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インドの社会インフラ産業に見る 日系企業の事業機会

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インドの社会インフラ産業に見る 日系企業の事業機会
特集
急拡大するインド市場と日本企業の課題 3
インドの社会インフラ産業に見る
日系企業の事業機会
中島久雄
社会インフラ産業に見る
日系企業の事業機会
積もれば山となるようなコンテンツサービス
インド特集の最終回である今月号(2012年
を開発・提供してほしい。幸いなことに、こ
3月号)では、情報通信技術(ICT)、物流、
こインドでも、「ドラえもん」や「クレヨン
エネルギー産業など成長するインド社会イン
しんちゃん」などの日本アニメは大人気であ
フラ産業に焦点を当て、その最新動向と日系
る。2012年の秋には、インドのクリケット版
企業の事業機会について論じている。
①ICT産業:ボリュームゾーンを対象にした
「巨人の星」も登場する予定である。これは
まさにコンテンツの日印共同開発事例であ
インド特有のサービス開発
り、日本のコンテンツサービス企業の進出の
インドの携帯電話契約者は8億を超えて農
きっかけになればと願う。
村部にも本格普及が始まり、農作物被害の回
②物流産業:ボリュームかニッチかの戦略選
避策等を電話相談できるサービスなど、イン
択とソフトウェア面の課題解決
ド特有のサービスが増加している。インド人
インドの物流環境は多くの課題を抱えてお
にとって携帯電話は、エンターテインメント
り、かつての中国の黎明期と一致している。
の道具としてだけではなく、生活の糧となっ
高品質と呼べる物流サービスはほとんど存在
ている。
していない。ただし、全国をカバーする大手
また、インドの「フェイスブック」ユーザ
物流事業者はすでに存在しており、先行する
ー数は4000万人を超え、世界でも第3位の規
欧米企業やインド企業が事業拡大を続けてい
模に成長している。このような巨大なソーシ
るなか、日系企業はトップ30にまだ1社も入
ャル・ネットワーキング・サービスを、いち
っていない。
早くマーケティングに活かしているインド企
業も多い。
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ンを対象に、1人当たりは小額でも、ちりも
物流に参入する日系企業は、インドにまだ
ほとんどないコールドチェーンなど付加価値
日系企業は、携帯コンテンツサービスの国
の高いニッチサービスを追求するか、あるい
内での成功経験を活かして、ボリュームゾー
は中堅企業以上をM&A(企業買収)などの
知的資産創造/2012年 3 月号
当レポートに掲載されているあらゆる内容の無断転載・複製を禁じます。すべての内容は日本の著作権法および国際条約により保護されています。
CopyrightⒸ2012 Nomura Research Institute, Ltd. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission.
手法で買い取りボリュームゾーンをねらうか、
ている。
先に進出戦略をはっきりさせなければいけな
では、何のためにインドで事業を展開する
い。後者は、円高でかつ欧米企業が弱ってい
必要があるのか。その答えの一つが「イノベ
る今が最後のチャンスであろう。
ーション(技術革新)」である。
③新エネルギー産業:太陽光・太陽熱発電で
戦後の日本はまさに制約の多い国であっ
は政策も含む総合力で日本の強みを活用
た。資源に乏しく土地も限られていた。消費
インドの電力不足は深刻である。発電だけ
者はまだ豊かではなかったが、品質や丈夫さ
でなく、盗電を含む送配電における問題も大
にはきわめてこだわる。そのような制約下で
きい。現地のオフィスやレストランにいる
日系企業はイノベーションを巻き起こしてい
と、突然停電に見舞われることがあるが、イ
った。持ち歩きができて周りにも迷惑をかけ
ンド人は誰一人として気にとめることなく会
ない音楽再生機「ウォークマン」。湯を注ぐ
話を続けている。日本人が小規模な地震には
だけで食べられるカップ麺。週末、家族4人
驚かないようなものなのであろう。
が 出 か け ら れ る360ccの 小 型 車。 今 の 日 本
インド政府は産業育成という観点からも新
に、そのようなイノベーションを起こすよう
エネルギーに注力し始めた。外資の誘致に非
な制約がまだ存在しているであろうか。企業
常に積極的な州もある。日系企業は、その技
は、顧客の細かなニーズに耳を傾け、付加機
術力などを活かせる太陽光や太陽熱発電の分
能をつけ加えていくことだけに慣れてしまっ
野に注力してほしい。事業を成立させるため
てはいないか。
には、案件開発、低コスト生産、資金調達が
今のインドには、現在の延長線上にない、
重要であり、その際もインド企業との連携が
より大胆な仕様変更が求められる。そこでは
重要な鍵を握っている。
新たな発見とイノベーションが突然起こる。
米国のGEヘルスケアが小型で持ち運び可能
イノベーションの地「インド」
な超音波診断器を開発し、インドだけでなく
特集の最終回に当たり、社会インフラ業界
米国に逆上陸させたのは有名な話である。現
だけでなく、インドという国の位置づけにつ
在、各国の自動車メーカーがしのぎを削って
いて、インド現地の視点から一言述べたい。
インドで開発中の小型車が、日系自動車が主
品質、デザイン、使い勝手にこだわり、し
流の東南アジアや日本に今後上陸する可能性
かも価格や維持費に対する要求がきわめて強
は十分にある。制約のないところではイノベ
いインド消費者。一方で、エネルギーや物流
ーションは起こらない。日系企業はインドを
インフラなどの社会インフラ整備、外資投資
無視するわけにはいかないのである。
規制緩和さえも中国のように一気に進められ
ないインド政府。現地で見ていると、インド
における日系企業にとっての事業上の制約は
一層厳しく映る。多くの企業が市場参入を躊
躇するだけなく、参入した企業も悪戦苦闘し
著 者
中島久雄(なかじまひさお)
NRIインディア社長
専門は新興国(特に中国・インド)における事業戦略、
販売チャネル戦略、企業経営戦略
インドの社会インフラ産業に見る日系企業の事業機会
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