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Vol.649(pdfファイル) - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部

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Vol.649(pdfファイル) - 京都大学 大学院経済学研究科・経済学部
2016 年 12 月 12 日発行 第 649 号
CONTENTS
「中国経済研究会」のお知らせ ................................................................................................................... 2
経済史シンポジウムのお知らせ ................................................................................................................... 3
中国ニュース 12.5-12.11 ........................................................................................................................... 5
日本でネットショッピングが中国ほど盛り上がらないワケ 福喜多俊夫 ............................................... 11
【中国経済最新統計】 ............................................................................................................................... 14
1
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
「中国経済研究会」のお知らせ
2016年度第7回(通算第61回)の中国経済研究会は下記の要領で開催することになりましたので、
ご案内いたします。大勢の方のご参加をお待ちしております。
記
時
間: 2016 年 12 月 20 日(火) 16:30-18:00
場
所: 京都大学吉田キャンパス・法経済学部東館地下 1 階 みずほホール AB
テーマ: 「中国におけるインフラ投資と経済成長への影響」
報告者: 金 戈(浙江財経大学財政税務学院教授)
注:本研究会は原則として授業期間中の毎月第3火曜日に行いますが、講師の都合等により変更する場合があります。2016
度における開催(予定)日は以下の通りです。
前期:4月19日(火)
、 5月17日(火)
、 6月21日(火)
、7月19日(火)
後期:10月18日(火)
、11月15日(火)
、12月20(火)
、1月17日(火)
(この研究会に関するお問い合わせは劉徳強([email protected])までお願いします。なお、研究会終了後、有志
による懇親会が予定されています。
)
2
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
経済史シンポジウムのお知らせ
東アジア工業化に関する歴史的研究
―中国と日本を中心に――
主催:科研費 東アジア資本主義史研究プロジェクト
共催:京都大学東アジア経済研究センター
京都大学人文科学研究所付属現代中国研究センター
後援:京都大学東アジア経済研究センター支援会
■日時
■会場
■参加費
2017 年 3 月 6 日(月)13:00~17:00
京都大学経済学部第三番教室(法経東館2階)
無料
13:00-13:10 開会の挨拶 問題提起
13:10-13:50
久保 亨(信州大学教授)
東アジア工業化の捉え方 中国
堀 和生(京都大学教授)
東アジア工業化の捉え方 日本
13:50-14:10
木越義則(名古屋大学准教授) 中国の貿易
14:10-14:30
富澤芳亜(島根大学教授)
中国の繊維産業
14:30-15:00
加島 潤(横浜国立大学准教授)中国の鉄鋼業
峰 毅(社会人中国経済研究者 東京大学経済学博士)中国の化学工業
――――――――――――― 休憩 ―――――――――――――――――――――
15:15-16:00
朱蔭貴(復旦大学教授)
中国経済史からのコメント
丸川知雄(東京大学教授)
現代中国経済論からのコメント
厳善平(同志社大学教授)
中国農業論からのコメント
16:00-17:00
自由討論
17:10-18:40 懇親会
京都大学経済学部みずほホール(法経東館地下1階) 参加費 2,000 円(支援会会員は無料)
3
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
*準備の都合上、シンポと懇親会の参加については事前にご連絡ください。
連絡先 京都大学経済学部
堀和生 [email protected]
20 世紀 100 年間の世界経済の諸々の趨勢のなかで、最も大きな変化の一つは東アジアの経済的な台頭
であろう。19 世紀後半に世界経済は一つに統合されたとされているが、その時点の世界経済のなかで東
アジア経済全体の規模、およびその工業部門の比重からみて、その比率は比較的小さなものに過ぎなか
った。ところがその後の 1 世紀、とりわけその後半期において工業化が急進展した結果、現在東アジア
は従来世界経済を主導してきた西欧、北米と並んで世界経済全体の、そして工業のコア地域の一つに変
貌している。これらの巨大な変動は、日本、中国、韓国、台湾等、一つの国や地域だけで起こったので
はなかったので、それらに対する探究は、当然に国民経済だけにとらわれない広い視野が必要である。
このシンポジウムは、このような関心のもと、中国と日本を中心とした東アジア的なスケールで、20 世
紀におけるこの地域の経済発展、工業化の進展の特質を探究して、その世界史的な意義について考える
試みである。具体的には、次のようなことを意図している。
第1は、近代中国における工業の分析を軸にして、通時的な発展過程を解明することである。中国経
済史では研究の進展にともない、清代、民国期、計画経済期、改革開放期それぞれの分析は深まってき
たにもかかわらず、各時代を通した歴史像の構築や発展の理解についてはいまだ十分な関心が払われて
いないように思われる。ここでは中国経済史の幾つかの分野を取り上げ、とりわけ民国期と計画経済期
の関連に注意を払って検討し、改革開放後について展望したい。
第 2 は、このような中国の個性的な発展を、東アジア内で隣接している日本を中心とした地域の発展
と比較してみることである。計画経済期に両地域の交流が極端に制限された時代があったとはいえ、そ
の前後のほとんどの時代、両地域の社会経済の結びつきはきわめて強く相互に規定し合う関係にあった。
さらにさかのぼれば、近代に至るまでの長い時代、この地域は多くの共通する歴史的条件を抱えていた。
戦後のある時期に資本主義世界と社会主義世界という対比が強調されたために、これまで比較史的な認
識が弱かったことをふまえ、本シンポジウムでは日本経済史の経済発展、工業化の過程を、意識的に中
国の過程と比較して論じたい。
第 3 に、東アジアにおいて、急速に発展する工業部門と膨大な人口を擁する農業部門とが並存したこ
とに注目し、両部門の関連性、規定関係に関心を払う。研究史的に見れば、世界経済と結んで近代化を
主導し、また資料が残存しやすい工業や金融等の近代的部門の研究が先行している。しかし、近年研究
が進んでくると、アジアの工業化は世界経済との結合関係のみならず、国内の非近代とされる伝統的農
業部門のあり方に大きく規定されていたことが次第に明らかになってきた。このシンポジウムでは、東
アジアの工業発展を、農業を含めた広い社会経済基盤のなかで捉え直してみることを提起したい。
本シンポジウムがめざすものは、精緻な研究成果の発表ではなく、東アジアの経済発展、工業化をい
かに理解すべきなのかという試論の模索である。このような挑戦的な試みは、通常の学会では扱うこと
が難しいテーマである。関心をおもちの方は、このシンポジウムにぜひ積極的にご参加いただきたい。
4
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
中国ニュース
12.5-12.11
HEADLINES

日本は中国を「市場経済国」と認めず

「外商投資産業指導目録」を見直し、外資規制を一層緩和

中国、「天網 2016」行動で顕著な効果、国際逃亡犯 908 人を逮捕・強制送還

中部地域を先進的な製造業の中心に

地域協調発展に注力、特別計画策定で経済構造の高度化を促進

企業のレバレッジ引き下げに向け、財政税制支援策を実施

外国人観光客増加で中国企業の対日投資が加熱

支援政策を整備し、農民の所得を持続的に増加させる

消費財の品質を高め、国際市場とのリンクを強める

第 13 次五カ年計画生態環境保護計画が発表
日本は中国を「市場経済国」と認めず
【中国新聞網
12 月日】日本
の経済産業省は 8 日、中国の世
界貿易機関(WTO)での立場
について、引き続き「市場経済
国」と認定しないことに決めた
と発表した。共同通信の報道に
よると、同決定は、中国で国有
企業などによる過剰生産が解
消されていないことが原因だ
という。日本は、中国から安い製品が大量に流入することを懸念し、同様の方
針の米国や欧州連合(EU)と足並みを揃えた形だ。また、不当廉売を調査す
る際、対象物品について中国の国内価格ではなく、国際価格を算定基準とし、
高税率の反ダンピング関税を課しやすくする制度を今後も続けるとしている。
この問題をめぐり、中国外交部(外務省)も最近、「中国は WTO 加盟後、各
法律義務を一貫して真摯に果たしてきた。また、WTO が付与している各種権
利を享受する権利がある。いかなる加盟国も自国の法律を理由に、国際条約が
定めている義務から逃れ、中国の企業に対して、不公平、不公正、不合理、か
5
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
つ差別的な対応をとるべきではない」との立場を示している。
「外商投資産業指導目録」を見直し、外資規制を一層緩和
【国際商報】7 日、中国国家発展改革委員会と商務部は共同で「外商投資産業
指導目録」
(以下、目録)の改正版草稿に関する意見を公募すると発表した。
これは「目録」の制定が始まった 1995 年以降七度目の改正である。これによ
り、中国の対外開放度はさらに拡大する。今回の見直しでは昨年行った大幅な
開放をベースに、
2015 年版目録にある 93 項目の規制措置を 62 項目に減らした。
改正版草稿によると、大きく規制が緩和される業種は、サービス業のうち道路
旅客輸送、外国船荷捌き、信用調査、格付けサービスで、製造業では軌道交通
設備、カーエレクトロニクス、新エネルギー自動車のバッテリー、オートバイ、
食用油脂、とうもろこし加工、燃料エタノールなどの生産・製造などである。
また、採鉱業のうち、非在来型石油・天然ガス、貴金属、リチウム鉱などは外
資参入規制が緩和対象となっている。
中国、「天網 2016」行動で顕著な効果、国際逃亡犯 908 人を逮捕・強制送還
【人民網 12 月 9 日】中
国共産党中央規律検査委
員会国際協力局は、今年
で 13 回目となる「国際腐
敗防止デー」を迎えた 12
月 9 日に、中国における
国際逃亡犯追跡逮捕・不
法取得資産没収行動は、
2016 年、顕著な効果が得
られたことを明らかにし
た。11 月末時点で、今年の「天網」行動において、計 70 あまりの国家・地域
に逃亡していた指名手配犯 908 人を逮捕・強制送還させた。このうち海外に逃
亡した国家公務員は 122 人、汚職総額は 23 億 1200 万元であった。2014 年以来、
海外逃亡犯 2442 人を逮捕・強制送還させたことになる。そのうち 397 人は党
員・国家公務員であり、汚職総額は 85 億 4200 万元に及んでいる。
6
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
中部地域を先進的な製造業の中心に
【人民網 12 月 10 日】国務院新聞弁公室は 9 日の政策ブリーフィングで「中
部地域崛起促進計画(2016—2025 年)」
(以下、
「計画」とする)と「十三五(第
13 次五カ年計画:2016-2020 年)国家情報化計画」
(以下、
「情報化計画」とす
る)に関する状況について説明した。中部地域発展戦略の指導のもと、中部地
域の社会経済の発展は著しい成長を遂げている。計画では「1 つの中心、4 つ
のエリア」戦略の位置づけを行っており、十三五期間に着目した新発展理念の
全面的な実施が期待されている。
「1 つの中心」とは全国重点先進製造業の中心
となることを指し、
「4 つのエリア」とは全国新型都市化重点エリア、全国現代
農業発展の核心エリア、全国生態文明建設モデルエリア、全方位型開放重点サ
ポートエリアとなることを指す。
地域協調発展に注力、特別計画策定で経済構造の高度化を促進
【人民網 12 月 7 日】中
国国務院の李克強総理は
7 日に主宰した国務院常
務会議で、国民経済と社
会発展の「第 13 次 5 カ年
計画(十三五、2016-2020
年)」綱要にもとづき、
「十
三五」を通じて中国中部
地域の台頭と国家情報化、
国家科学技術重大プロジェクト重点計画、地域協調発展と経済構造の高度化を
後押しする方針を承認した。会議で確認された重点任務は以下の通りである。
一、経済の転換に順応し、国の地域発展戦略と整合させながら、積極的に産業
移転の新モデルを模索する。中国東单沿岸部にある環境保護などを要する産業
や国内外の著名企業の生産拠点などを中部地域へ段階的に移転する。二、対
内・対外開放を全面的に進め、総合保税区などの建設を促進し、自由貿易試験
区の改革における革新的な成果を広げる。また、ワンストップ通関サービス体
系を構築し、対外開放レベルを引き上げる。三、都市と農村の統一的発展を図
7
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
り、多様な形式の適度な規模による経営を促進することで、科学技術と第一
次・第二次・第三次産業の融合を通じて現代農業を発展させ、出稼ぎ農民の U
ターン就業・起業を後押しする。さらに、新型都市化の水準向上、都市群の建
設の加速、農業移転人口の定住促進、県域経済の都市機能と農村発展への波及
効果の引き上げを図る。四、重点生態機能区の厳格な保護や、天然林、草資源、
湿地などの重点生態環境の保護と修復プロジェクトを実施する。五、脱貧困を
目指して全力で取り組み、旧都市の振興と資源枯渇都市のモデル転換を支える。
企業のレバレッジ引き下げに向け、財政税制支援策を実施
【新華網 12 月 6 日】中国財
政部と国家税務総局はこのほ
ど共同で、
「企業のレバレッジ
率引き下げに関する税制支援
政策の通知」を発表した。具
体的な政策は次の通りである。
税制に抵触しない企業の権益
買収、合併、再編などの行為
は、企業所得税の納付繰延の
優遇措置を受けられる。企業が非金融資産投資を行う場合は、企業所得税を 5
年間分割して納付することができる。企業が破綻、廃業する場合の企業所得税
については、税引き前に清算費用、職員の給与、社会保険料、法定補償金を控
除することができる。企業の貸倒損失については、企業所得税を計算する際に
課税所得から控除することができる。金融業の企業の貸倒損失引当金について
は、企業所得税の税引き前に控除できる。企業再編の過程で、企業が合併、ス
ピンオフ、売却、交換などを通じて実物資産や関連の債権、負債、労働力を全
部合わせて他の組織や個人に譲渡する場合、関連する商品や不動産、土地使用
権の譲渡については増値税を課さない。企業再編や制度改革に関する土地増値
税、不動産譲渡税、印紙税については、関連の優遇政策が受けられる。貸出資
産の証券化政策に合致する納税者は、関連の優遇政策を受けられる。
8
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
外国人観光客増加で中国企業の対日投資が加熱
【人民網 12 月 7 日】
近年、訪日外国人観光
客が大幅に増加して
いることを背景に、日
本のホテル投資が加
熱している。また、
2020 年には東京五輪
があり、その利益に注
目する 中国の投資者
は、日本市場に高い期待を抱いている。中国の企業に日本の観光分野の投資環
境や業界の動向について理解を深めてもらうことを目的に、日本貿易振興機構
(ジェトロ)は 6 日、北京で訪日観光・ビジネスフォーラムを開催した。日本
に進出している中国企業 2 社を招き、日本でのホテル投資のノウハウや関連事
項について紹介し、意見交換を行った。復星集団傘下の株式会社イデラキャピ
タルマネジメントの山田卓也社長によると、現在、日本のホテル投資は、日本
国内からの投資が主で、その割合は約 94%である。一方、海外からの投資は約
6%で、その 4 割が中国からの投資だという。また、ホテルに代わるユースホ
ステルやカプセルホテル、民宿の発展も刺激されている。そのため、ホテル業
界にとっては、今後、いかに ADR(平均客室卖価)や客室稼働率を高め、立
地を調整するかが重要な課題となっている。
支援政策を整備し、農民の所得を持続的に増加させる
【新華社 12 月 7 日】中国国務院弁公庁はこのほど、「政策的支援による農民
の持続的な所得増に関する意見」を発表した。「意見」には農民の所得増支援
策の整備に関して農業支援・保護制度の健全化、農民の就業・起業政策の強化、
農村・都市一体化のメカニズムの構築、農村保障制度の整備といった四つの面
から明確な要求が提起された。都市部・農村部住民の所得格差をさらに縮小し、
2020 年までに農民 1 人当たり平均所得を 2010 年の 2 倍にするという目標を実
現することを強調した。
9
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
消費財の品質を高め、国際市場とのリンクを強める
【人民網 12 月 8 日】北京市政府常務会議
は 7 日、
「北京市消費財標準バージョンア
ップ・品質向上計画(2016~2020 年)」を
原則として可決し、
「3 重の強制」を実施す
ることにより、国内外で売られている消費
財が国際市場と「同一ライン、同一標準、
同一品質」になるよう力強く後押ししてい
くことになった。2020 年をめどに、北京は
全国に先駆け、健全で国際市場とリンクし
た消費財リストと標準システムを構築し、重点分野における消費財の規準と国
際標準との一致率を 95%以上に引き上げることを目指すという。
第 13 次五カ年計画生態環境保護計画が発表
【世紀経済報道 12 月 6 日】
「第 13 次五カ年計画(2016−2020 年)生態環境保
護計画」が 5 日、正式に発表された。同計画は地級市以上の都市の大気品質の
優良日数、粒子状物質目標が未達成の都市の濃度、地表水の水質などの 12 項
目のノルマを設けた。関係者によると、「計画」の最大の特徴は生態環境保護
の全体方針・目標は、環境品質の改善を軸とし、大気・水・土壌 3 大汚染防止
行動計画の予定表の作成を打ち出したということだ。また、「計画」には、環
境保護税の徴収を提案した。資源税の改革を全面的に推進し、資源税を次第に
各種の自然生態空間の範疇に拡大させる。
10
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
日本でネットショッピングが中国ほど盛り上がらないワケ
一般社団法人大阪能率協会常任理事、順利包装集団董事(在上海)
福喜多技術士事務所所長、東アジアセンター外部研究員
福喜多俊夫
最近中国で開催された「ダブル 11(11 月 11 日のネット通販イベント)
」を
通して、中国人は本当にネットショッピングが大好きであることを再び実感さ
せられた。一方、インターネットが中国より早く普及し、その質も中国に勝る
日本では、ネットショッピングは中国ほど盛り上がっておらず、その熱狂度は
中国と比べものにならないほど低い。実際には、中国と日本の文化、生活、習
慣はよく似ており、経済発展の水準の差も縮まっている。また、日本のインタ
ーネットのハードウェアも中国より進んでいる。では、中日両国の e コマース
というインターネット時代のビジネススタイルの点では、なぜこれほど大きな
違いがあるのだろう? 人民網(11 月 23 日付)は大河網の晋寧氏の考察を掲
載した。
1.日本の実店舗はサービスがよく快適なショッピングが楽しめる
まず、日本の実店舗はサービスが行き届いており、快適なショッピングを楽
しめる。日本を代表するショッピングストリート・銀座を例にすると、そこに
は世界の有名ブランドショップや高級百貨店が集まっており、各店では、最高
度のおもてなしを受けることができる。そのため、ショッピングは卖なる「買
い物」ではなく、生活に楽しみを添える娯楽にもなっている。それに比べて、
中国の実店舗の接客態度はそれほどよくなく、日本とは大きな差がついている。
ハードウェア施設の点では、中国の実店舗もそれなりに進歩しており、最近建
設されオープンしたばかりの大型店舗が、日本の同類の店舗に見劣りすること
はない。しかし、サービスや接客という面ではやはり日本とは比べものになら
ないほど劣る。
→
これは当たっています。改革開放から 35 年、1990 年代に比べればかな
りよくなっていますが、地元スーパーやコンビニ、一般商店の接客態度には未
だにサービス精神が欠けています。上海のブランド店、エルメスやフェラガモ
は富裕層を相手にしており、明らかに一般客を拒絶するような造りです。
2.ウィンドウショッピングは日本のライフスタイル
11
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
次に、日本人にとってウィンドウショッピングが一種のライフスタイルにな
っている。日本のショッピングストリートには、喫茶店もたくさんあり、ショ
ッピングの合間にそこに入って休憩したり、友人とおしゃべりをしたりするこ
とができる。実際には、ショッピング中に喫茶店に行くというのが、多くの人
の生活の一部になっている。時間もお金もある日本人の多くは、ウィンドウシ
ョッピングを生活の楽しみの一つにしているのだ。喫茶店でゆったりとした時
間を過ごすというのは、確かにオンラインショップでは味わうことができない。
中国人にはまだゆったりとした時間を過ごすという習慣はない。コーヒーを
飲む若者は増えてはいるものの、そのような若者は仕事に打ち込んでいる時に、
パソコンに向かいながらコーヒーを飲むという場合だけのものが多い。一方、
高齢の人は家でお茶を飲むのが習慣になっており、ショッピングストリートに
行って、わざわざお金を払ってコーヒーを飲むという発想はない。尐なくとも、
そのようなライフスタイルや発想は中国ではまだそれほど広く育っていない
といえる。
→
富裕層のおばさま連中は、子供が学校へ行っている間にママ友がホテル
で食事をしたり、お茶を楽しむということはしているようだが、ウィンドウシ
ョッピングを楽しむという人は私のまわりにはいなかった。
3.ショッピングは娯楽のひとつ
最後に、日本には主婦がたくさんいる。そのような女性にとってショッピン
グは娯楽の一つで、実店舗でショッピングをしたり、店員と会話をしたり、そ
のついでにコーヒーを飲んだり、講習を聞いたり、B 級グルメを食べたり、映
画を見たりするのを楽しみと感じている。これらは、オンラインショップでは
決して味わうことができない楽しみだ。
中国はこれまで常に男女平等を提唱してきたため、専業主婦は尐ない。女性
は男性と同じように働き、一生懸命お金を稼いでいる。そのため、平日にショ
ッピングを楽しむ余裕のある主婦は尐なく、ショッピングの主役であるそれら
の女性を欠くため、実店舗には生気と活力があまりない。
その他、日本は中国よりかなり早く高齢化社会に突入した。インターネット
ができる高齢者は尐なく、ネットショッピングに興味もあまりない。一方、中
国政府は現在、ベンチャー支援政策「大衆創業、万衆創新(大衆の起業、万人
のイノベーション)」を掲げており、高齢化社会にもまだ突入していない。人
口構造がネットショッピングに与える影響は日本より小さいのだ。
→
インターネットができる高齢者は尐ないとは言い切れない。現在、70
12
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
歳台の男性は現役時代にすでに一人 1 台のパソコンを持ち、メールでやりとり
するのは普通になっていた。また、今や高齢女性もスマホを使いこなしている
時代である。しかし、このこととネットショッピングに興味があるかというこ
とは結び付かない。
私は近所に本屋がないので、本はアマゾンで買うことが多い。また、旅行先
で見つけたその地方の名産品(ジュースとかお菓子)をネットで取り寄せるこ
とはある。しかし、上海の友人のように生鮮食料品から日用雑貨までネットで
買うというような生活をしている人は私だけでなく、日本人には尐ないだろう。
このように、日本では、中国のように「ダブル 11」になると「爆買い」する
グループが存在せず、閑古鳥が鳴くようになってしまった実店舗が閉店に追い
やられるという苦境も見られない。
(総合スーパーや百貨店が苦戦しているが、
これは節約志向が広がっているためで、e コマースとは直接関係がないだろう)
中国人と違い、日本人は、実店舗でショッピングを楽しむことを好む。
経済の「基礎」によって上流階級の人たちのあり方が決まるといえる。中日
で上記のような差が発生している根本的な原因は、両国の経済発展の段階が異
なることにある。よく考えてみると、インターネットが普及し始めた時、中国
はちょうど経済が急速に発展している途中だったのに対して、日本は既に経済
発展がピークに達していた。経済が急速に発展している途中の社会にいる人々
は、発展の恩恵に尐しでも多くあずかろうと忙しく日々を過ごしており、実店
舗に行く時間も余裕もない。一方、経済成長を既に果たした人々は現在、裕福
な生活を楽しんでいる。
一つの社会現象を一歩引いて大きな視野に立ってじっくり分析してみると、
その背後にある本当の原因を垣間見ることができる。
以上
13
京大東アジアセンターニュースレター2016/12/12No.649
【中国経済最新統計】
①
実 質
GDP
増加率
(%)
2005 年
2006 年
2007 年
2008 年
2009 年
2010 年
2011 年
2012 年
2013 年
2014 年
9月
10 月
11 月
12 月
2015 年
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
2016 年
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
10.4
11.6
13.0
9.0
9.1
10.3
9.2
7.7
7.7
7.4
7.3
7.3
6.9
7.0
7.0
6.9
6.8
6.7
6.7
6.7
②
工業付
加価値
増加率
(%)
③
消費財
小売総
額増加
率(%)
④
消費者
物価指
数上昇
率(%)
18.5
12.9
11.0
15.7
13.9
10.0
9.7
8.3
8.0
7.7
7.2
7.9
5.9
12.9
13.7
16.8
21.6
15.5
18.4
17.1
14.3
11.4
12.0
11.6
11.5
11.7
11.9
10.7
5.6
5.9
6.1
6.8
6.0
6.1
5.7
5.6
6.2
5.9
10.2
10.0
10.1
10.6
10.5
10.8
10.9
11.0
11.2
11.1
1.8
1.5
4.8
5.9
▲0.7
3.3
5.4
2.7
2.6
2.0
1.6
1.6
1.4
1.5
1.4
0.8
1.4
1.4
1.5
1.2
1.4
1.6
2.0
1.6
1.3
1.5
1.6
6.8
6.0
6.0
6.2
6.0
6.3
6.1
6.1
10.3
10.2
10.5
10.1
10.0
10.6
10.2
10.6
10.7
10.0
1.8
2.3
2.3
2.3
2.0
1.9
1.8
1.3
1.9
2.1
⑤
都市固
定資産
投資増
加 率
(%)
27.2
24.3
25.8
26.1
31.0
24.5
24.0
20.7
19.4
15.2
11.5
13.9
13.4
12.6
9.7
13.1
9.6
9.9
11.6
9.9
9.1
6.8
9.3
10.8
6.8
18.0
11.2
10.1
7.4
7.3
3.9
8.2
9.0
8.8
⑥
貿易収
支
(億㌦)
⑦
輸 出
増加率
(%)
⑧
輸 入
増加率
(%)
⑩
外国直
接投資
金額増
加率
(%)
▲0.5
4.5
18.7
23.6
▲16.9
17.4
9.7
▲3.7
5.3
14.2
1.9
1.3
22.2
10.3
0.8
-1.1
0.1
1.3
10.2
8.1
1.1
5.2
20.9
6.1
2.9
0.0
-45.1
⑪
貨幣供
給量増
加 率
M2(%)
⑫
人民元
貸出残
高増加
率(%)
17.6
19.9
20.8
18.5
▲11.3
38.7
24.9
4.3
7.2
0.4
7.2
4.6
-6.7
-2.3
-14.4
-20.0
-20.8
-12.9
-16.4
-17.7
-6.3
-8.2
-13.9
-20.5
-19.0
-9.2
-7.6
⑨
外国直
接投資
件数の
増加率
(%)
0.8
▲5.7
▲8.7
▲27.4
▲14.9
16.9
1.1
▲10.1
▲8.6
4.41
9.4
8.7
-8.6
6.1
11.0
2.2
49.8
0.3
2.9
-14.0
4.6
9.6
23.9
5.2
2.5
27.7
17.2
1020
1775
2618
2955
1961
1831
1549
2303
2590
3824
310
454
545
496
6024
600
606
31
341
595
465
430
602
603
616
541
594
28.4
27.2
25.7
17.2
▲15.9
31.3
20.3
7.9
7.8
6.1
15.1
11.6
4.7
9.5
-9.8
-3.3
48.3
-15.0
-6.5
-2.4
2.8
-8.4
-5.6
-3.8
-7.0
-7.2
-1.7
17.6
15.7
16.7
17.8
27.6
19.7
13.6
13.8
13.6
12.2
11.6
12.1
12.0
11.0
11.9
10.6
11.1
9.9
9.6
10.6
10.2
13.3
13.3
13.1
13.5
13.7
13.3
9.3
15.7
16.1
15.9
31.7
19.8
14.3
15.0
14.1
13.6
13.2
13.2
13.4
13.6
15.0
14.3
14.7
14.7
14.4
14.3
14.4
15.7
15.7
15.8
15.6
15.3
15.0
633
326
299
456
500
479
502
520
420
491
-11.5
-25.4
11.2
-2.0
-4.7
-6.1
-6.4
-3.2
-10.2
-7.4
-18.8
-13.8
-7.4
-10.5
-0.1
-9.0
-12.9
1.4
-1.9
-1.2
14.1
-11.3
26.1
21.4
43.6
8.5
-3.8
13.2
27.9
-39.6
-2.1
-1.3
4.0
2.9
-4.8
4.4
-6.2
0.5
-3.6
0.4
14.0
13.3
13.4
12.8
11.8
11.8
10.2
11.4
11.5
11.6
15.2
14.7
14.7
14.4
14.4
14.3
12.9
13.0
13.0
13.1
注:1.①「実質 GDP 増加率」は前年同期(四半期)比、その他の増加率はいずれも前年同月比である。
2.中国では、旧正月休みは年によって月が変わるため、1 月と 2 月の前年同月比は比較できない場合があるので注意
されたい。また、(
)内の数字は 1 月から当該月までの合計の前年同期に対する増加率を示している。
3. ③「消費財小売総額」は中国における「社会消費財小売総額」、④「消費者物価指数」は「住民消費価格指数」に
対応している。⑤「都市固定資産投資」は全国総投資額の 86%(2007 年)を占めている。⑥―⑧はいずれもモノの
貿易である。⑨と⑩は実施ベースである。
出所:①―⑤は国家統計局統計、⑥⑦⑧は海関統計、⑨⑩は商務部統計、⑪⑫は中国人民銀行統計による。
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