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証券化への期待高まる欧州の不動産資産変わりゆく

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証券化への期待高まる欧州の不動産資産変わりゆく
JANUARY 2014 FTSE NEWSLETTER
JANUARY 2014 FTSE NEWSLETTER
市場ハイライト
●FTSE Kaigai(先進国除く日本)のパフォーマンスは先月末比で4.92%のプラスとなりました。
●FTSE RAFI JapanはFTSE Japanを年初来で2.49%アウトパフォームしました。
●FTSE EPRA / NAREIT Developed REITsの配当利回りは4.35%となりました。
Index
銘柄数
時価総額
(兆円)
パフォーマンス実績(%)
(日本円、
トータルリターン)
1カ月
3カ月
6カ月
年初来
1年
3年
5年
配当
利回り
(%)
日本市場
指数革命
FTSE Japan
459 319,064.69
3.45
9.65
15.81
54.77
54.77
54.18
68.43
1.62
FTSE Japan Value
459 158,061.05
3.23
8.87
14.61
49.88
49.88
45.02
62.11
1.97
FTSE Japan Growth
459 161,003.64
3.66
10.44
17.02
59.76
59.76
63.82
74.30
1.28
FTSE GWA Japan
459
-
3.34
9.29
15.41
53.41
53.41
52.37
81.65
1.82
FTSE RAFI Japan
261
-
3.28
8.92
15.00
57.26
57.26
50.12
72.60
1.65
FTSE EDHEC Japan
459
-
3.10
8.13
14.36
51.89
51.89
52.71
70.68
1.52
FTSE Japan Minimum Variance
282
-
2.53
7.25
13.27
49.05
49.05
61.58
61.79
1.77
FTSE Developed
2,033 3,456,232.61
4.78
15.66
23.86
54.10
54.10
81.65
139.69
2.36
FTSE Kaigai
1,574
3,137,167.92
4.92
16.30
24.74
54.10
54.10
84.57
148.78
2.43
1,574
-
4.83
16.48
25.04
53.75
53.75
80.79
155.55
2.67
欧州債務危機が収束に向かい、今後の市場動向から目が離せない欧州。各国
い状況だ。不動産にも影響は出ており、
FTSE GWA Kaigai
の経済・政治環境や財政改革の達成度合いには依然格差がある中で、欧州
アムステルダムでは新築住宅価格の下落
FTSE RAFI Kaigai 1000
1,015
-
4.65
17.03
27.20
58.13
58.13
83.70
164.25
2.82
経済のいまを知ることは今後の運用戦略を立てる上で欠かせないだろう。今回
が20%程度で落ちついたが、他の地域
FTSE DBI Kaigai
1,574
-
4.84
15.14
25.65
51.44
51.44
67.31
121.40
3.05
EPRA(欧州不動産協会)
でDeputy CEOを務める、Fraser Hughes氏(フレイザー・
は40 ∼ 50% 下がった」と、あらためて
FTSE EDHEC Developed ex Japan (Kaigai)
1,574
-
4.97
15.21
23.98
55.77
55.77
89.57
196.77
2.21
ヒューズ、以下ヒューズ氏)に話を聞く機会を得た。欧州不動産市場での
不動産市場における都市・地域差を示
FTSE Developed Minimum Variance
1,314 3,367,986.30
3.95
12.12
18.42
47.26
47.26
82.89
151.36
2.36
投資動向と、機関投資家の投資姿勢について紹介する。
した。
www.ftse.jp
証券化への期待高まる欧州の不動産資産
変わりゆく欧州諸国での不動産保有のあり方
グローバル市場
一見すると、欧州への不動産投資に
エマージング市場
FTSE Emerging
849 337,243.27
1.34
8.80
12.24
17.30
17.30
19.53
133.94
2.91
FTSE GWA Emerging
849
-
0.48
7.74
13.59
15.96
15.96
16.53
137.30
3.50
FTSE RAFI Emerging
358
-
0.61
7.12
13.43
13.30
13.30
14.65
120.62
3.49
FTSE EDHEC Emerging
849
-
1.66
8.39
9.36
18.79
18.79
34.17
196.54
2.94
FTSE DBI All Emerging
849
-
0.59
6.96
7.54
14.23
14.23
28.19
163.86
2.86
オルタナティブ
欧州への投資に求められる視点
大都市と地方、異なる回復速度
微に留まったそうだ。
は時期尚早の感があるように思えるが、
ドイツは堅調で欧州のエンジンとして
先述の北欧やスイスでは経済は安定して
南部を中心に欧州全体を支えてきた一
回復している。最近ではロンドンで中国
短期的には回復基調と見なされている
方、フランスでは最低賃金が高止まりし
の保険会社が、イギリスの大手保険会
欧州の不動産市場に投資をする上では、
ており、企業の業績改善も奏功せず厳し
社保有のビルを購入した例があるなど、
「俯瞰的な視点よりも、個々の大都市に
い状態が続いているという。ギリシャは
着実に機関投資家は動き始めている。
焦点を合わせたほうがいい」とヒューズ
一時期のように価格変動リスクにさらさ
国や都市といった視点での投資機会の
見極めが、ますます重要となる。
FTSE EPRA/NAREIT Developed
309 112,059.49
2.88
6.59
7.86
26.89
26.89
63.91
144.12
3.73
氏は語る。
れているわけではなく、スペインも回復
FTSE EPRA/NAREIT Developed REITs
229
83,008.34
2.76
6.46
5.33
24.79
24.79
67.62
143.90
4.35
例えばイギリスでは「ロンドン」と「そ
の 兆しを見 せてい
FTSE EPRA/NAREIT Emerging
139
13,193.49
-1.92
0.51
-1.72
4.60
4.60
12.43
121.57
3.19
の他」といったように、中核都市とそれ
る。
FTSE Global Core Infrastructure
194 141,135.26
4.40
11.17
13.07
42.35
42.35
79.80
110.90
3.16
以外の地域・都市で経済回復のスピー
「スペインの不動
FTSE Developed Core Infrastructure
137 133,951.23
4.58
11.39
13.51
44.08
44.08
83.99
109.08
3.18
ドに大きな差があるという。国によって
産価格について言
1.30
7.32
5.38
15.89
15.89
25.20
129.28
2.86
も経済回復の順番に特徴が出始めてい
えば、おそらく最初
る。欧州各国の経済回復の度合いにつ
に回復するのはマ
いて、ヒューズ氏の見解をみていきた
ドリッド、次はバル
い。
セ ロナといった 順
まず、欧州全体としては「北から南へ
番だろう」
(ヒューズ
といった順番で回復が進んでいる」との
氏)。また、ベネル
ことで、ノルウェー、スウェーデン、フィ
クス三国の中では、
FTSE Emerging Core Infrastructure
57
7,184.03
データ出典:FTSE Group 2013年12月31日付
指数に関するご質問・ご相談は、右記までご気軽にお問い合わせください
FTSE 日本オフィス TEL:03-3581-2811 E-mail:[email protected]
詳細に関しましてはwww.ftse.comをご参照下さい
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本書に記載されるすべての情報の正確性を確保するために、あらゆる努力を行っていますが、FTSEまたはそのライセンサーは、本書の誤りまたは本書の使用に起因する損失に
つき、一切責任を負いません。FTSEも、そのライセンサーのいずれも、FTSEインデックス(「インデックス」)の使用から得られる結果に関し、または特定目的へのインデックスの
適合性もしくは適切性に関し、明示・黙示を問わず、いかなる主張、予想、保証または表明も行いません。本情報のいかなる部分も、FTSEの書面による事前許可を得ることなく、
電子的、機械的、複写、記録その他の形式または手段を問わず、複製、検索システムへの保存または伝送を行うことは禁じられています。FTSEインデックス値の配信および金融
商品の開発を目的とするFTSEインデックスの使用には、FTSEまたはそのライセンサーのライセンスが必要です。
ンランドの北欧三国については、元から
「オランダは失業率
リーマン・ショックによる影響が大きくな
の改善がうまくいっ
かったため、不動産市場への打撃も軽
てい な い た め 厳し
イギリス・ロンドンの街並み。国際的な金融大国イギリスでも景気回復の
度合いには差が生じている
図表1
欧州における不動産資産の証券化比率 ※
Region
Total Real Estate
(€ bn)
Listed Real Estate
%
を不動産資産に投資。そのうち約半分
が運用結果に影響を与えたのではない
して多角的な切り口で算出した多彩なイ
とに一層の期待感を示し、
「欧州のシェア
は実物不動産で残りが北米、欧州、ア
かと考察する。
ンデックスを提供している(図表 3)。
はまだこれから伸びるだろう。ぜひ日本
ジアの REITで構成されているとのことだ。
ここ数年の日本での私募REIT の人気に
最後にヒューズ氏は、欧州全体での
の投資家にもこれからの欧州不動産市
イギリスでは最近、企業年金がない企
も触れ「ドイツでも一時、同じような傾
上場不動産や REIT の上場が増えてくるこ
場に注目してもらいたい」とした。
業で働く労働者向けの年金制度である
向があったが、リーマン・ショック時に
Europe
5,476
3.8%
NEST(National Employment Savings Trust)
組み入れ不動産を換金できず、結果的
が導入された。運用資産の約20%は不
に投資資金を回収できなかった例が散
North America
5,276
14.1%
動 産 資 産 で 構 成 され、そ の 内 訳 は 約
見された」とヒューズ氏は話す。マーケ
70%がイギリスの実物不動産で残りが上
ット要因による価格変動ばかりに意識が
Asia-Pacific
4,103
11.7%
場不動産だという。
向かいがちだが、私募 REIT のような鑑
このように、最近では実物不動産と上
定評価が運用結果に影響を出す商品に
場不動産を組み合わせた投資が増えて
もリスクがあることを忘れてはならない
今後はドイツ、スペイン、イタリアを中
きている。上場不動産というと、投資家
だろう。
心に組み入れの動きが活発になるだろ
にとっては株式市場と相関が高く、価格
実物不動産と上場不動産を併せて保
う」とヒューズ氏は見ている。不動産資
変動リスクがあるため保有への抵抗感が
有する流れがある中で、既存の機関投
現在、欧州においてREIT(不動産投資
産の上場余地を大きく残す中で、欧州の
強いとされる。だが EPRAが行った研究
資家にとっては国別、地域別のインデッ
信託)が上場している国にはイギリス、
不動産はまだまだ流動性資産としても開
によれば「長期保有することで、上場不
クスだけでなく、不動産セクターやREIT
ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、
拓の余地が残される(図表1)。
動産と実物不動産の値動きは収れんして
の構成銘柄の配当利回りに着目したイン
イタリアなどが挙げられるだろう。
※出典:FTSE
(FTSE EPRA / NAREIT Developed REITs Index)
Data as at 31 December 2013
いき、2年を境にREITと実物不動産との
デックス等も運用の検証に役立つのかも
相関は高くなり、株式との相関が低くな
しれない。FTSEでは、不動産市場に対
※2012年12月31日
出典:EPRA
不動産の資産規模は世界随一
求められる不動産資産の上場
この中でもヒューズ氏は「2003年にフ
長期の保有で価格変動は収れん
欧州で不動産活用の新たな動き
る」ことがわかってきた(図表 2)
。
た運用対象としての不動産市場の規模に
EPRAによるとこれまで欧州の機関投
た場合の運用結果を調査した。結果とし
ついて、ここで整理してみたい。
資家は、不動産資産を平均して約8 ∼
て、実物不動産のみを運用している基金
商業用不動産資産全体で見てみると、
10%ほどポートフォリオに組み入れてい
よりも、両方ともポートフォリオに組み
北米よりも欧州のほうが時価による規模
たが、最近では徐々にこの比率に動きが
入れている基金のほうが運用のパフォー
は大きいとヒューズ氏は説明する。金額
生じてきているという。
マンスが高かった」と説明。理由として、
は約6 兆ドル(USドル)に上り、続く北米
オランダ最大の年金基金とされている
①REIT市場が好調だったこと、②実物不
が 4 ∼ 5 兆ドル、アジアが3 ∼ 4兆ドル
APGでは、運用資産全体の約12 ∼ 13%
動産は管理・運営に経費がかかったこと
ランスが REIT制度を採用したことは大き
な進展であり、市場規模を拡大するきっ
かけとなった」と評価する。REITを含め
図表 2
場不動産となると北米が圧倒的だ。REIT
0.90
を対象に、様々な不動産資産を保有し
REITと株式・実物不動産との相関関係(欧州先進国不動産を対象)
制度自体は 1960 年代からあり、1990 年
代から爆発的に上場件数が増えた。カ
ナダも1990 年半ば頃からREITが始まる
など、欧州全体に比べて北米の上場不
動産市場は成熟していると言える。
これらの傾向はFTSE が提供する指数
に も如 実 に 表 れている。
「FTSE EPRA /
NAREIT Developed REITs Index」がカバー
する、各国の REITの時価総額ウェイトを
地域別に比較してみると、北米では65%
以上、アジアでは約 20%となるのに対し
て、欧州全体では 15% に満たない※。
「不動産市場の5% ほどしか REITに組
み入れられていないのが欧州の現状だ。
FTSEが提供しているインデックス・シリーズの構成図
FTSE EPRA/NAREIT グローバル不動産インデックス・シリーズ
FTSE EPRA/NAREIT グローバル・シリーズ
先進国・新興国の地域別、国別インデックス・シリーズ
FTSE EPRA/NAREIT グローバルREITおよび上場不動産株インデックス・シリーズ
REITと上場不動産株の異なった構成銘柄を提供
FTSE EPRA/NAREIT 高配当インデックス・シリーズ
配当利回りが年率2%以上と予想される株式で構成
FTSE EPRA/NAREIT 投資フォーカスインデックス・シリーズ
賃料と非賃料に分類をしたインデックス・シリーズ
FTSE EPRA/NAREIT グローバル・セクターインデックス・シリーズ
既存の構成銘柄を個別の10の不動産セクター(ヘルスケア、貸金庫、産業物件、オフィ
ス、住宅、
リテール、宿泊施設、
リゾート、専門施設、産業・オフィス総合、複合型)から分類
出典:FTSE
加えてヒューズ氏は「世界の年金基金
となる。その上、世界の商業不動産のう
ち約 35% は EU の物件だという。だが上
図表 3
0.80
column
インフレと資産運用
加藤 康之(京都大学 大学院経営管理研究部 教授、FTSE シニア アドバイザー)
脱デフレ傾向が鮮明になりつつある。2013年 12月に政
利が上昇したりして株価が一時的に下落してしまうからであ
府が発表した 2013 ∼ 14年度の経済成長率見通しによれば
る。したがって、長期的な投資ができなければ株式はイン
消費者物価指数(総合)は 3.2%の上昇となり、12月の月例
フレヘッジに向いていると簡単に結論できない。
経済報告から「デフレ」という表現を削除した。インフレの
それでは同様にインフレヘッジ資産の代表とされる不動
足音が聞こえてくると、資産運用の世界でもインフレ対策と
産はどうであろうか。不動産もリスク資産であり、株式市場
いう問題が注目を浴びるようになってくる。どの資産がイン
の影響を大きく受ける。REIT 価格と株価との相関も高い。
フレヘッジに有効なのかという問題である。だが、これは
インフレヘッジという観点では株式と同じ特性を有してい
正解のない問題でもある。そもそもインフレの定義自体も
る。しかし、株式のインカムが企業収益であるのに対し、
難しい。それでも、お金の価値が低下するインフレヘッジ
不動産資産のインカムは原則不動産賃料である。特に好
0.70
は重要であり、資産運用において究極の目標とも言える。
立地の不動産賃料は、好不況には影響されにくく安定して
0.60
インフレヘッジ資産として良く引き合いに出されるのは、
おり、マイルドなインフレには追随しやすいと考えられる。
株式、不動産、金、コモディティ、インフレ連動債、短期
資産を現金化する必要がなく、長期的にインカムだけ考え
資産など多岐にわたる。以下、株式と不動産について比較
れば良いという投資家であれば、不動産はインフレに対す
0.40
検討してみよう。インフレヘッジの代表として最も頻繁に挙
るヘッジ資産として有効であると考えられる。
0.30
げられるのが株式である。それは株式が企業の資産という
不動産投資はREIT の登場で著しく容易になった。REITを
実物資産を原資産としているからであろう。大きな成長を
使えば海外不動産への分散投資もできる。資産運用におい
もたらす株式投資は、長期的にインフレを凌駕することが
て不動産の利用度は著しく高まったと言える。もちろん、狂
期待できる。しかし、株式とインフレの短期的な関連性に
乱物価のようなインフレが起これば不動産も短期的にはイ
ついては否定的な研究が多い。平時には両者の相関が高
ンフレヘッジにならない可能性が高いことは留意する必要
くない。一方、激しいインフレが起こると不況になったり金
がある。
0.50
0.20
0.10
0.00
出典:EPRA
General Equities v Listed
Direct v Listed
6months
1year
2year
3year
5year
10year
Fly UP