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Page 1 Page 2 KSR事件合衆国最高裁判所判決について(1) KSR
\n
Title
Author(s)
KSR事件合衆国最高裁判所判決について(1)
奥邨, 弘司; OKUMURA, Kousi
Citation
Date
2007
Type
Departmental Bulletin Paper
Rights
publisher
KANAGAWA University Repository
KSR事件合衆国最高裁判所判決 について (
1)
KS
RI
n
t
e
r
n
a
t
i
o
n
a
lCo
.
Ⅴ
.
Te
l
e
n
e
xl
n
c
.
e
ta
1
.
,
5
5
0U.
S
.奥
部
1. はじめに
弘
(
2
0
0
7
)
司*
(1) 《コンピュー タ制御 され たスロッ トル を
持たない 自動車エ ンジンにおいて、アクセルペ
本判決は、既知の要素 を組み合わせた発明に
ダルはケーブル または他 の機械 的連結 を通 じて
関 し、その 自明性 を如何 に判断す るか とい う問
スロッ トル と相互作用 している。ペ ダルの腕 の
題 について合衆国最高裁判所が判断を示 した も
部分は、 ピボ ッ トを中心に回転 し、 レバーの よ
のである。 この点については、連邦巡回控訴裁
うに働 く。 ケーブル によって動作 させ られ るス
判所 (
CAFC) が、いわゆる 「
教示、示唆、ま
ロッ トル制御 においては、ペ ダル を踏み込む こ
たは動機付 け」テス トを示 し、それが長 らく用
とによって生 じる回転がケーブル を引っ張 り、
い られてきた ところ、本判決ではその妥 当性 が
その結果、キャブ レ一 夕-や燃料噴射装置内の
論 じられた ものであ り、実務 に与 える影響 も少
バルブを引っ張 って開放す る。バルブを開けば
な くない もの と思われ る。そ こで、最高裁 の判
開 くほ ど、 よ り多 くの燃料 と空気が噴射 され、
断について詳 しく紹介 した上で、若干の考察 を
燃焼 を増加 させ て 自動車 を加速 させ る。 ドライ
加 えてみたい 1。
バーがペダルか ら足を外 したとき、ケーブルは緩
んでバルブが閉ま り、上記 と逆のことが生 じる。
2.事案の概要
1
990年代、エ ンジンの動作を制御す るために、
自動車にコンピュー タを搭載す ることが よ り一
判決文 を基 に、事実関係 をま とめると以下の
よ うになる。
般的になった。コンピュータで制御 されたスロッ
トル は、機械的連結 によってペ ダルか ら伝達 さ
(
なお、本稿 において 《
》は判決文の引用部分
れ る力 を通 じてではな くて、電気信号に応 じて
を示す。通常は 「
」で示す ところであるが、引
バルブを開放 した り閉 じた りす る。空気 と燃料
」や 『』で表記すべ き部分が少な く
用内で も 「
の混合の連続的かつ微妙 な調整 が可能 となる。
な く、対応 関係 が分か りづ らくなるため、 《
》
ペダルの位置を超えた諸要素について、コンピュー
で表す こ ととした。 なお、 2.
1や (1)等 の
タが迅速 に処理す ることで、燃料の効率 とエ ン
項番号お よびそれ らに続 く見出 しは全て、説 明
ジンの能力が改善 され る。
と理解 の便宜のために筆者 が付与 した ものであ
り、判決文の ものではない。)
コンピュー タ制御 スロッ トル が ドライバーに
よる自動車操作 に反応す るために、 コンピュー
タはペ ダルが どうなってい るのかを知 る必要が
2.
1 ペダルについての基礎知識
ある。 この 目的のためには、ケーブルや機械的
*神奈川 大学経営学部准教授
1
なお、紙幅の関係等 もあ り、本号では判決の要 旨を紹介す るところまで とし、考察については次号 (
予定)に譲 り
たい。
KSR事件合衆 国最 高裁判所判決 につ いて (
1
)
1
な連結は十分ではない。そ こで、機械的な操作
セ ンサーを利用す る トラックの 1シ リーズを製
をコンピュー タが理解 できるデジタルデー タに
造 していた。》
変換す る電気的セ ンサーが必要 となる。 2》
(3) ところで、ペ ダルの 《伝統的な設計にお
(2) S
t
e
ven ∫
.Engel
ga
uが、 《本件 で争 われ
いては、ペ ダル は踏み込んだ り戻 した りはでき
ている彼の特許を出願す る十分前に、コンピュー
るが、ペ ダル を前や後 ろにスライ ドさせ て、ペ
タ制御式ス ロッ トルのための電気的ペ ダルセ ン
ダルエ リア内での位置 を調整す ることはできな
サー を含む特許権 を取得 してい る発明家が複数
かった。結果 として、ペ ダル に近づ きたい とか
,
いた。 これ らの発 明、例 えば合衆国特許番号5
遠 ざか りたい と思 う ドライバーは、 ドライバー
241,
936 (
1
991
年 9月 9日出願 ) (
936特許) に開
シー トの中で座 り直 した り、シー トを何か しら
示 されたよ うな装置は、エ ンジン内ではな くて、
移動 させた りす る しかなかった。 この問題 を解
ペ ダル ・ア ッセ ンブ リ-
決す るために、発 明家達は 、1
970年代 を皮切 り
3
内のペ ダル の位置 を
検出 した方が好ま しいことを教示 している。936
に、ペ ダルエ リア内での位置 を変 える調整が可
特許は、ペダル ・ア ッセ ンブ リ-内のピボッ ト・
能 なペ ダル を設計 した。本件 に重要な特許権 と
ポイ ン ト上に電気セ ンサーが存在す るペ ダル を
して、合衆国特許番号5,
01
0,
782 (
1
989年 7月 28
開示 している。合衆国特許番号5,
063,
811 (
1
990
日出願) (
As
a
no特許) と合衆国特許番 号5,
460,
年 7月9日出願) (
Smi
t
h特許) は、セ ンサー とコ
061 (
1
993年9月 1
7日出願) (
Reddi
ng特許)の 2
ンピュー タを接続す るワイヤーがす り切れた り
つがある。 As
a
no特許 では、ペ ダル の位 置が ド
摩耗 した りす るのを防 ぐためには、そ して ドラ
ライバー との関係 によって調整 された ときでも、
イバーの足によって汚 された り傷っ け られた り
ペ ダルの ピボ ッ ト・ポイ ン トの内の一つは固定
す ることを避 けるためには、セ ンサー を、ペ ダ
されたまま となるよ うなペ ダル を収容す る支持
ルの踏みつけ部分上またはその内部ではな くて、
構造 を開示 してい る。そのペ ダル は、ペ ダル を
ペ ダル ・ア ッセ ンブ リ-の固定部分 に設置す る
踏み込むために必要な力が、ペ ダル位置 を調整
べ きであることを開示 している。
して も同 じにな る よ うに も設 計 され てい る。
セ ンサー統合型ペ ダル についての特許権 に加
Reddi
ng特許 は、ペ ダル とピボ ッ トの両方 が調
え、発明家達は、 自己完結型のモ ジュラーセ ン
整 可能 な、異 な るス ライ ド機 構 を開示 してい
サーについての特許権 も取得 した。モ ジュラー
る。》
セ ンサーは、 コンピュー タ制御型ス ロッ トル を
(4) Eng
el
ga
uの発 明に とっての 《先行技術 に
有す る自動車で機械式ペ ダル を利用可能 にす る
は、調整可能 なペ ダル上にセ ンサーを設置す る
ために、棚か ら下 ろ して直 ぐに、様 々なタイプ
ことを示す特許権 も含 まれ ていた。例 えば、合
の機械式ペ ダルに取 り付 け られ るよ うに、特定
衆国特許番 号5,
81
9,
593 (
1
995年 8月 1
7日出願)
のペ ダルか らは独 立 して設計 されている。その
(
Ri
xon特許) は、ペ ダルの位置 を検 出す る電気
ようなセンサーの一つは、合衆国特許番号5,
385,
的セ ンサー を有す る調整可能 なペ ダル ・ア ッセ
068 (
1
992年 1
2月 1
8日出願 ) (
068特許) におい
ンブ リ- を開示 してい る。 Ri
xonのペ ダルでは、
994年 、 シボ レー社 は、
て開示 され てい る。 1
セ ンサーはペ ダルの踏みつ け部分 に存在 してい
「
ペ ダル に隣接 し、ペ ダル の支持 ブ ラケ ッ トに
る。 Ri
xonのペ ダル は、ペ ダル が踏 み込 まれ た
取 り付 け られ、ペ ダルが操作 中に回転 させ るピ
りゆるめ られた りす るときにワイヤーがす り切
ボ ッ トシャフ トにかみ合わ され る」モ ジュラー
れ る問題 を抱 えることで知 られていた。》
2
「2.事案 の概要」 において判決文を引用す る場合は、引用参照表記等は省略 した。
自動車業界 においては、組み立て済み部品を 「
ア ッセ ンブ リ- 」 と呼んでい るよ うなので、 "
p
e
d
a
la
s
s
e
mb
l
y"も、
ペ ダル ・ア ッセ ンブ リ- と訳す こととした。
3
2
国際経営論集
No.
3
4 2
0
07
2.
2 訴訟提起 までの経緯
前記支持体 に関 して前記調整可能 なペ ダ
ル ・ア ッセ ンブ リ- を回転的に支持 し、
(1)本件 の原告 であ るKSRはカナ ダの会社 で
ピボ ッ ト軸 を限定す るための ピボ ッ トと、
あ り、ペ ダル システムを含 む 自動車部 品を製造
乗 り物 システムを制御す るために前記支
販売す ることを業 としてい る。
持体 に取 り付 け られた電気的制御
998年 に、ケーブル制
《フォー ド自動車 は 、1
とを有す るよ うな乗 り物 の制御ペ ダル装
御式ス ロッ トル を備 えた様 々なシ リーズの 自動
置であって、
車向けの調整 可能 なペ ダル システムの供給元 と
前記ペ ダル腕部 が、前記 ピボ ッ トに関 し
してKSRを採用 したo KSRは フォー ドのた めに
て前後方向に移動 している間、前記 ピボ ッ
調整可能 な機械式ペ ダル を開発 し、その設計 に
トの位置が不変であ り続 け、静止位置 と
1
51
,
97
6(
1
999年 7月 1
6
関 して合衆 国特許番 号 6,
適用位置の間で前記ペ ダル腕部が前記 ピ
日出願 ) (
976特許 ) を取得 した。2000年 、 GM
ボ ッ ト軸のまわ りを回転す る とき、ペ ダ
は、 コンピュー タ制御型 ス ロッ トル を有す るエ
ル腕部 の位置 に対応す る信号 を発生す る
ンジンを搭載 したシボ レーやGMのライ トトラッ
ために前記 ピボ ッ トに反応す る前記電気
ク向けの調整可能 なペ ダル の供給元 としてKSR
的制御 を特徴 とす る前記装置
」》
を選 んだ。 97
6特許ペ ダル をそれ らの トラ ック
《Engel
gau特許 を付 与す る前 に、合衆 国特許 商
に適合 させ るた めに 、 KSRはその設計 を選 びモ
標庁 (
PTO) は、現在 の ク レー ム 4 と類似 して
ジュラーセ ンサー を付加 した。》
い るが、それ よ りも広汎 な特許 ク レームの一つ
(2) 《Tel
e
lexは、調整 可能 なペ ダル の設 計
f
を拒絶 した。 当該 ク レームは、セ ンサーが固定
製 造 にお いて、 KSRの ライバル であ る。》 同社
され た ピボ ッ トポイ ン ト上に置 かれ ることとい
は、 Engel
ga
uよ り、 《「
電気 的 ス ロ ッ トル制御
う要件を含んでいなかった。PTOは、当該 クレー
を備 えた調整可能 なペ ダル ・ア ッセ ンブ リ-」
ムは、 Reddi
ng特許 お よび Smi
t
h特許 にお いて開
237,
との名称が付 け られている合衆国特許番号6,
示 され た先行技術 の 自明の組み合 わせ である と
565Bl (
Engel
gau特許 ) の独 占的利 用許諾 を得
結論づ けた。》
てい る。》
(3) 《Engel
ga
uは、合 衆国特許番号6,
1
09,
241
《より広汎なクレームは拒絶 されたが、クレー
ム 4は、固定 され た ピボ ッ トポイ ン トの限定を
ng特
それ に よって Reddi
(
1
999年 1
月26日出願) となった先行 出願 に対す
含 む こ とに よって-
る継続 出願 として 、2000年 8月 22日に特許 出願
許 の設計 とは区別 され た-
を行 った。彼 は、 当該特許権 の主題 について、
Engel
gau 特許 は引用先行技術 中にAs
a
no特許 を
1
998年2月 1
4日に発明 した と宣誓 した。Engel
ga
u
含 んでお らず 、As
a
no特許 は、特許 手続 き中に
後 に認 め られ た。
特許 は、 「
それ程 高価 で はな くかつ部 品点数 が
も言及 され なかった。 そのためPTOは、その時
少 な く、乗 り物 に搭載す ることが容易な、単純
点では、固定 され た ピボ ッ トポイ ン トを有す る
化 された乗 り物制御用ペ ダル ・ア ッセ ンブ リ-」
調整可能 なペ ダル についての情報 を有 さなかっ
として明細書 に記載 され た調整 可能 な電気的ペ
年 5月2
9日に発 効 され 、Tel
ef
lex
た。 特許 は2001
ダル を開示す る。本件 で問題 となってい る、特
に譲渡 され た。》
許 のク レーム 4は、以下の よ うになってい る :
「
乗 り物 の構造体 に据 え付 け られ るため
(4) 《KSRが GMのた めに行 った設 計 を知 っ
ef
lexは、 KSRの提案 内容 はEngel
ga
u
た とき、Tel
に採用 され る支持体 と、
特許 を侵 害す ることにな るだ ろ う旨をKSRに通
前記支持体 に関 して前後方 向に移動す る
知す る警告状 を送 った。》
ペ ダル腕部 を持 った調整 可能 なペ ダル ・
ア ッセ ンブ リ- と、
《KSRは Tel
e
nexとの 間 で ロイ ヤ リテ ィにつ
ef
lex
いて取 り決 めることを拒否 した。そ こでTel
KSR事件合衆国最高裁判所判決 について (
1
)
3
は、 KS
Rのペ ダル はEn
g
e
l
g
a
u特許お よび他 の 2
の枠組み を適用 し、ク レー ム 4が、ク レーム さ
つの特許権 を侵害す ると主張 して、侵害訴訟 を
れた主題 が発明 された際に存在 した先行技術に
l
e
f
l
e
x
は後に (
En
g
e
l
g
a
u
特許以外の)
提起 した。Te
照 らして 自明であることを示 した。》
他の特許権 に関す る主張を放棄 し、それ らの特
(2)Gr
a
h
a
m判決 において、最高裁 は、1
03条
許権 を公有 と した。 結果 、 GM向けのKS
Rのペ
の法定の文言を適用す るための枠組みを定めた。
n
g
e
l
g
a
u
特許 の ク レーム 4を侵
ダル システムがE
す なわち、 《「
1
03条において、先行技術 の範囲
害 してい る とい う主張 だ けが残 った。 なお 、
と内容は次の よ うに決 め られ るべきである :
Te
l
e
l
f
e
xは、 当該特許権 の他 の 3つ の ク レー ム
がKS
Rによって侵 害 されてい るとは主張 してい
ない し、KS
Rがフォー ド向けに設計 した機械式
l
e
n
e
xのいずれ かの特
の調整 可能 なペ ダルがTe
まず、先行技術 と問題 になっているク レーム と
許権を侵害 したと主張 しているわけでもない。)
たは非 自明性 が決定 され る。商業的な成功や、
(5) 《
Te
l
e
l
f
e
xは、 KS
Rが以前 に設 計 したペ
長 らく認識 されなが ら解決 され なかった必要性
ダルの一つに電気的セ ンサー を付 け加 えること
や、他者の失敗 な どの二次的な考慮要素は、特
の間の差異が確認 され るべ きであ り、その後、
関連す る分野にお ける通常の技能の レベルが決
め られ る。 これ らを踏 まえて、主題 の 自明性 ま
によってE
n
g
e
l
g
a
u特許 を侵害 してい る と主張 し
許 され ることを求 める主題 の起源 を取 り巻 く状
Rは、 ク レーム 4の主題
たが、 これ に対 してKS
況 を考慮す るために利用 され得 る。
」
》 裁判所
は 自明であるので、 当該 ク レー ムは特許法 1
03
または特許審査官が、以上の分析 を行 った結果、
条に基づ き無効であると反訴 した。
特許法1
03条は、 「
特許 され ることを求める主
《クレーム された主題 は 自明であると結論 した
とき、ク レームは1
03条 によって無効 となる。》
題 と先行技術 との間の相違が、全体 としての主
(3) 《地裁 は、 Gr
a
h
a
m事件 の指示 に従 い、
題が、発明がな された時点において、当該主題
先行技術 の教示 とE
n
g
e
l
g
a
u特許 の ク レーム とを
が属す る技術分野 における通常の技能 を有す る
比較 した。裁判所 は 「
ほ とん ど違いを兄いだせ
者 に とって 自明であったであろ うといえるよ う
なか った。」As
a
n
o特許 は、ペ ダル の位 置 を調
な ものである」場合、特許権付与を禁止 してい
べ、それ をコンピュー タ制御 ス ロッ トル に伝達
る。》
す るために、セ ンサー を使用す る以外、ク レー
ム 4に含 まれてい る全てを教示 していた。その
2.
3 地裁の判断
追加 の側 面 は、068特許や シボ レーに利 用 され
ていたセンサーな どの資料に開示 されていた。》
(1) 《地裁 は、KS
R勝訴 のサマ リー ・ジャ ッ
(
4) 《しか しなが ら、CAFCによる拘束性 の
ジメン トを下 した。ペ ダルの設計の関連す る歴
ある判例 に基づ けば、地裁 はそ こで留まること
史 、E
n
g
e
l
g
a
u特許 の範 囲、関連す る先行技術 を
は許 され なかった。裁判所 もまたTS
Mテス トを
評価 した後に、裁判所 は本件で争われてい るク
適用す ることを求め られた。》
レー ムの有効性 を考慮 した。 35U.
S.
C. §282
TS
Mテス トとは、 《自明性 についての疑問を
の指示 に基づ き、発効 された特許 は有効である
よ り統一的かつ一貫性 がある形で解決す る》た
と推定 され る。地裁 は、サマ リー ・ジャッジメ
教示 、示
めにCAFCが採用 した手法 で あ り、 「
Rが上記推定 を覆 し
ン トの基準に照 らして 、KS
唆 、 また は動機 付 け 」4 テ ス トの略 で あ り、
ているか どうかを決定す るために Gr
a
ha
mv.
J
o
h
n
《
KS
Rは このテス トその もの、または少 な くと
De
e
r
eCo
.o
fKa
n
s
a
sCl
'
t
y
,383U.
S.1(
1
966)
も本件におけるその適用について争 っている。)
4
"
t
e
a
c
hi
ng,s
ug
g
e
s
t
i
on,ormot
i
va
t
i
o
n"については、「
教示、示唆、または動機付け」と訳される例が多いので、それ
に倣った。
4
国際経営論集
No.
3
42
0
0
7
《TSMテス トの もとにおいては、 もし 「
先行技
[
当該]
発明について知識 を持たない者に』 ・・・
術 を組み合わせ ることについて何か しらの動機
電気的制御 をAs
a
no特許 の部 品の支持 ブ ラケ ッ
付 けや示唆」が、先行技術や、問題 の本質、ま
トに取 り付 けることを 『動機づ けたであろ うよ
たは当該技術 にお ける通常の技能 を有す る者 の
うな特定の理解や方針 について兄いだそ うとす
知識の中に兄いだ され得た場合のみ、特許クレー
るこ と』」 を し損 なったのだ とCAFCは結論 づ
ムが 自明 と証明 され ることになる。)
けた。
《地裁 はKSRがそのテ ス トを満 たす と判断 し
解決 され るべ き問題 の性質が この要件 を満 た
た。 そ してその理 由 と して、(
1
)
業界の状態 は、
す とした点で、地裁 は間違 ってい ると、CAFC
当然の こととして、電気的セ ンサー と調整可能
は結論づ けた。蓋 し 「
引用 された先行技術が、
なペ ダルの組み合 わせ に至っていたであろ うこ
特許権者が解決 を試みたま さにその問題 につい
と、(
2)
Ri
xon特許 は これ らの展 開の基礎 を提供
て言及 していないな ら」 当該問題 は、発明者 を
していた こと、(
3)
Smi
t
h特許 が、Ri
xon特許 にお
してそれ らの引用物 に注意す る動機 を与えない
けるワイヤーのす り切れ間題 に対す る解決策、
だろ うか らである。》
特 にセ ンサー をペ ダル の固定 された構造 に置 く
(2) 《ここにお いて CAFCは、 Asano特許 の
ことを教示 していた こ とを挙げた。 これ によっ
ペ ダル は、 「
割合一定問題 」-
て、As
a
no特許 またはそれ に似 たペ ダル を、ペ
ダル を押 し下げるために必要 とされ る力が、ペ
す なわち、ペ
ダル位置セ ンサーに組 み合わせ ることに至 るこ
ダルが どの よ うに調整 されて も同一であること
とができた といえる。》
を確実にす ること-
を解決す るために設計 さ
(5) 《Enge
l
ga
u特許 のデザイ ンは 自明である
れた ものであ り、それ に対 して、Engel
ga
u特許
との結論は、PTOがク レーム 4のより広汎なバー
は、よ り単純かつ小 さくそ して安価で、調整可
ジ ョンを拒絶 した ことによって も支持 され る と
能な電気的ペ ダル を提供す ることを求めた もの
ga
u
い うのが地裁 の見方であった。 も し、Engel
である と結論 づ けた。 Ri
xon特許 に関 して、裁
特許 が、その特許 出願 においてAs
a
no特許 を含
判所 は、ペ ダル はワイヤーのす り切れ間題 に悩
んでいたな ら、よ り広汎なバージ ョンをReddi
ng
む ことになるが、それ を解決す るよ うには設計
特許 とSmi
t
h特許 の 自明の組 み合 わせ で あ る と
されていない と説明 した。裁判所の見方によれ
判断 したの と同様に、PTOは、クレーム 4はAs
a
no
ば、 Ri
xon特許 はEnge
l
ga
u特許 の 目的 とす る も
特許 とSmi
t
h特許 の 自明の組 み合 わせ で あ る と
t
h
のに関 して何 も教示 していない。 次 に、 Smi
判断 したであろ うと、裁判所は結論づけた。》
特許 は、調整 可能 なペ ダル とは関係 が な く、
(6) 《最後 に地裁 は、Engel
ga
u特許 のデザイ
「
必ず しも、電気的制御 をペ ダル ・ア ッセ ンブ
ンに基づ いたペ ダル でTel
e
le
f
xが商業的 に成功
リ-の支持ブ ラケ ッ ト上に取 り付 けよ うとい う
した とい う二次的要素 は、その結論 を変更 しな
動機 の問題 に行 きつかない。」 これ らの特許 が
い と結論づ けた。
この様 に解釈 され るとき、 これ らの特許は通常
以上か ら、地裁 はKSR勝訴のサマ リー ・ジャ ッ
の技能 を有す る者 を して、セ ンサー をAs
a
no特
ジメン トを下 した。》
許 に記載 された類のペ ダル に配置 しよ うと思い
至 らせ ることはないであろ うと、CAFCは判断
2.
4 CAFCの判断
した。》
(3) 《As
a
no特許 とセ ンサー を組 み合 わせ を
(1) 《TSMテス トに最大の信頼 を置 く故 に、
試み ることが 自明であったか も しれない とい う
cAFCは地裁 の判断 を覆 した。地裁 は当該 テス
点は、同様 に無 関係 である とい うのがCAFCの
トを適用す るに際 して十分には厳密ではなかっ
『試み ることが 自明であっ
見解である。蓋 し、 「
たために、 「
『技術 のある技術者の知識 の中に、
た』 とい うのは、従来か ら、自明であることを構
KSR事件合衆国最高裁判所判決 について (
1
)
5
成 しない とされてきた」 か らである。》
(4) 《cAFCは また、PTOに よるク レー ム 4
(1) 《我 々は、 CAFCの硬 直 したアプ ローチ
を拒絶す ることか ら始 める。 自明性 の問題 につ
の よ り広範 なバー ジ ョンの拒絶 を地裁 が考慮 し
いての当裁判所の これ までの取 り組みを通 して、
た こ とも非難 した。 CAFCの説 明 に よれ ば、地
我 々の判例 は、 CAFCが本件 でそのTSMテ ス ト
裁 の役 割 は、 も しEngel
ga
u特許 がAs
a
no特許 に
を適用 した方法 とは矛盾す る、拡張性 のあるそ
ついて言及 していたな ら、PTOが ど うしただ ろ
して柔軟 なアプ ローチ を明 らかに して きた。確
うか を推測す るこ とではない。 む しろ地裁 は、
か に、 Gr
a
ha
m判決 は 「
統 一性 と明確性 」 が必
既 に発 効 され た特許 については有効で ある とい
要であることを認識 していた。383U.
S.
,a
t1
8。
う推 定の もとに、先行技術 の検討 に基づ き、 自
a
ha
m判決 で示 され た原則 は、I
I
ot
c
h
しか し、 Gr
明性 に関 して地裁 自身 の独 立 した判断 を下す こ
e
e
nwood, llHow.248(
1
851
)の 「
機
kl
'
s
sv. Gr
とが求 め られ てい る。PTOが ク レー ム 4の よ り
能的アプ ローチ 」 を再確認 した ものであった。
広範 なバー ジ ョンを拒絶 した とい う事 実は、そ
llHow.248。 参照 383U.
S.
,a
t1
2。 この 目的 を
の様 な分析 にお い て何 の意 味 も持 た ない、 とC
達す るた めに、 Gr
a
ha
m判 決 は広範 な質 問事項
AFCは述べた。)
を定め、適 当な場合 には、有益であることが判
(5) 《cAFCは更 に、重要 な事実 につ いての
真正 な争 いが存在 し、故 にサマ リー ・ジャ ッジ
明 した二次的な考慮要素 に注 目す ることを裁判
所 に勧 めた。J
d,a
t1
7。
》
e
lexは、
f
メ ン トは退 け られ る とも述 べ た。 Tel
(2) 《先行技術 にみ られ る要素 を組み合 わせ
ク レー ム 4がRi
xon特許 と比較 して 「
単純 かつ、
ることに基づいて特許 を付与す る際 には、注意
す ぼ らしく、そ して新規 な機 能 の組 み合 わせ で
深 くあるべ き と当裁判所 は以前か ら指摘 してき
ある」 とす るある専門家の証言 を提 出 してお り、
03条の制定 も、 Gr
a
ha
m判決 の分析 も、 こ
た。 1
また ク レー ム 4 は、 Ri
xon特許 にお け るの と異
れ を害す るものではない。 半世紀以上の間、 当
な り、セ ンサー はペ ダル 自身 ではな くて支持 ブ
裁判所 は 「
古い要素の機能 を何 ら変更す ること
ラケ ッ ト上 に取 り付 け られ てい るので、 自明で
な く、古い要素 を合体 させ るのみの組み合 わせ
はない とす る別 の専門家の証言 も提 出 してい る。
に対す る特許 は ・・・既 に知 られ た ものを特許
この証拠 は、 トライ アル を求 めるに足 る ものだ
の独 占の中に引っ張 り込む ものであ り、技能 あ
とCAFCは結論づ けた。》
る者達 に利用可能 な資源 を減少 させ て しま うも
(6)以上 を不服 と したKSRは合衆 国最 高裁判
所 に対 して裁 量上訴 を求 め認 め られ た。
のであることは明 白である」 と判断 して きた。
Gr
e
atAt
l
a
nt
l
'
C& Pac
l
'
Gc Te
a Co.
V.Su
pe
ml
a
I
・
ket
,340U.
S.1
47,1
52 (
1
950)
。自
EqL
l
1
bme
ntCo
I
P.
3.判決要 旨
明な ものに対す る特許 を認 めることを拒否 して
きた主要 な理 由が ここにあ る。 よく知 られた要
Ke
nned
y判 事 に よって起 草 され た全員 一致 の
素を、既知の方法 に従 って組み合わせ ることは、
法廷意 見 は、 CAFCの判 断 を破 棄 し、事件 を差
それが意外性 のない結果 を生み 出す に過 ぎない
し戻す こ とを命 じた。 以下、判決 を可能 な限 り
場合 、 自明で あ る可能性 が高い. Gr
a
ha
m判決
丁寧 に紹介 したい 5
。
の後 に下 され た 3つ の判決 が この原則 の適用 を
説明 してい る。)
3.
1 既知 の要素 を組み合 わせ た発 明 にお ける
自明性
(3) 《Gr
a
ha
m 判 決 と一 対 を なす 、 Unl
'
t
ed
St
at
e
sv.Ad
a
ms,383U.
S.39,40 (
1
966)
判決 に
おいて当裁判所 は、 2つの点で先行す る設計 と
5
6
引用 に際 して判決文の頁の表記は行わなかった。
国際経営論集
No.
3
4 2
0
0
7
異な る 「
液 体電池」の 自明性 を検討 した。す な
れてい る輯射熱バーナーの本質や性能 に何 も付
わ ち、その電池 は、蓄電池 に伝 統的 に採 用 され
け加 えていない」故 に 、 1
03条 に基づ き特許 と
た酸ではな くて、水 を含 有 していた。 またその
d.
,a
t62 (
脚 注 は削除)。
な らなかった。I
最 後 に、 S
a
k
r
a
l
'
d
av.AG Pr
o
,I
nc.
,425U.
S.
電極 は、亜鉛 と銀塩 化合物 ではな くて、マ グネ
シ ウム と白銅塩化合物 であ った。 当裁判所 は、
273 (
1
97
6)判決 にお いて 当裁 判所 は、先例 か
先行技術 中に既 に知 られ た構 造 に関 して、その
ら、次の よ うな結論 を導 き出 した。す なわち、
構造 中の ある要素 をそ の分野 で知 られ た他 の要
特許 が 「
単に古い要素 を、それ ぞれが、以前か
素 に置換 す るこ とで変 更 され た構造 として特許
ら知 られ てい るよ うな形 で同様 に機能す るよ う
を請求す る とき、 当該組 み合 わせ は、予想 され
に しただけであ り」その よ うな取 り合わせ か ら
る結果以上の もの を生 み 出 さなけれ ばな らない
予想 で きる以上の ものを生み出 さない とき、当
こ とを認 識 してい た。 383U.
S.
,a
t50-51 それ
d.
,a
t2
82
該組み合わせ は 自明であるol
。
。》
で も、 当裁 判所 はAda
ms
の電池 が 自明で あ る と
(4) 《先行技術 の要素 を組み合わせ ることを
の政府 の主張 を退 けた。 当裁判所 は、先行技術
ク レー ムす る特許 が 自明か否 かが問われ てい る
が教示す るものが、特 定の既知 の要素 を組 み合
とき、 これ らの判決 の基礎 にあ る原則 が役 に立
わせ るこ とか らほ ど遠 い場合 、それ らの組 み合
つ。設計上の誘 因やその他 の市場 の力 は、 1つ
わせ に関 して成功す る方法 を発 見す るこ とは、
の努 力分野 6で利 用可能 な成果 に関 して、 同一
非 自明で ある可能性 が よ り高い とい う推論 的原
の分野かまたは異 なる分野 にお いて、変化す る
理 に依 拠 した。 I
d.
,a
t5卜5
2 Ad
a
msが そ の電
こ とを促す。通 常の技能 を有す る者 が予想 され
池 を設計 した とき、先行技術 は彼 が採用 した よ
た変化 を実施 で きるな ら、 1
03条 はおそ らくそ
。
うな種類 の電極 を利 用す るこ とが内包す る危険
の特許性 を阻む ことだろ う。 同様 の理 由で、あ
を警告 していた。 予期 されず そ して効果的 な形
る技巧 がある装置 を改善す るた めに使 われ、 当
でそれ らの要素が一緒 に働 いた とい う事実は、
該技術 の通常の技能 を有す る者 は、それ が類似
Ada
msの設 計 が 、 当該 技術 の技能 を有す る者 達
の装置 を同様 に改善す るであろ うことを認識 し
に とって 自明でない とい う結論 を支持 した。
Ande
r
s
o
n'
S
Bl
a
c
k Roc
k, I
nc
.V. Pav
e
me
nt
ていた場合 、その実際の適用 が通常の技能 を有
す る者 の能力 を超 えた ものでない限 り、当該技
,396U.
S.57(
1
969)判決 において、
S
a
l
v
a
geC0.
巧 を利 用す るこ とは 自明であ る。 S
a
k
r
a
l
'
d
a判決
当裁判所 は このアプ ローチ に磨 きを掛 けた。 当
とAne
de
r
s
o
n'
S
Bl
a
c
kRoc
k判決 が例証的で あ る
裁判所 が検討 した特許 の主題 は、既存 の 2つ の
-
要素 を組み合 わせ た装置 であった。具体的には、
確 立 された機能 に従 った予想 された使 い方 を超
栢射熱バーナー と舗装機 の組み合わせ であった。
えた ものであるか否 かを間わね ばな らない。
問題 の装置 は、何 も新 しい相互作用 を生み 出 し
裁判所 は、当該改善が、先行技術 の要素の
これ らの原則 に従 うことは、本件以外 の他 の
ていない と当裁判所 は結論づ けた。す なわ ち、
事件 においてはよ り難 しいか も しれない。蓋 し、
福射熱バーナー はバー ナー と して期待 され た よ
ク レー ム され た主題 に、ある既 知 の要素 を別 の
うに働 くだ けの ことで あ り、舗 装機 について も
ものに単純 に置 き換 えることや 、改善の用意 が
それ は同 じだった。 2つ を組み合 わせ た ものは、
できてい る先行技術 の一部 に既知 の技巧 を単に
それ らが別 々に、そ して順番 に機 能す る以上の
適用す ること以上の ものが含 まれ るか も しれ な
こ とを しなか った。 I
d.
,a
t60-62。 この よ うな
いか らだ。問題 となっている特許によってクレー
状況 にお い て は、 「
古 い要素 の組 み合 わせ が有
ム され てい る方法で既知 の要素 を組み合 わせ る
用な機能 を果 た してい るが、それ は既 に特許 さ
明 白な理 由が存在す るか ど うか を決定す るため
6
"鮎l
dore
nde
a
vo
r
'
'
を本稿 では、 「
努力分野」 と訳
した。
KSR事件合衆国最高裁判所判決 について (
1
)
7
に、裁判所 は、多数 の特許 の相互 に関係 す る教
に依拠 してお り、ク レー ム され た発見はほ とん
示や 、設 計集 団 に既知 のまたは市場 に現存す る
ど必然的に、何 か しらの意味で、既 に知 られ て
需要 の効果や 、通 常の技能 を有す る者 に よって
い るものの組み合 わせ とな るか らである。》
保持 され る背景的知識 の全 てに注意す る必 要が
(2) 《しか しなが ら、有用 な洞察 は硬 直 した
しば しばある。 再吟味 を容 易 にす るた めに、 こ
義務的公式 となる必要 はない。 そ して、その様
の分 析 は 明示 的 に な され るべ きで あ る。 参 照
に適用 され て しまった とき、TSMテス トは我 々
I
nr
eKa
hn,441F.
3d977,988(
CA Fed.2006)
の先例 と矛盾す る。教示 、示唆 、そ して動機付
(「自明性 を理 由 とす る拒絶 は、結論 だ けの通知
け とい う用語 に対す る形式主義的な概念 によっ
では支持 され得 ない。 かわ りに、 自明性 につい
て、また公刊物 の重要性や発行 され た特許 の明
ての法的結論 を支持す る何 か しら合理 的な支 え
白な内容 に対す る過剰 な強調 に よって、 自明性
を伴 った、明瞭 に表 現 され た論拠 が存在すべ き
の分析 は限定 され てはな らない。独創 的な仕事
である。」) しか し、我 々の先例 が明 らか にす る
や現代技術 の多様性 は、 この様 な形 で分析 を限
よ うに、その分析 において、争われているクレー
定 しない ことを求 める。 多 くの分野で、 自明の
ムに関す る特 定の主題 に向 け られ た正確 な教示
技術や組み合 わせ について ほ とん ど議論 がない
を探 し求 める必要 はない。 蓋 し、裁判所 は、 当
か も しれ ない し、 しば しば、科学的文献ではな
該技術 の通 常の技能 を有す る者 が採 用す るで あ
くて市場 の要求が設計の トレン ドを駆 り立て る
ろ う推論や創 造的 なステ ップについて考慮す る
のが事実 とい えるか も しれ ない。真 の発 明のな
ことがで きるか らであ る。》
い、通常の推移 の中で生 じるであろ う進歩 に対
して特許保護 を与 えることは、進歩 を後戻 りさ
3.
2 TSMテス トのあるべ き姿
せ、既知の要素を組み合わせ る特許 の場合 には、
先行す る発 明か ら、その価値や有効性 を奪 って
(1) 《組 み合 わせ が 自明で ある ことを示す た
しま う。
めに、既知 の要素 を組 み合 わせ るこ とについて
関税 ・特許控訴裁判所 がTSMテス トの根本的
の教示 、示唆 、または動機 付 けを論証す るこ と
要素 を定めた とき以来、控訴裁判所が、 これ ら
を求 め る要件 を最初 に確 立 した とき、関税 ・特
の原則 に合致す るよ うに多 くの裁判例 でそのテ
許控訴裁判所 は有用 な洞察 を獲得 していた。参
ス トを適用 してきた ことは疑 いがない。 そ こで
照 Appl
l
'
c
at
l
'
o
no
fBe
r
ge
1,292F.
2d955,956-957
は、 TSMテ ス トの基礎 とな る概 念 と Gr
a
ha
m判
(
1
96
Ad
a
ms判 決 の よ うな事件 か ら明 らか な
決の分析 との間に、必ず しも矛盾 は存在 しない。
よ うに、複数 の要素 を組 み合 わせ た特許 につい
しか し、裁判所 が、 CAFCが本件 で行 った よ う
ては、それ らの要素それ ぞれ が、独 立 して、先
な形 で一般原則 を変化 させ て、 自明性 の問いか
行技術 にお いて知 られ ていた こ とを論証す るこ
けを限定す る硬直 したルール に して しま うとき、
とのみ に よっては、 自明であ るこ とは証 明 され
それ は誤 りとな る。》
1 )。
ない。 2つ の既知 の装置 を、それ らの確 立 され
た機能 に従 って組 み合 わせ るこ とを革新 として
3.
3 CAFCの誤 り
請 求す る特許 出願 につ いて、注意 して検討す る
こ とは常識 で あるが、関連す る分野 の通常の技
(1) 《CAFCの分析の欠陥は、大部分が、TSM
能 を有す る者 に対 して、 ク レー ム され た新 しい
テ ス トの適用 に際 して反映 され る自明性 の問い
発 明が行 った方法 で、要素 を組 み合 わせ ること
かけを、裁判所が狭 く概念 した ことに関連 して
を促 したであろ う理 由を特 定す るこ とは重要 で
い る。特許権者 の特定の動機や公然 と認 めた 目
ある。 蓋 し、発 明は、全 てではないが大抵 の場
的が、特許 の ク レー ムの主題 が 自明か どうかを
合 、長 らく取 り扱 われ て こなか った基礎 的要素
判断す る上で決定的なわけではない。 問題 とさ
8
国際経営論集
No.
3
4 2
0
07
れ るのは、ク レームの客観的な射程である。 も
整可能なペ ダルの一例であった。そ して、先行
しクレームが 自明の ものにまで達す るのな ら、
技術 として、固定 された ピボ ッ トポイ ン トがセ
それ は 1
03条 に よって無効 である。 特許 の主題
ンサーの理想的な取 り付 け位置であることを示
が 自明であることが証明 され る一つの方法は、
す特許 は十分存在 した。 As
a
no特許 は割合一定
発 明の時点 にお いて、 特許 のクレームによって
化問題 を解決す るために設計 されたものなので、
囲いこまれる自明の解決策が存在するような既知
調整可能な電気的ペダルの設計 を望む設計者は、
の問題が存在 したことを認識することである。》
As
a
no特許 を無視す るだ ろ うとい う考 えは、 ほ
(2) 《本件 にお けるCAFCの第一の誤 りは、
とん ど意味をな さない。通常の技能 を有す る者
裁判所 と特許審査官は、特許権者が解決 を試み
とは、 ロボ ッ トではな く、通常の創造性 を有す
た問題 のみ を凝視すべ きであると判示す ること
る人間で もあるのだ。
で、 この論法 を閉め出 した ことであった。 11
9
同様 の制限的な分析故 に、 CAF
Cは、要素の
Fe
d
.
Ap
p
x
.
,
a
t288 CAFCは、特許権者 を動機
組み合わせ を 「
試す ことが 自明の ものである」
付 けた問題 は、特許の主題 によって処理 され る
と示す ことのみによっては、特許 ク レームを自
。
多 くの問題 の内の一つ に過 ぎないか も しれない
明の もの と証明す ることはできない と誤 って結
とい うことを認識 し損ねた。 問題 は、組み合わ
論づ けた。 I
d.
,
a
t289 (内部 の引用符 は削除 し
せ が特許権者 に とって 自明であるか否かではな
た)。 問題 を解決す ることについて、設計上の
くて、当該技術 にお ける通常の技能 を有す る者
要請や市場の圧力が存在 し、かつまた特定 され
に とって当該組み合わせが 自明であるか否かな
予想 された有限の解決策が存在す るとき、通常
のである。正 しい分析 の下では、発明の時点で
の技能 を有す る者が 自らの技術的な理解 の範境
努力分野において既知 であ り、特許 によって処
で、既知の選択肢 を追い求めることには十分な
理 される、如何なる必要性 も問題 も、当該 クレー
理 由がある。 もしこれが予想 された成功に至 る
ム された方法で要素 を組み合わせ る理 由を提供
のな ら、当該製 品は、発明の結果ではな くて、
し得 る。》
通常の技能 と常識 の産物である。そのよ うな と
(3) 《
CAFCの第二の誤 りは、ある問題 を解
き、ある組み合わせ について、試す ことが 自明
決 しよ うとす る通常の技能 を有す る者 は、同一
の ものである とい う事実 は、それが 1
03条の も
の問題 を解決す るための もの として設計 された
とで 自明であることを証明す る。》
先行技術 中の要素に向けてのみ導かれ ると仮定
(
4) 《最後 にCAFCは、裁判所 と特許審査官
した ことにあった。 I
b
l
'
d. A
sa
no特許 の主た る
が、後知恵的な先入観 の犠牲 になるのではない
目的は割合一定化問題 を解決す ることであった。
か とい うこと-の恐れか ら、誤 った結論 を引き
そのため、裁判所 は、セ ンサー を調整可能 なペ
出 した。確かに、事実の認定者 は、後知恵的な
ダルの上に どのよ うに して配置す るかを検討 し
先入観 によって引き起 こされ る歪曲に注意すべ
てい る発 明者 は、As
ano特許 のペ ダルの上 に、
きである し、事後的な理 由付 けに基づ く主張に
それ を配置す ることを考 える理 由がないだろ う
も注意す べ きで あ る。 参照 Gr
a
ha
m,383U.
S.
,
と結論 した。 I
b
l
'
d.しか しなが ら、あ りふれ た
a
t36 (「
先行技術 の中に、今 問題 となってい る
物品はそれ らの主た る 目的を超 えた 自明の使用
発明についての教示 を読み取 ろ うとす る誘惑」
方法 を有 してい ること、また多 くの場合、通常
について警鐘 を鳴 らし、裁判所 は
の技能 を有す る者 は多数の特許 の教示 を、パズ
うっか り使 って しま うことを用心す る』」べ き
ルの ピースの よ うに、一つ にま とめることがで
Mo
n
r
o
eAu
t
oEq
u
I
bme
nt
とも指摘 してい る。 (
きることは、常識 か ら明 らかである。
「
『後知恵 を
Co
.
V.F
I
e
c
ke
t
ho
m Mr
g. & S
u
p
pJ
y C0.
,332F.
As
a
no特許 の主た る 目的にかかわ らず 、その
2d406,41
2(
CA6 1
964)))。 しか しなが ら、事
設計は固定 された ピボ ッ トポイ ン トを有す る調
実の認定者が常識 を利用す ることを否定す る融
KSR事件合衆国最高裁判所判決 について (
1
)
9
通の利かない制限的ルールは、我 々の判例法に
4に含 まれた よ うな形のペ ダル位置セ ンサー と
照 らして必要で もなけれ ば、それ に一致す るも
組み合わせ ることができたろ うし、そ うす るこ
ので もない。》
との利点 も理解 していたろ う。)
(5) 《特筆すべ きは、CAFCは長 らく、TSM
(2) 《Tel
e
lexは、傍論 的 に、その ピボ ッ ト
f
テス トについて、本件 において適用 したのよ り
構造故 に、As
a
no特許 のペ ダル は、 ク レー ム 4
はよ り広範 な概念 をつ くり出 してきた ことだ。
に記述 された よ うな方法では、セ ンサー と組み
参照、例 えば DySt
a
rTe
xt
l
'
1
r
a
r
be
n Gmb
H &Co.
合わせ られない と主張 している。参照 Br
i
e
ff
br
ut
s
c
hl
a
ndKG v.C.H.Pat
r
l
'
c
k C0.
,464F.
3d
De
Res
ponda
nt
s48-49,a
ndn.17 それ 故 に、 た と
我 々の示唆テス トは、事実
1
356,1
367(
2006) (「
えセ ンサー をAs
a
no特許 に付 け加 えるこ とが 自
大いに柔軟な ものであ り、一般的な知識や常識
明だ として も、その ことに よってク レーム 4が
。
を考慮す ることを、単に許すのではな くて、む
自明の主題 を含む ことは立証 されない とTel
e
lex
f
a
n La
b
s
.
,
しろ求 め る。」);AI
z
a Co
r
p.V.MyJ
は理 由付 ける。 しか しなが ら、 この主張は地裁
I
nc
.
,464F.
3d1
286,1
291(
2006) (「
我 々の 自明性
にお い て は な され な か っ た。 地 裁 にお い て
に関す る法的判断は柔軟な ものである。蓋 し、
Te
l
e
le
f
xは、Enge
l
ga
u特許 に よってク レーム され
動機 は、先行技術 中に暗黙の内に見出 され るか
た発明を動機付ける問題は、As
a
no特許 とセンサー
も しれないか らだ。我 々は、組み合わせ を行 う
を組み合わせ るとい う解決策には至 らないとのみ
ことについての実際的教示 を求めるよ うな融通
主 張す るこ とに甘 ん じていた。参 照 Tel
e
lex'
f
s
の利かないテス トは持ち合わせていない ・・・」
)
Res
pons
et
oKSR'
sMot
i
onf
わrSumma
r
yJ
udg
me
nt
もちろん、 これ らの判断は、今我 々が検討 し
)
,pp.
1
8oHnva
l
i
di
t
yi
nNo.02-74586(
ED Mi
c
h.
てい るものではな く、本件 にお けるCAFCの過
20,App.
1
44a
-1
46a。 CAFCにおいて -
ちを正す もので もない。それ らが、我々の以前
でTe
l
e
f
el
xは、As
a
no特許 とセ ンサー を組み合 わ
の一連の先例や本件 における判断によ り合致す
せ ることは、 ク レーム 4の制限を満た さない と
そこ
るよ うな分析 を説 明で きる程度 は、CAFCが将
い う特定的でない、断定的な主張を述べていた
来の事件 において考慮すべ き問題 である。我 々
-
が言 ってい るのは、上記の よ うに特定 された基
しない。 参 照 Br
i
e
ff
orPl
a
i
nt
i
fs
-Appel
l
a
nt
si
n
本的な誤解 が、本件 にお けるCAFCに、我 々の
No.04-11
52 (
CA Fed.
)
,pp.
42-44。 さ らに 、
一連の特許法判決 と矛盾す るテス トを適用 させ
Tel
e
ne
x自身 の専門家供述 は、現在 Te
l
e
le
f
xが挙
た とい うことである。》
今 の主張がな され たのか もまたはっき り
げた ポイ ン トを支持 しな い の で あ る。 参 照
Dec
l
a
r
a
t
i
onof
Cl
a
r
kJ.
Ra
dc
l
i
fe,
Ph.
D.
,
Suppl
e
me
nt
a
l
3.
5 本件への当てはめ
App.
204-207;Dec
l
a
r
a
t
i
onorTi
mot
hyL.Andr
es
en,
1
'
d.
,a
t208-21
0。 それ らの供述の内、Radc
l
i
fe
供
(1) 《ここまで説明 してきた基準 を本件の事
実関係 に適用す る とき、 クレーム 4は 自明 とせ
述に、その主張に関係があるか もしれ ない唯一
の発言が兄いだ され る:
ざるを得ない。我 々は、地裁 が挙げた関連先行
「
As
a
no特許 ・・・とRi
xon特許 ・・・は
技術 と当該分野における通常の技能の レベル の
生産や組み立てにコス トがかか り、パ ッ
判断に同意 し、それ らを採用す る。地裁 が指摘
ケー ジ化す るのが難 しい、複雑な機械的
した よ うに、我 々 も、As
a
no特許お よびSmi
t
h特
接続 に基づ く装置である。先行技術設計
許 の教示 内容 とEnge
l
ga
u特許 のク レーム 4に開
にお けるこれ らの困難 こそが、[
Enge
l
ga
u
示 された調整可能 な電気的ペ ダル との間に、ほ
特許 が]
解決す るものであ る。 ペ ダル の
とん ど違いを見出せ ない。 当該技術 における通
位置 を反映す る単一の ピボ ッ トを有す る
常の技能 を有す る者 は 、As
a
no特許 をク レー ム
調整可能なペ ダル と、支持体 とピボ ッ ト
1
0 国際経営論集 No.
3
4 2
0
0
7
上の調整装置 との間に置かれた電気的制
における発展によって生み出 され る様 々な要請
御 とを組み合わせて使 うことは、Engel
ga
u
に向き合 うとき、その設計者 はAs
a
no特許 をセ
の565特許 にお ける機 能 の単純 かつ 手際
ンサーで改良す ることに利点 を兄いだ したであ
の よい、新規 な組 み合 わせ であった。」
ろ うか と問いかけるべ きであった。
I
d.
,a
t206,T
T1
6
.
他の多 くの分野同様 に、 自動車の設計におい
当該供述の全体 としての文脈 で読むな ら、 これ
て、種 々の構成部分の相互作用故に、ある構成
は、最 も有利に解 しても、As
a
no
特許は 「
Engel
g
a
u
部分 を変化 させたために、他 の部分 も同様 に変
の565特許 が扱 う問題 、す なわち よ り高価 でな
化 させ る必要が出て くるのは、 しば しばである。
く、より早 く組み立て られ、より小 さくパ ッケー
科学技術の発達により、コンピュータ制御スロッ
ジできる、電気的制御 を有す る調整可能なペ ダ
トル を利用す るエ ンジンが標準 となるであろ う
ル ・ア ッセ ンブ リ- を提供す るとい う問題」の
ことが明 らかになった。結果 として、設計者達
解決のためには使 われ ない とい うことを意味す
は、全 くの-か ら新 しいペ ダル を設計す ると決
るに過 ぎない。J
d.
,a
t205,[1
0。
断す ることができたか も しれ ない、 しか し、既
a
no特許 とピボ ッ トに設 置 され た
地裁 は As
存のペ ダルが新 しいエ ンジン と共に機能す るよ
ペ ダル位置セ ンサー を組み合わせ ることは、ク
うにす る とい うの も当然の ことであったろ う。
レー ム 4の範噴 で あ る と認 めた。 298F.Supp.
事実、KSRは 自身 の既存のモデル を改良す るこ
2d,a
t592-593。 当該認 定 が地裁 の判決 に与 え
ga
u特許 を侵害 した
とで、本件 において、Engel
e
lexが このク レー
f
た重要性 を考 えると、 もしTel
とされてい るペ ダル を設計 したのである。》
ムを維持す るつ も りだったのな ら、その よ うな
(4) 《
As
a
no特許 を出発点 とす る設計者にとっ
認定に対 して よ り明確 に争 ったであろ うことは
て、センサーをどこに取 り付けるかが問題であっ
明 らかで あ る。 Tel
e
ne
xが明確 な形 で主張 し損
た。そのため、必然的に法律上の問題 は、通常
なった とい うこと、そ してその点についてCAFC
の技能 を有す るペ ダル設計者 が、As
a
no特許 を
が沈黙 してい ることに照 らせ ば、その点に関す
出発点 とした とき、センサーを固定 されたピボ ッ
る地裁の結論 は正 しい と考 える。》
トポイ ン トの上に置 くことを 自明 と考 えたか ど
(3) 《Engel
ga
uが ク レーム 4の主題 を設計 し
うか とい うことになる。 ここまでで論 じられて
た時点で、通常 の技能 を有す る者 に とって、
きた先行技術 を踏 まえれば、我 々は、セ ンサー
As
a
no特許 を、 ピボ ッ トに取 り付 け られ たペ ダ
をKSRとEngel
ga
uが設置 した場所 に取 り付 ける
ル位置セ ンサー と組み合 わせ ることは 自明だっ
ことは、通常の技能 を有す る者 に とって 自明で
た と結論 した地裁 は正 しかった。機械式ペ ダル
あった とい う結論 に至 る。
を電気的ペ ダル に転換 させ る強力な誘 因を生み
936特許 はセ ンサー を、エ ンジンではな くて、
出す よ うな市場がその とき存在 し、先行技術 は
ペ ダル ・ア ッセ ンブ リ-の上に設置す る効用 を
この進歩 を達成す るための多数の方法 を教示 し
教示 して くれた。次に、Smi
t
h特許は、セ ンサー
ていた。 CAFCは、真 っ 白な状態 のペ ダル の設
をペダルの踏みつ け部分ではな くて、代わ りに
a
no特許 と、 シボ レー の トラ ックの
計者 が、As
その支持構造上に設置す ることを明 らかに して
シ リーズに使 われ 068特許 に開示 され た もの と
いた。 そ して、 よ く知 られ た Ri
xon特許 の ワイ
同様 のモ ジュラーセ ンサー との両方 を選んだろ
ヤ ー す り切 れ 間題 と Smi
t
h特 許 の 教 示 内 容
うか と問いかけることで、事実上、問題 を非常
(
「
ペダル ・ア ッセンブ リ-は接続 されたワイヤー
に狭 く検討す ることになった。地裁 もまた、 こ
に何 らの動 き も生 じてはな らない 」 Smi
t
h,c
ol
.
の狭い問いかけを行 ったが、 しか し、それ にも
1,l
i
nes35-37,Suppl
e
ment
a
lApp.
274) とか ら、
拘わ らず正 しい結論 に到達 した。正 しくは、通
設計者 はセ ンサー をペ ダル構造体の動かない部
常の技能 を有す るペ ダルの設計者が、努力分野
分に置 くことを知 ったであろ う。 もっ とも自明
K
S
R
事件合衆国最高裁判所判決 について (
1
) l
l
な、セ ンサーが容易にペ ダルの位置 を検 出でき
i
fe博 士の供述
ない とい うのでないな ら、 Radcl
る構造上の動かない部分は、 ピボ ッ トポイ ン ト
a
no特許 が同様 の状態 であることを示 して
もAs
t
h特許 に従
であ る。 したが って、設計者 はSmi
e
lexは、Enge
f
l
ga
u特許が
いない ことになる。 Tel
い、セ ンサーを ピボ ッ ト上に置 き、それ によっ
a
no特許
優先 して具体化 した もの と比べ て、As
て、ク レーム 4によってカバー され る調整可能
は非効率であることについて説得力のある主張
な電気的ペ ダル を設計 したのである。》
をす ることもできた。 しか し、Engel
ga
u特許 に
(5) 《As
a
no特許 を コン ピュー タ制御 ス ロッ
照 らしてAs
a
no特許 を判断す ることは、Te
l
e
le
f
x
トル と共に機能す るよ うに改良す る 目的を持 っ
が避 けるべ きであると主張 してきた (
的 を得た
xon特
ては じめ るのが可能 であった よ うに、 Ri
ものである)、 ま さに後知恵 的な先入観 に携 わ
許の よ うな調整可能 な電気的ペ ダル を採用 し、
e
lexは、先行
f
ることにな るだ ろ う。 故 に、 Tel
ワイヤーのす り切れ間題 を避 ける改良を 目指す
a
no特許 を使用す る
技術 が教示す るものが、As
とい うことも可能であった。今説明 したの と類
ことか らほ ど遠 い とい うことについて、何 ら示
似 の過程 を経 て、設 計者 はSmi
t
h特許 か らセ ン
して こなかった。》
サーの移動を避 けることを学び、それによって、
As
a
no特許 に至 ったで あろ う。 蓋 し、 As
a
no特
(7) 《最後 に我 々は、地裁 同様 に、 Te
l
e
le
f
x
はク レーム 4が 自明である とい う決定を覆す よ
許 は、固定 された ピボ ッ トを有す る調整可能 な
うないかなる二次的要素 も示 さなかった と結論
ペ ダル を開示 していたか らである。》
a
ha
m 判決 と我 々の先例 を これ らの事
す る。 Gr
(6) 《Te
l
e
f
l
exは、先行技術 が教示す る とこ
実に正 しく当てはめると、 ク レーム 4は 自明の
a
no特許 に取 り付 けること
ろは、セ ンサー をAs
主題 を含む ものだ とい う結論 に至 る。結果 とし
に は ほ ど遠 い 、 なぜ な ら、 As
a
no特許 は-
て、ク レームは 1
03条の要件 を満足できない。》
Tel
e
le
f
xの考 えに よれ ば-
嵩張 って複雑 で高
(8) 《
我 々は、Engel
ga
u特許の手続 きの間に、
価だか らだ と間接的に主張 してい る。 しか しな
As
a
no特許 を開示 しなかった ことが、発効 され
が ら、 この主張 を支持す るた めにTel
e
le
f
xが用
た特許 に与 え られ る有効性 の推定を無にす るか
肝氏 の供述 だ けで
意 した唯一 の証拠 は、 Radcl
否か とい う問題 に触れ る必要はない。蓋 し、ク
a
no特許はEnge
l
ga
u
あ り、しかもそれは、単に、As
レーム 4は、推定にも拘わ らず 自明だか らであ
特許の 目的である、小 さくて、単純で、廉価 な
る。 それ で も、推 定 の基礎 にあ る理論 的根拠
ペ ダル を作 るとい う目的を解決 しなかった こと
-
を示す に過 ぎない。 As
a
no特許 は ともか くもあ
肯定 した とい うこと-
ま りに欠陥だ らけなので、それ を改良す る理 由
じられている と言及す ることは適 当である と考
がない とか、それ に似たペ ダルは、現代式のエ
える。》
PTOは、その専門性 において、 ク レームを
は、本件では大いに減
ンジンと互換性 があるとす る理 由がない とか、
そ ういった ことを当該供述は何 ら触れてい るわ
3.
6 サマ リー ・ジャッジメン トに関 して
けではない。 事 実 、 Tel
e
le
f
x自身 の供述 が この
結論 を論駁す る。 Ri
xon特許 は、As
a
no特許が悩
《cAFCは、重要な事実 に関す る問題 に争 い
んでいたの と同 じよ うに、嵩張 ることや複雑 な
があることを、サマ リー ・ジャ ッジメン ト命令
ことに悩 んでいた とRadcl
i
fe博 士は述べた。参
を覆すための別 の理 由 として挙 げてい る。我 々
照 1
'
d.
,a
t206。 しか し、 Te
l
ef
le
xの他 の専 門家
は この点で もCAFCに同意 しない。 専門家が 自
xon特許 はそれ 自身 、セ ンサー を既存 の
は、 Ri
明性 に関す る問題 を扱 う断定的宣誓供述書を提
機械式ペ ダル に付 け加 えることによって設計 さ
出 した とき、サマ リー ・ジャ ッジメン トの可能
れた と説明 した.参照 J
l
d.
,a
t209。 もし、Ri
xon
性 を否 定す るために裁判所 が Gr
a
ha
m 判決 のア
特許 の元 となるペ ダルが欠陥だ らけで改良でき
プ ローチを理解す る限 りで、裁判所 は当該分析
1
2 国際経営論集
No.
3
42
0
0
7
において専門家証言が果たす役割 を誤解 した。
KSR は、As
a
no特許 のペ ダル の固定 された ピ
その間題 についてサマ リー ・ジャ ッジメン トを
ボ ッ トポイ ン ト上に、モ ジュラーセ ンサーを設
検討す る際、地裁 は、専門家証言 を考慮す るこ
置す ることは、関連す る技術 における通常の技
とができる し、すべ きである。 もっ とも、専門
能 を有す る者の理解力の範境 にある設計の一過
家証言は、事実に関す る特定の問題 を解決す る
程であった ことについて、説得的な証拠 を提 出
か もしれない し、またはそのままに してお くか
ga
u特許のクレー
した。その主張 と記録は、Engel
もしれない。 しか し、それが問題の終鳶ではな
ム 4が 自明であることを示 している。地裁 の決
い。 自明性 の究極的な判断は、法的な決定であ
定 を退 けるに際 して、CAFCは問題 を、狭 く厳
る。 Gr
a
ha
m,383U.
S.
,a
t1
7 本件 の よ うに、
格 で1
03条 に も我 々の先例 に も合致 しない形 で
先行技術の内容 、特許請求の範囲、そ して当該
分析 した。 CAFCの判断は棄却 され 、事件 は、
技術 にお ける通常の技能の レベルが、重要な論
本判決 に合致す るよ うな更なる手続 きのために
点でない とき、そ して これ らの要素に照 らして
差 し戻 され る。》
。
クレームの自明性が明らかであるとき、サマ リー ・
(
以下、続 く)
ジャ ッジメン トは適切 で あ る。 Tel
e
ne
xに よっ
て提 出 された供述のいずれ も、地裁が、慎重に
検討 した結果、本件 にお けるサマ リー ・ジャッ
ジメン ト命令 を基礎づ ける結論 に達 した ことを
妨 げるものではない。》
※
本稿 は 、2007年 5月 に筆者 がWeb上
KSR事件合衆国最高裁判決私
で始 めた 「
訳の試み」 を基 に してい る。
3.
7 まとめ
なお、本判決 に関す る評釈等 として、
井上雅夫 「
KSR特許 自明事件合衆国最高
《我 々は、本能、単純な論理、通常の推論 、
裁判決 2007.
04.
30」ht
t
p:
//
www.
venus
.
d
t
i
.
並はずれたアイデア、そ して天 才的なひ らめき
ne.
j
p/∼i
noue
一m/bm_
070430KSRSC.
ht
m
に さえ基づ く新 しい ものを、我 々の周 りの実体
(
2007年 1
0月 5日確認 ) お よび浅 見節 子
があって手で触れ るこ とのできる現実の一部 と
「
発 明の非 自明性 が争 われ た連邦最高裁
化す ことによって新 しい ものを作 り上げ、そ し
判決 について
て生み出す。 これ らの進歩は、一度我々の知識
合衆 国
Tel
e
le
f
xl
nc.
,550 U.
S.
_(
2007) (
の一部 として共有 された とき、技術革新が も う
最高裁判所 2007年 4月 30日判決) の紹介
一度始まる際の新 しい出発点 となる。 よ り高い
とその解説」知的財産 フォー ラムVol
.
70
レベルの到達点か ら進歩がは じまることが通常
(
2007)42頁がある
KSR I
nt
e
r
na
t
i
ona
lCo.V.
。
の過程で予想 され るとき、通常の技術革新の結
果は、特許法制の下で排他的権利の対象 となる
ものではない。 さもな くば、特許権 は有用な技
術の進歩 を、促進す るよ りはむ しろ、窒息 させ
て しま う。 参 照合衆 国憲法 Ar
t
.Ⅰ
,§8,C
1
.8。
これ らの原則 は、 自明の主題 をク レームす る特
許 の成立を阻止す ることにつなが り、それは、
F
I
ot
c
h
k
l
'
s
s判決で確立 され 、1
03条に法定 された。
この よ うな阻止事 由の適用は、あま りに強制 さ
れす ぎて、その 目的を果た し得ない よ うなテス
トや公式の中に限定 されてはな らない。
KSR事件合衆国最高裁判所判決 について (
1
)
1
3
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