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日本企業・産業にとっての ASEAN統合の意義
ASEAN統合セミナー 基調報告 日本企業・産業にとっての ASEAN統合の意義 平成27年10月 国際協力銀行 アジア大洋州地域統括 堀口 宗尚 1.ASEANとは? ・設立:1967年(バンコク宣言) ・加盟国:10カ国(インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、 フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、 カンボジア) ・目的:経済、社会、政治、安全保障、文化に関する地域協力 (2007年に全加盟国によりASEAN憲章が署名される) ・本部:インドネシア・ジャカルタ(議長国は原則、アルファベット 順に1年ごとに持ち回りで就任) 2 1.ASEAN加盟国の概要 国名 面積 人口 多数民族 宗教 インドネシア 189万㎢ 2.49億人 マレー人 イスラム教 公用語 インドネシア語 (2013年) シンガポール 716㎢ 540万人 中華系 (2013年) タイ 54.4万㎢ 6593万人 タイ族 仏教、キリスト教、 英語、中国語、 イスラム教等 マレー語、タミル語 仏教 タイ語 政体 大統領制、 共和制 3500ドル 立憲共和制 52051ドル 29.9万㎢ 9234万人 立憲君主制 33万㎢ 2995万人 マレー系 カトリック フィリピノ語、英語 立憲共和制 5765㎢ 39.9万人 マレー系 イスラム教 マレー系 イスラム教 マレー語、中国語、 立憲君主制 タミル語、英語 10548ドル マレー語 40647ドル 立憲君主制 (2012年) ベトナム 32.9万㎢ 9170万人 68万㎢ 5141万人 キン族 ビルマ族 仏教、カトリック、 カオダイ教 ベトナム語 仏教 ミャンマー語 (2014年) ラオス 24万㎢ 660万人 ラオ族 仏教 ラオス語 (2013年) カンボジア 18.1万㎢ 1470万人 (2013年) (出所)外務省 (2013年) (2013年) (2013年) ミャンマー 2790ドル (2013年) (2013年) ブルネイ 5647ドル (2013年) (2010年) マレーシア (2013年) (2012年) (2010年) フィリピン 1人当りGDP クメール人 仏教 カンボジア語 社会主義共 和国 1896ドル 大統領制、 共和制 868ドル (2013年) (2012/13年度) 人民民主共 和制 1628ドル 立憲君主制 933ドル (2013年) (2012年) 3 1.ASEANの経済規模 ・ASEANを「1つの国」として見た場合、世界第7位の経済規模。 名目GDP上位10カ国(2014年) 順位 国名 名目GDP(億ドル) 1 米国 174,189 2 中国 103,804 3 日本 46,163 4 ドイツ 38,596 5 英国 29,452 6 フランス 28,469 ASEAN10カ国合計 24,745 7 ブラジル 23,530 8 イタリア 21,480 9 インド 20,495 10 ロシア 18,575 (出所)IMF 4 1.地域経済統合体比較 地域経済統合体 東南アジア諸国連合 (ASEAN) 北米自由貿易協定 (NAFTA) 欧州連合 (EU) 南米共同市場 (MERCOSUR) GDP 人口 (100万人) (10億ドル) 10 625 2,475 加盟国数 3 482 20,490 28 510 18,495 6 296 3,218 (出所)人口:国連、GDP:IMF(データは2014年のもの) 5 1.世界の中のASEANの位置づけ 世界に占めるASEANの経済規模・貿易のシェア (単位:%) GDPシェア 1980年 世界 1990年 2000年 2010年 2014年 100 100 100 100 100 米国 23 26 31 23 23 日本 9 14 14 8 6 中国 3 2 4 9 13 ASEAN 2 2 2 3 3 往復貿易額シェア 1980年 世界 1990年 2000年 2010年 2014年 100 100 100 100 100 米国 12 13 16 11 11 日本 7 7 7 5 4 中国 1 2 4 10 11 ASEAN 3 4 6 7 7 (出所)現代ASEAN経済論(石川幸一、朽木昭文、清水一史) 第4章 第4-1表(85頁)より 6 2.ASEANの評価:中期的有望事業展開先国 主要8か国の得票率の推移 (出所) 国際協力銀行「2014年度海外投資アンケート」 7 2.ASEANの評価:有望理由と課題 8 (出所) 国際協力銀行「2014年度海外投資アンケート」 2.ASEANにおける中間層の拡大 (出所)大和総研「わが国の食品加工・サービス産業のASEAN市場における海外展開の現状と課題」(2015年4月)より抜粋 9 2.日本からASEAN・中国への直接投資推移 25,000 (単位:百万米ドル) 百万ドル 20,000 15,000 10,000 2009 8930 2011 2012 2013 2014 ASEAN 7,002 8,930 19,645 10,675 23,619 20,367 シンガポール 2,881 3,845 4,492 1,566 3,545 7,580 タイ 1,632 2,248 7,133 547 10,174 5,175 インドネシア 483 490 3,611 3,810 3,907 4,407 マレーシア 616 1,058 1,441 1,308 1,265 972 フィリピン 809 514 1,019 731 1,242 478 ベトナム 563 748 1,859 2,570 3,266 1,348 18 27 90 143 220 407 6,899 7,252 12,649 13,479 9,104 6,741 その他ASEAN 中国 5,000 0 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 ASEAN 5,238 7,780 4,454 1,032 207 4,013 4,256 2,317 1,862 1,301 934 2,158 2,622 3,980 5,863 6,575 6,169 6,218 6,496 6,899 7,252 12,64 13,47 9,104 6,741 中国 360 (出所)日本銀行、ジェトロ等 432 2,800 5,002 6,923 7,790 6,309 7,002 8,930 19,64 10,67 23,61 20,36 10 2.日本企業のASEAN進出状況 【日本企業のアセアンへの進出状況】 進出日本企業数 2 0 1 2年末対外直 接投資残高 ( 百万ドル) 国名・地域名 2005年 【日本企業の現地法人売上高】 2014年 シンガポール 833 964 36,063 マレーシア 632 687 13,312 1,140 1,585 35,040 インドネシア 587 880 15,816 フィリピン 374 391 10,225 ベトナム 220 678 8,415 カンボジア 3 59 ブルネイ 2 4 ラオス 5 18 23 63 アセアン計(注) 3,819 5,329 122,269 中国 2,174 3,052 93,215 153 588 15,107 タイ ミャンマー インド ブルネイ含め 3,398 (出所)経済産業省「第43回海外事業活動基本調査」 【日本よりも収益率が高い国・地域】 (注)アセアン計の企業数は各国の進出数の単純合計。同一企業が重複計上されてい るため、中国の進出数との比較には留意が必要。 (出所)東洋経済新報社「海外進出企業総覧(国別編)」等より作成 (出所) 国際協力銀行「2014年度海外投資アンケート」 11 (参考)JBIC中堅・中小企業融資 (注1)地銀向け中小支援TSLは地銀協融に計上。 (注2)26年度実績にはミツカングループ、ユニリーバ子会社が有するパスタブランドに関する事業等取得資金に係る融資 約754億円相当を含む。 (注3)26年度実績の国別件数は多い順にタイ30件、ベトナム21件、インドネシア21件、中国10件となっている。 12 3.ASEAN自動車産業概要 【世界各国の自動車生産台数(2014年)】 順位 国 1 中国 2 生産台数 (千台) 順位 国 23,773 12 タイ 米国 11,650 15 インドネシア 3 日本 9,775 22 4 ドイツ 6,121 5 韓国 4,525 6 インド 3,840 7 メキシコ 8 【世界各国の新車販売台数(2014年)】 生産台数 (千台) 日系 シェア 順位 国 23,492 11.6% 13 インドネシア 米国 16,842 37.0% 18 3 日本 5,563 121 4 ブラジル 89 5 3,985 順位 国 1,880 1 中国 1,299 2 マレーシア 596 n.a. ベトナム n.a. フィリピン 販売台数 (千台) 販売台数 (千台) 日系 シェア 1,208 96.3% タイ 882 89.0% 21 マレーシア 666 42.2% 3,498 36 フィリピン 269 76.5% ドイツ 3,357 n.a. ベトナム 158 52.7% 6 インド 3,177 n.a. シンガポール 47 42.5% 3,389 7 英国 2,843 n.a. ブルネイ 18 53.9% ブラジル 3,173 8 ロシア 2,693 3,249 78.4% 9 スペイン 2,424 9 フランス 2,211 10 カナダ 2,394 10 カナダ 1,889 ASEAN計 (出所)フォーイン「世界自動車統計年鑑2015」等より作成 ASEAN計 13 4.ASEAN諸国と人口構成 【各国の人口ボーナス期】 【アジア各国の生産年齢人口の推移】 国名/年 1950 1955 1960 1965 1970 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 2020 2025 2030 2035 2040 2045 2050 シンガポール 1965 2011 タイ 1970 2013 ベトナム 1969 2014 マレーシア 1965 2019 ブルネイ 1966 2019 ミャンマー 1968 インドネシア 2017 1972 2026 ラオス 2010 フィリピン 1965 カンボジア (参考)日本 2044 2049 1965 2012 1950 2021 2036 1990 (参考)中国 1965 (参考)インド 1965 2010 2040 (出所)現代ASEAN経済論 第6章 第6-4図(134頁)を参考に作成 【ASEAN全体の人口構成(2013年)】 【日本の人口構成(同)】 (出所)現代ASEAN経済論(石川幸一、朽木昭文、清水一史) 第6章 第6-5図 (135頁)より (出所)現代ASEAN経済論 第6章 第6-2図(129頁)より 14 5.ASEAN経済共同体とは? ・ASEAN経済共同体は、ASEAN共同体の中心を担うもの。 ASEAN共同体 ASEAN経済共同体(AEC) ASEAN安全保障共同体(APSC) ASEAN社会文化共同体(ASCC) 15 5.ASEAN経済共同体(AEC)の特徴 ① 単一の市場と生産基地(市場統合) ② 競争力のある経済地域(インフラ整備及び共通政策) ③ 公平な経済発展(格差是正) ④ グローバル経済への統合(域外とのFTA推進) ⑤ 産業分野ごとの統合と協力の強化(ASEANブランド企業の 創造・育成) 16 5.AECへ向けての動き(1) ●2003年10月「第2ASEAN協和宣言」 − ASEAN共同体: ASEAN安保共同体(ASC) ASEAN経済共同体(AEC) ASEAN社会文化共同体(ASCC) − ASEAN共同体の中心はASEAN共同体(AEC) − ASEAN経済共同体(AEC): 2020年までに以下5点の自由移動を実現 ①物品、②サービス、③投資、④資本、⑤熟練労働力 −外国投資を呼び込むためのAEC →中国との競合激化に備えて 17 5.AECへ向けての動き(2) ●2007年11月「第13回ASEAN首脳会議」 −AECブループリントの作成:AECの目標 →AECの2015年までのロードマップ(2020年から前倒し) −AECの四つの戦略目標 A. 単一の市場と生産基地(最も主要な戦略目標) B. 高度な競争力のある経済地域 C. 公平な経済発展の地域 D. グローバルな経済へ十分に統合された地域 ●2010年10月「第17回ASEAN首脳会議」 −ASEAN連結性マスタープラン(MPAC)の作成(具体的中期目標) ①物理的連結性 ②制度的連結性 ③人的連結性 18 5.AECで期待される点 ・ASEAN域内での生産拠点の最適化 例:タイ・プラス・ワン ・ASEAN域内でのクロスボーダー物流ニーズの増大 ・ASEAN市場規模拡大 ・ASEAN全体での最適化と各国・産業単位での対応 ・ASEANの段階的な進展に合わせた戦略立案 19 5.域内関税の動き (出所) 現代ASEAN経済論(石川幸一、朽木昭文、清水一史) 第9章 第9-1図(185頁)、第9-1表(179頁)より 20 5.ASEAN2015と2025の比較 AEC2015 AEC2025 第1の柱 単一市場・生産基地 統合され高度に結束した経済 第2の柱 競争力のある地域 競争力がある革新的でダイナミックなASEAN 第3の柱 衡平な経済発展 強靭で包摂的、人間本位・人間中心の ASEAN 第4の柱 − 分野別統合・協力の強化 第5の柱 グローバル経済への統合 グローバルASEAN (出所) 現代ASEAN経済論(石川幸一、朽木昭文、清水一史) 第11章 第11-1表(231頁)より 21 6.AECで注目される地域 ・インドシナ半島の大メコン川流域圏 (Greater Mekong Sub-region:GMS) タイとラオスを結ぶ第1∼第4友好橋 経済回廊の整備の進展 【(参考)アセアン統合に期待する点】 順位 項目 回答率 1位 通関手続きの簡素化(通関申告書の統一、シングル・ウィンドウ化) 63.9% 2位 税制面での二重課税防止 32.0% 3位 CLMVでの輸入関税撤廃 29.6% 4位 原産地規則に係る解釈・運用の統一 28.2% 5位 熟練労働者の移動自由化 24.7% 6位 非関税障壁(ライセンス要件、強制規格など)の削減 23.3% 7位 ASEAN共通の基準・認証・表示制度の導入 20.9% 8位 域内の公平な競争環境の整備 18.5% 東西回廊 東部回廊 9位 資本移動の規制緩和 17.6% 南部回廊 中央回廊 10位 サービス業の出資規則緩和(ASEAN企業は最低でも70%) 16.0% 南部沿岸回廊 北部回廊 (出所)JETRO、「在アジア・オセアニア日系企業実態調査(2014年度調査)」より 南北回廊 22 6.メコン経済圏主要指標 名目GDP 2014年 (億ドル) 人口 2014年 (万人) 1人当たりGDP 実質GDP成長率 2014年 2010−13平均 (ドル) 対内直接投資 2013年 (百万ドル) 経常収支 2014年 (億ドル) 合計特殊出生率 (2013年) カンボジア(C) 161 1,531 1,049 7.00% 42 ▲ 20 2.86 ラオス(L) 117 690 1,693 8.10% ▲7 ▲ 30 3.02 ミャンマー(M) 628 5,142 1,221 7.60% n.a. ▲ 45 1.94 ベトナム(V) 1,861 9,063 2,053 5.60% 1,956 100 1.74 タイ 3,738 6,866 5,444 3.10% 6,620 142 1.34 タイ+CLM 4,644 14,229 3,263 4.00% 6,655 47 1.52 タイL+CLMV 6,505 23,292 2,792 4.50% 8,611 147 1.58 (参考) インドネシア 8,887 25,149 3,534 6.20% 3,676 ▲ 262 2.34 (参考) ASEAN計 24,745 61,700 4,011 5.80% 56,362 788 2.22 (出所) 2015年9月29日時事通信社シンガポールトップセミナー「越境交通インフラにより強化されるメコン経済圏」、地域経済研究所 春日尚雄氏作成資料より抜粋 23 6.CLMVの「立ち位置」 国名 後発ASEAN GMS 陸のASEAN (大陸部) シンガポール ブルネイ インドネシア フィリピン マレーシア 〇 タイ 〇 〇 カンボジア(C) 〇 〇 〇 ラオス(L) 〇 〇 〇 ミャンマー(M) 〇 〇 〇 ベトナム(V) 〇 〇 〇 域内関税撤廃 ↓ AEC形成 ↓ 更なる自由化 ↓ 単一市場 ●AECはCLMVにとって はチャンスとリスクの 両面を持つ (+)経済の活性化 (ー)競争激化 (出所) 2015年9月29日時事通信社シンガポールトップセミナー「越境交通インフラにより強化されるメコン経済圏」、地域経済研究所 春日尚雄氏作成資料を一部加工 24 6.陸のASEANをつなぐ経済回廊 【相互通行が可能な国境】 東西回廊 東部回廊 南部回廊 中央回廊 南部沿岸回廊 北部回廊 南北回廊 (出所) 国土交通省「我が国物流システムの海外展開を考える」 2015年3月より 【トラック輸送の経済合理性】 (コスト) トラック 船舶 バンコクから700km圏内 トラック輸送が競争力を持つ 500∼800km (距離) 25 7.アジア域内の生産分業体制の考え方(1) ● フラグメンテーション理論とは −多国籍企業主導の産業集積とそれに伴う域内貿易拡大を説明する理論 −これまで1ヶ所で行われてきた生産工程を細かいブロックに細分 (フラグメンテーション)化し、それぞれの工程に適した国や地域に 分散立地すること。 ● 核(コア)−周辺(ペリフェリー)集積・分散 −コア地域における各種コストの上昇 −サービス・リンク・コスト(輸送費)の低下 −工程間分業が容易な製品アーキテクチャーの製品から ● さらにどのPB(生産工程)から実施されるか? (1) 最終財として完成後、出荷される ⇔後工程の分離(サテライト工場への信頼) (2) 中間部品を製造後、マザー工場に戻す ⇔中間工程の分業(マザー工場に品質責任) 26 7.アジア域内の生産分業体制の考え方(2) 【アジア諸国の生産段階別輸出品目構成(単位:%、2012年)】 (出所)経済産業研究所「日中経済の課題と今後の展開」、河合正弘特任教授、2014年11月 より抜粋 27 7.アジア域内の生産分業体制の考え方(3) 【主な納入先と中期的な納入量の増減】 【アジア域内の生産分業体制の見通し】 (出所) 国際協力銀行「2014年度海外投資アンケート」 28 7.アジア域内の生産分業体制の考え方(4) 【デンソーのASEAN地域の分業戦略】 【ワーカー(一般工職)月額基本給】 (単位:米ドル) 522 北京 495 上海 広州 437 クアラルンプール 429 366 バンコク 272 マニラ 241 ジャカルタ 173 ホーチミン 155 ハノイ 137 ビェンチャン 101 プノンペン 71 ヤンゴン 224 ニューデリー 208 ムンバイ 194 バンガロール 0 (出所)デンソーインターナショナルアジア株式会社「デンソー のアジア戦略とカンボジア工場」(2013年12月)より抜粋 100 200 300 400 500 600 (出所)JETRO「第24回アジア・オセアニア主要都市・地域 の投資関連コスト比較」(2014年5月)」より 29 7.アジア域内の生産分業体制の考え方(5) 【生産拠点を1拠点以上保有する国別回答社数】 【タイとインドネシアの自動車生産体制の比較】 350(社) 300 組立 250 16社 12社 1次サプ ライ ヤー 700社 170社 2・3次サ プライ ヤー 1700社 350社 タイ インドネシア 200 150 100 50 0 (注)本設問の回答社数は617社。 (出所)国際協力銀行「2014年度海外投資アンケート」 (出所)東京都市大学生活学部 井上隆一郎教授 作成資料より 30 8.メコン地域の製造業の変化 国名 製造業における主な変化 タイ ・電気・電子機器や自動車の生産、輸出拠点としての役割が増大 ・国内の労働者不足、賃金上昇から労働集約的産業が周辺国へ移管 カンボジア (C) ・縫製・製靴業の集積が進行 ・タイに輸出する自動車部品工場の新設が増加 ラオス(L) ・電力(水力)、鉱業(金・銀・銅・石炭・褐炭)等の資源開発が進展 ・タイに輸出する自動車部品工場の新設が増加 ミャンマー (M) ・天然ガスの開発・輸出が経済を牽引 ・縫製・製靴業を中心に、労働集約型の製造業の進出が増加 ベトナム(V) ・スマートフォンやプリンター複合機などのエレクトロニクス産業の集積が進行 (出所) 2015年9月29日時事通信社シンガポールトップセミナー「越境交通インフラにより強化されるメコン経済圏」、地域経済研究所 春日尚雄氏作成資料より抜粋 31 8.メコン地域の生産分業の進展 会社名 分散先 マザー工場 生産品目・目的 物流経路・距離 ミネベア プノンペンSEZ(カンボジア) アユタヤ(タイ)他 ・小型モーター ・組立工程の分離 ・サテライト的分割 ・南部経済回廊(ポイぺト 経由) ・約700km デンソー プノンペンSEZ(カンボジア) アユタヤ(タイ) ・オイルクーラー等 ・組立工程の分離 ・労働力の確保 ・南部経済回廊(ポイペト orコッコン経由) ・約700km サバナケット、サワン・セノSEZ(ラ オス) アユタヤ(タイ) ・カメラ一部工程 ・組立工程の分離 ・リスク分散 ・東西経済回廊(コラー ト・コンケン経由) ・約600km 矢崎総業 コッコンSEZ(カンボジア) チャチェンサオ (タイ)他 ・ワイヤーハーネス ・労働集約工程の分離 ・労働力の確保 ・南部沿岸回廊(トラート 経由) ・約400km 日本電産 ポイペト近郊(カンボジア) ・HDD部品 ・サテライト的分割 ・リスク分散 ・南部経済回廊(ポイペト 経由) ・約250km トヨタ紡織 サバナケット(ラオス) ・四輪車用シート ・労働集約的工程の分 離 ・労働力の確保 ・東西経済回廊(コラー ト・コンケン経由) ・約700km ニコン アユタヤ(タイ)他 レムチャパン (タイ) (出所) 2015年9月29日時事通信社シンガポールトップセミナー「越境交通インフラにより強化されるメコン経済圏」、地域経済研究所 春日尚雄氏作成資料より抜粋 32 8.CLMV各国の経済発展シナリオと問題点 国名 有力シナリオ 考えられる問題点 ベトナム (V)(北部) ・電機・電子産業の集積が進行 ・中国華南地域(1200km)との工程間分 業の進展(cf. バンコクまで1500km) ・特定の企業・製品への集中が顕著となる ・裾野産業の育成が上手くゆかない ベトナム (V)(南部) ・石油資源の開発(中部∼南部) ・部品産業、縫製業+カンボジアとの工 程間分業の進展 ・北部より高い人件費が足かせとなる ・ハノイとの二重構造が持続・強化 カンボジア (C) ・タイプラスワン+ベトナムプラスワンとし ・教育水準が低いまま人材難となる て企業立地が進展 ・インフラ等の整備が進まず、輸送コストが低 ・部品産業、縫製業、観光業が発展 下しない ラオス(L) ・タイプラスワンの更なる進展(タイ語が 通じビジネスに有利) ・電力豊富(水力)、鉱物資源が潤沢 ・国内市場が小さい(人口規模小)、内陸国 ・輸入依存が継続 ミャンマー (M) ・タイプラスワンの進展 ・天然ガス資源、縫製業の更なる発展 ・インフラ未整備 ・政治的過渡期による混乱(民主化進展せ ず) (出所) 2015年9月29日時事通信社シンガポールトップセミナー「越境交通インフラにより強化されるメコン経済圏」、地域経済研究所 春日尚雄氏作成資料より抜粋 33 8.CLMV各国の共通課題 1.ASEAN6との経済発展の差が大きい −幼稚産業保護論 −CLMVに自動車完成車プラントは維持不可? (二輪、自動車部品産業は進出可) 2.予測を上回るコスト上昇による投資環境悪化 −大きな期待に対して不十分な供給 −結果として「割高」な新規投資地域となる可能性 3.行政の非効率性と低い透明性 −貿易・投資環境整備の遅れ、手続きの煩雑さ −賄賂、不正、腐敗の多さ 4.インドネシア、インドの存在 −CLMVにない豊富な労働力供給と大きな潜在消費市場 (出所) 2015年9月29日時事通信社シンガポールトップセミナー「越境交通インフラにより強化されるメコン経済圏」、地域経済研究所 春日尚雄氏作成資料より抜粋 34 まとめ.日本企業・産業にとってのASEAN統合の意義(1) 【アジア諸国の日本、韓国、中国、インドに対する好感度調査】 回答国/に対して 日本 中国 インド 【凡例】 韓国 マレーシア 84% 78% 45% 61% ベトナム 82% 19% 66% 82% フィリピン 81% 54% 48% 61% オーストラリア 80% 57% 58% 62% インドネシア 71% 63% 51% 42% パキスタン 48% 82% 16% 15% インド 46% 41% − 28% 韓国 25% 61% 64% − 中国 12% − 24% 47% 日本 − 9% 63% 21% 中央値 71% 57% 51% 47% 100% 高い 好感度 低い 0% (出所)Pew Research Center, Spring 2015 Global Attitudes survey, Q12より 35 まとめ.日本企業・産業にとってのASEAN統合の意義(2) 1.マーケットとしての重要性 →引き続き成長余地あり(中間層の拡大) 2.生産地としての重要性 →CLMVとの連携が進展すれば、生産コスト抑制可能 =物流の効率化がポイント 3.地政学・国際競争力からみた重要性 →親日国多し。 →(日系)サプライチェーンの重層化=競争力の源泉(特に、自動車産業)。 4.人口構成からみた強み →AEC全体では今後も引き続き若い地域となる →高齢化が進む日本と人材面で補完関係にあり 5.国際生産分業の観点からの相互補完性 →日本(開発、付加価値品)とAEC(組立、部品・量産品)は相性が良い。 →中国、インド市場への橋頭保としての意義大 36