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平成 26 年度 放射性物質測定調査委託費(海域における 放射性物質の

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平成 26 年度 放射性物質測定調査委託費(海域における 放射性物質の
原子力規制庁委託事業
平成 26 年度 放射性物質測定調査委託費(海域における
放射性物質の分布状況の把握等に関する調査研究)事業
成
果
報
告
書
平成 27 年 3 月
独立行政法人海上技術安全研究所
目
次
第 1 章. はじめに ............................................................... 1
第 2 章. 調査研究の方法 ......................................................... 3
2.1
曳航型放射線検出器による測定方法 ......................................... 3
2.1.1
曳航型測定の方法 ..................................................... 3
2.1.2
測定方法の妥当性の検証 ............................................... 6
2.2
解析手法の改善による誤差の推定と体系化 .................................. 10
2.2.1
応答関数への面密度単位系の導入 ...................................... 11
2.2.2
検出器沈み込み量の補正 .............................................. 12
2.2.3
スペクトルフィッティングによる光電ピーク係数率の導出 ................ 14
2.2.4
kriging の妥当性検証 ................................................ 15
2.2.5
測定誤差の定量化 .................................................... 19
第 3 章.
3.1
1F 近傍の放射性物質分布の把握 ......................................... 21
海底地形及び土質調査 .................................................... 21
3.1.1
海底地形及び土質調査の方法 .......................................... 21
3.1.2
海底地形及び土質調査の結果 .......................................... 26
3.2
1F 近傍の放射性物質分布調査 ............................................. 33
3.2.1 調査の方法 .......................................................... 33
3.2.2
曳航調査結果 ........................................................ 36
3.2.3
海底土中の放射性セシウムの鉛直分布の測定 ............................ 49
3.2.4
粒径分布及び炭素安定同位体比等の分析 ................................ 62
3.2.5
90
Sr 分析 ............................................................ 64
3.2.6 ROV 調査 ............................................................ 65
3.3
1F 近傍における調査のまとめ ............................................. 67
第 4 章. 阿武隈川河口沖の放射性物質分布の把握 .................................. 68
4.1
海底地形及び土質調査 .................................................... 68
4.1.1
海底地形及び土質調査の方法 .......................................... 68
4.1.2
海底地形及び土質調査の結果 .......................................... 69
4.2
阿武隈川河口沖の放射性物質分布調査 ...................................... 71
4.2.1
調査の方法 .......................................................... 71
4.2.2
曳航調査結果 ........................................................ 72
4.2.3
海底土中の放射性セシウムの鉛直分布の測定 ............................ 92
4.2.4
粒径分布及び炭素安定同位体比等の分析 ................................ 99
4.2.5
90
4.2.6
ROV 調査 ........................................................... 102
4.3
Sr 分析 ........................................................... 101
阿武隈川河口沖における調査のまとめ ..................................... 104
第 5 章. 海底土の放射性セシウムの濃度分布とその変動要因 ...................... 105
5.1
観測調査と分析方法 ..................................................... 107
i
5.1.1 観測概要 ........................................................... 107
5.1.2 採取方法 ........................................................... 108
5.1.3
海水中の放射性セシウム放射能濃度測定方法 ........................... 112
5.1.4
海底土の放射性セシウム及び物性測定方法 ............................. 113
5.1.5
放射性セシウム溶出実験 ............................................. 115
5.2
結論と議論 ............................................................. 116
5.2.1
海底土中の放射性セシウム放射能濃度の時空間分布特性 ................. 116
5.2.2
海底土の物性値の変動 ............................................... 122
5.2.3
表層海底土の 137Cs 放射能濃度の時系列変動 ............................ 128
5.2.4
海底土からの放射性セシウムの溶出性 ................................. 130
5.2.5
海底土の放射性セシウム放射能濃度分布の変動要因 ..................... 134
5.3
流況調査 ............................................................... 144
5.3.1
福島沖流況調査の概要 ............................................... 144
5.3.2
曳航型 ADCP 等による調査結果(福島沖) .............................. 146
5.3.3
設置型流向流速計等による調査結果(福島沖) ......................... 149
5.3.4
阿武隈川河口沖流況調査の概要 ....................................... 163
5.3.5
流況調査結果(阿武隈川河口沖) ..................................... 164
5.4
環境動態に係る調査のまとめ ............................................. 175
第 6 章. まとめ ............................................................... 176
第 7 章. 謝辞 ................................................................. 179
参考資料 ...................................................................... 180
ii
第1章.はじめに
平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所
(以下、
「1F」という。
)の事故以降、政府及び関係機関によって近傍、沿岸、沖合及び外洋等の海域
の海水、海底土及び水産物のモニタリングが実施されてきた。これらのモニタリングは「総
合モニタリング計画」の一環として実施されてきたところであるが、原子力規制庁は海洋に
おける放射性物質の分布状況を把握し、さらにそれらの水産物への中長期的な影響を考慮す
るため、平成 25 年度から「海域における放射性物質の分布状況の把握に関する調査研究」
を新たに開始した。
従来の海域のモニタリングでは、海水や海底土を定期的に定点で採取し分析する調査とな
っており、その測定結果は断片的な情報を与えるのみであったため、本調査研究では、1F 周
辺や阿武隈川河口付近の海底地形を詳細に把握し、海流や測定地点の海底土の性状等も考慮
した線的な曳航計測を行うことで、現状における放射性物質の分布状況の詳細な把握すると
ともに、経時変化を把握することを目的とした。
また、長期的には河川を通じた陸上からの放射性物質の海洋への流入も無視できないこと、
さらに、一旦海底土に吸着された放射性物質が再溶出し、海洋を汚染する可能性もあること
から、中長期的な 1F 周辺海域における放射性物質動態の予測に資する基礎データの取得を目
指すこととした。
本調査研究は、原子力規制庁からの委託により、海上技術安全研究所、東京大学生産技術
研究所、金沢大学環日本海域環境研究センターが共同で実施した。
なお、本調査報告書では、第 2 章に、海域における放射性物質の分布状況を把握するため
に東京大学生産技術研究所が開発した曳航式ガンマ線スペクトロメータの使用方法及び妥当
性の検証について記載した。第 3 章及び第 4 章に、1F 近傍及び阿武隈川河口沖合の調査結果
として、海底地形及び土質の調査結果、曳航式ガンマ線スペクトロメータによる放射性物質
の分布状況の調査等について記載した。第 5 章に放射性物質の環境動態に係る議論として、
海底土からの放射性セシウムの溶出実験、流況調査の結果等をまとめ、中長期的な海域にお
ける放射性物質動態の予測に資する基礎データを記載した。
図 1-1 に、本調査研究で実施した海域における調査範囲を総括する図を示した。曳航調査
の測線(新田川河口沖を除く)は、赤線及び青線で示しており、赤線は小型漁船による調査、
青線は 400 トンクラスの民間調査船によるものである。また、新田川河口沖の緑の測線は平
成 25 年度、26 年度に共通する測線を示し、紫色の測線は、平成 26 年度に新たに設定した測
線である。福島県沖については、曳航測線の総延長は 980km である。また、阿武隈川河口沖
の曳航測線の総延長は 276km である。採泥地点は、図中に赤丸で示した。
【執筆者:海上技術安全研究所
小田野直光】
1
図 1-1
本調査研究における調査海域の全体図
2
第 2 章.
2.1
2.1.1
調査研究の方法
曳航式ガンマ線スペクトロメータによる測定方法
曳航型測定の方法
東京大学生産技術研究所では、東日本大震災直後から海域での放射性物質の広域マッピン
グに資するための曳航式ガンマ線スペクトロメータの開発を三井物産環境基金等の支援によ
り実施してきた。曳航式ガンマ線スペクトロメータの運用方法は、図 2-1 に示すように船舶
の船尾からガンマ線スペクトロメータが収納された曳航体を曳航し、検出器部分が海底に常
に接触するような状況でガンマ線を計測するものである 2-1。表 2-1 はガンマ線検出器の主要
目である。曳航体は、直径 15cm、長さ 8m のゴムホースで保護されており、この曳航体の先
端部にガンマ線スペクトロメータが収納されている。船舶の船尾部から曳航体を曳航し海底
のガンマ線を捉えるには、常に曳航体の先端(検出器部分)が海底に接している必要がある。
そのため、ゴムホースには錘 4 個を分散させて収納し、水中重量を 115kg とし、海底からの
浮き上がりを防止している。また、ゴムホースは、海底を曳航する際に発生する振動や衝撃
を吸収する役割も担っている。海底の放射線を計測する場合は、単に放射線だけを計測する
だけではなく、様々な海の情報を取得して分析に活用する必要がある。そのため、曳航体に
は、深度計、水温計が装備されており、計測された放射線の情報と突き合わせて利用するこ
とが可能である。
曳航式ガンマ線スペクトロメータとしては、図 2-2 に示すような、直径 3 インチ、長さ 3
インチの NaI(Tl)シンチレータを使用しており、計測システムはアルミニウム合金製の水
密・耐圧容器に封入されている。光電子増倍管、マルチチャンネルアナライザ等への給電は
内蔵バッテリーによっており、マルチチャンネルアナライザからの信号は 1 秒毎にデータロ
ガーに収録される。曳航速度は約 2 ノット(約 1m/s)の運用を想定しており、約 1m 曳航し
た際の積分的なスペクトル情報が記録される。なお、水密・耐圧容器内には、曳航体の振動、
表 2-1
ワイヤー
ゴムホースに
内装した検出器を曳航
検出器部分
図 2-1
2-1
曳航式ガンマ線測定の概念
曳航体の主要目
寸法
直径 0.15m、長さ 8m
重量
空中:135kg、水中:115kg
耐圧深度
500m
曳航速度
2 ノット(約 1m/s)
検出器
3×3 インチ NaI(Tl)シンチレータ
データ収集
その他
ガンマ線スペクトル〔1024 チャン
ネル(0.1~1.8MeV)
〕、1 回/秒
深度計、温度計、3 軸加速度計、
集音マイク
B.Thornton, et al., Marine Pollution Bulletin, 74(1), pp.344-350 (2013).
3
衝撃がスペクトロメータに伝わることを防止す
るゴム製のリングが装備されている。
曳航速度は、放射線検出器の検出効率を考え
ると速度は遅い方が有利であるが、船舶を 2 ノ
ット未満で航行させ、針路を一定に保ち航行す
ることは海流の影響もあり難しいことと、曳航
速度が遅いと 1 日あたりの計測可能な曳航距離
が短くなることから、現状は 2 ノットでの曳航
としている。
図 2-2
曳航時に繰り出すワイヤーの長さは水深の約
ガンマ線スペクトロメータ
3 倍程度を目安にし、深度変化に応じてワイヤ
ーの長さを調整する。船舶には衛星測位システ
5  10
4.5
情報の他、船速、深度、ワイヤー長から、海中
4
での曳航ワイヤーの放物線状の形状を考慮した
3.5
計算を行うことにより、曳航体の緯度・経度を
3
求めることが可能である。ただし、海流や底質
の性状は、曳航体の位置に影響を及ぼすことを
Counts
ム(GPS)が装備されており、GPS の緯度・経度
Cs-137:662 keV
2.5
2
考慮する必要がある。水深 100m 程度までの沿岸
1.5
域では、海流及び底質の影響は数 10m 程度と考
1
えられることから、計測データの位置情報の不
0.5
確実さとして考慮している。
3
0
200
ガンマ線スペクトロメータは移動しながら 1
Cs-134:796 keV
Cs-134:605 keV
250
300
図 2-3
秒間データを積算することになり、1 秒間だけ
350 400 450
Light Output (a.u.)
500
550
ガンマ線スペクトル
の計測では十分な統計精度を得ることができず、一定時間の計測結果を平均化処理する必要
がある。平均化処理にあたっては、平均化処理後の
137
Cs 及び
134
Cs の光電ピークカウントの
統計誤差が 5%以下になるように処理を行っている。このため、2 ノットで曳航している場合
に 5%以下の統計精度とするためには、海底土中の 137Cs の濃度が 1,000Bq/kg-wet の場合、約
8m 程度の平均化処理が必要となり、これが曳航式ガンマ線スペクトロメータの曳航測線上で
の空間分解能となる。図 2-3 に測定されるガンマ線エネルギースペクトルを示すが、このガ
ンマ線スペクトルのうち、137Cs(662keV)については 134Cs(605keV)の影響を避けるため、JAEA
の尹らの手法 2-2 を参考に、662keV ピークの高エネルギー側半分を用いて光電ピーク面積を算
出し、その 2 倍を本来の光電ピーク計数としている。また 2.2 章に後述するように、ピーク
のベースライン評価を高精度化するため、スペクトルフィッティング手法も一部取り入れた。
上記の解析を行いガンマ線スペクトロメータで計測される量は、137Cs 及び 134Cs の光電ピー
クカウントであり、単位は CPS である。陸上土壌の放射性物質濃度の測定結果と同様に、原
子力規制庁等が発表している海底土中の放射性物質濃度は乾土換算の Bq/kg で整理されてお
2-2
尹永根、他、日本土壌肥料学雑誌、第 83 巻、第 3 号、pp.296-300 (2012).
4
り、CPS から Bq/kg への換算を行うことが必要である。この換算係数は、2.1.2 章に後述する
方法で算出した。モンテカルロ計算においては、海底土中の放射性物質の鉛直分布と海底土
の密度を設定する必要がある。海底土の密度は含水率及び底質によって変化することが知ら
れており、高含水率土壌(沈泥質粘土)と 低含水率土壌(粗砂)について評価した。また、
海底土中の放射性物質の鉛直分布は実測に基づき設定した。曳航体は水中重量で 115kg あり、
柔らかい底質の場合には海底に沈み込んでいることが分かっている。
5
2.1.2
測定方法の妥当性の検証
曳航式ガンマ線スペクトロメータを用いた海底土中の放射線物質濃度の測定は、平成 24
年から東京大学生産技術研究所(東大)及び海上技術安全研究所(海技研)が協力して実施
してきている。平成 24 年 7 月に実施したいわき市沖の放射性物質濃度の曳航調査結果を図
2-4 に示す
2-3
。上図に
137
Cs を、下図に
134
Cs の濃度を Bq/kg-wet で示している。棒グラフで
示しているものは、福島県が実施した定点モニタリング地点における乾土換算の
134
137
Cs 及び
Cs 濃度並びに含水率データを用いて Bq/kg-wet に換算したものである。これより、F-IY10
を除いて良い一致を示した。
図 2-4
いわき沖曳航調査結果と定点モニタリングとの比較
一方、この曳航式ガンマ線スペクトロメータの光電ピークカウント(CPS)から放射能濃度
Bq/kg への換算は、モンテカルロ法によるシミュレーションに頼っていることから、この換
算係数の算出についてベンチマーク実験を実施し、検証した。曳航式ガンマ線スペクトロメ
ータのモンテカルロ計算体系を図 2-5 に示す。計算体系は、海底土領域として、300x300x
150cm の領域、海水領域として 300x300x150cm の領域を設定している。海水中でのガンマ線
の平均自由行程は、40K(1461keV)で 17cm、134Cs(796keV)で 13cm、137Cs(662keV)で 11cm
であることから十分大きな領域設定となっている。モンテカルロ計算体系中に設置する検出
器としては、NaI シンチレータ結晶、ケース、水密容器、ホースをモデル化した。ホース内
及びホース横から上は海水で満たされ、下は海底土としている。サイズ、密度については NaI、
2-3
B.Thornton, et al., Deep-Sea Research I 79, pp.10-19 (2013).
6
ケースはメーカーカタログ値、水密ケースは実測値を採用するとともに、光電子増倍管(PMT)
は同密度のアルミニウムとしてモデル化した。
海水
150cm
150cm
海底土
300cm
300cm
図 2-5
モンテカルロ計算体系
海底土の組成は SiO2 及び水に単純化してモデル化している。水及び SiO2 以外の成分(有機
物、金属酸化物等)量は海域によって変化するが、光電吸収断面積が極端に大きい重金属等
はほぼ含まれないため、堆積物の水分を除く全量を SiO2 で代表させても計算結果は変わらな
い。また、0.6~1MeV 領域ではコンプトン散乱が支配的であり、コンプトン散乱断面積は密
度が等しければ物質に依らずほぼ等しい。また、モンテカルロシミュレーションでは、放射
性物質の鉛直分布が g/cm2 で表されていれば、海底土の組成・密度は重要ではない。なお、
密度・含水率は、鉛直分布の単位を Bq/kg/cm から Bq/kg/(g/cm2)へ換算する時、規格化因子
2.4
規格化放射能濃度鉛直分布 (cm2/g)
海生研
0
1.8
0.02
0.03
0.04
0.05
0.06
5
10
(g/cm )
1.6
1.4
20%
25%
30%
35%
40%
45%
50%
20
30
35
55%
60%
含水率(wt%)
図 2-6
Cs-134
Cs-137
15
2 25
高含水率土壌
(SiltyClay)
1.2
1
15%
0.01
0
2
深さ
密度(g/cm3)
Hamilton 1971
低含水率土壌
(SandCoarse)
2.2
40
45
図 2-7
海底土の含水率と密度の関係
放射能濃度分布
(表層 3cm の平均濃度を求めるので、モンテカルロ計算の結果を 0~3cm 平均濃度で規格化す
る)を求める時に用いている。海底土の含水率と密度は、北茨城付近の海底における海洋生
7
物環境研究所によるサンプリング結果によると、図 2-6 に示すように直線に乗っており、東
北海域でも概ね Hamilton の文献値
2-4
の直線に乗っていることが分かっている。このため、
換算係数は、高含水率土壌(沈泥質粘土)及び低含水率土壌(粗砂)を代表値とした。また、
放射能濃度分布については、過去の阿武隈川河口で得られた試料の平均値を使用した。図 2-7
は、鉛直方向の積分値を 1 に規格化して表示した放射能濃度の鉛直分布である。
このようにして得られた換算係数は、以下の値であった。
134
Cs 796keV 光電ピーク計数率:4.8×10-2 [CPS/(Bq/kg-wet)]±0.2%
137
Cs 662keV 光電ピーク計数率:4.6×10-2 [CPS/(Bq/kg-wet)]±0.2%
また、換算係数に影響を及ぼす因子として、検出器の海底への沈み込みによる応答関数の
変化と海水中放射性セシウムの影響が考えられる。検出器の海底への沈み込みによる応答関
数の変化についてはモンテカルロ法で評価した。検出器の土中への沈み量が 0 の場合の値で
規格化した 134Cs の換算係数を図 2-8 に示す。検出器が概ね 1cm 沈降することにより換算係数
が約 10%増加するが、数 cm 程度の沈降量では土質の差は出ないと考えられた。海水の影響を
把握するため、放射性セシウムは海水中に均一に 1Bq/L で分布することを仮定し、単位放射
能濃度当たりの光電ピークカウントを評価した。海底モデル、幾何形状モデルは海底土換算
係数の計算と同じである。その結果、
134
0.12 CPS/(Bq/L) ±3%
137
0.13 CPS/(Bq/L) ±3%
Cs 796keV
Cs 662keV
となり、現状では海底土中の Cs 濃度が数百 Bq/kg、海水中の Cs 濃度が数 Bq/L~検出下限
(1Bq/L)以下なので海水中セシウムの影響はほぼ無視できた。
Cs-134 規格化換算係数(沈み量0cmでの値を1へ規格化)
1.5
1.4
1.3
1.2
1.1
1.0
Median Cs-134
0.9
SandCoarse Cs-134
0.8
SiltyCray Cs-134
0.7
0.6
0.5
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
3.5
4
4.5
5
沈み量(cm)
図 2-8
検出器の沈み込みによる換算係数の変化
このように、モンテカルロ法を用いて、放射性セシウム光電ピークカウント(CPS)から放
射性セシウム濃度(Bq/kg)への換算係数を求めているが、この計算の妥当性を検証するため
に、阿武隈川河口沖合で採取した海底土を用いてベンチマーク実験を実施した。
ベンチマーク実験体系を図 2-9 に示す。縦 37.5 cm x 横 64 cm の水槽に、阿武隈川河口沖
合で採取した海底土を入れ、その上に水道水を張り、曳航式ガンマ線スペクトロメータを海
底土の上に設置した。水面から土までの距離は平均 16 cm であり、また、土の深さは平均 11.5
2-4
E. L. Hamilton, J. Geophsycal Research, Vol.7 No. 2, pp.579-604 (1971).
8
cm である。また、使用した海底土の放射性セシウム濃度の高純度 Ge 半導体検出器による評
価結果は、137Cs については 2.7 x 103±6.6% Bq/kg-dry、134Cs については 1.2 x 103±7.2%
Bq/kg-dry であった。モンテカルロ計算体系を図 2-10 に示す。線源項の 137Cs 及び 134Cs の濃
度は、前述の Ge 半導体検出器による評価結果を用いるとともに、鉛直分布については、図
2-7 の阿武隈川河口沖での鉛直分布を設定した。また、海底土については、SiO2 と水の組成
とした。モンテカルロ計算による換算係数を用いて単位時間当たりの光電ピークカウントを
評価し、ベンチマーク実験による光電ピークカウントとの比較を表 2-2 に示す。表 2-2 から
も明らかなように、モンテカルロ法による計算とベンチマーク実験の結果はよく一致した。
図 2-9
ベンチマーク実験体系
16 cm
11.5
cm
64 cm
図 2-10
表 2-2
37.5
cm
ベンチマーク実験解析用モンテカルロ計算体系
モンテカルロ計算とベンチマーク実験の比較
光電ピークカウント
モンテカルロ計算(CPS) ベンチマーク実験(CPS)
137
49 ± 0.29
49 ± 0.28
134
21 ± 0.13
20 ± 0.11
Cs
Cs
9
2.2
解析手法の改善による誤差の推定と体系化
曳航式検出器による測定精度の改善及び誤差推定のため、計数率から放射性物質濃度を算
出する手続きに用いている要素の切り分けとその改善を行った。主な項目は下記のとおりで
ある。
(1)検出器応答で用いている深さの単位を cm から g/cm2(面密度単位)へ変更することによ
り、海底の土質への依存性を無くした。
(2)検出器の海底土への沈み量をソナーにより測定し、応答関数の修正を行った。
(3)スペクトルフィッティングの導入により、光電ピーク計数率の精度向上を行った。
(4)kriging の妥当性を検証した。
(5)計数率から放射性物質濃度への換算係数に寄与する各要素の不確かさを考慮し、不確か
さの定量化を行った。
これら改善点を含めた解析フローを下図に示す。
曳航測定
(3)
放射線
検出器
スペクトル
光電ピーク
計数率
(2)
曳航式
ソナー
音響画像
検出器沈み量
(1)
放射線
輸送計算
検出器応答
(4)
海底コア
データ
Cs濃度
鉛直分布
サンプル
測定
補間
曳航測線上
の換算係数
(5)
採泥点での
換算係数
表層Cs濃度
図 2-11
表層3cmでの曳航
測線上Cs濃度分布
比較
データ解析フロー図 (図中(1-4)は上記項目に対応)
10
2.2.1
応答関数への面密度単位系の導入
検出器応答関数は海底土中に単位放射能濃度(1Bq/kg)が存在した場合の光電ピーク計数率
を海底土中深さ別にまとめたものであり、この応答関数と放射性物質鉛直濃度を掛けて積
分・規格化することで、計数率から放射能濃度への換算係数が求まる。前年度解析ではこの
深さの単位に直感的にわかりやすい cm を用い、応答関数の単位は kgBq-1cm-1s-1 となっていた。
しかしながら、土質によりγ線の遮蔽能力は異なるため、この応答関数は土質ごとに作成し
直す必要があり、応答関数作成作業が膨大なものになる他、(サンプル調査以外では調べられ
ない)土質により解析結果に影響が出るため、従来は高含水率土壌と低含水率土壌で 2 通りの
極端な土質を想定し、真値がその間にあるとしてその幅を誤差に算入していた。
しかしながら、134Cs や 137Cs の放出するγ線は数百 keV 以上であり、この領域で支配的なコ
ンプトン散乱は散乱媒質の電子密度にのみ依存し、γ線の減弱係数を密度で割った質量減弱
係数は物質にあまり依存しなくなる。このため距離に cm ではなく、距離と密度の積である面
密度(g/cm2)を用いれば、このエネルギー領域の放射線に関わる諸量は物質に非依存した値と
なる。面密度系で計算された 3 インチ曳航式検出器の応答関数を下図に示す。また、この時
後述の沈み量補正のため、検出器が土中に沈み込んだ場合の体系を複数とおり計算し、その
結果をデータベース化している。
図 2-12
面密度単位系での曳航式検出器応答関数
11
2.2.2
検出器沈み込み量の補正
曳航式放射線測定装置は曳航中に海底面への接触を保つため、十分な重量(水中重量
115kg)となるよう錘が装着されている。そのため測定中は一部が海底土中に沈み込んでいる
と考えられる。この沈み量を測定するため曳航装置末尾にソナーを装着し音響画像により海
底面の位置を測定し、得られた沈み量を用いて検出器応答関数の補正を行った。下図 2-13
及び 2-14 はそれぞれ、ソナー装置の概略及び得られた音響画像である 2-5。
図 2-13
ソナー装置概略
図 2-14
音響画像
平成 25 年 10 月の阿武隈川河口域における曳航測定時の沈み量と曳航測定結果を図 2-15
に示す。図中横軸の左端が測線南端、右端が河口部付近に対応しており、河口付近で放射性
セシウム濃度が大きくなっていることがわかる。また横軸 225km 近傍で沈み量が大きい(=海
底土が軟弱)値を示しており、底質が粒径の小さな泥質となっていると考えられ、この地点で
比較的放射能濃度が大きくなっている原因は細径粒子への吸着によるものと考えられる。ま
た、解析結果は測線上各点の沈み量で補正した場合と、測線平均沈み量で補正した場合との
差異は比較的小さかった。
2-5
Y. Hirao, et al., Mar. Technol. Soc. J., Vol. 48., No.3, pp.155-166 (2014).
12
1200
測線上各点での沈み量で補正
Cs-137濃度 (Bq/kgw) 1000
測線平均沈み量で補正
sample
800
600
400
200
0
221.5
222
222.5
223
223.5
224
224.5
225
225.5
226
225
225.5
226
日本9系直交座標での南北位置(km)
12
検出器沈み量(cm)
10
沈み量(cm)
沈み量平均値(cm)
8
6
4
2
0
221.5
222
222.5
223
223.5
224
224.5
日本9系直交座標での南北位置(km)
図 2-15 阿武隈川河口域南北測線の曳航測定結果(上:Cs-137 濃度分布、下:沈み量分布)
13
2.2.3
スペクトルフィッティングによる光電ピーク計数率の算出
環境中において放射線を測定する場合、天然核種によるバックグラウンド放射線が問題と
なる。134Cs、137Cs の測定は主に 500~800keV の間の放射線が主要なものとなるが、この領域
では 208Tl(583 keV)、214Bi(609 keV)といった核種の寄与があり、海底土中の放射性セシウム
含有量が小さな海域ではこれらの影響を無視できない。尹らの手法 1 では
208
Tl、214Bi の影響
を最小化するためベースラインを水平に設定しているが、実際のスペクトルではベースライ
ンは水平ではなく、低エネルギー側が大きくなるように勾配を持っている。そこで計数率取
得の高精度化のためピークフィッティングを用いて 137Cs(662 keV)
、134Cs(796 Kev、804 keV)
光電ピーク計数を求めた。フィッティングを安定させるため、フィッティングはまず曳航測
線合計のスペクトルに対して行い、得られたエネルギー分解能を用いて測線上各点でフィッ
ティングを行った。解析の結果、従来の手法との差異は数%以下であった。スペクトルフィッ
ティングは解析に時間がかかるため、重要性の低い低濃度区域では従来手法を使う等適時ピ
ーク計数率取得方法を使い分けることにより、効率的な解析が可能となることが分かった。
図 2-16
平成 25 年 10 月阿武隈川河口東西測線でのγ線スペクトルフィッティング結果(黒
点:測定値、赤点線:フィット結果、実線:フィッティングに考慮した各ピーク要
素)
14
2.2.4
kriging の妥当性検証
kriging では複数のサンプル間の関係から空間構造を推定し、補間誤差が最小となるよう
に荷重係数を決定する。このため補間結果はサンプルの取得位置・値に依存することになる。
具体的にはサンプル値の差の2乗を距離別に整理し、距離と分散の関係(バリオグラム)を求
める。このバリオグラムによりどの程度妥当な空間構造が記述できているかを確認する必要
がある。そこでサンプル点を 1 点除いた場合の kriging による cps-Bq/kg 換算係数を算出し
その結果を比較した。図 2-17~27 は阿武隈川河口(平成 25 年 7 月)データにおいてサンプル
点を 1 点除いた場合の換算係数分布である。
図 2-17 全サンプル使用時の換算係数
図 2-18
図 2-19 St.2 サンプル削除時の換算係数
図 2-20
15
St.1 サンプル削除時の換算係数
St.3 サンプル削除時の換算係数
図 2-21
St.4 サンプル削除時の換算係数
図 2-22
St.5 サンプル削除時の換算係数
図 2-23
St.6 サンプル削除時の換算係数
図 2-24
St.7 サンプル削除時の換算係数
図 2-25
St.8 サンプル削除時の換算係数
図 2-26
St.10 サンプル削除時の換算係数
16
図 2-27
St.11 サンプル削除時の換算係数
これら図を見ると、サンプルの欠落位置によってはバリオグラムの相関モデル(フィットモデ
ル)が変わるため、空間的分布が変化しているが、差異は概ね kriging 誤差(20%程度)の範囲
であった。
また補間によるデータの再現性を見るために、サンプル点を 1 つ除いたバリオグラムを作
成し、除いたサンプル点での値を kriging 補間により求め、元の値と補間値との差を比較す
る、ジャックナイフ法を用いた検証を実施した。典型的なケースとして、海底土が泥質-砂質
で構成される阿武隈川河口(平成 25 年 7 月)と岩礁帯である福島第一原子力発電所近傍(平成
25 年 12 月)のサンプルデータを用いた。
0.12
kriging 補間による換算係数(cps/(Bq/kg))
kriging 補間による換算係数(cps/(Bq/kg))
0.12
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0.1
0.08
0.06
0.04
0.02
0
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
コアサンプルによる各Stでの換算係数(cps/(Bq/kg))
0
0.02
0.04
0.06
0.08
0.1
0.12
コアサンプルによる各Stでの換算係数(cps/(Bq/kg))
図 2-28 阿武隈川河口での検証結果
図 2-29 福島第一発電所近傍での検証結果
グラフ横軸がコアサンプルの測定によって得られた cps→Bq/kg 換算係数であり、縦軸がその
点を除いて kriging 補間で求めた場合の換算係数である。誤差棒は x、y それぞれゲルマニ
ウム検出器測定誤差に由来する換算係数誤差、kriging 誤差を含んでいる。図中右下領域に
17
再現性の悪い点が現れているが、これはアノマリー近傍のサンプル点に対応している。どち
らの海域でも似たような傾向が見られ、アノマリーを除けば 80%の地点で誤差の範囲で
kriging 補間データが元のサンプル値を再現していることがわかる。
18
2.2.5
測定誤差の定量化
データ解析フロー図(図 2-11)に示すように計数率-放射能濃度換算係数[cps/(Bq/kg)]は、
サンプルコア測定結果とモンテカルロ計算により、まず採泥点における換算係数が算出され、
その結果を補間することにより曳航測線上各点での換算係数が求められる。この換算係数で
光電ピーク計数率を割ったものが放射能濃度となる。これら過程の各要素が含む不確かさを
考慮し、最終的な曳航測定結果への伝播を定量化した。以下不確かさをもたらす各要因につ
いて述べる。
(a)Cs 鉛直濃度分布
放射性物質の鉛直濃度分布は水平に切断されたサンプルコアをゲルマニウム(Ge)検出器で
測定することにより得られる。この過程で含まれる不確かさの典型値は 5%程度である。
(b)検出器応答関数
検出器の応答関数はモンテカルロ計算により求められるため、計算結果は統計的な不確か
さを常に含むが、当解析ではこの統計誤差が 0.1%以下になるまで計算を続けているため、十
分無視できる。しかしながら体系のモデル化等による誤差が生じていると考えられるため、
前年度ベンチマーク実験を行い、その結果の計算値/実験値比から検出器応答関数の含む不確
かさは 5%程度と見積もった。
(c)光電ピーク計数率
光電ピーク計数率はスペクトルのフィッティングによって求めている。計数率の不確かさ
はフィッティングパラメータの分散及び共分散より得られるが、当解析では計数率の不確か
さが 7%以下になるまで空間分解能を落としてγ線スペクトルを平均化している。
(d)検出器沈み量
2.2.2 の結果より、平均沈み量を用いて解析する場合その標準偏差を不確かさとして考慮
する。沈み量のばらつきは海域に依存するが、河口部のような場合は沈み量数 cm に対し、数
十%程度の標準偏差となる場合が多い。測線上各点の沈み量データを利用する場合は特に沈み
量の不確かさは考慮しない。
(e)補間
各採泥点の換算係数から測線上へ換算係数を保管するにあたっては、データ値間の差の二
乗を距離別に整理することで、どの程度離れればどの程度値が変化するかという空間構造を
記述し、補間誤差が最小になるように重み付けを行う kriging を用いた。距離の逆数で重み
付けを行う IDW(Inverse Distance Weighting:逆距離加重法)法は単純で計算量も少ない
が、補間による不確かさが推定できないため今回は kriging を用いることとした。
19
これらの要因を考慮し、曳航式ガンマ線検出器による測定結果の不確かさを算出した。平
成 25 年 3 月の阿武隈川河口測定結果(東西測線)に対して不確かさを付与したものが図 2-19
である。
図 2-19 阿武隈川河口部東西分布(上:137Cs/134Cs 比、下:137Cs 分布及びサンプル測定結果)
不確かさは概ね 20~30%であり、コアサンプル測定結果と不確かさの範囲内で一致してい
る。上記(a~e)要因の相対的な寄与割合は順に 鉛直分布 : 応答関数 : 計数率 : 沈み量 :
補間 = 17 : 1 : 16 : 29 : 49 程度であった。
【執筆者:海上技術安全研究所
海上技術安全研究所
大西世紀、東京大学生産技術研究所
小田野直光、鎌田創】
20
ソーントン・ブレア、
第 3 章.
3.1
3.1.1
1F 近傍の放射性物質分布の把握
海底地形及び土質調査
海底地形及び土質調査の方法
これまでの調査により、海底土中の放射性物質の濃度分布は、海底地形及び土質に関係が
あると考えられる。また、安全な曳航測線の設定、採泥地点の検討にも海底地形及び土質の
情報が必要である。1F 近傍の海底地形調査は、400 トンクラスの大型調査船(第八開洋丸)
と 20 トン未満の漁船を使用して実施した。
(1)大型調査船による調査
大型調査船による調査測線は、平成 25 年度と 26 年度の 2 回実施した。平成 25 年度の調査
範囲を図 3-1 に示す。図中、数字及び英文字を○で囲ったものは測線番号である。測線 1~
26 までの総延長は 670km であり、測線範囲 A~H では、合計 34km2 の面的な海底地形及び土質
データを取得した。平成 26 年度においては、図 3-2 に示す範囲(東西約 8.6km、南北約 17km、
面積約 150km2)について、面的な測定を実施した。
海底地形については、大型調査船に舷側装備したマルチビーム音響測深機(KONGSBERG 製
EM2040)を用いて海底地形データを取得した。周波数は 400kHz を使用した。最も水深が深く
なる測線 26 のみ、300kHz を一部使用した。調査開始前に機器取付け角度のキャリブレーシ
ョンを行った。
調査中の船速は 6 ノットを基本とした。スワス角度は片舷 50 度~65 度を基本とした。調
査中 1 日に 1 回以上、水温・塩分・深度計(CTD)もしくは投下式水温・水深計(XBT)観測
を行ない、そのデータより得た音速プロファイルをマルチビーム音響測深機に入力し、音速
度補正を行った。また、マルチビーム音響測深機の送受波器上に取り付けた音速度センサー
で計測した送受波器面のリアルタイムの音速度を機器に入力し、表面音速度の補正を実施し
た。
土質調査については、大型調査船に舷側装備したマルチビーム音響測深機(EM2040)を用
いて、後方散乱強度データを取得した。海底地形調査と同時に実施したため、設定や測線に
ついては海底地形調査と同一である。マルチビーム音響測深器のデータを取得した後、測線
4 上の 6 点においてスミスマッキンタイヤ採泥器を用いて採泥を行った。採泥地点は、マル
チビーム音響測深器の反射強度のデータにより決定した。採取した底質を写真撮影し、目視
及び手で触り観察することにより底質を判別した。取得したデータについては、気象庁所管
の小名浜検潮所のデータを用いて潮位補正を行った。その後、データ処理ソフトウェア
Marine Discovery Ver.3 でフィルター処理・ノイズ除去を行ない、グリッドデータを作成し
た。グリッドデータのメッシュサイズは、測線 1~26 は 2m、面的な計測範囲 1m とした。グ
リッドデータより海底地形図と反射強度の分布図を Geotiff 形式で作成した。
21
図 3-1
海底地形・土質計測を実施した測線(平成 25 年度)
22
図 3-2
海底地形・土質計測を実施した測線(平成 26 年度)
23
図 3-3
図 3-4
第八開洋丸
マルチビーム音響測深器艤装用ポール
図 3-5 マルチビーム音響測深器
送受波器
(2)小型漁船による調査
小型漁船による海底地形及び土質の調査は、サイドスキャンソナーによる海底面探査及び
単素子音響測深機による深浅測量を実施した。海底地形の調査は、大型調査船で実施できな
かった箇所を中心に、予定していた曳航測線に沿って実施した。実施方法は、図 3-6 に示す
ように音響測深機の送受波器を調査船舷側に取付け、また、サイドスキャンソナー(KLEIN
社製 SYSTEM3000)の曳航体を船尾より曳航し、測線上を走行してデータを連続的に取得した。
調査船への機器の装備(艤装)が完了した後には、テストランを行い機器の動作状況を確認
した。測量時の航走速度は 3~6 ノットとし、取得データの状況、周囲の航行船舶の状況等に
応じて適宜調整した。
取得したデータについては、トラッキングエラーの修正、曳航高度の変化による画像歪み
の斜距離補正、調査船の蛇行による画像歪みの幾何補正等を施すとともに、各測線毎の画像
のゲイン調整をし、隣接する画像同士の色ムラを無くし、各測線毎の画像を一つの画像に合
成しモザイク画像として整理した。なお、深浅測量の潮位改正に使用する潮位データは、気
象庁所管の「相馬」検潮所のデータを使用し、海水の音速度の補正はバーチェック法により
補正した。
24
GPS/ビーコンレシーバアンテナ
電源供給用発電機
音響測深機
送受波器
図 3-6
海面下
1.0m~5.0m
サイドスキャンソナー
曳航体
サイドスキャンソナーによる海底地形、土質調査
25
3.1.2
海底地形及び土質調査の結果
1F 近傍の平成 25 年度の海底地形調査の結果を図 3-7 に示す。
凡例
図 3-7
1F 近傍海底地形図
26
また、1F の前面海域の詳細海底地形調査(平成 26 年度)の結果を図 3-8 に示す。図中①
~⑥の海域は、0.5m メッシュでの解析を実施した範囲である。
図 3-8
1F 前面海底地形図
27
反射強度の測定結果については、測線状の計測と面的な計測に分け、それぞれ図 3-9 及び
図 3-10 に示す。
図 3-9
1F 近傍反射強度図(測線計測)
28
図 3-10
1F 近傍反射強度図(面的計測)
29
海底地形の情報は、曳航調査を行う船舶が安全に航行するために不可欠である。測線 15
の沿岸域の断面図を図 3-11 に示す。沿岸域は海底の起伏が激しく、高度差数 m の谷間が連続
している。その他の測線においても概ね沿岸域の地形は同様の特徴がある。このような地形
において、沖合から岸に向かって曳航体を曳航することにより、曳航体の岩礁への引っ掛か
りを防止し、安全な曳航調査を行うことができた。
沿岸からの距離(m)
‐10
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
‐12
測線15
水深(m)
‐14
‐16
‐18
‐20
‐22
‐24
図 3-11
測線 15 断面図
図 3-8 中の詳細範囲②の海底地形及び土質調査の結果を図 3-12 に示す。
図 3-12
詳細範囲 2 の海底地形図及び土質調査の結果
(左:海底地形図、右:反射強度図)
30
小型漁船による、福島県沖沿岸域の海底地形調査結果を図 3-13 及び図 3-14 に示す。
図 3-13
福島県沿岸域海底モザイク図(左上:鹿島支所北、右上:鹿島支所南、
左下:請戸支所北、右下:請戸支所南)
31
図 3-14
福島県沿岸域海底モザイク図(左上:富熊支所北、右上:富熊支所南、
左下:久ノ浜支所)
32
3.2
3.2.1
1F 近傍の放射性物質分布調査
調査の方法
1F 近傍の放射性物質分布調査は、大型調査船及び小型漁船により実施した。曳航調査の方
法は第 2 章で述べたとおりである。1F 近傍における曳航測線を図 3-15 に示す。青色で示す
図 3-15
1F 近傍測線
33
測線は、海底地形調査時と同じ大型調査船の第八開洋丸による測線である。第八開洋丸によ
る曳航距離は 606km であるが、そのうち、福島沖洋上風力発電所に係わる施設及び海底ケー
ブルを回避した距離は約 37km であった。赤色、緑色、紫色で示す測線は、20 トン未満の小
型漁船により曳航調査を実施した測線である。赤字の曳航距離の総延長は約 250km である。
緑色部分は、平成 25 年度に新田川沖についてグリッド状の詳細調査を実施した測線であり、
測線距離は 74km である。また、平成 26 年度には、新田川沖のグリッド調査について 49km
の測線を新たに北側に設定した。これにより、新田川沖の測線の総延長は、123km となった。
これらの測線を総合すると、1F 近傍では総延長約 980km の曳航調査を実施した。
測線の検討にあたっては、平成 24 年度の水産庁からの委託事業
3-1
として東大、海技研で
実施してきた曳航測線との関係を考慮し、部分的にオーバーラップさせ経時的な変化を観測
できるようにするとともに、政府、自治体の定点観測地点(図 3-10 中の黄色丸印)をカバー
した。図 3-16 は、平成 24 年度までの測線と本調査の計画測線を重ね合わせたものである。
沿岸域(小型漁船)
沖合(400トン調査船)
定点サンプリング地点
採泥地点
図 3-16
平成 24 年までの測線と本委託調査事業の測線の関係
放射性物質の鉛直分布等の詳細な分析を行うため、1F 近傍において採泥を実施した。本事
業で実施した採泥地点は、図 3-15 及び図 3-16 に赤丸印が記載されている地点であり、平成
25 年度においては、1F 近傍沖合(大型調査船による調査)で 15 地点、新田川沖合で 10 地点、
1F 近傍沿岸域(小型漁船による調査)で 17 地点である。採泥は、マルチプルコアラ-を用
いて柱状採泥を行った。柱状採泥した試料は、0~2cm まで 1cm ピッチ、2~6cm まで 2cm ピッ
チ、6~14cm まで 4cm ピッチ、14cm 以深は 6cm ピッチでカットし分取した。分取する際に、
目視等により、泥色、臭気、底質、性状及び混入物の有無を記録した。平成 26 年度において
は、曳航測定の精度検証のため、新田川河口沖については、採泥地点を増加させた。
3-1
水産庁、
「高濃度に放射性セシウムで汚染された 魚類の汚染源・汚染経路の解明のための緊急
調査研究」(2013).
34
大型調査船により採泥する際は、曳航体を繰り出しているワイヤー長とワイヤーの角度か
ら緯度経度を算出している。また、3.1.2 章で述べた海底地形と土質の情報により船の GPS
の位置を採泥器を下ろす場所に合わせ、できる限り船体を静止させて採泥を実施した。
35
3.2.2
曳航調査結果
1F 近傍の放射性物質調査の平成 24 年度までの曳航調査による観測結果を図 3-17 に示すと
ともに、平成 25 年度及び平成 26 年度の調査による観測結果を図 3-18、3-19 に示す。図には
137
Cs 濃度を海底土表層 3cm までの平均として示している。
1F の極近傍に放射性物質濃度が高い海域が存在し、沖合 6km の測線においては表層 3cm の
平均値で最大 2,000Bq/kg-wet の
137
Cs が観測され、沖合 4km の測線においては
137
Cs 濃度が
1,000Bq/kg-wet を超える箇所が 20 箇所程度見つかった。
また、1F 東方沖 20km の地点から南西方向に沖合 10km 付近よりも比較的濃度が高い海域が
存在し、この海域では 137Cs 濃度が数 100Bq/kg-wet 以上で分布している。この海域について
は、福島県沖合に宮城県沖から南西方向に連続して泥質帯が存在しており 3-2、この海域にお
ける海底土の放射能濃度が高い原因は、その底質と関係があると考えられる。
図 3-17
3-2
1F 近傍調査(H24 年度)の曳航調査結果(左)と採泥調査結果(右)
早乙女忠弘 他、福島水試研報第 16 号、pp.103-105 (2013).
36
図 3-18
1F 近傍調査平成 25 年度及び平成 26 年度の調査結果(左上:平成 25 年度曳航調査、
右上:平成 25 年度採泥調査、左下:平成 26 年度曳航調査、右下:平成 26 年度採
37
泥調査)
図 3-19 に 24 年度~26 年度までに実施した 1F 近傍の採泥による表層 3cm までの海底土中
の 137Cs 濃度と、採泥地点における曳航調査の結果の比較を示す。曳航調査による放射能濃度
と採泥による放射能濃度が異なる箇所もいくつか存在するが、全体的には、良い一致を示し
ており、曳航調査の結果は、十分信頼性があるものであることが示された。
図 3-20 に平成 24 年度~平成 26 年度までの調査結果について、1F 近傍調査の 137Cs 濃度の
ヒストグラムを示すとともに、平均値を示した。この結果から、137Cs 濃度は平成 25 年度は
平成 24 年度の約 50%、平成 26 年度は平成 25 年度の約 55%となっていることが分かる。これ
らの結果より、1F 近傍では、放射性セシウムの濃度は減少傾向にあり、この傾向については
図 3-21 に示す東京電力が実施している海底土中の放射性セシウム濃度の測定結果とも整合
していることが分かる。
200
Towed 137Cs, Bq/kg−w
Towed
137
Cs, Bq/kg−w
2500
2000
1500
1000
500
0
0
500
Sample
図 3-19
1000
137
1500
2000
150
100
50
0
2500
Cs, Bq/kg−w
0
50
Sample
100
137
150
200
Cs, Bq/kg−w
H24~26 年度の採泥と曳航計測による表層 3cm の海底土の 137Cs 濃度の比較(左:1F
近傍、右:新田川沖)
図 3-20
1F 近傍調査の 137Cs 濃度のヒストグラム(左:H24 年度、中:H25 年度、右:H26 年
度)
38
1000
100
100
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
対 25 年度比:89%
T‐D1
指数 (T‐D1)
10
300
500
700
900
1100
1300
10
T‐B1
指数近似
対 25 年度比:67%
1
1500
0
事故後経過日数(日)
200
400
600
800
1000
1000
1400
1600
1000
T‐D5
対 25 年度比:59%
指数 (T‐D5)
100
対 25 年度比:66%
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
1200
事故後経過日数(日)
100
T5
指数 (T5)
10
10
300
500
700
900
1100
1300
1500
500
700
事故後経過日数(日)
900
1100
1300
1500
事故後経過日数(日)
10000
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
T‐D9
対 25 年度比:74%
指数 (T‐D9)
1000
100
10
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
事故後経過日数(日)
図 3-21
東京電力が実施した海底土中 137Cs 濃度の経時変化。減少率は平成 25 年 12 月 1 日よ
り 1 年後(平成 26 年 12 月)を指数近似により評価。
39
図 3-22 に 1F 近傍の 100m グリッドにおける 137Cs 分布の経時変化を示す。図には平成 24 年
度からの 1 年間の 137Cs 濃度の%変化と平成 25 年度からの 1 年間の 137Cs 濃度の%変化を示す。
平成 24 年度と平成 25 年度の比較では、全体的に減少傾向にある。平成 25 年度と平成 26 年
度の比較では、1F よりも南側の海域で減少傾向である一方、1F よりも北側の海域の一部で増
加する海域があることが分かった。
∆137Cs
∆137Cs
%
%
+80
+80
0
0
-80
-80
av. 348d elapse
av. 355d elapse
図 3-22
1F 近傍の 100m グリッドにおける 137Cs 分布の経変化(左:H24 から H25 年度の相対
変化、右:H25 から H26 年度の 相対変化)
以降、主要な測線の経時変化を示す。経時変化を示す測線を図 3-23 に示す。
40
図 3-23
1F 近傍の 137Cs 濃度経時変化検討測線(A005、A024、A015)
41
図 3-24 測線 A005 の 137Cs 濃度の比較
42
図 3-25
測線 A005 でのサンプル及び曳航データの経時変化(上:A1N、下:A1S、注意:曳
航データに関してはサンプルに最も近いデータを使用)
図 3-26
測線 A005 の曳航データの経時変化(黒:図 3-24 に示す全範囲、赤:AA’の範囲)
43
図 3-27 測線 A024 の 137Cs 濃度の比較
図 3-28
測線 A024 の曳航データの経時変化(黒:図 3-27 に示す全範囲、赤:BB’の範囲)
44
図 3-29 測線 A015 の 137Cs 濃度の比較
図 3- 30
測線 A015 の曳航データの経時変化(黒:図 3-29 に示す全範囲、赤:CC’の範囲)
45
図 3-31 測線 A006 の 137Cs 濃度分布
46
図 3- 32
1F の沖合 7.5km までの詳細分析(右上:H25 年度の調査結果、右下:H26 年度の調
査結果)
47
図 3-32 には、沖合 7.5km までの曳航調査の結果と反射強度図を重ねた図を示す。沖合 4km
の地形は、細かく変化し、段差の数は沖合 6km よりも多くなる。図 3-32 から明らかなように、
段差の底には高濃度の 137Cs が堆積しており、高濃度で 137Cs が検出される箇所が沖合 6km よ
りも多くなっている。このように、137Cs の堆積は、海底地形と明確な相関があり、段差の底
には高濃度の 137Cs が堆積しており、海底土の性状は、泥質であった。図 3-32 の中央下部分
の黒枠で囲った海域について、海底地形の詳細図に
137
Cs の分布状況を重ねあわせた図を図
3-33 に示す。このように、海底に存在する 8m の崖下部分に、137Cs が高濃度で分布している
状況を明確に捉えることができた。
図 3-33
【執筆者:東京大学
1F 近傍窪み地形における 137Cs 濃度分布の分布状況
ソーントン・ブレア、海上技術安全研究所
西世紀】
48
小田野直光、鎌田創、大
3.2.3
海底土中の放射性セシウムの鉛直分布の測定
1F 近傍海域で採泥した試料については、
高純度 Ge 半導体検出器により 134Cs 及び 137Cs 濃度、
含水率の測定を行った。平成 26 年度調査の採泥位置と採泥位置における 137Cs 濃度の最大値
を図 3-34 にまとめた。また、図 3-35 に 137Cs 濃度及び含水率の鉛直分布を示す。また、過去
の調査結果についても、併せて表示し、経時変化が把握できるようにした。
図 3-34
採泥位置と採泥位置における 137Cs 濃度の最大値
49
137
Cs (Bq/kg-wet)
100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Station : A1N
0
0
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
Cs (Bq/kg-wet)
100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
5
25
30
35
10
20
30
Station : A1S
80
100
25
30
Station : A1S
40
2014NOV
45
2014NOV
45
2013DEC
2013DEC
50
50
137
50
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
Water Content(%)
40 50 60 70
35
40
25
30
35
50
90
2013DEC
50
5
45
100
2014NOV
137
40
90
Station : A1N
2013DEC
0
100
30
45
50
0
90
25
40
2014NOV
45
0
80
35
40
0
Water Content(%)
40 50 60 70
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : C1
40
2014NOV
45
2013DEC
図 3-35(1)
50
137
Station : C1
2014NOV
2013DEC
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
50
137
50
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Station : I1
Station : I1
2014NOV
2013DEC
50
137
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
50
5
25
30
35
10
20
30
Station : J2
90
100
30
Station : J2
2014NOV
45
2013DEC
50
2013DEC
50
137
500
1000
Cs (Bq/kg-wet)
1500
2000
2500
3000
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
80
25
40
2014NOV
45
25
30
35
40
Water Content(%)
40 50 60 70
35
40
0
100
30
45
2013DEC
50
0
90
25
40
2014NOV
45
0
80
35
40
0
Water Content(%)
40 50 60 70
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
25
30
35
Station : K3
40
2014NOV
45
45
2013DEC
50
図 3-35(2)
Station : K3
50
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
51
2014NOV
2013DEC
100
137
Cs (Bq/kg-wet)
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Station : K5
Station : K5
2014NOV
2013DEC
50
137
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
50
5
25
30
35
10
20
30
Station : L1
90
100
30
Station : L1
2014NOV
45
2013DEC
50
2013DEC
50
137
Cs (Bq/kg-wet)
100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
80
25
40
2014NOV
45
25
30
35
40
Water Content(%)
40 50 60 70
35
40
0
100
30
45
2013DEC
50
0
90
25
40
2014NOV
45
0
80
35
40
0
Water Content(%)
40 50 60 70
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
25
30
35
Station : L5
40
2014NOV
45
45
2013DEC
50
図 3-35(3)
Station : L5
50
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
52
2014NOV
2013DEC
100
137
10
20
30
Cs (Bq/kg-wet)
40 50 60 70
80
90
100
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Station : L7
Station : L7
2014NOV
2013DEC
50
137
0
0
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
Cs (Bq/kg-wet)
100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
5
25
30
35
10
20
30
Station : L8
90
100
30
Station : L8
2014NOV
45
2013DEC
50
2013DEC
50
137
5
10
15
Cs (Bq/kg-wet)
20 25 30 35
40
45
50
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
80
25
40
2014NOV
45
25
30
35
40
Water Content(%)
40 50 60 70
35
40
0
100
30
45
2013DEC
50
0
90
25
40
2014NOV
45
0
80
35
40
0
Water Content(%)
40 50 60 70
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : ND1
40
2015JAN
45
Station : ND1
45
2013DEC
50
50
図 3-35(4)
2015JAN
2013DEC
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
53
90
100
137
10
20
30
Cs (Bq/kg-wet)
40 50 60 70
80
90
100
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
100
90
100
90
100
25
30
35
Station : ND2
40
2015FEB
45
Station : ND2
40
2015FEB
45
2013DEC
2013DEC
50
50
*2015 年 2 月の調査では各層で設定した検出下限値を下回ったので設定した検出下限値で示した。
137
50
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
25
30
35
Station : ND3
40
Station : ND3
40
2015FEB
45
2015FEB
45
2013DEC
2013DEC
50
50
137
10
20
30
Cs (Bq/kg-wet)
40 50 60 70
80
90
100
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
40
80
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : ND4
40
2015FEB
45
Station : ND4
45
2013DEC
50
50
図 3-35(5)
2015FEB
2013DEC
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
54
137
5
10
Cs (Bq/kg-wet)
15
20
25
30
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
Station : ND5
90
100
2015JAN
2013DEC
50
137
0
5
10
15
Cs (Bq/kg-wet)
20 25 30 35
40
45
50
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
100
Station : ND5
45
50
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : ND6
40
Station : ND6
40
2015FEB
45
2015FEB
45
2013DEC
2013DEC
50
50
137
0
1
2
3
Cs (Bq/kg-wet)
4
5
6
7
8
9
10
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
90
30
2013DEC
25
30
35
40
100
25
40
2015JAN
45
0
90
35
40
0
80
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : ND7
40
2015FEB
45
Station : ND7
45
2013DEC
50
50
図 3-35(6)
2015FEB
2013DEC
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
55
137
5
10
15
Cs (Bq/kg-wet)
20 25 30 35
40
45
50
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
100
90
100
90
100
25
30
35
Station : ND8
40
2015FEB
45
Station : ND8
40
2015FEB
45
2013DEC
2013DEC
50
50
*2015 年 2 月の調査では各層で設定した検出下限値を下回ったので設定した検出下限値で示した。
137
1
2
3
Cs (Bq/kg-wet)
4
5
6
7
8
9
10
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : ND9
40
45
Station : ND9
40
2015FEB
2015FEB
45
2013DEC
2013DEC
50
50
*2015 年 2 月の調査では各層で設定した検出下限値を下回ったので設定した検出下限値で示した。
137
50
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
40
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : OT2
40
2015FEB
45
Station : OT2
45
2014MAR
2014MAR
50
50
図 3-35(7)
2015FEB
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
56
137
5
10
15
Cs (Bq/kg-wet)
20 25 30 35
40
45
50
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
Station : OT3
30
Station : OT3
2015FEB
45
2014MAR
2014MAR
50
50
137
1
2
3
Cs (Bq/kg-wet)
4
5
6
7
8
9
10
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
100
25
30
35
Station : OT4
40
Station : OT4
40
2015FEB
45
2015FEB
45
2014MAR
2014MAR
50
50
137
0
20
40
60
Cs (Bq/kg-wet)
80 100 120 140 160 180 200
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
100
25
40
2015FEB
45
0
90
35
40
0
80
25
30
35
40
0
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
25
30
35
Station : UK3
40
2015FEB
45
Station : UK3
45
2014MAR
2014MAR
50
50
図 3-35(8)
2015FEB
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
57
100
137
20
40
Cs (Bq/kg-wet)
80 100 120 140 160 180 200
60
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
0
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
Station : UK4
30
Station : UK4
2015FEB
45
2014MAR
2014MAR
50
50
137
100
Cs (Bq/kg-wet)
150
200
250
300
0
0
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
50
5
25
30
35
10
20
30
Station : B2
100
Station : B2
2015FEB
2013APR
50
137
50
100
Cs (Bq/kg-wet)
150
200
250
300
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
90
30
45
2013APR
50
25
30
35
40
80
25
40
2015FEB
45
0
Water Content(%)
40 50 60 70
35
40
0
100
25
40
2015FEB
45
0
90
35
40
0
80
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
25
30
35
Station : D5
40
2015FEB
45
45
2014MAR
50
図 3-35(9)
Station : D5
50
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
58
2015FEB
2014MAR
100
137
50
Cs (Bq/kg-wet)
100 150 200 250 300 350 400 450 500
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Station : G1
Station : G1
2015FEB
2014MAR
50
137
40
60
Cs (Bq/kg-wet)
80 100 120 140 160 180 200
0
0
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
20
5
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
Station : KM1
100
90
100
30
Station : KM1
2015FEB
45
2014MAR
2014MAR
50
50
137
10
20
30
Cs (Bq/kg-wet)
40 50 60 70
80
90
100
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
90
25
40
2015FEB
45
25
30
35
40
80
35
40
0
100
30
45
2014MAR
50
0
90
25
40
2015FEB
45
0
80
35
40
0
Water Content(%)
40 50 60 70
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : KM2
40
2015FEB
45
Station : KM2
45
2014MAR
2014MAR
50
50
図 3-35(10)
2015FEB
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
59
137
100
200
Cs (Bq/kg-wet)
300
400
500
600
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
0
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
45
30
Station : TM1
40
2015FEB
45
2014MAR SAND
2014MAR SILT
50
2014MAR SAND
2014MAR SILT
50
137
50
100
Cs (Bq/kg-wet)
150
200
250
300
0
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
5
25
30
35
0
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
Station : TM3
100
30
Station : TM3
2015FEB
45
2014MAR
2014MAR
50
50
137
20
40
60
Cs (Bq/kg-wet)
80 100 120 140 160 180 200
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
90
25
40
2015FEB
45
25
30
35
40
80
35
40
0
100
25
2015FEB
0
90
35
Station : TM1
40
0
80
0
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
90
25
30
35
Station : TM4
40
2015FEB
45
Station : TM4
45
2014MAR
2014MAR
50
50
図 3-35(11)
2015FEB
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
60
100
137
50
100
Cs (Bq/kg-wet)
150
200 250
300
350
400
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
0
0
25
30
35
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
Station : HR1
100
Station : HR1
2015FEB
2014FEB
2014FEB
50
137
20
40
60
Cs (Bq/kg-wet)
80 100 120 140 160 180 200
0
0
5
5
10
10
15
15
20
20
Depth (cm)
Depth (cm)
90
30
45
50
25
30
35
40
100
25
40
2015FEB
45
0
90
35
40
0
80
10
20
30
Water Content(%)
40 50 60 70
80
25
30
35
Station : HR2
40
2015FEB
45
Station : HR2
45
2014FEB
2015FEB
2014FEB
50
50
図 3-35(12)
137
Cs 濃度及び含水率鉛直分布の経時変化
【執筆者:東京大学生産技術研究所
ソーントン・ブレア、海上技術安全研究所
大西世紀、小田野直光】
61
鎌田創、
3.2.4
粒径分布及び炭素同位体比の分析
福島県沖で採取した採泥試料については、粒径分布と炭素安定同位体比の測定を実施した。
表層 4cm までの平均粒径と 137Cs 濃度の関係を図 3-36 に示す。図 3-36 より、平均粒径が小さ
い泥質状の海底土に高濃度の 137Cs が検出される傾向にあることが分かり、海域によってその
相関に差があることが分かる。また、有機物の存在の指標となる強熱減量と 137Cs の相関につ
いては、図 3-37 に示すように、表層の有機物が多い海底土において高濃度の 137Cs が検出さ
れる傾向にあることが分かる。
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
1,000
100
福島沖合
新田川河口沖
福島沿岸域
指数 (福島沖合)
10
指数 (新田川河口沖)
指数 (福島沿岸域)
1
0
200
400
600
800
1000
平均粒径(μm)
図 3-36
海底土の平均粒径と 137Cs 濃度の関係
137Cs濃度(Bq/kg‐dry)
1,000
福島沖合
100
新田川河口沖
福島沿岸域
指数 (福島沖合)
10
指数 (新田川河口沖)
指数 (福島沿岸域)
1
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
強熱減量(%)
図 3-37
海底土の強熱減量と 137Cs 濃度の関係
62
また、福島県沖の海底土中の有機物の炭素安定同位体比は、図 3-38 に示すように、海域に
よる差はあるが、有機物は陸起源の有機物の寄与は小さく、海域起源の有機物の寄与が大き
い。
段素安定同位体比δ13C(‰)
‐21.0
‐22.0
‐23.0
‐24.0
‐25.0
炭素安定同位体比
‐26.0
図 3-38
福島県沖海底土中の有機物の炭素安定同位体比
【執筆:海上技術安全研究所
小田野直光、鎌田創】
63
KM2
KM1
UK4
UK3
UK1
TM4
TM3
TM1
M3
M2
M1
L8
L7
L5
L3
L1
K5
K3
J2
I1
C1
A1S
AIN
‐20.0
3.2.5
90
Sr 濃度分析
福島県沖の海域のうち、沖合海域 4 地点(平成 25 年 12 月採取)及び ROV 調査を実施した
海域 1 地点(平成 25 年 9 月採取)において、1F 事故に伴う放射性物質の分布形成要因を把
握するため 90Sr 濃度の分析を実施した。その結果を表 3-2 に示す。福島原発事故以前の 2001
90
年度~2010 年度までの平常の変動幅は、福島海域における海底土中の
Sr は検出下限の
90
0.08Bq/kg~0.13Bq/kg で推移しており、採泥地点 A1N を除き検出された Sr は原発事故起源
であると考えるのが妥当である。なお、採泥地点 K3 の特徴は、A1N、L1、I1 に比べ含水率が
55%程度と高く、また、平均粒径が 27μm である。また、ROV 調査を実施した St.5 の海底土
は、含水率が 48%、平均粒径が 42μm という特徴を有しており、K3 の海底土と同様の特徴を
持つことと、1F 南東 1.7km に位置するという特徴から 90Sr 濃度が高いと解釈できる。逆に、
L1、I1 は、1F から 13~15km 離れていることから、原発事故由来の 90Sr が検出されないこと
が分かった。
表 3-2
福島県沖の海底土中の 90Sr 濃度
137
採泥地点
A1N
K3
深さ
90
Cs(平均)
(Bq/kg-dry)
Sr
(Bq/kg-dry)
90
Sr/137Cs
0 - 6 cm
370 ± 11
ND(<0.17)
6 - 20 cm
290 ± 7.4
0.21 ± 0.11
7.3×10-4
1.6
± 0.19
1.6×10-3
1.4×10-3
0 - 20 cm
1000 ± 18
20 - 40 cm
850 ± 16
0.97 ± 0.16
-
L1
0 - 6 cm
280 ± 9.1
ND(<0.20)
-
I1
10 - 14 cm
52 ± 4.0
ND(<0.16)
-
ROV St.5
0 - 2 cm
5100 ± 59
2.8
± 0.31
5.5×10-4
2 - 4 cm
4500 ± 43
4.1
± 0.33
9.1×10-4
4 - 6 cm
4200 ± 39
4.0
± 0.31
9.5×10-4
6 - 10 cm
4600 ± 38
3.0
± 0.22
6.5×10-4
10 - 14 cm
9500 ± 55
12
± 0.42
1.3×10-3
14 - 20 cm
20000 ± 77
12
± 0.43
6.0×10-4
20 - 26 cm
26000 ± 87
14
± 0.47
5.4×10-4
26 - 32 cm
25000 ± 81
± 0.33
3.1×10-4
【執筆:海上技術安全研究所
小田野直光、鎌田創】
64
7.8
3.2.6
ROV 調査
1F 近傍では、海底の地形に依存せずにピンポイントで放射性セシウムの濃度が高い海域が
存在するため、曳航調査で使用した 3”φ×3”の NaI シンチレーション検出器を ROV(無人
探査機)に装着し、詳細な放射性セシウムの分布調査を実施した。実施海域は、図 3-39 に示
す海域であり、これらの海域は平成 24 年度の水産庁事業での調査結果から、1F 近傍で放射
性セシウムの濃度が高いと判断された海域である。ROV を投入した調査は平成 26 年 2 月及び
平成 27 年 1 月の 2 回実施した。
図 3-39
ROV 調査を実施した海域
ROV を投入した調査のうち、海域 D の結果を図 3-40 に示す。この海域は、東側に岩礁帯が
広がり、岩礁帯の西側には、泥質状の海底土が広がっている海域である。ROV に装着した NaI
シンチレータの 137Cs 光電ピーク計数率(cps)は、泥質状の箇所では 100cps 以上の場所が広
く広がる一方、東側の海域では、200cps を超える場所が、間隔を空けて局所的に表れること
が分かった。その間隔は 10~30m であり、最大 2000cps が計測された。なお、測定した NaI
シンチレータからのスペクトルを分析した結果、134Cs、137Cs、40K 以外の有意な放射性物質は
検出されなかった。また、これらの海域での特徴は、ROV を移動させると光電ピークカウン
ト率が非常に小さくなることであり、使用しているシンチレータの応答を分析した結果、海
底表層に非常に小さな点線源が存在していると仮定すると、状況を説明できることが分かっ
た。局所的に高い光電ピークカウント率から、点線源の放射能強度を逆算すると、最大で 6.5
×104Bq となる。これらの結果は、他の調査地点でも観測され、その結果を表 3-3 に示す。な
お、図 3-39、図 3-40 及び表 3-3 に示した
137
Cs の光電ピーク計数率(cps)は、3”φ×3”
65
の NaI シンチレーション検出器を用いた場合のスペクトル分析結果の生データであるため、
あくまでも相対的な意味合いしかないことに留意する必要がある。
図 3-40
海域 D における ROV 調査の結果
表 3-3
ROV 調査結果のまとめ
200cps 以上
調査距離
200cps 以上の
最大放射能強度
の場所の数
(m)
場所の間隔(m)
(Bq)
B1
2
580
> 35
1.2±0.1×104
B3
7
380
15 – 30
7.0±0.5×103
D
21
640
10 – 30
6.5±0.1×104
F1S
7
430
10 – 100
3.2±0.1×104
海域
【執筆者:東京大学生産技術研究所
ソーントン・ブレア、海上技術安全研究所
鎌田創、小田野直光】
66
大西世紀、
3.3
1F 近傍における調査のまとめ
1F 近傍において設定した測線について(平成 25 年度は約 800km、
平成 26 年度は約 980km)
、
曳航式ガンマ線スペクトロメータを用いて海域の放射性物質分布の計測を行った。
平成 25 年度においては、1F の極近傍に放射性物質濃度が高い海域が存在し、沖合 6km の
測線においては表層 3cm の平均値で最大 2,000Bq/kg-wet の 137Cs が観測され、沖合 4km の測
線においては
137
Cs 濃度が 1,000Bq/kg-wet を超える箇所が 20 箇所程度見つかった。平成 26
年度においても、同様の傾向が観測されたが、137Cs 濃度は、後述のとおり、減少傾向にある
ことが明らかとなった。
また、平成 25 年度には、1F 東方沖 20km の地点から南西方向に沖合 10km 付近よりも比較
的濃度が高い海域が存在し、この海域では 137Cs 濃度が数 100Bq/kg-wet 以上で分布しており、
この傾向は平成 26 年度でも同様であった。この海域については、福島県沖合に宮城県沖から
南西方向に連続して泥質帯が存在しており、この海域における海底土の含水率は 16%~31%で
あった。
平成 24 年 11 月の調査においては、約 8m の段差の底に高濃度の 137Cs が堆積していたが、
平成 25 年 12 月の調査においても同様の傾向が確認され、137Cs 濃度にも大きな変化はなく、
1 年間での変化はあまりなかった。1 年後の平成 26 年 11 月の調査においては、約 8m の段差
の底に高濃度の 137Cs が堆積する傾向には変わりがない一方、平均濃度は 20%までに減少して
いることが明らかとなった。1F 近傍全体では、137Cs 濃度は 1 年間で 55%程度にまで減少して
いることが明らかとなり、この結果は、東京電力が実施している 1F 近傍の海底土放射能計測
結果とも整合している。平成 26 年度の海域全体の 137Cs の平均濃度は、43 Bq/kg-wet である。
放射性物質の海域における分布状況と、音響調査による海底地形及び底質の状況から、放
射性物質の分布状況が、海底の地形及び底質に密接に関係があることが分かった。砂質及び
岩が分布する海域においては、放射性セシウムの濃度は低く、1F の近傍であっても、137Cs 濃
度は 100 Bq/kg-wet を超える海域は確認されていない。泥質が分布する平地では、1F 近傍海
域で、137Cs 濃度は 200 Bq/kg-wet であり、泥質が分布する海域では、放射性セシウム濃度が
比較的高い。また、窪地に泥質が分布している箇所においては、放射性セシウムの濃度が周
囲より 1 桁ほど高くなることが確認され、このような箇所は、福島県沖の調査海域全体に渡
って複数個所確認された。そのような箇所の 137Cs 濃度は 500 Bq/kg-wet 程度で一般的である
が、高い場所では 2,000 Bq/kg-wet 程度の濃度が測定された。
曳航調査した測線において、採泥による詳細な放射性セシウムの鉛直分布を測定すること
により、平地では、表層から数 cm 以内に放射性セシウムが分布し、数 cm を超える深さでは
濃度が低い状況に対して、窪地に泥質が分布する箇所では、放射性セシウムが表層から 30cm
程度まで分布していることが分かった。また、深度分布の最大値は、表層付近ではなく、あ
る程度の深度で最大となる箇所も複数確認された。窪地の泥の粒径は細かく、また、濃度が
高い箇所の水深が 30m 程度までであることより、海底の流れ、波により、表層との混合が起
きているものと考えられる。
【執筆者:海上技術安全研究所
小田野直光、東京大学
67
ソーントン・ブレア】
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