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札幌市冬のみちづくりプランについて (H21~H30までの札幌市雪対策
札幌市冬のみちづくりプランについて (H21~H30までの札幌市雪対策基本計画) 荻田 葉一*1 岩本 英規*1 1.はじめに 札幌市の雪対策に関する基本計画は、平成3年に策定した (社) 1406 1500 (千人) 1256 1238 「雪さっぽろ21計画」に始まった。その後、平成12年に「札 幌市雪対策基本計画」を策定し、これらに基づき雪対策を推 1000 26 20 20 18 10 15 0 H8 H11 H13 事業所数 「札幌市冬のみちづくりプラン(以下「プラン」とする)」 を策定した。 H16 H18 従業員数 H21 図-2 建設業の事業所・従事者数の推移(札幌市) また、平成22年度には、プランの適切な進行管理を行うた め、具体的な取り組み内容や目標数値、実施時期等を定めた 「アクションプログラム」を策定した。 4000 (台) 3398 3247 3000 H14 → H23 71% 3047 2925 2798 2705 本稿では、プランに基づき取り組んでいる、様々な施策に 2620 2533 2467 2420 2000 ついて紹介する。 1000 2.プラン策定の背景と目的 近年の経済社会情勢を受け、現在、本市の雪対策は大きく 0 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 4点の課題を抱えている。 1)除排雪作業の課題 運搬排雪量や運搬距離が増加することで、作業効率が低 図-3「札幌地区トラック協会」加盟のダンプ台数の推移 このように、札幌市の雪対策は多くの課題を抱えている。 下し、コストの増大を招いている。(図-1) 札幌市では、厳しい財政状況のなかでも、雪対策予算は確保 2)雪たい積場の課題 (図-4)してきたが、今後は、たとえ除雪や排雪などに必 年々、適地の確保が困難となってきている。 要な予算の確保が可能であったとしても、これらの課題を克 3)除排雪に携わる企業の課題 建設業者の倒産、従事者の高齢化による後継者不足など、 除排雪事業の担い手不足が懸念されている。(図-2) 運搬排雪に必要なダンプトラック台数が減少している。 また、除雪事業者が保有する機械の更新が進まず、老朽化 が進んでいる。(図-3) 性がある。 定的に継続するため、新たな計画が必要と判断しプランを策 定した。 (億円) 29% 64% 26% 服しなくては、雪対策事業そのものが立ち行かなくなる可能 このようなことから、札幌市では、雪対策事業を今後も安 4)ダンプトラック・除雪機械の課題 S60 30 0 らしを実現していくため、平成21年度に3つ目の計画となる S50 1085 25 500 そこで、今後も安定的に雪対策を推進し、ゆたかな冬の暮 1058 32 進してきたが、経済情勢や社会情勢が変化し様々な課題が顕 在化してきた。 1094 40 7% 58% 150 147 145 145 H18 H19 144 143 H20 H21 147 150 149 H22 H23 H24 120 21% 90 H6 9% H11 9% 56% 35% 60 54% 38% 30 H23 6% 55% 39% 0 0% 20% 40% 5㎞以内 5~10㎞ 60% 80% 100% 10㎞超 図-1 雪たい積場の都心部からの距離別箇所の割合 H17 道路除雪費 雪対策関係費 その他(施設整備費等) 図-4 雪対策予算の推移 *1 所属 札幌市建設局土木部雪対策室 3.プランの体系 プランの策定にあたり設置した「札幌市雪対策基本計画検 討委員会」<H19.10~H20.12 委員長 笠原 篤(北海道工業 大学教授)ほか 18 名>からの提言や、連合町内会・単位町内 会との意見交換などを踏まえ、持続可能な雪対策に向け、市 民・企業・行政がそれぞれ何をすべきか、何ができるのかを 考え、一緒になって様々な取り組みを推進していくため、以 下の3つをプランの基本方針として設定した。 <プランの基本方針> 1)市民・企業等との協働の推進 2)多様なソフト施策の導入 3)施策の選択と集中によるメリハリをつけた事業の展開 また、基本方針に基づき6つの目標を設定した。 <課題克服に向けた目標> 目標1:冬の市民生活ルールの確立 目標2:排雪量の抑制 2)目標2:排雪量の抑制 ・幹線道路における抑制 路側帯の幅員により、縁石から50cm~1m程度残して排雪 を行うことにより、排雪量の削減をはかる。(図-5) <実施後の各区意見> ①1回の作業におけるダンプ台数を減らすことができた ②春先の縁石や街路樹の補修箇所が少なくなった ③拡幅除雪の回数がふえた 目標3:除排雪体制の確保 ④排雪のライン出しの手間がかかる <これまでの取組を継承する目標> 目標4:メリハリをつけた冬期道路の管理 目標5:安全な冬期交通環境の確保 目標6:冬の文化の創造 次にこれら目標の具体的な内容について説明する。 ⑤春先の融雪水処理の手間が増えた など ・公園や雨水貯留池など、既存の公共用地を雪置き場として 利用を拡大する。 【幹線道路の排雪抑制延長】 H21当初 433km H23実績 564km H30目標 1192km 【公園を地域の雪置き場として使用】 4.目標と主な重点施策 ※【 合同パトロール 】はアクションプログラムにおける評価項目 H21当初 545箇所 H23実績 828箇所 H30目標 1000箇所 1)目標1:冬の市民生活ルールの確立 ・冬の市民生活ルール・マナーとして「守ること」 抑制する雪 「協力すること」「取り組むこと」を広く周知する。 ・道路への雪出しや路上駐車の防止を啓発する合同パトロー ルの実施を拡大する。 【路上駐車台数】 H21当初 16,600台 H23実績 11,500台 図-5 抑制断面 【パトロール実施町内会数】 H21当初 175町内会 H23実績 251町内会 排雪作業前 道路への雪出し 排雪作業後 作業に支障となる路上駐車 雪置き場として利用した公園の清掃 3)目標3:除排雪体制の確保 5)目標5:安全な冬期交通環境の確保 ・夏冬一体化発注により、年間を通じて業務を確保すること ・主要幹線や幹線は、朝ラッシュに加え、夕方ラッシュにも により、従事者の通年雇用を促進(H22より試行) ・マルチゾーン(除雪エリア)の統合や、除雪業務と雪たい 積場管理業務の一体化により、機械や人員等の運用効率化 を図る。(H22より試行) 対応した凍結防止剤の散布を実施 ・転倒防止の注意喚起や砂まき活動に対する啓発を強化する など、ハード施策からソフト施策への転換を推進 ・小学校などのグラウンドを雪置き場として活用 ・複数年契約により、除雪技術の伝承(オペレータの養成) や、民間による老朽化した機械の更新を促進(H25以降に 試行予定) 【夕方散布延長】 H23実績 142km H30目標 350km 【小学校グランド活用】 <道路維持除雪業務 受託者アンケート> H23実績 22箇所 H30目標 50箇所 実施時期 H24.4~5月 ・オペレータや作業員など人員の効率よい運用を図れたか? 図れた 52% 図れなかった 48% ・除雪機械の効率よい運用を図れたか? 図れた 63% 図れなかった 37% ・複数年契約について、賛成か反対か? 賛成 63% 反対 5% わからない 32% 凍結防止剤の散布 4)目標4:メリハリをつけた冬期道路の管理 ・バスレーンや狭小バス路線の幅員確保に向けた除排雪の強 化 ・渋滞対策箇所や事故危険箇所となっている交差点などの幅 員、見通し確保の強化 ・交通の安全が確保できる箇所はロードヒーティングの停止 歩道の砂まき状況 を推進 【バスレーン強化排雪延長】 H23実績 54km 6)目標6:冬の文化の創造 H30目標 75km 【狭小バス路線強化排雪延長】 H23実績 50km H30目標 162km 【ロードヒーティングの停止箇所】 H23実績 33箇所 H30目標 95箇所 ・テレビのデータ放送や携帯のワンセグで、除雪作業の状況 を毎日提供 ・ホームページで「たい積場情報」や、翌朝の雪かきの必要 度を地域ごとに予測した「雪かき指数」などを提供 ・子どもたちが札幌市の除排雪や冬の暮らしについて学んだ ことなどを発表する「雪と暮らすおはなし発表会」の開催 ・福祉除雪の地域協力員の拡充に向けた若い世代への積極的 な呼びかけの実施 幅員の狭くなったバス路線 雪かき指数 ロードヒーティングの停止 雪と暮らすお話発表会 ゆきだるマンの作品 福祉除雪 <札幌ゆきだるマンプロジェクト> プロジェクトの PR ステッカー 冬のくらしガイド 中心キャラクター「ゆきだるマン」を用いて、市民に分か りやすい広報・啓発活動を行い、プランの目標1「冬の市民 生活ルールの確立」及び目標6「冬の文化の創造」の浸透を 5.おわりに 昨今、社会情勢の悪化などで雪対策事業を取り巻く環境は 図る。 大変厳しくなってきている。これに対し、札幌市では、3次 ○これまでの主な取り組み にわたる雪対策の中長期計画のもと、冬期間の市民生活に影 ・雪対策に関するテレビアニメの放映 響を及ぼさないよう、様々な取り組みを行っているところで ゆきだるマンを主人公とした雪対策に関する短編アニメ 「パパはゆきだるま」を民放で週1回全10話放映した。 (専用HPで公開中) ・着ぐるみによる各種イベントでのPR活動 さっぽろ雪まつり等の大型イベントや、スポーツイベン ト、地域行事等において、きぐるみを活用してプロジェク トのPRや啓発活動を行った。 ・ゆきだるマン(ゆきだるま)の募集 市民や企業にゆきだるマンを作ってもらうことにより、 市民にもっと雪を好きになってもらい、雪とともに暮らそ うという機運を醸成した。 ・企業協力ステッカーの掲出 飲料メーカー、タクシー事業者等の協力により、プロジ ェクトのPRステッカーを掲出 ・「冬のくらしガイド」(札幌市広報誌)を活用した啓発 ゆきだるマン一家の生活を通じて、「冬の市民生活ルー ル」をわかりやすく解説 イベント会場でのPR ある。 今後も社会情勢を見据えながら、「プラン」を着実に進め ていくとともに、既存の枠組みにとらわれない、あらゆる側 面から検討を進め、「ゆたかな冬の暮らしの実現」を目指し ていきたい。