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都市の成長戦略を支えるファイナンス環境整備の

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都市の成長戦略を支えるファイナンス環境整備の
都市の成長戦略を支えるファイナンス環境
整備のあり方について
CREFC日本支部
2014年5月15日
©2014 Commercial Real Estate Finance
1
エグゼクティブサマリー








日本の不動産金融を取り巻く現状
アベノミクスによる資金供給量の拡大に伴う不動産ファイナンス環境の好転
低調達コストと資金力による国内金融機関中心の不動産ファインナンス市場
不動産ファイナンス資金の偏在(大手デベ案件、REIT適格物件>地方、小規模、築古、著名でないプレーヤー案件)
REIT及び法人向けの貸付は増加なるも私募ファンド向け残高は減少、貸付期間の長期化傾向
外資系投資家の投資意欲は高まるが、現状は国内不動産会社及びREITが中心の市場
国内機関投資家・国内年金基金の不動産投資への関心は高まっている(特に私募REIT)
公的セクター及びプライベートセクターともにストック再生が緊急の課題
海外(特にアジア)に対する投資ニーズの拡大
投資家の多様化、ストック再生の促進、アジア投資のファイナンスニーズ充足への取組みが必要




海外資金と国内長期資金のさらなる呼び込み
– 海外資金: 年金基金、機関投資家、ソブリン・ウェルスファンド
– 国内長期資金: 年金基金、個人資金
短期不動産金融市場(CMBS市場等)の市場機能の再活性化
ストック再生に伴う不動産ファイナンスへのアクセスの容易性を改善
アジア投資に関し東京を起点としたファイナンス供給体制を構築
短期的に取組み可能な課題



中長期的課題
不動産デット商品の流動性改善(情報開示基準の標準化・国際化、
規制の明確化・標準化、セカンダリー市場構築、デフォルト対応の
標準化等)
開発が前提となる物件の融資適格性の緩和、その他税制・法令
上の制度改正
国内年金に対する啓蒙活動、人材育成



PRE、インフラの投融資機会の増加、及びPRE、インフラファイナ
ンスのモデルケース構築
PRE、インフラ関連のファイナンス手法の積極的導入
東京をアジア不動産ファイナンスの中心とするための枠組み、イン
フラ等の整備、及び同業務を担う人材育成
©2014 Commercial Real Estate Finance
2
エグゼクティブサマリー
~都市再生プロジェクトを取り巻く資金供給の担い手~
<短期>
<長期>
都市再開発
アセット
Takeout
インフラ開発
都市不動産ストック
社会資本
インフラ施設
活性化を要する資金源
<国内>
デット
<国内>
<外資>
銀行
銀行
外資系レンダー
デベロッパー
デベロッパー
生命保険
J-REIT
私募REIT
不動産私募ファンド
外資系ファンド
SWF
エクイ
ティ
<外資>
外資系
エクイティ投資家
公的支援
潜在的
デット
潜在的
エクイ
ティ
証券化
シンジケーション
機関投資家
地方銀行
オルタナティブ
投資
国内・海外
年金基金
公的支援
外資系レンダー
国内年金(債券)
モーゲージREIT
海外年金
SWF
外国機関投資家
市場参入機会の拡大
国内年金(オルタナティブ)
個人資金
海外年金
オープンエンドファンド
©2014 Commercial Real Estate Council
3
不動産市場における資金の種類
©2014 Commercial Real Estate Finance
4
不動産市場における資金の種類‐デット ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
デット・プレーヤー
プレーヤー
邦 銀
(主にメガバンク、
信託銀行)
資金の性質
問題点
● 短期資金中心
● バランスシートによる貸
出(預金の運用)
● 比較的低リターンでも可
(但し一定のロット必要)
● 安全性重視
● リスク許容度・ALM上の
制約から短期貸出が中
心
● 不動産関連ローンは増
加も、BIS規制強化により
CMBS投資のハードル上
昇
● リスク許容度が低い
● 不動産に係る業法上の
制約
● 貸出(投資)対象物件に
限界
● アセットファイナンスの場
合でもスポンサーやア
セットマネジャーの信用
力を重視する傾向
期待される役割
提言
● 開発リスクヘッジ手段の提供
● 都市再開発・インフラ開
発への短期資金供給
 公的セクターによる開発リスク保証
(開発物件引取保証、賃借保証)
● 不動産ストック・インフラ
施設への大規模・安定
● 不動産金融商品市場のインフラ整備・安
定化・流動性確保
的・より広範な物件への
長期資金供給(投融資)
 CMBS投資に関する規制標準化
● 市況サイクルに拠らない、
 不動産を証券化対象(金融商品とし
不動産セクターへの安
て販売)する上での、適格性基準(グ
定した資金供給
レード付け等)を創設
 CMBSの流動性確保(安定したプライマ
● 証券化・シンジケート
ローンを通じて、様々な
リー・セカンダリー市場構築)の為の施策
立案
リスクプロファイルの資
 CMBS等を日銀適格担保に追加
金を不動産市場に供給
(アレンジャーとしての役
● 都市ストック再生に資する資金供与(特
割期待)
に築古、権利関係の調整が必要な物件
等)に対する、公的セクターによる支援
● ローン債権の回収過程におけるレン
ダーとしての権利行使につき各種業法
(特に宅建業法等)との関係での制約を
緩和
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5
不動産市場における資金の種類‐デット ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
デット・プレーヤー
プレーヤー
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 短期資金
● バランスシートによる貸
出(預金の運用)
● 比較的低リターンでも可
● 安全性重視
● リスク許容度・ALM上の
制約から短期貸出が中
心
● リスク許容度が低い
● 運用・期中管理体制に限
界
● 不動産に係る業法上の
制約
● 貸出(投資)対象物件に
限界
● 地方都市への資金供給
● 不動産金融商品市場へ
の参加拡大
● (メガバンク等が対応困
難な)小規模ピースへの
投資
● 地域経済活性化への貢献を啓蒙
● 不動産金融商品の啓蒙
● 地方銀行の人材育成・運用力・期中管
理体制の強化
● 不動産金融商品市場の安定化
 CMBS投資に関する規制標準化
 投資体力・投資金額規模に合わせた
リスク検証方法の標準化
 CMBS等を日銀適格担保に追加
 CMBSの流動性確保(安定したプライマ
リー・セカンダリー市場構築)の為の施策
立案
● 短期資金
● エグジット前提の貸出
● 証券化などのエグジット
を通じて、様々なリスク
プロファイルの資金を不
動産市場に供給
● 高リターン志向
● 投資家の大半が短期の
投資家であり、短期貸出
が中心
● (一時に比べ回復の兆し
もあるものの、)依然プレ
イヤー数が限定的
● 規制を受けて、ウェアハ
ウジング業務から撤退
● 証券化・シンジケート
ローンを通じて、様々な
リスクプロファイルの資
金を不動産市場に供給
● CMBS市場・シンジケートローン市場の
活性化(テコ入れ)
 CMBS等を日銀適格担保に追加
 CMBSの流動性確保(安定したプライマ
リー・セカンダリー市場構築)の為の施策
立案
● 情報開示基準の標準化・国際化
地方銀行
外資系レンダー
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6
不動産市場における資金の種類‐デット ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
デット・プレーヤー
プレーヤー
生命保険
国内年金
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 長期資金
● ALM上の要請として
の投資(固定金利)
● 生命保険予定利率
以上のリターン
● 安全性重視
● 不動産金融商品はほ
● 都市再開発・インフ
ぼ全て短期商品であり、
ラ開発への長期資
ALM上の制約から投
金供給
資需要が低い
(米国に近いプレゼ
ンスを期待)
● リスク許容度が低い
(原則、AAA)
● 不動産ストック・イン
フラ施設への安定
的な長期・超長期資
金供給(投融資)
● 長期固定資金の受け皿としての新たな金融商品を
導入
 アセットファイナンス型レベニュー債
 アセットファイナンス型プロジェクトファイナンス
 長期CMBS
 インフラファンド
● 不動産デット商品の流動性改善
 日銀適格担保
 安定したプライマリー・セカンダリー市場構築
 情報開示基準、規制の明確化・標準化
● 長期資金
● ゲートキーパーとし
ての信託銀行や投
資顧問会社に運用
を委託するケースが
大半
● デット性商品に投資
するのは債券投資
勘定、エクイティ性商
品に投資するのはオ
ルタナティブ投資勘
定
● 不動産はオルタナティ
ブ運用の対象として想
定されており、不動産
デット商品(CMBS、
ローン)やエクイティ商
品という投資対象の概
念が定着していない
● インデックスの不在
● ゲートキーパー(信託
銀行、投資顧問会社)
の不慣れ
● 年金積立金管理運用
独法(GPIF)、企業年
金連合会(PFA)の不
動産関連投資比率の
低さ
● 債券運用としての不動産デット商品、オルタナティブ
運用としての不動産エクイティ商品に関する啓蒙
● 年金運用担当者(特に信託銀行、投資顧問会社)へ
の啓蒙、人材育成
● インデックスの開発
● 年金積立金管理運用独法(GPIF)、企業年金連合
会(PFA)に対する啓蒙
● 不動産デット商品の流動性改善
 日銀適格担保
 安定したプライマリー・セカンダリー市場構築
 情報開示基準、規制の明確化・標準化
● 年金資金の運用の受け皿としての新たな金融商品
を導入
 アセットファイナンス型レベニュー債
 アセットファイナンス型プロジェクトファイナンス
 長期CMBS
 インフラファンド
● 債券投資の一環と
しての不動産デット
商品への長期投資
● オルタナティブ投資
の一環としての不動
産エクイティ商品へ
の投資
● 年金積立金管理運
用独法(GPIF)、企
業年金連合会
(PFA)等の不動産・
インフラセクターに
対する安定的な資
金供与拡大
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不動産市場における資金の種類‐デット ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
デット・プレーヤー
プレーヤー
海外年金
ソブリン・ウェル
ス・ファンド
(SWF)
個人資金
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 長期資金
● ミドルリスク・ミドルリ
ターンを志向
● 分散投資(アセットアロ
ケーション)の一環
● 流動性重視
● 金融商品が存在しない
● 英語
● 不動産デット・エクイ
ティ市場への長期資金
供給
● 都市再開発・インフラ開
発への長期資金供給
● 不動産ストック・インフ
ラ施設への長期資金供
給(投融資)
● 長期資金の受け皿としての新たな金融
商品を導入
 アセットファイナンス型レベニュー債
 アセットファイナンス型プロジェクト
ファイナンス
 長期CMBS
● 不動産デット商品の流動性確保(安定
したプライマリー・セカンダリー市場構築)の為
の施策立案
● 情報開示基準の標準化・国際化
● 中長期資金
● デットからエクイティま
で対応可能、リスク許
容度は高い
● 高リターン志向
● 英語
● 不動産デット・エクイ
ティ市場への中長期資
金供給
● 都市再開発・インフラ開
発への長期資金供給
● 不動産ストック・インフ
ラ施設への長期資金供
給(投融資)
● 中長期資金の受け皿としての新たな金
融商品を導入
 アセットファイナンス型レベニュー債
 アセットファイナンス型プロジェクト
ファイナンス
 長期CMBS
● 不動産デット商品の流動性確保(安定
したプライマリー・セカンダリー市場構築)の為
の施策立案
● 情報開示基準の標準化・国際化
● 中長期資金
● ミドルリスク・ミドルリ
ターン志向
● J-REITの投資口以外、
個人が投資できる不動
産金融商品が不在
● 不動産デット市場への
中長期資金供給
● 個人資金の受け皿としてモーゲージ
REIT解禁、不動産デット商品への流動
性供給
● 金融商品に係る損益通算範囲及び損
失繰越期間の拡大
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不動産市場における資金の種類‐デット ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
デット・プレーヤー
プレーヤー
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
海外機関投資家
(日本未進出)
● 短期 ~ 中期資金
● ミドルリスク・ミドルリ
ターンを志向
● 分散投資(アセットアロ
ケーション)の一環
● 流動性重視
● 証券化市場、シンジ
ケートローン市場が十
分回復しておらず、不
動産デット性商品(ロー
ン、社債)の流動性が
低い
● 英語
● 円のファンディング問題
● 不動産デット・エクイ
ティ市場へのリスクマ
ネー供給
● 都市再開発・インフラ開
発への長期資金供給
● 不動産ストック・インフ
ラ施設への長期資金供
給(投融資)
● 中長期資金の受け皿としての新たな金
融商品を導入
 アセットファイナンス型レベニュー債
 アセットファイナンス型プロジェクト
ファイナンス
 長期CMBS
● 不動産デット商品の流動性確保(安定
したプライマリー・セカンダリー市場構築)の為
の施策立案
● 情報開示基準の標準化・国際化
● 主に短期資金
● リファイナンスリスク
● デューデリジェンス負担
● 不動産デット商品への
投資意欲復活
● 不動産デット商品の流動性確保(安定
したプライマリー・セカンダリー市場構築)の為
の施策立案
● 情報開示基準の標準化・国際化
海外機関投資家
(既存投資家)
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不動産市場における資金の種類‐エクイティ ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
エクイティ・プレーヤー
プレーヤー
デベロッパー
国内不動産私募
ファンド
外資不動産私募
ファンド
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 自らの開発案件にス
ポンサーとして出資
● 目的は、
① 転売益
② 自らがスポン
サーを務めるファ
ンド(J-REIT等)
への物件供給
③ 自社長期保有
● ノンリコース型開発ローンの調
達難の為、コーポレートリスク
での資金調達が必要
 改正不動産特定共同事業
法により、改善途上
● 資材費・人件費等の建設コスト
上昇により事業採算見通しが
不透明
● 旧耐震物件の場合、十分な
ファイナンスが調達しにくい
 旧耐震物件に対する金融
機関の審査基準が画一的
● デベロッパーとしての
都市再開発、都市とし
ての競争力向上
● 都市の耐震性向上
● 都心容積率の緩和により、再開
発のリスク・リターン改善
● 公的セクターによる開発リスク
ヘッジ手段の提供
 公的セクターによる開発リス
ク保証(開発物件引取保証、
賃借保証)
● アセットファイナンスを利用した
再開発の環境整備
● ノンリコース型開発ローン及び
旧耐震・既存不適格の物件へ
の融資に対する対応の弾力化
● 大半は短期資金
● 私募J-REITは長期
資金を供給
● 主に収益物件に対
する投資
● 過熱した不動産投資需要
● 安易な不動産投資スタイルの
再出現
● 不動産エクイティ市場
への流動性供給
● 都市再開発・インフラ
開発への流動性供給
● 投資家の啓蒙
● 透明性の高いCMBS市場・シン
ジケートローン市場の活性化を
通じて、不動産投資に係るリス
ク・リターンの情報提供
● 短期資金
● 主に収益物件に対
する投資
● 分散投資(アセットア
ロケーション)の一環
● 過熱した不動産投資需要
● 一任型ファンドの復活によるモ
ラルハザードの懸念
● 英語
● 不動産エクイティ市場
への流動性供給
● 投資家の啓蒙
● 透明性の高いCMBS市場・シン
ジケートローン市場の活性化を
通じて、不動産投資に係るリス
ク・リターンの情報提供
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10
不動産市場における資金の種類‐エクイティ ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
エクイティ・プレーヤー
プレーヤー
J-REIT
国内年金
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 長期資金
● 機関投資家から個
人まで、幅広く資金
調達
● ミドルリスク・ミドルリ
ターン志向
● 不動産市場の環境に応じてリ
ファイナンスリスクが発生
● 物件獲得競争が過熱
● スポンサーと運用会社間の利
益相反(“便利な財布”)懸念
● 不動産市場への継続的
な流動性供給
● ミドルリスク・ミドルリ
ターン志向の投資資金
の受け皿
● 不動産市場の情報開示
促進
● 上場基準(全資産に対する不動産
の割合を75%以上とする)の緩和
により、J-REITの不動産デット商
品への投資を促進
● モーゲージREITの導入
● 借入先制限(適格機関投資家か
らのみ可能)の撤廃
● 第三国を経由した海外物件取得
の解禁(例:シンガポールSPC経
由での東南アジア物件への投資)
● 運用会社の社外取締役導入によ
るさらなる利益相反対策
● 長期資金
● ゲートキーパーとし
ての信託銀行や投
資顧問会社に運用
を委託するケースが
大半
● 不動産の現物投資
が一般的
● オルタナティブ運用の対象とし
て主に想定されているのは不
動産現物投資及びファンド等へ
の投資のみ
● 不動産デット商品やエクイティ
商品という概念がない
● インデックスの不在
● ゲートキーパー(信託銀行、投
資顧問会社)の知識・経験不足
● 年金積立金管理運用独法
(GPIF)、企業年金連合会
(PFA)の投資対象は不動産現
物のみ
● 債券投資の一環として
の不動産デット商品へ
の長期投資、オルタナ
ティブ投資の一環として
の不動産エクイティ商
品への投資
● 年金積立金管理運用独
法(GPIF)、企業年金連
合会(PFA)のイニシア
チブ
● 資金運用理論の再教育
● 債券運用としての不動産デット商
品、オルタナティブ運用としての不
動産エクイティ商品に関する啓蒙
● 年金運用担当者(特に信託銀行、
投資顧問会社)への啓蒙、人材育
成
● インデックスの開発
● 年金積立金管理運用独法
(GPIF)、企業年金連合会(PFA)
に対する啓蒙
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不動産市場における資金の種類‐エクイティ ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
エクイティ・プレーヤー
プレーヤー
海外年金
欧米オープン・エ
ンド・ファンド
生命保険
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 長期資金
● ミドルリスク・ミドル
リターンを志向
● 分散投資(アセット
アロケーション)の
一環
● 長期不動産エクイティ商品が市
場に不足
● 英語
● 不動産市場への長期資
金供給
● 都市再開発・インフラ開
発への長期資金供給
● 不動産ストック・インフラ
施設への長期資金供給
(投融資)
● 長期資金の受け皿としての新たな
金融商品を導入(PFIは欧州型)
 アセットファイナンス型レベ
ニュー債
 アセットファイナンス型プロジェ
クトファイナンス
 長期CMBS
 インフラファンド
● 長期資金
● ミドルリスク・ミドル
リターンを志向
● 分散投資(アセット
アロケーション)の
一環
● 直接投資
● オープンエンドファンドの投資
基準に合致する案件が少ない
● 英語
● 不動産市場への長期資
金供給
● 都市再開発・インフラ開
発への長期資金供給
● 不動産ストック・インフラ
施設への長期資金供給
(投融資)
● 欧米より資金導入(FoF型)するた
めの実務上の投資クライテリアの
すり合わせ
 欧米ファンドマネジャーの求め
る情報開示
● 長期資金の受け皿としての新たな
不動産金融商品を導入
 インフラ・ファイナンスにおける
エクイティ商品導入
● 長期資金
● 生命保険予定利率
以上のリターン
● 不動産の現物投資
が一般的
● 安全性重視
● 不動産エクイティ投資は稀
● 都市再開発・インフラ開
発への長期エクイティ
性資金供給
● 不動産ストック・インフラ
施設への長期エクイ
ティ性資金供給
● 長期エクイティ性資金の受け皿とし
ての新たな不動産エクイティ性商
品を導入
 インフラ・ファイナンスにおける
エクイティ商品導入
©2014 Commercial Real Estate Finance
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不動産市場における資金の種類‐エクイティ ~各種資金の性質と資金導入上のボトルネック~
エクイティ・プレーヤー
プレーヤー
ソブリン・ウェル
ス・ファンド
(SWF)
海外不動産投資
信託
個人富裕層
資金の性質
問題点
期待される役割
提言
● 中長期資金
● ミドル~ハイリスク・
ハイリターン志向
● 分散投資の一環
● 英語
● 不動産エクイティ市場
への中長期資金供給
● 都市再開発・インフラ開
発への長期資金供給
● 不動産ストック・インフラ
施設への長期資金供給
(投融資)
● 長期エクイティ性資金の受け皿とし
ての新たな不動産エクイティ性商
品を導入
 インフラ・ファイナンスにおける
エクイティ商品導入
● 長期資金
● ミドルリスク・ミドル
リターン志向
● 分散投資の一環
● 国内でファイナンス調達が難し
く、日本への投資が困難
 国内金融機関の融資・審査
基準が過度に厳格且つ画
一的
● 英語
● 不動産市場への新規の
流動性供給
● 国内金融機関への啓蒙
● 金融行政の弾力化
● 短期資金~長期資
金まで幅広い
● 短期投資の場合、
投資家の目的は転
売益
● 長期投資の場合、
投資家の目的は主
に資産形成・相続
対策
● 個人投資家がリスク・リターン
を判断するための情報が不足
● 悪質な不動産業者・ファンドマ
ネジャーの存在
● 不動産市場への流動性
供給
● 個人投資家への啓蒙活動
● 悪質な不動産業者・ファンドマネ
ジャーへの監督強化
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13
不動産ファイナンス市場の抱える課題
~早急な解決が求められる課題~
©2014 Commercial Real Estate Finance
14
低迷する日本のCMBS市場
~米国のCMBS市場は復活~
出所: 不動産ファイナンス協議会(CREFC)
 2010年以降、本邦でのCMBS発行は大幅に減少し、2014年に入っても回復
の兆しは見えていない。
 一方、サブプライム問題の震源地の米国では、2009年にはCMBSの新規発
行はほぼ停止状態にあったが、2011年以降徐々に回復し、2014年も2013年
を上回る水準の発行が見込まれており、CMBS市場は順調に回復している。
©2014 Commercial Real Estate Finance
15
低迷する日本のCMBS市場
~日米のCMBS市場の相違はどこにあるか~
日本のCMBS 市場の低迷要因

昨今の低金利環境下では、関係者のコーポレートリスクに応じたかたちでバランスシート
レンダーが大幅に低い金利水準(リーマンショック前の水準)のローンを提供している場合
が多いことから、CMBS発行に要求されるスプレッド水準を確保したローンのオリジネー
ションが困難となっている。

セカンダリーマーケットが十分発達しておらず、金融商品としての流動性が低い。

プロラタ償還や、特定のローンと特定のトランシェを紐づけるなどの複雑なウォーター
フォールの案件が組成されてきたことで案件分析が複雑化した一方で、標準化された仕
組みや契約書の導入が進んでいない。

限られた投資家層および限られたスポンサーによって、マーケットが形成されてきたことか
ら、マーケット参加者の拡大が不十分であり、特定のマーケット参加者層の動向に影響を
受けやすい。
 日本の主要なCMBS投資家→ 銀行
 米国の主要なCMBS投資家→ 銀行、保険会社、年金、ヘッジファンド

結果として、リーマンショック前にCMBSが重要な一翼を担っていた、地方、比較的小規模
や築古物件や比較的小さなAM、不動産会社等の案件までには、十分な資金が提供され
ていない。
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16
低迷する日本のCMBS市場
~日米のCMBS市場の相違はどこにあるか~
米国のCMBS 市場の復活要因
 不動産価格の上昇による、不動産市場での取引の活発化
 TALF(Term Asset-Backed Securities Loan Facility)の導入で、証券化商品の投資家に
有利なファイナンスを提供することによる、証券化市場復活への公的なサポート(証券化商
品の金融インフラとしての明確な位置づけ)
 CMBS 2.0における、従来と比較して保守的な案件の組成(保守的な物件査定、低レバ
レッジのローン、約定弁済付のローン、オペレーティングアドバイザーの導入によるガバナ
ンスの強化、ロックボックスの導入によるキャッシュマネジメント厳格化など)
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日本の不動産デットファイナンス市場
~減少する私募不動産ファンド向けノンリコースローン~
貸出先別貸出額の推移
10
70
J-REIT向け
貸出し
60
8
50
7
6
40
5
30
4
3
20
不動産向貸出(兆円)
J-REIT向け貸出/SPC向け貸出(兆円)
9
SPC向け
貸出し
不動産向
貸出
(右軸)
2
 アベノミクス導入により
マネタリーベースは増
大しているが、不動産
業向け貸出残高が顕著
に増加している状況で
はない。
 リーマンショック以降、
私募ファンド向けノンリ
コースローンの減少が
顕著である。
10
1
2013/3
2012/3
2011/3
2010/3
2009/3
2008/3
2007/3
2006/3
2005/3
2004/3
2003/3
2002/3
0
2001/3
0
 一方で、J-REIT向け貸
出しがファンド数の増加
もあり増加傾向にある。
出所: 不動産向貸出・SPC向け貸出:日本銀行「貸出先別貸出金」
J-REIT向け貸出し:(株)クレジット・プライシング・コーポレーション
©2014 Commercial Real Estate Finance
18
日本の不動産デットファイナンス市場
~国内金融機関中心の市場~
J-REIT貸付残高 (2013年末時点)
5.58兆円 主体別割合
2.4%
0.3%
10.3%
国内銀行
1.8%
国内信託銀行
3.4%
国内保険
国内その他
国内信託銀行,
23.6%
 レンダーは、国内金融機関(国
内銀行および国内信託銀行)
への偏りが顕著でJ-REIT向け
貸付残高の約80%を占めてい
る。
国内銀行, 57.8%
外資銀行・証券
外資その他
投資法人債
出所: (株)クレジット・プライシング・コーポレーション推計値。
©2014 Commercial Real Estate Finance
 国内保険会社及び外資系資金
(外資銀行・証券と外資その他
の合計)による貸付は、それぞ
れ3.4%及び2.7%とわずかと
なっている。
 上記の傾向は不動産業向け貸
付全体でも同様と思われ、最
近の不動産デットファイナンス
市場は国内金融機関(国内保
険会社は除く)を中心に、優良
案件に対する過当競争がなさ
れる市場となっている。
19
日本の不動産デットファイナンス市場
~長期貸付の拡大傾向~
8
7
7
6
6
3年超5年以下
1年超3年以下
1年以下
加重平均年限
(右軸)
201312
0
201212
0
201112
1
201012
1
200912
2
200812
2
200712
3
200612
3
200512
4
200412
4
200312
5
200212
5
5年超
加重平均年限(年)
8
200112
与信額(兆円)
J-REIT向け貸付期間
出所 (株)クレジット・プライシング・コーポレーション。一部推定値。
©2014 Commercial Real Estate Finance
 J-REIT向け貸付は、
短期資金に依存す
る状況が2010年ご
ろから改善傾向に
あり、安定的な資
金供給が整いつつ
ある。
 私募REIT向け貸付
は、J-REIT向けと
同様に貸付期間の
長期化及び分散が
図られる傾向にあ
る。
 私募不動産ファンド
の投資期間は3~5
年であり、同ファン
ド向けの貸付は短
期貸が中心となる。
20
国内年金基金・国内機関投資家の動向
~投資家の不動産投資姿勢は積極的~
 Aクラスオフィスビルにおけ
る期待利回りは直近2013
年 10 月 で 東 京 4.2%( 前 回
値 4.3% ) 、 名 古 屋 6.2%
(6.3%)、大阪6.0%(6.0%)
と、低下傾向で推移してい
る。
不動産投資家(1)の期待利回りの推移(Aクラスオフィスビル)
半期(4月、10月)
7.5
6.5
5.5
4.5
3.5
00/04
01/04
02/04
03/04
04/04
05/04
06/04
07/04
08/04
09/04
10/04
11/04
 不動産投資家による今後1
東京(丸の内/大手町)
名古屋(名駅周辺)
大阪(御堂筋沿い)
年間の不動産投資に関す
出所 日本不動産研究所 「不動産投資家調査」
る考え方は「新規投資を積
極的に行う」が前回(88%)
を上回る91%となり、依然 不動産投資家(1)の今後1年間の不動産投資に対する考え方
エクイティ投資家(2)の投資意欲
として高水準となっている。 半期(4月、10月)
年次、半期(1月、7月)
100%
100
 エクイティ投資家の投資意
欲は、東日本大震災や原
発問題等の影響で一時的
に減退したが、2014年1月
時点で「高まってきている」
の回答が過去最高水準
81%となり、投資家の不動
産投資姿勢は積極的であ
る。
80
80%
60
60%
40
40%
20
20%
0
05/10
0%
07/10
09/10
新規投資を積極的に行う
11/10
13/10
当面新規投資を控える
45
07/12
高まってきている
54
54
10/1
変化はない
25 19
64
60
44
20 26
15 20
2
09/1
5
57
61
31
10
40
45
46
13
20
62
83
59
2
13/04
11/1
75 81
38
12/1
13/1
14/1
低くなってきている
出所 株式会社三井住友トラスト基礎研究所「不動産私募ファンドに関する実態調査2014年1月」
出所 日本不動産研究所 「不動産投資家調査」
注1. アセットマネジャー、デベロッパー、生命保険会社、レンダーなど
34
41
24
1
7
16
12/04
注2. 都市銀行、地方銀行、企業年金、海外機関投資家、海外年金基金、政府系ファンドなど
©2014 Commercial Real Estate Finance
21
国内年金基金・国内機関投資家の動向
~年金基金の不動産への投資は増加傾向~
世界主要国の年金基金における資産配分(2013年)
 日本の年金基金のポート
フォリオは、諸外国と比
較して、不動産を含む
「その他資産」への配分
が大幅に少ない状況と
なっている。
100%
7%
0%
23%
80%
51%
0%
8%
2%
3%
13%
29%
33%
31%
現金等 4.1% 生保一般勘定
10.1%
50%
オルタナティブ
(除く不動産)
8.2%
60%
33%
40%
54%
57%
48%
0%
20%
25%
21%
米国
豪州
加
6%
日本
スイス
その他資産
株式
14%
15%
英国
オランダ
債権
国内債権
31.8%
現金
出所 ARES「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」(2013年9月)
出所 Towers Watson「Global Pension Assets Study 2014」
 しかしながら、近年は、年
金基金のニーズにあった
不動産投資商品の登場
や、資本市場との相関性
の低い投資商品への
ニーズを背景に、不動産
投資が増加傾向になって
いる。
日本の年金基金の資産配分状況(不動産)
日本の年金基金資産配分推移
100%
2%
5%
外国株式
16.7%
外国債券
9.6%
40%
28%
国内株式
18.2%
不動産 1.3%
50%
35%
20%
 その要因の一つとして、
不動産投資比率の低さ
が挙げられる。
3%
日本の年金基金の資産配分状況(2013年)
3%
3.0%
2.4%
80%
2.5%
2.0%
51%
59%
60%
1.7%
2.0%
71%
1.4%
40%
40%
32%
20%
0%
1.3%
1.2% 1.1%
0.5%
0.5%
2%
7%
6%
2003
2008
2013
その他資産
1.0%
0.4%
22%
1.3%
1.2%
1.5%
株式
債権
0.0%
現金
出所 Towers Watson「Global Pension Assets Study 2014」
©2014 Commercial Real Estate Finance
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
出所 ARES「機関投資家の不動産投資に関するアンケート調査」(2013年9月)
22
国内年金基金・国内機関投資家の動向
~私募REITへの関心の高まり~
具体的なオルタナティブ対象(1)
(回答:年金基金=46、機関投資家=14)
ヘッジファンド
41
不動産
16
プライベート・
エクイティ
11
14
インフラファンド
8
11
その他
 現在、日本の年金基金の約85%の投資家が、オルタネティブ商品(2)に
投資実績があり、その内「ヘッジファンド」への投資実績が最多、「不動
産」はその半数以下に留まっている。
9
 今後投資を開始あるいは増加させたい不動産商品としては「国内不動
産私募ファンド(オープンエンド型)」=私募REITが最多となっている。
2
16
2
注1.「現在、オルタナティブ商品の投資残高あり」と回答した投資家の投資対象
注2. ヘッジファンド、不動産、プライベート・エクイティ、インフラファンド等の商品
0
10
20
年金基金
30
40
50
60
機関投資家
出所 株式会社三井住友トラスト基礎研究所「不動産投資に関する投資家アンケート調査2013年」
今後、投資を開始あるいは増加させたい不動産商品
国内不動産私募ファンド(オープンエンド型)
J-REIT
特にない
国内不動産私募ファンド(クローズドエンド型)
国内不動産デット
海外不動産デット
海外不動産私募ファンド(オープンエンド型)
海外不動産私募ファンド(クローズドエンド型)
ファンドオブファンズ
実物不動産
海外REIT
その他
(回答:年金基金=22、機関投資家=14)
9
4
2
9
7
3
2
2
2
1
1
3
4
3
1
1
1
2
1
1
0
2
4
年金基金
6
8
機関投資家
10
12
14
出所 株式会社三井住友トラスト基礎研究所「不動産投資に関する投資家アンケート調査2013年」
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23
国内年金基金・国内機関投資家の動向
~私募REITへの関心の高まり~
 私募REITへの投資の検討状況では、「既に投資」「投資を決定」「興味がある」「将来的に投資の
可能性有り」の比率が年金基金は31%、機関投資家は52%となっている。
オルタナティブ商品への投資実績有無
(回答=52)
オープンエンド型の私募ファンドへの投資に関する検討状況
【機関投資家】(回答=22)
【年金基金】(回答=61)
投資実績なし
15%
6%
4%
5% 10%
13%
26%
13%
投資実績あり
85%
8%
48%
10%
4%
31%
13%
9%
出所 株式会社三井住友トラスト基礎研究所「不動産投資に関する投資家アンケート調査2013年」
既に投資している
投資を行うことを決定し、その準備を行っている
興味はある
将来的に投資を行う可能性がある
検討した結果、投資しないことを決定した
名称を聞いたことがあるが、何も検討していない
名称を聞いたことがなく、何も検討していない
その他
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比較的短期間に取り組み可能な課題
~制度上の問題等~
1. CMBSを中心とした、不動産デット商品のセカンダリー市場活性化のための開示
情報標準化
 不動産ファイナンスへの資金の出し手(含むCMBS投資家)は、従来より銀行に集中しており、この状況
は、ファイナンス期間の設定やその他想定される行動が似通ったものとなってしまうことから、潜在的な不
安定さを常に抱えていると言える。
 ALM上の観点から、銀行によるファイナンス(あるいはCMBS投資)の期間は、必然的に短中期ゾーンに
集中することとなり、タイミング次第では、当該商品が深刻な状況に陥いる確率が高くなる。例えば不動産
価格がピークの時に3年のローンをオリジネーションした場合、ローン満期時点では、市場が底を打ってい
ない可能性が高く、価格下落局面でのワークアウトを余儀なくされる。
 不動産ファイナンス市場への参加者の多様化を図り、より安定した市場を達成するためには、これまで以
上に健全で厚みのあるセカンダリー市場の育成が必須であり、そのためには、当初及び期中における参
加者への開示情報の標準化、そして開示された情報等を活用して整備されるベンチマーク的な指標と
いったインフラの整備が必要となる。
 開示情報のフォーマットとしてはリーマン危機後に策定されたSIRPがあるが、この内容では不十分として
いる投資家もいることから、広く国内外の投資家の要望を聞き入れながら、監督官庁との協議を経て金融
行政のニーズをも充足した開示情報の標準化を実現する必要がある。
 厚みのあるセカンダリー市場が存在すれば、不動産ファイナンス商品(含むCMBS)を、必ずしも持ちきり
前提で投資する必要がなくなり、商品自体は長期のものであっても、(セカンダリー市場での売却可能性
を視野に入れた上で)購入可とする投資家層が拡大することにも期待できる。
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25
比較的短期間に取り組み可能な課題
~制度上の問題等~
2. CMBSの裏付ローンにデフォルト事由が発生した場合の対応についての再考
 リーマン危機後に最も多く見られたのは、「ローンの最終弁済期日に全額弁済できずにデフォルトに陥り、
その後、物件の任意売却により、元本を全額あるいは一部回収した」といったケースであったが、デフォル
ト事由及びその後の手続きともに、上記以外にも様々なケースが確認されている。
 また、個々には想定外の事態が発生したこともあったものの、総じて回収活動は各CMBSの関連契約書
に定められた手続きに従って、粛々と進められた印象。
 これら過去の事例を踏まえて、あらゆる事態に対応すべく適切な意思決定及び回収プロセスを事前に手
当てしておくというのは、実際の事例が様々であったことから非現実的であるため、望ましい商品設計に
関するガイドラインを提示し、CMBS組成の際に関係者が参照可能とすることには意義があるものと思わ
れる。
 CMBSの商品設計にあたり、回収の最大化を達成するために、どのプレーヤー(投資家/サービサー/信託
銀行)がどこまでの裁量権をもって回収行為を行なうべきか、そして意思決定の透明性やスピード感をど
のようにして確保していくのか、そしてそのために関係者が合意できる報酬(費用)体系とはどのようなも
のか、を商品の個別事情を考慮し契約書で対応を明記することが求められる。
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26
比較的短期間に取り組み可能な課題
~制度上の問題等~
3. 投資法人(REIT)を利用した不動産投資の活性化策について

米国におけるアップリート(Umbrella Partnership REIT)制度を日本においても導入し、マーケットへの
物件供給量を今以上に増やし、かつ優良な不動産物件をREITに拠出しやすくするために譲渡所得に対
する課税を一定期間繰り延べることを認めるべきである。

米国におけるモーゲージREITのように、投資法人の裏付資産が、不動産担保融資や不動産担保証券
などの長期デット等、不動産又は不動産関連資産に該当しない場合においても、投資法人の発行する
投資口について上場制度を導入すべきである。

また、JREITの運用形態(投資法人)を参考とした、上場インフラファンドの創設に関する議論が進めら
れているが、このように不動産投資商品のラインナップが増えることで、個人投資家によるインフラ投資
も、より身近なものになると考えられる。
4. CMBSの日銀適格担保化について

現行の日本銀行適格担保取扱基本要領において、適格担保として「資産担保債券」が認められている
が、国内で発行されてきたCMBSは“信託受益権”方式のものが多く、CMBSは適格担保として位置付
けられていない。不動産市場には、一定の流動性が復活してはいるものの、適格担保として「資産担保
証券または資産担保ローン」という定義語を追加し、CMBSのみならず、不動産デット性商品を幅広く適
格担保として位置付けることで、市場により一層の厚みを持たせることができる。

現行の日本銀行適格担保取扱基本要領において、適格担保の格付要件として「適格格付機関からAAA
格相当の格付」が求められているが、欧州中央銀行(ECB)同様、格付要件を「A-格」に緩和するべきで
ある。
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27
比較的短期間に取り組み可能な課題
~制度上の問題等~
5. 都心部容積率の緩和について

都心部の再開発を促進するにあたっての懸念事項として、最近では建築コストの増加やそもそも論とし
て適当な開発素地の不足等があげられる。これらの解決策の一つとして考えられるのは、エクイティ投
資家(デベロッパー等)及びレンダーのリスク許容度の改善に資する、投資リターンの絶対水準の引き上
げであり、具体的には容積率の緩和による再開発メリットの拡大がある。
6. 地域金融機関を担い手とする、地方都市の不動産市場テコ入れについて

地方都市の不動産市場の流動性は大都市圏との比較では引き続き低下したままである。地域金融機
関の多くはリーマンショック以降、不動産ファイナンス業務及びCMBS投資業務を大幅に縮小しており、
地方都市に流動性を供給するプレーヤーが極めて少ない状況に陥っている。地域金融機関に対して改
めて不動産ファイナンス及びCMBSの啓蒙を行いつつ、人材育成、運用力強化を促し、もって地方都市
への流動性供給の担い手として位置付けるべきである。
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28
比較的短期間に取り組み可能な課題
~制度上の問題等~
7. ストック再生について

大規模開発は大手デベ主導で確実に進んでいる一方で、中小規模物件の多数は放置されている。その
実行等を加速化するために、ファイナンスの観点から以下の対応が望まれる。
 開発が前提となる物件の融資適格性の緩和(耐震、遵法性不適格等)
 テナントの円滑な退去促進のための法的手当(再開発・建替え事例等における「正当事由」の認定
の(更なる)柔軟化等)
 現所有者に対する開発促進のための税制等の優遇策(現物出資に伴うキャピタルゲイン課税の繰
延べ、借地権の税会不一致解消等)並びに開発を促すための法的手当
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新たな不動産金融商品の導入
~中長期的な課題~
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30
中長期的な課題
~PREの有効利用の推進~
これまでもPRE促進は、各方面から強く求められてきたが、遅々として進展がなかった。しかしながら、現状、成長戦略でも取り上げら
れ、また局地戦ではあるが、一定の成果も現れている。後述のとおり、投資家サイドの需要も極めて強く、更なる進展が望まれる。
望まれるポイント
① 狭義のPREにおいて

広義の不要地(賃借人が民間の土地等)の積極的な売却を推進すると同時に、有効利用型を局地戦に留めず、モデル
ケースを構築し、全国展開を望む。

公共体の単純な負担増となるリースバックは敢えて望まない。

PPPによるPREの有効利用の促進を目的に借地権の償却に関する税会不一致を解消させる。

PPPによるPREの有効利用に関し、エクイティ出資持分及びノンリコースローンのセカンダリーマーケットでの売却を認める。
② 狭義のインフラにおいて

太陽光ファイナンスについては大きな成果、本邦におけるプロジェクトファイナンスの基本形が構築された。次のターゲット
として風力発電が仄かに見えているが、主役が不在。

新興国への輸出も可能な分野(水道、ごみ処理、道路、輸送他)については、ファイナンスとのパッケージ化も視野に入れ、
戦略的な民活推進を望む。
③ コンセッションにおいて

リスクプロファイルが変わってしまうが、公共体と不動産ファイナンス両サイドのメリットを考慮し、コンセッション対象の敷地
内や管理する不動産の活用を前広に含めることを望む。
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中長期的な課題
~PREの有効利用の推進~
投資家動向

恒常的な運用難であることも去ることながら、①CSR、②地域貢献、③経済性の観点から、幅広い国内
のデット、エクイティ投資家から極めて強い需要がある。

個人投資家の社会貢献意欲も強く、インフラファンド(投信)への投資意欲は並々ならぬものがある。

海外投資家も円エクスポージャーの多様かつ安定的な運用対象としてインフラファンドへの関心は高い。
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32
中長期的な課題
~東京をアジアの不動産ファイナンスの中心に~
現状の整理
① アジアの不動産ファイナンスの中心はシンガポール(租税、インフラ(ヒト、モノ)、資金(特にリスクマ
ネー)の優位性)
 東京が後塵を拝しているのを租税のせいだけにしていないか。
② 国内デベ、ゼネコン、流通、物流等が積極的に進出
 各部門での進出、進出の加速化から、国内でのコーポレートベースでの資金調達から現地完結
やノンリコース化の動き。
③ 金融機関の積極的なアジア展開
 本邦における融資機会の減少により、特にアジアへ注力。
④ リスクマネーの高まり
 アベノミクス効果による一部金融機関のリスク許容度アップ。
 低金利の運用難の中で、年金含め機関投資家の運用姿勢の積極化の兆し。
⑤ 法的な枠組み整理
 J-REITによる海外不動産を裏付けとしたエクイティ購入。
 特区によるオフィスの高度化。
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中長期的な課題
~東京をアジアの不動産ファイナンスの中心に~
提 言
アジアの不動産ファイナンスの中心への第一歩を踏み出す
 J-REITによるアジアの不動産購入の積極化(特に本邦企業関連)
 J-REITによる第三国を経由した海外物件取得の解禁
 東京にて、まずは、本邦企業のアジア向け開発、出店等の投資やノンリコース化を完結
 本邦リスクマネーによる主としてアジアインフラへの投資積極化
結 果
本邦企業のアジア進出の円滑化(ファイナンス面において)
 本邦不動産ファイナンス関連の人材の国際化
 新規床需要の創出
 不動産ファイナンスの活性化により、外資系金融機関の東京進出
 東京マーケットの国際化
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34
参考資料
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本邦におけるインフラの資金調達事例
~太陽光発電事業の事例~
JREメガソーラープロジェクトボンド信託1




事業から生じるキャッシュフローや資産を担保に資金調達を行うプロジェクトファイナンスでは、銀行ローンによる調達が
一般的であった。本案件は、プロジェクトファイナンスにおいて証券化商品による資金調達を行った、日本で初めての
ディールである。
メガソーラープロジェクトボンド信託は、太陽光発電事業の開発資金を調達するために、信託受益権および信託ABL(資産
担保融資)の形で発行された証券化商品。当案件ではジャパン・リニューアブル・エナジー(JRE)をスポンサーとして、茨城
県と宮城県の計3カ所で展開される太陽光発電事業に対し、信託受益権を合計9億4000万円発行した。売電による収入
が投資家の利益の源泉となる。
この案件の意義は、インフラ関連のプロジェクトファイナンスとして、初めて格付を取得した証券化商品を発行できたこと。
3種類の受益権に対して、日本格付研究所はBBB+、A-、Aの格付を与えた。
発行体のメリットとして、最長19.5年の固定金利で、長期の資金調達を実現できたことが挙げられる。投資家にとっては、
電力債と同様に長期安定運用を期待できる新しい商品であり、格付が付与されているため投資への障壁も低い。ローン
への参加が難しい機関投資家が、証券化というスキームを通じて、太陽光発電のような将来性が期待できる事業の受益
権を得られるようになったことも意義深い。
2013年秋以降、メガソーラープロジェクトボンド信託の発行が相次いだ。本案件がその先駆けとなって、プロジェクトファイ
ナンスの新たな可能性が広がった。
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本邦におけるインフラの資金調達事例
~レベニュー債発行事例~
出所 茨城県
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CREFCについて
CREFCとは
CREFCは商業用不動産ファイナンスの事業者団体であり、アメリカを始め、
ヨーロッパ及び日本において活動しています。
業界をリードする金融機関、投資家、サービサーがCREFCの会員となって
います。
• 3兆1000億ドルの商業用不動産ファイナンス業界から300社以上の企業及び6,000人以上
の個人がCREFCの会員(グローバルベース)になっています。
• 商業銀行、投資銀行、保険会社、リース会社、プライベート・エクイティ・ファンド、モーゲー
ジREIT、債券投資家、サービサー、格付会社、弁護士事務所、会計事務所など商業用不動
産ファイナンスに関連する幅広いプレーヤーが会員となっています。
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CREFCについて
CREFC のミッション
The promotion of commercial real estate finance market efficiency,
transparency and liquidity worldwide through the fostering of market
excellence and development of best practices.
卓越したマーケットの育成とベストプラクティスの確立及び促進を通して、
商業用不動産ファイナンスマーケットの効率性、透明性、流動性をグロー
バルベースで高める
CREFC は上記のミッションを以下を通して実現します。
• 業界標準とベストプラクティスの確立において重要な役割を果たす
• マーケットに関連する企業に対して情報と教育の機会を提供する
• 業界の発展を促進する法規制の策定に寄与する
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Disclaimer
The information contained in this paper is prepared from a variety
of sources including data collected from other organizations. The
information and data is believed to be reliable. However, errors,
omissions and outdated or misleading information may sometimes
be present. Accordingly, use of the information is solely at the risk
of each reader. CREFC and its members, data providers, directors,
officers and employees disclaim any and all warranties of any kind,
either express or implied, including any warranty of merchantability
or fitness for a particular purpose.
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