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フ イ リ ヒ〝 ン共和国にお け る広域行政 ・ 地方自治体連合化の取 り 組み

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フ イ リ ヒ〝 ン共和国にお け る広域行政 ・ 地方自治体連合化の取 り 組み
る
. また中央政府も 地方分権 化を促進する 施策
として, 1991 年地方自治法で 認められた地方自
治体間の協力の 方策を検討し ,市町村合併や広
域行政の推進に 取り組んできている・
フィリピンの 市町村合併や 広域行政について
日本ではまだあ まり紹介されていないが ,本稿
では広域行政の 一手法であ る地方自治体の 連合
化の事例を紹介する.そしてその 事例を通して ,
フィリピンにおける 中央政府の地方自治体支援
の役割 や ,地方自治体間の水平的協働関係の 構
築に よ る行政の効率化について 考察する.
み
地方自治体は 財政規模が小さく ,事業実施の経
験も乏しく,自律的に地方自治を行 う には困難
な状況にあ る.
地方自治体が 自立発展していくための 方策は
各自治体に委ねられており ,そのため市民参加
や民間活用といった 方策も取り入れられてい
組
り
取
おけるさまざまな 事業の実施に 関する興味を 失
ったかのようにも 見受けられる. しかし多くの
の
は地方開発政策や 地方に
入口
( 中央省庁 )
ヒ
Ⅰ
,
中央政府
体
フィリピンでも 1980 年代後半より 地方分権 化に
取り組んでおり , 1991 年地方自治法 (Local
of1g91)1) の実施によって ,
GovernmentCode
中央政府から 地方自治体へのさまざまな 権 限委
譲にかかる制度上の 改革はすでに 完了してい
る.同法によって地方行政は地方自治体が 主体
となり自律して 行 う ものとされたが ,そのため
子
雅
木
々
ィ左
多くの国で地方分権 化が進められているが ,
自治
ゲ行
地
政
域
広
る
お
ヲⅠ
国
口
エ小
止ト
/
ン
ピ
イ
フ
1. 広域行政の概要
はじめに
1. 概念
広域行政とは 一般に「 2 つ 以上の地方自治体
の区域を越えて 特定の事務を 広域的に処理する
仕組み」を指している (佐々木, 1998). しかし
その形態はさまざま 考えられ,狭義には①複数
の地方自治体による 共通の事務に 関する共同処
理が挙げられるが ,広義には②州 や県などの広
域的自治体による 行政事務の処理,③制度的に
行政区域を分けるリージョン 制や道州制などに
よる広域的行政事務の 処理,④中央省庁が地方
出先機関を置くことによる 地域的な行政事務の
処理,というような分類が考えられる , , .
行政事務の広域的な 処理が求められる 背景に
は,住民の生活圏の広範化や求められる 事務の
高度化・多様化があ る. また住民の少子高齢化
による保健医療・ 福祉の充実の 要求や学校の 統
廃合,財政的な効率化・支出の 適正化なども 広
域 行政が求められる 理由となる.地方自治体が
小規模に分節化 (丘agmentation)することも逆
に広域行政による 統合化の動きを 生んで い ると
いう (村 _h,1993, NelsonandFoster,1999).
中央省庁の出先機関による 地方行政は中央に
よる行政執行に 比べれば,事務の効率化や住民
に対する肌理細かな 対応も可能となる. しかし
地方分権 化が進む国では 出先機関の統廃合など
が進められ,地方における行政事務は地方自治
体 に移管されてきている
110
(252)
横浜国際社会科学研究
第 10 巻第 2 号 (2005 年 8 月 )
2. 複数の地方自治体による 共通の事務に 関す
る共同処理
中央省庁の出先機関や 州や県などの 中間団体
とは別に,地方自治体が共同して広域の 事務処
州の法令や憲
理にあ たる場合には ,通常,国や
章 (chaれer) で認められた 共同体組織 (連合や
衛生分野
事務団体。 委員会など
は,行政改革・地方分権 推進 " のなかで。 中央
政府の財政負担の 軽減化を図り ,なおかつ地方
自治体が自ら 望んで地方行政の 主体となるよ
う ,中央政府が市町村合併の 促進及び広域行政
)
が設立される.法人格
の有無や議会・ 議員,もしくは評議会・評議員
や委員会・委員の 公選制または 任命 制 ,民主的
手続きの有無,住民の参画の可・不可など ,そ
れら共同体の 組織や制度はさまざまであ る.共
同体組織の事務局は.そこに加盟する地方自治
体のなかで中心となる 自治体の役場内に 置かれ
る場合もあ れば,加盟する複数の自治体の 範囲
で 地理的に中心となる 場所に設置されることも
る.共同体組織事務局の職員は加盟する 自治
体の職員が派遣される 場合もあ れば,独自に雇
用する場合もあ る.財政的には起債権 限を持っ
場合もあ れば,加盟する 自治体の拠出金によっ
てまかなわれている 場合もあ る.施設の使用料
や行政サービスの 代価からも牧人を 得ている.
地方自治体間の 共同事業においては 財政面で
の効率化が大きく 見込まれるが ,権限・責任の
所在があ いまいになりやすく ,行政事務の執行
あ
の効率化と民主的な 行政のあ り方において , 相
反する特徴があ るといえる.
広域行政制度はさまざまな 形態によって 行わ
れているが,行政範囲の広域化と多様化・ 高度
化する行政需要に 効率的に対応するための 手法
であ り,また地方分権化が進む中で 地域行政の
あ り方が見直されてきていることによって
,広
域行政の必要性はいずれの 国においてもますま
す 高まってきていると 考えられる
3. 日本およびアメリカでの 広域行政
日本では広域行政は 法令で定められた 制度と
して,また地方分権化を支える制度として 政府
によってその 取り組みが促進され ,地方自治体
間 の一部事務組合や 広域連合の組織化によって
広域行政が行われている.事務の内容は環境・
療分野
(
( ゴミ処理・し
尿処理など
)
や保健医
母子保健や老人保健,伝染病対策など ),
社会福祉分野
( 障害者福祉,老人介護など ) ,
文化センタ一などの 運営や観光振興,農林水産
業振興などでも 施設の設置・ 運営などが行われ
ている. 日本における 広域行政の特徴のひとつ
等を推進し,地方自治体の行政体制の整備・ 確
立を図ってきているということだろう.
フィリピンはアメリカから 独立した際に 植民
地行政下の多くの 制度を引き続き 採用したた
め ,アメリカの広域行政制度にも 触れておく必
要があ ると考えるが ,フィリピンとアメリカで
は,まず単一主権国家と連邦制国家という 大き
な違いがあ り,広域行政については特にアメリ
力 からその概念や 制度を導入したということは
ない・
アメリカの政府構造は
,連邦政府の下,州政
府,カウンティ と ,地方自治体および準 地方自
治体の 3 層の地方行政レベルからなる , カウン
ティの制度は 州により異なるが。 歴史的にはカ
ウンティは州の 出先機関として 設置されてお
り,州をひとつの国と見なすならばカウンティ
は 州 と地方自治体との 間に置かれた 中間団体と
見ることができる・ アメリカでは 一般に広域行
政制度といえば , カタ ンティによる 地域行政や
サービスごとの 特別区の設置,自治体間協定に
よる事務の共同処理が 挙げられる, 1980 年代の
レーガン政権 下で行われた 連邦制改革は 分権 化
を 進めたといわれるが ,この時期にカウンティ
はその役割を 大きく変えてきている. また最近
でも巨大都市と 周辺自治体の 関係が問題として
再度クローズアップされている.いくつかの州
で カウンティと 地域の地方自治体との 共同によ
るメトロポリタン 政府 (Metf0p0l
№ nG0vernment),
いわゆるメトロ (metro) が形成されてきてお
り.それがもっとも新しい広域行政システムの
フィリビン共和国における
広域行政・地方自治体連合化の
形式といえる.
きよりも中央政府の 政策で進められている.
フ
ィリピンでは 地方自治体の 連携は 1991 年地方自
,中央政府の
積極的な働きかけはない.内務自治省の一部局
が細々と促進活動を 行っているのみであ る. し
かも現状でいくつかの 地域で自治体間の 独自の
連合化が進められている.そのような違いがあ
る
(253)
111
B. フィリピンの 中央・地方関係
4. フィリピンの 広域行政の特徴
茨草以降でフィリピンの 広域行政の状況を 見
ていくが,フィリピンの自治体連合の 特徴を簡
単にまとめると ,次のようなことがいえる.
例えば日本とフィリピンとを 比較して,日本
では市町村合併や 広域連合が中央政府によって
推進されているが ,自治体側からの積極的な動
治法 によって制度化されたものの
取り組み (佐々木 )
・
通常,多くの 国で中央政府の 働きかけで進め
られた広域行政や 自治体間の連携,特に町村合
併は政治的な 理由,首長間の政治的な抗争や 権
力者が既得権 益を守ることによって 頓挫しがち
であ るが,日本では中央政府によって 積極的に
推進され,自治体の財政的な理由などにより 自
治体が連合化を 選択している 状況であ る. これ
は長く機関委任事務制度を 採用し官僚制が 強固
日本であ るからこそ,他国よりも比較的に成
功していると 考えられるが ,フィリピンでは日
本とは異なる 理由で,自発的な連合化の動きを
見ることができる. フィリピンでは 地域に共通
した問題に対する 共同した取り 組みや,あ るい
は地域で協力することでより 経済的な効率性や
効果を生むためといった 財政的な理由のみなら
ず,中央政府に対して地域が 一丸となることで
な
1, 地方行政制度
(1) 概
略
フィリピンは 単一主権 国家で,中央政府と 3
階層の地方自治体。 により構成される.地方自
治体は面積,人口,財政規模により
階層上位の
州・高度都市化 市 ・独立構成 市と ,中間層の構
成市
pT (municipality)
, 下位 層 の 村
(Barang 町 : バランガ イ ) という構成であ る.
フィリピンにおける 中央・地方関係は (1)
・
植民地統治期から 独立 期 , (2) 1959 年地方自治
法施行以降, (3) マルコス権 威主義体制による
中央集権 期 , (4) 1986 年の民主化以降, (5)
1991 年の地方分権 化以降, と 5 つの時期に分け
て考えることが 適当ではないかと 考える.
これらフィリピンの 地方行政制度の 変遷を分
析する際に押さえておくべきは ,政治状況の変
化であ る. 1986 年 2 月以前の中央集権 的な植民
地 統治とその後の 民主主義の導入,長期独裁政
権 による政治の 腐敗,権威主義体制による 中央
集権 化,それによる行政の機能不全 と , 1986 年
2 月以降の民主化と 政権 交代による政治行政の
不安定という 要素があ り,それらを加味して検
討することは 重要であ る.それらの要素は中央
政府だけに見られる 現象ではなく ,地元の権力
者が政治的支配者となる 地方自治の状況におい
ても同様であ ると考えられる. フィリピンにお
ける地方自治の 出発点は 1959 年地方自治法であ
るが,その後の長期独裁政権 と 80 年代半ばの民
主化運動を経て ,地方自治の分岐点となるのは
1991 年の地方自治法であ ろう.いずれにしても
政治主体の変革が 行政の改革を 促しているとい
地域に利益を 誘導するという 政治的な目的で ,
,る
地方自治体首長間で 自発的に連携している 状況
が見られる. この点がフィリピンの 広域行政の
(2) 歴史的変遷
特徴であ ると考える.
ペインの植民地支配を 受け,さらにアメリカに
引き継がれて 50 年の植民地行政 下 にあ り,中央
集権 的な植民地統治が 続いた. その後第 2 次世
界大戦を経て 1946 年に独立するに 至り,フィリ
フィリピンは 16 世紀より約 300 年にわたりス
112
(254)
第 10 巻第 2 号 (2005年 8 月 )
横浜国際社会科学研究
ビン人による 政治行政が行われることとなっ
Authon 吋 ) はマニラ首都圏評議会によって 組織
た.民主主義をはじめさまざまな面でアメリカ
の影響を受けた 制度が導入されながら ,引き続
き植民地統治の 中央集権 的なトップダウン 式の
行政システムを 採っていた.
される特別地方自治体と 位置づけられており
しかし, 1959 午には市長の 公選制を導入し
(RepublicActNo.2259),
地方自治法 (Local
AutonomyActof1959,RepubIicActNo,2264)
に
よって市町への 徴税権 など財政的権 限を付与
,バリオ憲章 (Barrio Charter of 1959,
RepublicActNo.2370) によって村を 行政機関
と認めるなど ,地方行政制度に大きな変化がも
たらされた. さらに 1967 年の地方分権 法
(DecentraIization Actof1967, Repu Ⅲ c Act
No.5185) で国の権 限・機能の一部を 地方自治
体に授けるなど ,発展と民主化の手法として地
方分権 化が取り入れられていった.
1965 午から 86 年 2 月まで続いたマルコス 権 威
し
主義体制下の
地方行政政策では.地域㎝ egion)
制が導入されて 中央行政機関から 地方出先機関
へ権 限委譲が行われ、 行政の非集中化・ 分散化
が行われている. しかしこれは 地方の政治勢力
に対して補助金などの 財政統制を行 う 中央行政
府の影響力を 強める目的を 有していたと 見るこ
とができ,中央集権化の手段であ ったと考えら
れる・
現在,地域制による行政管区は全国 17 に分け
られているが "., このうちコルディレラ 行政地
域 (CordlIleraAdmlnlstratlveReglon:
CAR) と
ムスリム・ミンダナオ 自治区 (Autonomous
ReglonofMusllmMlndanao:AR
迅 rM) の 2 つの
出域は知事 (ReglonalGovernor) を首長とする 自
治区 政府 (autonomousregionalgovernment) と
して認められている ".. 実際には ARMM
は 1990
年 11 月に発足したが , CAR は地域内の各州及び
市が組織化を 望まず,参加表明は 1 州のみだっ
たため自治区政府はなく ,その他の地域と同様
ょ
0 行政管区のひとつとなっている.
またマニラ
首都圏 (NationalCapぬ lRegi0n:NCR) のマニ
ラ首都圏開発局 (Metro ManilaDeveIopment
,
大統領より直接の 監督を受ける 行政団体であ
る
2. 体制の改革
1965 年以降 21 年間にわたる 長期独裁政権 が続
いたこと,また地方においては 地主などの地元
有力者が首長となることが 多いことから 金権 政
治がはびこり ,政治家のみならず行政官におい
ても汚職が一般的となっていた. しかし民主化
運動が頂点に 達した 1986 年の ェドサ 革命によっ
て独裁政権 が終焉を迎え ,アキノ政権が誕生し
て以来,地方分権化は政治権 力の分配が焦点と
なり,民主的な政治体制への 改革は中央政府の
解体を意味し , 併せて行政制度の 改革も進めら
れた.国から地方自治体へ 政治的自治的権 限が
委譲されるとともに 行政事務の主体的な 担い手
改善を図る
と位置づけられ ,同時に,官僚制の
ために中央政府と 地方自治体との 関係を向上さ
せることが地方分権 化のプロバラムに 挙げられ
た
政策決定・実施におけるさまざまな 場面で市
民や NGO の参加が可能となり ,地方の自立発
展が求められることとなった.そのため地方分
権 化が推進され , 1991 年地方自治法により 地方
自治体には中央政府からさまざまな 権 限・ 財
源 ・人材が移管された.
3. 1991 年地方自治法の 影響
国の事務・権 限・職員が地方自治体に 移管さ
れたことにより 農業省,保健省,社会福祉
省,
教育文化スポーツ 省などの省庁において ,その
地方出先機関であ る地域事務所の 事務は,地方
自治体による 行政事務のモニタリンバや 監督,
技術指導が主となり ,それまで主管していた事
務や実施していた 事業の多くが 予算,機材,人
材ごと地方自治体に 移管された.そのため地方
分権 化の当初は地域事務所が 空洞化したような
状況を生んでいた. フィリピンにおいても 各省
フィリビン共和国における
広域行政・地方自治体連合化の
庁は各地域事務所を 通じて地方自治体の 関係部
局を監督・指導するという ,いわゆる縦割り行
政を行ってきていたが ,地域事務所が機能しな
くなったことにより 地方から中央への 連絡ルー
トが断絶されたような 状況となっていた. しか
し 各省庁で地域事務所の 機能は明確にされてお
り, 1991 年地方自治法による 地方分権 が安定期
にあ る現在では本省から 地域事務所へ ,地域事
務所から州政府の 関係部局を通じて 下位の自治
体 へと連絡ルートが 復活してきている.実際に
出先機関と本省との 連絡あ るいは出先機関と 地
方自治体との 連携が密であ るかどうかは 調査の
必要もあ るが,地域事務所の機能化は制度上図
られている
える .
取り組み (佐々木 )
(255)
113
しかし行政機構の 人員体制は大統領の 交
代に伴って変更されるため ,行政への政治的関
与が大きく,行政の効率性や一貫性は 阻害され
ている.また地方自治体においては ,財政的人
材的に脆弱な 自治体は基本的な 行政サービスで
さえ.その実施がよりいっそう 非効率化し,事
業の内容によっては 個々の自治体独自では 行い
得ないような 状況もあ る.
地方自治体間の 関係については ,フィリピン
にも自治体首長間の 組織が存在する.
知事連
り刊
(LeagueofProvlnces),市長連合 (League
合
ofCltles), 町長連合
組 ポ敵 されており,それら @ま Unlon
of
calAutho ltlesofthePhlIlpplnes (UIAP)
の
など
ⅡⅠ
(Ⅱ agueofMunlclpalltles)
ヵ3
丘
メンバ一組織としてその
傘下にあ る ". エ スト
4. 中央・地方関係の 変化
フィリビンにおける 中央・地方関係は ,民主
化のための地方分権 化や,その流れの 中での行
ラーダ政権 下で内務自治省長官を 務めた 元 ラグ
ーナ州知事リナ 氏は長官就任直前まで ULAP の
会長であ ったなど,組織の発言力・影響力は 大
政改革の一環で 地方出先機関の 縮小と地方自治
きい・
体への事務権 限委譲などの 視点を中心に 研究・
議論されてきているが ,このほか,例えば
連邦
制移行 や ,地方行政の構成を 3 階層から 2 階層あ
るいは 4 階層への変更,市町村の 吸収合併や連
携化など,地方行政の構造改革も議論されてい
このようにフィリピンは 行政機関も政治主導
の影響を受けやすく ,行政事務の実施において
る,
町村合併の状況については
,地方自治法に規
定された国内蔵 人割当 (internal revenue
aIlotment: IRA)" などの予算配分の 関係から,
町村合併よりも 町から市への 昇格や州の新設 と
いう状況を生んでいる. 1995 年 5 月現在で 78 州,
91 市, 1,528 町あ ったものが. 2005 年 4 月現在で
は 79 州, 115 市, 1,495 町になっている.バラン
ガイについてはこの
9 年間で数の変動はない
,・.
地方自治体が 行 う 事務内容は, 州 ・市・町・
村の自治体レベルごとに 地方自治法に 定められ
ており,また中央政府の各省庁が 行 う 事務の内
容については ,その省庁の設置法で責務・ 機能
が規定されており ,具体的には実施要領などに
より明確にされている.地方自治体と中央政府
では事務・機能分担は 明確になされていると ぃ
は停滞や非効率が 指摘されているところであ
る
が,市民参加や民間活用の導入でさらに 行政機
関の役割が不明確となってきており ,自治体間
の格差がますます 広がってきているよ う に伺え
る
フィリビンの 中央・地方関係は 地方分権 化に
よって地方自治体が 権 限や財源,人材を得たこ
とで制度上は 大きく変化したが ,実際にはそれ
ほどの変化を 生んではいないのではないだろう
か.特に財政面に焦点を当てて 国家予算の配分
を考えるならば ,国税収入の60 老を中央政府が
確保し 40% が IRA として地方自治体に 配分され
ているが,地方自治体 (州 市町 ) の IRA 依存度
は 1999 年現在で平均 78% (NCR を除く ) とな
っており,自治体独自の財源による蔵 人は平均
わずか 22 老であ る.町のみでは IRA 依存率は平
均 83% であ る. 中央政府が確保する 予算のうち
地方行政に当てられるものとして 省庁毎に地方
自治体への補助金や 助成金,国会議員の開発援
114@
(256)
第 10巻第 2 号 (2005年 8 月 )
横浜国際社会科学研究
助 資金,じわり る ポークバレル " に 当てられる
予算が取られるが ,地方自治体がそれらを得る
ためには中央政府に 対する政治活動が 必要とな
る. あ るいは地域開発評議会に 対する政治活動
ともなり ぅる .単純に申請し審査を受けるだけ
でなく,陳情などの行動も取られる. 1991 年地
方自治法で配分が 決められている IRA について
は問題ないとしても ,そのほかの財源から予算
をどのように 確保するかという 政治的な問題は
首長の手腕や 政治権 力のバランスに 依存せざる
を得ない状況を 作り出してしまっている. そし
て首長の権 力は場合によっては 地方自治体が 士
民のための行政機関として 機能することを 妨げ
ィ
1990 年内務自治省 法 (RepublicActNo. 6975)
実施規則・規定により.地方自治体に対し行政
上,財政上及び技術的な能力を 強化するために
技術援助を提供する 機能を有している.そして
地方自治体開発におけるモデル ,基準及び技術
的資料を形成し 開発する責任を 負っている ".
また 1991 年地方自治法実施規則・ 規定には地方
自治体のプロジェクト 策定・実施に 関するモニ
タリングシステムにおいて 内務自治省がその 役
割 を負
う
こと,地方自治体の政策・計画・プロ
、ジェク
ト
の策定に関する 大統領の監督を 内務自
治省が補佐する 役割にあ ることが規定されてい
る ",
(3) 地方自治開発局の
ることにもなっている ,
m. フィリピンにおける 広域行政と
地方自治体連合化
川
1. 広域行政体制整備の 背景
(1) 地方分権 化の影響
フィリピンでは 1991 年地方自治法施行後,中
活動
このことを背景として 地方自治開発局は ,
1992 年以降各地で ,地方自治体による開発事業
開始のためのワークショップ / セミナーを開催
した.この活動は当初,地方自治のための地域
管理アフ。ローチ (AreaManagementApproach
to LO]cal Governance:AMALoG)
フ。 ログラムあ
央政府機関から 地方自治体にインフラ 整備や保
整
健医療サービス ,農業普及事業,教育環境の
るいは包括的地域開発フレームワーク
備,観光開発等に 関する多くの 権 限が移譲され ,
呼ばれるもので ,地方土地開発計画 (地図作成 )
や財政管理などを 指導するものであ った.
その後,地方自治開発局は1991 年地方自治法
第 33 節に基づいて ,その IRA 額も低く,独自の
各地方自治体は 11
辿の 20% により開発事業を 実
施しなければならないこととなった・
フィリピンの 地方制度は 3 階層の政府体系に
より構成されているが ,この3 階層では,それ
ぞれの階層の
(Integrated 肚eaDevelopmentFramework)
と
財源,資源,人材,機材等では
開発事業実施が
中でも面積,人口,財政規模のみ 困難な , 特に歳入規模 別 レベルで第 4 クラスか
ならず,地域のポテンシャルは天然資源をはじ
め,地形による交通の利便性や 地元産業の発達
度 ,人材,自治体職員の
行政能力などでも 格差
があ る.そのため,例えば州 レベルでは自治体
ら第 6 クラスの町を 対象に,地方自治体の 連携
化を促進する 目的で地方自治体クラスター・ア
(LocaIGovernment
プローチ・プロジェクト
独自に開発事業を 行い
を開始した・
う
るが,規模の小さな ,
UHt-C
Ⅰ
ster@Approach@Pro5
ct:@LGU-CLAP
特に山間部や 小さな島の町では 住民のニーズに
応えるような 開発事業が十分に 行いえないとい
う現実があ る,
1991 年地方自治法
第 33 節 地方自治体間における 協同事業
(2) 内務自治省地方自治開発局の
「各地方自治体はしかるべき
役割
内務自治省地方自治開発局 (Departmentof
Interlorandlx NCalGovernment
、
一 Bureauofl
刀 cal
GovernmentDeveIopment:
DILG-BLGD)
は
Ⅰ
条例により集
合し,合併し ,あるいは協調して ,それら
各地方自治体に 共通の利益のためにサービ
ス ,資源を調整することができる.このよ
フィリピン共和国における
広域行政・地方自治体連合化の
115
地 に点在していることは 確実であ る.
州 レベ の自治体連合も 形成されている.例
えば,マニラ首都圏に隣接する 第 4 地域に含ま
れていながら 島峻 という地理的ハンディキャッ
な取り組みに 賛成して,関係する各地方
自治体は,その 目的のために 行われる公聴
う
ノレ
会の後。 当該議会による 承認に基づいて ,
参加する自治体による 覚書によって 合意さ
れた期間及び 条件のもとで ,資金。
不動産,
機材及びその 他の種類の資産を 寄与し,職
員を任命あ るいは選任することができる.」
(訳 :
(257)
取り組み (佐々木 )
プ があ
る東
ミンドロ, 西 ミンドロ,マリンデュ
ケ,ロンブロン 及び パ ラワンの 5 州からなる連
合体
ミ
マロ パ は,第4 地域でマニラ 首都圏によ
り近いカラバ
筆者 )
ツレ
ソン ( カビ テ ,ラグーナ,バタン
ガス,リサール,ケソンの5/ v) との経済的格差
サ
同プロジェクトの 下にクラスター 化に参加し
た自治体はイサベラ 州,イ ロコススール 州 ,ロ
から自立発展のための 活発な活動を 展開し。
2002 年に第 4 地域は A 地域カラバルソンと B 地
ンブロン 州, イロイロ州の 4 州内で合計 28wT あ
域
り, 2000 年 6 月現在 5 つのクラスターが 設立され
この行政管区の 変更が地域発展にどの 程度影響
を 及ぼすかはまだ 確認できないが。 分離の法令
化・施行という 地域の要請に 政府が対応した 例
であ り,それぞれの地域での異なる 行政二 一ズ
への対応はより 容易となるだろう. また単なる
行政管区としてではない ,その連合体による活
動 が連携をさらに 緊密化させ,行政の効率化に
つながっていくことが 考えられる.
ている. これらは内務自治省各州事務所の
促進
により連携化したもの ,あるいは 町 同士が自発
的に連携化し 地方自治開発局より 指導を受けて
いるものなど ,その組織化の経緯 や ,また活動
の目標などは 様々であ る.連合組織の形態も
様々で,コーポラティブとして共同資金を持っ
ているものもあ れば。 法人化せず共同資金を 作
らず,事業毎に連携するが担当 町 が資金・施設
等を提供するというものもあ る.共同基金でも
事業毎の出資でも ,共通の目標のために資金・
機材・人材・ 資源を提供し
合い,共同して事業
ミ
マロ パ の 2 地域に分割されるまでになった.
2. 内務自治省地方自治開発局のクラスター・
アプローチ・プロジェクト
概 要
地方自治開発局が 作成した LGU-CLAP
い)
を行 う というものであ れば,地方自治開発局が
指導する連携化の 主旨に沿ったものであ り,法
的に認められた 地方自治体間の 財政的連携の 方
策 であ る.地方自治開発局はさらに同 プロジェ
クトの全国展開を 図り, 2001 午にはカラバルソ
共通の開発目的のために 一州内で連携化され
ンおよびミンダナオ 地域
している・
(カ
ガヤ ン デオロ近隣
)
の町 へ 同プロジェクトへの 参加をⅠ 平 びかける活
動を行っている.
(4) 独自の連合化の
動き
また, 1992 年以降内務自治省により 地方自治
地域管理アプローチや 包括的地域開発フレー
ムワークが紹介されながら ,同省による連携化
の 指導がな い 地域でも,地方自治体が独自に連
合化するという 動きが起きている.内務自治省
ではそれら独自の 自治体連合の 具体的な数は 把
握していないようであ るが,それらの組織が各
につ
いてのガイドブック " によれば,クラスターは
た,歳入規模別 ランクで第 4 クラスから第 6 クラ
スの ,
3 つから 7 つの町からなる
自治体連合を 指
クラスターを 構成する各町はニーズや 要望,
潜在性,資源で共有するものがあ り,そして隣
接あ るいは地理的に 近隣にあ るものであ るべき
とされている.それらはより大きな開発の 必要
条件を満たすために ,連携化することあるいは
利用可能な人的・ 物的資源を共同利用すること
を望んで い ることが前提条件であ る. また地方
自治開発局は , 各 W 長は要求される 利用可能な
財源,人的,物的資源を
い とれず提供するべき
であ るとの判断基準を 設けている.
116
(258)
横浜国際社会科学研究
第 10巻第 2 号 (2005年 8 月 )
連携化は,バループ内の各町の努力を 調和さ
せ,資源を共同利用することを通して発展が 促
進されるという 概念に基づいている. また,
LGU-C
P の主要な目標として ,報酬のある雇
用や富を得るより 多くの機会を 通じて地方貧困
者の生活の質を 向上させることや ,クラスター
グな 行い,クラスター化の見込みがあ る町を確
認する.
メンバ一内での 収入や資源の 公平な分配が 行わ
協力を得て, 3 日間の開発マッピンバに 関する
セミナーを含んだクラスター・アプローチに 関
するセミナー・ワークショップを 開催し,参加
皿
れる状況へ発展することの 達成を挙げている.
同ガイドブックには LGU-CLAP
の利点とし
て ・①地域の Gro 耐:hCenterStrate 幼仰を実施
するための手段となりうる ,②クラスター化し
た地方自治体内での 乏しい資源の 公平な分配を
通して,より大きな利益が 確保される,③特有
の文化が保護される ,④プロジェクトの実施が
促進される,⑤コミュニティにおける統 - 性や
強さが明白にされる ,⑥周囲の町の開発ニース。
が確言思 され,それに応じることができる ,とい
うことを挙げている.
(2) 地方自治開発局によるⅠ GU-CLAP 推進の手法
地方自治開発局は LGU-CLAP
を推進してい
くにあ たり,以下のことを同プロジェクトの 目
的としている・
①・隣接する W をクラスターとして 正式に組織化
する.
②クラスタ一内の 各町間における 相互支援を通
じて「一村一品運動」を 推進する.
③町の発展のために ,その資源や施設,サービ
スの利用を統合し
,最大化する.
④発展のプロセスに 広範囲にわたって 人々が参
加する
よう
動機を与
え
,動員する.
⑤発展のプロセスに 合理的かつ 統 - された指導
を提供する.
⑥コミュニティ 及びコミュニティメンバ 一の福
②フェーズ 2 : クラスター化計画 : 開発マッピン
グに関するセミナー・ワークショップの 開催
住宅・土地利用調整 局 (HLURB)
の 内務自治省開発計画スペシャリスト
やその他
等の技術
自治体のゴ ーノレや 目標について 共通点、 を探り ,
一つのクラスターとしてのビジョンを 形成す
る. LGU-CIAP
に関するワークショップではク
ラスタ一のプロファイリンバ ,クラスタ一計画
の準備,投資プロバラムの作成 (優先プロジェ
クト・活動の 選定やプロジェクトの 分類 ) 等の
活動を行う.開発マッピンバに関するセミナ 一
では経済構造の 確認,社会的Ⅰ物質的インフラ
ストラクチャ 一の確認,土地資源の確認,制度
上の能力の確認等を 行う.
③フェーズ 3 : クラスタ一の 組織化
それぞれの自治体で 町長, 副 町長,計画開発
担当官,議員等が集まり,クラスター参加につ
いて協議する. クラスター参加が 望ましいとさ
れれば議会で 正式に承認し ,町長に合意書を交
す権 限を与える.その後各自治体の 町長,職員,
NGO 代表が集まって 合意書にサイン し ,クラ
スターを正式に 組織する.続いて 管理委員会,
プロジェクト 開発管理スタッフ ,総務経理スタ
、ソフ,分野別タスクフオース
,その他委員会を
創設する.
④フェーズ 4 : クラスタープランニンバおよび
プ
ログラミンク。
とを示している.
クラスターとしての 開発の方向性を 明確にす
るとともに,開発計画のための手段としてのク
ラスタ一の概念を 明確にする, また基礎,情報に
係るさまざまなデータを 集めた ぅ えで (必要な
指標はガイドブックに 示されている ), クラス
①フェーズ 1 : 組織化双
タ一 開発フレームワークプランを 策定する.
地方自治開発局が 地域事務所および 刑 事務所
を通じて LGU-CLAP
についてのブリーフィン
⑤フェーズ 5 : 合法化および 採択
祉向上のためのより 多くの機会を 提供する.
また,地方自治開発局はクラスター化の過程
を次の 7 つの段階に分け ,各段階で行 う べきこ
内務自治省刑事務所長と 町役場職員の 地方自
フィリピン共和国における
広域行政・地方自治体連合化の
(259)
取り組み (佐々木 )
117
治 運営担当官 (MunicipaILocal Government
Operationso 田 cer:MLGoo)
が調整して,ク
ラスタ一管理委員会が 策定したプランをクラス
ター参加予定の 各町議会 ( サンガニアンバヤン )
および開発計画委員会において 提案する.それ
ぞれで合法化され ,採択されれば実施可能とな
道路省の地区事務所のスタッフ 等からなり,
CMB により任命される.地域マネージャ 一の
指示・監督のもとに ,定例・特別会議への 出席,
る
⑥フェーズ 6 : クラスターブランの 実施
プロジェクト 案の優先順位付け ,さまざまな分
野の計画の地域開発計画・ 投資計画への 整理統
合,必要なモニタリンバ・評価報告の準備等を
それぞれの役割を
明確にする.政府機関や州政
府もクラスタ 一のプロジェクト 実施を配当金の
割当などで支援するものとする
,
⑦フェーズ 7 : モニタリンバ 及び評価
クラスター・アプローチの 成功はプロジェク
ト・プロバラムの 効果的な実施にかかってい
る.実施状況を明らかにするために ,モニタリ
ング及び評価を 行
う .
ザル の認定,採用
されるプロジェクトプロポー ザル の再検討・ 処
理 ・評価および 推薦,基準を設けることによる
ハ
打つ
@
9 総務・経理スタッフ
・
地方自治体のみならず ,プロジェクト 実施に
参加する民間セクターや 出資機関が確定され.
各町のプロジェクトプロボー
(AdmlnlSt
「
ahVe
and
FinanciaISta仕 AFS)
メンバー自治体のそれぞれの 収入役より選ば
れる収入役,予算事務スタッフ ,会計監査役,
管理委員会により 指名される総務スタッフ ,そ
の他により構成される.各町より出される資金
の管理,領収書等管理,帳
簿記入,支出,財政
状況及び共同資金の 定期会計報告,委員会への
(3) クラスタ一の 組織構成
その他必要時の 会計報告等を 行
各クラスタ一の 組織については ,管理委員会,
プロジェクト 開発・管理スタッフ ,総務・経理
スタッフ,分野別タスクフォースノ委員会によ
り構成されている.それぞれの概要は次のと ね
り
④分野別タスクフォースⅠ委員会 (Sectoral
TaskForce: TrF)
副委員長,中央政府機関および NGO 代表,
地方自治体各部局長により 構成される.
プロジェクト 実施前の公聴会開催時の 支援,
さまざまな分野別計画・プロバラム ,活動の実
施のための動員の 支援,計画等実施状況のモニ
①管理委員会
(ClusterManagementBoard:CMB)
参加自治体の 町長により構成される ,委員長
う
.
をはじめ,副委員長,委員,地域マネージャⅠ タリングにおける 支援を行うことがその 役割で
書記の役職があ る.場合によっては下院議員や
その代理が副委員長に 任命されることもあ る,
その機能は政策決定,中央政府機関および民
間セクタⅠその 他の組織との 契約の締結,地
域マネージャ 一により準備された 予算の再検
吉井・
睦宵言忍
, フ。 ロジ ェ クト等に必要な 職員の りク
ルート・任命などであ る, ガイドブックには 各
役職についてもそれぞれ 権 限が示されている.
②プロジェクト 開発・管理スタッフ (Project
Development&ManagementS
㎡:PDMS)
(MunicipalHanningand
DevelopmentCouncil:MPDC),町役場の技官,
町 計画開発委員会
州 計画開発局・ 技術局のスタッフ ,公共事業・
あ
る・
事例として, 表 Ⅰに イ ロコススール.ロンブ
ロン,イロィロの3 州における 3 つのクラスタ 一
の概要を示す.
(4) 計画,実施プロジェクトの 成果および問題点
① ィ ロコススール 州ク ミロス
調査当時 1999 年 9 月に結成されたばかりで ,
ク
ミロス独自のプロジェクトはまだ 実施されて
おらず計画段階でしかなかったが
,計画として
,クラスタ一による未 整備道路の整備及び 幹
線道路に一番近いバチョコに 共同市場を建設す
は
ることによる 流通の活性化,既存の特産品を基
にした一村 -- 品 運動の推進
(バチョコ
: たばこ.
118
(260)
横浜国際社会科学研究
表
ア
第 10 巻第 2 号 (2005年 8 月 )
クラスターおよび 自治体連合の 概要
イ ロコススール/.l*1
ロンブロン 。 l *2
イロイロ
/サ什 3
第 2 イロイロ包括的地
域開発プロバラム
D)
(2nd 。a,ra Ⅸ
リ
ィ
ィ
クラスタ一
ク ミロス
カサガナーン
組織 名
C №sterU 団and
Munic めaI田esof
CASAGANAAN
Hloc.osSur
ン
エ
合ス
自
ⅡⅠⅡ白
リ
ン
クラスターイ列
(CUMILOS)
:
島 北部東部
山岳地帯の 5lST(す タブラス
の 4BJ
べて第 5 クラス)
甲南部地域の 第4 クラ 同州太平洋側の 第 5 ク
都市化問題を抱えるドマ
ス 3W,
ラス 4 町と第6 クラス 2 町
ゲッティ市を
中 , むに第3 ク
1999年 12月
1995年
第 5 クラス2 町
Banayoyo,udlidda, Cala 廿ava,San
Qulnno,San
Afgus Ⅱ n,San ね
E 血 lio,DeI 円地
MarIa,San ぬndres
㎝ modian,San
設立年月
1999年9 月
1997年 7 月
組織化の
概要
始まりは地方自治開
発局及び 刑 事務所
によるLGIJ-CLAP に
関するセミナ 一の開
催であるが, 同州で
1996年9 月
SanJuan,St.Bemard, ラス lW と第4 クラス 2町
Duma 雛ete ClⅣ, Va@encla,
Barbara, ㎏ on,New
㎞ ahaw ㎝, Hlnund 町an,
Bac0ng,Slbulan
ぬ cena,SalM 培lleI Hinunangan , Silago
ね
・
参加自治体
1997 午に刑事務所が サウザーンレイテ川内
地域開発マッピンバセ で 州都 て アシンより
ンブロンにおいて ミナーを開催し, LGU- 遠く離れた太平洋側
ん 虹 ,OG 着手時に, CU甲を導入.同年は 06 町がともに,州都
LGU-CLAP を導入. 選挙の影響で 活動は に近い地域に比べて
のクラスター 化は
1996 年 5 月に最初の 停滞, 1998 年より活 開発が遅れていると
; しており.それら
会合が持たれ ,その後 動が本格化. 平和と
事務所長の指導によ
それぞれの議会の 承 秩序, 保健衛生・環 が 集まって一つの 自
るところが大きい.
事務所長のアド ボ カ 認を経て,同年9 月に 境保護,農業・ 経済・ 治 体連合を独自に 結
シ一のもと, 各 合意書への調印が 行 貧困対策,インフラスト 成した. 1999 午に セ
MLGOO が各町に働 われている. しかし, ラクチャd ツーリズム,ブで行われた内務 自
きかけてクラスターを 共同資金の設置には 地方開発行政の 5 つ 治 省主催の能力開
設け , 発 セミナー(Capacity
結成している.
反対する W があ り,基 の タスクフォースを
Building@Seminar)
を 各町が担当している
本金 (Foundation)
参加時に町長間で
出し合い協会
(Association)
の形を
組織結成の話があ り,
1999 年 12 月にサンホ
取って@%.
り
地方自治開発局及び
第 4 地域事務所がロ
Ⅵ
Ⅱ ィ
言ゑ
宵足
リィイ
共同資金には 各町
がそれぞれ 1 万 ベソを
出資してⅠ必
自
,
マ何
考
備
ダ
﹂
コョ
的
目
アンが中心となって コ
一 ボラティブを 結成
ドマ ゲティ市の都市化
に伴い,周辺の 町 (バ
コーン,シブラン
,バレ
ンシア) と共同した行
政の必要性が 生じた
ことかケドマ ゲティ市
が中心となり 1 つの組
織を設立することとな
った.当時,内務自治
省や州政府計画開
発局より各自治体に
対し地域開発マネジ
メント計画 (Area
Devel0pmentm
㎝agement
Hah)が推奨されており,
各自治体はその 議会
の承認を経たうえで
1995 年に同評議会
設立のための 協定を
結んだ.
成
作
者
筆
フィリビン共和国における 広域行政・地方自治体連合化の
リドリ ダ : 石材及びエコツーリズム
,キリノ :
マンゴーあ るいは肉牛など ) があ がっていた.
共同市場に関してはクラスタ 一の共同資金よ
り建設することが 決まっていたが ,最優先課題
の道路建設では 道路整備のための 資金源が確保
されていないことが 問題とされていた. また道
路と共同市場ができれば 各町が共に発展できる
と信じて,市場・ 流通調査や ェ コ ソ一 リズムに
関する集客可能性調査等は 実施しておらず , 事
前 評価も行われていない.計画実施およびその
評価に関する 知識が不十分であ ると考えられ
る.内務自治省刑事務所はファシリテーターと
しての役割しか 担っておらず ,計画策定及び事
前評価において ,各技術面でのアドバイスが必
要 と考えられた.
②ロンブロン 州カ サガナーン
運営状況としては 当初の 1 年間は毎月会議を
行 い ,各町が交替で 会議主催を担当していたが ,
共同資金設置について 合意がとれず ,共同資金
の管理・運営が 可能なコーポラティブとして 登
記していなかった.そのため調査当時は共同資
金を持っていなかったが ,定例会議や研修の開
催時にホストとなる 町が予算を出すということ
になっており ,共同事業は全て事業毎に 協定書
が取り交されている.選挙期間中は活動を中断
している. 1998 年 9 月に投資セミナーを 開催.
1999 年 4 月にはコンピュータ・システム 等の共
同研修事業を 開催し、 第 2 イロイロ
D からも
参加があ った ). また一村一品運動促進 ( カラ
且
ス
トラバ : バナナ,サンオーガスティン : タイガ
一
ド
グラス,サンタマリア : しょうが,サンアン
レ
ンニク
)
にも取り組んでいる.その
後,道路・橋梁建設,沿岸資源管理
( マングロ
ーブ植林含め
), 固形廃棄物処理,保健システ
ムなどに関し 共同事業を行っていくことを 計画
していた・
結成時に内務自治省の 指導力が弱く・
取り組み (佐々木 )
(261)
③イロイロ 州 第 2 イロイロⅨ
JD (Integratedぬea
Development: 包括的地域開発プロバラム )
各種研修を共同開催した 実績があ る.研修の
内容はデータ 収集・分析手法,モニタリンバ・
評価,プロジェクトプロポーザル作成・フィー
、ジビリティスタディ 等を含んでおり ,カナダ国
CID ん LGSP," に
より研修運営の 資金を得ていた. アグロインダ
ストリ一に関しては 一村一品運動ではなく 家畜
飼育を含めた 農業技術の近代化・ 生産性の向上
にそれぞれの 町が取り組んでおり ,情報を共有
しているのみに 見受けられる.その他,各タス
クフォースで 情報収集や検討会などは 行われて
いたものの,全体としては具体的に共同プロジ
ェクト の実施はまだ 十分に検討されていないよ
際開発庁の援助プロジェクト
うであ った.
第 24 ロィロⅡD の印象は,資金を確保でき
れば共同事業を 行い得る能力は 十分にあ るが,
具体的に共同事業を 実施するまで 共同目標に対
する意識が高くはないというものであ る.歳入
規模 別 ランクで第 4, 第 5 クラスの町によるクラ
スターということもあ り,それほど切実に開発
ニーズがないのではないかと
思われる.内務 自
治 省の刑事務所が 積極的にクラスタ 一の活動を
促進し,助言を行っているが ,クラスターとし
て研修事業を 行 う のみで,まだ具体的に共同事
業の計画がない.そのため資金の管理・ 運営面
で 特に問題がないようで ,刑事務所長としても
まだ資金確保の 面で。 積極的に海外からの 援助
を自治体開発に 結びつけようという 考えはない
ようであ った.内務自治省刑事務所のみならず
州政府計画開発局の 指導も得ているため ,運営
状況は非常によいようであ る.そのためか具体
的な共同事業も 十分に行える 能力があ るよ う に
感じられた・
ィロィロ州では 内務自治省の LGU-CLAP
政治 勢
力争いがあ ったため組織化が 十分に行われず ,
そのためクラスターを 結成していながら 個々の
活動を行っているという 印象を受けた.
119
積極的に進められると
同時に, CIDA-LGSP
が
が
実施されていたため ,内務自治省のクラスター
は CIDA-LGSP
の支援を受け ,研修を行う こと
ができた. しかし CIDA-LGSP
では事業実施に
120@
(262)
横浜国際社会科学研究
おける技術協力は 行っていない.研修のみなら
ず,具体的に事業を計画立案し ,実施していく
段階で何らかの 支援が必要だと 思われる.
3. 独自に連合化した 自治体
(1) 概 要
1992 年以降内務自治省により 包括的地域開発
フレームワークが 紹介されながら ,同省による
クラスター化の 指導がない地域でも ,地方自治
体 が独、自に組織 するという動きが 起き.それ
らの自治体連合は 各地に点在している.
表 Ⅰに調査した 2 つの自治体連合, サゥ ザーン
レイテ 州と ネバロスオリエンタル 州の自治体連
合の概要をまとめている ". サウザーンレイテ
第 10巻第 2 号 (2005年 8 月 )
サンホ ア ン以外のそれぞれの 町で米・ アバカ
オイル・有機肥料・ 陶磁器を一品ずつ 特化して
生産量を上げ ,サンホアンにフェリーターミナ
ルと地理情報センターを 建設し,そこを拠点に
投資促進・販路開拓を 行っていくというもので
あ る.そのため,まず米国国際開発庁 (VS Ⅲ D)
の GOLD
プロジェクト " に 投資管理とサービ
スクオリティ 管理のセミナー 開催のための 支援
を申請していた.
同自治体連合は 町長間で共同の 目標・計画を
ィ卜
州は地方開発型の 自治体連合で , ネバロスオリ
エンタル州は 都市化対応型の 自治体連合の 例で
あ
る・
前者に参加する 自治体の共通の 目標には道路
網 整備と農業技術の 向上,生産品販売路の開拓
が挙げられており , 6 町が一つぼまとまること
で援助が得やすいと 認識している.各町より共
同資金へ出資もあ り,関係も良好であ る.
後者の自治体連合は 中心となる ドマ ゲティ市
が固形廃棄物処理及び 交通渋滞・公害の 問題
を,いかに周辺自治体を巻き込んで解決してい
くか,というところにその 設立の目論見があ り,
同時に他の開発事業についても 共同して資金を
利用するというものであ った.都市化する ドマ
ゲティ市の思惑に 対する周辺自治体の 政治的反
発もあ り,連合体としての具体的な取組みはま
ったく進んでいなかった.
(2) 計画,実施プロジェクトの 成果および問題点
① サウ ザーンレイテ 州の自治体連合
同に一度の州政府における 開発評議会の 会合
時に コ一 ボラティブメンバ 一で集まり話し 合い
を行っている. 2000 年 7 月にコーポラティブの
セミナーを開き ,その際にさらに4 町が同コー
ポラティブに 参加する予定であ った.同州には
lW の町があ るが,半数を占める 10 町によるコー
ポラティブとなる.プロジェクト 計 rU
面としては,
・
もって結成したということで ,町役場職員の地
方自治運営担当官 (MLGOO)
はさほど 同 コー
ポラティブの 活動に関与しておらず ,またそれ
ぞれの町長は 内務自治省に 全く期待していない
ように感じられた.同省刑事務所と同コーポラ
ティブの間には 全く関係がなく ,刑事務所も関
知するところでないといった 様子であ った. ど
ちらかといえば 相 互に不信感を 持っているとい
ぅ
印象" を 受けた.
サンホアンポリテクニックカレッジを
中心に
クラスターを 支援する事務局 ( および評議会 )
があ り,計画策定においては十分スタッフがそ
ろっているように 見受けられた. また中心とな
る 町長自身がビジネスマンであ
ることから,通
常,地方自治体に欠けているビジネスのノウハ
ウもここではすでに 持っているよ う に思われ
た、
・
中心人物であ るサンホアンの 町長は通信事業
でマニラと地元サンホアンに 企業を有する 経営
者で,地元には月の半分しか 滞在していない.
地元産業の活性化を 図っており,住民や近隣の
町長もサンホアンの 町長に期待するところがあ
るようだが,自治体職員の能力がどれほどのも
のか,全く量り得ない,町長の姿しか見えない
連合体であ った.そういう意味では政治的な 問
題が起きやすく ,またプロジェクトの持続,性も
町長の交替に 伴い , 危ういものとなる 恐れがあ
る
②ネバロスオリエンタル 州の自治体連合
メトロ・ ドマ ゲティ開発評議会は ,協定書で
フィリビン共和国における
は 初期の共同基金として
広域行政・地方自治体連合化の
ドマ ゲティ市が 50 万ペ
取り組み (佐々木 )
(263)
121
い .中央政府と地方自治体の 関係としては ,政
ソ, 3 町が 16 万 7 千ペソずつを 出資することが 同
府は地方自治の 基本政策をとり , 1991 年地方自
意されていた. しかし,協定通り 共同資金を出
治法に大統領がすべての 地方自治体に 対し総監
しているのは ドマ ゲティ市及びシブランの 2 自
治体で,しかしその後, バ コーン及びバレンシ
督となることが 規定されているのみであ
ァで国会議員からそのポークバレルが
る
約束され
るという政治的な 干渉があ り (つまりは自分た
ちで金を出し 合わずとも,政府からの金で事業
が行えるというもの ) , 定期的な会合はなく
同 2 町からの出資もないまま
,
,組織の活動は停
止していた・
共同事業として US Ⅲ D 及び CIDA
の資金提
供による研修事業実施の 実績があ るのみで,
ド
マ ゲティ市が中心となり 独自に連合化を 試みた
側 ではあ ったが政治的な 問題で頓挫している.
このように自治体連合を 設立する際の 条件や
設立後の資金で 自治体間の合意が 取れないよう
な場合もあ り,地方自治体の首長だけでなく 国
会議員の政治的な 影響力も伴って ,設立しても
まったく機首旨しないことにもなりうる.資金共
有によって事業実方 毎が 可能となり,さらに 目標
とする行政の 効率化を達成するということより
も,首長が往々にして 地元の権 力者であ るが 故,
権 力闘争のほうにより 関心を持つよ う であ る・
Ⅴ・フィリピンにおける 広域行政の問題点,
意義と発展の 可能性
1. 内務自治省の 事業促進および 自治体連合へ
の 支援
ここで国の役割という 点に注目して ,広域行
政に関する法令化や 基本方針の立案状況,内務
自治省の事業促進について 検討しょう・
法令については 1991 年地方自治法第 33 節で自
治体問の協同事業に 財政面での調整を 認めてい
るが,特に中央政府が広域行政を推進し ,市町
村合併を促進するような 指針や基本方針などは
発表されていない ,地方分権化が権 力の分散化
を 主眼としており ,それに伴って行政事務の委
譲が行われているため ,中央政府による地方行
政のあ り方については 明確に記述されていな
る. こ
の規定をもって 中央政府の権 限・機能としてい
・
2004-2010 年中期国家開発計画をみると 官僚
制の是正,公共部門の適正規模化や 地方自治体
を含めた全国的なコンピュータ・システムの 導
入 による固定資産管理の 普及などが目標とされ
ており.地方自治の促進や地方行政,広域行政
の計画などについてはアジェン
ダ とされていな
ⅠⅠ・
1991 年地方自治法施行以後,多少の法改正は
あ っても,同法の規定を具体化するプロバラム
やプロジェクトは 近年まったく 見受けられな
ⅠⅠ
地方自治開発局が 支援して設立された 自治体
連合は 2000 年 6 月現在で 5 クラスターしかない
が,他国援助機関の研修事業により 連合化が促
進された地方自治体バループも 多数あ る.内務
自治省が地方自治体の 開発支援を主管している
限りは,同省がそれらの自治体グループを 監
督 ,指導する役割を 担っていることは 当然のこ
とと考える.政府機関への信頼度は地域により
異なることが 見受けられるため ,各連合体がど
の程度内務自治省からの 指導や監督を 受けるこ
とを望むかは 疑問もあ るが,内務自治省はその
ような連合体の 存在や事業内容について 情報を
得ることが必要だろう.
内務自治省が 支援しているクラスタ 一につい
てのこれまでの 考察では,同省の州事務所が連
携 化を促進した 場合,運営指導も行われるため
各町は比較的容易に 共通目標の下に 資金・人
材・資源等を
発展していこ
あ
提供し,共同事業を通して地域で
う
という認識を 持ちやすいようで
る. 町 側からクラスター 化が提案された 場合,
推進役となる 町があ ることが重要で ,また地域
で主導権 をもっ 町 ( 町長 ) の発言力により 活動
が円滑化しない 場合もあ ることが考えられる・
122
(264)
横浜国際社会科学研究
第 10 巻第 2 号 (2005年 8 月 )
ないが,その役割を十分に 果たしているか 否か
が問題であ る.積極的に働きかける人物がいな
むものではなく ,あくまで地方自治体の 財
政的な連携を 可能とするものであ るが,内務自
治省の LGU-CLA 朋蛇 はさらに一歩踏み 込んで地
ければ,町の自発性だけでは 十分にクラスタ 一
方自治体間における 共同事業を可能とし
内務自治省はあ くまでファシリテータ 一でしか
の利点を生かすことが
出来ず,共同事業の実施
は 難しいと考えられる.
内務自治省の 一部局が LGU-CLAP
むだけでなく
に取り組
, 省 全体の事業としてクラスター
化促進のためのガイドラインを 定め,さらに 自
治 体を連携化させた 後の事業実施サポートプロ
グラムを十分に 検討した上ア 指導していかなけ
れば,このアプローチは不完全であ るように思
われた.地方自治体の連携化の過程にどれほど
内務自治省が 係 わるか,また結成後の指導をど
のように行っていくか ,ファシリテーターとし
て何をすべきか ,という点は全て同省各州事務
所長に任されていた.その手法・内容は 各州事
務所で異なり
,刑事務所長が熱心で,運営指導
等も十分に行えるのであ れば,そのクラスター
は共同基金を
作り管理していける.地方自治開
発局は地方自治体向けに LGU-CLAP
のガイド
ブックを作成したが ,自治体が参考とするだけ
でなく,地域事務所や州事務所, MLGOO
もこ
の ガイドブックを 利用し,またLGU-CLAP
事
業推進ガイドラインをマニュアル 化した上で ,
特に刑事務所を 巻き込んでクラスター 化促進の
事業展開をすることが 必要と考えられた.
内務自治省による 自治体連合化の 促進につい
て, LGU-C
P の全国展開が 現在も行われてい
るかどうかは 現地調査の必要があ るが ", 地方
自治開発局のスタッフ 数,予算に限りがあ るこ
とから 79 州すべてに LGU-CLA 皿を導入してい
くには当初の 方法ではかなりの 時間を要するこ
とが想像され ,政権交代に よ る影響や主力とな
っていた職員の 異動による事業の 停滞,あるい
は発展的解消という 形での事業終了も 考えられ
る .中央政府による 自治体連携化促進の 活動は
その ょう な状況にあ る.
地方自治体 問 関係に関する 1991 年地方自治法
皿
の規定は , 確とした広域行政や 市町村合併をも
く
る
,その
促進により共同事業の 実施を推進するものであ
った.仮に同事業がすでに終了しており ,ほか
に政府側からの 具体的な取り 組みがないとする
と,自治体は独自に連合化していくほかないが
,
連合設立の手法やあ り方についてのガイドブッ
や経験集は内務自治省ですでに 作成されてい
るため,それらを同省の地域事務所や 州事務所
が積極的に活用して 連合化しようとする 自治体
を指導して い くことが中央行政機関の 役割では
ないかと考える.
また自治体連合が 設立された後,その 自治体
連合が計画するプロジェクトを 支援し,あ るい
は実施促進するような 活動も必要だろう. どの
ようにして共同事業を 計画し具体化していく
か ,予算確保やプロジェクト実施のノウハウを
研修などにより 指導していくことも 必要であ ろ
ク
2. 地方自治体側からみた 内務自治省との 関係
また地方自治体の 側から見た内務自治省に 対
する評価には 厳しいものがあ る.マルコス独裁
政権 時,内務自治省の地域事務所や 州事務所は
管理体制のフロントライフにあ るが,ここにお
いても権 威主義的で非効率とみられていた.管
理・監督・指導はしても 支援や相談に 応じると
いうことはなく ,民主化による行政改革後も 地
方自治における 手続き上の許認可の 権 限を同省
が 有しているため ,多くの地方自治体が内務自
治省は地方の 自治権 を脅かすものと 認識してい
る. これらのことは 独自に連合化した 自治体へ
の現地ヒアリンバを 通じて得られたことであ る
が,民主化以後も内務自治省は 官僚的で様々な
手続きが遅滞すると 考えられており ,地方自治
体によってはかなり 批判的に見ている 場合もあ
り,同省の出先機関は地域住民や地方自治体か
らの信頼がなかなか 得られないという 状況があ
フィリビン共和国における
.内務自治省が地方自治体を
好ましい機関と 考えてはおらず
局の指導を受けてクラスターを
省からの政治的な 干渉を受ける
る
支援するような
,地方自治開発
設立しても, 同
恐れがあ り十分
にその利点を 活かすことができないとして
携
Ⅰ
L することに否定的な
広域行政,地方自治体連合化の 取り組み (佐々木 )
, 連
自治体もあ る.
と社会福祉センタ 一の 2 つの建物は不要だった」
と住民にいわれたケースがあ った.
このように同一組織内で 異なる部署のみなら
ず, 異なる組織間にも 連携が必要なことは 言
3. 行政機関におけるセクシヨナリズム
フィリビンにおいても 行政機関におけるセク
ショナリズムは 存在し,予算配分や 専門性が重
視されると事業実施の 妨げとなる場合もあ る.
LGU-C Ⅱ 推進活動のなかで 地方自治開発局
が 自治体職員を 対象にセミナーを 開催したが,
それについて 内務自治省内部で 問題があ るとさ
れた.地方自治体を対象とする研修事業を 主管
する内務自治省ローカル・ガバメント・アカデ
叩
(№ calGovernment
123
管理されているというような 無駄も生じてい
る.例えばにの小さな町にディケアセンター
までもな い
ミ一
(265)
配 ademy:LGA) が,地方
自治開発局が LGU-CLAP
のセミナーを 主催す
ることは組織設置法的に 問題があ ると指摘した
のであ る.そのため,地方自治開発局は活動を
制限されることとなり ,事業推進の勢いはそが
れてしまった. しかし,結果的にはLGU-CU
の普及・支援活動に 専念することができ ,また
LGU-CLAP で計画されたセミナ 一などの研修事
業はその後,現在も LGA が実施しており. よ
り 総合的な研修計画の
中に組み込まれることと
や
なった・
内務自治省内部に 限らず,中央行政機関は縦
割りの組織体制をとっているため ,特定分野の
事業計画・実施は 主管する省庁がそれぞれに 行
っており,地方行政に関する省庁同士の 連携や
調整は中央では 通常行われない.地域開発評議
会や州開発評議会できちんと 調整しなければ ,
・
う
これは地方自治体間の 連携よりも
重要なことであ ろう.中央行政機関やその出先
機関において 異なる組織の 実務者レベルでの 交
流や対話が少ないためか ,お互いの信頼が欠け
ているような 印象を筆者は 受けているが ,行政
の効率化には 従事する人材の 意識改革も必要な
のだろう・
4. 共同事業化による 水平的協働関係
事例でみたようなさまざまな 問題点はあ る
が,地域の自治体による共同事業化は ,共同の
目標を持って 共同出資するという 利点がその運
営によって活かされ ,事務の効率化が促される
ならば,地方自治体による地域開発,その 自治
体の行政能力の 向上にとり十分に 効果的なアプ
ローチであ る.各国の援助機関や国際援助機関
がフィリピンにおいても 地方自治体の 能力向上
支援の研修事業を 行ってきており ,各種の研修
が数多く実施されている.事例で紹介したィロ
ィロ州のクラスターも.まずヵナダ の援助機関
がいくつかの 自治体を集めて 研修事業を導入
し ,それがきっかけとなって 連携化している.
このように研修への 共同参加が実際の 共同事業
化を導くこともあ る.
法令に認められた 財政的な連携は 共同事業化
を促進し,より効率的に地域の 発展を促すよう
に 考えられる. フィリピンにおいては 行政の効
レベルの異なる 自治体,例えば州 と町がそれぞ
れの地域住民のニーズにのみ 基づいて事業計画
を 行ったり,もらえる補助金はすべてもらお う
とする自治体が 複数の事業補助申請を 出したり
すると事業が 重複してしまい ,結果として別々
率化よりも権 限の分散化が 行政改革の主眼とな
っており,これまで広域行政や市町村合併につ
いては特に明確な 政策は出されていなかった
のファンドによる 同一の施設が 同一地域に二つ
B
建設され,異なるレベルの地方自治体によって
ともあ り,地元の為政者が政治権 力に固執する
が,自治体連合化や近年では 2002 年に地域制度
における変更 (Region Ⅳ咀 カラバルソンとⅣ ミ
マロ パ への分割 ) が地域の要望であ ったこ
124
(266)
横浜国際社会科学研究
@
つ
る
よ
て
め
を
しかし,諸制度の改革は実際
秘
が 当然とされた ,
性
能
また政府が進める 地方分権 改革の中では 地方
自治体が自律して 地域の政治行政に 当たること
可
く
た
て
う.行政の機能よりも政治権 力が優先していた
といえる. またその中央の 政治権 力を後ろ盾と
して,行政組織は 権 威主義的であ ったといえる.
それらのことからも 歴史的変遷のなかで 地方自
治体は中央政府に 対する不信感を 増大させてき
結 ね
強力な支 酉 己があ ったことはいうまでもないだろ
にわ
係思
関に
ことなく,行政の効率化のために 広域行政や連
合化による事業実施を 促進しているということ
が伺える.
フィリピンの 中央・地方関係を 考えた場合,
中央から地方への 垂直的な政治的抑圧あ るいは
第 10巻第 2 号 (2005 年 8 月 )
おわりに
地方自治体が 地方行政の主体であ るとして,
その自律を促すことが 水平的協働関係を 生み出
す原因ともいえるのではないだろうか.
しかし
中央が財政統制を 行っている限り 地方自治体間
の競争関係は 自然発生しても ,水平的協働関係
は メリットがなければ 発生しないようにも 考え
られる.そのため水平的協働関係により 地方行
政がより効率的.効果的であ るならば,中央政
府は積極的に 働きかける必要があ ると考える.
日本を例にすると 広域連合設置の 推進は町村合
の活動のノウハウを 示してはいない.多くの地
方自治体が,権限は与えられながらわずかな 財
源で自律して 政治行政にあ たるための手法を 見
出せないでいる・
そのようななかで 広域政体制の 設備が着手さ
れた. フィリピンは 元来,地方自治体同士が競
争関係にあ るというよりも 政治的権 力が割拠し
て,地方の有力者であ る地元選出の 代議士など
の 政治権 力を通じてそれぞれに 地方と中央との
関係を築いてきていた. これは国会議員に 割り
併推進を補っており ,小規模地方自治体がまと
まることで行政の 効率化を図っている. フィリ
当てられるボークバレルが 活用され汚職の 温床
旨であ った.
結論として,フィリビンは地方行政を効率化
させるさまざまな 仕組みを作り ,機能させるた
めの組織・機関を 作ってはいるが ,それらが政治
となっていたことや ,多くのマルコス派の地元
有力者が地方自治体の 首長となっていた (Jll中 ,
2003a) ことからも考えられる. また,そのよ
うな地方自治体では 地元の利益に 固執するため
他の自治体と 協力関係を結ぶことを 好まないと
いう傾向が見受けられる. しかし地方にも 及ん
だ 民主化の波は 確実に権 力によらない 首長を ぅ
みだしてきた. そのような地方自治に 実務的な
首長は他の自治体との 協力関係を結ぶことによ
り,財政基盤の拡大を図り中央との 交渉を積極
的に進めることを 望んで い ることが観察でき
る.
このような水平的協働関係はフィリビンの
中央・地方関係を 大きく変えるものではないだ
ろうと考えるが ,これが中央と地方の相互依存
ピンでもそのような 地方自治体連合の 活動によ
り行政の効率化や 貧困緩和,自立発展といった
効果が期待できるのではないだろうか
,
そのた
めには中央政府が 地方自治体の 自律に任せるの
ではなく自治体の 水平的協働関係を 築き,うま
く作用させるよ う 働きかける役割を 担 う こと
が ,中央政府・ 行政機関が地方行政を 行う う え
で必要なのではないだろうか. これが本稿の 論
的圧力や財政的困難により
形骸化してしまい ,
実際にはうまく 働いていないように 思われた.
せっかく線路を 作り,プラットフォームを 作り ,
列車を用意しても.まず車両が足りずに 多くの
人々がプラットフォームに 取り残されている.
そして列車も 燃料が足りずに 発車できてもすぐ
に止まってしまう・ あ るいは車輪がゆがんでい
て脱線してしまう. フィリピンの 地方行政の効
率 化はそのような 状況にあ ると見ることができ
る. どのように燃料を 増やして車輪が 回るよう
にすることができるか ,
また車両を増やしてい
フィリビン共和国における
行政区分の基準
たもの
人口又は
面積
ぅ主
1) 1991 年地方自治法については m 田 (1998) 及
び川中 (2003b) が詳しい.
2) 広域行政については 次の文献を参考にしてい
る.佐々木 (1999,1998, 1994), 村上 (2003,
1993), 村松 (2001), 神祭 Jl@ 自治総合研究セ
ンター (2001), 群馬県 (2001), 阿部・今村・
寄木 (2000), 小池 (1998), 天 J1l (1983)
3) 1993 年に衆参両議院において 地方分権 推進の
決議; j なされて, 1995 年には地方分権 推進法が
成立.その後,同法に
基づく地方分権 推進委員
収入
市
人口又は
面積
HIJC
収入
り
方や制度改革の 内容などが提言され , 2000 年 4
月 1 日に地方分権 一括法が施行された.
4) フィリピンでは№ calGovernment
その収入によってそれぞれのレベルで 6 つのク
ラスに分けられている (表 2 及び表 3 参照 ).
表2
歳入規模 別 ランク制度
(行政レベルによるクラス
州 市
75 百万ペソ以上
50 百万ペソ以上,
75 百万 ベソ 未満
15 百万 ベソ 以上,
50 百万 ベソ 未満
10 百万 ベソ 以上,
15 百万 ベソ未満
・
第 1 クラス
第 2 クラス
第 3 クラス
第 4 クラス
第 5 クラス
町
15 百万 ベソ 以上
10 百万 ベソ 以上,
15 百万ペソ未満
5 百万ペソ以上,
10 百万 ベソ 未満
3 百万ペソ以上,
5 百万 ベソ 未満
百万ペソ以上,
10 百万ペソ未満
5 百万ペソ未満
3 百万 ベソ 未満
百万 ベソ 未満
財務
5 百万 ベソ 以上
政省
省
行
分類
所在
出
第 6 クラス
分類 )
たもの
国家統計局により 人口 15 万人以
上 または面積 100 平方キロメート
人口
収入
J
田
財務省により 1991 年不変価格に
基づいて過去 2 年続けて平均年
歳入 50 百万ペソ以上が 認められ
たもの
国家統計局により 人口 20 万人以
上が認められたもの
財務省により 1991 年不変価格に
・基づいて過去 2 年続けて平均年
歳入 2 百 50 万ペソ以上が 認めら
@ れたもの
人口
国家統計局により 人口 2 万 5 千人
面積
以上が認められたもの
土地管理局 (LMB) により 50 平方
に
市成
1
れ立権
5
というため
「地方政府」と 訳されることもあ るが,本稿で
は政治的な側面に 焦点を当てるのではなく 行政
機関としての 組織関係を観察する 目的から. ま
た 単一国家であ ることや「政府」と「自治」の
言葉の意味を 考えた場合,町村レベルでは「地
方自治体」と 訳すほうが適当であ るように思わ
れるため「地方自治体」の 単語を使用する.
フィリビンの 行政区分構成は 79 州 (Province).
115 市 (City), 1495w@ (Municipality) (以上,
2005 年 4 月現在 ), 41,939バランガ イ (Barangay)
(2004 年 10 月現在 ) であ る.地方自治体は 全て
国家統計局により 人口 25 万人以
上または面積 20(X0平方キロメート
ル 以上が認められたもの
@ 財務省により 1991 年不変価格に
基づいて過去 2 年続けて平均 午
歳入 20 百万 ベソ 以上が認められ
ル 以上が認められたもの
全や,地方制度調査会,内閣行政改革推進本部
の地方分権 部会などにより 具体的な分権 のあ
125
に午れ
表3
(267)
務基
づ歳
入
財
み
出
を ︶
生を
そ考
係 か ヵと
関い
力な
すればよ いか .ひとっの解決策とし
白 で
う
間の
体る
治き
こ
方が
地と
てす
くにはど
取り組み (佐々木 )
広域行政・地方自治体連合化の
キロメートル 以上が認められたもの
HIJC
出所
℡ ghly-UrbanizedCity
1991 年地方自治法
126
(268)
第 10 巻第 2 号 (2005 年 8 月 )
横浜国際社会科学研究
蛆MM)
MuslimMindanao(
の 17 地域.
と Cord Ⅲera を自治地域と
することを規定した 1989 年憲法に従い , ARMM
については 1989 年 8 月 1 日に Republic Act
6) MuslimMindana0
N0.6734,
CAR については同年 10 月 23 日
RepubIicActN0
6766 の基本法の採択により ,
それぞれが自治地域として 認められている.
7) 国内歳入割当 (intemalrevenueaIlotment:IR
醸
は国税収入の 地方自治体への 配分をさし。 1991
年地方自治法第 284 Ⅰ 88 節に規定されている・
主要点は次のとおり.
( 第 284 節 ) LGC 施行後の 3 年間で段階的に 地
刀自治体への 配分が引き上げられたが ,国税収
人の 60% を中央政府が 確保し, 40% が地方自治
体に配分される.
( 第 285 節 ) その地方自治体に 割り当てられた
額を 100% とすると,そのうち 州は 23%, 市が
23%, 町が 34%, バラ ン ガ イ が 20% の配分にな
っている. また 州 ,市及び町はそれぞれのレベ
ルで 自治体の人口 (50%), 行政面積 (25%),
均等配分 (25%) により割当 額 が決められる.
バランガイは 人口 (60%), 均等配分 (40%)
により割当 額 が決められる.
( 第 287 節 ) それぞれの自治体はその 割当 額 0
20% 以上を開発プロジェクトに 当てなければな
らず,その開発計画のコピーは DILG に提出さ
れなければならない・
・
8) 内務自治省の 統計より.
g) ULAP
Ⅱ ga
Governo
Barangay,
League of Wceofthe Philippines, Wce-Mayors,
mga
Ⅱ
s
League
pines , ProvinCal Board
Phiippine@ Counciors
,
League, Lady Local Le 蛆 slators, League,
NationaI M ovement
0fY0ung
Le 幻 sIators,
of》he PHli
, League,@
Members
Pambansang
Pederasyon
ng Sangguniang
Ⅹ乱 ata㎝などであ る・
10) フィリビンの 地方開発におけるポークバレル
の活用については Nish ㎞ ura (2002) を参照.
11) 筆者は国際協力事業団 (現 国際協力機構 ) フ
ィリピン事務所企画調査員として 1999 年 7 月か
ら 1 年間勤務した 間に合計約 3 ケ 月にわたり.内
務自治省 (DILG) の活動を通じて 地方分権
国際協力事業団長期派遣専門家
(都市化開発関
連計画 ) として DrLG に派遣されていた 滝本 勝
氏の多大なる 協力を得ている ,同氏の助言なし
には行い得ない 調査であ ったことをここに 明記
して改めて感謝の 意を示したい.
12) 1990 年内務自治省 法 :AIlActEs ぬbIishingthe
Ph ⅢppineNationalPoliceunderaReorganized
Department
of the Interior and Local
Governmentand forotherPurp0ses (RepubIic
ACtNo. 6975) に規定される 地方自治体開発局
(BLGD) の機能は以下のとおり.
「規則 T 自治局及び部 第 12節 地方自治
局及び部の機能
BLGD
は.共に長官の推薦のもと大統領に
よ
り
任命される局長,それを補助する局次長により
率いられる. とりわけ.以下の機能を有する :
のメンバ一組織は 各首長連合のほか ,
ng
ル では財政的にも 事務能力的にも 独自の開発計
画の策定・実施が 十分可能であ ると考えられた
からであ り,また様々な分野で地方自治体に 権
限が委譲されているが ,町に与えられた責務が
最も大きいと 判断したからであ る. もちろんバ
ランガ イ レベルでの協力も 必要ではあ るが, そ
れらは W 支援のなかにすでに 含まれるものであ
ると考えている.
同調査は地方自治体のみならず。 DILG 刑 事
務所, DTLG 地域事務所及び NEDA 地域事務所
等の関係省庁の 出先機関でもヒアリンバを 行
い .複眼的な考察を加えた. また同調査は 当時
化
および地方自治体能力向上の 調査を行った. こ
こではその調査により 得た地方自治体連合化の
情報を取りまとめて 紹介している.現地ヒアリ
ング調査を行う 際には次の 2 種類のグループに
分けて調査を 行った.① DILG 地方自治体クラ
スター・アプローチ・プロジェクトに 参加して
いる地方自治体および 関連する地方出先機関に
関する調査,②独自に連合化した地方自治体等
に関する調査.調査対象の自治体は主に「「レベ
ル であ るが,その理由は ,地域レベル・ 州 レベ
①計画,政策,プロバラム
及び基準を制定し
,
規定する. また地方自治体及び 職員の行政上,
財政上及び技術的な 能力を強化するために 技術
援助を提供する ;
②地方自治体の 計画立案及び 実施における 参加
を高めるために 企図された地方自治体政策,計
画,プロバラム及びプロジェクトを 形成し,方
針を定め,モニター及び定期的評価を 行う ;
③地方自治体開発におけるモデル
,基準及び技
術的資料を形成し 及び開発する ;
④コミュニティ 開発のための 総合的及び包括的
フレームワークにおける 住民参加に固定した 地
方自治体のための 戦略及びアプローチの 実行可
能なシステムを 確立する.」 (訳 : 筆者 ).
13) 1991 年地方自治法実施の 規則及び規定 :
Rulesand Regulati0nsImplementingtheLocal
Government
Code of 1g91 (Administrative
OrderN0
270) は 1992 年 2 月 21 日付けで承認され
ている 1991 年 地方自治法の 実施規則・規定であ
・
る・
同規定第 50 条は無償資金のモニタリンバシス
テムについて ,国家経済開発庁 (NEDA)
が
DILG と調整して LGU の無償資金プロジェクト
をモニターする 権 限を持つことを 規定してい
る. また 同 第 53 条は地方自治体の 政策・計画・
フィリピン共和国における
広域行政・地方自治体連合化の
プロジェクトは 大統領により 監督されるが ,
DTLG はその補佐を 行う役割にあ ることが規定
されている. そのように他の 条項でも具体的な
省名 が挙げられ, DILG はその責務が 明確にさ
れている・
規則 10 無償資金に関する 交渉および獲得の 権 限
第 50 条 モニタリンバシステム「同規則の 承
認後 30 日以内に, NEDA は, DILG その他関連
中央機関と調整の 上,以下のモニタリンバシス
テムを構築する :
(a) 自治体,援助機関双方の 迅速なプロジェ
クト申請,承認を支援する ;
(b) 自治体,援助機関のプロジェクトの現状,
進捗モニターを 支援する ;
(269)@ 127
取り組み (佐々木 )
カナダ国際開発庁 (Canadian International
Development ㎏ ency:CIDA) の地方自治体支援
プロバラムは 1991 午から 1998 年の 7 年間にわた
りフェーズⅠが 実施された.同プロバラムの 目
的は地方分権 化において地方自治体が 政策およ
びプロバラムを 開発し実施するために ,地方自
治 体のみならず 中央政府および 地域における 政
府機関の能力を 強化することであ った.プロジ
ェクトは特に 調査, トレーニンバ ,政策アドボ
カシニワークショップ ,会議,技術的および
運営的な専門性,コミュニティの 組織化・動員,
する.」
第 53 条
フィージビリティスタディ ,そして開発教育に
焦点を当てている.優先すべきこととしてコミ
ュニティレベルの 受益者を開発の 参加者として
活動に積極的に 巻き込むことを 挙げている.
最後の 2 年間は地方自治体が 地域において 達
成すべき開発の 玉目的の明確化に 焦点を当てた
活動が行われた.例えば ,経済的な可能性を持
ちながら環境的に 危機の状態にあ る地域・地点
を 保護し,可能性を高めるために 作られた地方
督を行
自治体連合に 対し,地方計画,財務管理,経済
事業運営,人材開発,地方登録制度,基本的サ
ービスの提供,性差の公正,環境管理といった
(c) 援助機関が他の 援助機関と重複して 援助
を行
う
ことがないことを 確実にする ;
(d) 援助合意に基づき ,適正なプロジェクト
現状報告が援助機関に 提出されることを 確実に
中央政府の監督及び 調整「 (a) 大統
領は地方自治休の 行動が規定された 権 限及び機
能の範囲内であ ることを確実にするために 総監
う
.大統領は州,高度都市化及び
独立構
成 市 に対し直接 ; 構成市及び町については 州を
通じて ; バランガ
イ
については市や W を通じて
ことに関して 援助が行われた・
18) 調査では JICA フィリピン事務所在覚専門調整
監督権 を行使する.地方自治法あるいは同規則
および他の適用可能な 法の他の条項に 規定され
た他の方法がな い 限り , 主に DILG が大統領の
地方自治体に 対する監督の 行使を補佐する. (b)
大統領は当該地方自治体の 要請により,地方自
員 2 名 ( 当時 ) より情報を得てそれぞれが 推薦
する地域を訪問し ,独自にグループ化した町の
開発努力の現状についてヒアリンバを 行った.
19) 米国国際開発庁 (AgencyforInternational
Development: USAID) が地方自治体からの 直
治体に対し,適当な 中央政府機関に 財政的, 技
接援助申請によって ,地方自治体を実施機関と
御酌あ るいは他の形式の 援助を提供するよ
示することができる.」 (訳 : 筆者 ).
う
指
14) 名称は資料によっては LGUCIusterDevelopment
Approach となっているものもあ る.
した援助プロジェクト
Governance
and Local
Democracy:GoLD.
20) 書面での質問を 2 度行っているが DILG
より
回答がないため 現状は不明. DILG の Web サイ
ト上にもクラスター・アプローチ・プロジェク
15) "GuideBookonLGUClusterAppr0ach,Processes
andStrategies"
トの,情報はまったくない・
DILG 配属,滝本専門家の 現地詰教科書作成
費 による支援を 受けて作成された.既存クラス
タ一の情報・ 経験を共有する 目的の "Cluster
DevelopmentApproach
Pr0grams and Projects"
と ,プロジェクトの計画立案・援助申請のため
の "Hand B00k Project ProposaIPackaging,
TechnicalW ⅡⅡng ㎝ dJICA TechnicaIAssis ㎞ ce
andGr ㎝ t Ⅳ dProgram"
とともに作成され ,関
係機関に配布されている.
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