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ステージ III 結腸がんに対する術後補助化学療法 Dr. Hanna Kelly Sanoff
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⽇本語訳
1
2
本⽇、ステージ III 結腸がんに対する術後補助化学療法につい
て発表できることを光栄に思います。
3
私の利益相反です。
4
この 20 分でお話しする内容です。まず、ステージ III 結腸がんに
対して有効な術後補助化学療法からお話しします。次に、ステ
ージ III 結腸がんの治療において最も複雑な問題の⼀つと考え
られる、⾼齢者におけるオキサリプラチンの役割についてお話しし
ます。その後、病期分類を⽤いないリスク評価についてお話しし
て、最後に術後補助化学療法の将来について簡単にお話しし
ます。
5
まずはフルオロウラシル、5FU についてお話しします。1980 年
代、5FU に関する多くの無作為化試験が⾏われました。多くは
モジュレーターとの併⽤で、ステージ II またはステージ III 結腸が
ん患者を対象として、術後に経過観察を⾏う群と⽐較しました。
ご存じの通り、5FU はいずれの試験でも対照群より優れ、1990
年頃には標準治療薬となりました。スライドに⽰しているのは、7
つの試験から患者のデータを抽出して解析した結果です。解析
は、5FU が転帰に及ぼす影響を求める⽬的で⾏われました。約
3,300 例のうち、5FU をロイコボリンまたはレバミゾールと併⽤す
ると、無病⽣存率が 30%改善し、5 年無病⽣存率は 12%改
善しました。全⽣存率は 26%改善し、5 年全⽣存率は 7%改
善しました。
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カペシタビンが投与されたステージ III 結腸がん患者でも、同様
の有効性が認められています。これは X-ACT 試験のデータで
す。カペシタビン群と、5FU ボーラス投与とロイコボリン併⽤群を
⽐較しました。投与期間は 6 カ⽉です。全⽣存率の推移を⽰し
ます。実線で⽰されているカペシタビン群は、5FU+ロイコボリン
併⽤群と同様の推移を⽰しています。表にある通り、無病⽣存
率、全⽣存率ともにカペシタビン群がやや上回っています。この結
果から、カペシタビンも術後補助化学療法の標準薬となりまし
た。
7
次に、MOSAIC 試験とオキサリプラチンについて⾒てみましょう。
MOSAIC 試験のデザインです。切除術を受けたステージ II また
はステージ III の結腸がん患者を、5FU とロイコボリンを併⽤する
デ・グラモン療法群と、これにオキサリプラチンを追加する
FOLFOX 群に無作為に割り付けました。デ・グラモン療法群では
5FU をボーラスと持続静注の 2 通りで投与します。主要評価項
⽬は 3 年無病⽣存率でした。
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試験結果です。これまではステージ II の患者の成績が注⽬され
てきましたが、今⽇はステージ III の患者、下の 2 本の曲線に注
⽬してください。グラフでは FOLFOX 群をグレー、5FU+ロイコボ
リン併⽤群を⾚で⽰しています。無病⽣存率について、
FOLFOX 群では 5FU+ロイコボリン併⽤群よりも優れた結果が
得られています。表にオキサリプラチンの有効性を⽰しますが、無
病⽣存率は 22%改善しました。5 年無病⽣存率は 7.5%、全
⽣存率は 20%上昇しました。6 年後の最終解析では全⽣存
率は 4.2%改善しています。
9
MOSAIC 試験の他にも、術後補助化学療法におけるオキサリ
プラチンの有効性を検討した試験があります。3 つのピボタル試
験のデータを⽰します。NSABP C07 試験では、患者を、5FU
ボーラス投与とロイコボリン併⽤群と、これにオキサリプラチンを追
加する群とに無作為に割り付け、⽐較を⾏いました。この試験で
も無病⽣存率の改善がみられ、5 年無病⽣存率が 6.6%上昇
しました。しかし、全⽣存率については、オキサリプラチンの上乗せ
効果が認められませんでした。XELOXA 試験は、5FU ボーラス
投与とロイコボリン併⽤群、およびカペシタビンとオキサリプラチン
併⽤群、すなわち CapeOX 群を⽐較した無作為化試験です。
この試験では、無病⽣存率、全⽣存率ともに CapeOX 群が
5FU+ロイコボリン併⽤群よりも優れていました。7 年後の評価
では、CapeOX 群で⽣存率が 6%上昇しました。
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Meyerhardt 先⽣が最近発表されたデータです。化学療法を
⾏わない場合、5 年以内に再発または死亡が⽣じるリスクは
40%ありますが、5FU による術後補助化学療法を⾏うと、リスク
が 12%低下します。オキサリプラチンを上乗せすると、さらに 6%
低下します。両剤とも無病⽣存率の改善に効果を⽰しますが、
効果の⼤半はフッ化ピリミジン系薬剤で得られています。
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5FU やカペシタビン、オキサリプラチンについては、術後補助化学
療法での使⽤を裏付けるエビデンスが得られている⼀⽅で、
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イリノテカンやベバシズマブ、セツキシマブについては、術後補助化
学療法として適さないことを⽰すエビデンスも得られています。時
間の関係でこれらの薬剤の試験結果については詳しく説明しま
せんが、複数の無作為化第 III 相試験において、臨床的に意
義のある有効性は認められませんでした。PETACC-3 試験につ
いても割愛します。FOLFOX 療法が標準的な術後補助化学
療法であるとの位置付けは、MOSAIC 試験以降も変わっていま
せん。
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もちろん、FOLFOX 療法は全例に適している、などという簡単な
話ではありません。次に、⾼齢者におけるオキサリプラチンの役割
という複雑な問題について考えてみます。
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この問題との関連が考えられる点は 2 つあります。1 つめは、アメ
リカでは結腸がんの診断時年齢の中央値が 68 歳であるという
点です。世界での診断時年齢も同様です。これは、結腸がんの
新規診断例の約半数が⾼齢者であることを意味します。2 つめ
は、これからお話しする複合解析が⾏われるまでに、5FU とロイコ
ボリンによる術後補助化学療法では、70 歳を超えた患者でも、
70 歳以下の患者と同様に効果が得られることが明らかにされて
いたという点です。
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これらを念頭に置き、オキサリプラチンのピボタル試験を実施した
研究者らは、試験登録時に 70 歳以上の患者に対しオキサリプ
ラチンの効果を検討しました。表にあるとおり、オキサリプラチンが
⾼齢群の無病⽣存率に及ぼす効果は、患者全体の解析でみ
られたような驚くべきものではありませんでした。MOSAIC 試験と
NSABP C07 試験では、オキサリプラチンにより⾼齢群の無病
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⽣存率および全⽣存率が改善するというエビデンスはほとんど得
られませんでした。XELOXA 試験では無病⽣存率に対する効
果を⽰唆していますが、ハザード⽐は 0.87 で、患者全体の解析
結果である 0.8 に劣ります。XELOXA 試験では 70 歳以上の
患者に関する⽣存率は報告されていませんが、主な論⽂で報
告された 65 歳以上の患者のハザード⽐は 65 歳未満の場合と
同様であり、XELOXA 試験では、オキサリプラチンは⾼齢者に対
しても有効である可能性が⽰唆されています。
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ここから少し話が複雑になります。ACCENT データベースの解析
結果です。これは複数のピボタル無作為化試験から個々の患者
データを⽤いて⾏った⾼齢者の解析で、サブグループの効果を検
討する際に検出⼒を⾼める⽬的で⾏われました。われわれはオ
キサリプラチンに関する試験に着⽬し、このスライドにまとめまし
た。約 6,500 例を 5FU とロイコボリンの併⽤群、またはオキサリ
プラチンとフッ化ピリミジン系薬剤の併⽤群に無作為に割り付けま
した。うち約 1,100 例が 70 歳以上でした。
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主な結果です。表の1⾏⽬、70 歳以上の患者では、オキサリプ
ラチンによる無病⽣存率と全⽣存率の改善は認められませんで
した。⼀⽅、70 歳未満の患者では、実質的な効果がみられまし
た。年齢で層別解析すると治療効果に違いはみられましたが、
相互作⽤解析では有意差は認めませんでした。⾼齢者でオキサ
リプラチンの効果が低いという結果は、厳密には有意⽔準に達し
ていないので、偶然得られたものかもしれませんが、この差は顕著
であり、臨床的に意義があるものと考えています。報告された評
価項⽬のうち、再発までの期間に関しては、オキサリプラチンの効
果が最も明らかでした。
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さて相反する結果について⽰します。Haller 先⽣らは、複数の
試験データを統合して同じ疑問に取り組みました。このプール解
析では、X-ACT 試験と XELOXA 試験から 5FU 群のデータを
得て、XELOXA 試験からは CapeOX 群のデータ、AVANT 試
験と NSABP C08 試験からは FOLFOX 群のデータを得ていま
す。AVANT 試験と NSABP C08 試験は最近の研究で、術後
補助化学療法でベバシズマブが⽤いられました。4 つの試験には
4,800 例以上の患者が参加し、うち約 900 例は試験登録時
で 70 歳以上でした。
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グラフでは、⻘⾊の曲線、すなわちオキサリプラチンベースのレジメ
ンを施⾏されていた患者の無病⽣存率は、緑⾊の曲線、すなわ
ち 5FU+ロイコボリン併⽤例の無病⽣存率よりもかなり上回って
います。無病⽣存率における効果は、年齢に関係なく認められ
ました。表に⽰す通り、オキサリプラチンによる無病⽣存率と全⽣
存率の改善は、70 歳以上の患者では 70 歳未満の患者と⽐べ
て⼩さいものでしたが、有意差はわずかながらも認められ、オキサ
リプラチンは臨床的に有意義な効果をもたらすと考えています。
併存疾患の影響も検討しましたが、年齢についての結果への影
響は認められませんでした。
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この 2 つの⼤規模なプール解析の結果がやや⽭盾する点につい
て、どう解釈すればよいのでしょうか? 実際のところ、結果に⽭盾
はないと考えています。その理由を今からお話しします。
ACCENT 解析では、MOSAIC 試験や NSABP C07 試験、
XELOXA 試験の患者をオキサリプラチン併⽤群と⾮併⽤群に
分けて⽐較しました。これに対し、Haller 先⽣らの解析では、
X-ACT 試験と XELOXA 試験で 5FU ボーラス投与とロイコボリ
ン併⽤群を対照群としました。オキサリプラチン群は、XELOXA
試験の CapeOX 群、そして AVANT 試験と NSABP C08 試
験の FOLFOX 群で構成されています。
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⻘い表に⽰す通り、2 つの治療群でのオキサリプラチンによる⽣
存率は 35%と⼤きく改善し、3 つのピボタル試験よりも顕著な上
昇が得られました。なぜオキサリプラチン群で良好な効果が得ら
れたのでしょうか?
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それには、NSABP C07 試験が含まれなかったことが寄与してい
ると思われます。このきわめて合理的な判断が下された理由は、
NSABP C07 試験でのボーラス投与の FLOX レジメンは、特に
⾼齢者では毒性がみられるため全く⽤いられず、劣るレジメンだ
からです。また、5FU 群とオキサリプラチン群の治療実施時期に
は、時間的な重なりがないことも関係していると思います。オキサ
リプラチン投与例のデータの多くは、最近の研究である AVANT
試験と NSABP C08 試験から得られたものですが、最近の試験
での無病⽣存率は過去の試験よりも若⼲上回っています。切除
不能な進⾏・再発⼤腸がん患者の⽣存率は、ここ 10 年で⼤き
く改善しています。最近の試験では、1998 年から 2001 年にか
けて X-ACT 試験に参加した患者と⽐べて、再発後の⽣存率が
⼤幅に上昇していると⾒込まれます。
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Haller 先⽣らの解析において、⾼齢群におけるオキサリプラチン
の効果をコホート全体でみられた良好な効果と考え合わせると、
⾼齢群で効果が低く、ACCENT 解析でみられた現象と⼀致し
ます。その場合、⾼齢群ではいずれのデータポイントでも、オキサ
リプラチンによる術後補助化学療法では⼤きな効果が得られな
いことになります。⾼齢群で無病⽣存率と全⽣存率に対し効果
がない理由として、がん以外の死因がたびたび指摘されていま
す。他の原因で患者が末期状態にある場合、すべての病因を
含む無病⽣存率の評価項⽬を改善するのは困難です。
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また、MOSAIC 試験のデータは興味深いものと考えています。こ
れは、再発後の無病⽣存率を年齢別に⽰したグラフで、再発後
の⽣存期間や死亡を⽰しています。⽮印は、FOLFOX 療法を
受けた 70 歳以上の患者群を指します。この群での再発後の⽣
存率は若年群よりもかなり低く、5FU による治療を受けた 70 歳
以上の患者群よりも低くなっています。これは、FOLFOX 療法を
施⾏した⾼齢者は、その後、遠隔転移した場合に化学療法や
⼿術が少ないといった、あまり積極的ではない治療を受けたから
なのでしょうか。実際は受けていますので、あるいは病変の⽣物
学的特徴や衰弱度などの他の要素が関与したからなのでしょう
か。理由はわかりませんが、これはたいへん興味深く、研究する価
値のある問題でしょう。
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次に、AJCC 病期分類の枠を超えて、再発リスクの推定精度を
改善する⽅法について考えてみましょう。これを論じる理由は何
でしょうか。この数年、結腸がんの分⼦的多様性に関する理解
が⼤きく進み、学問的な関⼼の対象になるだけではなく、臨床
的にもきわめて有⽤であることがわかりました。われわれはこの概
念を遠隔転移を有する患者に⽤いていますが、分⼦レベルでの
サブタイプ分類は早期ステージにある症例でも重要性を増しつつ
あります。Stadler 先⽣からステージ II 結腸がんにおけるミスマッ
チ修復、すなわち MMR の検査に関する発表がありましたが、今
回、MMR とステージ III の枠を超えるサブタイプの重要性を報告
した、最新の論⽂を 1 本選びました。
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同じ著者らが⾏った拡⼤解析の結果です。N0147 試験で得ら
れた腫瘍標本の分⼦サブタイプの分布をご覧ください。術後補
助化学療法として FOLFOX 単独投与、もしくは FOLFOX+セ
ツキシマブ併⽤投与を⾏いました。まず研究者らは、MMR の異
常のない結腸がんと、MMR の異常のある結腸がんで患者を分
類しました。図の⼤きな⽮印はこの分類を⽰します。予測通り、
ステージ III 結腸がん患者の⼤半では、MMR の異常は認めら
れませんでした。KRAS 変異と BRAF 変異の有無でさらに患者
を分類したところ、MMR の異常のない症例のうち約 49%が野
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⽣型で、また 35%に KRAS 変異を、7%に BRAF 変異を認め
ました。
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無イベント⽣存率の Kaplan-Meier 曲線にみられるとおり、これ
らのサブタイプ分類には意味があります。MMR に異常がなく、
KRAS 変異または BRAF 変異がみられる患者では、実際に予
後が悪いことがわかりました。KRAS 変異例は⾚、BRAF 変異
例は緑で⽰していますが、他のサブグループよりも明らかに悪い経
過をたどっています。このことから、再発リスクに関する、病期分類
以上の情報が得られます。サブタイプ分類はほとんどの医療施設
で簡単に実施でき、ステージ II の患者や遠隔転移例に対し広く
⽤いられています。しかし、実臨床ではさほど役に⽴ちません。ど
のタイプの患者がどのような術後補助化学療法を受けるべきかと
いう指針にはならないからです。
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病期分類の枠を超える、再発の予後情報を収集するには、腫
瘍組織の検査を⾏い、オンコタイプ再発スコアを求める⽅法があ
ります。乳がんと同様に、パラフィン包埋組織を⽤いて⾏う遺伝
⼦発現検査の結果から、再発スコアを算出します。結腸がん再
発スコアは多くの臨床試験において検証され、ステージ II とステ
ージ III の結腸がんで予後を予測しましたが、Stadler 先⽣から
ご指摘があったとおり、治療効果を予測する情報は得られませ
ん。
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これは NSABP C07 バリデーション試験の図です。この試験で
は、オキサリプラチン投与例における、オンコタイプの予後予測因
⼦としての妥当性が検討されました。縦軸に 5 年以内の再発リ
スク、横軸に再発スコアを取っています。横軸の下にあるのは、参
加例における再発スコアの分布です。ステージ別に⾊分けして推
移を⽰しますが、再発リスクはスコア全体にわたって確実に上昇
しています。ステージ IIIA とステージ IIIB の患者は、中央にある
2 本の⻩⾊の線で⽰しています。⼀番上のグレーの曲線、5FU
投与例の再発率は 15〜50%です。グレーの曲線、ステージ
IIIC の患者の再発リスクの幅は他と⽐べて⼤きくなっています。オ
ンコタイプは、再発リスクの推定精度を上げる検査です。ステージ
III の患者に、オキサリプラチンでどれほどの効果が期待できるのか
という情報をお伝えしたいのですが、残念ながらオンコタイプ再発
スコアは、この問題に⼗分対応することができません。分布曲線
からわかるように、再発スコアのほとんどは 10〜60 の間にあります
が、
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これよりも狭い範囲に多くのスコアが集中しています。それでは、
再発スコアが極端に⾼いあるいは極端に低い、ステージ IIIA とス
テージ IIIB の患者に対するオキサリプラチンの効果について考え
てみたいと思います。
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再発スコアが 10 の患者がオキサリプラチンを⽤いた場合、
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再発リスクが約 3〜4%改善します。再発スコアが 60 の場合
は、
33
約 9%改善します。再発スコアが⾼い患者と低い患者に着⽬す
ると、スコアによりオキサリプラチンの効果を推定する精度が⾼まり
ますが、効果にみられる差はかなり⼩さいものです。この差はエラ
ーバーの範囲内に⼊る程度で、推定値の分離度はとても⼩さい
です。ほとんどの患者では再発リスクは極端に⾼くも低くもないた
め、臨床医としては、再発スコアがオキサリプラチンによる治療の
是⾮を考えるときに役⽴つとは思いません。
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最後に、術後補助化学療法の将来についてお話しします。
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本トピックに関する重要なデータは、国際共同試験である IDEA
試験から得られると期待しています。この試験では、FOLFOX 療
法と CapeOX 療法を、それぞれ 3 カ⽉投与群と 6 カ⽉投与群
で⽐較した 6 つの試験のデータが統合されています。12,000 例
以上の患者のデータを得て、6 カ⽉投与群に対する、3 カ⽉投
与群の無病⽣存率における⾮劣性を検討できる⼗分な検出⼒
を確保しました。昨年、IDEA 試験は無益の試験続⾏を避ける
ための中間解析で条件を満たし、データ安全性モニタリング委員
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会から試験の続⾏が許可されました。もちろん、この早期評価
は、3 カ⽉投与が新たな標準療法であるという意味ではありませ
ん。結論を得るには試験結果を待つ必要があり、最終結果は
2016 年後半か 2017 年前半に得られる予定です。80702 試
験に参加予定の⽅々にご案内をしますので、参加をお願いいた
します。
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術後補助化学療法の将来を考える際に役⽴つもう⼀つの⽅向
性をお⽰しします。CALGB 89803 試験、これは 5FU ボーラス
投与とロイコボリンの併⽤に、イリノテカンを追加する場合と追加
しない場合を⽐較した試験ですが、イリノテカンの上乗せ効果は
認めませんでした。その後、治験参加医師により各種の分⼦分
析が⾏われ、サブタイプが治療効果における再発リスクに及ぼす
影響も検討されました。これは、⼤腸がんをサブタイプに分類する
際の主な要素である CpG アイランドメチル化形質、すなわち
CIMP で層別したときの転帰です。CIMP 陽性⼤腸がんの⽣存
率は実線、CIMP 陰性⼤腸がんは点線で⽰します。5FU にイリ
ノテカンを追加した場合の効果は、CIMP の状態により⼤きく異
なっています。CIMP 陽性例でイリノテカンを追加すると、5FU 単
独群に⽐べて⽣存率が改善し、ハザード⽐は 0.62 と驚異的な
値でした。⼀⽅、CIMP 陰性⼤腸がんに関する⽣存率は、全般
的に CIMP 陽性がんよりも良好なものの、イリノテカンの上乗せ
効果は得られず、ハザード⽐は 1.38 でした。また、MMR でサブ
タイプを分類すると、CIMP 陽性かつ MMR の異常のない⼤腸が
んで、最⼤の効果が得られることがわかります。現時点では、これ
らのデータは CIMP 陽性⼤腸がんに対し、術後補助化学療法と
してイリノテカンを⽤いることを推奨するものではありませんが、お
⽰ししたデータは⾮常に興味深いと考えています。術後補助化
学療法に関する結腸がんのサブタイプについての疑問を解決する
ために臨床試験を実施することは、ロジスティック⾯でも難しく、膨
⼤なリソースが必要ですが、ステージ III 結腸がんの治療におい
て、次の⼤きな⼀歩を踏みだすための⽅向を⽰すものと考えま
す。
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まとめです。術後補助化学療法として 5FU かカペシタビンにオキ
サリプラチンを追加するレジメンがステージ III 結腸がんの標準療
法であり、効果は主にフッ化ピリミジン系薬剤から得られていま
す。⾼齢者におけるオキサリプラチンの効果を数値化するのは困
難ですが、若年者に⽐べて劣ります。オキサリプラチンは余命の
⻑い、体⼒のある患者に⽤いる薬剤である、というのが私の考え
です。分⼦サブタイプ分類や、実施可能な遺伝⼦発現検査で、
病期分類に依存しない予後情報が得られますが、治療効果が
得られる患者を予測することはできません。FOLFOX は 3 カ⽉の
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投与で⼗分かどうかを検討したデータが近く発表される予定で
す。分⼦的特徴の理解が進めば、ステージ III 結腸がんに対し
て、FOLFOX 療法を上回る治療法が開発される可能性があり
ます。
ありがとうございました。
本報告には日本国内での未承認薬が含まれており,また,日本国内で承認されている薬剤の効能・効果,用法・用量とは異なる場合がありますので,薬剤のご使用につきましては,各製品の添付文書をご参照下さい。
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