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ポリACOR
長期予報研究
グロースベッター
3
0巻
第
第
2号
月例会報告(1
9
9
1年 1
0月 1日)
中緯度大気の 40日振動…・ ・ ・
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
.
・ ・
…
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
.
.
・ ・..木本昌秀...・ ・
.
. 1
H
H
H
H
H
H
H
H
熱帯熱源による熱帯一中緯度聞相互作用…...・ ・
.
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
.
・ ・
.
.
.
.
.
・ ・...伊藤久徳……… 1
7
H
H
H
H
永続する 1月の条件での AGCM長時間積分に現れるテレコネクションパターン
佐藤康雄・千葉長・柴田清孝・木田秀次
…・… .
.
3
5
インド/オーストラリア・モンスーンの年々変動………………....・ ・鬼頭昭雄...・ ・
.
.
4
8
H
H
論 文
循環場のアノマリー相関値を使った高・低温出現確率を求める方法…牛釆
充...・ ・
.
.5
7
H
中部太平洋トラフの東西分裂について...・ ・
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
.
.
.
・ ・ ・ ・..横田覧伸・ ・・
.
.7
0
H
H
H
H
H
H
H
H
文献紹介
ソ連の 1
9
9
1年 6月の天気概況について...・ ・
.
.
.
.
.
・ ・ ・・
.
.
.
.
.
・ ・..……森
H
H
H
H
H
1
9
9
2年 3月
L
.F
.グループ
広道……… 7
7
中 緯 度 大 気 の 40日振動
木本昌秀*
1
. はじめに
いわゆる季節内変動, 1
0日から 90日くらいの時間スケールで大気は時折周期的ふるまいを見せ
るととがある。とくに顕著なのは Maddenとゐl
i
a
n(19
7
1,1
9
7
2
)によって発見された熱帯の40-
5
0日振動 CMaddenーJ
u
l
i
a
nO
s
c
i
l
l
a
t
i
o
n:MJ0)で,乙れまでに多くの研究がある。
一方,中・高縄吏でも古くから l
nd
自xC
y
c
l
eと呼ばれる現象がある乙とが知られていた。図 lは荒JlI
(
19
5
8
) や村上(勝) (19
8
5
)によっても引用された R
i
e
h
le
ta
l
.C
1
9
5
0
) による 700mb帯状平均
0
.
.
.
.
.
.50日程度の不規則な周期で運動量のアノマリが極
西風運動量の緯度一時間断面図であるが, 2
または赤道方向へ伝播しているのが印象的である。乙のような帯状平均流の準周期的振動の研究は
1940年代後半から 50年代の高層観測の翠明期には活発に行われたようである(例えば, Namias
nvnunvnv u
内 nu
765452
25 30
20 25 30
MAY
5
10 15 20 25 30 5
JUHE
5
10 I
S 20 2S 30 5
10 15 20 25 30
JULY
10 I5
I
o
IAY
5
AUG.
図 1700mb面帯状平均西風運動量 (
5臼平均)の月平均からの偏差の緯度ー時間断面図。
1
9
4
7年 7月から 1
9
4
8年 8月まで。等値線間隔は 50XC
41ra3x1Q-4)-Pg・
cm・
S-I,
ただし aは地球の半径。絶対値 2
0以上にハッチが施しである(Rie
h
le
ta
l
.1
9
印>.
*気象庁予報部数値予報課
1
9
5
0
)。しかし,いわゆる I
n
d
e
xC
y
c
l
eは,傾圧性擾乱やブロッキングを初めとするさまざまな季
節内変動現象の中では, S/N比が悪く,研究も立消えの状態になった。
乙乙では長期間のデータを用い,新しい多変量統計解析手法を導入して,今一度中緯度の振動モ
ードを解析する。コンポジッ卜解析も併用して振動の空間構造を詳述したい。
2
. 中緯度 4
0日振動の存在
木本 (989)及び Kimotoa
ndG
h
i
l (19
9
2
;KG)は冬季北半球における再帰性の高い循環パター
ン(天候レジーム)とそれらの聞の遷移を統計的に調べ,頻度の高い遷移のいくつかは A→ B→ C
→
Aのように jレープを形成している乙とを見いだ、した。周期的モードの存在を確認するため,乙乙
では KGの定義した太平洋で 7つ,大西洋で 6つ,計 1
3のレジームの合成天気図と毎日の 7
0
0mb
天気図とのアノマリ相闘をとって得られる 1
3の時系列にスペクトル解析を施した。時系列は 1949
年から 1
9
8
5年まで, 3
7年閣の毎冬,
1
1月 2
1日から 1
1
0日分計 4070日分を用いている。図 2は
1200 E- 6
00 W),A1-A6は大西洋域 (
6
00W -1
2
0唱 )
その結果を示す。 P1-P7は太平洋域 (
で定義された天候レジームで,それらの循環型については, KGを参照されたい。 P1,P3,P5,P
7,及び A6を除く 5つの大西洋パターンで周期 40日付近に有意なピークが認められる。
Mad
d
e
nandJ
u
l
i
a
n0971,1
9
7
2
)は熱帯域の風のデータのスペクトル解析により MJOを見い
だした。さらに各観測点聞のクロススペク卜 Jレ解析により空間的な伝播特性を解析している。一般
に北半球中緯度では l点の時系列のスペクトルから有意なピークを抽出する乙とは難しい。図 2で
は再帰性の高い特別なパターンの再帰時聞を解析した乙とによって初めて有意なピークを得たので
ある。さらに中緯度では長周期変動の空間パターンと伝播特性にきわめて複雑で,膨大な数の観測
点または格子点対のクロススペクト lレ解析はあまり効率的でない。次節では, c
h
a
o
t
i
cな時系列デ
ータから弱い振動モードを効果的に取り出せる,より一般的な方法を提示し
4節ではその方法に
より 700mb高度データから中緯度 4
0日振動の空間構造を同定する。
3
. M
u
l
t
i
c
h
a
n
n
e
lS
i
n
g
u
l
a
rS
p
e
c
t
r
u
mA
n
a
l
y
s
i
s (MSSA) による振動モードの同定
a
.M-SSA
n
dKing(986) によって非線型力学系
S
i
n
g
u
l
a
rSpectrumA
n
a
l
y
s
i
s (SSA)は Broomheada
から得られた時系列データの解析に導入された。気象の分野では F
r
a
e
c
r
i
c
h(19
8
6
)および V
a
u
t
a
r
d
とG
h
i
l0989;VG)が SSAを議論している。とくに, Vautardと G
h
i
lは SSAが n
Ols
yなデータ
は,通常のスペクト Jレ解析
の中から準周期的なモードを取り出すのに適しているととに注目した。 SSA
では s
i
n,c
o
sで与える基底関数をデータから経験的に決める。乙乙で用いる M-SSAはスカラーで
なくベクトル時系列 l
乙 SSAを適用するもので, M
u
l
t
i
c
h
a
n
n
e
lは,乙乙では「多変量」と同義であ
る
。
-2ー
ι9
曲
30
O
1
0
30
o
1
0
I
I
1
t
1
1
ω604030
2
0 1
5
P3
P
l
1
0
f
r
e
q
.
30
Q.
o
~
申
同
80604030
2
0
1
5
p
e
r
l
o
d(
d
a
y
s
)
P7
1
0
f
r
e
q
.
80ω403
0
2
0
1
5
Al
1
0
f
r
e
q
.
000 0
.
0
2 0.04 0.06 008 0
.
1
0
個
p
e
r
l
o
d(
d
a
y
s
)
ω604030
2
0 1
5
A4
1
0
f
r
e
q
.
000 0.02 0.04 0.06 0
.
0
8 0
.
1
0
同
p
e
r
l
o
d(
d
a
y
S
)
図 2 北半球冬季,毎日の 7
00mb高度場と Kimotoa
n
dG
h
i
l(19
9
2
)によって
定義された 1
3の天候レジーム合成図とのアノマリ相関をとって得られた時系
列のパワースベクトル(太実線),細実線は 12テストによる 9
596の信頼幅。
0.00 0.02 0.04 0.06 0.08 0.10
o
1
0
'
- 20
0.00 0.02 0.04 0.06 0
.
0
8 0
.
1
0
O
ZlO
~
2
'
- 20
・
Q.
o
~
申
ι20
Q.
o
~
申
'
- 20
30
p
e
r
l
o
d(
d
a
y
s
)
時刻 tのアノマリマップを z(t)とする。ベクトル zの次元はアノマリ値が与えられる空間座標
の数 Nである。時刻 tの前後の場の時間発展を考慮するため,時刻 t-M'L
Irから t+M'L
Iτ まで
の場から一つなぎのベクト Jレ
XT(t)S(zT(t-M'L1r
),ZT(
t一 (M'一1) L
1r
),
…
, ZT(
t
)
, zT(
t
+
L
1r
),…,
ZT(
t+(M'-l)L
1r
),ZT(
t+M'L
1r)),
(1)
を定義する。乙乙で L
Irはマップ zが与えられる時間間隔である。 M4r=2M'
L
Irをウインドウ幅
と呼ぶ,肩付記号 Tは転置を表す。
M-SSAは線型分解
X(t)=L:f
je
j,
(2)
を求めるが,その手続きは通常の EOF解析と同じく,データ共分散行列
c=く xxT>
(く〉は時間,またはアンサンプル平均を表す)
(3)
の固有値・固有ベクト Jレを求める乙とである。固有ベクトノレ e
LIrの閣の
j はモード iについて M
時間・空間変化を記述している。モード iが周期性を持っとき,同じ固有値を持ち,丁度通常の
s
i
n
t,c
o
stの閣の関係のように,時間的に 1/4波長ずれた対のモード jが存在する (VG),共分
散行列 C の要素はデータの与えられた空間座標間,そしてー M~r から +M'L1 r までの時差のすべて
の組み合わせについての共分散から成っている。 SSAを mult
i
c
h
a
n
n
e
lで用いた場合は,時間方向
のみならず空間方向のコヒーレンスも考慮した乙とになり
1地点のデータからではスペクトルピ
ークの見つけにくい場合でも振動モードを同定しやすいと期待される。
b
.データと M-SSAの結果
M-SSAを長期間の循環データに適用する。乙乙で用いるデータは, NMCによる 700mb ジオ
ポテンシャ jレ高度で, 2
0。以北の北半球で B
a
r
n
s
t
o
nとL
i
v
e
z
e
y(987)のデザインした 3
5
8個のグ
リッド上に値が与えられている。期間は 1
9
4
9年 1月 1日から 1
9
8
9年 1
2月 3
1日までの 4
1年間,
OZのデータのみ用いる。解析に先だって各グリッドで年周および、半年周から
乙乙では 1日 l回 o
なる平均の季節変化を定義し,それからの偏差(アノマリ)高度場を作っておく。 1
0日以下の短周
i
l
t
e
ro
u
t した。
期帯には今興味がないので, f
VGが議論しているように, SSAの利点の一つは振動モードの同定が容易である乙とであり,
乙のためにはウインドウ幅を注目している周期帯と同等か,より長くとらねばならない。乙の要請
を満たし,かつ共分散行列 c(
式 (3))の次元を不必要に大きくしないため,データにあらかじめ
通常の EOF解析を施し,適当な数の空間モードで t
r
u
n
c
a
t
eして,空間的な自由度を下げておく。
-4-
全年のアノマリデータに対して EOF解析を適用した結果, 1
1モードをとる乙とによって6
7
9
ちの分
散を説明できる乙とがわかった。以下に示す結果は 1
1個の EOFを用いたものであるが, 5あるい
7個の EOFを用いても結果は変わらなかった。
は1
振動モードの同定は M-SSAの固有モードのうち固有値が同じ(統計的に区別できない)と判断
された全てのベアについて,主成分時系列(式 (2)の fj (t) ;今 後 T-PCと呼ぶ)の時差相互相
関およびスペクトルを計算してチェックする。図 3は
,
1
1EOFを用い,ウインドウ幅は 80日を用
いたとき,いくつかの M-SSAモードについてパワースペクト lレを示す。モード?と 8は全分散に
.
0
6:
l
:
:0
.
2
2および1.9
9:
l
:
:0
.
2
0で区別できず, ともに周期
対する寄与率で表した固有値がそれぞれ 2
4
0日付近にスペクトルピークを持つ。このぺアの T-PCは 1
2日の時間差で 0
.
7
4という高い相
関係数を持っている。参考までに M-SSAを施す前の EOFの上位 5モードの主成分(時関係数
0日に有意なピークは認められない。乙乙でのデ
;以下 PC) のスペクトルを図 41L示したが, 4
ータの前処理の限りでは M-SSAが空間的なコヒーレンスを考慮する乙とによって初めて 4
0日モ
ードが特定されたと云える。なお,結果はデータ期聞を半分にしても変わらなかった。
G
h
i
land Mo(19
91)も同じ 700mbデータから 4
0-50日振動を取り出す乙とに成功している。
i
n
g
l
ec
h
a
n
n
e
l (スカラー)の SSAを冬季のみ, 1
0-120日のバンドパスフィルタを
彼らの解析は s
Period (days)
。
。
1
0
40 3
0
100
#
1
1
1
1
1
1
11
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
#2
#3
・
80
﹄
o
p
o
a
・
・
圃
圃
・
・
・
・
・
・
・
#4
60
#5
#6
40
#7
#8
20
#17
#18
0
0.00
0.02
0.04
0.06
0.08
Freq.
図3
∞
7 mb高度場の M-SSAの結果得られた T-PC主要モードのパワースベクトル
-5-
0
.
1
0
Period (days)
C泊
8
06
0 40 30
1
0
30
﹄
osoa
・
・
圃
園
田
・
・
・
・
・
・
PC1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
PC2
PC3
20
PC4
PC5
1
0
0
0
.
0
0
0
.
0
2
0
.
0
4
0.06
0
.
0
8
0.10
Freq.
図4
700mb高度場の EOF解析の結果得られた PC上位 5モードのパワースベクトル
乙適用したものである。個々の EOF (空間パターン)モード毎に SSAを行うため,振
施した PCI
動固有の空間パターンの把握が難しい。またバンドパスプリフィルタリングは偽の振動モードを作
るととがあるのであまり望ましくない。 M-SSAの適用によりとれらの点は克服できたと思われる。
図 3では他に B
r
a
n
s
t
a
t
o
rと K
u
s
h
i
n
i
rが 1
9
8
7年に独立に発見した周期約 25日のぺア(モード 1
7
と1
8)も見られる。モード 2と 5については,固有値は異なっているがともに約 1
3
0日のスペク
4か月振動」も
トルピークを持つ。ウインドウ幅を少し広げると固有値がぺアになるので, 乙の f
統計的には有意であるらしい。空間パターンなど, 乙のモードについての気象学的な考察は別の機
会にゆずる。
0日娠勤の空間構造
4
. 中緯度 4
前節で得られた M-SSAのモード?と 8の時系列 (T-PC) を図 5に掲げる。係数の絶対値の大
きいと乙ろでは両者の位相は 1
1
4波長ずれており,振動モードが顕著に現れた乙とを示している。
乙示した範囲では 1
985/86年の冬がもっとも活発で持続性もあった。一般的に云って, 乙乙
図 5I
で得た振動のシグナルはブロッキングなどの天候レジームやその他の長周期変動現象の中で,きわ
だって強いものではない。あまり現れない年もあるし,現れても長続きしない乙とも多い,従って,
長い期間のデータと凝った統計的手法が必要とされるのである。また乙の振動は,季節的には冬に
- 6ー
s
s
唱
3
1987
1985
1988
唱
3
2
a
。
B
1
-1
2
2
-3
-3
I
j
唱
s
6
T
lK
E
図 5 中緯度 4
0日振動を表す時系列, T-PCモード 7 (実線)および 8 (破線)。期間は
1
9
8
5年 1月 1白より 1
9
8
8年 1
2月 3
1日まで,時系列は各々の標準偏差で規格化されてい
れている。
もっとも強く,暖候期には現れない。
図 5の 2つの時系列に基づき,振動を 8カテゴリーに分け,合成(コンポジット)図を作成して
振動の空間構造を調べる。乙の目的のため, 700mb高度データ以外に 1
9
7
4年から 1
9
8
6年までの
NOAA外向き長波放射 (OLR)データと ECMWFおよび気象庁による 1
9
8
0ー 1
9
8
9年の 250,
850mbの風と 850mbの気温の全球データを用いた。乙れらのデータは合成に先立ち 5日の移動
平均を施しである。合成図に対しては,各格子点での t
ー・検定とモンテカルロ法による空間パター
検定 C
g1
0
b
a
1s
i
g
n
i
五c
a
n
c
et
e
s
t;LivezeyandChen,1
9
8
3
) を行い,統計的有意性をチェックし
た。紙面の都合上,乙乙では乙れら合成図のごく一部を示すにとどめる。
図 6は 700mb高度アノマリの合成図である。 8カテゴリ一全てについて示しである。振動の周
期が約 4
0日なのでカテゴリー閣の時間間隔はおよそ 5日である。等値線の間隔は 20m,濃・淡の
ハッチはそれぞれ正・負の領域のうち 9
9%以上の信頼度で有意な部分である。振動の水平構造の
特徴は次のとおりである。
(
j
) カテゴリー lから
4にかけてスカンジナビア近くの正のアノマリが弱まりながら西進 C
r
e
t
r
o
-
g
r
a
d
e
) して北米に達する。入れ替わりに負のアノマりがカテゴリー 4から lにかけて西進する。
(
j
j
)
2種類の波列が現れる
1つは北太平洋から北米にかけて,もう 1つは北大西洋からユーラ
シア大陸にかけて。前者がまずカテゴリー 1-3に見られ,後者がカテゴリー 4から 6にかけて顕
在化する。カテゴリー 6から 2にかけては極性が逆で同様の a
l
t
e
r
n
at
i
o
nがある。
(
j
i
lの特徴は MJOIζkey して 500mb高度場を解析した Laua
ndP
h
i
l
l
i
p
s(986)と似ている。図
6のカテゴ、リ -3と 7の対照 l
乙見られる北大西洋 J
e
tの強弱は Weickmanne
tal
.(985) の 合 成
図(彼らの F
i
g
.
9
bと d
)I
とも現れている。ただし, W
eickmanne
ta
l
. の合成図は北大西洋 J
e
tそ
n
d
e
xI
乙k
e
y したものである。
のものに関する i
- 7ー
E
x
t
r
a
t
r
o
p
i
c
a
l
4
0
・
d
a
y
O
s
c
i
l
l
a
t
i
o
n
図 6 中緯度 4
0日振動に伴う 700mb高度偏差の合成図。カテゴリー 1から 8までを時計図りに掲げる。
等値線間隔は 20m,t.
.
,
検
定
で9
9~彰有意と判断された正偏差の領威には讃い陰影,負偏差の領績に
は薄い陰影を施しである。
-8-
5
し
90N
C
a
t
e
g
o
r
y3
60N
EQ
30S
60E 90E 1
2
0
E 1
5
0
E 1
8
0
C
a
t
e
g
o
r
y4
90N
60N
30S
60E 90E 1
2
0
E 1
5
0
E
図 7 カテゴリー 3 (a) および 4 (
b) の 850mb風ベクトル偏差の合成図。陰影は東西または
南北成分が 9
5$ぢ有意であった領戚を表している。パネル bの太実線は本文を参照。
-9-
4
0日振動に伴う 850mbの風の合成図を調べると,カテゴリー 3から 4にかけて 2種類の北風の
7
)。図 7aはカテゴリ -3の 850mb風のアノマリで,中部太平洋トラフ
サージが見られる(図
(Mid-P
a
c
i
f
i
cT
r
o
u
g
h
)の近辺,ハワイの西で赤道へ向かう北風が顕著である。その少し後のカテ
ゴリー 4では極東,東シナ海を中心ζ
l北東風のアノマリが最盛期となる。乙れら 2つの北風サージ
は
Murakami(
1
9
8
8
)の解析でも現れていた。ととでは Murakamiの見つけたアラビア海のもの
は現れていない。図 7bには東アジアのサージに伴う,カテゴリー
8-4にかけての 850mb気温
の負の偏差中心の動きを実鰻で示しである。カテゴリー 8-2は一 2C,カテゴリ-3, 4は -1
0
℃の等値線である。冬季シベリアからの寒気の吹き出しの一つ一つは総観スケールの低気圧の発達
に伴うものであるが,それらのアンサンプ Jレ
は
4
0日振動に伴って変調を受けている乙とを示して
いる。
5
.
熱帯モードとの関係について
図 8は中緯度 4
0日振動 l
乙伴う,
250mbの流線関数の合成図である。前節の(
j
j
)
で述べた 2つの波
列がもっとも顕著に現れたカテゴリー 5からその逆位相であるカテゴリー 1を号│いて乙しらえたも
のである。乙の図には同時に,
も lカテゴリーずつ若い,
んな
OLRのアノマリも陰影l
とより示しである。 OLRは,流線関数より
r
カテゴリ -4マイナスカテゴリー 8
Jをプロットしており,対流の盛
2以上の領域を濃くハッチし
-10W/m2以下のアノマリを薄く,対流が抑えられる +10W/m
l
l
a
c
e叩
である。図は,扇型をした中緯度の 2つの波列のうち ,Wt
ーンに似た北太平洋
dG
u
t
z
l
e
r(
1
9
81)の PNAパタ
北米上のものはカテゴリー 5でもっともはっきりするが,その少し前(カテ
ゴリー 4) に波列の始点付近,赤道中央太平洋ζ
l対流の盛んな領域がある乙とを示している。乙の
ときユーラシア大陸上の波列の終点付近,西太平洋赤道域では対流が抑制されている。一方図 8と
アノマリの極性が逆になるカテゴリー 8では,西太平洋の対流が盛んになり,中央部で抑制される。
乙のように,中・高緯度のデータに基づいて得られた
4
0日振動であるが,熱稽の対流活動の偏
0日振動に伴う
差とも関連がありそうである。ただ,中緯度 4
OLRのアノマリは,図 7で示唆さ
れる西太平洋と中部太平洋の聞のシーソー,或は定在波的な様相が顕著で,
MJOI
乙特徴的な,イ
ンド洋から中部太平洋日付変更線付近まで東進するシグナルは,はっきりしない。
は一般に
MJOの周期帯
3
0-6
0日と云われているので,乙乙で得た中緯度の 4
0日振動(以下 NH40と呼ぶ)が
MJOI
r.伴う中緯度での偏差を見ているだけなのか,あるいは中緯度に独自の励起メカニズムをも
っモードなのかは重要な点である。
MJOと NH40の関係を調べるためにまず, OLRデータに M-SSAを施して MJOを定義する。
図 9は図 3
1
乙対応する
T
'
P
Cのパワースペク卜 Jレを示しているが,熱帯では S/N
比が良く,モー
ド3と 4ですでに振動を示す顕著なペアが現れている
クトルピークは
(NH40ではモード 7と 8であった)。スペ
NH40の場合より低周波側, 5
0日以上のと乙ろにある。 Di
c
k
e
ye
ta
l
.(1
9
91)は
-10-
90N
EQ
90SO
o
図 8 中緯度 4
0目振動に伴う 250mb流線関数偏差(等値線:カテゴリー 5マイナス1).および
OLR
偏差(絶対値 1
0wlm2以上の領域に陰影:カテゴリ -4"7イナス 8
)
。流線関数の等
2 以上,薄い陰影は 値線間隔は 2X106m2/
s.濃い陰影は OLR偏差が +10W/m
lO
W
2以
下。
1m
熱帯と北半球中・高緯度で平均した角運動量時系列のスペクトノレ解析により前者で 5
0日,後者で
40自のピークを見つけており,乙乙での結果と一致している。スペクトル解析で有意なバンド幅
0日と 40日の周期差は微妙であるが,異なったデータで同じ結果を得たととは . M
を考慮すると 5
JOと NH40の独立性を示唆するものと見るとともできる。
NH40の T-PC#7,8と MJOの T-PC#3,4との閣の 4種の組み合せについてラグ相闘を計
0ζ
I示されている。比較的長いデータ期間 (-11年)を用いる乙とができたため
算した結果が図 1
相関の絶対値が 0
.
1
5
8を越えると 9
5~ちの信頼度で有意と云え, NH40とMJOの聞のいくつかの
組み合わせについては乙の値を越えている。しかしながら最大で 0
.
2前後の相聞は同一現象を記述
したものとは云い難いと思われる。むしろ中緯度と熱帯で各々独自の振動が,たまたま似たような
周期帯にあったため,時 l
乙c
o
n
s
t
r
u
c
t
iv
eI
と作用しあう乙とができるのではなかろうか?
図 8に関連して述べた NH40に伴う熱帯対流の定在波的様相と,それと対照的な MJO
の東進は
1) で確かめられる。
両振動についての赤道域 OLRアノマリの経度ーカテゴリー断面図(図 1
2は NH40と MJOそれぞれについて帯状平均角運動量(地表 -100mbの積分値)
最後に,図 1
を緯度ーカテゴリープロットにしたものである。矢印で示したように. NH40 (
図1
2a)では北極
から北緯 3
0度付近まで赤道に伝播しており, MJO (
図1
2b
)では赤道から南北両極へのアノマリ
の伝播が見られる。図 1
1乙関して指摘した赤道向き・極向きの角運動量の伝播が,それぞれ NH40
Period (
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)
。
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mode#4
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40
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0
.
0
0
mode#8
0
.
0
2
0.04
0.06
0.08
0
.
1
0
Freq.
図9
OLRの M-SSAの結果得られた T-PC上位 8モードのパワースペクト Jレ
制巴@一ozh@00
MJ v
s
. NH40 O
s
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-40
Tropics Leads
-20
。
20
Lag (
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)
40
60
80
b
Extratropics Leads
図1
0 MJOと NH40の聞の時差相互相関
、‘,ノ
o
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MJO
目L
R
B
日
2
2
3
3
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u
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LFE巴日凶ト E U
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LC
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I
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図1
1
L目N
G
I
T
U
D
E
NH40(a) とMJO(b) 1
1:伴う赤道成(1
0N-108) の OLRアノマリの経度一
0
0
時間(カテゴリー)プロット。等値線間隔は 5W/m
九 濃 い 陰 影 は 95%
有意な正偏
差威,薄い陰影は問機な負偏差域。
﹁刊
、
バ
ソ
初
目
↑
'
J
・a
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NH40
B
B
2
2
2
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岨
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日
5
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B
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60
90
LFED口凶﹂FEU
FEE口凶﹂FEU
﹂
2
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L自T
I
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D
E
図1
2
L
円T
I
T
U
D
E
∞
NH40(a) とMJO(b)に伴う角運動量(地表 -1 mb) アノマリの緯度一時間(カ
2/
テゴリー)プロット。等値線間隔は 2X 1
023kg/m
s。陰影の意味は図 1
1と同様。
。
円
と MJOIL
伴ったものであった可能性を強く示唆じといる。乙の角運動量振動の構造的違いは NH
4
0と MJOの独立性を示唆する証拠の一つである。
6
. おわりに
M
u
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t
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c
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a
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n
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lS
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u
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rSpectrumA
n
a
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i
s(M-SSA) を用いて 4
1年聞にわたる 700mb高度
の偏差場の変動を解析した結果,周期約 4
0日の振動がある乙とが明らかになった。との振動の空
間構造はユーラシア大陸と北太平洋 北米上の 2つの波列様のアノマリパターンが一周期の中で極
性を変えながら交互に現れる乙とで特徴付けられる。北大西洋ではアノマリの西進,東アジア 中
部太平洋では下層の北風サージも伴っている。中緯度 4
0日振動 (NH4①ζ
l伴う熱帯のアノマリは
Madden-J
u
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i
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nO
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l
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o
n(MJ0)に特徴的なインド洋 日付変更線への東進は示さず,西太平
洋と中部太平洋の閣の定在波的様相が強い。また,両振動に伴う角運動量の南北伝播も NH40では
赤道向き. MJOでは極向きと,異なっている。
今回の統計的解析のみを見る限り, NH40を単に MJOの中緯度成分とは結論づけにくい。中緯
度独自の季節内変動のメカニズムとしては Simmonse
ta
l
.(983) が水平方向に変化する基本状
態の順圧不安定を示唆している。 J
i
na
n
dG
h
i
l(990)は β平面上の順圧方程式を解析的に扱う乙
とにより,大規模な山岳を盤主主流れと,それ杢盟乏流れとの閣のパシレーションが中緯度独自の
季節内変動メカニズムとして考えられる乙とを示した。詳細は省略するが,球面上の非発散順圧方
程式に現実的な山岳を入れ,気候学的な緯度プロファイ Jレを持つ帯状平均流を強制すると,山の高
さがある程度以上になると周期 4
0臼のパシレーションが現れる乙とを確かめた。ただし簡単なモ
デルなので図
1
2aで見られたような赤道向きの角運動量伝播ははっきりせず,振動の空間パター
ンも現実とはかなり異なっている。
仮l
乙力学的 o
r
i
g
i
nは異なっていても,同一周期帯で強く相互作用しあっている乙とは考えられ
等も併用した力
る
。 NH40のメカニズムと MJOとの関係については,ケーススタデイや, GCM
学的解析を含め,さらに詳細な研究が必要と考える。
-14-
参考文献
荒川昭夫, 1
958 :最近の大気大循環論.気象研究ノート, 9
,1
3
4p
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44,
2310-2323.
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0- 5
0日変動.天気, 3
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.,7,130-139.
R
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l,H
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S
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9
5
0
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r
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lc
i
r
c
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l
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.よ
Fhu
Meteoro
,
.
l 7,181-194.
.J
.,J
.M.W
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l
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9
8
3
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cwavep
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Simmons,A
1
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c
i
.,
40,1363-1392.
bi
V
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.,andM.Gh
,
1
i 1989:S
i
n
g
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ct
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m
es
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r
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.P
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y
s
i
c
a,35D,
395-424.
Weickmann,K
. M.,G
.R
.L
usskyandJ
.E
.Kutzbach,1
9
8
5
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n
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r
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l(30-60d
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Mon.W
e
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v
.,113,
941-961
.
W
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c
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J
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.G
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t
h
e
r
nHemispherew
i
n
t
e
r
.Mon.W
e
a
.R
e
v
.,109,
784-812.
n
o
熱帯熱源による熱帯一中緯度間相互作用
伊藤久徳*
1
. はじめに
熱帯熱源に対する大気の応答問題は M
atsuno(966), G
i
l
l(
1
9
8
0
)から始まった。彼らは静止
大気のもとでの応答を取り扱ったが,その後,応答は基本場の風と鉛直波長に強く依存する乙とが
LimandChang,1
9
8
3
)。すなわち基本場が西風で鉛直波長が長いとき,応答は熱
分かつてきた (
帯に留まらず,ロスピ一波列の伝播として中緯度にも及ぶ。乙乙から熱帯一中緯度間相互作用の力
o
s
k
i
n
sandK
a
r
o
l
y(981)は球面上の伝播を考え,中緯度テ
学的なアプローチが可能にたった。 H
レコネクション・パターンにおける熱帯熱源の重要性を指摘した。乙れらの研究は線形の定常問題
であったが,大ざっぱにはそのような取り扱いが妥当である乙とを示している。
しかし依然,基本的な問題が残されている。それは非定常性の役割である。例えば熱帯熱源ζ
i対
する GCMと定常モデルの応答とでは中緯度の振幅ζ
l違いがあり, GCMの方が大きいととが知ら
ta
l
.,1
9
8
6
)。明らかに非定常性が増幅をもたらしていると考えられる。
れている(例えば Nigame
しかしいかにして非定常性が中緯度の振幅を大きくしているかは解明されていない。そして一方で
は,時間平均として定常波を定義し,その維持を考えると,実測においても,たいていのモデルに
おいても,時間変動成分の寄与は無視できるか,またはどちらかというと定常波を壊すセンスに働
いているという乙ともよく知られている事実である (
Lau,1
9
7
9,他)。どのよう i
とすれば乙の事実
と非定常性による「増幅 Jというととを統一的に考えるととができるのであろうか。
asahara(991)は傾圧波との相
本研究の第一の目的は上の問題に解答を与えるととである。 K
互作用という立場からとの問題に取り組み,傾圧波がロスビ一波列の増幅をもたらす乙とを主張し
た。しかし彼のモデルは親形で,ごく初期の相互作用しか扱えていない。相互作用をフルに取り扱
うにはどうしても非線形性を考慮に入れなければならない。そしてとの問題に対するもっとも組織
的なアプローチは,非線形定常モデルを構築し,それと時間積分モデルとの差異を調べるととであ
ろう。すなわち,中緯度の鉛直シアーが弱いと大気は安定で解は定常となる。そ乙から徐々にシア
ーを強くしていけば,ど乙かで定常解は不安定となり,両モデルの振舞いは異なってくる。乙の時
どのようなととが起乙っているかを調べれば,乙の問題に解答が出せるはずである。
もうひとつの研究の狙いは,熱帯→中緯度→熱得という相互作用を明らかにする乙とである。乙
れはとりわけ季節内振動にとって重要に見える。季節内振動の励起源はインド洋から中部太平洋に
かけて存在する。それにもかかわらずその他の地域においても季節内振動の振幅はかなり強い(例
*和歌山大学教育学部
えば Maddena
ndJ
u
l
i
a
n,1
9
7
2
)。とれに関して G
u
t
z
l
e
randMadden(19
8
9
)は中緯度大気が大
t
o
hand
きい影響を与えているととを示唆している。乙れは中緯度大気の影響を組み入れていない I
N
i
s
h
i(
1
9
9
0
) のモデルにおける励起源の場所以外では季節内振動はかなり弱いものであったとい
う結果とあわせ,大変説得的である。実際,多くの解析結果では中緯度→熱稽の波列の存在が確認
されている(例えば Laua
ndPh
i
1
1
i
p
s,1
9
8
6
)。 乙のととは季節内振動が中韓度起源でない限り,
熱帯→中緯度→熱帯という相互作用が存在するととを示唆するものである。観測的研究でもそのよ
うな証拠が提出されつつある(例えば Mag
a
n
.
aandY
a
n
a
i,1
9
9
1
)。
乙の相互作用も申緯度での増幅機構がないと起乙り得ない乙とは容易に分かる。すなわち,波列
が熱帯から出て熱帯に戻ってくるまでに 2
0日以上かかると考えられるが (
H
o
s
k
i
n
sandK
a
r
o
l
y,
1
9
8
1,他),滅衰の時定数を 1
0日とすれば,とれは熱帯から出ていったときの 1
I
e
2以下の振幅で
帰ってくる乙とを意味する。乙れではとても励起源以外の場所の振幅を説明できない。定常での増
Lau
幅機構は少なくとも著者には考えつかない。例えば進行方向に西風シアーの場合は増幅するが (
andLim,1
9
8
4
),戻ってくるときにはその同じシアーで描衰するので,シアーのない場合と結局
は同じ乙とになってしまう。従って乙の増幅機構も結局,非定常性』ζ求めざるを得ない。
次の第 2章では本研究で用いられるモデルを説明する。第 3章で定常熱源のもとでの結果を提出
し,非定常性の役割を明らかにする。第 4章では季節内振動における中緯度の役割を解明する。
2
. モデル
(
1
) 基本方程式
基本方程式は球面上のプリミティブ方程式系で,鉛直座標は
/
P
.
)である。乙乙で pは気
t
1 (=p
sは地表気圧である。熱源はすべて外部強制として与える。
圧
, p
そして定常熱源のモデル(モデ
JレSとする入季節内振動のモデルすなわち移動熱源のモデル(モデル
Iとする)とも,乙れらを
球面調和関数で展開したスペクトル・モデルとして構築する。
プリミティブ方程式は次の渦度方程式と発散方程式,熱力学方程式,地表気圧の傾向方程式から
なる。
_
8'
¥
7
ψ=一J(ψ,マ2"')ーマx・マ(マ2"')ーJ (f."')ーマ (fマ 1)
θt
・8'¥77
2ψ.θx
・ θゆ
- J ( o,
τ7)-w・マす号一一J <RT,1I:)
_
'
¥
72"
'
'
¥
]
21 - o寸
+1
1(
マ2+4)ψ+Fψ
(1)
一
乙 y2.
1 =_
'
¥
7
2(
宝生二
三笠)_'¥]2 (豆三ニヱ~)
θt • .
2
2
_
'
¥
]
2
J
(
ψ ,1)ーマ φ・マ(マ2ψ)
-J (1,マ2",)+(マ2"')2ーJ(l,f)+マ (fマゆ)
-18ー
θマ
2. 1 ' ・
θ
φ
・
θX
-a一
一
一
一
一 +J (。
ーエー
)ーマσ
0・
マ
一
一
一
一 RTマ2
π
θ
'
θ
θ
。
。
ー
マRT・
マπ
ー
マ2φ+ν(マ2+ 4)φ+F.
.
(2)
・θT
θT
θ
σ
a
一
一一=一J(
φ,
T)ー
マ x・
マ T-a一
一
一 +I
CT - -ICT一
一
一 -ICTマ2 X
θt
θ。
咽
+手+1¥
72T一 μ(T-Te)
し
(3)
p
す
プ
;
[
ーJ山
)-¥7x
.¥71t-¥72x]da
(4)
乙乙で ψ, x,T,φ はそれぞれ流線開数,速度ポテンシャノレ,気温, ジオポテンシヤノレである。
。は鉛直 o速度, Qは加熱率, Cpは空気の定圧比熱, Rは空気の気体定数,
また π =l
npsで
,
Teは放射平衡温度,
νH は水平拡散係数,
μ はニュートン加熱・冷却率,
Eは
R/Cpである。さ
らに. Jはヤコビアン演算子 .Fは鉛直拡散項を表す。物理量 A
I
L対する鉛直拡散項は次のように
書ける。
FA =.JL
ps
arA
。
(5)
θ
地表では τA=一ρCoVAで,他のレベルではら =(ρ2g/PS)νv (θA/θ a) である。乙乙で g:
重力加速度, ρ :空気の密度, Co 抵抗係数 ,V:風速, νv.鉛直拡散係数である。
また上下の境界条件は a=Oと lで a=Oとする。
との境界条件と連続の式から任意のレベ Jレの
。が次のように求められる。
;
=
f
:
[
長 +Jψ
(,吋+マx・
マπ+マ2x] da
(6)
放射平衡温度 Teは帯状平均場のみが値を持っとする。すなわち ,Te
φ
<,a)=[Te] (a)+r
T
ゆ .a
) のように書ける。乙乙で [Te] (a) は平面平均, Te(
o
.a) はそれからの偏差, φは
e(
緯度を示す。乙の rを変化させるととによって,様々な気温の南北傾度,すなわち帯状流の強さを
実現するととができる。
熱帯白熱源は次のような形で外部パラメータとして与える。
Q/Cp=q (a)G (φ. A)
1=qo(
げ
+o2) / (ザ O+e.却
(7)
(o))) sin(
1
toao) exp(oaoJ
。
くoくaL
u
q(a)~
。
く au または a>a
Lのとき
1= 0
乙乙で π。は円周率,
のとき
。
o=(a-au)/(aL-a
U)
で
, 。u と σL はそれぞれ 0
.
1
5と 0
.
9
5である。 8
-19ー
は加熱の最大の位置を上下するパラメータであり. s
inの前の係数は加熱率を鉛直に積分した値を
正規化するための因子である。また Aは経度である。
G (ゆ.
A) は両モデルで異なるので.以下
の (2) および (3) で述べる。
モデル Sとモデル Iで使われる主な定数の値が表 lで示されている。同時に時間積分モデルの結
果の解析期間も示されている。以下,それぞ‘れのモデルについて説明する。
表
1 各モデルでの定数の値および解析期間
定
数
IIH
νv
単
位
m2/
s
e
c
e
c
m2/s
CD
r
解析期間
μ
/day
日
モデル S 5
.
0X 1
017
1
0
0
.
0
0
2
5
-1.0
1/8
101-300
モデル I 1
.2X 1
017
1
0
0
.
0
0
2
5
0
.
5
F
i
g
.1
81-200または 3
2
0
(
2
) 定常熱源モデル(モデル S)
時間積分モデルと定常モデルを構築し,分岐パラメータ
くかを調べる。
T によって両者がどのように異なってい
r=Oのとき放射平衡温度は南北に一定で.東西風の鉛直シアーは弱く,解は安定
である。時間積分モデルと定常モデルの結果は完全に一致する。
rを徐々に大きくしていくとつい
には定常解が不安定となり,時間積分解はカオティックな運動をするようになる。乙乙では当然.
時間積分解は(不安定)定常解と性質が異なってくる。
乙のモデルのスペクト Jレ切断は波数 1
5の三角形切断とする。また鉛直方向には等間隔に 4層 i
乙
分ける。
O
.0
.
2
5
.0
.
5
0
.0
.
7
5
.1
.0
0が oの定義レベソレ,そして . 0=0
.
1
2
5
.0
.
3
7
5
.0
.
6
2
5
.
0=
0
.
8
7
5が他の物理量の定義レベルとなる。乙の解像度はかなり粗いものであるが,非組形定常解を
求めるためには ζ の程度が精一杯であるとともに,目下の問題には十分なものでもある。またもっ
ぱら赤道対称の解のみを問題とする。
時間積分モデルにおいては非線形項を格子点で計算する変換法を用いる。また時間積分に関して
はセミ・インプリシット法を用いた。乙れらはどく一般的なものなので.詳細は省略する。例えば
Kanamitsue
tal
.(983)を見られたい。初期条件としては静止大気を仮定する。
一方,定常モデルは. (1) - (4)式において左辺 = 0とおいたものおよび (6)式であるが,非
線形項も含めすべてをスペクトル形で計算する。具体的には φ 1. T
.π と;を従属変数として
球面調和関数でモード展開する。非線形項は
hU
J吋 r
I哨
寸
万 SSYa*J(Ys・Yr)ω dゆd ,
A
= 古 川 町 ・ マYrω dゆdA,
Casr
古 川 町 Yr 叫
d
φ dA
等をあらかじめ計算しておいて,それぞれ適切なと乙ろに代入する。乙乙で Yは球面調和関数,下
添字はモードを表す。また上添字*は複素共役を示す。乙のような手続きによって連立の非線形方
程式が得られるので.乙れを解く乙とになる。;を従属変数としたのは,乙れを他の変数で表すと
三重積が出てくるためである。
ζ のうち π0,
0は他に影響を与えず
10,
0
は恒等的 i
とゼロなので,
乙れらを除いて結局, 2
107
元の連立非線形方程式を解く乙とになる o 乙れをrを分岐パラメータとす
る連続法で解いていく。すなわち
Tを徐々に変化させながら,解を連続的に追跡していくととにな
る。具体的には p
s
u
d
o-a
r
c
l
e
n
g
t
h法を用いた (
K
e
l
l
e
r,1
9
7
9
;L
e
g
r
a
sa
n
dGhi
,
l1
9
8
5
)。 乙れは
ニュートン法の変形で,極限点等 I
と出会ってもうまく連続的に解を追う乙とのできる方法である。
また乙の定常解の線形安定性も調べた。
表 2 モ デ ル Sにおける放射平衡混度 (
K)。他の成分はゼロ。
レ ベ ル (a)
0
.
1
2
5
0
.
3
7
5
0
.
6
2
5
0
.
8
7
5
2
2
0
2
3
8
2
5
8
2
7
7
-6
-14
-22
Te 0・
D
Te
。
0
.
2
放射は (3)から分かるように.ニュートン加熱/冷却の万式で行う。放射平衡温度は表 2I
乙与え
られている。また地面は平坦で,大気と熱のやり取りはしないと仮定する。さらに(1), (2)式の
最上層 (a=0.125) に時定数 1
5日のレーリー摩擦を与える。とれは乙のままではある rの値で強
い共鳴が出て非現実的なため,共鳴を弱めるように導入されたものであるが,物理的には成層圏へ
の波の伝播を表現する乙とになっていると考えられる。また地表風速 V は一定値 5m/secを与え,
地表の φ 1は a
=0.875でと ψ 1の 0
.
5倍としている。
熱帯の熱源における
G(
φ ,A) =
ただし,
G(
ゆ
,
A
)は次のような形で与える。
COS (
1
rO
φ 1300)
。
c
o
s(
π P-90E)1
600 )
Iφ│く 1
50 , 60EくAく120Eの範囲でのみ値を持つ。 q0 は 10KId
ayとする。
nd
(
3
)
季節内振動モデル(モデル1)
乙のモデ Jレにおいては波数切断が三角形の
2
1,層の数は 1
2(0=
0
.
0
2
5,0
.
0
7
5,0
.
1
6
0,0
.
2
9
0,
Q430,Q
5
6
5,Q
6
9
0,Q800,Q
8
9
0,Q
9
5
0,Q
9
9
5
)とする。モデルの表面はすべで海洋で覆わ
れているものとし,海面水温は経度方向に一定とし,さらに南北両半球で対称と仮定する。実際に
は 4月の気候値を各緯度で経度平均し,乙れをさらに各緯度毎に南北両半球の平均をとる乙とによ
って計算した。
o
ha
n
dN
i
s
h
i (19
9
0
) とまったく同じである。すなわち
熱源の入れ方はIt
6
0
Eから 1
8
0。まで
4
0日の周期で移動し,それをまた繰り返す乙とになる。振幅もその聞で I
s
i
n1.5 71:0 t/Tolのよ
うに変化する。乙乙で Toは周期
4
0日を表す。振幅の最大は熱源の中心が 1
2
0
Eにあるときにとり,
その大きさは 5
K/dayである。
2つの実験を行った。ひとつは放射平衡温度が南北に一定の場合(実験 IA) で,もうひとつは
それが南北に変化する場合(実験 IB)である。前者においては中緯度の偏西風が弱いので熱帯一
中緯度間相互作用は起乙らず,後者では偏西風が強く相互作用が生ずる。時間積分は,前者におい
ては
2
0
0日間,後者においては 3
2
0日間実行し,解析は 8
1日目から最終日の聞で行った。前者で
3サイクル,後者で 6サイク Jレが解析の対象となる。実験 1A と 1Bの放射平衡温度がニュートン
Rodiotive Equilibrium Temperoture
T
. and Newtonion C
o
o
li
n
g Time C
o
n
s
t
.
,
目 。
(K)R.E.
0
モ伺ーー
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I(
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2001
- _____
---ー│
ー
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200-1¥
¥│
400~
E
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z
国
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600
z
800
800
〆〆
1000│
-90
-60
-30
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〆〆
、
30
l
r
r
l
60
90
1
000
200 220 240 260 280 300
u
r
e
Temperロt
Lotitude
。5
Lー
ー
ー
ー
ー
」
1
0
1
5
2
0
Ti
m
.C
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s
t
. Id
o
yJ
図 1 モデル Iにおける放射平衡温度 (Kl とニュートン冷却率(lIday)。左図が実験 1Bζ
I対
A
I
<
:
:対するもの。
する放射平衡温度で,右図の実線が実験 I
-22-
冷却率とともに図 1
1
ζ 示されている。
乙のモデルをとのままの形で時間積分すると,赤道上空でlOm
lsecを越える西風が生じてくる。
(乙の説明は困難で、ないが紙数の関係で省略する。)乙れは非現実的なので,渦度方程式の帯状平均
成分に次のような形のダンピングを導入した。
。
-e/a・
s
in (
π
oOD) s
i
n(
π φ/20
0
)
乙乙で eは誠衰定数 (
0.5m/s
e
c/
d
a
y
), aは地球半径
合
OL は
ODは上で述べた通りであるが,との場
0
.
5
5としている。
3
. 熱智定常熱源に対する応答
まず・モデル Sの結果を示そう。図 2は定常解がパラメータ rとともにどのように変化するかを示
.
7
0
0までは安定である。 r=0.701で Hopf分岐し不安定となる。時間積分の結
している。 r孟 0
果を見ると,乙の値でもはやカオティックになっているようなので,サプクリテイカルな H
opf分
岐となっていると思われる。当然ながら,との値より大きな rで(不安定〉定常解と時間積分解が
異なってくる。 0
.
8
4孟 r豆 0
.
8
5と1.0
1孟 r亘1.0
2の聞では解は単純でなく,乙の図からは読み取
れないが複数解を持っている。またとの閉では一般的傾向とは逆に不安定モードの数も少なくなっ
ている。
0.02-
。
9
-P13333454457778770
同
・b
﹄ド
SU
0.01-
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
0.00-+-.-.-.-.
-,-,-,-.-.-.""",-,-,-,-,-,-,-,-,-,-,
0
.
8
1
.0
1
.2
0
.
0
0
.
2
0.
4
0
.
6
αm
Par
eter (
'
図 2 分岐パラメータ r (
放射平衡温度の南北傾度の強さを表す}に対する定常解11"0.2. Sは安
定解,数字が害かれているのは不安定解。数字は[不安定モードの個数 12) を示す。
-23-
以下,定常解と時間積分解の違いを
r= 1
.0で比べていくととにする。 r= 0
.
8では両方の解に
.
9は 1
.
0とほぼ同じ傾向を示す。
顕著な違いはなく , r= 0
まず帯状平均場で両者の違いを見てみよう。図 3は r= 1
.0での帯状平均東西風を示している。
時間積分解の時間平均(以下,簡単のため単に時間積分解という)は 101-300日間でとっている。
両者の差はあまり顕著で、ないが,申緯度から亜熱帯の下層 i
とわずかな違いが見られる。すなわち定
常解ではほぼ同
大きさの東風が全緯度に渡って吹いているが,時間積分解では中緯度で弱く,亜
熱帯で強い東風となっている。なお両モデルとも下層ではすべての緯度で東風となっているが,乙
れは最上層に入れたダンピングにより,そとが運動量のシンクになっているためである。乙れは実
際と異なっているが,東風の値自身は小さいので本質的な影響はないと思われる。
。
ZonoI Meon FIow (m/secI
y= 1.00
ZonaI Mean
200
200
官 400
官 400
.
<
:
.
<
:
,
。
国
;
a 600
~
コ
=
:
I
:
800
1000
-90
(m/sec)
600
800
-60
-30
。
30
60
90
1000
-90
モ デ ル S から得られた
-60
-30
。
30
60
90
Latitude
Latitude
図3
Flaw
r= 1
.0での帯状平均風
(m/sec)。定常解(左)と時間積分解の
101-30
0日平均(右)。
一方,偏差場は両者の聞でかなり異なっている。とりわけ上層での違いが顕著である。まず図 4
は 375mbでの水平構造を示している。中緯度の状況は明らかにかなり異なっている。すなわち,
定常解における波列ζ
i比べて,時間積分解の波列はずっと振幅が大きい。そして後者の場合,波列
が1
8
00付近と 110W付近で熱帯へと戻っているととが,渦度場だけでなく,風の場からも明瞭に
見てとれる(表 3のエンストロフィー,エネノレギー'フラックスも参照のとと)。
熱帯における両者の違いは分かりにくいので,次のような工夫をしてみる。すなわち各々の結果
において,風速と渦度の最大値で,それぞれの場所の風速と渦度を正規化した図を描いてみる乙と
である。結果が図 5に示されている。乙の図から中緯度ばかりでなく,熱帯でも両者はかなり異な
0。付近と1l0 W付近)で時間積分解
っている乙とが分かる。すなわち波列が戻ってくる経度C18
の方が明らかに振幅が大きいと言える(表 3の正規化された風速も参照の乙と〉。
-24-
Geopotential,Vorticity and Wind at
ya 1.00
90
375mb
1
8
0
Longi
t
ude
from day 1
0
1 to 300
Geopotential,Vorticity and Wind at
375mb
80
60
40
、,﹄内
ハU A U A U
J'
・
-oJ
@司コ何一
-40
-60
-80
0
90
270
﹄
a
u
C
図 4 モデル Sから得られた 375mb面での水平構造。定常解(上)と時間積分解の 1
01-3
0
0日
平均(下)で,待状平均場を引いている。各図の北半球の等値線は高度 (20m毎)南
e
c毎 ), ベクト Jレは風(スケールは図の右下に示す)を表す。正の高度,
半球は過度(10
6
/s
渦度には陰影を付けている。
c
e
e
e
,
r
・
mF
フ﹄・l
--
nvbL
nuuv
or
eo
E'sse
,,r
oos
VVEι
a-- a
u
ロロ-
rmrenuenv
nn
ii
tt
contour
shode:>
contour
shade:>
360
一+IOm/sec
n
u
1
8
0
Longitude
phu
Vorticity and Wind at
375mb
y- 1
.00
80
60
4
0
ω20
可
ヨ
コ
.
.
.
.
.
。
“
ロ
'-20
-40
-60
-80
o
90
1
8
0
360
270
Longitude
contour
0.05 0.10 0.20 0.50
shode:>0.20
from day 1
0
1 to 300
Vorticity and Wind at 375mb
80
60
4
0
Q
I
可
コ
2
0
。
=
コ
ロ
'-20
-40
-60
-80
O
90
360
270
1
8
0
Longitude
contour
0.050.100.200.50
shode:>0.20
図 5 図 4と同じ場において,それぞれの最大で正規化した風速(北半球)と渦度(南半球)の場。
等値線は右下 i
乙書かれているとおりで, 0
.
2
0より大きいと乙ろに陰影, 0
.
5
0より大きいとと
ろに濃陰影を付けている
nhv
nd
以上のように,特に偏差場で中緯度・熱帯の両方とも違いが明瞭である。さらに熱帯→中緯度→
熱帯という Jレートでの強い相互作用が時間積分解において存在する乙とも分かった。
ただし非定常性が重要とは言っても時間変動成分の大きさと直接に関係しているのではなさそう
である。乙の乙とは次の
2つの事実から言える。
まず表 3,ともとづいて説明をしてい乙う。乙の表は禍度方程式における各項 l
乙渦度を乗じた結果
を示したものである。すなわち各項が渦度の維持にどのようにかかわっているかを表現していると
考えられる。ただし中緯度における偏差場の渦度の維持を見るために, 300 より極側でのみ,また
経度平均を引いた量で計算している。「線形項」とは (1)式の右辺第 3, 4項で,
r
減衰項」とは
右辺の最後の 2項を言う。その他が非線形項である。時間積分解の非線形項は,時間平均での積に
加え,それからの偏差の積の時間平均があるので,結果を分けて示している。あわせてエンストロ
フィーと西半球での赤道向きエネルギー・フラックス,正規化された風速の大きさについても結果
を示している。
r=1
.0での 375mbにおける定常解と時間積分解の渦度バランス。ただし 30 より極側のみ
表3
0
3
.
0
5 における西半球経度平均の赤道向
で,かつ経度平均を引いた量で計算している。同時に ,3
0
き水平エネルギー・フラックス(一 zv)と,赤道での正規化された風速の第 2の最大値も示してい
0
-12/
s
e
c2,渦度バランスの各項が 1
0
-18/
s
e
c3,エネルギー
る。単位は,エンストロフィーが 1
・フラックスが m/sec2 である。
エンストロ
フィー
時間平均場 時間変動場
の非線形項 の非線形項
定常解
4
.
1
5
-1.9
2
時間積分解
5
.
7
6
1
.8
0
0
.
42
線形項
減水項
エネルギー
正規化風速
フラックス
1
9
.
6
7
-1
9
.
3
3
-6.60
0
.
4
3
2
8
.
2
9
-30.98
6
.
6
4
0
.
6
0
エンストロフィーに関しては図 4,図 5からも明らかであるが,時間積分解の値が大きい。そし
てその維持は,
r
時間変動場の非線形項」によるのではなく, r
線形項」と「時間平均場の非線形
項」がともに大きくなっている ζ とによっている。乙れは第 1章で述べた観測結果ζ一致している。
l
表は省略するが,乙れを運動エネルギーについてみても同様な結果が得られる。乙のように波列の
振幅は非定常性によって大きくなるが,それは「時間変動場の非線形項」によって維持されている
のではない。
時間積分モデルにおいて,中緯度における帯状平均流と東西風の分散(時間変動成分の大きさ),
時間平均場のエンストロフィー,赤道向きエネルギー・フラックスの関係が図 6,と示されている。
rが大きくなるにつれて,平均帯状流や時間変動の分散も大きくなっていくが,エンストロフィー
-27ー
とエネルギー・フラックスは必ずしもそうはなっていない。さらにエンストロフィーとエネルギー
-フラックスの聞には高い相闘があるが,時間変動の分散とはかなり異なっている乙とも分かる。
すなわち,
r= 0.8から
0
.
9にかけてと1.1から1.2にかけては,時間変動の分散はそんなに大き
くなっていないのに, エンストロフィーとエネルギー・フラックスは急に大きくなっている。一方
r= 1
.0から1.1にかけては,分散は大きくなっているのに, エンストロフィーとエネ Jレキ'ー・フ
ラックスはむしろ小さくなっている。
xl0・1
1
12
1.0
6
O
.
l
l
﹀
入O L @ C U
1
0
o
c
o
0.6
N
2
。
O
0.6
0.8
1
.0
Porometer
1
.2
3
0.2
。
0.0
1
.4
Y
ζ
I対する 375mbでのいくつかの物理量の変動。
図 6 時間積分モデルにおいてパラメータ r
り
3
3
.
0
5。における待状流 (-u一
)
, 3
3
.
0
5。での東西風の分散の経度平均 (-V-),3
00よ
3
.
0
50 での赤道向きエネルギー・フラ
極側でのエンストロフィーの平均 (--Eー)および 3
ックスの西半球経度平均(ー F一)。スケールはそれぞれの紬に示されている。
以上より非定常性が重要とはいっても, それは時間変動成分の大きさに規定されているのでもな
r
く. 時間変動場の非線形項」によって維持されているのでもない乙とが分かる。むしろ内部非線
形力学,例えば非定常極小点
(
M
u
k
o
u
g
a
w
a
.
1
9
8
8
)や不安定周期解などに強く規定されているの
では思われる。定常解と異なる別の「解」に捕捉されているなら, たとえ時間変動成分が小さくと
も. r
時間変動場の非線形項」が無視できても,時間積分解の波列の振幅が大きくなる乙とは十分
ありうる乙とである。乙とからさらに. r
時間変動場の非線形項」が小さい乙とと非定常性が無視
できる乙ととはまったく別の問題であるという乙とも言える。
入手aOLHωC 凶
10
。υco-LO
コ
一
比
X
;
:
o
1
L
.
.
0.8
¥NE}
ε
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帥
13
u
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、
、
5
16
(Nυωω¥}
υ
ω
1
.2
{Nυω
{υ@ω¥ 向E }
20
9
20
の
む
最後に傾圧波の役割について言及してお乙う。定常解の不安定はもちろん傾圧不安定として起乙
る。乙の意味で傾圧波が波列を増幅するという言い方は誤りではない。実際,帯状平均の傾圧場か
らパロ卜ロピックな構造を持つ波列へエネルギーを与えるには傾圧的な構造を持つ波動の存在が不
可欠である。しかし
r=1
.0と1.1の違いからも分かるように,傾圧波が強いからといって,より
振幅が大きくなるわけではない。
ζ の意味では傾圧波が波列の増幅を引き起乙すという言い方は不
十分,不正確なものであるように思われる。
4
. 季節内振動における熱帯一中緯度間相E作用
次にモデル Iの結果を示そう。図 7は実験 IBから得られた 250mb面での 81-320日平均の東
西風である。最大で 40m/sec強となっており,ほぼ春や秋の状況を近似していると言える。より
西風の強い場合も計算を行ったが,定性的には以下で述べる結果と閉じであった。
Time Mean Flow (m/sec) at
from Day 8
1 t
o 320
申
可
コ
コ
,
.
250mb
Zonロ Mean
80
80
60
60
40
40
20
20
O
O
-20
20
ー4
0
40
-60
60
・
4d
~
-80
O
60
120
180
Longitude
240
300
80
360 010203040
(m/sec)
図 7 実験 1Bにおける 2
切 mb面での 81-3
2
0日平均の東西風。単位:m/sec
ろに陰影を付けている。右はその帯状平均図。
0
東風のと乙
図 8は
, 250mb と 850mbの東西風,地表気圧, 250mb 高 度 場 の 4
0日周期成分が赤道に沿
ってどのように振幅変化するかを示している。以下ではとのうちの東西風についてのみ見ていくと
とにする。実験 IAの結果は I
t
o
handN
i
s
h
i (19
9
0
) の結果とほぼ同様である。すなわち強制最
大の経度 120Eで風速長大となり,それより東では急速に振幅を減少させる。一方,実験 IBの結
8
00 付近で現れる。
果は大いに異なる。まず 250mb面の東西風の最大は 1
さらに励起源のない領
域 (90W-4
5Wや 00_ 45E)でも増幅が起乙っており,振幅はかなり大きい。ただし 850mb
-29ー
(
a
)
(
b
)
15
30
、、,
25
R
e
20
。
HM-
刃C 一言
。
o
z
由
。
"
15 ~
M
102
N
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、
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回
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包
、
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m章一ロ EON
司
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m
u
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0
2963
20
-ag-- ﹄ コωmeLLeuou--﹄コ凶
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-uo"
・ ・
765432
-aE-e ﹄2 me ﹄ah uoh ﹄ コ 的
25
30
色~
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r
o
o
90
180
270
0
360
90
180
270
360
o
Longitude
longitude
B (b) における赤道に沿う 4
0日周期成分の振幅変化。太実線 (p)は
図 8 実験 IA(a) と 1
地表気圧,細実線 (
H
)は 2
5
0
m
b高度,彼線(u)は 2
5
0
m
b東西風,一点鎖線(L)は 8
5
0
mb東西風を表す。スケールはそれぞれの紬 I
r.示されている。
の東西風にはとのような乙とは見えず, ほぼ実験 IAの結果と同じである。とれらの結果は観測と
一致している(例えば,
Maddena
n
dJ
u
l
i
a
n,1
9
7
2;G
u
t
z
l
e
ra
n
dMadden,1
9
8
9
)。
実験 IAと I
Bの違いは明らかに熱帯一中緯度聞相互作用のあるなしによヲてもたらされたもの
である。では具体的にはどのような相互作用が起とっているのであろうか。乙れを図 9をもとに考
えてみる。乙の図は実験 IBからとったもので, カテゴリー 1と 5における 250mb面での高度と
風の時間平均からの偏差図である。強制の強弱,従ってまたその位置によって周期 4
0日を 8つの
カテゴリーに分けた。カテゴリー 1とはそのうち最も強制の弱い時期にあたり, カテゴリー 5は逆
に最も強制の強い期間で,熱源の中心は 1
20E付近に存在する。
両方の図とも,熱帯から中緯度へ伝播し, そして熱帯へ戻ってくる波列の存在が明らかである。
波列の戻ってきたあたり (
60W-30W)がちょうど振幅の大きい場所となっている。カテゴリー
6や 7ではより強い振幅で熱帯へ戻っているととが見てとれる(図省略)。乙れが図 8(b)での乙
の領域の増幅の理由である。一方,
。E
0-45 へは特にカテゴリ
-8で強い振幅の波列が熱帯へ戻
っている乙とが分かる(図省略)。
励起源で風のもっとも強い場所は
1
8
0 付近である。通常の松野 G
i
l
lパターンでは熱源の西の
0
ロスピ一波 l
とともなう風速の方が,東のケルビン波にともなう風速より大きい乙とを考えると, 乙
の風速分布は興味あるものである(図 9)。 またロスビ一波にともなう亜熱帯の双子高気圧の東に
双子低気圧が存在する乙とも見てとれる。乙れも線形論では出現しないものである。
乙のような特徴も中緯度から熱帯への作用として理解できる。すなわち,双子低気圧は中緯度か
ら熱帯への波列の一部として形成され, 乙の双子低気圧を経由して中緯度から熱幣へのエネルギー
-30ー
Geopotentiol ond Wind ot 250mb
Cotegory
from doy 8
1 to 320
90
70
50
30
@
百
0
コ 1
.
M
言動 1
0
'
-30
ー50
-70
-90
。
90
180
Longitude
270
360
-+IOm/sec
contour 1
ntervo1 20m
shode:>
Om
一
Geopotentiol ond Wind ot 250mb
1 to 320
Cotegory 5
from doy 8
90
70
50
30
。
て
ヨ
0
コ 1
“
ー
-
3・10
'
-30
-50
-70
-90
o
90
180
Longitude
270
一
.
.1Om/sec
360
contour 1
ntervo1 20m
shode:>
Om
図 9 実験 IBにおけるカテゴリー 1と 5での 250mb面高度と風の偏差図。高度場の等値線間隔
は 20m,正の場所に陰影を付けている。風のスケールは図の右下に示されている。
-31-
収束があるととが分かる。とれによって 1
8
00 付近の増幅が起乙っている。一方,熱源の西では乙
のような中緯度からのエネルギー収束はない。乙れらのため励起源の中心より東側,すなわち 1
8
00
付近で東西風の振幅が最も強くなったものと考えられる。双子低気圧が亜熱帯に存在し,それを経
由して熱帯へのエネルギー収束が起とっているととは実際に観測されている乙とである(例えばRui
and Wang.1
9
9
0
)。
一方.850mb面では実験 IBでも中緯度の波列は振幅が弱く,かつ熱帯へ戻って来る乙とはない
(図省略)。乙の理由も明らかである。すなわち中緯度の波列は風速の大きい上層の状態によって基
本的に決定され,その構造はパロトロピック的となる。乙のため下層でも波列が従属的に形成さ
れるが,当然ながら振幅は小さくなる。また熱帯の下層は東風が卓越しているため,波列は戻って
来れない。従って下層では実験 IBでも中緯度との相互作用は起 ζ らず,実験 IAと同じような結
果になる。
5
. まとめ
熱得熱源のもとでの熱帯一中緯度間相E作用を数値モデルを用いて調べた。熱源はいずれも外部
強制として与えた。
まず定常熱源のもとでの非定常性の役割を明らかにするため,時間積分モデルと定常モデルを構
築し,その両者の性質の違いを調べた。定常解が不安定となるパラメータ領域では,両モデルの結
果は特に偏差場において顕著な違いを示す。すなわち時間積分解の方が定常解より大きな振幅の波
列を持つ。さらに熱帯から出た波列は中緯度を経由し,また熱繕へと戻るととによって,励起源か
ら離れた場所での振幅を大きくする。乙のように非定常性は熱帯一中緯度間相互作用において重要
な役割を果たす。ただし時間変動成分そのものの大きさや,それによる非線形項の大きさとは直接
的な関係はなさそうで,むしろ非線形に固有な力学が関与しているととを示唆する。
t
o
h
山岳によって励起された準定常波に関して,定常モデルの限界と非定常モデルとの差異は I
(985) によって詳しく議論されている。本論文の結果は熱帯熱源によって励起される波列につい
ても同じ乙とが言えるというととである。
次に季節内振動における熱帯一中緯度聞相互作用の役割を調べた。乙のモデルにおける熱源は 6
0
Eから 1
8
0。へ 40日の周期で移動する。まず中緯度との相互作用がない場合(中緯度偏西風が弱い
場合)には季節内振動の振幅は 120Eを中心とする励起掘の場所でのみ大きい。一方,中緯度での
偏西風が強くなると,熱帯から出た波列が中韓度を経由し,ふたたび熱帯へ戻って来るという熱帯
一中緯度聞相互作用が生じる。そして波列の収束する場所,すなわち励起漉から遠く離れた西半球
においても季節内振動の振幅は強くなる。
-32-
参考文献
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357-379.
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-34-
永続する 1月の条件での AGCM長時間積分に現れるテレコネクションパターン
佐藤康雄*・千襲
長*・柴田清孝*木田秀次帥
1
. はしカTき
長期予報の対象は N
ormalの C
Cl
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g
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c
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lな)季節変化からのズレを予想するととにある。
一般に,ある気象変数の個々の年の月平均,あるいは,季節平均の気候値からの偏差は,年々の変
動の一環として現れる年平均値に見られる偏差,季節変動の振幅と位相の変化(季節進行の進み遅
れ)による偏差と,本質的には季節変化とは関係が無いと考えられるゆっくりとした現象による偏
差との相として,理解されよう。基本的な季節現象としては,モンスーン,梅雨,亜熱帯高気圧・
シベリア高気圧の消長等が考えられ,基本的に季節現象でないものとしては,プロッキング,テレ
コネクション等が考えられよう。もし,とのような簡単化が第一近似で可能ならば,プロッキング,
テレコネクション等の低周波変動の理解には,第一近似で季節変化は必要ないとも言えよう。そう
であるならば,いわゆる. p
e
r
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lJ
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n
. pぽ p
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lJ
u
l
y等の境界条件での長時間ランを行い,
それらの現象がどの程度,モデルで再現されているかを調べるのは興味のあるととである。また,
とのような大気内部の力学によっていくつかの特徴的な固有モードがあるとすれば,境界条件の偏
i異なって来るで、あろうと予想される。そのような基本的考
差による大気の応答も,固有モード毎ζ
えの基 I~. 我々は perpetual
J
a
n
. 境界条件固定の限定された実験で,現実大気の低周波変動がど
i
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l
a
t
eできるか,調べてみた。
の程度 s
2
. 数値実験に用いたモデルと実験の超定
実験に用いたモデルは. C
hibae
ta
l
.(986) によって,長期予報実験用に開発された全球スペ
クトルモデルを R36Llll~ 拡張したものである。 R36 はスペクトル展開の切断を東西波数 361と取
った平行四辺形切断と言うととを意味し .Lllは 1
1層と言うととで,上端はほぼ 10mbである。
東西方向の格子の数は 1
1
2
. 南北方向の格子の数は 9
2である。格子間隔で言えば. Dx=3.2~ Dy
=2・である。実験は,次のように設定された。 1
9
8
4年 1
1月 1日を初期値として予報実験と同じ
ように数値積分する。海水表面温度,海氷分布は月平均の気候値を日々,内揮して用いた。海氷分
3年間平均したものを用いた(佐藤 (1989))01985年 1月 1
5日を期し
布は SIGRIDのデータを 1
て,太陽高度を固定し以後いわゆる p
e
r
p
e
t
u
a
lJanの条件で 5
0ヵ月積分した。 30日平均の 5
0
0
mb高度のデータを用いてテレコネクティピィティの解析を行った。
*気象研究所・気候研究部
材気象研究所・応用気象研究部
-35ー
3
. 実験結果の解析
テレコネクションの解析の前ζ
i,境界条件を l月に固定したモデルの長時間ランのパフォーマン
スをみるために, 5
0
0mb高度の 1
5
0
0日平均と 3
0日平均値を基に計算した標準備差を示し,観測
値と比較する。 5700mの等値線が 3
00Nに沿い,日本付近・オホーツク海.カナダハドソン湾北
部,カスピ海北部・ノパヤゼムリア付近の 3ケ所に低圧部が存在し波数 3のパターンを形成してい
る。図 1bとcが観測のノーマルで bは
,
1
9
5
1年から 1
9
8
0年までの 1月の 3
0年平均として長期
9
6
1年から 1
9
9
0年までの 1月の新ノーマル 500mb高度である。
予報課で作成されたもの. cは 1
波数 3型のトラフの位置などはモデル(図 1a)はかなり良く表現している。モデルと観測との違
いとして一番目につく所は,オホーツグ海,カムチャッカのトラフとアラスカ上空のリッジとのコ
ントラストの表現である。
, 3
0日平均値を基に計算された標準偏差である。等値線間隔は 20m毎である。標準偏
図 2aは
差の大きい所は.アリューシャシ上空,イギリス西部の北大西洋,カスピ海北部である。アリュー
0
シャン上空の値は 120m超である。第 2の極大域イギリス西部は 80m強,カスピ海北部も同じく 8
m強である。図 2bと c
ζ
I観測の 1ヶ月平均値から求められた標準偏差を示す。図 2bは長期予報
課の旧ノーマル (
1951-1980)データ,図 2cは新ノーマル・ (1961-1990)データである。旧ノー
マルデータでは,今回の p
e
r
p
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lJ
a
nの実験と閉じようにアリューシャン上空とアイスランドか
らイギリス西部の北大西洋,シベリア等に標準偏差の大きい所が連なる。最大値はアリューシャン
i現
上空の 90m強である。新ノーマルデータでは,最大値はグリーンランドのすぐ南の北大西洋ζ
れ,その値は 110m強である。第 2の極大はカスピ海北部に現われ,その値は 100m強である。旧
ノーマルデータで最大値であったアリューシャン上空は 90m強で第 3の極大になっているのは,最
近1
0年あるいは 40年前のなんらかの経年変動を示しているものとして興味深い。
さて,テレコネクションの解析に移る。図 3a,bは W
a
l
l
a
c
e& G
u
t
z
l
e
r(19
81)によるテレコネ
クションパターンのまとめである。北半球全地点で l点同時相互相関係数を計算し,その中で負相
聞の絶対値最大をその地点の値とするいわゆるテレコネクティピィティマップである。図 3bは観
測の 500mb高度の図上にまとめられた 5つの顕著なテレコネクションパターンである。 PNA(
太
平洋北アメリカ)パターン,西大西洋 (WA)パターン,東大西洋 (EA)パターン,西太平洋パタ
ーン,ユーラシアパターンである。図 3aは,いわゆる句テレコネクティピィティマップで相互にー 0
,
7
5
を超える逆相関を示す領域が濃い黒で. 0
.
6
0を超える領域が淡い黒で塗られている。図 3bと対
1
照させてみれば,先ほど挙げた 5つの卓越パターンの相対的強度が把握できょう。すなわち,肱1
a
c
e& G
u
t
z
l
e
r(19
81)の観測では .PNAや西太平洋パターンが最も強く現れ,東西の大西洋パタ
ーンがそれに次ぎ.ユーラシアパターンは最も弱く現れている。図 3cはモデルの 5
0ヶ月積分デー
1
2点,緯度方向9
2
点を
タによるテレコネクティピィティマップである。但し,全地点,経度方向 1
経度 2
8点,緯度 2
3点.すなわち全地球上 6
4
4点に誠らし,それらについての相互相闘を計算して
-36ー
<
8
>
zS白目
"8 ・
・
・ "EAN
・・30 DATS
PERPETUAL JAN SO
LdNHAX=28. LATHAX=
制
/
図1
¥
ω
(a)p
e
r
p
e
t
u
a
lJanの条件で計算された 500mb高度の 5
0カ月平均
(b) 1951-19
即年までの 1月の旧ノーマル 500mb高度
(c) 1961-1伺 O年までの 1月の新ノーマル 500mb高度
(長期予報テクニカルノート ぬ 3
5
.気象庁(1鈎1)
-37ー
Z 500 HB --- 5TD
・・30 DAT5
PERPETUAL JAN SO
(
a
)
, . 問 問
図2
(a),(b),(c) 図 1のそれぞれに対応する標準偏差。モデル,観測
0日平均値を基にしている。但し, (c) 図は彼線。
データともに 3
n
o
(a)
"鳴醤酔!
Z5
0
0H
B-50M30DAYS
(c)
・
0
TELECsNNECTIVITY HAP
・
・
90 w
90
.
劇
"
・
1
0
.
.
0
1
8
0・
L
O
N
M
A
X
=
2
8
. LATMAX=23
図 3 冬季北半球 500mb高度の一点同時相関に見られる卓越パターン,モデルの結果と合わせるため
1
加。回転させられている。 Ca) テレコネクティピィティマップ。影をつけた領域は隔たった地
点で強い負相聞を示す領域(薄い影はー 0
.
6より強い相関域,滋い影はー 0
.
7
5より強い相関域)。
矢印はそれらの領戚が強い負相関であるととを示す。 Cb) 太実線で固まれた領域は相関統計で
係数の大きかった領戚, PNA一太平洋北アメリカパターン, WA一回大西洋パターン, EA東大西洋ノ fターン, EUーユーラシアパターン, WP一西太平洋パターン。細実線は冬の平均
500mb高度パターン。 CWallace& G
u
t
z
l
e
r
.1
9
81
>0 Cc) モデルデータによるテレコネクテ
ィビィティマップ。点彩はー 0
.
6
0より強い負相関成。矢印はそれらの領戚聞が強い負相関であ
る乙とを示す。
-39-
ある。乙の場合, Dx=1
30 ,Dy=8
。の分解能である。相関係数は 1
0
0倍されている。ー 6
0より強
い負相聞に点彩が施しである。太線の矢印はそれらの領域の聞が強い負相関である乙とを示す。図
3a,bの観測値の南限は 2
00N,モデルデータの方は赤道である。まず,モデルにおいても比較的
きれいな PNAパターンが現れていると考えてよいと思われる。北米大陸上の高相関域が観測より
少し南に位置している。次に高い相関域も観測と閉じ様に西太平洋パターンである。西大西洋パタ
ーンもよく表現されている。ととろが東大西洋パターンとユーラシアパターンの表現は余り良くな
い。との原因は,今の所良く分からないが大西洋の亜熱帯ジェットの盛衰についての表現に問題が
あるのではないかと考えている。(と言っても,傾圧不安定の表現に問題があるとは考えられない
ので,海水温分布が非現実的とか?・・・・)。
テレコネクティピィティは物理量の局所的な変動の記述の仕方として優れているが,欠点もある。
一番分かりやすい例は,遠く離れた 2地点の正相闘を持つ変動を記述できない乙とである。それで,
別の解析方法として,いわゆる
mb高度に面積の重み
c
r
言
EOF解析の結果を示す。図 4は 2
8
x
2
3
1
ζ 減じられた各点の 500
OS!
p
,
!
pは緯度)を乗じた上で,通常の E
OF解析を行った。
図 4a
がその解析の第一モードで. PNAパターンに対応するととは明らかである。乙のモードの寄与率
5
.
9
%である。図 4b
l
(示されている第二モードは,北極を挟んでアリューシャン上空の気圧と
は2
7
.
9%である。手
イギリス南西部の気圧変動が正の相闘を持っていると言う乙とで,その寄与率は 1
法から言って,乙の変動はテレコネクティピィティ解析では検出し得ないものである。さらに高次
i
t
o
h(19
91)から取られた観測データの
のモードについては,ととでは省略する。図 4aは K
EO
F解析で 1
946-1989年までの冬 3ヶ月の 500mb高度のデータである。モデルデータの解析結果
9
.
9%である。第二モード
と同様に PNAモードが第一モードとして現れている。その寄与率は 1
2
.
4%で,北
はアリューシャン上空と北大西洋の気圧が正相関で変動するモードで,乙の寄与率は 1
とシフトしている乙とが気になるが,一応観測と対応してい
大西洋の変動がモデルの方がかなり南 i
bの右側は,モデルから得られた EOF第一,第二モードの時間係数であ
ると考えられる。図 4a.
る
。 PNAを表現している第一モードの時間係数はアリューシャン上空が高気圧のモードから,低
気圧のモードの方が出現し易くなるような弱いトレンドがある様だ。乙の性質は観測には見られな
い
。 Pa
l
m
e
r(1
9
8
8
)は逆 PNAパターン(P
a
l
m
e
rの定義は,アリューシャン上空の高度偏差が
J
国PNAパターンより持
正なので,本文の EOFの正負の定義とは逆になっている。)は不安定で I
続期聞が短いと述べているが乙の実験の結果では正負どちらの PNAパターンも同様な出現頻度と
a
l
m
e
r(
1
9
8
8
) との結果の違いについても突っ込んで調べ
持続期聞を持っているように見える。 P
る必要がある。
-40-
EOF1
EOF 1
(
a
)
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d
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図 4 モデルと観測の
500mb高度データの EOF解析. (
a
) モデルの EOF第一モードの固有ベク
(
b
)モデルの EOF第二モード. (
c
)1
似 61009年までの冬 3ヶ月のデー
EOF第一モード. (d)EOF第二モード(観測はKito
h(1990より)。
トルと時関係数。
タによる
-41-
4
. PNAパターンと熱帯の熱源
H
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k
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r
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l
y(981)の中・高緯度への Rossby波の伝播理論. H
o
r
e
l& Wa
1
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a
c
e(
1
9
81
)
ζ 伴う中部熱帯太平洋の海水温偏差ζ
l伴う波列分布の概念図などによって.PNAパター
の ENSOI
ンと熱帯の対流活動に伴う熱放出との関係が強調されてきた。しかし,最近のいくつかの研究は P
NAパターンは熱帯の熱源によって励起されたロスビ一波とは.単純に解釈できないと言う研究が
多くなっている。 (
Palmer&M
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ta
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.(19
8
9
)
) Kanaya(
1
9
8
8
)も長期予報課の半旬平均 500mb高度を解析して .PNAパター
ンに 2種類あるととを指摘している。一つは SOlC南方振動指数)と相闘を持っているが,他方は
亜熱帯ジェッ卜付近が波源になっている乙とを指摘している。本研究は,そのような研究の流れの
中で. P
e
r
p
e
t
u
a
lJanで気候値の海水温を用いると言う限定された実験結果を統計的に解析したも
のである。熱帯の対流活動に伴う非断熱加熱の指標として,簡単のためにと乙では降水量変動と P
NAモード (EOF第一モード)との相闘をとった結果を示す。その前に図 5は PNAモードの時間
係数で +5以上の 9例. -5以下の 9例についての降水量のコンポジット図である。等値線は 2皿
/day毎(太い実線は 10mm/d
a
y
) である。赤道で切られていて見にくいが PNAモードの正負で
熱帯の降水量に特別の変化がない乙とが一目瞭然である。中緯度のストームトラックに伴う降水量
についてはかなり異なっているととがわかる。図 6は PNAモードの時間係数と降水量との相聞を
調べたものである。 aは 2
0日前にずらした 3
0日平均降水量と PNAモードとの相関図で北半球中
緯度に 4
0S
ちを超える正負の相闘があるが.熱帯の降水量との相聞は低いととが分かる。 bは 1
0日
前にずらした図であるが,特徴は変わらない。 cは同時相関図である。太平洋から北米大陸にかけ
て PNAパターンに対応すると見られる相関パターンが見られる。言うまでもなく,低気圧域では
多雨,高気圧域では雨が少ないという乙とを表現しているに過ぎない。以下降水量の方を 1
0日,あ
るいは 2
0日遅らせた相関も計算しているがと乙では,省略する。
Simmonse
ta
l
.(
1
9
8
3
)はテレコネクションのような中・高緯度の低周波変動における局所的
亜熱帯ジェットの順圧不安定の重要性を指摘している。乙乙では, 300mbの東西風と EOF第一
(PNA)モードとの相闘を EOFモードの時間変動を基準に 2
0日前にずらした 300mb東西風の一
ヶ月平均値の変動との相関 (
a
)
.1
0日前 (
b
λ 同時相関 (
c)
.1
0日遅れ (
d
)
.2
0日遅れ(e) を
計算した(図 7)。まず. cの同時相闘を見ると PNAパターンの高度分布に対応すると思われる
相関パターンが得られているのが分かる。面白いのは.乙の同時相聞を挟んで 2
0日前から 2
0日遅
れまで中・低緯度太平洋に現れる正負の相関パターンである。 2
0日前の 1
4
50E付近から 1
0日後の
1
6
50 W付近まで東進しているととが見てとれよう。との特徴がモデルではなく観測データでも検
出できるものかどうか興味がある。
-42-
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L日N門AX= 28. LATMAX=23【12)
図 5 モデルの EOF第一モード
(a)
(PNA)の時間係数でコンポジットされた降水量分布。
EOF第一モードの係数が +5以上の月。 (
b
) EOF第一モードの係数が一 5以下の場
合。等値線間隔は 2mm/day,太い実線は 1
0mm/day0
-43-
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図 6 モデルの EOF第 一 (PNA) モードの時間係数とモデルの降水量との相関。
(a) EOF第 一
(PNA) モードを基準にして 2
0目前の 3
0日平均降水量とのずらし相関. (b) 1
0目前の 3
0
日平均降水量とのずらし相関。(c) 同時相関。等値線は 10%毎。負相関域 I
C点彩。
-44-
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図 7 モデルの EOF第 一 (PNA)モードの時間係数と 3
0
0mb30目平均東西風のずらし相関 (
x
1
0
0
)
0 (a) 20目前の東西風, (b) 1
0目前の東西風 (c)同時相関, (d) 1
0日後の
東西風, (
e) 20日後の東西風。等値線は 1
0毎。太い実線は 50,太い彼線はー 5
0。負相関
域に点彩。
phu
5
. まとめ
・太陽高度と海水温.海氷分布等の外部境界条件を 1月の気候値に固定した,大気大循環の長時間
積分の中 l
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91)等によって,
観視J
Iデータから見出されている,顕著なテレコネクションパターンの多くに似たパターンが見られ
る
。
-テレコネクティピィティマップからは PNA. WP. W A等に比べて E Aと E Uが 相 対 的 に 検
出しにくい。
・北半球 500mb高度の EOF解析からは,第一主成分として PNAパターンが検出され,その寄
5
.
9%である。
与率は 2
・第一主成分 (PNAモード)の時間係数と 1カ月平均の降水量との土 2ヶ月,土 1ヶ月,土 2
0日.
0日のずら L相関.同時相聞を調べると,熱帯の降水量との相聞は弱い。中緯度の降水量との
士1
同時相関はある。
• 300mb東西風の 3
0日平均値と PNAモードの時間係数との士 2
0日,土 1
0日のずらし相関と
同時相聞は中・低緯度太平洋に正負の相関パターンが現れるととを示す。しかも,その正負の相関
パターンは -20日の 1
4
50E付近から +10日の 1
6
50W付近まで東進する。
あとがき
「長期予報と大気大循環」の月例会で話した乙とに,一部その後の解析の結果を加えて簡単に報
告した。乙れまでの研究との関連,引用など不備な点はど容赦を乞いたい。
-46ー
引用文献
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佐藤康雄,
1989 :新しいデータによる海水分布の 1
3年平均値による月平均海水分布について,平
成元年度全国長期予報技術検討会資料,
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Simmons,A
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.,109,
785-812.
-47ー
インド/オーストラリア・モンスーンの年々変動
鬼頭昭雄*
1
. はじめに
アジアとオーストラリアの夏のモンスーンの熱源は世界中で最大の強さ・広がりを持っており,
その季節変化はユーラシア大陸と西太平洋間の熱源・循環の移動のみでなく全世界中にその影響が
ある。またその年々変動について.その影響や機構を知る乙とは,長期予報・気候の研究にとって
欠かす乙とのできないものである。気象研究所では経常研究「気候モデルの開発」や科学技術庁海
洋開発及地球科学技術調査研究促進費「アジアモンスーン機構に関する研究」で乙の課題に取り組
んでいる。後者は観測・解析・モデルの各分野からなる総合研究である。乙の研究の一環として,
我々は気候モデノレによるモンスーンの年々変動について調べている。その手始めとして,海面水温
を外部条件として与えた大気大循・環モデルの結果を紹介する。
2
. モデルと実験方法
0
乙乙で用いたモデルは鉛直 5層で東西 5
0.南北 4
MRI GCM. 時間
のグリッドモデルである (
他. 1
9
8
4
)。 モデノレにはその後種々の修正が加えられている。詳しくは K
i
t
o
h(
1
9
9
1a
)を参照し
ていただきたい。モデJレl
乙1
9
6
9年 9月から 1
9
9
0年 2月までの各月のほぼ全球(4
008ー6
00 N )
の海面水温の実測値を境界条件として与えて. 2
0
.
5年積分した。極寄りの海面水温および海氷分
布は気候値を与えた。乙れとは別に気候値の海面水温を用いた 2
0
.
5年積分,熱帯太平洋のみ実測の
海面水温を用いた 2
0
.
5年積分も行なっている。乙れらの積分によるモデル熱帯大気の応答,冬季
北半球大気の年々変動,モンスーンの年々変動について.それぞれ K
i
t
o
hC
1991a.1991b.1992)
に言丘述がある。また B
h
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s
k
a
r Raoe
ta
l
.(
1
9
91)がとのモデルで得られたモンスーンと観測の比
I
海面水温によるランの2
0
較およびいくつかの感度実験について述べている。以下,ほぼ全球の実調J
年閣の季節平均値に基づいて議論する。モ:ノスーンには 2
0日から 6
0自の周期帯のいわゆる季節内
から知られており,モデ Jレ中にも乙の周期帯での顕著な変動が存在する。し
変動があるととが観測l
かし乙乙では年々変動の時間スケーノレでゆっくりと変化する海面水温偏差に対する大気の応答とし
てのモンスーンの年々変動を調べるために季節平均値のみを見る乙とにする。
*気象研究所気候研究部
-48-
3
. アジアの夏のモンスーン
図
1は 6-7-8月平均の降水量の 2
0年平均値と標準偏差である。 10mm/dayを越える降水量
が南アラビア海とベンガル湾でシミュレートされている。インド亜大陸ではアラビア海からの西風
が当たる西側で東側より降水量が多い。ヒマラヤ山麓で観測される局地的な地形に影響される降水
B
h
a
s
k
a
rRaoe
ta
1
.1
9
9
1)。インドシナ半島から海洋
のピークはモデルでは再現されていない (
大陸では海上より陸上で明らかに降水が多い。
一方.降水量の年々変動は平均値とは逆に陸上より海上で大きい。 2
0年平均降水量は南アジア.
中央アメリカ,アフリカで多いのに対して. 2mm/day以上の標準偏差を持つ領域はすべて海上
にある。なかでも南アラビア海とベンガル湾で大きい。乙の平均値と標準偏差の海陸コントラスト
の逆転は.年々変化のない気候値の海面水温を与えたランでも同様である。
PRECIPITATION MEAN
JJA
PRECIPITATI臼N S.D.
JJA
図 1(上)モデルの 2
0
年平均の 6
-7-8月降水量。等値線は 2mm/dayo7以上に斜線。
1以下に点彩。
(下}モデルの 6
-7-8月平均降水量の 2
0
年間の標準偏差。等値線は l
mm/dayo3以上に斜線。
1以下に点彩。
図 2はベンガル湾
(85E-9
50 E,40N-1
60N) でのモデル降水量が多い 3年の平均と少ない
Q
3年の平均の差をとるととでコンポジッ卜した, 6-7-8月平均の降水量,蒸発量,海面水温(陸
上は地面温度のシミュレーション値)および全水蒸気フラックスの分布である。また 2
0年 間 の 年
々変動成分について,ベンガル湾での降水量変動との相闘を計算し, 5 %の危険率で有意なグリッ
ドに印を付けた。
ベンガル湾の降水量が平年より多い時には,西太平洋で降水が多く,東太平洋で少ない傾向があ
る。ベンガル湾の蒸発量は有意な正の値を示しているが,その絶対値は降水量のそれより格段に小
-49ー
a
p
JJA
~
30N
o
b
30N
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c
30N
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d
30N
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305
ー
圃
・ 100.0
図 2 モデル中のベンガル湾 (
8
5o
E
9
5o
E,4o
N
1
6o
N)での 6
-7-8月降水量が多い 3年と少ない 3年
a
)降水量。等値線は lrnm/day。負に斜線。 5$
ぢの危険率
の差によるコンポジット・ 7 ップ。 (
で有意なグリッド I
C点彩。 (
b
)蒸発量。 (
c
)海面水温。等値線は 0
.
5Co (
d
)水蒸気フララクス。
lrnm/day以上の収束 I
C斜線,発散に点彩。
0
-50ー
さい。事実ベンガル湾の降水量の標準偏差は1.94mm/dayなのに対し,蒸発量のそれは 0
.
45mm
/dayにすぎない。すなわち水蒸気フラックスの収束の変動がローカノレな蒸発の変動よりも,降水
の年々変動に寄与している。海面水温の図を見ると,ベンガ Jレ湾の降水量は西太平洋海面水温と有
意な正の相闘をしており,東太平洋海面水温と有意な負の相聞をしている。しかしながら現地の
(つまりベンガル湾の)海面水温偏差は小さく,有意な関係はない。との太平洋での海面水温偏差
分布に対応して,水蒸気フラックス偏差は海洋大陸に向けて収束している。海洋大陸で平年より高
い海面水温が,赤道太平洋では東風アノマリーを伴いかっ南アジア全域での強いモンスーン循環を
もたらし,ベンガJレ湾で、の多い降水量を伴っていると考えられる。インド洋北部では強いモンスー
ン西風に加え,インド半島を回り込みベンガ Jレ湾では南風成分を持っている。以上は年々変化する
実測の海面水温を全球で与えた場合の結果であるが,同様の結果が熱帯太平洋でのみ実測海面水温
を与えた実験でも得られている(図 3)。
SST
30N
o
305
図 3 図 2 (c)に同じ,ただし熱帯太平洋のみ実測の海面水温を与えたラン。
図 4は観測されたインドのモンスーン降水量と全球海面水温との相関係数分布である。降水量の
a
r
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h
a
s
a
r
a
t
h
y(
1
9
8
7
)による 6-9月の積算値で, 1
9
7
0-1986年について計算した。
データは P
まず注目きれる乙とは,インド洋の海面水温がインド・モンスーン降水量と無関係であるととであ
h
u
k
l
a(
1
9
8
7
)や Y
a
s
u
る。一方中部赤道太平洋の広い範囲で負の相関域か見られる。乙の乙とは S
n
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r
i (990)等により指摘されている。さらに乙の図からは,インド・モンスーン降水量がフィリ
Y
a
s
u
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r
i,1
9
9
0
)。
ピン付近の海面水温と有意な正相闘をしている乙とが分かる (
観測 E
されたインド・モンスーン降水量とモデルでシミュレー卜されたインド亜大陸上の降水量の
相闘を計算してみたが,相聞はなかった。つまりモデルではインド亜大陸上の降水量の年々変動は
全く再現できない。乙の乙とは納得できない結果ではない。即ち,モテツレ中のインド亜大陸上の降
水量の年々変動はアラビア海上のモンスーン西風の軸の位置に関係しており,アラビア海の海面水
温が高い年には西風が平年より南下しアラヒ ア海上に多量の降水をもたらしている。一方,西風が
o
平年より北に位置する時に,インドにより多量の水蒸気フラックスの収束をもたらし多雨となって
-51ー
INDO RAINFALL H SST(JJAS>
1970
1986
N=17
90N
60N
30N
o
30S
60S
90S
o
30E 60E
90E 120E
120H 90H 60H 30H
0
図 4 観測されたインドの降水量 C
Parthasarathy.1
9
8
7
)と全球海面水温との相関係数分布。 1970一
1986年の 6-7-8-9月の 4ヶ月合計値による。等値線は 20%,負 I
C斜線。 596の危険率で有意なグ
リッドに点彩。
GCH JJAS SsUTH CHINA SEA
sBS JJAS INDIA
2
。
R
=O
.7
S
ー2
70 71 72 73 7
<
( 7S 76 77 78 79 80 8
1 82 83 8
<
( 6S 86 67 86 69
図 5 観測されたインドの降水量とシミュレートされた南シナ海の降水量のアノマリ一時系列。
6-7-8-9月の 4ヶ月合計値を標準偏差で正規化しである。 1970-1986年の 1
7年聞のデータに
.
7
5
0
よる相関係数は 0
いる (
K
i
t
o
h
.1
9
9
2
)。しかし,実際にインドで観測される降水の年々変動のメカニズムはそれとは
異なっており,ペンガル湾で発生しインド上へ西進してくるモンスーン小低気圧の数と,どとまで
Maoleyand8
h
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.1
9
8
7
)。乙乙で用いたモデ
大陸上を西進してくるかにおおいに依存している (
・
ルの水平解像度は 5 x40 で,モンスーン小低気圧はシミュレマト出来ない。
しかしながら,ベンガル湾上のシミュレートされた降水量の年々変動を見てみると,観測された
.
42の相聞を持つ。との乙とは,モデノレか,ベンガ Jレ湾上で発生し
インド・モンスーン降水量と +0
西進するモンスーン小低気圧そのものは無理としても,その発生傾向・ポテンシャルはシミュレー
ト出来ていると考えられる。さらに興味深いのは南シナ海のモデル降水量である。図 5I
とその年々
変動を観測されたインド・モンスーン降水量ととも偏した。両者の相関係数は+やである。と
れは,図 4で見たように,インド・モンスーン降水量と良い相関を持つ南シず海海面水温変動にモ
デル大気が応答している乙とを示している。
まとめると,モデルはインドの降水という様な精確な地域的降水変動のシミュレーションはまだ
出来る段階にはないが,海面水温の年々変動を与える乙とによって南アジア全域でのモンスーン活
動の年々変動をある程度再現するととには成功している。その結果,海洋大陸近辺の正の海面水温
偏差が,強い南アジアの夏のモンスーン循環に影響を及ぼし,それがインド洋北部での強いモンス
ーン下層西風を伴い,ベンガル湾での水蒸気収束・降水をもたらしているととが示唆された。
4
. オーストラリアの夏のモンスーン
12-1-2月平均でみたオーストラリア・モンスーンのシミュレーション結果について簡単に触れる。
図 6は 1
2-1--2月平均の降水量の 2
0年平均と標準偏差である。下部対流圏にはオース卜ラリアの
北西.1
2
50E. 1
408付近に中心を持つ低気圧性循環が存在する。との循環に対応して,インドネシ
アからニューギニアにかけてのちょうど赤道の南側・オーストラリアの北側の海域では,西からの
水蒸気フラックスがあり,その収束による降水が顕著である。またオーストラリア北東部では南太
平洋からの貿易風による水蒸気フラックスが大陸にぶつかって収束する乙とによって降水帯を形成
している。降水の年々変動はやはり陸上より海上で大きく,特にオーストラリアの北側の海域で長
大である。乙乙では乙の海域をオーストラリア・モンスーン域と仮に呼ぶ乙とにする。
図 7はオース卜ラリア・モンスーン域C12
50E-1350E.1208-008
)の降水量に準拠して作った 1
2
-1ー2月のコンポジット図である。 6-7-8月のベンガル湾のケースと同様に,その場の蒸発量よ
りも水蒸気収束が降水量変動に効いている。オーストラリア・モンスーン域に西から流入する水蒸気
フラックス・アノマリーは,先に述べたオーストラリア北西方の低気圧性循環の強まりに対応してい
る。水蒸気源の分布を見ると,ベンガノレ湾で発散し,北風アノマリーによって赤道を越えて南半球へ
入り,西風アノマリーに合流する成分がある。相聞を計算すると. 8
00E付近で南北両半球側から赤
道へ向けて収束する成分が,オーストラリア・モンスーン域の降水量と有意な高い相闘がある。
-53ー
PRECIPITATION MEAN
DJF
ヨ
ロN
。
305
PRECIPITATI臼N S.D.
DJF
30N
。
305
図6 図 1
1
ζ同じ,ただし 12-1-2月
。
5
. おわりに
観測された海面水温を用いた 2
0年間の大気大循環モデルにおけるアジアの夏のモンスージおよ
0年平均の水蒸気収
びオーストラリアの夏のモンスーンの年々変動について述べた。熱帯域では 2
支からはその場の蒸発量と水蒸気収束が同等の大きさで降水量に寄与している領域であっても,降
水量の年々変動には水蒸気収束の役割が大きい。
6-7-8月のシミュレートされたベンガル湾の降水量は,その場の海面水温変動とは関係がなく
むしろ酋太平洋の海面水温変動と良い関係がある ζ とが示された。西太平洋での平年より高い海面
水温は南アジア全域のモンスーン循環を強め,インド洋北部の下層西風も強化される。乙乙で用い
乙インドで観測される降水をもたらしているモ
たモデルは,恐らくその粗い解像度のために,実際 l
ンスーン小低気圧や地形性降水パターンの再現は出来ていないが,観測された海面水温を与えると
とによって,南アジア域のモンスーンの年々変動をある程度再現するととが出来た。また 12-1-
2月にはオーストラリアの北側の海域で降水量変動か大きく,それはインドネシアの南側の西風水
蒸気フラックス・アノマリーの変動による乙と,また北半球からの赤道を越えた水蒸気フラ
"
.
1 クス
の存在も示唆された。
乙乙では意識的に省いた季節内変動がモデル中にはシミュレートされている。モンスーンのオン
セットと季節内変動との関連や,その年々変動にも興味がある。今後の課題である。
-54-
a
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30N
o
305
b
30N
O
305
o
30E
C 55T
30N
o
305
d
30N
O
305
,
8図 7 図 2ζ 同じ,ただし 12-1-2月でオーストラリア北の海域 025o
E1
3
5oE,1
20
00
8
) での降水
量によるコンポジット。
-55-
参考文献
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s,NewYork,399-466.
時間違志・山崎孝治・谷貝勇・鬼頭昭雄,
1984:気象研究所大気大循環モデル-1(MRト GCM
-I
).気象研究所技術報告第 1
3号
, 2
4
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.
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29-41.
t
r
o
p
i
c
a
lP
a
c
i
f
i
c
.M
p
o
Ed
循環場のアノマリー相関値を使った高・低温出現確率を求める方法
牛来
充*
1
. はじめに
長期予報は決定論的予測可能性を超えたととろを対象とし,或る幅をもった天候状態の出現確率
を求める乙とといえる。乙うした認識から長期予報の確率表現が課題となっている。
筆者らは,さきにアノマリー相関 (
anomalyc
o
r
r
e
l
a
t
i
o
n,ACORと略す)値を用いて循環場の
類似(反類似)とその持続性を検討し(牛来,藤川, H
J
9
0
),その後,宿環場の ACOR値による高
・低温年の分離度から高・低温出現確率を求める手法を開発した。その検討経過を追いながら本手
法を説明する。
2
.
宿環場のもつ予報値へのシグナル
数値予報において,初期値がもっ予報値へのシグナ Jレは時間とともに小さくなり,外部強制力
(境界条件)の影響が次第に大きくなると考えられている。月平均場など時間平均場がもっ予報値
へのシグナ Jレ(前兆〉も同じ傾向を示すであろう。
仮に,乙のような時間平均場がもっ予報値へのシグナルが決定論的予測の限界を起えたと乙ろで
図 1 7-8月平均の北半球 100mb高度偏差合成図の比較(点彩:負偏差)
(a) :翌冬,東北地方が低温の年 0
966,6
9,7
4,7
6,
回
,8
5年)
(
b
) :翌冬,東北地方が高温の年 097
,
17
2,7
8,8
2,8
8,8
9年)
*仙台管区気象台予報課
-57-
殆どなくなるとすれば循環場を使った長期予報の手法は成立しない。だから過去 50年余の長期予
報研究の多くは「ど乙かに必ず前兆があるはず」という「信念Jや「前提」に立っている。筆者も
また同じ前提に立つ。
乙の前提が成り立っかどうか検討する。 1
0
0mb高 度 の 格 子 点 値 の あ る 1
9
9
3年 以 降 の 2
7
年聞をとり,冬(12-2月)の東北平均気温(青森,秋田,宮古.'山形,石巻,福島の 6点平均〉の高
・低温年について調べる。気温の高(低)い方から各 6年とり,それにさきだっ盛夏期(7-8月)の
1
0
0mb2か月平均高度偏差の合成図(図1)を作成すると北半球的に違いが認められる。とくにチ
ベット高気圧の領域 C20-40N.40-140E)に着目すると 90Eの東西で正負の違いが明瞭であ
る。乙のような夏の偏差場の違いが翌冬の気温予報へのシグナノレとなるかも知れないと考えるのは
自然であろう。
循環場の変動の本質は不規則であるといわれている。しかし,多少秩序だったものとして南方振
動やテレコネクションなど波列パターン,シーソー・パターンの存在が指摘されている。
2つの Mapの高度偏差(各格子点)値を
Z;. Zj・共分散を
R
.;j={ Z; Zj} とすれば.ACOR
Cr
i
j
) は次式で表わされる。
r
"
=~-Jム主j
-・
=一
り
{Z,
2}
1
/
2{ZJJ
l/
2
乙の式からも ACORは偏差場の位相のァ
致度を表わすのに適しているととが分かる。
。
刊
「
報値へのシグナ Jレを取り出す可能性をもっ。
上のチベット高気圧域の 6-8月の 100mb
9
7
8年と他の
3か月平均高度偏差を使って 1
値を計算し
各年(1963-1989年)とのACOR
。
。
。
。6
。
x 。
。 x x
x
従って図 1のような現実のパターンがもっ予
。
A
(との場合の 1
9
7
8年のような年を以下では
畠
“基準年"と呼ぶ乙とにする).つぎに 1978/
x
A
79年冬を基準年とし極東域 C20-70N.90
均高度偏差を使って他の各年との ACOR値
ットしたのが図 2である。
x
A
-170E)の冬(12-2月)の 100mb.3か月平
を計算し,前者を績軸に,後者を縦軸 l
乙プロ
x
x
畠
O
図 2 夏と冬の ACOR散布図 0
9
6
3-1
9
8
9
/
9
0)
基準年:夏 1
9
7
t
s年 6-8月,冬 1
9
7
8
/
8
9年
1
2-2月
績納:チベット領繊 .6-8月 100mbの
ACOR
縦紬:極東威 .
12-2月 500mbのACOR
0:冬高温. x 冬並温..:冬低温の年
乙の散布図には,各年冬の東北平均気温を
高・並・低温年を各 9年に区分し,識別しで
ある。ただし,基準年の 1
978/79年 冬 は 暖 冬
r
+
1
n
o
である(基準年は右上の枠外に記す)。
乙の図を上下にみると高温年はプラス側に多く,低温年はマイナス側に多い。基準年の冬は暖冬
であるから,冬の極東域のパターンが基準年に似て (ACOR値がプラスで大)いれば高温,逆位
相のパタ…ンに近ければ低温という分布である(同時関係)。つまり,類似の概念どおりである。
左右にみると一見して上下方向の分離より悪い。しかし,翌冬の高温年は夏のチベット高気圧域の
ACOR値がマイナス(左)へ偏っている(ラグ関係)。とのような ACOR値の偏り方も夏のパタ
ーンの類似がそれに続く冬の高・低温の予報に利用できるかも知れない。
3
. 反転する場のシグナル
図 2とは異なった分布例を示す。図 3-aは,夏の 2か月平均高度を使って計算した ACOR値
の散布図である。期間および続く冬の高・並・低温年の識別は図 2と同じで,基準年,縦・横軸は
乙分布しているが, ACOR値の散布から高温年と
図の説明どおりである。乙の例の低温年は双極 l
低温年とは破線で示すようにおおまかに分離で、きる。
図 3-bは,秋の 2か月平均 500mb高度の ACOR散布図で,翌年 7-8月の平均気温をみた
ものである。期聞は同じで,縦・横軸,その他は図の説明どおりである。乙れをみると高温年が A
CORの絶対値の小さな所に偏っており,低温年は ACOR絶対値の大きい所に偏っている。
図 3のような例は少なくなし、。そ乙で,続く冬の気温が低温であった年を次々に基準年にとり,
各年との ACORを計算し. 9個(ただし基準年になった年は 8個)の ACORの絶対値の平均を
求めた。図 4-aはその散布図で,横軸には各年の冬の気温偏差をとってある。図 4-bは,続く
(a)
(b)
r
A
a
x
且5
、
.
¥
、 o
、 史
、
、x
& 、
0.
5
X
,〆
X
0
'
,
,,,
,
,
¥
。
r
••
,
,
A
'
0
.
5
。
t0
2
p
X吹
X
、
‘
。
X
〆 〆〆
〆
aX
A
。A
o~ xx
。
X
a
s
A
X
O 、
。
。
0
5
Q5
同
血
A
-05
。
~~
O
S
r
図 3 夏と冬の ACOR散布図 [
(
a
):基準年 1
9
7
6年 7-8月,横軸同月 1
0
0
m
b北半球の ACOR,縦軸 同
月5
00mb極東域の ACOR.記号は翌冬気温. (b):基準年 1
9
6
7年 10-11月,横軸 同月 500mb高
緯度の ACOR.縦軸 同月 5
00mb西半球の ACOR,記号は翌 7-8月気温,その他図 2と同じ〕
「
1.
0
1.
0
(
b
)
(
d
)
0.5
.
.
•• •.
•
•
•
••
•
•ー
.
• •• • ••
0.5
w
+
2
C
C
E
O
-司五
ー
2
4
U
円
o
.
・.
・
.
ー
.ー
•, ・
.
、
-、
・
••
O
+2
図4 7-8月平均 100mb高度の ACOR絶対値{縦紬)と翌冬の東北平均気温偏差(績
紬)との関係
(
3
):翌冬低温, (b):翌冬高温,の各 9年を基準年としたときの ACOR約対値の平均
4,8
5年,翌冬高温 6
3,6
8,7
1,7
2,7
8,
翌冬低温:1
9
6
6,6
7,6
9,7
3,7
4,7
6,
回
,8
8
2,8
6,
邸
,8
9年
1
冬が高温であった年を基準年として計算した同様の図である。
図 4-bで は 各 年 (2
7年〕とも殆ど同じ値で区分はできないが,図 4-aをみると高温年と低
温年で ACORの絶対値が違う。乙の乙とは基準年によっては夏の高度場の ACOR絶対値の違い
によって翌冬の高・低温が分離される乙とを示す。
つまり,図 2のような通常の類似の概念で高・低温年を分離できる場合(通常分布型)と図 3の
ような ACORの絶対値で分離できる場合(反転のシグナル,絶対値分布型)の 2種類があり,双
方とも高・低温年の分離さえ良ければ予報へのシグナルになりうると考えられる。
4
.
高・低温年の分離
乙の手法で重要な乙とは ACOR値の散布図上で高温年と低温年とが予報上有効なほど分離され
ているかどうかである。散布図は多次元でもよいが,説明の容易さから 2次元で示す。当然の乙と
ではあるが通常分布型の散布図はそのまま用い,絶対値分布型では絶対値で描き直した散布図を考
え,分離の度合をみるととになる。
分離の度合の良否は,高温年の重心付近に高温年が集中し,低温年の重心付近 l
と低温年が集中す
る度合で決まる。具体例は後で示すが,高(低)温年の重心からの各高(低)温年までの距離の標
準偏差で描いた円内に含まれる高(低)温年の割合を従属率,含まれない低(高)温年を排他率と
すれば,従属率,排他率とも 50%未満の場合は予報上有効とはなりえない。またその 2つの円の
AU
。
戸
重なりが小さいほど分離が良いわけである。重心間距離/(標準偏差の平均)(以下,重心間距離と
v
--nau
仇
-4
UR.
,
l・E
PL
a
w
-
2 合弘
1 準例でよ分精く長率るがお気る叫
5 基別安に'報し。他すのにのあ到
'場日
ばい日時の判目験が予厳る排にる分温守山間
れし叫なりのが実いばをな'上。な区気
まなれ件に率ヨうとの均扱
す等 V 叩重象
up
阪四時恥♂閉山蜘山郁ば抑峨似切明陥れ仰蜘
をの凶距るがば。のれ件く予でを理前・(ズ
)円島聞ないれう際け条悪ば報限無の並月イ率
ず町一,心重なみろ実なのをれ予下はそ・るノ他
略つに重必はをあら離度す期のの高け候排
DAIlY HAXIMUH TEMPERATURE
SUHHER
100
50
O
.I
0.0
0.2
0.3
目
。4
0.5
fREQUEHCY(CYClES/DAY)
図 5 夏の北海道 2
2か所での日最高気温の s
p
e
c
t
r
u
m
の各年の平均値(細線)とその 3
0年平均(太線)
[山元龍三郎ほか
(
1
9
8
4
)による〕
ム﹂
率
属
従
円
〆
“
る
わ
変
れ
入
個
AM
年
温
低
並
官同
つ
て
よ'
K る
ノ'り
ズあ
ィで
候か
気かい
b
山元ほか (
1
9
8
4
)は北海道 2
2個所の日最高気温平均の 3
0年のスペクトル解析から周期 3-4日
の所に明かなピークが認められ(図 5),気候ノイズを 1次のマルコフ過程として取り扱う乙との困
難さを指摘している。そ乙で Lowp
a
s
sf
i
l
t
e
r による気候ノイズの見積りを提唱している。
乙乙で,例えば 7日の Lowp
a
s
sf
i
l
t
e
r をかけた値とはどういうものかを考える。それは暦どお
りの月(旬)平均値のほかに,前後に 1-3日ずらした 7個の「月(旬)平均値」を考えると,そ
の重心に相当する値と考えてもよい。乙の 7個の重心で区分したものと, 5個
, 9個,…, 1
5個の
重心で区分したものとを比較した。その結果は図 5から推測されるとおり, 7個の重心で区分した
ものでおよそ代表できる。
しかし高・並・低温年の割合を正確に 3:4:3にとると,
r
しきい値J付近の僅かの差で、区分
されるととも起乙る。その僅かな差にシグナルを求める乙とも意味がない。実際に 7日程度の Low
i
l
t
e
rをかけた値をみると高(低)温年は離散した値をとり,並温年の値は連なる傾向がある。
p酪 sf
1951-90年の 4
0年間の 1月の気温でみると離散した高低温年は各 9年か各 1
0年である。以上の
-61ー
乙とから 3:4:3にはと,.:.;'わらず,離散した値のと乙ろで区分する方がよいと考える。
循環場の反転については偏西風や熱帯対流活動の季節内変動, QBOや ENSOなどの周期変動が
関連しているとも考えられる。従って,循環場の時間変動にも留意し,それらの変動のシグナノレを
取り出すには複数の期聞をとる以外にないと考えた。
5
. 計算手順と出現確率の求め方
(
1
) 資料は上記の方法で区分した
高・並・低温データおよび緯経
度1
0
度メッシュの北半球高度偏
差値 (
500mb,
100mb)である。
500mb高度の平年値はさし
あたり 1
951-1980年(100mb
高度は 1
963-1990年平均)を
用い,気温は青森,秋田,宮古,
山形,石巻,福島の 6点平均の
1951-1990年の4
0年平均とし
た
。
(
2
) ACORを計算する領域は循
環場の特徴や波列を十分含みう
図 6 アノマリー相関を計算した領威
るほど広くとる必要がある。
それには準定常場の分析結果
(木元, 1
9
8
9,金谷, 1
9
8
ω などを考慮し,図 6
1乙示すチベット高気圧域を含む極東域(20-60
N,60-170E),ユーラシア・パターンを含む東半球域 (30-70N,20W-150E),PNAパタ
50N以北)の 4
ーンを含む西半球域 (30-70N,160E-30Wλ 極うず変動を含む高緯度域 (
領域のほかに北半球全域 (
30N以北)の計 5領域をとる乙とにした。
(
3
) 手順は,フローチャート A ,B (図7)のとおり。
①
まず,従属資料年と予測対象年,平均場をとる 2つの期間(例えば 4月 1-30日と 5月 1-30
日,期聞は多少重なってもよい)または 2つの層を指定する。
@
つぎに計算領域,基準年を選択する。それらはそれぞれルーフ"にし基準年が一巡したら次の領
域l
乙移る。
@
すべてのケースについて ACORの計算をお乙ない計算機のなかで平面図にプロットする乙と
を考える。高・並・低温年は識別し,その散布図上で高・低温の分離の良否を判別し,分離の基
。
戸
準をクリアしたもののみ採用する。
④
その散布図上で予測対象
年の ACOR値の近傍にあ
る高・並・低温年数から予
測対象年の高・並・低温出
f
l
o
mc
h
a
r
tA
S
t
a
r
t
@
現確率を求める。
⑤
f
l
o
mc
h
a
r
tB
J
レープによって,すべて
の従属資料の年を基準年と
し,すべての領域の組合わ
せで計算する。またシグナ
Jレがあると恩われる期聞は,
平均場を半旬づ.つずらして
前に湖りながらシグナルを
とりだし,それらから求め
た確率値を平均して予測確
率とする。
End
以上の乙とを実列で説明す
図 7 本手法の計算フローチャート
る。図 8の右にあるように従
3年,基準年は 1976/77年冬,
属資料は 3
1
2月平均場と 1月平均場を使って, 1
9
9
1年 7-8月の
の気温の高・並・低温出現確率を求めるケースの一例である。横軸は 1
2月平均場の極東域の AC
OR値,縦軸は l月平均場の西半球域の ACOR値で,中心は 0,周囲の枠は ACOR値=土 lの
線である。高,並,低温数はそれぞれ 1
1個,図中の白丸は高温年,黒三角は低温年である。 1
9
7
7
年は低温で, ACOR値は右上隅に位置する。また乙の図は,見易くするため並温年は省いてある。
990/91年の ACOR値である。
*印は 1
乙の図をみると高温年は第 1象限に多く,低温年は第 3象限 i
乙多くなっており,一見して通常分
布型である乙とがわかる。 A は 1
1個の高温年の重心からの距離の標準偏差で描いた円, Bは基準
年を除く 1
0個の低温年の重心からその標準偏差で描いた円である。円 A1<:含まれる高温年(従属
/11=7
3勉,含まれない低温年(排他率)は 9/11=80S
ちである。同様に,円 Bをみる
率)は 8
と従属率は 7
0~ち,排他率は 73 弘また重心間距離も 0.79 ë',分離の条件をクリアしているとする。
つぎに乙の図を使って 1
9
9
1年 7-8月の高・並・低温出現確率の求め方を説明する。 Cは 1
9
9
0
/90年の ACOR値(*)を中心とする基準年を除く 3
2年の半数(16個)を含む円である。円 C
内の白丸は 4個で高温出現率は 4/16=259
ぢ,同様に低温出現率は 7/16=449
ち,従って並温出現
率は 3 H
ちである。従属資料の高,並,低温出現率はそれぞれ 3
3S
ちであるから高温出現率はそれよ
-63-
.
.
1
9
7
6年
5
2
/
5
3-84/邸 年
期間
12-1月
目的変数 翌 7-8月気温
横軸
500mb極東域
縦軸
500mb西半球
通常型
標準偏差 =
0
.
5
1
高温年 従属率 =0
.
7
3
排他率 =
0
.
8
0
標準偏差=0
.
4
9
低 温 年 従 属 率 =0
.
7
0
排他率 =
0
.
7
3
グループ間距離 =0
.
4
0
距離/標準偏差 =
0
.
7
9
絶対値型標準偏差=
0
.
3
0
高 温 年 従 属 率 =0
.
5
5
排他率 =0
.
5
0
標準偏差 =
0
.
2
9
低 温 年 従 属 率 =0
.
5
0
排他率 = 0.
4
5
グループ間距離 =
0
.
0
9
距離/標準偏差 =
0
.
3
0
基準年
従属資料
。
&
図 8 ACOR
散布図から高・低温の分離計算と高・低温出現確率の求め方を説明する図
小さく,低温出現率は 1
1
9
ちも大きい。なお,円 Cは全年の 1
13を含むようにとってもよい。
り 8%
6
. 予報実験結果
(
1
) 予測可能性
①
分離の条件を一定にし,その条件をクリアした数の変化をみたのが図 9である。予報発表日は
図の矢印の所で,それまで半旬ずらして(図で、は左から右へ) 1
8凹計算したときのものである。
1月の図で丸印を付した所は左から 9月(前)と 1
0
月(後), 1
0
月(前)と 1
1月(後)の平均場を使って
計算したもので,資料は 1950/51-89/90年,高度は 500mbである。従って 40年 x(
前 5X後
5の領域)= 1000ケース中,分離の条件をクリアした数(自:通常分布型の数,黒:絶対値分布
型の数)である。
1月をみると分離の条件をクリアした数が予報月に近ずくほど多い。乙の数を予測可能性の指標
とすれば,単純増加ではないが予報対象月が近ずくほど予報可能性が大きいといえる。 8月は 1
月に比べて少く
1月より予測困難といえる。また 8月の予報では 5-6月頃,盛夏期(7-8
月)の予報では初冬に,冬 CI2-2月)の予報では梅雨から夏に比較的大きなシグナルがある。
乙れらは循環場の季節変動特性として注目される。
通常分布型と絶対値分布型の割合をみると寒・暖候期予報では絶対値分布型の割合が多い。ま
-64-
困
{
8
0
6
0
2
0
1
1
1
1
3
0
門
1月の予報の場合
30日平均場使用
矢印:1
2月 1
6日
2
0
1
1
1
1
unll 1111111111
8月の予報の場合
30日平均場使用
矢印: 7月1
4日
1
0
円
。
I
W
.
I
ιM
凪刷且I
凪u
E
.
I
.
I
.
U
.
I
.
U
. 。
T
1
0
0
8
0
6
0
4
0
2
0
冬予報の場合
45日平均場使用
矢印:1
0月 1
7日
1
0
0
8
0
6
0
4
0
2
0
盛夏期予報の場合
30日平均場使用
矢印: 3月 5日
。
。
図 9 予報発表日(矢印)まで半旬毎I
C計算した 1
8回の予測値計算で,分離の基準(従属率,排他率
とも 55~弘重心間距離 0.75 と 0.90) をクリアした数の時系列図(白:通常型,黒:絶対値型)
た 1月は近くなるほど通常型が多く,前々月や前月との持続性が大きい乙とを示唆する。
②
つぎに分離の条件を変えてみる。従属率,排他率を 0
.
5
0に緩めると,当然の乙とではあるが,
.
5
5
1乙上げると分離の条件をクリアする数が
予報はランダムに近くなる。逆に従属率,排他率を 0
極端に少なくなる。重心間距離の基準を変えた場合も同様である。
そとで気象庁長期予報課の多変量解析による統計モデルの開発(青木ほか. 1
990)で予報のス
キルがあるといわれる月別予報では 6か月前(旬別予報では 6旬前)までの高度場を使って,分
離の条件をクリアする数が 1
0個程度(全ケースの Hち)は出る条件を求めた。その結果によると
0個未満なら従属率,排他率とも 0
.
5
0
. 高・低温年数が各 10-12
個なら 0
.
5
5
高・低温年数が各 1
程度,重心間距離は通常分布型で 0
.75-0.85. 絶対値分布型では 0.90-1
.00程度でよい乙とが
分かった。
0
年の期聞をとった 1月予報で,従属率,排他率とも 0
.
5
5
.重
平均的な分離率を求めるために 4
.
7
5
. 絶対値型 0
.
9
0の条件をクリアした 1800ケースをランダムにとり,その
心間距離は通常型 0
平均の従属率,排他率を求めると 5
8
S
ちであった。予報には最低5
0ケースは平均するので5
0ケース
ちであった。乙れは従属資料による適中率の目安になる。
毎の平均は 55-72S
同様に個々のケースでの各年の高(低)温出現確率の標準偏差を求めれば,平年の確率。 O~ち)
-65ー
表 1 本手法による高・低温出現確率予報の適否分割表(分離の条件は図 9
と同じ,使用した平均場の期間は表の上に示す。小丸は独立資料の結
からの偏りの目安と
なる。全数の 1
12か
果)
らとった場合の標準
8月予報 (
3
0日1
2回)
2月初日 -6月1
4日
8月予報 (
3
0日6回)
2月2
0日-5月1
5日
偏差は約 8~払全数
8月予報 α0日1
8
回)
2月2
0日-7月1
4日
の1
13からとっ t
:
.
・
場
高
合は約 13%で,乙の
実
況
出現確率の振幅の標
高
5 6
並
低
民
{
高
実況
手法による高(低)温
並
低
並
高
5 6
0 3
5 1
並
6
2。 8
低
高
実
況
9 3
並
高
9 2
並
2 1
2 4
準偏差はおよそ 10%
という乙とになる。
一
一
8
3
4 7。
低
0
低
だが, 60-100ケ ー
盛夏予報 (
3
0日1
2回)
9月1
8日-1月1
0日
1月予報 (
3
0日1
2回)
7月2
0日-11月1
6日
スの平均値では,そ
れぞれ約 4%. 約 6
高
%と小さくなるので,
るときには,標準偏
高
7。 4
並
4 1
3
{
g
;
高
実況
実況
乙れらを統一して見
並
冬期予報 (
4
5日9回)
5月2
6日-10月 2日
低
並
高
高
8。 2。
並
2 1
00 20
実
況
高
並 低
8 2
。
0
0
。
1 1
2。 1
並
差で規格化し,それ
1
0
低
0
倍すればよいだ
を1
低
10 90
低
2。 8
白
L
.
.
.
ー
ー
ろう。
(
2
) 予報精度
従属資料を 1950/51-83/84年とした場合と 1950/51-89/90年にした場合の 2種類で検証
した。計算時間(1回の計算時聞は約 1時間)の関係で 1,2,7
,8月と冬 (]2-2月)と盛夏
(
7
-8月だけ計算した。乙乙での数値は規格化しない高温出現率と低温出現率との差である。
その大きさの1
1
国序で従属資料の高(低)温年数だけとり,適否をみたのが表 lである。表中の数
60日平均場使用
(夏)並
-・・・・
。o 0000
•
⑥
. oo
億 . 高
0
。
⑨.⑥・
@@O
⑥⑥⑥ .@O@@@
.
.
L
1
1
I I I I I
一1
5
0
1
5
30日平均場使用
(夏}並
••
低 . . 高
.
⑥
00
0
o
低 ・
00
000
⑥
.o 。
1
5
高
O@O
⑨⑨⑨⑥.. @ @ O
ー1
5
図1
0 ACORによる高・低温出現確率予報値(横軸)と実況の頻度分布(19
5
1
9
1年)
.
C
以上,分離の条件は図 9と同じ〕
小丸:並温,黒丸:低温,二重丸は偏差土1.0
-66ー
45日平均楊使用
.⑥
⑥⑨. O@@
0
.⑥⑨⑥ @@@O @ O
1
5
(冬}並
0
(白丸:高温,
%
字は従属資料の結果,小丸は独立資料の結果で=ある。
表の上に示した月日は予測に用いた平均場の期間で,括弧内には連続した 2つの平均場の長さと
半旬ずつ湖った回数である。
ω 月別予報では従属資料の期間を 1950/51-1983/84年とした場合の適中率は,従属期間も含
めて 60%以下と悪い。
従属資料の期聞を 1950/51-1989/90年とした場合の予報成績のみ示す。 1月の予報は 2か
月前で 75言語と良い。 8月は 2か月前で 55必と悪いが,直前は 70~ちと良い。 2 月と 7 月の表は省
2か月前で 55- 6
5S
弘 直 前 で も 60S
ち程度であった。
略したが
しかし,乙の表にみられるように 2か月前や直前の予報では低温の予報が高温になったり,そ
の逆になる乙とは少ない。
冬(12
-2月)と盛夏(7-8月)の予報では従属資料を 1950/51-83/84年とした場合(表1)と
②
1950/51-89/90年にした場合を比較すると成績は同じ程度であった。乙の表をみると,冬,
盛夏とも適中率は 7
0
S
ち以上で良い。乙の手法では従属資料でも並温年は分離の際に使っていない。
長期予報では独立資料を多くはとれないので,並温年をなかば独立資料とみても良いだろう。
@
図1
0
1乙示したのは高・低温年の予想確率偏差と実況の気温偏差との関係である。乙れをみると
予測確率値と気温偏差とは関係があり,高・並・低温年の分離はよい。しかし,もともと 3階級
凶子で計算しているため「やや高(低)い」年と「かなり高(低川、 J年との分離はできない。
.
.
.
.
.
.
山
町
(a)
(b)
H
‘
図 11 1
9
9
0年 1
2月の前半 (
a
)と後半 (b)の 500mb高度と高度偏差
0m)
(斜線:負偏差域,等値線間隔:高度は 100m,偏差は 5
-67ー
(
3
) 予報の安定性
1
1
ζ
1
9
9
0年 1
2月首伴の 1
5日平均図 (a)と1
2月後半
準定常場の遷移は数日 -1週間で進行する。図 1
の1
5日平均図(
b
)を示すが,乙のように僅かの期間で偏西風の蛇行の様子も高度偏差の分布も大き
1991年 7月後半と 8月後半の平均場も大きく変化し,日本の天候も
く変化する。図は省略するが .
変わっており,準定常場の遷移はしばしば起乙っている。
乙のような高度偏差場(アノマリー)の変化と天候の変化は,本手法による高・低温出現確率値
にも影響し,半旬ずらしで計算された値を見ても急 l
乙大きく変る乙とがある。そのような遷移過程
の場のシグナルも否定できない。それど乙ろか,かえって重視しなければならないのかも知れない。
回の計算結果の平均を予則値としている。
乙のため,図 9や表 1のように半旬ずらしの 6-12
図1
2は 6
0日平均場を使って 7-8月の 2か月平均気温を予報したもので,確率値の集計期聞は
図の説明にあるように若干ずらしたときの 3例である。とれは 1951-91年の実況と高・低温出現
oとを時(年)系列の形式で図示したものである。ずらしたのは 3半旬または 6半旬
確率差(予測
9
6
2
.6
3
.7
5
.8
5
年
で,集計期間の多くはダブッテいるので同じ傾向の年は多い。しかし,例えば 1
は(乙の 4年は実況で高温か並温年)は実線と鎖線が離れており,実線と実況とは違っている。
集計期聞によって予測値が変動するような不安定な年についての検討はとれからである。
2
5r%
1
5
5
5
1
5
5
1
v
7
1
6
1
•
年
8
1
9
1
図1
2 本手法で計算 1
<
:使う平均場の期間を 1
5日づつずらしたときの高,低温出現確率差の時系列図
0日平均場を使用,実線は 9月1
3日-2月Hl. 点線は 9月2
8日-2月1
9日,斜線は 1
0
〔連続した6
月1
3日-3月 5日の各 6回の平均,従属資料 :
1
9
5
0
/
5
1
8
3
/
8
4年,縦紬:翌年 7-8月平均気
温の予測での高,低出現確率差. 0:翌年 7-8月高混の年,・:同 低湿の年(実況))
1
. まとめ
循環場を使った長期予報の予報法は,循環場のランダム的な変動のなかからシ夕、、ナ Jレをどうとり
出すかにある。乙の手法は,上下または前後の
2つの平均場のアノマリー相関値を使ってシグナ Jレ
-68ー
をとり出し,予測対象年の高・低温出現確率を求めるというものである。乙の手法の特徴は通常の
類似のシグナルと循環場の反転のシグナルとをあわせて取り出すと乙ろにある。
統計(確率)的手法の評価は多数例でのスキルによる。従って,乙の僅かな結果から議論する乙
とはできないが,夏や冬の予報では多数例の検証はのぞめないので,あえて言えば,冬季と盛夏期
の予報精度は良いようである。月別予報の成績では,月平均気温が季節内変動の位相によって大き
く変る乙と,もともとの高・低温年の区分の仕方,さらには乙の手法の限界なども考えられる。旬
別予報を含めた多数例の検証結果は別途報告する予定である。
アノマリー相聞はパターン類似をとるのに最適とはいえないし,乙うしてとり出したシグナパペが
境界条件によって次第にかき消されてしまうという乙ともある。
計算機の発達で,今後さまざまな予測手法が開発されるであろうが,その 1っとして紹介しお。
読者のど指導,ど批判を乞うものである。
最後に,昨年までの共同研究者でありプログラム開発者でもある藤川典久技官(現気象庁長期予
報課)とその後プログラムを改良した仙台管区気象台予報課の村上雅規技官に感謝する。
参考文献
青木孝,栗原弘一,上野達雄,渡辺典昭,小泉耕,三浦芳敬,前田修平. 1
9
9
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牛来
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9
0:循環場の類似と持続性・再現性について,平成 2年度仙台管区調査研
究会資料 165-167
牛来
充. 1
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金谷年展. 1
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ッター 27-2.34-41
木本昌秀. 1
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:
m
gaN
g
o
i
eK
a
z
a
d
i
.星 合 誠 . 1
9
8
4 :気候の診断的研究,京都大学理
学部付属気候変動実験施設研究成果集 0991年版) 1
24-127
nhu
中部太平洋トラフの東西分裂について
横田寛{申*
要 旨
季節内変動に伴う
%200
の発散中心がフィリピンまたはフィリピンの東に達すると,同じ半旬に
中部太平洋トラフが東西に 2つ -3つに波打って分裂する。その約 2半旬後には日本の南の海上の
北緯 3
0度 付 近 ζ
i 対流活発域が形成される。梅雨期には傾圧帯に伴う雲域として振舞うが,夏期 l
乙
は傾圧帯とも区別される収束域で,台風の発生にも寄与している。
1
. はじめに
中部太平洋トラフ(山下. MPTと略する)は, 日付変更線付近の対流圏上層によく形成される
大きなトラフで,通常は lつのトラフである。 MPTの南西端で切り離された MPTの一部が上層
寒冷低気圧として西進して日本付近に達したり.偏東風波動と重なると台風が発生する乙ともある。
MPTの動向は,日本の特に夏期の天候に影響する度合が大きい。
日本付近 l
乙西進してきた上層寒冷低気圧が MPTから切り離された時期まで湖ってみると,それ
まで lつのトラフであった MPTが一時的に東西に波打って複数個のトラフに分裂していた。そ乙
で MPTの東西分裂に着目し,その発生機構を調べる乙と,および MPTの東西分裂と熱帯域の対
流活動の関連を探る乙とが本研究の目的である。
2
. 研究の方法
1
9
8
8年から 1
9
9
1年までの 4年聞について調査した。半旬平均全球 200hPa面天気図を用いて,
MPTがはじめて東西に分裂した半旬を目視により抽出し. 3
5例を抽出した。
0
0hPa面速度ポテンシャ Jレ(%200) の発散中心の位置によって季節内変
さらに,半旬平均全球 2
動の動きを追跡し. %200の発散中心位置と分裂した MPTの位置との関係を調べた。さらに,日本
の南の海上北緯 3
0度付近の半旬平均上層雲量 l
乙着目し .ITCZとは別に日本の南の海上で収束域
が形成される時期を調べた。
3
. 結果
3-1 春 (5-6月)と秋 (9-10月)の特徴
3-1-1 季節内変動に伴う%200 の発散中心と MPTの分裂位置
*大阪管区気象台
-70-
(
a
)
X200 の発散中心がフィリピンの東(東経
130-140度付近)にあるとき (6例)
一覧表を表 1
1:示す。 6例全て. MPTは東経
表 1 MPTの東西分裂位置の一覧表
1
8
0度 付 近 と 西 経 1
5
0度 付 近 の 2箇 所ζ
l東西分裂
春,秋
した。乙のとき,日本ではトラフ場が 5例,逆に
夏
リッジ場が l例あった。
(
b
)
X200 の発散中心がフィリピン(東経
1
2
0度付近)にあるとき (9例)
MPTは 東 経 1
7
0度 付 近 と 西 経 1
5
0度 付 近 の 2箇所に東西分裂した。乙のとき,日本は卜ラフ場
が 6例 , 逆 に リ ッ ジ 場 が 3例あった。
(
c
)
X200
の発散中心がフィリピンから遠い所(東経 1
6
0度付近)にあるとき (2例)
3-1-2 具 体 事 例
9
8
9年 第 30-36半 旬
例として. 1
60E
(
5
1
1
0
0
E
1
4
0
E
1
8
0
E
1
4
0
W
1
0
0
W
26-6/29)の 200hPa面 の 変 化 を 図 l
に示す。第 3
2半 旬 (P=0)で MPTが
5
0度 と 西 経 160度の東西に分裂し
東経 1
p=ーl
た。 P=Oは東進する季節内変動に伴う
X 200 の発散中心がフィリピンに達した時
である。乙の期間は梅雨期間であり,等
高度線の混んでいる傾圧帯が日本付近ζ
l
南下している。乙の 2半 旬 後 の 第 3
4
半旬
p= 1
(
P=2)で 東 経 1
5
0度,北緯 2
0- 3
0度
に上層雲域が現れた。
そ乙でこの期間の上層雲量の変化を図
2
1乙示す。 P=-2と P=-1および P=
1の 東 経 1
4
0度にある雲域は,乙の時南
下していた梅雨前線の雲である。梅雨前
線 の 南 下 の よ う す は 図 lで傾圧帯が日本
の東で南下している乙とでも示されてい
5
5度 の 雲 域 は , こ の
る
。 P=Oの 東 経 1
時東西分裂した MPTのうち西側のトラ
フに伴う霊域であり. P=1ではこの雲
域の一部が梅雨前線の雲と重なり
P=
4
5度に西進している。そし
2で は 東 経 1
図
1
9
8
9年第 3
0-3
6半旬(5/26-6/29)の 200hPa
面の時間変化
0度までの各半旬平均図を積み重ねて
赤道から北緯4
ある。 MPTが東西分裂した第 3
2
半旬を P=0とし
半旬は l
こから下 1
1:.経過する。実線は等高度線で間隔
は40m
ゎ破線は MPTo 黒丸は発散の中心。 P=2
での中央部の陰影はとの時に現れた上層雲級を示す。
1
ζ は東経 1
3
0度で再び梅雨前銀と重なった。
て P=3
一 71-
80E
100E
1
9
8
9年 第30-
1
2
0
E
3
6
半旬 (
51266
/
2
9
)の上層雲
p=ー2
量の時間変化
0
度から
北緯 2
0
度までの
北緯3
各半旬平均図を
積み重ねてある。
MPTか東西分
2
半旬
裂した第 3
を p=oとし,
半旬は上から下
に経過する。点
ち
を
,
線は雲量 10$
0
$
ぢ
陰影は雲量3
以上の領戚を示
す
。
p=ー1
p= 0
p= 1
p= 2
p= 3
p=4
3-2 夏 期 ( 7- 8月)の特徴
3-2-1 季節内変動に伴う
X200の発
6
0
E
1
0
0
E
1
4
0
ε
1
4
0
W
1
0
0
W
散中心と MPTの分裂位置
(
a
)
X200の発散中心がフィリピンの東
(東経 130-140
度付近)にあるとき (
4例)
MPTは東経 1
8
0
度付近と西経 1
5
0度 付
近の 2箇所に東西分裂した。乙のとき,
日本はリッジ場であった。
(
b
)
X200 の発散中心かフィリピン(東
経1
2
0度付近)にあるとき(7例)
MPTは東経 1
1
)
0度付近と東経 1
8
0度
p= 1
5
0度付近の 3箇所に東西分
付近,西経 1
裂した。乙のとき.日本はリッジ場が 5
例,逆にトラフ場が
(
c
)
2例あった。
X200の発散中心がフィリピンか
ら遠い所(東経 80-100度付近)にある
とき
p=2
(
2例)
3-2-2 具体事例
9
9
0年第 3
9-4
5半旬 (7
例として. 1
/10-8/13)の 200hPa面の変化を図 3
に示す。第 4
2半旬 (P=0) で MPTが
p=3
図3 1
9
9
0年第 3
¥
J- 4
5半旬 (7/10-8
/1
3
)の 2
0
0
h
P
a
面の時間変化
0度までの各半旬平均図を積み重ね
赤道から北緯4
2半旬を P=Oと
てある。 MPTが東西分裂した第 4
し,半旬は上から下に経過する。実線は等高度線で
間隔は 4
0mo破線は MPT。黒丸は発散の中心。 P
=2での中央部の陰影はとの時ζ
l現れた上層雲域を
示す。
5
0度と東経 1
8
0度,西経 1
5
0度の
東経 1
L
内
nl
3つに東西に分裂した。乙れも季節内変動に伴う
X200 の発散中心が東進してフィリピンに達した時
である。
1
2
0
E
1
4
0
E
1
6
0
E
1
釦E
160W 図 4 1
9
9
0年第394
5半旬 (
7
/
1
0-
P
=
3
8
/
1
3
)の上層雲
量の時間変化
北緯2
0
度から
北緯3
0
度までの
各半旬平均図を
積み重ねてある。
MPTが東西分
裂した第4
2
半旬
を p=oと
し
,
半旬は上から下
1
1:経過する。点
線は雲量 10%を
,
p=ー2
p=ー1
p= 0
p= 1
p= 2
陰影は雲量30~ぢ
以上の領域を示
す
。
乙の期間の上層雲量の変化を図 4
1
ζ 示す。 MPTが東西分裂する 3半旬前 (P=-3)の東経 1
6
0
度の雲は,図 3
1乙見られるように日本の東で蛇行したトラフによるもので,東経1R0度の雲が MP
T
I
ζ 伴う雲域である。 P=Oでは分裂した西側の MPTI
r.伴って東経 1
5
0度に雲域がある。乙の東
経1
5
0度では 7月 2
6日に台風第 8号が発生している。 P=1では乙の雲域が西進して東経 1
4
0度 l
と
達している。この東経 1
4
0度の雲は 7月 2
9日に発生した台風第 1
0号の雲として現れている。東経
1
2
0度の雲は,図 3のようにフィリピンで対流活動が 2半旬続いて活発となり,そ乙から北東に延
びる雲域である。 P=2には西進した雲域か日本の南に達し,一方 P=1で東経 1
2
0度にあった対
1号が発生した。
流活発域がゆっくり東進したものとが重なり, 8月 8日には台風第 1
夏期は日本付近の傾圧帯は北緯 4
0度似北で図 3の領域外 l
とある。したがってとの雲域は傾圧帯か
らは切り離されている。なお,乙の上層雲は,上層寒冷低気圧の動きに一致していた。
3-3 寒候期(11月-4月)
この場合は 5例あった。 MPTは西経 1
7
0度付近と西経 1
4
0度付近に東西分裂していた。西半球
であるので,日本への影響は見られなかった。
3-4 亜熱帯の収束域の形成
MPTが 2つ -3つに東西分裂した約 2半旬後に,日本の南の海上の北緯 20-30度付近に上層
雲量が増大した。乙れは北緯 1
0度付近にある ITCZとは明確に区別できた。しかも乙の位置は,
梅雨期の場合は傾圧帯の位置と重なる乙とが多く,夏期は傾圧帯の位置とは遠く離れている。乙の
ような傾向は全ての例について同様にみられた。
9
8
9年第 3
4半匂の上層雲量を図 5
1乙示す。 MPTの東西分裂による
そこで,梅雨期の例として 1
雲域は, ITCZと梅雨前線帯の中聞にあるが,梅雨前線帯から完全に分離してはおらず,北端では
-73-
120E
梅雨前線帯の雲につながっている。この半
140E
乙示す。日本
旬の 850hPa面平均風を図 6I
の南の北緯 3
0度付近では下層強風域が顕
40N
著である。これは E熱帯高気圧の縁辺を回
る南東風と,モンスーンによるベンガノレ湾
からの西風が収束しているからである。
20N
図5 1
9
8
9年 第3
4
半旬 (
6/15-6/HI)の上層雲量
点線は雲量1O~ぢを,陰影は雲量30~ぢ以上
の領域を示す。 2
2N, 1
4
7Eの雲戚が,東
西分裂した MPTの西側のトラフから西進
してきた雲成。
80E
6
0
N
100E
120E
1
4日E
EQ
160E
180
160W
140W
120同
4
0
N
2
0
N
図6
1
9
8
9年第 3
4半句 (
6
/
1
5-6
/
1
9
)の 850hPa面平均風
等高度線の間隔は 20mo
次に夏期の例として, 1
990年 第 44半旬
1
2
0
E
1
4
0
E
1
6
0
E
1
8
0
E
乙
, 850hPa面平均風を
の上層雲量を図 71
図 8I
乙示す。上層雲量の多い北緯 2
"
0- 3
0
40N
度付近を挟んで,下層では北風と南風が収
束している乙とが分かる。乙の南風は,北
0度 付 近 の 高 気 圧 セ jレを回って北上し
緯2
20N
てきたものであることも読み取れる。一方
北風は,日本海から黄海にかけて形成され
EQ
た中韓度の高気圧から吹き出てきているこ
とが分かる。
9
9
0年第4
4半旬 (
8
/
4
8
1
8
)の上層雲曇
図7 1
点線は雲量 10%を,陰影は雲量30%以上
3
5Eの霊域が,東
の領域を示す。 25N,1
西分裂した MPTの西側のトラフから西進
してきた雲成。
-74-
80E
100E 120E 140E 1
6
0
E
6
0
NI?一一J..--
1
8
0
1
6
0
W 140W20凶
~~.....,岬
4
0
N
2
0
N
図8
1
9
9
0年 第 4
4
半旬 (
8
/
4
8
/
8
)の 8
5
0
h
P
a面平均風
等高度線の間隔は 2
0m。
4
. 考察
4-1 MPTの東西分裂
N
i
t
t
a(
1
9
8
7
) のようにフィリピン付近で対流活動が活発になると,定常ロスビ一波の伝播によっ
て高圧部と低圧部の波列が形成されるとしよう。乙れは N
i
t
t
a(
1
9
8
7
)の示した熱源の位置を少し
北東にずらして対流活動の活発域をフィリピンのやや東付近に持ってくる乙とによって考える乙と
7
0度付近
ができる。伝播するロスビ一波の波長を約 4000kmとすると,次の低圧部が東経 160-1
にでき,そのまた次の低圧部が西経 160-150度付近にできる乙とになる。乙れが MPTの分裂と
して現れるのかもしれない。しかし本研究では半旬データを用いているので,乙れについては推測
にすぎない。
東西分裂した状態は長続きする乙とは少なく,やがて元の一つのトラフに戻ろうとする。乙のと
き,東西分裂した MPTの南西端の一部が切り離されて上層寒冷低気圧として西進する。この上層
寒冷低気圧が日本の南の海上に達するのは. MPTの分裂の約 2半旬後になっている。
MPTが東西分裂する時に,その偏西風帯の上流の日本付近ではジェット気流が大きく波打って
蛇行するという特徴がみられた。そして蛇行の結果が日本の上でリッジになるか卜ラフになるかを
調べてみた。夏期はリッジの場が強まり,春と秋には卜ラフの場が強まる傾向があるらしい。しか
し,偏西風の蛇行のようすは場合によって少しずつ異なり,統一的な特徴を見いだすには至らなか
った。従って MPTの東西分裂と日本付近の高度場とが純粋に一対一対応する 6のではないと言える。
4-2 亜熱帯の収束域
東西分裂した MPTから切り離された上層寒冷低気圧が西進してくると,日本の天候に影響を及
ぼす。例えば図 3や図 4で示したように,分裂した MPTから切り離された上層寒冷低気圧の西進
に伴って台風が次々と発生する乙ともある。また 1
9
8
8年 8月中旬のように西進してきた上層寒冷低
気圧が西日本に居座り天候不順をもたらす乙ともある。
しかも活発な雲域が西進して日本の南に達したときの振舞いには,春・秋と夏とでは相違がみら
-75-
れた。即ち,夏は上層寒冷低気圧の構造を保ったままで偏東風領域の擾乱として現れる。しかし春
・秋はむしろ日本の南で中緯度の前線帯と重なっている。しかも活発な雲域が西進して日本の南に
達したときが梅雨前線や秋雨前線が日本の南に南下するタイミングに一致している。
但し,図 8のように下層収束が明瞭に見られる場合もあるが,下層収束の様子が半旬平均図には
現れにくい場合もある。乙れは,上層寒冷低気圧の中心付近では下降気流場で下層で、発散場となっ
ており,上層寒冷低気圧の周辺部では対流活発域で下層収束の場となっていている乙とから,平均
図にすると乙れら発散場と収束場が相殺されるために,平均図の上では下層収束が顕著にはならな
いのだろう。それでも,傾圧帯からは遠く離れた所で上層雲量が飛躍的に増大するのだから,乙の
原因は下層収束であると考えるのが妥当だろう。
9
9
1年は亜熱帯の収束域は比較的不明瞭であった。乙れは. 1
9
9
1年はフィリピン付近
しかし, 1
の対流活動が不活発であった乙とに関係しているものと思われる。
5
.
結論
季節内変動に伴う
l200 の発散中心がフィリピンまたはフィリピンの東に達すると,同じ半匂に
MPTは 2つ -3つの卜ラフに分かれ波打って東西分裂する。その約 2半旬後には日本の南の海上
の北緯 2
0- 30度付近に対流活発域が形成される。
乙の対流活発域は分裂した MPTの先端が切り離されて移動してきたものである。従って,はじ
めは上層寒冷低気圧の西進という形で現れる。そして上層寒冷低気圧の西進に伴って,台風が次々
と発生する乙とがある。しかも乙乙は下層収束の場として現れる。
乙の対流活発域は ITCZとは位置的に遠く離れている。梅雨期には傾圧帯に伴う雲域として振
舞うが,夏期 i
とは傾圧帯とも区別され.亜熱帯の収束域となっている。
9
9
1年のようにフィリピン付近の対流活動が不活発な年は, MP の東西分裂にかかわ
なお, 1
る日本付近の気象現象との関連性は不明瞭であった。
謝 辞
本研究を進めるにあたり,新田勅気象大学校教授および中村和信長期予報課調査官には,有益な
コメン卜をいただきました。
参考文献
N
i
t
t
a,T
.,1
9
8
7
:C
o
n
v
e
c
t
i
v
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c
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l
a
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i
o
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.J
.M
e
t
e
o
r
.S
o
c
.Japan,6
5,
3733
9
0
.
-76-
ソ連の 1
9
9
1年 6月の天気概況について
森
広道*
はじめに
ソ連の公式の地上観測資料は約
9
0
0
0であるが.実際には乙の他にも多数の地上観測所があるも
ようである。乙の豊富な観測資料を使った毎月の気象概況が .
1
9
9
0年 4月より科学技術誌“気象と
水文"に掲載されるようになった。乙れまで,乙のように定期的にこの種の解析資料が同誌に掲載
されることはなかった。
1
5ヶ月分の資料が集まったので,最近のもの(1
9
9
1年 6月)を紹介する。
また,参考資料として乙れまで同誌に掲載された図も併せて紹介しておく。
1
. 全般天気概況
6月のソ連領の大半の地域では平年より 1-3o
c高かった。ヨーロッパロシアの北東部,西シベ
リアの大半,カザフの北,チュクチ半島(シベリア東北端)中央部では平年より 4-6C高くなっ
0
た。ヤクーツク(レナ河上流の都市)の北・中部では,平年より 1-4C低かった(図1)。
0
図
1
9
9
1年 6月の月平均気温偏差図。 1はb.t>O.C.2はb.t<O.C
*大阪管区気象台技術部予報課
-77-
ソ連領の大半の地域での月平均気温偏差分布は,先月(5月)の偏差分布に類似していた。しか
C
) と正偏差の中心位置も西シベリアの北西端で同じであった。
も,正偏差の中心の値ム t (6O
ヨーロッパロシアでは月平均気温は 1-3C平年よりも高かった。北部の東,ウラノレの大半では
0
平年より 4-6C高くなったが,西部では平年並となった。過去 1
1
0年間の観測資料から,ム tが
0
類似した分布を捜すと 1
9
2
1年がある。乙乙で, 1
9
8
9年とはやや異なっている。
ヨーロッパロシアの西半分では
5日間はほとんど毎日,ヨーロッパに深い気圧
6月の最初の 1
の谷が停滞したため,乙の地域では不安定な・涼しい天候が卓越した。月はじめの北西域では,地上
で
-1--2Cの冷え込みが観測された。月半ばには大気循環において重要な変化が生じ,ヨーロ
0
ッパ領域には暖かな熱帯性の空気が流入し気温は上昇した。
反対にヨーロッパロシアの東半分では, 1ヶ月の大半が気圧の峯の影響下にあり,そ乙では暖か
く乾燥した。その大半の地域では,月最高気温は月末に観測され 2
7- 3
5o
Cとなった。特 1
[,ヴ、オ
Jレガ・ピャートカ(現称はキーロフ)の南,ウラル地方,ヴォ Jレガ流域地方,中央黒土地帯の東,
6- 4
2o
Cとなった。乙れらの地域における乙の高温は, 6月の日長高気温
北コーカサス地方では 3
の極値に近く,いくつかの地域では極値を上回った。
月平均降水量は 6
5-110mm で,平年比 90-140~ちであった(図 2) 。ウラ jレの大半,ヴォ
ノレガ流域地方,中央部の東,中央黒土地帯では降水量は少なしウクライナの南半分の所々では
20-50mmで平年比 3
5- 7
5S
ちとなった。ヨーロッパロシアの 1ヶ月を通した天候の特徴は,雷
を伴った豪雨が頻発に発生したことであろう。特に,ヨーロッパロシアの西半分の地域では,短時
図2 1
9
9
1年 6月の月平均降水量偏差図。 1は平年並 (80-120~的,
2年は平年より多い(詮 1
2
0%
)
, 3は平年より少ない(三五 8
0$
ち
)
。
-78-
聞に 3
0-70m
.m (所によっては 1
0
0-130mm) に達する豪雨が何日かあった。また,所によっ
ては直径 30mmかそれ以上のヒョウを伴った激しい雷雨と,強い突風を伴った (22m/s.所によ
0m/s)
。
っては 3
モスクワでは. 6月は平年より 2
.
7C暖かかった。上旬の天候は不安定で,数日聞は日平均気温
0
が平年より低くなった。 6月 4日には 6月の最低気温を記録した (
5
.
6C)。しかし,最低気温の極
0
値は 1
9
1
6年 6月 1日の -2.3 Cである。中旬の平均気温は 1
9
.
1Cとなり平年より 2
.
2"c高かっ
0
0
た。中旬の乙のような気温は. 8-9年に 1度観測されている。 6月 1
7日以降,モスクワでは暖
かな天気となりその状態は月末まで続き,日中の気温は 3
30Cまで上昇した。 6月 2
9日には 3
3
.
5
o
Cの日最高気温の極値を越し,日平均気温は平年を 1
1"Cも越えた。
749
ちである。上旬の 2日間,短時間の豪雨があったがモ
月降水量は 122mmで,乙れは平年比 1
スクワではその分布は非常に不均質であった。例えば. 6月 6日の場合,モスクワ大学では 71
.4
m m (月平均値は 70mm) となったが,その他の都市では降水は全くなかった。
外コーカサスの共和国では,月平均気温・降水量とも平年並であった。西シベリアの南,カザフ
の北半分では,月の大半は暖かく乾燥した天候が卓越し.平年より 3-5C高かった。月平均最高
0
3- 38o
C
. 所によっては 39-42o
Cとなった。しかし.下旬には気温は平年より低くなり
気温は 3
ノボシビルスク州では.月はじめ -1Cの冷え込みとなった。
0
西シベリアの大半,カザフの西と北東では,降水量は 2
0- 50mm. 所によっては 60mm以 上
となった。同様に,カザフの北半分の地域,チュメニ(西シベリア〉の東.オムスク州の北.ア Jレ
タイ地方(ロシア共和国の中南部)の西の所々では,降水量は 15mm以下.所によっては降水量
は全くなかった。
中央アジア,カザフの南の 6月は不安定な天候が卓越し,月平均気温は平年並か平年より 1Cほ
0
ど高くなった。月平均最高気温は 3
3-3
9o
C
. トルクメンとウズベクの所々では 40- 43o
Cとなっ
た。大半の地域で激しい豪雨があり,日最高降水量は 90mml
乙達した。その結果.土石流が発生
し農作物は損害を受けた。ウズベク,タジクのいくつかの地域ではヒョウが降った。
東シベリアの南の地方では,適度の暖かな天候が卓越した。乙の地域の大半では早朝 0--3o
C
の冷え込みとなり,イルクーツクと外パイカルの所々では -5Cとなった。乙のような冷え込みは
0
1
0年に 1-2度観測されている。今出の冷え辺みと同様なものとしては. 1
9
7
2年 6月 1
5から 17
日に観測されたものがある。より診しいものとしては. 1
9
8
7年 6月末の冷え込みがある。
7-3
0o
C
.
極東では. 6月の月平均気温は平年並か平年より 10C高かった。月平均最高気温は 2
所によっては 3
2- 3
3o
Cとなった。大半の地域では 60-100mmの強雨があり,ハベロフスク州
の南.沿海州の所々では 150mm以上となった。
-79-
2
. 大気循環の特徴
6月のソ連領における乙のような様々な天候状態の形成は,代表的な大気循環場の特徴に原因が
ある。北半球の全領域において南北流循環が卓越し,乙れは様々な指数で確認する乙とができる。
例えば,南北流循環の強度については. A.L.Katua(I)の指数がある。乙れによると, 3領域と
0
.
7
5)を上回った。第 l領域では1.14,第 2領域では 0
.
9
0,第 3領域では1.2
5であ
もに平均値 (
った。反対に,大気の東西流循環の月平均指数である H
.Brinoba指数は,平年 (L=-1
.9
) より
小さくなった。北半球における南北流循環強度の増大は,対流閏中層におけるシオポテンシャル高
度と地上気圧場における平年値からの著しい偏差として現れた。例えば,地上気圧場においてはスカ
ンジナビアとグリーンランドの南 l
と低気圧,北米の東とグリーンランド,ウラ lレ,ベーリング海の
西では高気圧となった。対流圏下層における気圧場の分布は,ヨーロッパロシア,ウラル,ソ連領
の西アジア地域,マガダン州(ロシア共和国東端部の湾岸都市)において暖かな空気の移流が 1ヶ
月を通して卓越するととに対応した。寒気の流入は,外パイカルと極東の隣接地域,東シベリアの
北で何度見られた。
1
9
9
1年 6月の天候予想はソ連邦全体ではうまく予測できた (ρ=0
.
43
. Q=1
.5
4
)。 同 様ζ
l,
.
40,Q =1
.
15
)。さらに.北部,北西部,
ヨーロッパロシアのム tの予想は十分であった (p=0
ヴ i)
レガ・ビャートカ,ウラ Jレ州,白ロシアでは同様に(p)は1.0
0であった。
6月.予想よりも
暖かかったのはソ連邦の南半分であったが,上旬のム tは予想通り負偏差となった。中旬は予想に
反してム tは正偏差に変わった。
.0
0),外コーカサスでは実際の気温偏差
西シベリア,カザフではム tはうまく予想され (p= 1
.0
0,Q=0
.
5
3
)。全体的には,東部 (ρ=0
.
2
2,Q=2
.
11),中
分布は予想通りとなった Cρ=1
央アジア (ρ=0
.
0
0,Q=0
.
5
0
),東シベリア地域 (p=0.47,Q=0
.
40)で予想はほぼ的中した。
ソ連邦の降水量予想もほぼ的中した (
63S
ぢ)。西シベリアの大半の地域 (
67%)とカザフ 05
9
ち)では降水量予想は適切であった。
3
. 危険な気象現象
6月の北極での夏季の成層圏高気圧は平年よりも弱く,中緯度帯の対流圏中層ジオポテンシャノレ
高度場に顕著な平年偏差として現れた。それは,ソ連邦ではウラ Jレ.カムチャッカ,マガダン州に
おいて上層の気圧の峯が現れ,乙れらの上層の気圧の峯は 7-15mmのジオポテンシャノレ高度の
正偏差に対応した。
下層対流圏の気圧場の特徴から,ヨーロッパロシア,ウラ Jレ.ソ連邦の西アジア地域,マガダン
州においては暖かな空気が流入した。寒気は,外パイカ )
¥
.
1
, アムー Jレク州.ハバロフスク州にしば
しば流入した。大雨は,ヨーロッパロシアの北西部,タジク,ウズベク,キ Jレギスの山岳地域で発
生した。
n
u
n
o
ウラルとシベリアの隣接地域,カザフとヨーロッパロシアでは 3
0- 3
5o
Cの暑さが続き(所によ
って 3
6- 40OC), 6月 58から 2
0日までと 2
4日から 3
0日までは降水はなかった。 6月の最後
の週の暖かく乾燥した天候は,ヴォ Jレガ流域地方,中央部,中央黒土地帯.ウクライナの東,ロス
トフスク州(ヨーロッパロシアの都市).北コーカサスで卓越した。乙のような天候条件は,農業
にとって不都合であり.森林地帯では多くの火災が発生した。例えば.チェメニ州では火災が包ん
だ面積は 1日i
乙2万 5千 haに達した。不都合な気象現象,特に乾燥した暑さの天候から.それに
隣接した中央アジアの共和国の山岳と山岳の村では.しばしば寒冷前線による豪雨と強風,竜巻が
観測された。
主要な気象現象としては
① 6月 1日,パシキール自治共和国では 20-25m/s の強風があり,送電線は切断された。強風
はカスピ海の低気圧から伸びる寒冷前線に関係していたが. 6時間前に事前に予告された。
②モスクワでは
6月 7日 3
2時聞に 5
8-71mmの強雨となった。
2日には 4
0分間で 61mmの強雨とな
③シンフェローポリ(クリミア中南部の都市)では, 6月 1
った。乙の 2つの現象は.対流発達ζ
i伴なった不安定な空気塊において発生した。乙のような強さ
の豪雨は事前に予測できなかった。
④チタ州とブリヤート自治共和国では, 6月 1
5日から 1
6日に -1--30C,所によってはー 5一 70Cの冷え込みとなった。それらは農作物(じゃがいも.とうもろ乙し,野菜の芽)に害を与え
2時間前に事前に予告された。
た。乙の冷え込みは,冷たい北極大気で形成された高気圧による。 1
⑤ウクライナ西部では 1
7日から 2
3自にかけて.豪雨(所によっては 2時間で 100-128mm).ヒ
ョウ,雷雨,
1
5- 2
4m/s の強風があり農業用地は水浸しになった。土地は侵食され,送電設備
は不通となり,交通輸送は中止された。乙の現象は西から東へ移動してきた寒冷前線による。
1
2
時間前に予告されていた。
@ 6月 1
7日にケメロヴォ(ロシア共和国ケメロヴ}州の州都)ピオネーノレで.同 29日にはピイス
ク(ロシア共和国アルタイ地方の都市)で竜巻が発生した。 1
0数棟の建物が壊され,送電線は切
手法はまだ確立され
断,多くの村が被害を受けたが死者は出なかった。今のと乙ろ,乙の種の予測l
ていない。
6日から 1
8日にかけて,オムスクとノボシビ Jレスク州では所により 3
0-4
0m/sの強風
⑦ 6月 1
となった。送電線は不適になり,建物は壊され,樹木は伐採ぢれた。強風は北西方向から伸びる温
5- 2
0m/sであった。
暖前線による。事前の予想では風速は 1
-81ー
4
. 危険な水文現象
ヴォノレガ上流域では多くの降水量があり,イヴァノヴォ(ロシア共和国イヴァノヴォ州の州都),
ウグリチ(ロシア共和国ヤロスラーブリ州中西部のヴォルガ河に臨する湾岸都市), )レイビンスク
.
0-2
.
8倍に流入量が増えた。カムスク,
(同ヴォ Jレガ河の湾岸都市)の人工貯水池では,平年の 2
5-75必に大きく低下した。
カムスク下流の人工貯水池では,暖かな天候のため流入量は平年の 3
3) に近い 2
3 であった。
2
3
.
6km
0
.
7km
ヴォ Jレガ・カムスク流域での総流入量は,平年 (
ヨーロッパロシア西部の豪雨 l
とより, ドナ川,
ドニプロ川,西ドヴィナ J
ナ
lI(ロシア北部のJlI),
レゼ川,パノレホーダ川の流域では増水した。シベリア地域の流入量は平年並であったが,ノボシビ
j
5-5
0~ぢ少ない水量となった。
ノレスクとブフタノレミンスクの人工貯水池では,平年より 4
中央アジアの河川の水量は平年並に近く,アルダリア流域の河川は 10-4
0%平年より多かった。
キルギスとカザフの南のいくつかの小さな河川では,水量は少なかった。トルクメンのムルガワの
.
5倍であった。
水量は平年の約 2
6月のカスピ海では水位の上昇が引き続いた。 1ヶ月平均海面水位は 1
5cm上昇した。昨年 6月
3日から 2
5日にかけて低気圧の
と比較すると,上昇は 46cmに達した。カスピ海の北では, 6月 2
移動に関連して東の風 10-15m/s(18m/sの突風)が観測され,カスピ海の西海岸と人工島の
沿岸では水位は危険水位に達した。人工島では水位の高さは 3ml
乙達し,乙れは危険水位より 1m
も高かった。
6cm低くなった。 5月
アラ Jレ海の平均水位は引き続き低下した。昨年 6月と比較すると今年は 7
9
9
1年 6月のソ連における水文現象の主要な特徴は以
から 6月にかけての低下は 7cmであった。 1
上である。
5
. おわりに
0
0r
n
b・1
0
0mb の 高 度 偏 差
ソ連の長期予報の現業的な解析手法は,地上気温と降水量偏差, 5
.K
a
t
u
a
(
I
)
の類似年の検索を中心としている。また,大気循環指数としては本論文にもあったA.L
と H.B
rinoba(
L
)指数があり,その他には長波の谷の位置,波数分析,大西洋の水温偏差等との関
係がルーチン的に解析されているようである。
数値予報モデルも当然利用されていようが,そのあたりの実情は今のと乙ろよくわからない。
参考文献
T
. A. Eor~aHoBa , 1
叩 1 0630p n
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r
o瓦bl H
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1npOJ
lOr1
1兄
, NO. 9,1
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目的
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.,METEOPOJ
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1
兄
。
向
図 3-1
1
9
9
0年 4月から 6月までの月平均気温偏差図(左)と月平均降水量偏差図(右)。
4月の降水量で 1は豆 80%, 2は主主 1
2
0$
ち
,
3は 80-120%を
, 5月は 1は孟 8
0$
ぢ
, 2は 8
0-120%
, 3は孟 1
2
0$ちを, 6
月は 1は主主 1
2
0ち
$ 2は豆 8
0~ぢ, 3は 8
0-120~ちをそれぞれ示す。
図 1と図 2の説明ζ
l同じ。ただし,
-83ー
図 3-2 1
9
9
0年 7月から 9月までの月平均気温偏差図(左)と月平均降水量偏差図(右)。
図 1と図 2の説明に同じ。
-84-
図 3-3 1
9
9
0年 1
0月から 1
2月までの月平均気温偏差図(左)と月平均降水量偏差図(右)。
図 1と図 2の説明に同じ。
-85-
図 3-4 1
9
9
1年 1月から 3月の月平均気温偏差図(左)と月平均降水量偏差図(右)。
図 1と図 2の説明 l
ζ
│
司じ。ただし. 1月の気温偏差で 1はムtミ 2C
. 2はムも
=Q
O
C
. 3はム t豆一 2C
0
0
ρ0
00
図 3-5 1
9
9
1年 4月から 6月の月平均気温偏差図(左)と月平均降水量偏差図(右)。
図 1と図 2の説明に閉じ。
-87ー
編集後記
今年も長期予報をめぐる話題が豊富になりそうです。
昨年,
5年ぶりにエルニーニョが発生し,アメリカのテキサス州の大雨やアフリカ南東部のジン
l大きな影響が出始めています。今回のエルニーニョの発達期に
パブエの干ばつなど,世界の天候ζ
0月 1
8
あたる夏から秋にも,インドネシアやオーストラリア東部は干ばつになりました。日本は, 1
日発表の寒候期予報通り暖冬になりましたが,日本の冬の天候については,最近注目されている 1
0
年スケールの気候変動の役割も大きいのではないかといわれており,単準ζ
IエJレニーニョのせいと
いうわけにはいかないでしょう。エルニーニョが夏まで続くかどうかが注目されます。
一方,昨年 6月に大噴火したピナトゥボ火山の影響で,色鮮やかな夕焼けが続いています。ハン
セン博士らは,昨年後半の全球平均気温に下降傾向が現れている乙とを示し,ピナトゥボ火山によ
って成層圏に大量に注入されたエーロゾルとの関連を指摘しました。気温にも影響が出始めたとい
う乙とでしょうか。
さて今回は,昨年
1
0月 1日に気象庁で行われた,月例会「長期予報と大気大循環Jで発表され
た論文を特集しました。最新の研究成果が報告されており,興味深く読んでいただけるものと思い
ます。「天気」にも簡単な報告が掲載されますので,あわせてど覧下さい。
ど存じのように,
r
グロースベッター」は,皆様のど投稿によって成り立っている長期予報の研
究誌です。長期予報に関するものなら何でも結構ですので,下記まで気楽に原稿をお送り下さい。
干
1
0
0 東京都千代田区大手町 1-3-4 気象庁長期予報課内 LFグループ事務局
ワープロで原稿を作成される場合には,
A4の用紙に縦置き横書きで, 1行 4
4字
1ページ 3
3行
で作成していただけると,編集作業が楽になって助かります。(露木)
グロースペッター第 3
0巻第 1号の訂正
P
. 18 図 5の説明: 左例
O
左列
P
.5
3 下から 1行目と 2行目: 限 建 P
. 54
1行目: 平成元年度
O
Q
隈健一
平成 2年度
平成 3年度グロースベッタ一役員
(気象研究所)
佐藤康雄
(筑波大学)
安成哲三
(長期予報課)
工藤達也,湯田憲一,小沢芳郎,露木
林
久美,前田修平,石原
義(庶務担当),
洋,小島直美(会計担当)
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