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皮膚のできもの - JAグループ茨城

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皮膚のできもの - JAグループ茨城
平成 25 年 7 月 16 日放送
皮膚のできもの
茨城西南医療センター病院
形成外科部長 知久明義
司会 本日のテーマは「皮膚のできもの」ということですが、よろしくお願いいたします。
知久 はい、
「皮膚のできもの」は沢山の種類がありますが、今日は、そのなかでも多くみられる
3 つ(おできとガングリオンとイボ)についてお話しいたします。
司会 では、まず「おでき」ですけど、これはよくありますよね。
知久 そうですね。皮膚が赤く腫れて痛くなった状態を「おでき」と言っていますが、「おでき」
には、2 種類あって、膿を持たないおできと、膿を持つおできがあります。膿を持たない
おできは、塗り薬や化膿止めの飲み薬で良くなる事も多いですが、膿を持ったおできは、
切開して膿を出さなければ良くなりません。
司会
切開というとメスで切ることですよね。怖そうですが・・、よくにきびが腫れて爪でつぶ
すというのがありますが、それでは駄目ですか?
知久
にきびが赤く腫れたものや、いわゆる面疔(めんちょう)と言って毛穴にばい菌が入って
腫れたものは、爪でつぶす程度で済むかも知れませんが、面疔と違ってもっと大量に膿が
溜まり、熱がでることもあります。しかもその腫れや痛みはある日突然起こり、切開が必
要です。切開をして膿を出しきれば楽になります。
司会 大量に膿がたまる何か原因はあるのですか?
知久
もともとは粉瘤というできもので、粉瘤とは漢字で「こな」の「こぶ」と書きますけど、
これが膿の元になります。膿になる前は、痛みもなくただのしこりで、しこりの中味は「あ
か」です。
司会 「あか」って、皮膚をこするとでてくるあの「あか」ですか?
知久
そうです。皮膚の下に皮膚の袋ができて、その袋状の皮膚からでた「あか」が袋の中にた
まりしこりになります。からだのどこにでもできますが、多いのは、背中と顔です。私の
外来に、できものができたと言っていらっしゃる患者さんで、この粉瘤が一番多いです。
みなさん「脂肪のかたまりができた」と言われるのですけれど、中味は「脂肪」ではなく
「あか」なんです。
「あか」ですから、それが表面の皮膚にもれてでてきて、とても臭いこ
とがあります。
司会 なんでそんなのものができるのですか?「あか」だから不潔にしてるとできるのですか?
知久
粉瘤ができる原因はよくわかっていません。清潔不潔は関係ないようです。ただ、私のと
ころにいらっしゃる粉瘤の患者さんの 9 割以上の方は、喫煙者で、たばこを吸っていると
出来やすいようです。
司会 その「あか」が何で急に膿に変わるのですか?
知久
皮膚を通じて、ばい菌が入って中味の「あか」につくと、膿になります。ばい菌が入るこ
とを感染といいますが、膿になった粉瘤を感染性粉瘤と言っています。つまり同じ粉瘤で
も痛くない粉瘤と、赤く腫れて痛くなった感染性粉瘤の 2 つの状態があるわけで、それぞ
れ治療も異なります。
司会 治療方法を教えてください。
知久
まず感染する前の痛みのでていない粉瘤ですが、これは手術をして袋ごと摘出します。た
まに、
「中味だけしぼりだしてくれればいい」とおっしゃる患者さんもいるのですが、粉瘤
の中味の「あか」は、この袋から出るので、中味だけしばりだして袋を残しておくと、ま
たあかが溜まって再発し治らないからです。局所麻酔をして2∼30分で終わります。
司会 袋を取り去らないと治らないと言う事ですね。
知久
そうです。次に膿の溜まった感染性粉瘤ですが、これは冒頭でお話ししたように、局所麻
酔をして皮膚を切開し、膿を完全に出しきったあと、まだ膿に変化していない残っている
「あか」と袋を可能な限り取り去ります。この時、袋の破片を残さずに取り除ければ再発
はないのですけれど、目に見えない程度でも袋の一部が残っていると傷が治ったあと再発
し、またしこりになります。
司会
なるほど、袋を取ると言う事がポイントなんですね。粉瘤についてはだいたいわかりまし
た。では、次によくあるできものですが、ガングリオンって初めて聞きましたが。
知久 手や足にゼリーがたまるしこりができることがあります。これをガングリオンといいます。
司会 なぜできるのですか?
知久
骨と骨の関節の中には、関節の動きをスムーズにするために、もともとこのゼリーが分泌
されて入っているのですが、この関節を包む関節包というカプセルの一部分が袋状に飛び
出してくるようです。
司会 治療はどうするのですか?
知久
ガングリオンという名前がついていますが、癌(ガン)とはまったく関係なく、ただゼリ
ーが溜まっているだけなので、そのままでもかまいませんが、でっぱって邪魔なときは針
をさして、ゼリーを吸引します。
司会 簡単に治るんですね。
知久
そうでもないんです。ゼリーを抜くとしこりはなくなりますが、この袋の根っこは関節に
通じているため、そこからまたゼリーが入ってきて、また溜まることが多いです。早いと
1 週間でまた元の大きさに戻ってしまいます。
司会 他に治療の方法はないのですか?
知久
手術して袋を取るという方法もありますが、根っこのところが弱くなっているため、関節
に通じる根っこの部分を縫って塞いでも再発することが少なくありません。悪いものでは
ないのですが、なかなかやっかいなできものです。
司会 なるほど、では最後にイボについてお話しお願いいたします。
知久 イボは 2 種類あって、皮膚の老化でできるイボとウイルスが原因でできるイボがあります
が、このウイルス性のイボの方が深刻です。
司会 どう深刻なのですか?
知久
ウイルス性のイボはだんだん大きくなりますし、移るので数が増えていきます。子供の足
にできることが多いですが、触っていると手にも移ります。保護者の方も、子供にイボが
できていると知っていても、移るものだと知らずに放置されていて、何個も数が増えてか
ら病院につれてこられる方もいらっしゃいます。魚の眼と勘違いしている方もいらっしゃ
います。
司会
イボが移って増えるというのは怖いですね、でもイボコロリで簡単にとれるのではないで
すか?
知久
確かにイボコロリという商品が市販されていますが、あれは皮膚を柔らかくして削りやす
くするためのものですが、イボの根は深くてうまく取れません。むしろしっとりすること
でウイルスが増えてイボが大きくなることがあります。
司会 では、どう治療するのですか?
知久
液体窒素といって非常に冷たい液体を綿棒でイボに押し当て、そのイボの部分だけ凍傷に
して治療するのが一般的です。ごく小さいイボは数回の治療で治りますが、大きいと 1 年
以上かかるときもありますし、沢山あるときは、1 個でも残すと、また増えてもとにもど
ってしまうので、一挙に治す必要があります。早く治したい方は切除手術をするときもあ
ります。
司会 なるほど、イボといってもけっこう大変なのですね。
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