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行政説明②「児童虐待の防止について」

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行政説明②「児童虐待の防止について」
行政説明②「 児童虐待の防止について」
来生
奈巳子(厚生労働省雇用均等児童家庭局総務課虐待防止対策室
保健指導専門官)
1.児童虐待防止対策の経緯
平成 12 年に『児童虐待防止法』が制定される前は,すべて児童福祉法に基づいて行わ
れていた。この前後で社会的な関心が高まったことを受け,制定されたが,その際課題と
して残されたことを含めて平成 16 年に改正された。
(1)児童虐待防止法・児童福祉法の改正点(H16.10 以降順次施行)
・児童虐待の定義の見直し・・・・同居人による虐待を放置することなども対象にする
・通告義務の範囲の拡大・・・・・・虐待を受けたと思われることなども対象とする
・市町村の役割の強化・・・・・・・・相談対応を義務化し,虐待通告先に追加
・虐待防止ネットワーク促進・・「要保護児童対策地域協議会」の法制化
・司法関与の強化・・・・・・・・・・・・強制入所措置・親への指導の勧告
(2)「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」の設置(H16.10)
死亡事例の検証を行っていくことが必要であるということから,厚生労働省社会保障
審議会児童部会の下に,検証に関する専門委員会を設置。平成 17 年4月に第一次報告,
18 年3月に二次報告がなされている。
(3)「子ども子育て応援プラン」の策定(H16.12)
内閣府から閣議決定された少子化社会対策大綱のプランで,虐待防止ネットワークを
全市町村に設置すること,乳幼児健診未受診児など生後4ヶ月までの乳幼児を全て把握
する事業を平成 21 年度までに全市町村で実施することが目標とされた。
(4)児童相談所の児童福祉司の配置基準の見直し(H17.4施行)
人口 10 万人から 13 万人に1人の配置であったものを,おおむね5万人から8万人に
1人とした。
(5)「今後の児童家庭相談体制のあり方に関する研究会」報告書(H18.4)
児童福祉司の配置については上述したとおり。さらに児童相談所の機能強化,市町村
における体制強化,関係機関の連携について詳細に提言された。
→これらの内容は全て厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/)から見る
ことができるので参照されたい。
2.現在行われている対策
平成 16 年の法改正では,「発生予防」から「早期発見・早期対応」「保護・支援」へ,
という三つの柱を切れ目なく行うという「切れ目のない支援」をキーワードにしている。
(1)発生予防
① 孤立化防止
子育て支援を充実していく。(つどいの広場・地域子育て支援センター
等)
② 育児支援家庭訪問事業
要支援家庭への家庭訪問を平成 16 年度から実施。これに加えて,出産後間もない
母親と乳児への支援を進めるため「生後4ヶ月までの全戸訪問事業(こんにちは赤
ちゃん事業)」を新たにスタートする。(19 年度予算に要求)
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③ 虐待を認めない社会づくり
ア
中高生の乳幼児ふれあい体験
少子化・核家族化の進行により親になるまで全く子どもとのふれあいがないと
いうような状況が増加しているため,中高生の乳幼児ふれあい体験を機会として
設定しようという内容。これは文部科学省でも取組まれている。
イ
児童虐待防止推進月間
虐待防止法が施行された 11 月を虐待防止推進月間として毎年広報啓発活動等
を実施。今年は公募によって標語「あなたの『もしや?』が子どもを救う」を決
定。全国フォーラムを 10~11 日に静岡で開催。NPO のアイディアから生まれたオ
レンジリボンを虐待防止のシンボルとして広報する,などの取組みがなされた。
(2)早期対応・早期発見
「市町村の役割明確化と体制強化」,
「児童相談所の体制強化」,
「関係機関との連携」,
「専門家による検証」といった取組みを進めることにより,早期発見,早期対応の強化
を図っていく。
(3)保護・支援
施設入所・里親委託や,自立支援,保護者指導について,児童福祉施設の機能・シス
テムの充実(地域小規模児童養護施設の拡充,心理療法担当職員等の配置,ファミリー
ソーシャルワーカーの配置等)を図っている。
里親委託はなかなか進まない状況があり,里親のレスパイトケア等支援を事業化。ま
た,施設を出た後に問題行動を起したり非行や犯罪に走ってしまう例もある中で,施設
退所後の児童に対しての生活福祉資金の貸与や,自立支援ホームの拡充が事業として実
施されている。
虐待を行っている親への指導・支援も最近重要視されており,保護者へのカウンセリ
ングに関わる知見の集積や,家族療法の充実,また,根拠となる事実を集積しながら効
果的な指導の必要性を認識している。
3.地域における児童虐待防止のシステム
従来は児童相談所のみが対応してきたが,法律改正によって,市町村も虐待通告先とな
り,市町村と児童相談所が二層構造で対応する仕組みに変わった。そこで現在,市町村単
位で「要保護児童対策地域協議会」を設置してもらっている。これを中心として関係機関
相互の連携を進めてもらいたい。
市町村における児童家庭相談体制づくりを昨年度から始め,徐々に整いつつある。だが
地域差が大きく,協議会設置市町村がほぼ 100%の県がある一方で,非常に設置率の低い
県もある。夜間・休日の相談体制もお願いしているが,体制が整った県もあればまだの県も
あり,協議会整備と両方がそろっていない面がある。少なくとも2~3年以内にはすべて
の都道府県で 100%にして欲しいと考えている。
児童福祉司は 12 年度 1,300 人程度だったものが,18 年度は 2,000 人を超え 1.6 倍に増
えている。その一方で,児童虐待の相談対応件数が 12 年度 17,000 件程度から,17 年度に
は 34,472 件ということで約2倍になり,一時保護の件数も増え続けている状況があり,さ
らに児童福祉司の増員を総務省に求めているところ。
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4.児童虐待等要保護事例の検証から抽出された課題
平成 16 年1月1日から 12 月までの一年間に確認された虐待による死亡事例53事例
(58人)について分析した。平成 15 年のデータも加えた77件の死亡事例で年齢別を見
ると,0歳が 42%,そのうち4ヶ月未満が 26.5%という状況。また,3歳までで全体の
80%になる。主たる加害者としては,実母が 52.3%と多く,実父は 25%。内縁・交際相手
の虐待がよく報道されるが,実は 14%という結果になる。
虐待の種類として身体的虐待が 84.5%と圧倒的に多いが,複合的に起こっている状況も
かなりある。家族形態は,一人親・未婚という事例が 39%。地域社会との接触が乏しい例
が,有効回答のみであるが6割近くに上る。
関係機関との連携がうまく図られず死亡した事例が複数あった。事例に責任をもつ機関
がどこかということをはっきりさせて,情報がそこに集約され,そこからそれぞれの機関
に情報が行くようなシステムを作る必要がある。やはり要保護児童対策地域協議会を十分
に活発化させていくことが重要といえる。
予防の重要性ということからは,妊娠期あるいは妊娠前から関わることも必要であり,
妊娠を把握したときから要支援家庭を把握し支援していく必要がある。
また,関係者の虐待の認識が不足していて,衣服が汚いとか,ご飯を食べていないなど
がネグレクトという虐待であるという認識がまだ十分浸透していない。知識及びアセスメ
ント能力の向上が非常に重要になる。
子どもの安全を確認していない事例も複数あった。京都で発生したネグレクトによる3
歳男児の死亡事件も,民生委員や自治会長から再三通告がありながら児童相談所が直接そ
の男の子を見て安全確認していなかったという状況がある。関係機関の連携と事例の進行
管理,危機意識の共有ということも重要視される。
その他,在宅支援サービスなど各種社会的資源を活用してお母さんたちの負担を少しで
も軽くする必要性,医療機関の役割の重要性なども,これらの事例から明らかになった。
そして,こういった事例の検証を各都道府県や市町村レベルでも行って,再発防止に役
立てることを現場レベルで実施していただきたい。
※協議会設置の例として,大阪
泉大津市・東京
三鷹市・三重
志摩市の例を挙げる。
5.おわりに
「親が拒否している場合に強行に立入調査」を実施する場合は警察の方々の協力が必要
で,今年9月に警察庁から出された通知を受け, 児童相談所にも厚生労働省の総務課長通
知を発出したところ。
(資料『援助要請の方法』
『情報交換・情報共有について』
『警察の事
情聴取における児童相談所の対応について』)
とはいえ,
「虐待者も支援を必要としている人」だということを理解しないと十分な対応
ができない。子どもの安全を最優先した上で,親への支援も行うことが必要である。
児童虐待防止法の平成 16 年改正時に付帯決議として3年後の見直しが示されており,来
年度また改正がなされる。一つは,児童の住所・居所における安全確認や確保を実効的に
行うための方策を整備すること。もう一つは,必要な医療を受けさせない医療ネグレクト
等の場合における「親権の制限」等の制度について検討されているところである。
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