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わたしの小さなセラピスト

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わたしの小さなセラピスト
わたしの小さなセラピスト
高野
聖子
1、はじめに
私の大学では平成 22 年 9 月頃よりウサギやアヒル、カモ、ヤギの飼育を始めた。教育・
保育現場に出る前に、実際に大学で小動物を飼育しながら、命の尊さや大切さや学校飼育
の楽しさや大変さを学び、動物を愛し、子どもたちと一緒に命の尊さを学べる教師・保育
士の育成を目標に活動を行っている。私もいきもの係として活動に参加し、移動動物園や
地域の子ども達との交流を図っている。活動を通して気付いたことがある。それは動物に
接している人の多くが笑っており楽しそうなことだ。動物には癒し効果があるといわれて
おり、ストレスの軽減となる。私も実家で犬と猫を飼っているのだが、実習などで精神的
に疲れている時に犬や猫を撫でていると、なんだか気持ちが楽になったように感じられた。
いじめや不登校など深刻な問題が生じている教育現場の中で、子ども達の心の癒しとなる
ような動物達との交流、アニマルセラピーが有効的に活用できないかと思ったのだ。
2、アニマルセラピーとは
まずアニマルセラピーとはどのようなものなのだろうか。『アニマルセラピーのすすめ』
(津田望著)によると、人と人の関係をよくしたり、触ることによって安らぎを感じるな
ど、私達が心や身体などに健康を取り戻すことを目的とした療法や活動のことをいう。障
害児(者)、高齢者、被災者が動物によって癒され、社会復帰が促進されたなどの事例があ
る。
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3、子どもと動物
幼い時に動物とふれあうことにより、自分より弱いものに対する思いやりや優しさの育
成となる。『アニマル・セラピー』(川添敏弘著)に挙げられている例として、「幼稚園や保
育所の園児は生命に対する意識が未熟な面があり、昆虫などの扱いが無責任で乱暴である
ことを指摘することができるが、動物たちとの交流をきっかけに園児たちの行動、言動に
変化がみられることがある」と書かれている。他の動物と接することにより心の成長を図
り、相手のことを考える力を付けていくのだ。
幼稚園・保育園や小学校で何か生き物を飼育していた経験はないだろうか。学校全体で
ウサギやにわとり、クラス単位でハムスターやモルモットなど小動物が主に飼育されてい
ることが多い。教育課程で動物を飼うことは生命教育の一環として大切であり、食育も兼
ねている。
『アニマル・セラピー』に小学校 3 年生の女の子の事例が取りあげられている。この子
はクラスから仲間外れにされ孤立していた。その子の支えとなっていたのがクラスで飼育
していたモルモットである。どんなに無視され辛くてもモルモットがいてくれたから学校
に行くことができていた。この女の子にとってはただのペットではなく、友達のような関
係であったのだ。
このように学校で飼育されている動物には教育以外の重要な役割がある。愛情が乏しい
環境で育ってきた子は動物とふれあいながら愛情というものを学んでいく。何か学校で嫌
なことがあった時など動物とふれあってなんだか心がホッとしたような経験はないだろう
か。私が小学生の時、毎日休み時間にウサギ小屋へ友人と通っていた時期がある。特に抱
っこすることや撫でるというのではなかったが、ただ眺めているだけで私は心が穏やかに
なった気がした。その後成長とともにウサギ小屋に通う回数は減っていってしまったが、
小学校 6 年生の時にウサギ小屋を見た時、ウサギのもとへ通っていた私と同じぐらいの子
がウサギとふれあっていた。きっと一度はふと動物とふれあいたいと思う時期が誰しもあ
るのだと思う。したがって出来る限り学校で生き物の飼育をした方がよいと私は考える。
4、学校飼育における問題点
学校で生き物を飼育した方が良いと述べたが、実現には様々な問題がある。
1 つめは飼育管理である。飼育動物の中で1番の人気であるウサギは繁殖力の高い動物で
あり、どんどん増えてしまう。オス同士の争いやストレスにより病気になってしまう場合
もある。また動物が怪我や病気になっても予算がなく病院に連れて行けない、連れていく
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時間がないなど学校財政、教員側に困難な場合も多い。私の大学でも急に動物の調子が悪
くなり病院へ連れて行きたかったのだが誰も連れて行くことができないという状況が幾度
かあった。家庭でペットを飼う際に飼い主として責任を負うのと同様に、学校でも命を扱
う上での責任を持って飼育しなければならない。動物達に何か起こった際にどうするべき
かなどの対応策を考える必要がある。
2 つめはアレルギーの問題である。花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎などアレルギーで苦
しむ人が増加している。動物アレルギーは身の回りの毛やふけ、ダニなどに接触により発
症する。また一度何かアレルギー症状が出ると、あらゆるアレルゲンに反応してしまうこ
ともあり、突然動物にアレルギー反応を起こす場合もある。アレルギーの問題も関係し学
校飼育を行わない学校も多い。飼育する際に保護者の許可を得てアレルギー検査を行うこ
とや、もしアレルギー反応が発症してしまった際にどのように対処するか対応策を講じる
ことが重要である。また動物アレルギーを持っている子が触れないことに寂しい思いや劣
等感を感じないよう対応することが大切である。例えば新聞の発行である。どのようなこ
とが起こっているのか、写真を載せるなど分かりやすく説明をする。また新聞を発行する
ことにより、保護者への情報提供や理解へとも繋がる。下の写真は私の大学で発行されて
いる動物の新聞である。専用の掲示板を作りそこに月1回程のペースで発行している。
3 つめは教員の動物に対しての知識や飼育経験の少なさの問題である。私の大学では飼育
の経験が無くては子ども達に教えにくいという考えもあり、ボランティアという形だが学
生が主体になって、どのようにしたら動物達にとって過ごしやすい環境かを大学職員など
と話し合いなら活動を行っている。私は動物が好きなのだが、どうしても鳥類が苦手で近
くによることが出来なかった。だが少しずつ世話などを通して現在は触れるようにまでな
った。動物を飼う際には知識だけでは対応しきれないこともある。触ったことが無い、ど
のように触ればいいのかわからないなど経験が無ければどうすることもできない。教育現
場においても実践には経験はとても重要なことだ。だが現在の教員にはその経験が少ない
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のが実状である。動物とふれあう機会を作るなど、飼育環境だけでなく教員に対しての事
前指導も大切だと思う。
5、おわりに
近年、いじめ・不登校問題の深刻化、虐待の増大など子どもの心を深く傷付けることが
多い。私はカウンセラーとの連携だけでなく、音楽療法やアニマルセラピーなど様々なカ
ウンセリング法を学校現場でも用いることが良いと考えている。多様な面から子ども達の
心に寄り添い、支えていくことができると思うからだ。だが専門的なカウンセリング法は
専門機関へ赴かないと受けられないのが現状である。そのような専門機関が設立されてい
る場所も限られており、行くことへの抵抗感もあると思う。学校でこのような取り組みを
少しでも取り入れることができれば、教育における予防的カウンセリングや治療的カウン
セリングに役立つと考える。
私はこれからいきもの係の活動を続けていく上で、地域の幼稚園や小学校、高齢者施設
などでの移動動物園等を盛んに行っていきたいと考えている。命の大切さや動物による癒
しを感じてもらいたい。また地域の方にも動物達とのふれあいの機会となって欲しいと思
う。地域の方に大学で動物を飼っているという認知度が低いので、より多くの人に知って
もらえるよう活動していきたい。
犬や猫、金魚、ウサギなど多くの動物達に囲まれて私達は生活している。その小さな動
物達はカウンセリング能力を持ったセラピストであると思う。身近なセラピストと巡り合
える機会が学校現場においても増えることを私は願っている。
≪参考文献≫
○「アニマルセラピーのすすめ-豊かなコミュニケーションと癒しを求めて-」
津田望著
2001 年発行
明治図書出版株式会社
○「アニマル・セラピー」 川添敏弘著
2009 年発行
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駿河台出版社
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