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東日本大震災被災者に向けて平和の祈り 〜ヒロシマから

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東日本大震災被災者に向けて平和の祈り 〜ヒロシマから
成 長度
東日本大 震災被災者に向けて平和の 祈り
〜ヒロシマから音 楽メッセージ〜
提 案 団 体 : 広島国際大学大学院 The Survivors
代 表 者 : 実践臨床心理学専攻 2年 吉田みどり
顧
問 : 実践臨床心理学専攻 准教授 富樫 公一
1.活動当初は、どのような課題に直面し、それを乗り越えるためにどんな苦労がありましたか 。
①まず、コンサート企画を地域の人々に知っていただくためには、何をすれば良いかについて、パート
ナーと共に知恵を絞って意見を出し合い、活動の取り掛かりを考えた。
②コンサートの主旨を盛り込んだチラシを市内の公民館や区
民センター、学校等に相当数を送ったにも関わらず、反応
がなく申込数が非常にわずかであり、コンサートとして成
立しない危機に襲われた。
③新ポスター・チラシを配布後、効果があって申込数が増え
実施計画
たのはよかったが、予定数を超えたことにより、当初の予
パートナー:生涯学習音楽指導員ネットワーク広島
困難になる事態に至った。
定時間をオーバーすることが予測され、スケジュール的に
④大物団体の参加申し込みがあり、舞台が狭い状態で、太鼓
実 施 期 間 :2011年4月1日~2011年10月9日
等大きな楽器の配置スペースが確保できなくなり、足元が危険な状態が予測された。
奨 励 金 額 :330, 000円
活 動 目 的 :平和都市ヒロシマから音楽を通した平和メッセージの発信及び東日本大震災被災地への応援
⑤The Survivors内に体調不良者が続出し、練習が一向に進まず、またメンバーの一人が都合で欠けてし
メッセージを込めて、ステージ上の発表者と客席の聴衆間のコミュニケーションを通し、地
まったため、発表者としてステージに立つことが危機的になり、コンサート1週間前には参加辞退の方
域の人々の絆を結ぶ。音楽愛好者の発表の場の提供と、音楽交流により“平和のために何かを
向を視野に入れざるを得なくなった。
したい”、“何かをしよう”という前向きな行動へのスタートの機会とする。
達 成 目 標 :世代、性別、職業、国籍、ジャンルを超えた地域の人々の交流の活性化を目指す。被災地の
⑥学内実習の個々の曜日がばらばらであったため、また学外実習が重なったメンバーがいたために、特に
全員そろっての練習時間と練習場所の確保には非常に困難をきたした。
人々を応援する心を音楽で一つにし、地域の皆が連帯し、平和への意識を持つ。
計 画 概 要 :2011年10月「平和コンサート」に向け、生涯学習の一環として音楽学習に携わっているアマ
2.その課題を、どのような工夫や努力で乗り越え、成果をあげることが出来ましたか。
チュア音楽愛好者を地域に広く公募し、プロフラムを作成、実施する。同時に、平和への願
①コンサートを知っていただくために、コンサート会場 近 辺の公民館や学 校へコンサートチラシを郵送した。
い、気持ちを音楽に込めてパフォーマンスしようという価値観を持ち得ている人で、地域交
②申込者が少ないことの原因が何であるのかについて、実際にチラシの送付先に足を運び、視察してみ
流に関心のある、「平和コンサート」に魅力を感じてもらえる人々の積極的参加を求める。
て追究した。他のコンサート・イベントのチラシが多く膨大であるため、たとえフロアーに置かれてい
予 測 効 果 :音 楽 から力を得、日々の 生 活 への 活 力とし、QOLを高め、地 域を 超 え た 大 勢 の人々の 連 帯 感 に
ても目立たず、特にコンサートのコンセプトが届いていないことが分かった。このため、チラシだけで
より、孤 独 感を克 服し、つながりの中で、生きる糧を得られる。被 災 地に対し“何かできないか”、
はなく人の目に付き易い掲示用のポスターを新たに作成することに至った。当初作成した素人のチラシ
“何かしたい”という気 持ちの 再 確 認と、実 行に 移せるチャンス時に行動できる意 識アップ。
では魅力を感じてもらえていないと分かり、プロのグラフィック・デザイナーにオーダーし、出演者を
募っているということがはっきりと見た人に伝わるようにアピールした。またコンサートが、「東日本
活 動・成 果 報告
大震災被災地」への応援及び広く平和を願う気持ちを込める音楽表現である演奏を募る主旨であること
毎 月 第4週 日 曜 日 に 定 期 月 例 会 を 設 け 、 コ ン サ ー ト の 主 旨 の 確 認 や 会 場 全 員 に よ る エ ン デ ィ ン グ 合 唱 の 選
いていただけるように、郵送ではなく、実際に再び送り先に足を運んで、コンサートの内容を口頭で説
曲、地域に向けての告知の方法、練習計画等を話し合った。
明をして、お願いに回った。会場が主催者でないと置けないと断られた際にも、申込者が少なく困って
が明確に伝わるように、再度宣伝広告に力を入れた。また、チラシの置き場所も目立つ場所を選んで置
・4月:「平和コンサート」に向けての内容検討
いることを強調して再度お願いをしてみると、基本原則としては置くことはできないが、『コンサート
・5月:コンサートチラシの作成と地域への配布、告知
の内容が大変よいみたいなので』と言ってくださり、よく見える箇所に親切に置いてくださった。既に
・6月:コンサートの流れを検討
郵送していた広島キャンパス近辺の音楽大学の事務室を訪ね、説明とお願いをすると、中央正面玄関の
東日本大震災応援ソングの発表者選び、アレンジ、楽器編成を考える
目立つところにポスターを貼っていただけた。このチラシを見た音大生の中からは2グループが申し込
・7月:参加者公募締切と参加者選び、参加者への連絡等
みがあった。結果として、1次締切では、わずか8組の出演であったのが、最終的には2倍の16組の
・8月:プログラム作成と発表曲の練習
申し込みがあり、最後の合唱曲を含めると17のプログラムに膨れ上がった。
③コンサート開演時間を30分早め、時間変更を申込者にインフォームすると同時に、短時間のセッティ
・9月:準備物の確認とリハーサル
ング確認と持ち時間10分の厳守を徹底することに努めた。
・10月:本番への最終打ち合わせとリハーサル
④ステージ上及びステージ横の楽器置き場所を効率よく使えるように考え、前もって回収しておいた各曲
・11月:振り返り、反省と今後の展望等
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のセッティング図をもとに、スタッフ間でのセッティングの分担や楽器の移動について、一人ひとりの
れた。コンサートの主旨がしっかりと参加者に伝わって、もう一度出演したいと思っていただけたことは平
動きを細かく打ち合わせし、危険回避と迅速な対応を行った。 和コンサートの成功であったと考えられる。東日本大震災被災地の人々のために何かできることがあればよ
⑤2日前に、学内の人にも応援をお願いし、淋しくない音楽になるように最後まで踏ん張った。
い、と個々人の心の中にそのような気持ちがもともとあったからこそ、気持ちを一つにして平和への祈りと
⑥練習の開始時は、研究室でひそやかに声をだして練習したが、本番のステージを想定すると、立ち位置
なるコンサートに成りえたと思う。
やマイクの使い方などのきめ細かな練習が必要であることを痛感し、楽器店のスタジオレンタルの方向
広島国際大学大学院生The Survivorsの“I love you & I need you ふくしま”は、会場の方々も口づさ
に変え、教室を連日レンタルし、練習に励んだ。個人でカラオケに通った人もいた。レンタル教室の空
んだり手拍子をして参加ができ、楽しまれ、大変盛り上がってよかった。映像が効果的で、客席の人たちに
室状況が厳しく、狭い部屋に詰め込みで、身動きもできずに練習した日もあった。しかし、このような
訴えるものがあった。
地道な練習を積んだからこそ、本番では、リズムに乗って会場に手拍子をアピールしながら、会場の聴
コンサートをして終わったというだけではなく、大切なことは次へとつなげること、続けることであり、
衆にも賛同してもらえる元気な歌声を届けることができた。
アンケート結果に反映された参加者の声や要望にも応える形で、2012年10月7日に、会場をスタジオから
大ホールに変えて「平和コンサート」を実施することに決定した。
3.自分たち(チーム)が一番成長したところは、どこですか? 理由もお願いします。
生涯学習音楽指導員
ネットワーク広島
最初は何から始めたらよいのかわからない状態であったが、限られた時間と条件の中で、個々ができるこ
ととグループで行うことを区別し、バランスをうまくとりながら、その時々の役割に集中して、計画を遂行
することができるようになった。
今回、私たちは出演者の方々のサポートをするスタッフとして裏方をする一方、出演者としてステージに
構 成メンバー
立つという二重の責任があった。二足のわらじを履くという困難さは想像以上に大変であった。計画・予想
心理科学研究科 実践臨床心理専攻 2年 佐伯 いずみ、東 久勝
したようには物事が運ばないということを思い知り、その時々の困難をどのように乗り越えるかということ
松井 良枝、 吉田 みどり
については、その都度悩み、知恵を振り絞り、行動することで乗り切れたと思う。
ゼロの状態から出演者を集めていくというコンサート実施に向けてのプロセスの中には、幾つかの困難さ
が待ち受けていた。まだ会ってもいない人をコンサートに参加してもらうためには、何を大切に考え行動
していくのかについて真剣に考えた。コンサート自体はたとえよい内容であっても、人に伝えていくために
は、どういう言葉や表現を使うとわかってもらえるのかについて見る側と聞く側の立場に立って考えた。こ
のことは参加者だけではなく、チラシを置いてくださった会場の方々に対しても、言葉以外の態度等につい
て、人の心に響く、人の気持ちをつかむ、人を動かすことの難しさと諦めないことの重要さを、努力が実っ
た結果によって、あらためて知ることができた。
4.パートナーからの企画を通しての気づきや感想
当初は、10組にも満たない参加数により、非常に淋しい音楽コンサートになるのではないかと諦め加減
であった時期もあったが、最終的には、幅広い年齢層(小学低学年から84歳の高齢の方まで)の参加や、
ソロ演奏から大人数の編成に至るまでの邦楽・洋楽のさまざまな楽器やパフォーマンスがバランスよく、そ
してバリエーション豊かに、聴く人にとっては聴きごたえのある充実したコンサート内容になりえた。ひと
えに二度にわたり、またあちらこちらの会場に直接足を運んでお願いに回った、募集強化の努力の賜物では
ないかと思える。
平和コンサートに出演したある参加者が他のグループの演奏を見聞きして興味をもち、邦楽のコラボレー
ションをしたいと申し出られ、このコンサートをきっかけに新しい機会へと発展したという報告があった。
コンサートを終えて終結を迎えただけではなく、コンサートが次へのスタートになっていたという事実は非
常にうれしい情報であり、平和コンサートの意義であると考えられ、地域の人々に交流してもらえる大きな
チャンスの提供であったと言える。
参加者のアンケートからも、直接の声からも、是非来年もしてほしいし、会場を大きくしてほしいなどの
要望に応えて、会場を大ホールに移してたくさんの参加者や大きな団体も参加できるように、次回のコン
サートにつなげると決意した。
平和メッセージを伴ったアマチュア音楽愛好者の参加できるコンサートはオリジナリティーがあって喜ば
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