熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
プラグマテイズム思想が「環境倫理学」に与えた影響に
ついて
Author(s)
中元, 啓夫
Citation
先端倫理研究, 9: 61-77
Issue date
2015-03
Type
Departmental Bulletin Paper
URL
http://hdl.handle.net/2298/32385
Right
先 端 倫 理 研 究 第 9号 (
2
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5
)
プラグマテイズム思想が「環境倫理学」に与えた影響について
中元啓夫
1、はじめに
1
8世紀から 19世紀にかけて起こった産業革命は、近代科学によって人類に変化と向上
がもたらされた.この時期に米国では 62万人もの死者を出した南北戦争が起こった.プ
898年に米国カリフオノレニア
ラグマテイズムの思想は、その反省から出発されたなかで、 1
大学で行われたジェームズ ・W (James，W心i
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) の f哲学的概念と実際的
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) の業績が高
結果』と題した諮演でパース・ C -S (
く紹介されたことをきっかけにプラグマテイズムは広がり始めた.
pragmat
回皿)とは、『実用主義 Jあるいは『道具主義』と訳される.
プラグマテイズム (
創始者のパース、そしてジェームズ -W
、デューイ・ J (Dewey
，
John.1859
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)、ミー
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) らによってプラグマテイズムは体系化
ド
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された.
この思想は「古典的{伝統的)プラグマテイズム
J と呼ばれるが、 1910
・
20年代に発展
9
30代の大恐慌による経済不況.ナチズムの台頭によるユダヤ入学者の米国
するものの、 1
亡命により、治理実証主義(I o
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) 2の時代を迎えた.第二次大戦後
は陰りをみせはじめ『分析哲学 J(
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になると治理実証主義の影響を受けたクワイン . W. V • 0 (
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) らによって論理分析とプラグマテイズム精神の融合により、ネオ・プ
ラグマテイズムの潮流を興した.a
20世紀後半になると、プラグマテイズムはポスト分析哲学として再評価され、ローテ
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) を中心とした『ヰオ・プラグマテイズム』思想が展
970年代に入ると先進国を中心に環境問題
開された.産業革命から約 200年余り経った 1
が重要視され、『環境倫理学j の学問的確立、そして 1
992年にはプラグマテイズム思娼を
理論的展開から実践的転回を描う『環境プラグマテイズム」という用語が確立した.
本稿では、プラグマテイズム思想が「環境倫理学」にどのような影響を与えたかを、主
にデューイの古典的プラグマテイズム恩惣から、ローティのネオ・プラグ7 テイズム思想‘
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) の環境プラグマテイズム思想を中心に
そしてウエストン・ A (Wes旬 n，
その変遷を辿る.そして環償問題に対してプラグマテイズム思想が何らかの役割を果たせ
るのかという可能性を探りたいと考える.
2、ジョン ・デューイの古典的プラグ7 テイズム恩惣
(1)デューイの生い立ちとその足跡
デューイは、 1
859年、米国ニューイングランドのグァーモン卜州に生まれた.祖先は、
162
叶3
0年代にアメリカ大陸に移住したピルグリム・ファザースによるプリマス植民地入
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