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PVC NEWS PVC NEWS
PVC NEWS
news
[polyvinyl chloride]
No.61 June 2007
塩化ビニル環境対策協議会
〒104-0033 東京都中央区新川1-4-1六甲ビル8F TEL.03-3297-5601
http://www. pvc.or.jp
Japan PVC Environmental Affairs Council
2
トップニュース 1
大臣室の窓も、
「樹脂サッシ」
で断熱リフォーム
環境省がモデル施工第2弾。
「温暖化防止の切り札」
普及を後押し
3
トップニュース 2
“温暖化防止対策の切り札”
塩ビサッシのリサイクル始動へ
本年度中にモデル事業スタート。
普及拡大に備え資源循環の受け皿を準備
6
視点・有識者に聞く
環境にやさしい建築・解体をめざして
建築廃棄物リサイクルの先駆者が語る
「解体こそ資源循環のスタート」
明治大学理工学部建築学科 教授
サステナブルコンストラクション・ラボ 所長 菊池 雅史 氏
リサイクルの現場から
新日鐵のコークス炉化学原料化法
10
独創的なアイデアで、
塩ビを含む容器包装プラを丸ごとリサイクル
インフォメーション 1
塩ビの壁紙施工性に高い評価
12
壁紙施工のバイブル
『素晴らしい壁紙に素晴らしい技術』
が話題
インフォメーション 2
迫る、
温暖化暴走の危機。
グリーン市場拡大は
「待ったなし」
13
山本良一・東大教授を迎えJPEC講演会。
「この5年が勝負」
の時に
広報だより
「ハイクオリティな家づくりセミナーin盛岡」
に協賛
─ 樹脂サイディングの普及に大きな効果 ─
6
15
塩ビ製リサイクルベンチがオフィス街の休息スポットに
トップニュース 1
大臣室の窓も、
「樹脂サッシ」で断熱リフォーム
環境省がモデル施工第2弾。
「温暖化防止の切り札」普及を後押し
塩ビサッシ内窓の追加施工による2重サッシ化で、建物開口部(窓)からのエネルギーロスを大
幅に低減する樹脂サッシ。環境省は、昨年10月のモデル施工に続いて、このほど大臣室などの幹部
執務室に樹脂サッシを追加設置。環境省によるこの一連のモデル施工により、一般のビルや家屋で
も、温暖化防止の切り札・樹脂サッシの普及が加速しそうです。
●実測調査で断熱効果を確認
地球温暖化の危機回避へ向けて、CO2など温室効果ガ
スの削減に取り組む環境省。その環境省が、省エネ対策
のひとつとして大きな期待を寄せているのが、樹脂サッ
シによる建物の断熱リフォームです。昨年10月には、東
京霞が関にある合同庁舎5号館23階と26階のオフィス20
窓、約200㎡に内窓タイプの樹脂サッシ(既設のアルミ
サッシの内側に付設するタイプ。詳細は次頁参照)をモ
樹脂サッシで断熱リフォームされた環境大臣室
デル施工。他省庁に先駆けて、樹脂サッシによる“冬期
舎等の政府関連施設の断熱性能向上に努めることが明記
間の無暖房化”を実践したことは、関係者の間で大きな
されるなど、温室効果ガス削減に向けた樹脂サッシの役
話題を集めました。
割は、今後急速に拡大していくものと考えられます
また、今年1月には、樹脂サッシの内窓を施工したこ
とで実際にどれだけの断熱効果が得られたのかを明らか
にするため、省内の一室を使って実測調査を実施。化学
専門のインターネット通信・ケムネット東京の記事(5
月9日付け)によると、樹脂サッシを長時間開放した場
合と閉め切った場合とでは、室内の温度差が日中で平均
2.7℃、最大4.6℃の温度差に達することなど、その効果
の大きさを具体的に確認しています(右記参照)
。
3月にスタートした第2期工事は、この第1期工事の
省エネ効果測定結果を踏まえて行われたもので、新たに
樹脂サッシの内窓が施工されたのは環境大臣、副大臣、
審議官など24階の幹部執務室の25窓、約160㎡。環境省
では今回の採用拡大を機に、一般のビルや住宅の省エネ
対策としても、
「樹脂サッシによる断熱リフォーム」の効
果が大きいことをより積極的にアピールしていく考えです。
去る3月30日に閣議決定された政府の「新実行計画」
でも、
「複層ガラスや2重サッシの導入」により各省庁
2007.6 PVC NEWS No.61
日中で最大4.6℃の温度差 ‐ 断熱性能実測調査の結果から
(ケムネット東京の記事から引用)
環境省が実施した断熱性能実測調査は、昨年10月に樹脂
サッシ内窓を施工したオフィスのうち、冬場の外気の影響が大
きい23階北側の部屋(暖房なし)について、内窓を長時間開け放
しにした場合と閉じた場合、それぞれの室温を測定し、その温
度差から樹脂サッシの断熱効果を明らかにしたもの。試験期聞
は1月15日~21日の1週間。
調査結果によると、樹脂サッシを開放し続けた場合の日中の
平均室温は20.7℃だったの
に 対 し、 閉 じ た 場 合 は
23.4℃と、樹脂サッシの施
工によって平均2.7℃の断熱
効果が得られること、さらに
ピーク時にはその温度差が
4.6℃にまで広がることを確
認。また、夜間の温度差も
平均で3.6℃、外気温が最も
下がる時間帯では4.7℃に達
するなど、樹脂サッシの優れ
た断熱性能が改めて実証さ
大臣室に設置された樹脂サッシ れた形となっています。
トップニュース 2
“温暖化防止対策の切り札”
塩ビサッシのリサイクル始動へ
本年度中にモデル事業スタート。
普及拡大に備え資源循環の受け皿を準備
塩ビサッシのリサイクルモデル事業が本年度中にスタートします。温暖化防止対策、省エネルギー
対策の切り札としての役割が期待される塩ビサッシですが、今回の試みは、今後の普及拡大に備え
てリサイクルについてもいち早く受け皿となるシステムを準備することで、資源循環型社会への業界
責任を担っていこうとするもの。事業の中核となる塩ビサッシリサイクル合同ワーキンググループで
は、まず需要の多い札幌市周辺から手を着け、順次段階的に拡大していく方針です。
●将来のリサイクル義務化も視野に
優れた断熱性と気密性で、建物の開口部から失われ
る冷暖房の熱エネルギーを大幅に低減する塩ビサッシ。
京都議定書における目標達成(1990年比で温室効果ガ
スの6%削減)へ向け「チーム・マイナス6%」を主
導する環境省も温暖化防止対策のひとつとして塩ビ
サッシの有効性に注目。昨年10月省内の窓の一部(中
☆塩ビサッシとは-
塩ビ製の窓枠に二重ガラスを組み合わせた塩ビサッシは、
約半世紀前ドイツで開発されました。日本でも1975年の発
売以来、北海道・東北地方といった寒冷地を中心に着実に普
及が進んでおり、特に北海道の新築住宅における普及率は
90%に達しますが、全国レベルでの普及率は7%程度と推定
され、ヨーロッパやアメリカの50%程度と比べるとまだ低い
レベルにとどまっています。
塩ビサッシには、アルミ
央合同庁舎5号館23階と26階)に内窓タイプの塩ビ
サッシと組み合わせた内窓
サッシ(別項)を採用したのに続いて、今年4月には大
タイプと単体で使う外窓タ
臣室をはじめとする幹部個室にも増設するなど(2頁
イプがあります。その省エ
ネ効果によるCO2削減のメ
の記事参照)
、率先してその普及を後押しする姿勢を示
リットは大きく、結露防止
しています。
や騒音のシャットアウト効
果も大きい塩ビサッシは、
塩ビサッシは、塩ビ本来の特長を生かした長寿命の製
快適な生活を維持しながら
品である上、日本での発売開始(1975年)からあまり
時間が経っていないこともあって、今のところ廃棄さ
れる量はそれほど多くなく、最も普及が進んでいる北
環境対策を進めていく上
塩ビサッシ(外窓タイプの断面図)
で、社会に欠かせないエコ
建材といえます。
海道でも、廃棄後はそのほとんどが埋め立てられてい
るのが現状です。
シ工業会と㈳日本サッシ協会および塩ビ工業・環境協
しかし、30年前に初めて塩ビサッシを施工した家屋
会(VEC)の3団体は、こうした将来予測と社会の動
が2007年前後から順次建替え時期に入っていくこと
向を踏まえて、1999年10月、塩ビサッシリサイクル合
(図1参照)
、さらには、近い将来建設リサイクル法に
同ワーキンググループ(以下、WG)を共同で組織し、
基づくリサイクル義務付けも想定されることなどから、
連携してリサイクルシステム構築への取り組みを継続
早急にリサイクルシステムを確立することが業界に
してきました。
とって大きな課題となっていました。
2002年には経済産業省の委託事業として塩ビサッシ
塩ビサッシメーカーの団体であるプラスチックサッ
リサイクルシステム調査研究を実施、北海道内での使
2007.6 PVC NEWS No.61
トップニュース 2
用済みサッシの再生処理のテストなどを行ったのに続
迎えてシステム構築の細部にわたって指導を仰いだほ
き、2003年にはドイツに調査団を派遣して塩ビサッシ
か、経済産業省住宅産業窯業建材課とも緊密な協議が
リサイクルの先行事例を現地調査。その後、2004年か
行われました。
ら2006年にかけて、回収量の予測、再生品の品質評価
とコスト試算、北海道庁・支庁との協議(北海道庁か
●「サッシtoサッシ」のマテリアルリサイクル
らは環境生活部環境局循環型社会推進課と建設部住宅
今回のリサイクル・モデル事業は、基本的に「サッ
局建築指導課が参加)など具体的な作業を続けてきま
シtoサッシ」のマテリアルリサイクルをめざすもので、
した。
WGでは当面2011年度までを「初期段階」と想定し、対
また、これら一連の作業では、東京大学大学院・新
象地域を札幌市とその周辺(石狩・空知・胆振・後志
領域創生科学研究科の清家剛准教授をアドバイザーに
の4支庁管内)に限定して事業を進めていく計画です。
リサイクルモデルのフローは下図のとおり。現状で
は建築解体業者が集めた使用済みサッシを中間処理業
図 1 使用済み塩ビサッシの排出予測量推移
25
20
者(江別市の角山開発㈱)が切断して埋立て処分して
いるものを、今後は、①角山開発で1次処理(切断と
排出量︵千トン︶
北海道
ガラスの除去)された部材を、②塩ビ建材のリサイク
全国
ル業者(赤平市の㈱ゼニアテックス)が部品の解体と
15
異物除去(金属や他の樹脂、汚れなど)を行った上で
10
2次処理(粉砕)
、③これを塩ビサッシメーカーが引き
取って製品の原料に再利用する、という流れでリサイ
5
0
クルしていくこととなります。㈳日本サッシ協会とプラ
スチックサッシ工業会は全体の運営管理を担当します。
'07 '08 '09 '10 '11 '12 '13 '14 '15 '16 '17 '18 '19 '20
年 度
初年度の目標処理量は約5トン。これは、前述した
出典:㈳日本サッシ協会
初期段階におけるリサイクル・モデル・フロー
建築解体業者
(不特定多数)
廃サッシ
処理委託
ゼニアテックス㈱
・所在地 赤平市茂尻旭町 1-12-1
・事業内容:産廃収集運搬
産廃中間処理
塩ビ材再生処理
2007.6 PVC NEWS No.61
塩ビ部材を
処理委託
角山開発㈱
・所在地 江別市角山 425
・事業内容:産廃収集運搬
産廃中間処理
産廃最終処分
角山開発㈱
[1次処理]
・ガラス除去
・部材状に切断
解体サッシ
最終処分場
(埋立て)
現在
今
後
ゼニアテックス㈱
[運搬・2 次処理]
・部分解体
・異物除去
・破砕選別処理
売 却
再生処理品
(破砕品)
日本サッシ協会
プラスチックサッシ工業会
各社へ配分
経費負担
塩ビサッシメーカー
・ペレット造粒
・塩ビ材押出
とおり、当面はまだ初期段階で使用済み塩ビサッシの
れだけのことができるか、その実績と反省を踏まえた
排出量もそれほど多くないと予測されるためで、WGで
上で、分別作業の機械化などシステムの改善を進め、
は今後排出量の増加に応じて設備投資の充実や対象地
少しでも早く自力で安定したリサイクルを維持できる
域の拡大など、段階的にシステムの確立、展開をめざ
ようにしたい。6割の塩と4割の石油で作られる塩ビ
していく方針です。
は、他の樹脂に比べて石油使用量も少なく、製造・加
再生原料については、これまでの実験からサッシの
工工程で消費されるエネルギーも少ないエコロジー製
内部層など外観上問題にならない部分に20%程度利用
品だが、同時に塩ビサッシには温暖化防止対策での役
できることがわかってきていますが、用途については
割という期待もかかっている。そうした有用な製品に
基本的には各社それぞれの研究開発に委ねられること
ついて、廃棄された後のリサイクルシステムまで将来
となっています。
に備えて準備しておくことは、業界にとっても社会に
とっても非常に大きい意味を持つ」
(プラスチックサッ
●安定したリサイクルへの第1歩
シ工業会・福田恵輝技術委員長)
「モデル事業への取り組みを通じて、①再生原料の
地球温暖化防止への貢献という要請に応えつつ、資
品質向上、②再生処理作業のコストダウン、③各社に
源循環型社会にも対応した製品としてさらなる一歩を
おけるリサイクル用途開拓、という3つの課題を継続
踏み出した塩ビサッシ業界の試み。その順調な進展が
的に検討していく。まずは初年度の取り組みの中でど
望まれます。
■塩ビはリサイクルできる材料
東京大学大学院・新領域創生科学研究科准教授 清家 剛
氏
これまで本プロジェクトでは、実験室内での技術検討だけでなく、実際の改修・解
体現場から200窓を集めて実廃棄物による実験を行い、リサイクルの可能性について研
究してきた。このような実践的な検討をふまえて、いよいよ初期段階のスタートとい
うことで、個人的にも感慨深い。幸い樹脂サッシの普及が遅かったことから、実際の
解体廃棄物として増えてくるのはこれからである。
したがって今後運用上の課題のいくつかは、ここ数年のうちに十分な検討がなされ、解決されることと思
われる。2003年度のEU調査でドイツのリサイクル関係者が語った「塩ビはリサイクルできる材料なんです。」
という言葉が、日本でも現実のものとなることを期待している。
■意義大きい、モデル事業のスタート
経済産業省住宅産業窯業建材課 技官 山本晃平
氏
近年環境に対する取り組みが注目されており、塩ビサッシについても、平成13年度
に資源有効利用促進法により、分別回収の利用促進のため表示製品に指定される等、
リサイクルへの気運が高まってきた。そんな中、平成14年に当省支援のもと、「塩ビ
サッシリサイクルシステムの構築」への取り組みが開始された。
この取り組みによって、再生原料をサッシの内部層など外観上問題にならない部分
に20%程度利用出来ることがわかったが、再生原料の品質向上、再生処理作業のコストダウン及び再生原料
の回収方法といった多くの課題が残されている。これらの課題を解決し、安定したリサイクルシステムを確
立させることが重要であるため、本年度中に試験的に塩ビサッシのリサイクルモデル事業をスタートさせる
ことは、大変意義のある大きな第一歩である。
2007.6 PVC NEWS No.61
●視点● 有識者に聞く 57
環境にやさしい建築・
解体をめざして
建築廃棄物リサイクルの先駆者が語る
「解体こそ資源循環のスタート」
明治大学理工学部建築学科 教授
サステナブルコンストラクション・ラボ 所長 菊池
雅史
氏
●建材リサイクルの30年選手
やってみると面白いから大学院に行くということにな
ぼくが建築廃棄物のリサイクルの研究を始めたのは、
る。そうなると、無理矢理にでもテーマを考えて学生
オイルショックの翌年、1974年のことです。
「ほんとで
に与えてやらなければしょうがないですからね。それ
すか」とよく言われるんですけど、大げさじゃなく、
でコンクリートをやったり石膏ボードをやったり、時に
気がついたらいつの間にかリサイクルの30年選手とい
は国のプロジェクトなんかと噛み合ったりしながら、
うことになってしまいました。
そんなことの連続でずうっと動いてきたということで
まずコンクリートから始まり、木材、石膏ボード、
す。
ガラス、塩ビ建材(床材)と順々に進んできて、一方
では高炉スラグや銅スラグ、フライアッシュといった
●環境影響評価システムの開発
工業副産物の再資源化技術の開発にも取り組みました。
ただ、世の中にはなかなか認められませんでした。
言ってみれば業界が手を着けなかったことを先取りし
なんで認めてくれないんだろうといろいろ考えて、当
てやってきたような恰好ですが、それらの研究成果は
初は世の中の認識が甘い、それとうちの研究室が走り
今では殆どすべてが実用化されています。
すぎた、ということで納得していたんですが、あると
こんなことを言うと、先見の明を自慢しているみた
き、世の中は技術では進まない、システムを作らなけ
いに聞こえるかもしれませんが、実はそうじゃないん
れば、ということにハタと気がつきました。システム
です。ぼくはいっぺん外の会社に勤めてから学校に
を作ってその中に技術を盛り込んでいけば、耳を傾け
戻ったんですけど、それがちょうどオイルショックの
てくれる人も出てくるはずだと思って、それが「建築
直後で、資源節約のためにリサイクルをしなければと
物のライフサイクルにおける環境影響評価システム
いうことは既に当時の社会の大きなテーマになってい
(LCA)
」
(以下、環境影響評価システム)の開発につな
た。それで担当の教授がぼくにコンクリートのリサイ
がりました。1989年ごろのことです。
クルをやれと言うんですけど、最初は正直、何でおれ
それと、そのころから、ぼくの部屋に環境をやりた
がゴミなんかやらなくちゃいけないんだと思いました
いという女の子が入ってくるようになった。変な言い
ね。でも、いざやり始めてみたらとても面白いし、世
方ですが、
「これはしめた」と思いましたね。ちょうど
の中に先駆けてやっているという自負も出てきて、と
バブル経済の真っ盛りで、ごみなんか出したって何が
もかく、こうしてリサイクル一筋でくることになったわ
悪いという風潮の時代です。そんなときに女子学生が
けです。
環境に関心を持つということの意味はとても大きいと
ただ、ここまでやってこれたのは、学生がぼくの研
思いました。で、ぼくははじめにはっきり言ったんで
究に目を向けてくれたということが大きいですね。菊
す。
「いま環境といっても誰も耳を傾けない。きみたち
池の所でこれをやりたいといって学生が集まってくる、
は捨石になれ。但し、君たちの子供が育つ頃、これは
2007.6 PVC NEWS No.61
あなたたちが生まれる
してあげます」と言って、それ以来長いお付き合いを
前から私がやっていた
させていただいています。
ことなのよと自慢でき
建物のライフサイクルを考えると、まったくの新築
るぞ」そう言ったら、
は別として、まず最初にくるのが解体であって、解体
みんなちゃんと納得し
こそすべてのスタートなのです。日本では毎年新築着
てくれました。
工床面積の約15%に相当する建物が解体されるのに、
それから、まずシス
解体工事の環境面、資源循環の視点は社会的にも学術
テ ム づ くり の た め の
的にも殆ど考慮されてきませんでした。しかし、建設
データベース集めに取
廃棄物の中で最も多いのが解体系なのですから、ここ
り組み、次の年の女の
をきっちりしないで循環型社会なんてほんとは言える
子がさらにその作業を受け継ぐといった形で研究を続
はずがない。環境解体設計システムでは、土壌汚染な
けていきました。
「まだ向こう岸には深くて渡れない
どの環境安全性の調査にはじまって、解体による建設
が、去年の学生はここまで石を積んで浅くしてくれた
廃棄物発生量の算定、解体工事費、分別、中間処理、
から、君たちはここまで埋めろ」なんて言ってね。世
二酸化炭素排出量の算定、3Rの推進まで、すべてを評
の中がようやく菊池のシステムは面白いと言ってくれ
価して解体設計を組み立てます。つまり、それによっ
るようになったのは1995年ころからです。そのころか
てトータルでいちばん環境負荷を少なくするにはどう
ら国や㈶建材試験センター(建設材料や建築設備など
するかを見るわけです。例えば解体工事で多少環境負
に係わる試験、システム審査、調査・研究などを行う
機関)などがぼくの作った環境影響評価システムを採
用してくれるようになってきました。
●世界初の「環境解体設計システム」
環境影響評価システムに続いて取り組んだのが環境
解体設計システムの開発です。これは、資源循環と環
境負荷の低減に配慮した建築物の解体を行うための精
密な設計図に当るもので、これと同じものはまだ世界
のどこにもありません。そもそもは青山謙一さん(前
潮建築設計事務所会長、現東亜道路工業㈱常勤顧問)
が提唱した考えを、ぼくのところで具体的にシステム
化したものです。
解体工事
青山さんという方は、旧東京都庁舎や旧群馬県庁舎
などの解体工事・建て替え工事で解体設計の実施・指
導に携わった真の先駆者といえる人で、ぼくは群馬県
庁の解体工事を通じて知り合ったんですが、当時既に
70歳近かったでしょうか、
「これからどうするんです
か」と聞いたら「設計事務所の会長で終わる」という
ので、
「それじゃあまりにもったいない。あなたのやっ
ていることは世界であなた一人しかやれない。あなた
が元気なうちにあなたのノウハウを全部ぼくが吸い出
竣工建物(明大アカデミーコモン)
2007.6 PVC NEWS No.61
●視点● 有識者に聞く 57
荷がかかっても、中間処理の段階で負荷を減らすこと
ます。それで、塩ビだって悪いところはあるかもしれ
ができれば、トータルとしては環境配慮型の解体設計
ないが、いいところもあるに違いないと思っていろい
と評価できます。環境問題では、こうしたトータルな
ろ調べてみたら、調べれば調べるほど塩ビが優れた材
ものの見方が大事なので、1個1個の点だけで評価し
料だということがわかってきました。用途の適不適は
ても仕方がないと思います。
あるけれど、枯渇性エネルギーである石油を少ししか
1998年からシステムの開発に着手して、完成までお
使っていないし、プラスティックのなかで最もマテリ
よそ8年。先の環境影響評価システムと併せて解体〜
アルリサイクルに適している。そんなことがわかって
建築までの行為を総合的に評価できるシステムのプロ
きたら、やっぱり世の中の認識が間違ってると思えて
トタイプを構築できたことは、サステナブルコンストラ
きたのです。
クションを推進する上でとても意義のある取り組み
最初はタイルカーペットのリサイクルに取り組んで
だったと思います。
いる㈱御美商(東京都葛飾区)の活動を支援するため
もっとも、この研究も最初はあまり相手にされませ
にいろいろと協力しました。とにかく、はじめて御美
んでした。その後、経済産業省が興味を示してくれた
商の工場を見たときはとてもびっくりしましたね。タイ
お陰で関東経済産業局から資金が出たりして、民間、
ルカーペットはリサイクルの難しい製品ですが、そこ
行政の資金を含めて合計1億1千万円の大プロジェク
から塩ビのバッキング層を高速回転する卸し金の歯の
トに成長したわけですが、そんな中でシステム構築の
ようなもので細粒状に削り取って再商品化するという、
基盤となったのは、2001年に明治大学の駿河台校舎を
その発想と切削技術。それと製造設備がコンパクトで
解体設計するときに環境解体設計システムを活用して
ある点も魅力でした。設備がコンパクトだと増設もメ
もらったことです。いまその跡地にこのサステナブル
ンテナンスも楽だしエネルギー消費も少なく騒音もあ
コンストラクション・ラボがあるアカデミーコモン(明
まり出ない。これは何とか世の中に紹介しなければと
治大学の生涯学習棟)が建っています。そのほか生田
思いました。現在は、御美商と連携してタイルカーペッ
校舎の建て替え工事などで合計3万7千㎡、明治大学
トリサイクルプラントを立ち上げたアールインバーサ
の建物を解体設計しました。こうした取り組みをきっ
テック㈱(東京都江東区)と一緒に、塩ビの材料設計
かけにシステムへの注目が高まってきたわけですから、
法の研究を続けています。これは塩ビ床 材や壁紙、
やらせてくれた大学の支援、協力にはほんとうに感謝
シート類など、可塑剤の量や添加物が違う廃材でも、
しています。
細粉化して一定の配合比を決めれば、必ずJISの性能を
満足するコンパウンドに
●塩ビ建材リサイクルの取り組み
リサイクルできるという
塩ビ建材のリサイクルに取り組みだしたのは、やは
方法で、NEDO(新エネ
り1998年ごろからです。実を言うと塩ビ建材について
ルギー ・産業技術総合
ぼくはあまり知らなかったんですが、当時は塩ビへの
開発 機 構)の助成事 業
バッシングが激しくなってきたころで、そのことがヘ
( マッチングファンド )
ソ曲がりなぼくのファイトを掻きたてたというのがほん
になっています。
とのところです。
何で菊池がそんなこと
新聞でも何でも、ひとつの欠点をよってたかって徹
に手を出すのかという人
底的に叩くことがぼくは大嫌いなんです。欠点だけを
もあるかもし れ ませ ん
叩いて過去の功績や良い点まで抹殺するのはとてもお
が、確かにプラスティックのことはよくわからないけ
かしいと思うし、叩かれれば叩かれるほど、その叩か
れど、コンクリートリサイクルの材料設計でずっと
れているものを救うのがぼくの役目だとさえ思ってい
やってきたことと考え方は同じですから、まったく別
2007.6 PVC NEWS No.61
なことをやっていると
重んじる大学で、社会連携を忘れた研究者は使い物に
いうわけじゃありませ
ならないと言われるくらいです。
ん。リサイクルしやす
それともうひとつ。
「建築解体は建設工事の一環であ
さという点でも塩ビと
る」ということをぜひとも建築学会の研究者全員に
コンクリートはとても
知ってほしい。建築というのは国民総生産の10%を占
よく似ています。コン
める巨大産業ですが、その10%が社会に及ぼす影響は
クリートはあらゆる建
好悪半々です。だからこそ、建築学会としては「持続
設資材の中でいちばん
的な社会を築くために何をしなければならないのか」
あっさりしている、つ
という点に根底をおいて活動しなければならならない
まり循環性の高い材料
わけですが、そうなると今いちばんの問題となってい
ですが、塩ビもそれと同じぐらいあっさりしていて汎
る解体系廃棄物の処理、ここから環境配慮型にしてい
用性があると思います。
かないと何も始まりません。要するに、解体こそ建設
だから塩ビ業界も「塩ビは悪くない」という一方的
のスタートなのであって、循環は解体から始まるとい
な論理ではだめ。そうじゃなくて塩ビのいいところを
うことです。
もっと言わなければ仕方がない。
循環型とかサステナブルとか言葉だけはあちこちで
使われていますが、それはどうも一般的な用語として
●研究者も「社会との連携」が大事
使われているに過ぎないようで、明確な理念を持って
これからの建築学会の課題を考えてみると、
「トータ
それを言う人は殆どない。生意気な言い方ですが、そ
ルでものを見る」ということがとても大切になってくる
こが30年選手と15年選手、5年選手の違いなんです。
と思います。生意気なことを言うようですが、大学の
30年以上、一生懸命資源の循環に取り組んできました
先生というのはとかく研究のほうだけに特化してしま
が、単なる再資源化の技術から始まって環境解体設計
いがちで、世の中全般の動きをトータルで見ている人
システムへと一皮むけるまでに15年かかった。このこ
が少ない。これからは研究者ももっと実社会の人たち
との意味をわかってほしいと思います。
と胸襟を開いて話し合うべきです。彼らが何に困って
いるのかに耳を傾けて、
「それならこっちの持っている
データベースで協力できますよ」と提案できるような、
そういったスタンスが必要だと思います。
自分の意見を押し付ける前に人の話を聞く、という
略 歴
きくち・まさふみ
工学博士。所属学協会:日本建築学会 日本建築仕上学会
(会長)等
のがぼくの基本的な姿勢です。業界の多くの人がぼく
1942年生まれ。1966年明治大学理工学部建築学科卒業、
の研究に協力してくれるのも、
「先生は自分たちがこう
1968年明治大学大学院修士課程修了。日本サーモコン㈱を
したいと思っていながら具体的に描けずにいたストー
経て1975年明治大学工学部専任助手、1995年同理工学部助
リーを描いてくれるからだ」と言ってくれます。 いろ
いろな人の話を聞くと問題の本筋が見えてきます。リ
サイクルは回収が大事といった一般的なことは誰でも
言えるでしょうが、回収の何がどう問題なのか具体的
に裏筋まで知っていないと、業界の人とは話ができま
せん。
とにかく、もっとトータルでものを見て社会連携を
大事にすること。明治大学は教育、研究、社会連携を
教授。2000年から理工学部教授に就任。日本における建設廃
棄物・工業副産物リサイクルのパイオニアであり、
「継続は力
なり」
「アバウト イズ ベター」
「先に大言壮語を吐き、その後
必死に辻褄を合わす」など独自のポリシーを持つ。日本建築
仕上学会賞、石膏ボード賞功労賞、日本建築学会賞、日本建
材・住宅設備産業協会功労賞など受賞歴多数。主な著書に
『材料設計用教材』
(共著/彰国社)
、
『解体工法と積算』
(共著
/(財)経済調査会)
、
『大学課程 建築材料』
(共著/オーム
社)などがある。
2007.6 PVC NEWS No.61
リサイクルの現場から 51
新日鐵のコークス炉化学原料化法
独創的なアイデアで、塩ビを含む容器包装プラを
丸ごとリサイクル
一般家庭から出るさまざまな容器包装プラスチックを、製鉄用のコークス炉を
使って熱分解し、再生油やコークスとして丸ごとリサイクル-。新日本製鐵㈱
(本社/東京都千代田区、以下新日鐵)のコークス炉化学原料化法は、長年の製
鉄技術の蓄積から生み出されたまったく新しいプラスチック・リサイクル技術で
す。資源循環型社会の構築と温暖化防止への貢献へ向けて、着実に実績を積み
重ねる同社の取組みを、最大の拠点となる君津製鐵所(〒299−1196 君津市君
津1 TEL. 0439-52-1209/FAX. 0439-54-6631)に取材しました。
●世界に例のないオリジナル技術
で、2002年には、
「コークス炉による廃プラスチックリサ
鉄鋼製造の燃料、還元剤として欠くことのできない
イクル」のモデル事例として、㈶日本産業デザイン振興
コークスは、石炭(微粉炭)を高温・無酸素状態のコー
会が主催するグッドデザイン賞の金賞を受賞しています
クス炉の中で蒸し焼き(乾留)にして作られます。また、
「プラスチックのリサイクルにコークス炉を利用するとい
石炭を乾留するときに揮発するガス分(コークス炉ガス)
うアイデアは、コロンブスの卵というか、思いついたこと
も貴重な資源で、鉄鋼メーカーでは従来から、ガスを回
そのものが発明だったと言えるが、考えてみれば容器包
収・精製して製鉄のエネルギー源や化製品原料として有
装プラスチックのリサイクルにこれほど適した技術は他に
効活用してきました。
ない。というのも、雑多な混合体で排出される容器包装
新日鐵のコークス炉化学原料化法は、このコークス製
プラの場合、分別して単一素材でマテリアルリサイクル
造の原理を廃プラスチックの再資源化に応用、進化させ
するのは現実には不可能であり、乾留という手法で元の
たもので、世界的にも例のないきわめて独創的な技術と
原料の形に戻すことで初めて効率的かつ安全なリサイク
いえます。
「塩ビを含むさまざまな種類の容器包装プラス
ルが可能になる。欧米や日本で一般的な高炉還元法
チックを混合状態のまま1200℃の高温で熱分解し、コー
(コークスと一緒に廃プラを直接高炉に吹き込む方法)に
クス炉ガスと炭化水素油(以下「再生油」
)を回収する一
比べて歩留まりも高い。塩素対策としても優れており、塩
方、カーボン残渣はコークスとして再利用する」ことによ
ビを分別する手間をかけることもなく問題なくリサイクル
り、プラスチックをほぼ100%リサイクルすることが可能
できる」
(君津製鐵所環境資源エネルギー部の茨城哲治
部長)
新日鐵では、2000年4月の容器包装リサイクル法施行
を機に、名古屋製鐵所と君津製鐵所で、コークス炉化学
原料化法を用いたプラスチックのリサイクルに着手。その
後2002年には室蘭と八幡、2005年には大分の各製鐵所へ
と事業を拡大し、現在では全体で年間約25万トンの処理
能力を有するまでに至っています。中でも君津製鐵所は、
茨城部長(右)と小関常雄氏(プラスチックリサイクルグループリーダー)
10
2007.6 PVC NEWS No.61
処理能力約9万トン(3ライン)
、処理実績7万トン余り
(2006年度)と、文字どおり日本最大級のプラスチックリ
ル技術の中では
サイクル施設のひとつです。
最も歩留まりの
●塩素の影響は予想以下のレベル
高い技術であり、
君津製鐵所のプラスチックリサイクル施設は、前処理
貴重な資源は絶
工程と熱分解工程の2つで構成されています。前処理工
対に無駄にしな
程は、プラスチックをコークス炉で処理しやすい形に加
いという我々の
工する工程で、粗破砕→手選別による異物除去→磁力選
思いは、この技
別による金属類の除去→2次破砕→減容整形という順序
術によって支えられている」
(茨城部長)
。
を経て、単一乾電池サイズの造粒物(25㎜×60㎜)に整
前述したとおり、コークス炉化学原料化法では塩ビも
形されます。
分別することなく一体処理されますが、塩素の影響につ
一方、熱分解工程では、この造粒物を定量の石炭と混
いて茨城部長は、
「塩素は塩ビだけでなく容器に付着した
合してコークス炉中心の炭化室と呼ばれる密閉空間に投
醤油や塩からも発生するが、すべて合わせても2~3%
入し熱分解が行われます。揮発したガスはガス冷却装置
ぐらいの濃度で、現在の脱塩素処理で全く問題はない。
で約900℃から80℃まで一気に急冷した後、アンモニア水
当初は塩ビを分別することも考えたが、実際にやってみる
により塩素を取り除きます。こうしてプラスチックは最終
と予想に反して設備の腐食などの影響もなく、再生油や
的に40%の再生油(軽油とタール)と40%のコークス炉ガ
コークス炉ガスにも塩素は殆ど残らない。燃料として使
ス、そして炭化室内に残った20%のコークスの3つに分解
用される部分においても、コークス炉ガスを使った発電
され、コークスは高炉還元剤として利用されるほか、軽油
設備は発電効率は47%と、普通の都市ごみ発電(16%程
分は各種プラスチック製品の原料に、タール分はテニスラ
度)に比べて圧倒的な高効率になっている」と説明して
ケットなどのカーボンファイバー製品やエポキシ樹脂塗料
います。
などの原料にリサイクルされます。また、水素とメタンを
鉄鋼業界では京都議定書に基づく地球温暖化防止策の
主成分とするコークス炉ガスは、所内の発電設備や加熱
ひとつとして、廃プラスチックを2010年までに年間約100
炉の燃料として再利用されます(以上は下図参照)
。
万トン有効利用(炭素換算で約70万トン削減)する自主
君津製鉄所の前処理設備
「コークス炉化学原料化法では、基本的に前処理工程で
行動計画を策定しており、新日鐵でも今後、
「業界計画
取り除かれた異物以外はすべて再利用される。これが
100万トンの3分の1分担」を最終目標に、年30~40万ト
100%リサイクルと謳っている所以だ。容器包装リサイク
ン処理に向けて体制の整備増強を図っていく考えです。
コークス炉化学原料化法
リサイクル製品案内
再生油(化学原料)
40 %
ベーリング
軽
油
二次破砕物
造粒物
ガ
ス
精
製
処
理
・樹脂ペレット
・容器包装
・ベンゼン・トルエン
・キシレン
・塗料、電子材料、等
炭化物(コークス原料)
20 %
燃
料
ガ
ス
・製鉄原料として
高炉で使用
分解ガス
(水素・メタンが主成分の燃料ガス)
40 %
・製鉄所内の加熱炉、
発電所等で利用
2007.6 PVC NEWS No.61
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インフォメーション 1
インフォメーション
塩ビの壁紙施工性に高い評価
壁紙施工のバイブル
『素晴らしい壁紙に素晴らしい技術』が話題
壁装施工団体協議会の壁紙施工技術研究会が制作した『素晴らしい壁紙に素晴らしい技術』
(平成17年9月発
刊)が、壁紙施工技能者の間で話題となっています。両研究会が平成16年から17年にかけて実施した研究結果
から、市場に流通する様々な壁紙の施工上の問題点と適切な対応策などをまとめたもので、
「その成果を施工業
界の共通の財産として業界の健全な発展に役立てるとともに、後進の指導・教育の資料としても利用し、壁装
施工者の技術と地位の向上を図る」のが制作の狙い。本の中には、壁紙の魅力をより生かすための施工方法が
具体的に記述されており、文字どおり「壁紙施工技能者のバイブル」と言うべきガイドブックとなっています。
●現場技能者が計7264点を評価
『素晴らしい壁紙に素晴らしい技術』の内容は、第1
編「壁紙の種類と施工対策の要点」と第2篇「壁紙施
壁紙の施工性について現場に直接かかわる技能者本人
の評価を明らかにしている点で、前例のない貴重な
データといえます。
工性調査の報告」の2部からなり、調査結果の詳細を
調査結果からは、全15項目の評価を平均すると塩ビ壁
第2篇に、調査結果から抽出された問題点への適切な
紙の施工性の高さが改めて裏付けられたほか(図)
、全
対応策を第1編にまとめた構成となっています。
体として「平滑度」
「たたみじわ」など9項目につい
このうち、
「壁紙施工性調査」は、ビニル系、無機質
系、プラスチック系、紙系など市販の壁紙製品7264点
て、
「壁紙の特性上適切な対策を講ずる必要性の高いこ
と」が浮かびあがっています。
(壁紙問屋協議会会員各社の見本帳の商品)を対象に、
実際に施工している技能者が日ごろの作業の中でどの
●壁紙がさらに愛用されるために
ように感じ、どういう問題を認識しているか、チェッ
一方、上記の問題に対する対処法を明らかにした「壁
クシートを用いて15項目(平滑度、柄合い、たたみじ
紙の種類と施工対策の要点」では、例えば「たたみじ
わ、融通性、材料扱いなど)にわたり5段階評価を
わ」については、
「たたみの折り曲げをゆるやかにし、
行ったもので、調査には壁装施工団体協議会と日本内
重ねる枚数を2〜3枚に制限する」
「のり付け後の壁紙
装仕上技能士会の会員など延べ115団体、706人が協力。
はプラスチックの袋や容器に入れて、乾燥が進まない
ビニル系
プラスチック系
ようオープンタイムを取る」など具体的な方法を明記。
こうした対策を、
「従来から説明されていた施工方法に
追補することで、より良い施工方法の確立を目指す」
としています。
塩ビをはじめとする多彩な種類の壁紙が世の中でます
ます愛用されていくためには、壁紙の魅力を最大に生
4 以上
3.5∼4 未満
3.5 未満∼3
3 未満∼2.5
2.5 以下
評価結果の平均値の例(ビニル系とプラスチック系の比較)
12
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かす施工方法を普及させることが不可欠。
『素晴らしい
壁紙に素晴らしい技術』は、そういう意味でも関係者
必読の書と言えそうです。
インフォメーション 2
インフォメーション
迫る、温暖化暴走の危機。
グリーン市場拡大は「待ったなし」
─ 山本良一・東大教授を迎えJPEC講演会。「この5年が勝負」の時に
去る3月15日、東京港区の虎ノ門パストラルにおいてJPEC(塩化ビニル環境対
策協議会)主催の講演会が開催されました。
今回の講師は、環境科学の第一人者・山本良一教授(東京大学生産技術研究所)
。
お話は地球温暖化問題回避への対応策をテーマとしたもので、山本教授はまず、
様々な直近の科学的知見を示しながら温暖化の切迫した状況を警告。その上で、温
暖化の暴走を食い止めるには「環境に配慮したものづくり(エコプロダクツ)とそ
の普及により持続発展型社会、資源循環型社会へのシナリオを実現するしかない」
として、
「新しい環境生活文化を創り出して問題を解決していこう。勝負はこの5年
間だ」と呼びかけました。講演の要旨は以下のとおりです。
●IPCC第4次レポートの衝撃
●今ならばまだ間に合う
・この半年、特に昨年の9月以降、地球温暖化問題に関
・こうした予測からヨーロッパでは気候ターゲット2℃と
する新しい事実が次々と発見され、世界の情勢はまさ
いう考え方が出てきた。気温の上昇を2℃を突破させ
に劇的に変化したと言っていい。特に、2月に発表され
てはいけないという考えだが、2004年の段階で気温は
たIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第4次レ
既に0.8℃上昇しており、このままでは2℃突破は必死
ポート(サマリー)により、地球温暖化の原因はほぼ確
だ。世界の研究者はあと10年以内に思い切った行動を
実に人間活動にあることが科学的結論となった。レ
取らなければ危ないと見ている。私は昨年出版した
ポートでは世界の空気中のCO2の平均濃度は過去10年
『気候変動+2℃』という本で、1.5℃突破は2016年、
間を取ると毎年1.9ppmずつ増加しているとしている。
2℃は2028年、3℃は2052年という日本の科学者の計
すなわち年間150億トンもの炭酸ガスが空気中に溜まっ
算結果を紹介したが、生物の大量絶滅が憂慮される
ていることになる。
(温暖化を解決するためには)我々
1.5℃突破を防ぐにはその10年前くらいから全力を挙げ
は毎年150億トンのCO2を削減しなければならないわけ
て取り組まなければならない。つまり2006年こそ生物種
だが、京都議定書における削減量はわずか10億トンに
大量絶滅のポイント・オブ・ノーリターンだったかもし
過ぎない。それさえも達成できないというのが我々の情
れない。
けない現状だ。我々の直面する問題はそれほどシリア
スだ。
・昨年11月、イギリスのInstitute For Public Policy Research
というシンクタンクが「危機を回避するための時間はも
・このままいくと産業革命以前に比べて地球の表面温度
う5年しか残されていない」という論文を発表し、
「全
は2℃を突破する確率が50%を超えると科学者は見て
世界から放出される温暖化効果ガスを2012年までに減
いる。地球の表面温度が1.5℃を突破すると生物種が
少させ始めなければ2℃を突破してしまう」と報告し
100万種類絶滅し、グリーンランドの氷床が全面融解し
た。 最 近 は「Ten years are left to the Point Of No
てしまう。2℃だと人類がやられる。3℃だと気候は完
Return for Runaway Global Warming」
(暴走する地
全に崩壊しコントロールできなくなる。
球温暖化が引き返すことのできなくなる地点まであと10
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インフォメーション 2
年)という流行語も生まれている。
にCO2の排出ラベルをつけるとしている。東京証券取引
・問題は解決できるのだろうか。私は今ならばまだ間に
所の数値には何の環境情報も含まれていないが、環境
合うと思う。ではどうすればいいのか。要はCO2や他の
格付けの高い会社を2Aとか3Aに格付けしておけば国民
温暖化効果ガス(GHG)をカットするしかない。2050
はその会社の株を買う。環境が可視化されていないか
年までに60〜80%のGHGを削減しなければならない。
ら国民は行動できない。
既にイギリス政府は60%削減を打ち出しているが、昨年
・第3番目の戦略は、企業が製品に環境付加価値を与え
イギ リスで 発 表 され たAvoiding Dangerous Climate
たらそれに対して社会が正当な金を支払う、逆に付加
Changeという論文は、21世紀中に膨大な温室効果ガス
価値がないものは罰金を取るという市場経済のメカニ
を削減できる技術的な能力が我々にはあるとしている。
ズムを作らなければならない。リサイクルすればメリッ
日本の国立環境研究所もイギリスと共同研究した結果、
トがあるというふうにすれば皆がリサイクルする。現在
2050年までに70%削減は可能だということを中間報告
のような、市場経済の中に入っていないボランタリーの
書の形でつい先ごろ公表している。
リサイクルでは続かない。
●日本がやるべき3つのこと
●新しい環境生活文化の創造を
・(CO2を削減して)我々が生き延びるには、持続発展型
・以 上の3つの
社会、資源循環型社会へのシナリオを実現するしかな
戦略が実現で
い。そのためには、環境に配慮したものづくり(エコプ
きれば日本は
ロダクツ)とその普及(グリーン調達、グリーン購入)
世 界 の №1に
のほかには具体的な手段は考えられない。社会の隅々
なれる。地球
まで、環境配慮の製品やサービス、環境投資が遍く行
温暖化防止は
き渡るような状況を作り出せば問題は解決できる。
戦 い で あ り、
新しい環境生活文化の提案
伝統的エコライフ
ハイテクに支援された
快適エコライフ
LOHAS
シンプルライフ
ボランタリー・シンプリシティ
スローライフ
ダウンシフト
脱物質化/脱物量化/縮小
サービサイジング
持続可能消費
ユニバーサル・エコデザイン
・この点に関して、現在の日本で大事なことは3つある。
新たな世界大戦が始まったと考えなければならない。
ひとつは日本人の心の持ち方を一変させることだ。全
京都議定書に参加していないアメリカもオーストラリア
面的な思想の転換が必要とされている。国家目標、国
も中国も次第に立場を変えつつある。また、エクソン
家最高戦略を明確にして、低炭素・循環共生型社会を
モービルはIPCCの第4次レポート以降劇的に姿勢を転
構築すべきだ。衆議院と参議院で2050年までに温室効
換し、CO2が温暖化の原因のひとつと認めた上で、莫大
果ガスを60%〜80%削減することを決議してもらいた
な資金と人材を環境技術に投入するようになっている。
い。
我々は受けて立てるのか。これが心配だ。このままい
・第2には、環境情報の可視化だ。製品、サービス、技
けば、我々は中国と欧米の挟み撃ちになる。だからこ
術、インフラ、企業経営まであらゆるものの環境情報
そ、日本も徹底的にエコマテリアル、エコプロダクツの
が消費者に一目で分かるようにすることが必要だ。イギ
開発をしなければならない。
リスのテスコという大手スーパーは7万種類の商品全部
・グリーン市場の拡大は待ったなしだ。2010年には日本
でも100兆円規模になる。私が言いたいのは、要する
に、新しい環境生活文化を創り出して問題を解決して
いこうということだ。環境生活文化にはふたつある。ひ
とつは伝統的なエコライフ、もうひとつはハイテクに支
援された快適エコライフ。このふたつでしか問題は解
決できない。この5年間が勝負だ。この5年で全力を
挙げて取り組まないと世界も日本も極めて危うい。
講演の後には参加者との質疑応答も
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2007.6 PVC NEWS No.61
広報だより
広
報
だ
よ
り
●「ハイクオリティな家づくりセミナーin盛岡」に協賛
─ 樹脂サイディングの普及に大きな効果 ─
樹脂サイディング普及促進委員会と樹脂サッシ普及促進委員会は、3月23日に岩手県盛岡市で開催された「ハ
イクオリティな家づくりセミナー」
(主催=㈱日本住宅新聞社)に協賛。省エネ・長寿命の『高性能住宅』づく
りを進める上で、新時代の環境建材・樹脂サイディング&樹脂サッシが果たす役割などについてPRしました。
セミナーでは、秋田県立大学の長谷川兼一準教授が貴重な実測データを示しながら「既存住宅の断熱改修に
よる省エネルギー効果」について解説したのをはじめ、建材コンサルタントの中村扶氏が「長寿命・省資源・簡
単メンテナンス 樹脂サイディングの魅力」と題して、全国各地の樹
脂サイディング使用事例などを紹介。また、同じく建材コンサルタン
トの末光喜治氏も、
『みんなで考えよう これからの住まい』とのテーマ
で、樹脂サッシの高い省エネ効果などについて説明を行いました。
セミナー終了後には、実際に樹脂サイディングと樹脂サッシを使用
したオール電化住宅の見学会も行われ、参加者は、より小さなエネル
ギーで快適&健康ライフを実現する『高性能住宅』の可能性を実感し
ていました。
見学会の模様
●塩ビ製リサイクルベンチがオフィス街の休息スポットに
この3月に、東京千代田区大手町の公開空き地(新日本製鐵本社と朝日ビルの間)に設置された使用済み塩ビの
リサイクルベンチが、高層ビル連なるオフィス街の休息スポットとして界隈のサラリーマンらに愛用されています。
このリサイクルベンチは、名古屋市のリサイクル会社・三宝㈲と塩化ビニル環境対策協議会(VEC)が2005
年の愛知万博に際して共同開発した製品を、三宝が休憩用として新たにデザインし直したもので、商標はグァテ
マラ語で「創造」を意味する「TZ`IB(ツイブ)AGE」
。同社が㈳産業環境管理協会の指導で実施したLCA調査
でも、
「廃棄物を利用した環境配慮型製品」であることが証明されています。
ベンチを設置したのは、都心部の再開発や環境問題に取り組んでいる不動産
大手の三菱地所㈱で、2006年4月の「アースデイ丸の内2006」で同社が展示
した塩ビ製リサイクルベンチに予想以上の関心が寄せられたことなどから、今
回新たに「TZ`IB(ツイブ)AGE」4台の設置を決定したもの。4台の内1台には
太陽光発電を利用した夜間用フットライトが併設されており、同社では、今回の
取り組みを通じて、都心部での代替エネルギー利用についても検証する計画。
大手町オフィス地区での反響如何では継続して増設することも予定しています。
なお、VECでは、愛知万博で使用された塩ビ製リサイクルベンチを開催地の
長久手町や茅ヶ崎市の茅ヶ崎公園などに寄贈しているほか、甲府市内の「朝気
ふれあい公園」にも、腐蝕して使用不能となっていた木製ベンチ16台の代わり
太陽光発電によるフットライトを
に同タイプのベンチを寄贈するなど、使用済み塩ビの有効利用へ向けてその普 併設した塩ビ製リサイクルベンチ。
及拡大に取り組んでいます。
下は夜間の模様。
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2007.6 NO.61
お問い合わせ先
Japan PVC EnvironmentaI Affairs Council
塩化ビニル環境対策協議会
東京都中央区新川
TEL
︵
0
3
3
2
9
7
5 1
6 |
0 4
1
︶
|
1
︵住友六甲ビル
FAX
︵
0
3
3
2
9
7
5 8
7 F
8
3
︶
︶
日本ビニル工業会
〒107-0051 東京都港区元赤坂1-5-26
TEL:03
(5413)
1311 FAX:03
(3401)
9351
http://www.vinyl-ass.gr.jp
壁紙工業会
〒107-0051 東京都港区元赤坂1-5-26
電話:03
(5413)
0602 FAX:03
(5414)
3588
有限責任中間法人 日本壁装協会
〒107-0052 東京都港区赤坂4-9-6 タクアカサカビル6F
電話:03
(3403)
6351 FAX:03
(3403)
6352
http://wacoa.topica.ne.jp/wacoa/index.html
編集後記
「トップニュース」として環境省が第2弾、環境大臣室などの幹部執務室に樹脂サッシの内窓、採用設置の紹介。一方昨年設置
した執務室の内窓による断熱化の冬期実測調査も予想どうりの性能を実証。塩ビサッシの普及が日本を救う一翼となる日が近づ
いている予感。
同時期に、塩ビサッシのリサイクルモデル事業が北海道地区で開始されることも嬉しい紹介。
「視点・有識者に聞く」では建築材料のリサイクルや環境解体設計システムの先駆者である明治大学菊池雅史教授のご登場。わ
が国の循環型社会構築に大きな貢献。さらに塩ビ建材のリサイクルもお世話になっており、感謝で一杯です。
お問い合わせ先
(佐々木 慎介)
塩化ビニル環境対策協議会 Japan PVC EnvironmentaI Affairs Council
〒104-0033 東京都中央区新川1-4-1
(住友六甲ビル8F) TEL 03
(3297)
5601 FAX 03
(3297)
5783
※乱丁、落丁などの不良品がありましたらご連絡ください。新しいものとお取り替えいたします。
古紙配合率100%再生紙を使用しています
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