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物流不動産の動向と今後の見通し(2015 年 5 月)

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物流不動産の動向と今後の見通し(2015 年 5 月)
ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
物流不動産の動向と今後の見通し(2015 年 5 月)
~「供給スピード違反が与えるインパクト」~
・物流不動産に対する投資は旺盛なままで推移しており、開発スペースのストック量は
これからの4年間でこれまでの 15 年間分の約5割増しとなる見通しである。
・マーケット開拓率(開発面積/類似倉庫のストック量(四大都市圏で約 1900 万坪))
は推定で2割強とまだ、それほど多くなく、相当規模の潜在的な需要の存在が想定さ
れる。
・2015 年、2016 年は供給スピードが加速化する。特に大阪圏では 2016 年問題の発生が
懸念される。
・また、需要面でも主要なテナントである 3PL 事業者の収益低下、市中倉庫の募集空き
スペース拡大と取り巻く環境も変化してきている。
・これまでの「(物流不動産は)造れば埋まる」という状況から、「物件によっては造
っても埋まりにくい」状況になってくると考えられる。供給のスピード違反によって
物件の選別化が起こってくる可能性がある。
・これにより昨今の賃料上昇から横ばい、地区によってはやや下落となる可能性が考え
られる。
・中長期的には、まだ、マーケット開拓率が低く、潜在的な需要が顕在化してくること
から、マーケットの成熟化に伴い供給量も巡航速度化し安定してくると考えられる。
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
1.「造れば埋まる」状況からの変化の兆し
全国的には 2013 年の大量供給については、物流不動産に対する旺盛な需要が発生し「造
れば(テナントが)埋まる」状況が続き空室率も約 3%と低位で推移し、2014 年も同様な
状況であった。
これに対して 2015 年、2016 年には相当規模の大量供給が予定されている。
・2015 年の供給は主として首都圏内が中心となっている。2015 年の現時点(3月時点)で
すでにテナントが決まっている面積も供給量の約半分程度と順調な需要発生見通しとな
っている。
・しかしながら、昨年に竣工した施設の中で1年以上の空きスペースを有しているマルチ
テナント型施設もみられ、2013 年以前の竣工時即満床という状況とは異なってきている。
・また、2016 年には大阪圏で過去最大の供給が行われる見通しである。大阪圏のマーケッ
ト規模は首都圏の約 1/4 程度と推測されるが、一時期的な大量供給は大阪圏の需給バラ
ンスを大きく崩す可能性がある。
このような大量供給の背景には日本の物流不動産開発市場に外資系事業者、国内大手不
動産事業者、大手商社等が軒並み参入しており、豊富な資金のもと投資が活発化している
ことが挙げられる。
主要な開発物件における需給バランスの推移(全国)
3,000,000
50.0
2,620,000
供給量(㎡)
2,500,000
需要量(㎡)
45.0
40.0
空室率(%)
2,040,000
2,000,000
35.0
30.0
1,500,000
25.0
20.0
1,000,000
15.0
10.0
500,000
5.0
2.6
0
0.0
注)主たる開発事業者による開発物件を対象としている。2016 年以降は見通し、2015 年、2016 年の需要
量は既に入居が決まっていると考えられる分(一部、予想も含む)
出所)日本ロジスティクスフィールド総研作成。次ページ以降の図表も当社作成
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
2.物流不動産に影響を与えるマーケット環境の変化
わが国の物流不動産の開発が産業化して以来、既に 1,000 万㎡以上の供給がなされ、ま
た、2018 年には現状の把握している開発物件のみで約 1,600 万㎡となる見通しである。2014
年までをみると、需要に供給が追い付かない(低位空室率での推移)わが国でも数少ない
高成長市場であったと言える。
潜在的にも、スペース供給が始まった 2000 年初頭からのマーケット開拓率はまだ、20%
強(供給面積/四大都市圏の一定規模以上の普通倉庫)に過ぎず、まだ、多分の開発余地
を残している。概ね、弊社では年間、四大都市圏で年間 100 万㎡の需要規模と想定してい
るが、年々、拡大している状況にある。
主たる開発事業者による開発面積(延床面積ベース)の累計
18000000
15,800,000
16000000
14000000
累計供給量(㎡)
12000000
10,500,000
10000000
8000000
6000000
4000000
2000000
0
注)対象は、主たる開発事業者による開発物件、2015 年以降は各社の公表分等の見込み
当該産業は、ライフサイクルにおける成長期にあると考えられる。ただし、インフラ産
業であり、物流事業者、流通事業者等に依存するところ大等の特徴がある。
直近、足元に変化がみられる。これにより 2015 年以降は市場環境がやや異なってくる可
能性がある。具体的には次の通りである。
(1)3PL事業者の収益力の低下
3PL 事業者の薄利多売化が進展している。収益増の事業者がほとんどであるが利益率は低
下している。引き続いての同業他社との競合環境に加え、庫内作業・輸送委託コストの上
昇等により薄利化している。十分に荷主からコスト負担分の収益機会を得られていない中
で賃料負担力も低下している状況にある。賃貸物流不動産は建築コストの上昇等により高
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
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い賃借水準を設定せざるを得ない状況の中、6割程度の入居シェアを要するテナントであ
る 3PL 事業者とニーズが異なる動きが出てきている。
(2)急拡大が続く通販市場の拡大
現在、通販物流市場の規模は約1兆円強と想定され、毎年 10%以上の成長が今後も続く
と考えられる。ますます、賃貸不動産への入居事例も増えてくると考えられる。ただし、
以下の点において 3PL 事業者等と異なる物流不動産への動きを見せる可能性がある。
・通販物流では必ずしも今日的な施設スペックの施設を賃借する必要はないと考えられ
る。限定的なトラックヤード、3m前後の有効梁下高、築古な倉庫でも通販物流も利
用が可能である。
・市中倉庫に無い大規模なスペースを必要とする通販事業者(概ね売上が 100 億円以上)
もそれほど、数的には多くなく、また、通販事業者は自前で物流施設を用意するケー
スも多くみられる。
・これまでの今日的な物流施設が交通の要衝地を中心とした立地であったのに対して、
通販物流は人手産業であるため、労働力の確保しやすい場所を重要条件として位置付
けると考えられる。
将来的には今日的な物流施設と立地条件や施設スペックが異なるEC専用施設の整備も
進むと考えられる。
(3)市中倉庫での需給バランスの悪化(首都圏)
首都圏のケースであるが、2015 年 3 月現在と1年前との比較でまとまったスペースを募
集している市中倉庫(開発物件で竣工後、募集中の物件も含む)が倍増(当社の推計で昨
年の 9 万坪強から約 20 万坪弱)している。
このまとまった規模の市中倉庫の空きスペースは、今後の竣工予定物件と競合する可能
性がある。2014 年までは市中倉庫もまとまったスペースが余り無かったことから、開発倉
庫に需要が集中していたが、やや 2015 年現在、環境が異なってきている。
このように、潜在的に多大な需要量はあるものの、供給スピード違反が予想される中、
リスク要因が出現してきていると言える。
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
3.今後の見通し
これまでの「
(物流不動産は)造れば埋まる」という状況から、
「物件によっては造って
も埋まりにくい」状況になってくると考えられる。
現在も、未だ、活発に物流施設用の用地取得が続いている。短期的にはこのような開発
事業者による供給のスピード違反が、物件の選別化が起こってくる等、一時的な状況変化
を生じさせると考えられる。賃料水準も供給側の論理(建築費高騰、用地取得費の上昇)
から、需要側の論理による決定要素が強くなり、短期的には賃料水準は横ばいか、場所に
よっては弱含みすると考えられる。
・マーケット開拓率は未だ、20%強であることから開発余地は多大であり、中長期的に
は堅調な需要が発生し続ける。
・首都圏の事例のように一定規模以上の既存の市中倉庫で空き物件も増加してくると考
えられることから、これまでなかった既存物件との競合も活発化する可能性がある。
・地方創生による地方地域での開発、TPP等を見込んだ港湾エリアでの投資等、新た
なフロンティアでの開発が進む可能性がみられる。
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
参考)各経済圏別における物流不動産マーケットの動向
1)首都圏における物流不動産マーケットの動向
首都圏の 2013 年、2014 年は供給に対して需要が追随し需給バランスがタイトな状態が続
いた。2015 年、2016 年に大量供給が予定されている。場所的には狭山日高、吉見等の圏央
道沿線や平塚、千葉ニュータウン等、これまで開発が行われてこなかった新規エリアでも
多くの開発がみられる。
現在、首都圏では圏央道沿線等の立地ポテンシャルの割に廉価な賃料地区での開発とメ
ッカ地域(集積が集積を呼ぶ地区:市川、厚木、柏等)での開発指向がみられる。
主たる開発物件における需給バランスの推移
1,800,000
1,600,000
1,400,000
50.0
1,570,000
供給量(㎡)
需要量(㎡)
空室率(%)
1,360,000
45.0
40.0
35.0
1,200,000
30.0
1,000,000
25.0
800,000
20.0
600,000
15.0
400,000
10.0
200,000
3.0
0
5.0
0.0
2002年2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年2017年2018年
注)主たる開発事業者による開発物件を対象としている。2016 年以降は見通し。2015 年、2016 年の需要
量は既に入居が決まっていると考えられる分(一部、予想も含む)
・首都圏湾岸エリアは国内での最大の需要発生地域の一つであり、今後も市川、船橋周辺
での供給が予定されている。湾岸エリア千葉県側ではこれまで活発であった習志野地区
での開発用地が限定的になってきたことから、その外延化地区として千葉北 IC 周辺での
開発も活発化してきている。また、中期的には東京流通センター新B棟、JR貨物品川
駅内でのマルチテナント型施設開発等、民間事業者による自社用地を活用した大規模な
開発も予定されている。
・現在、賃料水準は上昇傾向にあるものの物件によってはリーシング期間の長期化事例も
みられはじめている。2014 年度末から賃料水準は横ばいとなってきている。
・首都圏内陸エリアでは 2014 年に八潮、北本、川島、久喜、岩槻、八千代、常総、相模原
等において開発されている。常総(守谷)地区はこれまであまり開発が進んでこなかっ
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
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たエリアであるが、柏地区からの外延化、賃料の割安感から需要圧力があり、今後、開
発が増加してくる可能性が考えられる。圏央道沿線での開発も引き続き活発化しており
首都圏一円を対象とした物流スペースはやや飽和感がでる可能性がある。千葉ニュータ
ウン、平塚とも交通利便性はやや劣るものの比較的人手集めのしやすい地区となってい
る。新たな立地条件物件として、需要が喚起される可能性がある。
・2014 年末までは供給側の論理から建築コストの上昇を受け賃料水準の上昇傾向がみられ
る。2015 年の賃料水準は横ばいとなると考えられるが地区によってはやや弱含みする可
能性がある。
2)大阪圏における物流不動産マーケットの動向
・大阪圏ではこれまで約 220 万㎡の供給がなされてきている。2016 年単年のみで約 110 万
㎡超の供給が予定されており、2018 年末のストック量は 2014 年末と比べ約 9 割増しとな
る見通しである。供給スピードはかつてないレベルにあり、これまでのトレンドから見
ると今回の供給量を消化するに数年かかる可能性も考えられる。
・ただし、これまで供給が限定的であった内陸でもマルチテナント型開発が進むことから、
内陸立地指向の潜在的な需要が喚起される可能性が高いと考えられる。
・2016 年以降、内陸部での開発を伴いかつてない規模の供給量が大阪圏では一時的にもた
らされることから、需給バランスが悪化する可能性が考えられる。
主たる開発物件における需給バランスの推移(大阪圏エリア)
1,200,000
1,000,000
50.0
1,100,000
供給量(㎡)
需要量(㎡)
空室率(%)
45.0
40.0
35.0
800,000
30.0
600,000
25.0
20.0
400,000
15.0
10.0
200,000
5.0
0.2
0
0.0
2002年2003年2004年2005年2006年2007年2008年2009年2010年2011年2012年2013年2014年2015年2016年2017年2018年
注)主たる開発事業者による開発物件を対象としている。2016 年以降は見通し。2015 年、2016 年の需要
量は既に入居が決まっていると考えられる分(一部、予想も含む)
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
・大阪圏湾岸エリアでは鳴尾浜から堺浜にかけて大規模なマルチテナント型施設を中心に
開発が予定されている。これらの開発物件では建築費高騰の影響を受け、募集賃料の水
準はこれまでと比較し高めとなっている。
・内陸エリアでは、高槻、岩槻、藤井寺、枚方等において新たに工場跡地の活用や新規用
地整備によりマルチテナント型施設の開発が進む。これらの地区では高い地価、建築費
の上昇等のため募集賃料も湾岸エリア以上に高くなる物件も多いと考えられる。また、
内陸部でも三田、神戸西地区、三木東等の名神高速道路沿線への進出もみられ、西日本
向け配送や割安賃料を求めたアパレル、医薬品、小売等の荷物の扱いがみられる。
・今後、内陸エリアでの豊富な労働力、高賃料と湾岸エリアの割安な賃料とで需要の引き
合いが生じると見込まれる。
・大阪圏では 2014 年までまとまった物流賃貸スペース不足から賃料水準の上昇がみられた
が、2016 年に予定されている大規模な供給規模に潜在的な需要も含め単年では追随しき
れないと予想され、賃料水準も、横ばい、弱含む可能性がある。
3)名古屋圏における物流不動産マーケットの動向
・名古屋圏の総開発面積は現状、2014 年末には約 50 万㎡強となっており、2017 年末には
複数棟のマルチテナント型施設開発が予定されているため約 70 万㎡に増加する見通しで
ある。もともとの集積量が少ないこともあって、今後3年間で約4割弱の開発面積量の
増加となる。需要圧力はそれほど高くないものの、潜在的な需要が蓄積しているエリア
となっている(市場規模は大よそ首都圏の 1/10 程度)。
・2013 年には2か所の中規模のマルチテナント型施設が竣工し、いずれも竣工前にテナン
ト誘致が終了している。また、2014 年には大府地区において大規模なマルチテナント型
施設が竣工し、この物件についても満床稼働している。
・市中倉庫、開発物件ともに名古屋圏では現在は空きスペースがほとんどなく、引き続き
賃料水準もゆるやかではあるが強含みとなってきている。
4)福岡圏における物流不動産マーケットの動向
・福岡圏では 2014 年末現在で約 50 万㎡超の集積量となっている。今後、大・中規模のマ
ルチテナント型施設も予定されており 2016 年末には 70 万㎡近くになる見通しである。
現在のストック量の 3.5 割増しとなる。
・2014 年には 3 つのマルチテナント型施設が竣工している。その内、2 物件については既
に満床稼働している。2015 年初頭に新たに内陸部で竣工しており、現在、2 棟のマルチ
テナント型施設でのテナントの誘致が進められている。
・しばらく開発が進んでいた鳥栖地区(北部九州圏の配送拠点機能)ではまとまった用地
供給が止まっていることから新たな開発は進んでいない。
・福岡圏の賃料水準は貨物が不在であった 2010 年に下落した状況があったが、現在、賃料
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ロジフィールドレター(2015 年 5 月)
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水準は回復してきている。需要圧力がそれほど強くないエリアであり、また、2016 年に
はまとまったスペースの供給が予定されているため、賃料上昇は限定的と考えられる。
5)仙台都市圏
・現在、仙台都市圏では内陸部に加え、仙台塩釜港の背後地での開発も始まっている。自
社開発も多くみられる。
・復興需要が続いており、倉庫開発も通年の2倍程度の規模での自社、賃貸施設の開発が
進んでいる。
・現在、まとまったスペースが不足している状況にあるため、賃料水準は震災直後ほどで
はないものの高止まりしている。
お問い合わせ先
さらに詳しい情報や個別事例情報もありますので、是非、お問い合わせ下さい。
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
担当:鯖田
ビジネスマッチング部
[email protected]
堀内
[email protected]
〒103-0028 東京都中央区八重洲 1-5-7
9
TEL
03-5255-7770
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