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北海道都市地域学会セミナー

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北海道都市地域学会セミナー
∼田園環境モデル都市おびひろ∼
人口/168,970人 世帯/79,726世帯 面積/618.94km2
【世界で唯一 ばんえい競馬】
【帯広三大祭りの1つ おびひろ平原まつり】
【帯広三大祭りの1つ おびひろ菊まつり】
【帯広三大祭りの1つ おびひろ氷まつり】
【恋人の聖地 幸福駅】
【恋人の聖地 愛国駅】
会議会場(ホテル日航ノースランド帯広)
から
主催者挨拶(砂川帯広市長)
テーマ解説(小林都市地域学会会長)
基調講演(柏木教授)
パネルディスカッション
パネルディスカッション
総括(太田企画委員長)
鼎談(語り手)
会場風景
【北海道都市問題会議】
Ⅰ 会 議 日 程 ……………………………………………………………
1
Ⅱ 出演者等プロフィール ……………………………………………………
2
Ⅲ 主催者挨拶……………………………………………………………………
9
Ⅳ テ ー マ 解 説 ……………………………………………………………
11
Ⅴ 基 調 講 演 ……………………………………………………………
13
Ⅵ パネルディスカッション …………………………………………………
23
Ⅶ 総 括 ……………………………………………………………
45
Ⅷ 次期開催市挨拶 ……………………………………………………………
47
【北海道都市地域学会セミナー】
鼎 談(三者会談) ………………………………………………………
(参考 北海道都市問題会議開催経過)
49
(敬称 略)
北海道都市問題会議
平成20年1
0月30日(木)
13:00∼13:30
13:30∼14:30
開会
主催者挨拶
帯広市長 砂 川 敏 文
テーマ解説
北海道都市地域学会会長 小 林 英 嗣
基調講演「北海道が主導する新エネルギー国家構想」
東京工業大学統合研究院教授 柏 木 孝 夫
14:40∼16:20
パネルディスカッション「地域環境ガバナンス」
16:30∼17:15
パネルディスカッション 続き<聴衆参加・コメンテート>
17:15∼17:25
総 括
17:25∼17:30
次期開催市挨拶・閉会
17:45∼19:00
交 流 会
北海道都市地域学会企画委員長 太 田 清 澄
北海道都市地域学会セミナー
平成20年1
0月31日(金)
9:30∼11:30
市内施設見学
13:00∼13:05
開会挨拶
13:05∼15:00
鼎談 「環境共生時代の地域づくり・まちづくり・人づくりを考える」
北海道都市地域学会会長 小 林 英 嗣
語り手 高野ランドスケープ・プランニング株式会社代表取締役 高 野 文 彰
〃 エコライフジャーナリスト/慶應義塾大学大学院SDM研究科教授 林 美香子
聞き手 札幌学院大学大学院教授 太 田 清 澄
15:00
閉 会
−1−
出演者等プロフィール
基調講演
北海道が主導する新エネルギー国家構想
東京工業大学統合研究院
教授 柏 木 孝 夫
Takao Kashiwagi
■略歴
1970年 東京工業大学工学部卒業
1972年 東京工業大学大学院 修士課程修了(工学博士)
1975年 東京工業大学大学院博士課程を経て工学博士
1980年∼81年 米国商務省NBS招聘研究員
1983年∼88年 東京工業大学工学部助教授
1988年 東京農工大学工学部教授
1992年 名古屋大学非常勤講師
1996年 九州大学教授を併任
2000年 東京農工大学大学院教授
2007年∼ 東京工業大学 総合研究院教授
■専門分野
環境・エネルギーシステム工学、冷凍・空気調和、応用熱工学
■主な所属学会
(社)日本機械学会、
(社)日本冷凍空調学会、国際冷凍協会、(財)ヒートポンプ・蓄熱センター、
日本太陽エネルギー学会、
(社)日本エネルギー学会
■主な著書・論文
炎で冷やした半世紀−吸収冷凍技術の進展− (社)日本冷凍空調学会(2002)
マイクロパワー革命 TBSブリタニカ(2001)
天然ガスの高度利用技術−開発研究の最前線− NTS(2001)
エネルギー活用辞典 産業調査会(1999)
エネルギーシステムの法則 産業調査会(1996)
蓄熱工学2<応用編> 森北出版(1995)
吸収ヒートポンプの進展 ガス事業新聞社(1995)
2050年への挑戦 電力新報社(編著1993)
−2−
パネルディスカッション
地域の環境ガバナンス
コーディネーター
Coordinator
株式会社ノーザンクロス
代表取締役 山 重 明
Akira Yamashige
■略歴
1982年 北海道大学経済学部経営学科卒業
1987年 株式会社ノーザンクロス設立
1993年 代表取締役就任 現在に至る
■その他の経歴
1982年∼84年 北海道東北開発公庫北海道支店勤務
1985年∼87年 (社)行革国民会議事務局スタッフ
1987年∼2005年 (社)北海道総合研究調査会兼務(企画室長、常務理事等)
2001年∼ NPO日本都市計画家協会北海道支部(現在事務局長)
■専門分野
プロジェクトマネジメント
■主な活動状況
①都市再生プロジェクト
∼まちづくり計画、再開発事業等のコーディネート
②タウンマネジメント
∼リノベーション事業の展開、まちづくり会社等の形成
③シンクタンク事業
∼農山村地域の再生方策、経営手法、ソーシャルビジネス等の提案
④地域遺産トラスト事業
∼北海道遺産運動の展開、グラウンドワーク運動の展開
⑤出版・広報事業
∼季刊誌「カイ」の発行、広報プロモーション事業
−3−
パネリスト
Panelist
札幌学院大学商学部商学科
教授 河 西 邦 人
Kunihito Kawanishi
■略歴
1988年
1990年
1998年
2004年
■主な活動状況
2008年∼ 北海道公益認定等審議会会長
北海道商工業振興審議会特別部会委員
北海道地域振興条例検討懇談会座長
カウンティナットウエスト証券会社
アシスタントアナリスト
クレディスイス投資顧問アナリスト
札幌学院大学商学部助教授
札幌学院大学商学部商学科教授
■その他の経歴
2005年∼07年
2006年∼07年
2007年∼08年
財団法人北海道市町村振興協会
研究会座長
夕張市指定管理者選定委員会委員長
北海道過疎懇談会委員
■主な著書
コミュニティ・ビジネスの豊かな展開<監修>(2002)
第三セクターが陥る4つの罠<月刊地方自治研修6月号>(2004)
ソーシャルキャピタルの醸成と地域力の向上<監修>(2006)
ドラマで学ぶ経営学入門(2007)
■専門分野
経営戦略論、経営組織論、地域経営論
■主な所属学会
組織学会、日本経営教育学会
パネリスト
Panelist
北海道立十勝農業試験場
場長 菊 地 治 己
Harumi Kikuchi
■略歴
1973年3月 北海道大学農学部農学科卒業
1977年6月 同大学院農学研究科博士課程中退
1977年6月 道立中央農業試験場稲作部育種科研究職員
1985年4月 道立上川農業試験場水稲育種科研究職員
1990年7月 北海道海外派遣(コーネル大学客員研究員)
1992年4月 道立中央農業試験場生物工学部細胞育種科長
1996年4月 道立上川農業試験場水稲育種科長
2000年4月 道農政部農業改良課主幹
2002年4月 道立北見農業試験場作物研究部長
2004年4月 道立中央農業試験場企画情報室長
2006年4月 道立十勝農業試験場長
−4−
■専門分野
作物育種学(北海道大学農学博士)
■主な活動状況
道立農試では主として水稲の品種改良、バイ
テク研究等に従事、最近では、有機農業など環
境保全型農業の研究企画・推進、普及に取り組
んでいる。2007年より日本有機農業学会理事。
パネリスト
Panelist
帯広畜産大学大学院畜産学研究科
教授 高 橋 潤 一
Jyunichi Takahashi
■略歴
1997年
1998年
2003年
2006年
帯広畜産大学畜産学部助手
帯広畜産大学畜産学部教授
岩手大学大学院連合農学研究科教授併任
学長特任補佐(国際協力推進オフィス長)
帯広畜産大学大学院畜産学研究科教授
■その他経歴
2001年 GGAA会長
2007年 北海道畜産学会会長
2008年 地球環境研究企画委員会委員
■主な活動状況
BSE対策のための肉骨粉の炭化処理による有価
物開発、UNESCO農村開発教育、GGAA国際会
議運営
■論文
Emission of GHG from livestock production in
Japan.C.R.Soliva,J.Takahashi and M.Kreuzer
(editors),GREENHOUSEGASES AND ANIMAL
AGRICULTURE GGAA2005.ETH Zurich,Zurich.pp3037.2006. 他
■専門分野
循環型畜産科学
■主な所属学会
日本畜産学会、日本農芸化学会、北海道畜産学会 他
パネリスト
Panelist
株式会社エコERC
代表取締役副社長 爲 廣 正 彦
Masahiko Tamehiro
■略歴
1978年 道立大樹高等学校卒業(普通科)
1983年 山形交通(株)関連事業部入社
1986年 藤野技研(株)設立
1995年 (有)更別企業(現(株)更別企業)設立
2000年 更別企業においてBDF事業の取組を開始
2007年 十勝エネルギーネットワーク設立、
(株)エコERC設立
■その他の経歴
2006年度
北海道新エネルギー・省エネルギー促進大
賞受賞(株式会社更別企業)
■主な所属学会
農業機械学会、日本トラボロジー学会
−5−
■主な活動状況
・NPO法人十勝エネルギーネットワーク及び株式
会社エコERCにおいて廃食用油の回収及びバイ
オディーゼル燃料(BDF)を製造
・十勝搾油作物推進協議会幹事として十勝管内にお
いて油糧作物の普及活動を実施
・2008年5月豊頃町に廃食用油を主原料とするBDF
とナタネ食用油を製造する工場を建設(株式会社
エコERC)
パネルディスカッション
パネリスト
Panelist
帯広市長
砂 川 敏 文
Toshifumi Sunagawa
■略歴
1970年 3月 帯広畜産大学畜産学部草地学科 卒業
1970年 4月 農林水産省農地局経済課 入省
1997年10月 北海道開発局官房調整官 退官
1998年 4月 帯広市長就任(現在3期目)
■主な役職
全国市長会副会長
北海道市長会副会長
十勝圏活性化推進期成会会長
−6−
北海道都市地域学会セミナー
鼎 談
環境共生時代の地域づくり・まちづくり・人づくりを考える
語り手
高野ランドスケープ・プランニング株式会社
代表取締役 高 野 文 彰
Fumiaki Takano
■略歴
1966年 北海道大学農学部農学科花卉造園学講座卒業
1971年 GEORGIA大学 環境デザイン学部大学院卒業
1973年∼75年 SIMONDS AND SIMONDS:PITTSBURGH U.S.A
1975年 高野ランドスケープ・プランニング株式会社代表取締役
■その他の経歴[賞]
1980年 国営沖縄海洋博覧会記念公園「ちびっことりで」
日本造園学会賞
1990年 フランス オードセーヌ県よりアルベールカーン庭園の作庭に対し県政府より金メダル授与。
アルバートカーン庭園の作庭に対し外務大臣より感謝状
1993年 国営昭和記念公園「子供の森」都市公園コンクール(設計部門)建設大臣賞
1999年 静岡県富士山こどもの国 都市公園コンクール(設計部門)建設大臣賞
2004年 道立十勝エコロジーパーク 都市公園コンクール(設計部門)国土交通大臣賞受賞
■主な所属学会
日本造園学会、日本都市計画学会、国際遊び場協会、IFLA(ジャパンイフラ副会長)
■専門分野・代表的プロジェクト
1996年∼2000年 国営滝野すずらん丘陵公園「子供の谷」実施設計
1996年∼2005年 十勝エコロジーパーク基本構想・基本設計・実施設計
2001年∼2008年 札幌市旭山記念公園基本計画・基本設計・実施設計
2002年∼2008年 十勝千年の森基本計画・基本設計・実施設計
2003年∼2007年 滝野すずらん丘陵公園森林体験ゾーン基本・実施設計
■主な著書・論文
公園づくりを考える<技報堂出版>(1993)
ランドスケープを創る人たち<(株)プロセス アーキテクチュア>(1994)
新世代のランドスケープアーキテクト<マルモ出版>(1996)
「庭」№166北海道特集 高橋建設<建築資料研究社>(2005)
「庭」№178北海道の「ニワ」を予感する<建築資料研究社>(2007)
−7−
北海道都市地域学会セミナー
語り手
エコライフジャーナリスト/
慶應義塾大学大学院SDM研究科
教授 林 美香子
Mikako Hayashi
■略歴
1976年 3月 北海道大学農学部卒業
1976年 4月 札幌テレビ放送アナウンス部入社
1985年 1月 フリーキャスターとして活動開始
2003年10月 北海道大学工学部社会人博士課程入学
2006年 9月 北海道大学工学部社会人博士課程終了
「農村と都市の共生による地域再生」の研究により、北海道大学より博士(工学)Ph.Dを取得
2008年 4月 慶應義塾大学大学院システムデザインマネジメント研究科教授
■その他の経歴
2008年6月 ホクレン員外監事就任
■専門分野
地域づくり、アグリビジネス、環境、スローフード、グリーン・ツーリズム
■主な活動状況
北海道文化財団評議委員、農林水産省「食と農の応援団」メンバー
「スローフード&フェアトレード研究会」代表
北海道景観審議会委員、北海道田園委員会委員長
農山漁村地域力発掘支援モデル事業中央委員会委員
■主な著書・論文
農都共生のヒント∼地域の資本の活かし方<寿郎社>
楽々おかずとおやつ<北海道新聞社>
ハーブティーを飲みながら∼北の大地のレシピ&エッセイ<共同文化社>など
論文:農村と都市の共生による地域再生の基盤条件の研究
聞き手
札幌学院大学大学院
教授 太 田 清 澄
Kiyosumi Ota
−8−
主催者代表挨拶
帯広市長 砂 川 敏 文 こんにちは。帯広市長の砂川でございます。実行委員会及び開催市を代表して、一言ご挨拶
を申し上げます。本日は、地元帯広・十勝のみならず、道内では下川町の町長、京都市からも
職員の方にお出で頂き、たくさんの方々にお集まり頂き、厚く御礼を申し上げます。北海道都
市問題会議というと難しい名称でありますが、大学等の研究者、企業、市民の皆さん、もちろ
ん行政関係者、議会関係者等々、地域の皆様が集まって、地域の様々な課題について議論し、
情報を共有する場として、昭和 49 年から、道内の主な都市を会場として開催してきております。
今年で 32 回目ということです。帯広市では、昭和 57 年に開催して以来であります。
帯広市を若干紹介させて頂きます。今から 125 年前に伊豆の国の晩成社という、依田勉三氏
を筆頭とした民間の開拓団が入植し、開拓を開始したことから始まり、125 年を経過して十勝
の中核的都市として、発展を続けているまちであります。今日では、帯広・十勝は大変恵まれ
た自然環境、広大な十勝平野の中で大規模な農業が営まれています。日本の食糧基地の役割を
果たすと共に、食品加工、農業機械等々、農業を核とした各種産業が集積している地域であり
ます。今後も、こうした帯広の歩みは変わらないと思っていますが、更に発展に努めたいと思っ
ているところです。
さてご承知の通り、今年開催された北海道洞爺湖サミットでは、環境問題がテーマとなりま
した。そのこともあり、各地で環境関係のイベントも多く開催されています。道民の環境に対
する意識、関心も非常に高くなっていると思います。地球温暖化などの環境問題、あるいは地
球環境保全に関する問題は、世界共通の課題・問題であると思っております。温室効果ガスの
排出はどんどん増えており、海水面の上昇、山岳氷河の溶解・後退といった象徴的な出来事が、大
いに関心を呼んでおります。また国内では、温暖化に起因すると思われる集中的な豪雨や渇水
と、異常な気象に見舞われることが頻繁になってきております。そうした中で、行政はもとよ
り、地域で生活する住民・企業の皆様方が、そうした課題について何ができるのか、何をなす
べきかを考え、実践に移していくことが大事であります。
このような状況を踏まえ、今年の北海道都市問題会議では、地球環境を大きなテーマとし、
地域の環境ガバナンスについて、ここ帯広・十勝から発信しようと企画されたところです。地
球温暖化防止に対して、我々地域としてどのような取り組みができるのか、またどのように取
り組むべきなのか、それぞれの分野で活躍されている方々のご意見も頂きながら、地域での地
球環境に対する取り組みに役立てていきたいと考えております。
帯広市におきましても、地球環境保全の取り組みは従来から進めてきております。平成 9 年
に施行された環境基本条例を始めとし、環境基本計画の実施、更には ISO14001 の認証運用な
どにも取り組んできております。また、サミット後の 7 月下旬には、国から環境モデルとして
選定されました。これまでの取り組みに加え、二酸化炭素排出削減に向けて一層の取り組みを
推進していこうと考えております。この環境モデル都市は、地球温暖化防止に取り組む先駆的
な都市、あるいは地域を国が選定するものであり、全国 82 件の提案の中から、北海道では帯広
市、下川町を含め、全国で 6 団体が選定されています。本日、基調講演を頂きます柏木先生は、
−9−
環境モデル都市の選定委員のお一人として、大変ご尽力・お世話を頂きました。この場をお借
りして御礼を申し上げます。環境モデル都市については、パネルディスカッションで申し上げ
たいと思いますが、地球環境保全で大切なことは、国が率先して取り組むことはもちろんです
が、何よりもそれぞれの地域が一丸となり、取り組んでいくことが肝要であろうと思っていま
す。
最後になりますが、この都市問題会議がご参加頂いた皆様にとって、有意義なものとなり、
今日の成果を地域に持ち帰って頂ければと思っています。以上、ご挨拶に代えさせて頂きます。
本日は誠に有難うございます。
− 10 −
テ ー マ 解 説
地域の環境ガバナンス
∼帯広からのローカル・アジェンダ 21 の発言∼
北海道都市地域学会会長
小 林 英 嗣
皆様こんにちは。帯広でこうした会議を開きたいという申し出があった時に、それを後方支
援する我々学会メンバーも含め、色々考えました。私自身が考えたことは、今 2008 年です。地
球環境に関して、世界で大きな出来事が 1992 年にありました。今年は北海道洞爺湖でサミット
がありましたが、92 年はリオデジャネイロで行われました。通称リオサミットと呼ばれますが、
その際に、持続的な地域の発展を考えるときに、グローバルに世界規模で、21 世紀を目指した
環境に充分配慮した施策をとらなければならない、ということが決議されました。その時の日
本の首相は宮沢さんでした。重要なテーマには必ず首相が出ていくのですが、残念ながらリオ
サミットの際は、宮沢さんは行かず、ビデオのメッセージを会場で流した。代役で行ったのが、
環
境を担当している省でした。総合政策的に各国の方針を考えなければならないときに、首相が
来ず、環境担当が行ってしまったため、日本の場合、決議は環境省が受け止めろということに
なり、今日まで進んできたわけです。
ところが世界は、総合政策的に各国の 21 世紀に向けての基本的な方針、ポリシーを作り始め
ました。それと同時に、国の方針と並ぶかたちで、各都市、各地域が実際にどういうことを考
え、計画し、実行するのか積み重ねていきました。非常にいい例はイタリアやヨーロッパに非
常にたくさんあります。
今は 2008 年です。日本は国としても環境担当のセクションだけでなく、国家として、あるい
は政府として、国民を含めて大きく舵を切り、新しい国土を形成していかねばならないと共通
理解が深まりました。それを最終的に確認できたのが、今年の洞爺湖サミットであったと思い
ます。一方で、国としても、その前の京都議定書があったので、2050 年くらいを大きな目標に
据えながら、現実的に 2030 年までにどういうことができるのか。あるいは今後、5 年、10 年の
間に具体的に何ができるのかを考え始めました。少しずつ行動も増えていっていると思います。
一方で地方自治、皆さんも日常的な業務、生活の中で感じられているし、そのシステムが日
本の中で今後大切であると思われているでしょう。相互の自治体あるいは活動されている方が、
自分達のことを一生懸命考えれば、全北海道、全国が少しずつよくなっていくだろうと思いな
がら活動されていると思いますが、小さな光が国全体を照らし、新しい日本の姿が見えてくる
ようになるためには、きちんとしたポリシーが必要であると思います。北海道は国土の 20%を
占め、環境立国としては可能性が充分ある島である。これは世界的に評価できる潜在要件であ
ると評価されつつあります。その中で、180 ある自治体の方が地元の方と連携しながら、少し
ずつ社会・生活を変えていく、自分達のまちを変えていこうとしていると思います。ただ、ど
う進めればいいのか、どんな基本的な考え方、技術、お金が自分達に適用できるのか、支える
のかを心配されながら実行している方も多いと思います。たまたま今年は帯広でこの会議を設
け、皆さん共通の議論に参加するかたちになろうかと思いますが、1 年、2 年で結論が出るわけ
− 11 −
ではありません。皆さんの担当が次の代、その次の代に替わっていっても、自治体では同様の
行動計画が動いていかねばならないと思います。是非、この帯広の都市問題会議を、今後、北
海道の中で連携しながら取り組んでいく“環境会議”の発足のきっかけとして位置づけ、
“環境
会議”をどのように横断的に進めていけばいいかお考え頂ければ有難いと思います。北海道の
市長会、我々の学会あるいは関連学会も、“環境会議”を応援していくと思います。ですから、
単に勉強するだけでなく、行動する“環境会議”の第 1 回目であるとご理解頂きながら、お話
を伺い、次の行動計画をお考え頂ければ幸いであります。そのような意味で、我々のような学
会が皆さんの支援を行っているとご理解頂ければと思います。
本日、基調講演をお願いしている柏木先生とお話した際、最もホットな情報を皆さんに提供
しますということでしたので、是非ご期待頂き、日本全国、世界の中の北海道という視点も加
えながら、お話をお聴きになって頂ければ有難いと思っております。
− 12 −
基 調 講 演
「北海道が主導する 新エネルギー国家構想」
東京工業大学統合研究院教授 柏 木 孝 夫
柏木でございます。今日は市長会と小林先生率いる学会が主催ですから、大変な栄誉を頂い
たと思っております。タイトルは非常に大きいのですが、私の話は断片的です。なるべく先端
で、私自身が会得している内容をお話したいと思います。断片的に話をしますから、いつお休
みになってお目覚めになっても、話がさっと分かるように気をつけますので、お付き合い頂き
たいと思います。
先日の洞爺湖サミット前まではテレビを見ても CO2、あまり CO2 に関係ない企業までコマー
シャルをしている。サミットが終わってからは比較的、経済、金融のニュースがベースになり
ました。本当に低炭素社会がやってくるのか、という話から始めたいと思います。
先日、洞爺湖サミットで役人として大変なご活躍をされた西村睦嘉さんという方が、地球環
境全権大使であられました。ちょうど息子さんが、東京工大の学生であり、極めてフレンドリー
にして頂いており、ついこの間、2 人でパネル討論をしました。答えは極めて明快で、21 世紀
の日本の成長エンジン、あるいは成長モデルは今の延長線上にはないと思っており、低炭素型
の経済モデル、ビジネスモデルをいち早く構築した国が世界のウィナーになる。日本は、特に
成長型のモデル・エンジンが低炭素型の社会、すなわち、今までの化石燃料社会の延長線上に
はありませんから、パラダイムのシフトを考えねばならなくなります。
そう考えたときに、このモデルをいち早く構築した国がウィナーである。日本にはその資質
があるという結論になった。ただ、この気候変動問題は、極めて良質な国際政治課題になって
います。冷戦構造が終わってから環境問題の風が吹いてきた。地球益を前面に出しますから、
国際政治の場で誰も反対することはできない。ただ、それぞれの国が地球益を前面に出しなが
ら、国益を賭けた戦略を、国情に応じて激しく戦っていると言っても過言ではない。戦略性が
問われていると、私は思います。それも、先進国の中での戦略、あるいは先進国対発展途上国
との戦略、色々あります。
地球環境問題は、いつも原理原則に基づいて考えないと、往々にして誤りを生じます。私は
IPCC(気候変動に関する政府間会議)の執筆代表者を、8 年くらいやりました。第 4 次までやっ
ていれば、ノーベル賞のレプリカを貰えたらしいですが、私は 2 次・3 次と携わりました。す
ごく大変な仕事でしたが、そのときに会得したことは、equality という言葉があります。意味は
公平性ですが、公の公平性ということでもない。どちらかと言うと、均衡の「衡」の字を書き
ます。国際社会の中には発展途上国も先進国もあり、国連 192 カ国があって、それぞれの国の
均衡を保ちながら、公衡性を保つのにはどうすればいいか。要するに、地球規模の環境問題と
いう理念は公衡性なのです。公衡性ということになると、どうしても発展途上国に、これから
の CO2 の枠を譲っておかねばならない。気候変動問題は総量問題になりますから、CO2 の量が
多くなればどうしても気候変動が具現化してくるし、あまり気候変動が大きくなると、エコサ
イクルがそれに追随できなくなる。よって人類全員の問題だから、エコサイクルが気候変動の
速度に追随できる範囲、温度上昇の範囲に抑えるべきだというのが、我々の考え方です。それ
− 13 −
が 2100 年に 2 度、現状レベルから約 3 分の 1 くらいになるまで、エネルギー起源の CO2 に関
しても譲っていかないと、この枠を超えてしまうというのが、IPCC での我々の見解でもありま
す。
そのためにどうすればいいか。発展途上国もこれに関しては、乗らざるを得なくなってくる。
西村さんとは、何がそれをするかという話になりました。結局答えは極めて明快で、国際世論
であるということになりました。オイルの問題もそうです。金融が不動産市場と一体化し、サ
ブプライム問題になり、需給バランスが崩れ、市場原理が何となく危なくなる。よって、エネ
ルギー市場に金融市場が一体化し、石油価格が高騰し、また上がるでしょう。そうすると、世
論的に、生活と産業の基盤であるエネルギーまでボラティリティーがこんなに上がるのなら、
私たちは省エネするとか、車の台数もずい分減りました。ですから世論が、最終的にはこの気
候変動問題、要するに低炭素型の社会へ導いていく大きなドライバーだという話です。その世
論は、雰囲気の世論ではありません。科学的、分析的、理論的、こういうものに基づいて理論
武装された世論が、今世紀は最終的に低炭素型社会へいち早く導くような動きをする。よって
発展途上国も、最早この流れに反することはできないという結論です。
この世論は最初、アメリカに向いていました。ところが、最近は発展途上国に向いてきまし
た。食の自給率、エネルギー自給率、全て考えたとき、私は日本の中で資産が資質的に最も優
れた地域は、北海道だと思っています。ここが牽引しないとならない。トップダウンというよ
り、ボトムアップでいかないと、地域が主導しないと、モデルなどできるわけがない。小林先
生が「行動する環境会議」と言われましたが、これが最終的な答えだと思います。地域が主導
する環境モデル、あるいは環境のビジネスモデルです。先日のサミットを見ても、G8 である先
進国は洞爺湖、G5 はインド、中国、ブラジル、メキシコ、南アフリカ、どちらかと言うと、私
たちはこれからやらねればならないし、2050 年の長期目標に対しても、まず先進国が先にやっ
てから決めよというスタンスで、ファイティングポーズを見せている。終わる寸前にパークホ
テルにおける会議で、我々も頑張るが、総量規制に関してはノーであると宣言文を出しました。
ただ、彼等はポスト京都のフレームで、どこまで突っ張れるかということです。来年 12 月 29
∼ 31 日、ポスト協定決定期日の最後の最後、それまでに何かをするか、その可能性は十分ある。
ただ、私共日本人としては、これからのポスト協定で、戦略をどのように練っていくか十二分
に考えた上で、内需をきちんとしなければと思っており、私は多少空いてもいいと思っていま
す。ポスト京都議定書のフレームがそっくり基準年度だとか何だとかいうのは、長期戦である
ので、我々の国益も極めて重要になります。もちろん、地球益に対して背を向けることは全く
ありません。これは前面的に進めていく責務がありますが、半年空くかもしれません。空いて
から、タフ・ネゴシエーションをして、公平性に富んだきちんとしたルールで、効性の上がる
ポスト京都のルールを作っていくことが重要だと思っています。
いずれにしても、答えの1というのは、低炭素型社会を目指す姿勢を崩さない。これは確実に、
国際世論が低炭素社会にいち早くスタビライズする機動力になる。発展途上国も背を向けられ
ない。日本の成長モデルは、この低炭素型社会をいち早く構築することが、21 世紀に我々が国
際的にも発言力があり、きちんとしたスタンスで国力を保っていくため、あるいは発揮してい
くために必要である。
それでは翻って、日本の政策、戦略はどうなってきたか。昨日、審議会があり、それまでの
経緯を簡単に述べたいと思います。これは私個人の考えかも知れませんが、私も総合資源調査
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会の正委員になっていますので、エネルギー政策を語ってもいいと理解しています。ただ、個
人の考えとして申し上げますが、例えば第一約束期間で 6%減を 1990 年レベルで行うことに関
し、私たちは、できれば省エネルギーを前面に打ち出し、供給サイドに関しては原子力で低炭
素型に持っていく。国民経済を考えれば、低炭素社会は今の化石燃料の延長線上にはありませ
んから、何らかのパラダイムシフトをきちんとしていかないと、低炭素型には持っていけませ
ん。割高な社会なのです。化石燃料型の延長線上では、今までのインフラの上に成り立つわけ
ですから、それほどアディショナルな社会的なコストはいらないわけですが、低炭素型にシフ
トしていくことになると、どうしても割高な世界になっていく。それをどのように低減しなが
らそこに移り、その社会を実現していくかが極めて重要だと思っています。個人的には省エネ、
供給された原子力で CO2 の総量を減らしていくことがいいと思っていたわけです。昨年の 6 月
くらいに、クールアース 50 で、超長期的なビジョンを明確にしています。2050 年はポスト京
都ですから、第一約束期間のあと、我々は公平性を保ちながら、どのように世界の 192 カ国が、
192 人 193 脚で走っていけるようなルールを作るかが大事です。
よって、クールアース 50 で三原則を言いました。2050 年には皆で 50%削減しようという長
期目標を、首相決断で世界にアピールした。これはまだアクセプトされたわけではないわけで、
先日国会で麻生総理が、国際的にアクセプトされたなどと言って、民主党の岡田氏にまだされ
ていないと怒られたと聞いていますが、もう少し勉強してもらわねば困ると思っています。い
ずれにしても日本発で言い出しましたが、我々はこの背景を意識しているわけで、50%という
のはなかなか難しいので、そう簡単に言えるような数字ではありません。2050 年に 50%と何と
なく雰囲気がいい、アピールできる、ずい分先のことだから、ということもあります。ただ、
我々が言いたかったのは三原則で、それが今回のサミットにも反映された。2050 年 50%という
数値目標に関して、そのビジョンを締約国全員で共有すると言っているわけです。それでも G8
のデクラレーションでは OK が出ず、全締約国とはアメリカも中国、インドも含まれるという
ことを言っています。それを、国連の締約国会議で検討し採択する。それでもまだ駄目で、四
段構えになって、ウィスィークになっています。それを努力して求めましょう、こういう G8
サミットの宣言文が出ています。
いずれにしても、2050 年 50%削減、全員でやらなければ意味がないと日本は言い張っている
わけです。アメリカも言い張っています。今度のサミットでは、それがある程度サポートされ
たと言っても過言ではなく、私共は極めて良質な宣言文だったと理解しています。
二番目の原則は、日本が独自に打ち出しているセクトラル・アプローチと言われています。
これは難しい。国情に応じて、ポスト京都のフレームは柔軟的な数値にしなければならないと
いうことで、それは 90 年レベルで 6%減の帽子を被せられ、ある程度経済成長をしていかない
と、まず年金、医療が破綻します。そういう意味で、私たちはある程度の経済成長のモデルを
牽引していかねばならない。それが環境モデル、環境ビジネスモデルであると思っています。
経済成長のためには、国情に応じて、ということになれば、勝手に基準年で何%減だとか決め
られると、経済成長をある程度犠牲にすることも止むを得ない場合が生じてくるといけません。
それはちょっと不公平だろうという話で、先日、日本で言っているのはセクトラルアプロー
チで、5 月 22 日に、サミットを控えて法律改正が盛んに行われました。私は、省エネ法の改正
等で国会の参考人をやりました。私は参考人は 4 回目です。国会はこちらから訊いてはいけな
い。議員の先生方から質問を受けるだけ。ただ面白かったのは、テレビのワイドショーを見て
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いるようで、参議院の経済産業委員会ですが、これは失言が許されず、直すのも大変です。最
初に質問を受けたのが姫井由美子さんで、虎退治で有名な女性議員、民主党です。次に、公明
党の松あきらさん。三番目がまた女性で、丸川珠代さん。四番目は古川さん、この方は面白い
人で、事前に名刺交換をして「先生と同業者です」と言います。見れば慶應義塾大学外科部教
授になっている。次に法律事務所の弁護士とある。
その時に松あきらさんが、日本は APP のフレームで、セクトラルアプローチを頑張ってやろ
うと思っている。参考人の考えを聞きたいと言われました。今はクールアース 50 の三原則の二
番目ですから、それは私もサポートしています。国際的戦略の中で行っていますから、日本の
戦略としては地球規模の環境問題における公平性にありますから、公平性を担保するために、
国情に応じて柔軟的なポスト京都のフレームが必要である。ただし、気候変動問題は総量問題
ですから、総量をどのように規定していくかが重要になってくるので、その国が今までやって
きた省エネ努力や、低炭素化への努力が加味されたルールになる必要があります。よって私は、
セクトラルアプローチをサポートします。しかし、例えば製鉄やセメント、減単位を国々が出
し合うわけです。うちは製鉄 1 トン当たり、これだけのエネルギーで CO2 はこれだけです。よっ
て減単位はこれだけです。日本はチャンピオンです。それを基準に悪いところは 2 倍というの
もありますから、20%くらいを世界のグローバルスタンダードにして、これをベースに生産量
をある程度かけた値で CO2 量を皆で決めていきましょうというセクトラルアプローチです。た
だ、それぞれの企業がノウハウを持ち、培ってきたものをある程度オープンにしなければなら
ないので、そう簡単にはできない。日本だけではなかなか無理なので、アメリカと組んだり、
共同して行う。日本はそれだけの国力があるかどうかが問われていると思うと申し上げました。
国会で少し嫌味を言いました。
三番目は、ポスト京都では経済と環境を両立しなければならない。ここで必要なのが技術で
あると我々は言い張っている。この三原則が洞爺湖サミットで一つだけ実現された。数値目標
という言葉が入ってきて、ビジョンなど何枚も風呂敷に包んでいますが、長期目標という言葉
が出てきて、発展途上国も全部含めたビジョンの共有という点で、日本のクールアース 50 の第
一番目の原則が、今度のサミットで含まれたことは大きな成果だと思っています。
その後私たちは、2030 年度の需給見通しを出しました。2020 年は国益を考えた上で、国民経
済上最も負担を少なくしながら、低炭素化へシフトしていくにはどうしたらいいか考えたかっ
た。早期に 2020 年問題を言うということは、国策上極めて不適切だと私共は思っていました。
ところが、去年の 12 月くらいから話がガラッと変わり、EU はこの問題ではかなり先行してお
り、今まで国策で仕掛けてきました。例えば、基準年の問題。今度の福田前総理のビジョンで
も言っていますが、基準年ひとつ取ってみても、ずいぶん戦略性に富んだ基準年になっている
と言っても過言ではありません。第一約束期間は 1990 年で6%減と言っているわけです。90 年
というのは、議定書が京都で採択されたのが 1997 年です。96 年だって構わないわけです。90
年というのは、
EU にすれば大変いい年だったと考えざるを得ない。
どういうことかと言うと、89
年にドイツの東西統合があり、石炭火力で汚い物質をどんどん出している。90 年の EU はとて
日本は 80 年代から第一次、第二次オイルショックを踏まえ、省エネやエネルギー
も CO2 が多い。
源の多様化に走ってきましたから、CO2 の量はずい分減ってきています。
90 年レベルで計算してみました。2005 年で最もエネルギー起源の CO2 が伸びた国は、中国
で 108%。2 番目はインドで 88%。3 番目がアメリカで 18%。4 番目が日本で 14%。EU は、マ
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イナス 1%です。90 年にたくさん出て、ずっと減ってきています。経済成長したにも関わらず、
大変なユーロバブル、EU バブルがあったにも関わらず、マイナス 1%です。これを 96 年ベー
スにして 2005 年ベースを考えると、ガラッと変わります。96 年ですと、日本はプラスマイナ
ス 0%、EU はプラス 4%になります。基準年によって、このくらい変わるということを頭に入
れた上で、先日のサミット直前の日本の戦略を読み込んでみます。私共もずい分計算しました
し、環境省は全体の CO2 の量やそれ以外の温室効果ガス排出源を全て管轄する省庁で、志が高
いといえば高い。経済産業省はその中で計算しています。去年 12 月に、EU が主導してポスト
京都のフレームをこのまま続けたい。続けるためには総量規制で 2020 年が次のターゲットだ。
よって 2020 年を 90 年レベルの 20%、30%と言い張る。日本も、2020 年問題、総量規制問題に
ついて、エネルギー需給見通しのきちんとした値を出さざるを得なくなった。
そして、今年に入ってガラッと政策が変わってきた。最初は省エネルギープラス原子力で将
来を乗り切っていこうと思っていたものが、原子力の新規着工は 3 基しかない。それほど供給
サイドを原子力に頼るわけにはいかなくなった。柏崎の原発が止まっていることもある。よっ
て、短期的にリードタイムが短く、供給サイドを低炭素型にシフトしていくには、何が最もい
いかというと、新エネルギーだということになった。その頃は福田さんが首相でしたから、こ
れを一つの機軸に据えていくという考え方が急に膨らんできた。4 月に入って、新エネルギー
への政策を各省庁が出すため、私たちは一生懸命書きました。私たちは総合資源調査会の新エ
ネ部会で、そこが一つの大きな柱を建てるべきだ。理由は、省エネあり、原子力あり、プラス
短期的に 2020 年問題を低炭素型にシフトすることになったときに、一番手っ取り早くできるの
が新エネである。新エネの場合には、産業政策、地域が栄える、ある意味では大都市集中の経
済を疲弊している地域に、地域の活性化、国土の充実がなければ、これからの環境ビジネスモ
デルはできないという考え方です。よって、新エネは風が強ければ風力発電、太陽光があれば
太陽光発電、太陽熱があり、農・林・水といった一次産業が産業構造を変革しながら、二次・
三次産業まで併設することにより、産業構造の変換をする。エネルギー政策が、産業政策と一
体化したものとして、地域が栄え、国土が充実する、自給率が上がる、低 CO2 型になる、こん
ないいことはない。よって、新エネ政策に風が吹いてきたのは今年に入ってからです。4 月に
なり、全省庁に、環境がらみの低炭素型社会に貢献できるような政策を出すようにというお触
れが、内閣官房を通して回りました。
そのときに、環境モデル都市という、極めて画期的なもの、環境モデルは地域が主導するモ
デルでなければ、地に足の着いたものにならない。地産地消のモデルで、人のモデルもあるし、
そ
の中の資質も生かせ、地域はどういうものを考えておられるのか。こうしたモデルを全国で数
カ所選び、公的資金を無駄にすることなく、一極集中をしていこう。大変厳正な審査をヒアリ
ングで行います。砂川さんもいらっしゃって、非常にきちんとしたことを言われ、私たちは甲
乙つけがたい。駄目なところはない。皆さん今までもやってきたし、これからも環境モデルを
構築していきますとおっしゃるわけです。○ではなく、二重丸方式のようなものです。○の多
いところを選び、最後は福田前首相が決断をされた。北海道の 2 市町は、これによって選ばれ、
大変なコンペティションを通ってこられているのです。モデル地区として、これが日本の中で
スピルオーバーしていくように、公的資金であるまちづくり交付金などをはじめ、経済産業省
の新エネがらみの予算や、国交省の道路関連の予算が環境に衣替えして入ってくるとか、集中
することになります。砂川市長のところも、これからが大変だと思いますが、きちんとしたこ
− 17 −
とをされればされるだけ、来場者も多いでしょうし、大変な勢いで発展していくと思っていま
す。福田さんは環境がらみのサミットを踏まえ、大きな政策を打ってきた。私は福田さんとい
うのは、何か大人しそうな顔をされていますが、大変な政治決断をされた方だと敬意を表して
いるわけです。そのときに、福田さんに言ってもらいました。官房あるいは官邸に 4 名の秘書
官がおられ、その方がなさるのだと思いますが、福田さんが最後に決断されたのでしょう。頂
いたのが、私どもが書いた需給見通しの絵と、新エネモデル国家ということが、しっかりと取
り上げられました。これが戦略であります。
二番目の決断ですが、福田さんに戦略性として、今の基準年のこと、ポスト京都は日本はそ
んなに甘くないということ。首相に言って頂くには、経済産業省系でも細かいことを書かせて
頂いたと思いますが、2020 年の需給見通しを出したときに、これは完全にオープンになってい
るのでよくご覧になると分かると思いますが、基準年が二つ書いてあります。1990 年は今まで
のことに関して敬意を表しながら書きました。もう一つは 2005 年です。エネルギー起源の CO2
でいきますと、90 年レベルでいうと 4%減のシナリオを示したに過ぎない。経済成長をある程
度見込んでいますので、それでも積算で 52 兆円かかる。国民負担が大きいと思った方が多いと
思います。ところが私共には含みがあって、2005 年ベースにすると、エネルギー起源はもう少
し少ないですが、1990 年 12 億 6,100 万トンの CO2 を出しています。エネルギー起源の場合は、
それの 4%減のシナリオを示した。これを 2005 年ベースにすると、14%減になります。我々が
一番頭を使ったところで、ここが重要です。分からないように書くことが大事です。EU は 1990
年、20%減と言っています。先進国は 30%減という強力なラッパを吹くわけです。EU は 1990
年にこれだけ多く出しておいて、2020 年 20%減のシナリオを言っていますが、
EU も 2005 年ベー
スは減っています。2005 年ベースにすると、14%減だということを言い張ったのです。基準年
によってこれだけ変わるこのルールの戦略性、いつまでも 90 年などと古いことばかり言うのは
おかしい。なるべくリニューアルして、2005 年ベースでポスト京都は考えていくべきだ。洞爺
湖サミットのとき、福田さんのビジョンを見て、日本もなかなか甘くないと、外国のプレスは
みんな目をむきました。それで EU もずい分軟化してくるわけです。首相がこれだけのことを
言われるということは、我々もずい分戦略性を考えました。
もう一つの戦略は、地産地消で環境モデル都市、世界のコンペティションもやるのだという
話です。そのときに福田さんが言ったのは、2050 年 50%削減というビジョンを考えると、我々
は先進国なので、発展途上国にパイを譲らなければならないので、6 割から 8 割ぐらい CO2 を
低減するような世界のビジョンを作っておかないと、パイは渡せないという公平性の概念を
言っています。2020 年に私たちは、CO2 ゼロミッション型の電源比率、例えば電力では 50%以
上くらいはないと、2050 年のクーラーアース 50 のビジョンはなかなか実現できないとおっ
しゃった。そのためには、例えば太陽光発電であれば新築持家の 7 割ぐらいには入る計算にな
り、2005 年で 32 万軒、140 万キロワット入っているものを、2020 年で約 10 倍、1 千数百万キ
ロワットいれるくらいのことになります。そういう話を実際にして頂いた。そこまでピックアッ
プして頂いたことを受けて、我々新エネ部会としては、サミットが終わったあと、緊急提言を
出しました。そのようないきさつです。
これは 8 月のパブリックコメントを全部踏まえ、9 月 25 日に正式な部会の公式なステートメ
ントとして、経済産業大臣に差し上げました。これを受けての話が、至近のお話になってきま
す。どういうことを言ったかというと、新エネモデル国家日本ということを言いました。新聞
− 18 −
にはあまりかかれていませんが、首相見解で日本は政治決断をしたのです。環境モデル都市を
選ぶこともそうです。例えば太陽光を新築 7 割に入れるとか、10 倍にする、バイオマスができ
るところは、間伐材を資源化していけるようなモデルを作る、バイオエタノールが食糧とバッ
ティングしないかたちで、セルロースから作っていく、規格外のものを液体燃料にする。高利
性に適った新エネがらみの話は、すでに首相がやれと言っているわけです。首相のトークは本
当に深く、重いのです。福田さんが首相見解で文書として記者会見を行い、世界に発信した福
田ビジョンを麻生さんも継いでおられるわけです。仮に選挙が行われ、民主党になったとした
ら、新エネがらみの話、再生化エネルギーの啓発ということは、もっと強烈な勢いで進んでい
きます。今はまだ甘いくらいだと考えていいのですが、それでも首相がステートメントを出し
たということは、首相決断を行ったということです。それは、政治決断ができた、政府が決断
したということになります。あとは、閣議決定マターになり、サミット終了後、低炭素まちづ
くり行動計画が閣議決定され、パブリックコメントを踏まえ、全国の国民のサポートを受けた
かたちで、我々ニュートラルな審議会から緊急提言を行いました。
これからは立法府の話に移っていくというのが、最も新しい話題で、そういう経緯を踏まえ
て 10 月 10 日、総合資源調査会の中の総合部会が開かれました。新エネ部会でこうした緊急提
言を出していますが、新エネがらみの話ではなくなってきた。要するに、低炭素型社会を構築
するために、エネルギー政策をどのように考え、法律改正を行うべきかという話に移ってきて
おり、10 月 10 日にキックオフが行われました。先週月曜と水曜が小委員会、昨日は特に小委
員会と新エネ部会の二つを午前・午後に開きました。その内容は、今までの法律の歴史を振り
返ってみますと、だいたい環境のモデルが地産地消で地域がやるのです。産業は産業で、ある
意味でうまくトップダウンの政策の中で産業政策が打たれていく。地域の行動と、産業政策と
が一体になると、お金が中で回るだけでなく、外貨が回るような大きな産業として、国益に適っ
ていくと私は考えています。ただ、外貨をうまく回すためには、国内でモデルをやっておかな
いとならない。お金は血液と同じですから、血液の量が同じでも回らなければ体がおかしくな
る。景気の回復は、お金の量は変わらないが、それをいかに回すかという話です。それが地域
にどんどん回っていかなければ、地産地消のモデルなどできるわけがない。一度回りだせば、
新陳代謝がよくなりますから、色々な新しい能力が生まれてきて、新たなイノベーションがな
されていく。こういう循環を起こさせるのはどこか。それがモデル都市、モデル地区です。北
海道はこれだけの資産があるにも拘わらず、お金の回り方がいま一つ悪いのではと私は思いま
す。それを今まさに、モデル都市で行う。まず公的資金が導入されますから、これを無駄にし
ないことです。これを起爆剤にして、がんがん回すわけです。それを回せるように、何をする
か。法律体系を変えようというわけです。
よく考えてみますと、省エネ国家日本になった背景は何だったと思いますか。規正法です。
1973 年に第一次オイルショック、1978 年には第二次オイルショック、一次エネルギーの 78%
も石油が占めていた時代に、価格が 2 倍、3 倍になった。それで余儀なく省エネルギー法、即
ち 79 年にエネルギーの合理化利用法案ができました。これは規制法から、勧告が行って、大き
な工場はエネルギー管理を行え、国としても国家試験の制度を作るなど、色々なことをやるわ
けです。勧告を聞かなければ、罰則を与える。これが規制法です。それをしないと、なかなか
割高なものは入っていきません。省エネルギーはペイバックが 3 年だったら普通でも入ってい
くが、5 年 6 年ということは割高であるが、省エネに資するため公的資金を入れてまでやりま
− 19 −
しょう。ただその場合には、規制法を用います。規制と支援の両方をうまく使うために税金が
あるのです。初めてそうしたことをして、日本は省エネ国家として羽ばたいていった。押しも
押されもしない省エネルギー国家・日本だということになりました。
その次の年、1980 年には石油代替エネルギー法ができました。これは支援法です。規制法を
施行したので、今度は省エネルギーに資する機器を支援しなければならない。また、石油があ
まり多すぎたので、石油に代わるもの、エネルギー源の多様化に対して支援を行うため、石油
代替エネルギー法案ができたのです。それで NEDO ができ、これを通して公的な支援のお金が
配られた。規制法ができてから、支援法ができた。それから 1980 年代に入り、代エネ部会がで
きました。初代会長は著作で有名な牧野昇さんで、三菱総研の創始者です。80 年代に入って、
地球環境問題が注目され、これは新エネルギーだということになり、1998 年に新エネ法ができ
ました。これも促進法です。いくらお金で促進しても、規制がなければうまく使えない。
それで、役所はどうにか規制を敷きたかったのでしょう。長いことかかって、今年に入って
から仕掛けがなされているわけです。首相に言ってもらい、首相決断して、さあ土台はできた。
そ
れで、日本のエネルギー政策、産業政策、自給率、国土の充実、色々なことを考えて、代エネ
法の廃止を考えている。これはまだ分かりませんし、廃止は難しいと思いますが、新エネ法の
ようなものを全部廃止して取り込み、エネルギー高度利用包括法案のようなものになると思い
ます。これは私個人が言っているだけで、これからの話は予測になりますので、誤解なさらな
いでください。
例えば、エネルギー高度利用包括法案というかたちになってきて、規制法と支援法がアンブ
レラの中に入ってくる。その中には、結果として低炭素型を 1 日も早く実現するために、エネ
ルギー政策の大きな転換を図り、エネルギー法案の改正を行う。そこには省エネ法も取り込ま
れるかもしれません。大きな包括法案ができます。ですから、エネ調の中には法学部を出た、
官僚そのものの人が皆集まってきています。来週にも小委員会があり、それをあと 2・3 回開い
て、12 月に総合部会、新エネ部会はあと 2 回、あと 5・6 回審議会をして、この法案は審議会
立法のようなかたちになると思います。それを経済産業大臣に上げて閣議決定し、国会に上が
るのが来年の通常国会になると思います。
その法律とは、規制法が強烈に敷かれます。例えば、電力の一定割合は比較設計からの電力
を利用することなど、今の RPS が強化される可能性がある。それと同時に、北海道に強く関係
すると思いますが、ある熱、燃料、例えばガス会社、石油会社、LP、こうした事業者の扱って
いる一定割合は比較設計、あるいは再生可能エネルギー系、CO2 フリーのものからのエネルギー
の一定割合を義務付けるものとする。こういうことになるでしょう。そうすると、例えばガス
会社はバイオガスを利用しなければならいとか、太陽熱を利用する、あるいはバイオチップを
ガス化しなければならない。あるいは燃料電池では、水素の一定割合を位置付けるといった話
になると思います。石油会社はバイオエタノールを一定割合混ぜなければならないといった、
規制法ができるわけです。その代わり、支援法が一緒になって手厚くなり、規制に対してきち
んとしたビジネスモデルができた場合、それに対して極めて潤沢に国の税金が割かれ、支援法
に回ります。
支援法には、幾つかの柱があって、例えば再生可能エネルギーの高度利用に資する技術開発
には、手厚く助成がなされる。二つ目が、エネルギー源の多様化に対して、低炭素型に帰着す
るような技術に関しては、多大な公的資金が入る。もう一つ、この法律は、化石から非化石へ
− 20 −
という法律なのです。それだけでは、2020 年 20%といった大きなことはなかなかできない。だ
から、化石燃料の高度利用に資する、省エネルギーに関しても含む。その中に石炭の CCS やガ
ス化、石油残渣 IGCC など、全部入ってきます。こうした石油系の超高度利用と、化石燃料か
ら非化石燃料へ、こうした技術開発に関しては手厚く手当てがなされます。
ただ、支援だけでは低炭素型に力強く移行しないので、確実に割高な社会をいち早く目指す
のが、日本の首相見解で政治決断されたという時点で、すでに規制法ができる。この法は、来
年の通常国会にかかろうとしています。この大きな流れを見落とさないようにして、いち早く
フォローの風を受けて行動する地域とすべきです。低炭素型社会は現状では割高で、市場原理
に任せておくだけではだめなので、何らかの政策が必要となり、規制法を敷いて公的資金の支
援を行う。ということは、すでに公共事業ということです。私はその意味で、新エネモデルと
して地域を啓発するということは、公共事業のモデル化をしていると思います。公共事業とい
う言葉を使うと、民間に任せればもっと安いのに、何となく割高だという誤解があるのですが、
道路を敷設しても経済効果を生まなければ、民の血税ですから止めた方がいい。ただ、これに
よって極めて大きな経済効果を生むのなら、大いにやる必要があると思います。
ですから、低炭素型に対するエネルギーモデルは、公共事業である。経済モデルがあり、自
給率が上がり、仕事が増える。排出権を買ってくるということは、排出権が外に逃げるのです。
1990 年レベルで何%減というのは、すごく不公平感がある。ただ、私たちはキャップをはめざ
るを得ないので、キャップの大きさが重要です。公平性に富んだキャップの大きさは、自分が
売ったり買ったりできなければならない。いつも買ってばかりだと、幾らお金があっても足り
ない。一生懸命経済活動をしては、どこかにお金を出して買ってくる。努力すれば売れて、努
力を怠れば買う。これが普通の公平性だと私は思います。ですから、キャップのはめかたにつ
いても、逃れられない状況になっているわけですから、公平性を担保した上でやっていく。モ
デル地区が本当に低炭素型の社会・地域になっていく見本を見せて頂ければと思います。ちょっ
と我慢すれば売れる、このモデルをこの帯広の地で実際にやって頂く。新エネモデル国家政治
決断、規制法と支援法ができ、公共事業そのものが創出されます。太陽電池を、学校の南向き
の屋根は全部太陽電池を、バイオマスのあるところは、バイオマスのストーブを入れるなど、
義務化されます。例えば多様電池であれば、工業国家日本としても極めて都合がいい。
堺も環境モデル都市候補に選ばれています。シャープの液晶の工場は 3,000 億投資します。
それならば製造工程があまり変わらない太陽電池の工場を隣に作り、700 億投資する。そして、
今ドイツに負けつつある太陽電池の産業を、日本が産業政策上、新エネモデル国家という政治
決断をし、公益性のある事業と位置づける中で義務化をして、公共施設の屋根に張っていく。
そうすると量が決められてきます。日本のメーカーで物を作っても売れないのでは困ります。
義務化をすれば売れるようになって、国内の産業政策も世界に羽ばたいていく中でお金が回り、
それが産業に育ち、国際的に外貨を引き込んでくることにより、我々は中で回っているお金の
何倍もの益を上げ、日本全体が低炭素型社会という地球益を担保した中でのモデル国家になる。
今は規正法があり促進法がある。もう一つ重要なのが、割高ではあるが、自主的な行動とリ
ンクしなければならない。グリーンエネルギー証書などが入っていかないと、本格的な新エネ
国家・日本という構想は生まれてきません。そこがまだ欠けている。環境モデル都市に選ばれ
た下川町、帯広市、82 カ所のうちの 6 カ所と言ったら、砂川市長が 1,800 のうちの 6 カ所だと
言われました。確かにおっしゃる通りで、志の高いところが出して、それが 80 数箇所、全世界
− 21 −
からしたらアジア内でのモデルとなる。トップダウンは規制と公的資金による公益性のあるも
の、極端なことを言えば、環境モデル、環境ビジネスは公共事業であるというくらいの位置づ
けです。これはトップダウンでやってきた。あとはボトムアップで何をするかです。自治を担
う行政官と市民が一緒になって、どういう仕組みを作っていくか。
そのために国としては、自主的な行動もお金の価値の中にうまく入れ込むような措置をしま
した。例えば、グリーンエネルギー証書、グリーン電力証書です。今度は、自家発電、自家消
費でもグリーン電力証書が与えられます。分かりやすくいえば、屋根に太陽電池をつけ、自分
で半分使った。北海道電力に逆送した半分については買われているので、北海道電力が証書を
貰っています。自家発電、自家消費は、自分で作った電力を自分で使っていただけだったもの
が、その量に応じてグリーン電力証書が与えられます。これは持っていれば価値があって、う
ちの電力はグリーンパワーであると言い張れます。例えばそれを購入する事業者が現れたとし
ます。その事業者がペットボトルを作っていて、このペットボトルは全部グリーン電力で作り
ましたと言い張ろうとしたとき、1 キロワットは 5 円くらいの価値ですが、1 千万円分のグリー
ン電力証書を買い集めて持っていると、1 千万円分のグリーン電力に相当する電力でこれを
作ったと言い張れるようになり、このペットボトルのメーカーは、グリーン電力の G マークを
つけて売り出すことができます。消費者には環境にやさしいボトルとして買ってもらう。
もう一つ、今まではいくらグリーン電力証書を買ってきたとしても、経費で落ちなかった。
これは自主的な行動だから、あくまでも寄付金行為である。そのため経営上はあまりたくさん
買えません。ところがこれからは、損益で落とせるようになりました。そうすると、家庭の中
のグリーン電力証書を、ある地域、例えば市が買い集めれば、帯広市の公共の建物の電力は、
全てグリーン電力であると言い張れるようになります。市が財政に少し還元しようと思うなら、
他の地域にある産業にこれを売れば、その産業は損益で落ちますから、市はその収益を戻して
またいい政策に活かすとともに、買い取った企業は G マークをつけて売り出して、環境に貢献
する企業であると言い張れるようになります。こうした自主的な行動までもが、ビジネスモデ
ルの中に組み込まれるような努力も、政策上位置づけようという試みがなされています。それ
を市の中で、もっと上手くできるような仕組みをつくられるのもいい。このあたりは、地域特
性、風土に基づいた、最も適切な政策を併せて行っていくことで、モデル都市としての大きな
力になります。それを色々なところに普及・啓発していけば、環境国家、新エネ国家・日本、
最終的には成長エンジンそのものになる。企業の枠を超える、自治体の枠を超える、全体が一
体化するモデルをいかに地域の中に作っていくかが極めて重要です。有難うございました。
− 22 −
パネルディスカッション
「地域の環境ガバナンス」
★コーディネーター
★パネリスト
株式会社ノーザンクロス代表取締役 山 重 明
札幌学院大学商学部商学科教授 河 西 邦 人
北海道立十勝農業試験場長 菊 地 治 己
帯広畜産大学大学院畜産学研究科教授 高 橋 潤 一
株式会社エコERC代表取締役副社長 爲 廣 正 彦
帯広市長 砂 川 敏 文
− 23 −
パネルディスカッション
「地域の環境ガバナンス」
コーディネーター
株式会社ノーザンクロス代表取締役 山 重 明 これから 2 時間半ほどですが、パネルディスカッションの進行を務めさせて頂きます。本
日は「地域環境ガバナンス」と、非常に骨太なテーマになっております。私も久しぶりに柏木
先生のお話を間近にお聴きし、相変わらず迫力のあるホットなお話も含め、ある意味、生々し
い政策決定の場面にも一部触れて頂きました。日本の国が国家戦略として、新エネモデル国家
という戦略に大きく舵を切ったというお話を伺いました。地球全体の環境保全、あるいは環境
を維持していくための、国際的な取り組みの中での日本の国家戦略について、我々が一般の情
報から得るだけでは分かりにくいメカニズム、立場の異なる国同士の駆け引き、地球益と国益
との関係等のお話も含め、日本の国が低炭素社会に向けて、エネルギー政策を新エネモデル国
家へと舵を切ったという内容は、非常に勉強になりました。
帯広市は全国 6 都市の環境モデル都市の 1 つとして選ばれたことは、柏木先生のお話にあっ
たように、まさに新しい国家戦略としての新しいエネルギー戦略の牽引力なる。あるいは先導
役になるべき役割を持った都市であります。逆に言えば、この環境モデル都市に指定された地
域における、今後の様々なプロジェクト、システムの展開が、日本全体の新しい成長を切り拓
いていくエネルギーになっていく。ひいては、国際的にも非常に評価され、国際都市としての
評価を確立していく基本になっていくと思います。帯広・十勝が環境と経済を両立させる、新
しいエネルギーを含めた低炭素社会経済の地域型モデルを構築していく。これがひいては、世
界全体の先導役になっていく可能性も秘めているというお話だったと認識しています。柏木先
生のお話は、地域にとって勇気を与えられるものでしたし、重要な課題を地元に投げかけられ
たと思っております。
このパネルディスカッションの中では、小林先生の方からも「行動する環境会議へ」という
キーワードを頂きましたし、柏木先生からは地球の、あるいは日本の国家戦略としての環境と
経済を両立させる、新しい低炭素経済モデルの先導役としての地域として、具体的に行政や産
業、市民が今までの壁を乗り越え、新しい地域システムをどう構築していくのかが問われてい
ると話されました。それにどう答えを出していくか、本日のテーマである環境ガバナンス、あ
るいはローカル・アジェンダというものを、この会議を通してどう見出していくかが、パネル
ディスカッションに課せられたテーマであろうと感じております。
今日は、環境分野についてご専門の 5 名の方々がおられますので、できるだけパネリストの
方に多くご発言頂きたいと思います。第 1 ラウンドはパネリストの方々に 5 分ほど、ご自身の
ご紹介、取り組まれている事柄についてご紹介を頂き、今日のご提言の内容についてもお話し
頂きたいと思います。第 2 ラウンドでは 10 分間ほどご提言・提案を詳しく伺います。第 3 ラウ
− 24 −
ンドでは、本日のテーマあるいは、柏木先生、小林先生から投げかけられた地域それぞれのこ
れまでの取り組み、現在進められている取り組みをどうマネージメントしていくのか。あるい
は、新しい地域のシステムとして、今までの境界を越えた新しい仕組みをどう構築していくの
かについて、パネリストの方々からご提言を頂き、会場の皆様からもご発言を頂き、帯広・十
勝で今後どう行動していくかに結びついていくようなご提案を頂き、今日の会議のしめくくり
にしたいと思います。
それでは早速、第 1 ラウンドに入ります。
パネリスト
札幌学院大学商学部商学科教授 河 西 邦 人 現在私は、支庁制度改革に伴う、地域振興条例策定のための懇話会座長を務めており、そち
らは頭の痛い話でありますが、今日はそうではなく、環境の話をさせて頂きたいと思います。
私は大学教員の傍ら、5 年ほど市民活動団体にも所属し活動しております。特定非営利活動
法人北海道 NPO バンクという名称の NPO です。日本で初めて貸金業の許可を得た NPO 法人で
す。この北海道 NPO バンクは、最初は北海道庁から約 1,500 万円、札幌市から約 500 万円、市
民活動団体及び市民の方から約 2,000 万円の資金を出資等して頂き、
約 4,000 万円の資産で、
ファ
ンドというと“ハゲタカファンド”など、日本を買い叩く非常に残酷なものを思い浮かべるか
もしれませんが、私ども北海道 NPO バンクはそういうファンドではなく、心優しい市民活動に
支援をしていくため融資を行うファンドであります。
この北海道 NPO バンクは、平成 19 年度、そして今年度、環境省から委託事業を受け事業を
行っています。事業内容は、環境の地域課題をビジネスによって解決する。環境省は、環境系
コミュニティビジネスといった呼び方をしていますが、そうしたコミュニティビジネスを支援
し育成するための資金を提供するというスキームをつくり、こうした事業者の方々に対して、
経営的な助言をできるような専門家集団を作り上げ支援していく、そんなモデル事業を受託し
ております。
平成 19 年度に関しては、例えば、日本で初めて市民風車を作った、特定非営利活動法人北海
道グリーンファンドにお金を融資しました。また、これは皆さん見かけないかたちの三輪車だ
と思いますが、これはベロタクシーというものです。ベトナム等では自転車のタクシーが走っ
ているのをよく見かけますが、今、北海道では札幌市と函館市でこの三輪型の自転車が走って
います。ベロタクシーというのは、運転手の後ろに客席があり、だいたい 2 人くらい乗れます。
近距離を走る、タクシーに近いような乗り物です。ただしタクシーと違って、全くの人力で走
るわけですから、カーボンゼロ、低炭素型のタクシーとして、全世界で注目を集め、平成 19 年
度から北海道でも 2 都市でお目見えすることになりました。
一つは札幌で営業している「エコ・モビリティサッポロ」、これは NPO 法人で、こちらにお金
を融資しています。もう一つは函館で、「エコホスピタリティはこだて」、これは任意団体です
が、ベロタクシーの運転手を研修する、そうした団体に融資をしています。
− 25 −
平成 20 年度に関しては、下川町の森林を守りながら、森林の間伐材を利用した商品を販売し
ている、
「特定非営利活動法人森の生活」に融資し、北海道環境財団、環境省地域環境オフィス
等と一体となって支援を行っています。
本日の、地域の環境ガバナンスというテーマとぴったりなスキームを、我々は作っています。
後ほど触れますがガバメントとガバナンスの違い、今日お話するのはガバナンスの方向です。
地域社会の中でそれぞれの構成者、例えば NPO 法人森の生活、それを支援する市民の人たち、
そして我々のような市民団体、もしくは地域環境オフィスのような研究機関の方々、こうした
人たちが皆で力を合わせて地域のため、環境のためになる事業者を育てよう。それが実は、環
境ガバナンスの仕組みなのです。私は第 2 ラウンドでその話を中心にお話したいと思います。
第 3 ラウンドでは、今回は産業政策の話が出ていましたので、その視点から、この十勝でどう
やって環境産業を育てていくかという、具体的な提言をさせて頂こうと思っています。
パネリスト
北海道立十勝農業試験場長 菊 地 治 己 私は北海道立農業試験場に勤務していますが、道内には試験場が 8 カ所あり、十勝農業試験
場は帯広の隣、芽室町にあります。十勝は大規模畑作農業、酪農畜産地帯ということで、全国
有数の食糧基地でありますが、その中にあって、主に豆類中心の品種改良、大規模機械化農業
の栽培法等の研究をしております。最近は環境保全型農業ということで、クリーン農業、さら
には有機農業といった分野に非常に力を入れていますが、本日は、有機農業を特に取り上げ、
有機農業の振興によってこの地域社会の持続的な発展を図ろう。私の現在の職務である、農業
試験場長という立場から脱線するようなこともあろうかと思います。と申しますのは、私は元々
お米の品種改良を長くやっており、30 年前は道産米は非常に不味かったのですが、最近何とか
味が良くなり、帯広・十勝の皆様にもやっと道産米を食べて頂けるようになった。それでそち
らの方は用なしになり、畑学系の方に来たのですが、この十勝は本当に雄大で素晴らしい。私
は本州出身ですが、元々来たかったのは十勝、道東ではないかと改めて感じました。なかなか
畑作専門の方は勉強が追いつかない状況ですが、素人的な立場から文句を言ったり、若い研究
員の人たちと一緒に仕事をしています。
この地元の皆さんには大変お世話になっていますが、物事には光と影があり、今日はその影
の部分も少しお話しながら、いかに光の部分を明るくし、さらに十勝、北海道全体のイメージ
アップを図りつつ、私が最近入れ込んでいる有機農業を普及させていきたいと考えております。
有機農業のきっかけは、品種改良を行う中でお米の味を最優先にし、試験研究をしてきた。稲
の病気は色々ありますが、これについては農薬がある。肥料については化学肥料がある。もっ
ぱら味と収量に力を集中して改良してきましたが、農薬に頼り、石油に頼って近代品種だけを
作ってきたという忸怩たる思いもあります。病気などもして、有機農業に関心を持つようにな
りました。道庁勤務の経験もありますが、そのあたりから慣行農業だけでなく、有機農業の研
究も推進しなくてはならないと取り組んでいる次第であります。後ほど、十勝農試の有機農業
− 26 −
研究のご紹介等をしたいと思っております。
今日は、エネルギー関係の最新のご講演をお聴きし、この後も諸先生方から興味深いお話が
あり、楽しみにしております。
パネリスト
帯広畜産大学大学院畜産学研究科教授 高 橋 潤 一 私は帯広畜産大学に博士課程の大学院ができたと同時に、循環型畜産学分野を創設しました。
私の同僚はバイオガスプラントの梅津一孝氏ですが、彼と一緒に、一つは十勝にあるバイオマ
ス資源、柏木先生のお話にもあったように、セルロース(繊維)系のものからどのように液体
燃料を作るか、あるいは家畜糞尿をどう生かしてエネルギー化するか。例えば燃料電池等の研
究も始めております。また、分かりやすく言えば牛のゲップなのですが、農業畜産系の温室効
果ガス、一般に温室効果ガスと言いますと、皆さん二酸化炭素と考えますが、6 種類の温室効
果ガスを比較する場合には、全て二酸化炭素に換算しますので二酸化炭素と言いますが、結局
は炭素でないものもあるのです。フロンガスや、農業系では亜酸化窒素、こういったものも強
力な温室効果ガスです。この辺は、まだ世界のアセスメントも途上でありますし、どのように
低量化されるか非常に大きな問題になっております。我々はこのメタンガスと亜酸化窒素を一
つの大きなターゲットにし、これをいかにきちんと評価し低減する技術を確立するかを研究し
ています。
特に牛のゲップ、メタンはある程度低下させることができることが分かってきました。この
十勝で、どの程度の温室効果ガスが二酸化炭素に換算してあるのか。その目標をどのくらいに
しているのか。それに我々の技術を適用したら、どれだけ貢献できるか、ということで低量化
することによってできるかと思います。
私は元々環境が専門ではなく、動物の栄養学をずっとやっていました。環境に関して始めた
のは、硝酸塩中毒です。硝酸塩は、現在の大きな環境問題ですが、今から 35 年前から環境につ
いて言っていたのですが、当時は畜産学会では誰も聴いてもらえなかったのです。ずっと続け
ている過程でそれを防ぐ方法を発見し、特許も取りました。その過程で、メタンガスをコント
ロールすることができると分かり、その研究を始め、とうとう本来の栄養学からこちらに移っ
てしまいました。それと同時に、十勝のバイオマス資源、家畜糞尿や未利用のワラ類、繊維類
をどのようにエネルギー化できるか、こういったことを実用化し、実際は産業レベルまで持っ
ていければ、一つは十勝のため、もっと大きく言えば世界のために役立つのではないか。
もう一つ大きな原動力になっているのは、私はこれを研究しながら、ユネスコの農村開発教
育に携わってきました。化石燃料は限られたところにしかない。ウラニウムもそうです。とこ
ろが、バイオマス資源は途上国でもどこでもある。これを上手く活用し、低インプットで高い
エネルギー、付加価値の高いものを作り出すことができれば、かなりの貧困問題の解決に提言
できるのではないか。そういったことから、現在取り組んでおります。
− 27 −
パネリスト
㈱エコ ERC 代表取締役副社長 爲 廣 正 彦 今日ここに私が座っているのは、何か場違いな気がしているのですが、若干の自己紹介と、
取り組みの概要をお話しいたします。
私は更別村という、ここから約 40 キロ南に下がったところにある村の出身で、高校を卒業し
て、あまり素行が良くなかったものですから村から離れ、平成 6 年に U ターンし、更別企業と
いう会社をつくりました。バイオディーゼルに取り組んだことから、今日この場にいるのです
が、最初は自分の会社の経費節減から入りました。平成 17 年にあるきっかけがあり、現在に至っ
ています。そのきっかけとは、小林先生に平成 17 年に顧問をして頂いた十勝エネルギーネット
ワークという任意団体で、帯広市長から推薦を頂き、都市再生モデル調査という事業に選ばれ、
帯広市、十勝を中心とした新しいエネルギー(BDF)についての調査と実用化に関わりました。
実際にこの取り組みを始めるきっかけは、当時、早稲田大学に在学していた一人の女学生が
提案し、帯広で行ったこの調査事業でした。これが終わった段階で、調査を行った委員の中で「こ
のままで終わるのも何か癪だ。何とか実用化したい」ということで、十勝エネルギーネットワー
クという NPO 法人を設立し、現在に至っております。
お陰様で昨年、エコ ERC という会社を設立し、全国的で三本の指に入る規模のバイオディー
ゼルの施設を十勝管内に造りました。バイオディーゼルだけではビジネスモデルとして幾つか
のハードルがありました。それは原料の調達で、日本の場合は廃食用油を使っていますが、そ
れだけではなかなか思うように燃料が作れないので、十勝の農業地帯を菜種の生産地域にと、
菊地場長にも色々お世話になり、今年度は 100 ヘクタール弱の菜種を作付けすることができま
した。この後、ビジネスの内容についてお話しできるかと思います。
私たちは自分達のポジションでできることを、少しずつできる範囲でやっていこう。そうす
ることにより、トップダウンではなく、自分達で中身を大きくしていこうというスタンスで取
り組んでおります。細部については後ほど述べさせて頂きます。
パネリスト
帯広市長 砂 川 敏 文 私は四国の香川県の生まれで、帯広の畜産大学に入学したことがきっかけで、北海道のご縁
ができ今に至っております。平成 10 年に当選し、現在 3 期目です。従って、どうしても四国と
北海道、特に自然環境について比べるのですが、北海道の自然を非常に気に入っています。そ
こに住む人間の生活と、地域を支える経済活動・産業活動のバランスが、環境と共生するとい
う意味で非常によくとれていると思っています。人口 560 万、8 万平方キロと、ある程度の広
− 28 −
さと人口を持った地域全体にそういうことが言えるということは、非常に貴重なことではない
かと思います。この北海道を大事にしなければならないと、改めて感じております。私なりに
は、その縮図が十勝であるとも思っているわけです。
帯広市の環境に対する施策を考える場合、帯広市域は 600 平方キロしかありませんので、そ
こだけ考えたのではだめで、幅広くある程度の広さ、人口を持ったところを対象にすることが
必要だと思いますし、この十勝は地形的・気候的・産業的にも非常にまとまりがあり、十勝全
域を考えていく必要があると常々思っております。1 万 1,000 平方キロ、35 万人という地籍と
人口があれば、環境配慮型の色々なことが実践できる地域であると考えております。特に十勝・
帯広は自然環境が非常にいいですし、日照時間も長く、水もきれいで豊富です。基幹産業が大
規模な農業なので、どうしても自然との共生が必要であります。その意味では、様々な環境関
係の施策を実践していく、あるいは発信していくのに適した地域だと思います。
これまで帯広市は、環境配慮型の施策を続けてきました。市の総合計画の中で大きな位置づ
けをしている、環境共生都市であります。自然環境と調和したまちづくりということで、もう
何十年も続けてきています。具体的には、平成 9 年に環境基本条例ができ、12 年には環境基本
計画が施行されています。バイオマスタウン構想も推進しております。以前からずっと取り組
んでいるのが、都市緑化と CO2 の吸収に資するため、100 年の大計である帯広の森の造成計画
です。私は、この帯広の森計画が非常に象徴的な意味を持っていると思っています。一つは、
市民の皆さんが植樹や育樹、森の中での活動などを行い、市民協働のまちづくりの大きな実践
の場、シンボルと考えられます。もう一つは、帯広市の環境政策を象徴する意味があり、非常
に大きく大事な事業であり、100 年に向けて今後も取り組んでいきます。
これは今までの実績ですが、帯広市はこれらを踏まえ、今後とも先駆的・積極的に取り組ん
でいきたいという願いを持っており、特に最近は環境問題で厳しい状況があり、これに地域か
ら対応していくことも大きな課題になっています。そうした問題意識を持ちながら進めてきた
ところであります。
そこで、環境モデル都市に選定されましたが、今日、柏木先生のお話を聴き、今までの帯広
市の環境配慮型施策の延長と、バージョンアップというレベルに留まらず、パラダイムシフト
であるということです。今までの国のあり方、将来の国づくりのため大きく舵を切った、そう
いうタイミングなのです。21 世紀の国づくりが、今までの延長からシフトしてしまった。その
象徴としての環境モデル都市であるというお話でありました。実は、私はそこまで考えておら
ず、今までやってきたことを国が応援してくれればいいという感じで、第 6 期の総合計画が作
業中で、その中の一つの大きな柱として使えるというくらいの感覚で応募したのです。ところ
が、いろいろ内閣府、各省庁と打ち合わせをし、ヒアリングも受けながら進め、そして本日の
お話を聴いて、そんなに気軽に考えるわけにはいかない。本腰を入れて取り組まねばならない
と改めて思いました。また、それに取り組めることは、帯広市として大変名誉なことであり、
腹を据えてやるしかないと痛感した次第であります。
環境モデル都市として、これからのアクションプランを作成する状況ですが、その内容につ
いて後ほどお話ししたいと思います。いずれにしても、世界中で地球の環境を考える大きな転
機であり、日本としても舵を切った。地域ではどうするべきかという観点から、市民・行政・
NPO 法人も企業も地域一丸となって意識をしっかり持ちながら、取り組んでいかねばならない
と思っております。
− 29 −
山重(コーディネーター)
実際にビジネスとして成り立つことは非常に
率直なコメントを頂き、有難うございます。 難しい部分がありました。もう一つは、十勝・
それでは早速、第 2 ラウンドに入ります。こ
帯広を中心とした基幹産業が農業であること
こからは各パネリストの方々に、テーマに関
が関わっています。エコ ERC という会社で、
して具体的なご提案・提言をお願いしたいと
バイオディーゼル燃料をこのスキームの通り
思います。
何とか実践している状態です。
砂川市長のお話を受けて述べると、柏木先
5 ヵ年計画で大きな目標を掲げ、併せて十勝
生は、今までの価値観と異なった新しい地域
農業モデルの実現を目指し、バイオディーゼ
社会モデル、逆に言えば、経済と環境を共に
ルの年間生産量 1,200 トン、
この数字は平成 18
成長させていくための新しいモデルを作ると
年度の十勝の軽油消費量です。軽油代替燃料
いうのが、環境モデル都市であると話されま
なので、軽油の消費量が約 10 万 150 キロリッ
した。その中に幾つかのキーワードがありま
トルで、その約 1%のバイオディーゼルを、5
した。エネルギーに関して言えば地産地消、
年後の平成 23 年にマックスで作る。
1,200 キロ
あるいは循環型の地域システムなどが、柏木
リットルですが、それだけの廃油が十勝にあ
先生やパネリストのお話にもありました。
るのかというと、十勝の保存量はトン数でい
第 2 ラウンドは、まさに地産地消のエネル
うと約 3,800 トンくらいはあります。ただし、
ギー、あるいは循環型のエネルギー事業に実
廃油自体はすでに社会形成をなしている部分
践的に取り組んでおられる、爲廣さんのお話
があり、廃油回収を業としている業者と会い、
から伺います。
それに付随して廃油自体を新聞のインクや、
飼料高騰の折ですから飼料の蛋白源にするた
爲廣(パネリスト)
め、
回収されていた量が約半分の 1,800 トンく
皆さんの非常に素晴らしいお話を聴かせて
らい。約 2,000 トンは、回収に非常に経費が
頂き、これからお話しする内容に希望が見え
かかるため、今までは捨てられていた。十勝
た気がします。産業もエネルギーもネクスト
エネルギーネットワークでは、この捨てられ
ステージなどと、少々おこがましい名前なの
ている部分を、何とかコストに見合うように
ですが、燃料もネクストステージへというこ
回収する仕組みを作ってきました。
とで、循環型ビジネスの役割、これは地域活
バイオディーゼルと農業生産というもう一
性プログラムのようなかたちで活性化できる
つの枠組みを作り、原料を自分のところでも
のではないかと、ビジネスとして成立させよ
調達しよう。基本的に十勝は大規模農業地帯
うと進めております。
なので、仮に菜種を栽培すると、この 1,200
全国的にも色々なところで行われています
トンの原料を調達するのに、どれくらいの面
が、大きくは菜の花プロジェクトというかた
積が必要かというと、それほど大きな面積で
ちで、発信が滋賀県愛東町、今は合併ました
はありません。例えば、帯広市の農業地帯で、
が、そこでの規模をもう少し大きくしたもの
帯広河西農協で作付けされている小麦の面積
です。平成 19 年に、株式会社エコ ERC とい
からすると、約 2,000 ヘクタールくらい作付け
う会社を設立、これは個人出資で作った会社
すると、1,200 トンのバイオディーゼルの生産
です。母体の中には十勝エネルギーネット
ができます。しかし、それが農業として合致
ワークがあり、バイオディーゼルをビジネス
するかどうかが非常に大きな問題です。
モデルとして成り立たせるためには、どうす
もう一つ、ビジネスとして成り立つために、
ればいいか。一般的なお手本はありましたが、 農業生産で油を作り、真っ直ぐ BDF にすると、
− 30 −
現況の菜種の流通価格からして、リットル当
海道開発技術センターが事務局になり、帯広
たり 260 円から 280 円くらいの単価になって
市で行った事業ですが、最初に路線バスの全
しまい、なかなか農業者も会社もビジネスと
ての車両に油の回収容器を置きました。それ
して成り立たない。そこで、菜種油を一旦食
と並行してスーパーにご協力を頂きました。
用にし、国産の高級菜種油というかたちで販
現在でも市内路線バス、郡部を走るバス、乗
売し、その一部を燃料化する。あるいは、地
り合いタクシー等で回収を行っています。
域にある飲食店等で使って頂き、それを回収
1 週間に 1 回集められ、
約 1,000 ∼ 2,000 リッ
する条件で十勝産の菜種油を出そうというス
トル、平均 1,200 ∼ 1,300 リットルくらいが回
キームを作っています。
収されます。これを集約してバキュームロー
この取り組みが担っている役割ですが、中
リーで工場へ運びます。工場は豊頃町にあり、
央に十勝作樹作物推進協議会がありますが、
ヨーロッパの精製方法ですが、連続式といっ
工場を帯広から東に約 30 キロの豊頃町に建
て、一つの器でバイオディーゼルを作るので
設し、豊頃町の宮口町長が会長となってこの
はなく、川が流れるようなかたちで連続的に
推進協議会をつくりました。実際に食用油と
作るという設備です。最終的にできたものは
BDF の製造コンストラクター事業が、エコエ
出荷設備、一般のローリー出荷ができるかた
ルクという会社の主な仕事となっており、消
ちで出荷しています。燃料は農業機械や宅配
費部門、生産部門、オブザーバーということ
車、市内のバスに 100%使っております。一
で、まさに産学官連携、あるいはその他の市
昨年、オランダのレッドキャメルレーシング
民の方も連携して頂き、スキームを作ってお
が来て、この燃料で 24 時間耐久レースを走り
ります。
切り性能を証明しました。
原料調達ですが、今年 4 月 18 日から帯広市
2005 年に十勝エネルギーネットワーク検討
環境課の主導のもと、十勝管内のスーパーに
委員会ができたときの計画が、今現実になっ
回収のための拠点を置き、回収を始めており
ております。このとき検討した内容は、どう
ます。回収する量は、帯広市は約 8 万世帯、
やって集めるか、それをどのように使うか、
十勝管内 16 万世帯あり、出る油の量はアン
入口と出口を明確にし、住民にご協力頂くた
ケートの結果、十勝管内全体で 1 世帯当たり
めに分かりやすい使い方をする。それによっ
約 3.8 リットル、全体で約 4 ∼ 5 万リットル
て住民全体が、低炭素社会に貢献するという
の廃油があり、帯広市全体でも 30 万リットル
スキームを描いたのですが、やっと今現実と
以上の廃油の回収があります。今、実際に回
なっております。
収されている廃油は思ったより多量に集まっ
エコ ERC という会社がビジネスとして成
ており、帯広市全体の 30 万リットルのうちの
り立つために、食用油、高級菜種油を日本で
約 20%の勢いで集まっています。
平成 17 年く
は初めてコールドプレスといって、オリーブ
らいからバイオディーゼルに取り組まれた、
油を搾る製造方法で作っています。菜種油と
京都市の中村課長に色々ご指導頂きましたが、 いうのは年間約 280 万トン輸入されています
京都市は平成 12 年から活動されており、平成
が、国内産は 1,000 トンありません。油の消
18 か 19 年に、約 16 万リットルを市民から回
費量として菜種油は非常に多く、輸入メー
収しております。140 万都市で 16 万リットル。 カーと同様の精製方法ではこうはいきません
帯広市は約 17 万人の人口で 6 万リットル、比
が、外貨を稼いで事業全体が成り立つことを
率からすると非常に意識が高いと言えます。
目指しています。
そのきっかけになったのは、昨年 10 月から北
今後の展望ですが、やはり帯広が中心で、是
− 31 −
非帯広市にリーダーシップを今以上に発揮し
と思います。危機的な地球環境のときほど、
て頂き、何とか全体を進められるようにして
環境保全型農業への転換を図っていかねばな
いきたい。バイオマス、バイオディーゼルだ
らないし、そのチャンスではないかと、有機
けでなく、バイオガスプラントやバイオエタ
農業についての説明、さらにはこれをどう
ノール等を皆さんで多段階利用できます。バ
使っていくか、うちの職員に言わせると、場
イオディーゼルのアルコールは、今現在はメ
長の構想ではなく「妄想」だと注意されてい
タノールを使っていますが、今回、エタノー
るのですが、その辺も割り引いてお聴き頂き
ルを触媒にし、エチルエステルというバイオ
たいと思います。
ディーゼル燃料で実際に走らせる。原料は全
最初に地球温暖化ですが、帯広に関して言
て十勝産を目指しており、その他にバイオガ
うと、この 100 年で 2.1 度上昇しており、特
スプラントと連携し、バイオディーゼルから
に冬の温度が非常に上がっていると言われて
出る老廃物のグリセリンを投与することによ
います。100 年前、1 月の最低気温平均がマイ
り、バイオガスプラントのガスの発生量を増
ナス 20 度あったものが、現在は約 13 度で、
やしたり、木質ペレットと連携しようとして
7 度近くも最低気温が上がっています。土壌凍
います。それが循環型社会、十勝全体を網羅
結がなくなったり、色々な影響が出ています。
できるバイオマスの多段階利用になるのでは
その一方で、夏の最高気温はそれほど上がっ
ないかと思っています。
ていない。しかしこれからじりじり上がるこ
これから出てくるハードルがあります。この
とが予想され、農業もそれに備えなければな
ハードルも、皆さんと知恵を絞って何とか乗
らないと言われております。
り越え、こういう社会を実現させたいと夢を
温暖化防止に向けて農業分野でできること
追っているところです。
ですが、よく言われるように、農業に関して
はどう適応するかというアダプテーション
山重(コーディネーター)
(適応策)と、農業も被害者だけでなく加害
まさに地産地消のエネルギー事業を実践さ
者であるということで、端的に申しますとガ
れ、さらに色々な主体と連携し、広げていこ
スを出さない、緩和策、この二つを実行せね
う。あるいは地域のシステムとしてバージョ
ばならないと言われています。今日はこの緩
ンアップしていこうというご提言でした。
和策の方を簡単にお話したいと思います。
次に菊地さんにお願いします。帯広・十勝は
ご存じのように現代農業も石油どっぷりで、
何といっても農業が基盤の地域ですので、農
やはり脱石油、石油エネルギーに依存しない
業という産業と環境の保全、あるいはエネル
低炭素農業にシフトしなければならないと指
ギーも含めて、これをどのように再構築、再
摘されています。化学肥料、農薬、ほとんど
編成していくかが菊地さんのプレゼンのテー
全てが化石燃料から作られている現状にあり
マになるかと思います。
ます。一般的な十勝の畑にエネルギーがどれ
ほどプントされているか内訳を見ると、4 割が
菊地(パネリスト)
化学肥料の製造等に使われている。それから
先程も申しましたように、今日は有機農業
機械、農薬を合わせてすでに 70%を占めてい
を特に強調してお話したいと思います。内容
る。実際に耕す部分のエネルギーはさほど
的には三つに分かれるかと思いますが、まず
使っておらず、約 10%。これは年間 1 ヘクター
地球温暖化と十勝農業の不都合な現実という
ル当たり、軽油にするとドラム缶 1 本。その
ことで、この問題点等をおさらいしてみたい
程度のエネルギープントがあるということで
− 32 −
す。更には、二酸化炭素をはじめ各種ガスが
たパンを提供しています。これはかなり行わ
出ており、このガスをどう抑えるか。また、
れるようになったと思います。環境保全型農
化学肥料、農薬をどう減らすか。これは安心・
業によって、安心・安全、環境保全、低コス
安全だけでなく、直接低コストにもつながる
ト農業、この三つが同時に成り立つことが環
技術でありますから、農業試験場ではこの技
境保全農業であろうと思います。
術開発を頑張っている状況です。
ここで有機農業ですが、皆さんはこういう
日本の食糧基地・十勝農業の不都合な現実
マークをご覧になったことがあると思います。
などと書きましたが、問題点が三つほどあり、 また、実際に有機農産物を食べられた方もい
非常に素晴らしい食糧基地ではありますが、
ると思いますが、ヨーロッパではすでに農業
産出額 2,500 億円、全道の 25%を占めますが、 の 5 ないし 20%有機補助という国もあります
これも半分は色々なかたちの税金、補助金と
が、日本では僅かに 0.2%、北海道でも 0.5%
いうことになっています。大規模畑作農業と
ほどの普及率で、本当にマイナーな農業であ
して、これまで経営効率が優先されてきたた
ります。かつては有機農業と言うと、変わっ
め、肥料、農薬、安い輸入飼料、燃料等を大
た人の変わった農業と言われていました。そ
量に使用してきた負の側面があり、最近の生
れが次第に安心・安全で、地球環境にやさし
産資材の値上がり等に非常に弱い。あるいは
い高価価値農業とされ、十勝では非常に大規
輸入自由化交渉にも非常に弱いということが
模農家が多いのですが、最近は肥料が高くて
指摘されています。
困る。できるだけ化学肥料を使わないで、有
最後にイメージと現実のギャップとして、
機農業に関心を持つ農家が現れています。そ
確かに十勝のブランド品として、私共が品種
のため道立農試は平成 16 年から有機農業研
改良を行っている小豆などは世界最高と言わ
究を始めており、十勝農試もじゃがいもの有
れていますが、一方で地下水汚染や、歩いて
機農業の研究成果を出しております。国では、
みるとよく分かるのですが、近くに寄ってみ
平成 18 年に有機農業推進法が成立し、有機農
ると結構ゴミだらけということもあり、やは
業の普及に国や地方公共団体は責務を持つ、
りイメージと現実のギャップがある。あまり
自治体は有機農業基本計画を作らねばならな
たくさん観光客が来られる前に、ゴミ拾いを
いということで、北海道は改めてこの 3 月に
やれねばと思っております。このような機会
基本計画を作り、今は全道に 330 戸くらいし
にあまり不都合なことばかり言うものですか
かありませんが、これを 1,300 戸に上げようと
ら、
「ちょっと言いすぎだ。不都合なのは場長
いう取り組みをしております。有機農業は無
だ」とよく言われていますが、ご容赦頂きた
農薬、無化学肥料、遺伝子組換え作物を使わ
いと思います。
ないという非常に厳しい制約がありますが、
克服の方向性として、自立できる農業、経
このための技術開発は非常にハードルが高い。
営効率至上主義の見直し、大規模観光農業か
しかし、一たびこれが成功すると、非常に波
ら安全・安心を強調した有機農業、食の安全・
及効果があるということで、技術開発もチャ
安心、地産地消、こういうものに取り組んで
レンジに値する研究分野であると思っており、
いかねばならない。最近はずい分地元で取り
ニーズは大きくて現実は非常に少ないのです
組みが盛んになってきました小麦、今までは
が、一生懸命技術開発をしているという状況
地元産の小麦を食べたことがない人が多かっ
です。
たのですが、立派なパンもできるようになり、 これが今、十勝農試で行っている有機農業
帯広市では学校給食にも地元産の小麦を使っ
でありますが、十勝らしい畑輪作の有機栽培
− 33 −
の試験をしております。春蒔き小麦から始
えば 30 ヘクタール分の軽油は 6,000 リットル
まって馬鈴薯、大豆、将来的には甜菜も入れ
ですが、これを生産するのに約 4.5 ∼ 7 ヘク
て、これら基本的食材を提供する。有機小麦
タールくらいあればいい。約 2 割くらいの経
粉、有機馬鈴薯、有機澱粉、有機大豆、有機
営面積を菜種に充てれば、何とか経営内での
砂糖というものができてくると、これらを利
農作業だけの燃料は自給できるのではないか。
用して有機加工食品、具体的には有機ケーキ
いざというときは、20 ∼ 30%の畑に菜種を植
等が作られるようになる。現在、砂糖等は年
えれば、トラクターだけは走るという計算も
間数万トン外国から輸入しています。大豆に
成り立ち、エコエルクからお金を頂いて品種
至っては、年間 5 万トンから 7 万トンくらい
試験等を行っております。
アメリカから輸入しています。北海道で 1 年
私共も、平成 18 年から爲廣さんの BDF を
間に生産される大豆は、ほぼこの量と同じで
購入しトラクターに使っていますが、全く問
す。業者等に言わせると、大豆に限っても青
題ありません。トラクターの機種によっては、
天井だ。ただ、安定して良い品質のものが採
フィルターの詰まりが少し早いと言われてい
れるような品種と技術を早く開発してくれ、
ますが、大きなトラブルは全くなく、十分実
という要望が試験場に寄せられています。私
用性のある燃料であることを確認しておりま
は商標を取ろうと思っているのですが、それ
す。最初、BDF をトラクターに入れる際、そ
らの有機加工食品に TOP というブランド名
んな訳の分からない燃料を、新品トラクター
を考えました。本当は秘密だそうですが、十
に入れるわけにいかない、壊れたらどうする
勝・オーガニック・プロダクトの頭文字を取り、 という職員からの反対もありましたが、実際
TOP。こういうものを作ってはどうかと言っ
に走らせてみると、臭いもないし非常にいい
ております。
ので全部これにしてくれという話も出ました。
更には、これは高橋先生のご専門ですが、
今のところ 2 台で試験を継続しています。
畑作農家は肥料が上がり、畜産農家は飼料が
最後になりますが、有機農業は非常に強い
上がって困っている。お互い餌を作って、あ
言葉のインパクトを持っていると思います。
るいは糞尿からの肥料を畑作農家に転換する。 日本で有機農業というと、先述したように変
まさに循環型の構築・連携農業が管内で進め
わった農業、変わった人と言われますが、こ
られており、これもそっくり有機農業に当て
れがオーガニックと英語で言いますととたん
はめれば素晴らしい。有機畜産物、有機農産
に上品になって、東京あたりのデパートでも
物も出てきて、さらにレベルの高い加工食品
相当高い値段で売れています。アラブの王様
ができると考えられます。
はオーガニックしか食べないとか、非常に付
何といっても一番問題なのはエネルギーで
加価値が高い。この有機農業を起点にして、
ありますが、ご承知のように日本におけるエ
燃料や生産資材、さらには食品の加工が多段
ネルギー危機は、即、食糧危機を意味します。 階に、私はオーガニックカスケードと言って
現代農業、特に十勝の農業は石油がなければ
いるのですが、これによって次第に地域が活
全く成り立たないので、どうにかならないか。 性化されるのではないかと考えています。そ
ここで爲廣さんの菜種 BDF のお仕事を聞き、
れが妄想だと言われているのですが、ある時
私はこれだと思い色々試算をしたところ、十
ある人から指摘を受け、
「場長は有機農業の有
勝で 1 ヘクタール耕すのに 200 リットルの石
機をつけただけだろう、農業だけでももうこ
油が必要であります。それを生産するのに、
うなっている」と言われ、その通りです、た
1 ヘクタール当たり 5・6 トンくらい採れ、例
だ、有機という特殊な言葉、タグをつけるこ
− 34 −
とによって物の流れが一層明らかになり、強
るときは 100 分の 1 くらいに希釈されていま
いアピールができるのではないかと考えてい
すから、可燃性のガスではありません。エネ
ます。有機農業の特区だとか、帯広市に十勝
ルギーとしては仕えないわけです。つまり、
国際有機農業研究センターを造ってください
量としては大きいのですが、濃度が低いので
といったお話は、後ほど時間があればお話し
抑制するしかない。幸いなことに、これまで
たいと思います。
の研究で抑制する非常に簡単な方法が幾つか
見つかっております。餌の中に飼料添加剤と
山重(コーディネーター)
して混ぜれば、最高で 90%くらいまで落とす
菊地さんと爲廣さんのお話を伺えば、色々
ことができます。
なことがつながっていくような雰囲気が漂っ
今日は地域の環境ガバナンスということで
てきました。続いてバトンを高橋さんに渡し
すが、環境省の委託を受けています環境自治
たいと思います。
体会議環境政策研究所の出すデータで、市町
村別の温室効果ガス排出量の推計データがあ
高橋(パネリスト)
り、帯広市はないのですが、北海道全体のも
菊地場長の話を受けて、かいつまんでお話
のは出ています。実際はどれくらいあるのか。
ししたいと思います。我々が今やっている大
またインベントリーと言いますが、目録を作
きな目的は、炭素と窒素のリサイクルプロ
るべきだと思います。だいたいどのくらいあ
ジェクトです。家畜の消化管、特に牛は反芻
るのか、削減目標をそのくらいに設定すれば
動物なので、反芻胃から発生するメタンを抑
いいのか。これは簡単な話ですが、十勝全体
えます。これについては最初に申したように、 では牛が 40 万頭弱います。この呼気ガスのメ
メタンと亜酸化窒素は農業系の大きな温室効
タン、もちろん糞尿からもメタンが出ます。
果ガスで、どのくらい大きいかというと、
また、糞尿をそのまま堆肥にすると、亜酸化
IPCC の試算では二酸化炭素が約 49%、
メタン
窒素が出ます。これを試算すると、CO2 に換
と亜酸化窒素は最近増えておりますが、以前
算して年間約 107 万トンになります。京都議
の試算では 18%、私の試算では約 22%になっ
定書の中に京都メカニズムというのがあり、
ています。
亜酸化窒素はかつて 6%と言われて
排出権取り引きなどもそれなのですが、実際
いましたが、正確な数値はありませんがかな
にどのくらいの取引価格かというと、平均す
り増えているはずです。これらは、メタンが
ると 1 トン当たり 15 ユーロくらいです。1 ト
ppm レベル、亜酸化窒素に至っては ppb レベ
ン当たり CO2、1 クレジットと言いますが、
ルと本当に微量なガスです。なぜこうしたガ
これでいくと 21 億円になります。簡単に半分
スが温室効果を持つかというと、まずは二酸
くらいに減らすことができるので 10 億円、
化炭素の赤外線吸収効果、温室効果とは全く
ひょっとしたら帯広市の目標くらいは達成す
違うものであることが挙げられます。いずれ
るかもしれません。
にせよ、残念なことにものすごいメタンが出
もう一つは家畜糞尿、これは大切な資源で
ております。牛 1 頭当たり、乳牛で 1 日に 400
すが、バイオガスプラントで嫌気発酵させ、
∼ 500 リットルの 100%メタンが排出されて
すでに技術としては確立されていますし、商
います。これを利用すればいいのですが、口
売にもなっております。色々なメーカーがあ
から出てきますから、肺のガス、いわゆる呼
りますが、これから出て来る生産物は一つは
気ガスで希釈されるので、胃の中のレベルで
熱、電気、そのまま燃料にもなります。これ
は 30 ∼ 40%という濃い濃度ですが、
口から出
は途上国で昔からやっております。
− 35 −
もう一つは、メタンガスですから CH4 と炭
オマスでアンモニア処理をします。その後、
素 1 つに水素が 4 つついています。メタンを
色々なバクテリアを使い糖化させるのも一つ
解出して水素を取る。これはバイオガスプラ
で、これはバイオエタノールを作る方法です。
ントの建設の際に、松下電工の協力を得て
もう一つは、アンモニアによるアンモノリス
やってみましたが、一発で壊れこの研究は頓
スという加温分解反応を使い、ワラはほとん
挫しました。東芝あたりで実用化しているの
ど飼料にならないのですが、これを新しい飼
で、技術的にはもっと先行しているところが
料資源にしようという試みです。これは去年
あります。
からやっており、動物実験に入っています。
今取りかかっているのは、もう一つのバイ
TMR、混合飼料として使えば、ほぼ乾草と同
オマスで、十勝に発生するバイオマスとして
じにできるという技術がだいたい確立できま
使われていない農産物がたくさんあります。
した。
例えばワラ類、麦ワラは使われないこともな
もう一つ先ですが、アンモニアは N と H が
いのですが、利用率があまりよろしくない。
3 つついています。これをもう一度解出し、
ビートはビートトップといって、上の部分は
メタンは解出すると一酸化炭素や二酸化炭素
利用されず、普通は鋤き込んでいます。これ
になり、まだ温室効果ガスの発生原因になる
も大事なバイオマス資源です。ジャガイモに
のですが、もし NH3 から窒素と水素を取り出
も皮がありますし、ソラニンという毒はどう
し、この水素を燃料電池の原料に使うことが
するのかといった問題もありますが、これも
できれば、窒素は大気中に返っていくので、
大量に発生します。こういったものを糖化し、 全く温室効果のない理想的な燃料電池になり
ハルコールを作る。エタノール発酵をして作
ます。これが可能かどうか昨年から取り組み、
る。ただ、現在のエタノールを作る技術、炭
小さな模型的なものですが、発電ができるこ
素が 5 つしかないものはヘミセルロースから
とを実証しました。これをスケールアップす
できるのですが、こういったものが入ってき
れば、今のバイオガスプラント使ってもう少
ます。これを糖化する酵母はないのですが、
し大きな発電が可能ではないかと思っていま
この中には BDF、脂肪酸を作る酵母がありま
す。
すので、それらを利用したりしてエタノール
先程言いましたように、嫌気発酵というの
以外の液体燃料もできないだろうかと研究を
は亜酸化窒素がほとんど出ません。ただ、こ
行っています。
れをこのまま肥料として使ってしまうと、そ
いずれにせよこの研究は、NEDO から競争
のままの方法では同じように亜酸化窒素の発
的資金をもらって 2 年間行い、主に小麦のワ
生原因になってしまう。そこで、窒素を施用
ラを使って糖化する試験をしました。これは
する前に低下させ引き出し、利用するという
ある程度うまくいき、これから酵母を使って
プロジェクトになります。
エタノールを発生させる研究をしています。
これは私どもの教育の目的ですが、今、ア
もう一つは、明日、見学会に参加される方
ンモニアストリッピングを中心にしています。
にお見せしますが、窒素をそのまま撒くと亜
また、BSE 対策のための肉骨粉の炭化処理が
酸化窒素の原因になりますが、硝酸態窒素も
あります。これは、最初は国土交通省の支援
そうです。そのまま撒くと窒素過多になるの
を受けて文科省の科研費も注ぎ込んだ 4 年間
で、窒素を減らさねばならない。その一つは、 にわたる研究で、最後の実証試験は農水省の
嫌気発酵して無機化しているアンモニア態窒
動物衛生研究所プリオン病研究センターと共
素を取り出し、これを先程のセルロースバイ
同研究をして、感染性試験も行ってやっと終
− 36 −
わりました。要するに、これも資源でありま
ルバータ州のバンフ、ここは北海道と姉妹州
す。畜産というのは、生き物を扱っています。 提携をしており、私もアルバータ大学にいた
屠場からも屠場副産物が出ます。確かに出
ことがありますが、私の後輩たちが実行委員
回っているものは検査しているから安全だと
を務めています。残念ながら、このメタンガ
言いますが、実際はこうしたものは流通でき
スあるいは亜酸化窒素について、日本国の関
ない状態です。流通できないのに肉骨粉を
心が低いし、会長でいるのが恥ずかしいくら
作って一般焼却されて、非常に大きな税金が
いですが、世界的には非常に関心を持たれ、
注ぎ込まれ、資源が無駄になっています。こ
最近では途上国の中にもこうしたパラダイム
れを何とか利用する方法はないかということ
が広がっています。
で、肉骨粉を炭化する技術を開発しました。
これも安全であることが証明でき、工場の設
山重(コーディネーター)
計までやっております。もし帯広市が取り組
今、お三方からそれぞれのお立場で、BDF の
むということであれば、喜んで技術を提供し
事業化に取り組んでいるお話、有機農業の観
たいと思います。
点から十勝のネットワークを作るお話、ある
帯広発信の情報ということで、ある部と国
いは今の多様なバイオマス資源を十勝で開発
際プロジェクトを立ち上げ、国際会議に発展
していこうというお話を頂きました。入口と
させ、Greenhouse Gases and Animal
しては異なっていますが、中に入れば入るほ
Agriculture、畜産における温室効果ガスの制御
ど要素がつながっていきそうです。次に、田
と利用というものを立ち上げ、2001 年に帯広
園環境モデル都市・帯広としての取り組みに
市の「とかちプラザ」で国際会議を行いまし
ついて市長にお話し頂き、河西先生からは、
た。非常に無謀であったのですが、このよう
ガバナンスの観点から、多様な主体がどのよ
な畜産会議に誰が来るのかと思っていたら、
うに連携し実現していくのかお話し頂いたあ
何と 22 カ国、国連大学も人を派遣して頂き、
と、皆さんも含めてご提言を頂きたいと思い
非常に成功を収めました。2005 年にスイスの
ます。
チューリヒでも開催し、連邦工科大学でちょ
うどアインシュタインの百年祭をしており、
砂川(パネリスト)
ヨーロッパでの開催であったので EU 加盟国
環境モデル都市の取り組みについて、簡単
が全部参加しました。昨年はニュージーラン
に説明させて頂きます。田園環境都市・帯広
ドのクライストチャーチで行い、オーストラ
となっております。環境モデル都市は、全国
リア、ニュージーランドの農水省が主催して
の色々な特徴のある都市が選ばれていると思
この会議を開きました。その後もずっとやら
います。帯広の場合は、農業や畜産業が地域
せてほしいと言われたのですが、これは帯広
の中で大きなウエイトを占めているので、そ
発信の国際会議で我々のポリシーを大切にし
れらを意識しながら帯広版の環境モデル都市
たいということで、今頑張っています。2008 年
を考えています。もちろん、全体のコンセプ
のプレシンポジウムは、サミット前に開きま
トを踏まえてのうえであります。
した。このときは 3 人のスピーカーを招き、
帯広市は、環境配慮型のまちづくりをずっと
帯広に世界の目を向けさせることが本当の目
やってきたという思いがあります。帯広の森
的なので、とかちプラザのレインボーホール
の事業は 30 年続いていますが、そのほかに農
に一杯の人を集めることができました。
業関係では資源循環型持続可能な農林業を意
次は宣伝になりますが、2010 年にカナダ・ア
識しながら、糞尿の堆肥化、これは畑作と酪
− 37 −
農、畜産がミックスした地域であるので、非
評価されたと思っています。豊かなバイオマ
常にやりやすい。また林業では、間伐材等を
ス資源、地域の特性を生かした田園都市型の
積極的に使おうと、畑の暗渠の疎通材に使う
取 り 組 み の 提 案 も し ま し た し、帯 広 に は
など、活用の取り組みをしてきました。長イ
JAICA の国際センター(全国 12 カ所)がある
モのネットの導入もあります。産業廃棄物と
ので、そちらとも連携しながら、環境モデル
して処理していたものを、生分解性の素材を
都市の一つのコンセプトである「世界への発
使いそのまま畑に鋤き込む事業の補助を行っ
信」においても優位性があると評価されたの
ています。ゴミのリサイクルですが、ゴミ分
ではないかと思っています。
別化を進め、かなり高いリサイクル率になっ
環境モデル都市の方向性として五つほど挙
ています。帯広市は 18 年度で 30%を超え、
げます。緑と住、まちづくり、これは帯広の
このくらいの街の規模としては、高い方だと
森やリサイクル施設を集積した地域の造成で
思っております。ゴミ発電ですが、一般廃棄
す。また、帯広発の食と農業も意識し、バイ
物の中間処理場「くりりんセンター」には、
オマス資源の有効活用を図ります。農業につ
十勝の大部分から集まってきますが、ここで
いては、例えば不耕起栽培、プラウでの起耕
発電をしています。容量は 7,000 キロワットで、 をできるだけ少なくすれば、農業機械の燃料
この施設内の電力を賄うとともに、余った電
の節減にもなるし、土壌中の酸素貯蔵も促進
力は北海道電力に売っています。19 年度で約
できます。総資源・総エネとあるのは、色々
1 億 3,000 万円ほどの売買収入であります。た
なバイオマス資源を活用し、例えば BDF や豆
だ、かなり安くしか売れないので、もう少し
ガラ等や木材のペレット化、クリーンエネル
高く買ってほしいと思っています。
ギーとして太陽光発電システム、バイオエタ
公共下水道、流域下水道の終末処理場から
ノール等々も地域の特性を生かして積極的に
下水汚泥が出ます。これをメタン発酵させ、
活用していきます。エコな暮らしというのは、
施設のエネルギー源に使っております。処理
ゴミリサイクル率の向上や家庭用のペレット
場は 2 つあり、帯広川終末処理場と流域の処
ストーブの普及、マイバッグの取り組み等で
理場合わせて約 300 万立方メートルくらいは
す。それから、JAICA のお話もしましたが、
メタンが出ます。それによって重油換算で
姉妹都市を通しての国際交流にも取り組みた
1,500 キ ロ リ ッ ト ル く ら い の 燃 料 の 節 約 に
い。
なっています。できるだけ、色々なところか
それらを踏まえ、2000 年度を基準に CO2 の
らエネルギーを回収しようということです。
排出量の削減を目標にしています。帯広市は
ISO14001 ですが、今は自治体でもずい分増え
これ
CO2 換算で約 138 万トン排出しています。
てきましたが、我々は早い時期に取得し現在
を 2030 年までに 30%削減し、
95 万トンにする。
も運用しております。これによって種々の省
2950 年までには 50%削減、約 70 万トンにす
エネを進め、環境負荷をできるだけ少なくす
るという数値目標を掲げています。帯広市は
るよう、市の全施設で運用しています。最近
人口 17 万人で 138 万トンですから、1 人約 8
は ESCO 事業も取り入れ、スタートする予定
トンの排出量になります。これは、全国平均、
です。
北海道平均から見てもかなり低いのです。大
環境モデル都市ですが、今までの環境関係
工場などがないからと言われればその通りで
の取り組みをベースにして提案させて頂き、
すが、これをもっと減らしていきます。
私共としては今回の選定については、帯広の
具体的には、現在その削減目標を達成すべ
森づくりを始めとした環境関係の取り組みが
くアクションプランを作成中であります。10
− 38 −
月いっぱいで内閣に素案を提出し、内閣中心
実践現場であり、非常にたくさんの子供たち
に各省庁も加わり色々やり取りをしながら、
が帯広の森をステージとして、様々な環境に
成案していくことになります。提案している
対する理解を深めていっていますが、更に環
内容は 50 項目ほどあり、それを詰めていくこ
境教育を全市挙げてしっかり取り組んでいく
とはもちろんですが、新たに出てくることも
必要があると考えます。今、簡易な学校版
あるでしょう。あるいは各省から提案される
ISO14000 に取り組んでもらっており、小中学
こともあるかもしれない。こういう取り組み
校ではかなりの割合で実践しています。これ
が広がってくると、民間企業の皆さんからも
も環境教育推進に役立っていると思います。
提案が出てくるのではないか。できればそれ
市では、まちづくりデザイン賞を設けてお
らにも取り組んでいきたいと考えています。
り、これは都市景観賞といった感じのもので
年度末までに成案する予定でまだ時間があり
す。中には作文や絵もあり、子供たちが応募
ますので、そういうやり取りもしていきたい
してくれます。まちづくりと言っても、環境
と思っています。
は非常に大きなテーマになっており、とても
138 万トン、1 人当たり 8 万トンの内容を見
良い作文・絵を応募してくれます。子供たち
ますと、民生部門が約 50%です。次が運輸部
の間でも、環境は非常に大きなテーマとして
門 30%、次が産業部門 20%で、特徴的なのは
根付いています。これをもっと進めていって、
民生部門が圧倒的に大きいということです。
21 世紀の環境モデル都市推進の担い手になっ
運輸部門の中でもバスやトラックは非常に少
てもらいたいと思っています。そしてこれら
なく、多くが自家用車です。これを民生部門
は十勝地域全体で取り組まねばならず、十勝
と加えると約 7 割が、市民の皆さんの日常生
支庁とも色々ご相談して連携していきたいし、
活から出ています。北海道全体もやはり民生
JAICA との連携によって、国際関係について
部門のウエイトが高いと思いますが、帯広は
もしっかりやっていくことが、これからの
特に高いかと思います。その意味でこれから
ベースになると思っております。
取り組んでいくに際しては、産業部門、運輸
部門等々にご協力頂くことは大事ですが、そ
山重(コーディネーター)
れ以上に我々の生活から出てくるものが大き
それでは締め括りとして、河西さんにガバ
いので、市民の皆さん方のご理解・協力を頂
ナンスというキーワードからお話し頂きます。
かねばなりません。将来的には、全市民運動
的な展開ができればいい、そうしなければな
河西(パネリスト)
らないと思っております。交通システムの変
経済学的な視点で言いますと、環境という
革等にもつながってくると思っています。行
のは公共財といわれるものです。公共財とは、
政、企業、NPO の皆さんはもちろん、市民全
個人が所有するものではなく、地域なら地域、
体で取り組まねばならない。
地球人であれば地球人が、この地球の環境を
そうなると、生活スタイルを大きく変えな
有するという考え方です。従って、公共財ゆ
ければなりません。柏木さんのお話だと、国
えに皆で環境のことを守り、活用し、再生し
の政策そのものがパラダイムシフトして大き
ていかなければなりません。そのときに必要
く変わるのだから、ライフスタイルも変えて
な考え方は、従来のガバメントという考え方、
いかねばならないと思っています。それを進
即ちトップダウンではなく、ガバナンスとい
めるためには、環境教育が非常に大事であり
う地域社会なら地域社会の様々な組織、市民、
ます。帯広の森の事業は、まさに環境教育の
そういった方が協力して共に統治していくシ
− 39 −
ステムを作り上げなければなりません。ガバ
われる PDS とか、PDCA と呼ばれるものを組
メントというのは、政府、地方自治体、市民
み込み、きちんと総合計画を立て、それに従っ
もしくは市民団体、事業者、ピラミッド型に
て実行する。実行した結果を政策評価し、次
なって政府が決めたことを地方自治体が、地
の総合計画に生かしていく、というサイクル
方自治体が決めた政策をそれぞれの民間が
を回しているかと思います。環境に関してガ
やっていくというトップダウン型。そしてそ
バナンスという方式で行うとしたら、その
こで出てくる問題は、指示強制型。上層の組
PDCA のサイクルの計画を作る段階から、こ
織が下の組織を統制する。下の組織は統制さ
ういった様々な地域社会の組織や市民の人た
れた権限を受容しなければならない、そう
ちが関わっていくことが必要になってきます。
いった仕組みです。
というのも、なぜこうしたピラミッド型の体
それに対して、環境というのは公共財です。 系ができてしまうかというと、上が決めて下
また、爲廣社長のビジネス、菊地先生が構想
がやっていくということになると、どうして
としてご報告してくださった事業、非常に規
もピラミッド型、トップダウン型になってし
模が大きく、地域のシステム自体を大きく変
まうのです。そうではなく、ガバナンスとい
えるものになる。そうすると、そこに関わる
うのはそれぞれ役割があり、自立的に動きま
組織や市民も多くなります。また、砂川市長
す。しかし、重要なことは地域社会を構成し
が話されたように、まちづくりに環境を据え
ている組織や市民の意見を反映し、それぞれ
ていくと、そこに市民全員が関わっていかね
の役割に従って実行に移していく。そうした
ばならない。そうなったときに、果たしてこ
仕組みが必要になってきます。そこで PDCA
のトップダウン型のガバメント方式はいいの
の計画を立てる段階から、市民や各団体、組
かどうか。結論から言うと、これからの時代、 織が関わり、それぞれで実行していくという
特に環境のように公共財、しかも多くの人や
ガバメントの形式が必要になってきます。
組織が関わる場合は、このガバナンスという
このときに必要なのは、それぞれが自立的
仕組みで環境を皆で守り、活用し、再生して
に動ける組織、市民であります。そうすると、
いくよう統制していかねばならないというこ
時にはバラバラに動いてしまい、結果として
とになります。ガバナンスのキーワードとし
全体の利益を損なうかもしれません。そこで
て、政府からある環境課題を解決せよという
必要になってくるのが、きちんと地域社会の
ミッションが与えられたら、その使命を地域
環境のビジョンや理念を共有することです。
社会の構成者、自治体であり、議会であり、
そのビジョンや理念が、皆の到達すべき目標
市民であり、事業者、市民団体もあれば大学
のイメージになり、それに向かって努力する
のような研究機関もある。そういったところ
ことで自立的に活動した結果、色々な方向へ
でその使命をきちんと共感し、共有していく。 行くのを防ぐ。ある一定の方向に向かって進
その中で役割、権限、責任を分散させながら、 める、そういうときに非常に役に立ちます。
それぞれの組織は自立的に動くが、ある時は
柏木先生は、環境に関してパラダイムシフ
共有した使命に向かって協力し合う。そして
トが起こっていると話されました。まさにそ
ある時はお互いにチェックし合い、抑制して
の通りだと思います。そうしたパラダイムシ
いく。そういうことが必要になってきます。
フトが起こっているとき、実はこうしたガバ
こうした環境を統治する仕組みは、具体的
ナンスという仕組みは、そのイノベーション、
にどうすればいいかということですが、今、
革新を阻害する懸念もあります。というのも、
地方自治体の中でもマネジメントサイクルと
どうしてもこの地域社会の中で皆で考え、理
− 40 −
念や使命を共有する。そして一定の方向に進
四つほどポイントがあります。第 1 点として、
んでいこうとする。そうなると、どうしても
この地域に環境産業を営んでいる企業を戦略
異質なものを排除しかねない。実はイノベー
的に誘致し、集積を作るということです。集
ションというのは、辺境から起こるという言
積を英語で言うとクラスターと言いますが、
葉があります。イノベーションは主流派から
似たような環境ビジネスの企業を誘致し集め
はなかなか生まれにくいということがありま
る。なぜかというと、当然企業同士は同じよ
す。主流派の中でイノベーションが起こると、 うな環境ビジネスを営んでいればライバルで
それは今までのものとは違っているから、潰
す。競争がないところに革新はなかなか起き
されてしまう。こういった地域社会で環境ガ
にくい。ライバルになるような企業を敢えて
バナンスをやると、本当に社会を変える素晴
集め、切磋琢磨して育っていってもらう。ま
らしい技術や構想、考え方が出てきても、我々
たもう一方で、ある程度似たようなビジネス
は協力して皆でこちらに向かっていこうとし
をやっている企業が集まると、その中で競争
ているのだから、それは止めてくれというこ
だけでなく協調や共同という行動も出てきま
とになってしまう。そうではなく、異質なも
す。そうすると、1 + 1 が 3 になっていき、
のもきちんと取り込み、育てていく仕組みも
また違った新しい展開も考えられます。
必要になってきます。そういうことで、ガバ
第 2 のポイントは、地域の中に環境ビジネ
ナンスは非常に大切なことだけれど、イノ
スの市場を持つということです。分かりやす
ベーションという部分では一つ気をつけねば
い例を挙げると、なぜこの十勝で有力な農業
ならないところがあります。
機械のメーカーが育ったかというと、地域社
第 2 ラウンドで環境のガバナンスについて
会にお客さんがいるからです。農家がこれだ
少し触れましたが、第 3 ラウンドで私が皆様
けたくさんいる。自分達が行っているビジネ
にお伝えしたいことは、これから地域を振興
スのお客さんがすぐ近くにいることのメリッ
していくときに、産業を活性化することが表
トは、輸送コストが減るといった経済的なメ
裏の関係で非常に重要だと思っています。あ
リット以外に、顧客の声、市場の声をよく聞
る程度産業基盤がしっかりしていないと、人
き、そのニーズに合った商品を提供できる。
口が流出していく。人口が流出すると更に産
そうしたことから、地域社会の中に環境ビジ
業が脆弱化していく。産業が脆弱化し雇用が
ネスを誘致したら、その販売先の市場も地域
少なくなると、また人口が流出していく。そ
社会の中に作ってあげる。これは柏木先生が
うした悪循環が、これから北海道の地域社会
言われたように、公的資金なども投入される
の中で起こっていくと考えられます。そうす
ようなので、このあたりは自治体が中心に
ると、産業政策としてこの環境をきちんと捉
なって、地域で作られた様々な環境機器等を
えていく必要があると思います。そこで重要
購入し、市場を確保することです。
になってくるのが、環境のような公共財に関
第 3 に、環境産業を成長させるためには、
しては、従来の考え方からすれば、税金で賄っ
そのビジネスをやっている企業だけでなく、
ていくということです。というのも、皆の利
例えば金融機関やシンクタンクも必要です。
益になるから、皆が出した税金でまかないま
この十勝には、金融機関もあれば、大手の新
しょう。それだけでは不十分で、きちんと環
聞社のように情報をきちんと集めてこられる、
境をビジネス化し、産業化していく努力が必
十勝地方独自の新聞社もあります。またシン
要だと思います。
クタンクもあります。こうした機能が地域社
環境の産業をこの十勝で作ろうとする場合、 会にあることは、非常に心強いことだと思い
− 41 −
ます。環境産業を支援できるようなプレー
がありました。様々なリサイクル施設の構想
ヤーをグループ化し、支援できる仕組みを行
が述べられましたが、調べたところによると、
政が担って頂ければと思います。
設置場所が農業用地なこともありますが、農
第 4 としては、地域の中に産業を興すとき、 業の持つ環境保全の機能や、農地の持つ美し
基本的な経営資源をなるべく地域の中で揃え
い緑などが、観光資源として非常に重要な価
てあげるようにする。それは、工場団地や道
値を持っています。その意味で、建設されよ
路のような社会基盤の場合もあります。それ
うとしている土地が、もう少し農地として継
以外に例えば人材や資金、技術、こういった
続していくようなかたちがとれなかったのか
ものも地域の中でなるべく提供できるように
と感じた次第です。
する。非常に幸運なことに、帯広には大学も
もう一方では、先ほど光と影というお話が
あれば研究所もあります。また、帯広が好き
ありましたが、影の部分で、後継者不足や高
だということで、全国から様々な人材が来て
齢化の問題があり、先人から農産物を生産す
おられるし、地元にも素晴らしい人材がいま
るまでに至った農地を、手放さざるを得ない、
す。そういった方々が環境産業に関われるよ
農地を継続していくことができないという問
うにする。これも仕組みづくりに関しては、
題があります。そこを商業施設等の土地とし
行政もしくは NPO がリーダーシップを取っ
て利用することだろうとは思いますが、一度
てみたら面白いと思います。
農地をそのように利用すると、今後農地を
最後に、こうした四つのポイント、まず環
作っていくことは難しいと思います。せっか
境ビジネスの企業の集積を作る。2 番目として、 く田園都市であったり、農地の持つ環境保全、
地域社会の中に環境ビジネスの市場を作る。
観光資源としての機能があるのなら、何とか
3 番目として、環境ビジネスを支援していく産
それを生かすような施策も、今後の行動計画
業や体制を作る。4 番目は、環境ビジネスに
の中に含めてご検討頂ければ有難いと思うと
必要な経営資源を地域の中で提供していく。
ころです。例えば、市民農園にして市民に開
それとともにプロセス、その地域の中で環境
放する。特に食育の部分では、小中高含めて
産業を育成するプロセスの中に、このガバナ
土地をお借りし、子供たちの食育教育の一環
ンスという考え方を取り入れ、地域社会の
として土地を活用してもらう。また、本州の
様々な構成者の人たちに知恵を出してもらい、 都心部に住む方々にオーナーになって頂き、
時にはお金も出してもらい、労力を提供して
年会費を頂いて農産物を作って収穫物を提供
もらって育てていく。それが今後、この十勝
すれば、農地の持つ機能を充分に生かす取り
で新たな環境産業を育成する非常に重要なポ
組みにつながるのではないかと思いますので、
イントであると思います。
行動計画の参考にして頂ければ有難く思いま
す。モデル都市に認定され、市民がいかに参
山重(コーディネーター)
加し、中心になって行動を起こしていくかが
有難うございました。せっかくの機会です
重要になってくると思います。市民の目線で、
ので、ご参会の皆さんから、今日のテーマに
皆さんが共通して取り組めるような課題や行
関してご提言・提案など受けたいと思います。 動計画を設定して頂き、市民を巻き込んだ地
域社会づくりを検討して頂きたいと思います。
富田(北海道エコシス)
よろしくお願いいたします。
先程来、色々お話を伺い大変参考になりま
した。砂川市長から、環境モデル都市のお話
− 42 −
大島(京都市)
を、市民や事業者の方に分かってもらう仕組
京都市は残念ながら環境モデル候補都市で
みも作る必要があると思っております。太陽
あり、一生懸命アクションプランを組み立て
光発電を設置してもものにならない、でも何
直し、本採用になるよう努力しているところ
らかの見返りがあって 100 何万出費した太陽
です。その意味で、本日の柏木先生のお話は、 光発電の償還が早くなれば、やはり市民もつ
一言一句聞き漏らすまいと拝聴しました。後
けてくれます。これを来年の予算で考えてい
半のパネルディスカッションも見事に話題が
きたいと思っています。
連続しており、画期的なディスカッションで
三つ目として、やはり地域の特性、京都は
あったと思います。地域の工夫をどう現実化
観光都市と言われていますが、実はものづく
するか、熱心に取り組んでおられることに感
り都市の側面もあり、企業の知恵を集めた環
銘を受けました。
境対策を組み立てていきたいと思っています。
私は京都市で地球環境政策官としてこの分
最後になりますが、本日は柏木先生のお話
野を担当していますが、直前は都市計画部長
を聴きたくて、帯広まで追いかけてきたと言
をしており、景観政策をしていました。その
えば格好がいいのですが、帯広出身の家内に
ときに思ったのは、人口の規模によって違う。 引っ張られて遊びに来たわけです。もっと言
100 万を超える都市と、
そうでない都市は違う
えば門川市長がパリに海外出張中で、鬼のい
とずっと思っていました。確かに京都市も 147
ぬ間に命の洗濯に来たわけです。たまたま本
万人で、年間 4,700 万人くらいの観光客がお見
日の会議を聞きつけ、駆けつけた次第です。
えです。つまり、人と車がどっと押し寄せる。 十勝・帯広は私の第二の故郷でもあり、環境
なおかつ、中小の事業所も 15 ∼ 16 万あり、
モデル都市の先輩でもあります。私共もつい
これをどうこなすか。景観の問題もそうです
て行きますので、今後ともご支援をよろしく
が、今回の CO2 の問題でも苦労したと思って
お願いします。
います。ただ、今日聴いていて思ったのは、
確かに規模によって手法は異なると思います
山重(コーディネーター)
が、基本的な考え方は同じではないか。やは
有難うございました。皆さんのご意見を頂
り目に見える施策を展開し、市民総ぐるみの
きたいところですが、予定の時刻となりまし
ムーブメントをどう起こすかということであ
た。私自身もこのパネルディスカッションに
ります。一人たりとも逃さない。皆で考えま
参加させて頂き、柏木先生のお話を聴いて、
しょう。市民も事業者も一緒である。行政は
北海道はチャンスだと率直な感想を持ちまし
それをお支えする、こういう構造を是非つ
た。先生のお話で一番印象に残っているのは、
くっていきたいと思っています。
これからは規制と支援である。国の枠組みが
問題提起としてはライフスタイルを変える
そのように動く、というお話です。特に環境
ということで、新聞ではコンビニの 24 時間営
分野は、規制によって新しいビジネスが生ま
業について京都市長の話が話題になっていま
れるという特徴がありました。今日お話に
すが、全ての店ではなく、地域によっては深
あったように、新エネルギーモデル国家を新
夜に開ける必要はないという問題提起をした
しい日本の戦略として進めていく中で、今日
つもりであります。
は主にバイオマス資源中心のお話でしたが、
二つ目として、いくら高い志を持っていて
様々な自然エネルギー、未利用資源もそうだ
も、施策に対して何か返ってくるものがある、 と思いますが、北海道はそうした新エネル
エコなことをすれば何か得をするということ
ギーの宝庫で、それを商売にしない方がおか
− 43 −
しいと柏木先生に言われたことがあります。
出てくる気がします。逆に言うと、北海道に
それが具体的に国家戦略として推進していく
住んでいる我々も、リーダーの方々も少し発
ための制度、あるいは支援方策をかなり明快
想を変えて、新しいチャンスであると地域の
に示され、北海道がこれをチャンスとしてポ
エネルギーを結集すれば、色々な可能性が拓
ジティブに戦略を立て、動いていくことが極
けてくると思います。そのエネルギーを結集
めて重要な局面であるとの感想を持ちました。 するための仕組みが、ガバナンスであると私
その中で特に十勝は農業を基盤とした地域
は思っていて、市民や関係する主体の方々か
で、農業を中心とした産業、経済を持続可能
ら理解を得たり、参加を募ることは重要です
なものとして展開していくと同時に、それを
が、まさに局面が変わりつつある中で、強い
支える環境システムについても、今日のお話
リーダーシップを発揮することも必要です。
を全体として組み立てていくだけでも、かな
これは必ずしも行政だけでなく、十勝ならで
り先進的、先導的なモデルが構築できると実
はの仕組みを考えていくことも大事だと思い
感しています。
ます。今日は、非常に明るいお話を数多く聴
パラダイムシフトというキーワードがずい
くことができ、大きな可能性を感じながら
分出ましたが、北海道は最近、ややもすると
コーディネーターを務めさせて頂きました。
暗い話が多く、いま一つ調子の上がらない感
ご清聴有難うございました。
じで、
「悪い」という話になると必ず北海道が
− 44 −
総 括
北海道都市地域学会企画委員長 太 田 清 澄
まず、今日ご参会頂き、熱心に柏木先生はじめ、皆さんの発言に耳を傾けてくださった皆様
に厚く御礼申し上げます。特に柏木先生は、大変ご多忙な中ご無理をお願いしわざわざお出で
頂き、大変ホットで貴重なお話を頂戴し誠に有難うございました。
今回のテーマは「地域の環境ガバナンス」、もう一つが「ローカル・アジェンダ 21 」というこ
とで、冒頭で小林会長から説明がありましたが、地域のガバナンスとは何かということで、河
西先生からもお話がありました。重要な点なので、もう一度確認させて頂きたいと思います。
私どもの意図は、まず「地域のガバナンス」ですが、これは地方政府セクターと市民(ボラン
ティア)セクター、企業(市場)セクター、この三つが水平な関係で、なおかつ仲良しクラブ
ではなく、それぞれが競争して補完するというシステムだと思っています。重要なことは、市
民セクターであっても金を自分で賄えるか、それぞれのセクターが地域を回していくお金を賄
えるのかにあります。ですから市民セクターでも、社会的企業等を立ち上げ自賄いできる経済
的な視点がなければならない。三つのセクターが水平であるが、それぞれが補完・競争であり、か
つ自賄いできるようなお金を生み出す力を身につけていけるかどうか。
そこに「環境」というものを入れますと、ローカル・アジェンダ 21 を持ち出したのは、リオ
サミットで地方政府の行動計画を決めようとなりましたが、環境の会議で開催されましたので、
環境問題だけに捉われていると誤解をこの場で解きたい。環境と経済、社会が三位一体となっ
てそれぞれ機能しなければ、環境を保全していくことはできないはずです。環境問題として捉
えがちなローカル・アジェンダ 21 を、この機会に、環境と経済、社会が三位一体となって、そ
れぞれバランスよく成立して初めて、持続可能な自立的な地域社会ができるという主旨を、こ
の先導的な動きをしている帯広の場面に使わせて頂き、この考え方を皆さんに共有して頂きた
い。繰り返しますが、ガバナンスとローカル・アジェンダ 21 は、環境と経済と社会の三位一体
であるということです。
柏木先生からは色々なお言葉を頂きましたので、まさに屋上屋になりますし、私自身の価値
観ではありますが、均衡性というお話と、クールアース 50 の三つのポイントのお話の中で、3
点目には、まさに環境と経済の両立であると明言できるというお話を頂きました。我々として
はしてやったりと思った部分があります。さらに、2020 年問題の中で、例えば 2020 年までに
電力の 50%を、再生可能エネルギーに転換することが背景にあるということを、皆が読み込ん
でいますかというお話を頂いたように思います。今言われている政策のどこまでを深読みする
かにかかっていると、私自身はお教えを受けたと思っています。今の政策の中で、色々な情報
を集め、その背景や裏の部分まで読み取った者が、一歩リードして行けるのではないかという
ご示唆を頂いたと思っております。
もう一つは、キャップ アンド トレード、これは公共事業である。この実現を図るために都
市再生モデルも仕掛けていったというお話をして頂き、私共としては全く想定できないお話で
あったので、私自身の価値観だけでなく皆さんも協調なさると思いますが、是非重要な位置づ
けにして問題を解決したり、色々なことにご協力していきたいと思います。
− 45 −
パネルディスカッションでは、京都市の方からもコメントで、見事につながるディスカッショ
ンは珍しいとご賛辞を頂いたと思っております。爲廣さんから始まって、菊地さん、高橋さん
という流れの中では、爲廣さんのお話を伺って、私は環境首都で有名なフライブルグを想定し
ていたのです。フライブルグは黒い森、自分の家の裏の森が枯れることで環境問題に目覚めま
した。これで留まらず、環境対応の住宅の建設、交通システムの開発だけでなく、太陽光エネ
ルギーの技術はトップレベルで、1 回成功すると集積が始まり、ヨーロッパ各地の優れた企業
や技術者が集まる集積スパイラルができました。産業連関、産業ツリー、これはカスケードの
話になるかもしれません。改めて申し上げるまでもないのですが、環境を軸にしたときに、柏
木先生に相談したり、私共学会のメンバーを要請したり、地元大学との蓄積の中で、産業ツリー
を是非つくっていただきたいと思っております。
砂川市長からは、そうとは知らなかったが、知った以上は前向きにやるんだという強いご発
言でした。私の価値観では、環境問題はビジネスモデルであると思い続けておりましたので、
帯広市には日本だけではなく、世界に発信する旗手になって頂く義務と、その可能性があると
思っています。今日の結論の一つとしては、帯広は世界に発信するビジネスモデルを作る旗手
になって頂きたい。ローカル・アジェンダ 21 のあとに、ヨハネスブルクサミットでは、ローカ
ル・アクション 21 という提案までなされていますので、帯広から日本発のローカル・アクショ
ン 21 を世界に向けて発信して頂きたい。それを実現して頂ければ、私共の本日の企画が意味を
持つと自己満足する次第です。
帯広以外でお集まりの自治体の皆さんは、帯広と背景は違いますが、北海道の環境にはまさ
しく優位性がありますから、この環境を軸にしながら、それぞれの地区の特性を生かして、
「地
域○○ガバナンス」といったブランドデザインを作り上げていくための一助にして頂きたいと
思います。
最後に、アピールの採択ではありませんが、冒頭で小林会長から、ここで行動する環境会議
を立ち上げてはどうかという発議があったと思います。柏木先生から再三再四ご示唆頂いたよ
うに、環境は地域政策であり産業政策である。また、ローカル・アジェンダ 21 では経済と環境、
社会であることを踏まえれば環境に捉われず、2002 年のヨハネスブルクサミットのローカル・
アクション 21 では、実際の行動計画まで示そうとしています。例えば、ローカル・アクション
21 北海道会議、こうしたものを是非立ち上げて頂きたい。私共の学会も力不足ではありますが、
何らかのかたちで資して参りたいと思います。是非、学会も巻き込んで、今日をローカル・ア
クション 21 の行動の第一歩の日と位置づけることを皆さんにご確認頂ければ、今回の企画に大
きな意味があったと思います。後半は自画自賛になりましたが、皆様のご同意を頂戴したいと
要望し、私の主観中心になりましたが、総括とさせて頂きます。今回は帯広市をはじめ、皆様
に大変なご尽力を頂き、開催できましたことと、柏木先生には重ねて御礼申し上げ終了とさせ
て頂きます。どうも有難うございました。
− 46 −
次期開催市挨拶
稚内市地域振興課長 東海林 到
本日は、私達も大変得をしたと思っております。自分たちが自治体として何を考え、取り組
んでいかねばならないのか、よく考えたいと思います。また、同じ北海道にあっても、大きく
異なる特性を生かした取り組みがなされていることを伺うことができました。御礼を申し上げ
たいと思います。
本来ならば市長からご挨拶申し上げるところ、残念なことに止むを得ぬ会議で東京に出張中
であります。事情をお汲み頂き、市長のメッセージを代読し次期開催市の挨拶に代えさせて頂
きます。
地球温暖化対策を焦点に洞爺湖サミットが開催された記念すべき年に、帯広市におきまして
関係各位が多数ご参集のうえ、「地域の環境ガバナンス∼帯広からのローカル・アジェンダ 21
の発信∼」をテーマとして、第 32 回北海道都市問題会議が盛会に開催されますことに心からお
喜びを申し上げます。帯広市におきましては、帯広の森づくりやコンパクトなまちづくりに代
表される、環境との共生を目指した積極的な取り組みが認められ、環境モデル都市として選定
されるなど、地球の環境保全そして温暖化防止に対する率先した施策の展開をされております
ことに、深甚なる敬意を表したいと思います。
本年の都市問題会議では、私も親しくお付き合いを頂いております、東京工業大学の柏木孝
夫教授の基調講演を始めとして、環境問題に真摯に取り組まれております方々の貴重なパネル
ディスカッションや、鼎談が催されると伺っております。また、今会議を通じて、今後の持続
可能な循環型社会の構築と、地域における環境管理のあり方、この度の北海道サミットを足が
かりとした環境意識の高まりとともに、地域での行動計画の実現を発信することは、まさしく
時宜に適った取り組みと考えます。
私も市長就任以来、
「人と地球にやさしいまち」を基本理念として、循環、再生、共生を強く
訴え、
環境を核としたまちづくりの施策展開に努めて参りました。新エネルギー、省エネルギー
を常に視野に捉えて参りました。風力発電につきましては、宗谷岬に日本で最大級といわれる
ウインドファームを始めとして、74 基の風車が稼動しております。平成 18 年度からは、大規
模太陽光発電システムを実用化する上でのモデル都市として採択され、大規模電力供給用太陽
光発電系統安定化等実証研究施設が建設中であり、完成後の 22 年度以降は 5 メガワットの発電
施設となります。資源の少ない我が国にとって、限りある石油などの化石燃料の代わりとして
だけではなく、地球温暖化につながる二酸化炭素や、酸性雨の原因である窒素酸化物の排出削
減に寄与するこれらの施設を、是非本日お集まりの皆様にもご覧頂きたいと思います。
このたびの、第 32 回北海道都市問題会議に出席するべく心待ちにしていたのですが、どうし
ても外すことのできない他の公務が東京であるため、欠席をさせて頂くこととしました。加え
て本来なら次期開催市としてのご挨拶を皆様にご披露しなければならないのですが、先程申し
上げました事情から、このようにメッセージとして私の挨拶を託すことといたしました。失礼
を心からお詫び申し上げますとともに、平成 10 年に「みんなでつくるまちづくり」をテーマに、
第 23 回北海道都市問題会議を本市で開催頂いて以来、11 年ぶりの会議開催のお役目を頂いたこ
− 47 −
とに感謝を申し上げます。皆様にとって実りある会議開催となるべく、精一杯取り組みたいと
存じますので、お一人でも多くご参加頂けますようご案内とお願いを申し上げ、挨拶に代えさ
せて頂きます。
どうも有難うございました。
− 48 −
【北海道都市地域学会セミナー】
「環境共生時代の地域づくり・
まちづくり・人づくりを考える」
挨 拶
北海道都市地域学会会長
小 林 英 嗣
皆様こんにちは。昨日に引き続き参加されている方も多いかと思います。本当に有難うござ
います。今、日本が大きく変わろうとしています。それは国民の意識、地域の方々の行動もす
でに変わりつつありますし、世界の国家間の意識も変わりつつある。それに伴って、日本とい
う国家もかなりダイナミックに変わっています。そういうチャレンジをする都市、あるいは地
域を、これから国、企業も含めて後方支援をしようという時です。帯広が環境モデル都市とし
て先陣を切り、非常に影響力のある位置づけになりますので、是非皆さん協力して頂ければと
いうお話でした。
今日は、もう少し日常的な我々の生活、あるいは生活行動を含めながらのお話が伺えると思
います。20 世紀は非常に速いスピードで、巨大なものが世界中にたくさんできました。20 世紀
の最初の頃は、世界で一番速い乗り物は馬でしたが、今は違います。たった 100 年間でそれだ
けの変化があった、非常に特殊な世紀です。そのときに、本来人間、人類が DNA として持っ
ていた感覚、あるいは知恵を超えるような論理が(それを効率性と言う方もいますが)上回っ
て、世の中がこれだけ変わってきた。特に日本を考えてみると、2005 年に人口が減少に転じ、
経済的にも大きな変化がありますし、人間の意識も変化していると皆さんも実感していると思
います。ではその 100 年間を、少し冷静に眺め、我々がこれから次の世代、その次の世代に提
供していかねばならない社会とは何か、と考えていかなければならない時期かとも思います。
私は大学におりますが、つい先だって学生にこういう話をしました。古い本ですが、日本の哲
学者の一人で和辻哲郎さんという方が、
「風土」という本を書かれました。考え方が正しいかど
うかは別として、和辻先生は世界を三つの気候・風土に区分しました。一つはモンスーン、も
う一つはメドー(ヨーロッパのようなところ)、三つ目は砂漠。これによって人間の宗教、価値
観、生活、文化も全て特徴のある姿で存在している。ところが、そのように大括りに世界を見
たとき、特に 20 世紀の後半は、それぞれの国・地域の風土に思いを馳せながら発展・開発して
きたかというと、そうではないという議論もあるし、それなりの成果を残したという議論もあ
ります。
もう一方で、つい先だってから議論になっていますが、日本の食糧自給率は 40%、十勝は
1,100%でという話もあります。我々が人間らしく地域で生き、
新しい誇りに思えるような生活・
文化をもう一度再生させることも非常に大事ではないか、という考えを持っておられる方も多
いと思います。その意味で、北海道の中の十勝、私は十勝は表北海道だと思いますが、日本の
中でも非常に意味のある場所、この中でこれからの我々の環境や生活の仕方を考えていくこと
は、非常に大事であると思います。非常に限られた時間ではありますが、皆さんがここに参加
され、これからそれぞれの地域でお仕事に携わるときに、何か心に残るものを持ち帰って頂け
れば有難いと思います。皆さん名刺を交換されながら、次のお仕事に役立てて頂くきっかけに
もして頂ければと思います。
− 49 −
鼎 談
札幌学院大学大学院教授
太 田 清 澄
昨日に引き続きよろしくお願い申し上げます。本日のテーマは「環境共生時代の地域づくり・
まちづくり・人づくりを考える」であります。まずは北海道新聞の朝刊にも詳しく掲載されて
いますが、昨日、パネルディスカッションを開催いたしました。繰り返しになりますが、昨日
を振り返ってみて、鼎談に入りたいと思います。
まず基調講演で柏木先生から、大変ホットな、多分 2 週間ほど前に政策決定された背景等を
含め、
帯広でなければ聴けない話を報告して頂きました。それは、当時の福田首相がクールアー
ス 50 として、2050 年に全世界で 50%の炭素の削減をするとしました。これは環境政策のよう
に見えるが、実はまさに経済政策であり、その政策をもって地域を元気にするものにすべし、
という背景があったということをご報告頂きました。今回、帯広市が環境モデル都市に指定さ
れましたが、これはかなり高邁な政略的政策の背景があり、全世界の外貨をいかにして日本に
持ってくるか。そのためには、まず日本の中でお金を回すモデルを作らなければ、外貨を持っ
てくることはできない。国内で環境という軸をベースに、お金を回すモデルをいかにつくるか。
つくって見せよ。そのことが、今回の環境モデル都市の政策決定の背景にあったということで、
帯広が選ばれた背景には、大変大きな戦略を背負い、トップランナーとして頑張って頂きたい。
単に環境だけの問題ではないというのが、環境モデル都市制定の背景にあったという、政策決
定の大きなポイントもご報告頂きました。
それを踏まえ、パネルディスカッションの中で、BDF 等で環境ビジネスを実践されているご報
告があり、総括として、いかに一つのビジネスが次のビジネスを生んでいくかという、産業ツ
リーをいかに構築していくか。そういった話を時間一杯議論したと思っております。冒頭に、
昨日の再総括をさせて頂きたいと思っております。
昨日そうした展開があった中で、それを踏まえつつ、これからお二方に思いのたけ語って頂こ
うと思っておりますが、今日の位置づけとして、昨日は国の政策やかなり現実に近いビジネス
の話が語られましたので、今日はむしろソフトインフラと言いますか、知恵の部分、人をどう
やって動かすか、その辺のソフトインフラの括りでお話を進めていければと思っております。
お二人とも論客でありますので、鼎談というより放談会で構わないと思っておりましたが、北
海道都市地域学会主催のセミナーでありますので、多少アカデミックにしなければいけないと
思いついたところがあり、放談会よりもう少し格調の高い話にしたいと思っております。第 1
ラウンドとして、お二人に今日のテーマを踏まえ、ご自身の解釈に立脚して、今までの活動・
行動、皆さんに投げかけたいことをレポートして頂きます。その後、キーワードを拾い出し、
それについてやり取りしたいと思います。また、皆様からもご意見等頂きたいと思います。
− 50 −
エコライフジャーナリスト
慶應義塾大学大学院 SDM 研究科教授 林 美香子 よろしくお願いいたします。北大農学部の先輩とご一緒の鼎談ということで、やや緊張ぎみ
です。今日は帯広にお招き頂き有難うございます。
「環境共生時代の地域づくり・まちづくり・人づくり」ということで、最初に思い浮かんだ図
があります。何を考えるときにも、環境共生ということが、とても大切な地域づくりになって
いくと思います。今まではまちづくり、人づくり、地域づくりの横に、その横に環境共生とい
う感覚があったかと思います。そうではなく、何を考えるときにも環境共生が必要であると思
います。私は北大農学部を出て STV のアナウンサーになり、ずっと働いていたわけですが、そ
の傍ら、北大工学部の社会人枠で工学の研究をしました。そして、小林先生のもとでドクター
論文を取ることができました。今日はその研究の一部も紹介したいと思います。
私の著書の中でドクター論文を紹介しているのですが、本日はその中から、環境共生として
是非ご紹介したい事例があります。九州ツーリズム大学、熊本県小国町で行われています。こ
こは小国杉で有名で、それを上手に使った建物でも有名なまちです。そこで日本初の民間のツー
リズムを学ぶ場として、九州ツーリズム大学が 97 年に設立され、毎年継続しています。都市と
農村の交流で往来日本大賞なども受賞しています。この大学のことを少しご紹介しようと思い
ますが、小国を中心に由布院、安心院などで実施されています。開催は 9 月から 3 月までで、
毎月 1 回、2 泊 3 日の宿泊研修が行われています。カリキュラムですが、講義群と実習や体験、
ワークショップがあり、地域の宝を非常に大事にしています。この地域の宝が、まさに環境共
生につながるものだと思います。講師は専門家や研究者と一緒に、地域内外のグリーンツーリ
ズムの実践をしている人が講師になっています。受講料は年間 7 回参加するとおよそ 20 万円で
すが、
個人で参加している人もたくさんいるところが素晴らしい。1 期から 10 期でおよそ 1,500
人の人が、全国から集まっています。
地域の宝を利用して、様々なカリキュラムが行われています。特に実習に力を入れていると
ころが特徴だと思います。例えば、阿蘇山でもウサギ狩りなども行われています。地域の資本
の利活用ということで、私は地域の宝を地域の資本として捉えました。五つの資本に分けまし
たが、自然資本、人的資本、物的資本、ソーシャルキャピタル、そして金融資本、これらを非
常に上手に利用した大学になっています。それを模式的に表にしてみると、地域の資本を利用
して様々なカリキュラムを組み立て、そこで受講生たちが学ぶことで、様々な具体的な成果が
生まれています。例えば、ここで起業する人がいたり、移住したり、転職をして来ている人が
たくさんいます。
環境共生ということで紹介したい事例が、熊本県小国の商家民宿です。北里さんというご夫
妻で時計屋さんなのですが、ずっと九州ツーリズム大学に通っています。地方の商店ですから、
時計はなかなか売れないそうです。喫茶店をやったり、ギャラリーも一生懸命経営しているの
ですが、何か自分達ができるツーリズムはないかと考え、会員制の商家民宿を行っています。
なぜ会員制にしたかというと、普通に旅館運用を取ろうと思うと、ものすごく投資をしなけれ
ばなりません。会員制ということで、そのまま家を利用でき、古い石倉を利用しています。本
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当に昔のものを上手に利用しています。奥さんが大変お料理が上手で、まさに地産地消のメ
ニューを出しています。
この小国からも、例えば地元にある杉を上手に利用しているとか、地産地消を進めている、
古い建物を利用しているといったキーワードが出てくるのですが、私なりに環境共生時代の地
域づくり、まちづくり、人づくりに関して、四つのキーワードを考えました。建物などの再利
用、地産地消、これはスローフードの考えでもあるのですが、今、食物の多様性を活動の柱に
しています。それと、環境共生時代には森林が非常に大きな役割があると思います。まずは再
利用ですが、佐伯さんという方が個人で建てた、中標津の荒川版画美術館があります。使わな
くなったサイロを利用して、ギャラリーにしています。次に中札内の美術村です。枕木を上手
に利用したり、建物を移築して再利用しています。今日、出かけてきた「十勝千年の森」でも、
馬小屋を上手にお店に変えていました。これからはこうした再利用がとても重要だと思います。
次に地産地消ですが、農産物の輸送距離を縮め、輸送に伴う二酸化炭素の排出を削減する効
果があります。地産地消というと、地域内の経済の循環につながるとか、地域の農家を守るこ
とにつながるといった働きもありますが、二酸化炭素の排出も削減する効果があります。十勝
の方は是非、十勝のものを召し上がってください。この地産地消の推進に関して、面白いホー
ムページがあります。これは「大地の会」というところがやっていますが、フードマイレージ
キャンペーンです。この言葉は最近ずい分と言われるようになりましたが、食べ物の重量 × 輸
送距離、トンキロメートルという単位で表すのですが、日本はたくさんの食糧を輸入している
こともあり、世界一のフードマイレージ国なのです。このフードマイレージを減らしていくこ
「大地を守る会」ではフードマイレージキャンペー
とが、CO2 の削減につながるということです。
ンを進めるために、地産地消することがどんなふうに CO2 の削減に役立つのかを具体的に数値
で表しています。東京に住む 3 人家族のフードマイレージによる、年間 CO2 の排出量ですが、
例えば国産 100%のものを食べ続けると、CO2 の排出量は年間で 60 キログラム、平均的な今の
日本の輸入量である、輸入 60%、国産 40%にすると、何と 360 キログラムも CO2 を排出して
しまいます。その差を見ると 300 キログラム。これは、3 人家族が平均的に使っている電気使
用量の 13%の削減になり、食べ物を買うことでずい分 CO2 の削減につながるわけです。
ホームページには、フードマイレージの電卓が載っていますが、その中で幾つかご紹介しま
す。これは東京を基準にして調べていますが、例えば食パン 1 斤の CO2 排出量ですが、アメリ
カ産と北海道産の小麦で CO2 の削減を見ると、110.2 グラムも削減できる。大地の会ではこう
いう表現だけでなく、100 グラムの CO2 削減を 1 ポコと表現しています。1.1 ポコの削減になる
というわけです。アスパラガスたった 1 本で、オーストラリア産のものを食べるか、長野のも
のを食べるかで 3.4 ポコも違います。これはどのくらい他の CO2 削減と差があるのかというと、
例えばエアコンの暖房を 21 度から 20 度にすると 1.5 ポコ、1 日 5 分間アイドリングをストップ
すれば 1.1 ポコということですから、どんな食べ物を食べるかでずい分違うということを、是
非皆さんに知ってもらいたいと思います。家庭でも地産地消して頂きたいですし、地域づくり
も地産地消を一生懸命推進しています。
鹿追の中野さんという「大草原の小さな家」は、農家レストランでありファームインです。
この素晴らしいログハウスは、まさに地材地消です。自分の山で採れた木を自分で伐り出して
製材し、丸太小屋にしています。ここでのメニューは、近所で採れたものを使ったバイキング
メニューです。とても美味しいですし、人気があります。こうした農家レストランは今、全国
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でとても人気があるのですが、これは長沼でのお話です。
「クレス」という農家レストランです
が、大繁盛しています。札幌から車で 1 時間ほどということもありますが、午前 11 時から夕方
5 時までの経営で、多い日は 1 日に 300 人のお客が来るということで、5 回転もしています。こ
れは普通のレストランでは考えられない数字です。実際に慶應の学生たちを 9 月、長沼や由仁
に農業視察に連れてきたのですが、この長沼のレストランに行ったときも、学生たちは感動し
ていました。駐車場に渋滞が起きるくらい、お客様が一杯でした。さらに、経営者の星場さん
が素晴らしいと思うのは、ご自分のレストランの繁盛だけでなく、すぐそばに他の農家の野菜
を売る直売所を開いています。レストランに来た人は、ほとんどその直売所に寄って買い物を
しているそうです。レストランがきっかけになり、地域の経済循環が生まれていると思います。
次に、真狩村にある「マッカリーナ」というフレンチレストランです。普通、第三セクター
というと失敗しているところが多いのですが、ここは奇跡の第三セクターと呼ばれるほど大成
功しています。今年のサミットのときに、首脳夫人を招いてのランチミーティングも行われま
した。ここはシェフも素晴らしいですし、ソムリエのサービスもすごいです。さらに、マッカ
リーナを中心においしいパン屋さんができたり、ジャム屋さんができたりと、地域にもいい影
響が出ています。このマッカリーナを作り上げたシェフである、札幌のフレンチレストラン
「モリエール」の中道さんが、この店が人気を呼んでいる一番の理由は、そこで働いている人
が真狩が大好きだからだと話していました。環境共生という意味では、地域を愛する郷土愛は
欠かせないキーワードになるのではないかと思います。
また、新得のファームイン「つっちゃんと優子の牧場の部屋」は、湯浅ファームが経営して
いる素晴らしい農家民宿です。こうした民宿はヨーロッパにたくさんあります。例えばフラン
ス・グルノーブルの近所の農家民宿ですが、豚小屋を上手に改装したものです。近所で採れた
チーズなどを利用し、お客様に案内もしていました。
次に食物の多様性についてお話しようと思いますが、今、国家戦略としても生物の多様性が
言われています。実は食べ物もどんどん多様性を失っています。その中でスローフード運動で
は、「味の箱舟運動」をしています。地域の伝統的な食品や、在来品種の保存・復活、地域の食
文化の継承、地域の多様性を守る、それがまた地域の魅力につながります。なぜこういう運動
をしなければならないかというと、今、世界中でどんどん品種が減りつつあります。例えば小
麦に関して言うと、100 年ほど前は 1 万種類の小麦の生産をしていたそうです。ところが、生
産性を上げられる、病害虫に強い、収穫量が多いといった理由から、世界中で生産されている
小麦は数種類に限られてしまっているそうです。日本でもどんどん在来種が減っています。例
えばトマトだと、ももたろうというトマトがとても有名ですが、これは日本一美味しい品種と
いうわけではありません。流通に向く長期保存がきく、傷まないという理由なのです。ももた
ろうは皮が厚めにできているので、スーパー等で販売するときに便利だと、どんどん代わって
いっています。でも、お爺ちゃんお婆ちゃんの中には、懐かしい味のトマトを栽培している人
がいます。そういう農家を支えていこうというのが、味の箱舟運動です。
北海道でも何種類か、地域特有の農産物として応援しているものがあります。例えば八列ト
ウモロコシで、これは今人気のピュアホワイトやピーターコーンとは全く種類が違います。何
しろトウキビの列が 8 列しかない、細長いトウキビです。懐かしい味ということでご記憶の方
も多いでしょうが、収穫した日はとても美味しいのですが、1 日経つと味が極端に落ちるので、
スーパー等の流通に向かず、どんどん消えて一時は幻のトウモロコシになりそうでした。三笠
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の農家がたまたま種を持っていて、スローフードの私たちが応援し、テレビの取材等が増える
ことで、今やずい分たくさんの農家が栽培するようになりました。三笠や岩見沢の道の駅など
でも販売しています。
また札幌での話ですが、札幌黄というタマネギは、開拓時代に一生懸命育てていた種類です。
栽培が少し難しいのと、保存性がない、傷みやすいということで、どんどん減ってしまいまし
た。でもまた私たちが買い支えれば、農家の人はそういう懐かしい品種を作りたいのです。こ
のように札幌黄は作り続けることができ、オシキリ製麺がこの札幌黄を練り込んだラーメンを
作り始めています。そうするとそれが地域の特産品にもなり、観光の目玉にもなる可能性が出
てきます。世界中、同じようなものを食べている中で、地域の文化を守っていくことはとても
重要であると思います。
その意味では、郷土料理の講習会等をきちんと続けていくことも重要なことです。これは道
南・乙部での話です。地元のおばあちゃんたち 5 人が先生役になり、「つぼっこ汁」を作った講
習会です。お吸い物の椀のことを道南では「つぼ」と言うそうです。その「つぼ」に入れて食
べるので「つぼっこ汁」というそうで、お正月などに作ります。このときは、前の晩におばあ
ちゃんたちがつぼっこ汁を作っておいてくれ、当日は親子でお団子を作りました。このお団子
はご飯団子です。昔はご飯が貴重だったということで、くず米や残りご飯を蒸かし、一生懸命
搗き、澱粉を入れてご飯団子にしました。子供たちはとても楽しみながら作ります。このお団
子も地域性があって、北海道の白玉団子などは普通丸めたあと、ちょっと指で押して平らにす
る場合が多いですね。この地域は、キノコの形だそうですが、まん丸く作ったのをちょっと引っ
張って、ナメコのような形にするお団子でした。
さらにこの地域の素晴らしいところは、乙部の公民館の方が朱塗りのお膳をたくさん保管し
ています。古いお宅、特に大きなお宅には 50 組とか 100 組の塗りのお膳があるけれど、例えば
乙部を引き払って都会に移るというときには、全部処分して引っ越すそうです。もったいない
ので公民館で全部譲り受け、単に飾っておくだけでなく、皆で使って食べました。子供たちは
生まれて初めてなので、すごく盛り上がった食事会になりました。ご飯とお汁粉、つぼっこ汁、
煮
物にもびっくりしたのですが、入れ物のことを「おひら」と言うそうで、
「おひら」という呼び
方をしていました。昔は晴れの日に作るものは、とにかく贅沢な感じを出そうということで、
ニンジンの大きさにびっくりです。油揚げも、大きな三角の揚げの半分が 1 人分で、ものすご
い量を煮ました。とても楽しいお料理の講習会でした。これは地域の文化の継承にもつながる
し、お年寄りの生きがい対策にもなり、生涯学習にもつながるものです。参加した若いお母さ
んたちに聞くと、お正月にはおばあちゃんが作ったつぼっこ汁を食べていて、ほとんど作った
ことがないそうです。昔ならお嫁さんにお姑さん、あるいは親から娘に自然に家庭で伝わって
いたものが、どんどんそうではなくなっています。そういう意味では、地域が郷土の料理をき
ちんと伝えていく仕掛けを作るべきだと思います。おせち料理もそうですが、若い世代は親か
ら習うより、ほとんどテレビや雑誌から習う時代になり、地域のお料理が伝わらなくなってい
るのではと心配しています。
最後に森林の話題です。これは釧路の阿寒にある前田一歩園財団の、とても素晴らしい森林
です。私は前田一歩園財団の評議員をしていることもあり、何回か訪れていますが、本当に素
晴らしい森林です。環境を守っていくときに、森林はとても重要な働きがあります。例えば大
気中の二酸化炭素を吸って蓄えてくれる。大気中の CO2 の 7 割が木に蓄積されているそうです。
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さらに、こうした森林があることで、様々な動植物が生きていけます。生物の多様性を守るた
めにも、森林はとても大きな働きをします。北海道の森林面積は全体の表面積の 71%で、554
万ヘクタールもあるそうです。道民 1 人当たりに計算すると、1 万ヘクタール、これは全国平
均の 5 倍の量です。でもその森林を私たちが守っているか、あるいは利用しているかというと、
まだまだです。農業では耕作放棄地などと厳しいことが言われていますが、森林はもっともっ
と大変な時代を迎えています。私たちは森林に対してもっと注目しなくてはいけないと思いま
す。
阿寒の森では、下草刈りをきちんと行い、森を育てています。さらに子供たちを集めた観察
会なども行っています。北海道の場合はクマの被害等も心配なので、どの森林にも入れるわけ
ではないのですが、子供たちをまず森林に連れて行くことも重要だと思います。また、産業と
して林業を考えると、非常に厳しい分野だと思いますが、例えば札幌にも「里山プロジェクト」
があり、林業のボランティアをする。あるいは他府県では、草刈りをする人たちを募り、
「草刈
り十字軍」という名前で皆で手伝うというように、ボランティア等も入れていく必要があるの
ではないでしょうか。北海道では阿寒の前田一歩園財団、下川町も熱心に取り組んでいます。
今朝見てきました十勝の千年の森も素晴らしく、民間の力でこうした森をつくり支えることは
素晴らしいことだと思います。
北海道では今、木育という言葉も言われるようになりました。単に森林に遊びに行くだけで
なく、例えば木のおもちゃで遊ぶとか、木の物語を知るというような幅広いものです。木育の
中で人を育てていく工夫も大切ではないかと考えています。
太田(聞き手)
す。
有難うございました。私の勉強のためにも
う一度写してほしいのですが、熊本県の小国
太田(聞き手)
町の実践活動を通して、五つの地域資本を述
ソーシャルキャピタルは横文字ですが、実
べられました。これは書き留めておくととて
は昨年の都市学会のメインテーマでした。後
も役立つと思います。
半でもう少し詳しくして頂きたいと思います。
もう一つが、環境共生の四つのポイントで
林(語り手)
す。これも使い勝手が良くて、お話になると
そうですね。地域づくりの中では、ソーシャ
きは転用してください。この四つの中の森林
ルキャピタルがとても注目されています。同
に関して、よく言われている数字ですが、森
じ自然資本がある地域がたくさんあっても、
林は非常に重要なことはご承知の通りでよく
それがうまく活用されている地域と、そうで
ご理解頂いていると思いますが、分かりやす
もない地域がある。これはソーシャルキャピ
くその大事さを説明するとき、価値観の違い
タルの差だと言われていて、地域の人達が信
を割り切って同じ土俵に乗せるとすると、お
頼関係を持っているとか、ネットワークを
金だと分かりやすいということで、CVM、日
作っているとか、互助精神があるかないかで
本語では代替評価法といって、お金に替えて
ずい分違うと言われています。その意味で、
評価すると、日本の森林は年間で 39 兆円の価
十勝という地域は民間が開拓した地域という
値がある。田畑が 7 兆円と言われています。
こともあって、北海道の中ではすごくソー
それは 7 割の CO2 を吸収すると林さんが言わ
シャルキャピタルの力がある地域だと思いま
れましたが、これを機械で替える、あるいは
− 55 −
排出権取引に替えたとするという換算方法で
ンプットしておいてください。
す。この数字はよく語られる数字なので、イ
高野ランドスケープ・プランニング株式会社
代表取締役 高 野 文 彰 たった一つの星、地球。大量生産、大量消費、大量廃棄をして発展し続ける人類。これは 20
世紀までの話でありました。今回のテーマで色々なことが語られ始めたのは、これを見直すス
タートだったと思います。その中の小さな島国、日本。そして北海道、十勝。最初に、この十
勝の大地の歴史をお話しします。
約 1 億年前に二つのプレートがこの場所でせめぎあっていました。どちらかが潜り、その摩
擦で地震が起きるなどの原因になっていますが、これが壮大なドラマの始まりです。日高山脈
が湾曲しているのは、片側のプレートの力が強いからです。我々が北海道に移ってきてから、
新しい仕事をするたびに勉強し、少しずつ学んできたことの集積になります。500 万年くらい
の時期には、十勝平野全体が海の時代です。鯨が泳ぎ回っていた風景を想像してください。さ
らに 100 万年くらいの時期になると、海の部分が閉ざされ、十勝平野全体が湖になり、それが
大湿原を形成しました。化石植物といわれるミツガシワなどの白い花が、この平野全体に咲き
乱れている風景もありました。マンモスが闊歩していた 50 万年代、数万年前になると支笏湖で
火山活動が活発になり、その火山灰が日高山脈を越えて十勝平野に降っています。約 2000 年間、
草木が 1 本も生えない砂漠の時代がありました。
こうして見てくると、人類が発生するまでの時期、それを更に広げていくと、旧石器時代、
縄文、続縄文、擦文、アイヌ、そして探検期がきます。よく言われる話ですが、長い歴史の中
のほんの一皮の話をしている気がします。また、この流れの中で注意して頂きたいのは、北海
道に弥生文化の時代がなかったことです。弥生時代は水田をベースにし、人間が自然をある程
度コントロールしてきましたが、北海道のアイヌ文化は狩猟採集で縄文のルーツを引いていま
す。
開拓期に入って、1896 年、まだ開拓が入り始めた時期です。ほとんどが原生林と自然河川に
覆われています。古い土地利用の図面を集め、色塗りをして作り始めたのですが、やっていて
驚いたのが、たった 24 年でここまできたことです。帯広のまちができて、それでも後背に伐採
はされながらも、ある程度まとまった森が残っています。河川の本流は自然の形態をとってお
り、小河川もほとんどまだ残ったかたちで耕地化しています。
この時期になると、ここにあった森は姿を消しています。小河川は全部農地に組み込まれ、
本流だけはかろうじて自然河川の形状を保っています。この時期になると帯広のまちは益々大
きくなり、本流は堤防の中に閉じ込められています。
エコロジーパークのプロジェクトを行うときも、千年の森のときも、この図面はいつも頭の
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中にあって、我々は本当にこのまま進んでいくのだろうか。ちょっと踏み止まって、色々考え
るべき時期に来ているのではないか。私たちは約 18 年前に東京を離れ、十勝に来ました。ちょ
うどバブルの絶頂期で、東京にいさえすれば仕事はいくらでもあるという時期に、何で北海道
に行くのと皆に不思議がられました。何か、大きいものとか速いもの、お金が儲かるもの、先
進技術だけのこと、それに国中が向かっていることに何となく居心地が悪く、ゆっくりやるこ
ととか、小さくてもいいとか、そういう別な価値軸も楽しみながらできないかというのが、北
海道に来た一つの理由です。
北大出身なので、皆は札幌へ行ったのではないかと考えたようですが、実は十勝に来ました。
落ち着いた先が田園地帯の真ん中の、廃校になった小学校です。かわいらしい小学校の音楽室
と体育館、グランドは公民館として使われています。真ん中の教室の部分だけが事務所です。
公民館と設計事務所が同居するという不思議な関係でスタートしたせいで、地域と色々仲良く
なれたと思います。参加型のプロセスは東京にいるときからずっとやっていましたが、今度は
仕事ではなく、地元の住民の一人として地域をどうしていこうか議論したりしています。驚い
たのが、ワークショップで話し合ったときに、次の日に集まった現場でもう重機が待っている
のです。まさしく自力建設でつくるという、あれもほしい、これもほしいという東京でのワー
クショップに少々嫌気が差していただけに、非常に新鮮に受け止められました。学生たちを全
国から集め、森のワークショップを企画したり、村の人と一緒にお祭りを楽しんだりしました。
また、インターシップという仕組みで、全国だけでなく世界中から色々な学生が来てくれます。
今年はタイ、フランス、スペイン、スコットランド、ロシア、韓国、中国、レバノン、カナダ、
すごい数が来ています。
昨日の市長のお話の中で、田園環境モデル都市・帯広ということでご紹介があったのが、五
つの取り組みです。この中で今日は、緑・まちづくりの話と、快適に住むまち、このあたりに
スポットを当ててお話したいと思います。昨日のお話はかなりの部分が、新しく資源・エネル
ギーを作り出した、それと農業との関係が重点だったかと思います。昨日の最後のまとめで、
太田さんが行動する環境会議、ローカルアクション 21 を言われました。地域における行動をも
う一度振り返る必要があります。
エコロジーパークは川のプロジェクトでした。高橋建設はまちのプロジェクト。千年の森は
森のプロジェクトでした。丁度横軸にこの三つのテーマを得ることができました。当初話があっ
た際は、サケの科学館などかなり施設依存型の公園にしたいという要望が強かった。ただ、こ
れからは施設立地型の時代ではなく、環境育成型に転ずる時代であろうということで、1 年ほ
ど色々議論はしましたが、結果的にはそちらの方向で進められたと思います。整備直後が評価
されるのではなく、50 年 100 年後に評価される公園にしましょう。これは 2003 年に大臣賞を
頂きました。草地をいかに完備するかによって、多様な草地環境が生まれてきます。農業の跡
地を購入して運用したわけですが、草を刈り込む頻度と季節を変えていくと、色々なパターン
の草原が多様に展開されます。草地型の環境は単一に見られがちですが、これは非常に面白い
実験だったと思います。
もう一つは、高橋建設という建設会社の事務所です。社屋は環境に取り組む企業の精神のシ
ンボルであるというプロジェクトでした。これもたくさん賞を頂きました。この際、社屋とは
何だろうという議論を行い、単にお金を稼ぐ箱ではなく、会社が目指すもののシンボルである
べきだ。建設会社はある部分、開拓の尖兵であったわけですが、これからは環境と一緒になる
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建設のあり方を考えよう。社員の方ともワークショップを行いながらやっています。緑を多く
取り入れ、自然に溶け込んだ社屋にしてほしい。開かれて明るくて、春夏秋冬を楽しめる社屋
とか、土建屋のイメージをなくすといった、様々な意見が出ました。驚きと感動で人を迎える
入口、駐車場も庭の一部になっています。
このプロジェクトでは色々と感動的な話があったのですが、一つは周りに柵を作るかどうか
という話をしたとき、そんなものはいらないということで、知らない人がふらっと入ってきて、
いい公園ができましたねと言うこともありましたし、企業が環境にどう取り組むかがパブリッ
クにオープンになっているという意味で、とても面白いプロジェクトでした。
もう一つは、先程林さんも触れられましたが、千年の森です。約 400 ヘクタールあります。
このプロジェクトが動き始めたときに、林社長とも色々話をしたのですが、新聞社は木を伐っ
て紙を消費する。企業の社会貢献として森づくりに取り組みましょうというのが、一つの大き
な理由です。キャンバスとしては申し分のない、雄大な美しい風景です。このお話があったの
は丁度 2000 年になる数年前だったので、千年の森と名前をつけさせて頂いたのですが、100 年
に 1 度の節目は、人間も運がよければ出会うことができます。千年に 1 度の節目は、そう簡単
に出会うことはできない。特に、今までの千年とこれからの千年のターニングポイントにきて
おり、これから人と森がどのように関わっていくか、ここで色々楽しみながら実践できればい
いというのが、千年の森のスタートです。西洋のエコロジーをベースにした土地の解析の手法、
東洋の風水をベースにした土地の読み取り方、様々な手法で進めています。
農業と教育、エコツーリズム、森、この四つを柱にして進めていこうということになりまし
た。お話があった頃は、まだバブルの流れがくすぶっていた時期だったので、どちらに行くか
は非常に大きな決断だったと思います。私たちは環境共生型のあり方を選びました。ちょうど
今年のサミットの時にオープニングを迎えました。森の扱い方も、保全、利用、資源林として
のゾーン、カラマツ林を徐々に広葉樹林に切り替える。自然に溶け込むステップとして、自然
をテーマにした様々な庭を用意しています。大地の庭、草原の庭、森の庭、風の庭、そのうち
の四つが 7 月にオープンしました。その中で、森の庭をご紹介します。
これは、森林を庭のようにきれいにしてみようというのが、そもそものスタートです。北海
道に森はたくさんありますが、笹がぼうぼう、入ったらクマが出そうでほとんど使えません。
これをきちんとしてあげるのも大事だということで、まず笹を刈り、除間伐をし、徐々に森の
環境を変えていきます。3 年かけてこの段階まできています。落ち葉を掃き出すことによって、
林床に眠っている色々な草花が咲き始めます。シラカバの木がミズナラの中に 1 本だけありま
すが、回りをさりげなく抜いてあげて、光が当たると森の中に白い美人が佇んでいるような風
景を作っています。笹がぼうぼうだった入口も、2 本の木を門に見立てています。林床を手入
れすることにより、様々な草花が生えてきます。今は笹だけだったところに、20 種類ほどの草
花が出てきています。植えたのではなく、眠っているものを起こしてあげて、育ちやすい環境
を作ってあげました。泉さんという方がやっている広尾にはこういう森があって、我々が目指
す姿だと思います。我々は、ものを作っていくタイプのデザイン、足し算のデザインもやって
きていますが、ここで面白かったのは引き算のデザイン、潜在的に眠っているものを、いらな
いものを取り除くことによって導き出してあげる。
幾つか行動計画に向けてスタートになるかと少し用意してみましたが、ローカルアジェンダ、
その行動計画の作成と実施に向けて、明快な目標とビジョンが必要だと思います。帯広が選ば
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れた大きな理由として、シンボルとして帯広の森があると思います。先人の残していった骨格
の上に、新たな取り組みを展開すべき時期にきていると思います。多様性のある美しい森を作っ
ていく。昨日の話では色々な数値目標が出され、それに向かって努力し、多くの実績があるこ
とに感動しましたが、数値目標に加えて、環境の豊かさや美しさを、肌で感じられるようにし
ていくことを忘れてはいけないと思います。
この土地で生活して、帯広はかなり志の高い企業がある風土だと思います。民間企業の力と
公共がもっと手を結び、今までの枠組みに捉われない新しい展開をしていくことが、まちの再
生につながっていくと思います。サステイナブルな都市は、エコロジーやエネルギーとしての
サステイナブルだけではなく、それが持続的に展開していく仕組みを持つことが大事であると
思います。
今の帯広の森は、植樹をして育林期を過ぎ、一部は森林形成期に入ってきていますが、ほと
んどは育林期です。これで帯広の森が出来上がったと思ってはだめだと思います。これから森
林形成期、成熟期に向けて、どういう森にしていくかを考える必要があります。林床の草花の
育成もあるでしょうし、先駆的な樹種から、最終的な森に遷移させていくことを早めるのかど
うするのか。多様な樹林密度がもっと必要になってくるのではないか。除間伐したバイオマス
エネルギーを資源として使っていく。こういうダイナミックなプロセスが、環境教育とリンク
することが大事です。特に修形林作業、森の持っている美しさを引き出すような作業はほとん
どなされている例がないので、これからやってあげればかなり美しい、歩いて気持ちのいい森
ができるかと思います。
数値目標の話になりますが、種々の代替エネルギーの研究を行い、どんどんプラントができ、
効率的に動き出してくることはとてもいいことだと思います。ただ、いて居心地のいい、エコ
ロジカルで心が豊かになる社会を目指して、研究成果として現れていると思います。どこかで
間違うと、プラントだけができて、何のためにやっていたか忘れてしまう。効率的な成果や、
数値だけ達成できるかどうかに向かう危険性があるかと思います。そうしたプラントの周りに
は、森も作るというくらいの骨組みが絶対に必要であると思います。昨日のお話では、国家戦
略として予算もついていくという話がありましたので、働きかける側が最初からそういう骨組
みを持って向かっていかないと、気がつけば工業プラントだけがたくさんできた、CO2 は削減
されたが、それは目にも触れないしあまり楽しくもない。そういう話にならないようにすべき
だと思います。高橋建設が持っていたような、精神がかたちに出てくるものがすごく大事であ
ると考えます。
もう一つ、企業とのお話になりますが、帯広市の緑の基本計画に五つの基本方針があります。
その一番目に挙がっているのが、市民、企業、行政の協働による緑づくりで、企業という言葉
がここでもしっかりと謳われています。帯広の森はその外観を骨組みとして作る環境対策です
が、基幹となるまち中の公園、グリーンパークであったり、トテッポ通り、大通公園等、基幹
になる公園を軸にして、これから新たなまちの賑わいを緑と一緒に作っていくことがとても大
事です。そのときに、いかに企業と連動していくかが要求されてくると思います。例えば、公
園に隣接して民間で何かプロジェクトを考えている場合、接点の部分は一緒に考え、公園の再
整備と併せて行えれば、公園利用者にとっても民間の楽しい施設の雰囲気を楽しむことができ
るし、利用者にとっても美しい風景を楽しむことができる。そういった双方にとって気持ちの
いい展開ができ、それが運営や管理につながっていくような舞台が、これからは必要になって
− 59 −
きます。新たに土地を求めて公園を造るよりは、今ある公園をいかに再活性化して都市の再生
を図っていくか、その時にいかに民間と手を結ぶかが大事になってくると思います。
私たちはランドスケープ・アーキテクトなので、いつも最後にこれで締め括るのですが、私
たちが芸術家の目を持って、科学者の頭脳と詩人の心を持った造園家でありたいと思っていま
す。デザインは、夢と思っている世界を実現させるためのプロセスではないかと思います。
太田(聞き手)
曜に音更町の企画部長を連れて、企業誘致だ
どうも有難うございました。高野さんはカ
と乗り込んできました。ここまで言われたら、
タールの大変大きなプロジェクトに関わって
男冥利に尽きる。一度見に行こう。来てみる
おられ、この鼎談をお願いしたときに、カター
と、やっぱりいいんです。四季のメリハリが
ルのプロジェクトがあるので、この鼎談のポ
すごくはっきりしていて、受け入れてくれる
ジションは非常に関心があるし、自分の思い
土壌がすごくいいところだった。最終的な決
入れのある十勝であるので、是非やりたいと
断は、東京に未練を残し首都圏にいるよりは、
いうことでした。カタールはアラブ圏ですか
北海道しかも札幌ではなく十勝に来ることに
ら、日本とは商習慣も違い、突然明日来てく
よって、はっきりするということがあったと
れということもあり得るので、場合によって
思います。
はカタールにという話もあり心配していまし
た。最悪の場合は、私が一人二役をやらねば
林(語り手)
と二・三日前まで危惧していましたが、カター
プラス馬もあるのかなと勝手に思ってたの
ルの話が日延べになりました。カタールは、
ですが。ご自身のライフスタイルを楽しめる
サッカーのワールドカップで、我が全日本
場所が十勝なのかなと想像していたのですが。
チームと同じゾーンの国です。そのカタール
のプロジェクトは相当な規模で、十勝に住ん
高野(語り手)
でいる高野という人が、世界で活躍されてい
皆さんそう言うのです。高野さんは馬に乗
るわけです。先程、北海道は分かる、なぜ十
りたいがために、社員をだまして連れて行っ
勝なのかが私は未だに分からないのですが、
たんじゃないか。実は、来てからまた乗り始
きっとカタールやマレーシアという外国のプ
めたのです。
ロジェクトに携わるとき、アイディアや発想
のエネルギーやポテンシャルが、ここ十勝の
太田(聞き手)
持っている環境や風土があるから、そのよう
東京ではもちろん、札幌にいたら、こうい
に活躍されているのですね。何で十勝なのか、 う仕事はできなかったのですか。
十勝は本当に役立っているのかという話をし
高野(語り手)
て頂けませんか。
全くそうだと思います。森がこんなに身近
高野(語り手)
ではなかった。農村地帯のど真ん中で生活し
十勝に来たのは、たまたま友人がおり、東
ていることと、特に学生と夏のプログラム等
京近辺で長野、山梨、群馬あたりを探してい
で触れ合うきっかけになって、それが千年の
たのですが、ある日電話をしたら、2 時間後
森だったりエコロジーパークだったり、高橋
に十勝管内の廃小学校のリストが 20 送られ
建設へつながっていったと思います。あとは、
てきました。それが金曜だったのですが、月
十勝の人材にも恵まれたと感じています。企
− 60 −
業人として非常に魅力的な方がたくさんおら
では、先程のソーシャルキャピタルの話を
れます。企業の環境貢献ということを色々な
して頂きたいと思います。私事ですが、家庭
企業が話されていますが、自前で森を持って
の事情でヨーロッパに行っていたのですが、
いるところは意外と少ないのです。活動団体
林さんたちに活動して頂いているスローフー
にお金を寄付するケースは結構ありますが、
ドいう考え方がイタリアで生まれ、その本部
自前で森を持って頑張るというのは格好がい
がある北イタリアのブラーに何日か行ってい
いという感じがします。
ました。スローフードが北イタリアで発生し、
それはフードだけでなく、まち全体でスロー
太田(聞き手)
シティ運動に展開したという大きな流れがあ
先程見せて頂いた十勝広域圏の図面ですが、 ります。第 3 のイタリアと呼ばれている、5,000
なぜあそこまで丹念な図面を作られたんです
人、1 万弱といった小さなまちでも、皆の顔
か。
が非常に明るく、相当豊かです。その背景に
は、どんなことがあっても潰れず、しっかり
高野(語り手)
お金を稼ぐシステムが確立しています。そん
千年の森の仕事を頂いたときに、林さんに
なに大きなお金を稼いでいるわけではないで
最初に話したのが、その場所の自然環境や十
すが、したたかに必要最小限のお金はまちが
勝のことを最低 1 年は勉強させてください。
稼ぎ、その代わり心が豊かでいい表情をして
もしお急ぎで、一般的なリゾートのようなプ
います。そのような背景も含め、ソーシャル
ランがほしいのなら、他の方がいいと思いま
キャピタル、スローフードのお話をお願いし
すということでした。そんな生意気なことを
ます。
言う人間はあまりいなかったらしく、驚きな
がらも結構喜んでくれたと思います。先程、
林(語り手)
スローフードのお話がありましたが、私たち
イタリアで始まったスローフード運動の
がやったのはスローデザインだったのかなと。 きっかけは、まさにファーストフードでした。
森に働きかけ、森の反応を見ながら、どういっ
ローマにファーストフードのハンバーガー
たものがそこに一番ふさわしいかを考えられ
チェーン店ができそうになったときに、イタ
たことは、十勝でなければできなかったと思
リアの若者たちが、イタリアに美味しいパス
います。
タ料理やピザがあるのに、憧れでアメリカの
安いハンバーガーを買いに走りそうになった
太田(聞き手)
のを見て、イタリアの人たちは、こんなに素
話は戻りますが、カタールはアラビアです
晴らしい食文化があるのに何でだろうと、ア
から砂漠エリアです。砂漠でも木が植えられ
ンチファーストフードということで、わざと
るくらいの技術が開発されており、これから
スローフードという言い方をしています。洒
は水が大変大きな問題になると思います。食
落でつけた名前だと言っていますが、ファー
糧よりも水が圧倒的に足りないときに、日本
ストフードを全く否定するのではないが、地
の水、また水に関わる技術はかなり重要に
域のものをきちんと大切にしようという運動
なってくると思います。その意味で、カター
です。
ルで木を植えるということは、水問題が技術
北海道にはアイヌの人たちが住んでいて、
的に解決されつつあるということを興味深く
その文化が継承されていることもあり、イタ
思いました。
リアのスローフードの会長・副会長が北海道
− 61 −
に遊びに来ています。帯広にもペトロ会長が
のがスパイシー料理なのに、タイの若い人た
来られて、イベントやフォーラムに参加して
ちはアメリカ文化に憧れ、お年寄りが作って
います。お二人にお話を聞くと、日本ほどす
くれるお料理を食べず、ファーストフードに
ごくはないが、イタリアも同じような状況が
向かっているそうです。皆が均一なものに憧
あります。例えば、子供たちが本物に触れず
れを感じてしまうコマーシャリズムの影響も
に、テレビやパソコンで世の中を知ってしま
あると思いますが、地元のよさをきちんと伝
う弊害がたくさんあると言います。その一例
えていくためのスローフード運動は、とても
として、美味しい青リンゴの匂いを子供たち
重要だと思います。
に嗅がせると、
「青りんごだね、美味しそうだ
実際にイタリアの強さというのは、できる
ね」と言う子もいたけれど、
「トイレの芳香剤
だけ色々な食べ物、着る物を親類の家から買
と同じだ」という反応をした子がたくさんい
うのです。一家が栄えることを考え商売をし
て、それで危機感を持ったそうです。これは
ているので、それほどの金持ちではないが、
日本でも同じです。何でもテレビやネットで
お金が回っています。そうした血族意識が強
見た気になって、本物を知らない。例えば森
いようです。ヨーロッパの人は、ほかのまち
はこういうものだと頭で分かっていても、森
づくりなどでも、地元の商店街を愛する気持
に行ったことがない子、農場に行ったことが
ちが強いです。その点で北海道が心配なのは、
ない子が増えていることは、大変だと思いま
道北のあるまちに行くと、商店街はシャッ
す。そういうところから、スローフード運動
ター通りになっていて、皆さんどこで買い物
が始まっています。
をしているのか聞くと、通信販売か旭川の郊
食べ物に関しても、チーズやパルマのハム
外店で買い物をしています。地元の人が地元
などいいものはたくさん残っていますが、消
の店で買い物をするという気持ちを持ってい
えてしまった食品もたくさんあり、例えばパ
るかどうかが、ソーシャルキャピタルの一つ
スタで使っているスパゲティも、ほとんどが
ではないかと思います。
オーストラリア産だったということで、イタ
沖縄も県民所得等では苦労していますが、
リアの人は愕然としました。やはり地元で小
沖縄の場合は自分たちで協同組合のかたちで
麦を育てなければと、運動が始まっているそ
作っているお店が離島などに結構あります。
うです。チーズもたくさんあるけれど、手間
小さなお店ですから、ビール等も正価で売っ
のかかるものや、なかなか売れないものは消
ています。近所にスーパーチェーンができる
えていっていました。イタリアの人たちは、
と、安いビールを売っています。ところが、
スローフード運動の中で作ってもらい、消費
ソーシャルキャピタルの強い地域のおばあ
者として買うことで保存していく運動が行わ
ちゃんは、安いビールに目もくれず、自分達
れています。ちょうど今、スローフードの世
の作ったお店で買い物をしています。これは
界のお祭りで、テラマッドレーというものが
やはりソーシャルキャピタルの原点ではない
イタリアで行われています。スローフードの
かと思います。その意味で、十勝の方たちは
メンバーも 3 人行っていますが、これはイタ
是非地元のお店にお金が回るようにしてほし
リアだけでなく、世界中で危機感が高まって
い。レストランやホテルなど全国チェーンが
いるようです。先日、タイの方にお会いしま
入ってきていますが、値段だけだとつい安い
した。タイはとても暑い地域で、スパイシー
お店に行ってしまいがちですが、居酒屋を選
な料理があります。暑さの中で元気に生きて
ぶ時でも地元のお店に行く。そういう気持ち
いく仕組みとして、長い間の知恵が詰まった
はとても重要だと思います。
− 62 −
地酒の話をしますと、北海道の地酒メー
ものを買う。すると地域でお金が回るので、
カーは昔は 100 社ほどあったものが、今は 14
地域循環経済が成立し、地方都市にとっては
社しかありません。日本酒自体が飲まれなく
非常に大きなことです。私が色々な文献を拝
なっていますが、北海道で飲まれている日本
見する中で、お金を地域だけで回していると、
酒のうち、およそ 8 割は道外の酒造メーカー
内向きの論理になるというのは当たらず、例
のものです。理由は、やはりコマーシャルに
えばイタリアの小さなまちは絹織物や靴など
負けているところもあるし、本州資本のスー
が特長となりますが、身内、身近でものを買っ
パーやコンビニは、ほとんど本州大手のお酒
てもらっていると、明日の金には困らないと
を置いていて、北海道のお酒は置いていない
いったあるベースができます。余裕ができる
ことが多い。私は特に男性の皆さんの前で講
と、今までの技術に、少し新しいデザインを
演するときは、地産地消は地元のお酒を飲む
加えようということになります。明日のお金
ことです、地元のお酒を置いている居酒屋を
に困るとそこまでいかないが、回りに買って
探したり、酒屋で地元のお酒も置いてくださ
もらうのでベースの金は稼げるわけです。そ
いという、一声運動も大切ですと話していま
れにプラスアルファができると、その技術を
す。
転化して世界のブランド品として売れるよう
になります。5 人や 10 人の工場で作っている
太田(聞き手)
靴が、世界のブランド品になるというのは、
ソーシャルキャピタルのお話をして頂き、
ベースは周りが買い支えている。これが地域
それに尽きるのですが、我々の世界ではずい
循環だと思います。中で回っているだけだと
分行き交っている言葉で、これを機会に是非
内向き論理ですが、ベースは自分たちで賄い、
ご理解頂きたいと思います。ソーシャルキャ
余力が出れば世界に売りに出ろ、これがイタ
ピタルですから、社会的な資本という直訳に
リアのソーシャルキャピタルのすごさだと思
なりますが、これは人間関係です。色々な日
います。
本語の注釈があって、三つほど挙げると、基
高野さんにお聞きしたいのですが、人づく
本的には人と人との関係です。よく言われる
りということで、千年の森を仕掛けたとか、
のは、我々世代まではかろうじてあった、団
社員の方が一緒になって会社の社屋を造られ
塊世代よりちょっと上の方はその世界で生き
たそうですが、十勝・帯広の企業の方が社会
ていたと思います。お互い様という世界が、
的責任を感じて行動しているわけです。地域
ソーシャルキャピタルの本質ではないかとい
に儲けさせてもらったので、企業として地域
う定義をした人がいます。ところが今はそれ
の責任を果たしていきたい。これも我々の間
が全く希薄になっている。これは我々の責任
では、ここ 2・3 年嫌というほど聞く言葉です
でもあるのですが、お互い様と言える社会、
が、CSR というのがあります。企業の社会的
人間関係に戻すと、相当なものが解決される
責任ということで、地域に社会的責任を果た
はずです。別な言い方をすると、信頼関係の
していくべきだ。その責任を果たせなかった
システムという言い方をされています。要す
ら、地域の中では埋没して、生きていけない
るに、これだという定義はないが、頭のどこ
ということを問われる時代が来ているという
かにある人と人との関係のことだと思います。 認識が必要です。日々の経営は大変でしょう
今日のテーマに関係して、人づくりの分野
が、企業の社会的責任を果たせないところは、
に入ったことになります。注釈しますと、林
消費者や地域が見放すだろうと言われていま
さんからあったように、親戚や身近な人から
す。経営者の方はそれどころではないという
− 63 −
のは重々分かるのですが、辛くてもそうした
でこそ一般的に認知されていますが、今から
意識を持って頂くことが分かれ目になると思
30 年以上前は、ワークショップのワの字もな
います。千年の森や社屋を造られる中で、人
い。なかなか理解が得られないので、最後に
がどのようにつくられていくか。
は行政の方と喧嘩別れになって、3 軒くらいク
もう一つは、ワークショップは最近形骸化
ビになったところ、逆にかなり有名になりま
している傾向があり、仕掛けた人のアリバイ
した。捨てる神あれば拾う神ありで、住宅公
作りではないか、やった振りをしているので
団の山本さんという方が幸福ニュータウンで
はないかと思われる節もあります。本物の
一緒にやろうと話をしてくれ、そのプロジェ
ワークショップとはどんなものか、それも含
クトが本格的にワークショップのプロセスを
めて、人を地域に育てていくという観点で何
踏んでできた、日本で最初の公園ではないか
かお考えがありますか。
と思います。
それをしながら感じたのは、ワークショッ
高野(語り手)
プは情報集約型では駄目だと思います。子供
私がワークショップに興味を持ち始めたの
がおもちゃをねだるように、あれもほしい、
は、アメリカに留学しているとき、セントル
これもほしいというのをまとめるワーク
イスで学会があって、ある造園家がピープル
ショップでは駄目で、自発的活動誘発型でな
ズパークという映画を見せてくれました。
ければならない。やりたいことがあるから、
バークレー大学のランドスケープの学生たち
自分達がこうするというものです。もう一つ
が、地域の人と一緒にキャンパスの中の駐車
は、本当にある程度形骸化してしまい、2・3
場の舗装を剥がし、木を植えて公園を造って
回やってまとめて物ができていくというので
いく。ところがある時期になると、キャンパ
はなく、参加する人が勉強することから始め
スポリスが乱入してきて、植えた木を全部抜
ることが大事です。調査も一緒に行い、いき
いてしまう。住民と学生がまた取り戻して植
なり議論を始めない。私達が頑張ってやろう
え直す。今度は軍が出てきて、そのうち死人
としているのは、できるだけ体を動かしての
が出て、大きなムーブメントになっていきま
体験を初期の段階に加えます。森に入ったら
す。私にとってはすごいショックでした。そ
皆で草を刈るとか、いらない木を運び出すな
れまでは、ひたすら格好のいいデザインは何
ど、まず体で環境を感じ、同あるべきか考え
だろう、感動的な空間はどうやったらデザイ
られるようになる。そういうプロセスを経な
ンできるのか、そんなことをやっていたので
がらやっていかないと、形骸化されていって
す。皆が造った公園は、そんなに格好のいい
しまう。
ものではありません。ただ、デザインは誰の
先程も触れましたが、北海道へ移ってきて
ため、何のためにやるんだろう。それで命を
地元でワークショップをやり、明日現場で会
落とす人がいるほど、大変なことなのか、と
いましょうとなったとき、行ったら重機が
いうスタートラインに立たされたことは非常
待っていたというのは、私にとってはすごく
に大きかったと思います。
ショッキングな嬉しい出来事でした。今まで
日本に帰ってきてから、できるだけ市民の
は、あれも作ってほしい、これも作ってほし
声を聞きながら公園のデザインをしたいと思
いという話しか聞こえてこなかった。十勝は、
いました。最初の頃は、動き出したばかりな
まだそういう世代の人が生きているところだ
ので小さな児童公園の仕事しかなく、それで
という感じがします。
一生懸命ワークショップを仕掛けました。今
− 64 −
太田(聞き手)
・それに関して、そこで育てられた野菜には
非常に難しい部分がありますが、自発的と
目に見えない波動があって、そこに住んで
いうことを聞きました。ここに集まったから
いる人に一番合っているから健康が維持さ
には、地域を変えるため必ず役に立つ動きを
れているという気がします。目に見えない
して頂ければ有難いと思います。これだけの
けれど、長寿の人とはそういう関係がある
お二人から話を聞くことができましたので、
ように感じます。詳しく調べることができ
是非参考にして、明日の地域、まちづくりは
たら、お願いしたいと思います。有難うご
私が何とかすると意を新たにしてお帰り頂き
ざいました。
たいと思っています。
残りの時間は、会場の方から、このポイン
林(語り手)
トについてもう少し聞きたいとか、こういう
地産地消という言葉が生まれる背景として、
展開があるのだろうかという筋書きでご発言
身土不二という言葉があって、自分の体と地
頂きたいと思います。
面があって、その近くで採れたものを食べる
ことが何よりの健康法だという考えもありま
・林先生にお伺いします。地産地消の点で、
私は寿命にも関係している気がしてなりま
す。今後は医学的に調査する必要かと思いま
す。
せん。お考えを聞かせて頂ければ幸いです。
太田(聞き手)
林(語り手)
身土不二、体と土地・風土は不可分なもの
健康にプラスだという意味ですね。地産地
であるという意味です。物の本では身土不二
消がなぜいいかというと、例えば野菜ではま
の背景は、三里四方だと言います。車ではな
さにおっしゃる通り、ミネラル分が損なわれ
い世界のときに、歩きの行動範囲は三里四方
ない状態で食べることができるので、健康を
12 キロで、
昔の人は足が達者で歩き回った。自
守るために地産地消を進めている地域もたく
分が日々歩き回っているところ気候や風土と
さんあります。健康で長生きするため、地産
いうもののことです。そこで育ったものを食
地消は本当にその通りだと思います。今日は
べている限りは、必ず寿命に影響する。身土
環境の話を中心にしましたが、健康にも役立
不二という言葉は前々から聞いていたのです
つのが地産地消であると思います。これから
が、三里四方であったという話を聞いて合点
そういうデータをもっととっていかなければ
がいきました。
ならないと思います。北海道は医療費がとて
も多い地域で、予防医学で頑張っている長野
林(語り手)
県佐久市は、市長を中心に保健所等が、地元
昔はみんな自然に地産地消で、身土不二
の野菜をたっぷり食べましょうと力を入れて
だったんです。輸送が盛んになり、流通が発
いて、とても医療費が少ないのです。十勝管
達したことで、CO2 をたくさん撒き散らしな
内では、更別村にとても熱心な保健師さんが
がら、生活が変わってしまったけれど、やは
いるそうで、全道で一番保険の使用料が少な
りここで立ち止まって暮らしや寿命を考えた
いそうです。スポーツ等様々な要因があるで
地産地消の推進が必要であると思います。
しょうが、新鮮な野菜を食べているというこ
ともあると思います。
・先程、地酒のお話がありました。私なりに
ひらめいたのですが、地域づくり・まちづ
− 65 −
くり・人づくりを PR するのに絶好なところ
な気がしてなりません。ここへ来たから帯広
に、地域で頑張っている FM 局があります。 や十勝のことを褒めているわけではなく、褒
これらを介して対応すれば、地域の人に投
められる場所とそうでない場所があります。
げかけるものがあるかと思いました。
北海道民なのでよそ者ではないですが、十勝
が何とかしてくれなかったら、北海道が沈没
林(語り手)
すると思うくらいポテンシャルがあると思い
地域 FM は本当に地域づくりに貢献してい
ます。今やっていることや蓄積しているもの
ます。石狩市は、地域 FM 局だけでなく、ケー
を、FM 等も含めてもう少しうまくアピールさ
ブルテレビ局も立ち上げています。社員が元
れてはどうですか。うまく物語を組めば相当
高校の先生と元主婦の 2 人しかいないのです
注目を集め、外から大きなエネルギーが起き
が、地元の話題を色々集めて放送しています。 るという気がしてなりません。一歩踏み出し
地域 FM の方たちは地域の話題を集めて情報
て、一言声高に発言して頂きたいと思います。
発信し、自ら活動している方も多いです。先
程のワークショップの話の中で、北海道の人
・高野さんが東京から十勝に来られ、大きな
は勉強も好きだし、フォーラムも好きです。
影響を与えられたことに対し、非常に敬意
いっぱい行くけれど、行動力に弱いところが
を抱きます。川の水を利用しているのはダ
あるような気がします。その中では、帯広や
ムくらいで、もっと人間の生活に有効な使
十勝の人はすごい行動力だと思います。私が
い方があるのではないかと思います。高野
ドクター論文の中で「北の屋台」についても
さんの素晴らしい発想で考えて頂けたら幸
研究しました。そこで一番すごいと思ったの
いだと思います。よろしくお願いします。
は、普通地域づくりをするとき、お金がない
から国や道に予算をつけてもらおうと発想す
高野(語り手)
る場合が多いのですが、北の屋台が最初に
エコロジーパークの場所は、十勝川と森の
やったのが、40 人のメンバーが 1 人 1 万円ず
緑の交点になると思います。川沿いに、川を
つ出して 40 万というお金を作り、それででき
軸にして生物的多様性を持った環境が延びて
ることは何かというところから始めたそうで、 いけばいいと考えているところです。エコロ
それを聞いて本当に感動しました。自分達の
ジーパークはそのスタートになる場所という
できることからやっていくことは、重機を
のが起点にありました。十勝の川の持ってい
持って現場に現れた人の話にも通じる素晴ら
た骨組みは素晴らしいものがあって、堤防に
しさです。私は何回か、十勝の人の気質をエッ
押し込んでしまっていた部分が何とかならな
セーにしたことがありますが、開拓時代から
いか。一方では、先程の図面でも見ましたが、
脈々とつながる精神、十勝魂のようなものが
短期間で森が失われたので、あっという間に
行動力につながっていると思いました。
洪水が増えました。それで暴れる川を治めな
ければならないという背景があったと思いま
太田(聞き手)
す。上流がもう少し安定してきた段階で、色々
FM に何らかのかたちで関わって頂き、頑
な展開があると考えています。森は海の恋人
張ってもらいたいと思います。林さんも言わ
という話があり、森の様々なバクテリアや微
れましたが、誤解を怖れずに言うと、北海道
生物が、川を媒介にして海に行き、魚の栄養
の方は特にそうかもしれませんが、発信の仕
になることを考えるとき、私たちは森のプロ
方、うまく話を外に向けることが苦手なよう
ジェクトと川のプロジェクト、両方できたこ
− 66 −
今日はワークショップの話がありました。
とは本当にラッキーだったと思います。
私は議会の立場にありますが、議論すること
太田(語り手)
は大事なので、行政の中でのワークショップ
十勝の川の生態系のあり方は、アイヌ民族
は案外していないと思いました。外に向かっ
の方々の独壇場です。そのあたりを是非ライ
ては皆さん一緒に議論しましょうと言ってい
フワークにして頂きたいと思います。
る割には、内部では、例えば部と部の間のや
り取りをしていないことがずい分あると反省
編田
し、今日この玄関を出たら、明日からその部
昨日から十勝は褒められっ放しで、地元に
分を一生懸命やろうと改めて思いました。本
住んでいると本当にそうだろうかと思うとこ
日のお礼と、自分の決意を話させて頂きまし
ろもあります。林さんはよく十勝に来られ、
た。
フードの関係も含めて人間関係についても取
材され、十勝を PR して頂き本当に感謝してい
太田(聞き手)
ます。
有難うございました。ドアを出たら、即刻
高野さんは、私が市役所在職中に、JAICA
行動を開始するということでしたので、引き
センターを造りました。その隣に森の交流セ
続き頑張って頂きたいと思います。
ンターがあり、中に花がたくさん咲いている
最後に、私から御礼と所感を述べさせて頂
と思います。その設計をして頂いたのが松尾
きます。昨日ご参会の方はご記憶頂いている
設計で、中を実際にやって頂いたのは高野さ
と思います。今日も冒頭に、日本を取り巻く
んのグループでした。全道で一番お金をかけ
環境政策等の話をしました。1992 年にブラジ
ないで、あれだけの花を一年中咲かせている
ルのリオデジャネイロでリオサミットが開か
のはあの施設だと思います。普通、維持する
れ、アジェンダ 21 とローカルアジェンダ 21
のにとてもお金がかかるのですが、維持・管
を決めました。要するに、これからの地球規
理の部分もアイディアを出して頂きました。
模での環境問題、これは先程から述べている
その時、一つの設計をする際にすぐに色々な
ように、環境と経済、社会を両立させ解決し
アイディアが出てきて、行政にいるとなかな
ていくということで、環境だけではないので
かその変化についていけません。1 週間前に言
すが、環境・経済・社会の両立を実現する世
われた設計と、次に受けた設計の内容が違う
界をつくろうということで、アジェンダ 21 を
んです。そうすると行政は、1 回受けたもの
決めました。各国は今の思想に則り、頑張っ
を予算の関係もあって簡単に直せない部分が
て色々な計画を作ってください。その一方、
ありました。将来を見据えた建物を造るとき
ローカルアジェンダ 21 は、帯広市、札幌市、
は、少しくらいの変化には対応しなければな
そういう地方政府でも地域独自の行動計画を
らないと言われました。行政はなかなかすぐ
作ってくださいというものです。
動かない部分があるので、そんな融通の利か
ちょうどその 10 年後、プラス 10 リオと言
ない職場にいるのなら、いつか辞めろとメン
われていますが、南アフリカのヨハネスブル
バーの方に言われ、市役所を辞めて今の立場
クで、ローカルアクション 21 が提議され、全
になりました。そうしたことを思い出し、もっ
世界で採択されました。ローカルアジェンダ
と色々な方からアドバイスを頂きながら、十
21 を出したが、10 年経ってもどこからも行動
勝の可能性を引き出していきたいという思い
計画が出ていない。ローカルアジェンダ 21 を
を新たにしました。
さらに進め、ローカルアクション 21 において、
− 67 −
即刻各地方政府、地域は行動計画を 1 日も早
誰も相手にしませんし、実のあるものになり
く作ろうという提議がなされました。今回、
ません。今日の話は奇しくもその展開になっ
帯広が環境モデル都市に制定されたことをよ
たと自画自賛しております。是非、その行動
い機会として、例えばローカルアクション 21
に対して皆さんにご参加頂き、血気の烽火を
北海道会議を、この帯広から世界に向けて発
上げて頂けるものと確信し、今日のセミナー
信しませんか。大事なことは言うまでもない
を終了させて頂きます。
のですが、世界的スケールでものを見たり考
長時間にわたりご参加頂き、学会を代表し
えたりするが、行動は足元からです。視点は
て厚く御礼申し上げます。どうも有難うござ
世界に向くが、行動は足元から進めなければ
いました。
− 68 −
北海道都市問題会議開催経過
開
催
市
第 1 回
滝
川
市 広域行政の現状と問題 行政と住民参加
昭和 49 年 9 月 30 日・10 月 1 日
第 2 回
北
見
市 魅力ある都市づくり
昭和 50 年 10 月 7 日・ 8 日
第 3 回
札
幌
市 転換期に立つ都市行政の課題
昭和 51 年 11 月 5 日・ 6 日
第 4 回
根
室
市 地域政策と新しい都市像
昭和 52 年 11 月 11 日・12 日
第 5 回
芦
別
市 都市経営における生活環境の整備
昭和 53 年 11 月 10 日・11 日
第 6 回
旭
川
市 地方都市の冬季政策
昭和 54 年 11 月 16 日・17 日
第 7 回
札
幌
市 うるおいのある都市環境の整備
昭和 56 年 11 月 11 日
第 8 回
帯
広
市 活力ある都市の創造
昭和 57 年 11 月 5 日・ 6 日
第 9 回
室
蘭
市 都市の活性化と産業振興
昭和 58 年 11 月 1 日・ 2 日
第 10 回
北
見
市 都市開発における今日的課題と展望
昭和 59 年 10 月 25 日・26 日
第 11 回
登
別
市 特色ある地方都市の建設
昭和 60 年 11 月 21 日・22 日
第 12 回
滝
川
市 民間活力の導入とまちづくり
昭和 61 年 10 月 24 日・25 日
第 13 回
旭
川
市 都市と情報化社会
昭和 62 年 11 月 6 日・ 7 日
第 14 回
函
館
市 交流ネットワーク時代の都市づくり
昭和 63 年 8 月 31 日・ 9 月 1 日
第 15 回
美
唄
市 手づくりのまちづくり
平成元年 11 月 21 日・22 日
第 16 回
紋
別
市 魅力ある地方都市を求めて
−真の創造は地方でこそ−
平成 3 年 11 月 21 日
第 17 回
砂
川
市 地方都市とアメニティ
平成 4 年 10 月 2 日・3 日
第 18 回
留
萌
市 交流時代のまちづくり−未来へのシナリオ−
平成 5 年 10 月 1 日・2 日
第 19 回
江
別
市 パブリックデザイン
−地域の顔・まちの顔を考える−
平成 6 年 10 月 31 日・11 月 1 日
第 20 回
釧
路
市 次世紀まちづくりへの戦略
平成 7 年 10 月 23 日・24 日
第 21 回
伊
達
市 個性のある地域福祉社会をめざして
平成 8 年 10 月 24 日・25 日
第 22 回
富 良 野 市 環境を育てる
∼リサイクルとまちづくり∼
第 23 回
稚
内
テ
ー
市 みんなで創るまちづくり
人づくり、しくみづくりを考える
− 69 −
マ
開
催
日
平成 9 年 10 月 30 日
平成 10 年 10 月 27 日・28 日
開
催
市
テ
ー
第 24 回
芦
別
市 人間尺のまちづくり∼安定型社会に向けたま
ちの再生手法を考える∼
第 25 回
苫 小 牧 市 「新しい世紀のまちづくり」
−市民と行政の協働
平成 12 年 10 月 19 日・20 日
第 26 回
網
走
市 「新しい世紀のまちづくり」
−市民と行政の「協創」
平成 13 年 10 月 16 日・17 日
第 27 回
小
樽
市 まちづくりのルネッサンス
∼交流と文化、そして豊かさ∼
平成 14 年 10 月 24 日・25 日
第 28 回
函
館
市 都市は蘇るか∼地方都市の再生と未来∼
平成 15 年 10 月 23 日・24 日
第 29 回
深
川
市 農業を軸とした新しい都市の創成
∼新農業都市の提案
平成 17 年 10 月 6 日・7 日
第 30 回
札
幌
市 経済的な自立とパタ−ナリズム
∼行政との協働と地域間交流∼
平成 17 年 10 月 17 日
第 31 回
岩 見 沢 市 地域主権時代における市民主体のまちづくり
− 70 −
マ
開
催
日
平成 11 年 10 月 28 日・29 日
平成 19 年 10 月 25 日・26 日
編集・発行
第32回北海道都市問題会議実行委員会
北
海
道
市
長
会
〒 060-0004
札幌市中央区北 4 条西 6 丁目
TEL 011-241-2803・FAX 011-241-2805
印
刷
株式会社 武田プリント
〒 063-0036
札幌市西区西野 6 条 7 丁目
TEL 011-666-1118・FAX 011-666-1180
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