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テーマ:平成 18 年 7 月豪雨の被害とその対策
2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 ―2006年8月― 株式会社インターリスク総研 災害リスク部 テーマ:平成 18 年 7 月豪雨の被害とその対策 はじめに 今年6月から7月末にかけて、西日本を中心に記録的な豪雨が発生しました。この豪雨 は各地で単位時間当たりの降水量の記録を塗り替えると同時に、各地で河川の氾濫もしく は土砂災害を引き起こし、多数の犠牲者および負傷者を出すこととなりました。 特に 7 月 15 日∼25 日にかけて各地に被害をもたらした大雨について、気象庁は「平成 18 年 7 月豪雨」と命名しました。豪雨災害の命名は、平成 16(2004)年 7 月の福井豪雨と 新潟・福島豪雨以来となります。 この大雨では、長野、島根、鹿児島など広範囲で土砂災害や浸水の被害が発生。浸水家 屋は 1 万棟以上におよび同庁の命名基準に達したとのことです。 本号では、この『平成 18 年 7 月豪雨』に代表される今年の豪雨の概要とその人的被害の 実態そしてこのような豪雨が発生した場合にどのようにしてリスクを感知し、命を守るか ということについて取り纏めました。 <総雨量(7 月15 日∼24 日)概要(気象庁ホームページより)> 1 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 1.豪雨の状況 7 月 15 日から 24 日にかけて、九州から本州付近に延びた梅雨前線の活動が活発とな ったために北陸地方、長野県を中心に大量の降雨がありました。特に 7 月 15 日から 21 日 までの7日間に断続的に豪雨が続き、この間の総雨量が多いところでは 600 ミリを超え ました。また、九州では、18 日から 24 日までの 7 日間の総雨量が多いところで 1,200 ミリを超えるなど、いずれも平年の 7 月の月間雨量の 2 倍を超える降雨量を記録しまし た。 <表1:総雨量 TOP20 地点(7 月 15 日∼24 日)<気象庁公開情報より>> 順位 都道府県名 市町村名 地点名(よみ) 雨量(ミリ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 宮崎県 鹿児島県 鹿児島県 宮崎県 熊本県 熊本県 熊本県 鹿児島県 熊本県 長野県 富山県 熊本県 熊本県 熊本県 熊本県 宮崎県 鹿児島県 宮崎県 熊本県 熊本県 えびの市 薩摩郡さつま町 大口市 えびの市 球磨郡球磨村 球磨郡山江村 水俣市 阿久根市 球磨郡五木村 木曽郡王滝村 中新川郡立山町 球磨郡湯前町 人吉市 球磨郡あさぎり町 菊池市 西諸県郡野尻町 薩摩郡さつま町 都城市 阿蘇郡西原村 阿蘇市 えびの(エビノ) 紫尾山(シビサン) 大口(オオクチ) 加久藤(カクトウ) 一勝地(イッショウチ) 山江(ヤマエ) 水俣(ミナマタ) 阿久根(アクネ) 五木(イツキ) 御嶽山(オンタケサン) 立山(タテヤマ) 湯前横谷(ユノマエヨコタニ) 人吉(ヒトヨシ) 上(ウエ) 鞍岳(クラダケ) 池の尾(イケノオ) さつま柏原(サツマカシワバル) 霧島御池(キリシマミイケ) 俵山(タワラヤマ) 阿蘇乙姫(アソオトヒメ) 1,281 1,264 1,122 1,049 912 908 904 866 837 817 816 812 791 772 770 758 747 745 741 733 上記は、7 月 15 日∼24 日の 10 日間に降った雨の合計総雨量の TOP20 を表したもので す。ほとんどか九州に集中していますが、九州以外では富山県の中新川郡立山町および 長野県木曽郡王滝村で大量の雨が降りました。全ての場所で 700 ミリ(70 センチ)(1 位えび の市・2 位さつま町にいたっては 1,200 ミリ、1 メートル 20 センチ以上)を超えているなど、尋常 ではない降雨量が計測されています。 広範囲の降雨量ではなく、計測ポイントにおけるデータであることを考慮する必要は あるものの、水量的には、河川や高潮等の他要因は関係無く、雨のみの水量で土地の「治 水能力」(以下参照)を超える可能性があることが容易に想像できます。 雨が災害を引き起こす場合に考えなくてはならないことは、その地域にどれだけ短時 間に大量の雨が降ったかということです。一般的に雨による水は、表土への浸透、河川 を経由して海への流出、河川の堤防・ダム・貯水場等人口の治水施設による処理等の治 水能力により陸に留まる水を排出していますが、この能力と人間が居住する地域の地形 2 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 的な環境の条件が合わさることにより被害が発生することになります。 つまり、河川周辺では、『堤防決壊』、山間地では『地すべり』『土砂崩れ』『土石流』、 低海抜地域では『内水氾濫』等さまざまな形で自然環境が損壊し、その結果、建物・構 造物の『床下・床上浸水』『破壊』 『流出』『ひずみ』等の甚大な財物損害を引き起こすこ とになります。また、人についても『死亡』『行方不明』『負傷』といった重大災害が発 生します。 2.1 日の降雨について 1 日(24 時間)に降った高水量データについて考察を加えます。1 日降水量の都道府県別 トップ 20 は以下のとおりです。 <表2:24 時間雨量 TOP20 地点(7 月 15 日∼24 日)<気象庁公開情報より>> 順位 都道府県 市町村名 地点名(よみ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 20 宮崎県 鹿児島県 鹿児島県 宮崎県 鹿児島県 熊本県 熊本県 鹿児島県 宮崎県 熊本県 熊本県 鹿児島県 宮崎県 熊本県 熊本県 鳥取県 熊本県 宮崎県 宮崎県 熊本県 鹿児島県 えびの市 阿久根市 薩摩郡さつま町 えびの市 大口市 水俣市 球磨郡球磨村 薩摩郡さつま町 小林市 天草市 球磨郡山江村 出水市 西諸県郡野尻町 人吉市 球磨郡あさぎり町 境港市 阿蘇郡西原村 東諸県郡国富町 都城市 球磨郡湯前町 姶良郡蒲生町 えびの(エビノ) 阿久根(アクネ) 紫尾山(シビサン) 加久藤(カクトウ) 大口(オオクチ) 水俣(ミナマタ) 一勝地(イッショウチ) さつま柏原(サツマカシワバル) 小林(コバヤシ) 牛深(ウシブカ) 山江(ヤマエ) 出水(イズミ) 池の尾(イケノオ) 人吉(ヒトヨシ) 上(ウエ) 境(サカイ) 俵山(タワラヤマ) 国富(クニトミ) 霧島御池(キリシマミイケ) 湯前横谷(ユノマエヨコタニ) 矢止岳(ヤドメダケ) 雨量(ミリ) 日(7月) 519 509 436 405 399 390 379 376 365 325 323 305 301 300 290 289 286 281 279 276 276 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 22日 18日 21日 22日 21日 22日 22日 上記表2から、22日に九州各地に大量の雨が降ったことがわかります。300 ミリ∼500 ミリ の雨量が 1 日にあったことは、上記地域には雨だけで 30 センチの深さとなるほどの雨が降っ た箇所があったということですので、大変な量の水が短時間に空から落下して来たという ことになります。当然ながら、地域の治水能力を超えた水量であったと考えられ、至る所 で床下・床上浸水、土砂崩れ、河川決壊、市街冠水等が発生したと考えられます。 前述の表1、2から九州の特に宮崎県、鹿児島県、熊本県では特に大量の雨が時には集 中して、そして断続的に振り続いたことが想像できます。 次に例年との違いに焦点を当てます。水害は前述のとおり、その土地の単位時間におけ 3 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 る治水能力を、降雨によって増加した水量が超えるかどうかによって発生するかどうかが 決まります。 例年と比較してどの程度降雨量が増加したかについて考慮したデータとして、1 日(24 時 間)の最高降雨記録を塗り替えた地域について、下表に示します。 <表3:24 時間雨量が観測史上 1 位を更新した地点(平成 18 年 7 月 15 日∼7 月 24 日:統 計期間 10 年以上<気象庁公開情報より>)> 小松(コマツ) 勝山(カツヤマ) 東御(トウミ) 松本(マツモト) (ミリ) 165 197 141 173 24時間雨量 月日 07/17 07/19 07/19 07/19 時分 06:50 02:50 10:00 09:20 (ミリ) 165 186 136 159 立科(タテシナ) 163 07/19 09:40 150 1981/08/23 11:00 諏訪(スワ) 木曽平沢(キ ソヒラサワ) 223 07/19 10:10 167 1983/09/28 23:00 255 07/19 10:00 178 1983/09/28 22:00 辰野(タツノ) 246 07/19 10:20 161 1999/06/30 13:00 伊那(イナ) 宮田高原(ミ ヤタコウゲン) 丹生川(ニュウ カワ) 境(サカイ) 232 07/19 10:00 182 1999/06/30 12:00 267 07/19 07:50 248 1999/06/30 14:00 173 07/19 08:30 163 2004/10/21 03:30 296 07/19 01:50 194 1983/09/28 16:00 下市(シモイチ) 222 07/19 04:10 212 1987/10/17 07:00 大田(オオダ) 192 07/18 04:00 173 2005/07/02 10:10 赤名(アカナ) 211 07/19 08:50 178 1996/07/20 09:00 高野(タカノ) 朝倉(アサクラ) 194 221 07/19 07/20 08:40 10:30 185 211 1995/07/03 1990/06/15 11:00 22:00 山江(ヤマエ) 434 07/22 13:10 412 1993/08/02 07:00 水俣(ミナマタ) 人吉(ヒトヨシ) 牛深(ウシブカ) 加久藤(カクト ウ) 阿久根(アク ネ) 出水(イズミ) 大口(オオクチ) 紫尾山(シビ サン) さつま柏原 (サツマカシワバ ル 矢止岳(ヤドメ ダケ) 447 369 344 07/22 07/22 07/23 13:20 14:00 04:20 377 350 322 1997/07/10 1995/07/04 1976/07/19 09:00 11:00 18:00 502 07/22 17:50 369 2003/07/21 00:30 622 07/23 06:50 418 1976/07/19 20:00 420 511 07/22 07/22 13:30 17:20 383 397 1995/07/04 1979/06/28 16:00 22:00 635 07/23 07:00 508 1976/07/20 03:00 465 07/23 08:30 362 1976/07/19 20:00 353 07/23 07:50 294 1998/04/24 08:00 都道府県 市町村 観測所名 石川県 福井県 長野県 長野県 長野県 小松市 勝山市 東御市 松本市 北佐久郡 立科町 諏訪市 長野県 塩尻市 長野県 長野県 長野県 長野県 上伊那郡 辰野町 伊那市 上伊那郡 宮田村 岐阜県 高山市 鳥取県 熊本県 熊本県 熊本県 境港市 西伯郡大 山町 大田市 飯石郡飯 南町 庄原市 朝倉市 球磨郡山 江村 水俣市 人吉市 天草市 宮崎県 えびの市 鹿児島県 阿久根市 鹿児島県 鹿児島県 出水市 大口市 薩摩郡さ つま町 鳥取県 島根県 島根県 広島県 福岡県 熊本県 鹿児島県 鹿児島県 薩摩郡さ つま町 鹿児島県 姶良郡蒲 生町 4 これまでの観測史上1位 年月日 時分 1996/06/25 21:00 2005/07/04 20:20 1983/09/28 23:00 1983/09/28 21:00 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 降雨記録を更新した地域のデータからは、前述表 1,2 にはない傾向として、長野県、島根 県の比較的多数の地域において、過去の降雨量記録を大幅に上回る降雨量を記録したこと がわかります。降雨量自体は九州各地に比較して決して多いとはいえませんが、当該地域 にしてみれば、『その土地はじまって以来の雨』が降った地域が多いということであり、 元々土地の治水能力があまり高くない地域に、過去を凌ぐ大量の雨が短時間に降ったこと が被害発生の要因となっていると考えられます。 5 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 3.被害概要 ここで、『平成 18 年 7 月豪雨』における被害速報を下記します。 <表4:H18 年豪雨による被害速報(H18 年 8 月 1 日現在)<消防庁公開情報より>> 人 都道府県名 宮城県 秋田県 山形県 新潟県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 千葉県 神奈川県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 計 的 被 害 住 負傷者 死者 行方不 明者 軽傷 重傷 人 人 人 人 家 被 全壊 半壊 一部 破損 棟 棟 棟 害 床上 浸水 床下 浸水 棟 棟 3 1 2 2 1 1 1 1 1 12 2 11 1 2 4 2 9 10 1 16 3 1 1 2 4 17 21 23 13 3 1 855 2 2 2 1 1 2 1 1 1 1 1 2 1 3 11 3 4 1 3 1 1 2 8 9 374 13 2 2 2 61 10 3 3 1 161 1,638 3,374 2 2 1 5 1 2 2 17 6 51 2 62 63 16 3 7 30 2 2 140 11 71 97 97 385 1 28 3 2 8 2 12 7 4 31 222 2 45 10 134 113 45 2 1 15 1 125 195 2 2,411 10 4 1 12 27 1 47 2 276 84 1,593 70 98 38 5 75 8 167 928 7 142 1,487 3 8,186 今年の豪雨による被害により 30 名以上の死亡者・行方不明者を出しており、また、80 名 以上の負傷者を出していることが分かります。 6 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 また、財物の損害も深刻で、家屋損害だけでも 600 件弱発生しており、床下・上浸水に ついても計 11000 件以上発生している状況です。 県別では、長野県を筆頭に鹿児島県、熊本県、島根県に被害が集中していることが分 かります。これは、前述で解説した通り、当該地域に対して単位時間当たりの降雨量が 過去に無いほど大量であったことと、当該土地の地域的な特徴があいまって起こった結 果であると考えられます。 4.人的被害 本洪水により、命を落としたもしくは、行方不明となった等の人的災害に関する詳細デ ータは以下の通りです。<消防庁公開データ(H18 年 8 月 1 日現在)より> <7月19日> ・福井県 福井市において土砂崩れにより 2 名行方不明 →7 月 19 日 2 名死亡確認(47 歳男性、75 歳女性) ・岡山県 新見市において土砂崩れにより 80 歳女性行方不明 →7 月 19 日死亡確認 ・長野県 岡谷市において土石流により住宅が流され 8 名行方不明 →7 月 19 日 5 名死亡確認 (45 歳男性、77 歳男性、75 歳男性 2 名、58 歳男性) →7 月 20 日 2 名死亡確認(70 歳女性、44 歳男性) →7 月 27 日 1 名死亡確認(75 歳男性) 辰野町において土砂崩落により女性 2 名行方不明(内 1 名は中学生) 上田市において女性 1 名河川に転落し行方不明 ・京都府 京丹後市において崖崩れにより 2 名(男女各 1 名)行方不明 →7 月 20 日 62 歳女性 1 名死亡確認 →7 月 21 日京丹後市で発見された死者 1 名は行方不明の 91 歳男性と判明 ・島根県 出雲市において避難中に 3 名 (76 歳男性、15 歳男性、74 歳女性)行方不明 →7 月 19 日 15 歳男性 1 名死亡確認 →7 月 21 日に神戸川で発見された死者 1 名は行方不明の女性と判明 美郷町において土砂崩れにより家屋が倒壊し 69 歳女性 1 名行方不明 →7 月 19 日死亡確認 <7月20日> ・岐阜県 飛騨市の農業用水路にて 75 歳男性 1 名死亡 <7月22日> ・長野県 辰野町において土砂災害復旧作業中、心不全により 55 歳男性1名死亡 <7月22日> ・鹿児島県 大口市において、避難途中道路に氾濫した濁流にのまれ行方不明 7 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 →7 月 22 日死亡確認(86 歳女性) さつま町において 76 歳男性(会社所長)1名が川内川に転落し行方不明 →7 月 24 日死亡確認 薩摩川内市で 45 歳男性1名が土砂崩れにより死亡 菱刈町において 65 歳女性が土砂崩れにより死亡 菱刈町において 57 歳男性が運転中、土砂崩れに巻き込まれ死亡 <7月25日> ・長野県 辰野町において 64 歳男性が水路の見回り中に天竜川に流され行方不明 <考察> 前述から、人的被害は土砂崩れ、土石流によるものが圧倒的に多いことがわかりま す。山間部もしくは崖付近に建てられた家が押しつぶされて、内部の人が死傷すると いう形態が圧倒的です。これは、事前の予測が難しいことと、土砂崩れリスクに関す る情報があまり開示されておらず、また、普段からの意識も低いことが大きな要因の 一つとして挙げられます。 もう一つ特徴的な事象としては、河川および河川流域の状況を見に行って誤って流 されてしまうという事例です。これは、今回の豪雨では数は多くありませんが、必ず といってよいほど発生する形態です。 人間は通常流れる水の力を体感することが無い為、水路が決壊して道路に氾濫して いる浅い水の流れに簡単に流されてしまいます。 最後に、堤防決壊による人的被害です。河川堤防の決壊は今回の豪雨でも天竜川で 発生しましたが、直接これが原因となった死傷者は発生していません。これは、河川 水位の監視体制、地域住民に対する情報提供と避難勧告等の緊急対応計画が各市町村 で整備されており、この計画の効果が発揮されたものと考えられます。 但し、油断することは出来ません。万一急激な決壊により、事前の避難勧告等が遅 れた場合、河川堤防の決壊が一度に最も多くの人命を奪う可能性があるのです。 5.人命を失わない為に 上記および過去の豪雨洪水時の教訓から、『豪雨時における心得』について解説していき ます。 (1)雨の情報を収集すること 雨は日常の天気であり、台風等とは異なるため油断しがちです。しかし、数週 間の間に降り続いた水量は大量であり、河川の増水、地盤の軟弱化等比較的静か にリスクを高めていきます。従って、長雨時には天気情報等の情報のほか、あら ゆる方法で周辺地域の状況を把握すべく努力することが必要です。具体例として 8 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 は、市町村、気象庁のホームページ、区役所・市役所への電話確認、近所・自治 体集会所への電話確認等があります。 場合によっては、地域で指定されている避難場所に自主避難をすることも検討 しておくことが望まれます。 <参考情報1> 気象庁では、集中豪雨については、雨の降る場所・時間について絞り込んだ予 測を行い公表しています。従って、自分の居住地域が集中豪雨地域となったこと が報道された後は出来る限り頻繁にテレビ・ラジオで確認することが大切です。 【予測方法】 ① 1 日くらい前に集中豪雨の発生可能性を予測。 ② 2∼3 時間くらい前に集中豪雨の発生する場所や時間を絞り込んで予測。 ③ 集中豪雨が始まってからは豪雨詳細情報・雨量・継続時間等を情報提供と ともに予測。 <参考情報2> 気象庁ホームページアドレス:http://www.jma.go.jp/jma/ 国土交通省 川の防災情報:http://www.river.go.jp/ (2)住居地域のリスクを把握しておくこと 自分が住んでいる場所のリスクを把握することが大切です。特に土砂崩れおよ び河川の氾濫区域については、自治体が情報を公表している地区が多数あります ので、これらの情報を事前に確認しておくことが望まれます。 <洪水ハザードマップ> 全国の指定河川流域における過去の河川氾濫区域をあらわしたものです。河川 流域に住居がある場合は、このマップから現在住んでいる場所が危険区域かどう か確認しておか れることをお勧 めします。 千代田区 洪水ハザードマップの一部 http://www.city.chiyoda.tokyo.jp/dp/hazard/h azard.pdf 最近では、各 市町村がインタ ーネットで情報 を公開していま すので、自分の 居住地の状況に ついて事前に確 認しておくこと をお勧めします。 9 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 <土砂災害危険箇所図> 土砂災害の危険箇所についても、自治体によっては、危険箇所を調査の上、公表 しています。周囲に崖、丘の付近および山間部に家がある場合は当該場所が危険 箇所に指定さ れていないか どうかについ 千葉県 土砂災害危険箇所図の一部 http://www.pref.chiba.jp/syozoku/i_kak ai/kyuukeisya/kasyozu/24.pdf て、事前に確 認しておくこ とをお勧めし ます。 (3)避難勧告・指示に従うこと 各地の気象台から出される気象予報に基づき、市町村が避難勧告および指示を 出します。対象地域・対象者については、この予報に基づいて市町村の判断によ り行われます。 市町村からの避難勧告・指示が出た場合は必ずこれに従うことが必要です。避 難勧告・指示は市町村に防災担当者が集まり、緊急対応組織を編成の上、各専門 機関から十分な情報を収集した上で発令されます。 従って『危険度合は極めて高いと判断されるからこそ発令される』ということ を認識しておくことが重要です。 また、大雨警報や洪水警報が発表された場合は、上記勧告・指示がなくとも避 難の準備をはじめてください。 警報は下記により確認することが可能です。 ① テレビ・ラジオ ② 防災行政無線からの放送 ③ NTT の 177 ④ 気象庁のホームページ(前述参照) ⑤ 携帯電話の各天気予報 特に『1 時間に 50 ミリ以上の非常に激しい雨がふる』『過去数年間で最も土砂災害が 発生する危険が高い』等の表現が報道にある場合は注意が必要です。 10 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 また、上記状況になった場合は指定された避難場所に速やかに避難することが 重要です。その際、下記事項にご留意下さい。 ① 非常時の食料、水、毛布、ラジオは最低限用意しておく。 ② 避難場所に避難することを伝えるべき人達の連絡先一覧を用意しておく。 ③ 携帯電話の電池式充電器を携帯電話の個数分用意しておく。 ④ 持ち出すべき重要品は予め纏めておく。 (4)現場に行かないこと 豪雨時において、下記事象が発生しているとされる場所には絶対に行ってはい けません。畑、田、家財等心配なものがあったとしても雨が降っている最中は勿 論のこと、雨がやんでも河川水位の上昇や、土石流、土砂崩れの危険があります ので、一定安全であるとの情報があるまで近づいては行けません。 ① 河川水位の上昇が報告されている河川周囲 ② 河川水位の上昇が報告されている河川に繋がる水路(小さな用水路含む) ③ 河川堤防の決壊が発生した場所の付近 ④ 土石流・土砂崩れの危険があるとして避難対象地域となった場所 ⑤ 土石流・土砂崩れの現場 『豪雨時における心得』 (1)雨の情報を収集すること (2)住居地域のリスクを把握しておくこと (3)避難勧告・指示に従うこと (4)現場に行かないこと 以上のことを心得として頂ければ、命の危険に晒される可能性は著しく低く出来るも のと考えます。ご参照頂ければ幸甚です。 <インターリスク総研 災害リスク部 マネージャー 11 上席コンサルタント 中村純一> 2006.8(第 19 号) 災害リスク情報 株式会社インターリスク総研は、三井住友海上グループに属する、リスクマネジメントについて の調査研究及びコンサルティングに関する我が国最大規模の専門会社です。 災害リスク部では、火災・爆発・自然災害・盗難・労働安全・情報ネットワーク等の災害系のリス ク分野における専門家が、先進的かつ高度な専門性を生かしてお客様に最高品質のリスクソリュ ーションを提供しています。 お問い合わせ先 (株)インターリスク総研 災害リスク部 〒101-8011 東京都千代田区神田駿河台 3-9 Phone:03-3259-3446 Fax:03-3292-6116 URL http://www.irric.co.jp 不許複製/Copyright 2005 by InterRisk Research Institute & Consulting,Inc. 本資料の全部または一部の複写・転写等に関しましては、お手数ながら (株)インターリスク総研(03-3259-3446)まで事前にお寄せ下さい。 12