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参考資料 - 経済産業省・資源エネルギー庁

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参考資料 - 経済産業省・資源エネルギー庁
参考資料4-2
次世代送配電システム制度検討会第2ワーキンググループ報告書
全量買取制度に係る技術的課題等について
― 参考資料 ―
平成 22 年 11 月
目次
0.基本的考え方 .............................................................................................................................. - 2 1.買取主体の考え方 .................................................................................................................... - 3 2.買取契約のあり方 ..................................................................................................................... - 8 3.買取費用算定における控除額の考え方 ...................................................................... - 10 4.卸供給制度との関係、買取期間終了後の扱い......................................................... - 12 5.買取費用の負担に関する電気料金制度上の取扱い ............................................. - 12 6.全量買取制度における買取費用の回収タイミング.................................................. - 13 7.地域間調整に関する考え方 ............................................................................................... - 16 8.その他のコストの取扱い ...................................................................................................... - 20 9.外生的・固定的なコスト要因の料金反映について ................................................... - 21 10.系統安定化対策費用等の負担について .................................................................. - 23 11.環境価値の取扱い .............................................................................................................. - 34 巻末参考資料:次世代送配電システム制度検討会・WG2 委員名簿 ................. - 35 -
-1-
0.基本的考え方
再生可能エネルギーは、地球温暖化対策、エネルギーセキュリティの向上、さらに
は環境関連産業育成の観点から、その導入拡大が重要な政策課題となっている。大
幅な導入拡大を図るための政策の柱として、固定価格買取制度(一定の条件を満た
す再生可能エネルギー由来の電気を、電気事業者が一定の価格で一定期間買い取
ることを義務づけ、あわせて、買取費用の回収に関する仕組みを整備することで再生
可能エネルギーの導入拡大を目指す制度)が位置付けられている。昨年11月には、
非事業用の太陽光発電を対象として、電気事業者が一定の価格・期間・条件で余剰
電力を買い取る、「太陽光発電の余剰電力買取制度」(現行制度)がスタートした。
さらに、昨年11月に経済産業省に設置された、「再生可能エネルギーの全量買取
に関するプロジェクトチーム(全量買取PT)」においては、現行制度を踏まえつつ、新
たに、全量買取制度を導入するための検討が進められ、本年7月には、全量買取制
度の基本的な考え方(制度の大枠)が取りまとめられた。制度の大枠では、全量買取
制度の設計に当たっては、「再生可能エネルギーの導入拡大」、「国民負担」、「系統
安定化対策」の3つのバランスが極めて重要であり、国民負担をできる限り抑えつつ、
最大限に導入効果を高めることが基本方針とされている。
また、本年6月に閣議決定された政府の成長戦略においても、再生可能エネルギ
ーの普及拡大のために全量買取制度を導入することとされており、現在国会に上程
されている「地球温暖化対策基本法案」においても、政府が再生可能エネルギーの全
量買取制度の創設に係る施策を講ずる旨が規定されているところである。
このような状況を踏まえ、本ワーキンググループ(WG)では、全量買取制度の導入
に当たり必要となる買取費用の回収スキームをはじめ、電気事業法に基づく諸制度
とも密接に関連する技術的な事項について、「制度の大枠」で示された基本的な考え
方を踏まえつつ、検討を行った。
以下は、具体的な検討項目ごとに、本ワーキンググループにおける検討結果を取
りまとめたものである。1本ワーキンググループで検討した課題は、買取制度の詳細
設計のみならず、電気料金制度や電気事業者の電源調達に係る競争環境整備とい
った側面もあることから、こうした点を踏まえつつ、具体的な制度設計がなされること
が期待される。
1次世代送配電システム制度検討会は、全量買取PTにおいて事務的に整理すべきとされた諸課題の
すべてを議論の射程としているわけではない。例えば、既設の再生可能エネルギーに係る発電設備に
ついての取扱いについては、RPS法の扱い等との関係があることを踏まえ、当該検討会とは別途,
検討を行う。
-2-
1.買取主体の考え方
1-1.買取主体の考え方
(1)現行制度における取扱い
昨年11月に開始された現行制度においては、非発電事業用の太陽光発電設備を
設置した者から買取りを求められた一般電気事業者が、余剰電力の買取りに係る契
約を締結する(=事実上の買取義務を負う)こととなっている。現行制度の下では、特
定規模電気事業者(PPS)から電気の供給を受ける自由化分野の需要家が余剰電
力の買取りを求める場合、買取りを行う者はあくまで一般電気事業者であり、PPSは
買取りに係る手続の代行等を行う者として位置付けられている。
今後、全量買取制度を導入し、買取対象を拡大する方向性が示されていることか
ら、再生可能エネルギーの電源調達に係る競争上の影響等も勘案しながら、電気の
供給システム全般の中で、買取主体についての制度設計を行っていく必要がある。
(2)買取主体についての基本的な考え方
買取りを行う者は、再生可能エネルギー由来の電気を電力系統ネットワークとの接
続点で買い取った上で、既存の電源を活用しながら、再生可能エネルギーの出力変
動に対応し、需要家に電気を安定的に供給するという流れが想定されるため、こうし
た一連のシステムを円滑に運営することが期待される者を買取義務者とすることが適
当と考えられる。また、買取義務者には、10年以上の長期にわたる買取期間にわた
り、安定的に事業を継続することも期待される。
1-2.買取主体としての各事業者等の位置付け
(1)一般電気事業者の位置付け
上述の基本的な考え方に照らして考えると、一般電気事業者は、以下のような特徴
を有していると言える。
① 自らの供給区域内における電力系統ネットワークを維持・運用している。
② 小売については、規制分野においては供給義務を、自由化分野においては最
終保障義務を負うなど、電気の安定的な供給に関する責任を負う立場にあ
る。
③ 供給区域内における発電及び小売シェアの大部分を占めることから、再生可
能エネルギーの出力変動への対応能力が相対的に高い状況にある。
④ 事業の休止・廃止にあたっては経済産業大臣の許可が必要となるなど、事業
の継続が前提となっている。
上記を踏まえると、現行制度と同様、一般電気事業者が一義的な買取義務を負う
こととすることが適当であると考えられる。
-3-
(2)特定電気事業者の位置付け
特定電気事業者は、許可を受けた供給地点においては、電力系統ネットワークを
保有し、供給義務を負い、退出規制の対象となるなど、基本的に、一般電気事業者と
同様の規制に服している。
また、全量買取制度の導入は、全国大での取組となるところ、特定電気事業者は、
当該供給地点における電気の供給を独占的に行うことに鑑みれば、その需要家が再
生可能エネルギーを導入する際のインセンティブも、一般電気事業者の需要家と同
様に与えられることが適当である。
したがって、特定電気事業者も買取義務を負うものとし、買取費用の負担方法や地
域間調整のあり方等についても、基本的に、一般電気事業者と同様に取り扱うことが
適当である。
(3)特定規模電気事業者(PPS)の位置付け
(a)問題の所在
全量買取制度において、再生可能エネルギー電源の設置者が「買取りを求めた場
合」に買取義務が生ずるとの理解に立てば、電源設置者が買取義務者に「買取りを
求めなければならない」わけではない。また、買取義務者以外の制度の枠外での買
取りを認めることにより、例えば、再生可能エネルギー電源を専門に調達し、CO2排
出係数がゼロ、または非常に低い「グリーン電力」として需要家に販売するといった事
業は、全量買取制度の導入後においても、引き続き行うことが可能となる。
しかしながら、仮にPPSが買取制度の枠外で電源調達を行おうとする場合、政策
的に割り増しされた買取価格と同等以上の価格を提示しないと電気を調達できないと
考えられる。さらに、買取制度の枠外であるがために、費用の回収を買取義務者と同
様に行うことが出来ず、PPSの需要家にこの調達コストを反映させた高い価格での
負担を求めざるを得ない。
このため、仮に「PPSは買取制度に基づく買取りができない」制度とすると、PPS
が再生可能エネルギー電源を調達することは、非常に困難になる 2 ことが想定され
る。
原子力発電を持たないPPSにとって、バイオマスなどの再生可能エネルギーが石
炭と並ぶベース電源としての役割を果たしているケースもあることから、再生可能エ
ネルギーの電源調達に係る競争上のイコールフッティングを確保できるような形で、P
PSの買取制度における位置付けを検討する必要がある。
2
PPSが再生可能エネルギー電源を調達できなくなる場合の影響の例としては、
-電源調達におけるベース電源の減尐
-環境配慮契約法の下、公共施設などの需要家側の入札参加資格として、新エネルギー導入状況
等を考慮しているため、この判断において、不利になるリスク
が挙げられる
-4-
(b)競争上のイコールフッティングを踏まえたPPSの位置付け
一般電気事業者とPPSの電源調達に係る公平性確保の観点からは、全量買取制
度においては、買取義務を負う一般電気事業者、特定電気事業者に加え、PPSも、
全量買取制度の対象となる電気の買取りを行うことができる制度とすることが適当で
ある。
すなわち、原則として「再生可能エネルギーの発電設備の立地場所を供給区域と
する一般電気事業者は、買取義務を一義的には負うものの、PPS(その他の一般電
気事業者も同様)も、同様に買取制度下で電気を買い取ることができ、費用回収につ
いても、買取義務者と同様の扱いとする」という整理を行うことが適当である。
この場合においても、買取価格をはじめとする供給条件が画一的なものであるなら
ば、電源保有者は買取義務者である一般電気事業者に買取りを求める方が容易で
あり、PPSによる再生可能エネルギー調達が困難となることも想定される。したがっ
て、買取制度における価格(FIT価格)等の条件は、「基準」を定めるものであって、買
取りを求める者にとってより有利な条件(例えば、より高い買取価格)を定めることを、
許容すべきである。
このような制度設計とすることで、市場原理の下で、発電事業者側にとっても、安
定的な電源運用を行うといったインセンティブが高まると考えられる3。
(4)自家発自家消費の位置付け
(a)自家発自家消費の位置付け
自家発自家消費を行う者は、一般電気事業者等から自らの需要に不足する電気
の供給を受けることはあり得るものの、電気事業者以外の者からの電気の調達を予
定しておらず、かつ発電した電気は自ら消費するという、いわば自給自足の位置付け
であるため、そもそも、買取主体とはなり得ないと整理すべきと考えられる4。
(b)一般電気事業者の自社設備の取扱い等について
一般電気事業者においても、再生可能エネルギーの拡大に向けて、自らが発電施
設を設置するケースも想定される。 こうした自社設備について自らが発電して販売し
た量を「自らが買い取った」とみなすことは、現実には二者間の調達行為又は取引関
係が存在しないことから、買取制度の対象とすることは困難であり、買取制度の枠外
3
ただし、低圧の対象発電設備については、一般的には住宅用太陽光発電等の小規模かつ不安定な
電源であることに加えて、現在の同時同量制度を前提とすると、発電設備の規模とインターバル・メー
ターの設置コストに照らし、PPSが買取りを行う経済的インセンティブは極めて乏しいことから、事実上、
一般電気事業者のみが買取りを行うことになると考えられる。なお、インターバル・メーターとは、取引
決済時間などの一定時間ごとの電力消費量を計測するメーターであり、一定時間ごとのインバランス
発生量を計測・確定するために、このようなメーターが必要となる。
4
便宜的に、自家発設置者が自ら再生可能エネルギー電源を導入した場合、これを自家消費した分に
つき、自らが買い取ったとみなすこと、あるいは一般電気事業者が買い取ったとみなすことは、現実に
はこのような調達行為又は取引関係が存在しない(家庭における太陽光発電による電気の消費と同様)
ことから困難であると考えられる。
-5-
とすることが適当であると考えられる。
他方で、再生可能エネルギーの導入を加速化するという買取制度の目的に照らす
と、再生可能エネルギーの設備を設置する主体について、特段の制限を設ける必要
はないため、例えば、一般電気事業者の子会社が発電設備を設置し、買取りを求め
ることは、その出資比率にかかわらず、認めることとするのが適当である。これにより、
一般電気事業者が再生可能エネルギーの拡大に向けた取組を進めるにあたって、
他の発電事業者等と同様の担い手としての条件整備がなされるものと考えられる。
(5)特定供給の位置付け
特定供給については、コンビナート内等において、電気の供給者と需要家が相互
に密接関連性を有することが許可の条件となっており、実態としては、複数の者が共
同で電気を融通するものとして、自家発自家消費の延長として位置付けることが適当
である。このため、特定供給については、自家発自家消費に関する扱いと同様、特定
供給を受けた者の間の電気のやり取りについては、買取制度の枠外とすることが適
当である。
(6)複数の電気事業者による買取りについて
一般的に、発電事業者が一つの発電設備により発電した電力を分割し、複数の一
般電気事業者・PPSに卸供給等を行うケースもある。したがって、全量買取制度下に
おいても、同様に、複数の事業者への売電を認めることも可能と考えられる。
これにより、不安定な電源であっても、一定程度の出力が期待できる部分について
は、相対的に安定した出力を確保できることを買取事業者側が評価し、高く見積もっ
て買取ることが可能なのではないか。また、発電側にも、蓄電池の設置等を通じて安
定的に電気を供給すれば、売上げの増加にもつながるといったインセンティブが生ず
るのではないか。
ただし、FIT 価格よりも高値で買い取る事業者(以下のAやB)が、需要に合わせて
買取量を変動させるといった契約を締結すると、結果的にC社は、下図のA社、B社
の買取部分も含めて系統連系可能量を常に確保しておく必要があることや、一般電
気事業者のネットワーク部門に対する実務的な負担の増大を招く可能性があることを
十分に踏まえる必要がある。本ワーキンググループにおける検討においては、複数
の事業者への売電を認めることに慎重な意見も多かったことから、複数の事業者に
よる買取りを可能とするものを一定規模以上の電源に限定した上で、買取に関する
一定の規律を設けることが必要と考えられる。
-6-
<イメージ>
充電
蓄電池の活用:充電
出力(発電量)
放電
C社による買取り
C
C
C
B
放電
B社による買取り
B
B
B
A
A社による買取り
時間
1-3.その他の論点
(1)電源立地場所と買取義務者との関係
一般電気事業者の供給区域の境界周辺において再生可能エネルギー発電施設を
立地した場合、発電事業者からみて、以下の3つのケースが想定されるが、いずれの
ケースでも、電源線コスト等については発電施設の設置者負担とすることを前提に、
買取りを求めることができることとすべきである。これによって、系統連系可能量を踏
まえつつ、諸経費込みで最もコストの安い立地地点から導入が進むことが期待でき
る。
ケース①:発電所所在地を供給区域とする一般電気事業者(A社)による買取り
ケース②:発電所所在地外を供給区域とする一般電気事業者(B社)による買取り
ケース③:区域外に電源線を有する一般電気事業者(B社)による買取り
-7-
2.買取契約のあり方
2-1.買取契約のあり方
(1)「より高値」での買取り
前述の通り、FIT価格は、いわば「基準価格」であって、買い手がつかなかった場合
に一般電気事業者が「基準価格」で最終的な買取義務を負うことを前提に、それ以上
の価格でPPS又はその他の一般電気事業者が買い取ることも認めることが適当であ
る。この場合、FIT価格から一定の電気としての価値相当分を控除した額(※控除額
の算定方法については後述)の範囲でのみ国民負担を求めることを可能とし、FIT価
格を超える部分については、買い取った者が自らの需要家から回収する等、買取制
度の枠外で対処する制度とすることが適当である。
これにより、市場原理に基づき、より安定的な電源はより電気としての価値が高く
評価されることとなり、発電事業者サイドには、安定的な発電パターンとするインセン
ティブが生ずることから、系統の安定性維持の観点からも有益と考えられる。
この場合、高圧に連系される再生可能エネルギー電源のうち、水力、地熱、バイオ
マスについては、比較的安定的な電源と評価され、より高値での買取りの可能性が
あると考えられる。一方、低圧の対象電源については、前述のように、事実上、一般
電気事業者が買取りを行うことになると考えられる5。
<参考>買取総額の内訳(イメージ)
5
低圧に連系された電源からの買取価格の設定については、特段の規制はないものの、実態上、規
制料金との関係が強いことから、各需要家間で公平な取扱いを行うことが適当ではないか。
-8-
(2)FIT 価格を固定し、サーチャージを可変にする買取方式について
買取費用(サーチャージ)の算定に際して、FIT価格より高値の買取りを認める代わ
りに、FIT価格を固定しつつ、回避可能原価よりも高値で電気価値相当分を評価する
買取方法もあるのではないかとの指摘があった(下表における案の2)。 この方式を
採用すれば、理論上は、回避可能費用を高く見積もった事業者が買い取れば、国民
負担(サーチャージ)が相対的に減尐することが想定される。しかしながら、この場合
には、相手方が誰であっても売電収入(買取総額)は一定になるため、発電側に、供
給する電力の質を向上させようとするインセンティブが働かない 6。また、発電事業者
が、相対的に事業の安定性が高い一般電気事業者にしか売却しないこととなった場
合、PPSの電源調達が困難となり、競争に影響を及ぼすことも考えられ、結果的に、
需要家にとっても必ずしも利益とならない事態が生じるおそれがある。なお、発電側
が売電先を決定する際、入札もしくは市場取引をセットで義務化する方法も論理的に
は考えられる。しかし、全量買取制度下の発電側として一般家庭(低圧部門の太陽光
発電等)も多く想定される中で、どのように入札もしくは市場取引を義務化するかとい
う制度設計の問題や、それら制度を円滑に運用するためのコストといった問題が残
る。
したがって、前述の通り、FIT価格は、いわば「基準価格」であって、買い手がつか
なかった場合に一般電気事業者が「基準価格」で最終的な買取義務を負うことを前提
に、それ以上の価格でPPS又はその他の一般電気事業者が買い取ることも認めるこ
とが適当である。
案の1:買取費用は固定、FIT価格以上での買取り可
FIT価格を超える価格での買取りが行われた場合
回避可能原価を超える電気価値の評価が行われた場合
FIT価格
A 買取費用
案の2: FIT価格は固定、サーチャージを可変
電気価値の評価
C
A
B
B
C
(サーチャージ:金額固定)
買取総額
自らの需要家に転嫁
FIT価格を超える価格での応札者がいなかった場合
回避可能原価
(全電源平均可変費:固定)
買取総額
(FIT価格:固定)
上記以外の場合
FIT価格
A
回避可能原価
電気価値の評価
C
買取費用
(サーチャージ:金額固定)
A
買取総額
買取費用
C
(サーチャージ:金額固定)
買取総額
(FIT価格:固定)
下のケースと収入が同じである以上、発電
事業者が、このような選択を行うインセン
ティブが無いのではないか?
回避可能原価
(全電源平均可変費:固定)が
電気価値としての評価
A
B
C
回避可能原価
プレミアム(自らの需要家に転嫁)
買取費用(サーチャージ)
(3)相対契約以外の契約方式
6
ただし、買取制度の中でそのインセンティブが働かないことが社会的にどれほどの悪影響を与える
かは検証が必要であるという意見があった。
-9-
PPSを含めた再生可能エネルギー電源へのアクセス機会拡大と、発電設備設置
者の経済性の追求の観点から、特に、比較的安定的な電源としての運用も期待され
る水力・地熱・バイオマス発電については、発電設備設置者において、積極的に、入
札や日本卸電力取引所のグリーン電力卸取引の活用を行うことが望ましいと考えら
れる。ただし、応札者がいない場合等においては、一般電気事業者が買取義務を負
うこととすべきである。
2-2.買取期間中の分割契約
入札や取引所の活用、さらには相対契約の締結においても、買取期間全体に及ぶ
一括契約に限定する必要はなく、例えば、「入札により、価格及び買取りの相手方は
1年ごとに更新するものとする。FIT価格を上回る応札者がいない場合、FIT価格で一
般電気事業者が買い取る」とすることも認めることとすべきではないか。この場合、発
電設備の管理が相当複雑になることが予想されることから、当該設備の買取開始時
期などが適切に管理される仕組みを整備することが必要である。
また、このような形式をとる場合、長期のリスクをとりにくい事業者も電源調達に参
加することが可能となり、発電事業者の収益が増加することにもつながり得る。現状、
発電設備からの余剰電力の売却に関し、1年ごとの入札を行っている例もみられるが、
これらの電源のうち、全量買取制度の対象となるものについては、上記のような入札
形態も、引き続き許容されることが適当ではないか7。
<買取りの例>(15 年での買取りのケース)
3.買取費用算定における控除額の考え方
(1)回避可能原価の設定に関する論点と現行制度での取扱いについて
買取費用の算定にあたっては、FIT価格から、買取りに伴う回避可能原価(電気と
しての価値)に相当する部分を控除した上で、買取電力量を乗ずることが適当である。
ここで、回避可能原価(控除額)を決める際、(1)可変費のみを控除するのか、固定
費も含めて控除するのか、(2)全電源平均費用なのか、火力平均費用なのか、限界
費用なのかが論点となる。
7
ただし、入札等が繰り返される場合において、買取費用の回収が認められるのは、買取制度において
規定された買取期間までである。
- 10 -
この点、昨年8月の買取制度小委員会報告においては、太陽光発電の余剰買取
制度における控除額の基準として、太陽光の発電量は天候等により変動し、あらかじ
め買い取る量が正確に想定できないことや、当面、電気事業者の設備形成への影響
がないと考えられること、託送余剰インバランスの買取りとの整合性、総括原価方式
に基づく現行電気料金制度との整合性等を踏まえ、一般電気事業者ごとに、全電源
平均可変費を採用することが適当とされたところである。
(2)全量買取制度における控除額の考え方
今後は、比較的出力が安定する再生可能エネルギー電源 8も買取対象に追加され
ることが想定されるが、その際、以下の点に留意することが必要である。
①一般電気事業者等に買取義務が生ずるとすれば、基本的には発電側の意思に
より出力が左右される形となる。
② 発電不調時のリスク(代替供給力の確保のための追加的な負担等)について、
買取側が発電側に求償すると、全量買取制度下においても発電者側に追加的
な事業リスクが発生する。このため、発電不調時のリスクは、高値での買取りな
ど当事者で特段の合意がある場合を除き、基本的には買取り側が負うことが適
当であると考えられること。9
このため、一般に「安定的な電源」といわれるものであっても、直ちにkW価値保有
電源としての評価を行うことはできず、当面、電気事業者の設備形成への影響はな
いと考えられる。したがって、水力・地熱・バイオマスなど、比較的「安定的」とされる電
源についても、あくまで風力などと同様、FIT価格と各社別の全電源平均可変費を控
除額とし、FIT 価格と全電源平均可変費の差額を買取費用とするのが適当と考えられ
る。
(3)PPSにおける控除額の考え方
PPSが買取りを行った場合の控除額(全電源平均可変費)の算定にあたり、PPS
自身のデータ提出を求める場合、①PPSのコストデータの正確性を確保することは、
買取費用の過大・過小推定を防ぐことによって享受できるメリットに比して、新たに発
生する行政コストが過大である(一般電気事業者は、料金規制の下で、省令に則り料
金算定を行っているが、PPS にはこのような料金規制はかけられていないため、新た
な仕組みの構築が必要である)ことに加え、②参入間もない、規模の小さな事業者も
8
比較的出力が安定している電源には水力、地熱、バイオマス等がある。また、出力が不安定な電源に
は太陽光、風力(蓄電池が無い場合)等がある。
9
どのような場合に、出力抑制等の給電指令を行うことが認められるかといったルールについては、W
G1において考え方を整理すべきである。
- 11 -
多い中で、PPSの負担が過重になるおそれがあることから、敢えて厳格に各PPSの
データを元に計算するのではなく、一般電気事業者の全電源平均可変費の加重平均
値により代替することが適当と考えられる。
4.卸供給制度との関係、買取期間終了後の扱い
(1)卸供給制度との関係
電気事業法上、一般電気事業者との間で、一定期間以上、一定規模を超えるもの
である「卸供給」を行う際の料金その他の供給条件については、入札による場合を除
き、「卸供給料金算定規則」により、いわゆる総括原価方式によることが求められてい
る。
卸供給規制に服する設備のうち、全量買取制度の対象となる設備については、他
の再生可能エネルギー電源設置者にはFIT価格での買取りが認められることに鑑み
れば、全量買取制度と卸供給制度のどちらに服するかを発電事業者の選択に委ねる
ことが適当である。
(2)買取期間終了後の扱い
買取義務が生ずる期間が法令に基づき定められる以上、期間終了以後は、法令
に基づく買取義務は生じないとの整理が適当であり、通常の電気事業法に基づく規
制に服するものとすることが適当である。10
この結果、当事者の合意により、卸供給料金規制が適用される取引に移行すること
も考えられる一方、それ以外の相対取引に移行することも考えられる。
5.買取費用の負担に関する電気料金制度上の取扱い
全量買取制度の大枠においては、再生可能エネルギーの全量買取制度は、「再生
可能エネルギーの導入拡大」「国民負担」「系統安定化対策」のバランスに配慮し、国
民負担を可能な限り抑えつつ、最大限に導入効果を高めることが基本方針とされて
いる。
また、買取費用の負担については、すべての需要家が公平に負担する観点から、
電気の使用量に応じて負担する方式が基本とされたところである。こうした、負担の
公平性を確保する観点からは、確実に買取費用を回収することが必要であり、このた
めには、例えば、電気事業者に買取費用を回収するための請求権を付与するととも
に、規制小売分野については、供給約款に、買取費用の負担を「再生可能エネルギ
ー促進付加金(以下「サーチャージ」と略称)」として、電気事業法における「料金その
10PPSの場合、買取期間終了以後は、法令に基づく買取り及びそれに伴う買取り費用の回収ス
キームを利用する権利が終了する。
- 12 -
他の供給条件」の一部として位置づけることが考えられる。
また、自由化分野におけるサーチャージについても、電気の供給の対価を構成す
る要素として、電気の本体料金と一体的なものとして位置づけ、規制小売分野と同様
の取扱いを確保していくことが必要不可欠である。 具体的には、一般電気事業者・P
PSともに、すべての需要家に対し、それぞれ電力需給契約において、負担を求める
とともに、最終保障約款にサーチャージを位置づけることが必要ではないか11。
6.全量買取制度における買取費用の回収タイミング
6―1.現行制度における買取費用の回収タイミング
現行制度は、1年分(暦年:1~12月)の買取費用を確定した上で、翌年度(翌年4
月~翌々年3月)に回収する事後回収方式となっている。現行制度は、実績に応じた
回収を行うことに加え、経済危機対策としての位置づけもあったことから、可能な限り
前倒しして買取りを開始した一方で、一般電気事業者が回収側のシステム改修の準
備を行うための時間を確保する必要性もあったため、回収にタイムラグが生じている
ものである。
6-2.全量買取制度における買取費用の回収タイミング
全量買取制度においては、買取対象が大幅に拡大することに加え、一般電気事業
以外の事業者も買取りを行うことが想定される。そのため、回収のタイミング等のスキ
ームについて、見直しを行う場合も含め、選択肢を整理する。
(1)買取費用の回収タイミング(案の1:事後回収方式)
11規制小売分野、自由化分野いずれにおいても、サーチャージは電気の本体料金と一体的なものとし
て取り扱われることから、支払拒否の場合には、約款等に従い供給停止の対象となる。
- 13 -
現行制度との連続性を重視するならば、引き続き、1年分(暦年:1~12月)の買取
費用を確定した上で、翌年度(翌年4月~翌々年3月)に回収する「事後回収方式」を
採用することが考えられる。
この場合、回収したサーチャージを、地域間調整を経て清算することが考えられる
が、買い取った電気のサーチャージ額を電気事業者が最終的に回収できるのは、買
取りから1年半程度経過した後となり、その間は事業者が負担を肩代わりする形とな
る。特に、相対的に財務基盤の弱いPPSのうち、電源に占める再生可能エネルギー
の買取比率が高い事業者ほど負担が重くなる。
サーチャージ単価の決定に際し、買取費用については実績が確定しているが、総
需要電力量は見込みで設定することとなる。このため、実際の回収総額は回収すべ
き買取総額と多尐のずれが生じることが考えられ、差額分については事後的に調整
する必要があると考えられる。
(2)買取費用の回収タイミング(案の2:同時回収方式)
買い取られた電力は、同時に需要家に供給されるため、本来的には、回収につい
ても、買取りと並行して実施することが適切であるとも考えられる。
サーチャージ単価については、総需要電力量に加え、買取電力量についても見込み
で設定する必要がある。このうち、買取電力量の想定については、実績をベースに、
発電事業者の事業計画、太陽光パネルメーカーの販売見込み、一般電気事業者の
電力供給計画など、様々なデータを踏まえ、買取小委の審議を経て国が行うことが一
案である。
実際の回収総額は回収すべき買取総額と多尐のずれが生じることが考えられ、差
額分については事後的に調整する必要があると考えられる。
また、制度開始当初は、現行制度のサーチャージと新制度のサーチャージが併存
することとなる。
- 14 -
(3)買取費用の回収タイミングについて(総論)
回収のタイミングについて、2つの案のメリット・課題等を整理すると以下のとおり。
ワーキンググループの審議においては、①買い取られた電力は同時に需要家に供
給されるため、回収についても、買取りと並行して実施することが適切であること、②
事後回収方式の場合、電気事業者に金利負担が発生し、結果的に国民負担が増す
おそれがあること、③相対的に財務基盤が弱く、かつ、再生可能エネルギー買取量
比率の高いPPSほど、財務への影響が大きくなること、④事後回収方式の場合、買
取りが終了した次年度においては、買取りは行われないにもかかわらず、負担だけ
- 15 -
が発生することなどから、同時回収方式をベースとすることが適当とする意見が多数
であった。
ただし、同時回収方式とする場合、サーチャージ単価を設定する際、前提となる買
取費用、需要電力量とも見込みで設定する必要があるため、実際の回収総額は回収
すべき買取総額と多尐のずれが生じることが考えられることから、差額分については
事後的に調整することが必要である。また、制度導入当初については、現行余剰買
取制度のサーチャージ回収と全量買取制度のサーチャージ回収が併存するため、影
響を受ける需要家の理解が得られるよう、広報・周知の徹底といった対策が必要と考
えられる。買取費用予測の精度を上げる観点から、同時回収方式を基本としつつも、
新設分に係る買取費用を翌年度に事後回収する方式と組み合わせるなど、一定のア
レンジも考えられる。いずれにせよ、需要家に対する影響を踏まえる必要がある。
7.地域間調整に関する考え方
7-1.地域間調整に関する基本的な考え方
地域間調整を行わない場合、サーチャージが一般電気事業者の供給区域及び特
定電気事業者の供給地点ごとに買取費用と総需要電力量に応じて設定されることか
ら、再生可能エネルギーの導入が進んでいる地域では、サーチャージ単価が相対的
に大きくなると見込まれる。
全量買取制度の大枠においては、「地域ごとに再生可能エネルギーの導入条件が
異なる中で、買取対象を拡大するに当たって、地域間の負担の公平性を保つため、
地域間調整を行うことを基本とする。」とされた。
太陽光発電の設備容量あたりの発電電力量
風況マップ
風速(m/s)
出典:新エネルギー財団のデータ(http://app2.infoc.nedo.go.jp/nedo/)
より資源エネルギー庁作成
出典:新エネルギー財団のデータより資源エネルギー庁作成
- 16 -
(参考)地域ごとの負担水準について(試算)
全量買取制度の開始に伴い、比較的導入予測量が大きく、また、地域の特性に応じ
て相対的な導入量に偏りが生ずる電源として、太陽光発電に加え風力発電が挙げら
れることから、買取費用について、一定の仮定の下試算を行った。
その結果、2012年度において、地域間調整を行わない場合においては、負担が最
大と最小の地域間で太陽光発電で約6倍、風力発電で約18倍の負担格差(単価)が
生ずるものと試算された。
電源別サーチャージ単価比較(加重平均を1とした場合の指数)
太陽光発電
風力発電
2.50
4.00
3.50
2.00
3.00
2.50
1.50
2.00
1.00
1.50
1.00
0.50
0.50
0.00
0.00
7-2.現行制度における買取費用の回収スキーム
昨年11月に開始された現行制度では、太陽光発電で発電された電力のうち自家
消費した後の余剰電力を対象として、一般電気事業者のみが買取義務を負うことと
なっている(PPSは実務上、発電施設設置者の手続き面でのコストを勘案し、一般電
気事業者に代行して手続を行うことは可能)。
買取りに基づき発生した負担については、同一地域内では同一単価で、電気料金に
上乗せする形で回収することとなっている(PPSの需要家については託送スキームを
利用)。
(回収スキームのイメージ)
サーチャージ単価:
10銭/kWh
販売電力量:
5億kWh
サーチャージ単価:
10銭/kWh
サーチャージ単価:
7銭/kWh
販売電力量:
30億kWh
販売電力量:
50億kWh
A電力
PPS
回収:
0.5億円
納付:0.5億円
(託送スキーム利用)
買取
支払:
3.5億円
需要家
B電力
回収:
3.0億円
需要家
買取
支払:
3.5億円
販売
販売
太陽光
太陽光
- 17 -
回収:
3.5億円
需要家
7-3.地域間調整の具体的方法
地域間調整を行う具体的な方法として、(1)電気事業者間で清算を行う方式と、清
算機関を介して清算を行う方式が想定されることから、両案のメリット及び課題を整理
した。
(案の1:電気事業者間で清算)
電気事業者間で直接清算を行う場合、買取費用の清算の流れとしては、以下のと
おり想定される。
①各電気事業者は、全ての需要家からサーチャージを回収。
②その後、PPS分については、託送スキームを利用することにより、一般電気事
業者にサーチャージを集約。
③一般電気事業者及び特定電気事業者が、他の電気事業者の買取実績に応じ
て、サーチャージを配分、清算。
(案の2:清算機関経由で清算①)
清算機関経由で清算を行う場合、買取費用の清算の流れとしては、以下のとおり
想定される。
①買取側:買取りを行う電気事業者(一般電気事業者、特定電気事業者及びPPS)
は、毎月、買取実績を報告。
②回収側:電気事業者は、全ての需要家からサーチャージを回収。並行して清算
機関に対して、自らの販売電力量に応じ、サーチャージ相当額を支払う。
③清 算:清算機関は、買取実績に応じて買取費用相当額を清算給付。
- 18 -
清算機関があれば、PPSの回収したサーチャージの調整は可能であり、別途事業
者間で清算を行う仕組みを用いることで、追加的な信用リスクを一般電気事業者が
負う合理性もないため、PPSは清算機関と直接、清算を行うことが適切ではないか。
なお、清算機関のコストについても、全量買取制度の実施に必要な費用として、サ
ーチャージの算定基礎に含めることが一案である。 その場合、算定基礎については、
行政が関与するなど適切な手段により透明性をもって決定されることが必要と考えら
れる。
以上を踏まえ、2つの方式スキームのメリット、課題等を整理すると以下のとおり。
- 19 -
本ワーキンググループにおいては、①収支の流れが明確になること、②PPS・特
定電気事業者も含む多数の事業者間での調整に対応可能であること、③一元的に
資金決済を行う清算機関を経由した方が、地域間調整に係る全体コストを抑えること
が期待できること等から、清算機関方式が適当であるとの意見が大勢を占めた。なお、
清算機関となる具体的な主体や、清算業務と他の業務との区分をどのように行うか、
信用リスクに対してどのように対応するか等については、より詳細な検討が必要であ
る。
また、清算機関のコストについても、全量買取制度の実施に必要な費用として、サ
ーチャージの算定基礎に含めることが一案である。その場合、算定基礎については、
行政が関与するなど適切な手段により透明性をもって決定されることが必要と考えら
れる。
8.その他のコストの取扱い
8―1.その他のコストの取扱い(諸経費の取扱い)
全量買取制度の導入に伴い、電気事業者においては、買取費用以外に、システム
改修や再生可能エネルギー発電設備設置者への払込みに要する諸経費等の負担
の発生が想定される。これらについては、適正な費用の明確な特定が困難であること
から、実績費用に基づきサーチャージとして需要家が負担する仕組みにはなじまず、
料金原価に算入することが適当である。その際、これら費用の料金原価あるいは会
計上の扱いについて整理する必要がある。
8-2.その他のコストの取扱い(税務上の取扱い)
電気事業については、事業税が収入ベースで課税されているところ、現行制度に
おいて、買い取った後に販売された電力は、全体として販売電力と同様に、営業収益
(収入)と見なされ、事業税が課税されるが、そのコストはサーチャージの回収対象費
用に含まれている。全量買取制度においては、現行制度と異なり、清算機関と事業
者、あるいは事業者間で新たに金銭のやり取りが行われることなどを踏まえ、電気事
業者が徴収する再生可能エネルギー電気サーチャージの収入と、地域間調整におい
て各電気事業者が受領する調整のための金銭収入、及び清算機関が徴収・清算す
る金銭について、税務上(法人税・事業税)・会計上の扱いを整理する必要がある。
- 20 -
<資金の流れ(イメージ)>
9.外生的・固定的なコスト要因の料金反映について
9-1.電気料金制度及び料金改定プロセス
現行電気事業制度下の規制小売分野の電気料金は、総括原価を基に算定される
料金(基本料金+従量料金)と、燃料費調整額(毎月、輸入燃料の貿易統計価格に
基づき自動的に料金に反映)とを合算する形で決定されている。
規制小売料金改定に当たり、値上げとなる場合には、経済産業大臣の認可(電気
事業法(以下、「法」)第19条第1項)、値下げの場合、その他の電気の使用者の利
益を阻害するおそれがないと見込まれる場合には同大臣への届出(法第19条第3項)
が必要となっている。認可プロセスにおいては、供給約款料金審査要領に基づく審査
や公聴会の開催(法第108条)等が求められており、申請受理後の標準処理期間は
4ヶ月 12である。一般電気事業者による事前準備の期間を含めると半年以上を要す
る。
12
「電気事業分科会第2次報告」(平成21年8月)において、4ヶ月の標準処理期間を2ヶ月程度とす
るように、料金認可プロセスの短縮化について提言がなされたところ。
- 21 -
9-2.サーチャージの料金制度上の取扱い
電気事業法がこうした認可手続を求めている趣旨は、一般電気事業者が独占供給
体制の下で能率的な経営によらない非効率なコストを需要家に転嫁することを防止
することを目的としたものと考えることができる。 このことは、認可の審査手続におい
て、法令等の一定の基準に基づいて算定される義務的経費については、諸元や計算
過程の正誤に関する確認に限定すべきとされていること(電気事業分科会第2次報
告:平成21年8月)等とも整合的である。
こうした中、全量買取制度における買取費用の負担については、現行制度と同様
に、「再生可能エネルギー促進付加金(以下、「サーチャージ」)」として、電気事業法
における「料金その他の供給条件」の一部として位置づけることが想定されているとこ
ろである。
サーチャージについては、以下のような性質を有すると考えられる。
①外生的な要因によって、電気事業者にとってのコスト増加要因となっている。
②外生的な要因によって、サーチャージの変更頻度が決まり、毎年度増加していく
ことが確実視される状況である。
③電気事業者にとって、効率化努力の余地がない、または、コスト増加を避けるた
めの合理的な代替手段が存在しない。
④コスト増加要因が法令の根拠に基づき発生している。
⑤コストの額が明確なルールに基づき算定可能となっている。
このような、「外生的・固定的なコスト要因」としての性質を有しているものにまで、
電気事業者のコスト削減等に向けた経営努力を求めることは、料金規制の趣旨にか
んがみれば不合理であり、電気事業者に過剰な規制を強いることとなると考えられる。
サーチャージ手続が硬直的なものであるために、規制小売分野における料金改定に
伴う約款変更手続を躊躇する電気事業者が出てくる場合には、結果として、電気料
金に上乗せする形で需要家が公平かつ確実に負担するという全量買取制度の負担
に係る考え方にそぐわない結果を生ずる懸念もある。
9-3.外生的・固定的なコスト要因の取扱い
以上を踏まえると、本ワーキンググループにおける検討結果としては、「外生的・固
定的なコスト要因」としてのサーチャージの料金反映については、円滑な実施のため
にも、電気料金制度上、より簡便かつ機動的な手続きによることを可能とすることが
適当と考えられる。
また、料金原価算定を行うにあたって、サーチャージ以外にも、外生的な要因等に
- 22 -
よるコスト増加と考えられるものが存在する可能性があることから、 こうしたコスト増
加については、サーチャージ同様、他の費用項目と区分した上で機動的に料金に反
映する仕組みを設けるなど、電気事業制度面での手当について、適切な場において
更なる検討を行うべきである。
10.系統安定化対策費用等の負担について
10-1.系統安定化対策費用の負担に関する基本的考え方
全量買取制度の大枠においては、電力系統の安定化対策に関する基本的考え方
として、以下のとおり取りまとめられている。
・系統安定化対策については、電力需要が特に小さい日等に備えて、将来的に、
蓄電池の設置や太陽光発電等の出力抑制を行うなど、国民負担を最小化しつ
つ、再生可能エネルギーの最大限の導入を可能とするような最適な方策を、今
後検討していく。
・また、将来的な系統安定化に関する技術開発動向や、実際の系統への影響等を
見据えつつ、必要に応じて制度の見直しを検討する。
10-2.系統増強対策費用等の負担ルールに係る具体的論点
本検討会においては、最近の審議会や検討会等において、当面の課題として指
摘・要望がなされている、以下の3つの論点について検討を行った。
【論点1】事業用発電設備の設置に伴う系統増強対策費用の負担ルールについて
現状のルールでは、発電事業者が電源線及び系統増強対策費用を負担することとして
整理されている。一般電気事業者が設定している送電容量や連系可能容量を超えて
再生可能エネルギーを連系しようとする場合、発電事業者側が電源線や系統増強コス
- 23 -
トを負担する意向の有無にかかわらず、系統増強費用が高いといった理由で拒否され
る場合がある。
国民負担を抑えつつ(=費用対効果を踏まえつつ)再生可能エネルギーの導入拡大を
目指す全量買取制度下において、①電源線コスト及び②系統増強コストについての適
切な負担ルールとして、どのような整理が適当と考えられるか。
【論点2】住宅用太陽光発電に係る系統増強対策費用のうち、トランス増設費用の扱い
従来、太陽光パネルの導入に伴う配電対策として行われる柱上変圧器の増設に係る
費用については、原因者が特定できることから、太陽光パネルの設置者負担として整
理されている。しかし、増設が必要となるタイミングで設置した者は、対策が必要となる
事態のトリガーは引いているものの、すでに周辺の住宅にパネル設置をした者も、トラ
ンス増設の原因に寄与しているともいえる。こうした事情を踏まえ、適切な負担ルール
としてはどのようなものが考えられるか。
【論点3】事業用発電設備への出力抑制及び抑制に伴う補償措置の可否
電力需要が尐ない日等における電力の需給バランスを維持する観点から、一定の再
生可能エネルギー発電設備に対する出力抑制を行うとの考え方があり、現状(RPS制
度下で)、例えば、一般電気事業者が風力発電の買取りを行う場合、こうした条件を織
り込んだ一定の「解列枠」の設定もなされているところ。
一切の出力抑制を行わないとすると、再生可能エネルギーの系統連系可能量が一定
限度に限定されたり、系統増強対策の増大につながるといった懸念がある。一方で、
頻繁に出力抑制がなされると、発電事業者の予測可能性が確保されず、再生可能エネ
ルギーの導入にブレーキがかかるといった懸念もある。こうした状況下で、仮に出力抑
制を行う場合、それに伴う補償措置等を講ずることが適当か。
(参考)現行制度における系統安定化対策費用の負担の考え方について
(1)基本的考え方
住宅用太陽光発電の大量導入に伴う系統安定化対策(蓄電池の設置等)のよう
に、対策の直接の原因者が明確に特定されない場合には、電気の使用者が広く受益
することから、系統安定化対策費用は電気料金で一般の需要家が負担(一般負担)
するのが適当。
再生可能エネルギーの大量導入時において必要となる系統安定化対策費用は、
電力需要が特に小さい日等において、どの程度の出力抑制や需要拡大策が講じら
れるかによって、必要となる蓄電池の容量が大幅に変動し、対策費用全体が大きく変
わると試算されている。ただし、こうした蓄電池の設置等にかかる費用は、短期的に
発生するものとは見込まれていない。
- 24 -
(2)トランス増設費用の負担の取り扱い
配電系統における柱上変圧器(トランス)の増設などの電圧上昇対策については、
現在は、原因者負担として整理されており、電圧上昇対策の直接の原因者が明確に
特定される場合、太陽光パネル等を設置した者のみが費用負担することとなってい
る。
(3)事業用発電施設の設置に伴う系統増強費用の負担ルールについて
風力発電やメガソーラー等、発電事業者が電力系統への接続等を求める場合に
必要となる系統増強については、発電事業者のみが便益を受けるものであり、対策
の直接的な原因者が明確に特定されるものとして、原因者負担(特定負担)との整理
がなされている。
一般電気事業者が新たに電源を設置することに伴って送変電設備を新増設する
場合、電源線コスト(原則として、最初の変電所まで)については、設置事業者のみが
便益を受けること等を踏まえ、費用全額を原因者が負担することとし、電源に係る費
用として料金(送電非関連費用)から回収13している。一方、変電所から先の系統増強
費用については一般負担とし、託送料金(送電関連費用)から回収している。
また、PPSが新規に発電設備を設置し、託送を求めるに際して既存系統の増強が
必要となる場合にも、原則として、一般電気事業者の系統増強と同様の費用負担ル
ールが適用される。これは、送電線の増強原因がPPSの新規接続電源として特定で
きるかという課題に加えて、仮に特定できたとしても、送電線は新規接続電源だけで
はなく、他の既存電源も利用している中で、一般電気事業者とPPSのイコールフッテ
ィングの観点等から、一般負担の考え方としたもの 14である。PPSの電源を含めた効
率的な供給が達成されれば、結果的に需要家にとっての利益にも資すると考えられ
る。
10-3 電源線敷設に係る費用負担ルールについて
論点1のうち、電源線に係る費用負担については、従来から原因者が特定出来る
ものとして特定負担として整理されてきた。これを一般負担とする場合、発電事業者
のみが利用する送電線を社会全体で支えることとなる上、全体として高コストな電源
立地に過剰なインセンティブが付与され、結果的に最終的な需要家負担の増大を招
13
ただし、広域開発電源などで、ネットワーク増強に多額の費用を要するものについては、特定の事
業者が便益を受けるものとして、工事費負担金を原因者負担とし、一般電気事業者が電源に係る費用
として料金(送電非関連費用)から回収している例がある。
14託送料金として域内の需要家全体に負担が生ずる以上、全体の負担が適当でないほど大規模で、
効率的なネットワークの形成上疑義がある場合にまで、当然に設備増強が求められる趣旨ではない。
このような場合には、一般電気事業者における広域開発電源の場合と同様、原因者負担とすることも
十分考えられる。
- 25 -
くおそれがある。他方、特定負担であれば、全量買取制度の下で、電源線費用を含
めたコストがより低い地域から、順次、発電設備が設置されると考えられる。したがっ
て、電源線敷設に係る費用負担については引き続き、特定負担とすることが適当で
ある。
ただし、系統連系技術要件ガイドライン等を踏まえ、一般電気事業者が電圧調整
装置の設置等を求める場合、具体的な対策の適切性や費用負担の妥当性について
は、一義的な挙証責任を一般電気事業者側が負うことが適当である。
<イメージ>
10-4 系統増強に係る費用負担ルールについて(総論)
現状においては、再生可能エネルギー電源に限らず、発電事業者が発電設備を設
置することに伴う系統増強費用については、対策の直接の原因者が明確に特定でき
れば、特定負担が原則である。
これに対して、諸外国の中には、再生可能エネルギー導入拡大の観点から、発電
事業者が再生可能エネルギー発電設備を設置する場合に必要となる系統増強対策
費用について、一般負担とするとの考え方もある。
想定され得る系統増強対策としては、大別して、(1)送電線の新増設と、(2)電源
線と送電線との接続点における電圧維持対策のための設備増強があるが、相対的
に大規模な投資が必要となるのは(1)である。
特に、風力や太陽光のように、設備利用率の低い電源のために送電線の増強を行
う場合、発電電力量あたりの設備償却費用が高くなることから、限界費用を十分踏ま
えた上で、適切な費用負担ルールを作ることが必要と考えられる。
- 26 -
<系統利用状況のイメージ図>
安定電源
火力
原子力
水力
設備利用率60~80%程度
電源
太陽光
風力
設備利用率10~25%程度
需要地
出力が不安定で利用率の低い電源を一般負担として扱う場合には、
社会的コストの増大を招くため、適切なルール作りが必要ではないか。
全量買取制度においては、再生可能エネルギー発電設備が設置された場合に、
買取義務を負う者(一般電気事業者等)は、一定の買取拒否事由に該当しない限り、
技術的に可能な範囲で売電契約を締結する義務を負うため、系統連系(送電網との
接続)を拒否することができないとの整理が基本である。この場合、一定の買取拒否
事由に該当することについての挙証責任は、買取り側にあるとの点で、従来の売電
契約とは質的な変化があり、従来よりも再生可能エネルギー導入を促進する方向で
制度設計することが考えられるところである。
このような中、系統増強費用の負担については、諸外国でのルールも踏まえ、大
別して以下の2つのルールが想定可能である。
(案の1) 系統増強費用については発電事業者(設置者)の負担とするが、発電事業
者が費用を負担する場合には、一般電気事業者は、原則として 15、系統増強を行うも
のとし、また、対策内容の妥当性や対策費用の適切性に対する挙証責任は一般電
気事業者が負うものとする。具体的には、系統増強に係る具体的な対策内容の妥当
性や対策費用の適切性について一般電気事業者が適切な説明を行い、仮に、当事
者間で合意できない場合には、中立的な第三者機関において紛争処理プロセスに委
ねることとし、その際の一義的な挙証責任は、一般電気事業者側が負う。
(案の2) 系統増強対策費用については一般負担(一般電気事業者が託送料金等
で回収)とするが、非合理的なコストを要する場合にまで系統増強を行うことは、最終
的な需要家(国民)負担が増大することから適当ではないため、系統増強を行う場合
の費用に上限を設け、一定以上のコストがかかる場合には、買取拒否事由とする。
15
「例えば新規用地の取得困難や地域の反対など、費用以外の要因により増強が不可能な場合」
(風力発電系統連系対策小委員会中間報告書(平成16年7月))などが想定される。
- 27 -
具体的には、系統増強対策費用が発電施設の設置費用(電源線設置費用を含む)
のX%16以上となる場合には、買取義務は生じないものとする。系統増強に係る対策
内容の妥当性や費用の適切性について争いがある場合には、第三者機関での紛争
プロセスに委ねる。
以上の案を比較検討するに際し、風力発電を例として、以下の5つの立地地点の
類型を想定し、系統増強対策費用の負担ルールの設定によって、再生可能エネルギ
ー発電設備の立地や最終的な需要家負担がどう影響を受けるかを検討する。
・地点A: 立地(風況)は多尐劣るが、系統増強対策費用をほとんど必要としな
い。
・地点B: 電源線コストに加え、多尐の系統増強が必要となる。
・地点C: B地点よりも立地(風況)の面で優れるが、一定の系統増強が必要とな
り、系統増強対策費用の占める比率も比較的大きい。
・地点D: 立地(風況) は非常に優れるが、系統まで非常に長い電源線の敷設が
必要となる。
・地点E: 立地(風況)及び電源線費用面では優れているが、系統増強対策費用
が非常に高い。
上記のモデルケースを踏まえ、系統増強費用の負担につき、案の1(発電事業者
負担とするが、費用負担を行う場合には系統増強を実施)、案の2(一般負担とする
16ドイツ再生可能エネルギー法においては、「25%基準」が1つの目安となっている。具体的には、ドイ
ツ再生可能エネルギー法第9条において、経済的に不合理な場合は系統運用者は系統の増強責務を
負わないと規定されている。2004 年の再生可能エネルギー法の改正時の付属文書において、系統増
強対策費用が発電設備の建設費の 25%を超える場合は、増強の必要がないとされている。
- 28 -
が、電源設置コストの一定比率(25%と仮定)以上の系統増強コストが必要となる場合
には買取義務が解除)それぞれについて、想定される状況及び課題等を整理すると、
以下のとおり。
本ワーキンググループにおいては、いずれの方式を採用すべきかについて様々な
議論が展開されたが、全体としては、①案の1は市場原理に基づき、系統増強費用を
含めた最終的な需要家負担が低い地点から発電設備の立地が進むという点で費用
対効果に優れ、原則一律価格での買取りという全量買取制度の大枠の考え方とも整
合的であること、②案の1は系統増強が必要ない発電施設との公平な競争条件が確
保されること、③案の2は、買取義務が解除される上限値を合理的な考え方に基づき
設定することが困難である 17こと等から、案の1を採用することが適当であるとする意
見が多数であった。
すなわち、系統増強費用については発電事業者(設置者)の負担とするが、発電事
業者が費用を負担する場合には、一般電気事業者は、原則として、系統増強を行うも
のとすることが適当である。また、系統増強に係る具体的な対策内容の妥当性や対
策費用の適切性について一般電気事業者が適切な説明を行い、仮に、当事者間で
合意できない場合には、中立的な第三者機関において紛争処理プロセスに委ねるこ
ととし、その際の一義的な挙証責任は、一般電気事業者側が負うこととすべきではな
いか。
なお、発電事業者負担方式とすることにより、風力発電等の適地に計画的かつ効
17
ドイツにおいては、非合理的な系統増強費用となる上限値として「25%」が設定されているが、あくま
で目安であり、何らかの科学的根拠に基づいて設定された水準としては確認できなかった。
- 29 -
率的な設置が順調に進まないといった状況が生ずる場合、政策的に必要であれば、
一定の区域において、系統増強が進むような戦略的な支援策を講ずることも一案で
ある。
また、いかなる方式を採用するにせよ、全量買取制度下における再生可能エネル
ギーの導入状況を見つつ、適切なタイミングで、系統増強に関する費用負担ルール
のあり方を改めて検討し、必要に応じてルールを見直していくことが適当と考えられ
る。
(参考)各国の系統連系に係る費用負担の扱いについて
(2)住宅用太陽光発電設置に伴うトランス増設費用の負担
従来、太陽光パネルの導入に伴う配電対策として行われるトランス(柱上変圧器)
の増設に係る費用については、原因者が特定できることから、太陽光パネルの設置
者負担として整理されている。しかし、増設が必要となるタイミングで設置した者は、
対策が必要となる事態のトリガーは引いているものの、すでに周辺の住宅にパネル
を設置した者も、トランス増設の原因に寄与しているともいえる。こうした事情を踏ま
え、適切な負担ルールとしてはどのようなものが考えられるか、検討を行った。
トランス増設費用については、増設による対策が必要となるタイミングで太陽光パ
ネルを設置した者について原因者負担の原則が妥当し得、当該増設費用を負担する
ことが原則である。しかしながら、トランス増設費用を特定の者が負担することは、同
じ太陽光パネルを設置した者の間に結果的に不均等に生じるコストである。一方、こ
うした不均等に生じるコストは、太陽光パネル設置者の投資リスクを増大させるもの
- 30 -
であり、今後の太陽光発電の普及拡大に支障となる懸念がある。
<トランス増設の例>
したがって、こうした不均等なコストを緩和するための方策について検討する必要
があり、何らかの手段によって、パネル設置者を支援する仕組みを構築することによ
って、普及拡大のための環境を整備すべきである。
不均等なコストを緩和するための方策として、太陽光パネルメーカーからは、トラン
ス増設費用負担に関して、何らかの協力の意向が示されている。こうした取り組みに
ついては、設置者側のコストの予見可能性が高まり、普及拡大が促進されるものであ
るため、望ましい在り方と考えられる18。
(3)事業用発電設備への出力抑制と補償措置の可否
(a)事業用発電設備への出力抑制と補償措置の可否(総論)
全量買取制度は、一定の期間、一定の価格(FIT 価格)による買取契約が締結され
ることが確保されることを通じて、再生可能エネルギー発電設備を設置する事業者の
採算性と予測可能性を向上させ、その結果、再生可能エネルギーの導入を加速化す
ることを目的とするものである。
他方で、買取対象となっている再生可能エネルギー発電設備について、電力需要
が尐ない日等において電力の需給バランスを維持する観点から、一定の系統安定化
対策が必要となる中、国民負担を抑える観点から、出力抑制 19の手段によることも、
十分に想定されるところである。
その上で、仮に出力抑制を行う場合の対応として、発電事業者の採算性及び予測
可能性を確保していこうとする観点からは、以下の2つの方策が考えられるのではな
いか。
18今後、この方向を軸に、電気事業者や他の関係者の関わり等、仕組みのあり方について、官民協力
して検討を続けることが適当である。
19
住宅用太陽光発電等については、短期的には、需給上の理由から出力抑制を行う必要はないと考
えられるものの、将来的な出力抑制ルールについては、導入の進捗状況を踏まえつつ、適切なタイミ
ングで結論を得る。
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(案の1)実際に出力抑制がなされた場合に、発電事業者に対し、抑制に応じて
何らかの直接的な経済的補償を行う。
(案の2)実際に出力抑制がなされた場合の経済的な補償は行わないが、あら
かじめ、出力抑制が行われる際の上限値を設定する。
案の1、案の2についての評価及び課題は以下のとおり。
<案の1:出力抑制に伴う直接的な補償>
出力抑制が行われた場合に経済的な補償がなされるとすれば、発電事業とし
ての採算性、予測可能性は確保されることになる。しかしながら、以下のような
問題点がある。
①買取費用は、再生可能エネルギーにより実際に発電された電気のために需
要家が負担するものであるが、現在の規制小売料金を前提とすると、出力
抑制の場合には、発電されていない電気のために負担が発生することとな
るため、国民理解を得ることが困難と考えられる。
②太陽光や風力発電の場合、「出力抑制がなされなければ発電したと考えら
れる電力量(出力抑制量)」を正確に計測することが困難と考えられる。
<案の2:出力抑制の上限値の設定>
出力抑制に対する経済的な補償がなされない中で、頻繁に出力抑制がなされ
る可能性があると、事業リスクは高まり、新規の投資が控えられる懸念もある。
しかし、一定の合理的なレベルの出力抑制まではあり得るものの、それ以上の
抑制は基本的にはないことを前提に、発電設備の投資を行うかどうかを決定で
きる状況であれば、発電事業者の予測可能性は確保されているといえる。ま
た、電力ネットワーク全体でみた連系可能容量も増加することが期待できる。
(b)事業用発電設備に出力抑制を行う場合の考え方(具体案)
以上を踏まえ、本ワーキンググループにおいては、発電事業者の予測可能性の確
保と国民負担とのバランスに鑑み、①全量買取制度下で、一般電気事業者が電力需
給上の理由から、買取制度の対象となる事業用発電設備に対する出力抑制を行う場
合20、当該出力抑制に対する経済的な補償は行わないこととするが、②事業者の予
20
電力需給上の理由以外に、出力抑制が必要となるものとして、電力系統設備の点検・修繕は、一定
の頻度で一定の時間発生することがあらかじめ予測できるものであり、また、災害等による買取りの
不能は、やむを得ない事由に伴う出力抑制と考えられることから、その際の補償も不要と整理するこ
とが適当と考えられる。
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測可能性を確保する観点から、あらかじめ、電力需給上の理由から出力抑制が行わ
れる際の上限値(X%)を設定するとの考え方が大勢であった。
出力抑制の受忍限度となる上限値については、例えば、電力需給上の特異日が1
4日または30日として、4~8%の間で設定するのが一案であるが、発電事業の予測
可能性に与える影響や、系統安定化対策全般の考え方を踏まえつつ設定することが
適当である。
その上で、このルールを継続すると、上限値の範囲では対応できないほどの出力
抑制が必要となる場合には、改めて、追加的な対策の検討を行うものとすることが適
当である。その場合でも、それ以降の新規設置分の出力を抑制することとしたり、蓄
電池の設置を行うといった対策を行うことで、既設設備の出力抑制の頻度について
はX%以内に抑えることは可能である。
<「上限Y%ルール」に関する補足説明>
出力抑制の上限値を14日間(4%)ないし30日間(8%)としているのは、特に需要
量の尐ないゴールデンウィークや年末年始の特異日において、出力抑制が行われ得
ることを想定したもの。(次世代ネットワーク研究会等においても、1つの考え方として
採用されている)
全量買取制度における買取価格が 15 円~20 円/kWh と想定されているところ、こ
の程度の出力抑制であれば、平均的な利用率低下は、買取価格に換算して1円
/kWh 未満であり、買取価格の設定の検討において特段の影響を与えないと考えられ
る。
当面は、必要に応じて住宅用に先んじて事業用の出力抑制が行われることとなる。
将来的に、既設の事業用発電設備よりも新設の住宅用発電設備が多く出力抑制され
る可能性はあるものの、以下の理由から、全量買取制度の趣旨には合致するものと
考えられる。
1. 本ルールは、今後、再生可能エネルギーの大量導入が進展した際に、様々な
系統安定化対策のうち、出力抑制を行うことを選択した場合のルールを定めた
ものであって、費用対効果や技術的な進展等を踏まえ、蓄電池の設置や、追
加的な電力需要創出策といった、出力抑制以外の手段によることを妨げるも
2.
3.
のではない。
将来において新規に住宅用の発電設備を設置しようとする者は、その時点での
再生可能エネルギーの買取りに関するルールに基づき、設備を設置するかの判
断が可能なため、予測可能性が害されるわけではない。
将来の住宅用発電設備設置者の利益を過剰に重視し、現在の事業用発電設置
者の事業リスクを高めると、結果的に投資が手控えられ、我が国全体でみた再
生可能エネルギー発電設備の設置が加速化されない。
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11.環境価値の取扱い
(1)基本的考え方
買取りに伴う再生可能エネルギー価値の帰属及び配分方法(地球温暖化対策の推
進に関する法律(温対法)に基づく算定・報告・公表制度における取扱い等)について、
現行制度における整理も踏まえ、基本的な考え方を整理する必要がある。
需要家にとっての環境価値とは、地域間調整を含む費用負担の中で、どの電気事
業者の排出係数が改善し、その結果として、どの需要家が裨益するかという問題であ
る。21
環境価値の分配については、論理的には、以下の3つが考えられるところである。
1) 買い取った電気事業者の排出係数向上を通じ、その需要家にのみ環境価値が
分配される。
2) 全ての電気事業者の排出係数を何らかの形で調整し、その結果として、負担に
応じて全需要家に環境価値が分配・調整される。
3) 買取りとは分離して、環境価値を証券化したり、オークション等の方法で売却・
取引する。
ここで、全量買取制度における負担の考え方等を踏まえると、①地域間調整を実
施することにより、買取りを行った事業者の需要家以外の需要家にも、当該買取りに
負担を求めることになること(低圧部門の太陽光発電については、事実上、一般電気
事業者のみが買取りを行うと想定されるが、地域間調整スキームを導入するか否か
にかかわらず、負担はPPSの需要家にも求めることを含む)、②制度全体でできる限
り統一的な扱いとすることが望ましいこと、③別途、国内排出量取引制度の検討もな
される中で、現時点で新たにオークション制度等を導入すると制度が複雑化すること
を勘案すれば、環境価値を公平分配する、2)の考え方が適当ではないか。22
21
別途、エネルギー供給構造高度化法における非化石エネルギー比率の算定に際しての考え方につ
いても、適切な場で整理することが必要である。
22
買取制度の枠外で取引された再生可能エネルギー由来の電気については、現行制度の考え方を踏
襲すれば、買い取った電気事業者を通じて、その電気の需要家のみに環境価値が分配される。
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次世代送配電システム制度検討会・WG2 委員名簿
◎
かねもと
よしつぐ
おおはし
ひろし
金本 良嗣
大橋
弘
お び な た
大日方
きどころ
たかし
隆
ゆきひろ
城所 幸弘
はやし
林
やすひろ
泰弘
ふ じ い
やすまさ
やまうち
ひろたか
藤井 康正
山内 弘隆
東京大学大学院経済学研究科
教授
東京大学大学院経済学研究科
准教授
東京大学大学院経済学研究科
教授
政策研究大学院大学
教授
早稲田大学先進理工学部 教授
東京大学大学院工学系研究科
教授
一橋大学大学院商学研究科 教授
(◎:座長、委員は50音順、計7名)
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