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【事例紹介】インターネットを使った留学生との交流

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【事例紹介】インターネットを使った留学生との交流
ウェブマガジン「留学交流」2012 年 4 月号 Vol.13
インターネットを使った留学生との交流
熊本大学国際化推進センター・国際語学部門
梅田 泉
UMEDA Iz u mi
1.はじめに
熊本大学留学生センターと改組後の国際化推進センターで行ってきた、日本人と留
学生との交流活動や交流学習について紹介する。当初はホームページを使い一般から
ボランティアを募り日本語学習の支援をお願いしていたが、現在は学内の日本人クラ
スと留学生の日本語クラスの交流学習が主となっている。その変遷の概要である。
2.日本語ボランティア
1995 年 4 月 に 熊 本 大 学 に 留 学 生 セ ン タ ー が 九 州 地 区 で は 九 州 大 学 に 次 い で 設 置 さ れ
た 。 10 月 か ら 始 ま っ た 日 本 語 研 修 コ ー ス の 研 修 生 は 毎 日 朝 か ら 午 後 ま で セ ン タ ー で 日
本語の授業、宿舎へ帰ってまた数時間の自習という生活が続く。研修生には当初チュ
ー タ ー が つ か な か っ た こ と も あ り( 1 )、日 本 人 と 話 す 機 会 を 是 非 と も 作 る 必 要 が あ っ た 。
幸 い 熊 本 大 学 で は 自 由 に ネ ッ ト ワ ー ク を 利 用 で き る 環 境 が あ っ た 。 そ れ で 1999 年 後 期
からホームページを公開し日本語ボランティアの募集を始めた。
募集を始めて半年すぎたころから学期ごとに1~2名ボランティアが増えていった。
当初は大学の近くの人に限定していたが、遠方の人もいたので、スピーチで使った写
真 と テ キ ス ト を ホ ー ム ペ ー ジ か ら 公 開 し て 見 て も ら っ た 。 そ し て 2000 年 の 後 期 か ら は
サ ー バ ー 上 の BBS( 掲 示 板 ) で 感 想 を 書 い て も ら う よ う に な っ た 。 ボ ラ ン テ ィ ア は し だ
い に 増 え 最 大 で 2004 年 の 37 名 だ っ た 。 学 内 の 学 生 も い た が 、 多 く は 県 内 の 他 大 学 の
学生や一般の人で、関西や関東、海外からの応募もあった。留学生が初級レベルのた
め、交流と言うより日本語学習の手伝いをしてもらうという位置づけだった。また、
あくまでボランティアであり、いつでも手伝えるわけではないため、計画的な活用は
できず必要なときに可能なら来てもらうという形をとった。
と こ ろ で 2003 年 頃 か ら 交 換 留 学 生 向 け の ク ラ ス が 増 え て い っ た 。 交 換 留 学 生 は 日 本
語がある程度話せるが、期間が半年から1年程度と限られている。日本にいる間に、
できるだけ多くの日本人と接し、日本文化を体験し、日本人の友だちをたくさん作っ
てほしい。そこで日本語担当の他の教員とともに、留学生のための交流活動や体験学
習 な ど 様 々 な 取 組 を 行 っ た ( 2 )。同 時 に イ ン タ ー ネ ッ ト の 利 用 も 拡 大 し た 。20 04 年 か ら
日本語ボランティアと留学生だけが見られる、交流と学習のためのコミュニティーサ
イ ト KUm a Ryu O nli n e Com mun i ty の 運 用 を 開 始 し た ( 3 )。 こ こ で は 、 BBS ソ フ ト を 使 っ
て 、日 本 語 ボ ラ ン テ ィ ア と W e b 上 で 交 流 が で き る ( 4 )。そ の た め に ス ピ ー チ 発 表 会 の 様
子をストリーミングサーバー「熊本大学留学生センター放送局」でボランティアのみ
に 公 開 し た り 、「 私 の カ ル チ ャ ー シ ョ ッ ク 」 を テ ー マ に 留 学 生 が 編 集 し た ビ デ オ 作 品 を
公 開 し た り し た ( 5 ) 。ま た 留 学 生 が 自 国 語 で 挨 拶 や 簡 単 な 表 現 を 音 声 で 教 え る サ イ ト「 Web
ラ ジ オ : 世 界 の 言 葉 で 話 そ う 」 を 制 作 し た ( 6 )。 さ ら に 2 005 年 の 夏 か ら 新 た に CM S を
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組み込んだ「留学と交流サイト」を開設し、交流やイベント情報の発信などに役立て
た ( 7 )。
学 内 イ ベ ン ト の ほ か 、小 学 校 と の 交 流 会 ( 8 )、他 大 学 で 日 本 語 教 育 を 学 ぶ 日 本 人 ク ラ
ス と の 交 流 学 習 ( 後 述 )、 熊 本 県 国 際 協 会 が 主 催 す る 国 際 交 流 祭 典 へ の 参 加 ( 9 )、 熊 本
留 学 生 交 流 推 進 会 議 が 主 催 す る 熊 本 地 区 留 学 生 シ ン ポ ジ ウ ム( 1 0 )の 参 加 な ど も あ っ た 。
こ う し た イ ベ ン ト に は 日 本 語 ボ ラ ン テ ィ ア に も 参 加 を お 願 い し 、Web 上 の コ ミ ュ ニ テ ィ
ー サ イ ト で の 交 流 活 動 も 行 っ た 。 こ の 当 時 の 取 組 に つ い て は 、 梅 田 泉 ( 2008a, 2008b)
を 参 照 さ れ た い 。な お 、こ れ ら の サ イ ト お よ び 活 動 は 留 学 生 セ ン タ ー が 改 組 さ れ た 2 0 0 8
年 12 月 末 で 運 用 を す べ て 終 了 し た 。
3.インターネットへの漠然とした期待
当時目指そうとしたのは、留学生と日本語ボランティアが、イベントでの直接交流
と、インターネットを利用しての間接交流を通して、お互いに学ぶことのできるコミ
ュ ニ テ ィ ー 作 り だ っ た 。日 本 ば か り で な く 世 界 中 に 日 本 語 ボ ラ ン テ ィ ア が い て 、W e b サ
イトで活発なやりとりが起こるかもしれないという漠然とした期待があった。
やってみると確かに楽しくメッセージ交換をする留学生やボランティアもいた。し
かしそれが日本語学習に有効だったかというと何とも言えない。またいくつか課題も
見えた。まずインターネット上でのやりとりを促進するには、留学生よりむしろ日本
人側に相当の力量が必要だった。申し込んできた日本人をボランティア登録して、ど
うぞ留学生にメッセージを書いてくださいと言っても、実際はそう簡単にできるもの
で は な い 。 活 発 な や り と り に は 、 ボ ラ ン テ ィ ア 側 に Web の 活 用 能 力 や 、 我 々 の サ イ ト
を見る十分な時間、留学生交流への熱意、さらに留学生の日本語能力に合わせて日本
語を調整する能力、留学制度や留学生の国についての理解も必要だ。ボランティアで
応募した人にそこまで求めるのは無理があった。対策として、日本語ボランティア向
け に メ ッ セ ー ジ の 書 き 方 を 説 明 し た Web ペ ー ジ を 作 っ た り 、 大 学 に 来 ら れ る 人 に は 講
習 会 を し た り し た が 、 効 果 は 限 定 的 だ っ た 。 特 に 直 接 会 わ ず に BBS だ け で 交 流 す る に
は 、日 本 語 が で き る 日 本 人 で も 技 術 と 勇 気 と 慣 れ が 必 要 だ と い う こ と が よ く 分 か っ た 。
また留学生の方も、毎日サイトを見て積極的に返事を書く人は少数で、週に1~2
回、授業の時などに見るという人が多数だった。また、自国内にインターネットがま
だ普及していない国から来た留学生の中には、見ず知らずの人からメッセージをもら
う こ と が 理 解 で き な い 人 も い た 。慣 れ て い る 留 学 生 で あ っ て も 、B B S の 中 に 書 く 日 本 語
には、文法の間違いだけでなく、丁寧すぎたりくだけすぎたりという文体の問題がよ
く起こった。それを、そのつど日本語教師が割り込んで直すことは、話している当人
た ち の 腰 を 折 る よ う な 気 が し て で き な か っ た 。BBS で の 交 流 を 日 本 語 の 学 習 に 活 か す に
は、交流活動の前と後のフォローが重要だ。しかし交流中の人に言葉上の問題をコメ
ントするのは、おしゃべりに夢中になっている人の間に入ってその言い方はこう直せ
と言うのと同じで、非常に無粋なことだ。実際にすべての書き込みを日本語教師が修
正 す る こ と は 難 し い 。BBS で の や り と り は 、日 本 語 学 習 の た め と 考 え る よ り 、自 由 に 書
かせて、知り合った人との関係を維持することを目的と考える方が良いと思う。
日本語ボランティアによる交流学習は、ボランティアの個人的な意欲に頼る面が強
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く、こちらの意図に沿った運営は難しい。しだいに、交流学習をするなら遠くにいる
人でなく、近くにいて会うことのできる人のほうが良いと思うようになった。近い人
でもインターネットは便利だ。会う時間が限られていても、インターネットでの交流
によって、お互いの関係が維持され、記憶のどこかに知り合いとして残り続ける。直
接 会 っ て 交 流 活 動 を し た り 、Web 上 で 自 己 紹 介 を し た り す る こ と は 、交 流 へ の 働 き か け
を 強 め る 。 そ し て そ の 交 流 を 継 続 的 に 維 持 す る 場 と し て CMS を 使 っ た コ ミ ュ ニ テ ィ ー
サイトを活用する、というような方向性がしだいに見えてきた。
4.日本人学生との交流学習のはじまり
熊 本 大 学 か ら 2 キ ロ 程 度 の と こ ろ に あ る 私 立 の 熊 本 学 園 大 学 で ( 1 1 )、日 本 語 教 育 を 学
ぶ 外 国 語 学 部 の 日 本 人 の ク ラ ス と 2001 年 か ら 交 流 会 が 始 ま っ た 。 内 容 は 、「 私 の 国 」
をテーマに、スピーチの練習をかねて写真を見せながら留学生が話し質疑応答を行う
と い う も の だ 。 留 学 生 1 名 に 日 本 人 数 名 で 、 15 分 ぐ ら い 話 し て は 交 代 し た ( 写 真 )。 日
本人側は日本語教育に関心があるので、初級レベルの留学生と日本語で話すのはいい
経 験 だ っ た 。 彼 ら も ボ ラ ン テ ィ ア 登 録 を し て B BS に 参 加 し て も ら っ た 。
この一連の交流学習は留学生と日本人双方に非常に好評だった。留学生にとって熊
本大学とは異なる私立大学の環境がまず新鮮だったようだ。熊本学園大学は、熊本大
学と違ってほとんどの学生が県内出身者で、しかも県内唯一の外国語学部がある。キ
ャンパスは熊 本 大 学 と違 って非 常 に明 るい雰 囲 気 で、
歩いていると「留学生ですか」と声をかける人がい
るし、知っているなら挨拶をしてくる。もちろん、
全 部 が 全 部 そ う い う 学 生 と は 限 ら な い 。し か し 交 流
会が終わると留学生は誰もが熊本大学よりこちらの
大 学 の 方 が 楽 し い 、ま た 来 て 話 し た い と 言 う 。交 流
会 に 参 加 し た 日 本 人 学 生 の 方 に も 、各 国 の 留 学 生 と
話したことは相当に刺激を受けたようだ。その後、
日本人学生との交流学習
( 2004 年 6 月 30 日 )
海 外 に 留 学 し た 学 生 も た く さ ん い る し 、日 本 語 教 師
に な っ た 学 生 も い る ( 1 2 )。
熊 本 学 園 大 学 で の 交 流 学 習 は や は り 2008 年 で 終 わ っ た 。 そ れ ま で の 様 々 な 交 流 活 動
の中でどの活動に一番成果を感じたかというと、真っ先に、この日本人大学生と留学
生との交流学習をあげたい。留学生にとっても日本人学生にとってもインパクトのあ
るこうした交流が、熊本大学でできないのは非常に残念だと思うようになった。
5.熊本大学の日本人学生との交流学習
2008 年 と 言 え ば 、 変 革 を 求 め た オ バ マ 大 統 領 が 選 出 さ れ た 年 で あ る 。 そ し て 熊 本 大
学の留学生センターにも大きな変化があった。増え続ける様々な身分の留学生に充実
した日本語教育を提供するため、日本語クラスの構成を変えた。留学生センターも改
組 さ れ 、 2 009 年 1 月 か ら 国 際 化 推 進 セ ン タ ー と な っ た 。 日 本 語 教 育 以 外 の 様 々 な 業 務
は国際交流支援部門が担い、日本語教員は国際語学部門に属し国際化推進のために日
本語教育は何ができるか、を考えることになった。そして、筆者がまず取組んだこと
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が留学生と熊本大学の日本人学生との交流学習だ。熊本学園大学で行った交流学習の
経験から、それが日本人学生に大きな刺激を与え、外国語の学習意欲の向上や海外留
学の希望者増につながると考えたからだ。
しかし、問題はその方法だった。留学生クラスに日本人学生がボランティアで入っ
たり、日本人クラスに留学生がボランティアで入ったりする場合は十分な人数の確保
が難しい。また負担のかかるような準備をボランティアにさせることもできない。留
学生も日本人学生も交流学習はやってみたいが、ボランティアで毎週参加するほどの
強い意欲や時間まではない。とすれば、ボランティアに頼るのではなく単位の出る授
業の中で行うのが効果的だと考えた。しかし学内の現状では日本人学生と留学生が一
緒に受講し、単位の出せる授業を我々が担当するのは難しい。唯一可能なのは教養教
育 の 授 業 だ 。 筆 者 も 2000 年 か ら 担 当 し て お り 、 現 在 で は 毎 学 期 1 コ マ を 受 け 持 っ て い
る。ここ数年、外国語教授法をテーマとする講義を主に行っている。そのため留学生
との交流をこの教養教育のクラスに組み込むことは、日本人学生にとっても理解を深
めることになる。ただ、このクラスを留学生が受講することはほとんどない。熊本大
学 に 入 学 す る 学 部 正 規 留 学 生 が 毎 年 10 名 程 度 と 少 な い こ と 、 ま た 交 換 留 学 生 が 教 養 ク
ラスを受講しても、相当の日本語能力がないと単位修得は難しいからだ。
そ こ で 2009 年 か ら 、筆 者 の 担 当 す る 日 本 人 向 け の 教 養 教 育 と 留 学 生 向 け の 日 本 語 ク
ラスで、授業目的は異なり授業時間も異なるが、相互に協力し合えるような内容を組
み 込 ん で 、 交 流 学 習 を 試 み る に 至 っ た 。 ま ず Web 上 で の 自 己 紹 介 を 中 心 と し た 間 接 交
流で、直接交流を起こすきっかけにした。そして直接会って話す時間を授業内や授業
外 に 用 意 し た 。 そ の 際 以 前 使 っ た CM S を 、 交 流 学 習 の た め の シ ス テ ム と し て 、 知 り 合
っ た あ と の 関 係 を 維 持 す る た め に 活 用 し た ( 1 3 )。 詳 し く は 梅 田 ( 2010,
2 01 1 ) を 参 照
してほしい。
6.日本人学生と留学生との交流学習の実際
昨 年 度 後 期 の 例 を 紹 介 す る ( 1 4 )。 す べ て の 参 加 者 は 、 Web 上 の コ ミ ュ ニ テ ィ ー サ イ ト
で、クラス写真と自己紹介の原稿と音声を作りリンクさせた。交流学習に参加した日
本 人 向 け の 教 養 教 育 は「 外 国 語 と し て の 日 本 語 教 育 E」で 日 本 語 教 材 論 を テ ー マ に し て
いた。授業期間後半にプロジェクトワークとして聴解教材作りを行い、作った教材を
サーバーにアップし留学生に実際に学習してもらった。留学生向けのクラスは、中級
聴解クラスとプレゼンテーションクラス、そしてゼロ初級の日本語研修生クラスだっ
た 。 中 級 聴 解 ク ラ ス は NHK 教 育 テ レ ビ の 番 組 「 青 春 リ ア ル 」 を 見 て 、 そ れ に つ い て 感
想 や 質 問 を CM S の ア ン ケ ー ト 機 能 で 収 集 し 、 サ イ ト 上 に 結 果 を 公 開 し 日 本 人 の ク ラ ス
の学生にコメントしてもらった。また、日本人クラスの学生が制作した聴解教材を実
際に学び、感想や意見を書いた。プレゼンテーションクラスでは、写真を使ったプレ
ゼンテーションスライドを作り説明を録音してサーバーにアップし、日本人に聞いて
も ら っ た 。 以 上 の 授 業 は 、 す べ て 熊 本 大 学 の PC 室 を 使 っ て 行 っ た 。 サ ー バ ー に ア ク セ
スし書き込みをする時間を、授業の中に十分ではないが確保し、授業後に大学や自宅
のネット端末からも続けられるよう動機付けをした。
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「 留 学 生 と 学 ぶ 」 ト ッ プ ペ ー ジ ( 13)
全員の自己紹介
(名前をクリックすると音声と手書き文書のページへ移動する)
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日本人学生が作った聴解教材を留学生に見てもらう
プレゼンテーションクラスのスライド作品リンク集
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留学生のプレゼンテーションスライド例(音声付き)
授業時間以外の活動として、留学生には日本人クラスの時間に教室に来てもらって
交流会をした。日本語クラスのない時間帯に教養の授業を入れており、時間のある留
学生には来てもらうことができた。自己紹介、熊本の印象、各自のプレゼンのテーマ
についてなど自由に話した。また平日の夜にプレゼンテーションパーティーを開催し
た。飲み物とお菓子などを用意し、パネルを使ってお互いの国の話をした。各国の大
学生活や高校生活、穴場的な観光地や名物などを写真で説明した。こうした直接交流
は、本当は全員に来てほしいが、無理な人もいるので希望者または来られる人だけが
参加している。
PC 室 で の 交 流 会
プレゼンテーションパーティー
7.コメントから見えること
熊本大学に入学する学生は7割が県外から来ている。様々な学部の1年生が集まる
教養教育は、互いに知らない者同士のため、非常に静かだ。それでも留学生と交流会
をするときになると、授業とはまったく違う表情で明るく話す学生が多い。しかし留
学生が帰るとまた静かな教室に戻る。こうした日本人学生のコミュニケーション行動
は、先の私立大学の学生とは明らかに異なる。彼らの行動で気になったことを書き留
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めておく。まず自己紹介の下書きをしてくださいと言うと、何を書いていいか思いつ
かず、教員から名前、学部、出身、趣味などと指示が必要な人がいる(相手が留学生
だ か ら か 、 自 己 紹 介 が も と も と で き な い か ら か 不 明 )。 英 語 で 自 己 紹 介 を 書 い た り 、 ま
たは英語で書くんですかと聞いたりする人がいる(留学生=英語話者と思っているの
か )。 さ ら に 「 敬 語 を 使 う ん で す か 」 と 聞 い て く る 人 が い た 。 彼 ら の ま じ め な 一 面 と 、
留学生への認識不足が垣間見える。また、今学期始めての試みで、休み時間に自由に
話してもらいたいと思い、留学生のプレゼンテーションクラスのあと、同じ教室で日
本人の教養教育をすることにした。1回目の講義日のこと。授業が終わって留学生が
教 室 を 出 始 め た の だ が 、休 み 時 間 に な っ て い て 入 っ て く る は ず の 日 本 人 学 生 が 来 な い 。
見ると全員外の廊下にほぼ一列に並んで、留学生が部屋を出るまで待っていたのだ。
後 で 、 な ぜ 待 っ て い た の か 尋 ね る と 、「 中 に 留 学 生 が い る の に 、 入 る の は 失 礼 だ と 思 っ
た」という。さらに一度交流会をした後の日のこと。授業を終わって帰る留学生に、
外で並んで待っている日本人学生がいたら、挨拶をしてやってほしいと注文した。こ
ういうことは留学生の方が積極的だ。すると、あとで日本人の学生が「話したことの
ある留学生が挨拶をしてくれてうれしかった」と感想を書いた。こうした「過度の遠
慮」があっては、休み時間におしゃべりをする雰囲気はなかなかできない。以前の私
立大学ならこんなことはないだろうと思う。外国人と知り合いになり、良好な人間関
係を作るトレーニングが、特に熊本大学の日本人学生には必要なのだ。
授業期間最後のアンケートを見ると留学生と話すのは交流会が始めてという日本人
学生が多い。彼らは熊本大学にたくさんの留学生がいることに驚く、特に中国・韓国
の 学 生 が 多 い こ と ( 驚 き や 疑 問 も )、 留 学 生 の 日 本 語 が 上 手 、 逆 に 日 本 語 が で き な い 人
が い る こ と ( 驚 き や 疑 問 )、 積 極 的 に 話 す 、 優 し い 、 学 ぶ 意 欲 が 高 い 、 意 見 や 感 想 を 率
直に言う、社交性がある、愛国心が強い、日本人より日本に詳しい、留学生同士で固
まって日本人の学生と関わろうとしていない、などが出る。逆に、留学生から見た日
本 人 学 生 は 、「 考 え る の は 九 州 の 中 だ け … 世 界 を め ざ す の が 男 の ロ マ ン だ と 思 う 。 お 互
い に 交 流 し な が ら 、 視 野 を 広 め ま し ょ う 」「 積 極 的 に 話 し て ほ し か っ た 。 日 本 人 と し て
の 考 え が も っ と 聞 き た か っ た 」「 み ん な 優 し い で す 。 ず っ と 会 い た い で す 。 国 に も ど っ
て も 」な ど 。日 本 人 学 生 と 留 学 生 の 間 の 心 理 的 な 距 離 が 、ま だ か な り あ る よ う に 思 う 。
しかし、この授業が特に日本人学生に与えているものは、かなり大きい。というのは
過去に受講した学生に会うと、あの授業が一番楽しい授業だったと言ってくれること
が多いからだ。留学生と楽しく話した、知り合いになった、という経験は、若い日本
人学生の後の人生に何らかの影響を与えるに相違ない。願わくば、こうした交流学習
を、大学全体で、地域全体で、組織的にかつ自由な雰囲気で行うことができれば、と
思う。
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注
(1 )
日 本 語 研 修 生 に も チ ュ ー タ ー が つ け ら れ る よ う に な っ た の は 、国 立 大 学 が 法 人 化 し た 後 だ っ
たと記憶している。
(2 )
最 も 活 発 だ っ た 2004 年 前 期 の ホ ー ム ペ ー ジ の 写 真
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/2004F_Photos.pdf
こ の 当 時 の 活 動 は 、留 学 生 セ ン タ ー の 今 西 講 師 、岩 谷 助 手( 当 時 )の 協 力 に 負 う と こ ろ が 多 い 。
あらためて感謝の意を表する。
(3 )
KUma Ryu Online Community
の画面写真
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/KumaRyuOnlineCommunity.pdf
(4 )
掲示板ソフトの会議室
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/kaigi.gif
(5 )
KRB 熊 本 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 放 送 局 (平 成 16 年 度 、 17 年 度 )の 番 組 の 一 部
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/KRB.pdf
(6 )
Web ラ ジ オ
世界の言葉を話そう
トップ画面
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/webradio.pdf
(7 )
Content Management System の こ と 。 xoops、 Moodle も 使 っ た が 、 最 終 的 に は 国 立 情 報 学 研
究 所 の Netcommons
を 採 用 し た 。 以 下 の 写 真 参 照 。 写 真 で は 日 付 が 、 資 料 作 成 日 の 2007 年 3
月 に な っ て い る が 、 実 際 に 掲 載 し た の は 、2005 年 。最 初 の 写 真 が ト ッ プ ペ ー ジ で 、 次 の 写 真 は
ログイン後の交流情報室のトップページ。
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(8 )
小 学 校 訪 問 の 様 子 の ビ デ オ ( 平 成 16 年 に 行 っ た 熊 本 大 学 の 留 学 生 と 附 属 小 学 校 と の 交 流 会
の 様 子 )。 紹 介 し た 動 画 や 音 声 を 子 供 た ち が コ ン ピ ュ ー タ で 視 聴 し て い る 。
http://www.youtube.com/watch?v=n1pQSjQD5yQ
(9 )
国 際 交 流 祭 典 2003、 2004 の 写 真
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/saiten2003&2004.jpg
(10)
第 4 回 (2007 年 )か ら 熊 本 地 区 留 学 生 シ ン ポ ジ ウ ム の ポ ス タ ー
http://j1.ryu.kumamoto-u.ac.jp/kiroku01/Sympo2007_poster.pdf
な お 報 告 書 の 第 2 回 、 第 3 回 、 第 4 ・ 5 回 は PDF 版 が あ る 。 お 問 い 合 わ せ い た だ け れ ば お 送 り
する。印刷冊子の第4・5回は、わずかだが残部をお送りできる。
(11)
熊本学園大学
http://www.kumagaku.ac.jp/
(12) こ う い う 経 験 も し た 。 数 年 前 、日 本 語 研 修 生 と い っ し ょ に 市 役 所 へ 行 く た め バ ス に 乗 っ て い
た と き 、筆 者 の 名 前 を 呼 ん で 話 し か け て き た 人 が い た 。そ の 数 年 前 に 交 流 学 習 を 経 験 し た 熊 本
学 園 大 学 の O G だ っ た 。卒 業 し て 航 空 会 社 に 勤 務 し て い る が た ま た ま 帰 省 中 だ そ う だ 。彼 女 は 、
学 生 時 代 に 経 験 し た 留 学 生 と の 交 流 学 習 は と て も 勉 強 に な っ た し 楽 し か っ た 、と て も い い 経 験
だ っ た と 語 っ て い た 。交 流 学 習 で の 経 験 が 、ず っ と 後 ま で 日 本 人 学 生 の 記 憶 に 残 り 、な ん ら か
の影響を与えているのだと実感した。これは後の熊本大学での実践でも実感している。
(13) 「 留 学 生 と 学 ぶ 」
( 通 称:き ょ う り ゅ う サ イ ト )
(14)
http://kyo.ryu.kumamoto-u.ac.jp/htdocs/
た だ し 、 残 念 な が ら 後 期 は 日 本 人 受 講 生 が 少 な く 、 交 流 そ の も の が 停 滞 し て し ま っ た 。 Web
の書き込みも少なく継続的なものがあまりなかった。
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参考文献
梅 田 泉 (2008a)「 留 学 生 セ ン タ ー に お け る e ラ ー ニ ン グ の 取 り 組 み 」 熊 本 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 紀 要
11 号 pp.17-33
http://hdl.handle.net/2298/7629
梅 田 泉 ( 2 0 0 8 b )「 I C T を 活 用 し た 日 本 語 学 習 の た め の 交 流 活 動 」 熊 本 大 学 留 学 生 セ ン タ ー 紀 要 1 2 号
pp.25-38
http://hdl.handle.net/2298/11351
梅 田 泉 ( 2 0 1 0 )「 留 学 生 と 日 本 人 ク ラ ス の 直 接 お よ び 間 接 交 流 学 習 の 試 み 」熊 本 大 学 国 際 化 推 進 セ ン
タ ー 紀 要 1 号 pp.13-28
http://hdl.handle.net/2298/14814
梅 田 泉 ( 2 0 1 1 )「 日 本 人 ク ラ ス と 留 学 生 ク ラ ス と の W e b と 音 声 を 活 用 し た 交 流 学 習 」熊 本 大 学 国 際 化
推 進 セ ン タ ー 紀 要 2 号 pp.23-32
http://hdl.handle.net/2298/18394
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