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はじめに - 埼玉大学経済学部

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はじめに - 埼玉大学経済学部
はじめに
埼玉大学経済学部演習は、伝統的に卒業論文作成を目標に組織されています
(正式には演習論文と呼んでいますが、この栞でいう卒業論文の意味です)。
しおり
この 栞 は、卒業論文作成にあたっての考え方、心構え、作成方法の基本を記
したものです。実際に卒業論文を作成する際に、必ず参照すべき事柄が多く
ふくまれていますので、大切に保存してください。
写真は、エディンバラ市の老舗百貨店「ジェナーズ(Jenners)」の外観〔左〕
とクリスマス後のバーゲン〔右〕
第1部
論文とはなにか
1.文章の種類
(1)答案・レポート
・・自分が勉強した内容・成果を教師に見せるための文章。
(2)随筆・エッセイ
・・筆の赴くままに書く文章。
(3)評論文
・・ある問題について、反対であるか、賛成であるか、ある
いはそのどちらでもないのか、をはっきり示すための文
章。(総合雑誌などに掲載される文章。ただし、優れた評
論文は、かぎりなく論文に近い。)
(4)論文
・・結論だけでなく、結論に到達するプロセスをもはっきり
と示した文章。
卒業論文の作成に際しては、
【1】自分の見解をはっきり示すこと、
【2】それを読者に理詰めで説得するために、結論に到達するプロ
セスをはっきりと提示すること、
を心がけてください。
2.論文作成の注意
(1)
一冊の本や、一篇ないし数篇の論文を要約しただけのものは、論文とはいえませ
ん。(それはレポートです。)
(2) 他人の説を無批判に繰り返しただけのものは、論文とはいえません。(それは盗作・
ひょうせつ
剽 窃 です。他人の知的所有権に鈍感な人には論文は書けません。)
(3)
証拠立てられていない私見だけでは、論文とはいえません。
(それは評論文です。)
2
3.卒業論文作成のための一般的な手順
Step 1
「テーマ趣意文」の提出
卒業論文のテーマを選ぶ
(1)テーマ趣意文では、
① テーマ
② なぜそのテーマを選ぶのか
③ そのテーマの基本文献
④ 現時点で予想される論文の章立て
を示して下さい。
(2)春学期の最初(4月の学期はじめ)のゼミで、テーマ趣意文に基づ
く討論会・指導を行ないますので、必ず出席して下さい。
Step 2
文献リストの作成
テーマに関する基本文献に加えて、文献リスト(参考文献リスト、資料リス
ト作成する
(1) どんな文献や資料があるのかについて自分で調べることが、卒業論
文作成の第一歩です。
(2) 文献リストは
①
基本文献の脚注を調べること
②
図書館等で調べること
③
インターネットやデータベースを調べること
などによって作成します。また、わからない場合は、ゼミだけでな
く、関連する科目の担当教官に積極的に質問してみてください。
Step 3
卒論の調査・研究
(1)基本文献、参考文献、資料を調査し、(必要に応じてノートなどを取りな
がら)読みこなす。
(2)問題の焦点を絞り、章別編成の再検討を行なう。
) 資料を読みこなせば読みこなすほど、当初立てたテーマが大き
すぎたり、章別編成が大雑把過ぎたりして、これらを変更する
必要が生じることは少なくありません。章別編成は自由に変更
してかまいません。
) テーマの変更は、中間報告前であれば可能ですが、指導教員に
ご一報下さい。
(3) 書けそうな部分から、下書きや図表などを作成してみる。
3
Step 4
卒業論文の中間報告(必須)
ゼミまたは指導教官の前で、卒業論文の中間報告を行ない、指導を受ける。
) 中間報告の日程を決めるために、秋学期の最初のゼミ(10月
第1週)には必ず出席して下さい。
Step 5
卒論の執筆・仕上げ
中間報告の指導に基づき、構想の再検討、資料の補足的な調査などを行なう
) 中間報告会以後のテーマ変更は、原則として認められません。
どうしてもテーマを変更する場合は、そのテーマについての中
間報告会があらためて必要となります。
) 12月後半から1月前半にかけて「新たな資料を調査する」と
いうのは、通常、きわめて大きな困難が伴います(図書館等の
年末年始休み。企業の調査は年末年始は忙しくて応じてくれな
い、など)。基本的な資料の調査は、11 月中には終了しておくよ
うにして下さい。
Step 6
卒論の提出と評価
卒論本文、卒業論文要旨などを期限
までに提出する
(1) 学務係で必ず受領印を押し
てもらってから提出するこ
と。提出のためのゼミの集合
日は別途定めます。
(2)
「卒業論文」本文は2部するこ
と。1部は学部で作成する『演
習論文集』に綴じられ、保管
されます。
(3)
「卒業論文要旨」も全員提出す
ること。これは、学部発行の
『埼玉大学演習論文要旨集』
に収録され、翌年度の新入生に配布されます。
(3)「要旨」は、①ハード・コピー、②電子ファイル〔ワード〕双方で提
出して下さい。ファイルの提出はメール添付でも受け付けます。「要
旨」については、書式・内容等を点検し、不具合がある場合は、後
4
日、電子メールで訂正・再提出を依頼します。
(4)卒業論文は評価・コメントを付して返却します。このため、切手を
添付した返却用の返信用封筒をあわせて提出してください。なお、
返却は3月初旬になる予定ですので、アパート等を引き払う予定が
ある場合は、実家の住所をお書き下さい。
4.先学の業績を参照することの大切さ
(1) 論文においては、自分の見解を明確に示さなければならないとはいえ、1から10
まで、すべてを自分だけの見解で押し通すということはできません。なかには「こ
のことを考えたのは自分しかいない」という信念を吐露する人もいますが、これら
は、多くの場合、たんなる思い上がりであるか、あるいは自分の不勉強さを自ら暴
露しているだけのことにすぎません。むしろ、自分ひとりだけで考えていると、同
じ所を堂々巡りしていて、議論がさっぱり進展しないということが多いものです。
(2) 単に卒業論文のテーマを選んだだけでは、プレイする「場所」を選んでいるだけに
すぎず、そこで「どういうプレイをするのか」はまだ考えられていない、というこ
とが少なくありません。先学の業績を学ぶことによってはじめて、どうプレイして
いいのかがわかってくることが少なくありません。
(3) したがって、多くの場合、選んだテーマについての先学の業績を学ぶことから、論
文の本格的な準備が始まります。むしろ、先学の業績を学んでいくなかで、具体的
な疑問や論点が見つかることが多いものです。先学の見解と自分がどれだけ切り結
んでいけるのかが、自分の力の見せ所です。
) なお、「第2部 論文における注について」を参照してください。
5.卒業論文の組み立て方(章別編成)
(1) 論文構成は、序論、本論、結論を区別してください。
(2) 全体は何章で構成されてもかまいませんが、基本的に次の性格付けは頭に入れてお
いて下さい。
①
序論(家の見取り図) ・・論文の目的、問題の所在、問題意識を示す。
②
本論(家の柱)
・・論証、実証。通常いくつかの章に分かれます。
③
結論(家の仕上げ)
・・つまりどうであるのか、自分の見解を示す。また、
残された課題を示すことができるのは、よい論文
であると考えられます。
5
(3) 問題の設定の仕方は、論文の良し悪しに大きな影響を与えます。問題の設定が明確
でないと、結論の出ない論文になりかねません。はっきりと絞り込まれた内容をも
つ「問題の設定」ができるように心がけて下さい。なお、問題の設定自体に大きな
意味がある場合(たとえばこれまで問題にされてこなかったけれども、実はこうい
う問題が存在するのだ、という斬新な問題提起を行なう場合)などは、序論に当た
る「問題の所在」が、論文で大きな比重を占める場合もあります。
(4) 論証の仕方によっては、本論のなかで、すでに結論が示されていることもあります。
その場合、結論部分はこれまでの要約や今後の課題の提示となります。
6.卒業論文作成のための一般的な心構え
(1) 卒業論文作成は、学部学生にとって、相手を理性的に説得するための文章を作成す
る初めての機会です。相手を理性的に説得するための文章の作成は、卒業後も、企
業やさまざまな組織において、しばしば必要とされることになると思います。卒業
論文は、その初めての訓練の場であると考えて下さい。
(2) 卒業論文では、専門の研究者と同じような水準が求められるわけではありませんが、
作成している文章は、あくまでも論文であり、相手を理性的に説得するための文章
であることを意識して作成して下さい。
(3) 卒業論文作成の心構えとしては、他人の文章・業績を引き写して体裁をつくろうよ
りも、未完成であっても、自分で考え、自分で調べたものが望ましいといえます。
不完全であっても、自分のオリジナリティを出すための努力を大切にして下さい。
) 完成された偽物よりは、未完の本物を!
6
第2部
論文における注について
1.なぜ注が必要なのか?
(1) 他人のオリジナリティを尊重する
ひょうせつ
先学や他人の業績を無断で使用することを「剽 窃 」と言います。他人のオリジナリ
ティ・知的所有権を尊重することは、論文作成上の最低限度のルールです。
(2) 論証の証拠能力を確保する
読者が、論部作成者の見解や論証に興味をもったり、疑問を抱いたりした場合、そ
の文献や資料を明示しておくことによって、読者自らが、その文献や、資料・史料
(これを一括して資史料といいます)を再調査・再検討し、論文作成者の見解・論
証が正しいのかどうかを再検討することができるようになります。
2.注の種類
(1) 引用注と説明注
①
引用注
他人の文章を直接的に、あるいは要約して使用する場合や、さまざまな資史
料を使って図表などを作成する場合、こうした文献・資史料の出所を明示し
ます。
②
説明注
本文の流れからは枝葉のことではあるが、どうしても論じておきたい内容が
ある場合、注に落として説明を加えます。
(2) 脚注と文末注
①
脚注
文章のなかの注の番号と同一のページの下方につける注を「脚注」(狭義)と
呼びます。手書きで原稿用紙に論文を書いている場合は、自分で脚注をつけ
ることは不可能ですが、近年、ワープロソフトの普及により、脚注を自ら簡
単につけることができるようになりました。
②
文末注
文章のなかの注の番号と同一のページではなく、ある章の終わり、あるいは、
論文全体の終わりに一括してつける注を「文末注」と呼びます。
) 「注に関する一般的な注意」を参照して下さい。
7
3.注が必要な場合とその方法
(1) 他人の文章をそのまま引用する場合(引用注)
他人の文章をそのまま用いる場合は、その文章をかならず「
」でくくり、番号を
付けます。
(ex) 「概念なき思惟は盲目であり、思惟なき概念は空虚である」(1)という言葉
は、・・・
(2) 他人の文章を要約して引用する場合(引用注)
他人の考えや文章を要約して引用する場合は、
「
」は付けませんが、引用注は必ず
付けて下さい(この場合、どこからどこまでが自分の文章で、どこまでが自分の考
えであるかを区別できるように、その人の名前を明記することをお勧めします)
。
(ex) 薄井氏によれば、これは、かくかくしかじかということであるが(1)、私見
ではそれは誤りなのであって、しかしかくかくというべきであろう。
(3) 図表などの出典(引用注)
参考として掲げる図表なども、かならず出典を明らかにして下さい。
(事例)
図4-1 アメリカにおける広告費支出(実質)の推移
広告費(百万ドル)
4,000
3595.0
3419.3
3,500
3262.0
3373.3
3126.0
2991.8
3,000
2917.5
3017.4
2994.2
2656.5
2696.0
2,500
2510.8
2338.1
2,000 1911.9
1873.4
2172.2
1900.9
1717.0
1975.7
2568.1
2354.0 2400.9
2422.4
2112.5
1646.5
1,500
1384.7
1118.1
1,000
500
1914
1916
1918
1920
1922
1924
1926
1928
1930
1932
1934
1936
1938
1940 年
出所:U. S. Department of Commerce, Historical Statistics of the United States: From Colonial Times to 1970, Washington D.C.:
Government Printing Office, 1975, pp.200 and 856 より作成。
注意:広告費を卸売物価指数(1926年=100)でデフレートした数値。
8
4.日本文献の引用注の書き方
(1)著作
①著者名
(編者の場合=編者名+「編」、翻訳の場合=原著者名+「著」、翻訳者名+訳」)
②書名(必ず『
』で囲む)
③出版社+「、」
④刊行年+「、」
⑤参照したページ数+「ページ。」
<事例>
(1) 薄井和夫『アメリカ・マーケティング史研究 ― マーケティング管理論の形成基盤 ― 』
大月書店、1999 年、203 ページ。
(2) R・バーテルズ著、山中豊国訳『マーケティング理論の発展』ミネルヴァ書房、1979
年、365~366 ページ。
(2)論文
①筆者名
②論文名(必ず「
」で囲む)
③雑誌名(必ず『
』で囲む)(発行機関名を付してもよい)
または、掲載されている書名(書名を書き、
『
』で囲む)
④巻・号(著作の場合は出版社名)+「、」
⑤発行年月日(著作の場合は刊行年+「所収」
)+「、」
⑥参照したページ数+「ページ。」
<事例>
(1) 薄井和夫「両大戦間期アメリカの流通構造とチャネル選択論の展開」『社会科学論集』
第 93 号、1988 年2月、24~26 ページ。
・・・埼玉大学『社会科学論集』第 93 号、などと記してもよい
(2) 薄井和夫「無店舗販売」糸園辰雄他編『転換期の流通経済1
小売業』大月書店、1899
年所収、99 ページ。
9
(3)前に引用した文献を再び引用する場合
(a)直前の著作
・・・同書
(b)直前の論文
・・・同稿(ないし同論文)
(c)離れている著作
・・・前掲書
(d)離れている論文
・・・前掲稿(ないし前掲論文)
<事例>
(1) 薄井和夫「両大戦間期アメリカの流通構造とチャネル選択論の展開」『社会科学論集』
第 93 号、1988 年2月、24~26 ページ。
(2) 同稿、36 ページ。
(3) R・バーテルズ、前掲書、3ページ。
【注意】 同一著者のものが複数あって紛らわしい場合は、たとえば、
薄井和夫『アメリカ・マーケティング史研究』
、3ページ
などとして、区別できるようにして下さい。
5.外国語文献の引用注の書き方
(1)著作
①著者名(編者の場合、編者名+「ed. or eds.」)+「, 」
②書名(必ずイタリック体で記す。不可能な場合アンダーラインを付ける)+「, 」
③出版地+「:」
④出版社名+「, 」
⑤刊行年+「, 」
⑥「p.(または pp.)」+ 参照したページ+「. 」
・・・③は省略されることもある。④は、わが国内の慣行では省略可能。
<事例>
(1) Frederick Jameson, Postmodernism: Or, the Cultural Logic of Late Capitalism, London and New
York: Verso, 1991, pp.7-8.
(2) Peter D. Bennett ed., Dictionary of Marketing Terms, 2nd ed., Chicago: American Marketing
Association, 1995, p.86.
10
(2)論文
①筆者名+「, 」
②書名(必ず “
” で囲む)+「, 」
③雑誌名(必ずイタリック体で記す。不可能な場合アンダーラインを付ける)、
または、掲載されている書名を記す
「in」+著作者名+「ed. or eds.」+「, 」+書名(イタリック体で記す。不可能な
場合アンダーライン)+「, 」
④Vol.+巻数 +「, 」+No.+号数+「, 」
または、掲載されている著作の出版地+「:」+出版社+「, 」
⑤刊行年月日+「, 」
⑥「p.(または pp.)」+ 参照したページ+「.」
・・・著作の場合、出版地は省略可。わが国内の慣行では、出版社も省略可。
<事例>
(1) Kazuo Usui, “The Interpretation of Arch Winslow Shaw’s Thought by Japanese Scholars”,
Journal of Macromarketing, Vol.20, No.2, December 2001, pp.128-129.
(2) Tetsuo Najita, “On Culture and Technology in Postmodern Japan”, in M. Miyoshi and H. D.
Harootunian, eds., Postmodernism and Japan, Durham and London: Duke University Press, 1989,
p.12.
(3)前に引用した文献の引用
(a)直前の著作・論文
「Ibid.」(イタリックまたは下線)+「, 」+「p. or pp.」+参照ページ+「.」
(b)離れている著作論文
著者名+「, 」+「op.cit.」
(イタリックまたは下線)+「, 」+「p. or pp.」+参照
ページ+「.」
<事例>
(1) Kazuo Usui, “The Interpretation of Arch Winslow Shaw’s Thought by Japanese Scholars”,
Journal of Macromarketing, Vol.20, No.2, December 2001, pp.128-129.
(2) Ibid., p.134.
(3) T. Najita, op.cit., pp.20-22.
11
6.注の付け方に関する補足説明
(1)注の付け方には、厳密にはさまざまなやり方がありますが、基本的な事項(たとえ
ば署名は『
』で囲むなど)は変わりありません。ここで紹介されているのは、わ
が国の社会科学系で最もポピュラーと思われる注の付け方です。
(2)外国語論文で一般的に採用され、わが国でも、近年、ポピュラーになりつつある注
の付け方に、たとえば、
Usui (2000, p.128) explains that many Japanese scholars have explored Shaw’s thought
などのように、本文で注を(
)で囲み、論文末に文献リストを「References」とし
て一括して表示するという方法がありますが、薄井ゼミでは、これまで原則として
採用していません(なおこの方法にも、細部にはさまざまな相違があります)。海外
での論文発表を前提とする場合はこの方式は有効ですので、希望者はご相談下さい。
7.注の付け方に関する一般的な注意
(1)引用注は必ず付け下さい。なお、必要に応じて説明注をつけてかまいません。これ
らの注の部分は、論文のページ数に数えます。
(2)注のない文章は、一般に学術論文とはみなされません。論文末尾に「参考文献一覧」
を付け、本文中に引用注を付さない卒業論文を見かけることがありますが、好まし
いものではありません。参考文献一覧を論文末尾につけること自体は差し支えあり
ませんが、その場合でも、本文中に引用注をかならず付けるようにして下さい。
(3)脚注と文末注は、どちらの方式を選択してもかまいませんが、注の番号は、最低で
も1つの章のなかは通し番号を付けて下さい。なお、
(a)ワープロによって脚注をつける場合も、注は番号にして下さい。
(b)ワープロによって脚注をつける場合は、ページごとに番号が1番から始まる
ような注の付け方は避け、最低でも1つの章内は通し番号にして下さい。
(4)外国語は、半角文字(2文字で日本語1文字)として下さい。これは本文でも同じ
です。
(5)図表などの場合も、出所を明示する注を
「出所(または資料)」+「:」+資料名+ページ数(+「から作成。
」)
などの形で必ず付けて下さい。なお、図表とその注もページ数に数えます。
(6)図表などを引用する場合、出来合いのものをコピーして貼り付けることは、原則と
して避け、手書きまたはワープロによって作成しなおして下さい。図表などは、自
分の論旨に必要な部分だけを引用して差し支えありません(むしろ望ましいといえ
12
ます)
。もとの図表に自分でなんらかの修正を加えた場合、引用注の末尾を「から作
成。」と書きます(そうでない場合は、「から作成」とは書かないで下さい)。なお、
図表が複雑にすぎて、自分で作成するとかえって正確さを損なうなどの場合は、そ
のつど判断しますので、ご相談下さい。
(7)孫引きは、原則として、避けるようにして下さい。自明のことと思われても、自分
の目で確認するという作業を厭わないようにして下さい。なお、どうしても原点の
参照が困難な事情がある場合は、ご相談下さい。
) 白ぼたんというといえども紅ほのか(高浜虚子)
8.卒論要旨集の文章
卒論要旨集の文章は、各自A4、1枚であるため、注は「主な参考文献」としてつけま
す。詳しくは、毎年、要旨集文章の手引きが発行されます〔添付の書式は 2006 年度のもの
です〕。
(1) 要旨の内容は、論文の課題を説明するだけにとどめず、明らかになった内容や結論
が記述されることが必要です。
(2) 「×××について明らかにする」、
「×××について論じる」などという表現だけの
ものが提出された場合は、書き直しを命じます。「何がどう〝明らかになった〟の
か」、「何をどう〝論じた〟のか」という、論文の中味を要約するようにしてくださ
い。
9.学部の優秀論文の顕彰制度について
2005 年度から、優秀演習論文の顕彰制度が制定され、
◎「最優秀論文賞(経済学会長賞)
」
1点
◎「優秀論文賞(経和会長賞)」
3点
が表彰されることになりました。候補作品は、ゼミ指導教員が各ゼミ1点にかぎり推薦し
ます。該当がある場合は積極的に推薦しますので、がんばってください。
〔選考基準〕
(a)問題意識の設定が明快であるか
(b)論証のための資料、データ、文献等の収集、および論理構成が演習論文として
秀でているか
(c)結論が明快であるか
13
第3部
1
テーマ選択のヒント
テーマの性格
論文のテーマは、実証的なテーマと理論的なテーマとに大別することができます。
(1)実証的なテーマの例(あくまでも参考例です)
①産業別マーケティング
*自動車産業のマーケティング
*アパレル産業のマーケティング
*コンビニエンス・ストアのマーケティング etc.
②4P の個別的分析
*耐久消費財におけるデザイン戦略の意義と限界
〔product〕
*メーカー希望小売価格の実態、価格破壊の過去・現在・未来〔Price〕
*流通系列化と独占禁止法、製販同盟の実態と展望
〔place〕
*わが国マーケティングにおけるセールスマンの役割〔promotion〕 etc.
③サービス化、情報化、国際化
*観光業マーケティングの日本的特長と問題点
*大学マーケティングの展望
*eビジネスとeマーケティング
*小売業の国際化に関する国際比較
etc.
④マーケティングのマクロ的諸問題
*地球環境問題とエコロジカル・マーケティングの展望
*大型店出店と大店立地法の運用実態
*わが国における生協運動の展望
*都市の景観と広告の社会的規制について
etc.
⑤マーケティング論の各種専門分野
*資生堂のブランド・マーケティングについて
*ソニーのデザイン・マーケティング戦略に関する一考察
14
⑥マーケティングの発展史と消費文化史
*明治期以降日本における近代的マーケティングの展開
*カルピスのマーケティング史
*日本的バレンタインデー文化の形成とマーケティング
*お受験文化の形成と塾マーケティングの展開
*日本的ピアノ文化とヤマハのマーケティング
*ブライダル・マーケティングの展開と「女の幸せ」
etc
⑦非営利マーケティング
*聖路加病院のマーケティングと顧客満足
*大学のマーケティング ── 埼玉大学を事例として
*米軍リクルート・マーケティング
*選挙キャンペーンはマーケティングか
(2)理論的なテーマの例(あくまでも参考例です)
①ポストモダン・マーケティング
*J・ボードリヤールの消費社会の神話をめぐって
*記号の消費論に関する一考察
*ポストモダン・マーケティングと消費文化の基礎概念の検討
②商業経済論とマーケティング
*森下パラダイム(商業資本論パラダイム)の再検討
③マーケティングとはなにか
*マーケティングの概念拡張論争の再検討
*わが国配給論とアメリカにおけるマーケティング論の関係について
④古典的マーケティング理論
*A・W・ショウのマーケティング理論の検討
*W・オルダーソンのマーケティング理論について
15
2
テーマの性格による勉強の進め方の違いと関連性
(1)実証的なテーマの場合、資史料さがしに時間をかける必要があります(足でかせぐ)。
資史料の多さが、それ自体、評価の対象になることも少なくありません。また、自ら
のインタビューや、アンケート調査、あるいは、新たな資史料の発掘など、オリジナ
リティのある資史料に対しては、高い評価が与えられます。
(2)理論的なテーマの場合、当該文献についてノートなどをとりながら、じっくりと読
みこなす必要があります。資史料の多さよりも、難解な文献・資料をどれだけ自分の
ものにしたかということが、まず、評価の対象となります。なお、学部学生の卒業論
文のレベルでは、理論的なオリジナリティを出すというのはほとんど不可能に近いこ
とですので、なによりも理論を根気よく自分のものとして理解する努力をして下さい。
(3)なお、実証的なテーマには理論はまったくいらない、ということはありません。事
実は、無限に多様に存在しており、そのなかから、ある事実を選択して注目するとい
うことは、それ自体、自分の特定の考え方や理論的裏づけがあるはずです。理論的な
スリルのある実証研究は、本来、実証研究として望ましい姿です。
(4)理論的なテーマの場合も、現実になんら関心を持たなくてもよいということはあり
ません。さまざまな現実を自分の頭に思い浮かべることなしに、理論を展開すること
は不可能です。理論的なテーマを選択する場合であっても、現実に対する鋭い感性は
必要不可欠であり、実証分析に対して絶えざる関心を抱いていく必要があります。
終わりに
卒業論文は、大学4年間の勉強の総決算です。ゼミ生全員が意味のある論文
を執筆してください。
苦労は多いと思いますが、卒業論文作成の過程を通じて、知的好奇心と知的
興奮とを体感することのできる本当の勉強の入り口に立ってもらえるならば、
これにまさる喜びはありません。
(2007 年1月記)
16
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