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数学的な活用力を育てる 指導のあり方

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数学的な活用力を育てる 指導のあり方
数学的な活用力を育てる
指導のあり方
~ 指導事例集 ~
独立行政法人日本学術振興会
平成21年度科学研究(奨励研究)実践報告書
金沢大学附属中学校 戸水 吉信
-
目
次
-
内容
ページ
はじめに
2
本冊子の使い方
2
領域【数と式】
事例No
学年
単
元
題
材
名
ページ
1
中1
正負の数
トンネルの点検の必要性を効率よく判断しよう
3
2
中2
連立方程式
買い物ゲームをしよう
4
3
中2
文字と式
まんじゅうのつめかたを考えよう
6
4
中3
2次方程式
牛乳パックの模型を作ろう
7
領域【関数】
事例No
学年
5
中2
単
元
1次関数
題
材
名
ダイヤグラムをかいて電車がすれ違う時刻を求めよう
ページ
8
領域【図形】
事例No
学年
単
元
題
材
名
ページ
6
中1
平面図形
鉄道にまつわる問題を作図を用いて解決しよう
10
7
中2
平行と合同
合同な三角形を作図する方法を考えよう
12
8
中3
相似な図形
移動にかかる時間を相似な図形の性質を使って計算しよう
14
領域【資料の活用】
事例No
学年
単
元
題
材
名
ページ
9
中2
確率
神経衰弱の最終場面では,先手が有利か考えよう
16
10
中1
資料の活用
ジャガイモの内容量の表示を考えよう
18
はじめに
本冊子は,独立行政法人日本学術振興会から,平成21年度科学研究費補助金(奨励研究)をうけ
て す すめ た 研究 の 成果 を まと め たも の であ る 。研 究 題目 は,「数 学 的な 活 用力 を 育て る 指導 のあり 方
の研究」であり,特に,研究費で購入した電子黒板を授業に導入し,積極的に研究実践を行った。
本研究の目的は,数学的な活用力を育てる授業モデルを作っていくことである。日常生活における
身の周りの事象について,それらを数学的にモデル化し,数学的手法を用いてそれらの問題を解決す
る授業を行い,生徒の数学的問題解決の成功体験モデルを増やし,実践記録としてまとめていきたい。
この冊子は,その途中経過までをまとめたものであり,数多くの先生方に見ていただき,ご意見をい
ただきながら,さらに生徒の数学的な活用力を育てる授業のあり方について考えていきたい。是非ご
一読いただき,忌憚のないご意見をいただければ幸いである。
本冊子のPDF版を本校ホームページに掲載しております。
本校HP トップページ URL http://partner.ed.kanazawa-u.ac.jp/futyu/
上部メニュー 教科研究-数学-授業実践 からダウンロード下さい。
ご意見は,本校HP
数学科 戸水 吉信
トップページ下部の「本校へのメール」へお送りいただくか,
[email protected] 宛へお送り下さい。
本冊子の使い方
本冊子には10の指導事例が記載されていますが,どれもそのままの形で使えるとは限りません。
学校,クラスの実情や指導者の得意な指導法に合わせてお使い下さい。これらはあくまでも指導事例
ですので,新たな指導法を生み出すきっかけになれば幸いです。
◎各事例のねらいについて
各指導事例には,利用する知識・技能,問題解決の場面,身につけたい力・態度という3つの項目
に分けて,その事例を実践するにあたってのねらいを記載しました。学校教育法にある「生涯にわた
り学習する基盤が培われるように,基礎的な知識及び技能を習得させるとともに,これらを活用して
課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力その他の能力をはぐくみ,主体的に学習に取り
組む態度を養うことに,特に意を用いなけれならない。」という記述に対応する形をとりました。
◎各項目について
・題材名
どのような活動を行うのか,その題目をかいたもの。
・授業の流れ
授業の流れを記載したもの。指導案という形ではなく,実際の指導の流れがダイレクトでわかる
ように,写真や図なども交えて記載した。
・授業を盛り上げるポイント
生徒が問題を解決する必要性を感じ,意欲的に問題解決に取り組むために工夫したポイントを記載
した。
・留意点
授業を行うにあたっての留意点。
・生徒の活動例
生徒が実際に活動した例を,授業記録やレポート,ノートのコピーの形で載せた。
・発展例
学習したことを,さらに発展した問題の解決に役立てられる例を載せた。
-2-
事例No
1
学年
中1
単元
正負の数
利用する知識・技能
基準となる数を決めると,数を正負の数を用いて相対的に表すことがで
きることの理解およびその技能,正負の数の計算技能
問題解決の場面
5日間の雨量の平均を効率よく求め,トンネルの点検の必要性を判断す
る
身につけたい力・態度
仮平均の考え方を用いて平均値を効率よく求める力と,問題解決の場面
に応じた仮平均の設定およびそれを問題解決に利用する態度
題材名 「トンネルの点検の必要性を効率よく判断しよう」
準 備
・ワークシート
・トンネルの写真など
授業の流れ
①課題の提示
A市のトンネルは,5日間の平均降水雨量が150ミリを越えると,トンネルの点検をする
ことになっています。梅雨に入り,A市では雨の日が5日間続き,その雨量は次のようになり
ました。トンネルの点検をする必要はあるでしょうか。
141ミリ,155ミリ,137ミリ,161ミリ,159ミリ
②個別追求,または班別追求で,効率よく判断する方法を考える。
③意見を発表する。
・直接平均を出す方法
・仮平均を設定する方法(150ミリ,100ミリ,…)
④どの方法がいいか,それぞれの方法のいいところを考え,議論する。
発展例 および 生徒の活動例
・いろいろな別の題材に発展させられる題材である。生徒に問題作りをさせるのもおもしろい。
生徒が作った問題レポートの例→
発展課題例1 エレベーターの問題(教科書にもある)
定員6名のエレベーターの積載量は1人65㎏で
計算されている。次の6人でエレベーターにのるこ
とができるか
63 ㎏,71 ㎏,56 ㎏,80 ㎏,59 ㎏,68 ㎏
発展課題例2 バスケットボールのチームで,次の
Aチームの平均身長とBチームの平均身長を比較
してみよう。
Aチーム
Bチーム
161 ㎝,157 ㎝,167 ㎝,155 ㎝,165 ㎝
172 ㎝,150 ㎝,166 ㎝,160 ㎝,157 ㎝
授業を盛り上げるポイント
・トンネルの写真を見せたりして,実際に問題を解決
しようとする雰囲気を盛り上げる。
・エレベーターの例などでは,教師の体験談を交えながら,
課題に臨場感を持たせる。
-3-
事例No
2
学年
中2
単元
連立方程式
利用する知識・技能
条件を式化する技能,連立方程式を解く技能
問題解決の場面
買い物の合計金額から,品物単体の値段を求める
身につけたい力・態度
2つの未知数を求めるための条件を自ら見いだす力,問題解決に積極的
に連立方程式を利用する態度
題材名
「買い物ゲームをしよう」
準 備
・計算機
・果物などの模型 2種類か3種類
(カードなどでもよい)
・ゲームを盛り上げる工夫
右はその一例で,レジスターの
模型は実際には使わないが,
お店の雰囲気を出すために作成した。
授業の流れ
①3~5人程度の班を作り(全体で班の数
が 偶 数 に な る よ う に す る ), 対 決 す る グ
ループのペアを決める。
例えば1班 vs 2班
3班 vs 4班
5班 vs 6班
②ペアグループで,店側と客側に分かれる。(後半で役割の入れ替えをする)
例えば1班は最初店側,2班が最初客側,後半はその逆。
③ルールの確認をする。
単純に言えば,店側が設定した果物の値段を客側が当てるゲームである。以下は果物が3種類あ
る場合の細かいルールである。アンダーライン部分が特に大切な部分。
<店側のルール>
・それぞれの果物の値段は,10円単位で,あまり大きくならないように設定する。
・レジ係は交代で,みんなが経験できるようにする。
・レジ係以外の店員さんも,間違えてないかチェックする。
<客側のルール>
・3つある品物のうち,2つを選んでその値段を当てる。
・果物単体の値段を聞いてはいけない。
(だめな例・・・「リンゴ1個でいくらですか」「みかん10個でいくらですか」
・レジ係への質問(買い物)はできるだけ少ない回数で,値段を当てられるようにする。
④店側がぞれぞれの果物の値段を決める。客側は作戦会議をする。
⑤客側が実際に複数の果物を買い,値段を聞く。それを必要回くり返す。
⑥客側は計算で果物の値段を出す。店側に自分たちが出した値段があっているか確かめる。
⑦時間があまればもう1つの果物の値段を当てる買い物をしたり,発展例にあるように,3つ同時
に果物の値段を当てる買い物の仕方を考える。または,効率的な買い物ができないか考える。
⑧時間が来たら店側と客側が交代し,上記④~⑦をくり返す。
⑨各班の買い物リストを全体で発表し,それぞれの班の買い物の工夫を確認しあう。
留意点
・品物が3種類で混乱しそうなときは2種類に減らしても良いし,逆に種類を増やしてゲーム性を
高めることも考えられる。
・店側と客側が対面するような机の配置を考えることが必要である。
-4-
発展例
・2つのものを同時に当てるための最小の質問回数は2回であるが,3つのものを同時に当てる質
問( 買 い物 ) を考 え させ , 最小 の 回数 を 議論 す るの も おも し ろい 。( 教科 書 で, 発 展例 に3元 1
次連立方程式について言及しているものある。)
・連立方程式の文章問題づくりなどにつなげるのもおもしろい。
授業を盛り上げるポイント
・レジスターを作ったり,お店の看板を設置したりしてお店の臨場感を出す。
・例えば,ゲームを始める準備を促すために「まもなく開店です」という声かけをしたり,活動時
間の 終 了を 意 識さ せ るた め に,「 あ と5 分 で閉 店 です 。 お買 い 忘れ は あり ま せん か ~」 などの 声
かけをしたりする。
生徒の活動例
次の図は,生徒が自分たちの班の買い物リストを発表し,作成したワークシートである。
2回の買い物で,どちらかの果物の個数をそろえたり,もう一方
の果物の個数の差も1個にするなど,値段
を求めやすくする工夫が見られる。7班は
3つのものを同時に当てる買い物リストだ
が,3回の買い物ではなく,①x+y+z,
②x+y,③x+z,④y+zの4回の買
い物をし,①からぞれぞれ②,③,④を引
くというすばらしいやり方をしている。回
数を減らすことだけが求めやすくする工夫
ではないことも議論でき,日常生活の問題
を文字式(方程式)を用いて解決するこ
との良さを実感できた。
また,実際に文章問題を作らせて冊子に
したが,生徒はこの授業の体験を活かし,
楽しんで問題づくりに取り組んでいた。
-5-
事例No
3
学年
中2
単元
文字と式(等式の変形)
利用する知識・技能
等式の性質の理解とそれを文字に拡張して使うことができる技能
問題解決の場面
まんじゅうを6個入りと10個入りの箱に分けてつめるつめ方を考える
身につけたい力・態度
目的に応じて等式を変形する力とそれを問題解決に利用する態度
題材名
「まんじゅうのつめかたを考えよう」
準 備
・まんじゅうの模型(カード)・・・碁石などでも代用できる
・6個入りと10個入りの箱の模型(カード)
授業の流れ
①課題の提示
600個のまんじゅうを,6個入りの箱と10個入りの箱につめる。まんじゅうを余りなく
つめるには,それぞれ何箱ずつ作ればよいか。両方の箱はそれぞれ1個以上は使いましょう。
②班に分かれ,操作しながら課題を自由に考える。
各班には60個程度のまんじゅうカードと箱のカード
を配り,実際に操作させて考えさせる。ちなみに,
60個の詰め方は,6個箱×5+10個箱×3しかない。
③600個について考え始める。
④情報が少なく,箱の数は特定しにくい。そこで,最初は,
「だいたい同じ数ずつ作るには,どうすればよいか。」
という質問をしてみる。
6個箱×40+10個箱×36
6個箱×35+10個箱×39
あたりが正解ラインとなる。
⑤「今日は6個入りがすぐに売りきれて10個入りが
なかなか売れなかった。明日は6個入りを増やしたい。」
など,教師がいろいろな詰め方について考えるよう働きかける。
⑥何か法則はないか,6個入りの箱と10個入りの箱の関係がすぐにわかる方法はないか考える。
6個入りx個,10個入りy個とすると
6x+10y=600
3
y=--x+60
5
であるので,xが5の倍数でなければならなことや,xを決めるとyが計算できることがわかる。
発展例
・全体の個数を変えて同じ問題を考えさせるのもおもしろい。
・次の連立方程式の単元の学習につながる題材である。連立方程式の導入で,それぞれの箱の個数
を決定する条件を考えさせるとよい。また,6個の箱の個数を決めると10個の箱の個数も決ま
ることから,「関数」の導入にも使える題材である。
授業を盛り上げるポイント
・「 今日 は和 菓子 屋さ んに職 場体 験に 行った つも りで 課題 に取り 組み まし ょう。」「手 作り なので ,
1日600個の限定生産です。」発展例の全体の個数を増やすときも「作業の効率化を図り,
1日700個作ることに成功しました。」など,実際にあった話のように課題を提示する。
留意点
・あえて条件を何も提示せず,班毎に,どんな考え方でどんな箱詰めをしたか発表させる展開も
考えられる。
・早い段階で⑥を確認し,⑤に応用するなど,⑤と⑥の順序が逆になる展開も考えられる。
-6-
事例No
4
学年
中3
単元
2次方程式
利用する知識・技能
条件を式化する技能,2次方程式を解く技能
問題解決の場面
与えられた大きさの紙を使って,条件に合う直方体(牛乳パック)を作る
身につけたい力・態度
方程式の解を実際の問題にあてはめて検証する力,問題解決に積極的に
2次方程式を利用する態度
題材名
「牛乳パックの模型を作ろう」
準 備
・画用紙(8つ切をちょうど半分に切ったもの)
・ワークシート
・はさみ,のり,色ペン(生徒各自)
授業の流れ
①課題の提示
牛乳パックの展開図は,実際に牛乳パックを開いてみるとわかりますが,ほぼ長方形をして
います。19㎝×27㎝の画用紙で(8つ切画用紙をちょうど半分に切るとこの大きさにな
る ), 高 さ 1 0 ㎝ か 高 さ 5 ㎝ , 容 積 が 2 0 0 ml に な る よ う に 牛 乳パ ッ ク の 模 型 を 作 り ま す。
のりしろの部分を1㎝とり,画用紙を横いっぱい使うとすると,牛乳パックの縦と横の大きさ
はどうなるでしょうか。
19 ㎝
27 ㎝
27
㎝
19
㎝
②どちらで作るか決め,方程式をたてて縦,横の長さを求める。
<高さ10㎝の場合。19㎝の辺を画用紙の横にする。>
牛乳パックの縦の大きさをx㎝とすると,10x(9-x)=200
これを解いて x=4,x=5
<高さ5㎝の場合。27㎝の辺を画用紙の横にする。>
牛乳パックの縦の大きさをx㎝とすると,5x(13-x)=200
これを解いて x=5,x=8
③実際に模型を作り,お互いに鑑賞する。
生徒の活動例
・右はそれぞれ縦10㎝,縦5㎝で作った生徒作品
である。
授業を盛り上げるポイント
・コンテスト形式などにすると盛り上がる。
-7-
事例No
5
学年
中2
単元
1次関数
利用する知識・技能
等速で動く電車の様子をグラフに表す力
問題解決の場面
ダイヤグラムから電車がすれ違う時刻を求める
身につけたい力・態度
グラフの交点が何を表しているか読みとる力,ダイヤグラムを積極的に
問題解決に利用しようとする態度
題材名
「ダイヤグラムをかいて電車がすれ違う時刻を求めよう」
準 備
・ワークシート
・実際に電車を動かしながらダイヤグラムをかくソフトなどのシミュレーション教具
※ワークシートとシミュレーションソフト(フリーソフト)は,本校数学科のページより
ダウンロードできます。
トップページ URL http://partner.ed.kanazawa-u.ac.jp/futyu/
上部メニュー 教科研究-数学-フリーソフトの部屋
-7.1次関数学習(ダイヤグラムシミュレーション)
下記アドレスは直接フリーソフトの部屋へとびます。
http://partner.ed.kanazawa-u.ac.jp/futyu/html/sub.php?mnucode=170102&code=170102&page=1
授業の流れ(上記ソフトウェアを使用した流れ)
①ワークシート配布。課題の提示。
C駅から 40 ㎞離れたところにB駅があり,さらに 60 ㎞離れたところにA駅があります。
時速 60 ㎞の電車がA駅を 9:00 に出発しC駅に向かいました。また,時速 90 ㎞の電車も 9:00
にC駅を出発しA駅に向かいました。これらの電車が途中どの駅にも止まらないとすると,
2つの電車がすれ違うのは何時何分でしょうか。
②問題文をよみ,問題把握のため電車を走らせる。スペー
ス・キーを押すことによって,グラフはかかずに電車の
みが走る。
③もう一度スペース・キーで電車を走らせ,何時何分に
電車がすれ違うか生徒にきいてみる。
④このシミュレーションでは,すれ違う地点はわかっても,
すれ違う時刻は簡単には分からないことを確認する。
⑤問題解決に必要なことをみんなで考える。
⑥電車が動く様子をダイヤグラムで表す。時速60㎞,
時速90㎞という条件から簡単に電車のすすむ様子を
表すグラフがかける。→ワークシートに記入
⑦ソフトをもう一度,今度はエンター・キーを押す
ことによって動かし,2つの電車のグラフを確認
する。エンター・キーでは,電車が動きながら,
リアルタイムにダイヤグラムを作成してくれる。
⑧電車のすれ違う時刻をグラフから読み取り,正解
を確認し,ダイヤグラムの有用性やグラフの傾き
の意味などを再確認する。
留意点
・この授業は,ダイヤグラムについて既習で臨むこ
とが望ましいが,この題材をダイヤグラムの導入
に用いるためには,授業の流れを再
構築する必要があると思われる。
-8-
発展例
・生徒に問題を作らせると面白い。フリーソフトに添付のワークシートもその流れになっている。
生徒の活動例
以下は,上記の発展例にあるように,生徒に問題づくりをさせたものである。
授業を盛り上げるポイント
・このシミュレーションソフトを電子黒板とあわせて用いてみた。効果的な課題提示ができた。
-9-
事例No
6
学年
中1
単元
平面図形
利用する知識・技能
正確に基本作図ができる技能
問題解決の場面
線路を直線に,駅を点に見立て,具体的な問題を作図を用いて解決する
身につけたい力・態度
作図の方法から読み取れる別の性質を用いて問題を解決する力,作図を
積極的に問題解決に利用する態度
題材名
「鉄道にまつわる問題を作図を用いて解決しよう」
準 備
・ワークシート
・話を盛り上げるための掲示物など
授業の流れ
1.垂線の作図
2.垂直二等分線の作図
3.角の二等分線の作図
4.円の接線の作図
について,それぞれ次の流れで授業を行った。
①作図の説明 ②練習 ③作図の活用
1.垂線の作図
①作図の説明は右のたこ形を用いて行った。
②練習は,適当な△ABCをかき,それぞれの頂点から
反対側の辺へ垂線を作図し,それが1点で交わるか確認
させた。
③活用場面1
PHはPからABへの最短の長さであることが,P,Q
の対称性から説明できる。そのことを用いて次の問題を解決する。
太郎さんの家のそばに線路が走っている。太郎さんの家(点T)から最も近い場所に
駅を作るには,•上のどこに作ったらよいか。
・T
•
2.垂直二等分線の作図
①作図の説明は右のひし形を用いて行った。
②練習は,適当な△ABCをかき,それぞれの辺の垂直二等分線
を作図し,それが1点で交わるか確認させた。
③活用場面2
A,Bの対称性からPQ上の点はA,Bから等距離に
あることが説明できる。そのことを用いて次の問題を解決する。
太郎さんの家の近くに次郎さんが引っ越して来た。2人の家(2点T,J)から等距離に
ある場所に駅の建設計画を変更したい。•上のどこに駅をつくったらよいか。
・T
・J
•
- 10 -
3.角の二等分線の作図
①作図の説明は右のたこ形を用いて行った。
②練習は,適当な△ABCをかき,それぞれの角の二等分線
を作図し,それが1点で交わるか確認させた。
③活用場面3
PA,QAの対称性から,AB上の点はPA,PBまでの
距離が等しいことが説明できる。そのことを用いて次の問題を解決する。
駅の建設に成功した2人に,州知事は鉄道経営を任せる。次のような3路線(•,m,n)
から等距離にある場所に鉄道会社を作るには,どこに作ったらよいか。
m
n
•
4.円の接線の作図
①作図の説明は,180°の二等分線で90°がかけることを用いて行った。
②練習は,角の二等分線を用いた角度の作図の練習後,180°の二等分線をかくことを
確認して,適当な円の適当な円周上の点での接線を作図させた。
③活用場面4
円の接線の作図を利用して,次の問題を解決する。
会社を設立し,事業拡大に乗り出す2人。環状の路線に,ちょうどA駅で接する線路を
建設しよう。
A
発展例
次のような発展課題を作ると盛り上がる。生徒は次の話を楽しみにし始めた。
活用場面2では,実はもっと効率のよい方法があったことに気づく2人。
•上に点Pをとり,TP+JPが最小になるようにしたい。どこに点Pをとればよいか。
・T
・J
•
授業を盛り上げるポイント
・駅や電車,線路などの模型を黒板に貼り,臨場感を出す。
・実際はドラマ仕立てで授業を展開した。「建設会社物語」などと題し,第1話「旅立ち」,
第2話「次郎との出会い」…,など,題目をつけると,生徒が次の話を楽しみに待つように
なった。
- 11 -
事例No
7
学年
中2
単元
平行と合同
利用する知識・技能
与えられた条件にあう三角形を正確に作図する技能
問題解決の場面
合同な三角形を作図するための効率的な情報の集め方を考える
(三角形の合同条件の導入部分)
身につけたい力・態度
自ら三角形の合同条件を見いだす力,実際に三角形の合同条件が正しい
か作図をしながら確かめる態度
題材名
「合同な三角形を作図する方法を考えよう」
準 備
・黄金の三角形(模型)
・話を盛り上げるための掲示物など
授業の流れ
①課題の提示
昔々の話です。あるA国の王様が旅先で三角形の形をした黄金が洞窟の壁に埋まっているの
を見つけました。それを掘り起こすことができなかった王様は,それと同じ形,同じ大きさの
黄金の三角形が欲しくなり,随行の家来に「洞窟の三角形と合同な黄金の三角形」を作るよう
命じました。
さて,昔の話,旅先の話です。メモをすることもできない家来は,1人が1つずつ,責任を
持ってどこかの辺の長さかどこかの角の大きさを覚えて帰ることにしました。さて,家来の数
は最低何人必要でしょうか。また,どのような覚え方をして帰ればよいでしょうか。
②三角形には辺が3つ,角が3つあることを確認し,合計6カ所のうち,最低何カ所測らなければ
ならないか考える。
③自分が必要だと思うデータを確認する。
授業で使用した三角形のデータは次の通りである。角の大きさは正しいとし,最も長い辺7㎝を
基準とすると,他の2辺の長さは実際の理論値と若干違うが,実測のできるだけ近い値を用いた。
3つの角は
辺の長さは
45 °,60 °,75 °
7 ㎝,5.2 ㎝,6.3 ㎝
(45 °をはさむ辺が 7 ㎝と 6.3 ㎝,60 °をはさむ辺が 7 ㎝と 5.2 ㎝)
④自分が選んだデータで実際に
三角形をかいてみる。たいて
いの生徒は,3つのデータで
十分かけるという感触を持つ。
⑤できた生徒は挙手をし,教師が
実際に黄金の三角形の模型を
重ねてみることで,合同になっ
ているか確認をする。
⑥三角形の合同条件を確認する。
→
授業を盛り上げるポイント
・三角形の模型は金紙を貼って黄金にしておくことで,話の臨場感がでる。また,実際に三角形の
模型をノートに書いた三角形と重ね合わせることで,生徒は正解を実感でき,さらに合同の定義
(重ね合わせることができる)を感覚的にも実感できることになる。
・ 正 解し た 生徒 に は,「 よ くや っ た。 ご 褒美 じ ゃ」 と 王様 の 真似 を しな が らご褒 美シ ール を貼る な
ど,さらなる意欲づけをはかる。
留意点
・分度器を用意できなくても,実際に1年時に発展課題で行った角度の作図を用いて作図できる
角度に設定した。
- 12 -
発展例
・「 2辺 と その 間 の 角」 の 合同 条 件に つ いて , 角が 「 2辺 の 間の 」 角に な ってい なけ れば ならな い
ことを次のように確認した。
となりのB国の王様がこの話を聞き,たいそううらやましがりました。そこでB国の王様も
家来を3名洞窟に派遣し,必要なデータを覚えさせ,黄金の三角形を作らせることにしました。
ところが,その家来たちは,下の図のような3カ所のデータを覚えて帰りました。さて,こ
れで無事洞窟の三角形と合同な三角形が作れるでしょうか。
6.3 ㎝
60 °
7㎝
言うまでもなく,下記のように2通りの三角形が考えられるので,だめである。
6.3 ㎝
6.3 ㎝
60 °
7㎝
・「1辺とその両端の角」の合同条件について,「2角と1辺」ではだめなことを,次のように
確認した。
C国の王様もまた,黄金の三角形の話を聞き,家来に命じました。しかしC国の家来達は,
B国の家来達の失敗も知っていたのです。そして次のように話をしました。
「私達ならB国の家来のような失敗はしない。なぜなら私達は,三角形の内角の和が 180 °で
あることも知っている。だから2つの角の大きさを調べれば,残りの角の大きさも分かる。」
そしてC国の家来達は,1つの辺が 6.3 ㎝であることと,2つの角が 45 °,60 °であるこ
とを調べて帰りました。さて,このデータで大丈夫でしょうか。
この話は,生徒からの「1辺とその両端の角は,2つの角が分かれば残りの角も分かるから,
角の場所は辺の両端でなくてもよいのではないか」という質問に答えた形のものである。言う
までもなく,6.3 ㎝がどの2つの角に挟まっている辺かまで分かってないと,形は同じでも,
大きさが違う可能性がある。策士,策に溺れる,ということで話を締めくくった。
さらなる発展例
・上記の2辺とその間の角の反例は,後の直角三角形
の合同条件を考える際,もう一度話を出した。
つまり,∠C=90°の直角三角形では,AB,
BC,∠Cで三角形が決まるというものである。
(直角三角形の斜辺と他の1辺がそれぞれ等しい)
∠Cが鋭角の場合,二等辺三角形 ABA'ができるが,
∠Cが90°の場合,二等辺三角形 ABA'を作ろうと
すると,BCの反対側に A'ができてしまう。
(この A と A'の対称性がまた,直角三角形の合同条
件の証明のアイディアにつながっていく。)
- 13 -
A
A'
B
C
A
B
C
事例No
8
学年
中3
単元
相似な図形
利用する知識・技能
三角形の相似条件の理解と比の計算を使いこなす技能
問題解決の場面
具体的な地図や場面で,他の条件から相似な三角形を見いだし,移動に
かかる時間を計算する
身につけたい力・態度
相似な三角形を見いだす力,具体的な場面で相似な図形の性質を使って
問題を解決する態度
題材名
「移動にかかる時間を相似な図形の性質を使って計算しよう」
準 備
・ワークシート
・話を盛り上げるための掲示物など
授業の流れ
次の3つの場面において,
①問題の提示 ②問題の数学的モデル化
の流れで授業を行った。
③問題解決の手法の確認
場面1
①問題の提示
次は,学校近くの地図である。三角形の形を
した道の途中に,その底辺にほぼ平行に道が
走っている。寺町5丁目の交差点から泉野図
書館までどれだけかかるか。
②問題の数学的モデル化
ひろし君が移動にかかった時間をまとめ
ると次のようになった。DE//BCとす
ると,ひろし君がDE間の移動にかかる
時間は何分か。
A
10 分
D
5分
寺 町 5丁 目→
E
B
← 泉野 図 書館
C
12 分
③問題解決の手法の確認
△ADE∽△ABCを用いて,
10:15=DE:12
これよりDE=8であるから
かかる時間は8分である。
場面2
①問題の提示
右は,学校近くの公園である。それぞれ
の入り口から反対側の道路に抜けるのに
かかる時間はどのくらい違うだろうか。
←マンション口
ス ーパ ー 口→
- 14 -
②問題の数学的モデル化
花子さんはB地点から道路ACに最短距離を
通って向かう。良美さんはC地点から道路
ABに最短距離を通って向かう。
AB=20m,AC=30mとすると,
2人が公園を横切るのにかかる時間はどの
くらい違うか。
A
E
D
B
C
③問題解決の手法の確認
一見条件が足りないように見えるが,△ADC∽△AEBからAB:AC=BE:CDで
あることが分かる。よって良美さんは花子さんの 1.5 倍の時間がかかる。
場面3
①問題の提示
右は山手線の路線図である。色々な駅間の所要時間を
考えよう。
②問題の数学的モデル化
電車がA駅からE駅へ行くのに30分,E駅から
B駅に行くのに5分かかる。電車がD駅からE駅
まで行くのに10分かかったとすると,E駅から
C駅まで何分かかるか。
C
C
A
E
A
E
B
B
D
D
③問題解決の手法の確認
補助線AD,CBをひくと,円周角の定理から△ADE∽△CBEであることが分かる。
AE:CE=ED:EB から,30:CE=10:5 これを解いてCE=15
よって,15分かかる。
一見,AE:EB=DE:ECであると錯覚しやすいが,実はAE×EB=DE×ECである。
授業を盛り上げるポイント
・実際に学校の近くの地図などを用いると,生徒にも臨場感が出て盛り上がる。
・答えを出すだけではなく,生徒に法則を考えさせると盛り上がる。中3後期という段階を考え
ると,数学的な法則を見つけることで,数学の活用の幅が広がることを生徒も実感する。
また,法則を言葉でいいかえるのも効果的。例えば,
場面1では,AD:AB=DE:BC
DE,BCの道の長さは点Aから道までの距離に比例する
場面2では,AB:AC=BE:CD
三角形の公園を垂直に横切る距離はその三角形の辺の長さの比に等しい
場面3では,AE×EB=DE×EC
ある円において2つの弦の交点から円周までの距離の積は等しい
留意点
・生徒との会話を重視しながらすすめていくことが大切である。生徒から問題解決の手法,法則を
引き出すよう,考える時間,発表の時間を確保することが大切である。
- 15 -
事例No
9
学年
中2
単元
確率
利用する知識・技能
樹形図を用いて確率を求める技能
問題解決の場面
トランプゲーム「神経衰弱」の最終場面の有利・不利を考える
身につけたい力・態度
同じものを区別して正確に樹形図をかく力,間違えやすい確率を数学的
に正確に求めようとする態度
題材名
「神経衰弱の最終場面では,先手が有利か考えよう」
準 備
・カード
・シミュレーションソフトなど
※シミュレーションソフト(フリーソフト)は,本校数学科のページよりダウンロードできます。
トップページ URL http://partner.ed.kanazawa-u.ac.jp/futyu/
上部メニュー 教科研究-数学-フリーソフトの部屋
-8.確率シミュレーション
下記アドレスは直接フリーソフトの部屋へとびます。
http://partner.ed.kanazawa-u.ac.jp/futyu/html/sub.php?mnucode=170102&code=170102&page=1
授業の流れ(上記ソフトウェアを利用した流れ)
①課題の提示
2人でトランプゲーム「神経衰弱」を行っている。最後に4枚の
カードが残った時点でもう一度カードをシャッフルするとき,先に
カードをめくる方が有利か不利か。
ただし,残った4枚は2枚どうしのペアが残っているとし,先手
がひいた後はシャッフルのし直しはしない。
なお,カードの表記を簡単にするため,以下,授業では,
2枚のカードを○,残り2枚のカードを□で表すことにする。
②シミュレーションソフトで1,2回実験し,
その後実際にどちらが有利だと感じるか,
どちらの有利さも変わらない,という意見も
含めて直感で手を挙げてもらう。
実際の授業では,先手有利に約1割,
どちらも変わらないに約5割,
後手有利に約4割手を挙げた。
③シミュレーションソフトで2000回実験を
する。右は電子黒板を用いてシミュレーション
を見せた写真。はずれ(2枚のカードが不一致)
が,あたり(2枚のカードが一致)の約2倍に
なっていることが視覚的に分かる。
ここで,特に有利さが変わらないと答えた生徒
から驚きの声があがる。
確率は直感にだまされやすいことを確認。
- 16 -
④だまされた理由を確認する。
1枚目 2枚目
○
○
□
□
○
□
□
○
がすべての組み合わせだと錯覚してしまう。
しかし,○や□は実際には2枚ずつあるので,
これですべてを数えたことにはならないことを
確認する。
⑤すべての場合を数えるためには,同じに見える
カードを番号をつけるなどして区別する必要性
があることを確認する。
⑥カードに番号をつけ,実際に確率を求める。
右は電子黒板でカードを動かしながら樹形図を
作った例。
⑦次のような課題で,同じものを区別して確率を
求める練習を行う。
赤玉2個,白玉3個入った袋から続けて
2個を取り出すとき,2個が同じ色の玉に
なる確率を求めなさい。
授業を盛り上げるポイント
・黒板に実際にカードを貼り,クラス全体が見えるように最初の1,2回の実験を行うと盛り上
がる。生徒を指名し,カードをめくらせてみる。電子黒板とフリーソフトを用いると,最初の
実験も簡単に行える。
留意点
・実際にトランプを用いて多数回の実験をさせてもよいが,最初の1枚をめくると残りが3枚だ
から,先手は3枚のうち1枚を当てなければならないことに気づいてしまう可能性がある。
この授業の流れで大切なのは,実際の確率を最初は錯覚させることにある。最初の1,2回の
実験終了後,4枚のカードをすべてめくると錯覚が起きやすい。実験結果が予想と違うことから
数学的に正しく樹形図を書く必要性を実感させられれば,と思う。
発展課題例
・有利,不利という観点を生かして,くじ引きの当たる確率は引く順によらないことの学習に
つなげられる。
①4~5名くらいずつの班をつくり,5枚中2枚が当たるくじを班ごとに配る。
②班で順番を決めてくじを引き,下記のようなワークシートに実験結果を記入させる。
③引く順は途中でかえてもよいが,何番目に引いた人がどれだけ当たったかを正確に記入させる。
④各班の実験結果をクラス全体でまとめる。
⑤不正をしない限り,引く順による有利・不利が明確になる程の実験結果にはならない。
⑥実験後,樹形図を用いて1番目と2番目に引く人の当たる確率は同じであることを確認する。
⑦3番目以降は樹形図が複雑になるので,興味のある人の自主追求に任せる。
<ワークシート例>
1回目
2回目
1番目に引く人
○
×
2番目に引く人
×
○
3番目に引く人
×
×
4番目に引く人
○
×
5番目に引く人
×
○
3回目
4回目
5回目
- 17 -
6回目
7回目
8回目
9回目
10回目
当たった合計
事例No
10
学年
中1
単元
資料の活用
利用する知識・技能
ちらばりのある資料を度数分布表にまとめたり,ヒストグラムに表す技
能,いろいろな代表値に関する知識
問題解決の場面
ジャガイモの重さの散らばりを見て,表示するのに最も適した重さを考
える
身につけたい力・態度
度数分布表やヒストグラムから,その場面に応じた代表値を考える力
資料を整理して見やすくし,問題解決に役立てる態度
題材名
「ジャガイモの内容量の表示を考えよう」
準 備
・ワークシート
・ジャガイモの写真など
授業の流れ
①課題の提示
あるスーパーでは,ジャガイモを,5個入りの袋で販売している。このジャガイモの内容量を
重さで表示することになったため,その中から50袋を選んで重さを計ったところ,次のように
なった。
710
763
779
747
767
760
736
752
729
733
755
758
757
713
732
741
719
720
736
745
767
686
752
726
734
723
754
708
737
785
741
720
739
758
760
756
747
780
740
719
743
769
698
722
721
752
717
763
721
765
ジャガイモの内容量を全部計って個別に表示するのには手間がかかること,5個入りのジャガ
イモはすべて同じ値段にしたいことなどから,これらの袋の内容量を1つの値で表示することに
した。あなたなら,何g入りと表示しますか。その理由を含め答えなさい。
②ジャガイモの重さを,度数分布表とヒストグラム(必要に応じて度数折れ線も)にまとめる。
階
以上
級(g)
未満
度 数(袋)
680
~
690
1
690
~
700
1
700
~
710
1
710
~
720
5
720
~
730
8
730
~
740
7
740
~
750
7
750
~
760
9
760
~
770
8
770
~
780
1
780
~
790
2
計
(袋)
10
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
680 690 700 710 720 730 740 750 760 770 780 790 (g)
50
③分布を見て,ジャガイモの重さを1袋何gと表示するか(何を代表値にするか)考える。
④それぞれの意見を発表し,それぞれの代表値のよさを考える。
- 18 -
授業を盛り上げるポイント
このスーパーの店長になったつもりで,消費者の立場になって,など,考えるための必然性を
演出する。
生徒の活動例
次は実際の授業で,生徒が発表した意見の記録である。
生徒A:800g
一番大きい値が785,それを切り上げて800した。たくさん入っているように見えるので,
お得感があってたくさん売れるのではないか。
生徒B:680g
表示より少なかったという消費者からのクレームを避けるため,最小の値を考えた。
一番小さい値686の一の位を切り捨ててきりのよい数字にした。
生徒C:741g
平均を求めると741.1なったので。
生徒D:735g
最大値785と最小値686のちょうど間くらいだから。
生徒E:740g
分布を見て,50個の真ん中の値がちょうど740くらいである。
生徒F:755g
お客さんが買っていく可能性の一番高いのが750~760の範囲のジャガイモである。
その範囲の真ん中の値。
生徒G:700g
消費者からのクレームは避けたいが,700未満のジャガイモは2袋しかない。その2袋は
目をつぶった。また,700は,きりのよい数字だから。
<生徒のノートより>
発展例
この授業では,生徒があげた代表値に対し,その呼び名を教える流れで行った。メジアンや
モードを考える必然性を生徒と共感できたと思う。次はそれぞれの生徒の意見に対し,用語の
解説を行った記録である。
生徒A:785
→ 最大値
生徒B:686
→ 最小値
生徒C:741.1
→ 平均
生徒D:785-686 → 範囲 =(最大値)-(最小値)
生徒E:741
→ メジアン(中央値,実際25番目と26番目の値がともに741である。)
生徒F:755
→ モード(最頻値)
生徒G:野菜の重さの表示は3%の誤差まで認められている。700の3%は21。
686の袋も誤差の範囲内である。
- 19 -
発展課題例
<評価問題>
実際に期末テストに出題した問題である。
次は,ある料亭で,1人分の「マグロづくし」料理に使うマグロの仕入れ値を,2ヶ月
(60 日)にわたって記録したものである。
4305 4594 4433 4401 4058 3253 4531 4170 3789 4048 4251 3818 3986 3021 4588
4142 3437 3522 4580 3807 3640 5274 4446 4332 3974 3915 4653 3688 4272 3307
4482 3541 3483 4061 4132 4004 4401 3939 4517 4615 3615 4039 4192 4043 3834
4033 3555 4237 4261 3594 4014 4190 4639 3796 4224 3782 4558 3898 4105 3809
(1)度数分布表とヒストグラムを作りなさい (2)モードとメジアンを求めなさい。
(3)料理は仕入れ値の倍の値段で出すのがこの料亭の基本です。毎日の料理の値段を同じに
するとしたら,あなたはこの「マグロづくし」1人分の値段をいくらにしますか。理由も
含めて答えなさい。他の食材の分は考えなくてよい。
(回)
15
10
5
0
3000
3200 3400
3600 3800
4000
4200
4400 4600
4800 5000
5200
5400 (円)
<レポート課題>実際に出したレポート課題である。
次は,ある車の燃費(ガソリン1•あたりの走行距離)を知るために燃費実験を行った結果で,
60回にわたって燃費を計算・記録したデータである。自動車の燃費は,走った距離,天候,道路の
コンディション,タイヤの空気圧などによって変わるため,このように一定ではない。あなたがこの
車の販売会社の広報部長だとしたら,この車の燃費を何㎞/•であると表示しますか。理由も含めて
答えなさい。
11.0 9.9 10.0 9.1
8.7 10.1 8.8 11.4
9.2 9.3 9.7 10.2
8.1 8.0 9.2 8.8 7.9 9.9
7.9 10.1 9.3 8.3 11.1 10.7
9.1 10.7 10.0 10.4 8.8 10.2
9.7 9.0 10.3
8.5 9.0 10.2
9.6 10.2 10.1
- 20 -
9.0 10.6 10.2
9.8 10.0 8.5
9.6 10.1 9.0
9.1 10.3 10.2 8.3
8.8 11.1 9.6 11.3
8.7 11.1 8.8 10.2
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