積極的に教育行政を推進していく。
東京都教育委員会は、子供たちが、知性、感性、道徳心や体力をはぐくみ、人間性豊
かに成長することを願い、
○ 互いの人格を尊重し、思いやりと規範意識のある人間
○ 社会の一員として、社会に貢献しようとする人間
○ 自ら学び考え行動する、個性と創造力豊かな人間
の育成に向けた教育を重視する。
また、学校教育及び社会教育を充実し、だれもが生涯を通じ、あらゆる場で学び、支
え合うことができる社会の実現を図る。
そして、教育は、家庭、学校及び地域のそれぞれが責任を果たし、連携して行われな
ければならないものであるとの認識に立って、すべての都民が教育に参加することを目
指していく。
平成 13 年 1 月 11 日東京都教育委員会決定
-8-
3 東京都が目指すこれからの教育
(1)第3次・一部改定の基本理念
<基本理念>
社会全体で子供の「知」
「徳」
「体」を育み、グローバル化の進展など変化の激しい時代にお
ける、自ら学び考え行動する力や社会の発展に貢献する力を培う。
○ 平成 18 年に改正された教育基本法は、①知・徳・体の調和がとれ、生涯にわたって自己実現
を目指す自立した人間の育成、②公共の精神を尊び、国家・社会の形成に主体的に参画する国
民の育成、③我が国の伝統と文化を基盤として国際社会を生きる日本人の育成を基本理念とし
ている。この基本理念を踏まえて改訂された現行学習指導要領は、平成 25 年度から全校種にお
いて実施となっている。
○ また、東京都教育委員会は、子供たちの知性、感性、道徳心や体力を育み、思いやりと規範
意識のある人間、社会に貢献しようとする人間、自ら学び考え行動する人間を育成することを
目指し、その実現のために、全ての都民が教育に参加することを教育目標に掲げている。
○ 平成 23 年に東京都が策定した長期ビジョンである「2020 年の東京」は、東京の教育政策の
基本的方向性として、
「子供の知・徳・体をバランスよく育み、家庭・学校・地域・社会が連携
して支えることで、子供が自立する力を培う」ことを掲げている。
○ また、
平成 26 年に東京都が策定した都政の大方針を明らかにした
「東京都長期ビジョン」
は、
10 年後の東京では、
「若者は国際感覚にあふれている」
、
「学力や体力向上に向けた取組や道徳
教育、キャリア教育の充実により、若者の成長の基礎となる力が育まれている」
、
「高い道徳性
ひら
と社会性を備え、自らの力で未来を切り拓くことができる若者が東京を支える人材として活躍
し始めている」と、東京の子供たちが成長した姿を描いている。
○ 全ての子供たちが、社会の中で自立して生きていくためには、確かな学力や豊かな人間性、
たくましく生きるための健康や体力を身に付けていることが必要になる。また、グローバル化
の進展など、変化の激しいこれからの時代を生き抜くためには、基礎的・基本的な知識・技能
を活用し、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問
題を解決する資質や能力が求められる。さらに、社会の一員として我が国や社会を発展させて
いくためには、公共の精神をもち、社会に主体的に参画し、よりよい国づくり、社会づくりに
主体的に取り組む力を身に付けることが求められる。
○ これらを踏まえ、学校、家庭、地域・社会が全体で、子供の「知」
「徳」
「体」を育み、グロ
ーバル化の進展など変化の激しい時代における、自ら学び考え行動する力や社会の発展に貢献
する力を培うことを、第3次・一部改定の基本理念とする。
-9-
(2)基本理念を実現するための五つの視点
○ 基本理念を実現するため、次の五つの視点を重視して教育施策を展開する。
①
②
③
④
⑤
<基本理念を実現するための五つの視点>
一人一人の個性や能力に着目し、最大限に伸ばすとともに、自己肯定感を高める。
「知」
「徳」
「体」の調和のとれた生きる基盤を培う。
変化の激しい社会を生き抜く思考力・判断力・表現力や創造力等を育てる。
社会の一員としての自覚と行動力、社会の発展に貢献しようとする意欲を高める。
学校、家庭、地域・社会が相互に連携・協力して子供を育てる。
①
一人一人の個性や能力に着目し、最大限に伸ばすとともに、自己肯定感を高める。
全ての子供たち一人一人が掛け替えのない存在である。その個性や能力は、子供一人一人
によって異なるものである。子供の教育に関わる者は、子供一人一人に目を向け、個々が持
つ多様な個性や能力を十分に把握した上で、個々に応じた指導を、心身の発達段階を踏まえ
て系統的、組織的に行うことが大切である。このような指導を通して、一人一人の個性や能
力を引き出し、最大限に伸ばしていく。その際には、自分の良さを肯定的に認める自己肯定
感を高めることが重要である。自己肯定感を高めることは、自らの個性や能力を更に伸ばそ
うとする意欲や態度につながるものである。
② 「知」
「徳」
「体」の調和のとれた生きる基盤を培う。
近年急速に進行する知識基盤社会化やグローバル化は、アイディアなど知識そのものや人
材をめぐる国際競争を加速させる一方で、異なる文化や文明との共存や国際協力の必要性を
増大させている。このような状況において、
「確かな学力」
、
「豊かな心」
、
「健やかな体」を調
和よく育むことが求められている。これらの資質や能力などは、これからの社会を自立的に
生きる基盤である。子供一人一人の「知」
「徳」
「体」の状況や課題を十分に把握し、これら
を調和よく育むよう個に応じた丁寧な指導を行う。
③ 変化の激しい社会を生き抜く思考力・判断力・表現力や創造力等を育てる。
これからの社会を生きていくために必要なことは、知識・技能の習得はもとより、習得し
た知識・技能を活用し、課題を発見する力や、知識・技能を活用して課題を解決するために
必要な思考力・判断力・表現力、新たな価値を生み出す創造力等を身に付けることである。
このような力は、講義形式の指導のみで身に付くものではない。読書活動や書くこと、論理
的に説明したり討論したりするなどの言語能力の向上を図る取組や、学んだことを実際の生
活や課題解決の場面に生かす体験的な活動などを積極的に導入することが必要である。これ
らの教育活動を重視し、子供の思考力・判断力・表現力や創造力等を育てる。
④ 社会の一員としての自覚と行動力、社会の発展に貢献しようとする意欲を高める。
これまでの我が国では、国や社会は誰かがつくってくれるものとの意識が強かった。これ
からの我が国や社会の発展のためには、一人一人が社会の一員としての自覚をもち、社会づ
くりの主体として、公共のために積極的に行動することが求められる。また、国際社会の構
成員としての自覚をもち、世界を舞台に活躍し、信頼され、世界に貢献できる人材を育成す
ることも重要である。実社会とのつながりを自ら体験できるボランティア活動や、我が国や
-10-
他国の伝統・文化に触れる活動、世界で活躍しようとするチャレンジ精神を育むことなどを
通して、社会の一員としての自覚と行動力、社会の発展に貢献しようとする意欲を高める。
⑤ 学校、家庭、地域・社会が相互に連携・協力して子供を育てる。
学校において、上記①から④までを踏まえた教育活動を実践するのは教員である。しかし、
子供の教育は、学校だけで完結するものではない。保護者は子供の教育について第一義的責
任を有するものであり、子供の現状・課題について十分認識し、必要な家庭教育を行わなけ
ればならない。また、地域・社会は、次代を担う子供の育成が大人の役割であることを認識
するとともに、生涯学習の理念も踏まえ、自ら学んだ知識を子供の教育に生かすなど、自ら
が行い得る取組を積極的に行わなければならない。このことを踏まえ、学校、家庭、地域・
社会がそれぞれの役割と責任を自覚し、相互に連携・協力して子供を育てる。
(3)第3次・一部改定の体系
○ 第3次・一部改定では、
「基本理念」及び「基本理念を実現するための五つの視点」を踏
まえ、別表のように「知」
「徳」
「体」
「オリンピック・パラリンピック教育」
「学校」
「家庭」
「地域・社会」を柱として施策を体系化した。この体系に基づく各施策を推進することによ
り、教育基本法の基本理念の実現、東京都教育委員会の教育目標の達成を目指す。
第3次・一部改定の概念図
家 庭
地域・社会
知
徳
体
オリンピック・
パラリンピック教育
学 校
(4)第3次・一部改定の計画期間
○ 平成 28 年度から 30 年度までとする。
-11-
※
柱
重点○
は、「東京都教育施策大綱」に示した七つの重点事項(重点Ⅰ~Ⅶ)
取組の方向
1
主要施策
個々の子供に応じた決め細かい教育の充実
重点Ⅰ
知
2
1 基礎・基本の定着と学ぶ意欲の向上
2 理数教育の推進
世界で活躍できる人材の育成
3 「使える英語」を習得させる実践的教育の推進
重点Ⅲ
4 豊かな国際感覚を醸成する取組の推進
5 日本人としての自覚と誇りの涵養
3
社会的自立を促す教育の推進
6 人権教育の推進
重点Ⅱ
7 道徳心や社会性を身に付ける教育の推進
8 社会的・職業的自立を図る教育の推進
9 不登校・中途退学対策
徳
重点Ⅴ
10 子供たち一人一人に応じた手厚い支援体制の構築
4
子供たちの健全な心を育む取組
11 いじめ、暴力行為、自殺等防止対策の強化
重点Ⅵ
5
12 SNS 等の適正な使い方の啓発強化
体を鍛え健康に生活する力を培う
13 体力向上を図る取組の推進
体
14 健康づくりの推進
-12-
柱
取組の方向
オリンピック・
パラリンピック教育
6
主要施策
オリンピック・パラリンピック教育の推進
15 オリンピック・パラリンピック教育の推進
重点Ⅳ
7
教員の資質・能力を高める
16 優秀な教員志望者の養成と確保
17 現職教員の資質・能力の向上
18 優秀な管理職等の確保と育成
学
校
8
質の高い教育環境を整える
19 都立高校改革の推進
20 特別支援教育の推進
重点Ⅶ
21 学校運営力の向上
22 学校の教育環境整備
家
9
家庭の教育力向上を図る
23 家庭教育を担う保護者への支援体制の充実
庭
24 学校と家庭が一体となった教育活動の充実
地域・社会
10
地域・社会の教育力向上を図る
25 地域等の外部人材を活用した教育の推進
26 学校と地域社会が連携した教育活動の充実
-13-
第2章
取組の方向と主要施策
-15-
取組の方向1 個々の子供に応じたきめ細かい教育の充実
現 状 と 課 題
全国学力調査における正答数の分布(中学校・数学 B)
東京都教育委員会が実施した「児
(%)
童・生徒の学力向上を図るための調査」
東京(公立)
上位県(公立)
全国(公立)
12
などの結果からみると、小・中学生と
9
も基礎的・基本的な知識等については
6
おおむね定着しているといえる。しか
3
し、思考力、判断力や表現力に課題が
見られるほか、学力上位県と比較して
0
0
1
2
3
4
下位層の割合が多いなど、児童・生徒
5
6
7
8
9
10
11
12
13
15 (問)
14
家庭学習の状況
一人一人の習熟度には依然として差が
100%
ある。また、家庭で計画を立てて勉強
90%
をしている、あるいは授業の復習をし
70%
ている児童・生徒の割合が上位県より
50%
80%
60%
40%
30%
も低く、家庭における学習への取組の
20%
10%
差が大きい状況である。
0%
東京都
全ての子供たちに基礎・基本を確実
上位県
東京都
小学校
上位県
東京都
中学校
家庭で計画を立てて勉強をしていま すか
に習得させるためには、学校における
まったくしていない
授業の工夫・改善に加えて、放課後や
あまりしていない
上位県
東京都
小学校
上位県
中学校
家庭で授業の復習をしていますか
どちらかといえば、している
している
「全国学力・学習状況調査」平成 27 年(文部科学省)
家庭など授業以外の場における学習支
数学に対する意識(中学校2年生)
援の充実も重要である。子供たちの将
平成23年
数学の勉強が好きだ
将来自分が望む仕事に
つくために、数学でよい
成績をとる必要がある
数学を使うことが含まれる
職業につきたい
左右されないようにするためには、基
日本
礎学力の習得が不可欠である。このこ
国際平均
39%
66%
62%
83%
18%
52%
来がその生まれ育った家庭の事情等に
理科に対する意識(中学校2年生)
とは、いわゆる「貧困の連鎖」を防止
する上で特に重要であるとともに、学
力のみにとどまらない教育政策上の大
きな課題でもある。
平成23年
理科の勉強が好きだ
将来自分が望む仕事に
つくために、理科でよい
成績をとる必要がある
理科を使うことが含まれる
職業につきたい
日本
53%
76%
47%
70%
20%
56%
国際平均
また、これからの時代を生き抜いて
「IEA 国際数学・理科教育動向調査」平成 24 年(文部科学省)
いくためには、知識の習得にとどまらず、
知識を活用して論理的に考え、課題の発見や解決につなげることが求められており、思考力、判断
力、表現力を育成していくことが必要である。
さらに、平成 23 年に国際教育到達度評価学会(IEA)が実施した「国際数学・理科教育動向調査」
における、中学校第2学年を対象にした数学・理科に対する意識調査では、数学や理科の勉強が「好
きだ」と回答した我が国の生徒の割合は、国際平均と比べて低い結果となっている。また、「将来
自分が望む仕事に就くために、数学や理科でよい成績をとる必要がある」
「数学や理科を使うこと
が含まれる職業に就きたい」と考える我が国の生徒の割合も、国際平均を下回っている。理科や数
学に対する子供たちの興味・関心を高め、学習意欲へとつなげ、科学技術立国日本を支える人材を
育成していくことが必要である。
-16-
主要施策
1
基礎・基本の定着と学ぶ意欲の向上
【施策の必要性】
児童・生徒一人一人に、基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させるためには、自らの学
習上の課題を正確に把握させ、目標を立てさせるとともに、学習習慣を身に付けさせ、主体的に
学習できる力を培うことが必要である。そのためには、教員が児童・生徒一人一人の学習におけ
る習熟の程度と課題を把握するとともに、個に応じた指導方法や習熟度別指導に応じた教材を開
発していくことが重要である。
また、グローバル化が進展している今、多様な相手と臆せず積極的にコミュニケーションを図
ろうとする力が求められている。その基盤となるのは、言語に関する能力であり、児童・生徒の
基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重視するとともに、言語環境を整え、言
語活動を充実する必要がある。
これらに加えて、これからの変化の激しい時代を生き抜く児童・生徒には、知識・技能の習得
のみならず、他者と協力・協働しながら課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力及
び主体的に学習に取り組む態度を育む必要もある。
児童・生徒にこうした資質・能力を育成していくためには、教員には、アクティブ・ラーニン
グの視点を生かして深い学び、対話的な学び、主体的な学びが実現できるよう授業改善に取り組
み、質の高い授業を展開していくことが求められている。
さらに、こうした授業は、
「カリキュラム・マネジメント」
(教科横断的な視点を踏まえて教育
課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立するとともに、教育
活動に必要な人的・物的資源等を学校外部からも取り入れるなどして効果的に組み合わせるこ
と。)を通して、学校全体の取組として、子供たちの質の高い深い学びを引き出していくことも
重要となる。
【施策の内容】
○
小学校第5学年及び中学校第2学年全員を対象とする、都独自の学力調査「児童・生徒の学
力向上を図るための調査」を実施し、全都的な児童・生徒の学力の定着状況を把握するととも
に、調査の分析結果に基づく授業改善のための資料等を引き続き作成する。また、各学校にお
いては、教員が調査の採点を行うことで、児童・生徒一人一人の課題をより正確に把握し、児
童・生徒に次の学習に向けた目標を持たせるなど、意欲的に学ぶ授業への改善を図る。
○
学力に課題のある区市町村や学校へ指導主事を派遣し、児童・生徒一人一人の実態に基づく
学力向上の取組の充実を図る。
○
各教科の基礎的・基本的な学習内容について、「東京ベーシックドリル」を活用して小学校
低学年から繰り返し学習を行い、確実な定着と伸長を図る取組を推進する。
○
確かな学力を育成する取組に向けて策定した「習熟度別指導ガイドライン」に基づき、小学
校算数において習熟度別指導を実施するとともに、中学校数学及び英語において効果的な習熟
度別指導、少人数・習熟度別指導を一層推進し、児童・生徒の学力の向上を図る。
○
高校においては、学校の設置目的に応じた学習の到達目標を明示した「学力スタンダード」
を各学校で設定し、生徒一人一人の学習内容の定着状況を把握し、目標に到達するまで繰り返
し指導を行い、学力の確実な定着を図る。
-17-
○
専門高校においては、平成 27 年度から全ての専門高校で取り組んでいる「都立専門高校技
能スタンダード」について、これまでの取組の成果を検証し、産業界が求める技術・技能など、
生徒の専門性向上に資する改善を図る。
○
次期学習指導要領等で求められている、主体性を持って多様な人々と協働して問題を発見し、
解を見いだしていくために必要な思考力・判断力・表現力等を育成するため、アクティブ・ラ
ーニングの視点を生かした指導内容・方法の研究・開発を進め、その成果として児童・生徒に
どのような変容がみられたかを把握し、実践例として蓄積するとともに、更なる改善につなげ
ていくサイクルの構築に積極的に取り組む。
○
教育の質を高めるため、ICT 機器を活用した効果的な指導方法・学習方法等や確かな学力を
着実に育成するために有効なデジタル化された教材を開発し、普及させていく。
小・中学校においては、授業中だけではなく放課後等でも活用できるよう、基礎・基本を徹
底して反復学習する「東京ベーシックドリル」を電子化し、学習履歴の把握も可能とすること
で、児童・生徒の学習の課題に応じた学習指導の充実を図る。
高校・中等教育学校においては、生徒の個々の能力や特性に応じた学習や、家庭における学
習習慣の定着を図ることにより、学力の向上を目指す「ICTパイロット校」を指定する。
「I
CTパイロット校」では、タブレットパソコンを1人1台貸与し、その特長を生かして、個別
学習や協働学習を推進するとともに、問題解決に向けた主体的、協働的な学びと学力との関係
について検証する。
○
言語活動等を通じ、主体的・協働的な学びを実現するとともに、学習した知識と技術を生か
して、家庭生活や地域の実情等と関連付けて課題を設定し、自ら行動し解決を図る問題解決の
能力を育成するための研究を行い、その成果を全都に普及・啓発する。また、平成 27 年2月
に策定した「第三次東京都子供読書活動推進計画」に基づき読書活動を推進する。
高校においては、論理的思考力・表現力等の向上を図るため、「高校生書評合戦」及び「言
葉の祭典」を実施する。
○
児童・生徒の発達段階に応じて、外部人材を活用した放課後の補習等を充実させ、授業以外
の場における学習支援の充実を図る。小学生を中心とした「放課後子供教室」では、基礎学力
向上の取組等を含め、学習支援の充実を図る。中学生を中心とした「地域未来塾」では、地域
住民等による放課後学習支援活動等を行う。高校においては、学び直し学習や自習を支援する
ため、外部人材等を活用して学習支援を行う「校内寺子屋」を実施する。
-18-
主要施策
2
理数教育の推進
【施策の必要性】
身に付けた知識等を活用し、自ら課題を見付け解決する力や、新たな価値を創造する力は、こ
れからの社会を生きていく子供たちに求められる大切な力である。
グローバル化が進み、日進月歩で技術革新が行われる社会において、科学技術の分野で我が国
が世界をリードしていくためには、児童・生徒の理科や数学等への関心を高め、理数好きの児童・
生徒の裾野を拡大するとともに、科学技術の土台となる理数教育の一層の充実を図り、科学技術
立国日本を支える人材を育成することが必要である。
【施策の内容】
○
理数に興味・関心をもつ児童・生徒の裾野を拡大するため、小・中学校において、区市町村
が行う観察実験アシスタントの活用に加え、地域人材、保護者、学生等のボランティアの協力
により、理科の授業を充実させる取組を推進する。
○
専門的な指導力等を有する「理科教育推進教員」を小学校に配置し、理科を専門としない教
員に的確な助言を行い、小学校教員の理科の指導力向上を図る。
○
小学校児童の理数に対する学ぶ意欲を更に高めるため、自ら決めたテーマについて研究した
成果を展示する「小学生科学展」を実施する。また、科学に高い興味・関心をもつ中学生が科
学の専門家から指導を受ける「東京ジュニア科学塾」や、理科、数学等の能力を競い合う「中
学生科学コンテスト」を実施する。
○
都立高校の中から、大学や研究機関と連携した最先端の実験・講義等を通して、理数に秀で
た生徒を育成する「理数イノベーション校」や理数に関するテーマについて研究する「理数研
究校」を指定し、理数教育の充実を図る。また、都立中高一貫教育校において「理数アカデミ
ー校」を指定し、6年間を見通した系統的な理数教育の充実を図る。
○
進学指導重点校の1校において、医学部等進学希望先を同じくする生徒同士が「チーム」を
さたく
結成し、お互い切磋琢磨して高め合いながら自らの進路を実現するための3年間一貫した育成
プログラムを実施する。
-19-
取組の方向2 世界で活躍できる人材の育成
現 状 と 課 題
日本から海外への留学者数の推移を見る
と、平成 16 年の 82,945 人をピークに減少を
続け、平成 23 年には 57,501 人となり7年間
日本から海外への留学者数の推移
(人)
85,000
で約 30%減少している。都立高校生について
も、留学をしたいと思う生徒は 27.5%、そう
65,000
しない生徒が多く、留学を希望しない理由は
80,023
76,492
78,151
76,464
75,000
70,000
思わない生徒は 47.2%であるなど留学を希望
82,945
79,455
80,000
75,156
74,551
66,833
59,923
60,000
58,060
55,000
60,138
57,501
50,000
H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24
「留学に興味がない」が 42.9%、「能力に自
「日本人の海外留学者数」平成 27 年(文部科学省)
信がない」が 35.4%となっている。
一方、東京には様々な民族・宗教・文化的
背景を持った外国人が約 45 万人暮らしてい
今後、留学したいと思うか
るほか、日本を訪れる外国人の数が増加して
おり、平成 27 年には年間で約 1,974 万人と過
都立高校2年生
7,674人回答
わからない 3.5%
去最高を記録している。東京 2020 大会を控
え、今後、東京で暮らす、東京を訪れる外国
そう思う
13.3%
人の数は一層増加していくことが予想され
多少そう思う
14.2%
どちらともいえない あまりそう思わない
19.4%
17.2%
そう思わない
30.0%
47.2%
27.5%
る。
こうした中、国は第2期教育振興基本計画
において、中学3年生で英検3級程度以上、
無回答 2.4%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
「留学したくない」と回答した理由(都立高校生)
高校3年生で英検準2級程度以上取得してい
る生徒の割合を 50%以上とする目標を掲げ
ているが、都においては中学3年生で 49.3%、
高校3年生で 36.1%と、目標に達していない。
今後は、外国人とのコミュニケーションの
前提となる「使える英語力」の育成はもとよ
り、豊かな国際感覚の醸成や日本人としての
かん
自覚と誇りの涵養に取り組み、いわゆる「内
ご
「都立高校の現状把握に関する調査」平成 23 年(東京都教育委員会)
向き志向」を打破し、自信をもち、世界に伍し
て活躍する人材を育てることが必要である。
-20-
主要施策
3
「使える英語」を習得させる実践的教育の推進
【施策の必要性】
グローバル社会でたくましく生き抜くためには、世界で通用する「使える英語力」を身に付け、
臆せずに積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度や、相手の意図や考えを的確に理解し、
自らの考えや意見を論理的に説明したり、反論・説得したりすることができる能力を育成するこ
とが重要である。また、東京 2020 大会に向け、多くの外国人と交流する機会も増えてくること
からも、英語によるコミュニケーション能力を身に付けることがより一層必要である。
【施策の内容】
○
児童・生徒一人一人の英語力の向上を図るには、4技能(
「聞く」「話す」「読む」「書く」)
のバランスのとれたコミュニケーション能力の基礎を培う必要がある。このため、「英語教育
改善プラン」を策定し、目標達成のための取組を推進するなど英語教育の充実を図る。
○
小学校においては、平成 32 年度からの英語教科化に伴う平成 30 年度からの学習指導要領の
段階的な先行実施に向け、平成 28 年度から各地区の中心的な役割を担う英語教育推進リーダ
ーを配置・育成し、各地区の小学校教員の英語指導力の向上を図る。また、外国人指導助手(A
LT)の活用促進や教育課程開発を行う推進地域を指定して取り組むほか、小学校教員の英語
免許取得の支援等を行う。こうした取組により、小学校段階からの英語によるコミュニケーシ
ョン能力の育成を強化する。
○
中学校においては、英語の授業における効果的な少人数・習熟度別指導をより一層推進する。
少人数指導の充実により、生徒一人一人の発話量を増やし、実際に英語を使用してコミュニケ
ーションを図る活動を充実させる。また、習熟度別指導を拡充することで「補充的な学習」や
「発展的な学習」などの学習活動を取り入れた個に応じた指導を充実させる。
○
高校においては、英語の授業改善を図るため、JETプログラムによる招致や在京外国人の
活用など、英語を母国語とする指導者等の活用を図る。また、グローバル人材の育成を推進す
る先導的学校である「東京グローバル 10」及び「英語教育推進校」において、マンツーマン
のオンライン英会話や4技能外部検定の活用など、「使える英語力」向上のための実践的な教
育を推進する。さらに、
「東京グローバル 10」では、グローバルリーダーの更なる育成に向け
海外大学進学を支援する取組を推進する。
○
児童・生徒に海外生活や異文化を疑似体験させ、英語の楽しさや必要性を体感させることで
学習意欲の向上を図ることを目的として平成 30 年9月末までに「英語村(仮称)
」を開設する。
-21-
主要施策
4
豊かな国際感覚を醸成する取組の推進
【施策の必要性】
グローバル化の進展に伴い、異なる文化との共存や国際協力が求められており、様々な国や地
ひら
域の人々と共に未来を切り拓いていこうとする態度・能力を育成することが求められている。
また、いわゆる「内向き志向」を打破するとともに、将来、世界を舞台に活躍し、東京や日本
の未来を担う次世代のリーダーを輩出するため、都独自の留学支援の取組や関係機関と連携した
取組を推進することが必要である。
【施策の内容】
○
日本人としての自覚と誇りを備え、世界に通用する人材を育成するとともに、在京外国人等
の教育ニーズにも応えるため、都心部に帰国生徒や外国人生徒を受け入れ国際色豊かな学習環
境を整備した新国際高校(仮称)の設置を検討する。
○
都立中高一貫教育校の1校において、日本人としてのアイデンティティの育成や国際交流、
英語教育などに重点を置いた特色ある教育の更なる充実を図るとともに、帰国生徒や外国人生
徒の受入れなどを行い、国際色豊かな学習環境を実現する。
○
語学力や豊かな国際感覚、日本人としての自覚と誇りを備え、国際的に活躍できる人材を育
成していくため、都立小中高一貫教育校を設置し、早い時期から帰国児童・生徒や外国人児童・
生徒とともに学ぶなど、国際色豊かな学習環境を整備する。
○
都立高校の1校において、国際バカロレアのディプロマ・プログラムを「国際バカロレアコ
ース」の第2学年で開始することで探究型の学習法による授業の充実を図り、国際バカロレア
の資格取得により海外大学進学を進める。また、海外大学進学指導のノウハウ等を蓄積し、海
外大学進学希望者への支援を促進する。
○
都独自のプログラムである「次世代リーダー育成道場」を充実させ、高校在学中の留学など
を直接支援することにより、広い視野や海外で通用する高い英語力、リーダーとしての自覚や
チャレンジ精神等を育成する。
○
独立行政法人国際協力機構(JICA)と連携した「東京グローバル・ユース・キャンプ」
では、異文化理解の深化や課題解決能力向上を図るワークショップ、青年海外協力隊員との交
流を通じ、社会貢献意欲と主体的な行動力等を育成する。
○
都立高校において、生徒・教員の海外派遣研修先等と連携し、姉妹校交流を拡大させ、生徒
の異文化理解や国際感覚を醸成する。また、交換留学を実施する団体と連携するなど、海外か
らの留学生の受入れを拡大する。
-22-
主要施策
5
かん
日本人としての自覚と誇りの涵養
【施策の必要性】
グローバル化が進む中、国際社会の一員であることを自覚した上で世界各国の人々と交流し、
異なる国や地域の伝統・文化等を尊重しつつ、積極的にコミュニケーションをとれるようにする
には、まず、子供たち自身が、日本や東京の良さを十分に理解する必要がある。
そのためには、自らの国や地域の歴史、伝統・文化等についての理解を深め、尊重する態度を
身に付けることにより、人間としての教養の基盤を培い、日本人であることの自覚や、郷土や国
を愛し、誇りに思う心を育むことが重要である。
【施策の内容】
○
国際社会に生きる日本人として多様な文化を尊重する態度や資質を育むためには、日本人と
してのアイデンティティーをもち、広い視野に立って培われる教養や異なる言語を理解する力
が必要であり、その基盤となる国語の力を確実に習得させる教育を推進する。
○
都立高校においては、引き続き「日本史」を必修とし、都独自の日本史科目「江戸から東京
へ」を普及するなど、日本の伝統・文化理解教育を推進する。
○
全ての学校において、日本の伝統・文化の理解を深めるために、地域の専門的な知識・技能
を有する外部人材等を活用した取組を充実させるとともに、JET青年や地域の外国人等との
交流により、日本の良さを進んで発信する態度を育成する。
特に、高校においては、生徒が在学中に少なくとも一度は能や歌舞伎等の日本の伝統芸能を
体験する機会を設定し、日本人としての自覚と誇りを持つ生徒を育成する。
-23-
取組の方向3 社会的自立を促す教育の推進
現 状 と 課 題
今の子供たちは社会のルールやマナーを守
っていないと考えている大人が多く、児童・生
徒に対する調査結果においても、「ルールを守
あなたが子供だった頃と比べて、現在の子供達は社会のルールや
マナーをよく守っていると思いますか。
自分が子供だった頃と比べて、
わからない社会のルールや
マナーをよく守っている
って行動する」に「とても当てはまる」と答え
自分が子供だった頃と比べて、
社会のルールやマナーをあまり
守っていない
43.0%
16.2%
わからない
変わらない
8.2%
32.6%
た割合は学年が進行するに従い低下し、中学
生、高校生では、約4人に1人にとどまってい
0.0%
る。
日本人の良き行動規範を子供たちに確実に
10.0%
20.0%
30.0%
40.0%
50.0%
60.0%
70.0%
80.0%
90.0%
100.0%
「インターネット都政モニターアンケート」平成 26 年(東京都)
伝えるとともに、現在の社会状況から必要とさ
れる新たなルールや社会性なども身に付けさ
せることが必要である。
また、産業構造の変化や科学技術の進展等に
伴い、職業人に求められる技術・技能は高度
化・多様化しており、これらに対応できる人材
の育成が求められている。さらに、共働き世帯
の増加や超高齢社会の到来により、保育人材や
介護人材など、家庭・福祉分野で活躍する人材
の育成が喫緊の課題となっている。
一方、日本、アメリカ、中国、韓国の比較調
査では、「自分が政治等に参加することで、変
えてほしい社会現象が少し変えられるかもし
れない」という質問に対して否定的な答えをし
不登校の児童・生徒数及び出現率(東京都)
(人)
8,000
7,000
6,000
5,000
た生徒の割合は、日本が4か国中最も高く、国
4,000
や地域の政治や選挙などへ主体的に参画しよ
2,000
うとする意欲が低いことが表れている。公職選
0
挙法の改正により選挙権年齢が 18 歳以上に引
き下げられたことから、特に高校において主権
7,011
3,000
1,000
3.1
6,959
3.1
2.9
7,514
7,110
6,770
2.8
4.0
3.5
6,432
3.0
(%)
3.2
3.0
2.5
2.0
1,871
1,936
2,015
1,912
2,366
2,565
0.3
0.4
0.5
H25
H26
0.3
0.3
0.4
H21
H22
H23
H24
小学校
中学校
小学校
1.5
1.0
0.5
0.0
中学校
「公立学校統計調査報告書」(文部科学省)より作成
者としての意識を高めていく必要がある。
ところで、公立小・中学校の不登校者数は平成 25 年度から増加に転じており、平成 26 年度は小
学校で 2,565 人、中学校で 7,514 人が不登校となっている。さらに、都立高校における中途退学者
は減少傾向にあるものの、定時制課程で 11.8%、専門高校で 2.8%の生徒が中途退学しているなど、
依然として看過できない状況にある。不登校・中途退学は、就労など子供たちの将来に大きなマイ
ナスの影響を与えることが多く、社会的自立の観点から大きな課題である。この問題は、教育上の
視点だけでなく、社会経済的視点からも重要であり、不登校の子供や中途退学者等を関係機関が連
携し社会全体で支援するほか、再チャレンジの教育環境を充実させることが必要である。
-24-
主要施策
6
人権教育の推進
【施策の必要性】
全ての人々の人権が尊重され、相互に共存し得る平和で豊かな社会を実現するためには、一人
かん
一人の人権尊重の精神の涵養を図ることが不可欠である。
国が策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」を踏まえるとともに、
「東京都人権施策推
進指針」等に基づき、人権尊重の理念を広く社会に定着させ、同和問題をはじめ様々な人権課題
に関わる偏見や差別をなくすため、人権教育を推進することが必要である。
【施策の内容】
○
人権教育の一層の充実を図るため、都内の全公立学校において、区市町村教育委員会と連携
し、人権教育研究推進事業、人権尊重教育推進校事業及び人権普及啓発事業等を展開する。
○
都・区市町村における社会教育関係職員及び社会教育関係団体指導者等を対象に、人権学習
の普及啓発事業、人権学習の指導研修事業及び人権学習の促進事業を実施する。
-25-
主要施策
7
道徳心や社会性を身に付ける教育の推進
【施策の必要性】
我が国には、代々受け継がれてきた、礼節を重んじ、他者を思いやり、互いに助け合って生活
する国民性があり、こうした日本人の行動規範は、海外からも高く評価されている。その背景に
は、学校の道徳教育をはじめ、規範意識や豊かな心などを子供たちに引き継いできたことがある。
今後も、自他の生命の尊重、規律ある生活など、将来、社会において生きていく上で求められ
る道徳的価値や人間としての在り方・生き方に関する意識を深めるために、道徳の時間はもとよ
り、各教科、総合的な学習の時間及び特別活動等それぞれの特質に応じた道徳教育の一層の充実
が求められている。その際、アクティブ・ラーニング等を活用し、主体性を持って、様々な人々
との議論を通じ、協働して解決策を見出していく活動を積極的に取り入れていくことが有効であ
る。
また、家庭や地域・社会との連携を図りながら、子供たちが社会貢献への意識などを育むため
には、ボランティア活動を積極的に取り入れるとともに、自然体験活動などの豊かな体験活動を
重視し、児童・生徒の自尊感情や自己肯定感等を高めていくことが重要である。
【施策の内容】
○
小・中学校において、道徳授業地区公開講座の一層の充実を図り、各学校における、家庭、
地域・社会と一体となった道徳教育の取組を、区市町村教育委員会と連携して推進する。
○
国が、小学校については平成 30 年度以降、中学校については平成 31 年度以降に、道徳を「特
別の教科」に位置付けることに先駆け、全区市町村で道徳教育充実の拠点となる学校を指定し、
先行した取組を推進する。
○
高校で実施してきた教科「奉仕」を発展的に統合し、道徳教育とキャリア教育の内容を一体
化した新教科「人間と社会」を全ての高校において実施し、現代の社会や人間が直面している
かん
様々な課題を素材として、演習や体験活動を通して生徒の道徳性を涵養するとともに、これか
ら生きていく上で必要な考え方や判断力を養う。
○
全ての高校において、社会人としての基本的なルールやマナーを身に付けさせる指導を組織
的に実施していくため、「都立高校生活指導指針」を示すとともに、指導の充実に資する指導
資料を作成し、全ての教職員による組織的な指導体制を構築し、学校における規律の維持・向
上を図る。
○
生命に対する畏敬の念を育み、自然を大切にし、環境の保全に主体的に取り組もうとする態
度を養うために、動物の飼育や植物の栽培等の体験的活動を推進する。
-26-
主要施策
8
社会的・職業的自立を図る教育の推進
【施策の必要性】
産業・就業構造が大きく変化している中で、様々な課題に柔軟に、かつ、たくましく対応し、
社会人、職業人として自立していくことができるようにする教育の推進が求められている。
小学校においては、発達段階に応じて、人、社会、自然、文化と関わる体験活動を設定し、他
者とコミュニケーションをとる能力や態度を身に付けさせ、将来の仕事に対する関心・意欲を高
めるとともに、将来の夢や希望など自己実現に向けて努力する意欲等を養う必要がある。
中学校においては、社会における自らの役割や将来の生き方・働き方等について考えさせると
ともに、目標を立てて計画的に物事に取り組む態度の育成を図るなど、職場体験等を含む体系的
なキャリア教育を推進する必要がある。
高校においては、雇用、労働問題、社会保障制度や金融・経済に関する基礎的知識を含め、実
社会において社会人、職業人として生活できるための基礎を確実に身に付けさせるとともに、主
権者としての役割や責任などをこれまでより早い段階から養っていくことも重要である。
都立専門高校は、普通科高校と比較して、中途退学率が高く、積極的に志望する生徒の割合が
少ないなどの課題も明らかになっている。このような背景を踏まえ、社会の変化と期待に応える
人材の育成を推進し、生徒の能力の伸長と進路実現を図るため、教育内容等を見直し、魅力ある
専門高校づくりを進めていく必要がある。
また、ユネスコにおいて、現在、世界が直面している資源エネルギーや食糧問題等の課題を相
互に関連付けるとともに、自らの暮らしや地域の課題と結び付けて考え、将来にわたって安心し
て 生 活 で き る 持 続 可 能 な 社 会 の 実 現 に 向 け て 取 り 組 む た め の 教 育 ( ESD : Education for
Sustainable Development)が提唱されている。東京 2020 大会に向けて、体験的な活動等を取り
入れた環境学習を通じて、自主的・積極的に環境保全活動に取り組み、次代を担う子供たちを世
界の人々と協調し共存できる持続可能な社会の担い手として育成することも重要である。
さらに、首都直下地震をはじめとした自然災害の発生の脅威など、子供たちを取り巻く環境に
は、様々な危険が潜んでいることを認識し、いざというときに、
「自助」
「共助」の精神に基づき、
適切に行動するとともに、地域に貢献できる人材となれるように防災教育の一層の充実が求めら
れている。
【施策の内容】
○
小・中学校においては、区市町村教育委員会と連携して、主権者教育、法教育、租税教育、
金融・金銭教育等、多様な教育課題に対応した教育を充実させるととともに、中学校における
職場体験活動の充実を図り、子供たちの社会的・職業的自立に必要な資質や能力の基礎を培う
教育を推進する。
-27-
○
高校においては、公民科の各科目や総合的な学習の時間等、学校の教育活動全体を通して、
生徒自身がより一層社会との関わりをもち、社会の一員であることを自覚するために、職業意
識の醸成を図る。また、公職選挙法の改正等も踏まえ、社会の中で自分の役割を果たしながら、
自分らしい生き方を実現し、国や社会の様々な問題を自分の問題として捉え、考え、判断する
ことができるよう、主権者教育、社会保障教育、租税教育、金融・金銭教育などを充実させ、
自立的社会人としての素養を養う。
○
高校におけるインターンシップや、企業やNPO等が実施する体験型学習プログラムを全普
通科高校に導入するなど、地域や社会の教育力を活用したキャリア教育を推進し、社会人とし
ての自覚や働く意欲をもち、職業生活の中で自己実現を図ることができる人材を育成する。
○
都立工業高校において、地域企業の求める人材の育成につながる「東京版デュアルシステム」
を更に推進していくため、デュアルシステム科の拡充を図るとともに、ものづくりに興味・関
心のある生徒の進路実現を支援し、ものづくり産業を担う人材を輩出するため、エンカレッジ
スクールの追加指定を行う。
○
入学者選抜の応募倍率が高い調理師を養成できる家庭科や、不足が見込まれる保育人材を育
成する家庭科、超高齢社会に対応した介護人材を育成する福祉科を併せ持った高校を新設する。
○
全ての学校において、東京都が作成した防災ブック「東京防災」や児童・生徒が主体的に防
災について調べ、考え、家族と一緒に行動できるための防災ノートを活用した教育を実施する
など、学校と家庭が一体となった防災教育を推進する。
○
全ての高校及び中等教育学校では、引き続き地域の人材等を構成員とする「防災教育推進委
員会」を活用し、地域と連携した実践的な防災教育を推進する。また、卒業後も地域社会で「防
災リーダー」や「防災ボランティア」として活躍できる人材を育成するため、都立高校防災活
動支援隊の活動や救命講習等の受講を促進するとともに、全都立高校、中等教育学校における
一泊二日の宿泊防災訓練を引き続き実施する。
○
特別支援学校においては、学校の危機管理体制の強化と児童・生徒の防災意識の向上を図る
ため、全校での宿泊防災訓練の実施に向けて検討を進め、地域と連携した防災教育を一層推進
する。
○
区市町村教育委員会と連携した「安全教育推進校」による実践を通し、安全教育の普及啓発
を図るとともに、授業を公開し、「安全教育プログラム」の活用による安全教育の一層の充実
を図る。
○
環境学習を計画的・効果的に進め、児童・生徒が環境について学び、行動する契機となるよ
う、環境教育カリキュラム等を活用した教育の充実を図る。また、持続可能な社会の担い手を
育成するため、ユネスコスクールに指定されている学校の優れた指導実践を全都の公立学校に
普及させる。
-28-
主要施策
9
不登校・中途退学対策
【施策の必要性】
不登校や中途退学の課題に対応するため、これまで学校や教育委員会等において様々な対策を
講じてきた結果、都立高校の中途退学者数が減少するなど一定の成果を上げてきたものの、依然
として多くの児童・生徒が不登校や中途退学に至っている。不登校の児童・生徒や中途退学者は、
学習の機会を失い、社会から孤立しがちになるとともに、将来の進路選択が困難になるなど、深
刻な課題を抱える場合が多い。
このため、支援に当たっては、将来の社会的・職業的な自立を目指すとともに、学校や社会と
のつながりをもち続けられるようにする必要がある。こうした考えの下、教育委員会や学校の取
組の充実を図るとともに、様々な関係機関と連携して対策を講じる必要がある。
【施策の内容】
○
学業不振や友人関係が不登校や中途退学の要因の一つとなっている。不登校や中途退学の未
然防止を図るため、習熟度に応じた学習指導や補充指導の実施などにより基礎学力の定着を図
る。また、都立高校の定時制課程におけるグループエンカウンターを用いた取組を一層充実す
るなど、生徒の人間関係づくりを支援する取組を推進する。
○
児童・生徒の抱える様々な課題に対応するため、スクールカウンセラーを活用して、学校の
教育相談体制を充実する。
○
児童・生徒の状況に応じた適切な支援を行うため、個々の支援計画を作成して組織的に支援
するとともに、教育委員会、学校と福祉、医療、労働等の関係機関が連携して支援するための
体制づくりを推進する。
○
区市町村において、関係機関との連携体制の構築を推進するため、スクールソーシャルワー
カー等を活用した支援チームの設置などの取組を支援する。
○
都教育委員会に、スクールソーシャルワーカー等からなる「自立支援チーム」を設け、都立
高校や関係機関と連携して、生徒への進路支援や不登校への対応に取り組むとともに、中途退
学者等の就労や再就学に向けた支援も実施する。
○
学校で、支援チームや関係機関との連絡・調整を図るとともに、校内で不登校・中途退学対
策を推進する中心的役割を担う教員を指定し、学校の組織的な支援体制を強化する。
○
不登校の児童・生徒が再チャレンジできる教育環境の充実を図るため、区市町村と連携して、
教育支援センター(適応指導教室)の指導内容の充実等、機能の強化を推進する。また、高校
においては、小・中学校で不登校経験等のある入学希望者がより多く入学できるように、チャ
レンジスクールを拡充する。
○
都立高校入学後の生徒の進路変更希望に応えるとともに、中途退学の未然防止を図るため、
都立高校間における転学が一層活用されるよう、都立高校補欠募集制度について改善を図る。
○
フリースクール等民間施設・団体との連携を推進し、多様な支援の充実を図る。
○
進路相談会や就学サポート等を通じて、中途退学者やその保護者等を支援する事業を行って
いる「青少年リスタートプレイス」等の実績を踏まえ、東京都教育相談センターの相談業務の
充実を図る。
-29-
主要 施策
10
子供たち一人一人に応じた手厚い支援体制の構築
【施策の必要性】
幼稚園、保育所等と小学校との環境や指導方法等の違いなどから起きる「小1問題」に適切に
対応するために、就学前教育の充実を図るとともに、小学校が連携の核となり、就学前教育と小
学校教育との円滑な接続を図る取組の推進が求められる。
一方、グローバル化の進展に伴い、増加する外国人児童・生徒等に対して、日本語指導を充実
させるとともに、就学機会の周知等を行うことは、国際都市東京として果たすべき重要な役割で
ある。
また、外国人生徒に対して、都立高校における入学者選抜や入学後の学校生活に支障が生じな
いよう教育環境の整備することは、多くの外国企業の誘致や人材の受入れを進めている首都東京
として重要であり、引き続き適切な支援を行う必要がある。
【施策の内容】
○
幼稚園や保育所等における就学前教育の質の向上及び小学校を拠点とする就学前教育と小
学校教育との円滑な接続を図るための取組を推進する。
○
就学年齢に達した外国人の子供が円滑に就学できるように、区市町村教育委員会と連携し、
必要な情報を発信するなどの支援を行う。また、就学した外国人児童・生徒等が学校の環境に
適応できるように支援する。
○
高校の入学選抜における在京外国人生徒対象枠については、中学校における日本語指導が必
要な在京外国人生徒数の動向や区部と多摩地域のバランス、在京外国人生徒対象枠の募集校に
おける入学者選抜の応募状況等を踏まえ、適正な募集枠を設定する。
-30-
取組の方向4 子供たちの健全な心を育む取組
現 状 と 課 題
いじめ認知件数の推移
都内公立学校における平成 26 年度のいじめの
認知件数は、全体で 8,397 件となっており、平成
24 年度以降、2年連続減少している。この結果に
ついては、いじめが実際に減少したことによるも
のか、学校の取組姿勢が弱くなったことによるも
のか、多角的に検証することが必要である。
(件)
小学校
対策委員会」の機能強化を図るとともに、校内研
修等を通して、全ての教職員が意識を高め、組織
高等学校
合計
14000
11561
12000
9616
10000
8000
8375
7187
5581
6000
また、都内全公立学校に設置した「学校いじめ
中学校
4238
4000
4993
3854
3255
2000
的な取組を確実に実践できるようにすることが不
181
136
0
H24
H25
127
H26
暴力行為発生件数推移
可欠である。
インターネットやSNS等によるトラブルの状況(抽出調査)
小学校
中学校
高等学校
特別支援学校
自分の悪口や
個人情報を書かれた
3.2%
8.9%
15.4%
8.9%
仲間外れにされた
2.6%
6.4%
11.9%
5.6%
「インターネット・携帯電話利用に関する実態調査」
平成 26 年(東京都教育委員会)
「児童・生徒の問題行動等の実態について」
(東京都教育委員会)より作成
いじめ発見のきっかけについては、認知件数全体に対して本人からの訴えで発見された割合は、
約 20.9%、他の子供からの情報で発見された割合は、約 4.1%にとどまっている。学校教育相談
体制の充実や外部相談窓口の周知の工夫などを通して、相談しやすい環境づくりを推進するとと
もに、いじめを見て見ぬふりせず、子供たち同士が主体的に話し合い、解決に向けて行動できる
よう指導することが重要である。
さらに、平成 26 年度の調査では、インターネット等を通じて、自分の悪口や個人情報を書かれ
た子供が、抽出した子供全体の約 8.9%存在している。こうしたことから、学校と家庭、地域が
一体となって、SNSによるいじめを防止する取組を徹底することが求められている。
また、小・中・高等学校における暴力行為は、平成 26 年度は合計 1,979 件であり、減少傾向に
はあるものの、引き続き、暴力は絶対に許されないという指導を徹底するとともに、教員がスク
ールカウンセラーの協力を得て、子供の気持ちを受け止めながら、子供自らが感情をコントロー
ルできるように支援する取組を推進することが必要である。
-31-
主要 施策
11
いじめ、暴力行為、自殺等防止対策の強化
【施策の必要性】
「いじめ防止対策推進法」を踏まえ、東京都は、平成 26 年6月に「東京都いじめ防止対策推
進条例」を制定し、これに基づき、都教育委員会が「いじめ総合対策」を策定した。これらの規
定や施策に基づき、全ての学校において、学校いじめ対策委員会の設置や学校いじめ防止基本方
針の策定等を通して、学校全体による組織的な対応を推進してきた。
しかしながら、いまだにいじめにより、様々な問題が生じている。全国的には、子供たちによ
る暴力行為や自殺など、生命に関わる重大な事案が後を絶たない現状もある。
今後とも、子供がいじめにより命を絶つようなことが決して起こることのないよう、「学校い
じめ対策委員会」の機能を強化し、全教職員による組織的な取組の徹底を図ることが急務である。
また、子供たち同士が主体的に話し合い、解決に向けて行動できるようにするための取組を充
実させる必要がある。
さらに、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー等との連携など、
「学校サポー
トチーム」を有効に活用しながら、子供たちや家庭に対して効果的な支援を行うことが求められ
ている。
【施策の内容】
○ 「いじめ総合対策」に基づき、各学校における組織的な取組を着実に進めるとともに、いじ
めの問題を形骸化させない取組を推進する。また、区市町村教育委員会とも連携し、学校の取
組状況及び達成状況を踏まえ、いじめ総合対策の見直しを図る。
○
道徳の時間や特別活動をはじめ、あらゆる教育活動を通して、いじめや暴力行為は、絶対に
許されない行為であることや、集団や社会の一員として法やルールを守って行動しなければな
らないことなどについて、指導の徹底を図る。
○
子供たちが、いじめや暴力行為を見て見ぬふりせず、主体的に話し合い、解決に向けて行動
できるようにするための指導の充実を図る。
○
「学校いじめ防止基本方針」において、「学校いじめ対策委員会」の役割と具体的な取組を
明確にするとともに、全ての教職員により、いじめ防止等の対策に関する組織的な取組が確実
に実施されるよう、校内研修等の充実を図る。
○
スクールカウンセラーの勤務日数等の拡充により、学校教育相談の一層の充実を図るととも
に、子供たちへの面接やアンケート等の効果的な実施を通して、いじめや暴力行為等について、
学校全体で、子供が相談しやすい環境づくりを推進する。
○
教職員が、家庭、PTA、地域住民、関係機関等と緊密に連携して、子供たちの生活全般に
関する不安や悩みを把握し、必要な対応を行うことができる支援体制を構築するとともに、子
供理解に関する教職員研修を充実させ、子供の自殺防止の徹底を図る。
○
いじめに関する専用情報サイト・アプリを開発するなど、子供から大人までを対象に、いじ
め防止に向けて主体的に行動することを促すとともに、相談先にアクセスしやすい環境づくり
を推進する。
-32-
○
子供たちの問題行動等に対して、教職員だけでは解決が困難な事案に対応するため、スクー
ルソーシャルワーカー等外部人材の配置を拡充するとともに、地域住民や関係機関の職員等か
ら構成される「学校サポートチーム」の機能強化を推進し、学校の指導力・対応力の向上を図
る。
-33-
主要 施策
12
SNS 等の適正な使い方の啓発強化
【施策の必要性】
情報社会の進展に伴い、子供を取り巻く社会環境が大きく変化する中で、児童・生徒にとって、
有害な情報を含んだ様々なサイトの濫立や、不適切な書き込みが後を絶たないなど、憂慮すべき
インターネット環境にある。こうした環境においては、児童・生徒が被害者にも加害者にもなり
得ることから、自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもち、情報を正しく安全に利用で
きるようにするとともに、情報機器の使用による健康との関わりを理解する力を身に付けさせる
ことが必要である。
とりわけ、近年のスマートフォン等の急速な普及に伴い、高い利便性を得る一方、児童・生徒
が、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等の利用などを通じて、長時間利用による
学習への弊害や陰湿ないじめの温床となるなどの新たな問題が生じている。こうした問題に対応
するため、SNSについてはルールを策定するなど、適正な使い方の啓発等を強化する必要があ
る。
【施策の内容】
○
都独自のルール「SNS東京ルール」により、学校、家庭、民間事業者等が一体となって、
子供たちの適正なSNS利用に向けた取組を推進する。
○
学校非公式サイト等の監視を通し、問題への早期対応、未然防止を実現するとともに、児童・
生徒の情報モラルを高めるため、インターネットの適正な利用について指導するための教材等
を民間事業者等と連携して作成・活用する。
-34-
取組の方向5 体を鍛え健康に生活する力を培う
現 状 と 課 題
子供の体力低下が言われて久しいが、全国の児童・生徒の体力は、昭和 60 年頃と比較すると、
依然低い水準となっている。全国的な体力の低下傾向は、児童・生徒の日常の生活における活力
にも影響を及ぼしており、特に運動をしないのに疲れを感じる児童・生徒は、学年が進行するに
体力・運動能力調査における東京都の順位の推移
従い増加する傾向が見られる。
また、東京都の体力テスト合
(順位)
・ 1
・i
・・
・ハ
j
計点の都道府県別順位(全国体
力・運動能力、運動習慣等調査
23
結果より)が、小学生は改善傾
24
18
23
25
29
32
向にあり全国平均程度まで回
復したものの、中学生は依然と
中2女子
41
46
43
46
44
H20
ている。
33
34
38
40
42
47
小5女子
35
37
して全国最低水準にとどまっ
18
小5男子
H21
44
中2男子
47
H22
45
47
H24
46
H25
H26
「全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」
(文部科学省)より作成
体育の授業以外で運動をしない児童・生徒の割合は、小学校6年生男子で約5%、中学校3年
生男子で約 10%、高校3年生男子で約 24%と学年が進行するにつれて増加し、女子はその傾向が
更に強い。運動に対し、苦手意識をもつ児童・生徒は学年が進行するに従い増加する傾向にあり、
中学生では男子の約3割、女子の約5割、高校生では男子の約4割、女子の約5割が苦手意識を
もっている。都立高校生(全日制)の運動部活動加入状況は約5割であり、中学校における運動
部活動の加入率約6割に比べて低い。また、競技力の高い中学生は、環境等の整った私立高校に
進学する傾向があり、全国大会に出場する高校生のうち都立高校生の割合は約1割である。
東京 2020 大会を迎えるに当たり、開催都市にふさわしい、運動に親しむ元気な児童・生徒を
育成するため、全ての子供たちの運動への興味・関心を高め、基礎的な体力の向上を図ることが
重要である。
男子
運動やスポーツをすることは得意ですか
32.2
小1
44.0
37.5
小2
40.5
20.3
3.6
18.3
3.8
小3
48.6
34.7
12.8 3.9
小4
49.9
33.8
12.1 4.1
47.0
小5
33.5
42.1
小6
34.2
37.6
中1
35.8
30.7
中2
27.9
中3
0%
20%
14.0 5.5
38.0
17.9
19.9
37.4
40%
16.4
21.6
60%
80%
7.3
8.7
28.6
小1
女子
小4
やや得意
小5
35.4
中2
13.1
中3
25.9
17.6
3.8
16.9
4.7
25.4
26.2
34.6
20%
3.3
20.8
18.5
36.3
33.6
21.9
27.7
60%
8.7
12.4
16.5
20.1
29.2
40%
6.1
21.6
35.6
15.0
0%
100%
40.0
38.3
21.7
中1
11.5
41.7
31.4
やや不得意 小6
不得意
43.9
36.7
小3
得意
46.3
31.5
小2
22.3
80%
100%
「東京都体力・運動能力、運動習慣等調査結果」平成 27 年(東京都教育委員会)
また、新たな感染症の発生や食物アレルギー疾患の増加、集団への不適応、拒食症、うつ状態
など、児童・生徒が抱える心身の健康課題も多様化している。
児童・生徒に対し健康診断、相談・保健指導などの支援を行うとともに、健康の保持・増進に
ついて自ら考え行動できる力を育成することが重要である。
-35-
主要 施策
13
体力向上を図る取組の推進
【施策の必要性】
科学技術や高度情報化の進展に伴う生活の利便化によって、日常生活における身体活動がます
ます減少していくことを考えると、一人一人が主体的に運動に取り組むことの必要性は、これま
で以上に高まる。生涯にわたって運動に親しんでいくためには、乳幼児期から青年期に至るまで
の間に、基本的生活習慣を身に付け、健康や体力を保持増進していくための基礎的な能力や態度
を養い、日常生活の身体活動量を増加させて基礎体力を十分に高めていくことが重要である。
「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」において、一部の種目を除き全般的に全国平均を下
回る現在の東京都の児童・生徒の体力・運動能力を、小学生は都道府県別の上位に、中学生・高
校生は全国平均程度まで向上させることを目標としている。
また、東京 2020 大会を機に、子供たちが、様々な運動を体験することは、フェアプレーやチ
ームワークの精神、相手を思いやる心を身に付けるとともに、体力の向上や健康づくりに自ら意
欲的に取り組む態度を養い、心身ともに健全な人間へと成長するなど、大きな意義がある。
さらに、運動部活動は、運動に興味と関心を持つ同好の生徒が、より高い水準の技能や記録に
挑戦する中で、運動の楽しさや喜びを味わい、豊かな学校生活を経験する活動であるとともに、
体力の向上や健康の増進にも極めて効果的な活動である。また、生徒同士が互いに協力し合って
友情を深めるなど、望ましい人間関係を育て、人格を形成していく上でも有効である。
【施策の内容】
○
「アクティブプラン to 2020」-総合的な子供の基礎体力向上方策(第3次推進計画)-に
基づき、学校体育の充実、生活習慣・運動習慣の改善、競技力の向上、体力向上のための体制
整備等について具体的な取組を推進するとともに、社会全体で東京都の子供たち一人一人の基
礎体力の向上を図る。
○
都内公立学校の全ての児童・生徒を対象とした、体力・運動能力及び生活習慣・運動習慣の
実態を把握するための調査を継続して実施し、その結果を子供たち一人一人に還元することで、
目標をもって体力向上に取り組むことができるようにするとともに、生涯を通じてスポーツに
親しむ基礎を培う。
○
小学校の中から健康教育を中心とした体力向上、健康づくりを推進する「アクティブライフ
研究実践校」を指定し、基本的生活習慣の定着・改善に向けた取組や栄養、運動、休養の健康
三原則に係る保健指導等を実践し、その成果を広く発信することを通して都全体の健康教育を
より一層推進する。
○
全ての中学校を「アクティブスクール」と位置付け、自校の体力の実態を踏まえて体力向上
の目標や取組内容を定めた体力向上推進計画を定め、体力向上に向けた取組を充実する。
○
中学校の中から特に体力向上に先進的に取り組む学校を「スーパーアクティブスクール」と
して指定し、具体的取組を研究開発するとともに、成果を広く発信することを通して中学生の
体力向上を図る。
○
東京 2020 大会の開催を契機とし、スポーツの全国大会や関東大会への出場を目指す都立高
校を増加させていくため、競技力の高い運動部活動のある学校を、「スポーツ特別強化校」と
指定し、都立高校運動部活動の活性化と競技力の向上を一層推進する。
-36-
主要 施策
14
健康づくりの推進
【施策の必要性】
子供たちの心身の調和のとれた発育・発達を図り、健やかな体をつくることは、
「知」
「徳」
「体」
のバランスの取れた人間を育成する上での基盤となる。体力向上に向けた取組とともに、子供た
ちが自分自身の健康に対する関心を高め、生涯にわたって、主体的に健康を保持・増進しようと
する態度を養うことが重要である。また、家庭に対し、生活習慣づくり等の基礎を培う乳幼児期
からの子供の教育の重要性の普及・啓発に取り組み、
「早起き、早寝、朝ごはん」など基本的な
生活習慣を子供たちに身に付けさせることは、健やかな体をつくる上で重要である。
【施策の内容】
○ 「都立学校における健康づくり推進プラン」に基づき、児童・生徒の健全な心と体の育成を
図るとともに、医師会、学校歯科医会、学校薬剤師会等との連携による、専門的な科学的知見
を踏まえた健康教育を推進する。
○
学習指導要領において、学校における食育の推進が体育・健康に関する指導の一環として位
置付けられていることを踏まえ、教科横断的な指導として学校の教育活動全体を通じて食に関
する指導を行う。また、家庭と連携した食育の推進に取り組む。
○
全ての教員にアレルギー疾患に関する正確な知識を身に付けさせ、学校において適切に対応
する体制を確立する。
-37-
取組の方向6 オリンピック・パラリンピック教育の推進
現 状 と 課 題
オリンピック・パラリンピック開催で期待される効果
学術、文化、経済など様々な分野で
(上位5項目:選択者の割合(%))
グローバル化が進展している中、東京
が将来にわたり発展していくために
は、多様な文化を受け入れ、東京に暮
らす全ての人々が分け隔てなく自己
の能力を発揮できる社会を作り上げ
「東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」
ていく必要がある。
平成 27 年(内閣府)
これはまた、年齢、国籍、文化の
違いや障害の有無などにかかわらず
自尊感情測定尺度による東京都における子供の自尊感情の
あらゆる人々が互いの人権を尊重し
傾向結果
合い、共に力を合わせて生活する共
3.2
生社会を実現していくことでもあ
3
る。ちなみに、内閣府が平成 27 年度
2.8
に実施した東京オリンピック・パラ
リンピックに関する調査によれば、
開催で期待される効果では障害者へ
の理解の向上が最多数であった。
こうした時代を生きるこれからの
子供たちには、自己を確立しつつ、
自己評価・自己受容
自己主張・自己決定
〔自己評価・自己受容の例〕
・私は今の自分に満足している。
・私は自分のことが好きである。
2.6
2.4
2.2
2
〔自己主張・自己決定の例〕
・人と違っていても自分が
正しいと思うことは主張できる。
・私は自分のことは自分で決め
たいと思う。
小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3 (4点満点 2.5が平均的な値)
「自信 やる気 確かな自我を育てるために」平成 23 年(東京都教育委員会)
他者を受容し、多様な価値観を持つ
人々と協力・協働しながら課題を解
ボランティア活動に興味があるという回答の割合(%)
決する力が求められる。
また、多くの外国人と交流する機
会が増えていく中、臆せず積極的に
コミュニケーションを図ろうとする
態度や日本人としてのアイデンティ
ティをしっかりもち、豊かな国際感
覚を醸成する必要もある。
0
日本
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
35.1
56.9
韓国
61.1
アメリカ
英国
50.6
ドイツ
50.4
フランス
42.6
スウェーデン
42.8
各国13歳から29歳
までの男女対象
「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」平成 25 年(内閣府)
しかしながら、平成 23 年度に実施した都の調査では、児童・生徒の自己評価は学年が上がるに
つれて低下傾向にあり、また、平成 25 年度に実施した内閣府の調査によれば、日本の若者は諸外
国と比べ、ボランティア活動への興味が低い。さらに、中国をはじめとする諸外国では、海外へ留
学する学生等は増加する傾向にある一方、我が国においては、その数は減少している。
このように、今後子供たちに求められる姿と現状との隔たりは、我が国の初等中等教育の大きな
課題の一つである。
-38-
主要施策 15
オリンピック・パラリンピック教育の推進
【施策の必要性】
これまで、オリンピック・パラリンピックは、開催都市と国に大きな社会変革をもたらし、と
りわけ若者や子供たちを鼓舞し、勇気と感動を与えてきた。
オリンピック憲章では、オリンピズムは、肉体と意志と精神の全ての資質を高め、バランスよ
く結合させる生き方の哲学であり、スポーツを文化、教育と融合させ、生き方の創造を探求する
ものであるとしている。そして、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励することを目
指し、スポーツを人類の調和のとれた発展に役立てることを目的としている。
一方、パラリンピックは、スポーツを通じて障害者に対する社会意識の向上を促す役割を果た
すこと、全ての人が尊重され、平等な機会を得られるような公平な社会を目指すこと、パラリン
ピックの選手が最高レベルの競技スポーツに取り組めるようにすることを目的としている。
これらは、豊かな情操と道徳心、自主・自律の精神、公共の精神、伝統や文化を尊重し、我が
国と郷土を愛するとともに、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことなどを定める教育
基本法の「教育の目標」や学習指導要領の理念にも相通ずるものである。
このため、東京 2020 大会を、子供たちの人生にとってまたとない重要な機会と捉え、オリン
ピック・パラリンピック教育を全校で展開することとする。これにより、東京都の児童・生徒の
良いところを更に伸ばし、弱みを克服するための取組を確実に推進し、国際社会に貢献し、東京、
そして日本の更なる発展の担い手となる人材を育成していくとともに、東京 2020 大会の経験を
通じ、その後の人生の糧となるような掛け替えのないレガシーを子供たち一人一人の心と体に残
していく。
東京都におけるオリンピック・パラリンピック教育では、①自らの目標をもって自己を肯定し、
自らのベストを目指す意欲と態度を備えた人間、②スポーツに親しみ、「知」、「徳」、「体」の調
和のとれた人間、③日本人としての自覚と誇りをもち、自ら学び行動できる国際感覚を備えた人
間、④多様性を尊重し、共生社会の実現や国際社会の平和と発展に貢献できる人間を育成してい
くことを目指していく。
【施策の内容】
○
都教育委員会が定めた「東京都オリンピック・パラリンピック教育」実施方針に基づき、都
内全ての学校において、
「オリンピック・パラリンピックの精神」
「スポーツ」
「文化」
「環境」
の四つのテーマと「学ぶ(知る)」「観る」「する(体験・交流)」「支える」の四つのアクショ
ンとを組み合わせた多彩な教育プログラム(以下「4×4の取組」という。
)を推進する。
○ 「4×4の取組」を展開することで、子供たちに多くの資質・能力を身に付けさせていくこ
とが可能となるが、特に、
「ボランティアマインド」
「障害者理解」
「スポーツ志向」
「日本人と
しての自覚と誇り」「豊かな国際感覚」の五つの資質について重点的に育成する。
○
都教育委員会が作成する学習教材等を活用し、全ての教育活動の様々な教育実践に関連付け、
学校全体で組織的・計画的に展開する。この際、保護者や地域住民の参加を促す取組や、学校
と家庭とが連携できる学習方法などを積極的に取り入れる。
-39-
○
地域清掃、地域行事やスポーツ大会、地域防災、障害者・高齢者施設等でのボランティアな
ど、これまで各学校が取り組んできた社会奉仕の精神を養う取組を充実させた「東京ユースボ
ランティア」事業を推進し、子供たちにボランティアマインドを育むとともに、自尊感情を高
めていく。また、中学生や高校生が自ら積極的に地域のボランティア活動やスポーツ大会の運
営ボランティアなどに登録できるような仕組みを構築する。
○
これまで各学校で取り組んできた、共生社会における自らの関わり方や思いやりの心の育成
など、障害者理解教育の取組を充実・拡大する「スマイルプロジェクト」や、障害者スポーツ
を体験する活動、パラリンピアンとの交流等を通じ、障害者理解の促進を図る。
○
子供たちがアスリート等と直接交流する「夢・未来プロジェクト」を通じて、オリンピック・
パラリンピックの理念や価値を理解し、スポーツへの関心を高め、夢に向かって努力したり困
難を克服したりする意欲を培う。
○
東京ならではの国際交流を推進する「世界ともだちプロジェクト」を通じ、子供たちが複数
のオリンピック・パラリンピック参加国・地域について学習・体験する機会をつくり、異文化
を理解し、自他を認め合う心を育成する。
○
障害者スポーツの普及啓発を図るため、関係機関と協力し、特別支援学校の体育施設の活用
を促進する。
-40-
取組の方向7 教員の資質・能力を高める
現 状 と 課 題
教育の成否は子供たちの教育に直
接携わる教員にかかっており、その
都内公立学校年齢別教員数(平成 27 年5月1日現在)
質と数の充実は最も重要な課題の一
つである。
総数
2 500
小学校
都においては、大量退職、大量採
用が続き、経験豊かな教員が現場か
中学校
高等学校
2 000
特別支援学校
ら去る一方で若手教員が増加してお
1 500
り、経験の浅い教員も重要な校務分
掌を担わなくてはならない状況が生
1 000
じている。そのため、採用後すぐに
500
教員としての職責を果たすことがで
きるよう、養成段階において、実践
的な指導力など、教員として求めら
れる力を身に付けさせなければなら
-
18
20
22
24
26
28
30
32
34
36
38
40
42
44
46
48
50
52
54
56
58
60
62
64
「公立学校統計調査報告書」平成 27 年(東京都教育委員会)
ない。
採用段階においては、全国的に採
用者数が増加し、特に大都市圏にお
いて応募者の獲得競争が激化する中で、一定の応募者数を確保して競争性を担保し、その中から
教員としての資質・能力を有する者を確実に選抜していかなくてはならない。さらに、育成段階
においては、ベテラン教員の大量退職に伴う若手教員の増加により、学校全体の指導力の低下が
懸念される中、現職教員が教育のプロとして必要とされる資質・能力の向上を図ることは、重要
な課題である。
また、複雑化、多様化する学校を取り巻く課題に対し、学校が組織的に課題解決に当たること
ができるように、初任時(新規採用時)から組織人としての認識をもたせるなど、若手教員を確
実に育成することが必要である。
教育管理職については、教育管理職選考受験者数が減少する中、受験者を確保し、管理職とし
ての資質・能力を持った優秀な人材を選考し、育成していくことが課題である。
一方、精神疾患による休職者数は、平成 20 年度をピークに高止まりであり、他道府県と比較
して、依然高い発生率で推移している。精神的不調は、本人も周囲も早い段階では気付きにくく、
本人が不調を自覚しないと相談や受診につながりにくい傾向がある。このため、こじらせてしま
ったり、病気休業に入る直前になって受診したりすることが少なからず見受けられる。よって、
今後も管理職も含めた教職員に対する「早期発見」「早期対処」の予防策に重点を置いたメンタ
ルヘルス対策の充実を図る必要がある。
-41-
主要 施策
16
優秀な教員志望者の養成と確保
【施策の必要性】
教員の大量退職、大量採用が続き、ベテラン教員の指導経験やノウハウが継承されにくい状況
がある。その中にあって、新規に採用される教員に対し、教育に対する熱意と使命感はもとより、
豊かな人間性と組織人としての責任感・協調性、実践的な指導力や社会性等を育成するために、
採用前からより実践的な指導力等を身に付けることができる機会を提供する必要がある。また、
東京都の教育に求められる教師像にふさわしい人物を継続的に確保するとともに、
「世界で活躍
できる人材の育成」などの課題に、的確に対応していくため、選考内容・方法の改善に継続的に
取り組む必要がある。
【施策の内容】
○ 「小学校教諭教職課程カリキュラム」
(※3)に基づき、教育実習等の評価を行うとともに、
カリキュラムの内容の定着度を検証する採用選考を実施することにより同カリキュラムの普
及を図る。また、「東京教師養成塾」において、実践的な指導力や柔軟な対応力、組織の一員
としての自覚など、即戦力として活躍できる高い志をもった教員を学生の段階から養成する。
○
全国の教員養成課程を有する大学において、教員採用に係る説明会を実施し、各大学に対し
選考状況のフィードバックを行うことなどにより、都への受験を促すとともに、連携を強化し、
更に優秀な人材を確保する新たな取組を検討する。
○
平成 32 年度からの小学校の英語教科化に伴う平成 30 年度からの先行実施に向け、英語の専
門性の高い人材を確保するため、平成 28 年度に実施する教員採用候補者選考から小学校全科
(英語コース)を募集する。
○
世界で活躍するグローバルな人材の育成に向け、英語教育の一層の充実を図るため、教員採
用選考における英語の実技試験の内容を改善し、
「聞く」
「話す」
「読む」
「書く」の4技能に優
れた人材を確保する。
(※3)「小学校教諭教職課程カリキュラム」は、大学における学部段階で学生に身に付けさせておく必要があり、東京都の小学
校の教員として最低限必要な資質・能力を示したものである。
-42-
主要 施策
17
現職教員の資質・能力の向上
【施策の必要性】
学校組織を構成する教員全体の資質・能力の向上を図り、教員の成長を学校全体の教育力向上
につなげるため、教員経験、職層等に応じた現職教員の育成が必要である。
児童・生徒の個に応じた教育を推進するためには、教員が「プロ意識」をもって児童・生徒一
人一人の可能性を見出し、それを高めようとする強い情熱が必要である。そのために、学校全体
さん
で個々の児童・生徒の課題を共有するとともに、教員が相互に競い合い自己研鑚しながら授業力
や教科等の専門性を高め、成長していく組織風土を培う必要がある。さらに、産業構造が変化し、
科学技術が進展する中で、将来、世界で活躍できる若者など、社会が求める人材を育成すること
のできる専門性の高い教員の育成が必要である。
関係法令の改正など社会状況が変化し、教職員の非違行為も多様化し、これまでの標準例では
対応できない事故が増加している。非違行為に公正かつ厳格に対応するとともに、教職員へ注意
喚起し事故を予防する必要がある。
【施策の内容】
○
教職経験に応じた研修である「採用前実践的指導力養成講座」
「東京都若手教員育成研修」
「東京
教師道場」「10年経験者研修」及び「喫緊の教育課題に関する研修」の研修内容を充実し、授業
力などの資質・能力に関して、全ての教員に対しその経験に相応な力を育成する。
また、現職教員を教職大学院に派遣し、教科等の専門性と学校経営・教育行政の視点からの研究
を行わせ、各地域、学校における指導的役割を担う教員として育成する。
○
「学校管理職育成指針」、「教員人材育成基本方針」及び「OJTガイドライン」(※4)等
を活用し、区市町村教育委員会及び学校経営支援センターと連携の上、都内全ての公立学校に
おいて、意図的・計画的に教員の経験や能力、職層に応じた育成を図っていく。
○
教育管理職や主幹教諭、主任教諭等を対象とした職層研修では、より実践的な力が身に付く
よう具体的な事例に基づく演習を多く取り入れるなど、研修内容を一層充実させることにより、
それぞれの職層ごとに求められる資質・能力の向上を図る。
○
学習指導において高い専門性を有し、他の教員に対して優れた指導力を有する指導教諭を活
用し、個々の教員が自ら成長しようとする意欲を引き出すとともに、教員全体の「プロ意識」
かん
の涵養や能力・専門性の向上を図る。
○ 実践的な研究活動により、教材研究や指導方法の工夫・改善などに取り組む教育研究員の研
究内容を充実させる。さらに、教科の専門性の一層の向上、教科の指導的役割を担う人材を育
成するために研究開発委員会等の制度を構築し、東京教師道場修了者、教育研究員修了者等か
ら研究開発委員を募り、開発的研究を実施するとともに、教員研究生の研究内容のより一層の
充実を図る。
○
専門性向上研修では、教員一人一人が、基礎的・基本的な力を身に付ける段階、若手教員を
育成する力を高める段階、身に付けた専門性を学校や地域に還元できるようにする段階の3段
階の到達目標を設定し、教育実践に役立つ実効性のある研修を通して、授業力や生活・進路指
導力等を高めることをねらいとして実施する。
-43-
○
教員の海外派遣研修の拡大や青年海外協力隊等への参加促進など、国際的視野を身に付けた
教員を育成する取組を推進する。
○
専門高校において、職業人として求められる技術・技能の高度化に対応し、生徒に実践的な
技術・技能等を確実に習得させることができるよう、教員の技術研修プログラム等を構築し、
計画的に、専門的指導力・技術力の向上を図る。
○
部活動の在り方を見直し、部活動の一層の振興を図るとともに、体罰を含めた服務事故再発
防止研修や体罰を指導の手段とする誤った認識を改めるための「指導方法・意識改善プログラ
ム」を実施することなどにより、体罰を根絶する。
○
服務事故の多様化や、教職員の非違行為に対する社会の見方が一層厳しくなっている状況等
を踏まえて新たに改正した教職員の主な非行に対する標準的な処分量定に基づき、教職員の更
なる自覚を促し、服務規律の徹底を図る。
○
メンタルヘルス対策について、予防の観点からストレスチェック等の実施、相談業務の充実
とともに、新任副校長を対象とした健康相談とカウンセリングを併用した研修を実施する。ま
た、職場復帰に際しては、職場復帰訓練機関である「リワークプラザ東京」を活用することに
より、円滑な職場復帰を支援し、再度休職することを予防する。
(※4)OJT(On the Job Training)は、日常的な職務を通して、必要な知識や技能、意欲、態度などを、意識的、計画的、
継続的に高めていく取組である。
「OJTガイドライン」は、学校においてOJTを効果的に進めるための具体的な取組等
を示している。
-44-
主要 施策
18
優秀な管理職等の確保と育成
【施策の必要性】
現在、教育管理職選考の有資格者となる 30 歳代後半から 40 歳代までの教員が、採用者数の少
ない時期に任用された世代に当たることもあり、選考受験者数は少なくなっている。また、若手
教員に学校経営を担う意識が十分に育っておらず、副校長等の多忙な姿を見て、管理職の仕事に
魅力を見いだせない状況がある。
今後、意欲と能力を有する教育管理職受験者を確保するためには、管理職としての資質・能力
を有する人材を掘り起こし、計画的に育成するとともに、管理職の職務と家庭生活を両立できる
よう支援していくことが重要である。
さらに、教育管理職には、「学校経営力」、「外部折衝力」
、「人材育成」、「教育者としての高い
見識」の四つの力が重要であり、これらの能力を高める組織的、計画的な取組が必要である。
【施策の内容】
○
各地区等で中核となって活躍する管理職を若手教員のうちから計画的に育成するため、平成
26 年度から本格実施している「学校リーダー育成プログラム」
(学校マネジメント講座、学校
リーダー育成特別講座)の受講者を拡大するなど、研修の更なる充実を図る。また、若手から
ミドルリーダー層に至るまでの教員に、学校マネジメント能力の育成を図る研修を体系的に実
施する。
○
困難な教育課題への対応力を向上するため、教育管理職候補者及び指導主事を教職大学院へ
派遣し、確かな指導理論と優れた実践力及び応用力を身に付けさせる。また、指導主事等を海
外の大学院等へ派遣し、海外の教育事情等の調査研究を通して、資質能力の向上を図る。
さらに、昇任直後の副校長に対して実施している経営力アップ研修等の充実を図る。
○
校務を組織的かつ横断的に調整する経営支援組織設置校の拡大やモデル事業の実施等、小・
中学校における校務改善の取組を推進することにより、学校経営の要である副校長の負担軽減
に取り組むとともに、主幹教諭及び主任教諭等の学校マネジメントに対する理解促進を図る。
○
副校長の負担軽減に向けた取組の一つとして、65 歳以上の元教育管理職を一般職非常勤職
員(学校経営支援員)として積極的に任用していく。
○
退職した教育管理職が長年培ってきた知識や経験等を活用していくため、小・中学校を中心
に、退職した校長及び副校長を引き続き管理職として積極的に再任用する。
○
女性教員の教育管理職等への登用を促進するため、育児・子育て時期における人事異動面で
の配慮を行うほか、キャリア形成を意識したジョブローテーションを推進する。また、女性管
理職のロールモデル集を作成・配布して、キャリアアップの意欲向上を図る。
○
教育管理職B選考の受験有資格者となる主幹教諭層の拡大を図るため、主幹教諭の配置基準
の弾力的な運用等により、意欲と能力のある教員の主幹教諭への登用を促進する。
○
管理職受験への意欲醸成と受験者確保について、新たな取組を検討する。
-45-
取組の方向8 質の高い教育環境を整える
現 状 と 課 題
学校は保護者が安心、信頼して児童・生徒を託す場となるよう、質の高い教育を提供する必
要がある。
近年の我が国の高校教育や都政の動向を見ると、高大接続改革及び次期学習指導要領に向け
た検討の進展、東京 2020 大会の開催決定、東京都教育施策大綱の策定など、都立高校の教育活
動に影響を及ぼす変化が色々と生じている。都立高校が都民の期待に引き続き応えていくため
には、これまでの枠組みにとらわれない広範な取組を展開していく必要がある。
また、東京都の特別支援教育は、平成 22 年 11 月に策定した東京都特別支援教育推進計画第
三次実施計画に基づき、知的障害特別支援学校の在籍者の増加に対応するため規模と配置の適
正化を図るとともに、知的障害が軽い生徒を対象とした高等部就業技術科と職能開発科を設置
し、職業教育や就労支援を充実するなどの推進を図っている。
さらに、平成 17 年の発達障害者支援法施行や平成 19 年の学校教育法の一部改正により特別
支援教育の対象となった発達障害についても、全ての小学校での特別支援教室設置に向けた区
市町村への支援など、公立学校における発達障害教育の取組を進めている。
平成 28 年 4 月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」も施行され、通常の学
級に在籍する発達障害の児童・生徒をはじめ、全ての障害のある児童・生徒等の将来の自立と
社会参加を実現するため、今後、特別支援教育の更なる充実が必要である。
一方、社会の様々な分野にお
いてグローバル化が進み、社会
都立特別支援学校(知的障害教育部門)在籍者数の推移
5,000
状況が大きく変化する中で、学
4,500
校が直面する教育課題も複雑
4,000
化、多様化している。社会状況
3,500
の変化を踏まえ、教育課題を迅
速かつ的確に解決していくため
2,098
2,000
解決に当たらなければならな
1,000
1,118
838
967
680
500
小学部
2,080
1,495
1,357
1,109
961
2,119
1,956
1,647
1,391
4,726
3,593
2,808
2,528
2,500
1,500
そのためには、校務改善を更
高等部
3,000
には、学校は組織体として課題
い。
4,427
2,371
1,630
中学部
0
H9
に推進するとともに、各職層の
H12
H15
H18
H21
H24
H27
「公立学校統計調査報告書」(東京都教育委員会)より作成
教員がその職責を十分に果たし
ていくことが必要である。
また、一層複雑・多様化する課題の解決には、教員のみならず、専門性を備えた多様な人材を
学校において活用していくことも必要である。
-46-
主要 施策
19
都立高校改革の推進
【施策の必要性】
大学入試改革及び次期高等学校学習指導要領への対応、グローバル人材の育成に向けた取組の
強化、ニート、フリーターなどの若年者の就業問題の解決に資する取組の推進など、都立高校を
取り巻く新たな課題に的確に対応していくためには、平成 28 年2月に策定した都立高校改革推
進計画・新実施計画(※5)を着実に推進することにより、教育内容や教育環境の更なる充実を
図る必要がある。
【施策の内容】
○
東京 2020 大会の開催とその先を見据え、
「知」
「徳」
「体」の調和がとれ、社会人としての自
覚や働く意欲をもち、グローバル化が進む社会で活躍できる人間を育成する(次代を担う社会
的に自立した人間の育成 取組例:個の状況に応じた学力向上の支援、英語教育推進校の指定、
主権者意識の醸成など)
。
○
生徒の能力を最大限に伸ばす教育実践の場の充実に向けて、生徒や社会のニーズを踏まえな
がら、既存の学科改善等に加え、新たな学校の設置に取り組む(生徒一人一人の能力を最大限
に伸ばす学校づくりの推進
取組例:小中高一貫教育校の設置、チャレンジスクールの新設・
規模拡大など)。
○
質の高い教育を実現するため、組織的な学校経営の強化、教員の指導力の向上、課題を抱え
る生徒の自立に向けた支援の充実など、様々な教育条件や支援体制を着実に整備する(質の高
い教育を支えるための環境整備 取組例:学校経営指標による組織的な学校経営の支援、都教
職員研修センターにおける教員の研修内容の充実など)
。
(※5)都立高校改革推進計画は、これからの都立高校が都民の期待に応えるため、課題の解決を図り今後の展望を明らかにす
る総合的な計画として平成 24 年2月に策定したもので、平成 24 年度から平成 33 年度までの 10 年間を計画期間としている。
なお、平成 28 年2月に計画を一部改定している。
「都立高校改革推進計画」の経過
平成7年度 8年度 9年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 ~ 22年度 23年度 24年度
白都
書立
公高
表校
都
構
立
想
高
懇
校
談
長
会
期
「都立高校改革推進計画」(平成9年度から平成18年度まで)
※平成23年度まで「改革継続期間」
第一次実施計画
9~11(3年間)
第二次実施計画
12~14(3年間)
新たな実施計画
15~18(4年間)
改革継続期間 白都
書立
19~23
公高
(5年間)
表校
-47-
25年度
26年度
27年度 28年度 29年度 30年度 31年度 32年度 33年度
「都立高校改革推進計画」
(平成24年度から平成33年度まで)
第一次実施計画
24~27(4年間)
新実施計画
28~30(3年間)
次期実施計画(仮称)
31~33(3年間)
主要 施策
20
特別支援教育の推進
【施策の必要性】
特別な支援を必要とする幼児・児童・生徒の自立と社会参加に向けて、特別支援学校における
教育環境の整備・充実に取り組むとともに、通常の学級に在籍する発達障害の児童・生徒への支
援体制を整備するなど、東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画(※6)を着実に推進する
ことにより、全ての学校における特別支援教育の充実を図る必要がある。
また、東京都発達障害教育推進計画(※7)に基づき、公立学校に在籍する発達障害の全ての
児童・生徒が、その持てる力を最大限に伸ばし、将来の自立と社会参加を実現できるよう、適切
な教育的支援を行う必要がある。あわせて、発達障害のある児童・生徒と障害のない児童・生徒
が、共に学び合うことができるよう、通常の学級における教育的支援をはじめ、障害の状態に応
じた多様な教育の場の拡充が求められている。
【施策の内容】
○
知的障害特別支援学校の在籍者の増加に適切に対応するため、東京都特別支援教育推進計
画第三次実施計画に基づき、知的障害特別支援学校の新設や増改築等を計画的に進め、都立特
別支援学校の規模と配置の適正化を図る。
○
障害の重度・重複化や多様化などに適切に対応するため、複数の障害教育部門を併置する学
校の開設や外部専門家と連携した体制の構築など、必要な教育環境を着実に整備する。
○
個別指導計画等に基づく適切な指導と支援を充実させるとともに、特別支援学級の教育課程
の研究・開発に取り組む。
○
これまでの東京都特別支援教育推進計画による取組の成果や国の障害者施策の動向を踏ま
え、現計画に引き続く新たな特別支援教育推進計画の策定を検討する。
○
公立小・中学校の通常の学級に在籍する発達障害の児童・生徒一人一人が抱える学習面・行
動面での困難を、より効果的に改善・克服するため、区市町村との緊密な連携の下、全ての小・
中学校における特別支援教室の設置促進に向けた取組を行う。
○
都立高校において、発達障害の生徒一人一人の障害の状態はもとより、各校の実態に応じた
指導・支援の充実に向け、学校外で特別な指導・支援を行える環境を整備する。また、自己の
障害に関する理解や社会性の向上を含むキャリア教育を実施することを目的とした学校設定
教科「社会人としての意識と行動(仮称)
」の研究開発等に取り組む。
○
障害のある児童・生徒が持つ芸術的才能を見いだし、広く都民に紹介するため、都立特別支
援学校の児童・生徒が制作した優れた芸術作品を展示する展覧会「アートプロジェクト展」を
開催する。
(※6)東京都特別支援教育推進計画第三次実施計画は、これからの東京都における特別支援教育の推進の方向性について全都
的な視点に立って展望を明らかにした総合的な計画「東京都特別支援教育推進計画」における、平成 23 年度から平成 28
年度までの実施計画として平成 22 年 11 月に策定した。
(※7)東京都発達障害教育推進計画は、児童・生徒の発達段階や障害特性に応じた指導・支援や、小・中学校及び高校での一
貫性のある継続した教育などへの対応、教育と保健・医療・福祉・労働との連携等について検討し、発達障害教育の充実
に必要な具体的施策を盛り込んだ、都における今後の取組を明らかにする発達障害教育に関する総合的な計画
-48-
主要 施策
21
学校運営力の向上
【施策の必要性】
学校が直面する様々な課題に対し、教職員が組織的に対応するとともに、効率的な学校運営体
制を実現することにより教育の充実を図るため、更なる校務の改善が必要である。
とりわけ、子供や学校を取り巻く状況が一層複雑化・多様化していることから、様々な専門性
を持ったスタッフと連携するなど、学校の教育力・組織力を向上させ、一人一人の子供の状況に
応じた教育を実現する必要がある。
また、地域人材の参加を促進し、地域全体で教育活動の質的向上を図ることも重要である。
【施策の内容】
○
公立小・中学校において、校務を組織的かつ横断的に調整する経営支援組織設置校の拡大を
図るなど、校務改善の取組を支援していく。また、都立高校において、教員が生徒と向き合う
時間の確保など、課題の解決に向け、学校における調査・報告業務の縮減などについて検討す
る。
○
チームとしての学校の在り方について、国では中央教育審議会の答申を受け、法改正等を検
討している。こうした動向を踏まえ、チームとしての学校が機能するよう、専門性をもったス
タッフの活用や地域との連携による「東京都版チーム学校」について、多面的な視点から今後
の学校運営の在り方を検討する。
-49-
主要 施策
22
学校の教育環境整備
【施策の必要性】
都立学校においては、阪神・淡路大震災を契機とし、計画的に校舎等の耐震補強や改築を推進
してきた結果、平成 22 年度末までに全ての都立学校の耐震化が完了した。また、区市町村立小・
中学校等においては、平成 27 年4月1日現在、耐震化率は 99.7%となっている。
学校施設が、発災時において、児童・生徒の安全を確保する場となるだけではなく、避難所と
しても必要な機能が発揮できるよう、引き続き、非構造部材の耐震化など、都立学校及び区市町
村立小・中学校等における震災対策の推進が必要である。
また、全都立学校に導入したICT機器を効果的に活用し、教員による「よくわかる授業」を
実現するとともに、児童・生徒の興味・関心を引き出し、協働学習等により「思考力・判断力・
表現力」を伸長できるICT環境を整備する必要がある。さらに、校務情報の一元化により業務
の効率化を図るための仕組みが必要である。
都立学校及び区市町村立小・中学校における普通教室への冷房設備の整備は既に完了している
が、夏季における良好な教育環境を確保するためには、実験・実習等を行う特別教室についても、
冷房化を進めていく必要がある。
【施策の内容】
○
都立学校において、天井材、照明器具、外壁等の非構造部材の耐震化を計画的に実施する。
また、区市町村立小・中学校等の非構造部材の耐震化支援を引き続き実施する。
○
児童・生徒が主体的にICT機器を活用できるよう、都立学校では、学級等で一人一台利用
可能なタブレットPCの配備を計画的に進める。また、教職員一人一台のTAIMS(東京都
高度情報化推進システム)端末配備の環境を活用した成績処理推奨ファイルと成績等管理サー
バによる成績情報の一元管理や全都立学校に在籍する児童・生徒の指導要録の電子化を引き続
き推進する。
○
都立高校の理科系実験室、美術室、工芸室、調理室、被服室及び都立特別支援学校の全特別
教室への冷房設備の整備を計画的に進める。また、区市町村立小・中学校についても、都立高
校の整備対象教室に合わせて、冷房化を促進するため、整備経費の補助を行う。
○
都立学校における校庭芝生化事業を継続的に推進する。また、公立小・中学校の校庭芝生化
や校舎の屋上・壁面緑化についても、工事費や維持管理費の補助を継続する。
-50-
取組の方向9 家庭の教育力向上を図る
現 状 と 課 題
平成 26 年度の東京都の調査では、
「世の中
全般に家庭の教育力が低下しているか」とい
「家庭の教育力」が、世の中全般に低下していると思いますか。
う問いに、
「そう思う」
「ある程度そう思う」
と回答した割合は約 88%も占めている。そ
全くそう思わない
1.5%
の理由として、「親自身にルールが身に付い
ていない」
、
「責任感がない」などのほか、
「家
族が一緒に過ごす時間がない」、
「自らの生活
そう思う
47.7%
ある程度そう思う
40.4%
を重視し、教育がおろそかになっている」と
いった回答が上位に挙げられている。
どちらともいえない
7.8%
このように子供の家庭における成育環境
が大きく変化している背景として、核家族化
が挙げられる。東京都における世帯構成を見
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
あまりそう思わない
2.6%
80%
90%
100%
「インターネット都政モニターアンケート」平成 26 年(東京都)
ると、親族のみの世帯に占める核家族世帯の
割合は 91.7%となっている。
また、近年、子供の貧困率(平成 24 年
「家庭の教育力」が低下した理由は何だと思いますか。
(複数回答)
16.3%)が増加しているという現状もあり、 親自身に正しいルールやマナーが身についていないから
このことも背景の一つと考えられる。政府の
61.5%
親自身の責任感や心構えができていないから
47.5%
家族が一緒に過ごす時間が少なすぎるから
34.6%
調査によれば、我が国の子供の貧困の状況が
先進国の中でも厳しく(2010 年 OECD 加盟国
課調べ)である。このため、国においても、
仕事など自らの生活を重視するあまり、家庭教育やしつけが
おろそかになっているから
親が、子供にルールやマナーを身に付けさせるのは学校の
役割と考えているから
地域社会との交流が減り、地域全体で子供の成長を見守る
環境が失われたから
祖父母の世代から父母の世代へしつけの必要性が伝えられ
る機会が減ったから
平成 26 年1月に「子どもの貧困対策の推進
親が、子供の自由に任せすぎているから
に関する法律」が施行されるなど、その対策
しつけや子育ての悩みなどについて親が気軽に相談できる
相手がいないから
インターネット等でのしつけや子育てに関する情報が多すぎ
るから
34 か国中 25 位:平成 25 年国民生活基礎調
査)
、生活保護世帯の子供の高等学校等進学
率も全体として低い水準(90.8%:平成 25
年4月1日現在厚生労働省社会・援護局保護
が進められている。
教育課題だけではなく社会全体の課題が
複雑、多様化する現代において、教育は学校
その他
のみならず、家庭との連携を図りつつ行われ
32.4%
23.0%
22.1%
21.1%
18.1%
14.0%
5.9%
3.4%
「インターネット都政モニターアンケート」平成 26 年(東京都)
ることが重要である。とりわけ、家庭で行わ
れる日常の活動による教育効果は大きく、社
会全体の変革にもつながる期待もできる。
今後は、道徳教育、防災教育、オリンピック・パラリンピック教育など様々な教育課題に対し、
家庭を巻き込んだ教育活動の推進を図っていく必要がある。
-51-
主要 施策
23
家庭教育を担う保護者への支援体制の充実
【施策の必要性】
保護者が家庭における教育の重要性を理解し、子供の教育に対する第一義的責任を果たすこ
とができるようにするため、社会全体で家庭教育を担う保護者への支援体制を構築する必要があ
る。また、児童・生徒の健全育成上の課題を早期に発見・対応し、学校生活において課題の見ら
れる児童・生徒の立ち直りを図るためには、当該児童・生徒に直接的な対応を行うとともに、そ
の保護者への支援を教育と福祉の両面から行う必要がある。
【施策の内容】
○
教育分野に関する知識に加え、社会福祉等の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャ
ルワーカー等が、保護者への支援など児童・生徒が置かれた環境へ働き掛ける仕組みを、区市
町村教育委員会と連携し、全小・中学校で活用できる体制の構築を目指す。
○ 「家庭と子供の支援員」を配置し、教員とともに家庭訪問等を行い、子供の問題行動等に適
切に対応する。あわせて、保護者の不安や悩みを解消することにより、子供の立ち直りを支援
する。また、対応が困難なケースへの専門的な助言を行うため、精神科医や臨床心理士などを
「スーパーバイザー」として学校等に配置する。
○
乳幼児期からの子供の教育は極めて重要であることから、子供の成長・発達段階に応じた医
学等の知見を踏まえた啓発を行う。また、区市町村における家庭教育支援の取組に対して人材
養成等の支援を行う。
-52-
主要 施策
24
学校と家庭が一体となった教育活動の充実
【施策の必要性】
子供たちの基本的な生活習慣、自立心、他人への思いやりなど豊かな心、善悪の判断などの倫
理観、社会的なマナーといった人格形成の基盤となる力を育むには、学校の教育だけでは限界が
あり、学校と家庭が相互の教育について理解を深め合い、一体となった取組を進めていくことが
重要である。
【施策の内容】
○
小・中学校において、道徳授業地区公開講座の一層の充実・工夫を図るなど、各学校におけ
る道徳教育に、保護者が主体的、積極的に参加できる取組を、区市町村教育委員会と連携して
推進する。
○
全ての学校において、子供たちが、防災ブック「東京防災」や防災ノートを活用し、保護者
とともに学習するなど、学校と家庭が一体となった防災教育を推進する。
○
教職員が、保護者をはじめ、PTA、地域住民、関係機関と緊密な連携をして、子供たちの
生活全般に関する不安や悩みを把握し、必要な対応を行うことができる支援体制を構築するな
どにより、子供の自殺防止の徹底を図る。
○
東京都が策定した独自のルールである「SNS東京ルール」を踏まえ、家庭においても、保
護者と子供が話し合って「SNS家庭ルール」をつくる等、学校、家庭等が一体となって、子
供たちの適正なSNS利用に向けた取組を推進する。
○
いじめに関する専用の情報サイト・アプリを開発するなど、子供から保護者までを対象に、
いじめの相談や暴力等の対処法を知り、相談先にアクセスしやすい環境づくりを推進する。
○
オリンピック・パラリンピック教育では、ボランティアマインドの醸成や障害者理解教育な
どを展開する際、保護者の参加を促す取組や、学校と家庭とが連携できる学習方法などを積極
的に取り入れる。
-53-
取組の方向10 地域・社会の教育力向上を図る
現 状 と 課 題
平成 26 年度の東京都の調査では、
「世の中
「地域の教育力」が、世の中全般に低下していると思いますか。
全般に地域の教育力が低下しているか」とい
全くそう思わない
0.6%
う問いに、
「そう思う」
「ある程度そう思う」
と回答した割合は約 86%も占めている。
また、子供たちがルールや社会を守れない
ある程度そう思う
46.0%
そう思う
40.0%
理由として、
「正しい社会ルールやマナーが
身に付いていない大人が増えている」「地域
てきている」などが挙げられていることから
あまりそう思わない
3.2%
どちらともいえない
10.2%
に他人の子供を叱ってしつける大人が減っ
0%
も、地域の教育力が低下していることが伺わ
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
「インターネット都政モニターアンケート」平成 26 年(東京都)
れる。
一方、地域の教育力を上げるのに有効な手
立てとして、「子供たちに色々な世代との交
流体験を増やす」、「他人の子供でも、地域
の子、社会の子として育成するように心がけ
「地域の教育力」を上げるためには、何が有効だと思いますか。
(複数回答)
子供に色々な世代との交流体験の機会を増やす
64.8%
教育や体験学習に取り組む」などが挙げられ
他人の子供でも「地域の子」「社会の子」として育成するよう
に心がける
学校・地域・家庭等が連携して「心の教育」や「体験学数」に
取り組む
ている。
子供をできるだけ集団で遊ばせる
33.3%
その他
5.4%
わからない
4.3%
る」、「学校・地域・家庭等が連携して心の
また、多様な経験を有する高齢者を中心と
した地域の人々は、地域活動や社会貢献活動
55.7%
51.6%
に参加することを望んでおり、こうした地域
「インターネット都政モニターアンケート」平成 26 年(東京都)
貢献の意欲と熱意を顕在化させ、地域におけ
る学校教育への支援体制を構築することが、
より質の高い教育を提供することになる。
さらには、学校教育への支援を通じて、支
援に関わる地域住民自身が生涯を通じて学
子供達が社会のルールやマナーを守れない原因は何だと思いま
すか。
(複数回答・上位抜粋)
正しい社会ルールやマナーが身についていない大人が増え
ているから
61.5%
悪い行為をした時に、子供を叱れる保護者が減っているから
47.5%
しつけを学校だけに任せる保護者が増えているから
34.6%
徳教育、防災教育、オリンピック・パラリン
地域に他人の子供でも叱ってしつける大人が減っているから
32.4%
ピック教育など様々な教育課題に対し、地域
少子化と核家族化により、世代間や兄弟間で交流する機会
が減っているから
23.0%
び続けることが助長されれば、生涯学習社会
の一層の実現にもつながる。
今後は、児童、生徒の基礎学力の向上、道
社会と連携した教育活動の推進を図ってい
「インターネット都政モニターアンケート」平成 26 年(東京都)
く必要がある。
-54-
主要 施策
25
地域等の外部人材を活用した教育の推進
【施策の必要性】
子供たち一人一人が、変化が激しく、先行きが不透明な社会をたくましく生き抜く力を身に付
けるためには、社会全体で学校教育を支援し、質の高い教育が提供できるようにするとともに、
子供たち一人一人と社会との結び付きを強めることが必要である。そのため、地域等の外部人材
を積極的に活用した教育を推進することが必要である。
【施策の内容】
○ 「地域教育推進ネットワーク東京都協議会」の活用や、区市町村の中学校区を基本とした「学
校支援ボランティア推進協議会」設置の促進、「教育庁人材バンク」の活用を通じ、地域の実
情や学校のニーズに応じた、地域等の多様な外部人材の参画による教育支援活動を展開する。
また、都立学校においては、学校運営連絡協議会の活性化により、地域社会や保護者の意見
を適切に学校経営に反映させる。
○
放課後等に、大学生や退職教員等が児童・生徒への補充学習や発展的な学習を行う取組を推
進する。
-55-
主要 施策
26
学校と地域社会が連携した教育活動の充実
【施策の必要性】
子供を取り巻く環境の変化、家庭や地域の子育て機能・教育力の低下が指摘される中、子供たちが
健全に成長していくための環境づくりが必要である。特に都市化、核家族化や女性の社会進出が進み、
地縁が希薄になる中で、社会全体で子供を見守り、健全育成を推進するためには、学校や地域社会が
それぞれの役割と責任を自覚しつつ、地域全体で教育に取り組む体制づくりが重要である。
具体的には、地域においては、学校の様々な教育活動を支援するとともに、子供が安全に過ごすこ
とができる場、異年齢の友達や異世代の人々と関わり、体験活動や交流活動を行う場を確保すること
や、子供の学習を支援する場を確保することが求められる。そのため、授業終了後や週末などに、地
域の資源や人材を活用して子供が様々な人と触れ合い、活動したり学んだりする場を拡充する等の学
校と地域社会が連携した施策が必要である。
【施策の内容】
○
小学校区に「放課後子供教室」の設置を促進するとともに、地域の人材を活用した活動プロ
グラムの充実を図り、放課後等の体験・学習活動を質・量ともに向上させる。また、障害のあ
る児童・生徒の放課後等における交流活動や体験活動を推進する。
○
小学生中心の「放課後子供教室」
、中学生中心の「地域未来塾」
、高校における学び直し学習
である「校内寺子屋」などにおいて、地域住民や外部人材を活用して、児童・生徒の放課後の
補習等を充実させ、授業以外の場における学習支援の充実を図る。
○ 小・中学校において、道徳授業地区公開講座の一層の充実・工夫を図るなど、各学校におけ
る道徳教育に、地域住民が主体的に参加したり、積極的に協力したりできる取組を、区市町村
教育委員会と連携して推進する。
○
全ての学校において、地域や防災関係機関と連携し、発達段階に応じた防災教育を充実させ
るなど、学校と地域が一体となった防災教育を推進する。
○
教職員が、PTA、地域住民、関係機関と緊密な連携をして、子供たちの生活全般に関する
不安や悩みを把握し、必要な対応を行うことができる支援体制を構築するなどにより、子供の
自殺防止の徹底を図る。
○
いじめに関する専用の情報サイト・アプリを開発するなど、子供から保護者や都民などの大
人までを対象に、いじめの相談や暴力等の対処法を知り、相談先にアクセスしやすい環境づく
りを推進する。
○
オリンピック・パラリンピック教育では、ボランティアマインドの醸成や障害者理解教育な
どを展開する際、地域住民の参加を促す取組や、学校と地域とが連携できる学習方法などを積
極的に取り入れる。
-56-
第3章
参考資料
-57-
東京都教育ビジョン(第3次)一部改定(案)骨子に対するパブリックコメントの結果について
1.意見募集の結果の概要
(1)募集期間
平成28年2月12日(金)から同年3月4日(金)まで
(2)提出方法
電子メール、ファクシミリ又は郵送
(3)意見の総数等
ア 項目と件数
項目
件数
1 個々の子供に応じたきめ細かい教育の充実
7
2 世界で活躍できる人材の育成
5
3 社会的自立を促す教育の推進
16
4 子供たちの健全な心を育む取組
0
5 体を鍛え健康に生活する力を培う
1
6 オリンピック・パラリンピック教育の推進
6
7 教員の資質・能力を高める
4
8 質の高い教育環境を整える
1
9 家庭の教育力向上を図る
0
10 地域・社会の教育力向上を図る
1
その他
1
合計
42
イ 属性及び人数
属性
人数
保護者
4
学校関係者
7
その他
7
不明
1
合計
19
-58-
2.主な意見(要旨)と東京都教育委員会の考え方
分野
主な意見(要旨)
取組の
方向
東京都教育委員会の考え方
意見者
主要施策
個々の子供に応
基礎・基本の定
1 じたきめ細かい教 1 着と学ぶ意欲の
育の充実
向上
「アクティブ・ラーニングなど、新たな時代を見据えた教育へと改革していく必要が
ある」ことが示されたことは大きな変化であるが、こうした改革を進めていくには、「カ
リキュラム・マネジメント」等と連動させていくことが重要である。その重要性を示すこ
となどにより、東京都の教育が全国に先駆けて質的な転換を具体的に果たすように
していただきたい。
都教育委員会は、これまでも、カリキュラムマネジメントを確立していくことの重要
性について各学校に周知してきました。今後、思考力・判断力・表現力及び能動的
に学習に取り組む態度を育むためには、アクティブラーニング等を活用した授業展
学校関係者
開が求められており、カリキュラムマネジメントを通して、学校全体の取組として子供
たちの質の高い学びを引き出していくことが重要となります。このため、教育ビジョン
該当箇所においてこれらを明記するとともに、各学校へ更に周知していきます。
2
世界で活躍でき
る人材の育成
世界で活躍できる人材には、高い英語力や世界で活躍しようとする意欲が求めら
「4 豊かな国際感覚の醸成」がしっかり育まれれば日本文化をふりかえることにな れますが、日本人としての自覚と誇りは求められる資質や能力の基礎となるととも
日本人としての自
5
るはずであり、「5 日本人としての自覚と誇りの涵養」は不要である。削除を希望す に、他国の歴史や文化を理解し敬意を払う態度の育成につながるものです。我が国 その他
覚と誇りの涵養
る。
の歴史や伝統・文化を理解し尊重する態度を身に付けることを通じ、引き続き日本
かん
人としての自覚と誇りの涵養に取り組んでいきます。
3
社会的自立を促
す教育の推進
道徳心や社会性 「社会性」と「規範意識」は同等なものではないため、並列は不自然だと思う。また、
教育ビジョンの該当箇所において、「社会性」の表現を改めるとともに、「特別活動」
7 を身に付ける教 人間としての在り方・生き方に関する自覚は道徳教育だけでなく、特別活動教育が
学校関係者
について記載しました。
育の推進
寄与するところが大きく、「特別活動」を文章に加えるべきである。
3
5
社会的自立を促
す教育の推進
9
不登校・中途退
学対策
体を鍛え健康に
体力向上を図る
13
生活する力を培う
取組の推進
平成27年度の都立高等学校入学者選抜から、中学校で身に付けるべき力を学力
検査の得点と調査書点によりみることとし、全日制課程の第一次募集・分割前期募
集では、学力検査の教科数を原則、5教科、学力検査と調査書点の比率を7:3とす
本来は力を持っているにも関わらず、不登校などにより中学校で満足な成績を得 るなどの改善を行いました。
られなかった生徒が高校で再スタートを切れるよう、すべての都立高校の一般入試 これに伴い、学力検査の得点や調査書点のみで選考を行うなどの特別選考は、改 保護者
に、一律に1割~2割の内申点不問の特別選考枠を復活させることを提案する。
善の趣旨と異なることから廃止しました。
なお、不登校経験等のある入学希望者がより多く入学できるよう、中学校からの調
査書によらない入学者選抜を行うチャレンジスクールの新設・規模拡大を図っていき
ます。
都立高校の中から、競技力の高い運動部活動のある学校を「スポーツ特別強化
校」に指定することに賛成である。私学に負けない練習環境とする施設面での充
実、長期的な指導を可能とする人事異動への配慮、文化部に関する特別強化校の
創設を提言する。
都立高校運動部活動の競技力向上を一層推進するため、備品等の環境整備に取
り組むほか、優秀な指導者(スーパーバイザー)による指導などを実施していきま
す。なお、教員の人事異動については、校長の人事構想に基づき異動年限を弾力
保護者
的に運用しています。
文化部については、部活動推進指定校の指定などにより、部活動指導の充実を
図っています。
オリンピック憲章が定めるオリンピズムの理念は、豊かな情操と道徳心、自主・自
オリンピック・パラ
オリンピック・パラ
律の精神、公共の精神などを定める教育基本法の「教育の目標」や学習指導要領
五輪教育の歴史、意義、必要性がよく理解できない。このような教育が本当に必要
6 リンピック教育の 15 リンピック教育の
の理念にも相通ずるものです。このため、東京2020大会を子供たちの人生にとって 保護者
なのか。何が有効なのか。
推進
推進
またとない重要な機会と捉え、これからの時代を生きる上で必要な資質を育成して
いくこととしました。
質の高い教育環
8
境を整える
経営支援組織には、事務職員及び用務主事も参画することが重要です。そのた
公立小中学校における経営支援組織設置校の拡大に関し、学校の運営に係る事
学校運営力の向
め、研修等を通じた計画的かつ意図的な育成、事務マニュアル等の共有化、共通す
21
務職を増やす、IT関連の専門知識のある事務職を必ず置くなどの、事務的な面を手
その他
上
る事務の共同実施などに取り組んでいます。御意見も踏まえ、課題に柔軟に対応で
厚くして欲しい。
きる効率的な学校運営体制づくりを目指していきます。
地域・社会の教
10
育力向上を図る
昨今、子供や学校を取り巻く状況が一層複雑化・多様化し、教員の専門性だけで
地域等の外部人
教職員定数を増やさずに、外部人材で間に合わせてしまうというような、安易な利 は対応が困難になっています。外部人材の活用は、教員に加えて多様な専門スタッ
25 材を活用した教
その他
用であってはならない。
フを配置し、 様々な業務を連携・分担しそれぞれの専門性を発揮することで、一人
育の推進
一人の子供の状況に応じた教育の実現を目指すものです。
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東京都教育ビジョン(第3次・一部改定)
平成 28 年4月
発
行
東京都教育庁総務部教育政策課
〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号
電話
03(5320)6708
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