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Asian and African Languages and Linguistics No.6, 2011 カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の 音声分析 鈴 木 博 之 (プロヴァンス大学/CNRS/日本学術振興会) Khams Tibetan Yangthang/Gyennyemphel [Xiaozhongdian] dialect : phonetic analysis S UZUKI, Hiroyuki Université de Provence / CNRS / Japan Society for the Promotion of Science Tibetan Yangthang/Gyennyemphel dialect is one of Khams Tibetan, spoken in Jinianpi subvillage, Xiaozhongdian village, Xianggelila County, Diqing Prefecture, Yunnan. It belongs to the rGyalthang subgroup of the Sems-kyi-nyila dialect group. This article treats phonetic and dialectal characteristics of the Yangthang dialect. This dialect is characterised with the existence of the phonemes such as palatal plosive series /ch , c, é/, prepalatal plosive series /ťh , ť, ć/ (only a few examples), a voiceless trill /r/, a laminal ˚ vowel /a~/. vowel with a strong tongue tension /ę/ (including [ę] and [ğ]), and a retroflex At the end of this article, a wordlist (ca. 1200 words) of Yangthang Tibetan is provided. キーワード: カムチベット語,香格里拉 (Sems-kyi-nyila) 方言群,音声学,方言学 Keywords:Khams Tibetan, Sems-kyi-nyila dialect group, phonetics, dialectology 1. はじめに 2. Yangthang 方言の音体系 3. 超分節音 4. 母音 5. 子音 6. 蔵文との対応関係による Yangthang 方言の特徴づけ 7. 語形式による Yangthang 方言の特徴づけ 8. まとめ 1. はじめに 本稿では,雲南省迪慶藏族自治州香格里拉県小中甸郷聯合村吉念批自然村で話 されるカムチベット語 Yangthang/Gyennyephel(吉念批)方言1 の音声分析を行い, それに基づき方言上の特徴づけを行う。末尾に語彙リスト(約 1200 項目)を付す。 1 以下,方言名は単に Yangthang 方言と記述する。 138 アジア・アフリカの言語と言語学 6 1.1. 迪慶州のチベット語方言 雲南省迪慶 [bDe-chen]2 藏族自治州は,カムチベット語分布地域の最南端を占 めると同時にチベット語が分布する地域の東南角にあたる。この地域はチベット 語を母語とするチベット族以外にも,納西族や 族など他の少数民族が居住 し,多くの少数言語が話されている。筆者の分類(鈴木 (2010) が最新の見解)に 基づけば,迪慶州のカムチベット語は大きく2つの方言群に分けることができ, Sems-kyi-nyila(香格里拉)方言群と sDerong-nJol(得榮・徳欽)方言群がある。こ のうち,本稿で扱う迪慶州香格里拉 [Sems kyi nyi-zla] 県小中甸 [Yang-thang] 郷で 話される Yangthang 方言は,前者に属している。Sems-kyi-nyila 方言群の下位分類 は以下のようになる3 。 方言区分 Sems-kyi-nyila 香格里拉 下位方言区分 rGyalthang 雲嶺山脈東部 Melung Lamdo 所属方言例(迪慶州内に限る) rGyalthang [建塘], Yangthang [小中甸] Nyishe [尼西], Thoteng [ 頂], Byagzhol [霞若], mThachu/Qidzong [其宗] Melung [維西], mThachu/Geluo [塔城] Lamdo [浪都] 以上のように,Yangthang 方言は rGyalthang 下位方言群に属する。これまでの rGyalthang 下位方言群に属する方言の記述研究では,rGyalthang(香格里拉県建塘 [rGyal-thang] 鎮古城)方言4 が扱われてきた(Hongladarom (1996, 2007ab) や Wang (1996), 《中甸県誌》(1997:147-153), 《雲南省誌》(1998:421-441),蘇郎甲楚 (2007) など)。Yangthang 方言の記述は未見である。なお,小中甸郷内の各村ごとに発音 が異なり,本稿で扱うのは聯合村吉念批 [Gyen-nye-’phel] 自然村の方言である。 1.2. 本稿の構成 本稿の構成は,先に Yangthang 方言の音体系を紹介した後,声調・母音・子音の 順で具体例を挙げつつ考察を加える。そののち,蔵文との対応関係に基づいて方 言の特徴づけを行う。 本稿で分析する言語資料は筆者の現地調査による一次資料に基づく。主な調査 協力者はヤンゾン [gYang-’dzom] さん(女性,20 代,聯合村吉念批自然村出身)で ある。調査は 2010 年,昆明市で行った。 2. Yangthang 方言の音体系 ここではまず Yangthang 方言の音体系全体について,超分節音,母音,子音,音 節構造の順に紹介する。 2 3 4 チベットの地名など固有名詞で漢字で音写されているものには,[ ] 内にチベット文語形式(蔵文)を添える。 所属方言例の項目には,方言名とそれに対応する漢語の地名を添えている。 以前の中国の資料では「中甸(話)」と書かれる。「中甸」という固有名詞は 2002 年「香格里拉」に改められ た。本稿では現在の名称で統一する。 139 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 2.1. 超分節音 Yangthang 方言の超分節音はピッチの高低による声調として実現され,4種が認 められる。 ¯:高平 ´:上昇 `:下降 ˆ:上昇下降 2.2. 母音 以下の母音について,長短および鼻母音/非鼻母音の対立が存在する。また,そ り舌化も認められる。ただし,ę/ğ は1音素とみなされる。 ę/ğ i e 0 @ 8 E a W u o O A 2.3. 子音 子音連続の構成要素としてのみ現れるものも含めた一覧は次のようである。 閉鎖音 破擦音 摩擦音 鼻音 流音 半母音 無声有気 無声無気 有声 無声有気 無声無気 有声 無声有気 無声無気 有声 有声 無声 有声 無声 有声 両唇 歯茎 ph p b th t d tsh ts dz sh s z n n ˚l l ˚ m m ˚ w そり舌 ú ã úùh úù ãü ùh ù ü ï r r ˚ 硬口蓋 前 後 ťh ť ć tCh tC dý Ch C ý ő ő̊ ch c é 軟口蓋 声門 kh k g P x , N N̊ h H j 2.4. 音節構造 音節構造の設定は,鈴木 (2005) を参照して以下のように記述できる。 C Ci GVCC ただし前鼻音については CCVCC も認められる。 このうち Ci (主子音)と V(音節核の母音)が必須である。 140 アジア・アフリカの言語と言語学 6 3. 超分節音 Yangthang 方言で弁別的な超分節音素は,ピッチの高低による声調の対立で,高 平調,上昇調,下降調,上昇下降調の4種に分かれる。それらは語単位でかかる。 ただし3音節以上の語の場合,第1,第2音節までで弁別的な声調の型を形成し, 第3音節以降は [22 ] 程度の高さで現れる。 以下に,語の音節別の調値を5段階で表示した例をあげる(S=音節)。初頭子音 の性質によって,若干具体的な調値に異なりがあるが,弁別的ではない。 1音節語 2音節語 高平調 上昇調 下降調 上昇下降調 ¯ő@ [S55 ] ´n@ [S24 ] `úOP [S53 ] ˆwa [S132 ] 「火」 「人」 「6」 「杭」 ¯ő@ ő@ [S55 S55 ] ´n@ sh õ [S13 S55 ] `muP joP ˚55 S22 ] [S ˆn@ úùh AP [S13 S22 ] 「祖父」 「昨晩」 「霧」 「女」 4. 母音 母音には長短および鼻母音/非鼻母音が確認され,それぞれ弁別的である。また, 少数例ではあるが,そり舌化母音も認められる。なお,[ę] と [ğ] は相補分布の関 係にあり,1つの音素と考えられるが,より正確な発音を明示するため表記しわ ける。 4.1. 非鼻母音 以下に母音の長短に着目して具体例を掲げる。 i e E a A O o u W @ ę-ğ 0 8 短母音例 ´ői ma 太陽 ¯H neP 乳房 ï ´ ãEP かじる ¯sh a 土 `ph AP ぶた ˆlOP 羊 ´lo 年 `ko h ku カッコウ ´Pa ljW 猫 ¯tCh @ 犬 ¯sh ę Ha 新鮮な ´Pa C0 猿 H ` jà j8P 吉祥 長母音例 美しい 布 青稞 鎌 金槌 桃 多い あごひげ 米 ハエ 金 大工 装身具 ¯ő dýi: bo ´re: ´nE: ´swa: ¯th wA: ´kh O: mo ´mo: ´Pa tsu: ¯N gW: ¯H ã@: NW ¯sh ę: ¯ő dý0: ´j8: ra Pa sh a 141 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 /ę-ğ/は,他の母音と異なり,舌の筋肉の強い緊張を伴う。 そり舌化母音は舌先を前部硬口蓋付近に向けてそらせて調音する文字通りのそ り舌化として実現する。これには次のようなものがある。いずれも例は少ない。 a~ W~ `Pa~ lAP `Pa tsW~ 枝 このような ¯Pa~ l0P 葉 4.2. 鼻母音 以下に母音の長短に着目して具体例を掲げる。 /ę-ğ/およびそり舌化母音の鼻母音は認められない。長鼻母音は例が少ない。 i e E a A O o u W @ ę/ğ 0 8 短母音例 心臓 畑 医者 砂 父の弟の妻 天 洞穴 着る 皆 ライオン ¯ő̊ı̃ ´ùẽj ¯mẼ mba ˚ Hã ´C@ ¯wà wà ¯H nÕ ´tõ ´kũj ¯kW̃j ¯Ch ˜@ ñ é@ ˆre: th 0̃ ´tsh 8̃ ja 長母音例 ´úẼ: ´őã: ´wÃ: 覚えている 太陽 乳 腐った 野菜 5. 子音 子音は,単子音および子音連続に分けて具体例を挙げつつ考察する。 5.1. 単子音 単子音の具体例は,可能な限り2例ずつ挙げる。 5.1.1. 閉鎖音・破擦音 Yangthang 方言は閉鎖音・破擦音について基本的に無声有気,無声無気,有声の 3系列を有する。 /ťh , ť, ć/の例は極めて少ないが,他のいずれの調音点の調音とも交替すること はない。有声音の単子音の例は比較的少なく,語中に現れる場合が大半を占め る。/ã, ť, ć, é/は単子音として出現しない。 142 アジア・アフリカの言語と言語学 6 例語 ph p b th t d ú ã ťh ť ć ch c é kh k g P tsh ts dz úùh úù ãü tCh tC dý `ph AP ¯pejP ´ba ¯th iP ´tõ ´da: nde ´úo: m@ úo: l0P 語義 ぶた チベット人 父 チーズ 熊 大きい 暖かい ´ph W r@ ´po tsh a ¯Pa h tsa ´b@ luP ¯th 0P pa ´tu: ma ´jA: dõ `úOP `tCh @ ťh o: sh a かつぎ棒 `ch AP ´cA: ¯kh a ´ko mõ ´gW riP ˆPa po ¯tsh a ´tseP ´kh @ dze ´úùh a: ´úùa ´c@ ãüÕ ¯tCh õ `tCW pa ´ji dý@ 例語 語義 ボウル 男 喉仏 額 ズボン 洞窟 6 血 瓶 ´ch e ch a ´c@ ãüÕ 鷹 ナイフ 口 アリ 腰 腹 塩 群れ とうもろこし 雨 茶 ナイフ 家 首 文字 ´kh @ dze ¯kW kW とうもろこし 父の弟 ¯Po: ´,@ ˆtsh õ nAP ¯ts@ l@ `H luP djeP 口づけする 尻 集まる ¯úùh W ´Pa ő@ ˆúùo mo 水 尼 `tCh 0P ¯tC@ úùu あなた 子ぶた そり舌閉鎖音/ú/の実際の音価には,摩擦の成分はほぼ含まれず,破擦音/úù/と明 確な対立をなす。また,硬口蓋閉鎖音/ch , c, é/も摩擦の成分を含むことはほとんど ない。 5.1.2. 摩擦音 Yangthang 方言は歯茎,そり舌,前部硬口蓋の摩擦音に無声有気,無声無気,有 声の3系列を有する。軟口蓋,声門の摩擦音は無声,有声の2系列が存在する。 例語 h s s z ùh h ´s õ ´sẼ ¯z0 ¯ùh a 語義 櫛 食事 蛇 肉 例語 h ¯s W̃j mo ´s@ tCoP ˆsuP ´z@ tCa ¯ùh iP 語義 悪魔 とさか 嫌な しらみ 143 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 ù ü Ch C ý x , h H ´ùÕ ´ü@ h úùW ´Ch @ mo ´Ca ¯ý@ ´xo: dẽj ´őu ,u ¯ha ïã@ ´H@ riP 箸 40 爪 鶏 暖かい季節 深い 今回 鬼 親戚 ´ùe: ùh a `ti da ˆüA: r@ ˆCh à kh @ ljOP ¯Cı̃ ¯ùh ẽj ´ý@ ´xu `úùh @ ,˜@ nd@ `hã th a ´Hu lÕ 牛肉 放置する 蝶 雲 木を切る 壺 どのように 衣服 起きる 5.1.3. 共鳴音 Yangthang 方言の共鳴音は,半母音を除いて有声と無声の2系列が存在する。 /r/の実際の音価には代表的なものとして [r, R, ô, õ] など複数あり,すべて自由変 異である。 /r/は少数の例にのみ見られる。/ï/は単子音として出現しない5 。 ˚ 例語 m m ˚ n n ˚ ő ő̊ ï N N̊ l l ˚ r r ˚ j w 例語 ´ma ¯ma tsh Õ ˚ m@ ´na ¯na ˚ ´őa ¯ő̊õ mba 語義 母 夕方 妹 鼻 魚 狂人 ¯m@ m@ `muP joP ˚ ´n@ ¯nõ `C˚h Õ nÕ ´ő@ `ő̊i jAP 語義 姉 霧 人 油 精神 竹 ´Na ¯N̊O Cı̃ ¯la: to ¯la sh a ˚ ´ra ¯rej ˚ ja ¯ja ´wa 私 青い 貧しい ラサ 山羊 裂く 兄 狐 ´NW ¯N̊ı̃ ˆőı̃ mu ¯liP ¯lÕ ˚ ´r@ ¯riP ˚ dý@ ´ji ´wiP 泣く さきおととい 肥料 靴 山 剥く 文字 光 5.2. 子音連続 ここでは,Yangthang 方言における子音連続を主子音 Ci に先行する要素によっ て分類して述べ,ついでわたり音 G を含むもの,3子音連続について述べる。 5 /ï/は後述のように/ïã/という組み合わせにおいて見られ,その自由変異として [ï;] という発音が認められるた め,その存在に対する言及が必要となる。 144 アジア・アフリカの言語と言語学 6 5.2.1. 前鼻音 前鼻音は,その後続子音が有声音か無声有気音かによって分けて例を挙げる。 なお,Yangthang 方言には,鼻音部の調音が弱いものと後続子音より強いものに分 かれる6 。後者は少数例にのみ見られる。いずれの組み合わせも,発話速度が早い 場合鼻音のみの発音になるという特徴がある7 。 有声音に先行する場合 m b : ¯m bW lw@ 車輪 n d : ´n da wa 月 ï ã : ´ï ãẽ ma 生の ő ć : ¯ő ći: 身震いする ñ é : `ñ éOP lu wa たつ年 N g : ¯N go 頭 n dz : ´n dzi: Ngo 指 ő dý : ¯ő dý0: 大工 無声有気音に先行する場合 m h m h ˚ p : ´ ˚ p A: ts@ 鋤 n h n h ˚t : `˚t O: ba 厚い ñ̊ h c : ´ñ̊ ch e h pẽ 親指 N̊ h k : ¯N̊ kh WP 導く n h n h ˚ts : ¯˚ts o 湖 ï̊ h ï̊ h úù : ` úù ẽ lAP ùh o 脇 ő̊ h tC : ´ő̊ tCh u h pje 唇 鼻音部が後続子音より強い場合(有声音のみ) mb : ¯mbW 虫 nd : ¯nd0: 弾 ïã : ¯ha ïã@ 鬼 Ng : ¯Ngo l0P はげた ndz : ´ndzÕ mba 橋 5.2.2. 前気音 前気音は,その有声性が後続子音と一致する。 6 7 この現象は,迪慶州や北接する郷城県のカムチベット語諸方言にはたいてい存在する(鈴木 2007, 2008a, 2009)。また,鼻音部の調音が後続子音より強くなる現象は,朱曉農 (2007:10) で「後爆鼻音」と呼ばれるも のに近いと考えられる。 ただしこの現象は,鼻音の後続子音が脱落したのではなく,鼻音に同化したと分析できる。鼻音だけが聞こえ る場合,その調音は単独の鼻音よりもやや長い。 145 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 p : ¯h põ ma 肩 t : ¯h ta 馬 h ú : ¯h úiP 拭く h ť : ¯h ť0P 繕う h c : ¯h ca 髪 h k : ¯h ka mba 足 h ts : ¯h tsa 根 h úù : ¯h úù@ lj@ 舌 h tC : ´h tCA: wa 大便 h s : `h suP 命 h ù : `h ùeP 言う h C : ¯h Ci: tCa 明るい h l : `h loP 教える H˚ H b : ´˚ bi: ja 蛙 H H d : ¯ dõ 顔 H ã : ¯H ãi: 巻く H é : `h úùA: H é@ 三脚 H g : ´H go ãüÕ 窓 H dz : ´H dz@ 踏む H ãü : `H ãüi: ba 重い H dý : ´H dýW lje 腸 H z : ¯H zo 太もも H ü : ´H ü@ 4 H ý : ´H ý@ 穴に通す H m : ¯H mõ Cı̃ 赤い H n : ¯H nO: ői あさって H ő : ¯H ő@ lÕ 夢 H N : ¯H Na 太鼓 H l : ´H lE: m@ お下げ H w : `H wà 派遣する H j : `H jAP ヤク h h 5.2.3. わたり音を含むもの わたり音には/w, j/が存在する。それぞれ少数例のみに確認される。 わたり音が/w/のもの th w : ¯th wA: 金槌 tw : ¯ùh @: tw@ 死んだ úw : ˆúwa 温暖な kh w : ´kh wa モモ(肉入りぎょうざ) kw : ¯ha ´kw@ 知っている 146 アジア・アフリカの言語と言語学 6 ùh w : `ùh u: ´ùh wa おしゃべりする úùw : ´úùwO: h úùW 60 sh w : ¯sh w@ 歯 sw : ´swa: 鎌 ùw : ´ùwa 帽子 Cw : ´Cwa: ねずみ xw : ¯xwa 開く mw : ¯H de mw@ 平和な őw : ´őw@ 買う Nw : ´m@ H dýA: Nw@ けちな わたり音が/j/のもの ph j : ´ph je 子ぶた pj : ´pje re 皮 dj : ¯ts@ l@ `H luP djeP 集まる th j : ´th ja: 埃 tCj : `tCja にせの sj : ´sje: ãüa 昼食 Cj : ´Cjẽ 糸 mj : ¯ï̊ úùh 0j mj@ バター灯 mj : ¯mjã あざ ˚ : ´kh˚ lj @ ljOP ふた 5.2.4. 3子音連続 Yangthang 方言でもっとも複雑な初頭子音の形式である。確認される例は少 ない。 ï ãw : ¯ï ãwiP 吸い込む kw : ¯h kw@ 掘る Ngw : ´Ngw@ 行く N gw : `jı̃ N gw@ ¯ja もちろん H gw : ¯H gwe: 必要である h tsw : ¯h tswa 草 n dzw : ¯n dzw@ ゾ(ヤクと牛の交配種) H ãüw : ´H ãüwa: 蚤 h tCw : ¯h tCwo: 酸っぱい H dýw : ¯N̊õ mo ˆH dýwoP de 撒き散らす H zw : ¯H zwa のみ H nw : `H nw@ Ca 鋭利な h tj : ´Pa h tja へそ h 147 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 6. 蔵文との対応関係による Yangthang 方言の特徴づけ チベット文語(蔵文)形式と口語形式の対応関係を探ることは,チベット語方言 の特徴を分析する伝統的な手法であり,西 (1986) や鈴木 (2008b) などの先行研究 において一定の注目すべき対応関係の傾向が示されている。 ここでは,Yangthang 方言の特徴を初頭子音と母音+音節末形式および声調の3 つに分けて述べる。また,Yangthang 方言を特徴づける要素について,適宜他方言 の事例との対比を注記する。なお,この考察の目標は通時的な議論を行うのでは なく,方言の特徴づけを行うためのいくつかの指標に基づいた対応関係を提示す ることにある。なお,蔵文は Wylie 式の転写で示す。チベット文字の表す音価は 格桑居冕・格桑央京 (2004:379-390) を参照。 6.1. 初頭子音 初頭子音の形式は,蔵文と比べると Yangthang 方言は単純である。先行研究で 注目されるいくつかの対応関係に着目して述べていく。 6.1.1. 閉鎖・破擦・摩擦音の有声性 閉鎖・破擦・摩擦音について,蔵文で基字に先行する子音がない有声音字 g, j, d, b, zh, z8 およびそれに足字 y, r を伴うものは,語頭においてそれぞれの調音点の無 声音に対応し,頭字もしくは前接字がある場合は一律に有声音が対応する。この 対応関係は広くカムチベット語にみられる関係と同じである。以下に例をあげる。 無声音例 ´pW tsa「息子」(bu tsha) ´úùa「茶」(ja) ´tOP「毒」(dug) ´tCÕ「壁」(gyang) ´Ca「鶏」(bya) ´ùẽj「畑」(zhing) 有声音例 ´H bi: ja「蛙」(sbal ba) ¯H ãü@「交換する」(brje) ¯H do「石」(rdo) ´H dýa「漢族」(rgya) ¯H ýÕ 「学ぶ」(sbyang) ´H ü@ 「4」(bzhi) 蔵文で基字に先行する子音がない有声音字について,語中の場合は場合によっ て有声音が現れる。動詞において接頭辞がついた場合も同様である。以下に例を あげる。 語頭例 ´úùa「お茶」(ja) ¯ha ´kw@「知っている」(ha go) 8 語中例 ´ùu: ãüa「朝食」(zhogs ja) ¯ha ´ői gw@「知らない」 (ha myi go) 有声音字としては dz も含まれるが,dz ではじまる蔵文形式に対応する口語形式は得られていない。 148 アジア・アフリカの言語と言語学 6 また,摩擦音について,蔵文で基字に先行する子音がない無声音字 s, sh には通 常無声有気音が対応する。もし先行する子音があれば,無声無気音で現れること が多い。以下に例をあげる。 ¯sh a「土」(sa) ¯ùh a「肉」(sha) ¯h sÕ「焼香」(bsang) `h ùeP「言う」(bshad) 6.1.2. 蔵文 sh, zh 対応形式 蔵文 sh, zh 対応形式は上掲の例にも示されているが,そり舌摩擦音となる。以 下に例をあげる。 ´ùh ı̃ ph õ「木」(shing phung) ´ùh õ「きのこ」(sha mo) ´H üo「搾る」(gzhu) ¯H üa「虹」(gzha’) 6.1.3. 蔵文 c, ch, j 対応形式 蔵文 c, ch, j 対応形式は上の例にも示されているが,基本的にそり舌破擦音とな る9 。以下に例をあげる。 ´úùh a:「雨」(char pa) ¯h úùW 「10」(bcu) ¯ï̊ úùh A:「犬歯」(mchi ba) ˆúùo mo「尼」(jo mo) ´H ãüwa:「蚤」(lji ba) ¯H ãü@「交換する」(brje) ただし,前鼻音を伴う有声音はそり舌閉鎖音になる。たとえば,`ï ãOP「見る」 (mjal) のようである10 。 なお,`h tCiP「1」(gcig) は例外である11 。 6.1.4. 蔵文 Py 対応形式 蔵文 Py は,p, ph, b に足字 y を伴う形式を含む対応形式についていう。 Yangthang 方言の対応形式は,基本的に前部硬口蓋摩擦音となる。以下に例をあ げる。 ´Ca「鶏」(bya) ¯Ch uP「方向」(phyogs) 9 10 11 ¯H ýÕ「学ぶ」(sbyang) ¯ý@「暖かい季節」(dbyar) この種の対応関係は少数派の現象に数えられる。この特徴を共有する方言は Sems-kyi-nyila 方言群に属する 大部分の方言に限定してみられる。鈴木 (2010) などを参照。 Sems-kyi-nyila 方言群 rGyalthang 下位方言群に属するいくつかの方言では,そり舌破擦音の摩擦部分が弱くな る語がしばしば見られ,特に有声音については前鼻音を伴うと閉鎖音として実現されるものが多い。 この例外は rGyalthang 下位方言群に属する他の方言においても認められる。 149 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 6.1.5. 蔵文 Ky 対応形式 蔵文 Ky は,k, kh, g に足字 y を伴う形式を含む対応形式についていう。 Yangthang 方言の対応形式は,基本的に前部硬口蓋破擦音である。以下に例をあ げる。 ¯tCh õ「家」(khyim) ´H dýa「漢族」(rgya) ¯h tCwo:「酸っぱい」(skyur po) なお,¯tsh @「犬」(khyi) は例外である12 。 6.1.6. 蔵文 Pr 対応形式 蔵文 Pr は,p, ph, b に足字 r を伴う形式を含む対応形式についていう。 Yangthang 方言の対応形式は,基本的に前部硬口蓋摩擦音になり,蔵文 Py 対応 形式と合流する。以下に例をあげる。 ¯Cı̃ 「雲」(sprin) ¯Ch @ h tsi「細い」(phra ?) ´C@「書く」(bri) ただし,声門摩擦音に対応する例もある。 `huP 「略奪する」(’phrog) `hOP「かゆい」(’phrug) また,前鼻音を伴う形式では,そり舌閉鎖音になる。たとえば,¯ïãi:「斗」(’bre) のようである。ただし,ˆñ éOP「雷」(’brug) および¯N gW:「米」(’bras) は例外的対応 といえる13 。 6.1.7. 蔵文 Kr 対応形式 蔵文 Kr は,k, kh, g に足字 r を伴う形式を含む対応形式についていう。 Yangthang 方言の対応形式は,基本的に硬口蓋閉鎖音であるが,いくつかの語で は前部硬口蓋破擦音と交替する14 。以下に例をあげる。 12 13 14 この例外的な対応は Sems-kyi-nyila 方言群に属する諸方言のみならず雲南省に分布するほとんどのカムチベッ ト語諸方言に共通してみられる。 しかしながら,「雷」の対応形式における調音点を本来の調音位置ととらえることもできる。というのも, Yangthang 方言には硬口蓋摩擦音の系列が存在せず,次に述べる蔵文 Kr 対応形式が基本的に硬口蓋閉鎖音に なるということを考えれば,蔵文 Pr 対応形式もまた本来は硬口蓋摩擦音であったと仮定することも可能であ るからである。「雷」の例では,前鼻音が摩擦音に先行しないため,閉鎖音になったと考えることもできる。 なお,「米」の形式は Sems-kyi-nyila 方言群に属する諸方言の形式と共通する。ただし Lamdo(浪都)方言で は,「米」が¯ñ ée:である(鈴木 2010)ことから,やはり本来は硬口蓋閉鎖音であった可能性がある。 この種の対応関係は少数派の現象に数えられる。また,蔵文 Ky 対応形式と合流しない点で,さらに特徴的で あるといえる。この特徴を共有する方言は Sems-kyi-nyila 方言群に属する Lamdo 方言や Annan(安南)方言 などに限定してみられる。 150 アジア・アフリカの言語と言語学 6 ¯h ca「髪」(skra) `ch AP 「血」(khrag) ´ch e ch a「鷹」(? khra) ´c@ ãüÕ「ナイフ」(gri chung) 中には前部硬口蓋破擦音しかもたないものがあり,たとえば`tCh W 「洗う」(khru) などがある。 ただし,´Ngw@ 「行く」(’gro) は例外である15 。 6.1.8. 蔵文 dr 対応形式 Yangthang 方言における蔵文 dr を含む形式の一般的な対応関係はそり舌閉鎖音 となる16 。以下に例をあげる。 `úOP 「6」(drug) ´ú@「尋ねる」(dri) ¯ha ïã@「鬼」(? ’dre) 6.1.9. 蔵文 sr 対応形式 Yangthang 方言における蔵文 sr を含む形式の一般的な対応関係は前気音を伴う 無声無気歯茎摩擦音である。以下に例をあげる。 `h suP 「命」(srog) ¯h sÕ 「(1)両」(srang) `h sO: h pe 「薄い」(srab ?) 6.1.10. 蔵文足字 w 対応形式 Yangthang 方言では,蔵文足字 w はわたり音/w/として口語音に現れる17 。以下 に例をあげる。 ´rwa「角(つの)」(rwa) ´ùwa「帽子」(zhwa) ¯h tswa「草」(rtswa) ただし,¯tsh a「塩」(tshwa) では現れない。 6.1.11. 蔵文 l, lh 対応形式 Yangthang 方言では,蔵文 l, lh は基本的にそれぞれ/l, l/に対応する。以下に例を ˚ あげる。 15 16 17 この例外的な対応は Sems-kyi-nyila 方言群に属する諸方言においても共通してみられる。 これがそり舌破擦音と対立を形成する点は,Sems-kyi-nyila 方言群に属する複数の方言に見られる。 これは迪慶州で話される大部分の方言に共通する現象である。 151 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 蔵文 l ´lAP ka「手」(lag pa) ˆlOP「羊」(lug) 蔵文 lh ¯lÕ「靴」(lham) ¯l˚a mo「女神」(lha mo) ˚ 蔵文 l が足字になる場合の対応形式は,蔵文 zl が n d18 ,蔵文 sl が h lに対応する ˚ 以外は,基本的に H l に対応する。 ´n da wa「月(天体)」(zla ba) `h loP 「教える」(slob) `H˚lÕ lu wa「うし年」(glang lo ba) `H lOP 「盛る」(blug) ¯H lÕ ma「空気」(rlung ma) 6.1.12. 前鼻音を含む子音連続 Yangthang 方言の前鼻音を含む子音連続については,前鼻音要素に後続する子音 に無声有気音と有声音の2種が認められる。前鼻音に対応する蔵文には ’ と m の 2種があるが,口語形式では鼻音部と後続子音は常に調音点を同じくする。有声 前鼻音に関しては,2通り存在する発音様式(5.2.1 参照)とも来源は同じである。 以下に例をあげる。 ´ndẽ「読む」(’don) ¯n dzw@ 「ゾ」(mdzo) ¯mbW「虫」(’bu) ´Ngw@「行く」(’gro) `˚n th O: ba「厚い」(’thug pa) ¯ï̊ úùh 0j mj@ 「バター灯」(mchod me) 6.1.13. 前舌狭母音に先行する蔵文歯茎阻害音字の対応形式 Yangthang 方言における蔵文 ts, tsh, dz, s, z およびそれに先行する子音字を伴う 例について,後続する母音が前舌狭母音であるときに,その対応初頭子音が前部 硬口蓋音になるという現象が認められる19 。この種の対応は,蔵文の母音が前舌狭 母音 i, e である場合もあれば,口語形式が前舌狭母音/i/で実現されるものにもまた 見られる。以下に例をあげる。 摩擦音の場合 ¯Ch ˜@ ñ é@「ライオン」(seng ge) ¯CÕ tCh @「狼」(spyang khi) ´h Ci: tCa「明るい」(gsal ?) 破擦音の場合 `tCh i H dýiP 「ついたち」(tshes gcig) ¯ő dýi: bo「美しい」(mdzes po) ¯H dýi: 「探す」(btsal) ただし,「歯茎音+前舌狭母音」という形式も認められ,`h tsi h ke「中間の」(?) といった例がある20 。 18 19 20 前鼻音を伴う形式は,Sems-kyi-nyila 方言群の中でも rGyalthang 下位方言群に独特である。 この現象は Sems-kyi-nyila 方言群 rGyalthang 下位方言群の複数の方言に認められる。 すなわち,音変化に年代差が存在するということである。このような例が存在するため,共時的にはこの初頭 子音の出現条件を音韻規則と認めることはできない。 152 アジア・アフリカの言語と言語学 6 なお,初頭子音が鼻音の場合はそれ自身の調音点に変化は見られない。たとえ ば,´nO ni「去年」(na ning) は¯H nO: ői「あさって」(gnang nyin) と対立する。 6.2. 母音+音節末形式 基本的な対応関係は以下のように示すことができる。 V\C a i u e o #/’ a @ W @ o / w@ b OwP 8P d eP iP 0P / iP g AP iP OP m Õ õ õ n Ẽ ı̃ ẽj ng Õ ı̃ / ẽj Õ 0P / ejP uP ũ ẽ / õ õ r W: / ę: @: ę: l i: i: uj i: s e: i: 以上のうち,末子音 m, n, ng に対応する口語形式には鼻母音が現れ,末子音 b, d, g に対応する口語形式には声門閉鎖音を伴うというのが主たる対応関係である。 以上のようにまとめたのは1つの主要な傾向に過ぎず,異なる例も多々見受けら れる。 これらの対応関係で際立つものは,/ę/の存在とその現れである21 。以下に例をあ げる。 ¯sh ę: 「金」(gser) ´lu h sę: 「新年」(lo gsar) ほかに,蔵文 im に/õ/が対応するのも特徴的である22 。以下に例をあげる。 ¯tCh õ「家」(khyim) ´ùõ mo「おいしい」(zhim po) また,Yangthang 方言にはそり舌化母音がみられるが,蔵文に対応する形式では ない。 6.3. 声調 声調を有するチベット語方言の分析において,声調の歴史的発展は議論される べき重要な問題である。ここでは通時的な議論で注目される蔵文との対応関係を 基準に述べる。 Yangthang 方言では,蔵文と声調の対応関係が比較的明瞭に現れるのは単音節語 の事例に限られる。複音節語の声調パターンは,蔵文との対応のみで決定される ものではないようである。このため,以下に示すのは単音節語の事例のみとして おく。 Yangthang 方言の声調体系は,語声調で語頭の音節初頭部が高いか低いかの異 なりと音節末尾で下降するかしないかの2通りで構成され,計4種の弁別が行 われる。チベット語の声調発生は音節初頭子音群の単純化と密接な関連がある。 21 22 これは Sems-kyi-nyila 方言群の限られた方言に認められる。 この特徴も迪慶州で話される大部分の方言に共通する現象である。 153 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 Yangthang 方言の場合,音節初頭における声調の高さの蔵文との対応関係につい て,先に述べた母音と同様に簡潔に対応の傾向を述べると,以下のようになる。 (無指定)とする点は,声調の現れと頭字/前接字の有無に関連性があまり見られな いものである。 頭字/前接字 (無指定) なし あり なし あり (無指定) 基字など 無声無気閉鎖・破擦・摩擦音, 無声有気閉鎖・破擦音 有声閉鎖・破擦・摩擦音 有声閉鎖・破擦・摩擦音 共鳴音 共鳴音 足字 l 声調 高 低 高・低 低 高 高 以上のうち,頭字/前接字のある有声閉鎖・破擦音に対応する口語形式には,高・ 低両方の声調が現れる23 。 共鳴音の場合,原則的に頭字/前接字がなければ低声調はじまりの声調に,頭字/ 前接字があれば高声調はじまりの声調に対応する。 なお,音節末における声調の下降の有無については,現段階では蔵文との対応 関係で説明を与えることは困難である。 7. 語形式による Yangthang 方言の特徴づけ 蔵文との対応関係による方言の特徴づけは,チベット語方言の中の類型的特徴 を明らかにするものである。これに対し,語形式による方言の特徴づけは,方言 間の類型の類似を越えて,地域的な側面から分析することになる。 ここでは,蔵文との対応関係から見て,来源が通常の蔵文との対照からでは説 明の与えられないいくつかの語形式についてまとめる。 7.1. 音節の縮約現象 Yangthang 方言では,以下のように蔵文から考えると音節の縮約を起こしている と見られるいくつかの語がある。 ´őã:24 「太陽」(nyi ma) ´kh A: 「雪」(kha ba) ´Cwa:「ねずみ」(byi ba) ¯h ka: 「柱」(ka ba) これらの例を見ると,口語形式では母音が長母音化しているのが特徴的で, 対応する蔵文の第2音節が ma, bo などになっている。このような縮約現象は Chaphreng 方言群の方言に顕著に見られる現象である(鈴木 2007)ほか,迪慶州 23 24 これは mBathang(巴塘)方言や Derge(徳格)方言でも問題になっている事柄で(格桑居冕 (1985),江荻 (2002:264-265) など),いくつかのカムチベット語方言ではよく見られる現象である。 ´ői ma も用いられる。 154 アジア・アフリカの言語と言語学 6 で話される方言でも少数ながら同様の現象が確認される。しかし各方言によって 縮約を起こしている語は異なる。 7.2. 古蔵文に対応する語 Yangthang 方言には,いくつか古蔵文に対応する語形式がある。 Yangthang 方言 ´ői ´őeP `H őiP ¯ő@ `őiP ¯H üa 古蔵文 蔵文 myi myed dmyig mye myid gzha’ mi med mig me mid ’ja’ 語義 ∼でない ない 目 火 飲み込む 虹 上から3語の示す形式は迪慶州で話される方言全体に見られる特徴である25 。 「火」 「飲み込む」は古蔵文を見ても低声調での対応を予測させるが,実際は声調が 高く現れる。「虹」の例は,いくつかの迪慶州で話される方言でも確認される。 8. まとめ 本稿では,Sems-kyi-nyila 方言群 rGyalthang 下位方言群に属する Yangthang 方 言を音体系を示し,蔵文と口語の対応関係を分析することでその方言特徴を明ら かにした。示された特徴はこれまでに記述されたことのある rGyalthang 方言と近 似しているが,個別特徴も複数認められる。 Yangthang 方言の音体系上の特徴としては,前部硬口蓋閉鎖音系列や硬口蓋閉鎖 音系列,/ę/などの存在がある。また,子音連続の構成において前鼻音に2種の構造 が見られる点も注目できる。また,音節の縮約現象が見られることも特徴的であ るといえる。 参 考 文 献 Hongladarom, Krisadawan. 1996. “Rgyalthang Tibetan of Yunnan: a preliminary report”. In Linguistics of the Tibeto-Burman Area Vol.19.2. pp.69–92. ——. 2007a. “Grammatical peculiarities of Two dialects of Southern Kham Tibetan.” In Roland Bielmeier & Felix Haller (eds.) Linguistics of the Himalayas and Beyond, Berlin/New York: Mouton de Gruyter. pp.119–152. ——. 2007b. “Evidentiality in Rgyalthang Tibetan”. In Linguistics of the Tibeto-Burman Area Vol.30.2. pp.17–44. 華侃 主編. 2002. 《藏語安多方言詞匯》. 蘭州:甘粛民族出版社. 江荻. 2002. 《藏語語音史研究》. 北京:民族出版社. 格桑居冕 [sKal-bzang ’Gyur-med]. 1985. 〈藏語巴塘話的語音分析〉. 《民族語文》第 2 期. pp.16–27. 格桑居冕・格桑央京 [sKal-bzang dByangs-can]. 2004. 《實用藏文文法教程 [修訂本]》. 成都:四川民族出版社. 25 「∼でない」という形式と蔵文,古蔵文ともに同様の対応を示す語に「人」(mi) があるが, 「人」の Yangthang 方言の形式は´n@であり,以上に示した形式とは異なる。この種の初頭子音鼻音についての問題は,Suzuki (2009) で議論されている。 155 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 西義郎. 1986. 「現代チベット語方言の分類」. 『国立民族学博物館研究報告』11 巻 4 号. pp.837–900 + 1 地図. 蘇郎甲楚 [bSod-nams rGya-mtsho]. 2007. 〈再論中甸藏語方言〉. 《蘇郎甲楚藏學文集》, 昆明:雲南民族出版 社. pp.130–142. 鈴木博之. 2005. 「チベット語音節構造の研究」. 『アジア・アフリカ言語文化研究』第 69 号. pp.1–23. ——. 2007. 「甘孜州郷城県カムチベット語の方言特徴」. 『ニダバ』第 36 号. pp.17–26. ——. 2008a. 「迪慶州瀾滄江流域カムチベット語(徳欽/雲嶺/燕門/巴迪方言)の方言特徴」. 『ニダバ』第 37 号. pp.115–124. ——. 2008b. 〈迪慶藏語是康巴藏語中的 “一個” 次方言 pp.6–10. 〉. 《康定民族師範高等専科學校學報》第 3 期. ——. 2009. 「迪慶州金沙江流域カムチベット語(奔子欄/尼西/ 頂/霞若/其宗方言)の方言特徴」. 『ニダバ』 第 38 号. pp.29–38. ——. 2010. 「カムチベット語香格里拉県浪都 [Lamdo] 方言の方言所属」. 『国立民族学博物館研究報告』 2010-35 巻 1 号. pp.231–264. Suzuki, Hiroyuki. 2009. “Preliminary report on the linguistic geography for multicoloured Tibetan dialects of Yunnan”. In Makoto Minegishi, Kingkarn Thepkanjana, Wirote Aroonmanakun & Mitsuaki Endo (eds.) Proceedings of the Chulalongkorn-Japan Linguistics Symposium, Fuchu : Global COE Program ‘Corpus-based Linguistics and Language Education,’ Tokyo University of Foreign Studies. pp.267–279. Wang, Xiaosong. 1996. “Prolegomenon to Rgyalthang Tibetan phonology”. In Linguistics of the Tibeto-Burman Area Vol.19.2/Fall. pp.55–67. 雲南省中甸県地方誌編纂委員會編. 1997. 《中甸県誌》. 昆明:雲南民族出版社. 《雲南省誌》編纂委員會. 1998. 《雲南省誌 59 少数民族語言文字誌》. 昆明:雲南民族出版社. 朱曉農. 2007. 〈説鼻音〉. 《語言研究》第 3 期. pp.1–13. [付記] 筆者による現地調査については,平成 16-20 年度文部科学省科学研究費補助金基盤研究 (S) 「チベット文化圏における言語基層の解明」 (研究代表者:長野泰彦,課題番号 16102001)お よび平成 19-21 年度日本学術振興会科学研究費補助金(特別研究員奨励費)「川西民族走廊・ チベット文化圏における少数民族言語の方言調査と地域言語学的研究」の援助を受けている。 なお,迪慶州における調査に当たっては昆明市の瑪吉阿米・香格里拉藏族風情宮の関係各位 の協力を得た。ここに記して感謝の意を表する。 156 アジア・アフリカの言語と言語学 6 分類語彙 1200 配列は華侃 主編 (2002) に準拠し,名詞,数詞,代名詞,形容詞,動詞の順で ある。名詞は,意味によって小区分を設けた。 天文地理 天 ¯H nÕ 太陽 ´ői ma / ´őã: 光 ´wiP 月 ´n da wa 星 ¯h kW: Ha 天気 ¯H nÕ 雲 ¯Cı̃ 雷 ˆñ éOP 風 ¯H lÕ 雨 ´úùh W Ha / ´úùh a: 虹 ¯H üa 雪 ´kh A: 霜 `muP joP ˚ úùh W 露 ´s@: 霧 `muP joP ñ 氷 ¯˚ éoP 火 ¯ő@ 空気 ¯H lÕ ma 蒸気 ¯H lÕ ma 旱魃 ¯h kÕ mo 水害 ¯úùh W 世界 ´lÕ ma 地 ¯sh a 山 ´r@ がけ ´r@ 岩石 ¯H do 洞窟 ´jA: dõ 洞穴 ´tõ 川 ¯úùh W 湖 ¯˚n tsh o 井戸 `úùh W őiP 杭 ˆwa 道 ´lÕ 平原 ¯h ťÕ 土 ¯sh a 畑 ´ùẽj 乾燥地 ¯sh a ¯h kÕ mo 農区 `pe ji ´rõ ma 牧区 ˆő0 úùh à 石 ¯H do 砂 ´C@ Hã 埃 ¯sh a / ´th ja: 水 ¯úùh W 泉 ¯úùh W 温泉 ´tsh a úùh W 森 ¯ùh ẽj ph õ ´r@ 草地 ¯h tswa 金 ¯sh ę: 銀 ¯H NWj 鉄 `úùAP 場所 ´lÕ ba ラサ ¯la sh a ˚ ji lÕ ma カム ¯pe 町 ´rwiP 通り ´rwiP 橋 ´ndzÕ mba 家 `n@ ch @ 157 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 人体 体 ´li: b@ 頭 ¯N go 髪 ¯h ca お下げ ´H lE: m@ 額 ¯th 0P pa 眉毛 ¯H z@ pW 睫毛 ¯H ői: pW 目 `H őiP 鼻 ¯na ˚O No 鼻の穴 ¯n H 耳 ¯˚ na ro 顔 ¯H dõ 口 ¯kh a 唇 ´ő̊ tCh u h pje あごひげ ´Pa tsu: もみあげ ´Pa tsu: 首 `tCW pa 肩 ¯h põ ma 背 ˆkW: lj@ 脇 `ï̊ úùh ẽ lAP ùh o 乳房 ¯H neP 乳 ´wÃ: 腹 ˆPa po へそ ´Pa h tja 腰 ´gW riP 尻 ˆtsh õ nAP 太もも ¯H zo ひざ ¯h pi: mo 下腿 ´Cı̃ ma 足 ¯h ka mba くるぶし ¯h kÕ ï ãi 腕 ´kõ ˚n tsh o 手 ´lAP ka 指 ´n dzi: Ngo 手のひら ´lA: th eP 親指 ´ñ̊ ch e h pẽ 爪 ´Ch @ mo 指紋 ´nu: b@ 拳 ´mW tsh u あざ ¯mjã 傷口 ¯H˚ma ´li: sh a しみ ¯H ma 肌 ¯ùh a 血 `ch AP 筋肉 ¯h ts@ H dýW 骨 ´ri: pa 関節 ˆkwà tCje 骨髄 ¯h kÕ 歯 ¯sh w@ 犬歯 ¯ï̊ úùh A: 舌 ¯h úù@ lj@ 喉 ¯Ch 0: kÕ 喉仏 ¯Pa h tsa ´b@ luP 心臓 ¯ő̊ı̃ 腸 ´H dýW lje 大便 ´h tCA: wa 小便 ¯h úùẽj 屁 ¯Cı̃ 汗 ¯H NW: úùh W 痰 ´li: nOP つば ¯kh a˚úùh W 鼻水 ¯nOP H 涙 ¯˚ ői: úùh W h 声 ` keP 死体 ´n@ ro 命 `h suP 寿命 `h suP 158 アジア・アフリカの言語と言語学 6 人物 人 ´n@ チベット人 ¯pejP 漢族 ´H dýa 大人 ´n@ ´H dA: ndeP 子供 ´Ci 赤ん坊 ´Ci 老人 ¯ő@ ő@ 老婦人 ¯naj naj 男 ´po tsh a 女 ˆn@ úùh AP 少年 ´po tsh a 少女 ´po mo 医者 ¯mẼ mba 軍人 ¯H˚mA: n@ 大工 ¯ő dý0: 学者 ´ji dz@ ¯nej n@ ´n@ こじき ¯CÕ lõ 泥棒 ¯h kWj ma 病人 ´naj xwa 皇帝 ´H dýE: H bo 官 ¯h pẽ mo 友人 ´ruP お供 ´ruP 盲人 ¯H ői: lõ 聾唖者 ¯H nO wẽ 猫背の人 ¯h tuj H gW 口唇裂 `h põ jAP ´ï̊ úùh u dýo 狂人 ¯ő̊õ mba 口の聞けない人 ¯h kOP pa 客 ¯H m8j m@ 知り合い ¯ha ˆko n@ ´n@ 知らない人 ¯ha ´m@ go n@ ´n@ 下男 `Pa úùh o 祖父 ¯ő@ ő@ 祖母 ¯naj naj 父 ´ba 母 ´ma 両親 ´po tsh a 息子 ´pW tsa 息子の嫁 ¯H n@ wã 娘 ´Ci kh @ 娘婿 ´mA: wa 孫息子 ´tsh a wo 孫娘 ´tsh a mo 兄 ¯ja ja 姉 ¯m@ m@ 弟 ´őı̃ mbW 妹 ´na m@ 父の兄 ´ba ba 父の兄の妻 ´ma ma 父の弟 ¯kW kW 父の弟の妻 ¯wà wà 甥 ´tsh @ wo 兄弟 ¯h pẽj 姉妹 ¯h pẽj 母の兄弟 ´Pa üÕ 義理の父 ´ba ba 義理の母 ´ma ma 家族 `tCh õ n@ 親戚 ´H@ riP 夫 ´mA: wa 妻 ¯H n@ wã 未亡人 ´jOP sa 159 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 家畜 家畜 ´ch A: úùh AP 牛 ´pa 水牛 ¯úùh e H lÕ ヤク `H jAP めすヤク `H jAP 子なしのめすヤク `H jAP ゾ26 ¯n dzw@ 子牛 ´pi: 湿牛糞 ˆp@ h tCAP 乾牛糞 ˆp@ h tCAP 角 ´rwa ひづめ ¯h k˜@ mba 皮 ´pje re 毛 ¯h pW 毛の色 `h pW ji ˆjẼ s@ 尾 ´ne wã 馬 ¯h ta 馬糞 `h ta h tCAP 羊 ˆlOP 綿羊 ˆlOP 山羊 ´ra 羊毛 ´lO: h pW 羊糞 ˆlO: h tCAP ロバ ¯kwo ro ぶた `ph AP めすぶた ´ph A: ma おすぶた ´ja r@ 子ぶた ´ph je / ¯tC@ úùu ぶた糞 ˆph A: h tCAP 犬 ¯tsh @ 犬糞 `tsh @ h tCAP 猫 ´Pa ljW うさぎ `h põ jAP 鶏 ´Ca とさか ´s@ tCoP 翼 ´ñ éo pa 羽 ¯h pW 鶏糞 ˆCe h tCAP 鴨 ´úùh W ja その他の動物 虎 ´r@ dAP ライオン ¯Ch ˜@ ñ é@ 龍 ˆñ éOP 猿 ´Pa C0 象 ¯úùh ẽ H lÕ 熊 ´tõ いのしし `ph A: gujP ねずみ ´Cwa: 土ねずみ ´Cwa: ねずみ糞 ˆC0 h tCAP いたち ¯h C@ mõ 狼 ¯CÕ tCh W 狐 ´wa 26 ヤクと牛の交配種のおすを指す。 鳥 ´C0: 鳥の巣 ´C0: tsh Õ 鳥糞 ˆC0: h tCAP 鷹 ´ch e ch a ツバメ ´C0: ro すずめ ´C0: からす ´Ca ruij めじろ ´Ca 啄木鳥 `ùh ẽj ts@ H dý˜@ カッコウ `ko h ku 孔雀 ¯H dýe ja 蛇 ¯z0 蛙 ´H bi: ja 160 アジア・アフリカの言語と言語学 6 トカゲ `Pa H dý0: úùh ẽ 魚 ´őa 虫 ¯mbW 蚤 ´H ãüwa: しらみ ¯ùh iP ハエ ´ýẼ 蚊 ´ýẼ ミミズ ¯sh a mbW アリ ´ko mõ アリ塚 ´ko mõ ´mbW tsh Õ ばった ´tsh @ tsh a 蝶 ˆCh à kh @ ljOP 植物 木 ´ùh ı̃ ph õ 枝 `Pa~ lAP 根 ¯h tsa 葉 ¯Pa~ l0P 花 ´me duP 竹 `ő̊i jAP とげ ´tsh @ H dOP 桃 ´kh O: mo 梨 ¯ùh @ lj@ みかん ´jO Hà ´ùh u po 胡桃 ´H gu do 穀物 ¯th uP 食料 ¯H dýa 米粒 ´mW N gW: 青稞27 ´na: / ´nE: とうもろこし ´kh @ dze 野菜 ´tsh 8̃ ja 大根 ˆlu h po 唐辛子 ´pu mo ジャガイモ ´jà j0 草 ¯h tswa きのこ ´ùh õ ひまわり ¯kwa ts@ ´me duP 米 ¯N gW: 食物 ごはん ¯N gW: 粥 `N gW: th WP モモ28 ´kh wa 麺 ´mẽ 朝食 ´ùu: ãüa 昼食 ´sje: ãüa 夕食 ¯˚n tsh ẽ ãüa ミルクティー ´úùa 肉 ¯ùh a 赤身 ¯ùh a 27 28 29 裸麦の一種である。 具が入っているものと入っていないものがある。 大麦を炒って粉末にしたもの。 油 ¯nõ ˚õ 脂肪油 ¯n ˚ バター ´mW: ヨーグルト ¯h tCwo: úù@ チーズ ¯th iP チーズケーキ ¯th iP ツァンパ29 ¯h tsÕ mba 牛肉 ´ùe: ùh a 塩 ¯tsh a / ´tsh a: m@ 酢 ˆswã tsh u 161 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 卵 ˆNwAP / `H gwa スープ ´úùh A: 酒 ¯úùh Õ 茶 ´úùa タバコ ¯jẼ 薬 ¯mã ぶたの餌 ˚´ph A: h to 鼻タバコ ¯na n da ˚ 衣料装飾 糸 ´Cjẽ 布 ´re: コート ˆre: hã th a 袈裟 `Pa H da: kh ẽ ˆhã th a 衣服 `hã th a / `hã da チュバ30 ´pejP H dýW 襟 ¯H dýu: ji ljã ボタン ´Cà ñ é0 ズボン ´tu: ma 帽子 ´ùwa ベルト `h kwa h k@ rAP 靴 ¯lÕ ˚h õ 櫛 ´s 装身具 ´j8: ra Pa sh a 象牙 ¯úùh ẽ H lÕ sh w@ イヤリング `H na rõ ´˚n th A: sh a ネックレス `tCW pa ´˚n th A: sh a 指輪 ¯tsh @ duP ブレスレット ´lA: őW̃ 住居 家(建物) ¯tCh õ 屋根 `tCh õ N go ¯th uP 土台 ¯sh @ úùh a 牛小屋 ¯H dÕ ra ぶた小屋 `ph AP kwa sh a 鳥小屋 ˆCa kwa sh a 壁 ´tCÕ 丸太 ¯ùh ẽj 板 ¯ùh ẽj 柱 ¯h ka: 門 ´H gw@ 閂 ´H go la 玄関 ´H gw@ 窓 ´H go ãüÕ 階段 ¯h ke: 生活用具 もの ¯Ce wa いす ´lu: H de ベッド ´jo: tCh @ 鏡 ¯ùh i: H go 箒 ¯H nej mo 30 チベットの民族衣装で,長い袖が特徴的である。 薪 ¯ùh ẽj マッチ ´jẼ xo 線香 ´ùh õ mo かまど ´th Ow wa 鉄なべ `h ts@ h úùAP 162 アジア・アフリカの言語と言語学 6 フライパン `h ts@ h úùAP 蒸し器 ¯h poP ふた ´kh @ ljOP ナイフ ´c@ ãüÕ 木製椀 `ùh ı̃ ph W r@ ボウル ´ph W r@ 皿 ´H di: 箸 ´ùÕ 瓶 ´cA: ポット ´cA: 甕 ¯H duP 壷 ´xu 木製盆 `ùh ẽj ph ẽ 三脚 `h úùA: H é@ ふいご ¯wo doP 吊りベルト `h k@ rAP 秤 ´H dýà 斗 ¯ïãi: お金 ¯H NWj 商品 ¯H dýoP 針 ¯kh OwP 釘 ´őà tı̃ はさみ ´tC@ tẼ はしご ¯h ke: 傘 ¯H dWP 鍵 ´N go xOP 車輪 ¯m bW lw@ 棒 `ő̊ı̃ ja 鞭 `h ta h úùAP めがね ¯H ői: ùh i: 船 ´wa 飛行機 ¯h úùA: ýa その他道具 斧 ¯h ta r@ 金槌 ¯th wA: のみ ¯H zwa 鋸 ´sh o ljW 錐 ´h tsA: wa 鍬 ¯th õ mba h 鋤 ´m ˚ p A: ts@ ガソリン ¯nõ ˚h @ ťh o: sh a かつぎ棒 `tC 刃物の柄 ´jwa: 縄 ´th je ja 肥料 ¯liP 鎌 ´swa: 銃 ´ői nda 弾 ¯nd0: 弓 ´ce üÕ 矢 ¯nda 落とし穴 ¯ő̊@ 毒 ´tOP 文化教育 文字 ´ji dý@ 手紙 ´ji dý@ 本 ´ji dý@ 紙 ´ùwı̃ ペン ´pi 学校 ´Cwo th à 話 ¯Ch uP チベット語 ˆpej h keP チベット文語 ˆpej jiP 名前 ´őÕ 記号 `h tsA: tsoP 物語 ¯ő̊ı̃ h tÕ 163 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 民謡 `H jÕ th ẽ 踊り ´tsh @ lAP 太鼓 ¯H Na 神仏 `h ko H üu 女神 ¯la mo ˚ ïã@ 鬼 ¯ha 女鬼 ¯ha ïã@ ´n@ úùh a 悪魔 ¯sh W̃j mo 仏陀 `h ko H üu 天堂 ¯ùh e jiP ラマ ´Pa H da 活仏 `h ko H üu 僧侶 ´Pa H da 尼 ˆúùo mo / ´Pa ő@ ˆúùo mo 地獄 ¯ùh e jiP 閻魔 ¯tsh 0j H dýe 経堂 ¯la H gÕ h 焼香 ¯˚ sÕ 墓 ´tW: r@ 仏像 `h ko H üu ´Cà バター灯 ¯ï̊ úùh 0j mj@ カタ31 `kh @ dAP 護身符箱 ¯h sÕ wa 呪文 `Ce: tC@ お経 ´je H dýOP 抽象物 間違い ´ma n dzo sh a 区別 ´m@ ï ãa sh a 吉祥 `H jà j8P 感謝 ¯kh a lẼ 影 ´Pa N gAP 色 ¯tCh 0: 夢 ¯H ő@ lÕ 精神 `Ch Õ nÕ ´ő@ 力 ¯H boP 監獄 ´lo h keP 勝利 ˆúùA: úù@ 国家 ´H dýe: kh OP 歩行 ´n@ h tCõ ´N go 位置方角 方向 ¯Ch uP 東 `ùh @ duP 西 ˆnõ duP 中間 `h tsi h k@ そば ¯h tO: zo 左 `H ji: lAP duP 右 `H deP lAP duP 前 ¯no mõ 後 ´N˚go ˚ th a H 外側 ´ dýO: Ch uP 31 祝福の意を表すスカーフの一種である。 内側 ´őÕ ői 頂上 ˆN go th uP 上側 ¯H gÕ 下側 ´ùoP 上 ¯H gÕ 壁の上 ˆtCÕ N go 山のふもと ´r@ ´k@ tsa 底 ´ùoP 164 アジア・アフリカの言語と言語学 6 時間 時間 `úùh W tsh 0jP 今日 ´t@ rı̃ 昨日 ´kh E: tsÕ おととい ¯kh aj ˆőı̃ mu さきおととい ¯N̊ı̃ ˆőı̃ mu 明日 ´sh Õ ői あさって ¯H nO: ői しあさって `H nÕ ő dý@ 今晩 ˆt@ n8jP 明日の晩 ´sh Õ n8P 昨日の晩 ´n@ sh õ 昼間 ´őı̃ mu 朝 ´ùu: wa 正午 ´Ce ra 夕方 ¯ma tsh Õ 夜 ¯˚n˚tsh Ẽ 夜中 ´nÕ Ch e 真夜中 ´nÕ Ch e えと `úùh W lu wa ね32 ˆCwa: lu wa うし `H lÕ lu wa とら `h tAP lu wa う ˆloP lu wa たつ `ñ éOP lu wa うま `h ta lu wa ひつじ ˆlOP lu wa とり ˆCa lu wa いぬ `tsh @ lu wa ぶた `ph AP lu wa ついたち `tCh i H dýiP 2日 ¯tCh i: n@ 月 ´n da wa 午前 ´Cu wa 午後 ´Ch e ra th Õ úùh W 年 ´lo 年齢 ´lo 今年 ´to lo 去年 ´nO ni 来年 ´sh Õ ph 0jP 再来年 `H nÕ ph 0jP 以前 ¯N̊ı̃ 昔 ¯N̊ı̃ ma 今 ´te: 未来 ¯H nO: ői 暖かい季節 ¯ý@ 寒い季節 ¯H gẽ 新年 ´lu h sę: 数字 1 `h tCiP 2 ¯n˜@j 3 ¯h sõ 4 ´H ü@ 5 ¯H Na 6 `úOP 7 ¯H dã 8 ¯H dýeP 9 ¯H gW 32 以下の動物名は,十二支の名称である。 10 ¯h úùW 11 `úùwo dýiP 12 ¯úùwo n@ 13 ¯úùwo h sõ 14 ¯úù0j ü@ 15 ¯úùE: Na 16 `úùu ãOP 17 ¯úùu: H dã 18 `úùu H dýeP 165 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 19 ¯úùu: H gW 20 ´ő@ ùh W 21 ´ő@ ùh W ¯h tsa: h tCiP 28 ´ő@ ùh W ¯h tsa: H dýeP 30 ¯sh õ h úùW 32 ¯sh õ h úùW ¯h tsa: n@ 38 ¯sh õ h úùW ¯h tsa: H dýeP 40 ´ü@ h úùW 43 ´ü@ h úùW ¯h tsa: h sõ 50 ¯H Na h úùW 54 ¯H Na h úùW `h tsa: H ü@ 60 ´úùwO: h úùW 65 ´úùwO: h úùW ¯h tsa: H Na 70 ´H dẼ h úùW 76 ´H dẼ h úùW `h tsa: úOP 80 ´H dýe: úùW 87 ´H dýe: úùW ¯h tsa: H dã 90 ¯H gW h úùW 98 ¯H gW h úùW `h tsa: H dýeP 99 ¯H gW h úùW ¯h tsa: H gW 100 ¯H dýa 101 `H dýa d@ `h tCiP 108 `H dýa d@ ¯H dýeP 880 ´H dýe: H dýa d@ ´H dýe: úùW 千 `h tõ úùh a 万 `úùh @ úùh a 十万 ˆmõ úùh a 半分 `Ch eP 数量詞 1人 ´n@ Ngo h tCiP 1碗 ´ph W r@ h tCiP 1ページ ˆù8̃ lje h tCiP 1本の草 `h tswa h tCiP 1粒の米 ´N gW: nd0 `Ha h tCiP 2つかみの米 ¯N gW: ¯h põ mu ´to 1碗のごはん ¯N gW: ´ph W r@ h tCiP 1時間 `úùh W tsh 0jP ¯h tCiP 1輪の花 ˆme duP h tCiP 1文 `h ùuP h tCiP 1そろいの靴 `lÕ h tCiP h 1対のウサギ `˚ põ H jAP `úùh a h tCiP 1群れの羊 ˆlOP ´tseP 1節 `tuP h tCiP 1日の旅程 ´őã: h tCiP 片方の靴 `lÕ ´Ha H ja ˚ ´sẼ `th oP h tCiP 1口の食事 1セット `pjÕ lu h tCiP 1串の玉 ¯Ch e Na h tCiP 1滴の油 ¯nõ th iP h tCiP ˚`tCh õ h tCiP 1つの部屋 1瓶の酒 ¯úùh Õ H dýa h tCiP 1斤 ´m@ h sÕ h tCiP 2両 ¯h sÕ n˜@j 1尺 `úùh a ´kÕ 1元 `h úù@ h tCiP 1角 `h tõ h tCiP 1分 `h kW: h tCiP 少しの間 ˆtCe riP H go 1日 ˆőã: h tCiP 1夜 ˆnuP h tCiP 1か月 ´n da wa h tCiP 1年 ˆlo h tCiP 1歳 ˆlo h tCiP 一生 ˆőe lo h tCiP 1歩 ¯h kÕ ma ˆkõ h pW 1声あげる ¯h tCiP ˆmej z8: tsh @ 1回打つ ¯h tCiP ¯H lOP 1噛みする ¯h tCiP ¯ï ãeP いくらか ¯h tsejP 毎日 ´őã: ¯t@ ùh @ それぞれ ´n@ kW̃j 毎晩 ˆnuP ¯t@ ùh @ 166 アジア・アフリカの言語と言語学 6 代名詞 私 ´Na 私たち2人 `Pa na n@ 私たち `Pa na h kW̃j あなた `tCh 0P あなたたち2人 ˆtCh 0 na n@ あなたたち ˆtCh 0P na h kW̃j 彼(彼女) `tCh 0P 彼ら2人 ˆtCh 0P na n@ 彼ら ˆtCh 0P na h kW̃j 我々 ´Pa wu h kW̃j 我々2人 ´Pa go ¯n˜@j 皆 ¯kW̃j 自分 ´rÕ rÕ 他の人 ˆn@ kh W これ ¯Pa n@ これら ¯Pa n@ kh W ここ ¯Pa ni za この辺 ¯Pa ni za この2つ ¯Pa n@ ¯n˜@j このような `Pa tsW~ あれ(近) ´Pa ti za あれ(遠) `sa: t@ `H duP あれら ¯Pa t@ kh W あそこ ˆt@ H duP あの辺 ˆt@ H duP あのような `Pa tsW~ 誰 ¯sh W 何 ´ka djW どこ ˆkA: za いつ ´k@ zẽj どのように `úùh @ ,˜@ nd@ どれくらい ´k@ zeP いくつ ´k@ zeP そのほか `ph uP th e kh W おのおの ´rÕ rÕ 一切 ¯kW̃j すべて ¯kW̃j 今回 ´őu ,u いつか ¯˚n th @: l@ re 形容詞 大きい ´da: nde 小さい `me: me: 太い ´H bũ th e 細い ¯Ch @ h tsi 高い ´kÕ ri 低い `kwO h t@P 長い ´rı̃ nde 短い ´th Õ Nga 遠い ´ő dýÕ rı̃ 近い ¯th A: th Õ 中間の `h tsi h k@ 広々した ˆtà nde 厚い `˚n th O: ba 薄い `h sO: h pe 深い ´xo: dẽj 浅い ´xo: dẽj ´mı̃ 満ちた ´kÕ 空の ¯kh õ 多い ´mo: 少ない ´őÕ 丸い ¯H go H gu 平たい `p@ ljW 尖った `h tsõ Ca はげた ¯Ngo l0P 水平の ¯H dj@ mo h h 命中した ¯H lWP rẽ m ˚ p uP tC @ まっすぐな ´úÕ mo 曲がった ¯H g8̃ ï ãiP 167 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 黒い ˆnAP nAP 白い ¯h kW h kW 赤い ¯H mõ Cı̃ 黄色い ¯sh @ sh @ 緑の ¯N̊O Cı̃ 青い ¯N̊O Cı̃ 明るい ¯h Ci: tCa まぶしい ¯h Ci: tCa 暗い ´nAP H gÕ 重い `H ãüi: ba 軽い ´jÕ Cı̃ 速い `n dza tCh a ゆっくりの ´k@ lje 早い `N̊ã tCa 鋭利な `H nw@ Ca 澄んだ ¯h Ci: tCa 濁った ´nà N guP 太った `H dýA: ba 肥えた ¯H dýAP やせた ¯ùh ã h kÕ 乾いた ¯h kÕ mo 湿った `ùğ: tCe 希薄な ¯th oP 疎な ´ő@ őÕ 硬い ¯h s@ kõ 軟らかい `ő̊@ li 滑る `N gW: きつい ´tÕ ú@ ゆるい ¯sõ 正しい ¯n dzo 誤った ´ma n dzo 真の ¯őı̃ me にせの `tCja 生の ´ï ãẽ ma 新しい ¯h sa: 古い ¯őı̃ ma よい ´jAP 悪い ˆm@ jAP 弱い `h soP 高い ´ku: na 安い ´kõ jÕ 年老いた ´lo H ge: 美しい ¯ő dýi: bo 醜い ´ma ő dýi: 熱い ˆtsh a Ca 寒い ´cÕ Cı̃ 暖かい ´úo: m@ úo: l0P 温暖な ˆúwa 涼しい `h kõ sh õ 難しい ´le: h ka 簡単な ´le: la 芳しい ¯ï ã@˚´ùõ mo くさい `th Ẽ nõ おいしい ´ùõ mo 酸っぱい ¯h tCwo: 甘い ¯H NW: にがい ¯kh a 辛い `tCh i 塩辛い ¯tsh a ˆmõ tCh @ 淡白な ¯tsh a ˆőÕ tCh @ 渋い ¯kh a 暇な `tCh õ de 忙しい `ï̊ úùh oP 裕福な ¯Ch O: H bo 貧しい ¯la: to 清潔な ¯h tso wã 汚い ¯tsà 生きている ´H dje: n@ 新鮮な ¯sh ę Ha 死んだ ¯ùh @: tw@ おいしい ˆùõ tCAP 見よい ¯ő dýi: つらい ¯H dOP 急ぎの `ï̊ úùh oP de 色とりどりの ˆme duP re: ずる賢い ´H gwi H bo 注意深い `H naj tiP 適当な ¯n dzo h to 厳しい ´wa H dý@ けちな ´m@ H dýA: Nw@ 怠惰な ´ma n@ h to 行儀のよい ¯kh a ´őẽ m@ ´ùh i: 168 アジア・アフリカの言語と言語学 6 がんばった ˆH gõ dje かわいそうな `ő̊ı̃ H dý@ tCAP うれしい ˆH ga: úh @ 平和な ¯H de mw@ 精通した ¯N̊ kh E: ¯ha ´ko h to 嫌な ˆsuP ´z@ tCa 単独の ˆrÕ rÕ 動詞 愛する ´H gwE 好きだ ´H dÕ 抜く ´H bi: 壊して開ける ¯ph @ nẽj ´H gW: 負ける ˆùã tCh i h 拝む `Ch AP ¯m ˚ p i: h h 引っ越す ¯tC õ ¯ p@ 移動させる ¯h p@ 助ける ˆroP ´j8P 満腹になる ¯ndÕ 抱く ¯põ 剥く ¯riP ˚ 背負う ¯mW 比べる `tsh e 閉ざす ¯h tsõ 編む ¯la ˚ ïãa h to 変わる ´m@ 病気である ¯na 繕う ¯h ť0P 拭く ¯h úiP 拭き消す ´p@ h úiP 裁断する `őaP 踏む ´H dz@ 隠す ´H ba はさみ込む ¯h tsOP 縫い目を解く ¯ri: ˚ kh W 手で支える `th AP h 撒く ´ù e r@ 混ぜる `ùh e r@ ねじる ¯H dý0P 大食いする ´úù@ H ga 弁償する ¯H du: ´Ci: 歌う `úùh à 騒ぎたてる ¯th oP けんかする ¯H do nÕ th oP 沈む `ï ãı̃ H ba 量る `tCi: h tCAP 支える `H gÕ tsh a 傘を開く ´ph i: 盛る `H lOP 持ちこたえる ¯úùo: sa h ta 食べる ¯ï̊ úùh a / ´˚n th Õ 前に向かう ¯N̊õ mo ˆH dýwoP de ほとばしる ´j@ h ùi: タバコを吸う ¯jẼ ´˚n th Õ 鞭打つ ´H dÕ 出る ´Ch @ sh õ 取り出す ´Ch @ lÕ 日が昇る ´nÕ la ´wõ 出てくる ˆCh @ ùh uP 掘り起こす ´H dÕ ´H bi: 着る ´kũj 履く ´kũj 穴に通す ´H ý@ h 穴を開ける ˆPA m ˚ p OP 吹き飛ばす ¯h puP 間違う ´ma n dzo th i 答える ´ja ぶつ ´H dÕ 身振りで表す ´lAP ka `H jOP 撃つ ´ő@ nda ¯H dýOwP 当てる `ph uP th i けんかする ¯H do nÕ `˚n th WP 倒す `Ch @ h sW: ´rAP 引いてくる `h úùÕ 薪拾いをする ¯ùh ẽj `˚n th W̃ 169 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 居眠りする ´n do H jOP ´,@ あくびする ¯H lE: h ù@ ´j8P 開ける ´ph @ Ch @ 雷が鳴る `ñ éOP ´,@ 持ち歩く `tCh oP k@ 戦争に行く `H mAP ´H dý@wP 結び目を作る ´n de: tCh @ ´n deP いびきをかく `H őiP mO: ´,@ くしゃみする `Pa tCh o ´,@ 世話をする ¯tsh AP 導く ¯N̊ kh WP かぶる ´kũj 身につける ´kũj 生まれる ¯Ch @ tCh a さえぎる ´kwAP 倒れる ´n d0P 倒す ´C@ H d0: úùOP 着く `h pej th i 待つ `H gOP de 地が震える ¯sh a N ge: ´,@ 頭を下げる ¯N gwo ´Ch @ H gu: tsh AP うなずく ¯N gwo `H jOP 点火する ¯ő@ ´h tsW: 灯す ´h tsW: しおれる ´cOP 落ちる `H jOP th i 転ぶ `H jOP th i 重ねる ¯h úùAP 噛みつく ˆCh @ ï ãe: 叩き入れる ´H d@P なくす `tu: th 0̃ 理解する ¯ha ´kw@ 動く ˆCa: deP ちょっと動く ¯h tCiP ´Ca: ,@ h ts@ 読む ´ndẽ 渡る ´muP 折れる ´H dÕ ちぎる ´Ch @ h úùejP 折る ´Ch @ ´h úùA: rAP 隠れる `ő dýa: ,e 切り分ける `őaP 印を押す `őaP 飢える `h tuP 押しつける ¯Ch @ nãj 怒る `ő̊ı̃ kh a 誓う `H na: h tCaP 身震いする ¯ő ći: 発酵する `N̊Õ h tCaP 罰する ¯úùh eP ´˚n th Õ 翻す ´tsh @ Ha ´H dý@wP 翻訳する ´th õ si ¯H dýOwP 放置する `ti da ˆüA: r@ 入れる `h t@wP 放牧する ˆtCh a: tCh a: ´˚n tsh o 火をつける `h sO: wa 飛ぶ ¯H dı̃ 分かち合う ´H gw@ 分家する `h t8j ´H gw@ 分離する ´kh @ kh a ¯Ch @ 狂う ¯ő̊õ mba 縫う ¯h úù0j 手を置く `th AP kh W 腐る ˆre: th 0̃ かぶせる ¯h kO かぶる ¯h kOP 乾く ¯h kÕ mo ˆli: tsh AP 働く ´lje N ge: 風邪を引く ¯H dýW n@ ´na あえてする ´H@P ´puP 言う `h ùeP 切り分ける `őaP 切断する `őaP 刈る `H Na 与える `h tjeP 耕す ¯H mw@ いっぱいである ¯úùh uP 剃る ´H ü@ 風が吹く ¯H lÕ ´,W: つるす ´kwa: ra 電気を消す ¯h seP 閉める ¯h ťAP 囲い込む ´kwa 170 アジア・アフリカの言語と言語学 6 管理する ¯kwa 灌漑する `H lOP 年越しする ´lu h sę: ´sę 渡る ´N go N go 経る ´l0: 恥ずかしがる `tCh i: tC@ 怖がる `h cAP tC@ 呼ぶ ´mb@jP 叫ぶ ´mbAP 飲む ´˚n th Õ 適切である ¯n dzo ma うらむ `h suP ´H z@ なだめる ´n dzẽ ´rw@ 疑う `H dı̃ m@ sh Õ 返却する ˆph @ h tjeP 交換する ¯H ãü@ 帰る ´tsh @ wÕ できる ¯ùh e: 攪拌する ¯H üÕ 生きている ˆl0: th i 水で混ぜる ¯H üÕ 積もる `h suP tsh AP 集まる ¯ts@ l@ `H luP djeP 搾る ´H üo 覚えている ˆúẼ: s@ h ťuP 締めつける ¯h úùẽ はさむ ´tCÕ 選び出す ¯˚n th W はさみで切る `őaP 語る `h ùeP 交換する ¯H ãü@ H ãü@ ´,@ こげる `ő̊ tCh i: tCh @ 噛む ¯ï̊ úùh a 教える `h loP 鳥が鳴く ˚´Ca ´sW: 猫が鳴く ´Pa ljW ´mba ロバが鳴く ¯kwo ro ´mba 馬が鳴く ¯h ta ´mba 牛が鳴く ˆch A: úùh AP ´mba 犬がほえる ¯tsh @ ´mba ぶたが鳴く `ph AP ´mba 羊が鳴く ˆlOP ´mba 狼がほえる ¯CÕ tCh W ´mba 呼ばれる ´mbiP 剥いて開ける ´ph @ Ch @ 結氷する ¯ñ éoP ¯kh ẽ 結婚する ¯h pa wà ´,@ ほどく ¯ph @ Ch iP お金を借りる ¯H NWj ´h ts@ ものを借りる ¯Ce wa ´h ts@ 禁じる ´H0P ´ma úùh uP 入る ´wÕ びっくりする `h cAP úù@ 住む ¯H djeP 挙げる ¯h tCÕ のこぎりで切る `őaP 巻く ¯H ãi: 掘る ¯h kw@ 邪魔する `th u: tsh AP 開ける ¯Ch @ 沸く ´lwA: 開く ¯xwa 運転する ¯h tÕ 切り倒す `h úùeP 見る `ï ãOP 見える ´˚n th õ 医者に見せる ´nã xwa `mẽ h tCi ˚ かつぐ ˆ,@ h tCAP H 暖める ˆ guP h ぬかずく `Ch AP ¯m ˚ p i: 咳をする ´li: 渇く ¯kh a ¯h kÕ かじる ´ï ãEP ボタンをかける ´CÕ ñ é0 ´C0: 暇である ´lje: ´őeP tCh õ deP 泣く ´NW 眠たい `úùh eP úù@ 引く ¯˚n th ẽj 辛い `tCh i 漏れる ˆli: ra 来る `ùh uP 疲れる ¯úùh eP 171 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 つなぐ ¯˚n th a ˆth e: ,@ 乾かす ¯h kÕ おしゃべりする `ùh u: ´ùh wa ずぶぬれにする `ùğ: tCh @ 耳が聞こえない ¯H n@ wẽ h 転がす `m ˚ p uP nÕ 日が沈む ´nÕ la˚`H lÕ ü@ しびれる ¯H ýiP p@ h to 叱る `n@ H ői: ´,@ 埋める ´C@ H bAP 買う ´őw@ 売る ¯h tsõ 満ちる ´kÕ ない ´őeP 隠蔽する ˆtsh @ h kOw tsh AP 燃え尽きる ˆn de: th i さえずる ´mba 理解する ¯ha ´kw@ 触れる `˚n th AP つかむ ¯H zÕ 掻く `Ch iP `hO できる ˆ,@ s@ `th 0P 絞る ¯h úùÕ 嘔吐する `h tCOP 木に登る ¯ùh ı̃ ph õ H@ ´n dzAP 叩いて音を出す `H lOP 派遣する `H wà 走る ˆH dýOP 茶を入れる ´úùa ´ph O 賠償する `tsh @ 木を切る ¯ùh ẽj ´ý@ 浮く `H dı̃ H ýEP ほとばしる ¯h t8P 破れる ¯rej h 壊れる `˚ úùAP h 傷つく ´ tõ pej 壊す `h úùAP 敷く ¯h t8̃j だます ´n dzẽ ´roP 乗る ¯h tCa 起きる ´Hu lÕ 負う ¯H duP 略奪する `huP 叩く ´H dÕ 振り上げる ¯Pa Ng@ `h kOP 詮索する ¯üAP 切り刻む ¯h úùuP 口づけする ¯Po: ´,@ 追い出す ˆph @ őAP 取る ¯H lÕ 娶る ¯h lÕ 回復する ˚¯sh Õ 治癒する ¯sh Õ 完全である ¯tsh à 染める ¯h tÕ 叫ぶ `h keP ´H da: ´n@: ´,@ 道を譲る ´lÕ ´üà 温める ´tsh a 知り合う ¯ha ´kw@ / ¯ha ´ko 投げる `H jOP 溶ける ´ùe: 溶かす ´ùe: 耐える `H gõ tsh aP 撒く ¯h toP 播種する ¯h toP 掃く ¯Ch AP 殺す `h seP 日にさらす ¯h kÕ 日向ぼっこする ¯H gW 稲光が走る `CiP H luP ¯H dOP 傷つける ¯H ma ˆle: tC@ nÕ ˚ 射る ¯H dýoP h 伸ばす ¯ tCõ 伸びる ´p@ rı̃ ¯nE: h tCõ 伸びきる `H dý@ H gõ ´H bW: 成長する ˆHu tCh oP 産む ¯h tC@ 腹を立てる `ő̊ı̃ kh a 残される ¯lA: wa なくす ´je ˚ úùh eP 釈放する ˆù@ wà 収穫する ¯H Na 172 アジア・アフリカの言語と言語学 6 受け取る ¯H lÕ na ´ï ãiP 閉じる ˆCh @ sh eP 負ける ´ùã 調理される ´H gw@ やせる ¯ùh a ´ji tsh ã ´N@ 転落する `ùh @ H jOP 投げる `H jOP 結びつける `h tAP 眠る ´jo: 寝つく ˆjo: H dje 話す ´ùh wa 裂く ¯rej ˚h @ 死ぬ ¯ù 錠をする ¯h úùAP 崩壊する ¯H d0P 踏みつける ¯H dz@ 持ち上げる `h tCAP 涙を流す ¯H ői: tùh W `H dý@P 横になる ´jo: 逃げる ´C0: 物乞いする ¯úùh a th Õ ¯lÕ 頭痛がする ¯N go ´na ˚ 剃る ¯h ca ´H üW 曇りである ¯H nÕ ´moP 晴れる ˆji: H zÕ 暗くなる ´mej nAP なめる ¯h CuP 踊る ˆtsh @ la: ´H dÕ 貼る ¯h la: ˚ 聞く ´őẼ 聞こえる `˚n tsh u: CoP 盗む ¯h kW 吐く ´puP 押す ¯ph i: 飲みこむ `őiP 背負う ¯h ki: / `H dýOP tC@ 掘る 曲がる ¯H gW H go ´,@ 終わる ´n dzuP 遊ぶ ˆtsh @ la: ´,@ 忘れる ¯H d0P 餌をやる `H liP におう ¯H dý@ nõ 尋ねる ´ú@ ˚ ふさぐ ¯h k@P 吸い込む ¯ï ãwiP 洗う `tCh W 好む ´H gwE 目が見えない ¯H őiP lõ 産む ¯h tC@ 雨が降る ´úùh a: ˆpOP 怖がらせる `kuP 慕う ¯H d@ kh o sh Õ 信じる ´H dı̃ ´h sÕ 思う ´úẼ 思い出す ˆúẼ H dje したいと思う ´H dÕ 削る ¯h liP ˚ ´k@ lje 気をつける H 笑う ´ ga 書く ´C@ 下痢する ¯kh Õ ´H da: 目覚める ¯PW sh eP 休む ˆő@ h sw@ 学ぶ ¯H ýÕ 探す ¯H dýi: 押さえる ¯H nE: かゆい `hOP 育てる ¯h se 揺れる `tsh @ kh ẽ ph @ kh ẽ ´,@ 揺する `H jOP 噛む `ï ãeP 掬う ¯h úùW 必要である ¯H gwe: 引き入れる ¯N̊ kh WP あふれる ˆkÕ tCh @ 勝つ ´úùAP 迎える ¯sh W 抱擁する ¯h p@ põ ´,@ 泳ぐ ¯úùh W ýe ´,@ 持っている ´j8P いる ¯n dOP 存在する ´j8P 173 鈴木博之:カムチベット語小中甸・吉念批 [Yangthang/Gyennyemphel] 方言の音声分析 出会う `C0P めまいがする ˆúùAP th OP 許可する ˆ,@ h úùOP 栽培する ´h tsWP 増える `n8̃j h t8P ˚ 刺す ´l@P 瞬きする `H őiP pa ¯H d@P 摘む ¯h úùeP 立つ ˆHà H dje 引っ張って開く ¯H dÕ 大きくなる `ch OP / `H dã na ´reP 火をつける ¯h suP Ngw@ 風邪を引く `ő̊ tCh AP h to tCh @ 探し出す ˆl8̃ C@ 覆う `h ts@ kwa ´tsh a 奪い合う `ho huP ´,@ 蒸す ´H guP 知っている ¯ha ´kw@ / ¯ha ´ko 織る ¯la 指す `h tsOP 種をまく `h tOwP 腫れる ¯h cÕ 煮る ¯h tsw@ 杖をつく ´pi: ka `h tsOP 詰める `,@ h tC@P 追いかける `ő̊a ついばむ ¯˚n th W 行く ´Ngw@(非命令)- ¯sh õ(命令) 呪う `Ce: tCi h 中に入る `m ˚ p oP 酔う ´H dz@ 座る ¯n dOP する ¯N gi: 夢を見る ¯H ő@ lÕ ¯H ő@ 商売する `ùẽ ji ´tso 連れる ´ruP ´,@ ˚ その他の品詞類 のみならず ´m@ h t0P ∼を除いて ¯Pa ni ˆmi: H bAP もちろん `jı̃ N gw@ ¯ja まだ ´tuj 今すぐ ¯H ne wa 一緒に ´luP luP ∼もまた ´jÕ それから ´tẽ 再び ˆjÕ lAP 最後に ´N go tsh a 突然 `tsh @ ze ´m@ tsh e