Comments
Description
Transcript
アユ養魚用水合理化推進事業
アユ養魚用水合理化推進事業 萩平 将・棚田 教生・荒木 茂・宮田 匠 アユ養殖業における地下水の揚水量を削減する技術を模 80g,100gと段階給餌とし,濾過槽を熟成させるため,試 索するため,閉鎖式循環濾過養殖技術の導入の可能性につ 験開始前に8日間40gの給餌飼育を行い,給餌量を変更する いて検討する。 ときに飼育槽の水を半分交換した。 方 法 結 果 養殖業に導入を図るためには施設整備費が少ない技術で 飼育試験の結果を図2に示した。 なければならない。このため,コンクリート角形1t水槽を 試験Aでは,試験開始後3日目にアンモニア態窒素濃度 用いて,簡易な循環濾過水槽モデル(図1)を作成し,ア が3.6ppmまで上昇したが,8日間は異常が見られなかっ ユの飼育試験を行った。 た。なお,9日目に残餌が多くなったため,給餌量を調整 濾過槽は300Lのダイライト水槽に接触濾材(0.1㎡/個, した。 230個)を入れ,水温を安定させるためヒーターを投入 試験B では,試験開始後6 日目に亜硝酸態窒素 し,水を攪拌するため2カ所にエアレーションを設置し (4.9ppm)の影響と考えられる121尾(10.7%)の斃死が た。 見られた。その後,飼育水を入れ替え再度飼育を試みた 飼育槽は,エアーリフト2本及びエアーレーション1本で が,安定した給餌飼育はできなかった。 酸素供給及び水の攪拌を行い,pHの低下を防止するため 試験C及び試験Dでは,80g給餌で若干の斃死が見られた 4%炭酸水素ナトリウム溶液をpH自動調整システム(pH が10日間の給餌飼育が可能だった。100g給餌では,試験Cで メーター,コントローラー,定量ポンプ)で注入した。 4日目から魚の異常遊泳が見られ,その後は斃死個体が増 飼育水の循環は,10L/分及び20L/分の水中ポンプで行 加した。 い,魚への給餌は,自動給餌器を用いて1日3回行った。 考 察 なお,濾過槽の水温は20℃,pH自動調整装置はpH7.20 試験で使用した循環濾過水槽モデルでの飼育限界は,安 に設定した。なお,試験C及びDでは,濾過槽の注水部に 定した給餌飼育が可能だった範囲と考えられ,最大給餌量 マットを設置し,簡易な懸濁物除去を行った。 80g/day程度,その飼育期間は1週間と推測される。 試験は前記循環濾過水槽モデル2基を用いて,計4回の飼 今回の循環濾過モデルを単純に養殖規模へ拡大すると, 育試験を行った。なお,飼育魚は本県栽培漁業センター産 濾過槽の規模は,養殖密度を飼育水1t当たり成魚125尾(1 アユを用いた。試験A及びBでは平均体重1.7gのアユをそ 尾80g)とした場合,魚体重は10kg/tとなり,給餌量は体重 れぞれ2kg,4kgを飼育,給餌量は体重の3%とした。試験 の3%とすると1日300g/tとなる。この量を給餌するときに C及びDでは平均体重3.0gのアユを3kg飼育,給餌量は60g, 必要な濾過槽の容量を試験結果(餌1 g 当たり3 . 5 ×1 0 3m3)から算出すると,飼育水1tに対して濾過槽は約1tが 必要となる。 この循環モデルを養殖規模の飼育に技術導入できる可能 濾過槽 エアーレーション 飼育槽 性がある飼育方法は,1つの濾過水槽と最低2つの飼育水槽 をセットにし,1週間交互に流水飼育と循環飼育を行う方 ヒーター 循環ホ ゚ンプ 濾過水注水口 法が考えられるが,この場合,飼育水槽が1/3減少するた め生産額も1/3減少する。一方,揚水に必要な電力は半分 にできるが,減少する生産額をカバーすることは困難と考 定量ホ ゚ンプ えられる。 炭酸水素ナトリウム エアーレーション 現在のアユ養殖業界は,冷水病及びシュードモナス病等 の魚病被害を受け,生残率が大幅に減少している。循環濾 コントローラー pH メーター エアーリフト 過施設の導入を促すためには,循環濾過飼育でしかできな い効果的な魚病対策を検討し,魚病治療費の削減,生残率 の向上等,生産コストが削減できる飼育技術とする必要が 図1 循環濾過水槽モデル構成概略図 ある。 - 87 - 10 9 8 栄 7 養 6 塩 5 量 4 3 (ppm )2 1 0 斃死尾数 PO 4-P NO 2-N NH4-N 200 180 160 斃 140 死 120 尾 100 数 80 60 (尾) 40 20 0 残餌急増 10 9 8 栄 7 養 6 塩 5 量 4 3 (ppm ) 2 1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 飼育日数( 日) 45 40 35 栄 30 養 25 塩 20 量 15 (ppm )10 5 0 6 4 試験A 試験B 2 残餌急増 飼育日数( 日) 8 (ppm ) 200 180 160 斃 140 死 120 尾 100 数 80 (尾) 60 40 20 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 10 溶 存 酸 素 量 斃死尾数 PO 4-P NO 2-N NH4-N 水交換 0 180 160 140 斃 120 死 100 尾 80 数 60 (尾) 40 20 0 斃死尾数 N O 3-N 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 飼育日数( 日) 飼育日数( 日) 図2-1 試験A及び試験Bにおける飼育結果 斃死尾数 P O 4-P N O 2-N N H4-N 16 14 12 栄 養 10 塩 8 量 6 異常遊泳 40 16 35 14 斃 死 尾 数 12 栄 養 10 塩 8 量 6 10 (尾) 5 4 (ppm ) 2 30 25 20 15 4 (ppm ) 2 0 5 10 15 20 25 20 15 斃 死 10 尾 数 5 0 0 0 斃死尾数 PO 4-P NO 2-N NH 4-N 30 0 0 5 10 飼育日数( 日) 15 20 飼育日数( 日) 図2-2 試験C及び試験Dにおける飼育結果 - 88 - 25 30 (尾)