Comments
Description
Transcript
第2章 建築物環境配慮指針における評価基準と 手法の解説
第2章 建築物環境配慮指針における評価基準と 手法の解説 Ⅰ エネルギーの使用の合理化 (E-1∼108) Ⅱ 資源の適正利用 (M-1∼35) Ⅲ 自然環境の保全 (N-1∼22) Ⅳ ヒートアイランド現象の緩和 (H-1∼38) Ⅰ エネルギーの使用の合理化 建築物の熱負荷の低減 (E-1∼14) 再生可能エネルギー利用 (E-15∼40) 省エネルギーシステム (E-41∼81) 地域における省エネルギー (E-82∼89) 効率的な運用の仕組み (E-90∼109) I. エネルギーの使用の合理化......................................................................................1 I.1 建築物の熱負荷の低減......................................................................................................... 1 I.1.1 建築物の形状・配置、外壁・屋根の断熱、窓部の熱負荷の低減 ................................ 1 I.2 再生可能エネルギー利用 ....................................................................................................15 I.2.1 再生可能エネルギーの直接利用 .................................................................................15 I.2.2 再生可能エネルギーの変換利用 .................................................................................23 I.3 省エネルギーシステム........................................................................................................41 I.3.1 設備システムの省エネルギー.....................................................................................41 I.4 地域における省エネルギー.................................................................................................82 I.4.1 地域冷暖房等..............................................................................................................82 I.5 効率的な運用の仕組み........................................................................................................90 I.5.1 最適運用のための計量及びエネルギー管理シスム.....................................................90 I.5.2 最適運用のための運転調整と性能把握 .................................................................... 102 I. エネルギーの使用の合理化 I.1 建築物の熱負荷の低減 1 I.1.1 建築物の形状・配置、外壁・屋根の断熱、 窓部の熱負荷の低減 指針策定の背景 環境負荷抑制のためには、建築物そのもののつくり方の工夫により、外部からの熱負荷を低減し、 空調や換気に係るエネルギー消費量を削減することが重要である。非空調室の西側への配置、外壁・ 屋根の断熱の強化、窓部の庇・ベランダ・ルーバー・ブラインド等による日射遮蔽、熱線反射ガラスや 熱線吸収ガラス・ペアガラスの使用などは冷暖房負荷の低減に効果的である。このような建築的配慮 は、建設時に対応することにより、建築の寿命が続く限り有効であり、最も重要なエネルギー削減 対策の一つである。 2 配慮すべき事項 【日射による熱取得の低減並びに室内外の温度差による熱取得及び熱損失の低減のために行う次に 掲げる事項】 ① 建築物の形状及び配置に係る事項 ② 外壁及び屋根の断熱に係る事項 ③ 窓部の日射遮へい及び断熱に係る事項 3 適用用途と評価基準 (1) 住宅 段階1 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成 11 年法律第 81 号)第3条第1項に基づく評価方法 基準(平成13年国土交通省告示第1347号。以下「評価方法基準」という。 )第5 5−1(3) イ①aの表の等級2の欄に掲げる基準値又は第5 5−1(3)ロ③bの表1又は表2に掲げる 基準値に適合すること。 段階2 評価方法基準第5 5−1(3)イ①aの表及び第5 5−1(3)イ②aの表の等級3の欄に 掲げる基準値又は第5 5−1(3)ロ②bの表1若しくは表2に掲げる基準値に適合すること。 段階3 評価方法基準第5 5−1(3)イ①aの表及び第5 5−1(3)イ②aの表の等級4の欄に 掲げる基準値又は住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針 (平成18年国土交通省告示第378号)3(1)及び(2)並びに4に掲げる基準に適合する こと。 ※住宅の品質確保の促進等に関する法律第 3 条に第1項に基づく評価方法基準(平成 21 年国土交通省告示第 354 号最終改正) ※住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針 (平成 21 年国土交通省告示第 118 号一部改正) (2) 住宅以外の用途 段階1 建築物の熱負荷の低減率として、特定建築物の用途ごとに規則別表第1の5備考1に規定する式 により算出した値が、0以上15未満であること。ただし、熱負荷の低減を必要としない特定建 築物については適用しない。 段階2 建築物の熱負荷の低減率として、特定建築物の用途ごとに規則別表第1の5備考1に規定する式 により算出した値が、15以上25未満であること。 段階3 建築物の熱負荷の低減率として、特定建築物の用途ごとに規則別表第1の5備考1に規定する式 により算出した値が、25以上であること。 ここで、規則(平成 21 年都民の健康と安全を確保する環境に関する条例施行規則第 126 号)別表 第1の 5備考1に規定する式による建築物の熱負荷の低減率とは、次の式により算出した値をいう。 建築物の熱負荷の低減率=100×{1−(PAL の値÷PAL の基準値)} E -1 この式において PAL の値及び PAL の基準値は、それぞれ次の値を表すものとする。 PAL の値;建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断 の基準(平成十一年通商産業省・建設省告示第一号。以下「判断基準」という。)1―3(1) に定めるところにより求めた特定建築物の屋内周囲空間(地階を除く各階の外壁の中心線か ら水平距離が五メートル以内の屋内の空間、屋根の直下の階の屋内の空間及び外気に接する 床の直上の屋内の空間をいう。以下同じ。)の年間熱負荷を各階の屋内周囲空間の床面積の合 計(単位 平方メートル)で除して得た値 PAL の基準値;当該特定建築物の用途ごとに、判断基準別表第一の(ろ)欄に掲げる数値に判断基準1― 3(2)に定めるところにより求めた規模補正係数を乗じて得た値) 表 I.1.1 PAL の建築主の判断基準 PAL (MJ/年・m2) ホテル等 病院等 物品販売 店舗等 事務所等 学校等 飲食店等 集会所等 工場等 420 340 380 300 320 550 550 ― ※エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)第14条第1項に基づく建築物に係 るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準(最終改正平成21 年経済産業省・国土交通省告示第3号) 表 I.1.2 PAL の建築主の判断基準の規模補正係数 平均階床面積 地階を 除く階数 1 2以上 50 平方メートル 以下の場合 2.40 2.00 100 平方メートル 以下の場合 200 平方メートル 以下の場合 300 平方メートル 以下の場合 1.68 1.40 1.32 1.10 1.20 1.00 平均床面積が、この表に掲げる数値の中間値である場合においては、希望補正係数を直線的に補間 した数値とする。 4 解説 (1) 住宅 A.考え方 大規模共同住宅においては、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく評価を受 けることが多いため、ダブルスタンダードを避ける観点から、同法の省エネルギー対策等級に準じ た評価基準とする。すなわち、 段階1―――品確法 省エネルギー対策の等級2 又は、旧省エネルギー基準(昭和 55 年制定) 段階2―――品確法 省エネルギー対策の等級3 又は、新省エネルギー基準(平成 4 年制定) 段階3―――品確法 省エネルギー対策の等級4 又は、次世代省エネルギー基準(平成 11 年制定) にそれぞれ近似するが、建築物環境計画書の提出時期等を考慮し、品確法の基準事項は下記に限定 し、施工などに関する基準事項は含まないものとする。段階 1∼3 の評価については、以下の 2 通 りの方法のうちいずれかの基準によるものとする。なお、計算方法については、品確法の解説書等 を参考に行うこととする。 また、平成 18 年 4 月より省エネ法に基づき、住宅用途についても省エネルギー計画書の提出が 義務付けられ、熱損失係数(Q 値)及び夏季日射取得係数(μ値)に基づく計算を行うことが可能 となった。従って、Q 値、μ値が二次世代基準を達成しても段階3とする。その際、どの住戸で計 E -2 算しているかを明記すること。その際、省エネルギー計画書の作成方法に倣って熱負荷条件が厳し い住戸(最下階、最上階、両側の妻側等)で計算すること。 1) ①熱損失係数 ③熱貫流率 又は④断熱材の熱抵抗 2) + ②夏期日射取得係数 + ⑤開口部の熱貫流率+⑥窓の夏期日射侵入率 又は⑦建具等の性能 ①∼⑦の数値については以下を参照。 B.基準 ① 熱損失係数 表 I.1.3 熱損失係数 熱損失係数 (単位 W/m2・K) 2.7 3.6 4.9 基準の区分 段階3 段階2 段階1 (評価方法基準第5 5−1(3)イ①aの表より地域区分Ⅳ、共同住宅等の基準値を抜粋。 なお、奥多摩町は地域区分Ⅲ、島嶼部は地域区分Ⅴの数値を参照。) ② 夏期日射取得係数 表 I.1.4 夏期日射取得係数 基準の区分 段階3 段階2 (評価方法基準第5 夏期日射取得係数 0.07 0.10 5−1(3)イ②aの表より地域区分Ⅳ、共同住宅等の基準値を抜粋。 なお、奥多摩町は地域区分Ⅲ、島嶼部は地域区分Ⅴの数値を参照。) ③ 熱貫流率 表 I.1.5 熱貫流率 屋根又は天井 熱貫流率の基準値(単位 W/m2・K) 基準の区分 段階3 段階2 段階1 0.37 0.67 1.04 壁 0.75 1.11 1.53 外気に接する部分 0.37 0.83 1.28 その他の部分 0.53 1.26 1.88 土間床等 外気に接する部分 0.58 の外周部 その他の部分 0.83 部 床 (評価方法基準第5 位 5−1(3)ロ①b より地域区分Ⅳの鉄筋コンクリート造等の住宅(内断熱工法)、ロ②b 表 1 より地域区分Ⅳの鉄筋コンクリート造の住宅その他これらに類する住宅又は気密住宅、③b 表 1 より地域 区分Ⅳの鉄筋コンクリート造及び組積造の住宅その他これらに類する住宅の基準値を抜粋。 なお、奥多摩町は地域区分Ⅲ、島嶼部は地域区分Ⅴの数値を参照。) E -3 ④ 断熱材の熱抵抗 表 I.1.6 断熱材の熱抵抗 部 位 屋根又は天井 断熱材の熱抵抗の基準値(単位 基準の区分 段階3 段階2 2.5 1.1 壁 m2・K/W) 段階1 0.7 1.1 0.7 0.4 外気に接する部分 2.1 10 0.3 その他の部分 1.5 0.5 0.1 土間床等 外気に接する部分 0.8 の外周部 その他の部分 0.2 床 (評価方法基準第5 5−1(3)ロ①b より地域区分Ⅳの鉄筋コンクリート造等の住宅(内断熱工法)、ロ②b 表 2 より地域区分Ⅳの鉄筋コンクリート造の住宅その他これらに類する住宅又は組積造の気密住宅、③b 表 2 より地域区分Ⅳの鉄筋コンクリート造及び組積造の住宅その他これらに類する住宅の基準値を抜粋。 なお、奥多摩町は地域区分Ⅲ、島嶼部は地域区分Ⅴの数値を参照。) ⑤ 開口部の熱貫流率 表 I.1.7 開口部の熱貫流率 基準の区分 熱貫流率の基準値(単位 W/m2・K) 4.65 段階3 6.51 段階2 6.51 段階1 (評価方法基準第5 5−1(3)ロ①c、ロ②c 表 1、ロ③c より地域区分Ⅳの基準値を抜粋。 なお、奥多摩町は地域区分Ⅲ、島嶼部は地域区分Ⅴの数値を参照。) ⑥ 窓の夏期日射侵入率 表 I.1.8 窓の夏期日射侵入率 窓が面する方位 真北±30°の方位 上記以外の方位 真南±112.5°の方位 夏期日射侵入率の基準値 基準の区分 段階 3 段階 2 0.55 0.45 0.60 (評価方法基準第5 5−1(3)ロ①c、ロ②c 表 2 より地域区分Ⅳの基準値を抜粋。 なお、奥多摩町は地域区分Ⅲ、島嶼部は地域区分Ⅴの数値を参照。) ⑦ 建具等の性能 建具等の性能については評価方法基準第5 5−1(3)ロ①c、ロ②c、ロ③c を参照のこと。 ⑧ 面積による補正 ①の熱損失係数による基準を適用する場合、住戸専用面積について1住戸が 60 ㎡以下の場合、 以下の式により熱損失係数を補正できる。 Qss=(1+0.005(As−S) )Qs この式において、Qss、As、Qs は、それぞれ次の数値を表すものとする。 Qss:小規模な住宅について適用される熱損失係数の基準値(単位 1 平方メートル1度につ きワット) As :基準床面積(集合住宅の場合 60 ㎡) S :住宅の床面積合計(単位 平方メートル) Qs :表 1.1.3 に掲げる熱損失係数の基準値(単位 1 平方メートル1度につきワット) E -4 ⑨ 共同住宅における断熱に関わる部位は、以下の図のとおりとする 図 I.1.1 共同住宅における断熱に関わる部位 (2) 住宅以外の用途 A.考え方 「建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基 準」において、建築物の外壁、窓等を通した熱の損失の防止について評価基準を定めているこれら 用途の建築物については、同基準に基づく数値(以下、「PAL の基準値」という。)に比べ、当該特 定建築物がその数値をどれだけ削減できているかについて評価を行う。 B.基準 基準の区分 段階1 段階2 段階3 具体的削減量 当該用途の PAL の基準値に比べ 0%≦PAL の基準値に対する削減割合<15% の範囲にあること 当該用途の PAL の基準値に比べ 15%≦PAL の基準値に対する削減割合<25% の範囲にあること 当該用途の PAL の基準値に比べ 25%≦PAL の基準値に対する削減割合 の範囲にあること なお、建物形状などにより下記に示す基準に対し、下記の補正係数により規模補正を行った場合においては、 規模補正後の数値を「PAL の基準値」とする。 E -5 熱負荷低減対策手法と PAL に関するケーススタディー モデル建築物(用途:事務所)を設定し、熱負荷低減対策手法とその効果のケーススタディーを 行った。モデル建築物の概要を図 I.1.2 基準階平面に示す。PAL 計算結果を表 I.1.10に示す。 用途 事務所 延床面積 地上階床面積 地上階数 12,260m2 10,991m2 12 階 21,200 事務所 オフィスの向き 表 I.1.9 PAL 計算モデルの概要 EV ロビー 階段 機械室 EV トイレ 機械室 トイレ 階段 43,400 図 I.1.2 基準階平面 表 I.1.10 PAL 計算結果 オフィス の向き 窓面積比 ガラス の種類 庇 (数値は深さ) 南 47.5% 熱線反射 ガラス 熱線反射 ガラス 水平庇 1.0m 垂直庇 1.0m 南 47.5% 西 47.5% Low-e 南 47.5% Low-e 25% (ポツ窓) 25% (ポツ窓) 西 南 Low-e PAL 50 272.7 9.1% 段階1に相当 50 100 294.6 1.8% 段階1に相当 なし 25 50 254.7 15.1% 段階2に相当 なし 25 50 267.8 10.7% 段階1に相当 50 100 203.3 32.2% 段階3に相当 50 100 200.3 33.2% 段階3に相当 PAL削減率分布(住宅以外) ERR分布(住宅以外) 90 180 169 60 68 50 30 35 38 35 37 20 40 30 24 16 54 31 23 35 40 34 31 26 25 20 29 8 13 2 83 0 10 10 00 10 53 50 22 15 13 10 10 13 45∼50 40∼45 35∼40 30∼35 25∼30 20∼25 15∼20 0∼10 10∼15 75∼80 70∼75 65∼70 60∼65 55∼60 50∼55 45∼50 40∼45 35∼40 30∼35 25∼30 20∼25 15∼20 0∼10 10∼15 8 1 0 0 0 PAL削減率[ % ] 9 3 4 1 10 20 80∼ 40 事務所(244件) 75∼80 78 全用途(608件) 58 70∼75 78 74 60 65∼70 74 件 数 60 60∼65 100 53 79 70 120 60 77 80 事務所(244件) 55∼60 全用途(608件) 140 50∼55 160 80 対応する 基準の区分 図 I.1.3 PAL削減率とERRの分布 ERR PAL削減率 件 数 PAL 屋根 (MJ/m2・年) 削減率 (mm) 25 ボックス庇 1.0m ボックス庇 1.0m Low-e 断熱厚さ 壁 (mm) ERR 2009 年 7 月 31 日現在において、竣工した建築物及び建築物環境計画書を提出した物件についての最 終届出内容に基づく実績である E -6 5 取組・評価書記載事項 (1) 住宅 概要 ① 外壁及び屋根の断熱に係る事項 詳細 ② 窓部の日射遮へい及び断熱に係る事項(例 庇、ルーバー、ペアガラス等の設置) ③ その他の事項 (1) 外壁の断熱の仕様 (2) 屋根の断熱の仕様 (3) 床(外気に接する部分)の断熱の仕様 (4) 床(その他の部分)の断熱の仕様 (5) 土間床等の外周部(外気に接する部分)の断熱の仕様 (6) 土間床等の外周部(その他の部分)の断熱の仕様 (7) 開口部の建具の断熱の仕様 (8) 年間暖冷房負荷 (9) 熱損失係数 (10) 夏期日射取得係数 (11) 各部位の熱貫流率 (12) 開口部の熱貫流率 (13) 窓の夏期日射侵入率 (参考) 評価基準を適用した住戸(方位、階数) (参考) エネルギーの使用の合理化に関する性能の目標 建築物の熱負荷の低減について段階 ※品確法に基づく住宅性能評価の申請を予定している場合は、取得予定の省エネルギー対策等級を記載する。設計 住宅性能評価書の交付を受けたときは、すみやかに評価書の写しを提出すること。 ※熱負荷に係る計画値、あるいは取得予定の省エネルギー対策等級がすべての住戸に適合しない場合は、全住戸中 の適合する住戸ないしは、一部の住戸が適合しない旨を記載すること。 ※参考として評価基準を適応した住戸の方位と階数を記載すること。例)西側の妻側最上階住戸、南側妻側最下階 住戸)方位は居間の掃き出し窓が面する方位とすること。 (2) 住宅以外の用途 概要 ① 建築物の形状及び配置に係る事項(例 熱負荷の低減に配慮した建築物の形状及び各室の配置計 詳細 画) ② 外壁及び屋根の断熱に係る事項(例 優れた効果を有する断熱材及び仕上げ材) (1) 主たる外壁の仕様 (2) 屋根の仕様 ③ 窓部の断熱に係る事項(例 ペアガラス、ダブルスキン、エアフローウィンドー) ④ 窓部の日射遮へいに係る事項(例 庇、ルーバー等の設置) (1) 窓部の仕様 ⑤ その他の事項(例 地下の断熱効果を利用した建築物の配置計画、屋根又は外壁の二重構造) ⑥ PALの低減率 (1) PALの値 (2) PALの基準値 (参考) ※エネルギーの使用の合理化に関する性能の目標値 (PAL の低減率) E -7 6 参考 (1) 建物配置に係る事項 建築の形態や方位、コアの配置計画などは建築物の熱負荷抑制に大きく影響する。基本計画の時 点から熱負荷抑制に配慮した適切な配置計画を進めることが重要である。建物の形状と方位に関し ては、 ① 平面の形に関しては同じ床面積・同じ階数ならば、より正方形に近い方が年間エネルギー消 費量が少ない。 ② 建物高さに関しては、平面が正方形に近い場合は、より高さの低い方が、エネルギー消費量 が少ない。 ③ 建物の方位に関しては、東西軸に伸びた形の方が、エネルギー消費量が少ない。 ④ コアの位置に関しては、東西軸に伸びた建物形状の場合、北側にサイドコアを設けるとエネ ルギーー消費量が少ない。 などがあげられる。ただし、敷地等の固有の条件を考慮に入れて、それぞれの計画毎に形状・配置 等を検討する必要がある。 東京 PAL Mcal/m2・年 120 センターコア縦横比1:1 ガラス透明6mm(内部ブラインドあり) ガラス 30% 外壁 KW =3.0 30 屋根 KR =1.5 60 面積比 60% KW =3.0 KR =1.5 30 30% KW =1.0 60 KR =0.5 60% KW =1.0 KR =0.5 60 30 100 Mcal/(m2 年) 4 : 1 (4 120 115 4:1( 110 2:1 105 1:1 2:1 100 60 80 1:1 95 30 90 50 0 45° N W E 90° 135° 180° ふれ角度 S 0 1,600 5 800 10 400 20 条件 延面積 8,000 m2 図 I.1.4 建物形状と PAL の関係 方位別年間熱負荷 MJ/(㎡・年) 方位 種類 セ ン タ | コ ア ダ ブ ル コ ア N(S) NE(SW) (反対側 の妻は 壁のみ) SE(NW) 図 I.1.5 ふれ角度と年間負荷比の比較 平均 熱負荷 (W/㎡) NE N E 137% SE 600.0 613.4 603.8 615.9 169 NE N E 100% SE 437.9 444.6 445.8 449.2 123 NE N サ イ ド コ ア E(W) E SE 444.6 N 449.2 441.6 452.1 102% NE E SE 条 件 449.2 463.0 地 域 基準階床面積 階 高 窓 面 積 比 照 明 隙 間 風 人 員 東京 2,400 ㎡ 3.7m 60% 30W/㎡ 1 回/h 7 ㎡/人 459.6 461.3 温 湿 度 冷房 暖房 空 調 面 積 比 取 入 外 気 辺 長 比 断 熱 地域東京 基準階床面積 1,000 ㎡ 空調面積 65% 窓面積率 30% 階高 3.7m ガラス K=4.25 外壁K=1.0 屋根 K=0.8 126 299K、50% 295K、50% 65% 45m3/㎡ h 1:1.5 フォームポリスチレン 25mm 図 I.1.6 コア位置と年間積算冷暖房負荷 E -8 (2) 地下の断熱効果を利用した建築物の配置計画 年間を通じて安定した土中温度を利用して建築物の一部を地下化して、熱負荷を抑制する手法で ある。 湿潤な土の内部は、冬期は断熱材として、夏期においては冷却材として(植栽の蒸散効果などに より室温よりも低くなるケースもある)負荷抑制に効果的である。 (具体的事例) 図 I.1.8 新潟県立近代美術館断面 図 I.1.7 新潟県立近代美術館外観図 この計画では、美術館という建物の性格上、きめ細やかな温湿度環境が要求されていたため、屋 上を盛土により覆い積極的な緑化によって隣接する信濃川堤防と一体的な整備を図り、自然の摂理 を活かした断熱方法を採用している。この盛土・屋上緑化によって夏の暑さ、冬の寒さによる温湿 度の変動幅を抑え、省エネルギー効果を上げている。 (3) 断熱効果を高めるための外壁又は屋根の二重構造 外壁または屋根を二重構造にして間に空気層を設けることにより、日射など外界からの建物への 影響を軽減する手法であり、暖冷房負荷の削減が期待できる。 (具体的事例) 図 I.1.9 府中市美術館外観図 図 I.1.10 府中市美術館 断面図 この計画では、図 I.1.10が示すように、二重屋根の方式を採用している。コンクリートの躯体の 上にステンレスの屋根を設けて二重の屋根とし、雨や日射による建物への影響を軽減し、美術館内 の温湿度条件を一定に保つために用いられている。 E -9 (4) ダブルスキン、エアフローウィンドーその他の窓部の日射遮へい及び断熱のための措置 ダブルスキンは、外壁の外側にもう 1 層(ガラス)の外 壁を設けることにより、外壁を二重(ダブルスキン)構 造にするものである。 ダブルスキンによりできたその間の空気層は、熱的な 緩衝帯となり冷暖房負荷の低減が可能となる。エアフロ ーウィンドーとは、二重になったガラスの間に、室内空 気を流して屋外へ排出する(通常は外気導入量に見合っ た風量を排気する)ことにより、夏期は日射による熱負 荷を除去し、冬期は室内からの熱損失を抑制するもので ある。エネルギー効果以外にも防音効果、防風効果、塩 害効果などが期待できる。 《メモ》 一般にダブルスキン方式は、外壁を二 重化するため、イニシャルコストがア ップするが、省エネルギー効果が高い ため、ランニングコストが低減し LCC 評価は高い。但し、ダブルスキ ン内部には日射遮蔽用のルーバーや ブラインドを設置するため、これらの 清掃やメンテナンスが可能なように メンテデッキを設置するなどの配慮 が必要である。 (具体的事例) 図 I.1.11 大林組技術研究所本館外観 図 I.1.12 ダブルスキン冬季運転パターン この計画では、図 I.1.12に示すように、事務室の南側にダブルスキン(二重の表皮)を設け、その 間を温室空間としている。冬季暖房時には、外気をここに通し集熱に用いている。夏季冷房時には、 ダブルスキン上部の開口を開放し熱を室内側に入れずに放出する。ダブルスキンの内部には庇とし て働く点検用グレーチング床や可動ブラインドが設けられ、夏季の日射遮蔽に効果を上げている。 (5) 庇、ルーバー、ペアガラス等の設置その他の窓部の日射遮へいのための措置 ① 庇、ルーバー 建物外周部の負荷で最も大きいのが窓から入射する日射負荷である。日射負荷を防ぐには、外部 に庇やルーバーなどを設けるのが最も有効である。 南面の庇は、直射日光に対して夏は日射遮蔽・冬は日射投入の役割を果たす。東西面では、水平 方向から日差しが差し込むため、垂直型の庇も有効である。しかしながら、傾斜ガラスやルーバー のように、時々刻々その遮蔽効果の異なるものは、冷暖房期間中の期間の効果が推定し難い。そこ で、下記に代表的な庇・ルーバーの期間日射係数を示す。これらの数値をブラインドの係数に乗じ て用いればよい。 ただし、真東・真西に対しては垂直型の庇の角度を振るなどの工夫が必要であり、真東・真西に 対して垂直ルーバーを立てるよりも、水平ルーバーを採用した方がエネルギー消費量を削減できる ケースもあるため、年間を通して評価することも必要である。 E -10 表 I.1.11 庇による日射係数(東京) 庇による日射係数 軒の出 0.5m 1.0 1.5 オーバーハング 軒の出 0.5m 1.0 1.5 中 庇 軒の出 0.5m 0.75 1.0 軒の出 0.5m サイドフィン 1.0 1.5 ルーバー ボックス型 冬(12、1、2、3 月) 北 東 南 西 0.85 0.84 0.89 0.83 0.71 0.68 0.78 0.66 0.57 0.54 0.65 0.52 0.97 0.98 1.00 0.97 0.89 0.91 0.98 0.89 0.80 0.83 0.90 0.78 0.83 0.82 0.83 0.80 0.77 0.76 0.75 0.73 0.72 0.70 0.67 0.70 0.87 0.85 0.90 0.84 0.76 0.71 0.78 0.70 0.67 0.60 0.71 0.59 0.71 0.90 0.95 0.86 中間期(4、5、10、11 月) 北 東 南 西 0.83 0.87 0.84 0.85 0.68 0.74 0.66 0.69 0.55 0.62 0.52 0.55 0.96 0.97 0.96 0.96 0.89 0.90 0.84 0.87 0.79 0.81 0.75 0.76 0.82 0.82 0.77 0.79 0.76 0.74 0.70 0.72 0.71 0.68 0.63 0.66 0.85 0.89 0.87 0.87 0.73 0.79 0.75 0.76 0.64 0.71 0.65 0.67 0.73 0.89 0.91 0.84 夏(6、7、8、9 月) 北 東 南 西 0.82 0.88 0.77 0.87 0.67 0.76 0.54 0.71 0.54 0.63 0.39 0.58 0.96 0.96 0.89 0.96 0.88 0.89 0.70 0.86 0.79 0.78 0.56 0.74 0.82 0.81 0.72 0.79 0.76 0.73 0.64 0.71 0.70 0.67 0.59 0.65 0.84 0.91 0.94 0.89 0.72 0.83 0.71 0.80 0.63 0.76 0.60 0.73 0.74 0.87 0.85 0.84 (具体的事例) 図 I.1.13 パサージュガーデン渋谷 CO-OP 図 I.1.14 ライトシェルフと自動調光 制御システム 図 I.1.13に示すパサージュガーデン渋谷 CO-OP では、両端コアによる両面採光に加え、南西 面に奥行きの短い 500mm のライトシェルフを設置し、自動ブラインド・昼光センサーによる照 明の自動調光制御と組み合わせた省エネルギーシステムを構築している。(図 I.1.14参照) ② ペアガラス・Low-e ガラス等 窓ガラスの選択は、負荷抑制の対策として非常に重要な要素である。 夏期の冷房負荷抑制には日射遮蔽を重視し、冬期は伝熱による熱損失を抑制することがポイント である。南面を主体とした日射受光面には、反射性能の高いガラスを採用し、直達日射の当らない 北面は熱伝導を抑制するペアガラスが有効である。 E -11 太陽放射 全エネルギー 100 太陽放射 全エネルギー 100 直接透過 78 室内 室外 39 15 9 直接透過 55 吸収 反射 6 室内 吸収 室外 反射 7 6 25 再放 流入熱量合計 除去熱量合計 熱 84 16 フロート板ガラス 14 再放 流入熱量合計 除去熱量合計 熱 69 31 熱線吸収ガラス 太陽放射 全エネルギー 100 太陽放射 全エネルギー 100 9 再放 熱 73 直接透過 6 室内 室外 室内 吸収 室外 14 反射 21 吸収 直接透過 59 反射 27 54 5 19 再放 除去熱量合計 熱 流入熱量合計 25 75 高遮蔽性熱線反射ガラス 流入熱量合計 除去熱量合計 64 36 熱線反射ガラス 図 I.1.15 ガラス別による日射遮蔽データ ③ 自動調光窓ガラス等 可視光透過率 40∼60%、太陽光調光率を 60%から 20%に変化できる機能を持つサーモクロ ミックガラスを採用。夏は日射の約6∼7割を遮断するが、冬は高断熱とともに日射の赤外部分を 取り入れる。30℃付近を境界に環境温度に応じて自動的に切り替わる。サーモクロミックガラスと は、温度によって光学的性質が可逆的に変化するサーモクロミック材料をガラス上に形成したもの である。サーモクロミック材料として代表的なものは二酸化バナジウム(VO2)などがあり、金属 の添加量によって光学的性質の変化する温度を室温以下から 68℃まで自由に調節することができ る。(産総研サスティナブルマテリアル研究部門、日本板硝子㈱) 図 I.1.16 自動調光窓ガラス E -12 表 I.1.12 複層ガラスの種類と特徴 品種 構成 ●遮熱高断熱複層ガラス 低放射ガラス 6 ミリ 空気層 6 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 低放射ガラス 6 ミリ 空気層 12 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ ●高性能熱線反射複層ガラス 高性能熱線反射板ガラス 6 ミリ 空気層 6 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 高性能熱線反射板ガラス 6 ミリ 空気層 12 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ ●高断熱複層ガラス 透明フロート板ガラス 6 ミリ 空気層 6 ミリ 低放射ガラス 6 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 空気層 12 ミリ 低放射ガラス 6 ミリ ●熱線反射複層ガラス 熱線反射板ガラス 6 ミリ 空気層 6 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 熱線反射板ガラス 6 ミリ 空気層 12 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ ●熱線吸収複層ガラス 熱線吸収板ガラス 6 ミリ 空気層 6 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 熱線吸収板ガラス 6 ミリ 空気層 12 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ ●透明複層ガラス 透明フロート板ガラス 6 ミリ 空気層 6 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 遮蔽係数※1 日射熱 取得率※1 熱貫流率※2 (W/(m2・k) 0.46∼0.60 0.40∼0.53 2.5∼2.6 0.44∼0.59 0.39∼0.52 1.6∼1.8 0.19∼0.48 0.17∼0.42 2.8∼3.2 0.16∼0.46 0.14∼0.40 1.9∼2.8 0.53∼0.66 0.47∼0.58 2.5∼2.8 特徴 可視光透過率を高 く保ちながら日射 の侵入を遮蔽し同 時に高断熱性も持 つ万能タイプ 日射の侵入を反射 と吸収で高度に遮 蔽して冷房負荷を 軽減する複層ガラ ス 寒冷地に適した高 断熱タイプ 0.53∼0.66 0.47∼0.58 1.7∼1.8 0.48∼0.70 0.42∼0.62 3.3 0.47∼0.70 0.41∼0.62 2.9 0.53∼0.70 0.47∼0.62 3.3 0.51∼0.69 0.45∼0.61 2.9 0.84 0.74 3.3 日射の侵入を主に 日射で遮蔽して冷 房負荷を軽減する 複層ガラス 日射の侵入を主に 吸収で遮蔽して冷 房負荷を軽減する 複層ガラス 複層ガラスのベー シック仕様 透明フロート板ガラス 6 ミリ 空気層 12 ミリ 透明フロート板ガラス 6 ミリ 0.84 0.74 2.9 0.25∼0.60 0.22∼0.53 4.3∼5.7 0.96 0.84 5.8 ●高性能熱線反射ガラス(参考) 6 ミリ ●透明フロート板ガラス(参考) 6 ミリ ※1 遮蔽係数:3mm の厚さのフロート板ガラス(透明)の日射熱取得率(η値)を 1 とした場合の日射熱取得率の 相対値をいう。日射熱取得率とは JIS で規定された用語であり、ガラスに入射する日射を 1 とした場合、 室内に流入する熱量の割合を示す数値をいう。なお、遮蔽係数(SC 値)と日射熱取得率(η値)との関係は次の 通りである。SC=η/0.88 ※2 熱貫流率:壁や窓などの部位の両側の空気温度差が 1℃の時、部位 1m2 を 1 時間に流れる熱量をいい、部 位の断熱性を評価する指標として用いられる。このように部位を通り抜けて熱が移動することを熱貫流とい い、流れる熱を貫流熱という。省エネルギー規準では K 値ともいい、単位は W/m2・K である。 E -13 ガラス・窓比による年間熱負荷低減効果のケーススタディー 年間熱負荷(×103MJ/年・フロア) 外気負荷 内部負荷 外皮負荷 1400 1200 ・建物条件 1000 南北採光 基準階3,000㎡/フロア 800 ・窓比、ガラス条件 600 400 200 0 窓比は 30%・66%、ガラスは 熱線反射ガラス・Low-e ガラス の組み合わせで 4 ケースを計算。 熱反 窓比30% 熱反 窓比66% Low-ε 窓比30% Low-ε 窓比66% 年間熱負荷は PAL 計算による 図 I.1.17 ガラス・窓比別の年間熱負荷 上記の条件で計算した結果、年間の熱負荷に占める外皮負荷の割合は、約 10%∼20%程度を 占めている。外皮負荷を低減するためには、可能なだけ小さな窓比とし性能の高いガラスを選択 することが有効である。さらに、これに庇・ルーバーなどを組み合わせることにより、更なる外 部負荷の低減の可能性がある。 《参考文献・出典等》 図 I.1.1 共同住宅における断熱に関わる部位:住宅省エネルギー基準と計算の手引き(平成 18 年 度)」(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.1.3 PAL削減率とERRの分布:東京都環境局資料 図 I.1.4 建物形状と PAL の関係:建築の省エネルギー計画、(社)日本建築学会 編 図 I.1.5 ふれ角度と年間負荷比の比較:省エネルギーハンドブック、 (財)建築環境・省エネルギ ー機構 図 I.1.6 コア位置と年間積算冷暖房負荷:「建築におけるエネルギー手法の効果分析Ⅲ」(社)日 本建築学会 大会便概集 図 I.1.11 大林組技術研究所本館外観:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー 機構 図 I.1.12 ダブルスキン冬季運転パターン:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネル ギー機構 図 I.1.15 ガラス別による日射遮蔽データ:建築技術、1996 1 月号、(株)建築技術 図 I.1.16 自動調光窓ガラス:産総研サスティナブルマテリアル研究部門、日本板硝子㈱ 表 I.1.11 庇による日射係数(東京) :建築の省エネルギー計画、(社)日本建築学会 編 表 I.1.12 複層ガラスの種類と特徴:板硝子協会 E -14 I.エネルギーの使用の合理化 I.2 再生可能エネルギー利用 1 I.2.1 再生可能エネルギーの直接利用 指針策定の背景 快適な生活環境を維持し、健全な地球環境を保全していくためには、長期的な視野に立った省エ ネルギーの推進が必要である。しかしながら、OA 化等により建築物におけるエネルギー消費量は 増加の傾向をたどっており、設備や機器の高効率化を図るだけでなく、可能な限り機械的な設備を 使わずに、再生可能エネルギーを建築物に有効に取り入れながら生活環境の質を確保していくこと が重要となる。 自然通風や自然採光等の再生可能エネルギーの直接利用は、気象に影響されやすいなどの問題点 はあるものの、伝統的な手法であり、前述の「建築物の熱負荷の低減」と同時に建築計画の段階か ら配慮することにより、更なる省エネルギー効果の発揮が期待できる。 本指針では、太陽エネルギーのうち、太陽の光をそのまま取り入れて照明としたり、太陽熱を蓄 熱として暖房としたりするなど、太陽エネルギーを変換せず直接使うパッシブソーラーについても、 再生可能エネルギー利用と位置づけた。 2 配慮すべき事項 【建築物の用途、規模及び周辺地域の状況に応じて、再生可能エネルギーを直接利用するために行 う次に掲げる事項】 ① 太陽光を利用したシステムに係る事項 ② 風を利用したシステムに係る事項 ③ 太陽熱を利用したシステムに係る事項 ④ 地中熱を利用したシステムに係る事項 3 評価基準と適用用途 (1) 住宅 次に掲げる事項のいずれかを行っていること。 段階2 ① パッシブソーラーシステム(日射取得及び蓄熱の効果を高めた構造をいう。以下同じ。)の 利用 ② ボイドスペース、トップライト、ハイサイドライトその他の昼光利用効率の向上のための事 項 ③ その他これらに準ずる事項 (2) 住宅以外の用途 次に掲げる事項のいずれかを行っていること。 段階2 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 段階3 2方向以上への開口、開口部と換気塔又はアトリウム空間との連携等による通風経路の確保 ナイトパージその他の室内と室外との温度差を利用した自然換気システムの採用 自動制御により開口部の開閉を行う自然換気システムの採用 ライトシェルフ、アトリウム、トップライトその他の昼光利用効率の向上のための措置 パッシブソーラーシステムの利用 クールトレンチ、ヒートトレンチその他の年間を通して安定した地中温度の利用のための 措置 ⑦ その他これらに準ずる事項 段階2の欄に掲げる事項のいずれかにあっては当該事項の効果が居室の総面積の半分以上の部 分に及んでいること。 ※「再生可能エネルギー」については、東京都が 2006 年(平成 18 年)3月に策定した「東京都再生可能エネル ギー戦略」に準拠しており、太陽光発電、太陽熱利用、パッシブソーラー、バイオマス発電、及び熱利用等をい う。ここでは自然採光や通風等によるパッシブ利用を「再生可能エネルギーの直接利用」太陽光発電や太陽熱利 用設備については、「再生可能エネルギーの変換利用」としている。 E -15 4 解説 建物用途によって、通常取り入れられる再生可能エネルギーの直接利用のレベルが大きく異なる ため、住宅とそれ以外の用途に分けて評価の基準を設定する。 自然換気システムや昼光利用システムは、換気・空調・照明エネルギーの削減に寄与するもので あるが、一方で使用場所やタイミングを誤ると、エネルギーロスの増加を招くこともある。採用に あたっては様々な角度からの検討を行い、必要な配慮を実施する必要がある。 (1) 住宅 A.考え方 住宅においては太陽エネルギー、ここではすなわち自然採光、自然通風が一定レベルは行われて いるとの前提のもと、住宅用途において採用することが有効な手法を例示し、いずれかを採用して いることをもって段階 2 への適合とした。また、建築物の多様性に対応するため、「その他これら に準ずる事項」を提案することも可能な基準としている。①、②については、全住戸に採用するこ とが困難な場合においては、一部の住戸または共用部のみ、また付帯施設(集会室等)への手法の採 用も適合条件とする。 B.基準 自然採光の利用に係る事項を例に、段階2に適合する事例を示す。 ボイド (建物上部からの採光) 住戸棟 中央から採光 ボイド (建物上部からの採光) ボイド (各住戸のキッチン廻り の採光) 図 I.2.1 集合住宅における自然採光の計画事例 図 I.2.1の例では、住宅棟の中央にボイドを設け中央からの採光を行い、更に各住戸の間にもボ イドを設けて建物上部からも採光を行っている。このボイドにより、各住戸のキッチンにおいて自 然採光が可能となるような計画としている。 (2) 住宅以外の用途 A.考え方 通常においての再生可能エネルギーの直接利用の程度は、その建築用途によって多岐に渡るため、 一様な基準の適用には議論の余地もあるが、比較的多くの建築物に適用できる手法を例示し、いず れかを採用していることをもって段階 2 への適合とした。 段階 3 については、より積極的で明確な直接利用を行っていることを特定建築主自らが示すこと を必要とし、指針においては「当該事項の効果が居室の総面積の半分以上の部分に及んでいること。」 という表現として示した。 E -16 B.基準 自然通風の利用に係る事項を例に、段階2と段階3の違いを例示する。 (具体的事例:段階2相当) アトリウム 執務室 リフレッシュ コーナー 共用部 リフレッシュ コーナー 共用部 執務室 a.平面計画 b.断面計画 図 I.2.2 事務所における自然通風の計画事例(段階2相当) この計画では、共用部のリフレッシュコーナーが南北面より廊下を介して風が通り抜けるため、 風の圧力を利用して南北2方向開口を設けて自然換気を行っている。また、中高層階にはアトリウ ムが屋上まで吹き抜けているため、外風圧力に加えて屋上面での常時負圧、高低差による浮力の効 果を利用して垂直方向の通風経路も設けている。しかし、こうした自然通風が居室の半分には及ば ないため、段階3には適合しない。 (具体的事例:段階3相当) 執務室 執務室 執務室 執務室 アトリウム a.平面計画 b.断面計画 図 I.2.3 事務所における自然通風の計画事例(段階3相当) この計画では、執務室部分に換気用の突き出し窓を設け、廊下への出入り口の扉上部には随時開 閉できる欄間を設置することにより、各階で横の空気の流れを作り出している。また、外部に面す るアトリウムは、その上部に屋上に通じる煙突を持つことで建物内部の空気の流れを縦に促進する ルートとなっている。このように水平方向・垂直方向ともに風の流れを重視して計画されており、 各階の執務室の過半の範囲で自然換気を取り入れているため、段階3に適合した計画となっている。 E -17 5 取組・評価書記載事項 (1) 住宅 ① 太陽エネルギーを利用したシステムに係る事項(例 窓の配置計画、窓面積比、ボイドス 概要 ペース、トップライト、ハイサイドライト) ② 風を利用したシステムに係る事項(例 2方向以上への開口) (配点はなし) ③ その他の事項(例 パッシブソーラーシステム、地中温度を利用したシステム) (2) 住宅以外の用途 ① 太陽エネルギーを利用したシステムに係る事項(例 ライトシェルフ、アトリウム、トッ 概要 プライト、昼光制御機能ガラス) ② 風を利用したシステムに係る事項(例 2方向以上への開口、開口部と換気塔との連携、 開口部とアトリウム空間との連携、ナイトパージ、自動制御により開口部の開閉を行う自 然換気システム) ③ パッシブソーラーシステムの利用に係る事項 ④ 地中熱の利用に係る事項(例 クールトレンチ、ヒートトレンチ) ⑤ その他の事項 ⑥ 再生可能エネルギーの利用に伴う年間一次エネルギー消費量の低減量 6 参考 (1) 太陽エネルギーを利用したシステムに係る事項 太陽エネルギー(自然光)を取り入れる方法としては、「アトリウム・ボイド」、「トップライト・ ハイサイドライト」、「ライトシェルフ」、「ガラスブロック」等が挙げられる。 アトリウムは、一般に外壁と屋根のガラスの占める面積が大きく、建物内に広く自然採光を取り 入れられるが、日射など外部の影響を受けやすいため、計画する際には日射負荷を抑制する工夫や 頂部の熱溜まりの排熱、冬期の開口部からの外気の侵入などへの配慮が必要である。 トップライトは工場等の大空間でよく採用される方式であり、ハイサイドライトに比べて採光効 率が非常に良いとされている。しかしながらその反面、晴天時には直射日光が入射する可能性があ り、在室者にグレアと熱感を与えるので注意が必要である。サンスクープは、鏡の反射光を用いて 採光を行う方法であり、ライトシェルフは、直射日光を天井面に反射させ、部屋の奥まで拡散光に 変換して導入しようとするものである。ライトシェルフは、採光だけでなく庇と同様に日射の遮蔽 効果も期待できる。ガラスブロックは、採光による熱の侵入というデメリットを軽減できる。 (具体的事例) 通風 通風 採光 採光 図 I.2.4 アトリウム 図 I.2.5 ライトシェルフ E -18 図 I.2.7 ガラスブロック 図 I.2.6 サンスクープ 図 I.2.9 アートポート東京ガス港北 NTビルライトシェルフと自然採光 図 I.2.8 アースポート東京ガス港北 NT ビル 図 I.2.8、エラー! 参照元が見つかりません。の計画では、ライトシェルフとエコロジカルコアを 採用しており、間に位置するオフィスに南北二方向からの自然採光を可能にしている。この自然光 をアンビエント光として用い、安定した照度が必要なタスク光には人工照明を用いている。オフィ スでは約 63%の照明電力を削減している。 (2) 風(自然通風)を利用したシステムに係る事項 ① 2方向開口/換気塔/アトリウムとの連携 2方向開口:平面計画において方位の異なる2方向に開 口を設けることにより、風圧力の違いによる圧力差を生じ 換気を促進する。 換気塔:室内外の温度差による浮力換気を促進するとと もに、頂部の形状を工夫することで流体剥離による吸引効 果(ベンチュリー効果)を利用する。 アトリウムとの連携:アトリウムは建物内部に竪穴を形 成し、居室や廊下と連携することで通風経路を形成するこ とができる。各階の開口とアトリウム頂部を開放すること により自然換気を促進することができる。 圧力差を生じさせるための各種工夫の例を次ページに上 げる。 E -19 《メモ》 超高層ビルにおける自然換気口の設置 においては、下記の点に留意が必要で ある。 ・耐風圧・水密性はカーテンウォール の性能と同等で性能を確保する必要 がある。 ・中央監視室などへの開閉信号の表示 など閉め忘れ防止の対策(特に手動 開放機構の場合) ・強風時・降雨時の使用抑制対策 ・共用部で開放する場合の管理方法と 遠方開閉制御の導入 負圧域 風向を利用した換気 ベンチュリー効果 煙突効果 図 I.2.9 風のパッシブ利用方法 ② 自動ダンパー、ナイトパージなど、自動制御と連携した自然換気システムの採用 (具体的事例) b.閉鎖状態 a.開放状態 図 I.2.10 スリットに取り付けられたダンパー(自動制御で開閉) 図 I.2.10の事例は超高層ビルの共用廊下部の端部に設けられた換気用自動ダンパーの例である。 外気温、風速、風向、降雨状態などにより遠方から開閉させる機構を持つ。通風時は廊下系統の空 調機を停止させ、省エネを図る設計となっている。このダンパーを用いたことによる省エネルギー 効果の試算例を以下に示す。 換気用自動ダンパー省エネルギー量に関するケーススタディー 図 I.2.10の例に関して、換気用ダンパーを用いた際の省エネルギー効果に関して試算を行った。 計算条件は以下に示す。 ・ 換気用ダンパーの開放時間数:466 時間/年 ・ 空調機搬送動力の省エネルギー量=空調機搬送動力×換気ダンパーの開放時間(466 時間) ・ 外気温と空調機熱量の実測結果より回帰直線を算出し、冷水の削減量の算出を行った。 (1) エネルギー削減量の試算 表 I.2.1 1 次エネルギー換算による年間省エネルギー量 2 次エネルギー削減量 換算値 1 次エネルギー削減量 冷水 423(GJ/年) 1.263(GJ/GJ) 534(GJ/年) 空調機搬送動力 29495(kWh/年) 0.001025(GJ/kW) 302(GJ/年) 合計 − − 836(GJ/年) この削減量 836(GJ/年)を延床当たりで換算すると、8.98646(MJ/m2 年)となり、一般的なオフィスビルの一般的な全 消費エネルギー1817MJ/m2 年の約 0.5%、空調エネルギーの約 1%に相当する。 (2) コスト効果の試算 表 I.2.2 1 次エネルギー換算による年間コスト削減量 冷水削減コスト 搬送動力削減コスト 合計 エネルギー削減量 423 (GJ/年) 29495(kWh/年) − 単位料金 11.2(円/MJ) 15(円/kW) − コスト削減量 4733(千円/年) 442(千円/年) 5175(千円/年) イニシャルコストは、45000(千円)であるから、償却年数は、45000(千円)/5175(千円/年)=8.7 年となる。 E -20 ③ パッシブソーラーシステムの利用に係る事項 (具体的事例) ■省エネルギー対策の主な 項目 アトリウムによる昼光利用と 通風 ①外断熱による蓄熱壁 ②可動庇などによる日射コントロール ③二重ガラス ④中間期の外気冷房、夜間蓄熱 ⑤蓄熱利用 ⑥省電力型照明器具 ⑦昼光利用 可動庇と遮光スクリーン 厚い外断熱による負荷軽減 および躯体蓄熱 外気取入れダクトの 地中埋設による 地熱の有効利用 中間期の外気冷房、昼光利用 アトリウム 給気塔 エントランス 省電力型照明器具による室内発熱の軽減 外気冷房、夜間換気による蓄冷と吸熱 植栽と散水による 反輻射の防止 事務室 事務室 打合コーナー 日射や室内発熱による蓄熱と 放熱 植栽 アトリウム 空調機 図 I.2.11 応用地質広島ビル外観 試験室 地盤の冷却力による吸熱と冷輻射 図 I.2.12 応用地質広島ビル断面 この計画では、躯体は外断熱されており、年間を通じて自然エネルギーを主とした蓄熱冷暖房に 活かされている。夏季冷房時には、夜間の外気を取り入れて蓄冷。冬季暖房時には、室内に差し込 む日射を利用して蓄熱する。 右図の OM ソーラーでは、 冬場には屋根から温熱を取得 し、それを暖房に用いる。 夏期には、屋根の熱を排気 することで屋根の温度上昇を 抑制する。また、夏期の夜間 には放射冷却現象を利用し、 外の涼しい外気を室内へ取り 込む。 図 I.2.13 OM ソーラー ④ 地中熱の利用に係る事項(クールトレンチ・ヒートトレンチ等) クールトレンチ・ヒートトレンチは、空調用・ 《メモ》 クールトレンチ、ヒートトレンチの単独埋設は 換気用導入外気を地中経由で取り込むことによ コスト負担が大きいため、建築本体の地下工事 り冷房時は予冷効果、暖房時は予熱効果により に合わせ施工することにより、根切り費用を軽 外気取入負荷を低減するシステムである。 減するなどの対応が必要である。またピット内 外気は、地下のピット等から室内に取り入れ の雨水侵入対策や湧水排出対策、結露対策、ま る。クール/ヒートトレンチから外調機を経由 た臭気対策なども考慮する必要がある。できれ した空気を、床下経由で温風を吹き出した場合 ば点検口を設置して確認・清掃が可能にしてお には、床暖効果と、躯体の冷え込みを予防する くことが望ましい。また使用できない場合を想 効果も期待できる。 定して別ルートで外気導入できる対策なども配 慮が必要である。 E -21 (具体的事例) 12 温度(℃) 10 ホ.80m地点 イ.地中温度 8 6 4 ロ.ピット入口外気温 ニ.40m地点 2 ハ.10m地点 日時 0 2/24 12:00 図 I.2.14 北九州大学(ソーラーチムニー) 外観 2/25 0:00 2/25 12:00 2/26 0:00 2/26 12:00 図 I.2.15 北九州大学クールピット内温度測定結果 ソーラーチムニー TH T T ガラス (南・西側) 太陽電池 日射計 (太陽電池面) RFL チムニー内表面温度センサー (北・東面) 常設風速計用日除 (南・西面に L 型) 事務局棟屋上 V V 日射計×4 風向風速計 雨量 (H,E,S,W) TH M/R 窓 4FL 教室 T 欄間 ガラリ V TH 廊下 t AHU ガラリ V 廊下 t TH 凡例 T M/R T 3FL 教室 V TH 廊下 t AHU T ガラリ V 廊下 t 2FL 教室 V TH 廊下 t AHU ガラリ V 廊下 t V T V t T 1FL 教室 光庭 TH V V AHU ガラリ V 廊下 t クールピット中央付近 t 空気温度 風速計(常設) バッチ式集中測定時 風速測定ポイント(超音波風速計) バッチ式集中測定時 温度測定ポイント(熱電対等) 給気塔 T 80m M/R V TH 廊下 t 温度センサー(常設) TH 温湿度センサー(常設) M/R T 百葉箱 百葉箱 40m ロ. 10m TH TH ホ. 活性炭 ニ. クールピット t クールピット天井 ハ. 表面温度 クールピット床 T 表面温度 イ. t 地中温度 図 I.2.16 北九州大学クールピット断面図 図 I.2.14∼図 I.2.16に示す計画では、ピット部分をクールトレンチ/ヒートトレンチとして利用して おり、室内への外気負荷の低減に効果を示している。冬期の実測の結果によると、ピット内を進むにつ れて空気温度は上昇しており、地中熱との熱交換により測定期間中では最大約 4℃の予熱効果が見られ た。 《参考文献・出典等》 図 I.2.6 サンスクープ:太陽光システム協議会 図 I.2.8 アースポート東京ガス港北 NT ビル:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギ ー機構 エラー! 参照元が見つかりません。 :省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.2.11 応用地質広島ビル外観:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.2.12 応用地質広島ビル断面:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.2.13 OM ソーラー:OM 計画㈱ 図 I.2.14 北九州大学(ソーラーチムニー) 外観 図 I.2.15 北九州大学クールピット内温度測定結果 図 I.2.16 北九州大学クールピット断面図 E -22 I.エネルギーの使用の合理化 I.2 再生可能エネルギー利用 1 I.2.2 再生可能エネルギーの変換利用 指針策定の背景 省エネルギーをはじめとする環境への配慮の推進が強く求められている中で、前述の「再生可能エネ ルギーの直接利用」のみならず、再生可能エネルギーをより積極的に建築物におけるエネルギー源とし て利用する方法がある。太陽光発電、太陽熱利用、バイオマス利用、その他の再生可能エネルギーは、 建築物を計画する土地や地域の特性を考慮し、その特性を活かした利用方法を採用することによって化 石燃料起源のエネルギーを代替し、二酸化炭素排出量の削減につながるだけでなく、分散型エネルギー として防災上の効果が期待できる。 2 配慮すべき事項 【建築物の用途、規模及び周辺地域の状況に応じて、再生可能エネルギーを利用するために行う次に 掲げる事項】 ① 太陽光または太陽熱を利用したシステムに係る事項 ② 地中熱を利用したシステムに係る事項 ③ バイオマスを熱源とする熱を利用したシステムに係る事項 ④ その他の再生可能エネルギーを利用したシステムに係る事項 3 評価基準と適用用途 全用途に適用 次に掲げる設備を定格出力計10kW 未満設置するともに、電力でエネルギーを得るものにつ 段階2 段階3 ※ 4 いては系統連系を行っていること。 ①太陽光発電設備 ②太陽熱集熱器 ③太陽熱集熱器と吸収式冷凍機又はヒートポンプとを連携したシステム ④地中熱交換井と水熱源ヒートポンプとを連係したシステム ⑤バイオマス利用による発電設備 ⑥バイオマス利用による熱利用設備(⑤に掲げるものを除く) ⑦その他これらに準ずる設備 段階2の欄に掲げる設備を定格出力計10kW以上設置するとともに、電力でエネルギーを得る ものについては系統連系を行っていること。 関連事項:再生可能エネルギーの導入検討について(R-1∼13) 解説 太陽光や太陽熱など再生可能エネルギーの変換利用システムは、無尽蔵である自然のエネルギーを電 力、熱などの形態で使用し、化石燃料の代替とすることで、二酸化炭素排出量を削減するものである。 電力でエネルギーを得るものについては、以上の趣旨から、小規模かつ簡易なものを除くために、系統 連系を評価の条件とした。 一方、再生可能エネルギーはエネルギー密度が低いことや、太陽光発電では日陰の影響を受けるなど、 期待した能力を発揮しないこともある。また、再生可能エネルギー交換設備によっては、景観や騒音な ど周辺環境への影響について配慮すべきものがある。採用にあたっては様々な角度からの検討を行い、 必要な措置を講じなければならない。 A.考え方 通常、再生可能エネルギーの利用は、その建築用途によって多岐にわたるため、一様な基準の適用に は議論の余地もあるが、比較的多くの建築物に適用できる手法を例示し、いずれかを採用して いることをもって段階2への適合とした。 E -23 段階3については、より積極的で明確な利用を行っていることを特定建築主自らが示すことを必要とし、 指針においては「定格出力計10kW以上設置する。」の表現として示した。なお、大規模特定建築主は、 再生可能エネルギー利用設備については、導入検討を行うことが義務付けられている。(第3章R-1∼13 ページ参照) ※ 当該建築物における再生可能エネルギー利用設備の定格出力の合計で判断する。 太陽光や太陽熱について、発電パネルや集熱器が各住戸単位で設置されている場合、住戸毎でなく住 宅全体の定格出力の合計で評価する ※太陽光発電設備、バイオマス利用設備の評価について 発電設備(太陽光、バイオマス共)あるいはボイラー設備の定格出力の合計の値とする。 ※太陽熱利用設備の評価基準については、以下のとおり扱う。 ①太陽熱集熱器における出力(冬季または夏季、晴天時でかつ、当該製品の設置条件において標準的 な設置角度、方位であることを条件とする。)の値(複数台の場合その合計)とする。BL認定品や JIS適合品及びそれに準ずるものについては設置条件に関する根拠資料の提出を省略することがで き、集熱効率と集熱器の面積を確認できる図面の写しを提出する。 ②①のほかBL認定品やJIS適合品でない場合は、当該集熱器について、10kW以上であることを示す ために、その設定条件について以下のような根拠を示すこととする。 ⅰ 想定する設置場所及び集熱面の角度及び日射量(単位時間・単位面積あたり) ⅱ ⅰの条件下における集熱効率 ⅲ 外気と集熱器における温度差と集熱効率の関係 ※地中熱利用設備の評価について 水熱源ヒートポンプ設備の定格出力の合計の値とする。 ※電力でエネルギーを得る設備(発電設備等)については、特定建築物工事完了届出時において、系統 連系を行っていることが確認できる図面(配線図等)の写しを添付すること。 ※住宅用途において、平成22年度末までに、「住宅用太陽エネルギー利用機器導入促進事業」による太 陽光発電機器、太陽熱利用機器への補助金申請をご検討されている場合、補助の詳細について、東京 都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京 http://www.tokyo-co2down.jp/)ま でお問い合わせ下さい。 B.具体的事例 ①太陽光発電 図 I.2.17 黒部市「生地特定公共賃貸住宅」 図 I.2.18 オランダアメルスフォルト集合住宅 (3,4 階廊下への設置例) 群(各住戸への設置例) E -24 図 I.2.19 屋上フェンス一体型両面太陽電池 (㈱日立製作所・日立事業所(茨城県日立市)) 図 I.2.17の例は、中層集合住宅の 3,4 階の窓下腰部と手摺に太陽光発電設備を取りた例、図 I.2.19 の例 は、屋上フェンスに取り付けた両面型太陽電池発電設備である。図 I.2.19の例は、連棟住宅の屋根、独 立住宅の屋根、幼稚園の屋根など設置可能な施設の屋根には積極的に導入しており、全体で 1MW とい う大規模な設備が既に設置完了しているため段階3と位置付けられる。 ②太陽熱集熱器 図 I.2.20 フォート北野 (屋上部分への設置例) 図 I.2.21 北助松第一次団地 (各住戸への設置例) 図 I.2.21 の例では、マンションの屋上部分に太陽熱集熱器を配しており、集められた熱は集中給湯シ ステムに用いられている。 図 I.2.22 の例では、保温性の高い真空二重ガラス管形集熱器を用い、傾斜を持たせたバルコニー設 置とすることで冬の集熱力を高めている。 E -25 (2) 住宅以外の用途 (具体的事例) 図 I.2.22 屋上パネル(ハッチング部分)設置 平面 図 I.2.22の例では、屋上の中心部分がガラスの可動式ドーム型トップライトとなっており、太陽光 発電の設備が設置困難となっている。そのために影響の無いトップライトの両側に設置を行ってい る。 図 I.2.23 屋上面積の半分以上に太陽光発 電設備を設置した例(ハッチング部分) 図 I.2.24 壁面の面積の半分以上に 太陽光発電設備を設置した例 (建材一体型、ハッチング部分) 図 I.2.23の例では、屋上のほとんどの部分に太陽光発電を設置しており、図 I.2.26 の例では、外ル ーバーに建材一体型の太陽光発電設備を設置している。この設備のパネルは、半透明となっており、 発電と日射の遮蔽による冷房負荷の削減という二重の役割を果たしている。 5 取組・評価書記載事項 全用途 概要 ① 太陽光発電設備に係る事項 太陽光発電による容量、設置面積 ・ 詳細 ② 太陽熱を利用したシステムに係る事項・利用形態 太陽熱利用による容量、設置面積 ③ 地中熱を利用したシステムに係る事項・利用形態 地中熱利用容量 ④ バイオマスを利用したシステムに係る事項・利用形態 バイオマスを熱源とする熱を利用した発電による容量 バイオマスを熱源とする熱の利用による容量 ⑤ その他の事項(例 風力発電設備) その他の再生可能エネルギー利用の仕様及び容量等 ⑥ 年間再生可能エネルギー変換利用量 E -26 6 参考 (1) 太陽光発電に係る事項 太陽光発電は、火力発電に比べると CO2 の排出原単位が大変小さく、(図 I.2.27 各発電システム の CO2 排出原単位)クリーンなエネルギー源である。 効率的な発電のために、屋上設置の際には設置間隔や設置角度に留意する必要がある。計画地の 緯度や月別の日照時間などにより、最適傾斜角は異なるが、東京における太陽光発電の最適傾斜角 (年間平均)は、真南に向かって 32°程度である。また、日陰により発電効率が大きく影響されるの で、計画地の地形や周辺建築物などにも十分配慮する必要がある。 ① いくつかの方位に分けずにまとめて設置する ② 薄い影でも効率が 20∼30%落ちるので、できるだけ影を避ける ③ 風による吹き上げ荷重に注意する 表 I.2.1 太陽電池の種類と特徴 セルの 種類 変換効率(%) モジュールの 変換効率(%) 特徴 発電効率は良いが製造工程が複雑でコストが 高くなる。 単結晶と比べると発電効率は低下するがコス トは安くなる。 単結晶シリコン 15∼24 10∼14 多結晶シリコン 10∼17 9∼12 アモルファス シリコン 8∼13 6∼9 結晶系と比べるとコストが安いが効率が低い。 化合物 10∼30 − 効率の高いものもあるが資源的に乏しく公害 の元とのなる物質が含まれているものもある。 単結晶(Single crystal) バルク (Valk) 結晶系 (Crystalline group) シリコン (Silicon) 太陽電池 (Solar cell) 化合物太陽電池 (Compound semi conductor) 多結晶(Ploy crystal) 薄 膜 (Thin-film) 単結晶(Single crystal) 多結晶(Ploy crystal) 太陽電池の種類 微結晶(μ” crystal) アモルファス (Amorphous group) Ⅱ-Ⅵ族(CIS,CdTe. etc) Ⅲ-Ⅴ族(GaAs,InP. etc) その他(others) NEDO で技術開発中の太陽電池 図 I.2.25 太陽電池の種類 図 I.2.26 建材一体型の太陽光発電 パネルの例 原子力(ワンス・スルー:ガス拡散法) LNG火力 燃料 石油火力 燃料 石炭火力 燃料 水力 地熱 太陽光 (家庭用) (電気事業用) 波力(海上式) 風力 潮流 海洋温度差 太陽熱(タワー式) 0 50 100 150 200 250 300 CO2排出原単位(g−C/kWh) 図 I.2.27 各発電システムの CO2 排出原単位 E -27 太陽光発電設備の CO2 削減効果に関するケーススタディー 太陽光発電設備 10kW 当たりの CO2 削減量は、下記の通りと推定され、年間に 10,512kWh 発電すると、年間 1.74t-C の二酸化炭素の発生を抑制することが可能であり、森林面積に換算す ると 1.79ha の森林と同様の役割を果たしていると考えることができる。 ● 二酸化炭素排出抑制量(ライフサイクル分析) a. b. c. d. f. g. アレイ出力 設備利用率 年間発電量 太陽光発電の二酸化炭素排出原単位 石油火力発電の二酸化炭素排出原単位 二酸化炭素排出抑制量 10(kW) 12.0(%) 10,512(kWh)注 1 34.3(g-C/kWh)注 2 200(g-C/kWh)注 2 1.74(t-C) ● 二酸化炭素排出抑制効果の森林面積換算(ライフサイクル分析) h. 日本の森林面積 i. 日本の全森林における二酸化炭素吸収量 j. 森林 1ha 当たりの吸収量 k. 二酸化炭素排出抑制量森林換算面積 25,212(千 ha)注 3 24,545(千 t-C) 注 4 0.974(t-C/ha) 1.79(ha) 注 1:標準的仮定値 注 2:(財)電力中央研究所「発電システムのライフサイクルの研究」 注 3:1990 年度、林業白書 注 4:1990 年度、環境庁「温暖化する地球、日本の取組み」1994 年 E -28 (2) 太陽熱利用に係る事項 ①太陽熱利用方法 太陽熱利用の方法としては、躯体に直接蓄熱する方法、太陽熱集熱器を用いて給湯や暖房を行う 方法等がある。地球表面に到達するエネルギーを 1 年間の総エネルギーに換算すると、熱換算 で 1.1×1018kWht※と膨大であり、気象条件に影響されやすいなどの問題点はあるものの、有 効に利用することが期待される。(※t は、thermal(熱)を示す添字) 太陽熱を利用する場合、熱の媒体として水(液体)を使う場合と空気を使う場合があり、その特徴 は次の通りである。 表 I.2.2 太陽熱の主な利用方法 方式 機能 特徴 システムの例 ■平板形 集熱器 給湯 水式 太陽熱利用 暖房 冷房 空気式と比較して ①二次側の設備として、 従来設備部品が使え る。 ②集熱器の集熱効率が高 い。 ③集熱面積が少なくて良 い。 ④建築への設置方法に多 様性がある。 透過体 (半強化ガ ラス) 接続管 取付金具 外装箱 (アルミ、塗装鋼、ステンレス、FRP) 集熱体 (銅、アルミ、ステンレス、鋼) 断熱材 (アルミ箔付グラスウール、ロックウール ) ■真空ガラス管形集熱器 ガラス管 ガラス管 集熱 貯湯管 集熱管 選択吸収膜 集熱板 熱媒 真空 真空層 内管(給水管) 空気式 太陽熱利用 アクティブ・ パッシブハイ ブリッド式 太陽熱利用 給湯 暖房 給湯 暖房 冷房 水式と比較して ①集熱系の水漏れ、凍結 がない。 ②空気ダクトが大きく施 工のスペースが必要に なる。 ③建築との一体化が必要 である。 ④集熱空気を直接暖房に 使うため、利用効率が 良い。 ①集熱方式が複数である ため、利用効率が良い。 ②昼間集熱した熱を夜間 利用できる。 ③熱容量が大きいため、 室内温度が安定してい る。 ④メンテナンスが複雑。 ⑤建築との一体化が必 要。 ⑥イニシャルコストが高 い。 ■屋根一体型空気式集熱器 ■システムの運転モード 〈夏の昼〉 〈冬の昼〉 〈夏の夜〉 放射冷却 日射 日射 外気取入 外気取入 (給湯) 外気取入 排気 (給湯) 弱涼房・換気 給湯 空気式床暖房・ 換気 バルコニー 水式平板型集熱器 日射 2F 冷暖房・給湯 らんま 日射 日射 ブラインド サンルーム 室内 吹出口 吸込口 日射 砕石 太陽熱利用システムは、エネルギー変換効率が他の自然エネルギーの変換利用システムに比べて 高い。太陽熱利用システムのうち水式太陽熱利用では、真空式ガラス管形集熱器が取り入れた熱の 損失が少なく、エネルギー効率が 76%に達する。 E -29 真空層が取り入れたエネルギーの ロスを低減させる 図 I.2.28 真空式ガラス管形集熱器の概念等 集熱器 集熱器 ポンプ ポンプ 蓄熱槽 蓄熱槽 補助 熱源 集熱器と熱交換コイル付貯湯タンクによ る強制循環集熱。 集熱とは別系統の給湯。 長所 水道圧の直接利用 寒冷地向き 短所 高価 設置スペース 不凍液濃度の管理 温水器と補助ヒータを組合せた給湯。 自然循環による集熱。 長所 シャワーなど混合水栓の利用 短所 寒冷地には不向き 集熱器+間接給湯方式 補助ヒーター+太陽熱温水器方式 図 I.2.29 太陽熱を利用した給湯方法 太陽熱利用による CO2 削減効果に関するケーススタディー 太陽熱利用機器の 1 台当たりの CO2 削減量は、下記の通りと推定される。 表 I.2.3 各太陽熱システムの CO2 削減量 集熱面積 自然循環型太陽熱温水器 3m2 強制循環型ソーラーシステム 6m2 年間集熱量 6,530MJ 13,060MJ 原油節約量 170 l 340 l <試算条件> ① ソーラー設置地域の年間平均集熱面日射量:5,442MJ/m2・年 ② 太陽熱利用効率:40% ③ 補助熱源効率:80% ④ 原油発熱量:38.7MJ/l ⑤ 原油 CO2 排出原単位:0.781Mt-C/Mtoe※ ※1Mtoe…石油換算百万トン ≒1013kcal(発熱量) ≒4.19×1010MJ(発熱量) E -30 CO2 削減量 123kgC 246kgC (具体的事例) № 5 セ ンサー № 4 セ ンサー № 3 セ ンサー № 2 セ ンサー № 1 セ ンサー 集熱器 №2 中温 貯湯槽 №3 低温 床暖房 冬 №4 高温 貯湯槽 春・秋 №5 低温 貯湯槽 №1 高温 ・冷凍機 №2 中温 貯湯槽 夏 集 熱器 7 85 ㎡ 中温 タンク 吸収 冷凍機 空調機 1, 000 l 高温ハ ゙ラン シン グタンク 2 ,00 0l 集熱ホ ゚ンフ ゚(回転制 御方式) №1 V 補 助熱源 給湯 フ ゚ール 補給水 床暖房 №2 V №4 V №5 V 中温 用貯湯槽 1,2 00l 天 井冷房 春・秋 :高温貯 湯槽 9, 000 l×2 除湿器 図 書館床暖 房 3 ,300 ㎡ 図 I.2.30 上智大学 四谷キャンパス外観 中温熱交 換器 №3 V 補助熱源 図 I.2.31 上智大学 四谷キャンパスシステム図 この計画では、陸屋根上に双子型に大きくまとめられた置屋根一体型集熱器を配し、屋根からの 負荷を軽減している。利用目的は、給湯、プール補給水、床暖房など多目的に用いられており、有 効活用されている。 浜松市浜松プレスタワー(高層商業ビルへの導入事例) 導入事業者 (株)静岡新聞、 (株)ダルマヤ 所在地 静岡県浜松市 導入時期 1985 年 6 月 概要 集熱器容量:362m2(平板形) 用途:冷房、暖房、給湯 連絡先 大成サービス㈱名古屋支店 プレスタワー防災センター TEL:053-456-0119 図 I.2.32 浜松市浜松プレスタワー(高層商業ビルへの導入事例) ②太陽熱利用設備の適用用途 表 I.2.4 太陽熱利用設備の適用用途 検討項目 対象負荷 給湯 給湯需要及び 熱需要 空調 一日の需要 時間帯 導入事例 建築物の用途 手洗い 風呂 シャワー 厨房(業務) 排熱式吸収式冷温水機の 熱源として使用 (中央式熱源) 集合住宅 宿泊施設 病院 高齢者福祉施設 フィットネスジム (温浴施設有) 百貨店・ デパート ○ ○ ○ ○ ○ △ ○ ○ なし ○ ○ △ ○ ○ △ ○ ○ △ ○ ○ なし × × △ × ○ ○ ○ ○ ○ 夕方∼夜 夕方∼夜 (日需要有) 昼∼夜 昼∼夜 昼∼夜 昼∼夜 太陽熱温水器、 ソーラーシステム ソーラーシステム ソーラーシステム ソーラーシステム ソーラーシステム ソーラーシステム E -31 太陽熱利用設備の導入にあたっては、まず熱需要の正確な把握が重要となるほか、給湯設備に導 入する場合は月別の給水温度も給湯負荷と密接に関係してくるので注意が必要である。適用用途と しては、安定的な給湯需要の見込める集合住宅や宿泊施設、病院等となる。図Ⅰ.2.34 に建物用途別 の負荷パターン、表Ⅰ.2.5 に設計用給湯量を示す。 詳細な計画・設計を行うにあたっては、各メーカーや関係協会等が発行する資料の他、「ソーラー 建築デザインガイド(NEDO)」等を参照すること。 図 I.2.33 月別・時刻別の負荷パターン E -32 表 I.2.5 設計用給湯量 給湯量は給水温度 5℃、給湯温度 60℃基準 年間給湯熱量は年間平均給水温度 17.9℃(東京)、給水温度 60℃基準 ③太陽熱利用に関する留意点 ア 太陽熱利用について ・ 太陽熱利用設備の稼働時間と集熱時間が異なる場合、蓄熱装置が必要 ・ 曇天日等集熱量が見込めない場合の対策としてヒーター等の補助熱源が必要 ・ 集熱媒体に液体を使用する場合、集熱器や配管の不凍対策、漏水対策が必要 ・ 太陽熱集熱器については太陽光発電パネルに比べ、影による影響が小さい ・ 変換効率は太陽熱集熱器のほうが太陽光発電パネルより2∼3倍程度高い イ 集合住宅における太陽熱利用のシステム構成(中央式給湯、個別給湯) 現状では安定的に見込める給湯需要を賄うものが主流となっている。住宅着工件数に占める 集合住宅の割合が高い東京では、集合住宅における普及拡大が必要である。 (i) 中央式給湯 主として屋根等の共用部分に集熱器、蓄熱槽、貯湯槽等を設置し、各住戸に供給する方式。 戸建て住宅では自然循環型の太陽熱利用温水器方式が主流であり構造的に簡単で安価である。 強制循環型給湯方式は、補助熱源と循環ポンプがついており安定的に給湯を行うことができ るが割高となる。集熱媒体に水を使用する直接加熱方式と不凍水を使用する間接加熱方式が ある。 図 I.2.34 太陽熱 中央式給湯・暖房システム E -33 フロー図(越谷レイクタウン) 図 I.2.35 太陽熱 中央式給湯・暖房器(越谷レイクタウン) (ii) 個別式給湯 集合住宅の屋根やバルコニー等の共用 部分に集熱器を垂直に設置し、住戸内 やバルコニーに給湯器と貯湯槽、補助 熱源を設置して使用される。 暖房器付き給湯器と併用することで床 暖房も可能である。個別式給湯型はデ ザイン性や管理区分等における課題が あったが、近年ようやく市場化された。 右図は、集合住宅のバルコニーの手すりに設 置した集熱パネルで太陽エネルギーを集め、 給湯等に利用するシステム。太陽エネルギー を集熱パネルで熱媒に吸収し、その熱媒を集 熱循環ポンプで循環させて貯湯タンク内の 水を温める。集熱量が足りないときには、併 設した潜熱回収型給湯器で加熱する。 図 I.2.36 太陽熱 個別式給湯システム ウ 業務系建築物における太陽熱利用のシステム構成例 気象条件、建築物の用途や熱需要、集熱量に応じてシステム構成を計画する。 (i) 給湯利用 集熱器、蓄熱槽、熱交換器、貯湯槽、循環ポンプ、補助熱源、給湯器 (ii) 給湯暖房利用 ・水式暖房 集熱器、蓄熱槽、熱交換器、貯湯槽、給湯器、暖房用の放熱器 ・空気式暖房 空気集熱用集熱器、蓄熱(コンクリート躯体を利用)、空気循環用ダクト及びファン (iii) 冷暖房給湯利用 集熱器、蓄熱槽、熱交換器、冷却塔、吸収冷温水器、給湯器、暖房用の放熱器 E -34 (3)地中熱利用に係る事項 建築物を計画する土地や地域の特性を考慮し地中熱交換井を敷設し、その地中熱を利用した水熱源 ヒートポンプ熱源機は、年間に亘って安定した熱(温度)により高効率で運転することができ、化 石燃料起源のエネルギー消費を削減し、二酸化炭素排出量の削減につながる。 地中熱を利用するシステムは、水熱源ヒートポンプ熱源機により、冷房・暖房・給湯などに地中 熱を利用することとなる。特に、空気熱源ヒートポンプでは寒冷地において低効率となるが、地中 熱を利用することにより高効率での運転が可能となる ①熱交換井について 地中熱利用システムを導入しようとする地域の地層や地中温度、地下水位、周辺の井水の状況等 を調査して行う。また、テスト用の井戸が有る場合や、テスト井を新たに掘削できる場合には、採 熱試験やサーマルレスポンス試験を行うことで、より詳しい地中の情報を得ることができ、精度の 良い地中熱設計が可能となる。 オフィスなど、大きな建物の場合、先に 1 本掘削して熱応答試験を行い、熱負荷をまかなえるか 試算する必要がある。地上で必要とするエネルギーと、地中から得られるエネルギーとがうまくバ ランスするように、地中熱利用の方法や、地中熱交換井の本数、井戸水の揚水量等を決定する。 一般的に密閉ループ式パイプを地中熱交換井に埋 設した場合、井戸径:120φ、密閉ループ式パイプの 中を循環する不凍液は、地中から地中熱交換井 1m 当 たり 30∼80 W/m の熱伝導とし、地中熱交換井の総 延長を決定し、地中熱交換井を掘削する敷地の広さか ら、本数と深さを決定する。深さは 50∼150m 程度 で計画することが多い。一方、建物の基礎杭を地中熱 交換器として利用する方式もあり、これを基礎杭利用 方式と呼ぶ。ボーリングコストが高い国内では経済的 にメリットがある方式である。国内で主に使用されて いる杭は、場所打ち杭やPHC杭、回転圧入鋼管杭で あり、利用する杭により最適な熱交換方法を計画する 必要がある。 なお、大きな川の近くや地下水が豊富な土地などの ほうが熱交換の効率はよくなる。そのためにも、地下 の特性を調査することが必要である。 また、東京都に多い関東ローム層は、保水性が悪く 地下水による熱交換が期待できないため地中熱利用 には向いていない可能性もあり、考慮しておく必要が ある。 表 I.2.6 地中熱利用設備設置事例(熱交換井方式) 名称 袖ヶ浦市健康づくり支援センター 所在地 千葉県袖ヶ浦市 施工年月日 2004 年 6 月 建築物用途 公共施設(延床面積 3,800 ㎡) システム用途 冷暖房、給湯、融雪 システム区分 熱交換井 100m 37 本 ヒートポンプ能力 加熱能力 370kW 施工者 備考 ミサワ環境技術(株) NEDO 地域エネルギー普及促進事業 問合せ;ミサワ環境技術(株) E -35 図 I.2.37 地中熱利用方法 老人保健施設アイリス 東京都日野市 2004 年 3 月 福祉施設(延床面積 1,090 ㎡) 冷暖房、給湯、融雪 熱交換井 50m 20 本 加熱能力 163kW 冷却能力 145kW マイホームプランナー 地中熱対応空水冷(ハイブリッド) ヒートポンプ採用 問合せ;(株)アースリソース 表 I.2.7 地中熱利用設備設置事例(基礎杭利用方式) 名称 所在地 施工年月日 建築物用途 システム用途 システム区分 東京大学柏キャンパス環境棟 千葉県柏市 2006 年 4 月 大学(延床面積 21,031 ㎡) 冷暖房 場所打ち杭 杭径 1.5m 深さ 18m 1 本(杭外周部に熱交換用配管8本) ヒートポンプ能力 施工者 加熱能力 4.6kW 冷却能力 4.4kW 大成建設(株) 前川製作所本社ビル 東京都江東区 2008 年2月 事務所(延床面積 9,304 ㎡) 冷暖房 場所打ち杭 杭径 2m 深さ 37m 20 本(杭外周部に熱交換用配管8 本) 加熱能力 139kW 冷却能力 119kW 大成建設(株) 備考 問合せ:大成建設(株) 問合せ:大成建設(株) ②地中熱利用設備設置事例 袖ヶ浦市健康づくり支援センター 図 I.2.38 地中熱利用設備設置事例 (4)バイオマス利用 環境確保条例においてバイオマスとは『動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利 用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される 製品(以下「化石燃料等」という。)を除く。)を熱源とする熱、水力、地熱その他化石燃料等を熱 源とする熱以外のエネルギー(原子力を除く。 )とする。』と定義されている。 計画建築物の用途、運用方法や地域の特性を考慮した利用し易いバイオマスを抽出し、バイオマスの E -36 直接燃焼によるもの、バイオマスをバイオガス化し代替エネルギーとすることにより、建築物の一次 エネルギー消費を抑制する効果を期待できる方策も確立できるようになってきた。ただし、バイオ マス及び廃棄物エネルギーの利用推進に当たっては、廃棄物等の発生抑制・再使用・再生利用 の推進が前提となる。バイオマスの保管場所や設備・設置場所や騒音・臭気対策等、また周囲へ及 ぼす影響についても十分留意する必要がある。 ①食品残渣(生ゴミ)を用いたバイオマス発電設備 食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)により食品事業者(各商業 施設、ホテル、工場、他)は、自己で発生する年間 100t 以上(1 日平均約 300kg)の食品残渣 を飼料化・肥料化・メタン化等で再生利用しなければならないと規定(同施行令第 4 条)されてい る。 食品残渣で発電を行うには、食品残渣を容器の中でメタン菌により発酵させメタンガス(バイオ ガス)を取り出し、そのガスを精製し、内燃機関で燃焼させて発電機を駆動する方法をとる。 バイオガスを利用する場合、バイオマスを処理しガスを発生させる装置が必要となる。燃焼ガス を発生させるため設置場所には十分に注意する必要がある。大きさは処理能力によるが、可燃物か ら離し、換気を十分おこなえる空間が必要となる。 ②木質系燃料を用いたバイオマス熱利用設備 木質系廃棄物は、間伐材・被害木・剪定材など数種あるが、樹種により発生する灰分の量、発熱 量は異なる。これらを燃焼しやすく、取扱いしやすいように木質系燃料として加工したものを、ボ イラー等で燃焼させ熱エネルギーとして利用する。 建築物環境計画書制度で対象となる中・大規模建築物への導入を考慮した場合の木質系燃料への 加工方法としては、チップ化・ペレット化などがあるが、チップ、ペレットを燃料としたボイラー は、環境確保条例及び大気汚染防止法でいう「ばい煙発生施設」に該当し、東京都区部など都心等 のビル街や住宅密集地での導入は難しく、都内の場合多摩地区西部での導入は可能である。また、 チップよりペレットのほうが発熱量は大きく、ボイラーなど燃焼装置を小さくでき、ペレットのほ うが発生する煤じんが少ない。 木質系廃棄物を燃焼させる装置は、一般的な固体燃料ボイラーと同等であり、設置場所に関して も同等に考えられる。ただし、燃料となる木質系廃棄物が固体のため、木質系廃棄物の保管庫の直 近に設置場所を確保する必要がある。また、木質系ペレットを利用した直焚き冷温水発生機も開発 されている。 表 I.2.8 チップとペレットの比較 E -37 図 I.2.39 木質系ペレット利用直焚冷温水発生機システム例 E -38 (5) 系統連系に関する事項 • 発電設備を商用電源設備に連系(接続と遮断)するには、保護協調をとることにより、発電 設備の故障や事故発生時に連系された系統にその影響を波及させないために解列(遮断、単独 運転)して事故遡及を防止し、あるいは事故復旧後は再度並列(接続)することが重要である。 これらの技術要件を示したものとして、経済産業省資源エネルギー庁の通達による「系統連 系技術要件ガイドライン」がある。 • 発電設備が低圧系(AC600V、DC750V 以下)に連系される場合を低圧連系、高圧系(7000V) に連系される場合を高圧連系という。 • 「逆潮流」とは、発電設備の設備から電気事業者側系統へ向う電気の流れがある場合を「逆 潮流あり」、ない場合を「逆潮流なし」という。 低圧幹線 1φ 3W/ 3φ 3W パワーコンディショナ DC AC 逆変換装置 (インバータ ) 太陽電池パネル (発電設備 ) 設備負荷 低圧連系 高圧母線 高圧TR 高圧TR パワー コンディショナ 逆潮流 逆変換装置 (インバータ) 太陽電池パネル (発電設備) DC AC 低圧幹線 1φ3W/3φ3W 設備負荷 高圧連系(事例としては少ない) 図 I.2.40 系統連系の概念図 E -39 《参考文献・出典等》 図 I.2.17 黒部市「生地特定公共賃貸住宅」 図 I.2.18 オランダアメルスフォルト集合住宅群(各住戸への設置例):PV 建築デザインガイド[世界 の太陽光発電建築事例集]、(財)新エネルギー・産業技術総合開発機構 図 I.2.19 屋上フェンス一体型両面太陽電池:(株)日立製作所 日立事業所(茨城県日立市) ソーラー建築デザインガイド[太陽熱利用システム事例集] 、(財)新エネルギー・産業技 術総合開発機構 図 I.2.25 太陽電池の種類:(財)新エネルギー・産業技術総合開発機構ホームページ 図 I.2.27 各発電システムの CO2 排出原単位:私達のエネルギー、内山洋司著 図 I.2.28 真空式ガラス管形集熱器の概念等:日本電気硝子㈱ 図 I.2.29 太陽熱を利用した給湯方法:PV 建築デザインガイド[世界の太陽光発電建築事例集]、(財) 新エネルギー・産業技術総合開発機構 図 I.2.30 上智大学:四谷キャンパス外観 図 I.2.31 上智大学 四谷キャンパスシステム図:ソーラー建築デザインガイド[太陽熱利用システム 事例集] 、(財)新エネルギー・産業技術総合開発機構 図 I.2.32 浜松市浜松プレスタワー(高層商業ビルへの導入事例):(財)新エネルギー・産業技術総 合開発機構 図 I.2.33 月別・時刻別の負荷パターン:天然ガスコー-ジェネレーション計画・設計マニュアル 2008 (社)日本エネルギー学会編 図 I.2.34 太陽熱 中央式給湯・暖房システム フロー図(越谷レイクタウン):株式会社大阪テク ノクラート資料 図 I.2.35 太陽熱 中央式給湯・暖房器(越谷レイクタウン):株式会社大阪テクノクラート資料 図 I.2.36 太陽熱 個別式給湯システム:東京ガスホームページ 図 I.2.38 地中熱利用設備設置事例:地中熱利用設備設置事例 図 I.2.38 地中熱利用設備設置事例:大成建設株式会社ホームページ、地中熱利用促進協会ホームペ ージ 図 I.2.39 木質系ペレット利用直焚冷温水発生機システム例:矢崎総業(株)ホームページ 表 I.2.1 太陽電池の種類と特徴:太陽電池を使いこなす、桑野幸徳著 表 I.2.2 太陽熱の主な利用方法 表 I.2.3 各太陽熱システムの CO2 削減量 :PV 建築デザインガイド[世界の太陽光発電建築事例集]、(財)新エネルギー・産業技 術総合開発機構 表 I.2.5 設計用給湯量:第13版 空気調和衛生工学便覧 4給排水設備設計篇、(社)空気調和・ 衛生工学会 表 I.2.6 地中熱利用設備設置事例(熱交換井方式):地中熱利用促進協会ホームページ 表 I.2.7 地中熱利用設備設置事例(基礎杭利用方式):大成建設資料 表 I.2.8 チップとペレットの比較:株式会社トモエテクノホームペ ージ E -40 I.エネルギーの使用の合理化 I.3 省エネルギーシステム 1 I.3.1 設備システムの省エネルギー 指針策定の背景 建築物の生涯に亘る環境負荷、特に地球温暖化に関わる環境負荷を定量化する場合、ライフサイ クル CO2(以下、LCCO2)で評価することができる。事務所ビルの建設から廃棄に至る LCCO2 の試算例を示すが(図 I.3.1参照)、運用段階の CO2 排出量が建築物の生涯を通じて排出される CO2 総量の約 7 割を占めることがわかる。この運用段階における CO2 の排出はビルの運用に関わるエ ネルギー消費に起因する。図 I.3.2は事務所ビルにおける平均的な運用時のエネルギー消費の内訳 を示したものであるが、空気調和設備、照明設備などを中心に無駄のない効率的なシステムを計画 することが重要である。 廃棄段階 改修段階 8% 6% 修繕 4% 保守管理 3% 設計建設段階 16% 輸送・衛生、 その他用 21% 2 373MJ/延m ・年 照明用 32% 空調用 (空調搬送を含む) 47% 2 858MJ/延m ・年 2 運用段階 63% 586MJ/延m ・年 図 I.3.1 事務所ビルの LCCO2 試算例図 図 I.3.2 一般オフィスにおける エネルギー消費量 また、近年、民生家庭部門(住宅用途)におけるエネルギー消費量の伸びが顕著であり、国など でもトップランナー方式や省エネルギーラベル制度等によって住宅におけるエネルギー使用機器の 省エネルギーが進展してきている。また、本制度の対象となる建築物の約 6 割が住宅用途であるこ とから、住宅用途におけるエネルギー消費構造を考慮しつつ、集合住宅で建設時に設置される設備 の省エネルギー性能を評価する。 照明・動力他 26% 給湯 45% 厨房 10% 暖冷房 19% 図 I.3.3 集合住宅のエネルギー消費構造 E -41 2 配慮すべき事項 (1) 住宅 【次に掲げる設備で、効率的なエネルギー利用のために行う設備機器のシステムの構築に係る事項】 ① 空気調和設備(床暖房等を含む) ② 給湯設備 (2) 住宅以外の用途 【次に掲げる設備で、効率的なエネルギー利用のために行う設備機器のシステム及び制御のシステ ムの構築に係る事項】 ① 空気調和の熱源側設備 ④ 照明設備 ⑦ エネルギー利用効率化設備 ② 空気調和の二次側設備 ⑤ 給湯設備 ③ 機械換気設備 ⑥ エレベーター設備 3 (1) 評価基準と適用用途 住宅 段階1 特定建築物に設置する設備により、表2から表5までに定める点数の合計点及び満点を (表1によ 算出し、表1に定める必要な値により、段階を決定する。なお、表2から表5までに定 る) める設備の設置が無い場合には、その点数は合計点及び満点には含まないものとする。 合計点=HwP+WfP+ACP又は合計点=ACP+HwFP この式においてHwP、WfP、ACP及びHwFPは、それぞれ次の数値を 表すものとする。 HwP 給湯システムの点数 WfP 床暖房システムの点数 ACP 空調システムの点数 HwFP 暖房機能付き給湯システムの点数 表1 住宅 用途の設備 システムの 省エネルギ ーの評価 満点が 8 点 表 2 及び表 3 の組合せ、 表 2 及び表 4 の組合せ又 は表 5 のみ 満点が 10 点 表 2 から表 4 までの組 合せ又は表 4 及び表 5 の組合せ 満点が 6 点 (表 2 のみ) 段階1 4 点未満 5 点未満 6 点未満 段階2 4 点以上 6 点未満 5 点以上 7 点未満 6 点以上 9 点未満 段階3 6点 7 点以上 9 点以上 表2 給湯システムの評価給湯システムの仕様 電気温水器 点数 0点 エネルギー消費効率が基準エネルギー消費効率未満であるガス温水機器(ガス 暖房機器を除く。) エネルギー消費効率が基準エネルギー消費効率以上であるガス温水機器(ガス 暖房機器を除く。) 2点 4点 次に掲げる仕様のいずれかに該当する給湯システム (1) エネルギー消費効率が 90%(ガスふろがま付でないものにあっては 95%)以上であるガス潜熱回収型給湯器 (2) 電気 CO2 冷媒ヒートポンプ給湯器及び同等の機能を有する機器 (3) 燃料電池を含む家庭用コージェネレーション機器 6点 (4) 年間の給湯量に対する利用率が 15%以上である太陽熱温水器及び基準エ ネルギー消費効率が 83.0%以上であるガス暖房機器(給湯付のもの)を 組み合わせたシステム 備考 「エネルギー消費効率」及び「基準エネルギー消費効率」は、 「ガス温水機器の性能の向上 に関する製造事業者等の判断の基準等(平成 16 年経済産業省告示第 316 号) 」による。 E -42 (1) 住宅 段階1 表3 床暖房システムの評価床暖房システムの仕様 点数 エネルギー消費効率が 83.4%未満であるガス暖房機器(給湯付のもの以 外) 電気ヒーターを熱源とする床暖房システム 0点 エネルギー消費効率が 83.4%以上であるガス暖房機器(給湯付のもの以 外) 1点 電気ヒートポンプを熱源とする床暖房システム 2点 備考 「エネルギー消費効率」は、「ガス温水機器の性能の向上に関する製造事業者等の判断 の基準等(平成16年経済産業省告示第316号)」による。 表4−1 空調システムの評価(直吹き形で壁掛け形のものを除く。)空調 システム(ビルトイン)の仕様 省エネルギー基準達成率が 100%未満であるエアコンディショナー 点数 0点 省エネルギー基準達成率が 100%以上、115%未満であるエアコンディ ショナー 1点 省エネルギー基準達成率が 115%以上であるエアコンディショナー 2点 備考 「省エネルギー基準達成率」は、日本工業規格 C9901 及び「エアコンディショナーの 性能の向上に関する製造事業者等の判断の基準等(平成21年経済産業省告示第213 号)」による。 表4−2 空調システムの評価(直吹き形で壁掛け形のものに限る。)空 調システム(ビルトイン)の仕様 点数 エアコンディショナーに係る多段階評価(寸法規定タイプにあっては、寸 法フリータイプの基準エネルギー消費効率に基づき省エネルギー基準達 成率を算定した場合の多段階評価とする。以下同じ。)において「★」又 は「★★」に該当するエアコンディショナー 0点 エアコンディショナーに係る多段階評価において「★★★」又は「★★★ ★」に該当するエアコンディショナー 1点 エアコンディショナーに係る多段階評価において「★★★★★」に該当す るエアコンディショナー 2点 備考 1 「多段階評価」は、「エネルギーを消費する機械器具の小売の事業を行う者が取り組むべき措 置(平成18年経済産業省告示第258号)」による。 2 「通年エネルギー消費効率」、 「寸法規定タイプ」及び「寸法フリータイプ」は、「エアコンデ ィショナーの性能の向上に関する製造事業者等の判断の基準等(平成21年経済産業省告 示第213号)」による。 表5 暖房機能付き給湯システム 暖房機能付き給湯システム 点数 エネルギー消費効率が 83.0%未満であるガス暖房機器 (給湯付のもの) 2点 エネルギー消費効率が 83.0%以上であるガス暖房機器(給湯付のもの) 5点 次に掲げる仕様のいずれかに該当する暖房機能付き給湯システム (1) エネルギー消費効率が 90%以上であるガス潜熱回収型給湯器 (2) 電気 CO2 冷媒ヒートポンプ給湯器及び同等の機能を有する機器 (3) 燃料電池を含む家庭用コージェネレーション機器 8点 (4) 年間の給湯量に対する利用率が 15%以上である太陽熱温水器及び 基準エネルギー消費効率が 83.0%以上であるガス暖房機器(給湯 付のもの)を組み合わせたシステム 備考 「エネルギー消費効率」及び「基準エネルギー消費効率」は、「ガス温水機器の性能の向上 に関する製造事業者等の判断の基準等(平成16年経済産業省告示第316号)」による。 E -43 (1) 住宅 段階2 上式にて算出した合計点と表 1 により、段階を決定する。 段階3 上式にて算出した合計点と表 1 により、段階を決定する。 (2) 住宅以外の用途 段階1 次に掲げる①及び②に適合していること。 ① 設備システムのエネルギー利用の低減率として、特定建築物の用途ごとに次の式により算出 した値が、工場等以外の用途にあっては5以上25未満、工場等の用途にあっては0以上4 0未満であること。 ア 工場等以外の用途 規則別表第1の5備考2に規定する式 イ 工場等のうち駐車場の用途 ERR= ウ 1−(1−K) 1.4×EL + Ev(p) 1.4×ESL + Esv(p) ×100 工場等のうち駐車場以外の用途 ERR= 1−(1−K) 1.4×EL 1.4×ESL ×100 これらの式において、ERR、K、EL、EV(P)、ESL及びESV(P)は、それぞれ規則別表 第1の5備考2において規定する数値及び次の数値を表すものとする。 EV(P) 駐車場に係る EV ESV(P) 駐車場に係る ESV ② 特定建築物の用途ごとに、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特 定建築物の所有者の判断の基準(平成11年通商産業省・建設省告示第1号。以下「判断基準」 という。)2−3、3−3、4−3、5−3及び6−3により求める数値が、それぞれ判断基準別 表第1の(は)欄から(と)欄までに定める数値以下であること。 ここで、規則(平成 21 年都民の健康と安全を確保する環境に関する条例施行規則第 126 号)別 表 第1の5備考2における式によって算定される設備システムのエネルギー利用の低減率 (ERR)とは、次の式により算出した値をいう。 ERR= 1−(1−K) ET + 0.4 (EAC + EL) EST + 0.4 (ESAC + ESL) ×100 ET= EAC + EV + EL + EHW + EEV EST= ESAC + ESV + ESL + ESHW + ESEV K= K(C) + K(S) + K(O) = E(C) + E(S) + E(O) ET これらの式および段階1の①イ、ウにおいて、ERR、K, EAC、EV、EL、EHW、EEV、ESAC、 ESV、ESL、ESHW、ESEV、K(C) 、K(S) 、K(O) 、E(C)、E(S)、及び E(O)は、それ ぞれ次の数値を表すものとする。 ERRエネルギー利用の低減率 K エネルギー利用効率化設備(太陽光発電システム、コージェネレーションシステムその他の 建築物全体として年間一次エネルギー消費量の低減が図れる設備をいう。)を設置した場合の 特定建築物の年間一次エネルギー消費量の低減率 E -44 EAC 判断基準二―三(一)により求める空気調和負荷を処理するための空気調和設備の消費 エネルギー量(単位 メガジュール) EV 判断基準三―三(一)により求める換気消費エネルギー量(単位 メガジュール) EL 判断基準四―三(一)により求める照明消費エネルギー量(単位 メガジュール) EHW 判断基準五―三(一)により求める給湯消費エネルギー量(単位 メガジュール) EEV ル) 判断基準六―三(一)により求めるエレベーター消費エネルギー量(単位 メガジュー ESAC 判断基準二―三(二)により求める仮想空気調和負荷に判断基準別表第一(は)欄に定 める数値のうち当該用途に係る数値を乗じて得た値(単位 メガジュール) ESV 判断基準三―三(二)により求める仮想換気消費エネルギー量に判断基準別表第一(に) 欄に定める数値のうち当該用途に係る数値を乗じて得た値(単位 メガジュール) ESL 判断基準四―三(二)により求める仮想照明消費エネルギー量に判断基準別表第一(ほ) 欄に定める数値のうち当該用途に係る数値を乗じて得た値(単位 メガジュール) ESIIW 判断基準五―三(二)により求める仮想給湯負荷に判断基準別表第一(へ)欄に定める 数値を乗じて得た値(単位 メガジュール) ESEV 判断基準六―三(二)により求める仮想エレベーター消費エネルギー量に判断基準別表 第一(と)欄に定める数値のうち当該用途に係る数値を乗じて得た値(単位 メガジュール) K(C) コージェネレーションシステムを設置した場合の特定建築物の年間一次エネルギー消費 量の低減率 K(S) 太陽光発電システムを設置した場合の特定建築物の年間一次エネルギー消費量の低減率 K(O) その他の設備を設置した場合の特定建築物の年間一次エネルギー消費量の低減率 E(C) コージェネレーションシステムによる特定建築物の年間一次エネルギー消費量の低減量 (単位 メガジュール) E(S) 太陽光発電システムの発電量(単位 メガジュール) E(O) その他の設備による特定建築物の年間一次エネルギー消費量の低減量(単位 ール) メガジュ ※ なお、空気調和設備及び機械換気設備、照明設備の容量及び定格出力が未確定の設備がある 建築物についてのERRの算定については、当該設備について標準的な設備の機器の容量及 び定格出力を適正に想定して算定すること。 (第4章 L−18、19 参照) 段階 2 段階1の②の基準に適合し、かつ、設備システムのエネルギー利用の低減率として、特定建築 物の用途ごとに段階1の欄に掲げる式により算出した値が、工場等以外の用途にあっては25以 上35未満、工場等の用途にあっては40以上55未満であること。 段階 3 段階1の②の基準に適合し、かつ、設備システムのエネルギー利用の低減率として、特定建築 物の用途ごとに段階1の欄に掲げる式により算出した値が、工場等以外の用途にあっては35以 上、工場等の用途にあっては55以上であること。 E -45 4 解説 (1) 住宅 住宅用途のエネルギー設備で、専用部分にあらかじめ設置される付帯設備のうち、給湯、床暖房、 空調システムについて、省エネ性能を評価する。具体的には設備システムごとに省エネ性能に応じ て配点を行い、その総合評点により段階評価を行う。総合評点による段階基準は表 I.3.2のとおり である。 各設備システム間の配点については、集合住宅におけるエネルギー使用量の割合を踏まえ、配点 を行っている。図 I.3.3のとおり、集合住宅における給湯のエネルギー消費割合が大きいことから、 給湯システムでどういった仕様の設備を導入するかが、全体の評価レベルに大きな影響を与えるよ うに配点構成を行っている。 また、各設備システムにおける配点(評価基準 表2∼5)については、当該設備システムにお けるトップランナー相当を最も高い点数とし、基準エネルギー消費効率ないし省エネルギー基準達 成率以上のものをその次の点数に、それに満たないものをさらにその下の点数としている。 なお、空調システムのトップランナーとしては、家電量販店等で市販されている製品のトップラ ンナー相当とし、「エネルギーを消費する機械器具の小売の事業を行う者が取り組むべき措置(平成 21 年 5 月 12 日経済産業省告示第 181 号)」における多段階評価★★★★★相当の省エネ性能を 有するものとする。 エアコン等の設備の省エネルギー基準達成率及びトップランナー基準等については、建築物環境 計画書(計画段階)の提出時点における直近の基準を適用して評価すること。 表 I.3.1 住宅における省エネルギーシステムの評価対象 項目 評 価 対 象 説明 給湯システム 風呂がま付給湯器。住宅のエネルギー消費の多くを占める。 床暖房システム 近年、分譲マンションにおける床暖房普及率が高くなっている。 空調システム 付帯設備として、あらかじめ設置されているビルトイン空調機。 暖房機能付 給湯システム 床暖房を含む暖房機能のある風呂がま付給湯器。 住宅用途の、総合評点による段階基準は以下のとおりである。 ・ 各システム間の配点(満点設定)の考え方 給湯システムを基準として、下記の組み合わせの合計を評点とする。 ・ 各システム(表2∼5)における配点の考え方 (詳細は3 評価基準と適用用途による) 1)トップランナーのレベルを最高点とする なお、市販機のエアコンは多段階評価★★★★★相当を最高点とする 2)省エネ基準値以上を中間点とする 市販機のエアコンは多段階評価★★★★または★★★相当を中間点とする 3)省エネ基準未満をゼロ点とする 市販機のエアコンは多段階評価★または★★相当をゼロ点とする 表 I.3.2 各設備の組み合わせの総合評点による段階基準 設備の組み合わせ 段階1 給湯(満点6) 0∼3 給湯+床暖房(満点8) 0∼4 暖房機能付給湯システム(満点8) 0∼4 給湯+空調(満点8) 0∼4 すべて(満点10) 0∼5 注:該当する設備が無い場合は、評価の対象としない。 E -46 段階2 4∼5 5∼6 5∼6 5∼6 6∼8 段階3 6 7∼8 7∼8 7∼8 9∼10 段階2・3を満足する給湯器等のケーススタディ− 段階2・3を満足する給湯器等の組み合わせを示す。 表 I.3.3 段階2の組み合わせ例(最高点 10 点の場合) 給湯器 6点(最高点)の機器 床暖房システム 無条件で段階2に適合 ビルトイン空調機 4点の機器 2点(最高点)の機器 ―(いずれでも可) 4点の機器 1点の機器 1点の機器 4点の機器 0点の機器 2点(最高点)の機器 2点の機器 0点の機器 2点(最高点)の機器 段階2には適合しない 2点(最高点)の機器 以上 表 I.3.4 段階3の組み合わせ例(最高点 10 点の場合) 給湯器 床暖房システム ビルトイン空調機 6点の機器 2点(最高点)の機器 1点の機器 6点の機器 1点の機器 2点(最高点)の機器 以上 4点の機器 段階3には適合しない 表 I.3.5 給湯システムの評価 給湯システムの仕様 電気温水器(通電制御型) ガス給湯器(基準エネルギー消費効率未満) 高効率ガス給湯器(基準エネルギー消費効率以上) 燃料系潜熱回収型給湯器(エネルギー消費効率 90%以上(小数点以下四捨五入) ) 電気 CO2 冷媒給湯器(深夜電力利用貯湯式) 家庭用コージェネレーション(燃料電池含む) 太陽熱給湯器(利用率 15%以上:併設する場合は高効率給湯器の採用を前提) 点数 0点 2点 4点 6点 表 I.3.6 床暖房システムの評価 床暖房システムの仕様 省エネ基準未達成のガス暖房機器(基準エネルギー消費効率:83.4% ヒーター式機器 高効率ガス暖房機器(エネルギー消費効率:83.4% 以上) 給湯器の最高点による機器 電気式ヒートポンプによる機器 点数 未満) 0点 1点 2点 表 I.3.7 ビルトイン空調機(冷暖房用)の評価 エアコンの種類 直吹き形 壁掛け形 評価指標 多段階評価において右記 の評価となる寸法フリー タイプの通年エネルギー 消費効率 その他(天井カセット) ダクト接続形 マルチタイプ 省エネルギー基準達成率 評価基準 配点 ★または★★ 0点 ★★★または★★★★ 1点 ★★★★★ 2点 100%未満 0点 100%以上 115%未満 1点 115%以上 2点 省エネルギー基準達成率:日本工業規格 C9901 基準エネルギー消費効率:ガス温水機器の性能の向上に関する製造事業者等の判断の基準等(平成 12 年 12 月 27 日 経済産業省告示第 434 号。 通年エネルギー消費効率及び寸法フリータイプ:エアコンディショナーの性能の向上に関する製造事 業者等の判断の基準等(平成 21 年通商産業省告示第 213 号) E -47 (2) 住宅以外の用途 A.考え方 ① 地域冷暖房から熱の供給を受ける建築物の場合 地域冷暖房から熱の供給を受ける建築物の場合、自己熱源を有していないため、 「建築物に係るエ ネルギーの使用の合理化に関する建築主の判断の基準」(以下「判断基準」という。)では、空気調 和設備のエネルギー消費係数(CEC/AC)の算出に必要な空気調和設備のエネルギー消費量の算定 については、他人から供給された熱(蒸気、温水、冷水)1キロジュールあたり、1.36 を乗じる こととなっている。(判断基準別表第3) 「東京都建築物環境配慮指針別表第1における設備システムのエネルギー利用の低減率の算定に おける取扱について」では、ERR の算定にあたり、他人から供給された熱に乗じる値について、 1.36 のほか、地域冷暖房の熱のエネルギー効率の逆数(算定方法については、「地域における省エ ネルギー」の評価段階3に適用する評価基準に規定する算定方法によるものとする(E-85,86 を 参照。))を用いることができることとしている。(第4章 L-18,19 を参照) ② ①以外の建築物の場合 判断基準では、各種設備(空気調和設備、換気設備、照明設備、給湯設備、昇降機設備)に係る エネルギーの効率的利用の基準を定めている。住宅以外の用途の建築物については、各設備システ ムに定められているエネルギー消費係数(以下、「CEC 値」という)に比べ、当該特定建築物がその 数値をどれだけ下回っているかについての評価を行う。建築物環境計画書においては、各種設備シ ステム(空気調和設備、機械換気設備等)でのエネルギー利用の効率化の程度を総合した指標 ERR (エネルギー利用の低減率)を用いて段階1から段階3を評価する。評価基準を適用するにあたり、 空気調和設備、機械換気設備等、各設備システムにおいて、各 CEC 値が判断基準以下であること、 かつ工場、倉庫、駐車場等を除く用途においては環境確保条例で定める省エネルギー性能基準(第 1章 8ページ参照)を満たすことが必要である。 なお、工場等の用途とそれ以外の用途では、ERR 削減の取組状況に大きな差異があるので、工場 等の用途とそれ以外の用途で基準値を別に設ける。また、工場等のうち駐車場については、換気設 備にかかるエネルギー消費を考慮して ERR を求めるものとする。 表 I.3.8 CEC の建築主の判断基準 工場等の CEC/V は本制度の駐車場を対象とした設定値 CEC/AC CEC/V CEC/L CEC/HW CEC/EV ホテル等 病院等 物品販売業を 営む店舗等 事務所等 学校等 飲食店等 集会所等 2.5 2.5 1.7 1.5 1.5 2.2 2.2 工場等 ()内は駐車場 のみの値 ― 1.0 1.0 0.9 1.0 0.8 1.5 1.0 (1.0) 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 − − ※1.5∼1.9 の間で、配管長さ/給湯量に応じて定める数値 1.0 − − 1.0 − − ※1.5∼1.9 の間で、配管長さ/給湯量(=Ix)に応じて定める数値について 0<Ix≦7 CEC/HW 1.5 7<Ix≦12 CEC/HW 1.6 0<Ix≦17 CEC/HW 1.7 0<Ix≦22 CEC/HW 1.8 22<Ix CEC/HW 1.9 ※エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)第14条第1項に基づく建築物に係るエネ ルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準(最終改正平成21年経済産業 省・国土交通省告示第3号) E -48 事務所用途の段階2・3に対応する省エネルギー対策のケーススタディ− 事務所用途の建築物を例に、段階2、3に対応する設備システムの省エネルギー対策事例を示す。 段階2、段階3は異なる事務所ビルの計算事例であり、以下に建物概要も示す。 表 I.3.9 省エネルギー対策事例 敷地面積 11,230m2 空気調和設備 (AC) 1.50 1.12 延床面積 82,450m2 機械換気 設備(V) 1.0 0.63 年間 エネルギー 消費量 33,235,000 (MJ/年) 10,160,000 (MJ/年) 28,965,061 (MJ/年) − 2,745,975 (MJ/年) 年間仮想 エネルギー 消費量(負荷) 29,621,000 (MJ/年) 16,110,000 (MJ/年) 38,197,224 (MJ/年) − 5,569,963 (MJ/年) 建物概要 CEC 基準値 (事務所) CEC 計算値 段階 2 採用している 制御・ システム等 ①大 温 度差 送 水・ 送 風、 ② VWV、③水蓄 熱、 ④ 外気 冷 房、⑤VAV、 ⑥熱 源 台数 制 御 敷地面積 建物概要 54,837m 2 − 地上 13 階・地下 3 階 機械換気 設備(V) 1.0 0.81 照明設備 (L) 1.0 0.57 給湯設備 (HW) − − 年間 エネルギー 消費量 31,243,000 (MJ/年) 394,402 (MJ/年) 13,206,253 (MJ/年) − 年間仮想 エネルギー 消費量(負荷) 25,855,000 (MJ/年) CEC 計算値 採用している 制御・ システム等 建物概要 段階 3 ①高効率照 明、②昼光利 ①天井チャ 用照明制御、 ンバー排気、 ③初期照度補 ②局所排気、 正、④人感セ ③温度セン ンサー(便 サー制御 所) 、⑤タイム スケジュール 延床面積 階数 空気調和設備 (AC) 1.50 1.21 CEC 基準値 (事務所) 段階 2 5,100m 2 階数 地上 22 階・地下 1 階 照明設備 給湯設備 (L) (HW) 1.0 − 0.76 − CEC 計算値 年間 エネルギー 消費量 年間仮想 エネルギー 消費量(負荷) 採用している 制御・ システム等 485,606 (MJ/年) ①電気室等 の温度セン ①大 温 度差 送 サーによる 風、②VWV、 空調機およ ③VAV びファンの 台数制御 23,042,596 (MJ/年) − ①高効率照明 器具の採用、 ②昼光利用照 明制御、③初 − 期照度補正、 ④人感センサ ー(便所) 階数 地上 23 階・地下 3 階 0.63 − 構造 S 造、SRC 造 エレベーター (EV) 1.0 0.49 237 (MJ/ m2・年) 28.6 278 (MJ/ m2・年) 40.2 212 (MJ/ m2・年) 1,158,264 (MJ/年) 2,347,208 (MJ/年) ①インバータ (電力回生有 り)制御、②運 行の群管理制 御 20,912,410 (MJ/年) 6,600,000 (MJ/年) 13,305,775 (MJ/年) − 1,459,300 (MJ/年) 22,194,480 (MJ/年) 14,580,000 (MJ/年) 21,054,881 (MJ/年) − 2,573,900 (MJ/年) ①VWV、②大 温度差送水・送 風、 ③ 外気 冷 房、 ④適正外気 量制御、⑤ VAV 、 ⑥ 予 冷・予熱時の外 気遮断制御、⑦ 熱源台数制御、 ⑧水 蓄 熱シ ス テム ①局所換気、 ②インバー タ制御、③温 度センサー 制御、④CO 制御、⑤中央 監視スケジ ュール制御、 ⑥冷房方式 併用換気の 導入 E -49 27.2 構造 S 造、RC 造、 SRC 造 エレベーター (EV) 1.0 0.49 延床面積 59,830m2 0.45 − PAL (参考) ①インバータ 制御 敷地面積 4,260m2 0.94 ①高効率照明 器具、②昼光 利用照明制 御、③初期照 度補正、④在 室検知、⑤タ イムスケジュ ール⑥セキュ リティー連動 ERR 構造 S 造、SRC 造 0.57 ①インバータ 制御、②エレベ ーター群管理 運転 学校用途の段階2・3に対応する省エネルギー対策のケーススタディー 先の事務所用途と同様に、学校用途の建築物を例にとって、段階2、3に対応する設備システム の省エネルギー対策事例を示す。 表 I.3.10 省エネルギー対策事例 敷地面積 空気調和設備 (AC) 1.50 1.20 機械換気 設備(V) 0.8 0.49 照明設備 (L) 1.0 0.68 給湯設備 (HW) − − 構造 S 造、RC 造 SRC 造 エレベーター (EV) − − 年間 エネルギー 消費量 5,830,000 (MJ/年) 828,400 (MJ/年) 2,927,100 (MJ/年) − − 年間仮想 エネルギー 消費量(負荷) 4,873,000 (MJ/年) 1,702,300 (MJ/年) 4,311,900 (MJ/年) − − 建物概要 CEC 基準値 (事務所) CEC 計算値 段階 2 採用している 制御・ システム等 建物概要 段階 3 CEC 計算値 年間 エネルギー 消費量 年間仮想 エネルギー 消費量(負荷) 採用している 制御・ システム等 5 (1) 10,484m 延床面積 2 14,855m 階数 2 地上 4 階・地下 2 階 ①高効率照 ①全熱交換器 明、②昼光利 の採用、②大教 用照明制御、 ①局所排気、 室での床吹き ③初期照度補 ②ダクトルー − 出し空調、③ウ 正、④人感セ ト最適化 オームアップ ンサー(便 制御、④VAV 所) 、⑤タイム スケジュール 敷地面積 延床面積 階数 地上 14 階、地下 1 階、 2 2 30,000m 56,789m 塔屋 1 階 0.78 0.80 0.77 − PAL (参考) 25.5 257 (MJ/ m2・年) 39.2 241 (MJ/ m2・年) − 構造 S造 − 14,589,540 (MJ/年) 4,429,129 (MJ/年) 823,171 (MJ/年) − − 18,771,210 (MJ/年) 5,550,161 (MJ/年) 1,070,050 (MJ/年) − − ①高効率照明 器具、②昼光 利用照明制 御、③初期照 度補正、④在 室検知 − ①温度センサ ー制御、②電 気室および通 ①外気冷房、② 信機械室の外 適 正 外 気 量 制 気冷房優先発 御、③VAV 停、③低層棟 トイレ排気フ ァンの人感セ ンサー発停 ERR 取組・評価書記載事項 住宅 概要 詳細 ※ ①給湯システムの仕様 利用の有無 (1)給湯システムの点数 ②床暖房システムの仕様 利用の有無 (2)床暖房システムの点数 ③空調システム(ビルトイン空調機)の仕様 利用の有無 (3)空調システム(ビルトイン空調機)の点数 ④暖房機能付き給湯システムの仕様 利用の有無 (4)暖房機能付き給湯システムの点数 ※各住戸で設置する設備システムが異なり、すべての住戸で同一の評価に適合しない場合は、代表的な住戸の設備 システムの仕様を記載する。この場合、全住戸中の当該仕様の設備を設置する住戸数、または一部の住戸で適合 しない住戸がある旨を記載する。 設備システムの仕様については、計画書段階で実際に設置する機種の具体的な仕様が記載できないときは、評価 基準の表2∼5に列記する仕様を記載する。 E -50 (2) 住宅以外の用途 空気調和 の熱源側 設備 概要 詳細 ① 設備の概要 ・エネルギー源(電気、都市ガス、油、地域冷暖房、その他) ・機器の選定 (1)冷熱源の容量 (2)温熱源の容量 (3)熱源機器の構成 ② 設備機器のシステムの構築に係る事項 (例 台数制御方式、変流量方式、大温度差方式による送水システム、利用可能エ ネルギーを利用したシステム、コージェネレーションシステム、燃料電池システ ム、蓄熱方式) <コージェネレーションシステムを導入している場合> ③ 形式(例 エンジン、タービン、燃料電池) ④ 排熱利用の有無 (1)発電容量、台数、発電効率 (2)発電割合(発電容量/契約電力量) (3)排熱利用率 (4)総合効率 ⑤ 利用先 <蓄熱方式を導入している場合> ⑥ 形式(例 水蓄熱、氷蓄熱) ⑦ 蓄熱槽設置場所(例 ピット利用、ユニット型) (1)蓄熱容量 (2)蓄熱量 (3)ピーク負荷日の夜間移行率 ⑧ その他の事項 空気調和 の二次側 設備 概要 機械換気 設備 概要 照明設備 概要 給湯設備 概要 ①設備の概要(インテリアゾーン・ペリメータゾーン) ② 空気調和負荷の低減に係る事項 (例 全熱交換器、外気冷房、最小外気取入れ量制御システム、居住域空気調和システム) ③ 送風のための動力の低減に係る事項 (例 変風量方式、大温度差方式による送風システム) ④ その他の事項 ⑤ 年間空調消費エネルギー量 ⑥ 年間仮想空調負荷 ⑦ 想定による計算の箇所の有無 ① 設備機器のシステムの構築に係る事項 (例 ダクトレス換気システム、換気ダクト静圧の低減化、局所換気方式) ② 制御のシステムの構築に係る事項 (例 温度センサー又は一酸化炭素センサーによる換気量制御システム) ③ その他の事項 ④ 年間換気消費エネルギー量 ⑤ 年間仮想換気消費エネルギー量 ⑥ 想定による計算の箇所の有無 ① 設備機器のシステムの構築に係る事項 (例 効率の優れた光源又は照明器具、省電力型安定器) ② 制御のシステムの構築に係る事項 (例 在室検知制御システム、適正照度調整システム、昼光連動制御システム、タイムスケジュール制御システ ム) ③ その他の事項 ④ 年間照明消費エネルギー量 ⑤ 年間仮想照明消費エネルギー量 ⑥ 想定による計算の箇所の有無 ① 設備の概要(給湯方式(例 中央方式、個別方式)、給湯温度) ② 設備機器のシステムの構築に係る事項 (例 配管及び貯湯槽の断熱仕様) ③ その他の事項 ④ 年間給湯消費エネルギー量 ⑤ 年間仮想給湯負荷 E -51 エレベー ター設備 概要 エネルギ ー利用効 率化設備 概要 詳細 全体 概要 ①設備の概要 形式(例ロープ式、油圧式) ② その他の事項 ③ 年間エレベーター消費エネルギー量 ④ 年間仮想エレベーター消費エネルギー量 ① コージェネレーションシステム (1)コージェネレーションシステムによる低減量 ② 太陽光発電システム (2)太陽光発電システムによる低減量 ③ その他 (3)その他の設備による低減量 設備システム全体のエネルギー利用の低減率(ERR) (参考)エネルギーの使用の合理化に関する性能の目標値(ERR) 《参考文献・出典等》 図 I.3.1 事務所ビルの LCCO2 試算例図:(社)建築設備技術者協会 図 I.3.2 一般オフィスにおけるエネルギー消費量:建築環境・省エネルギー講習会テキスト、(財) 建築環境・エネルギー機構(IBEC) 図 I.3.3 集合住宅のエネルギー消費構造:民生部門エネルギー消費実態調査、H11 年 3 月、 (独 立行政法人)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) E -52 6 参考1:住宅用途の省エネルギー機器例 中 和器 (1) 給湯の省エネルギー(制度の対象) ①潜熱回収型給湯器 都市ガス、LP ガスなどの燃料を燃やすことで得られる燃焼排気ガス中には水蒸気が含まれてお り、水蒸気が水になる際には潜熱を放出するため、熱交換工程においてこの潜熱も回収することで 一層の高効率化が実現できる。潜熱回収型給湯器は、従来給湯熱効率 80%程度(給湯熱効率:給 湯器が消費したガスエネルギーに対して、水が温度上昇のために得たエネルギーの割合)であった 強制燃焼型給湯器において、新たに潜熱回収用熱交換器を搭載し、給湯熱効率を 90%以上に高め た給湯器である。 排気(約50℃) 排気(約200℃) 排気ロス5% 潜熱回収型給湯器には、給湯単能器 排気ロス20% タイプ、風呂給湯器タイプ、暖房風呂 二次熱交 給湯器タイプの 3 種類があり、給湯単 (SUS製) 能器タイプと風呂給湯器タイプについ 一次熱交 一次熱交 ては給湯加熱部に、暖房風呂給湯器タ (銅製) (銅製) イプについてはさらに暖房用温水加熱 部に潜熱回収型熱交換器を組み込んで バーナー いる。一般的な暖房風呂給湯器では、 バーナー 給湯熱効率は約 95%、暖房熱効率は 空気 空気 ファン 約 89%を達成し、この場合、一般家 ファン 庭での給湯・暖房負荷モデルにおいて、 従来型給湯器に比べ約 13%のエネル ドレン ガス 湯95% 水 湯80% ギー消費の削減が可能になる。 ガス 水 100 100 図 I.3.4 従来型給湯器と潜熱回収型給湯器 ②自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機 給湯熱源機器をヒートポンプシステ ムとすることで、従来の電気湯沸し器 や燃焼機器に比べ大きな省エネルギー 効果を得ることができる。 また、フロン系冷媒に比べ、温暖化 係数が 1/1700 の二酸化炭素を冷媒 として使用するなどの配慮もなされて いる。 従来の給湯、自動湯はり機能に加え、 床暖房、浴室換気暖房が可能なタイプ も投入されている。 なお、自然冷媒(CO2)ヒートポン プ給湯機の COP は 3 程度であり、投 入した1の電気エネルギーに対して、 3 の熱エネルギーを得ることができる。 図 I.3.5 自然冷媒(CO2)ヒートポンプ 給湯機システムフロー 図 I.3.6 多機能型自然冷媒(CO2)ヒートポンプ 給湯機の原理図 E -53 ③家庭用燃料電池コージェネレーションシステム 燃料電池は、水の電気分解と逆の反応を利用し、水素と酸素の化 学反応により電気をつくりだすシステムである。 エンジンやタービンなどの駆動部がなく、他の発電装置と比べて 大気汚染の原因となる窒素酸化物や硫黄酸化物をほとんど発生しな い、小規模でも発電効率が高いといった特長があり、環境性に優れ たエネルギーシステムとして実用化が進んでいる。 発電と同時に熱も発生するため、その熱を活用することでエネル ギーの利用効率を高められる。 近年、固体高分子形燃料電池の開発が進んでおり、家庭用分野で は H16 年末から市場投入されている。固体高分子形燃料電池は、 作動温度が低いため安価な材料の適合可能性があり、コストダウン が期待されている。 図 I.3.7 燃料電池の原理 図 I.3.8 家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの構成 図 I.3.9 家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの貯湯・給湯のしくみ E -54 ④ソーラーシステム・太陽熱給湯器 住宅用の一般的なソーラーシステム(集 の設置コストは 90 万円程度、 熱面積 6m2) 太陽熱温水器(集熱面積 3m2)の設置コス トは 30 万円程度であり、太陽熱利用機器 から得られるエネルギーコストを化石燃料 と比較すると、都市ガス、灯油よりは割高 なものの LP ガスよりは安価であり、自然 エネルギー利用システムの中では経済性に 優れている。 また、自然エネルギーの変換利用におい て記載しているように、ソーラーシステム、 太陽熱給湯器はエネルギーの変換効率が高 いなど、多くのメリットを有している。 図 I.3.10 ソーラーシステムのイメージ ⑤ガス温水機器の性能の向上に関する製造事業者等の判断の基準等(抜粋) 平成 12 年 12 月 27 日 経済産業省告示第 434 号 最終改正 平成 18 年 3 月 29 日 経済産業省告示第 57 号 1 判断の基準 エネルギーの使用の合理化に関する法律施行令(昭和 54 年政令第 267 号)第 21 条第 14 号に掲げる ガス温水機器(以下「ガス温水機器」という。)の製造又は輸入の事業を行う者(以下「製造事業者等」 という。)は、目標年度(平成 20 年 4 月 1 日に始まり平成 21 年 3 月 31 日に終わる年度)以降の各年 度において出荷するガス温水機器(ただし、ガス瞬間湯沸器、ガスふろがまにあっては、目標年度(平 成 18 年 4 月 1 日に始まり平成 19 年 3 月 31 日に終わる年度)以降の各年度において国内向けに出荷 するもの)のエネルギー消費効率(3 に定める方法により測定した数値をいう。以下同じ。)を次の表 の左欄に掲げる区分ごとに出荷台数により加重平均した数値が同表の右欄に掲げる数値を下回らな いようにすること。 区 ガス温水機器の種別 通気方式 分 自然通気式 ガス瞬間湯沸器 強制通気式 ガスふろがま (給湯付のもの以外) 自然通気式 強制通気式 自然通気式 給排気方式 区分名 基準エネルギ ー消費効率 開放式 開放式以外のもの 屋外式以外のもの 屋外式 半密閉式又は密閉式(給排気部 が外壁を貫通する位置が半密 閉式と同程度の高さのもの) 密閉式(給排気部が外壁を貫通 する位置が半密閉式と同程度 の高さのもの以外) 屋外式 A B C D 83.5 78.0 80.0 82.0 E 75.5 F 71.0 G H I 76.4 70.8 77.0 J 78.0 K 77.0 L M N O 78.9 76.1 78.8 80.4 P 83.4 Q 83.0 循環方式 自然循環式 自然循環式 強制循環式 自然循環式 ガスふろがま (給湯付のもの) 半密閉式又は密閉式(給排気部 が外壁を貫通する位置が半密 閉式と同程度の高さのもの) 密閉式(給排気部が外壁を貫通 する位置が半密閉式と同程度 の高さのもの以外) 屋外式 自然循環式 強制通気式 強制循環式 屋外式以外のもの 屋外式 ガス暖房機器 (給湯付のもの以外) ガス暖房機器 (給湯付のもの) E -55 (2) 床暖房の省エネルギー(制度の対象) 床暖房の熱源機器をヒートポンプなど高効率機器にすることで、温熱製造に投入される一次エネ ルギー量を削減することができる。 図 I.3.11 ヒートポンプによる床暖房のイメージ 本制度では、ヒートポンプタイプの給湯器のほか、潜熱回収型給湯器や燃料電池、太陽熱給湯器 を床暖房熱源として使用することも、最高点として評価している。 (3) ビルトインエアコンの省エネルギー(制度の対象) ① エアコンディショナーの性能の向上に関する製造事業者等の判断の基準等 平成 21 年 6 月 22 日 経済産業省告示第 213 号 1 判断の基準 (1) エネルギーの使用の合理化に関する法律施行令(昭和54 年政令第267 号)第21 条第2号に掲げる エアコンディショナー(以下「エアコンディショナー」という。)の製造又は輸入を行う者(以下「製造事業 者等」という。)は、目標年度(平成18 年10 月1日に始まり平成19年9月30 日に終わる年度(ただし、 直吹き形で壁掛け形のもの(1の室外機に2以上の室内機を接続するもののうち室内機の運転を個別 制御するものを除く。以下同じ。)のうち冷房能力が4.0 キロワット以下のものにあっては、平成15 年 10 月1日に始まり平成16 年9月30 日に終わる年度))以降の各年度(家庭用品品質表示法施行令 (昭和37 年政令第390 号)別表第3号(七)のエアコンディショナー(以下「家庭用エアコンディショナ ー」という。)にあっては、平成23 年10 月1日に始まり平成24 年3月31 日に終わるまでの期間を年度 とみなした場合における当該年度(ただし、直吹き形で壁掛け形のものにあっては平成21 年10 月1日 に始まり平成22 年3月31 日に終わるまでの期間を年度とみなした場合における当該年度)とし、業務 の用に供するために製造されたエアコンディショナー(以下「業務用エアコンディショナー」という。)にあ っては平成26 年10 月1日に始まり平成27 年3月31 日に終わるまでの期間を年度とみなした場合に おける当該年度までに限る。)において国内向けに出荷するエアコンディショナーの性能について、3 (1)に定める冷暖房平均エネルギー消費効率を第1表の左欄に掲げる区分名毎に出荷台数により加重 して調和平均した値が同表の右欄に掲げる数値を下回らないようにすること。 第一表 略 E -56 (2) 製造事業者等は、目標年度(平成22年4月1日に始まり平成23年3月31日に終わる年度)以降の各 年度において国内向けに出荷するエアコンディショナーのうち直吹き形で壁掛け形のもの(冷房能力が 4.0キロワット以下のものであって、家庭用エアコンディショナーに限る。)にあっては、3(2)に定める通 年エネルギー消費効率を第2表の左欄に掲げる区分名毎に出荷台数により加重して調和平均した値 が同表の右欄に掲げる数値を下回らないようにすること。 第2表 基準エネルギ ー消費効率 区 分 冷房能力 3.2 キロワット以下 室内機の寸法タイプ 寸法規定タイプ 5.8 寸法フリータイプ 6.6 3.2 キロワット超 4.0 キロワット以下 寸法規定タイプ 4.9 寸法フリータイプ 6 備考 「室内機の寸法タイプ」とは、室内機の横幅寸法800 ミリメートル以下かつ高さ295 ミリメートル以 下の機種を寸法規定タイプとし、それ以外を寸法フリータイプとする。 (3) 製造事業者等は、目標年度(平成24年4月1日に始まり平成25 年3月31日に終わる年度)以降の 各年度において国内向けに出荷する家庭用エアコンディショナー(ただし、直吹き形で壁掛け形のもの (冷房能力が4.0キロワット超のものに限る。)にあっては目標年度(平成22年4月1日に始まり平成23 年3月31日に終わる年度)以降の各年度において国内向けに出荷するもの)にあっては、3(2)に定め る通年エネルギー消費効率を第3表の左欄に掲げる区名分毎に出荷台数により加重して調和平均し た値が同表の右欄に掲げる数値を下回らないようにすること。 第3表 基準エネルギ ー消費効率 区 分 ユニットの形態 直吹き形で壁掛け形のもの 直吹き形で壁掛け形以外のも の(マルチタイプのもののうち室 内機の運転を個別制御するも のを除く。) マルチタイプのものであって室 内機の運転を個別制御するも の 適用例 冷房能力 4.0 キロワット超 5.0 キロワット以下 5.0 キロワット超 6.3 キロワット以下 6.3 キロワット超 28.0 キロワット以下 3.2 キロワット以下 3.2 キロワット超 4.0 キロワット以下 4.0 キロワット超 28.0 キロワット以下 5.5 5 4.5 5.2 4.8 4.3 ルームエ アコン 4.0 キロワット以下 4.0 キロワット超 7.1 キロワット以下 7.1 キロワット超 28.0 キロワット以下 5.4 5.4 5.4 1室外機 に複数の 室内機を 接続したも の 備考 「マルチタイプのもの」とは、1の室外機に2以上の室内機を接続するものをいう。 E -57 天井カセッ ト 壁埋め込 み 床置き ②エネルギーを消費する機械器具の小売の事業を行う者が取り組むべき措置(抜粋) 平 成 21 年 5 月 12 日 経 済 産 業 省 告 示 第 181 号 エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和 54 年法律第 49 号)第 86 条の規定を実施するため 、平成 18 年経済産業省告示第 258 号(エネルギーを消費する機械器具の小売の事業を行う者が取 り組むべき措置)の一部を次のように改正し、平成21年5月12日から施行する。 1-1 中「直吹きでウィンド形又はウォール形のもの及び」を削る 1-3 を次の様に改める 1-3 多段階評価基準 日本工業規格 C9901 に基づく省エネルギー基準達成率が、次の表の右欄に該当する機器は、同表の 左欄に掲げる多段階評価とする 多段階評価 ★★★★★ ★★★★ ★★★ ★★ ★ 省エネルギー基準達成率 109パーセント以上 100パーセント以上109パーセント未満 90パーセント以上100パーセント未満 80パーセント以上90パーセント未満 80パーセント未満 (5) その他の省エネルギー(制度の対象外) ①魔法瓶浴槽(第 15 回 省エネ大賞 経済産業大臣賞) 沸かし直しのないように、お湯が温かいうちに続けて入ることで省エネルギーに寄与できる。 しかし、毎日、沸かし直しが無い入浴を行うことは難しい。「魔法びん浴槽」は、2 重断熱構造に より保温性を向上させたものであり、浴槽の熱損失を低減することで省エネルギーが可能になる。 図 I.3.12 2重断熱構造イメージ 図 I.3.13 浴槽の温度低下イメージ 発泡ポリプロピレン製の浴槽側床パン(外断熱層)が基礎から入ってくるシステムバス周りの冷 気を遮断し、浴槽・エプロン・風呂ふたに設けた断熱(内断熱層)が浴槽を保温する構造となって いる。 E -58 魔法びん浴槽 内断熱層(浴槽まわりの断熱材および断熱ふろふた) でおふろの熱を逃がしません。 外断熱層で床パン周囲の冷気をシャットアウト。 図 I.3.14 魔法瓶浴槽 ②全熱交換タイプ 24 時間換気 全熱交換タイプの換気システムとは、室内の汚れた空気を排出するとき、冷暖房の熱を回収し、 取り入れた外気に熱を与え室内に戻す方式である。 熱ロスの低減割合は熱交換器の性能によって差があるため、可能な限り効率の高い全熱交換器を 設置することが省エネルギーの面で有効である。 全熱交換器のイメージおよび、全熱交換タイプ換気システムのイメージを以下に示す。 E -59 室内 図 I.3.16 全熱交換タイプ24時間換気システムのイメージ 熱 屋外 図 I.3.15 熱交換器の概念 ③樹脂サッシ 樹脂サッシは、窓枠を樹脂にすることでアルミサッシに比べ熱損失を低減するとともに、窓枠の 結露等を防止するものである。 外気温度が 0℃のとき、アルミサッシの場合、室内側表面温度が 3℃とされているのに対し、樹 脂サッシのそれは 12℃程度となり、結露防止が可能になる。また、窓ガラスを遮熱・高断熱ガラ スとすることで、年間の冷暖房用途の CO2排出量を約 40%、削減可能となる。 図 I.3.17 樹脂サッシ(LOW-E 複層ガラス)のイメージおよび効果 ④スパイラルタイプ電球型蛍光灯 電球型蛍光灯は、シリカ電球(白熱灯)に比べ 1/4∼1/5 程度の電力消費量となり、さらに長寿 命であるなど省エネルギー、省資源に大きく寄与するものである。 図 I.3.18 シリカ電球と電球型蛍光灯の効率 一方で、蛍光灯は管内の温度が高くなると光束が落ちるため、電球型蛍光灯ではアマルガムを使 用していたが、アマルガムには点灯直後にすぐ明るくならないという欠点があった。スパイラルタ イプの電球型蛍光灯は、発光管頂部の凸部最冷点と熱伝導媒体による放熱技術などによりアマルガ ムを使用しないことが可能となり、点灯直後の明るさを大幅に改善している。 また、スパイラルタイプの電球型蛍光灯は、スパイラル加工技術により全長を低減しつつ放電管 路長を確保し、小型化を実現している。 60W 形 シリカ電球 図 I.3.19 スパイラルタイプ電球型蛍光灯(左)と従来の電球型蛍光灯の光束立ち上がり比較(右) E -60 図 I.3.20 ダウンライトに従来型照明器具を使用した場合と、電球型蛍光灯を使用した場合の比較 ⑤LED 照明 LED チップに順方向の電圧をかけると、LED チップの中を電子と正孔が移動し電流が流れる。 移動の途中で電子と正孔がぶつかると結合(この現象を再結合という)し、再結合された状態では、 電子と正孔がもともと持っていたエネルギーよりも、小さなエネルギーになる。その時に生じた余 分なエネルギーが、光のエネルギーに変換され発光するのが LED の発光原理である。 図 I.3.21 LED照明の原理図 LED は白熱灯や蛍光灯に比べて、長寿命、視認性が良好で屋内外を問わずに幅広く使える(交通 信号機)、小型化が容易で照明器具として自由な設計が可能になる、小電力でも点灯可能で省エネや 環境への配慮にも貢献するなど、多くの長所を有する。 図 I.3.22 LED照明ダウンライト(左)とLEDによる演出の例(右) E -61 《参考文献・出典等》 図 I.3.4 従来型給湯器と潜熱回収型給湯器:東京ガス㈱ 図 I.3.5 自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機システムフロー 図 I.3.6 多機能型自然冷媒(CO2)ヒートポンプ給湯機の原理図:東京電力㈱ 図 I.3.7 燃料電池の原理:東京ガス㈱ 図 I.3.8 家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの構成:東京ガス㈱ 図 I.3.9 家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの貯湯・給湯のしくみ:東京ガス㈱ 図 I.3.10 ソーラーシステムのイメージ:(社)ソーラーシステム振興協会 図 I.3.11 ヒートポンプによる床暖房のイメージ:ダイキン工業㈱(一部改) 図 I.3.12 2重断熱構造イメージ:東陶機器㈱ 図 I.3.13 浴槽の温度低下イメージ:東陶機器㈱ 図 I.3.14 魔法瓶浴槽:東陶機器㈱ 図 I.3.15 熱交換器の概念:三菱電機㈱ 図 I.3.16 全熱交換タイプ24時間換気システムのイメージ:ダイキン工業㈱(一部改) 図 I.3.17 樹脂サッシ(LOW-E 複層ガラス)のイメージおよび効果:㈱シャノン 図 I.3.18 シリカ電球と電球型蛍光灯の効率:松下電器㈱ 図 I.3.19 スパイラルタイプ電球型蛍光灯(左)と従来の電球型蛍光灯の光束立ち上がり比較(右) : 松下電器㈱ 図 I.3.20 ダウンライトに従来型照明器具を使用した場合と、電球型蛍光灯を使用した場合の比 較:松下電器㈱ 図 I.3.21 LED照明の原理図:松下電器㈱ 図 I.3.22 LED照明ダウンライト(左)とLEDによる演出の例(右):松下電器㈱ E -62 7 参考2:住宅以外の用途の省エネルギー例 1.空気調和設備(熱源側) (1) 熱源の効率化 ①高効率熱源機の導入 民生業務部門のエネルギー消費の約半分を冷暖房需要が占めており、エネルギー消費を抑制する ためには冷温熱製造機器の高効率化が重要になる。 冷温熱製造機器の高効率化策としては、高効率ヒートポンプ、高効率冷温水発生器など高効率熱 源の採用や、後述の⑤にあるような未利用エネルギーの活用、次項(2)、(3)に示したようなコージ ェネレーション、蓄熱の導入などがある。 ②熱源及びポンプの台数制御 熱源及びポンプを台数分割することにより、季節毎の熱負荷変動、1 日の熱負荷の時間変化に応 じた運転を行うことができる。 台数制御により負荷に応じた運転を行うことにより、熱源機器やポンプの定格容量に近い効率的 な運転が可能となり、建物全体の冷暖房運転における部分負荷効率を向上することができる。 (具体的事例) 冷水消費量W/㎡ 100 A 80 B 60 A棟 B棟 C棟 C 40 20 9000 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 0 時間数h 図 I.3.23 年間冷熱消費量頻度分布 高層小流量ポンプ 高層ポンプNo2 高層ポンプNo4 運転時間 h/月 2000 1500 高層ポンプNo1 高層ポンプNo3 《メモ》 ポンプは容量により効率が大きく異なる ので、台数分割による効率向上と小型化に よる効率低下に配慮し適切な台数分割を 計画する事が必要である。 1000 500 0 1 2 3 4 5 図 I.3.23は年間の冷熱負荷の消費量 頻度分布を表わしたものであるが、ピー ク負荷(80W/m2)に対する負荷率 50% (40W/m2)での運転時間は 1000 時 間/年、負荷率 25%(20W/m2)での 運転時間は 2000 時間/年となり、負荷 率 50%以下の運転時間が年間総運転時 間の約 80%を占めている。このような 負荷状況の中で図 I.3.24は、台数分割さ れたポンプの年間運転時間を示したもの であるが、小流量ポンプの稼働率が高い ことがわかる。 6 7 8 9 月 10 11 12 図 I.3.24 月別冷水ポンプ運転時間 E -63 100 ポンプ入力比(%) ③変流量システム 熱負荷の変動に応じて、空調機コイルの冷水 量・温水量を 2 方弁により制御し、ポンプの台 数制御またはインバータによる回転数制御によ り、搬送動力を削減させる方式を変流量システ ムという。 部分負荷時にポンプ入力比(消費電力)も比 例して下がるような部分負荷特性のよい方式を 選択する必要がある。図 I.3.25は各種変流量シ ステムのポンプ入力比(消費電力)を示したグ ラフである。②③④の順に水量比に応じてポン プ入力比が低減することがわかる。 80 ① 60 ② 40 ③ ④ 20 0 0 20 40 60 80 100 水量比(%) ①2 方弁制御(ポンプ 1 台) ②2 方弁制御(ポンプ 2 台) ③2 方弁制御(ポンプ 3 台) ④回転数制御 図 I.3.25 変流量システムと ポンプ入力比の関係 ④大温度差送水システム 通常、冷温水の供給温度差は、5℃差程度であるが、送水温度差を 7℃∼10℃の大温度差をとり 送水するシステムである。 送水温度差を大きく取ることにより、ポンプや配管系の容量を小さくし、搬送動力を低減するこ とができる。ただし、空調機コイルの選定においては、列数を増やすなどの対応が必要となる。ま た、空調機と FCU などの空調機器を直列につなぎ、10℃以上の温度差を取るシステムなども一部 に採用事例があり、更に省エネルギー効果が期待できる。 (具体的事例) 外気処理用コイル(井水) 外気処理用コイル(冷水) 加湿器 全熱 交換器 7℃ 冷水蓄熱槽 屋根散水 コンパクトエアハン OA フィルタ 外気 サプライファン 除湿パネル コミュニティースペース 排気 レタンファン 輻射パネル レタンフィルタ レタン空気用コイル(井水) レタン空気用コイル(冷水) 井戸 図 I.3.26 池田電気ビルの外観 18℃ 井戸貯留槽 屋根貯水槽 図 I.3.27 池田電気ビルの大温度差送水 システム この計画では、温度成層型の蓄熱層を採用しており、夏は冷水専用槽、冬は冷温水同時蓄熱単一 成層型とし、これをΔt=9deg、蓄熱効率 95%の大温度差で運転することにより、高効率を達成し ている。 E -64 ⑤利用可能エネルギーの活用 利用可能(未利用)エネルギーとは、従来利 用されていなかった清掃工場や火力発電所の排 熱、地下鉄や変電所などの都市排熱、また海や 河川水、下水処理水などの温度差エネルギーな どをいう。 これらの利用可能エネルギーの活用は、今ま で利用されていなかったエネルギーを有効に活 用し、地域或いは都市というエリア全体でのエ ネルギー利用効率を上げることを目指すもので ある。 この内温度差エネルギーは、河川水、海水、 下水処理水を熱源として利用するシステムであ り、都市部の熱需要地の近くに広範囲に分布す ることから、有効利用が可能である。 《メモ》 利用可能エネルギーの賦存状況とエネルギー活 用先との不整合、また公的施設或いは公共資 源・自然資源を活用することには、諸々の制約 (システム連携費用・道路占有)があり、東京 都では地域冷暖房と組み合わせて実施している ケースが多い。 《メモ》 河川水、海水、下水処理水を熱源水として利用 する場合は、使用する管材、熱交換器の材質或 いは、スケール防止、腐食防止に対し充分な配 慮が必要である。 表 I.3.11 利用可能エネルギーの形態と活用システム 利用可能エネルギー形態 活用システム 温度差エネルギー 河川水・海水等温度差エネルギー利用熱供給 廃棄物エネルギー ごみ焼却熱利用発電・熱供給、汚泥等焼却熱利用発電・熱供給 下水熱エネルギー 群小都市排熱 工場排熱 未処理水・処理水・汚泥等温度差エネルギー利用熱供給 ビル排熱・地下鉄・地下街排熱・変電所・送電線排熱利用熱供給 工場間熱融通、LNG、冷熱利用発電・プロセス用熱供給、工場排熱利用熱供給 表 I.3.12 都区内の利用可能エネルギー潜在賦存量 高温排熱 清掃工場 低温排熱 下水処理水 発電所 変電所・送電線 地下鉄 河川水 海水 14200TJ/年](34 万 kl 石油相当量) 33500[TJ/年] 25000 2900 4200 120000 無限 (具体的事例) 図 I.3.28 読売新聞横浜工場外観 図 I.3.29 読売横浜工場断面図 この計画では、印刷工場という条件から、輪転機より発生する排熱を活かして暖房・給湯を行っ ている。この輪転機の排熱のみで、暖房・給湯に電力は用いていない。排熱回収量は年間で 2972GJ にもなる。 E -65 (具体的事例) 図 I.3.30 三井倉庫箱崎ビル外観 図 I.3.31 三井倉庫箱崎ビル河川熱利用 システム図 河川水や下水処理水などは、大気温度に対して夏季は低く、冬季は高い温度を有するため、空気 熱源のヒートポンプより高い COP が期待できる。この計画において、河川水熱源ヒートポンプは、 このビルを含む箱崎地区 22.7ha の地域冷暖房として、直接ヒートポンプに取り入れる形で活用さ れている。 (2) コージェネレーション ①エンジン・タービンによるコージェネレーション ガスタービンやガスエンジン、またディーゼルエンジンなどを原動機としたコージェネレーショ ンは、発電機を駆動させることにより発電を行うと同時に、原動機の排熱を利用して熱を供給する システムである。 コージェネレーションの主たる効果は以下のようにまとめることができる。 a.省エネルギー性 :排熱を有効に活用することにより1次エネルギーの総合利用効率を向上させ ることができる。 b.自立性・信頼性 :分散電源として自立性が確保でき、商用電力と連携することで電源の安定確 保ができる。 c.経済性 :ピーク時受電電力の低減により契約電力を低減できる。 d.設備の有効利用 :非常用発電設備と兼用利用することで、設備の有効利用ができる。 電力需要 電気 買電 熱需要 廃熱 発電機 原動機 エンジン・タービン 排熱回収 ガス・油 熱 補助熱源 図 I.3.32 コージェネレーション概念図 E -66 《メモ》 電力と熱の需要量に対し、商用電 力とボイラからの供給とコージェ ネレーションからの供給を比較す ると図 I.3.33に示すようにコージ ェネレーションの省エネルギー率 の方が勝る結果となっている。た だし、近年は発電システムの高効 率化が進行すると共に、風力や太 陽光などの再生可能エネルギーを 活用したシステムが導入されるよ うになると総合効率は均衡化して くる。その意味でも、コージェネ レーションの採用に当たっては排 熱を有効に活用することが重要で ある。 [従来のシステム] 発電 システム [コージェネレーション] 電力 30 入力 エネルギー 100 発電所 入力 86 ロス 65% (効率 35%) 入力 エネルギー 142 熱 50 ロス 20% (注)省エネルギー率 142−100 ×100≒30% 142 ボイラ ボイラ 入力 56 ロス 10% (効率 90%) 図 I.3.33 コージェネレーションの省エネルギー性 表 I.3.13 コージェネレーション用原動機の特徴 原 動 機 ガスエンジン ディーゼルエンジン 適用規模 10∼5,000kW 60∼17,000kW 発電効率 28∼40% 30∼45% 総合効率 65∼91% 57∼87% 燃 料 ガス 灯油・A 重油 ●排ガスがクリーン ●発電効率が高い ●熱回収が容易で総合効率が高い 特 長 ●燃料単価が安い ●メンテナンスが容易 (具体的事例) ガスタービン 600∼100,000kW 20∼33% 69∼85% ガス・灯油・A 重油 ●小型軽量、●冷却水不要 ●低振動・低騒音 ●蒸気としての排熱利用 発熱ロス 買電量 4,724,300kwh G1+G7 765,301Nm3/年 RA-1 HEX−5 HEX−6 熱ロス 図 I.3.34 パレール川崎外観 放熱 RHA −1,2 HEX−7 G3 73,028Nm3 電気 7,395,280kwh/年 冷房 9,864GJ/年 暖房 4,456GJ/年 給湯 5,033GJ/年 図 I.3.35 パレール川崎コージェネレーション システム この計画では、ガスエンジン発電機 300kW のものを 2 基採用しており、これらが 1 日 13 時 間ずつ稼動して排出する約 46GJ/日の熱を年平均で 70%の割合で有効利用している。 ②燃料電池によるコージェネレーション 「水素」と「酸素」を化学反応させ、直接「電気」を発電する装置である。燃料電池の燃料とな る「水素」は、天然ガスやLPGなどを改質して作られる。 燃料電池は、大型のものは発電施設として、中規模のものは地域コミュニティやオフィスビルな どに、小規模なものは家庭などに備えつけられて、電気と熱を供給する。移動式のものは、自動車 や船舶などの駆動源やパソコン、携帯電話といった小型機器の電源としても使うことができる。さ まざまな場所で燃料電池が活躍できるよう、さらなる技術開発と普及に向けた標準化などが進めら れている。 E -67 図 I.3.36 燃料電池のしくみ(固体 高分子形、りん酸形の場合) 図 I.3.37 燃料電池システム 表 I.3.14 燃料電池の種類 型式 低温型 固体高分子形(PEFC) りん酸形(PAFC) 電解質 イオン交換膜 伝導イオン 水素イオン(H+) 運転温度 常温∼90℃ 燃料(反応) H2 原燃料 発電効率 (※) 出力規模 りん酸 水素イオン(H+) 200℃ H2 天然ガス、LPG、水素、 天然ガス、LPG、 メタノール、ナフサ、 メタノール、 ナフサ、軽質油 灯油 30∼45% 36∼45% 1∼300kW 50∼1 万 kW 家庭用、自動車、 オンサイト、 用途分野 オンサイト 分散電源 注:発電効率(※)は高位発熱量基準(HHV)による E -68 高温型 溶融炭酸塩形(MCFC) 固体酸化物形(SOFC) 炭酸カリウム/ 安定化ジルコニア 炭酸リチウム 炭酸イオン(CO32-) 酸素イオン(O2-) 650℃ 700∼1,000℃ H2、CO H2、CO 天然ガス、LPG、 天然ガス、LPG、 メタノール、ナフサ、 メタノール、 ナフサ、軽質油、 軽質油、 石炭ガス化ガス 石炭ガス化ガス 45∼60% 40∼60% 250∼数万 kW 分散電源、 大容量発電 ∼数万 kW 小型∼大容量発電 までの可能性 (3) 蓄熱システム 昼間に必要な熱を夜間や低負荷時に蓄熱し、負荷の大きな時間帯に取り出して利用するのが蓄熱 システムであり、水、氷、躯体などが蓄熱体として用いられる。 図 I.3.38 蓄熱システムのイメージ 一般的には、以下のメリットが挙げられる。 多槽連結完全混合型 立型温度成層型 平型温度成層型 a.負荷平準化により熱源容量を小さくできる b.気温の低い夜間に高効率な定格運転ができる c.夜間電力の利用により経済性の向上が図れる また、各建築物において負荷の平準化を図ること は、東京圏全体における電力使用のピークカットに も効果がある。 もぐりぜき型 S字連結管 並列(内部・外部ヘッダ)etc. 図 I.3.39 水蓄熱の方式 ①水蓄熱 建築物基礎の 2 重スラブ内ピット又は一体型のコ ンクリート水槽に水を蓄えて、蓄熱する方法である。 熱容量が大きく、比較的取り扱いが容易であり、 冷凍機効率も高い。蓄熱槽の終端側から水を吸い上 げ、冷凍機で冷却し、始端側から冷水として蓄熱す る(温水蓄熱では逆)。 スタティック型 アイスオンコイル型 カプセル内製氷型 etc. ダイナミック型 間接熱交換式 冷媒直接熱交換式 シャーベット状製氷 氷片状製氷 etc. シャーベット状 図 I.3.40 氷蓄熱の方式 ②氷蓄熱 地下ピット水槽内又は水槽ユニット内に冷熱を氷として蓄熱する方式である。 氷から水への融解潜熱(約 335kJ/kg)が利用できるため、水蓄熱に比べ格段に小さな蓄熱槽で 大きな冷熱を蓄えることが可能である。 製氷方式により、製・蓄氷時の様態が静的に行われ、生成した氷が製氷面に固着しているスタテ ィック型と、製氷・蓄氷が動的に行われ、生成した氷が製氷面を離れて蓄氷されるダイナミック型 の 2 方式に大別できる。 ブライン (夏) 空調機 氷蓄熱槽 過冷却器 氷 製氷時 ブライン ブラインポンプ 水 氷 解氷時 図 I.3.41 氷蓄熱システムの例 (アイスオンコイル型) 解除・分配板 HP ブラインクーラー フィルタ 氷 空調機 HP 水 ブライン 温水(冬) 過冷却アイス式 氷蓄熱槽 図 I.3.42 氷蓄熱システムの例 (ダイナミック型) E -69 蓄熱システムは、中央熱源方式の施設だけでなく、個別分散熱源を採用した建築物にも適用可能 である。 図 I.3.43 中央熱源、個別分散熱源への蓄熱適用例 《参考文献・出典等》 図 I.3.23 年間冷熱消費量頻度分布:都内超高層オフィスビルの例より 図 I.3.24 月別冷水ポンプ運転時間:都内超高層オフィスビルの例より 図 I.3.25 変流量システムとポンプ入力比の関係:建築設備の省エネルギー設計手法、日本建築設 備士協会 図 I.3.26 池田電気ビルの外観:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.27 池田電気ビルの大温度差送水システム:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省 エネルギー機構 表 I.3.11 利用可能エネルギーの形態と活用システム:未利用エネルギー活用ブック、(財)新エ ネルギー・産業技術総合開発機構 表 I.3.12 都区内の利用可能エネルギー潜在賦存量:私達のエネルギー、内山洋司 表 I.3.13 コージェネレーション用原動機の特徴:日本コージェネレーションセンター 表 I.3.14 燃料電池の種類:燃料電池導入ガイドブック、(独立行政法人)新エネルギー・産業技 術総合開発機構(NEDO) 図 I.3.28 読売新聞横浜工場外観:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.29 読売横浜工場断面図:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.30 三井倉庫箱崎ビル外観:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.31 三井倉庫箱崎ビル河川熱利用システム図:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・ 省エネルギー機構 図 I.3.32 コージェネレーション概念図 図 I.3.33 コージェネレーションの省エネルギー性:環境白書、環境省編 図 I.3.34 パレール川崎外観:省エネルギー建築ガイド、 (財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.35 パレール川崎コージェネレーションシステム:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環 境・省エネルギー機構 図 I.3.36 燃料電池のしくみ(固体高分子形、りん酸形の場合) :東京ガス㈱ 図 I.3.37 燃料電池システム:東京ガス㈱ 図 I.3.38 蓄熱システムのイメージ:(社)日本冷凍空調工業会 図 I.3.39 水蓄熱の方式:グリーン庁舎計画指針および同解説、(社)公共建築協会 図 I.3.40 氷蓄熱の方式:グリーン庁舎計画指針および同解説、(社)公共建築協会 図 I.3.41 氷蓄熱システムの例(アイスオンコイル型):グリーン庁舎計画指針および同解説、 (社) 公共建築協会 図 I.3.42 氷蓄熱システムの例(ダイナミック型):グリーン庁舎計画指針および同解説、(社)公共 建築協会 図 I.3.43 中央熱源、個別分散熱源への蓄熱適用例:東京電力㈱ E -70 2.空気調和設備(二次側) (1) 熱負荷低減の手法 ①全熱交換器 全熱交換器は、空調用の外気を取り入れる際、室内空気の余剰排気と熱交換(顕熱及び潜熱)さ せる装置をいう。 外気負荷を減らすことができるため省エネルギーには有効な熱回収装置である。形式には回転式 全熱交換器、固定式全熱交換器、ヒートパイプ型顕熱交換器の 3 種類がある。 それぞれの特徴を解説すると下記の通りである。 a.回転式全熱交換器: 大型かつ大容量で、中規模・大規模建物の空調用に用いられることが多い。 最近では、全熱交換器に送風機を組み入れた全熱交換器ユニットや空調機 と一体化したシステムエアハンなどがよく用いられる。 b.固定式全熱交換器: 小∼中容量で、小型の空調ユニットや換気扇に組み込まれたものなどが、 分散型ヒートポンプ空調システムなどと組み合わせて用いられる。 c.ヒートパイプ式顕熱交換器:冷媒を管内に密封したヒートパイプを利用したもので、高温排熱 や多湿空気の排熱回収に適しているが高価である。 回転式全熱交換器 固定式全熱交換器 排気 ヒートパイプ式顕熱交換器 給気 冷気 排気 外気 給気 i1 i2 気体 冷気 i1 外気 排気 夏期 i3 液体 i2 透湿性 仕切り板 i3 i3 間隔板 (クラフト紙) 給気 i2 暖気 室内給気 熱交後の 状態点 排気 排気 冬期 暖気 i1 屋外排気 熱交後の 状態点 外気 DB 図 I.3.44 全熱交換器の主な種類 ②外気冷房 室内発熱の大きい オフィスビルや人員 密度の高い商業店 舗・劇場などで中間 期から冬季の低温外 気をそのまま導入し、 冷房として利用する 方式である。 EA 図 I.3.45 全熱交換器内での 空気の状態線図 RA 空調機 EA 空調機 SA OA RA OA OA 人員に必要な外気量のみ取り入れ 循環空気全てを外気とする 一般冷房時 外気冷房時 EA ※ 矢印の太さは風量を示す。 OA:外気、SA:空調空気、RA:還気、EA:排気 図 I.3.46 外気冷房概念図 近年の OA 化されたオフィスでは、年間を通じて室内は冷房傾向にあるため、外気冷房は有効な 手法である。外気冷房の効果は、地域性と室内温湿度条件の緩和の程度、内部発熱密度等により影 響されるので、有効性の確認が必要である。 E -71 絶 対 湿 度 34(443MJ/㎡ a) 外気冷房 ミニマム OA 一定 −34(375MJ/㎡ a) 因子水準 実験平均値 (409MJ/㎡ a) 夏 期 25℃、55%RH 中間期 24℃、50%RH 46.9 冬 期 22℃、45%RH 20.9 8.8 ミニマム OA 一定 夏 期 27℃、65%RH 中間期 24℃、50%RH 冬 期 20℃、35%RH 因子水準 外気冷房 92.5 1 次エネルギー消費量 (MJ/㎡ a) 実験平均値 (409MJ/㎡ a) 1 次エネルギー消費量 (MJ/㎡ a) 冷水コイルレベル熱消費量 (MJ/㎡ a) 外気冷房の効果に関するケーススタディー 30W/㎡ 外気冷房 −1.3 ミニマム OA 一定 −24.7 −76.6 20W/㎡ 実験平均値 (409MJ/㎡・a) −66.6 因子水準 図 I.3.47 外気冷房効果 上に示す例は、東京の事務所ビルを対象に実験計画法の手法により外気冷房効果を解析推定した 例である。左のグラフによれば、外気冷房効果は 68MJ/m2a(約 16.6%)であることが分かる。 中央のグラフは、室内条件を緩和すると約 20%効果が増し、また右のグラフは照明密度が高いと 約 16%効果が増すことを示唆している。 ③適正外気量制御 実在人員の必要外気量に合わせ、取入れ外気量を適正に制御するシステムである。 常時一定の設計外気量を取り入れていると、実在人員の必要量よりも過剰に外気を取り入れてい る場合が多い。省エネルギーの観点からは、取入れ外気量の抑制は効果が大きいので、室内炭酸ガ ス濃度・室内浮遊粉塵濃度等が、室内環境を悪化させない範囲で、できるだけ外気量をコントロー ルすることが望ましい。 システムとしては容易に取入れ外気量を調整できる必要があり、手動による場合と CO2濃度検知 システムと連動させて自動で行う場合があり、最小外気取り入れ制御ともいう。 図 I.3.48 CO2濃度による外気量制御の例 E -72 外気量制御の効果に関するケーススタディ ×103 15 1,390 200(14.4%) 416(29.9%) 月間冷房負荷(kcal/月) 1,190 10 974 782 外気負荷 582 5 366 0 固定 手動 月間暖房負荷(kcal/月) 全負荷 ×103 10 230(35.3%) 430(66.1%) 626 5 421 396 221 196 0 自動 651 全負荷 外気負荷 外気量制御による 月間冷房負荷の変化(8 月) 固定 手動 場所 :東京 用途 :デパート 計算時期:2月及び8月 計算条件: 固定 :設計外気量 手動:日曜祭日=設計外気量 平日=設計外気量の 1/2 自動:炭 酸 ガ ス 濃 度 0.08 ∼ 0.1%に制御 自動 外気量制御による 月間暖房負荷の変化(2 月) 図 I.3.49 外気量制御の効果試算例 上に東京都内のデパートにおける外気量制御の効果試算例を示す。固定は、常時設計外気量を取 り入れた場合であり、手動は、日曜祭日は設計外気量を、平日は設計外気量の 1/2 を取り入れた場 合を示す。更に自動は炭酸ガス濃度検知によって 0.08%∼0.1%との間で外気ダンパ開度を比例制 御する場合を示す。この場合、自動による外気量制御が最も効果的であり、固定に比べて夏期には 30%程度、冬期には 66%程度の全負荷の削減が可能となる。 (2) 送風動力低減の手法 ①変風量(VAV)方式 送風温度を一定とし、吹出し風量を変えることで室内発熱に応じた空調を行う方法である。 定風量(CAV)方式は、空調機単位で一定量の空調送風を行い、室内温度サーモにより送風温度 を可変するシステムである。そのため送風機は常に全負荷運転であり、また冷暖房は部分負荷で運 転を行うため、システム全体としてのエネルギー効率が低下する。したがって室毎あるいはゾーン 毎に変風量装置を設置して、風量をコントロールすることで、搬送エネルギーを低減し、ゾーン毎 の個別制御によりきめ細かな空調が可能になり、空調システム全体でエネルギー消費の低減が可能 になる。 RA ルーム サーモスタット T T T MD2 ターミナル ユニット MD1 SA P OA 空調機 図 I.3.50 VAV方式の概念図 E -73 《メモ》 今日 VAV 方式が広く普及したの は、風量計測機能や制御性の向上な ど各種の高機能な VAV ユニットが 開発され一般化したことによると ころが大きい。ただし VAV は温度 により風量をコントロールするた め、OA 機器発熱の影響を受け、負 荷が偏在する場合には換気量不足 の部分が生じるケースもある。図 I.3.50に示した例は、ペアユニット 空調方式といわれ、対人用に一定の 換気量を確保する 1 次空調機と発 熱処理用の二次空調機を組み合わ せたシステムである。 (具体的事例) エアフロー排気ファン 排気 CAV 切り替えダンパ VAV VAV CAV 排気 SA1 外気 ミキシングボックス 一次空調機 INV エアフローウインド SA2 室内発熱処理二次空調機 インテリアゾーン ペリメー タゾーン 図 I.3.52 高崎信用金庫新本店 変風量空調システム図 図 I.3.51 高崎信用金庫新本店外観 この計画では、外気処理を中心とした一次空調機からの定風量給気と、内部発熱とペリメータの 冷房負荷を処理する二次空調機からの変風量空気を混合している。 ②大温度差送風 通常よりも送風温度差を大きく取る(低温送 風する)ことで、同じ室内顕熱負荷の場合でも、 必要送風量を低減することができる方式である。 必要送風量が少なくなることは、搬送動力の 低減のみならず、ダクトや空調機などの装置容 量が小さくなり、空調システム全体としてエネ ルギー消費を低減できる等のメリットがある。 《メモ》 大温度差送風の採用に当たっては、下記の点に 留意が必要である。 • 送風量が少なくなるため、室内温度分布、気 流分布が悪くならないよう考慮する。 • 換気回数が減少するため、換気による除塵効 果に影響を及ぼさないよう考慮する。 • 低温送風のため過除湿となり、冷房負荷が増 加する。この増加分と搬送動力低減による省 エネルギーとのバランスを考慮した最適送風 温度を決定する必要がある。 ③タスク&アンビエント空調 基本的な環境形成のための全体空調(アンビ エント空調)と局所的な OA 発熱や人員密度の 高い部分に個別的に設置する空調(タスク空調) を組み合わせる空調方式をいう。 近年のオフィスは、OA 機器の導入により高発熱への対応と 24 時間個別空調対応がテーマであ るとともにワーカーの業務環境の快適性への配慮も欠かせない課題となっている。このようなオフ ィスにおいて、基本的な環境形成を図るアンビエント空調の他に冷暖房や換気の必要な個所だけに 個別的に対応できるタスク空調を設置することで、効率的な空調を実現し、エネルギー消費の削減 が可能となる。 図 I.3.53はパーティションを経由して組み込まれた吹出し口によって、机まわりの局所空調を行 う方式の例である。 タスク空調給気 吹出しノズル (11mmφ×6 個) パーティション 二次空気 (50CMH) 床吹出し空気チャンバー 床面 図 I.3.53 床吹出方式とパーティション を利用したタスク空調給気の例 ④居住域空調 一次空気 ダクト (25CMH) 図 I.3.54 座席空調の事例 E -74 大空間のアトリウムやエントランスロビーあるいは高天井のオフィスなどにおいて、人間が活動 する居住域を主体に空調することを居住域空調という。 大空間のアトリウムで空間全体を空調すると大変なエネルギー消費となる。そこで、人間の活動 する居住域のみを空調し、省エネルギー化を図る手法である。居住域空調の主要な方式として、床 吹出し方式、床放射パネル方式、ディスプレイスメント空調方式、また劇場やスタジアムなどにお ける座席空調方式などがある。 (具体的事例) 図 I.3.55 サッポロファクトリー 居住域空調 図 I.3.56 サッポロファクトリー アトリウム内温度分布 この計画では、容積 10 万 m3 のアトリウム空間全体を空調するのではなく、居住域である低層 ゾーンのみ空調を行っている。夏は空調機による冷房、冬は空調機と床暖房による暖房を実施して いる。 ⑤放射冷暖房 対流型空調システムは、室内空気温度を制御することにより、主として対流要素をコントロール する方式であるが、放射冷暖房方式は、室内壁面温度を直接加熱または冷却することにより放射要 素をコントロールし快適感を得る方式である。 天井面のパネルにパイプを密着させ冷温水を通水するタイプを天井放射方式という。また床面や 壁面に直接パイプを埋設する方式やフリーアクセスの床下に空調空気を通風して床面温度を制御す るタイプを床放射方式という。 図 I.3.57は、快適感(PMV)が同一となる室温と平均放射温度(MRT)の関係を示したもので ある。例えば夏期の室内設定温度を 26℃から 27℃まで 1℃上げても平均放射温度を約 2℃下げる ことにより同等の温熱感を得ることができる。このように放射冷暖房方式は、水をエネルギー搬送 媒体に使用するため、通常の空調方式よりも搬送動力を低減できる。また、対流方式の冷暖房に比 べ、室内の上下温度差が少ないため、快適性に優れる特徴がある。 平均放射温度[℃] 40 系列1 30 22.4℃ 20.8 事務作業 代謝量:1.0met 着衣量:0.9clo 20 10 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 室温[℃] 予想平均申告(PMV)=0とする室温と平均放射温度の関係 図 I.3.57 室温と平均放射温度との関係 E -75 《メモ》 放射冷暖房方式は、天井・床など全面に 放射面を要するため、設備費がアップす る傾向にある。また放射冷房方式の場合 は、放射面での結露を防止するため露点 温度制御を併用する必要がある。 また放射パネル設計は、建築計画と密接 に関係するため、充分に調整を図ること が必要である。 (3) 制御方式 ①最適起動停止 最適起動は、前日の運転実績や外気温度などの状況から、始業時間に合わせ最適な予冷・予熱の 起動時間を予測し運転を行う制御である。また最適停止は、終業時間に設定温度を保てるような時 間を予測し、省エネルギーの目的で早めに空調の運転を停止する制御である。 空調の予冷・予熱の開始時刻を定時で繰り返すと、余分な冷温熱の消費や搬送動力の無駄につな がる。 ②予冷予熱時の外気遮断 空調設備の稼動を開始してから、室温が設定値になるまでの予冷予熱時間帯には、室内にはほと んど人が居ないと考え、 (居たとしても人員密度は低く 1 人当たりの気積は充分に確保されている と判断)この間、外気取入れを中止する制御方法である。 図 I.3.58は、予冷・予熱時に外気を導入した場合の冷暖房負荷の大きさを示している。この図か ら理解できるように外気導入した場合は、予冷予熱時が最大負荷となり、空調機容量や熱源容量が 過大となり経済的に不利になるばかりでなく、外気負荷処理分のエネルギーが浪費されてしまう。 したがって、夏季でも夜間外気温度が低い場合や中間期などの外気冷房効果のある場合を除いては、 予冷・予熱時には外気を取り入れないようにする制御を行う方が省エネルギーとなる。 150 150 予熱時の外気負荷 予熱時の外気負荷 全負荷 (kcal/㎡・h) (kcal/㎡・h) 50 0 全負荷 100 100 50 0 8 10 12 14 時刻(h) (a)冷房負荷 16 18 8 10 12 14 時刻(h) (b)暖房負荷 16 図 I.3.58 1 日の冷暖房負荷の変化と予冷予熱時の外気負荷の影響 E -76 18 3.機械換気設備 (1) 換気エネルギー低減の手法 ①局所換気 居室に燃焼器具や複写機などの空気汚染源が設置されている場合、部屋全体を換気せずに汚染物 質が室内に拡散する前に局所換気により除去する換気方式をいう。 室全体の換気方式に比べ、換気効率が高く、換気動力を低減することが可能である。 ②厨房の高効率換気 厨房換気においては、臭気・熱・湿気等への対応から煙・油脂・水蒸気が多く発生する調理器具 には二重フード等の高効率局所換気方式を適用するのが有効である。特にガスレンジなどの燃焼器 具の場合は排熱と共に多量の燃焼用空気を必要とするため、排気のみのシステムでは、室内の空調 空気を多量に排出することになり、エネルギー損失が大きいため、外気を直接供給できる二重フー ドシステムなどが有効である。 臭気吸込み口詳細 外気送風機による給気 二重フード 臭気 図 I.3.59 局所排気付き大便器の例 図 I.3.60 二重フードシステムの例 ③ダクトレス換気システム ノズルからの吹き出し噴流による空気流動と誘引による換気を行う方式。 ダクトの空気抵抗が低減され、搬送動力が減るので省エネ効果がある。駐車場、大空間などの換 気に適する。 ④換気ダクト静圧の低圧化 ダクト内の圧力を下げることで、ダクトの空気抵抗が低減され換気動力を低減することができる。 特に 24 時間系統などの終日換気部分においては、運転時間が長時間にわたるための換気動力の 低減は効果的である。 (2) 制御方式 ①温度センサー制御 電気室やエレベーター機械室などの発熱室において、温度センサーにより一定温度を上回らない よう換気量を制御するシステムをいう。 発熱量に応じて換気量を調整するため、換気のための搬送動力を低減することができる。 ②CO(一酸化炭素)制御 駐車場などにおいて室内の CO 濃度を検出する(排気ダクトの空気を代表的に検出する場合が多 い)ことで、換気量を制御するシステムである。 駐車場の CO は主に車の走行時とアイドリング時に発生するものであり、入出庫台数などの制御 だけでは環境が悪化するケースもある。そこで、排気側の空気中の CO 濃度を検出し、風量を制御 することで換気動力を削減する方式が有効である。 E -77 ③中央監視スケジュール制御 建物の運営に当って、使用時間の明確な室については、あらかじめ中央監視でスケジュールを組 んでおき、機械換気設備の発停を行う制御である。 機械換気は一般に廻し放しにしていることが多いが、使用状態を予測し、換気設備の発停制御や 台数制御運転などを行うことで省エネルギー化が可能である。 《参考文献・出典等》 図 I.3.44 全熱交換器の主な種類:デザイナーのための建築設備チェックリスト2000版、建築文 化10月号臨時増刊、(株)彰国社 図 I.3.45 全熱交換器内での空気の状態線図:建築設備の省エネルギー設計手法、日本建築設備士 協会、(社)建築設備技術者協会 図 I.3.46 外気冷房概念図:しずおかエコロジー建築設計指針、静岡県 図 I.3.48 CO2濃度による外気量制御の例:建築設備の省エネルギー設計手法、日本建築設備士協 会、(社)建築設備技術者協会 図 I.3.49 外気量制御の効果試算例:山武ビルシステム(株) 図 I.3.50 VAV方式の概念図:建築設備の省エネルギー設計手法、日本建築設備士協会、(社)建築 設備技術者協会 図 I.3.51 高崎信用金庫新本店外観 図 I.3.52 高崎信用金庫新本店 変風量空調システム図:建築設備の省エネルギー設計手法、日本 建築設備士協会、(社)建築設備技術者協会 図 I.3.53 床吹出方式とパーティションを利用したタスク空調給気の例:省エネルギー建築ガイド、 (財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.54 座席空調の事例:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.55 サッポロファクトリー居住域空調:デザイナーのための建築設備チェックリスト2000 版、建築文化10月号臨時増刊、(株)彰国社 図 I.3.56 サッポロファクトリーアトリウム内温度分布:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環 境・省エネルギー機構 図 I.3.57 室温と平均放射温度との関係:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギ ー機構 図 I.3.58 1 日の冷暖房負荷の変化と予冷予熱時の外気負荷の影響 図 I.3.59 局所排気付き大便器の例 :建築設備の省エネルギー設計手法、日本建築設備士協会、(社)建築設備技術者協会 図 I.3.60 二重フードシステムの例:グリーン庁舎計画指針および同解説、(社)公共建築協会 E -78 4.照明設備 (1) 照明設備に関わる省エネ方法 ①高効率光源 高効率光源の代表的なものとして、Hf 蛍光灯、コンパクト蛍光灯等があげられる。 Hf 蛍光灯は数十 kHz の高周波で発光効率が最高になる管径、ガス圧、電極などが設計された高 周波専用の蛍光ランプであり、一般型蛍光灯に比べ高効率である。 コンパクト蛍光灯は、ガラス管を 2 重∼4 重に折り曲げ小型コンパクト化を図った形状の蛍光灯 で、ランプの大きさは白熱電球に近い。最近では、高効率コンパクト蛍光灯として 6 重のものもあ る。コンパクト蛍光灯は、電球と比べて、同一光束で約 1/3 の電力であり、かつ 6∼10 倍の長寿 命である。 表 I.3.15 主な光源とその特性 光源の種類 白熱電球一般照明用 (白色塗装) 電球型蛍光ランプ球形・ 円筒形(電球色) 直管型ラピッドスタート蛍光ラン プ 3 波長形(昼白色) 直管型蛍光ランプ高周波点灯専用 型(Hf)(昼白色) 全光束※1 [lm] ランプ効率 [lm/W] 54 810 15 15 13 810 62 62 36 3450 95 88 45 4950 110 108 定格電力[W] 総合効率※2 [lm/W] ※1 白熱電球は0時間値、その他は 100 時間値の全光束を示す。(製造メーカーのカタログによる) ※2 蛍光ランプは安定器損失を含めた効率を示す。安定器は一般的な2灯用 200V 安定器とした。 ②省電力型安定器 安定器には磁気回路式と電子回路式がある。 電子回路式の一つである高周波点灯専用型蛍光灯電子安定器は、Hf 蛍光灯の電気特性を生かすよ う設計されており、Hf 蛍光灯と専用安定器を組み合わせることにより省電力が期待できる。用途に 応じて高出力型、段調光型、フル調光型などがある。 ③高効率照明器具 ルーバー、反射鏡等により光源の効率を高めた照明器 具をいう。 スポットライトにはダイクロイックリフレクタ、蛍光 灯器具用ルーバーには高効率ルーバーや OCL ルーバー のような増反射処理アルミニウムを利用したものがある。 図 I.3.61 蛍光灯器具用ルーバー ④タスクアンドアンビエント照明 基本的な環境条件を満足させるアンビエント照明とデスクスタンドなどで作業位置とその近傍を 照明するタスク(局部)照明を組み合わせた照明方式である。 アンビエント照明は、照明器具を天井に配置する直接照明方式、吊り下げ、床置き、什器利用等 の間接照明方式、両者の兼用方式などがあり、光源は蛍光灯、HID などが利用される。タスク照明 は、オフィスファニチャーが採用された場合は、什器一体型タイプの場合が多く、光源は主として 蛍光灯が用いられる。手元スイッチや調光スイッチも必要である。 在室者に合わせて必要な部分のみの照明を行うことで、照明の量・質を満足しつつ省エネルギー が可能な照明方式である。 E -79 (a) 全般照明方式 (b) タスク・アンビエント照明方式(直接全般照明を用いた場合) 図 I.3.62 全般照明方式とタスクアンドアンビエント照明方式 (具体的事例) 図 I.3.63 大林組技術研究所 外観 図 I.3.64 大林組技術研究所のタスク アンドアンビエント照明方式の例 この計画では、タスクアンドアンビエント照明を採用することにより、全体の照明設備容量が従 来の 2/3 で済み、不在者のタスクライトを消灯することによって、更に照明用のエネルギーを節約 することができる。 (2) 制御方法 ①タイムスケジュール制御 設定した日スケジュール、週間スケジュール、年間スケジュール等によって、照明設備を点滅、 調光する制御方式である。 始業前、昼休み、終業後などの時間帯に応じて、対象エリアに必要な照度などを確保し、余分な 照明を消灯・調光することで、大幅な省電力が可能になるケースが多い。 ②在室検知制御 赤外センサーや超音波センサーによって人が在室しているかどうかを感知し、自動的に照明の点 滅を行う制御方式である。 最近ではこのような人感センサーが 照明器具に組み込まれた器具も開発さ れて、在室検知制御が採用しやすくな 人を検知して 人を検知 不在時調光 不在時消灯 [100%]点灯 っている。この在室検知制御は、共用 して点灯 部分の照明やロッカールーム、応接室、 会議室など、使用が不定期な部屋、中 でも便所、給湯室などの利用頻度が低 (b) 人感センサ付段調光タイプ (a) 人感センサ付点滅タイプ く、不特定多数の人が利用する場所の 図 I.3.65 在室検知制御の概念図 照明の制御に適している。 E -80 ③適正照度調整 ランプの初期照度は、経時変化による劣化や器具の汚れによって照度低下を見込んで、設計照度 より高く設定されている。適正照度調整とは、照度センサーとの組み合わせにより高く設定された 初期照度を調整することで、適正な照度を確保しつつ省電力を図る制御方式である。 100% 100% 余分な明るさ 70% 保守率 初期照度 70% 設計照度 節約したエネルギー 0 12,000 時間 0 12,000 時間 一般器具 初期照度補正運用 図 I.3.66 初期照度補正概念図 ④昼光連動制御 窓からの昼光(太陽光)の入射量に応じて照明を調整し、(昼光+人口光)で必要な照度を確保し ようとする制御方式である。 工場や体育館、多目的ドームのような大空間建物、オフィスなどで採用されることが多い。制御 には、点滅、段調光、連続調光などの方式がある。 (具体的事例) 図 I.3.67 東京電力技術開発センター 図 I.3.68 東京電力技術開発センター 昼光連動制御の例 この計画では、窓際二列の照明は自動制御ブラインドと連動し、室内が所定の明るさになるよう にインバータによって 2%∼100%まで連続的に調光される。 《参考文献・出典等》 表 I.3.15 主な光源とその特性:松下電工㈱ 図 I.3.61 蛍光灯器具用ルーバー:松下電工(株)カタログ 図 I.3.62 全般照明方式とタスクアンドアンビエント照明方式:建築環境・省エネルギー講習会テ キスト、(財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.63 大林組技術研究所外観 図 I.3.64 大林組技術研究所のタスクアンドアンビエント照明方式の例:省エネルギー建築ガイド、 (財)建築環境・省エネルギー機構 図 I.3.65 在室検知制御の概念図:グリーン庁舎計画指針および同解説、(社)公共建築協会 図 I.3.66 初期照度補正概念図:照明学会誌、 (社)照明学会 図 I.3.67 東京電力技術開発センター:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環境・省エネルギー 機構 図 I.3.68 東京電力技術開発センター昼光連動制御の例:省エネルギー建築ガイド、(財)建築環 境・省エネルギー機構 E -81 I.エネルギーの使用の合理化 I.4 地域における省エネルギー 1 I.4.1 地域冷暖房等 指針策定の背景 近年、個別に計画される熱源システムにおいては、個別ヒートポンプシステムや蓄熱システム、ま た省エネルギー型冷温水機やコージェネレーションシステムなどシステムの高効率化や個別分散化、 また排ガス対策の充実なども進歩しており、環境保全と省エネルギー化に向けた熱源システムの選 択肢は拡大している。 地域冷暖房は、一定の地域内にある複数の建物の冷暖房用熱源機器を地域冷暖房プラントに集約化 して、熱源システムの高効率化と地域の環境保全を図るものである。地域内建築物の運転時間の相 違(ピークカット効果) 、負荷特性の違い(排熱利用効果)などは集中化することにより、高効率運 転が可能になる。また清掃工場排熱、河川水の熱、下水熱、地下鉄排熱などの未利用エネルギーな どは、個別建物では活用しづらいが、地域冷暖房の場合は導入が可能である。 東京都においては、昭和45年11月に東京都公害防止条例に地域冷暖房計画に関する規定を設け 運用を図ってきており、地域冷暖房区域は76区域となっている(平成21年12月末現在)。 平成20年7月の環境確保条例の改正により、「東京都地域冷暖房推進に関する指導要綱」を再構 築し、「地域におけるエネルギー有効利用に関する計画制度」を新たに創設した。 平成22年1月からは、大規模な開発(延床面積5万㎡超)においては、特定開発事業者に対し、 利用可能(未利用)エネルギーや地域冷暖房等の導入検討義務を課すことするとともに、地域冷暖 房の区域指定の要件として熱需要、エネルギー効率、排出される窒素酸化物の量について基準を設 けている。 (詳細は「地域におけるエネルギー有効利用に関する計画制度ガイドライン」を参照のこと。) 地 域 冷 暖 房 の 社 会 的 効 果 環境保全 エネルギー 都市生活 の 推 進 の有効利用 環境の向上 未利用エネルギーの活用 高効率型熱源システムの 活用 都市景観の向上 エネルギーの安定供給 スペースの有効利用 大気汚染防止 温暖化の防止 省エネルギーの実現 都市防災へ の 寄 与 安全性の確保 非常時のエネルギーの 安定供給 非常時の消防、 生活用水の確保 図 I.4.1 地域冷暖房の社会的効果 2 配慮すべき事項 【一定の地域において、排出される窒素酸化物の量の削減等の環境保全効果及びエネルギーの有効 利用のために行う次に掲げる事項】 ① 地域冷暖房区域(条例第17条の18第1項に規定する地域冷暖房区域、都民の健康と安全を 確保する環境に関する条例の一部を改正する条例(平成 20 年東京都条例第 93 号)附則第9項 の規定によりみなされた地域冷暖房区域及び都民の健康と安全を確保する環境に関する条例施 行規則の一部を改正する規則(平成 21 年東京都規則第 126 号)附則第2項の規定によりみなさ れた地域エネルギー供給計画書に記載するエネルギーを供給する区域をいう。以下同じ。)にお ける熱の受入に係る事項 ② ①のほか、複数の建築物間でエネルギーの効率的利用を行うシステムの構築に係る事項 E -82 ③ ①及び②のほか、次に掲げる有効利用を図ることが可能なエネルギーを利用したシステムの構 築に係る事項 ア 下水処理水の熱 イ 建築物の空気調和に伴い排出される熱 ウ 地下式構造の鉄道から排出される熱 エ その他有効利用を図ることが可能なエネルギー 3 評価基準と適用用途 住宅以外の用途 段階2 次に掲げる事項のいずれかを行っていること。 ① 地域冷暖房区域に係る地域エネルギー供給事業者からの熱供給を受け入れること。 ② 複数の建築物間で熱のエネルギーの効率的利用を行うシステムを構築すること。 ③ ①及び②のほか、当該建築物の空気調和に伴い排出される熱を利用するシステムを構築すること。 段階3 次に掲げる(1)又は(2)の事項のいずれかに適合すること。 (1) 次の①から④までに掲げる場合の区分に応じ、当該①から④までに定める熱のエネルギー効率の 値(規則別表第1の4備考1に規定する熱のエネルギー効率の値をいう。以下同じ。)が0.90 (熱供給媒体に蒸気が含まれている場合にあっては、0.85)以上であること。 ① 熱供給を受け入れる熱供給プラントの新設、増設又は更新(熱源機器のみの更新を除く。以下 ③及び④において同じ。)の日の1年後の日(以下「供給起算日」という。)が、建築物環境計画 書の提出日の属する年度の前年度(当該提出日において条例第 17 条の 15 の規定による地域エ ネルギー供給実績報告書が提出されていない場合にあっては前々年度。以下「提出前年度等」と いう。 )までの連続する3箇年度の初日より前の日である場合 当該連続する3箇年度の供給実績 による熱のエネルギー効率の値の平均 ② 供給起算日が、提出前年度等までの連続する2箇年度の初日より前の日である場合(①の場合 を除く。 ) 次のいずれかの熱のエネルギー効率の値 ア 当該連続する2箇年度の供給実績による熱のエネルギー効率の値の平均 イ 提出前年度等の供給実績による熱のエネルギー効率の値 ③ 供給起算日が、提出前年度等の初日より前の日である場合(①及び②の場合を除く。 ) 次の いずれかの熱のエネルギー効率の値 ア 当該提出前年度等の供給実績による熱のエネルギー効率の値 イ 条例第17条の11第1項に規定する地域エネルギー供給計画書(都民の健康と安全を確保 する環境に関する条例施行規則の一部を改正する規則(平成 21 年東京都規則第126号)附 則第4項の規定により地域エネルギー供給計画書とみなされた事業計画の案を含む。以下「地 域エネルギー供給計画書」という。 )に記載する供給する熱のエネルギー効率の値 ウ 熱供給プラントの増設又は更新があった場合にあっては、知事が別に定める方法により、イ の熱のエネルギー効率の値を、当該増設又は更新後の熱供給プラントの供給熱量に基づき算定 し直した熱のエネルギー効率の値 ④ ①から③まで以外の場合 次のいずれかの熱のエネルギー効率の値 ア 地域エネルギー供給計画書に記載する供給する熱のエネルギー効率の値 イ 熱供給プラントの増設又は更新があった場合にあっては、知事が別に定める方法により、ア の熱のエネルギー効率の値を、当該増設又は更新後の熱供給プラントの供給熱量に基づき算 定し直した熱のエネルギー効率の値 (2) 建築物の空気調和に伴い排出される熱以外の有効利用を図ることが可能なエネルギーを利用する システムを構築すること。 E -83 4 解説 地域冷暖房の熱のエネルギー効率の適用の考え方について ア 新規に区域指定を受ける地域冷暖房の場合 地域冷暖房区域の指定を受けるにあたっては、 「地域におけるエネルギー有効利用計画制度」に基 づき、特定開発事業者は建築確認申請(大規模特定建築物(特別大規模特定建築物を含む)が複数 棟ある場合は、そのうち最初に行う建築確認申請)の 180 日前までに条例第 17 条7に基づくエ ネルギー有効利用計画書を作成して提出し、地域冷暖房の導入検討を行う。検討の結果、地域冷暖 房を導入する場合には、建築確認申請の 120 日前までに条例第17条の11に基づく地域エネル ギー供給計画書を作成して東京都に申請したのち、次に掲げるⅰ∼ⅲの指定要件を満たしているこ とが認められた場合、東京都の地域冷暖房の区域指定を受けることができる。熱のエネルギー効率 については,地域エネルギー供給計画において東京都の確認を受けた値を適用する。 ⅰ 冷暖房または暖房・給湯の熱需要:21GJ/h 以上 ⅱ 熱のエネルギー効率 0.9 以上(熱供給媒体に蒸気がある場合、0.85 以上) ⅲ 排出ガス1m3 中の窒素酸化物の量 40 ㎝3 (標準状態かつ酸素濃度ゼロ%)以下 イ 既に地域冷暖房の区域指定を受けている場合 平成 22 年 1 月1日現在、既に改正前の条例第 26 条 2 項の規定に基づく公示を行った地域冷暖 房計画区域は、地域冷暖房の区域指定を受けているものとみなす。熱のエネルギー効率については, 地域エネルギー供給事業者からの実績報告に基づき東京都が公表している値を適用する。 ウ 既に地域冷暖房の区域指定を受けている場合で、熱供給プラントの増設・更新を行う場合 増設・更新後の熱のエネルギー効率の値を適用する場合、供給計画の変更届を東京都に提出し、 東京都の確認を受け認められることが必要となる。 段階2の評価基準 ①について 指針では、当該建築物が、建築物環境計画書の提出時点において既に東京都の区域指定を受けた 地域冷暖房区域内(当該地域冷暖房区域に隣接した区域を含む)に建設される建築物であり、かつ 当該区域における地域エネルギー供給事業者からの熱供給を受け入れる(将来に受け入れる予定で ある場合も含む)場合には、段階2に該当するものとする。(平成21年12月末現在において東京 都が区域指定した地域冷暖房区域については、巻末資料の人工排熱計算ツール(8、9 ページ)を 参照のこと) E -84 特定開発事業者 地域エネルギー 東京都 公 表 公 表 提 その他事業者 地域冷暖房区 域内建築物所 有者等 出 エネルギー有効利用計画書 提 情報提供等 出 地域エネルギ 申 請 協力義務 ー供給計画書 地域冷暖房区域 検 討 熱供給の受入 公 表 公 表 提 出 検討義務 建築物環境計画書 提 出 利用可能エネ 工事完了届 ルギー提供等 エネルギー供給の開始 公 表 提 熱供給 出 実績報告 注)破線は熱源で地域冷暖房方式を採用 図 I.4.2 地域エネルギーの有効利用に関する計画制度の流れ(概要) ②について ①のほか、「熱融通」とよばれる方式で、熱負荷特性の異なる2以上の建築物について互いの熱源 設備を熱供給の導管で連結し、冷熱や温熱を互いに融通しあうことにより、非効率な熱源設備の部 分負荷による運転を極力低減することが可能となる。指針では、熱融通を実施している場合におい て段階2に該当するものとする。 ③について 一の建築物において、データセンターや大型サーバールームのあるオフィス等、冬季でも冷房需 要が見込める用途がある場合、熱源設備にダブルバンドル型の熱回収ヒートポンプを採用すること により、冬季における冷房時の排熱を回収し、同じ建築物の他の用途(ホテル等)の暖房需要に対 応することが可能である。指針では、熱回収ヒートポンプ等の設置により、排熱の回収を実施し、 エネルギーの有効利用を図っている場合において段階2に該当するものとする。 用語について 「地域冷暖房」とは、複数の建物に対して専用のプラントから導管により熱媒(蒸気、温水、冷水)を供給し、冷 房、暖房、給湯などを行うものをいう。 「地域冷暖房区域」とは、環境確保条例第 17 条の 18 第 1 項に基づき、知事が地域冷暖房を施行する区域として指 定した土地の区域をいう。 「熱供給プラント」とは、地域冷暖房において熱供給を行うための熱源設備及び熱搬送設備、受変電設備、熱電併 給設備を有する施設をいう。熱供給プラントのうち、地域冷暖房で供給する熱の大半を製造するプラント又は最初 に熱供給を開始したプラントをメインプラント、その他のプラントをサブプラントという。 段階3の評価基準 段階3については、次の(1)あるいは(2)のいずれかに該当する場合に段階3とする。 E -85 (1)当該建築物が条例第17条の18に基づく指定を受けた地域冷暖房区域内にあるか、ある いは当該区域に隣接しており、当該区域に熱供給を行っている地域エネルギー供給事業者か ら熱供給を受けている場合(受ける予定である場合も含む)に、建築物環境計画書の提出時 において当該のエネルギー効率が 0.9(蒸気の供給を行う地域冷暖房である場合は 0.85) 以上の地域冷暖房である場合 (2)利用可能(未利用)エネルギーを利用するシステムを構築している場合(ただし、建築物 の空気調和に伴い排出される熱を利用する場合を除く) (1)地域冷暖房を利用し、地域エネルギー供給事業者からの熱供給を受けている場合 地域冷暖房区域のエネルギー効率の算定方法については次のとおりとする。 地域冷暖房の熱供給プラントの新設あるいは増設・更新(単なる熱源設備(冷却塔、冷温水を 搬送するポンプ類)の更新は除く)し、供給開始してから1年後を供給起算日とする。供給起 算日の翌年度からの経過年数で次の①∼③に分けて算定する。(図 1-4-3 参照) ①供給起算日の属する翌年度の4月より3ヵ年度以上連続して供給実績がある場合 ・地域エネルギー供給事業者からの実績報告における3ヵ年度の熱のエネルギー効率の平均 ②①を除く、供給起算日の属する翌年度の4月より2ヵ年度以上連続して供給実績がある場合 ・2ヵ年度の熱のエネルギー効率の平均 または 直近の熱のエネルギー効率 ③①∼②を除く、供給起算日の属する翌年度の4月より1ヵ年の供給実績がある場合 ・直近の熱のエネルギー効率 または 地域エネルギ−供給計画に記載されている効率 ④①∼③を除く、供給起算日の属する翌年度の4月より1ヵ年の供給実績がない場合 ・地域エネルギ−供給計画における熱のエネルギー効率 (2)利用可能エネルギーを利用する建築物のうち、熱回収ヒートポンプ等による建築物の空気調 和に伴い排出される熱を利用するものを除いた、下水処理水の熱、地下式構造の鉄道から排出さ れる熱等を利用している場合、段階3としている。 新規又は更新(増設含む) 供給起算日 (n+1)年度∼ (n+2+N)年度 後の稼動開始 (n+1)年X月 (n+1+N)年度実績報告 実績報告 n年X月 N年 1年 建築物環境 計画書提出 ((n+3+N)年. (n+1)年度 (n+2)年度 6月 (n+1)年度 (n)年度 実績報告 6月 (n+2)年度∼ (n+3)年度 Y月) 6月 (n+3+N)年度 (n+2+N)年度 図 1.4.3 地域冷暖房のエネルギー効率算定の考え方を示すチャート E -86 地域冷暖房におけるエネルギー効率の算定例 ①平成17年10月に供給を開始した A 地域冷暖房区域内において、平成22年12月に建築物環境計画 書を提出する延べ床面積2万㎡の事務所ビル A の(熱供給の種類 蒸気、冷水)の場合 計算条件 A のエネルギー効率 ¾ 「供給起算日」は供給開始後1年後なので、平成18年10月 ¾ エネルギー効率を算定するのは、供給起算日の属する年度の翌年度からなので、平成19年度か ら 平成21年度実績 0.80(平成22年6月に実績報告提出済み) 平成20年度実績 0.85(平成21年6月に実績報告提出済み) 平成19年度実績 0.90(平成20年6月に実績報告提出済み) ¾ A のエネルギー効率α =(0.8+0.85+0.9)/3 =0.85 ⇒蒸気による供給を行っているので「段階3」となる。 ②平成19年10月に供給を開始した B 地域冷暖房区域内において、平成23年5月に建築物環境計画 書を提出する延べ床面積2万㎡の事務所ビル(熱供給の種類 温水、冷水)の場合 計算条件 Bのエネルギー効率 ¾ 「供給起算日」は供給開始後1年後なので、平成20年10月 ¾ エネルギー効率を算定するのは、供給起算日の属する年度の翌年度からなので、平成21年度か ら 平成22年度実績 なし (平成23年6月に実績報告提出予定) 平成21年度実績 0.80(平成22年6月に実績報告提出済み) 区域指定時の計画値 0.85(平成18年12月に東京都の区域指定済み) ¾ Bのエネルギー効率α =0.85か0.80 ⇒蒸気による熱供給を行っていないため、高いほうの 0.85を採用しても「段階2」となる。 ③昭和55年10月に供給を開始したC地域冷暖房区域内において、供給計画の変更(熱供給プラント (冷熱専用の増設)の届出が行われ、平成22年8月に変更内容について東京都の確認を受け、平成22 年9月に建築物環境計画書を提出し、平成24年4月から増設の熱供給プラントを稼動を開始する延べ 床面積10万㎡の事務所ビル(熱供給の種類 温水、冷水)の場合 計算条件 Cのエネルギー効率 ¾ 「供給起算日」は供給開始後1年後なので、平成25年4月 ¾ エネルギー効率を算定するのは、供給起算日の属する年度の翌年度からなので、平成26年度か ら 平成21年度実績 0.70(平成22年6月に実績報告提出済み) 供給計画変更届の計画値 0.90(平成22年8月に供給計画の変更内容の確認済み) ¾ Cのエネルギー効率α =0.90 ⇒供給計画の変更について東京都の確認を受けていることによ り実績値でなく計画値を適用できる。そのため、「段階3」となる。 E -87 5 取組・評価書記載事項 (1) 住宅以外の用途 概要 ・ 詳細 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ 地域冷暖房区域の指定の有無 地域冷暖房の熱の受入れの有無 地域冷暖房区域の名称 ②のほか複数の建築物間で行う効率的なエネルギー利用(例 熱融通) 利用可能エネルギーを利用したシステム(例 下水処理水、ビル排熱、地下鉄排熱) 契約容量 蒸気、温水、冷水 地域エネルギー供給事業者から受け入れる熱のエネルギー効率の値 冬期において冷房需要がある建築物の場合、ターボ冷凍機において凝縮器で冷媒が凝縮される際の排熱を回収し、 温水に熱を与え供給することで、給湯・暖房需要に対応する。 図 I.4.3 熱回収ヒートポンプシステム 周辺 建物 設備更 新建物 既存 設備 周辺 建物 高効率 設備 周辺 建物 既存 設備 ピーク期間:各建物の設備を利用 設備更 新建物 既存 設備 高効率 設備 周辺 建物 既存 設備 オフピーク時:高効率設備の能力を建物間で融通 (高効率設備からの熱融通) 複数の建築物間において各熱源設備を熱供給導管で連結することにより、オフピーク時に、高効率の熱源設備のみ から熱の供給を受けることで、各建築物の熱源設備における低負荷運転を削減し、かつ熱源設備の容量を小さくす ることが可能である。 図 I.4.4 建物間における熱融通システム E -88 《参考文献・出典等》 図 I.4.1 地域冷暖房の社会的効果:「地域冷暖房パンフレット」東京都環境局 図 I.4.3 熱回収ヒートポンプシステム:一般社団法人日本エレクトロヒートセンターホームペー ジ 図 I.4.4 建物間における熱融通システム:横浜国立大学大学院 佐土原聡教授資料 E -89 I.エネルギーの使用の合理化 I.5 効率的な運用の仕組み 1 I.5.1 最適運用のための計量及びエネル ギー管理シスム 指針策定の背景 建築物のライフサイクルエネルギーのうち、大きな割合を占める運用段階におけるエネルギー(図 1-4-1 参照)を削減していくためには、設備システムの省エネルギー化と共に、そのエネルギー消 費量の管理体制が重要となる。各設備システムのエネルギー消費量の計量を行い、更にその結果を 分析・評価することにより、建築物全体でのエネルギーの使われ方を把握して改善していくことが 可能となる。しかし、分析・評価はもちろんのこと、適切な計量が行われていない施設もあり、こ うした施設では快適性(室内環境)監視とエネルギー計量を行い、バランスのとれた最適な運用を 図っていく必要がある。 本制度では、建築物におけるエネルギー計測システムや BAS(Building Automation System)、 BEMS(Building and Energy Management System)など計量および、エネルギー管理システムの導 入を評価することで、建築と設備システムの保全管理が適切に行われ、建築物としての価値が長く 保たれるよう誘導する。 2 配慮すべき事項 【建築設備の運転管理時に、エネルギー利用の効率的な運用を可能にするために行う次に掲げる事 項】 ① ガス、電力及び冷温熱のエネルギーの量の計量設備の系統別の設置に係る事項 ② ビルエネルギーマネージメントシステム(以下「BEMS」という。)の導入に係る事項 3 評価基準と適用用途 (1) 住宅以外の用途 段階1 <空調設備が個別熱源方式である場合> 特定建築物において使用するガス及び電力の総量の把握が可能な計量設備を有すること。 <空調設備が中央熱源方式である場合> 特定建築物において使用するガス、電力及び冷温熱のエネルギーについて、次に掲げるエネル ギーの量の計量設備を有すること。 ① 空気調和の熱源側設備で消費されるガス量 ② 照明・コンセント設備における単相電力量、三相電力量及び空気調和の熱源側設備その他 のエネルギー消費量の割合が高い設備の電力量 E -90 (1) 住宅以外の用途 段階2 <空調設備が個別熱源方式である場合> 段階1に適合し、かつ、特定建築物において使用するガス及び電力のエネルギーについて、次 に掲げるエネルギーの量の計量設備を有すること。 ① 空気調和の熱源側設備で消費されるガス量 ② 照明・コンセント設備における単相電力量、三相電力量及び空気調和の熱源側設備その他 のエネルギー消費量の割合が高い設備の電力量 <空調設備が中央熱源方式である場合> 段階1に適合し、かつ、次に掲げる(1)及び(2)に該当すること。 (1) 特定建築物において使用するガス、電力及び冷温熱のエネルギーについて、次に掲げるエネ ルギーの量の計量設備を有すること。 ① 空気調和の熱源側設備でエネルギー消費量の割合の高い設備のガス量 ② 空気調和設備及び機械換気設備における系統別又はフロア別の電力量 ③ 空気調和設備の系統別又はフロア別の冷熱量及び温熱量 ④ 照明・コンセント設備における系統別又はフロア別の電力量 (2) 表6に掲げる8項目のうち、6項目以上を採用した基本BEMSを導入していること。 表6 分 類 項 目 内 集中検針 個別に設置された電力量、ガス量等のメーター を、中央監視装置等において月指定日に自動検 針し、1か月分の使用量の表示及び印字を行う こと。 データ出力機能 中央監視装置等に保存されている、個別に設置 されたメーターの情報を出力し、中央監視装置 等以外の記録媒体に保存を行うこと。 タイムプログラム制御 平日及び休日ごとに定められたパターンに従 い設備機器のタイムスケジュール制御を行う こと。 イベントプログラム制御 特別に設定した条件を契機として設備機器の 制御を行うこと。 リモート制御 設備機器の発停、設定値の変更等を遠隔操作に より行うこと。 一覧出力 設備機器の運転状態及び故障警報の一覧並び に計測値及び計量値の一覧の表示及び印字を 行うこと。 日・月・年単位ごとの出力 計測値及び計量値を集計し、表示及び印字を行 うこと。 トレンドグラフ表示 計測値の変化の状態及び計量値のグラフの表 示を行うこと。 データ採取 基本的制御 監視 容 E -91 (1) 住宅以外の用途 段階3 <空調設備が個別熱源方式である場合> 段階2に適合し、かつ、次に掲げる(1)、(2)及び(3)に該当すること。 (1) 特定建築物において使用するガス及び電力のエネルギーについて、次に掲げるエネルギー の量の計量設備を有すること。 ① 空気調和の熱源側設備でエネルギー消費量の割合の高い設備のガス量 ② 空気調和設備及び機械換気設備における系統別又はフロア別の電力量 ③ 照明・コンセント設備における系統別又はフロア別の電力量 (2) 表6に掲げる8項目のうち、6項目以上を採用した基本BEMSを導入していること。 (3) 導入しているBEMSがエネルギーの使用量をテナント別、フロア別又はエリア別の料金 に換算する機能を有すること。 <空調設備が中央熱源方式である場合> 段階2に適合し、かつ、次に掲げる(1)、(2)及び(3)に該当すること。 (1) 特定建築物において使用するガス、電力及び冷温熱のエネルギーについて、次に掲げるエ ネルギーの量の計量設備を有すること。 ① エネルギー消費量の大きな空調機の電力量及び冷温熱量 ② エネルギー消費量の大きな送風機類の電力量 ③ エネルギー消費量の大きなポンプ類の電力量 ④ エネルギー消費量の大きな照明・コンセント設備の電力量 (2) 段階2に適合した基本BEMSの導入に加え、表7に掲げるBEMSの拡張機能を有する こと。 表7 分 類 維持管理 項 目 内 容 設備機器の故障、修繕履歴、機器使用及び定期点 機器の履歴管理 検の進ちょく状況をデータベース化し、保全管理 の品質向上を計画する機能を有すること。 設備機器の稼働状況及び警報の情報の収集・蓄積 稼働実績管理・警 をし、傾向分析による設備機器のメンテナンス及 報データ管理 び更新計画の立案を行う機能を有すること。 最適化制御 応用的制御 環境状態値(気温、湿度、予測平均温冷感指標(P MV)等をいう。以下同じ。 )及び機器運転状況か ら設備機器の発停、設定値の変更等を行う機能を 有すること。 フィードバッ 環境状態値の変化による影響の実測値、予測値又 ク・フィードフォ はその複合値を設備機器の発停、設定値の変更等 ワード に反映する機能を有すること。 エネルギー消費分析 及び管理 3) 建物全体のエネルギー消費の傾向を把握し、省エ エネルギー消費 ネルギー及び最適な室内環境を両立させる長期的 分析及び管理 な設備機器運転の管理計画の立案を行う機能を有 すること。 導入しているBEMSがエネルギーの使用量をテナント別、フロア別又はエリア別の料金 に換算する機能を有すること E -92 4 解説 (1) 住宅 住宅用途に関しては、冷暖房機器システムの選択の幅が他用途に比べ狭いこと、一般的に住戸毎 に計量設備が設置されることから、本区分では評価を行わない。 (2) 住宅以外の用途 A.基本的な考え方 空調を行う施設の熱源は、個別熱源と中央熱源の施設に大別される。個別熱源の施設と、中央熱 源の施設の特徴は以下のとおりである。 表 I.5.1 中央熱源と個別分散熱源の特徴 熱 源 特 徴 個別熱源 熱源は個別(各フロア等)に設置してあり、フロア単位でフロア在住者が発停や出力調 整等の操作を行うため、制御は個別エリア(フロア)毎で完結する。そのため、センタ ーでは熱源の制御は消し忘れなどのセキュリティ面の管理が中心となる。 中央熱源 熱源は集中配置される。そのため、制御は管理室(センター)で全体として行われ、制 御データを基に発停や出力調整を行う(制御データはセンサーによる信号のほかに、フ ロア在住者のコントロールパネル操作の信号によるものなどがある)。 個別熱源では、冷温熱の製造・供給はパッケージ空調機、ビル用マルチエアコンなどの機器内で 完結するため、省エネルギー性はどちらかと言えば機器の性能に依存する。中央熱源では、機器で 製造した冷温熱を需要側まで運ぶときに使用するエネルギーが多く、また、ポンプ、送風機など様々 な機器を組み合わせて運転させる必要がある。そのため、中央熱源の省エネルギー性は、個別熱源 に比べ、制御システムの機能や適切な運用・管理のための計測に大きく影響される。この考えのも と、個別熱源と中央熱源のシステムでは以下のように段階を設定する。 表 I.5.2 計測システムの評価にあたっての方針 中央熱源システム等の施設 (個別、中央が混在する場合、基本的には中 央熱源として扱う) 段 階 段階 1 全体・エネルギー種別の把握が可能であるこ 個別熱源システムの施設の段階2と同等 と。 段階 2 段階1に加え、エネルギー用途別の把握が可 個別熱源システムの段階3と同等:課金を除く 能であること。 3 段階2に加え、各用途の系統別のエネルギ ー消費量の計測が可能となるよう、BAS(基 本 BEMS)等の管理システムの導入を計画 していること。 また、テナント別(フロア・エリア別)に 課金が可能なこと。課金はみなし課金でも 良い。 段階 個別熱源システムの施設 E -93 個別熱源システム施設の段階3に適合する とともに高度なBEMSを導入することで 最適化図り、一層の省エネを図っているこ と。 B.エネルギー計量の段階の定義 個別熱源システム等の施設における段階 2 の単純な計量、段階 3 の BAS(基本 BEMS)と、中 央熱源を導入する施設における単純な計量、段階 2 の BAS(基本 BEMS)、段階 3 の拡張機能を 有する BEMS のイメージは、以下のようになる。 ガス 熱量 電気 計 計 個別1 個別2 中央1 熱源詳細 計 計 計 計 計 ガス A B (消費大) C 三相 熱源 計 計 計 空調 換 気 単相 計 個別3 中央2 照明 コンセント 系統 又は フロア 中央3 計 ポンプ類 計 計 計 計 空調 換 気 照明 コンセント (消費大)(消費大)(消費大) (消費大) 図 I.5.1 段階1∼3のイメージ図 注1:個別熱源の段階 2、中央熱源等の段階 1 で要求される熱源における電力・ガスの計量は、熱源にとって主 たるエネルギー源のみを対象とする(例:ガスをエネルギー源とする場合には、電力の計量は不要である) 注2:個別熱源の段階 3、中央熱源等の段階 2 で要求される計量で示した系統とは、例えば建物の南側系統・北 側系統、低層階・中層階・高層階系統など、大きな区分を示している。また、熱源で要求している熱量は 熱 源システムの 2 次側 であり、吸収冷凍機とボイラー間の熱量等は不要である。 注3: 「電力消費量の大きな場合」とは、データセンターのように OA 負荷(コンセント負荷)が大きいなど、一 般的な使用をしていない室を有する場合である。 注4: 「エネルギー消費量の大きなもの」とは、大容量の空調機、主たる熱源機器の冷却水・冷温水ポンプ、ダク トによる駐車場換気を行う場合の駐車場系送排風機 などである。 注 5:照明・コンセント設備において該当する主たる配電方式(単相、三相)について計量が可能であればよい 注 6:段階2、段階3の評価において、共用部分(共用廊下、階段等)においてはフロア別の電力量まで計量で きることは求めない。 C.個別熱源と中央熱源が混在する場合の考え方 個別熱源と中央熱源とが混在する場合には、基本的には中央熱源として扱うものとする。 D.熱供給事業者から熱の供給を受ける場合の考え方 熱供給事業者から冷熱、温熱の供給を受けて、空調の熱源とする場合は、中央熱源として扱うも のとする。 E -94 E.段階評価方法 評価方法を以下のとおりとする。 表 I.5.3 個別熱源システムの施設での、エネルギー計量の評価にあたっての判断基準 段階 評価の判断内容 1 電気、ガスの総量の計量が可能であること 2 段階1に適合し、図 I.5.1 の<個別熱源>の段階2に示した計測を行うこと 段階2に適合し、図 I.5.1 の<個別熱源>の段階3に示した計測を行うととも に、表 6 の 8 項目のうち 6 項目以上を採用していること 3 また、テナント別(フロア・エリア別)に課金(みなし課金(注)が可能である こと 注:計量法によるメーターの値を元に、演算によってコストを振り分けること 表 I.5.4 中央熱源システムの施設での、エネルギー計量の評価にあたっての判断基準 段階 評価の判断内容 1 図 I.5.1 の<中央熱源>の段階1に示した計測を行うこと 2 段階1に適合し、図 I.5.1 の<中央熱源>の段階2に示した計測を行うととも に、表6の 8 項目のうち 6 項目以上を採用していること 段階2に適合し、図 I.5.1 の<中央熱源>の段階3に示した計測を行うととも に、エネルギー管理機能、維持管理機能に加え、テナントまたはフロア、エリ 3 ア別の課金能力を保有していること。 5 取組・評価書記載事項 (1) 住宅 住宅に関しては、特に計量及びエネルギー管理システムに関する欄を設けておらず、省エネルギ ーに配慮している点があれば、取組・評価書の「概要」欄に任意に記載するものとする。 (2) 住宅以外の用途 概要 詳細 ① 評価の対象となる熱源方式(中央熱源・個別熱源) ② ガス、電力及び冷温熱のエネルギーの量の計量設備の系統別の設置に係る事項 (・全体、エネルギー種別計測 ・エネルギー用途別計測 ・エネルギー系統別計測 ・ 特定機器・フロア単位 ) (1)事項の詳細 ③ BEMSの導入に係る事項 (・データ採取、タイムプログラム等基本的制御、監視の導入・維持管理、応用的制御、エネルギー消費分析 及び管理) (1)事項の詳細 ④ その他の運用上の事項 以下に、個別、中央熱源システムにおいて、各段階で要求される計測内容を示す。なお、取組・ 評価書には、以下に示す計測内容を具体的に分かり易く示す必要がある。(制御設備工事における計 測ポイント図面等での図示も可とする) A.個別熱源システムの計測箇所の要求内容(表示事項) ①段階1 段階1では、電気、ガスの総量把握のみを求める。この計量は、料金徴収のため必ず行われるも のであり、全ての施設が段階1に該当すると考えられる。 表 I.5.5 個別熱源システムにおける段階1の計測点 電力 ガス 計測点 受電点(電力量) 引込量(総量) E -95 熱量 無し ②段階2 計測点を以下に示す。 表 I.5.6 個別熱源システムにおける段階2の計測点 電力 ガス 計測点 ①段階1の計測点 ①段階1の計測点 ②動力電力量 ②熱源使用量 ③電灯電力量 ④熱源使用量(電力量) 熱量 無し 注:電力・ガスの計量は、熱源にとって主たるエネルギー源のみを対象とする(例:ガスをエネルギー源とする場合には、 電力の計量は不要である) ③段階3 計測点を以下に示す。 表 I.5.7 個別熱源システムにおける段階3の計測点 電力 ガス 計測点 ①段階2の計測点 ①段階2の計測点 ②系統またはフロア別 動力電力量 ③系統またはフロア別 電灯電力量 熱量 無し 注:系統とは、例えば建物の南側系統・北側系統、低層階・中層階・高層階系統など、大きな区分を示している B.中央熱源システム等の計測箇所の要求内容(表示事項) ①段階1 計測点を以下に示す。 表 I.5.8 中央熱源等システムにおける段階1の計測点 電力 ガス 熱量 計測点 ①受電点(電力量) ①引込量(総量) 地域熱供給引込量(地 ②動力電力量 ②熱源使用量 域冷暖房の場合のみ) ③電灯電力量 ④熱源使用量(電力量) 注:電力・ガス・熱量の計量は、熱源にとって主たるエネルギー源のみを対象とする(例:ガスをエネルギー源とする場合に は、電力の計量は不要である) ②段階2 計測点を以下に示す。 表 I.5.9 中央熱源システム等における段階2の計測点 電力 ガス 計測点 ①段階1の計測点 段階1の計測点 ②系統またはフロア 別動力電力量 ③系統またはフロア 別電灯電力量 熱量 ①段階1の計測点 ②系統またはフロア別熱量 (カロリーメーター:流量計 +温度計でも良い) 注:系統とは、例えば建物の南側系統・北側系統、低層階・中層階・高層階系統など、大きな区分を示している。また、熱 源で要求している熱量は 熱源システムの 2 次側 であり、例えば吸収冷凍機とボイラー間の熱量等は不要である E -96 ③段階3 計測点を以下に示す。 表 I.5.10 中央熱源システム等における段階3の計測点 計測点 電力 ガス ①段階2の計測点 段階2の計測点 ②照明・コンセント(電力 量:電力消費の大きな場合) ※1 熱量 ①段階2の計測点 ②空調機別熱量(カロリーメー ター:流量計+温度計でも良 い。エネルギー消費量の大きな 機器を対象)※2 ③機器別(電力量:空調機、 冷温水・冷却水ポンプなど、 エネルギー消費量の大きな 機器を対象)※2 注) ※1 データセンターのようにOA負荷(コンセント負荷)が大きいなど一般的な使用をしていない室を有する場合 ※2「エネルギー消費量の大きな機器」とは、大容量の空調機、主たる熱源機器の冷却水・冷温水ポンプ、ダクトによる駐 車場換気を行う場合の駐車場系送排風機などである。 6 参考 (1) BEMS BEMS とは、IEA(国際エネルギー機構)で統一された呼称であり、「ビルエネルギー管理システム」 のことである。ビルエネルギー管理システムに関しては、従来、ビル管理ツールとしての監視制御 装置 BAS(Building Automation System)と建物の運営・経営を支援する情報管理システムと しての BMS(Building Management System)と区分されて用いられてきた。本指針で示す BEMS とは、B(ビル)と E(エネルギー)のマネジメントを主体としたこれらの概念を包含する システムと捉えている。特に環境問題に直接的に影響するエネルギー管理の重要性を踏まえ、積極 的な導入が望まれるところである。 図 I.5.1 BEMS の定義 E -97 (2) 各段階で要求される制御機能の例 個別熱源、中央熱源において要求される制御内容の例は以下の通りである。 表 I.5.11 各段階において想定される制御等の内容(例) 項目 ソフト名称 段階 個別 中央 備 考 個別に設置された電力量、ガス量、給水量等の メーターを、中央監視装置等において月指定日 に自動検針し、1か月分の使用量の表示及び印 字を行うこと。 中央監視装置等に保存されている、個別に設置 されたメーターの情報を出力し、中央監視装置 等以外の記録媒体に保存を行うこと。 3 2 データ出力機能 (B) 3 2 タイムプログラム制御 (C) 3 2 平日及び休日ごとに定められたパターンに従 中央監視装置の い設備機器のタイムスケジュール制御を行う 基本機能 こと。 3 2 特別に設定した条件を契機として設備機器の 中 央 監 視 装 置 の 制御を行うこと。 基本機能 3 2 3 2 3 2 イベントプログラム 制御 (D) リモート制御 (E) 一覧出力 (F) 監視 容 集中検針 (A) データ採取 基本的制御 内 日・月・年単位ごとの 出力 (G) トレンドグラフ表示 (H) 設備機器の発停、設定値の変更等を遠隔操作に より行うこと。 設備機器の運転状態及び故障警報の一覧並び に計測値及び計量値の一覧の表示及び印字を 行うこと。 中央監視装置の 基本機能 中央監視装置の 基本機能 計測値及び計量値を集計し、表示及び印字を行 中 央 監 視 装 置 の うこと。 基本機能 計測値の変化の状態及び計量値のグラフの表 示を行うこと。 各トレンドグラフ及びバーグラフの組み合わ ヒストリカルトレンド せにより 折線グラフ・バーグラフ・積層グラ 中 央 監 視 装 置 の ― ― 表示印字 フ・散布図の表示印字を行い、データを基に 基本機能 (I) 設備機器運用の検討を行う。 最も短時間の間に空調予冷・予熱制御を行い、 最適起動停止制御 中央監視装置の ― 3 停止時は室内環境が満足していることを条件 (J) 基本機能 に空調停止を出来るだけ早く行う。 エネルギー 外気による冷房が可能と判断した場合、外気を 外気取り入れ制御 中央監視装置の 制御 ― 3 取り入れることで自然エネルギーの有効利用 (K) 基本機能 (応用的 と、省エネルギーを図る。 制御) 空調機・換気ファン・給気ファン等を使用時間 節電運転制御 帯で連続運転とせず、室内温度環境を維持しつ 中 央 監 視 装 置 の ― 3 (L) つ、機器間欠運転を行うことで省エネルギーを 基本機能 図る。 注:段階欄の数値は、左側は個別熱源システム等の、右側は中央熱源システムの段階を表す 3 2 E -98 表 I.5.12 各段階において想定される制御等の内容(例) 項目 ソフト名称 段階 個別 中央 内 容 備 考 空調負荷に応じて、並列に設置されている 熱源コントローラ 複数の熱源の運転台数を適切な台数で運転 ーの機能。 を行うことにより、省エネルギーを図る。 熱源台数制御 (M) − 3 熱源送水温度設定制御 (N) − 3 電力デマンド制御 (O) − 3 力率改善制御 (P) − 3 エネルギー 制御 VAV 制御 (Q) (応用的 制御) − 3 空調負荷により 搬送動力(給・排気ファ 各コントローラー ン)のインバーター制御を図る。 の機能。 VWV制御 (R) − 3 空調負荷に応じて、熱源搬送ポンプの送水 中央監視装置の 圧力を出来る限り低く設定することにより 機能。 省エネルギーを図る。 中央監視装置の 機能。 中央監視装置の機 能。実際は、デマ ンド監視のみが多 い。 中央監視装置の機 建物の電力負荷による受電力率を改善する 能。実際は、変電 為に、進相コンデンサーを投入/遮断し省エ 設備による制御が ネルギーを図る。 多い。 PMV管理 (S) − 3 各室内で計測された体感温度、室内湿度、 着衣量、活動量などから PMV を算出して 中央監視装置の 表示する。着衣量、活動量は中央監視にて 機能。 設定する 室温設定値管理 (T) − 3 室内温度の設定値に関する異なる要求を調 中央監視装置の 和させ、省エネルギーと快適性を両立させ 機能。 る 空調負荷予測 (U) − 3 ARIMA(積分型自己回帰移動平均)モデル 中央監視装置の などを用いて将来(24 時間後等)の空調 機能。 負荷を予測する 機器の履歴管理 (V) − 3 稼働実績管理・ 警報データ管理 (W) − 3 エネルギー消費分析 及び管理 (X) − 3 維持管理 エネルギー 消費分析 及び管理 空調負荷に応じて、熱源の出口温度の設定 を変更し、COP の向上を図る。 消費電力量が電力会社との契約電力量を上 回らないように、30分単位で使用量を予 測し、予め指定されている機器を停止し、 省エネルギーを図る。 設備機器の故障、修繕履歴、機器使用及び 定期点検の進ちょく状況をデータベース 化し、保全管理の品質向上を計画する機能 を有すること。 設備機器の稼働状況及び警報の情報の収 集・蓄積をし、傾向分析による設備機器の メンテナンス及び更新計画の立案を行う 機能を有すること。 建物全体のエネルギー消費の傾向を把握 し、省エネルギー及び最適な室内環境を両 立させる長期的な設備機器運転の管理計画 の立案を行う機能を有すること。 注:段階欄の数値は、左側は個別熱源システム等の、右側は中央熱源システムの段階を表す E -99 C.中央熱源システムの段階3の判断例 中央熱源システムでは、制御系統図(下記図面)を確認する。 この制御系統図では、制御フローの説明として四角枠内に記載されているような制御方式の内容 に基づき、段階の判定を行うことができる。 なお、ここに例示したものには、最適起動停止制御、外気取り入れ制御、VAV 制御などが含ま れており、熱源側、冷温水側で幾つかの制御を取り入れていれば段階3と位置付けられる。 1. VAV 廻り室内温度制御〔比例〕 2. 吸気温度制御〔比例〕 3. 還気湿度制御(気化式水加湿)〔二位置〕 4. ウォーミングアップ制御 (OA・EX.A 用 MD 全開、RA 用 MD 全開、加湿器停止) 5. 空調機停止時のインターロック制御 (MV・MD 全開、加湿器停止) 6. 外気冷房制御 7. VAV 合計風量による給排気ファン回転数最適化制御 8. VAV 制御状態による給気温度設定最適化制御 9. 中央監視システムとの通信(発停、監視、設定、計測) 図 I.5.2 制御系統図の例 E -100 《参考文献・出典等》 図 I.5.1 BEMS の定義:(社)空気調和・衛生工学会ホームページ 図 I.5.2 制御系統図の例:グリーン庁舎計画指針及び同解説、(社)公共建築協会等 E -101 I.エネルギーの使用の合理化 I.5 1 効率的な運用の仕組み I.5.2 最適運用のための運転調整と性能 把握 指針策定の背景 新築建築物の設計時における省エネルギー性能を最大限に発揮するためには、空気調和設備、機 械換気設備、照明設備等の各設備システムにおけるエネルギーの効率を高めることが必要である。 そのためには、各設備システムが負荷に応じた運転・管理ができるよう制御方法や運転方法につい て調整することが重要である。 これを確実に実行するためには、部分負荷による運転等も含め、建築物の実際の稼動状況等を想 定し、建築主が建築物に対して求める性能を明確にすることが重要である。また、設計者はこの求 められる性能を実現する省エネルギー設計を行うとともに、エネルギーの消費量を予測しておくこ とが必要である。さらに建築物の運用段階でエネルギー消費量を実測し、実態に応じた機器の適正 な設定(チューニング)を行い、予測値との比較検証することより、設計・施工・運用までの一貫 した性能検証が行われること(コミッショニング)が肝要である。 これを踏まえ、建築物の工事竣工後においてある一定期間(概ね1年間)において、建築物全体、 あるいは各設備システムのエネルギー消費量を予測して、運用しながら設備の適切なチューニング を行い、年間を通じてのエネルギー消費量を実測して省エネルギー性能を検証する体制を整え、ま た次のエネルギー消費量の目標設定につなげることを、高く評価するものとする。 2 配慮すべき事項 【エネルギー利用の効率的な運用を実現するための措置に係る次に掲げる事項】 ① 建築物のエネルギー消費量の予測及び実測に係る事項 ② エネルギー利用の効率化のための設備機器等の運転調整に係る事項 ③ 空気調和設備のエネルギーの使用の合理化に関する性能の把握に係る措置 ・ 空調システムにおいて、部分負荷運転時 においては、本来の性能が発揮できない ことがわかる。 ・ 部分負荷による運転時間をできる限り 減らすためには、運用段階での調整(省 エネチューニング)が不可欠である。 図 I.5.3 部分負荷運転の実態 E -102 3 評価基準と適用用途 (1) 住宅以外の用途 段階2 次に掲げる事項に適合すること。 ① 特定建築物の運用計画に基づき算定した特定建築物全体の年間一次エネルギー消費量の予測値の 別記第2号様式による取組・評価書への表示 ② ①の算定方法の前提となる建築設備の稼働条件の別記第2号様式による取組・評価書への表示 ③ 特定建築物全体の年間一次エネルギー消費量の予測及び実測を行う旨を委託仕様書等に明記するこ と。 段階3 段階2に適合し、かつ、次に掲げる(1)又は(2)に適合すること。 (1) エネルギー利用の効率的な運用のために、特定建築物の工事完了後に行う設備機器及び制御機器 の運転及び調整に関する事項並びに空気調和設備及び機械換気設備における年間一次エネルギー消 費量の予測及び実測を行う旨を委託仕様書等において明記すること。 (2) 次の①及び②に掲げる事項の実施を計画すること。ただし、空気調和設備が個別熱源システムの 場合は、②については適用しない。 ① 空気調和設備及び機械換気設備における年間一次エネルギー消費量の予測及び実測 ② 表8に掲げる6項目のうち、2項目以上の空気調和設備におけるエネルギー利用の効率の算定 表8 項 ア 目 内 熱源設備のエネルギー消費効率 容 熱源機器及び補機におけるエネルギ ー使用量全体に対する製造熱量の比 率 イ 熱源機器のエネルギー消費効率 熱源機器におけるエネルギー使用量 に対する製造熱量の比率 ウ 熱源機器の負荷率 熱源機器における定格能力に対する 熱の供給負荷の比率 エ 冷温水又は冷却水を搬送する設備 の水搬送効率 冷温水ポンプ又は冷却水ポンプにお ける電力消費量に対する冷温水又は 冷却水の熱搬送量の比率 オ 空気調和機設備における空気搬送 効率 空気調和機及び全熱交換器のファン における電力消費量に対する熱搬送 量の比率 カ 全熱交換器における熱交換効率 全熱交換器の熱交換における取入外 気の顕熱及び潜熱に対する排気の顕 熱及び潜熱の比率 E -103 4 解説 (1) 住宅 住宅用途に関しては冷暖房機器システムの選択の幅が他用途に比べ狭いこと、一般的に各住戸に 計量設備が設置されることから、本区分では評価を行わない。 (2) 住宅以外の用途 A.基本的な考え方 段階 2 取 組 事 項 説明・期待される効果等 次に掲げる事項に適合すること。 ① 特定建築物の運用計画に基づき算定した特 定建築物全体の年間一次エネルギー消費量の予 測値を取組・評価書に表示 ② ①の算定方法の前提となる建築設備の稼働 条件を取組・評価書に表示 ③ 特定建築物全体の年間一次エネルギー消費 量の予測及び実測を行う旨を委託仕様書等に明 記する。 実際の稼動条件を想定して年間一次エネルギ ー消費量を予測することにより、実働に則した 設計上の性能の目標値が明確になる。 また、これらを委託仕様書等に明記すること により、計画段階においてより適正な規模の設 備システムとその制御方式が選定されることで 実効性を確保することができる。 段階2に加え、(1)では、建築主が計画段階に おいて、空気調和設備や機械換気設備のエネル ギー消費量の予測と実測を行うこと及び運用後 の設備機器や制御機器の運転及び調整を行うこ とを各々仕様書等に明記することにより、省エ ネルギー性能をよりきめ細やかに把握をしなが ら、省エネチューニングを行うことで、実効性 を確保することができる。 あるいは、(2)のように建築物においてエネル ギー消費の割合が高い空気調和設備や機械換気 設備の各設備システムのエネルギー消費量の予 測や実測を行うことや、空気調和設備の熱源設 備のエネルギーの利用率等を算定することを計 画することで段階3とみなす。 3 これら(1)及び(2)の手法により、設計者側と運 用管理者側との間で運用方法について意志の伝 達が可能となり、運用実態に即した運転や調整 を行うことにより、建築物が本来持つ省エネル ギー性能を発揮することができる。。 建築主にとっては、保守性や保守品質の向上、 無駄なコストの軽減が図られ、発注内容に合致 したものが入手できることになる。 また、設備システムの設計・施工上の適・不適 の性能検証が行われることで、施工者や設計者 側においてもデータの蓄積が行われ、設計→施 工→運用→設計への一貫性のあるフィードバッ クを図り、建築設計や施工における省エネ性能 の向上を促すことが可能となる。 ※「委託契約書等」とは、エネルギー消費量の予測・実測及び調整の実施とそれに関する報告書の 作成を行うことを明示したものであれば十分であり、必ずしも契約書ではなく、特記仕様書等でも 構わない。 段階2に適合し、かつ、次に掲げる(1)又は(2) に適合すること。 (1) エネルギー利用の効率的な運用のために、 特定建築物の工事完了後に行う設備機器及び制 御機器の運転及び調整に関する事項並びに空気 調和設備及び機械換気設備における年間一次エ ネルギー消費量の予測及び実測を行う旨を委託 仕様書等において明記すること。 (2) 次の①及び②に掲げる事項の実施を計画 すること。ただし、空気調和設備が個別熱源シ ステムの場合は、②については適用しない。 ① 空気調和設備及び機械換気設備における年 間一次エネルギー消費量の予測及び実測 ② 空気調和設備のエネルギーの利用率につい て、熱源設備のエネルギー消費効率等6項目 (E-102 表8参照)のうち、2項目以上の空 気調和設備におけるエネルギー利用の効率の算 定 E -104 表 I.5.13 建築主の要求性能の明確化のため、各段階で求める記載内容 段 階 段階2 段階3 記 載 想定している実際の運用によるエネルギー消費原単位と、その根拠の明確化 段階2の記載内容に加え、以下について記載する ・ 空気調和設備等におけるエネルギー利用効率やその対象機器及び範囲 ・ 空気調和設備をはじめとする設備機器及び運転の調整に関する事項(省エネルギ ーチューニング)の概要について明記 5 取組・評価書記載事項 (1) 住宅 住宅に関しては、省エネルギー運用のための運転調整と性能の把握に関する欄は設けていない。 (2) 住宅以外の用途 概要 ・ 詳細 ① ② ③ ④ ⑤ 年間一次ネルギー消費量の予測値 特定建築物の運用計画に基づく建築設備の稼働条件 年間一次エネルギー消費量の予測及び実測を行う旨の委託契約書等への明記の有無 空気調和設備及び機械換気設備の年間一次エネルギー消費量の予測及び実測の計画の有無 次の設備におけるエネルギー利用の効率の算定の計画の有無に係る事項 熱源設備のエネルギー消費効率 算定対象機器及び範囲 熱源機器のエネルギー消費効率 算定対象機器及び範囲 熱源機器の負荷率 算定対象機器及び範囲 冷温水又は冷却水を搬送する設備の水搬送効率 算定対象機器及び範囲 空気調和機設備における空気搬送効率 算定対象機器及び範囲 ① ② ③ 概要②の事項の詳細 概要③の事項の詳細 概要④の事項の詳細 以下に、記載例を示す。 A.段階2の記載例 ①年間一次エネルギー消費量の予測値 段階2では、当該建築物において実稼動として想定される運転時間等を加味した上で、実際の運 用にあたっての目標値としての年間一次エネルギー消費原単位を取組・評価書に表示(記載)する。 また、その際の予測値の設定方法を記載する。設定方法としては、空気調和設備、機械換気設備、 照明設備、給湯設備、昇降機設備等の各設備のエネルギー消費量の積み上げにより設定する場合や、 過去の事例において同規模・同用途の建築物のエネルギー消費量を参考にして設定する場合、関係 機関等で示されているベンチマークを参考にして設定する場合が考えられる。年間一次エネルギー 消費量は複合用途の建築物の場合、用途毎に表示する。 表 I.5.14 エネルギー消費原単位設定根拠の記載内容 算出根拠 その他 ・ ・ ・ ・ 年間稼働日数(日/年) 日平均稼働時間(時間/日) 単位面積当たりの照明・コンセント設備の負荷(W/㎡) 熱源側設備等の全負荷相当運転時間(時間/年・・冷房と暖房の合計) ・ 上記のほか設定根拠となるものがあれば記載する。 ②特定建築物の全体の年間一次エネルギー消費量の予測と実測 当該建築物全体の年間一次エネルギー消費量の予測と実測を行う旨について、本体工事の発注 段階において、委託契約書等に明記している旨を記載する。なお、委託契約書等とは、工事請負 契約書等において、仕様書等でエネルギー消費量の予測と実測の実施を明記したものであれば良 く、具体的なエネルギー消費量までも明記してある必要はない。 E -105 表 I.5.15 各エネルギー消費効率の指標の解説について 指 標 ア 解 説 備 考 熱源設備のエネル 冷凍機、ボイラなどの熱源機器単体を運 熱源COP(成績係数)と同じ。エ ギー消費効率 転するのに必要な消費エネルギーあたり ネルギー消費係数の逆数を指す。 の熱源機の能力(冷熱製造熱量と温熱製 造熱量の合計) イ 熱源機器のエネル 熱源機の冷却塔、熱源一次ポンプ、冷却水 熱源システムCOP(成績係数)と同 ギー消費効率 ポンプなどの補機動力も含めた、熱源シス じ。エネルギー消費係数の逆数を指 テム全体を運転するのに必要な消費エネ す。 ルギーあたりの熱源機能力(冷熱製造熱 量、温熱製造熱量の合計) ウ 熱源機器の負荷率 熱源機群の定格能力あたりの熱源機能力 (冷熱製造熱量、温熱製造熱量)。冷熱と 温熱別々に評価する。熱源機器の台数分 割及びその運用(台数制御)の適否を判 判断するための指標 エ 冷温水又は冷却水 冷温水ポンプ又は冷却水ポンプを運転す WTFに同じ を搬送する設備の水 るため必要な消費エネルギーあたりのポ 搬送効率 オ ンプによる搬送熱量 空気調和機設備に 空調設備(全熱交換器やファンコイルユ おける空気搬送効率 ニットなどを含む)を運転するのに必要 空調システムATFに同じ な消費エネルギーあたりの冷暖房能力 (搬送熱量の合計) カ 全熱交換器におけ 全熱交換器によって排気の熱が、取り入 る熱交換効率 れ外気に熱交換される寄与率(熱交換効 率)を全熱(潜熱と顕熱)基準で評価 冷却塔 外気の取り入れ 冷却塔 冷却水ポンプ 熱源設備 冷温水発生器 or チラー等 冷温水ポンプ 冷却水搬送システム 空調機 冷温水搬送システム 図 I.5.4 空調システムイメージ E -106 空気搬送システム B.段階3の記載 段階3では、段階2の内容に加え、建築物全体のエネルギー消費に占める割合が特に高く、かつ 運用段階において設備の設定等の調整によりエネルギー消費量の削減が見込める空気調和設備およ び機械換気設備における一次エネルギー消費量の予測及び実測を行うことに加え、以下の(1)ま たは(2)について適合している旨を記載する。 (1)工事完了の概ね1年後に、特定建築物の運用と建築設備の運転に係る運転及び調整を行う 旨を工事請負契約書や委託契約書等に明記してあること。 具体的には、段階2で記載した実稼動状態を加味した目標値としてのエネルギー消費原 単位について、建築物全体の年間一次エネルギー消費量に加え、空気調和設備と機械換気 設備の各設備システムにおける年間一次エネルギー消費量の予測を行い、運用時において は設備の設定や運転・制御方法を調整(チューニング)しながら、当初見込んだ省エネル ギ−性能が運用段階でも発揮できているかを検証する。設備の設定や運転・制御方法を調 整に関しては、その調整時期や実施箇所、対象となる設備機器及び具体的な調整方法の概 要を記載する。省エネチューニング手法については、さまざまなものがあるが省エネルギ ー性能状況報告書の解説(17∼25 ページ参照)でも掲載しているので参照のこと。 (2)空気調和設備および機械換気設備における一次エネルギー消費量の予測及び実測を行うこ と、空気調和設備に関して、表 1-5-15 に示すエネルギー消費効率に関して算定を行うこ とを計画すること。 具体的には、ア∼カのいずれのエネルギー消費効率の算定についても、対象となる設備 機器全てについて効率の計算を行う必要はなく、基準階のみでも、あるいは主要となる設 備機器のみでも良い。また効率について計測することを求めるだけで、具体的に基準を設 けてはいない。 工事請負契約書や委託仕様書等で算定の実施について明記する必要はないが、この評価 基準において段階3の評価とする場合は、現状に照らして省エネルギーにかなり先進的に 取り組んでいるとみなせるので、条例第 23 条3項に定める省エネルギー性能状況報告書 において、東京都から建築主に対し報告を求めていくのでぜひご協力いただきたい。 E -107 6 参考 (1) チューニングについて(出典:省エネルギーセンターのホームページ) チューニング:現実の設備特性にあわせたきめこまかな設備の運用・調整 図 I.5.5 チューニングのイメージ 建物は全てオーダーメイドであり、設備の特性も建物ごとに異なっている。また、設備の特性は、 運転管理されることで徐々に明らかになっていく。 チューニングは、多くの建物で竣工時の調整(おまかせ調整)のまま使用されているものを、各 ビルの特性を把握し、これに合わせて使い易いように「自前調整」することと定義されており、「自 前調整(チューニング)が省エネルギーにとって重要」と明記されている。 E -108 (2) コミッショニングについて(出典:環境システック中原研究所のホームページ) A.コミッショニングとは ①米国暖房冷凍空調技術者協会(ASHRAE)による定義 コミッショニングとは、 「それぞれのシステムに対して、システムが設計趣旨に合致した性能を発揮するように、設計、 施工ならびに機能試験が行われ、運転保守が可能な状態であることを検証する過程」のことである。 性能検証は企画段階に始まり、それから設計・施工・始動・受渡し・訓練の各段階を含む建物の全 使用期間(ライフ)にわたって適用され得るものである。 ②空気調和・衛生工学会コミッショニング委員会による定義と解説 性能検証とは、 「環境 ・エネルギー並びに使い易さの観点から使用者の求める対象システムの要求性能を取りまと め、設計・施工・受渡しの過程を通して、その性能実現のための性能検証関連者の判断・行為に対 する助言・査閲・確認を行い、必要かつ十分な文書化を行い、機能性能試験を実施して、受け渡さ れるシステムの適正な運転保守が可能な状態であることを検証すること」と定義される。 この性能検証の役割は、「使用者にとって最適な状態に保たれるように、求めに応じて性能を診 断・検証し、必要に応じて発注者・所有者或いは使用者に性能改善法を提示すること」とされてい る。 《参考文献・出典等》 図 I.5.3 部分負荷運転の実態:日建設計総合研究所資料 図 I.5.5 チューニングのイメージ:(財)省エネルギーセンター E -109 E -110