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全国学力・学習状況調査の結果を生かした学力UP!実践事例集
全国学力・学習状況調査の結果を生かした 学力UP! 実践事例集 学力UP!実践事例集 全国学力・学習状況調査等を活用した 学校改善の推進に係る実践研究 (文部科学省委託事業) 平成21年3月 群 馬 県 教 育 委 員 会 は じ め に 全国学力・学習状況調査は、国語、算数・数学のA・B問題、児童生徒、学校への 質問紙調査から構成されておりますが、それぞれの調査において目的があります。A 問題では基礎・基本の定着、B問題では知識や技能の活用力、質問紙調査では基本的 生活習慣や組織としての学校の取組など、多様な面から学校の実態を把握できるよう になっております。 とかく本調査は、国内での順位など序列化に目が行きがちですが、この調査を通し て学校や児童生徒の課題を明確にし、その改善策を講じることにより、児童生徒一人 一人が充実した学校生活を送れるようにすることが重要であると考えております。 さて、本事業は、文部科学省の委託事業であり、全国学力・学習状況調査の結果に 基づき、学力や学習状況等の課題の解決に向けた実践研究を実施し、その成果の普及 を図ることを目的としています。 そこで本県では、前橋市教育委員会と連携のもと、前橋市内の8小中学校を調査研 究協力校として指定し、全国学力・学習状況調査等の結果から明らかとなった各学校 の課題解決に向けて、特色ある取組を進めていただきました。本冊子では、各学校の 取組の一端を紹介しております。 また、本事業の一環として群馬大学教育学部教授 河野庸介先生に、学力について の考え方や授業を進める上でのポイントなど大変示唆に富んだ講演をしていただきま した。本冊子には、講演会の要旨も掲載してあります。 各学校におかれましては、これらの協力校での取組や講演会の要旨を参考として、 今後の実践に生かしていただければ幸いです。 最後になりますが、ご協力いただきました前橋市教育委員会及び各協力校の皆様、 群馬大学教育学部教授 河野庸介先生に心より感謝を申し上げます。 平成21年3月 群馬県教育委員会 義務教育課長 矢島 正 目 次 ○全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る 実践研究の概要 1 ○前橋市立広瀬小学校 2 ○前橋市立桂萱小学校 7 ○前橋市立桂萱東小学校 13 ○前橋市立粕川小学校 19 ○前橋市立月田小学校 25 ○前橋市立広瀬中学校 31 ○前橋市立桂萱中学校 37 ○前橋市立粕川中学校 43 ○群馬大学教育学部教授 河野庸介先生 演題「確かな学力の向上に向けて」 講演要旨 49 全国学力・学習状況調査等を活用した学校改善の推進に係る 実践研究の概要 Ⅰ 趣 旨 全国学力・学習状況調査等の結果から、学力や学習状況等についての課題を見いだ し、改善に向けた具体的な取組に関する実践研究を行い、その普及を図る。 Ⅱ 内 容 ①前橋市内の8小中学校を調査研究協力校として指定する。調査研究協力校では、 平成19年度全国学力・学習状況調査等の結果から明らかとなった自校の課題を 踏まえ、その改善に向けた実践を進める。 ②県教育委員会では、調査研究協力校からの事例を収集し、報告書としてまとめ、普及 を図る。 Ⅲ 実践研究の流れ 各学校の課題の把握(H19全国学力・学習状況調査等より) <課題例> ・全体的に達成率が低い ・学力の二極化が顕著だ ・基本的な生活習慣に課題がある ・活用力が弱い など 改善策の整理・明確化 ・県教委や市教委による指導資料等を踏まえて改善のポイントの策定 改善策の実施 ・校内体制の整備、研修の充実 ・授業改善 ・実践事例の集積(児童生徒の変容の把握) 改善策の評価 ・改善策の評価とまとめ・報告 1 前橋市立広瀬小学校 全国学力・学習状況調査から見られる課題 6年生で実施した全国学力学習状況調査『国語』を振り返ると、本校児童の実態として「語句や文章 の特徴に注意しながら読む」「文章の表現や叙述に注意して読む」ことはある程度できるが 、「どんな 話か考えながら読む」「心情などを読み取る 」「要約しながら読み取る」等の力が不足していることが わかった。つまり、文章で述べられていることをそのまま読み取ることはある程度できるものの、思考 を伴った読み取りに課題があるということである。このことは小学校学習指導要領に示されている国語 科-〔第 5 学年及び第 6 学年〕-内容-C 読むこと「書かれている内容について事象と感想、意見の関係を 押さえ、自分の考えを明確にしながら読むこと。」に示されている学習活動にそのままあてはまる。 児童の文章に対する意識を調査したところ、読書する際、普段から自然・社会系の本を多く読んでい る児童は半数を超え、特に男子の割合が高かった。学習するための教材文としては、やや物語を好む傾 向があるものの、テストで問題選択がある場合は7割の児童が説明文を選ぶと答えた。このことから、 説明文に対しての苦手意識はなく、読み取りをしやすいという意識を持っていることがわかった。 しかし二者択一のアンケートから考える 〈児童へのアンケート結果〉 と、心情や場面の読み取りは授業では楽し 物語 説明文 両方 く学べるものの、テストのような文章読み 取りでは苦手意識を持っているともいえる。 読書をするときは、どのような種 34% 43% 21% 類の本を読みますか。 心情を読み取ったり、状況を考えながら読 んだりするためには、言葉の持っている意 学習するときの文章は、物語文と 52% 48% - 説明文のどちらが好きですか。 味や背景、その広がりに目を向けさせて学 習させていくことが必要である。 テスト問題では物語文と説明文の 29% 71% - また、児童の日常の会話や学習の様子か どちらが取り組みやすいですか。 ら現代の子どもたち全体に言えるであろう 語彙の少なさも見て取ることができる。これは生活体験が不足しやすい現代の生活形態や子どもたちが 生活している文化的な背景が大きく関わっているといえる。 以上のことから、①「語彙を高め、さまざまな状況やその時の心の動きなどを言語として理解し、表 現する素地となる言語感覚を養うこと」、②「自分の考えを明確にしながら文章を読む力を養うこと」 が本校児童の国語学習の課題であるといえる。 改善のポイント ポイント1 詩や俳句等の作成を通した言語感覚の育成 児童の言語活動の基礎となる語彙力を養うために、詩や俳句・川柳といった短い作品づくりを多く取 り入れる工夫を行い、多くの言葉に触れ、また言葉をどのように使ったらよいのかを考えさせた。その ために校内での指導態勢も整えて「学習環境班」を設け、その提案や取り組みを全校レベルで実施して いくこととした。 また、各学年でも行事や日常の学習活動の中で、児童の学習段階に応じた言語活動も行うようにした。 このことで児童の言語感覚を養い、多くの語彙を身につけてさまざまな言葉を使い分けることができる ようになると考えた。 ポイント2 個や集団の学びを生かす学習形態の工夫 「読むこと」の指導において、言語事項の確実な定着を図るとともに、児童の発達段階や実態に応じ て正確に読むための手だてや学習形態を工夫・改善することにより、「読む力」を高め基礎学力を確実 に身につけた児童を育成できるであろうと考えた。そのために校内に「授業改善班」を設け、国語学習 の中で「個の学び」や「集団の学び」の場、ワークシートの形式や発問等に視点を当てた学習形態 の工夫と改善を進めた。特に「個の学び」と「集団の学び」では、児童が読み取ったことを互い に情報交換し合う「小集団での学び」の場を設け、比較検討を行いながら自分の読み取りや意見 を明確にしていくことを試みた。また、ワークシートの中にその都度「自分の考え」を書く箇所 を用意し、文章を読み取り、筆者の考えを学習した後、それに対する自分の考えを書く機会を多 く設定した。 2 実践事例 【ポイント1 詩や俳句等の作成を通した言語感覚の育成】 ① 学習環境班による取組 〈作品投稿案内・投稿箱〉 児童の言語活動の素地を養うために「学習環境班」が中心となって、詩 や俳句・川柳といった作品づくりを実施した。この作品づくりは、言葉の 持つ意味やイメージをふくらませて自由に作品をつくり、日常の学校生活 の中でいつでも投稿できるようにすることで、言葉に対する距離を近く保 ちながら行動や思考を言葉で表し、言葉の力を養おうとしたものである。 作品づくりの励みになるよう、すぐれた作品は「上毛俳壇」や「子ども川 柳」に投稿・応募をして、作品を広く認めてもらえる機会を多く設けた。 また、秀作は校内 〈作品投稿の流れ〉 に掲示し、児童が作品づくりに励めるようにした。そ して、多くの児童が掲示作品を鑑賞することで、言葉 投稿箱に作品投稿 の使い方や構成を参考にし、さらによい作品づくりへ と向えるようにした。 学習環境班による作品選定 ② 学校行事や日常の授業における詩や俳句等の取組 各学年での学習指導においても詩や俳句・川柳づく りが行われた。低学年では詩の作品づくり、中学年以 上は俳句・川柳づくりを中心に行った。より短い言葉 の中に出来事や気持ちを表すのは表現としては難しい 校内に作品掲示・紹介 ものとなるため、低学年は詩の創作を通して、言葉に 触れ考えることとした。中学年では俳句や川柳の違い にはあまり触れず、五・七・五の言葉のリズムの中で 自由に表現し、効果的な言葉の使い方を考えるようにした。 6年生では修学旅行で古都鎌倉に行く機会を利用して、日常生活とは別世界の中で見たもの感じたことを 俳句・川柳として表現する活動を行った。事前の学習として、俳句と川柳の違いについて学習し、写生的な 俳句や叙情的な俳句についても触れた。鎌倉の事前学習を行う中でも、どの見学先でよい作品づくりができ るのかも意識しながら取り組んできた。子どもたちは歴史のある寺社や建造物、鎌倉を代表する大仏や仏像、 風光明媚な景色に触れる中で、創作活動を行うことが 〈修学旅行での俳句作り〉 できた。子どもたちの関心事のひとつであるお土産を 題材にして作品をつくる児童も多くいたが、思いをそ 俳句・川柳について学習 のまま表現した、素直な作品づくりができた。また、 お土産という視点から家族を描いた作品も見ることが でき、鑑賞する子どもたちにも心温まるよい機会とな 修学旅行(学校行事)での作品づくり った。 作品づくりに取り組んだ6年生の児童は、言葉のリ ズムにのせて古都鎌倉・修学旅行を読む楽しさを味わ つくった作品についての検討 いながら、初めて目にする様々なものや心に浮かんだ ことを、五・七・五という限られた文字で表現するこ との難しさをあらためて学習することができた。 作品発表 学校に戻ってからは、自分で作った作品の言葉の意 味や使い方が適切かどうか、もっとその時の自分の気 「上毛俳壇」「子ども川柳」等への投稿 3 持ちを表現するのに適した言葉や言い回しがないかなど、辞書を使いな がら振り返ることができた。また、グループの友達どうしで作品を紹介 しながら、優れた言葉の使い方を認め合い、さらによい表現はないかな ど検討することができた。 詩や俳句・川柳づくりを行ってきた子どもたちは、これまであまり意 識せずに使ってきた言葉の持つ意味や広がりに、多少なりとも関心を持 つようになり、言葉をリズムにのせて表現することのおもしろさを感じ ることができた児童も多くいた。また、6年生は思い出づくりとしても よいものになり、その後も廊下に掲示された互いの作品をしばしば振り 返りながらよいコミュニケーションの場となっていた。 【ポイント2 個や集団の学びを生かす学習形態の工夫】 〈6年生の授業の様子〉 [ 指導の実際 〈修学旅行の俳句・川柳〉 「読むこと」の指導においてワークシートや学習形態を工夫・ 改善することにより 、「読む力」を高め基礎学力を確実に身につ けた児童を育成しようと実践を行った。特に「個の学び」と「集 団の学び」という形態の工夫から、読む力を養う取り組みを行っ た。 一斉指導の中で、発問をして個人に考えさせ、全体の場で意見 を述べ合い学習を深めていくことは、ごく一般に行われている授 業展開である。ここでは「小集団の学び」も加えて、段階的に意 見交流を行い、読み取ったことやその根拠となるもの、自分の考 えを比較検討し読みを深める授業を行った。 6年生「平和のとりでを築く」 ] 6年生の題材『平和のとりでを築く』は、文のつながりや前後の関係がとらえやすくなっている。文章全 体を通して、事実と意見・筆者の思いがはっきりとわかるように述べられていて、特に文末表現に着目させ ることで理解しやすい文章になっている。そこで、事実と意見の述べ方に気をつけて筆者が訴えたいことを とらえ、自分の考えを明確にしながら読むことができるようにすることを目標として授業実践を行った。 ① ワークシートに自分の考えをまとめる活動の設定 取り組みの一つとして、ワークシートに自分の考えを書く課題を必ず設け、筆者の意見を読み取った後に、 児童自身が感じたことや考えたことを書くようにした。自分の考えを明確にしながら読むことは本校児童に とって難しい課題である。学習を始めた時点では一文を書くことができずに、ワークシートを前にして考え 込んでいたのが実態である。しかし、感じたことや考えたことは人それぞれ違うものであること、自分が感 じたことであれば素直にそのままを書けばよいことを助言し、読み取 〈個の学習に取り組む児童〉 ったことから自分の感じたことや考えを書き留める学習を重ねてきた。 ② 自分の考えを明確に持たせる個の学び この学習と深く関わりを持たせて実践したのが「個の学び」「小集 団の学び 」「集団(全体)の学び」である。まず、読み取りの課題を 投げかけ、本文から筆者の考えの中心となる部分を見つけさせ、さら になぜその部分が筆者の考えだと言えるのか、その根拠も合わせて考 えさせ書き留めることをさせた。教師も児童も言葉を発せず、個々の 4 児童が教材本文と向き合い、自らの考えを持つ場を設定した。必要に応じて個々の児童には支援を行った。 この段階が「個の学び」である。 〈学習の展開〉 ③ 個の学びから小集団の学びへ 個の学び 次に、自分の読み取ったことや考えたことの交流をする場面を設けた。「小集 団の学び」である。4人のグループを作り個々の児童が必ず発言をする場とし、 意見をまとめたり記録をとったりすることはしなかった。これは自分の読み取り 小集団の学び や考えたことを他と比較してとらえることだけをねらいとした学習である。第1 時の段階では進行役を務める児童は決めずに、ルールだけを示して交流をさせた。 ルールは「3分の時間で全員が発言をすること 」「傍線を引いた箇所、自分で書 集団の学び き留めたこと、自分が考えた読み取りの根拠など、発言内容は様々な視点からで よいこと」の2点である。最初の話し合いが終わった時点で、進行役を努めてい た児童を互いに明確にさせた。進行役をしていた児童は、教師が意図していた児 個の学び 童が多かったが、そうでない児童もいた。これは、児童にとっても指導者にとっ ても能力の発見となり、次回からその児童が進行役になることを 〈小集団の学びの様子〉 指示した。 ④ 小集団の学びから集団の学びへ 次は「集団(全体)の学び」である。全体の場での発言や交流 がこの学習の要である。互いに読み取ったことや根拠となる考え を発表し、そこから筆者の主張を明確にし要点まとめをしていく。 この学習を支えているのは「小集団の学び」である。すでに短時 間ながら意見交流をしたことにより、自分の考えに自信を持った り修正をしたりしながら、それぞれの児童が発言しやすい状況と なった。自分の考えに自信が持てず、発言をためらう児童が多い 本校の実態を考えるとこのステップは大きい。さらに考えを比較 したり交流したりすることが2回あることから、児童の読み取りは明確化されてくる。「小集団の学び」を 行う前と比べると、自分の考えを持ちながら「集団の学び」に臨む児童が増え、挙手・発言する児童の数も 増え、発言にも自信を感じることができるよう 〈指導案・本時の展開から〉 になった。児童の感想からも、そのことは明ら かであった。 ⑤ 再び個の学びへ 「集団の学び」の後に「個の学び」を設け、 さらに深く考えたり、これまでの自分の考えを まとめたり、交流から得た考えを自分の意見に 取り入れたりしながら筆者の主張をまとめる作 業を行った。そして読み取ったことから自分が 感じたことや考えたことをワークシートに書き 込む学習を行うことで「自分の考えを明確にし ながら読む」力を養うことができた。 成 果 ポイント1 ○ 語彙を養い、言葉の意味を考えたり適切な表現や使い方を考えたりするために、短い文を考えるこ とは効果的であった。詩や俳句・川柳というリズムのある作品づくりは題材として適切であった。 ○ 授業の時間だけでなく投稿箱を設置したことにより、いつでも遊び感覚で作品づくりができた。こ のことは言葉について考える機会を設けることとなった。 ○ 行事など日常生活とは別の、特別な体験学習を通して俳句・川柳の作品づくりを行ったことは、作 文や日記とは違った言葉の学習になった。 5 ポイント2 ○ 学習形態の工夫の中で「小集団の学び」を加えた「個の学び」「集団の学び」は、考えを明確にし ながら読む力を養う上で効果的であった。 ○ ステップとして「小集団の学び」をねらいを明確にして行うことは、児童の学習への意欲や自信に つながり、学力を高める上で効果的であった。 ○ 読み取ったことから、自分の感じたことや考え・意見を書く活動を取り入れることを継続的に行う ことは、理解のあいまいさを補い、「書くこと」の素地を築くことにつながった。 課 題 語彙や言語に対する感覚を養い、考えを明確にしながら読む力を身につけることを課題として取り組 んだ。生活体験が少なく仮想現実の中に入りやすい児童の様子から考えると、今後体験を活かして語彙 を豊かにしていくことは継続していく課題である。また、日常使っている言葉の乱れ(ねじれや抑揚も 含め)に気づかせていくことも、正しい日本語を後の世代に引き継ぐために必要なことである。 本校児童の次の課題は「発信」である。相手意識や目的意識を持って「書くこと」「話すこと」がで きるように、今回とは別の視点からの短文づくりを考えていくことが必要である。また、基礎・基本の 定着を重点に置きながらも活用力を養うような学習を充実させていくことも必要である。 6 前橋市立桂萱小学校 全国学力・学習状況調査から見られる課題 【国語】 A(主として知識) B(主として活用) ・平均正答率が全国平均をやや下回っている。特に、「書くこと 」「読むこと」 は大きく下回っており、定着が不十分である。 ・平均正答率が全国平均をやや下回っている。特に、 「読むこと」は大きく下回っ ており、課題となっている。 【算数】 A(主として知識) ・平均正答率が全国平均をかなり下回っている。特に、「図形」については大き く下回っている。 B(主として活用) ・平均正答率は全国平均をかなり下回っている。特に、「量と測定」「図形」は 大きく下回っている。 【児童質問紙の調査結果】 ・全体的な傾向として、生活習慣、学習習慣、対人関係、生活体験等に関わる項目については、全国平 均を上回るものが多い。 ・学習に関わる内容としては、国語に関しては全国平均を上回るものが多いが、算数についてはほとん どの項目(算数の勉強が好き、授業の内容がよくわかる等)で全国平均を下回っている。 ・「自分の考えを発表する機会が少ない」と答えている児童が多いが、自分の言葉で考えをまとめる、 ノートに書く等の学習が必要であることが分かる。 【その他調査等の結果から】 ○CRT(H20.1.29実施)の結果より ・国語、算数ともに、半数の学年が全国比を下回っている。特に、現2年・6年は2教科とも全国比を 大きく下回る。「1」の出現率が多く、下位層の引き上げが課題である。 ・領域別に見ると、国語では「読むこと」と「言語事項」、算数では「量と測定」「数量関係」「図形」 で落ち込んでいる。 ○児童の実態より ・学習の構えが充分でない児童が多い。(学習用具が揃わない、姿勢の維持ができない、返事の声が小 さい、自分からノートがとれない等) ・基礎的・基本的な学習内容を定着させるとともに、学習態度、学習習慣を形成することが課題である。 改善のポイント ポイント1 読む力を高める国語科指導の工夫(校内研修としての取り組み) ○全国学力・学習状況調査及びCRT学力検査の共通の課題が「読むこと」であることを踏まえ、校内 研修において、「読む力を高める国語科指導の工夫」に取り組んだ。具体的には、各学年の説明文教 材についての授業研究を中心に、論理的な文章の読み取りやその活用について指導法の改善を行った。 ポイント2 基礎的・基本的な事項を徹底する指導 ○週案を活用して、毎時間のねらいや身に付けさせる力や内容を明確にした授業を行った。 ○少人数指導やティームティーチングを活用し、基礎・基本が確実に身に付く授業を行った。 ○基礎基本確認テストやまとめテスト等を活用し、繰り返し学習やドリル学習を行った。 ○お帰りドリルの時間や補充指導の時間を有効に使い、個別指導を進めた。 ○朝読書を充実させ、読む力の基礎をつくった。 ポイント3 学習規律の徹底と学習習慣づくり ○児童の発達段階に応じた「学習のきまり」を作成し、全校体制で学習習慣づくりと学習規律の徹底に 取り組んだ。 ○家庭学習の習慣化のため、学年別の「自主学習メニュー」を作成し、「自主学習ノート」とともに配 布した。家庭と連携し、児童の学習習慣・生活習慣づくりを進めた。 7 実践事例 【ポイント1】読む力を高める国語科指導の工夫(校内研修としての取り組み) ○説明文教材の「読みの視点シート」と「説明文教材系統表」の作成 説明文教材において読む力を高めるためには、説明文教材の指導内容を学年を追って系統的に整理し、文 章を正確に読みとる視点(その学習単元で身につけさせるべき力)を明確にすることが必要と考えた。 そこで、各学年の説明文教材ごとに読みの視点等についてまとめた「読みの視点シート」と、説明文教材 の指導内容を学年を追って系統的に整理した「説明文教材系統表」を作成した。他学年教材とのつながりや、 指導の重要ポイントを明確にすることで、学年の発達段階に応じた系統的な指導ができるようにした。 【読 み の視 点シ ート】 じゅんじょに気をつけてよもう 「たんぽぽのちえ」 15時間配当 単元目標 たんぽぽがどんな知恵を働かせているのかを読みとり、たんぽぽに興味をもつとともに、順序に沿った書き方を知る。 身近なたんぽぽを観察し、相手に書いて知らせる。 2 評価規準 (1)書く能力 みつけたたんぽぽについて教材文と比べたり、気づいたことをまとめたりして相手に分かるように書いている。 (2)読む能力 たんぽぽの成長の「 順序 」 「 様子 」 「 形をかえていく理由 」を表す言葉に着目し 、様子とわけなどを考えながら読んでいる 。 (3)言語についての知識・理解・技能 文の中における主語と述語の関係に注意している。 3 この単元で身につけさせる力 (1)形式段落を理解し、一番大事な文が分かる。 (2)挿 絵を 手 が か り に 、 た んぽ ぽ の 変 化 に 注 目し て 、 時 間 の 順 序 を表 す言 葉 「 春に な ると 」「 二 、三 日 たつ と 」「 やが て 」「こ のころになると」などに着目することを学ぶとともに意味段落(答えのまとまり)に分ける。 ①サイド ラインを引かせることによって「~ます 。」(様子を表す文)と「~のです 。」「~からです 。」(理由を表す文)の 文末表現の違いに気づかせ読み分けさせる。 ②「このように~」が文章全体を指す、まとめの指示語であることを知る。 (3)「~が~です 。」「~は~です 。」をはっきりさせて発表したり書いたりすることができる。 (4)実際 のたん ぽぽ を題材 にし て、 気づい たこ とや観 察し たこと を相 手に 分かる よう に、説 明的文 章を書き、表 現の幅を広げ ることができる。 1 【説明文教材系統表】 学年:単元名 文型・キーワード 文末表現 段落・文章構成 接続語・指示語 キーセンテンス 【1年】 ・ 「これはなんのくちばしで ・「 これは~のくちばし ・問いと答えの文に気づ ・「 そして」で説明をつけた いろいろなく しょう」 です 。」の答え方に慣れ く。 すことを知る。 ちばし 問いを表す文型に着目す る。 る。 表現・理解 ・写真と文章を照応する。 ・3種類のくちばしとえさのつ ながりを理解する。 ・主語、述語のつながりを確か める。 じどう車くら ・「~しています」を学ぶ。 ・「 ~います 。」「~あり ・「仕事」と「作り」の文 ・「 そのために」で理由を説 ・「 仕事」と「作り」を考え片 べ ます。」を学ぶ。 に気づく。 明することを知る。 仮名も使って文章に書く。 どうぶつの赤 ・ 「生まれたばかりの様子」 ・「~ようになります。 」 ・「ライオン」と「しまう ちゃん 「大きくなっていく様子」 「~のです 。」の書き方 ま」のちがいを比べる。 を比べながら読む。 を知る。 【2年】 ・時間の順序を表す語「春 ・「~ます。」様子を表す ・形式段落を理解し、一 たんぽぽのち になると」 「二・三日たつと」文と「~のです。 」 「~か 番大事な文が分かる。 え 「やがて」「このころ」に着 らです 。」理由を表す文 ・意味段落に分ける。 目する。 の文末表現の違いを読み 分ける。 サンゴの海の ・繰り返し出てくる語「か 生きものたち かわりあって」に着目する。 ・中心になる一文(キーセ ンテンス)が分かる。 1本の木 ・問いと答えの文がさが せる。 ・「問いの文-例示-まと めの文」の文章構成の大 体をつかむ。 ・時間の順序を表す語 「ま ず」 「つぎに」 「そのつぎに」 を知り、使えるようにする。 ・動物の赤ちゃんについて書く のに必要な事項が分かる。 ・説明の順序を考えて語や文の つながりに注意して書く。 ・観点ごとの違いが読みとれ る。 ・「 このように~」がまとめ ・挿絵を手がかりに文章を読み の指示語であることを知る。 とる。 ・主語、述語の関係に注意して いる。 ・教材文と事実を比べ、相手に 分かるように書く。 ・事柄の順序を考えながら読 む。 ・片仮名を使って「生き物カー ド」を書く。 ・事柄の順序を考えながら語や 文の続き方に注意して書く。 ・書かれている文章に合う挿絵 を見つけたり描いたりする。 【3年】 ・「 ありは、ものがよく見え ・「~でしょうか。」とい ・段落(形式段落)を理解 ・「はじめに→次に」(順番) ・「答え」がどのようにして出さ ありの行列 ません。それなのに、なぜ、あ う表現が「問い」であるこ する。 「しばらくすると→やがて→ れたかを知るために「中」の部分 りの行列ができるのでしょ とを理解し、問題提起の ・形式段落のつながりか よう やく→そのうちに」(時 を丁寧に読む。<内容理解> うか。」という表現が「問い」 表現を理解する。 ら、意味段落を考える。 間)「すると→それで」(結果・ であることを理解し、答えの 理由)を簡単に理解する。 文を探す。 すがたをかえ ・1段落「なんだか分かりま ・8段落「~のは、~か ・文章全体が、「はじめ」 ・「いちばん分かりやすいの ・大豆をおいしく食べるくふう る大豆 すか」=「問いかけ」、「それ らです。」、「そのうえ、 「中」「終わり」の三つで構 は→次に→また→さらに→こ にサイドラインを引かせること は、大豆です。」=(一応の) ~ためでもあります。」 成されていることを理解 れらのほかに」(順番)を理解 によって、「中」の部分について、 「答え」であることを理解す という表現から、多くの する。 する。 何がどのように分けて説明され る。 食べ方が考えられた理由 ・「はじめ」の段落に問い ・「 このように~」がまとめ ているかを理解する。 がここだということを理 と答えがあり、「中」に工 の指示語であることから、8 解する。 夫があり、「終わり」に理 段落、9段落が「終わり」で 由があることを理解する。あると分かる。 8 ○ 授業実践について 各学年で作成した「読みの視点シート」に基づいて、説明文教材についての研究授業を行った。各学年の 担任2名が先行授業と研究授業を行い、論理的な文章の読み取りやその活用について指導法の改善を進めた。 段落相互の関係やキーワード、指示語、接続語等を手がかりにして文章の内容を読み取ったり、段落の内 容を要約したりする学習を意図的に設定し、継続して積み重ねていくことで、児童の読む力の向上を図った。 先行授業後の授業検討会では 、「書き込む内容が多い」「4・5・6段落のつながりに注目させて授業を 展開したほうがねらいが定まる」などの意見が出され、それに基づいてワークシートを変更するなどした。 変更前 (4年「アップとルーズ」) 変更後 【ポイント2】基礎的・基本的な事項を徹底する指導 1 身に付く授業の工夫 ○週案作成時に毎時間のねらいや身に付けさせる力や内容を明確に設定するとともに、授業のねらいを板書 して児童に明確に伝えることで、ねらいのはっきりした授業づくりに取り組んだ。 ○校内研修の研究授業にお互いできるだけ多く参観し合ったり、普段の教員同士の教室訪問を盛んにするな どして、教員同士の授業改善に取り組んだ。また、身近な優れた実践を紹介しあったり、各担任の取り組 みを紹介しあうなどして、教員相互の情報交換を密にし、指導力の向上を図った。 ○国語では、授業中に新出漢字の定着を図る時間を設定し、基礎基本確認テスト等により新出漢字のテスト を行った。また、文章の中で漢字を書いたり読んだりすることや、漢字事典等を活用する機会を多く設定 することで、学習した漢字の確実な定着が図れるようにした。 ○算数では、授業中に計算タイムを位置づけて基礎的な計算力を高めるようにした。また、立式や手順など 考えを言葉や図で表現する時間を確保するとともに、考えを発表したり考えを交流したりする場を設けた。 2 少人数指導・TT指導の充実 ○算数の少人数指導では、少人数担当と担任との連携のもとに、学期や単元、指導内容に応じた柔軟なクラ ス編制をし、基礎・基本が確実に身に付くとともに、児童の学習意欲を伸ばせるよう授業を工夫した。 ○国語については国語等教科支援講師(国語を中心とする各教科等の指導において、TT や少人数指導にお ける指導の充実を図るために配置したマイタウンティーチャー)を活用して T・T 指導を行い、個に応じ た支援ができるようにした。また、特に個に応じた支援が必要な児童がいるクラスには、その時間の空き 教員や学校支援員等が入り、個別の支援ができるような体制づくりをした。 3 くり返し学習・ドリル学習の充実 ○前橋市の基礎基本確認テストやまとめテスト等を活用し、繰り返し学習やドリル学習を行い、基礎・基本 の徹底に努めた。 ○基礎基本確認テストやまとめテストは、週毎の実施計画を作成して授業への位置づけを明確にするととも に、担任と教科担当とで連携・協力して効果的に実施できるようにした。また、テスト実施後は専用のフ ァイルに綴じ込み、家庭へ実施状況を知らせるなどして、学校と家庭で連携して取り組むようにした。 ○時程表を見直し、朝学習を帰りの会の後に移動して「お帰りドリル」の時間とした。お帰りドリルでは基 礎基本確認テストや漢字や計算プリント等を行い、必要な児童には引き続き放課後指導できるようにした。 9 4 補充指導・個別指導の充実 ○各学年、週1時間の補充時間(桂小タイム)を設定し、補充指導や個別指導の時間とした。特に1年生に ついては、寺子屋ボランティアの協力を得て、書き取りや計算練習に取り組んだ。 ○「お帰りドリル」の後、放課後に個別指導を行った。高学年については、担任の他に副担任(理科専科、 算数少人数担当)が入って個別指導を進めた。 5 朝読書の充実 ○朝の時間帯を見直し、集会をする日以外は朝読書(10分~20分)に取り組むことにした。読書に親しみ、 読む力の基礎をつくるための時間とするとともに、落ち着いて1時間目の授業に取り組めるようにした。 【ポイント3】学習規律の徹底と学習習慣づくり 1 学習規律と学習習慣について 本校の児童の実態を考えたとき、基本的 な学習習慣を定着させることや、授業中の 学習規律の徹底が欠かせない。そこで、学 習指導の工夫と併せて、全校体制で学習習 慣づくりと学習規律の徹底に取り組んだ。 ○「学習のきまり」の作成と配布 低学年用「じぶんをよくするおべんきょ うのきまり」と中・高学年用「自分を高め る確かな学習」を作成し、全校で低中高ブ ロックを通して系統立て、全職員の共通理 解のもとで、児童の学習習慣づくりに取り 組んだ。従来は各担任に任されていた部分 が多く、学年やクラスにより指導にばらつ きがあったが、全学年を通して学習の決ま りを徹底させることで、児童の学習態度や 学習への取り組みに改善が見られた。 ○「学習のきまり」アンケートの実施 児童の意識を高めるために、9月と12月に アンケートを実施した。9月の結果で課題 となっていた、「次の時間の用意」や「学習 中の姿勢 」「相手を見て話を聞く」等につい て重点的に指導を行った。 桂萱小学校 自分を高める確かな学習 中学年 ①次の授業の前に、教科書や ふでいれを机の上に用意 しよう。 ⑤必要なことはノートに しっかり書こう。 ・日づけ、ページ ・行あけで見やすく ・下じきをしく ・じょうぎで線を引く ②授業の始まりを守ろう。 ・チャイム着席 ⑥学用品をそろえよう。 ・えんぴつ (HBかBを5本以上) ・消しゴム、下じき、名前ペン ・ミニじょうぎ、赤えんぴつ ⑦宿題はかならずやって わすれずに出そう。 ③話している人の方を見て 最後まで話を聞こう。 ④名前を呼ばれたら返事をし 、 はっきりと答えよう。 ・聞きとれる声の大きさで ・「 ・・です 。」 「・・ます 。」をつけて発表 しよう。 ⑧家庭学習を必ずしよう。 ・学習時間のめやす 学年 10分 ・よい本をたくさん読もう。 「学 習 の き ま り 」ア ン ケ ー トの 結 果 ① 次 の 時 間 の 用 意 (低 ・中 ・高 ) 9月 12月 ② チャイム 着 席 (低 ・中 ・高 ) 9 月 12月 ③ きちんとした 姿 勢 で 授 業 (高 ) 9月 12月 ④ 話 し 手 を見 て 最 後 ま で 聞 く ( 低 ・ 中 ・ 高 ) 9 月 12月 ⑤ 指 名 で 返 事 、 は っき り 答 え る(低 ・中 ・高 ) 9 月 12月 ⑥ 必 要 な こ と ノー トに し っか り ( 中 ・ 高 ) 9 月 12月 ⑦ 学 習 用 具 そ ろ って い る(低 ・中 ・高 ) 9月 12月 ⑧ 宿 題 、作 品 期 限 に提 出 (低 ・中 ・高 ) 9月 12月 ⑨ 家 庭 学 習 必 ずする(中 ・高 ) 9月 12月 ⑩ 本 をた く さ ん 読 む ( 低 ・ 中 ・ 高 ) 9 月 いつも だいたい いいえ 12月 0% 20% 40% 10 60% 80% 100% ○合言葉「話は目で聞く」による指導の徹底 「相手を見て、話をしっかり聞くこと」はすべての基本である。そこで、校長の講話で「話は目で聞く」 を合言葉としていくことを児童に伝え、職員も児童も意識して取り組むこととした。その後も、授業や集会 等で継続的に指導し、学習規律の基礎づくりとした。 2 家庭学習の充実 基礎・基本的な学力の定着には、家庭学習の充実が欠かせない。そのための児童用資料として、学年別の 「自主学習メニュー」を作成し、「自主学習ノート」とともに全児童に配布した。また、保護者向けの資料 も配付し、家庭での協力を依頼した。 ○「家庭学習」と「自主学習」について 本校では、「自主学習」とは宿題以外に家庭で自主的に取り組む学習(勉強)ととらえ、全児童が集中し て30分以上家庭学習をすることを目標とした。 具体的には、低学年は30分以上、中学年以上は「学年 10分」以上を「家庭学習」の時間と設定した。 ○「自主学習メニュー」と「自主学習ノート」の活用 児童は、宿題が終わった 自主学習メニュー(6年生) ら、各学年の「自主学習メ ニュー」を参考にして、「自 学習を始める前に ・机の上の整理整頓をしてから学習を始めよう。 ・学習するときはテレビを消そう。 主学習」に取り組む。学習 した内容は「自主学習ノー 国語 算数 ト 」 に記入 する 。「 自主学 ○音読 ・今日学習したことをもう一度ノートに書いて、 習ノート」は定期的に担任 ・今学習しているところや、明日学習すると 練習してみよう。 に提出することになってい ころをすらすら読めるようにしよう。 ・計算ドリルや教科書の問題をやり、自分で答 ・すらすら読めるようになったら、会話や句 え合わせをしよう。 るが、保護者にもできるだ 読点、まとまりなどに気をつけて読もう ・テストやプリントで間違えた問題をもう一度 け目を通してもらい、丸を ・情景を思い浮かべたり、人物の気持ちを想 やり直してみよう。 像しながら読もう。 ・分からない問題は、教科書やノートを見て調 つけたり確認のサインをす ・詩や俳句などを暗唱しよう。 べよう。 るなどして、児童の取り組 ○漢字 ・速く正確に計算できるようにするため、時間 ・新しく習った漢字や覚えていない漢字を練 を計って計算練習に取り組んでみよう。 みを励ましてもらうように 習しよう。 した。 ・漢字のへんやつくり、筆順、送りがなに気 ○家庭学習に関する授業の をつけて練習しよう。 ・短文作りに取り組もう。 実施(学習参観時) ○言葉 12月の学習参観におい ・国語辞典や漢字辞典を使って、意味や使い 方などを調べよう。 社会 て、各学級で家庭学習や家 ○読書 ・学校で学習したことを読み直して、大事なと 庭での過ごし方等について ・いろいろな種類の本を読んでみよう。 ころをノートにまとめよう。 ○その他 ・歴史年表を作ったり、人物や出来事について の授業を行った。児童への ・教科書の文をていねいにノートに写してみ まとめたりしてみよう。 アンケート結果や自主学習 よう。 ・資料集、地図帳、インターネットなどを使っ ノートの取り組み状況等を ・楽しかったことや心に残ったことを日記に て、今日習ったことを詳しく調べよう。 書いてみよう。 ・明日学習するところを読んでおこう。 もとに、親子で家庭学習に ついて考える機会とした。 その他 ・市販のドリルや問題集などに取り組んでみ よう。 ・ニュース番組を見て親子で話し合おう。 ・新聞や雑誌などの切り抜きを集めてみよ う。 ・百人一首など詩歌の暗唱をしよう。 ・パソコンでのローマ字入力が、速くできる ように練習しよう 理科 ・学校で学習したことを読み直して、大事なと ころをノートにまとめよう。 ・実験や観察の目的、方法、用具、手順、結果、 まとめなどをもう一度整理しよう。 ・分からなかったことや、疑問に思ったことを 図鑑やインターネットなどで調べよう。 ・明日学習するところを読み、予想を立ててみ よう。 桂萱小学校では、家庭学習の時間は「学年 10分」を目安にしています。6年生は宿題を入 れ60分です。しかし、来年中学生となる皆さんとしては、宿題以外に1時間程度は学習の習慣 をつけてほしいと思います。毎日続けてみましょう。きっと力がつくはずです。 11 (自主学習ノート 成 2年) 果 ポイント1「読む力を高める国語科指導の工夫(校内研修としての取り組み)」について ○教材の内容理解で終わってしまいがちだった学習の視点を絞り、言語能力や論理の組み立てを中心に 教材研究を行った結果、各学年で身につけて欲しい説明教材の「読みの力」を抽出することができた。 ○系統図を作ることで説明教材の学年毎の重要ポイントが浮き彫りになり、授業でのとりあげ方の軽重 が明確化され、教材が変わっても自分の力で内容を読みとれるような児童を育てるための系統的な学 習の積み上げが考えられるようになった。 ○校内研修で各学年の説明文教材についての授業研究を中心に、論理的な文章の読み取りやその活用に ついて指導法の改善を進めることができた。 ポイント2「基礎的・基本的な事項を徹底する指導」について ○日々の授業実践において、ねらいや身に付けさせる力や内容を明確にした授業づくりや、基礎・基本 を確実に身に付けさせる工夫等に取り組んだ結果、児童の学習に取り組む姿勢が改善されてきた。 ○少人数指導では、指導者の連携のもとにクラス編成や指導方法について柔軟に対応することで、児童 の実態に応じた指導ができるようになった。また、TT指導では校内の職員や支援員等を最大限に活 用することで、個に応じた支援を進めることができた。 ○基礎基本確認テストやまとめテストについて教員の意識が高まるとともに、ドリル学習やくり返し学 習の徹底、家庭との連携等について学校全体で取り組めるようになった。 ○「お帰りドリル」の時間や補充指導の時間を有効に使い、個別指導を進めることができた。 ○朝読書を通じて読書に興味を持つ児童が増え、児童全体の読書量も昨年度より増加した。 ポイント3「学習規律の徹底と学習習慣づくり」について ○「じぶんをよくするおべんきょうのきまり(低学年)」「自分を高める確かな学習(中・高学年)」で 全学年を通して学習の決まりを徹底させることで、児童の授業への取り組む姿勢が改善されてきた。 ○学年別に具体的な「自主学習メニュー」を作成し、「自主学習ノート」も配布したことで、積極的に 自主学習に取り組む児童が多くなった。 ○学校と家庭とで連携して、家庭学習の習慣化を図る取り組みを進めてきたことにより、家庭学習を必 ずしているという児童の割合が増え、家庭学習の時間が30分未満という児童の割合が減ってきた。 課 題 ○校内研修の「説明文における読みの視点の明確化」については、本年度スタートしたばかりであり、 今年作成した「読みの視点シート」や「単元系統関連図」を活用して、さらに研修を深めていきたい。 ○少人数指導やTT指導の校内体制は整いつつあるので、今後はさらに補充学習や個別指導の指導方法 について研修を深め、児童全員に基礎・基本を確実に身につけさせられるようにしていきたい。 ○学習規律や学習習慣について、児童の意識は高まってきたが、確実に定着するまでにはまだ時間がか かると思われる。今後も継続して、全校体制で家庭と協力しながら取り組んでいきたい。 12 前橋市立桂萱東小学校 全国学力・学習状況調査等から見られる課題 ①全国・学習状況調査の結果が全国平均以下 国語・算数とも、全国平均をやや下回る。特に、活用力を問う問題については課題が 多い。基礎的な事項を十分習得させるとともに、問題文を読んでじっくり取り組む意欲 も育てていく必要がある。 ②標準学力検査の結果が全国平均をやや下回る。 低学年は全国平均に達しているが、高学年は一部分を除いて国語・算数ともに全国平 均をやや下回る。基礎・基本の徹底した指導が必要である。 ③基本的な学習習慣・生活習慣の形成が不十分 授業中の姿勢、発言の仕方、話し合いの仕方などの基本的な学習習慣が十分身に付い ていない児童が多く、それが学力向上を妨げていると考えられる面がある。考える・発 表する・意見を練り上げる・思考を深める場面をしっかり指導することが必要である。 また、よりよい生活習慣が身に付いていないために学習習慣が身に付かない面もあるの で合わせて指導する必要がある。 改善のポイント ポイント1 実態と課題に即した校内研修 調査結果の分析等から課題を把握して研修テーマを設定し、具体的な改善策を整理 し、明確化して校内研修を進めた。 ポイント2 授業改善の徹底 算数と国語を重点に、校内研修と連携しながら授業改善を図った。全職員が、課題 の解決を意識し、ねらいを明確にした授業を実施した。 ポイント3 学びを支えるがんばろうプロジェクトの推進 児童自ら考えるよりよい学校づくり「がんばろうプロジェクト」に取り組み、児童 自らが自分を振り返ってよりよい生活習慣が身に付けられるような取り組みを進め た。 実践事例 【ポイント1 実態と課題に即した校内研修】 ①研修テーマと組織 平成 19 年度学力学習状況調査等の分析から、基礎・基本の徹底した指導と基本的な学習 習慣の必要性、意欲的に学習に取り組める児童の育成を課題とし、研究主題を次のように 設定して取り組んだ。 ○研修テーマ 確かな学力を身につけ、学びの楽しさを実感できる児童の育成 ~よりよい学びの習慣作りと学び合いを取り入れた授業の工夫を通して~ 13 ○研修組織 国語科・算数科の授業改善と学習習慣の確立を進めるため、「国語授業改善部会」「算数 授業改善部会」 「学習習慣確立部会」の三部会を組織した。さらに、学年ごとの部会を組織 してそれぞれの部会が活動内容を共有しながら研修を進めた。 ②各部会の取り組み <国語授業改善部会・算数授業改善部会> 1)実態の把握と迅速な手立て まず、学年単位で単元毎の理解度をデータ化し分析、問題点を明確にした。それらを各部会 で集約し、学校全体としての課題の傾向や、解決のための具体的な手立てを話し合った。国語 では言語事項、.算数では図形領域が学校全体として課題であることが分かったのでその分野 について学校全体で重点的に取り組むようにした。 2)指導案作成の支援や指導に関する資料についての情報提供 指導案作成の際には、部会として専門的な立場から内容についてアドバイスを行った。 また、指導に関する資料やさまざまな教材について情報を収集し、校内研修で紹介したり 校内のサーバに保存して共有できるようにした。 <学習習慣確立部会> 1)よりよい学びの習慣「学習のやくそくまもるくん」の徹底 掲示物で意識づけ 定着度の確認 本校 とし て身 につ け させたい学習習慣を、 「確かな学力を育成す るために」(県教委)・ 「学習習慣形成のため のヒント集」(前橋市教 委)を参考として、発達 段階にあわせて整理し (10 項目)、月ごとの全 校共通項目を設定、児 童・家庭への周知、約 二週間から一カ月で児 童・教師の評価を行い、 定着度の確認と次月へ の取り組みにつなげて いくなどして習慣化を 図った。 2)家庭学習の充実 家庭学習について、学級懇談会や通信での趣旨説明と協力依頼を行い、発達段階に合わせた 目安となる時間等を提示した。また、それに見合った学年共通課題を中心に取り組んだ。特に 高学年の算数科では、既習事項のより確かな定着を図るために、プリント課題の表面は現在の 学習内容、裏面は既習事項を印刷するなど課題の内容も児童の実態にあったものを工夫した。 【ポイント2 授業改善の徹底】 標準学力検査、全国学力学習状況調査の結果や回答状況などを詳細に分析し、学習の基 本である国語科・算数科の授業改善に全職員で取り組んだ。特に基礎・基本を確実に習得 させること、学びの楽しさを感じられるような学び合いの場を作ることに重点を置いた授 業改善を行った。 14 ①一人一公開授業の実施 算数・国語科に絞り(専科教員は除く)一人一授業を公開し、お互いに見合うことで授業 力向上を目指した。授業の視点や指導方針は、学力テスト等の分析結果から分かった課題 を踏まえたものとした。 また、児童同士の学び合いを進めることで、学ぶことの楽しさを味わわせることができ ると考え、学び合いの促進が図れるような学習形態を工夫した。問題解決の過程で自立解 決を行ったあとに隣の友達に自分の考えを説明する、グループの中でそれぞれの考えを発 表し合って話し合う、全体の中で自分の考えを説明するなど、ねらいに沿って様々な形態 をとった。また、付箋紙を使って意見を類型化したり、実物投影機で自分の考えが書いて あるノートやワークシートを大きく映してみんなに自分の考えを伝えたりするなど、方法 も工夫した。 < 一人一授業公開の様子> 2年生 算数 新しい計算を考えよう 「ばらばらになっているおだんごをくしに さしてならべよう」という課題を児童に提示 し、グループで具体物を操作させることでか け算の意味を考えさせていった。児童は、グ ループで意見交換しながら試行錯誤しておだ んごをならべていくことで、数のまとまりと そのいくつ分というとらえ方に気づいていっ た。 考えを発表する場面では、実物投影機で考 えを書いたワークシートを大きく映すことで 発表者の考えをわかりやすく伝えることがで きていた。 6年生 国語 平和のとりでを築く 初めて出会う文章を自分の力で読み取っ ていく力がやや弱いことが課題であったの で、補助教材を使って段落の要旨やそのつ ながりなどを自分の力で読み取る学習を日 常的に行った。 本授業では、一人一人で段落の要旨を読 み取って付箋紙に書かせ、それらをグルー プで出し合って文の構成を考えることで学 び合いを深めた。児童はお互いの読み取り を比べながら文の構成を考えていくことが できた。 ②授業研究会の工夫 校内の代表授業の際の授業研究会は、ワークショップ形式で行った。はじめに授業場面 を写真で振り返りながら、授業者からの説明や討議してほしいことを話す、次は、グルー プごとに付箋紙を使って授業のよかった点、さらに改善できる点を代案を考えながら話し 合う、最後にグループでまとめて提案していくという形式を取った。 小グループで話し合ったことや、付箋紙に自分の考えを書いていくことでだれもが話し 合いに参加できた。また、代案を出していくことで、次の授業の改善について具体的な手 立てが考えられた。一人一授業の研究会は、記入が簡単な評価シートを用意し、それを元 に効率的に研究会を実施した。 15 グループで視点にそって意見を出し合う グループの意見を交流しあう ③ICTの効果的な活用 授業のさまざまな場面でICTを効果的に活用した。特に、計算や漢字の読みといったよう な簡単な問題を次々に掲示して習熟を図るフラッシュ型教材の活用、実物投影機を使って 児童のノートや作業の手順をわかりやすく示すなど授業のねらいを達成するためのICTの活 用が多くなされた。 フラッシュ型教材で基礎基本の定着を図る ノートやワークシートを映して発表させる 操作場面を大きく映す 教科書を大きく映して着目させる 16 ④楽しい学びの環境整備 児童が楽しく学ぶことができるように掲示物や教室環境の工夫を行った。 低学年では、 「ふじだな朗読」と題して、校庭の藤棚の下で遠くに届く声で朗読させること で、はっきりした大きな声を意識させることができた。中学年では、教室のドアに新出漢字の カードを掲示したり、算数の問題を掲示して読んでから入ったりなど遊び感覚で知識を増やす ことができるように工夫した。児童は生活の中で自然に問題を解いていた。高学年の利用する 算数教室の壁面には、算数クイズと解答用紙、それを入れる箱が用意された。児童は友だちと 相談しながら、楽しんで算数クイズにチャレンジしていた。 大きな声で「ふじだな朗読」 国語のドア 【ポイント3 学びを支える「がんばろうプロジェクト」の推進】 児童自ら学校生活を振り返り、よりよい学校をつくっていこうという児童中心の活動「がん ばろうプロジェクト」に全校体制で取り組んだ。 各学年では、児童に自分たちの生活を振り返らせることで、よりよい学校にするために 直すべきことはどこかを具体的に気づかせるように働きかけた。例えば、 「トイレのスリッ パをそろえる」「.大きな声であいさつをする」など、すぐ取り組めて評価可能な課題をみ つけさせ、達成できたらシールを貼っていくといったようにはっきり見える形で自己評価 の方法を工夫した。 委員会活動では、高学年の児童がリーダーシップを取り全校児童に働きかけを行った。 給食で牛乳をしっかり飲むことを呼びかける「のむのむ隊」 、あいさつがしっかりできるよう 登校時に門の前で呼びかけたり、学級で実態調査をしたりする「あいさつ隊」等の活動を通し て、よりよい生活習慣が学校全体に定着するよう児童自ら働きかける活動を推進した。 めあてができたら葉を貼っていく 牛乳のむのむ隊(給食委員会) 17 成果 ○基礎基本の定着を図るために前橋 市の全小中学校で実施している「学 期末まとめテスト」の結果について、 8月と12月を比較してみると、国 語では全校平均で、90 ~ 100 点の児 童の割合が増え、0 ~ 70 点の児童の 割合が減っており、全体的な得点率 が上がっていることが分かる。また、 算数においては、90 ~ 100 点の児童 の割合はほとんどかわらないものの、 70 点~ 79 点の児童の割合が減り、80 ~ 89 点の児童の割合が増えているこ とから、中位群の児童の得点率が高 くなっている傾向が見られる。以上 のことから、算数・国語の基礎的な 事項について確実に習得している児 童の割合が、少しずつではあるが増 加していると考えられる。 % % ○「学習のやくそくまもるくん」に全校共通で取り組み、短い期間で評価を繰り返した こと、児童自身の活動からそれらを推進したことで、よりよい学習習慣の定着が見ら れた。 ○「がんばろうプロジェクト」において、全校の児童が自ら自分の生活を意識的に振り 返り、課題を一つずつ解決していったことにより、学校生活に関わる生活習慣は大き な改善が見られた。 ○授業におけるICTの活用が進み、教員のICT活用指導力の向上が見られた。 ○一人一授業の公開・参観を重ねることで自分の指導を振り返る機会を多くもつことが でき、ねらいを明確にし、学習形態を工夫した授業が行われるようになった。 課題 ①徹底した全校体制と指導者の意識改革のもと、生活習慣・学習習慣の確立両面から、さ らなる学力向上を目指す。 ・単元テストや今後行われる学力テスト等の分析を進め、習得の不十分な分野を重点 的に指導する。 ・学習習慣・生活習慣が学力向上の基礎となるので,今後も全校同じ歩調でくり返し 指導する。特に、清掃の仕方、給食の配膳の方法など基本的な事項については学校 全体でよりよいやり方を統一し、徹底して指導する。 ・家庭との連携をさらに図れるような手立てを考え実施する。 ②ICTの活用・一人一授業等、日常的な授業公開・授業研究会をさらに進め、教師の一層 の資質向上に努める。 ・ICTの活用について授業場面に即して考えていくような研修を実施し、ねらいに即し た効果的なICT活用が進むようにする。 ・日常的な授業公開をさらに進め、お互いが切磋琢磨して授業力を高められるように する。 18 前橋市立粕川小学校 1 全国学力・学習状況調査から見られる課題 学力 学習状況 国語 算数 テキストから文章を抜き 計算問題や、公式を用い 出す問題はできるが、テ て問題を解くことはでき キストを読んでテキスト るが、文章題の立式や公 に対する自分の考えを、 式を導き出す過程を問わ 根拠を明らかにして書く れると正答率が下がる。 問題の正答率が低い。ま 家での、1日当たりの 学習時間は全国平均 より短いにもかかわ らず、予習と復習に十 分に取り組んでいる と考えている児童が 多い。 た無解答(空欄)が多い。 テキストを理解し、既習事項を用いて考え、 自分の考えたことを言葉や式として表現 学 習規 律 や 学 習 習 家庭にも協力 慣を定着させる を求める。 する「活用」に課題がある。 2 改善のポイント 「活用」力の向上 学習規律の定着 学力向上宣言 ○児童と保護者に、 「活用的学力」と「PISA 的 これまであっ 学校として学力向上 学力」とは同一ではないが、両 た 20 項目の「学 に取り組むことを伝 者とも「知識・技能等を実生活 習のきまり」を える。 の様々な場面に活用する力」と 見直し、13 項目 ○保護者に対して、 いう意味では共通である。 で再編成する。 本校の児童の実態を PISA 型「読解力」育成の手 項目数を減らし 知らせ、家庭学習で 法(読解力向上プログラム・ 重点化すること の協力を求める。 H17 文部科学省)を利用し、活 により児童に分 ○児童に対して、毎 用力の育成をめざす授業改善 かりやすくし、 日一定量の宿題を出 を行う。 徹底する。 し、家での学習習慣 の定着を図る。 校内研修の取り組み 活用力の育成をめざす国語・算数の授業改善 ~PISA 型「読解力」育成の手法を利用して~ 19 3 活用力の育成を目指す国語・算数の授業改善に向けて (1)児童に身に付けさせたい能力 国語 算数 ○テキストを読んで理解し、筆者の意図や登 ○式に表現する能力 場人物の思考や行動について推論し、テキス ○図に関連づけて式を理解する能力 トに書いてあることを根拠にして、自分の意 ○式を使って考える能力 見を表現する能力 ○式を介して議論する能力 (2) PISA 型「読解力」を利用した授業改善 国語 算数 書かれていることを根拠にして「筆者はな 式を導く活動と、式を言葉や図等を用いて ぜそう書いたのか」を推論し解釈する場があ 具体的に説明する活動の、双方の場がある授 る授業に転換する。 業へ転換する。 操作活動 論理的 テキストに 書かれてい 推論し 自分の知 ることを根 識と結び 拠に つけて に表現 する 具体的事象 式の意味を を式に表す 具体的に説 明する (3)授業実践例 国語 3年 単元名 「ちいちゃんのかげおくり」(光村図書) 【指導のねらい】 与えられた情報の関係をよみとり、場面の変化から登場人物の気持ちの変化を判断する。 《テキスト》 《主な学習内容》 「ちいちゃんのかげおくり」の、最初と最後の ● 上下の文章で、違っているところに線を引く。 場面が上下で書かれたワークシート ● 違っているところに着目し、場面の変化を捉え る。 第一場面 家族4人そろったかげおくり ● 自分がちいちゃんの立場だったらどんな気持ち になるか、自分の体験や知識と結びつけて、ち 第四場面 いちゃんの気持ちを考える。 ちいちゃん1人のかげおくり 【課題】 ● ちいちゃんの気持ちの変化を、テキストに書い てあることを根拠にして、自分の考えとして書 ちいちゃんの気持ちはどのように変化し く。 たか、根拠をあげて自分の考えを書く。 20 国語 5年 単元名 伝え合って考えよう 「人と『もの』との付き合い方」 (光村図書) 【指導のねらい】 新聞記事の内容を要約し、他の人に伝える活動を通して、文章を分析的に読み、文章の中の中心 部分と付加的な部分を読み分けて内容を理解する。 《テキスト》ゴミ問題に関する新聞の記事(社 《主な学習内容》 説、投書欄の投書、その他のコラムや記事な ● ゴミ問題に関する新聞記事を持ち寄る。 ど) ● グループ内で手分けをして記事を読み、課題に 適した記事を選び出す。 【課題】 新聞記事を要約し、出典をはっきりさせて ● 記事の中心的部分を見つけ、要約する。 紹介する。 国語 6年 ● 出典をはっきりさせて紹介する。 単元名 筆者の考えを受け止め、自分の考えを伝えよう 「平和のとりでを築く」「自分の考えを発信しよう」(光村図書) 【指導のねらい】 学校図書館やインターネットを利用して、提示された命題を裏付ける事例を探す活動を通し、分 析的に読む。 《テキスト》 《主な学習内容》 命題文「原爆ドームは世界遺産に認められた。 ● 命題を確認し、資料収集を行う。 認められた理由は、…」 ● 資料から適切な例を選び、命題文に続く具体例 の段落を作成する。 【課題】 原爆ドームが世界遺産として相応しい理 ● 具体例の段落を発表し合い、事例の一般性・分 由を、根拠をあげて書く。 かりやすさ・出典の信頼性・命題との整合性の 観点から相互評価する。 算数 1年 単元名 たしざん(東京書籍) 【指導のねらい】(計算方法を具体的に説明する活動) 7+5=12の計算方法を、10のかたまりを作ることに着目して説明する。 《テキスト》 《主な学習内容》 公園に子どもが7人いました。あとからバラ ● 10のかたまりを作ることに着目してお話を作 バラで5人来たので、全部で12人になりまし る。 た。 例) 「公園に7人いました。あとから3人来て10人 【課題】 になりました。またあとから2人来て合計で12人 」 7+5=12の計算のしかたを、お話で説 になりました。 明する。 ● 発表し、クラス全体で議論する。 21 算数 2年 単元名 新しい計算を考えよう(東京書籍) 【指導のねらい】(式の意味を具体的に説明する活動) かけ算の式の意味を説明する。 《テキスト》 《主な学習内容》 5 3=15 3 5=15 【課題】 ● グループで ・式を、おはじき等の具体物で置きかえる。 ・画用紙に図を書き、説明の言葉を書き込む。 2つの式の違いを説明する。 ・1つ考えられたグループは別の説明方法を考え る。 ● 画用紙を貼りだして、グループの考えを発表す る。 ● クラス全体で議論する。 算数 4年 単元名 わり算の筆算を考えよう(東京書籍) 【指導のねらい】(計算の仕方を具体的に説明する活動) 既習事項(6 2、10のまとまり)を利用して、60 20の計算方法を説明する。 《テキスト》 6 《主な学習内容》 2=3 ● グループで 60 20=3 ・60 20を、10のまとまりで考えると 【課題】 6 6 2と同じであることに着目して、 2の式を使って、60 20=3の計 60 算方法を説明する。 20の計算方法を式・図や言葉で画用紙 に書く。 ● 画用紙を貼りだして、グループの考えを発表す る。 ● クラス全体で議論する。 算数 5年 単元名 三角形の面積の求め方を考えよう(東京書籍) 【指導のねらい】(式の意味を具体的に説明する活動) 前時に求めた三角形の面積を求める公式「底辺 高さ 2」は、高さが底辺の外にある三角形に 対しても成り立つことを説明する。 《テキスト》 《主な学習内容》 ● グループで 高さ ・倍積変形、等積変形の考え方を使って面積の求 め方を考え、画用紙に図や言葉で表現する。 底辺 ● 画用紙を貼りだして、グループの考えを発表す る。 【課題】 高さが底辺の外にある三角形にも「底辺 ● クラス全体で議論する。 高さ 2」の式が成り立つことを説明する。 22 4 学習規律の定着のために 「学習のきまり」の改善 学習のきまり 改善した点 授業の前のきまり それまで20項目あったも ①忘れ物をしないようにしよう。 のを、重点化するため13 ②登校したら、ランドセルの中身を出して、勉強する準備 項目に減らした。 をしよう ③身の回りの片づけをしっかりしよう。 帰りの会で、クラスの 「次の日必ず守ること」を 決め、その日それだけは必 ず全員の児童が守るよう 取り組む ④チャイムで着席しよう。 授業中のきまり ⑤正しい姿勢をしよう。 ⑥話す人を見て、最後まで聞こう。 ⑦進んで手を挙げて発言しよう。 ⑧名前を呼ばれたら、大きな声で「はい」と返事をしよう。 ⑨発表は(起立して) 、みんなに聞こえる声でしよう。 守れるようになったら、 ⑩板書だけでなく、大切なことや必要なことはノートに書 守ることを少しずつ増や こう。 していき、5月を目標に ⑪わからないことは積極的に先生に質問しよう。 13 項目全てを守れるよう 授業の後のきまり にした。 ⑫次の授業の準備をしてから休み時間にしよう。 ⑬宿題をきちんとやり、必ず提出しよう。 5 家庭にも協力を求める 学校通信より(抜粋) ○ 家庭学習・読書の習慣化にご協力をお願いします。 全国学習状況調査の結果や学校評価に関するアンケート結果から粕川小学校の児童は家庭学習 の時間が短いことがわかりました。学習したことを自分のものにするためには、繰り返し学習が必 要です。そのためには家庭学習が大変重要です。「勉強しなさい!」と言うだけではなく、家の中 で落ち着いて学習に取り組める時間と空間を作ってやることが大切です。子どもたちの気持ちを勉 強に向けるよい季節です。「家庭学習30分以上」という学校の目標に合わせて、テレビやゲーム のスイッチを切ってみてはいかがでしょうか。読書や考えをめぐらせる環境作りには、家のどこか らもテレビの音が聞こえてこないことが大切です。石川県のある町では、一斉にテレビを見ずゲー ムをしない日を設定して実践しているそうです。粕川小学校でもPTAでこんな運動が盛り上がれ ばいいなと思っています。 23 6 成果と課題 学力 国語科 算数科 成果 成果 ○自分の考えを文章で書くことに対し ○計算の意味や計算の仕方を説明 しようとする児童が増えた。 ての構え、意欲が向上してきた。 ○長い文章を、段落ごとに要点を押さ ○自分で立式した式の意味を、既習 えながら集中して読めるようになっ 事項を用いて言葉で説明できる てきた。 児童が増えた。 ○テキストを理解し、テキストに対す る自分の考えを、根拠をはっきりさ せて文章で書ける児童が増えた。 ○設問に対する無解答(空欄)が減少 ○公式の意味を言葉で説明できる 児童が増えた。 課題 ●作業的・体験的な活動や具体物を 用いた活動で、ただ単に活動自体 した。 課題 ●尋ねたり応答したり、グループで話 が楽しいと感じている児童もク ラスに数名程度いる。全員の児童 し合って考えを一つにまとめたりす が活動内容と学習事項を関係づ る言語活動に課題があることが新た けて捉えることができるよう、今 に見つかった。今後は、一人一人が 後は他教科・総合的な学習の時間 自分の課題を出し合ってから、グル と関連させた活動を構成してい ープで考えをまとめていくような過 く必要がある。 程を重視した活動を取り入れていき たい。 学習状況 成果 ○授業中、進んで手を挙げて発言する児童数や、ノートを自分の考えに基づいて整理した形 態で書ける児童数が増した。 ○家庭での平均学習時間は4月と比較して 1.6 倍になった。今まで学習時間が不足しがちだ った児童も家庭学習を行うようになってきた。 課題 ●全員の児童に学習意欲の向上がみられるがその程度には個人差も認められる。今後は、学 習意欲の低い児童をさらに高める手だてを講じていきたい。 ●家庭学習では宿題に費やされる時間が多いということが分かった。今後は、宿題以外にも 児童が自ら家庭学習に進んで取り組むような手だてを講じていきたい。 24 前橋市立月田小学校 全国学力・学習状況調査等から見られる課題 〈H19全国学力テストの結果から〉 ○文章の要約や、違う立場から見て文章を書き換えることに課題があった。 〈H19年度CRT学力検査の結果から〉 ○各学年共に、文の続き方の関係理解、文章の要約、文章の構成の理解などに課題があった。 〈普段の授業の様子から〉 ○短答や一問一答の形では発言できているが、様々な考えを発表し合い、答えを練り上げ高めていく ことが不十分である。 ○授業を含めた日常全般で、単語を続けたような会話をし、接続語を用いながら細かい説明のある会 話が少なく会話が深まりにくいことから、言語生活は貧しいといえる。 〈教師の願い〉 ○国語科で言語力を育成することにより、算数及び他教科において文章を読み取る力を養いたい。さ らに全教育活動で言語力の向上を図りたい。 ○読書意欲は旺盛なので、これからは、読書の量だけでなく質を高めたい。「読む」ことの本物の楽 しさを味わわせたい。 このようなことから、本校では、「思考力・表現力を育てる指導の工夫~国語科における物語文、説 明文の読解指導を通して~」をテーマに掲げて研修を進めることとした。 改善のポイント ポイント1 Ⅰ 国語科における授業改善の推進 課題解決型学習の導入 以下の3点を目的として、「つかむ」「解決する」「まとめる」「発展させる」の4つの学習過程に よる課題解決型学習を構想した。さらに、各過程において、学習形態、指導・支援の工夫を下表のよ うに位置づけ、3つの目的に迫る学習を進められるようにした。 ◆めあてや課題を明確にし学習への関心や意欲を持続させる ◆課題解決の見通しを持ち学び方を学ばせる ◆学習に対して充実感や満足感を持たせる 課 題 解 決 型 学 習 の 構 想 学習 つかむ 過程 学 習 形 態 指 導 支 援 の工夫 解 考える① 集団 個 書く① 個 決 す る 話し合う 考える② 集団 個 まとめる 発展させる 書く② 個 集団 個 (小集団) 課題提示の 個に応じた ノート又は 考え方の様々 話し合いを ノート又はワ 課題に対する考 題材の文章の展 工夫 机間支援・ ワークシー な視点に気付 もとに考え ークシ ートの えをまとめる工 開に従って自分 〈導入の工 助言の工夫 ト の 活 用 かせる工夫 を深め広げ 活用 夫〈児童の発表 の考えを展開さ 夫や初発の 〈ヒントカ (明確な選 〈板書の工夫 させる工夫 〈①との違い を生かすことと せる工夫〈物語 感想、疑問 ー ド 提 示 択と確実な ・・・グルー 〈前段階の がわかる書か 指導者の考えの の続きを創る、 から〉 等〉 積み重ね) ピングする、 板 書 の 活 せ方の工夫ー 調和を図る工夫〉 論理の展開を活 対比的に書く 用〉 赤ペンの使用 用して説明文を など〉 書くなど〉 など〉 ※この過程は基本的に、題材全体の指導、単位時間の指導の両方で活用することとした。 Ⅱ 1 課題解決型学習の各過程における指導の工夫 「つかむ過程」における指導の工夫 初発の感想や疑問を基に文章の内容に着目させたり、段落の順序を考えさせる活動を取り入れたりす ることにより、文章の内容・構成の両面からの課題をたてられるようにする。 2 「解決する過程」における指導の工夫 ① 個や集団の学びを取り入れた指導の工夫・・・ 個で考えて書く〈考える①書く①〉→集団で意 25 見を交換し話し合う→もう一度個で考えて、集団で練り上げたより深い考え方を、(書く①)に赤字で 書き加える〈考える②書く②〉という学習過程で学習することにより、児童の考えて書く力を広げ、深 めるようにする。 ② 論理的な学習展開がわかるノート(ワークシート)指導の工夫・・・前時の学習を生かす、視覚 的にも分かりやすいなどのノート(ワークシート)を工夫することにより、自力解決を促し、学習を振 り返る時に児童が自分で論理的な学習の展開がわかるようにする。 3 「発展させる過程」における学習の工夫 教科書以外の資料を用いて、学習したことや自分の知識・経験に照らし合わせ学習を広げ深めたり、 読み取ったことを基に自分の思いを書き足して教科書の物語文を韻文に表現したりすることで、活用面 の意識化、意欲化を図る。 ポイント2 言語力・学習力向上のための日常的な指導の充実 ポイント1での授業改善と共に、それを支える言語力の育成のために日常的な指導を充実させる。 Ⅰ 継続的で意識的に幅広い読み物に触れさせる読書活動の推進 Ⅱ 詩や俳句の創作活動や、意見を述べたり書いたりする表現活動の推進 Ⅲ 本校で作成している「学習のきまり」や「基本話型」に基づく日常的な指導 実践事例 【ポイント1 国語科における授業改善の推進】 ~課題解決型学習の各過程における指導の工夫~ 【つかむ過程で、学習への関心や意欲をもたせる指導の実際】・・・改善のポイントⅡの1の実践 (1)題材名 5年「ニュース番組作りの現場から」 (2)実践の概要 本文の特徴である「筆者のねらいに沿って時間を追った文章構成で書かれている」ことや「写真や図表な どの非連続型テキストを効果的に使用している」ことに気付けるようにするために、段落ごとに分けた形で 文章を提示し、その順序を二人組で考えてみる活動を行った。その際、児童の興味・関心を高めるために、 「学校で飼っている山羊が教科書を食べてバラバラにしてしまった」という場面を提示した。順序を考える 際には、必要に応じて並び替えの順番を決める大事な言葉や部分に赤で線を引かせるなどの助言をした。 (3)実践後のアンケート調査から 授業後は「頭が痛くなるほど本文を読んだ」という児童の声があった。事後調査では「楽しく学べた」が 83%、「筆者がよく考えて文章を書いていることに気づけた」が83%、「このような活動をまたやって みたい」が100%という結果だった。 段落の順序を友達と考える 切り抜きや足跡で雰囲気づくり 【解決する過程で、個や集団の学びを取り入れた指導の実際】・・・改善のポイントⅡの2①の実践 (1)題材名 6年「平和のとりでを築く」 (2)実践の概要 学習過程の【解決する】では1時間の学習の 中に、個で考え、書く①→話し合う→個でもう 一度考え、書く②という学習の流れを取り入れ た。 ①の個で考え書く学習では、一人一人が、課 3人グループでの 題に対して自分がどの文章を根拠にどう考えてい 個の学習① 話し合い学習 26 るのかをノートに書くことによって明らかにさせた。その際、書く活動が進まない児童には机間指導やヒン トカードで支援した。 話し合う学習では、まず3人グループで意見を出し合い、補い合うことで、一斉学習での発言が活発にな るようにした。そして、一斉学習で、意見を出し合い、①で自分が考えたこととの類似点、相違点について 気づかせ、様々な考えの中で、より根拠を確かに深く読み取っている内容は何か を考えさせた。 話し合う学習の後、もう一度個で考え、書く時間を設けることで、①での自分 の読みが、話し合いによってどう深まったのかを考えさせた。具体的には、①の 書く活動は鉛筆で、②の書く活動は赤鉛筆で加除修正させた。このことにより自 分の考えを視覚的にはっきりさせ、読みが広がったり深まったりしたことを、一 人ひとりに意識させた。 (3)実践後のアンケート調査から 学習のあとのアンケートでは、自分一人でじっくり考える時間と話し合う時間 を設けた学習は、よく分かるという児童が88%であった。また、今回の学習で は、一貫してノートを用い、自力でまとめることも意識させた。ワークシートを 用いなかったので最初はうまく書けないと感じていた児童が多かったが、徐々に自 ②ノートに赤字で 分で自分のノートを作ろうという意識が高まり、分かりやすいノートを書くことが 加除修正する できるようになった。 【解決する過程で、筆者の説明が対比的にわかるワークシートを工夫した指導の実際】 ・・・改善のポイントⅡの2②の実践 (1)題材名 4年「アップとルーズで伝える」 (2)実践の概要 学習過程の【解決する】書く①では、それぞれの 段落が全体の中でどのような役割を果たしているか 視覚的にもイメージしやすいようなワークシートを 工夫して作成し活用した。 工夫のポイントとしては、接続語や指示語、4, 5段落におけるキーワード「よく分かります」、「分 かりません」に着目することで、児童が主体的に段 落相互の関係をとらえるとともに図にまとめること で、文章全体の構成を視覚的にもとらえることがで きるようにしたことである。 支援では、中心文が見つからない児童には、キー ワードに着目するように助言し、本文に線を引かせ た。 視覚的に分かりやすいワークシート 使用したワークシートは、学習の流れが分かるよ うにノートに貼らせ、全体の構成をまとめる段階で再度活用させた。 (3)実践後のアンケート調査から 工夫したワークシートを活用したことにより、下位群の児童も中心となるキーワードをとらえながら内容 を読み取ることができた。学習後のアンケートでは、今回の学習は、今までの学習よりしっかり考え書くこ とができたという児童が90%であった。 【発展させる過程で、筆者の論理を活用して説明文を書く指導の実際】・・・改善のポイントⅡの3の実践 (1)題材名 1年「じどう車くらべ」 (2)実践の概要 学習過程の【解決する】では、教科書に出てきた乗り物の「しごと」と「つくり」が、「そのために」と いう有効な接続語を使って簡潔に説明されていることを、ワークシートにまとめることで理解させた。 その学習をふまえて、【発展させる】では、学んだことを活かして、車の特徴が分かりやすい既製の図書 資料から自分の好きな自動車を選び、 「しごと」と「つくり」という二つのポイントに着目させるとともに、 27 「そのために」という接続語を用いて、まとめさせた。なお、自分が発表する場合について、二つの話型(① クイズを出すように②リポーターのように)から選択させ原稿作成を行っていった。選択の基準としては、 調べた自動車についてまとめた内容を分かりやすく友だちに伝えるためには、どちらの話型が合っているか を考えさせた。二つの話型に分けることは、聞き手の場合も、興味 を持って最後まで飽きずに聞くことができると考えたからである。 (3)実践後のアンケート調査から 学習後のアンケートでは、今回の学習は、楽しかった、よく分か ったと答えた児童がそれぞれ80%であった。 また「じどう車くらべ」では、これまでの国語の授業よりも、考 えたことをしっかり書くことができたと答えた児童が、90%であ った。 好きな自動車を選び、文章化する 【発展させる過程で、物語の一場面を詩に書く指導の実際】・・・改善のポイントⅡの3の実践 (1)題材名 2年「お手紙」 (2)実践の概要 【発展させる】過程で、「お手紙」の中から一つの場面を子どもたちに選ばせ、散文を韻文に書き換える 活動を課題として授業を実践した。10月に本校が、専門講師を招いて行った俳句を作る授業で示された「俳 句をつくる三つのポイント」=①「発見する」②「観察する」③「省略する」にヒントを得たものである。 「お手紙」の登場人物の心情の読み取り等はこれまでの授 業で積み上げてきたので、この授業では、③の「省略する」 の作業を中心に行い、主人公の心情が、短い詩になっても 明確に表せることを確認した。そこで、詩の対象とした場 面での、主人公の行動をフラッシュカードで確認し、その 中から詩で使いたい行動を取捨選択させた。また、文末の 表現が「お手紙」では「・・・しました 。」になっている ことから、それを子どもたちが自由に「・・・したんだよ。」 等、自分の言葉で書き換えられるように、末尾表現を空欄 にしたプリントを使用した。 (3)実践後のアンケート調査から 児童が作成した詩 学習後のアンケートでは、いままでの授業と比べて、「この授業では考えたこと(詩)をしっかり書くこ とができた」と答えた児童は60%であったが、「これまでの授業よりも楽しかった」と答えた児童は10 %だった。ここにまとめた実践である散文を韻文に書き換える学習は、子どもたちにとってとまどいを感じ る学習だったようだ。 【発展させる過程で、続きのお話を創る指導の実際】・・・改善のポイントⅡの3の実践 (1)題材名「どうぞのいす」香山美子作 くすのき学級(本時は5年生1名を対象とした) (2)実践の概要 まず児童の実態に合わせ、お話の大体をとらえながら楽 しく読めるよう、話の筋が簡単で児童の好きな動物が登場 する絵本「どうぞのいす」を用い内容を理解させた。さら に興味・関心を持続させ、続きの話を作る手だてともなる よう紙芝居やお面・食べ物・看板・椅子・ペープサート・ 会話モデル・動作化などを活用した。こうして内容理解を ペープサートなど 話の続きを考える 深め、前述の手だても活用し、自由に想像しながら次に来 ワークシート る動物を考える課題に取り組ませた。作りたい話の内容が決まったら、それをワークシートにまとめ、文章 化できるようにした。このような学習により児童は、物語のリズム感ある楽しい展開を発展させて、次の動 物や食べ物を楽しく考えることができた。 (3)実践を振り返って 学習の取り組み方に対して、「お宝信号」(取り組み意欲を青・黄・赤のペープサートで示す)で肯定的 に評価を伝えることにより、意欲的な取り組みが見られた。自分が考えた続きの話の内容を、 「会話モデル」 28 で発表しやすいようにしたことで、文章化することも容易になった。動作化は、当初恥ずかしさから行動や 表情に少し硬さが見られたが、創った続きの物語を発表する時点では、内容を表現することに満足していた。 学習のめやすとして、ワークシート上に自己評価する項目を設けて学習を振り返る時間を確保したことも自 信や満足感につながったようである。 【ポイント2 言語力・学習力向上のための日常的な指導の充実】 Ⅰ 継続的で意識的に幅広い読み物に触れさせる読書活動の推進 初めに述べた児童の実態からしても読書活動の推進を図ることは大きな課題であり、様々に工夫した読書 指導を展開している。 各学級週1時間設定された読書活動の授業では、担任と読書指導担当、図書司書が協力して指導にあたり 自由な読書の他に、各学年の図書館利用計画に基づいた指導、本校独自の必読書を利用した指導、ブックト ークやアニマシオンなどを利用した指導などを展開している。特に、幅広い読み物に触れさせ、読書の楽し さを味わわせるようにしたいという願いから本校では下記のような「必読書」を選定し、表彰等で意欲を喚 起しながら読破運動を進めている。 本はたくさん借りているけれど、高学年なのに絵 本やマンガを借りていたり、低学年なのに小さい文 字の本を借りていたりと学年に応じた本を借りてい ない児童もいる。読書を量から質へ と移行させるために「必読書」を月 田小独自に低中高学年 で20冊ずつ 選び設定する。内容をしっかり読む ように、読んだ後、クイズに答えて 読破の合格者を決める。20冊の必 読書を読破した児童には、認定証を 与える。 Ⅱ 詩や俳句の創作活動や、意見を述べたり書いたりする表現活動の推進 幅広い表現活動によって、言語活動を豊かにするために外部講 師を招き、詩、俳句、朗読・群読の指導を受け、意欲化を図った。 さらに、前橋市主催の「若い芽のポエム」コンクールへの応募や、 上毛ジュニア俳壇への投稿をきっかけに、補充指導の時間等を使 って、詩や俳句の創作活動を進めた。 また、朝の会や帰りの会などを使って、意図的、計画的に、創 作した詩や俳句の発表、日常の出来事やテーマに沿った1分間ス ピーチや、新聞の切り抜きによるニュースの紹介発表を行ってい る。 外部講師の指導による俳句作り Ⅲ 本校で作成している「学習のきまり」や「基本話型」に基づく日常的な指導 児童の日常の会話は単語を続けたような言葉遣いで、接続語を用いながら5W1 Hがわかる文章になっていないことが多い。 まずは、右のような「がくしゅうのきまり」を作成し授業中に、声の大きさや体 の向きを意識すること、最後まではっきり「です 」「ます」で話すことなど話し方 の基本を指導した。 その上で「こんな話し方を身に付けましょう」を作成・配布し、授業中の話し合 いの仕方や、授業以外の様々な場で他者と会話する時に心がけること(用件の伝え 方など)を指導している。 29 また、相手と場に応じた話し方は、 学校だけでなく家庭と連携しての指導 も大切なことであるので、学校便りに よって、改めて「こんな話し方を身に 付けましょう」を紹介するとともに、 折に触れて保護者からの指導もお願い した。 「こんな話し方を身に付けましょう」 成 果 ポイント1 国語科における授業改善の推進 ○課題解決型学習は課題作りの工夫(児童の初発の感想や疑問から課題をたてる、文章の内容と構成と の両面から課題をたてるなど)により、児童が意欲的に取り組むことができることが分かった。 ○めあてや課題を明確にするために、はじめから発展教材に取り組むことを知らせたことにより、学習 への目的意識が高まった。 ○個で考えて書く→集団で意見を交換し話し合う→もう一度考えて書くという学習過程は、じっくり自 分の考えを持ちそれを文章にしてみることと、その考えをさらに広げたり深めたりするのに有効であ った。 ○論理的な学習の展開がわかるノート(ワークシート)指導の工夫では、視覚的にも段落相互の関係が わかるようなノート(ワークシート)を作成し活用したことにより、要点をまとめながら内容を正し く読み取ることができた。 ○課題の解決に向けて考える時間を確保したことにより、課題に対して自分の言葉で表現できるように なってきた。 ポイント2 言語力・学習力向上のための日常的な指導の充実 ○読書活動推進によって、2学期末現在で多読賞(1~4年生は100冊、5,6年生は80冊)を受 賞した児童が全校の約37%ほど、2分の1多読賞(多読賞の半分の冊数)は48%、必読書読破児 童は15%となった。読書活動を協力に推進してきたことにより、読書好き又は好きになってきた児 童が多くなってきたと考えられる。 ○詩や俳句の創作活動は児童の中に浸透し、定期的に楽しみながら創作に取り組めるようになってきた。 ○日常的な言語指導を進めたことにより、例えば職員室への入室の仕方やその際の職員への言葉遣いな どに好ましい変容が見られるようになった。 課 題 ポイント1 国語科における授業改善の推進 ○少人数とはいえ、一人ひとりに個人差があるので、個の実態に即したヒントカードや言葉かけの工夫 がさらに必要である。 ○ワークシートやノートに書く活動は、意外と時間がかかる。時間の確保と同時に、ねらいに即して書 く量や書く内容をいっそう吟味していく必要がある。 ○教科書の説明文の題材は、発展として自分の考えを書くことを組み合わせたセット単元になっている ことが多く、そのことが児童の興味関心を高めているが、新聞やニュース番組、意見文作りなど、学 習時間をかなり必要とするものが多い。そこで、よりいっそうねらいと活動を明確にした授業を構想 していくことが求められる。 ポイント2 言語力・学習力向上のための日常的な指導の充実 ○現状では、いろいろな手立てを講じて改善を図ってきているところである。学年進行による児童の発 達に合わせての指導、これらが「本物の習慣」となるような指導の工夫が求められる。 30 前橋市立広瀬中学校 1.全国学力・学習状況調査から見られる課題 (1) 学力調査から 国語 A(知識)・B(活用)の両問題とも平均正答率は県の平均を下回っている。A問題は学習内容をおおむね理解 している。B問題は知識・技能を活用する力をさらに身につけさせる必要がある。 数学 A(知識)・B(活用)の両問題とも平均正答率は全国平均を下回っている。A問題は基礎的・基本的な知識・ 技能を身につけさせる必要がある。B問題は知識・技能を活用する力に課題がある。 ≪平成19年度全国学力・学習状況調査結果について(家庭配布用資料)から≫ 課題 → 基礎学力が身に付いていない (2) 学習状況調査から Q:家で学校の宿題をやっていますか 全くしていない あまりしていない → 家庭で学校の宿題をしていない生徒 は、群馬県・全国に比べてほとんどかわ らない。 広瀬中 群馬県 全国 Q:家で学校の予習をしていますか 全くしていない → 家庭で学校の予習をしていない生徒 は、群馬県・全国に比べて非常に多い。 あまりしていない 広瀬中 群馬県 全国 Q:家で学校の復習をしていますか 全くしていない → 家庭で学校の復習をしていない生徒 は、群馬県・全国に比べて非常に多い。 あまりしていない 広瀬中 課題 群馬県 全国 → 家庭での学習時間が少ない 2.改善のポイント 【 ポイント1: 「学力向上プラン」の作成 】 基礎学力が身に付いていない → 生徒の実態に即した魅力ある授業を行う (1) 生徒の授業への要望(期待)を把握するための授業アンケートの実施 (2) 生徒の実態を十分踏まえた学力向上プランの作成 (3) 学力向上プランに基づく授業の実践 【 ポイント2: 「やっホー!*(家庭学習記録表)」の実施 】 家庭での学習時間が少ない → 家庭学習を習慣化させる (1) 生徒の日常生活に関する実態を把握するための生活アンケートの実施 (2) 生活アンケートの結果から課題を把握 (3) 家庭学習を習慣化させるための「やっホー!」の実施 (4) 「やっホー!」実施による結果の検証 * やっホー!…「やったよ!ホームワーク!」の略。家庭学習の記録をつける用紙の名称。 -1- 31 3.実践事例 【 ポイント1: 「学力向上プラン」の作成 】 (1) 授業アンケートの実施 生徒が「普段の授業」をどのように思っているのかを知り、そこから授業改善のポイントを導 き出すことを目的に「授業アンケート」を実施した。アンケートはSQS*を使用し、以下の① から③の質問内容を作成し、6月下旬に全教科・全生徒に実施した。 *SQS…Shared Questionnaire Systemの略。 マークシート式アンケートを容易に作成・集計できるシステム。 ① 授業のわかりやすさはどうか 「とてもわかりやすい」 「わかりやすい」 「わかりにくい」 「とてもわかりにくい」 の4つの選択肢の中から選択する ② もっとわかりやすい授業にするための「先生への要望」と「自分の反省」 先生への要望 先生に対しての「要望」を 自由に記述する 自分の反省 生徒自身の「反省」を 自由に記述する ③ 授業が「楽しい・満足した・充実している」時、 「つまらない・不満だ・充実していない」時 はどんな時か 「楽しい・満足した・充実している」時 授業が「充実している時など」を 具体的に記述する 「つまらない・不満だ・充実していない」時 授業が「充実していない時など」を 具体的に記述する -2- 32 (2) 学力向上プランの作成 本校で4月に実施したNRT検査と授業アンケートをもとに、教科・学年ごとに学力向上プラ ンを作成し、その中で授業改善のポイントを明示した。夏休みの校内研修で全職員が発表し合 い、共通理解を図った。 ①前橋市の「教科の努力点」か ら教科の重点を書き出し、本 年度の教科の学力向上の目 標を設定する(「学力向上の目標」は③の 課題を設定してからでも可)。 ②生徒の実態を把握する。 ○NRT検査の分析から、学 力の定着度合いを知る。 ○授業アンケートの分析から 生徒の要望や授業改善のヒ ントを知る。 ③生徒の実態と教科の努力点 から、課題を書き出す。 ④課題解決のための授業改善 のポイントを明確にする。 ⑤改善のポイントに対する学 期ごとの改善計画を作成し、 実施していく。 校内研修で他教科の課 題・改善のポイントを知 る。質疑も行われた。 (3) 授業の実践 改善計画に基づく「改善のポイント」の計画に即した授業を市教委の要請訪問で行い、指導を 受けた。 社会科の授業より 理科の授業より 課題解決に向けグルー プで話し合い、まとめ、 発表する活動を行った。 -3- 33 化学分野で、段階を追っ た課題を用意し全員到 達を目指した。 【 ポイント2: 「やっホー!」の実施 】 (1) 生活アンケートの実施 県教委発行の「ぐんまの子どものためのルールブック50」から、日常の生活の中で大切な項 目を「生活アンケート」として抜き出し、実施した。 生活アンケート 項目 1.早寝早起きをしている。 2.朝食をとっている。 3.身なり・服装がきちんとしている。 4.家の人の手伝いをしている。 5.家庭学習をしている。 6.お金を大切につかっている。 7.人に呼ばれたら返事をしている。 8.あいさつをきちんとしている。 9.人の話をしっかり聞いている。 10.困っている人がいたら助けている。 11.困ったときには人に相談している。 12.社会や学校で集団のルールを守って行動している。 13.自ら進んで清掃している。 14.自分の物や他人の物、公共物を大切にしている。 15.他の人のことを考えて行動している。 16.公共の場所のマナーを守っている。 17.間違いを素直に認めている。 18.きちんとした言葉づかいをしている。 19.他の人との約束を守っている。 20.何事も最後までやり抜いている。 21.自分の考えや意見を他の人に伝えている。 SQSを使用し、集計事務 を軽減化 (2) 課題の把握 生活アンケートの結果からワークショップ形式の校内研修を実施し、課題を把握した。 ワークショップ形式の研修で活 発に意見交換が行われ、課題の 決定がスムーズに。 学年ごとに課題を設定することにしたが、全て の学年で「家庭学習をしている」という項目が 改善すべき内容に決定した。 -4- 34 (3) 「やっホー!」の実施 家庭学習を習慣化させるためのしくみとして「やっホー!」を10月20日から11月30日 までの6週間実施した。 「宿題、予習・復習、自主勉」の 種類を選択する 家庭学習した「教科」 「学習内容」 を記入する 毎日回収し、担任が内容を確認し 印を押す 1週間に1度「家庭から」の欄に保護者 からコメントをもらう 保護者のコメントや生徒の取り組みの 状況を学校通信や学年通信等に載せ て、啓発する (4) 結果の検証 「やっホー!」実施後、 「生活アンケート」を再び行い、その結果をワークショップ形式の校内 研修で検証した。 生活アンケートの結果を ワークショップ形式で学 年ごとに結果を検証し、発 表し合った。 1・3年は家庭学習をする生徒が増加した。 2年生は「あまりやらない」を選択した生徒が減少した。 -5- 35 4.成 果 (1) 「学力向上プラン」の作成について ① 授業アンケートを実施することで、教師は生徒が「普段の授業をどのように思っているか」と いう生徒の意見を知ることができ、授業改善のための良い資料となった。 ② 校内研修で学力向上プランを発表しあうことで他教科での生徒の実態を知ることができ、生徒 理解につながった。 ③ 教師一人一人が「楽しい授業・わかる授業」の実践に取り組むことができた。 (2) 「やっホー!」の実施について ① 教職員はワークショップ形式の校内研修を行うことで、意欲的に参加し、生活アンケートの結 果から学年の課題を積極的に見つけることができた。 ② 生徒は「やっホー!」の実施で家庭学習に対する自らの実態を知り、家庭学習の大切さに気づ くことができた。 ③ 「やっホー!」に保護者からのコメントを記入してもらったり、各種通信で保護者に啓発した りすることで、家庭に家庭学習の大切さを伝えることができた。 5.課 題 (1) 平成19年度の3年生の全国学力・学習状況調査の結果をもとに課題を設定したが、平成20 年度の3年生とは違う傾向だったため、実態に即していない面もあった。 (2) 授業改善の内容を含む授業を全ての教師が実施したが、教師同士で授業を見合うことができな かった。 (3) 「やっホー!」の経過を学校通信や学年通信等で家庭への啓発を行い、家庭との連携もおおむ ね良好だったが、全ての家庭に浸透させることができなかった。 (4) 全国学力・学習状況調査の結果から見られた本校の課題は、まだまだ他にもあるため、これか らの校内研修や、日常の実践を通して一つずつ解決していく必要がある。 -6- 36 前橋市立桂萱中学校 全国学力・学習状況調査から見られる課題 平成20年度全国学力・学習状況調査の結果から見られる本校の課題を「学力に関すること」「学習 状況に関すること」の両面から次のように考察した。 《学力に関すること》 国語科では,平均正答率が全国を上回っているが,「適切な段落を設けて,論 理的な文章にすること」「読み取った情報を根拠として示しながら,自分の立場を明確にして意見を書 くこと」に課題が見られた。数学科では,平均正答率が全国平均を下回っており,A問題「知識」,B 問題「活用」共に課題が見られた。その中でも特に「事象と式の意味を照らし合わせること」や「方針 にもとづいて証明すること」が数学科としての課題であると考えた。また,CRT学力検査や日常の授 業の様子からも,国語科・数学科ともに,自分の考えを持ち,それを文章や言葉で表現する力,説明す る力の不足が本校の課題として考えられる。 《学習状況に関すること》 「ものごとを最後までやりとげて,うれしかった経験が不足している」 「自 分のよいところ(長所)に気づいていない」「学習への関心は高いが,平日や土日の家庭学習時間が少 ない」といった課題が見られた。日常の授業において,「読む」「 ・ 書く 」「 ・ 話す(説明する)」といっ た言語活動・表現活動を取り入れた生徒主体の授業展開や,それらを通して生徒に達成感や自信を持た せていくことなどが課題として考えられる。 このように,全国学力・学習状況調査の結果やCRT学力検査結果,日常の授業の様子を踏まえて, 本校の課題を以下のように整理しとらえていくこととした。 全教科共通の課題 「基礎的な知識をもとにして,思考・判断する力や表現力の定着が十分でない。」 《国語科の課題》 ・テーマに沿って工夫して話す力に課題がある。(話すこと・聞くこと) ・設問の字数に合わせて文章をまとめて書くことに課題がある。(書くこと) 《数学科の課題》 ・情報を分類整理し適切に選択し,判断する力に課題がある。(見方・考え方) ・思考過程を記述したり,説明したりする力に課題がある。(見方・考え方) 改善のポイント ポイント1 学習規律の定着 ○「桂萱中学習習慣十箇条」を作成し,全学年・全教科で共通した指導(チャイム着席や発表の仕方, ノート指導など)を通して,学習規律を身につけさせ,落ち着いて取り組める授業を展開していく。 ○「桂萱中学習習慣十箇条」は,教室・廊下掲示や学校通信等による家庭配布を通して生徒や保護者 に周知徹底を図っていく。 ポイント2 表現力の向上を目指した授業改善と授業の見合い ○個人思考の場とグループでの集団思考の場を設定し,グループや全体の中で話し合ったり発表した りする場面を経験させるなど,考える活動を充実させるとともに,考え・学び合う指導を工夫する。 ○国語科・数学科での課題は他教科にもあてはまる課題であり,全校体制で授業改善に取り組んでい く。教科ごとに授業参観(授業の見合い)・授業研究会を行い,各教科で設定した授業改善のポイ ントを授業の視点として協議し,発問の仕方やワークシートづくり,教材や教具の工夫などの指導 技術を共有していく。 37 実践事例 【ポイント1 学習規律の定着】 「桂萱中学習習慣十箇条」の作成 学習習慣形成のためのヒント集(平成20年3月 前橋市教育委員会)を参考にして,本校の授業改善の ポイントである思考力・判断力・表現力の向上に関わる学習習慣を中心に作成した。 ①生徒への啓発 全生徒に「学習習慣十箇条」についてのプリントを配 布し,学級担任から説明を行った。また,教室や廊下等 に拡大したものを掲示したり,生徒の机に縮小したもの をはり付けたりするなど,生徒の目に触れやすく,授業 時にも意識できるようにした。 ②日常の授業での指導 各教科の特性に応じて「学習習慣十箇条」を指導して きた。発表の声が小さい場合に発表者から離れた席の生 徒に声が聞こえたか確認したり,板書を整理し,ノート をとる時間を確保したりするなどの工夫や配慮をしてき た。 桂萱中 学習習慣十箇条 1.チャイム着席をしよう 2.授業の開始・終了の挨拶をしっかりしよう 3.忘れ物に注意しよう 4.提出物を期限までに出そう 5.授業の目標(めあて)を意識して学習しよう 6.指名されたら「はい」としっかり返事し,「です」「ます」をつけて,発表しよう 7.クラス全体に聞こえる声で発表しよう 8.先生の説明や友達の発表は話をする人の方を 向いてしっかり聞こう 9.自分の考えと同じところや違うところを見つけなが ら最後まで聞こう 10.ノートをしっかりとろう ③授業の見合いでの評価 教員相互の授業の見合いの授業参観記録の中で,「発表の仕方」「話の聞き方」の2点について参観者 による評価を行い,生徒の学習規律の達成度を確認できるようにした。 【ポイント2 表現力の向上を目指した授業改善と授業の見合い】 ①教科部会の活性化 教科部会を毎月定例開催し,全国学力・学習状況調査や学 力検査等の結果をもとに,本校の課題の分析,課題解決のた めの授業改善を検討・実施してきた。各教科部会から出され た分析結果をもとに,校内研修全体会において,全教科共通 の授業改善のポイントを「思考・判断する力や表現力の向上 を目指した授業改善」に設定した。その後の教科部会におい ては,各教科で学力向上のための手立てや具体的な授業改善 策を検討したり,発問の仕方やワークシートづくり,教材や 教具の工夫などの指導技術を共有したりしてきた。 授業参観記録用紙 6月 30日(月) 第3校時 授業者 ○○ ○○ 教諭 1年 2組 教科( 国語 ) 参観者 ○○ ○○ 単元・題材 クジラたちの声 ★校内研修テーマ「表現力を高め,互いを高める授業展開の工夫」の 観点でまとめてください。 【良かった点】 ・本時のめあて「①『クジラ』について,ビデオ視聴から情報を収集する。 」 「②班で話し合い,友達から得た情報を付け加える」を全員で声に出して 読んだ。 ・マッピングの仕方を,犬のぬいぐるみを使ってやってみせた。 ・ビデオを流す時に,机ごとテレビに向かせた。 ・班の中で情報交換をさせて,自分が拾えなかった情報を補わせた。 ・プリントや付箋紙など,教材を工夫した。 【こうするともっとよかったかなという点】 ・本時のめあてを,紙に書いて貼ったため,板書をノートに写すのかどう かあいまいなまま授業が進んだ。ノートに写していた生徒もいたし,写 していない生徒もいた「 。ノートを書きなさい」 。でも「これはノートに 書かなくていいですよ。 」でも良いが,最初に指示をした方が良かった。 ・ビデオを見る時間が長すぎた。情報量が多く,ついて行けない男子生徒 が数名見られた。教科書に出てくる内容に関係する部分だけでも良かっ たのではないか。 ②授業の見合い 各教科で設定した授業改善策については,個人個人の日々 の授業を中心として実践していくわけであるが,授業改善策 ①発表の仕方(返事・言葉遣い・声の大きさなど A・B・C・D の成果や課題を検証する場として,学期に1回,全教科・全 学習規律 (生徒の様子) ②話の聞き方(発表者のほうを向いているなど) A・B・C・D 職員による授業公開(授業の見合い)及び,授業研究会を行 ってきた。 授業参観時には,各教科共通の記録用紙を使用した。記録用紙には,成果(良かった点)と課題(こうす るともっと良かった)を授業者にしっかり伝えられるように,授業改善策のポイントに絞って記入できるよ うに工夫した。そして,参観記録用紙をもとに授業研究会を開催し,授業改善策の再検討を行った。 このように,全教科で授業改善策をもとにした授業実践とその検証をすすめてきた。国語科・数学科につ いては,以下の実践例に示す授業実践を行ってきた。 38 Ⅰ ○題 国語科の実践 材 ○ねらい ○展 3年 「君待つと ―万葉・古今・新古今―」 小集団の中で自分が感動した和歌に対する感想を発表し,他人の感想を聞くことで,和歌に描 かれた風景や情景の理解を深める 開 学 習 活 動 1.本時の学習内容を確認する。 時間 5 2.和歌を一つ選び,ワークシー トにまとめる。 3.グループ内で発表をし,他の 人の発表内容をワークシート にまとめる。 4.本時のまとめをする。 25 指導上の留意点・支援 ○万葉集,古今集,新古今集の和歌を,一斉に音読する。 ○本時は景色や気持ちがよく分かった和歌を選んで,選んだ 理由や作者が感じたこと等を発表する事を確認する。 ○順序立てて話ができるようにワークシートを工夫する。 15 ○4人ずつのグループになり,発表をする。 ○他の人が発表した「和歌」と「選んだ理由」を聞き取り, ワークシートに記入する。 ○他の人の発表内容を聞き,初めて発見した事,気づいた事 をワークシートに記入する。 5 ○授業改善の手立て 少人数集団の中で,全員が発表する場面を設定し,一人一人の表現力(文章表現・音声表現)の向上を目 指し,次のような授業改善を実践した。 39 < 《グループ内での発表》 ⑤ グループで発表をしよう 〔少人数集団での発表〕 ・全員に発表の機会を与え,個人の発表の時間や話し合いの時間 を十分に確保するため,グループの人数を4人とした。また, 本時では,グループでの発表を中心とし,学級全体での発表時 間を設定しなかったので,後日,ワークシートを教室に掲示し, グループ外の発表内容も見られるようにした。 ① 僕・私は, 「○○」という和歌を選びました。 ② この和歌は, 「○○」がテーマになっています。 選んだ理由は, 「○○」がよかったからです。 聞こえている音は「○○」だと思います。 選択した理由 ③ 作者が感じていることは,見えているものが「○○」で, ④ ⑤ この和歌の現代語訳を言います・・・。 選択した歌 《ワークシート②》 発表方法〉 名前 番名前 ②作者が感じたことを想像しよう。 ( 二か所以上記入しよう) ・見えているもの(何が美しい?) ⑥ 他の人の発表を聞いて,初めて発見したこと,気づいたことを書こう。 組 【景色や気持ちがよく分かった和歌を選んで,発表しよう。 】 歌人 ・聞こえている音(何が聞こえる?) ・においや香り(どんなよい香り?) ・手触り・肌に感じていること 《ワークシート①》 ワークシート 君待つとー万葉・古今・新古今― 三年 自分が選んだ和歌 歌のテーマ 自然 生活 恋 人生 行事 この和歌のよいところ(選んだ理由) 現代語訳にしてみよう 〔ワークシートの工夫〕 発表が苦手な生徒でも,順序 立てて話ができるように,発表 メモとしてのワークシートの工 夫をした。《ワークシート①》 発表を聞く生徒には,発表者 がその和歌を選んだ理由をしっ かりと聞き取って書き,最後に 他の人の発表内容を聞き,初め て発見したこと,気づいたこと を書き込むようにワークシート を作成した。 記入の際,聞き取った内容を 書くことの負担を軽減させるた め,選んだ歌や理由については, 簡単にまとめて書くように配慮 した。《ワークシート②》 ・事前に発表のポイントを示し,発表する時にはワークシートを参考にしながら,ポイントの順番に読んで いくと順序立てて発表ができるようにした。 《発表のポイント》 ①僕・私は,「○○」という和歌を選びました。 ②この和歌は,「○○」がテーマになっています。 ③作者が感じていることは,見えているものが「○○」で, 聞こえている音は「○○」だと思います。 ④選んだ理由は,「○○」がよかったからです。 ⑤この和歌の現代語訳を言います・・・。 Ⅱ ○単 数学科の実践 元 ○ねらい 2年『多角形と角』 凹四角形の性質を,これまでの図形の性質を使って説明する方法を理解する。 ○展 開 学 習 活 動 時間 1.これまで学習した図 5 形の性質を復習する。 2.凹四角形の性質を知 5 る。 学習活動への支援と指導上の留意点 ○これまで学習した図形の性質を図示し,確認する。 A ○生徒から図示された角についての予想をさせ, その後に凹四角形の性質を伝える。 凹四角形の性質 ∠A+∠B+∠C=∠ADC D B 3.凹四角形の性質を説 25 明する方法を考える。 C ○これまでの他の図形の性質を説明した考え方を確認し,凹四角形 の性質をどのように考えていけばよいのか、方向性を見つける。 (補助線の例) A A D B 4.凹四角形の性質がい ろいろな方法で説明 できることを知る。 15 A D C B A D C B D C B C ○代表生徒にホワイトボードに記述させ,発表準備をしてもらう。 ○まず,ホワイトボードに書かれた説明を読み取る時間をとる。 ○次に,ホワイトボードに書かれた説明を代表生徒に図を指し示し ながら説明してもらう。 ○授業改善の手立て 自分の考えを記述し,説明したりする力の向上を目指し,本時の授業では次のような授業改善を実践した。 〔既習事項の確認と教室環境整備〕 自分の考えを記述するために必要な「既習事項」を授業の始めの段階で押さえた。具体的には,「対頂角 は等しい」「多角形の内角の和,外角の和」「三角形の外角と内角の性質」「平行線と角の性質」などを確認 することで,これらを利用して凹四角形の性質を説明しようとする意欲を高められると考えた。 また,図形の説明に必要な補助線の種類についても「対角線をひく」「平行線をひく 」「辺を延長する」 など,これまでの学習内容を整理し,生徒に伝えることで,生徒が自分で考えていきやすいように配慮した。 これらの「既習事項」は少人数教室の壁面に「証明のよりどころ」として常に掲示しておき,生徒がいつで も見られるようにしておいた。 40 〔発表場面の設定〕 少人数指導の長所を生かし,個人思考の段階で生徒一人一人が ノートに記述した説明について,机間指導で教師がアドバイスを したり,合格印を押して評価したりするなど自信を持って発表で きるように意欲付けを図った。 発表者の指名は異なる補助線で説明している生徒や同じ補助線 でも説明の手順に違いがある生徒の意見を採り上げるように留意 した。また,早く説明を書き終えた生徒については,他の補助線 で説明できないかという課題を与えた。 発表者の説明の前に,まず「読んで理解できる」かどうか,時 《全体での発表》 間を取り理解を促した。その後,発表者に内容の説明をさせ ,「説 明を聞いて理解できる」かどうか,他の生徒に確認した。このように,説明を聞く前に記述内容を自分で読 んで説明が理解できる力を養う時間(説明を読み取る時間)を設定した。 〔ホワイトボードの活用〕 ノートに説明をしっかり記述できた生徒にはホワイトボードを 渡し,発表のための記述をさせた。ある程度の人数が自分の説明 をノートに記述できた時点で,ホワイトボードを一つずつ黒板に 掲示し,生徒に説明させた。 《ホワイトボード活用の利点》 ①そのまま黒板に貼れる。使用後は,別の場所に移動できる。 ②書き間違えてもすぐに書き直せる。 ③他の生徒の思考中に,自分の座席で書き始められる。 《ホワイトボードへの記入》 このほかにも ,「少人数学習では,教室の前側半分で授業が行え るので,A2サイズのホワイトボードでも十分見ることができる」,「紙に書くのと違い,繰り返し使用す ることができる」などの利点もあり,発表時には,何度か活用してきた。 〔生徒同士で教え合う場面の設定〕 代表生徒の説明を聞いた後に,「隣の人と相談してごらん」と呼 びかけ,相談タイムを設けた。説明を聞いて不明な点などを生徒 同士で気軽に相談しあうことができた。教え合いの内容を教師が 聞き取っていく中で,生徒がもつ疑問点など把握することができ, それに対しての指導をすることができた。 また,説明力を高めるためには,「間違った意見」に対して周囲 が揶揄するのではなく,「間違いから学ぶ」姿勢の大切さを伝える ことができた。 《教え合いの場面》 《学習カードに書かれた生徒の意見》 41 成 果 ○「学習規律の定着」について ・「 学習習慣十箇条」をもとに,生徒・学校・家庭での共通認識が図られ,返事や挨拶などがしっか りできる生徒が増えてきており,発表時の言葉遣いも丁寧になってきている。 ・授業の見合いの中で,「発表の仕方」「話の聞き方」について参観者による評価をしてきた結果を 見ると,「落ち着いた雰囲気の中で授業が展開されており,発表内容が的確になってきた。」とい った成果が現れている。 ○「表現力の向上を目指した授業改善と授業の見合い」について 小グループでの活動を意図的に取り入れ,話し合いや発表の場面を数多く経験させてきた結果,各教 科において,以下のような生徒の変容が見られた。 ・間違いを指摘し合い,どうすれば良かったのか確認し合うなど,お互いに高め合う雰囲気が感じら れるようになった。 ・多くの生徒が進んで友達と自分の考えや意見を交換したり,分かりやすい説明ができるようになっ たりするなど,自分の考えの記述・説明の力に向上が見られた。 〔国語科の授業実践から〕 ・ワークシートへの記入はほとんどの生徒がよくできていた。選んだ理由を書く所で言葉が曖昧な生 徒には,具体的にどこの部分が良いと思ったのかを書くように声かけをした。 ・発表が苦手な生徒も,ワークシートに書いたことを順番に話すことで順序立った発表をすることが でき,全員が発表に参加することができた。 ・今まで機会があるたびに,少人数での学び合いに取り組んできたので,グループの中で司会を決め たり順番に発表したりすることには,大変スムーズに取り組めた。 ・発表の聞き方では,ほとんどの生徒がワークシートを活用して発表内容の確認をすることができた。 また,発表後,聞き取れなかった部分については,発表者に質問・確認する場面が見られるなど, 一方的な情報の伝達で終わることなく,相互のやりとりが見られた。 〔数学科の授業実践から〕 ・生徒が自分の考えを記述したり,説明したりする発表場面の設定により,多くの生徒が進んで説明 に取り組もうという態度がでてきており,分かりやすい説明ができる生徒が増えてきた。 ・ホワイトボードは,最後列の生徒にも十分見ることができ,視覚的にも説明が理解しやすくなった。 直接の板書ではないので,他の生徒の思考の妨げにならず,自分のペースで学習することができた。 ホワイトボードの活用は,板書時間の短縮としても,説明を1つずつ見せることによる生徒の思考 過程の整理としても大変有効であった。 課 題 ○学習習慣については,個によって定着の度合いに差が見られるため,発表の仕方や話の聞き方など今 後も継続して指導していく必要がある。また,家庭学習の不足については,教科と学年が協同して家 庭学習の課題を設定するなど,全校体制での取り組みが必要である。 ○教科ごとに実施してきた授業の見合い・授業研究会を,今後は,教科の枠を超え,他教科の授業も参 観し授業研究会を持つことで,教科外の教員からの様々な意見や感想をもとにして授業改善策の検討 ・検証を深めていく必要がある。 42 前橋市立粕川中学校 全国学力・学習状況調査からみられる課題 全国学力・学習状況調査の本校の結果から読み取れる特徴は次のように考えられる。 【国語】 ○知識、活用ぞれぞれについて全国平均をやや上回っている。 ○自分の考えや文章の内容を上手に他に伝える表現力がやや劣る。具体的には、詩や古典などの特徴的 な表現などをつかんで読んだり、書き表したりすることや文章の構成や表現上の特色を踏まえて、正確 な漢字を活用して書き表すことがあげられる。 【数学】 ○解答を導き出す理論の理解は進んでいる。 ○理論を使いこなす技能がやや劣る。例えば、数量関係では一次関数のグラフから情報を読み取ること はできるが、その手順や方法を数学的に説明したり、他に伝えたりする技能が劣ることなどがあげられ る。 【以上の特徴からとらえられる本校生徒の総括的な課題】 ①基礎的な知識、技能を自分のものとして定着させること ②習得した知識技能を他に分かりやすく伝える表現力を身につけること これまでの校内研修等での研究や普段の見取りからも同様の課題があげられている。①に関しては、授 業中の取り組みには真面目な学習ぶりがうかがわれるものの、家庭学習を中心とする反復学習や繰り返し 学習の定着には至っていない。また、②においては学習態度は良好であるものの、受動的な姿勢での学習 が多いことが感じられる。自ら課題意識を持って学習に臨むことや、自分なりのめあてを持って学習に取 り組むことで、思考する場面や表現の場面で積極的な学習活動が行われると考える。また、読みとる力、 要約する力、わかりやすくまとめ上げる力の充実も伝える力にとって重要である。 これらの課題への解決策として、以下の改善ポイントを計画、実行に移している。日常の学校生活で行 えること、過度な負担にならないことを考えて、継続可能なものを考えた。 改善のポイント ポイント1 シラバスを提示した授業の実践 一単位時間だけでなく、単元を通した授業のねらいをはっきりとさせることを目的とする。これによっ て、生徒の自学自習の習慣作りの目安となること、また、教師の授業展開の工夫を進める効果があると考 える。 ポイント2 学力向上週間の設定 年間を通し、各学期に一度ずつ、「国語、数学、英語」について、「学力向上週間」という期間を設定 し、各教科の弱点の補強を行っている。 ポイント3 見せ合う授業の実施 教員間で、それぞれの授業を見合う機会を設ける。可能な範囲で見合った授業について話し合う場を持 ち、お互いの授業改善に役立てていく。年間に全員が一度の見せ合う授業を行い、それぞれが5回以上の 参観をすることを目標としている。 ポイント4 朝読書の実施 毎日の朝の時間帯に10分間の読書を行う。「読む力」、「読んだことを理解する力」、「文字に表現され ていることを自分の言葉にする力」、そして「その言葉を活用して表現する力」を向上させることを目的 とする。 ポイント5 帰りのドリルの実施 帰りの学活の時間を利用して、10分間の基礎的・基本的事項に関するドリル学習に取り組んでいる。 各教科の基礎、基本にあたる内容の定着が目的である。 43 実践事例 【ポイント1 シラバスを提示した授業の実践】 基礎基本の定着を考えたときに、自学自習のくり返し学習を含めた学習習慣の定着は重要である。また、 工夫された達成感を感じられる授業展開なしには、生徒の意欲の向上も考えられない。 この二点を改善すべく、シラバス(資料1参照)を提示した授業を行っている。 本校では「単元シラバス」を、 『主体的、計画的な学習を進める上で必要な情報をまとめたもの』ととらえた。 すなわち、生徒が自学自習の目安として 社会科単元シラバス 2 年生 分野 歴史 使えるものである。先を見通して予習の目 安になるもの、目当てを持って学習に取り 単元 名 日清・日 露戦争と近 代産業 組めるもの、自己評価から自分を振り返り、 日清・日露戦争 などを通して,日本はどのような変化を遂げたのでしょ う? 復習や質問に生かせるものを目指している。 単元の 目標 一方で、授業づくりを進めていく上での □ 関 心・ 意 欲 ・ 態度 日本 の 変 化 に興 味 を 持っ て い る 。 地図 や 挿 絵 から 戦 争 の様 子 を つ かん で い る 。 □ 思 考・ 判 断 教師の自己の振り返りの材料となり、見通 □ 技 能・ 表 現 戦 争 に よ る影 響 や 日 本変 化 を まと め て 発 表で き る 。 日 清 ・ 日 露戦 争 に 関 わる 重 要 語が 読 め て ,か け る 。 □ 知 識・ 理 解 しを持ち、工夫を進める目安となることを 学習計 画 期待している。 学習課題 学習活動・内容 考えるポイントと重要語 自己評価 1 □ 地 図 や 資料 , 教 科 書か ら ○ な ぜ , ア ジア に 欧 米 はや っ て A B C 一単位時間の授業を軸として授業者と生 帝 国 主 義と は 何 欧 米 列 強の 進 出 の 様子 を き た の だ ろう ? 重要語 ま と め る。 徒の双方の関連を考えたのが 、【資料2】の だ ろ う ? 帝国主義 スエズ運河 図であり、これが本校のシラバス活用のイ 日 英 通 商 航海 条 約 メージともなっている。 2 A B C 基礎基本の定着 CHECK 評価 CHECK 自己評価 ACTION ACTION PLAN 指導計画 【資料2 DO 単元シラバスを活用した授業 生 徒 自学自習の サイクル 復習 対応 授業者 授業改善を 目指すサイクル PLAN 予習 シラバスを活用した 基礎基本定着のイメージ】 日 清 戦 争の 様 子 □ と 影 響 をま と め よう 日 清 戦 争の 原 因 と 結果 , ○ 欧 米 と の関 係 を ま とめ ○ る。 な ぜ 戦 争 に発 展 し た のだ ろ う? 欧 米 は な ぜ関 わ り を 持っ て き た の だ ろ う? 重要語 日清戦争 下関条約 三国干渉 3 □ 日 露 戦 争の 様 子 と 影 響 をま と め よう 日 露 戦 争の 原 因 と 結果 , ○ 欧 米 と の関 係 を ま とめ ○ る。 A な ぜ 戦 争 に発 展 し た のだ ろ う? 日 本 の 勝 利は ど の よ うな 影 響 を 与 え だ のだ ろ う ? 重要語 義和団事件 日英同盟 日露戦争 ポ ー ツ マ ス条 約 B C 4 □ 日 本 と アジ ア 諸 国 と の 関係 は ど う だ っ たの だ ろ う? 日 本 の アジ ア 進 出 の様 子 ○ ○ を 調 べ てみ よ う 韓 国 へ の 進出 の 様 子 は? 中 国 に お こっ た 変 化 は? 韓国併合 南満州鉄道 辛亥革命 三民主義 A B C 官 営 工 場の 様 子 , 労働 者 ○ の 生 活 を調 べ て み よう 。 ○ 財 閥 と は 何だ ろ う ? A 人 々 の 生 活は 変 わ っ たの だ ろ うか? 重要語 官営工場 財閥 B C 5 日 本 の 産業 革 命 □ は ど の よう に 進 ん だ の でし ょ う? 分 か っ たこ と , 質 問や新 た な 課題 【資料1 【ポイント2 単元シラバスの例】 学力向上週間の設定】 「基礎・基本の定着場面を工夫するとともに、学習習慣の形成を支援し学力向上を図る。」ことを目的 として、昨年度より学力向上週間を設定している。実施の方法は以下の通りである。 【学力向上週間の概要】 ○国語・数学・英語の3教科において、学期ごとに1週間ずつ設定する。 ○該当する教科担当を中心として計画を立て、学年・学級担当が実施に協力する。 ○朝自習・帰りのドリルの時間を利用して実施する。 ○結果を考慮して、放課後・昼休み・補充の時間に補習などの個人への支援を行う。 44 実際の実施内容は、学年独自のものであり、教科担当の見取りからの実態と基礎基本確認テスト等の数 値的な課題をもとにして行われた。(資料3参照)内容を焦点化し、集中して繰り返し学習を行うことで 基礎基本を鍛えることに効果があるように考える。また、意識付けのために資料4にあるようなのぼり旗 を学級や廊下などにおき、意欲の向上を図った。 学 力 向 上 週 間 に つ い て 【国 語 】 ○ 課 題 作 文 … 課 題 に 従 っ て 自 分 の 考 え を 書 け る よ う に な る た め の 練 習 で す 。短 い時間でもできる限り最後まで書ききるように努力しましょう。 時間があまったら必ず推敲をすること。 ○ 放 課 後 学 習 水 ・ 木 … 文 法 が 特 に 苦 手 で 、基 礎 か ら も う 一 度 学 習 し た い 人 が 対象です。30分~1時間程度。 全校朝礼 朝 9 / 8 (月 ) 帰り 課題作文① 読み聞かせ 朝 9 (火 ) 1 0 (水 ) 1 1 (木 ) 1 2 (金 ) 採点なし・時間が許す 限り推敲を!! 帰り 課題作文② 採点なし・時間が許す 限り推敲を!! 朝 文法① 採点をして提出 帰り 課題作文③ 採点なし・時間が許す 限り推敲を!! 放課後 文法(1年生の範囲) 朝 文法② 採点をして提出 帰り 課題作文④ 採点なし・時間が許す 限り推敲を!! 放課後 文法(2年生の範囲) 朝 文法③ 採点をして提出 帰り 課題作文⑤ 採点なし・時間が許す 限り推敲を!! 放課後 補充の時間 個人的に質問のある 人はどうぞ 希望者 (特に苦手な人対象です) 希望者 (特に苦手な人対象です) 《作 文 を 書 くとき に 注 意 す べ き 基 本 事 項 》 ① 原 稿 用 紙 の マ ス の 真 ん 中 に 、大 きくは っ きり丁 寧 に 文 字 を 書 く。 ② 原 稿 用 紙 の 使 い 方 に 従 う。 ③ 必 ず 推 敲 す る 。 誤 字 ・脱 字 は も っ て の ほ か 。 【資料3 【ポイント3 学力向上週間の内容例】 【資料4 学力向上週間のぼり旗】 見せ合う授業の実施】 1学期に全教員が見せ合う授業を行った。3年前より校内研修の一つの柱と位置づけて継続しているも のである。 授業者は実施予定日を一覧表に書き込み、授業当日までに見せ合う授業の予定表を全職員の机上に配布 する。授業者の負担にならぬように、資料5にあるような簡単な形式のものとした。ただし、ねらいと工 夫点、参観者にみてもらいたいところに関しては強調するようになっている。参観者は、空き時間の教員 を基本とし、予定表に気づいたことを書き込んで授業者に渡す形をとった。授業研究会が開かれることが 望ましいが、全授業において実施することは難しい。今後の課題である。お互いの授業を見合うこと、ま た、予定表に自分の意図することを書き込んで授業に臨むことで、ねらいや工夫を確認した授業が行える。 また、他教科の担当からのアドバイスは、より子どもたちの目線に近いものであることが感じられ、有効 性を感じる。 45 見せ合う授業実施予定表 実施日時 教科 20年 社会 7月 場所 7日 2C教室 1校時 授業者 単元 題材など 一等国への道 ~日露戦争~ 授業者の視点(本時に見てもらいたいこと) キーワードをカード(付箋)にしてグループでの話し合いを行うことで,重要語の関連に気づくことができた か ねらい(本時のねらい) 日露戦争の流れを理解し,日本が帝国主義に向かっていく様子を理解させる。 展開と工夫(流れのみを簡単に記述 視点に関わるところだけを多少詳しく書き込む) キーワードの意味調べと発表(10分) ↓ 教科書の音読(3分) この部分の様子をご覧く ↓ ださい。 関連国の発表(2分) ↓ グループでの話し合い(25分) 「日露戦争に関わる国とキーワードを図にまとめてみよう」 ○4人グループを作る ○付箋にキーワード(6単語)と関わりのある国名を書く。 ○つながりと関連を意識しながら意見交換をもとに紙に付箋を貼り,図にまとめる。 ↓ 発表とまとめ(10分) メモ欄(アドバイスや感想など) 【資料5 見せ合う授業 指導略案の例】 この見せ合う授業での改善点を2学期に行われた計画訪問での授業の展開の工夫点として反映させた。 授業者がねらいをしっかりと意識して授業に臨むこと、そして、そのための工夫をすること、生徒は授業 の目当てを意識し、自ら考える姿勢で授業に臨むこと、これらが基礎学力の定着につながると考える。 【ポイント4 朝読書の実施】 学力向上週間を除く期間の朝の時間帯(8:20~8:30)に朝読書を行っている。(資料6参照) また、各学年で、学期に一回、地元のボランティアサークルによる読み聞かせも行われている。 読解力は国語力と連動するものであるが、すべての教科の基本でもある。読むこと、そして読みとるこ と、理解して整理すること、それを表現すること、これらのすべての活動の基本が読解力であるといえる。 読んだ内容にあわせて、自分はどんな立場で、何を考え、どうとらえたのか。これを文字、文章として表 し、これを表現して、他に伝える。本校の課題である表現力を培うことからも継続したい活動である。具 体的に、図書館司書の図書室経営の工夫もあり、貸出量も増え、昼休みの図書室は人でいっぱいになるこ とも多くなっている。学力的な部分での、数値的な成果はまだ定かでないが読書離れ改善の方策としては 確実に成果を上げている。 46 【資料6 【ポイント5 朝読書の様子】 【資料7 読書量調査】 帰りのドリルの実施】 学習習慣のリズムづくりと基礎的基本的事項の確実な定着をねらって、帰りの学活後に10分間のドリ ル学習を行っている。学年の実態にあった形で進めることとなっていて、日常の学習の復習が基本となっ ている。重要なポイントや重要な語句の反復などに絞って学習を進める形となっている。 歴史確認問題ACT2 1年 組 番 氏 名 ( ) No 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 問題 7 94 年 に 遷 さ れた 都 を な ん と言 っ た で し ょう ? こ のこ ろ , 東 北 地方 に 暮 ら す 人た ち を 朝 廷 はな ん と 呼 ん でい た で し ょ う? 東 北地 方 に 暮 ら す人 た ち を 従 わせ る た め に 派遣 さ れ た の は, 何 と い う 人だ っ た で し ょう ? 解答欄 平安京 蝦夷 坂 上 田村 麻 呂 墾 田 永年 私 財 の 法 土地制度が崩れることによって,自分で耕した土地は永久に自分のものにして良いという法律が作られました。これをなんと言ったでしょう? 9 世紀 頃 に , 藤 原氏 が 行 っ た 政治 の 仕 組 み をな ん と 言 っ たで し ょ う ? 摂 関 政治 上 の政 治 の 仕 組 みに 対 し て , 不満 を 持 っ た 天皇 家 が 引 退 後も 政 治 を 続 けた 仕 組 み を なん と 言 っ た でし ょ う ? 院政 こ のこ ろ , 武 装 した 農 民 は な んと 名 乗 る よ うに な っ た で しょ う ? 武士 こ の農 民 た ち の 中で も 代 表 的 だっ た の は , 何と い う 集 団 だっ た で し ょ う( 二 つ ) ? 源 氏 平 氏 1 1世 紀 の 後 半 頃, 朝 廷 側 と 上皇 側 が 対 立 する こ と か ら おこ っ た 乱 を なん と 言 っ た でし ょ う ? 保 元 の乱 そ の後 , 源 氏 と 平氏 を 巻 き 込 んで お こ っ た 乱を な ん と 言 った で し ょ う ? 平 治 の乱 平 氏に 敗 れ た 源 氏が 1 1 8 5 年に 平 氏 を 滅 ぼし た 戦 い を なん と 言 っ た でし ょ う ? 壇 ノ 浦の 戦 い こ の戦 い に 勝 っ た中 心 人 物 は 誰で し ょ う ? 源頼朝 こ の戦 い で 勝 っ た後 , 上 の 人 物が 開 い た 幕 府を な ん と 言 った で し ょ う ? 鎌 倉 幕府 武 士同 士 の 人 間 関係 を 結 ぶ 制 度は な ん と 言 った で し ょ う ? 封 建 制度 上 の制 度 は , 何 と何 の 関 係 と いえ る で し ょ う? 御 恩 と奉 公 三 代将 軍 が 暗 殺 され た 後 , 幕 府で 実 権 を 握 った の は 何 氏 でし ょ う ? 北条氏 実 権を 握 っ た 人 たち は 幕 府 の 仕組 み の 中 で 何と い う 役 職 に就 い た の で しょ う ? 執権 二 重支 配 の 中 で 三代 将 軍 の 暗 殺を き っ か け に起 こ さ れ た 乱を な ん と 言 った で し ょ う ? 承 久 の乱 上 の乱 は , 何 年 に起 こ っ た の でし ょ う ? 1 2 21 年 こ の乱 の 中 心 人 物で あ り , 当 時院 政 を 行 っ てい た の は 誰 でし ょ う ? 後 鳥 羽上 皇 こ の乱 を き っ か けと し て 幕 府 にお か れ た 役 職を な ん と 言 った で し ょ う ? 六 波 羅探 題 ま た, こ の 乱 を きっ か け と し て作 ら れ た 武 家の 法 律 を な んと 言 っ た で しょ う ? 御 成 敗式 目 この 時代の頃,農業 技術の進歩として 麦と米などを1年 に同じところで 時期をずらして生 産する方法が現れ たこれをなんと言 ったでしょう? 二 毛 作 鎌 倉の 頃 に は , 新し い 仏 教 が はや っ た が 共 通点 は 何 だ っ たで し ょ う ? 簡 単 で実 行 し や す い 法 然が 開 い た 仏 教は ? 浄土宗 浄 土真 宗 を 開 い たの は 誰 ? 親鸞 1 27 4 年 , 1 28 1 年 の 二 回に わ た っ て 日本 に 元 が 攻 め込 ん で き た 出来 事 を な ん と言 う で し ょ う? 元寇 こ の戦 い の 時 の 元の 皇 帝 は 誰 でし ょ う ? フ ビ ライ = ハ ン こ の戦 い を 通 し て生 活 の 苦 し くな っ た 武 士 たち を 助 け る ため に 幕 府 が 出し た も の は 何だ っ た で し ょう ? 徳政令 武 士の 人 間 関 係 が崩 れ , 幕 府 が衰 え た こ と から 朝 廷 の 政 治に 戻 そ う と した 天 皇 は 誰 でし ょ う ? 後 醍 醐天 皇 こ の天 皇 が 行 っ た新 し い 政 治 をな ん と 言 っ たで し ょ う ? 建 武 新政 こ の天 皇 に 味 方 した 有 力 御 家 人で 群 馬 ゆ か りの 人 は 誰 で しょ う ? 新 田 義貞 【資料8 帰りのドリルの例】 学習内容もさることながら毎日の一定時間に確実に学習を行うという習慣作りには大変役立っている。 内容も基本的なものになっているので、時間をかけ、声をかけて一緒に取り組むことで誰でもが達成感を 味わえる場面といえるかもしれない。 少しの時間を有効に集中して取り組むという習慣作りにつながることを期待している。 47 成果と課題に関しては、日常の見取りやワークシートの確認、シラバスの自己評価、定期テストの結果の 分析、1学期と3学期に行われるアンケート調査の比較から分析を進めていく。過年度の校内研修等の成果 も含めた現在の成果と課題を掲載する。 成果 1 シラバスづくりがねらいの明確化に 授業改善が、生徒の学習への意欲を引き上げ、定着につながることは明白である。その第一歩はねら いの明確さであり、教師の側の授業構成と教材の理解であるといえる。単元シラバスを作ることで、教 師側の意識の高まりがあった。 2 シラバスの活用が実態の把握に 各教科において、自己評価の項目がもりこまれた。3段階、4段階のポイントで表現するものもあれ ば、具体的な確認問題を取り入れたものもあったが、単元を通した自己評価を行うことで、個々のつま づきの見える場面もあった。そこに実態の把握がなされ、補充学習の形などで、対応がなされた。 また、全体の傾向も把握でき、教師自身が自分の授業を客観的に判断する材料にもなった。 3 シラバスが家庭学習の目安に 授業におけるねらいや目安、学習のポイントがはっきりすることで、予習のきっかけになる生徒も現 れた。また、定期テストの学習のポイントとして活用される場面も見られた。 4 学力向上週間が補充の機会に 目標のはっきりとした集中学習を行うことで、指導者、生徒共に基礎・基本定着に向けての意欲の高 まりがみられた。また、定着不十分な生徒への補充の機会ともなった。 5 見せ合う授業が授業作りの工夫に 全職員が見せ合う授業を実施することで、他教科からの視点も含めた客観的な授業改善につながった。 特に、授業者は普段の授業を振り返ると共に、新しい工夫に挑戦するよい機会となった。 6 繰り返しが習慣作りに 毎日、同じ時間帯に読書やドリル学習を繰り返し行うことで、読書や学習の習慣化がなされた。取り 組みへの姿からその様子が確認される。 7 繰り返しが定着へ 基礎的、基本的事項を確認する作業を繰り返すことが、学習の基礎作りには欠かせないことであり、 その結果が達成感につながり、次の意欲へつながることが確認された。 課題 1 シラバスに関する十分なガイダンスを シラバスの活用方法を生徒に任せてしまうことでは、十分な効果は期待できない。単元のつながりや 一単位時間の流れも含めて十分なガイダンスを行い、活用の目的や授業におけるねらいなどを明確にし ていくことが大切である。 2 シラバスは教科の特性にあったものを シラバスの可能性は教科によって様々な広がりを見せる。5教科と実技教科ではもちろん活用方法や その目的とするところは変わってくるに違いない。また、教科における基礎・基本の内容やとらえ方か らも形式や項目の設定に個性を持つべきである。教科の特性を生かすシラバスの改善が必要である。 3 検証作業の方法の工夫を 見取りや普段の様子からの変化は感じ取られるものの、実際の力としての定着を確認する具体的な方 法に工夫がない。校内で検証作業が進められるシステムの研究が必要である。 4 授業実践が生かされる事後計画を 見せ合う授業の実施により、全員が授業を公開することができた。しかし、授業に対する十分な検討 をする機会がとれず、有効に活用されているとは言えない。見せ合う段階での工夫やその後の研究会を 実施するための時間的な工夫が望まれる。 48 群馬大学教育学部教授 演題 河野庸介先生 講演要旨 「確かな学力の向上に向けて」 <全国学力学習状況調査について> 全国学力学習状況調査の目的は、いくつかあります。一つは先生方に自分たちが教えている子ども の実態を把握して欲しいということです。例えば同じような規模の学校と結果を比較すると、自分の 学校のよいところや劣っているところを知ることができます。もう一つは、学力学習状況調査の問題 は、国レベルで作っているものであり、理想とは言わないが、問題の一つの見本になるということで す。子どもの能力を育てる上でも、問題をぜひ参考にして欲しいと思います <確かな学力について> なぜ、「確かな学力」なのかというと、10年前に「分数のできない大学生」という話がありまし たが、その頃から、「確かな学力」という言葉が浮かんできました。ある時に身に付いていても剥落 するような知識ではだめであるという考え方です。教える内容は厳選するが、剥落することなく、確 かに身に付けて、活用できるような力を身に付けさせることが大切なのです。 <PISA調査について> PISA 調査の結論として言えることは、日本の子どもたちは、読解力、数学的リテラシー、科学的 リテラシーでは、もはや世界のトップクラスにないということです。子どもたちの学力がないと、日 本は沈没しかねないという心配が出てきました。 しかし、PISA 調査の「問題解決能力」は4位でした。その理由は、総合的な学習の時間があった からでしょう。総合的な学習の時間は、残念ながら減少してしまいました。しかし、総合的な学習の 時間がねらいとした考え方は大切です。 <学力の要素について> 改正学校教育法の第30条第2項をぜひ確認してください。第30条第2項は、学力の要素を三つ 規定しています。 一つは学習意欲です。日本の子どもの学習意欲は、国際的に比較するとまだまだ低い。小学校や中 学校で数学や英語ができたといっても、高校や大学でも勉強することを考えると、学習意欲がないと 将来は暗くなります。学習意欲は学力の要素であり、大切にしなければなりません。 残り二つは「基礎的・基本的な知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」です。「知識・技能か 判断力か」などのようにどちらかに重点を置いて考えてしまうことがありますが、「知識・技能」と 「思考力・判断力・表現力」を車の両輪のように考えていくことが大切です。 <「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学習意欲」について> 「知識・技能」の定着については、地道な努力が必要です。去年フィンランドに行きましたが、そ こで気付いたことは、フィンランドの学校では、かなりの宿題を出しているということです。 「思考力・判断力・表現力」についてですが、思考力を育成するためには「なぜ」ということをし つこいほど聞くことが大切です。また、物事の原因と結果についても繰り返し聞くことも大切です。 判断力については、「あなたはどのように思うのか」と問いかける必要があります。表現力について は 、「なぜ」とか「原因と結果」とか 、「事実と意見」などを組み合わせれば論理的な表現力になり ます。しかし、それだけでなく、情緒的な表現力も必要になります。論理と情緒の両方から表現力を 育成する必要があります。 「学習意欲」の育成については、ひとえに先生方にかかっています。先生方は自分の努力で子ども を勉強好きにしなければなりません。そのためには、魅力的な授業が必要です。私は、国語で、「ス リルとサスペンスのある授業」を提唱していますが、どの授業でもそうしなければなりません。また、 「肯定的な評価の工夫」も大切です。「肯定的な評価」とは、すべてを無条件に認めることではあり ません。肯定的な評価をしながらも指導すべきことは指導することが大切です。さらに、学習意欲を 49 伸ばすには、身に付けた知識が実際に活用できるように指導者が注意を払う必要があります。日常生 活に活用できて、はじめて、学習してよかったという気持ちになります。 <言語活動の充実について> 言語活動の充実は、今日の指導要領の改訂における重要な改善の視点であり、これからの学校教育 では、「言葉の力=言語活動学習」を充実することが非常に大切になります。学習指導要領の各教科 等の内容を読んでもらうと、算数・数学、理科、社会でも表現をするとか、自分の考えを説明すると いうことがたくさん出てきます。学力向上の対象として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」 「学習意欲」の三つを支える基本的な部分として言語活動の充実があります。 <「型」の活用について> 今までの日本は、子どもたちにパターンを与えることを避けてきた感じがあります。もし、今、先 生方に原稿用紙を配って「物語を書いてください」とお願いすると困る人も多いことでしょう。それ は、物語の基本的な展開パターンを身に付けていないからです。したがって、能力形成の一つの方法 としてパターンを重視した授業を進める必要があります。 ただ、この時に 、「守・破・離」という考えが大切になります 。「守・破・離」は、室町時代の能 の世界の言葉ですが、狂言師の野村萬斎さんから直接聞いたことがあります。彼は、いつでも手を 45度で挙げることができる。それは、小さい頃から厳しくしつけられてきたからです。これが、 「守」 にあたります。しかし、それを重ねていくと、それに対して自分なりの工夫をしたくなるものです。 それが、「破」です。そして、最後は、それらを通して最初に身に付けた型から「離」れていくこと ができる。それによって、自分独自の個性を発揮できるようになるのです。このことは学校の学習に おいても同じことです。 <教師の指導力について> 新学習指導要領には、今までの理念に対する課題が5つ書かれていますが、その2点目に、「子ど もの自主性を尊重するあまり、教師が指導を躊躇する状況があったのではないか」と指摘があります。 私たちは、教師として指導しなければなりません。指導と支援という言葉とのかねあいで、指導に対 して今ひとつ踏み込んでいなかったのではないか、ということが、今、指摘されているのであります。 <言葉について> 学力の根底をなす部分で言葉の力が重視されています。例えば、私のイメージを30秒でまとめて くださいとお願いしても、言葉が不自由だとまとめられません。言葉が不自由ならば、思考力・判断 力・表現力が適切に育つはずはないのです。言語の能力が落ちてしまえば、また、言語活動をする力 が衰えてしまえば、思考力自体が落ちてしまうのです。 月を見て「おつきさま」と言ったり、星を見て「おほしさま」と言ったりするのと、ただ「月」や 「星」というのでは感じ方が違うものです。今の小・中学生は、「うざい」「消えろ」「死ね」などあ まりにも汚い言葉を使っている。足し算や引き算も大切ですが、相手を傷付けるような汚い言葉を直 してやることが大切です。それが、適切な言葉遣いであります。黒板に書く文字もていねいに書くべ きであります。それが、音声と文字の両面で子どもたちによりよい言語環境を提供することになるの です。その上で、学習指導要領の言語活動の充実があり、このことを充実することにより、学力の向 上や「生きる力」の育成ができるのです。 *本講演会は、平成 20 年 11 月 28 日に群馬大学教育学部教授 事業の一環として行われました。 50 河野庸介先生を講師として迎え、 平成21年3月 発行 発行者 群馬県教育委員会(義務教育課) 電 話 027-226-4615 FAX 027-243-7759