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切り花の長期保存

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切り花の長期保存
31508
切り花の長期保存
3620 進藤 蒼
3536 山内美怜奈
3636 安江愛海
要旨
菊を用いて、切り花の長期保存に効果的な方法を導き出すことを目的に実験を行った。切り花は鉢物
と比較して、状態良く維持できる期間が短いため、①切り口、②溶液、③濃度、④温度に着眼点を置い
て実験を行った。実験の条件として、菊の茎の長さと葉の数を同じにし、また用いるメスシリンダーを
200ml、500ml にした。実験 1 では、菊の茎の切り口を①平行②逆 M③とんがり(弱め)④とんがり(強
め)⑤斜め切り(弱め)⑥斜め切り(強め)にし、19 日間観察を行った。結果、切り口によって花の状
態に違いはあまり見られなかった。実験 2 では、それぞれに用いる溶液を、一回目①水道水、②米のと
ぎ汁、③砂糖水、④食塩水、⑤洗剤水、⑥緑茶、⑦液体肥料の 7 種類、二回目①活力剤、②食塩水、③
砂糖水、④抹茶、⑤酢、⑥洗剤の水溶液にした。それぞれ同濃度にし、18 日間観察を行った。結果、砂
糖水が最も切り花を状態良く保つことが分かった。実験 3 では、実験 2 の結果をふまえ、砂糖水の濃度
を①1%、②3%、③5%、④10%、⑤15%、⑥30%に変え、22 日間花の観察を行った。結果、砂糖水の
濃度は 15%が最も花の状態が良い事が分かった。実験 4 では周りの温度を①5℃、②10℃、③20℃、④
常温にし、花の様子を観察した。結果、5℃、10℃が最も状態が良かった。これらの事から、花弁の大き
さ、葉と茎の色、葉のハリを基準に状態良く保つには、15%砂糖水で一定の低温管理が最も良い事が考
えられる。
目的
切り花の長期保存を目指し、菊を用いて様々な状況下での花の様子を観察した。さらに、身近なもの
を利用して、家庭でも手軽にできる方法を見つけだしたいと考えた。
1.方法
(1)実験
実験 1<切り口>
○使用したもの
・菊(葉 10 枚、茎 40cm に揃えたもの)
・200ml のメスシリンダー
・蒸留水
実験 2‐①<溶液>
実験 2‐①<溶液>
○使用したもの
○使用したもの
・菊(葉 15 枚、茎 40cm に揃えたもの)
・菊(葉 5 枚、茎 40cm に揃えたもの)
・200ml のメスシリンダー
・200ml のメスシリンダー
・溶液に用いるもの(砂糖、食塩、米のとぎ汁、
・溶液に用いるもの(活力剤、食塩、砂糖、抹茶、酢、
液体洗剤、液体肥料、茶葉)
・食油
洗剤)
・パラフィルム
08-1
実験 3<濃度>
実験 4<温度>
○使用したもの
○使用したもの
・菊(葉 10 枚、菊 20cm に揃えたもの)
・菊(葉 10 枚、茎 20cm に揃えたもの)
・200ml のメスフラスコ
・蒸留水
・砂糖
・200ml のメスフラスコ
・15%濃度の砂糖水
(2)実験手順
実験 1<切り口>
① 切りそろえた茎の切り口を下図のようにし、葉をすべて無くしたものを用意する。
② 蒸留水を 200ml ずつ入れ、同じ温度下に置いて菊の葉、茎、花弁の様子を観察する。
平行
逆M
とんがり(弱)
とんがり(強) 斜め切り(弱) 斜め切り(強) 皮むき
実験 2①<溶液>(以下の濃度は、質量パーセント濃度とする)
① 菊を 40cmに切りそろえ、葉を 10 枚に揃える。
② すべての溶液を 10%濃度にし、200mlのメスシリンダーに入れる。
③ 水面からの水分蒸発を防ぐため、食用油を 5mlずつ加える。
④ 同じ温度下に置き、菊の葉、茎、花弁の様子を観察する。
実験 2②<溶液>(※①の結果に基づいて、条件を決めたもの)
① 菊を 40cm に切りそろえ、葉を 5 枚に揃える
② それぞれの溶液を 5%、10%濃度にし、200ml のメスシリンダーにいれる。
③ 水面からの水分蒸発を防ぐために、パラフィルムで密閉する。
④ 同じ温度下に置き、菊の葉、茎、花弁の様子を観察する。
08-2
実験 3①<濃度>
① 菊を 20cm に切りそろえ、葉を 10 枚に揃える。
② 1%、3%、5%、10%、15%、30%の濃度の砂糖水をメスフラスコに入れる。
(それぞれ 2 つずつ用意する)
③ 同じ温度下に置き、菊の葉、茎、花弁の様子を観察する。
実験 3②<濃度>
① 菊を 30cm に切りそろえ、葉を 5 枚に揃える。
② それぞれの濃度を 1%、3%、5%、10%、15%を 2 本ずつ用意する。
実験 4①<温度>
③ 実験 3 と同じ状態の菊を用意する。
④ 蒸留水と 15%濃度の砂糖水と菊をそれぞれメスフラスコに入れる。
⑤ それぞれ 5℃、10℃、20℃、常温(夏:平均気温 26 度)であるところに置く。
⑥ 菊の葉、茎、花弁の様子を観察する。
実験 4②<温度>
① 蒸留水と 3%濃度の砂糖水と菊をそれぞれメスフラスコに入れる。
② それぞれ 5℃、10℃、20℃、常温(夏:平均気温 26 度)であるところに置く。
③ 菊の葉、茎、花弁の様子を観察する。
2.結果
実験 1<切り口>
図 1 より、斜め弱の水の吸収率が最も良い。しかし、
他の切り口と同じような花の状態だったため水の吸収
率が多いからといって状態が良いというわけではなか
った。表面積はとんがり強が最も大きいが、図 1 より
水の吸収率は他よりも少ない。
茎の切り口別吸水量
200
150
100
50
0
図1
08-3
実験 2①<溶液>
砂糖
食塩水
米のとぎ汁
花弁の直径
15.5cm
3cm
8cm
様子
花が大きく開いていた。
茎の周りにゼリー状のものが付いていた。
カビが生えてきた。
葉が乾燥して枯れかけ
液面上の茎が茶色く変色していた。
ていた。
葉の表面に塩の結晶が見られた。
緑茶
液体洗剤
液体肥料
花弁の直径
6cm
7cm
13.5cm
様子
液面の上 3cm 位が変色。
茎が茶色く変色。
気泡が茎から出てきている。
花弁も変色。
葉がすべてパリパリ。
茎が溶けかけている。
虫がたくさん寄ってきている。
(異臭がする)
最も花が大きかったのは、砂糖水だった(写真 1)。また、砂糖水は溶液の中で吸水量も最も多かった。ま
た、全体的に溶液の濃度が大きかったために、吸水の障害となり、枯れてしまったものが多かった。図 2 より、
全体的に水と比較すると吸水量が少なくなるため、溶質があると吸水できる量が減ることが分かる。また、吸
水量が少ない菊は、比較的花の状態も悪かった。それぞれの水溶液に細菌が繁殖して水溶液の状態を悪くする
のではないかと考え、溶液別に細菌の量を寒天培地を用いて調べたところ、食用のものには細菌が多く、洗剤
には細菌が見られなかった。また、砂糖水の細菌の量は比較的少なかった(写真)。細菌量と花の状態にはは
っきりとした結果は得られなかった。
㎖
溶液別吸水量
140
120
100
80
60
40
20
0
写真 1
図2
08-4
実験 2②<溶液>
花の様子
5%
水(蒸留水)
砂糖
食塩水
カビなどはなく、花の
茎が変色した
葉、花変
成長することなく枯れ
変色は少なかったが、 色はなかった。
た。
砂糖、活力剤に比べ枯
葉の表面に白い固形物
れるのが早かった。
が見られた。
10%
酢
5%よりも大きく花が開
成長することなく枯れ
いたが、早く枯れてしま
た。
った。
葉の表面に白い固形物
葉が端から枯れた。
が見られた。
抹茶(飲む用の
活力剤(用法に
洗剤
の濃度と、5%) 合わせた濃度)
花の様子
5%
葉も茎も茶色に
カビが生えた。
花は砂糖よりも
溶液が白く濁った
変色し実験開始
茎が変色し花と
小さい。
葉に水分がなく、
すぐに枯れた。
茎が萎れた。
花、葉、茎の状
花もすぐに萎れ
粉末が沈殿し
態を良く保った
た。
た。
時間が最も長か
った。
10%
葉も茎も茶色に
5%よりも葉に水
変色し実験開始
分がなく、花もす
すぐに枯れた。
ぐに萎れた。
実験 3①<濃度>
花の状態は 15%濃度が最も花が大きく、葉、茎を状態良く保った期間が長かった。また、1%はほかの濃度
と比べて花弁が小さく、30%濃度は葉が枯れるのが早かった。図 3 より、数値にばらつきが見られるため、濃
度による吸水量に違いは大きくはないが、30%のように濃度が濃すぎると吸水量が減少することが分かった。
08-5
㎖
濃度別吸水量①
濃度別吸水量②
㎖
150
150
100
100
50
50
0
0
図3
実験 3②<濃度>
10%は花が最も大きく開いた。15%は他と比べ早く枯れてしまった。3%の濃度が最も長く花の状態をよく
保つことができた。濃度が小さいほど花の花弁の直径は小さくなり、蒸留水とほぼ大きさは変わらなかった。
実験 4①<温度>
観察の結果、温度が低いほうが花は状態良く保たれるということが分かった。
常温時に花の状態が悪かったため、温度変化が少ないほうが、花を状態良く保つ
ために必要であると分かった。砂糖水と蒸留水との違いは、どの温度下でも見ら
れた。また、20℃、5℃の温度下に置いたものに、花弁と茎、葉の変色が見られ
た(写真 2)。赤紫色に変化しており、これは低温によりアントシアニンが発生
したと考えられる。
写真 2
実験 4②<温度>
[実験中により経過報告]
写真 3・4 の通り、温度が低いほうがピンとしていて状態が良いことがわかる。しかし、低温になると花の大
きさは、砂糖水と蒸留水とでの差は小さくなっている。実験 1 でみられたような紫色には変化していない。
30℃では砂糖水のほうが大きい。
写真 3
30℃
5℃
写真 4
08-6
3.考察
・切り口について
切り口の表面積や形によって、吸収率や様子に大きな差が出ることはなかった。よって、切り口を変えるこ
とと、長持ちには関係がないと思われる。ただ、水の蒸発のために張っておいた食用油を菊が吸ってしまった
可能性があるので、これについては調べる必要がある。
・溶液について
実験①→砂糖の溶液は一番花が大きく、ぴんとしていた。これは砂糖に含まれる豊富な養分が菊の長
持ちに影響したと考えられる。緑茶や米のとぎ汁は早い段階でカビが生え始めたため、細菌によって菊
は早く枯れてしまった。また、塩水や洗剤水は濃度が植物にとって濃すぎたため、成果がよくわからな
い状態で枯れてしまった。濃度を薄くしての実験が必要である。緑茶、とぎ汁と同様に砂糖水も細菌が
発生しやすいため、発生を抑制する方法を調べたい。
実験②→溶液② 前回の結果より、溶液に菌が発生することで植物が早く枯れてしまうと考えたので、
殺菌効果のある酢を使用したが、早く枯れてしまった。調べてみると、酢は除草に使われており、殺菌
効果はあるが植物自体を殺してしまうとわかった。食塩では、濃度を体液とほぼ同じ 0.1%の溶液でも実
験してみたが、枯れるまでの時間が少し伸びただけであまり効果はなかった。洗剤、茶についても同じ
ようにすぐに枯れてしまった。一方、砂糖を使用した植物は最後まできれいな状態で、活力剤よりも花
が大きく開いた。このことから、植物を長い間保つためには砂糖のように養分が多く含まれているもの
がよいと考えられる。
・砂糖の濃度について
実験①→グラフより、15%の砂糖水が最も良かった。砂糖の濃度が濃いほど吸収率が小さかったこと
から、濃すぎると水分が十分に行き届いていないと考えられる。砂糖水はカビが発生しやすいが、高濃
度では細菌が発生しにくい為、この濃度が最も良い状態に保つ事が出来たと考えられる。
実験②→濃度が濃くなるにつれて花被の大きさが大きくなっているが 15%濃度は小さい。濃度が濃く
なるにつれて葉の水分がなくなった(図 1 写真)。このことから、濃度が高いと花は大きく開くが、状
態がよく保たれるわけではないということが分かった。
実験①と実験②の結果が異なってしまったのは、実験を行った季節(実験①:夏 実験②:春)と、菊の
質が異なったからであると考えられる。
15%
10%
5%
3%
1%
図1
5℃
図
22
08-7
10℃
20℃
30℃
図2
・温度の違いについて
実験①→図 2 より、5℃、10℃のときの花の状態が最もピンとしていて良好であった。20℃の場合は枯れて
茶色に変色するのが最も早く、花弁にも葉にも水分がなかった。結果から疑問点が 2 つ見つかった。1 つは、
蒸留水と砂糖水を使用した菊をそれぞれ比べると砂糖は蒸留水に比べて葉に水分がなかった。また、花は砂糖
水の方がおおきく開いた。砂糖が植物に与える影響を調べたい。2 つ目は、低温で実験した菊の茎、葉、花弁
が紫色に変色したことで、紫色の物質はアントシアニンであると考えられるが、なぜ現れたのか今後の課題と
して調べていきたい。
実験②→実験途中のため経過報告実験 1 で現れた紫色への変化が見られないため、これからの実験で確認す
る。
08-8
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