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平成28年春号 - 京都府印刷工業組合

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平成28年春号 - 京都府印刷工業組合
春 号
2016 春季特別企画
プリプレス部会研究セミナー「電力自由化について」
京都府印刷工 業 組 合
2016 Vo l
. 634
目次
巻頭言/理事長 瀧本正明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
春季特別企画 プリプレス部会研究セミナーより
「電力自由化について」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
平成28年新年互礼会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
平成27年度近畿地区印刷協議会例会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
第6回近畿地区印刷協議会懇親コンペ開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
モデル企業見学会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
平成27年度親善ボウリング大会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
労務対策セミナー開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
高度化技術講座開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
組織・共済セミナー開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
ビジネスモデル事業研究・情報交換会開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
京都府印刷企業の賃金実態調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
2月・3月定例理事会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
支部だより/上支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
東山支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
下支部・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
会合だより/プリプレス部会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
/京都青年印刷人月曜会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・32
/プリントネクスト2016参加報告
(京都青年印刷人月曜会)・・・・・・・・・・・・・・・・33
/京都印刷協和会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
統計だより/中小企業景況調査・京都府の概況より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
/印刷産業関連指標・京都府工業統計
(印刷業)
より・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・37
組合員ニュース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・38
ビデオ・DVD貸し出しのご案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45
事務局からのお知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
印刷会館利用状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・46
組合日誌・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47
組合員異動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
訃報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
編集後記・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・48
春号表紙イラストレーション コンセプト
春の動物園が好きだった。どこにいても、莫大なエネルギーを感じた。目がさめ
たばかりの生命で溢れかえってぎらぎらとした、命そのものを生きているある種の
情熱のようなものを、私は全身で浴びるように感じたことを覚えている。
京都造形芸術大学こども芸術学科3年次生 露木かおり
巻頭言
私の履歴書
京都府印刷工業組合理事長
瀧本 正明
私は昭和24年12月5日、石庭で有名な龍安寺(京都市右京区)の近くで生まれました。
大病もせずすくすくと育ち、6歳になると、立石電気発祥の地であり、現在の社名「オ
ムロン」の本社近くにある御室小学校に入学。当時の自宅や学校の周りは田や畑ばか
りで、その隙間を縫って澄んだ小川が流れていました。お腹が減ると、近くの畑にあ
る新鮮なトマトやキュウリ等で空腹を満たし、日が暮れるまで遊びに熱中する幼少期
でした。
昭和37年4月、双ヶ丘中学校へ入学。この頃の私は背丈が低いことにコンプレック
スを抱いていました。バスケットボールクラブに入れば身長が伸びると勧められ、3
年間頑張り抜きましたが残念ながら一度もレギュラーにはなれなかった。それでも、
授業の時間以外は練習に明け暮れる日々を過ごしました。一番辛かったのは双ヶ丘を
一周するハードなランニングでした。
昭和40年4月に高等学校へ進学しましたが、我が家は7人兄弟という大所帯のため、
16歳にもなれば自分のことは自分で面倒をみなければなりません。学費もアルバイト
で稼ぐ必要があり、毎日早朝から牛乳配達に精を出しました。
小学校、中学校までは近所の友達とばかり遊んでいましたが、高校生になると、京
都市外、遠くは滋賀県、大阪府など広範囲の地域の友人ができました。やがてバスケ
ットボールよりも友人との交遊の方が楽しくなり、クラブを辞めて色々な遊びを覚え
ました。学校は休みがちになり、親が呼び出されたこともあります。今思えば、高校
は母親に卒業させてもらったようなものです。
昭和43年の春、無事に高校を卒業し、父親の営む「やまとカーボン社」に勤務する
ことになります。入社当初は文字通り朝から晩まで働き通しで、休みは月に1度、有
るか無いかでした。しかし、忙しい中にも遊ぶ時間はしっかり作る。深夜12時位に仕
事が終わると、1人で祇園のクラブ、バーへ出かけて朝まで飲み明かし、帰宅して2、
3時間寝てはまた仕事に向かう。そんな不規則な生活がしばらく続きましたが、やが
て生涯の伴侶と巡り合い、27歳で結婚。亀岡に新居を構えることになりました。
2
● ●
当時の「やまとカーボン社」の設備は、今の様に輪転機、多色機は無く、活版機と
平版機が半分位の割合でした。最初の10年位は工場内の勤務だったので、自社の設備
以外に知る由もなく、何も疑問を感じませんでしたが、昭和55年位から営業で他の会
社を訪問するようになって愕然としました。他社の工場ではフォーム輪転機が主流に
なっていて、弊社の設備ではどうあがいても勝てない事がわかったからです。
他社に負けないためには大手の輪転機の導入が必然であり、父親に直訴しましたが
中々許してくれない。「それなら自分で買う」と威勢よく言ったものの、若輩だった
私に銀行が融資してくれる故もなく、もう一度父親に頭を下げ、説得を重ねることで
ようやく購入することができました。
この頃の日本は高度成長時代の真っ只中で、購入した輪転機もフル回転してくれま
した。しかし、世の中は輪転機のように上手く回らない。当時の工場は円町の住宅地
の中心にあり、輪転機の音が近隣の迷惑になるため午後9時以降は機械を止めなけれ
ばならない。そのため、
納期に間に合わず顧客から叱られることもしばしばありました。
この場所でこれ以上続けるのは無理だと判断し、工場の移転を前提に然るべき物件
を探していたら、京都市南区にあるサンエムカラーという印刷会社の松井社長が理想
的な立地の工場を紹介してくれました。2人の間ではとんとん拍子に話が進みました
が、最終段階でまたしても父親に反対され、一時は破断寸前にまでなります。親が息
子の行動を心配するのは当たり前でしょう。しかし、この移転の成否が会社の未来を
左右すると確信していたので、父親には後から時間をかけて説明すれば必ず理解して
もらえると信じ、私の独断で契約を進めました。
そして平成元年、京都市南区上鳥羽へ工場を移転。以来、輪転機を24時間フル稼働
させても苦情は来なくなりました。加えて、大型トラックを横着けできるようになる
など利便性も格段に向上し、その後の事業拡張に大きく寄与してくれました。今振り
返れば随分大胆なことをしたと思いますが、このときの決断は正しかったと信じてい
ます。
今回は聊か個人的且つ手前味噌な話に終始してしまい誠に恐縮ですが、私の例を挙
げるまでもなく、経営者はいつ何時も判断と決断に迫られます。そこで、私は
KKD、
「K(経験)とK(感)とD(度胸)」をモットーにしています。経験があれば感
も冴え、勘が冴えるからこそ決断ができるからです。そして決断には度胸も要る。常
にこの三つの言葉を頭の片隅に置いて行動しています。
さて、4月から新しい年度がスタートしました。本年度も当組合は組合員の皆様の
経営力向上と業界全体の活性化のための諸事業に全力で取り組む所存です。関係各位
の皆様におかれましては、これまで以上にご支援・ご協力を賜りますよう切にお願い
申し上げます。
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2016.4
2016 春季特別企画
2016 春季特別企画
プリプレス部会研究セミナー
「電力自由化について」
講師/久保 誉氏(大阪ガス㈱エネルギー事業部ビジネス開発部電力チームリーダー)
セミナー会場
去る3月3日(木)午後6時より京都印刷会館2階大ホールにおいて、プリプレス部会第15期 第1回研
究セミナー「電力自由化について」
(京都青年印刷人月曜会共催)
が開催されました。
電力自由化に伴い、既存の電力会社以外の参入が促され、サービスや料金メニューで自由に電力会社を
選べる時代になっています。
今回の研究セミナーでは、早くから電力事業に取り組み、新電力
(特定規模電気事業者)
の中でも圧倒的
なシェア(30%以上)を占める、㈱エネットの共同出資者である大阪ガス㈱ご協力のもと、同社エネルギー
事業部電力チームリーダーである久保誉氏を講師にお招きし、これまでの電力事業制度改革の歩みと今後
の電力自由化の方向性について研修しました。
春号の特別企画では、本研究セミナーの講演要旨をご紹介いたします。講演では、電圧の違いや使用状
況により、新電力に切り替えてメリットを受けやすいケースと受けにくいケースがあるなど、その理由も
含めて詳しく解説していただきましたので、経費削減策の一環で新電力への切り替えを検討するうえでも
大変参考になる内容となっています。是非ご一読ください。
はじめに
皆様今晩は。私は大阪ガス㈱ビジネス開発部電
力チームの久保と申します。「何故ガス会社が電
気の話を?」と思われる方がいるかもしれません。
しかし、私が電力チームに配属された7年前は、
今よりもっと認知度が低く、営業活動もままなら
講師の久保誉氏
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プリプレス部会研究セミナー「電力自由化について」
ない状況の中、電力小売営業をしておりました。
がて「この仕組みを何とかしなければ」という機
最近はコマーシャルの効果もあり、徐々ではあり
運が高まり、規制緩和や自由化の波が広がってい
ますが知名度も上がって皆様にもご認識されつつ
きました。
あるのではないかと思っています。本日は、規制
これまでの電力電気事業制度改革
緩和に伴う電力自由化の流れやこれからの方向性
等についてお話させていただきます。
初めに規制緩和の話です。水・電気・ガス等は
次に、日本におけるこれまでの電気事業制度改
生活に必要なものなので、社会基盤
(インフラ)
と
革の推移をご説明します。1995年から4次にわた
して整備する必要がありました。普及させるため
る電気事業制度改革が実行されました。第1次制
には1社が地域を独占する方が効率がよいため、
度改革が行われたのは1995年です。初めに発電部
地域独占によるインフラ整備が進められてきまし
門での競争原理が導入され、卸供給事業(IPP事
た。弊社も監督官庁である今の経済産業省の管轄
業)が可能となりました。卸供給事業とは、一般
のもと、ガス事業に取り組んできました。
電力会社(関西電力や東京電力等)向けに電気を卸
しかし、電力送電網やガス配管等の整備がある
売りする事業のことをいい、大阪ガスもこのタイ
程度整ってくると、
「規制緩和
(市場の開放)
」と
ミングで電力事業を開始しました。
いう段階がやってきます。電気事業においては、
第2次制度改革が行われたのは1999年です。こ
1990年位から世界各地で規制緩和が広がっていき
れより電力小売りの自由化が開始します。初めに
ました。1994年にイギリスで電力自由化がはじま
特別高圧受電のお客さま(大規模な工場や商業施
り、次にドイツで1998年に電力自由化がスタート
設等)向けの電力小売が自由化され、関西電力以
しております。アメリカでは1990年代に州毎に自
外から電気を購入する仕組みができました。弊社
由化が進んでいきました。そして日本では1995年
もこの時点から電力の小売事業に参入しています。
から自由化が始まりました。
さらに4年後の2003年に第3次制度改革が行わ
れ、自由化の範囲が拡大、高圧受電のお客様も関
西電力以外から電気を購入できるようになりまし
た。加えて電力取引市場の整備が行われ、取引市
場から電気を調達することが可能になりました。
また、新電力が小売に参入しても、送配電系統は
一般電力会社の送配電網を使用するため、取引に
あたってのルールが策定されました。さらに、取引
の監視を行う中立機関も同時に設立されています。
そして2008年に第4次制度改革が行われ、新規
事業者の参入促進を図るため取引市場をさらに活
性化させる取り組みが行われました。家庭用の低
圧もこのタイミングで自由化するという話があっ
電力事業における規制緩和の広がり
たのですが、競争条件の整備が先決として、先送
りとなり制度改革が終了しました。
日本では、自由化される以前は地域を独占した
垂直統合型の事業を営んでおり、発電から送電、
これからの電力自由化の方向(電力シ
ステム改革の流れ)
小売から営業まで一貫した事業を行っていまし
た。また、電気料金も「総括原価方式」といい、
コストを積み上げていく料金体系を採用していま
低圧の自由化は2013年を目途に改めて議論され
した。
当初はそれがスタンダードだったのですが、
るということになりましたが、2011年の東日本大
電気代はどうしても高くなる傾向にあり、諸外国
震災の発生に伴いエネルギーの事業環境が激変、
と比べても日本は特に電気代が高かったため、や
日本でも一気に自由化が進んでいくことになりま
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2016.4
2016 春季特別企画
した。
を目指して広域的に系統を運用する新しい機関が
震災後、原子力事故の危惧が広がるとともに、
できました。
計画停電の実施や電気料金の値上げが発生し、こ
2つ目の柱は「小売の全面自由化」です。4月
れまでの垂直統合型の電力事業の問題点が浮上し
から低圧も自由化され、特高・高圧受電のお客様
てきました。1番の問題は電力の融通が利かない
から低圧受電のお客様まで自由に電力会社を選べ
ことです。それぞれのエリア毎に電力会社が電力
るようになります。
供給事業を行っているので、エリア外への融通が
3つ目の柱は「法的分離による送配電部門の中
うまくできないという問題が発生しました。特に
立性の一層の確保」です。今も電力会社の送電部
東日本は50ヘルツ、西日本は60ヘルツという日本
門は会計的に分離されていて中立性も保たれてい
特有の問題があり、東で電気が足らないときに西
ますが、法的分離により中立性をより一層確保し
から一定量以上の電気を送れないという問題が生
ようとしています。それぞれのロードマップが次
じました。また当時は電力小売に取り組む会社が
の表です。
少なく、競争原理が働かないため電気料金がどん
どん上昇するという事態も発生しました。
また原子力発電に過剰に依存するのはリスクが
大きいという認識が広がり、多様な電源を使って
リスク分散するのが賢明との観点から電力システ
ム改革が行われる運びとなりました。
電力システム改革は、電力システム開発専門委
員会において3つの目的のもと、3つの電力シス
テム改革の柱を設定して検討が進められました。
1つ目は「安定供給」です。原子力発電への依
存度を低下させるためには、再生可能エネルギー
の導入促進や分散型電源など多様な電源の活用が
電力システム改革のロードマップ
必要と結論づけられています。
2つ目は「電気料金を最大限抑制」することで
2015年の第1段階では、広域系統運用機関が設
す。競争原理の促進やメリットオーダーによる発
立されました。全国レベルでの需給調整機能の強
電の徹底等が検討されました
(メリットオーダー
化や広域的な系統計画の策定が行われました。
とは、発電コストの安い発電所から順番に動かす
2016年度に第2段階が始まり、電力小売が全面
ことです)
。
自由化されます。低圧を使用する家庭やお店でも
3つ目は「需要家の選択肢や事業者の事業機会
電力会社の選択が可能になります。その他、電力
を拡大」することです。お客様の多様なニーズに
小売市場を活性化させることを目的として1時間
対応するため、他業種・他地域からの新規参入促
前市場が創設され、1時間前でも取引ができる仕
進が検討されました。
組みが作られたり、インバランス料金の単価を
最近では私達ガス会社だけでなく、携帯電話事
JEPX市場(日本卸電力取引所)の単価に連動させ
業者やインターネットプロバイダ、更には地域外
る取り組みも行われる予定になっています。イン
の一般電気事業者など多種多様な事業者が電力事
バランス料金とは新電力事業者が一般電力会社に
業に参画してきています。
支払うペナルティ料金です。電力は需給と供給を
これらの目的をもとに、電力システム改革の3
合わせないといけない同時同量ルールがあり、新
つの柱が作られました。1つ目の柱は「広域系統
電力の供給が不足した場合は一般電力会社が代わ
運用の拡大」です。これまではエリア毎の電力会
って供給をすることになっています。この不足電
社が送電系統の運用をしていましたが、前述の通
力分に対して対価を支払わなければならず、この
り融通の問題があるため、最適な電源系統の運用
対価の事をインバランス料金といい、それぞれの
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● ●
プリプレス部会研究セミナー「電力自由化について」
地域の一般電力会社が価格を決定しております。
木エネルギーサービスという特定電気事業者が電
そのインバランス料金を市場価格に連動する仕組
力供給を行っており、特定されたエリアの電力需
みに変えられようとしています。
要を100%賄う自家発電機を有していました。計
2020年度に予定されている第3段階では送配電
画停電が実施された時には話題になりましたが、
部門が法的分離されます。加えてリアルタイム市
事業として成り立たせるには困難な課題も多く、日
場が創設され、より効率的な需給調整ができる仕
本全国にも数件程度しか事例はありませんでした。
組みが作られようとしています。
最大の課題がエリア内の電力需要を100%賄え
る自家発電設備を有することです。この条件から
電力供給の仕組み
事業採算性が成り立ちにくく普及が進みませんで
した。が、ここでも規制緩和が実施され、100%
の基準が50%まで緩和されております(残りの50
次の資料は経済産業省がまとめた「電力供給の
%は他者からの調達で良くなりました)
。関西で
仕組み」という資料です。
は岩崎南地区
(大阪ドームの南側)
が規制緩和後で全
国初の特定電気事業となっております。
新電力での電気供給の仕組み
次の表は、
新電力で電気を供給する仕組みです。
電力供給の仕組み
まず、黄色く囲った部分が自由化前の電力体制
で、当時は一般的事業者
(関西電力や東京電力)
が
それぞれの送電網を使って電気を送っていまし
た。また一般電気事業者に電力を卸売りする卸電
新電力による小売について
気事業者
(電源開発や日本原子力発電)
という大規
模で国の機関が所有する発電事業者等がありま
これまでは、関西電力等の一般電力事業者の発
した。
電所で作られた電気を、同じ会社の送電網を使っ
そしてIPP事業
(卸供給事業)を起点に自由化が
て一般の需要家にお送りしていたのですが、規制
進み、新電力が創設され、電力小売ができるよう
緩和で新電力も電気を供給できることになりました。
になりました。
新電力に切り替えると、お客様の電力メーター
また新電力とともに、特定電気事業と特定供給
に通信設備が取り付けられ、これによりリアルタ
という制度もできております。
特定電気事業とは、
イムに検針ができるようになります。先程、同時
特定された供給エリアの需要に対して電気を提供
同量ルールのご説明をしましたが、この遠隔検針
する事業です。東日本大震災が発生したとき、東
により需要と供給をマッチさせることが可能とな
京電力が計画停電を行いましたが、六本木ヒルズ
ります。この量が合わない、仮に足りなかった場
の周辺だけは停電しなかったということで一時話
合は関西電力が代わりに電気を供給することにな
題になりましたが、これは六本木ヒルズの周辺が
り、新電力会社は一般電力会社に不足分の電気代
特定電気事業エリアとなっていたためです。六本
相当額(インバランス料金)を支払うことになりま
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2016.4
2016 春季特別企画
新電力事業者数の推移
新電力の電力シェア
す。従って、仮に新電力の発電所が止まったとし
際に商業ベースで小売事業を行っているのは60社
ても停電する心配はありません。送電線で電気は
程度となっています。
繋がっているので、そのまま一般電力会社の電気
次の表は新電力のシェアと新電力各社のシェア
が流れることになります。余談ですが、仮に新電
です。
力がお客様の需要より多く供給した場合は一般電
新電力が業績を伸ばしているとはいえ、全体の
力会社が一定量以上分については無償で引き取る
電力使用から見るとそれほど大きな割合を占めて
ことになっています。従って、どれだけ同時同量
いるわけではなく、2014年度の新電力のシェアは
を合わせることができるかが新電力会社の事業運
5%位でした。しかし、直近では10%を越えたと
営において、大きなポイントになります。
いわれており、新電力のシェアはどんどん拡大し
次の表は新電力登録事業者数の推移をまとめて
ています。
います。
次に新電力における各事業者のシェアをご覧く
2000年に自由化され、初年度に登録したのは商
ださい。エネットを筆頭に、F-Power、丸紅、JX
社系の2社で、三菱商事系のダイヤモンド・パワー
日鉱日石エナジー、日本テクノ、日本ロジテック
と丸紅です。ダイヤモンド・パワーは現在、中部電
という順です。数多くの事業所がありますが、上
力の子会社となり新電力の活動を続けています。
位10社位でほとんどのシェアを占めています。
大阪ガス、東京ガス、NTTファシリティーズ
エネットは、比較的早い時期からスタートした
の3社で作ったエネットは2001年に事業登録し、
ことに加え、親会社が電源を沢山保有しているこ
弊社も電力小売事業に参入することになりまし
と、親会社の販売網を活用して電力販売してきた
た。その後、しばらくは規制や販売環境が厳しか
という経緯があり、シェアは参入当初よりずっと
ったこともあり、それほど新規参入事業者は増え
ナンバー1を維持しています。数年前は50%程度
ていませんでした。転機を迎えたのが、2011年の
のシェアがあったのですが、最近は他の新電力の
東日本大震災です。電力システム改革もあって新
勢いが伸びてきているためシェアは下降気味とな
規事業者が参入しやすい制度が整いました。ちょ
っていますが、決して販売量が落ちているのでは
うど、
再生可能エネルギーの買い取り制度ができ、
なく、他の新電力の販売の伸び率が大きいため相
一気に太陽光発電が注目された時期でもありま
対的にシェアが落ちてきています。2014年度は41
す。この頃より新電力の電気事業者の登録数が増
%となっていますが、直近では30%程度になって
え始め、今もその傾向は続いています。資料を取
います。
りまとめたときの事業者累計は567社だったので
先日、この表では6番目にある日本ロジテック
すが、今ではさらに増えて800社位になっていま
という会社が電力小売事業から撤退するというニ
す。しかし、登録事業者は増えているものの、実
ュースが飛び込んできました。資金繰りがうまく
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● ●
プリプレス部会研究セミナー「電力自由化について」
電源となっております。新電力への切替えによる
電気料金削減メリットは、お客様の電力消費状況
により大きく異なるのですが、実はこの電源構成
が大きく影響しています。ベース電源を沢山使う、
つまり一日中電気を使うお客様はメリットが出に
くい構造となっており、一方でミドル電源、例え
ば昼間に沢山使うお客様は比較的メリットをご提
供できるお客様になります。
我々はよく負荷率(ある期間中の負荷の平均需
要電力と最大需要電力の割合)という言葉を使い
ますが、負荷率の高いお客様より低いお客様の方
がメリットを提供しやすくなります。負荷率が高
新電力の電源構成
いお客様は夜もたっぷり使うお客様で、負荷率が
行かなかったと言われていますが、急激に規模が
低いお客様は昼間だけ使用量が増えるお客様とな
拡大する会社は抱えるリスクも大きくなると感じ
ります。計算式は、年間の電力使用量(Kwh)/
ています。
契約電力(Kw)×24時間×365日=負荷率です。
次の表は新電力の電力構成です。
負荷率が概ね40%を超えるとメリットが出にくく
新電力の電源には火力発電、水力発電の他、太
なり、40%を切るとメリットを出し易いという構
陽光等の再生可能エネルギー、バイオ発電等があ
造になっています。昼間の電力使用量が多いお客
ります。また、電力取引所からも電力を調達する
様、例えばオフィスビル等は、夜は人がいなくて
ことが可能となっており、その割合は各社でそれ
余り電気を使わないので供給しやすいお客様とな
ぞれ異なります。
ります。逆にメリットを提供しにくいお客様は、
エネットの場合は親会社である弊社や東京ガス
夜間に使用料の多いお客様で、ホテル、データセ
が比較的大きな発電所を所有しているので、大部
ンター、病院、24時間稼働の工場等となります。
分はそこから賄っていますが、それ以外にも発電
なお、新電力の中には、お客様の電力使用状況、
事業者との相対契約等により全国で約150カ所の
例えば時間別、日別、月別、曜日別等の使用量を
電源を確保しております。CO2排出係数も比較的
インターネットで確認できる “見える化” サービ
低い方となっております。
スを無償で行っている会社があります。エネット
なお、直近では電力取引所での取引額が大変安
がご提供する “見える化” サービスは、当初は斬
価に推移しており、発電所を沢山持つことでかえ
新で評判も高かったのですが、今では多くの会社
って不利になるケースも出てきております。一方
で、電力取引所の取引額は変動が大きいため、依
存度が高いと取引額が高くなったときの影響が大
きくなるため、エネットでは長期かつ安定的に確
保する方向で事業に取り組んでいます。
一般電力会社に対して新電力の一番不利な点は
ベース電源
(24時間連続した発電)
を持たないこと
です。ベース電源とは、原子力、水力、石炭火力
等による発電で、新電力にはこのようなベース電
源を確保しにくいという状況があります。弊社が
所有する天然ガスの火力発電所はミドル電源
(主
に平日昼間時間帯に発電)と呼ばれています。エ
部分供給のご提案
ネットも確保できている電源のほとんどがミドル
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2016.4
2016 春季特別企画
が同様のサービスを提供しています。
費用が発生するケースもあるので、「ご心配なら
先程、負荷率の高いお客様はメリットが出にく
事前に検討されては」とお薦めする程度となって
いと述べましたが、規制緩和により、新たにメリ
おります。
ットの出る供給方法ができました。部分供給とい
低圧より時間かかるのは、通信工事が発生する
う方法で電気を1社から購入するのではなく、2
ケースが多いためです。今は一般電力電力会社の
社から調達することが可能になりました。
従って、
メーターがついていますが、同時同量を行うため
負荷率が高いお客様に対しては、ベース部分を関
には遠隔検針できる装置が必要となり、その通信
西電力に供給してもらい、その上にある負荷追従
工事が標準5週間かかり、加えて手続に2週間か
部分をエネット等の新電力が供給するという方法
かるので、概ね2か月必要となります。
で現状よりもメリットのあるご提案が可能となり
次に契約関係と運用体制をまとめた資料をご覧
ます。
ください。
部分供給ができるようになり、これまで供給す
契約はエネット等の新電力と交わすことになり
ることが難しかった病院、工場、ホテル、コンビ
ます。新電力は一般電力会社と接続供給契約を結
ニなどで供給事例が急増しています。
びます。さらに特別高圧受電のお客さま、もしく
は自家発電設備を有しているお客様については
送配電系統運用に関して一般電力会社と運用申
合書を交わすことになります。
運用体制については資料の下段をご覧くださ
い。電力の契約に関することは新電力に問い合わ
せていただけばいいのですが、送配電系統に関す
る問い合わせは、新電力の供給であっても一般電
力会社が受けることになっています。停電作業や
受電設備の改造工事、引き込みに関する作業がそ
の対象となります。これらの作業については、例
え新電力との契約であっても関西電力にお問い
合わせいただくことになります。
供給開始までのスケジュール
新電力の提供開始までのスケジュール
次の表では供給開始までのスケジュールをまと
めています。
低圧はすぐに手続きできるのですが、特別高圧
は相応の手続が必要になり、切り替えに概ね2か
月程度かかります。
最初の手続きは承諾書を一般電力会社に提出す
ることです。これにより、エネット等の新電力会
契約関係と運用体制について
社が一般電力会社に送電線の利用に伴う託送契約
の申込を実施します。この託送契約の後、お客様
次に検針について説明させていただきます。
と電力売買契約を締結することになります。
新電力に切り替わった場合、自動検針となるた
意思決定の2か月前に、事前検討という手続き
め、現地までメーターを読みに行く必要がなくな
が行われることがあります。これは任意で、最近
り、毎月1日の零時が検針日となります。また新
はやらないことの方が多いのですが、お客さまに
電力への切替えに伴いメーターの取替えや通信工
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プリプレス部会研究セミナー「電力自由化について」
ない世帯ではメリットをご提供できず、4人以上
のご家族の場合、いくらかのメリットをご提供で
きることになります。
切り替えの手続は簡単です。スイッチング支援
システムというのがあり、これを用いれば簡単に
切り替えることができます。携帯電話の切り替え
をイメージしていただければよいかと思います。
1月より供給地点特定番号というものが交付され
ましたので、皆様にも関西電力より供給地点特定
番号のお知らせが届いていると思います。これを
持ってお申し込みいただければ、先程述べた支援
システムにより、廃止連絡や新電力と関西電力等
検針について
との託送契約が自動的に結ばれるようになってい
事が発生しますが、それらの工事費は一般電力会
ます。スマートメーターも順次取り換えが行われ
社の責任範疇となり、基本的にはお客様の初期投
ることになっており、後は必要書類をお渡しし、
資が発生することはありません。
供給を開始するだけとなります。
私からのご説明は以上となります。
低圧電力への切替えについて
ご清聴ありがとうございました。
(文責・編集委員会)
4月から低圧受電のお客さまも自由化となりま
すが、先程述べていた高圧と違い、こちらは負荷
※当セミナーの模様をビデオ収録(DVD)してい
率の高い、電気をたくさんお使いになるお客様の
ます。貸出ご希望の方、セミナー資料の必要な
方は組合事務局までお申し出下さい。
方が安い料金を設定できるようになっています。
例えば単身や御夫婦だけのような余り電気を使わ
(事務局TEL 075-312-0020)
京都造形芸術大学こども芸術学科3年次生
露木かおり
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2016.4
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