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マネジメントから考える 図書館建築計画 評価の時代の「ことのデザイン
図書館施設計画論No.1 植松貞夫 図書館情報メディア研究科 人間が古来から建築物を造ってきた目的 その中で安全、快適に過ごすため 最優先の理由:日常的に安全、災害時に安全 快適化の技術は高度に進化した それを使って生活上の活動を展開するため 合理的かつ効率的に活動が展開できる → 「役に立つ建物」 関係者の思い・情念を表現するため 姿形、大きさ、○○らしさ 全ての建物は比率はいずれであれ、この3目的を充たす 建築物の宿命 ある場所に建てられる 土地の条件に制約される 周辺環境、気候、風土 ある時に建てられる 時代の価値観、社会的要請、財政状況などに 無縁ではいられない ある姿形で建てられる 特定の形態が与えられる 変容は容易ではない 建築は活動の器 役に立つ建築は、活動の目的・内容に合わせて造られる 受注生産品=「使われ方」にふさわしい器=建築 近代建築の理念 活動 = 形態は機能に従う 器 → ことのデザイン 活動の器 → もののデザイン ことのデザイン = 計画 建設プロセスにおける計画とは 人間の欲求、価値観、生活行動、生活意識などを 対象として分析し、 これからのあるべき人間生活と物的環境のあり方 の実現に向けて、人文・社会、自然、工学など諸 科学の知識と方法、造形活動などを総合する活動 諸科学の知識と方法、造形活動などを総合する活動 現実や人間の要求を、より望ましい方向へ 変えていく対象として捉える 計画の課題 人間の活動は時間とともに変化するが、 建築物は容易には変容できない = 形態と機能の乖離 変化の急な現代社会にあっては、機能に従 う建築物は短命であることを免れなえない 内からの要求 外からの影響 活動に適合した器 活動の変 化 器と活動が乖離 先を見据えた「ことのデザイン」 将来における図書館の運営、サービスの在り方 → 使い方、使わせ方、使われ方 さまざまな立場、価値観、図書館観の人が 参画し、実現させたいことは人により異なる 合意された目標が相互に矛盾することも ある基準のもとに適正な優先順位を付ける 判断基準をどこに設定するかが課題 計画の実際:規模設定 適正な規模とは 通常期における大学図書館の閲覧室 試験期の同じ閲覧室 合理的科学的にニーズを捉える 捉え方 特殊例 仮説 変化・発展の方向 大多数の従う 一般的傾向 変化に遅れた 少数例 新しい生活・活動の 萌芽例 新しい方向性の発見が大切 器が活動を制約・誘導する 環境心理学 建築や都市の物理的諸要因が人間の意識や行動に どのような影響を与えるかを科学的にとらえる 環境決定論 建築決定論 建築設計者は誰もがある程度は信じている 住宅の例 1951年度国庫補助住宅鉄筋コンクリートアパートC型 (51C型:12坪)における提案 誘導したい生活 食寝分離 就寝分離(寝室分解) ↓ DK 学校建築の例 教育方法理念としての オープンスクールとそ れを誘導する学校建築 としてのオープンプラ ンドスクール 1950年:在来型 1997年 総合的な学習に適したオープンスペースをもつ オープンスクール 活動と器 活動 器 器 変化・発展した 活動 活動の器 器に制約された活動 入口の外にはみ出す利用者 元は閉架式書庫、 狭い、段差がある ニーズに適った資料と、優秀な職員がいさえすれば、 建築はどのようなものでも良いということではない。 職員もはみ出す 活動の時間的変化と器の対応モデル 変化量 増築、職員増強 備品の補充等 臨界ライン C B 変化への 対応力 A t B A tt 時間 B B A A≒0 t サービスの限定、資源の選択的投入により 変化の量を減らす、変化の速度を鈍らせる tt 綿密な計画(ことのデザイン) 優れた設計 第21回図書館建築研修会テキスト 柳瀬寛夫氏作成より これまでの活動と器の変遷 図書館とは 図書館とは、図書、記録その他必要な資料を収集 し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、そ の教養、調査研究、レクリエーション等に資する ことを目的とする施設 図書館法(昭和25年4月30日法律第118号):1950年 第2条:定義 学生の勉強部屋時代:1960年ごろまで 図書館は特別な人が利用する場所 1953年(杉並図書館における来館者調査) 4,000人の来館者のうち、主婦はわずか4人 高校生・受験生の「自習」の場 そのための席や場所の提供が要請される機能 資料の管理・保存が優先:閉架式、館内閲覧主体 公園など静かな場所に設置 入館手続の廃止、書架の公開 八戸市立図書館 設計:日本図書館協会施設委員会:1960年 レファレンス・サービス、集会活動 館外貸出、館外奉仕 貸出型図書館:1960年頃から 図書館法の実体化:普通の人が日常的に利用する図書館 1963年『中小都市における図書館の運営(中小レポート)』:資料提供 1970年『市民の図書館』:貸出、児童サービス、全域サービス網 資料の提供 → 借りて帰って家で読んでもらう 1971年町田図書館調査、利用者は主婦と子どもが中心 平均在館時間は20分 閲覧座席を設けず、自習者を排除 駅前など行きやすく、分かりやすい場所に設置 児童室 開架室 1階平面図 日野市立中央図書館:1973年開館 たくさんの貸出用本が開架で提供されている 4人掛け、6人掛けと いう閲覧座席はない 部屋の奥の方でもベンチだけ 長時間在館型(1980年代半ばから) 社会の変化 ・ 高度経済成長による豊かな社会(自治体財政も豊か) ・ 自家用車の普及 ・ 雑誌・ビデオが急激に増加 図書館の変化 ・ コンピュータを用いた業務システムの本格普及 ・ たくさんの種類と数の図書や雑誌を提供 大きな建物、広い駐車場の得られる場所に 朝霞市立図書館:1987年 家族そろって来館、段差のない入口 自動ドア 視聴覚資料サービス 見通しのよい館内 ゆったりとした家具配置 調査研究スペースも 静かな読書室 ヤングアダルト 児童スペース入口 大きな窓を持つソファベンチ席 8人掛けの閲覧机 タタミの部屋(窓際は掘りこたつ風) 拾い読みの席,右のドアを開けて屋外読書席 (利用者が目的にあわせ選択できる)多様な閲覧空間を用意する 大きな机を占領して調べもの 研究用個室(公共図書館にも) グループ学習室 グループ活動室(創作活動等) 展示スペース(生涯学習成果の発表の場) 図書館では多くの人に見てもらえる 同時に 一つの市や町の中に、複数の図書館 本館と分館 複合施設の中の核施設として図書館が入る 複合施設=一つの建物の中に数種類の施設 ・図書館が核施設(高い集客力) ・同居施設数が増える 商業施設との同居例も増加中(さいたま市立中央) 複合施設図書館 目に付きやすい 専有と共有 ついで利用 総合的な運営責任 複合的利用 法的制約が増える 相乗効果 増改築が困難 運営の効率化 単なる同居 推移 1950年〜1960年代初頭 学生の勉強部屋図書館 1960年〜1980年代半ば 貸出図書館(拡大・発展期) 1980年〜2000年頃まで 長時間在館型図書館(充実期) 2000年〜 さて 住民の図書館利用行動の変化 休日に、家族揃って、自家用車で、大きな図書館へ 休日は平日の2倍以上の来館者 近くに小規模館(分館)があっても遠くの大規模館へ 中学生・高校生でも「家族同伴」利用 高齢の男性利用者の増加 高齢者でも自家用車で来館 高齢者は平日の利用:棲み分け 図書館は成人の利用者主体の場 37 社会像の変化 (1)知識(基盤)社会 (2)生涯学習社会 (3)少子・高齢・高学歴社会 → 誰もが確実な情報を平等に入手できる 社会的仕組みが図書館 (4)デジタル情報ネットワーク社会 インターネット社会 情報コンテンツのマルチメディア化 時間と距離を超越した情報のやりとり 情報受発信の個人(セルフ)化 情報取得能力による格差の解消が課題 図書館は絶滅危惧種か 図書館は知識伝達・再生産の場 伝達媒体が紙の図書であったから, それらを納める 場所として「図書」館がつくられてきた → 電子媒体に転換 2000年には「利用者が図書館に行く必要はもはや なくなっているだろう」(F.W.ランカスター、1982年、 『紙からエレクトロニクスへ図書館・本の行方』) (2000年以降)STM(科学・工学・医学)領域の学 術雑誌の多くは電子ジャーナル化し、利用者は雑誌 を読むために図書館に行く必要はなくなった。 大学図書館では冊子体の購入をやめてきている 「20〜30年先には出版されるものの70%以上の ものは電子形態のみのものとなり…」 (電子図書館時代へ向けての大規模図書館の未来像 長尾真(現在国立国会図書館長)、1996年) Google Book Scan 各種電子書籍端末の登場 国立国会図書館デジタルアーカイブ(2009年) デジタル化した資料及び将来電子的に納本される 書籍等を、著作権者及び出版社の利益に配慮しつつ 国内のどこからでもアクセスできる仕組み 公共的な団体に、国立国会図書館のデジタル資料 を無償で提供し、当該団体が公衆に有料で配信して その料金のうちから権利者等に還元する これからの図書館像 図書館による町村ルネサンス:Lプラン21 「21世紀の町村図書館振興を目指す政策提言」2000年日本図書館協会 図書館の基本理念 1. 民主主義を支える図書館 地域社会と図書館 2. 図書館は地域の情報拠点 3. 地域の問題解決能力・政策立案能力を高める 4. 地域に根ざす図書館 図書館の働き 5. 図書館は生涯学習の中核施設 6. 学校と連携し「地域の教育力」を高める 7. 図書館は豊かな老後の支援施設 8. 図書館は国際化の港 9. 図書館は地域の百科事典・タイムカプセル 10. 滞在型利用ができる地域のサロン 11. 司書はアドバイザーでありプランナー これからの図書館像-2 地域を支える情報拠点をめざして:2006年3月文科省 これからの図書館サービスに求められる新たな視点 図書館活動の意義の理解促進 レファレンスサービスの充実と利用促進 課題解決支援機能の充実 紙媒体と電子媒体の組合わせ:ハイブリッド図書館 多様な資料の提供 児童・青少年サービスの充実 他の図書館や関係機関との連携・協力 学校との連携・協力 課題解決支援型図書館 情報専門家としての図書館職員 コレクションの構築 コレクション構成こそ図書館の命:選書能力 ■印刷物の収集 ■電子的情報資源へのアクセス 専門知識と技術をもつ職員の支援サービス 適切な資料・情報の、迅速な入手を援助する 資料を活用できる環境=場を備える これからの図 書 館 経 営 に必要な視点 図書館のもつ資源の見直しと再配分 図書館長の役割 利用者の視点にたった経営方針の策定 効率的な運営方法 図書館サービスの評価 継続的な予算の獲得 広報 危機管理 図書館職員の資質向上と教育・研修 管理運営形態の考え方 しかし 図書館で何をしましたか(2004年1月〜2月) 伊万里市民図書館 貸出:73.7% 調べもの相談:4.9% 熊取町立図書館 貸出:81.7% 調べもの相談:2.2% 栗東町立図書館 貸出:78.7% 調べもの相談:3.8% 本が見つからなかった時どうしますか? 浦安市立図書館 職員に聞く:53.1% あきらめる: 9.5% 広島市立図書館 職員に聞く: 2.3% あきらめる:43.1% 困った時は図書館へ 分からなければ図書館員に聞こう 頼りになる図書館 来館してもらえる図書館 頼りになる図書館 職員、資料、機器、場所で利用者を支援 紙媒体と電子媒体の両方にアクセスできる → ハイブリッドライブラリー 特色化、個性化、専門分化 行きたくなる建築 見た目がよい 入りやすい(入口など)、分かりやすい館 内 固定観念の払拭 図書館は「学生の勉強部屋」:一部の特別な人が利用する 図書館は「あらゆる年齢の市民に開かれた場」 図書館は「無料貸本屋」:新刊書の貸出に偏重(フロー) 図書館は「情報を知識に変える場」ストック重視 図書館は「趣味や娯楽のための施設」 図書館は「地域の産業や暮らしに役立つ施設」 図書館は「静かに読書する場」 図書館には「静かな場とにぎわいの場がある」 49