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リアル・オプション法による石炭火力及び二酸化炭素回収貯留技術の投資
Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 リアル・オプション法による石炭火力 及び二酸化炭素回収貯留技術の投資分析 Study on Coal Power Plant and Carbon Capture and Storage Investments based on Real Options Approach 小 田 潤 一 郎 *・ 秋 元 圭 吾 Junichiro Oda ** Keigo Akimoto (原稿受付日 2016 年 6 月 28 日,受理日 2016 年 10 月 14 日) This paper explores carbon price and LNG price thresholds for investment in power plants and carbon capture and storage (CCS) systems in Japan based on real options approach. We consider the case of a firm having an aged coal power plant. There are five options for the replacement: i) coal power plant, ii) coal power plant w/ CCS, iii) capture ready (CR) coal power plant, iv) gas power plant, and v) gas power plant w/ CCS. The simulation results reveal that the area for the option of “waiting” is relatively large, which means that expected cost of keeping options open is lower than the expected cost of “investing right now.” One should not expect CCS diffusions in the short-term; however, capture ready (CR) coal power plant could be economically viable in a (narrow) range of carbon prices under uncertainty. These results bring a helpful contribution to the discussion on whether the Japanese government should support CCS diffusions, and if so which policies are the most effective ones. 1.はじめに (+CCS)の投資リスク,投資の閾値についてリアル・オプ 1.1 背景 ション法を適用し分析を行う. 長期の地球温暖化緩和策の目標として 2℃目標含め様々 本論文では LNG 価格,炭素価格の不確実性を明示的に考 な提案や言及がなされている.仮にそのような規範的立場 慮する.CCS はこのような費用に関する不確実性のみなら に立てば世界全体で大幅な CO2 削減が必要であり,CO2 回 ず,想定した圧入レートで圧入可能かどうかといった地質 収貯留(CCS)技術は CO2 削減のための選択肢の 1 つとさ に関する技術的不確実性,許認可や地元合意を含め安定的 れる. 稼働が可能かどうかといった社会的不確実性にさらされて そ の よ う な 中 , 米 国 で は CO2-EOR ( 石 油 増 進 回 収 ; いる.本論文では LNG 価格,炭素価格の不確実性に着目し enhanced oil recovery)が普及しつつあるものの,帯水層貯 た経済性評価分析を行う一方,圧入レートや設備利用率の 留については世界的に見ても天然ガス随伴 CO2 の回収貯留 不確実性は扱わないこととする. にほぼ限られている.CCS による CO2 削減を拡大するため には CO2 削減ポテンシャルの大きい帯水層貯留が世界的に 1.3 既往文献との比較 本論文と関連のある既往文献として以下のものが挙げら 普及する必要がある. 日本では 2016 年現在,苫小牧 CCS 実証事業が進行中で れる.Hervé-Mignucci1)は欧州電気事業者を分析対象とし炭 あるが,そもそも CCS 普及を目指すのか,仮に CCS 普及 素価格,電力価格が平均回帰過程に従うとしつつ微粉炭火 を目指す場合どのような政策フレームが機能し得るのかと 力,石炭 IGCC,ガス火力,原子力,洋上風力の内,期待 いった点は検討課題の一つである.このような点を検討・ 収益が最大となる電源を算定している.Heydari et al. 2)は炭 議論するためには,潜在的な CCS 投資主体者・運用実施者 素価格,電力価格,石炭価格が幾何ブラウン運動に従うと である事業者の行動の見通しについて(同時に CCS 投資の しつつ欧州の既設石炭火力に対しフル CCS,もしくは部分 困難性について)予め把握しておくことが有効と考えられ CCS を後付するケースについて分析している.Oda et al.3) る. は米国の CO2-EOR を前提に炭素価格,ガス価格が幾何ブラ ウン運動に従うとしつつ石炭火力,石炭火力+CCS,ガス火 1.2 目的・実施内容 力,ガス火力+CCS の内,期待費用が最小となる電源を算 以上を背景とし本論文は事業者の CCS 投資リスクを踏 定している. まえた CCS 普及見通しと,CCS 普及に関する政策的な示唆 本論文は炭素価格,ガス価格が幾何ブラウン運動に従う を得ることを目的とし,新規石炭火力(+CCS),ガス火力 とした点で Oda et al. 3)と共通の分析フレームである.一方, これら既往文献 (公財)地球環境産業技術研究機構(RITE) システム研究グループ 〒619-0292 京都府木津川市木津川台 9-2 E-mail: *[email protected], **[email protected] 1)2)3) に対し本論文は,キャプチャーレディ 第 35 回エネルギー・資源学会研究発表会の内容をもとに作成さ れたもの 13 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 ー(CR)石炭火力の選択肢を明示的に考慮した点,日本で 2.3 電源の想定 電源及び CCS 投資を行った場合を想定し 2000 年以降の物 電源のパラメータを表 1 の通り想定する.主に NEA4), 価上昇も考慮したコストパラメータを用いた点,などが異 コスト等検証委員会 5),NETL6)を参照しつつ設定した.CO2 なる. 回収は燃焼後回収(化学吸収法),より具体的には KS-1TM 本論文はこのように日本での実施を前提とした費用想定 吸収液を念頭に置き設定した.表 1 は現在利用可能な技術 を行うが,海外での費用も一部参照しつつ各電源費用,CO2 水準に基づいており,将来の技術進展や費用低減を見込ん 輸送費用,CO2 貯留費用の設定を行った.海外での費用と だ水準ではない.2000 年以降,電源の資本費など含めた費 の比較が容易となるよう本論文で用いる通貨単位を実質米 用全般が大きく上昇したが,この点については日本機械輸 ドルとする.また為替換算が必要な場合は 1 US2007$=100 出組合 7)のプラントコストインデックスも参照しつつ 2011 JPY を参照する. 年コストとした. キャプチャーレディー(CR)はそもそも多義的であり, 2.分析フレーム 例えば英国の CR 石炭火力規制では発電所内のスペース確 2.1 分析フレームの全体概要 保のみならず,CO2 輸送経路や貯留地点の計画策定なども 必須となっている.本論文では NETL6)を主に参照し次の 本論文は,LNG 価格,炭素価格が不確実な状況下で電源 CR を想定した. 種別(CCS 含む)とそのタイミングについて柔軟な意思決 • 定が可能であるケースに着目する.即ち,どの電源種別 (CO2 回収設備や CO2 昇圧設備,ユーティリティ供給 配管設置のための)スペースを予め確保しておく. (CCS 含む)を選択するか直ちに決定せずに待機すること • が可能であり,待機することで将来時点に電源選択のオプ CO2 回収設備を後付しても送電端設備容量の低下が ションを残すことができる.待機することは既存石炭火力 極小となるよう,予め石炭供給設備,ボイラー容量な をより長い期間に渡り保有・稼働することを本論文では意 どに余力を持たせる. • 味する.逆に,例えば石炭+CCS へ投資することを決定し CR 本体の運開後 8 年目に(その時点の炭素価格の状 た場合,その決定後に炭素価格が大幅に低下しても,その 況に応じて)CO2 回収設備を後付するかどうか柔軟に 決定を取り消したり,他の電源を選択し直したりすること 選択することができる.CO2 回収設備を後付する場合, ができないとした. CR 本体の運開後 10 年目から CO2 回収設備を稼働で このように意思決定の柔軟性(オプションを残すことの きる(なお CO2 回収設備の工事期間中においても CR 価値)や不可逆性を明示的に考慮することは,リアル・オ 本体の設備利用率は 85%を維持する) . プション法の一般的特徴の一つである. 2.4 CO2 輸送,CO2 貯留に関する想定 2.2 事業者の想定 CO2 輸送, CO2 貯留共に日本で実施する場合を念頭に置 きパラメータ設定を行った.RITE8)を基礎としつつも 2000 本論文において分析対象とする事業者は次の状況にある ものとする. • 年以降の物価上昇を反映した費用とした.具体的にはそれ 石炭火力を保有・運用してきたが,その経年化に伴い ぞれ次の通りである. 10 年以内に既存石炭火力を停止・廃棄し新規電源へ • • • CO2 輸送について,80 km の陸上パイプラインをベース リプレースする必要がある. とした.パイプライン建設単価は RITE の建設単価 8)と日本 リプレース先の候補は石炭,石炭+CCS,ガス,ガス 機械輸出組合のプラントコストインデックス .キャプチャーレ +CCS の 4 種とする(基準ケース) 算定した.主なパラメータは次の通りである. 7) の積をとり ディー(CR)石炭火力許容ケースでは CR 石炭も選択 • 年間輸送量:1.0 MtCO2/y 可能としリプレース先の候補を 5 種とする. • パイプライン長:80 km リプレース先の電源及び CCS はいずれも許認可など • パイプライン径:8 in(公称) の手続きが完了しており比較的短い工期(リードタイ • 圧力:入口 15.3 MPa,出口 10.0 MPa(再圧設備無し) ム)で運開可能とする. • パイプライン建設単価(million US2007$/km) :平均 2.84 事業者は LNG 価格と炭素価格の不確実性にさらされ (公道下一般部:2.27,鉄道や河川の横断部:10.2) • ており,そのような中,ベースロード電源に関する今 後 40 年間に渡る期待費用を最小化したいと考えてい 輸送費計:23.3 US2007$/tCO2 輸送(2011 年コストベー ス)[30 年間均等化,割引率 5%/y] る(事業者はリスク中立的とする) . 14 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 表 1 発電設備,CO2 回収設備のパラメータ想定(日本) 項目 送電端設備容量 単位 * 既存石炭 新規石炭火力: 新規 CR 石炭火力: 新規ガス火力: 火力 USC 微粉炭火力 USC 微粉炭火力 コンバインドサイクル CO2 回収 CO2 回収 CO2 回収 CO2 回収前 CO2 回収 CO2 回収 なし なし あり (後付の場合)** なし あり MWnet 207.6 562.8 436.9 562.8 (562.8) 462.2 388.9 送電端発電効率 % (LHV 基準) 32.9 41.1 34.0 41.1 (33.5) 56.8 48.8 CO2 回収率 % - - 90 - (90) - 90 CO2 排出原単位 kgCO2/MWhnet 1043 835 101 835 (102) 348 41 CO2 回収原単位*** kgCO2/MWhnet - - 908 - (922) - 365 CO2 回収量 MtCO2/y - - 2.96 - (3.86) - 1.06 リードタイム y - 5 5 5 (2) 3 3 燃料発熱量 - 24.4 GJLHV/t 石炭 (受入ベース) 49.1 GJLHV/t LNG 燃料価格 - 資本費 US2007$/kWnet - 2,719 5,005 3,184 (2,081) 1,549 2,926 燃料消費率 GJLHV/MWhnet 10.94 8.76 10.59 8.76 (10.75) 6.33 7.38 116.7 US2007$/t, 4.78 US2007$/GJLHV P2 US2007$/GJLHV 燃料費 US2007$/MWhnet 52.3 41.9 50.6 41.9 (51.4) P2×燃料消費率 運転維持費 US2007$/MWhnet 16.2 13.0 23.5 13.0 (24.0) 7.0 費用算定の基準年 y 主な参考文献 - 12.7 2011 資料 5) 資料 4)5)6) 資料 5)6) 資料 4)5) * 実際の計算は送電端設備容量 1kWnet 当たりに換算して実施(全ての設備において設備利用率 85%を想定) . ** 括弧の前には CO2 回収設備を後付する前のパラメータ,括弧内には CO2 回収設備を後付した場合のパラメータをそれ ぞれ記載した.例えば CO2 回収設備の後付に必要なリードタイムを 2 年とした.また CO2 回収設備の後付の追加資本 費を 2,081 US2007$/kWnet とした. *** 「CO2 回収原単位」とは排ガス中から分離回収される CO2 の量を意味する.回収されない CO2 が「CO2 排出原単位」 であり, 「CO2 回収原単位」と「CO2 排出原単位」の比率を 9:1 と想定した. 補足)CO2 回収を行う場合,発電所内で 15.3 MPa まで昇圧を行う(昇圧に必要な電力を考慮). CO2 貯留について,RITE8)及び NETL9)を参照し次の想定 表 1 に示した通り,石炭+CCS は年 300 万 tCO2 規模である を行った.圧入井,調査井,観測井の掘削費用は RITE の 石炭+CCS の場合も 1 プロジェクト当たり年 100 万 tCO2 が, 8) 10) 掘削単価(1本当たり) と IHS のコストインデックスの 規模を基に算定した上記の輸送単価,貯留単価を参照する 積をとり算定した. (年 300 万 tCO2 規模であれば輸送単価は年 100 万 tCO2 規 • 年間貯留量:1.0 MtCO2/y 模の半分程度となる 8)ため,石炭+CCS について保守的な前 • 深度:1,000 m 提を置いていることとなる) . • 有効層厚:50 m • 空隙率:25% • 浸透率:10~100 mD • 圧入量(稼働圧入井当たり) :0.25 MtCO2/well/y て図 1 に想定したタイムスケジュールをまとめる.既存石 • 圧入井:垂直深度 1,200m,偏距 3,200m,掘削長 4,290m 炭火力は t=10 年まで稼働可能とする.投資決定から運開ま の ERD を 5 本掘削(同時稼動 4 本) ,掘削費計 146 でのリードタイムを石炭火力などは 5 年,ガス火力などは million US2007$ 3 年とそれぞれ想定したので,石炭火力などへ投資する場 調査井,観測井:垂直深度 1,300m,偏距 1,600m の傾 合は t=5 年までに選択する必要がある.即ち 0≤t≤5 の期間 斜井相当を 10 本掘削, 掘削費計 72 million US2007$ は何れの電源も選択可能である.その後の 5<t≤7 はガス火 貯留費計:24.8 US2007$/tCO2 貯留(2011 年コストベー 力,ガス火力+CCS のどちらかを選択することとなる. • • 2.5 タイムスケジュールの想定 タイムスケジュールについて既に一部記載したが,改め ス)[30 年間均等化,割引率 5%/y] 2.6 確率過程の導入 以上のように CO2 輸送,貯留共に 1 プロジェクト当たり LNG 価格 P1,炭素価格 P2 が次の幾何ブラウン運動に従 年 100 万 tCO2 の規模を想定する.なお CO2 回収については うとする. 15 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 𝑑𝑃1 = 𝑎1 𝑃1 𝑑𝑡 + 𝑏1 𝑃1 𝑑𝑧1 以上の想定の下, 期待費用が最小となる電源種別(CCS (1) 𝑑𝑃2 = 𝑎2 𝑃2 𝑑𝑡 + 𝑏2 𝑃2 𝑑𝑧2 含む)とそのタイミングについて分析した.本分析では一 意の解を得るべく事業者の状況を以上の通り特定化したが, ただし a1,a2 は P1,P2 の期待変化率(%/年) ,b1,b2 は P1, 実際の事業者の状況は既存電源設備,燃料受入設備,電力 P2 のボラティリティ,dz1,dz2 はウィナー過程の増分であ 需給状況など含め多様である点に留意が必要である. る.P1,P2 の相関係数を ρ とすると E[(dz1)(dz2)]=ρ・dt が成 り立つ.P1,P2 に関するパラメータは日本の輸入 LNG CIF 3.ケース想定 価格 11), EU ETS の排出量価格 12)など (期間は 2005 年~2015 キャプチャーレディー(CR)石炭火力を選択できるかど 年)を参照し表 2 の通り想定した. うかで差異を設けた次の 2 ケースを想定する. 表 2 のパラメータに基づくサンプルパスの一例と期待値 を図 2 に示す.LNG 価格の初期値 12.4 US2007$/GJLHV は 2014 【基準ケース】CR 石炭火力を除く 4 電源,即ち石炭,石 年,2015 年の平均 CIF 価格である.炭素価格のボラティリ 炭+CCS,ガス,ガス+CCS の何れかを選択可能 ティは EU ETS の排出量価格推移に基づき設定したが,炭 【CR 石炭火力許容ケース】CR 石炭火力を含めた 5 電源の 何れかを選択可能 素価格として陰伏的炭素価格(例えば自主行動,規制,税 額控除,R&D 補助)も想定される. 帯水層貯留の実施に先立ち日本の幅広い地域で網羅的 表2 LNG 価格 P1,炭素価格 P2 に関するパラメータ想定 な 2D 探査が必要であり,さらに追加の 3D 探査によりサイ 期待変化率 ボラティリティ 相関係数 トを絞り込むことができる.その上で絞られた候補地につ ai bi ρ いて数本の調査井(テスト井)を掘削し貯留地点近傍のコ LNG 価格 P1 1.5 (%/y) 0.24 炭素価格 P2 3.2 (%/y) 0.29 ア採取が必要である.この調査井掘削は帯水層貯留に先立 0.20 ち必要であるが,浸透率が見込みより低く貯留に適さない ことが判明することもあるなど高リスクな先行投資である. (既存石炭火力の稼働可能最終時点) t =10 石炭火力,石炭火力+CCS, CR石炭火力へ 投資可能な期間 (0 ≤ t ≤ 5) リードタイム: 5年 ガス火力,ガス火力+CCSへ 投資可能な期間 (0 ≤ t ≤ 7) リードタイム: 3年 t (年) 5 0 (分析開始時点) 7 10 40 (分析終了時点) 図 1 想定したタイムスケジュール LNG 価格 P1 (初期値 12.4 US2007$/GJLHV の場合) 炭素価格 P2 (初期値 30 US2007$/tCO2 の場合) 250 期待値 炭素価格 (US2007$/tCO2) LNG価格 (US2007$/GJLHV) 40 30 20 10 200 期待値 150 100 50 0 0 10 20 年 図2 30 0 40 0 10 LNG 価格 P1,炭素価格 P2 のサンプルパス(一例)と期待値 16 20 年 30 40 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 ただし ρ は二変数間の相関係数である. また a1’=a1-0.5b1^2, そこで CR 石炭火力に CO2 回収を後付する場合には調査 a2’=a2-0.5b2^2 である. 井掘削費用などに相当する費用(貯留費用の 1/3)を政府負 担とし,貯留費用の 2/3 を事業者負担となる場合を想定す る.本論文では CR 規制ではなくこのように CR への優遇 4.3 ベルマン方程式による定式化(基準ケース) キャプチャーレディー(CR)石炭火力を選択できないと 措置を考える.一方,石炭火力+CCS,ガス火力+CCS には した基準ケースの定式化について説明を行う.用いる定式 貯留費用の政府負担は無しとした. 化手法は Dixit and Pindyck13)が整理・提示したベルマン方程 4.定式化と解法 式による動的計画法である.事業者が時刻 t 以降,期待費 4.1 はじめに 用が最小となる意思決定を行った場合の累積期待費用を Ft 13) 本論文にて用いる定式化は Dixit and Pindyck が示した (US2007$/kWnet)とすると,Ft は離散近似した次のベルマン方 14) ベルマン方程式,数値解法は Cox and Miller が示した格子 程式に従う. モデルを電源(+CCS)の投資評価分析に応用したものであ 𝐹𝑡 = 𝑚𝑖𝑛[𝑉𝑔𝑎𝑠,𝑡 , 𝑉𝑔𝑎𝑠𝑐𝑐𝑠 ,𝑡 , 𝑉𝑐𝑜𝑎𝑙,𝑡 , 𝑉𝑐𝑜𝑎𝑙𝑐𝑐𝑠,𝑡 , 8760𝐶𝐹 ∙ 𝐶𝑎𝑔𝑒 ∙ ∆𝑡 + 𝐸[𝐹𝑡+∆𝑡 ] ∙ exp(−𝑟∆𝑡)] る.手法の骨格部分はこれら既往の文献と同様であるが, 𝐹𝑡 = 𝑚𝑖𝑛[𝑉𝑔𝑎𝑠,𝑡 , 𝑉𝑔𝑎𝑠𝑐𝑐𝑠 ,𝑡 , 8760𝐶𝐹 ∙ 𝐶𝑎𝑔𝑒 ∙ ∆𝑡 + 𝐸[𝐹𝑡+∆𝑡 ] それをどのように応用したかについて以下,詳述する.な ∙ exp(−𝑟∆𝑡)] お,本手法は他の(電源)投資評価フレームとしても汎用 (𝑡 = 7) ただし,Vgas,t,Vgas_ccs,t,Vcoal,t,Vcoal_ccs,t (US2007$/kWnet)は時 4.2 格子モデル(幾何ブラウン運動の離散化) 刻 t において,ガス火力,ガス火力+CCS,石炭火力,石炭 図 3 に ブ ラ ウ ン 運 動 ( dx=adt+bdz ) を 離 散 化 し た 火力+CCS へ投資すると決定した場合のそれぞれの期待費 Cox-Miller モデル 14)を示す.x 方向のステップ幅を⊿x,時 用であり静的な解析解にて計算できる.CF(%)は設備利用 間方向のステップ幅を⊿t とすると,⊿x と確率 p,q は次 率,Cage (US2007$/kWhnet)は現保有石炭火力の運転維持費, の式に従う. 1 𝑎 𝑝 = [1 + √∆𝑡] , 2 𝑏 (4) (5 < 𝑡 < 7) 𝐹𝑡 = 𝑚𝑖𝑛[𝑉𝑔𝑎𝑠,𝑡 , 𝑉𝑔𝑎𝑠𝑐𝑐𝑠 ,𝑡 ] 的に利用可能と考えられる. ∆𝑥 = 𝑏√∆𝑡, (0 ≤ 𝑡 ≤ 5) 燃料費,炭素価格費の合計,r(%/年)は割引率である.(4) 1 𝑎 𝑞 = [1 − √∆𝑡] (2) 2 𝑏 式は 1(kWnet)に規格化しており,8760CF は 1(kWnet)当りの 年間送電端発電電力量である. ⊿t (年)は時刻方向の 1 ステップであり 0.02 年(即ち,約 一週間)とした.この場合,天然ガス価格 15 US2007$/GJ 前 後での天然ガス価格方向のステップ幅は 0.5 US2007$/GJ 程 度,炭素価格 200 US2007$/tCO2 前後での炭素価格方向のステ ップ幅は 4 US2007$/tCO2 程度となる. Ft+⊿t は⊿t(=0.02 年)経過後の期待費用であり,先に解 いた結果を参照する.即ち,最初に t=7 (年)時点で期待費用 最小となるようガス火力,ガス火力+CCS のどちらかを選 択し,次に t=6.98 (年)時点でガス火力,もしくはガス火力 図 3 ブラウン運動の離散化(Cox-Miller モデル 14)) +CCS へ直ちに投資するか,もしくは待機するか,期待費 用が最小となる意思決定を行う.次に t=6.96 (年)時点で期 ここで Cox-Miller モデル 14)を本分析で用いる二変数の幾 待費用最小となる行動(投資・待機)を解く.このように 何ブラウン運動に拡張すると,x1 方向のステップ幅⊿x1, 時刻 t に関して後ろ向き(バックワード)に期待費用 Ft を 確率 p1~p4 などは次の式に従う. 算出し t =0.00~7.00(年)における待機・投資の閾値を求 ∆𝑥1 = 𝑏1 √∆𝑡, ∆𝑥2 = 𝑏2 √∆𝑡, 1 𝑎1 ′ 𝑎2 ′ 𝑝1 = [1 + 𝜌 + ( + ) √∆𝑡] , 4 𝑏1 𝑏2 1 𝑎1 ′ 𝑎2 ′ 𝑝2 = [1 − 𝜌 + ( − ) √∆𝑡] , 4 𝑏1 𝑏2 1 𝑎1 ′ 𝑎2 ′ 𝑝3 = [1 − 𝜌 − ( − ) √∆𝑡] , 4 𝑏1 𝑏2 1 𝑎1 ′ 𝑎2 ′ 𝑝4 = [1 + 𝜌 − ( + ) √∆𝑡] 4 𝑏1 𝑏2 めた. 4.4 ベルマン方程式による定式化(CR 石炭火力許容ケース) キャプチャーレディー(CR)石炭火力許容ケースは,期 (3) 間 0≤t≤5(年)において,CR の選択肢が追加される.t>5 (年)は(4)式と同じであり記載を省略する. 17 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 𝐹𝑡 = min[𝑉𝑔𝑎𝑠,𝑡 , 𝑉𝑔𝑎𝑠𝑐𝑐𝑠 ,𝑡 , 𝑉𝑐𝑜𝑎𝑙,𝑡 , 𝑉𝑐𝑜𝑎𝑙𝑐𝑐𝑠 ,𝑡 , 𝑉𝐶𝑅,𝑡 , 8760𝐶𝐹 ∙ 𝐶𝑎𝑔𝑒 ∙ ∆𝑡 + 𝐸[𝐹𝑡+∆𝑡 ] exp(−𝑟∆𝑡)] (0 ≤ 𝑡 ≤ 5) なお, (感度解析を除き)割引率 5%/y を用いた. (5) 5.結果と考察 ただし,VCR,t (US2007$/kWnet)は時刻 t において CR 石炭火力 5.1 結果 へ投資すると決定した場合の期待費用である.VCR,t は,投 待機・投資の閾値の結果を図 4 及び図 5 に示す.横軸, 資決定を行ってから 5 年後に運開し,さらに運開後 8 年目 縦軸共に当該時点の価格を意味する.例えば t=7 年の図の に CCS の後付けを行うかどうか,その時点の炭素価格を見 炭 素 価 格 100 US2007$/tCO2 は , t=7 年 に お い て 100 て柔軟に意思決定できるとして算定した. 基準ケース(4 電源から選択,CR 石炭火力なし) CR 石炭火力許容ケース(5 電源から選択) t=7 t=6 t=5 図 4 投資・待機の閾値の結果(t=7,6,5 年) 参考)日本の輸入 LNG CIF 価格はそれぞれ 2012 年 16.2,2014 年 15.2,2015 年 9.7 US2007$/GJLHV. 18 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 US2007$/tCO2 であることを意味する(t=7 以降の炭素価格期 投資するか選択できる.例えば図の左上の領域であれば, 待値は 100 US2007$/tCO2 を起点に表 2 に示した期待変化率 直ちにガス火力+CCS へ投資することが期待費用最小とな 3.2%/y で上昇する) .また t=0 年はシミュレーション開始時 る.以上は,基準ケース,CR 石炭火力許容ケース共に共 点を意味し,2016 年といった特定の時点を意味しない. 通の結果となる. t=5 年は石炭火力,石炭火力+CCS へ投資可能な最終時点 先の時点から結果を見ると次の通りである.t=7 年は既 存石炭火力の稼働を 3 年後に停止する必要があるため,ガ である(石炭火力のリードタイムを 5 年と設定したため) . ス火力,ガス火力+CCS のどちらかを選択する必要がある CR 石炭火力許容ケースでは LNG 価格が約 14 US2007$/GJ (これはガス火力のリードタイムを 3 年と設定したため) . 以上,かつ炭素価格が約 25~100 US2007$/tCO2 の範囲で CR t=6 年は待機するか,ガス火力,あるいはガス火力+CCS へ 石炭火力が期待費用最小となる. 基準ケース(4 電源から選択,CR 石炭火力なし) CR 石炭火力許容ケース(5 電源から選択) t=4 t=3 t=0 図 5 投資・待機の閾値の結果(t=4,3,0 年) 参考)日本の輸入 LNG CIF 価格はそれぞれ 2012 年 16.2,2014 年 15.2,2015 年 9.7 US2007$/GJLHV. 19 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 t=4 年及び t=3 年の CR 石炭火力許容ケースでは今回図示 来時点で電源(+CCS)を選択する方が期待費用最小となる. した範囲で CR 石炭火力へ直ちに投資することが期待費用 これは早期のリプレース,及び早期の CCS 投資の困難性を 最小となる領域が存在する.これは既存石炭火力が CR 石 意味している. 炭火力へ早い段階で更新される可能性を示唆しており,今 後の CO2 削減の可能性が高まることを意味する. 5.2 感度解析と考察 t=0 年では両ケース共に待機が期待費用最小となる領域 炭素価格に関する不確実性が大幅に低減した場合の感度 が t=4 年の結果よりさらに広がる. 即ち, 幅広い LNG 価格, 解析結果を図 6 に示す.図 6 は CR 石炭火力許容ケース, 炭素価格において当面待機し状況がより明らかになった将 t=4 年に的を絞った.炭素価格のボラティリティ b2 は 2005 再掲(図 5 と同様) 図 4 及び図 5 含めこれまで 参照してきたパラメータ 炭素価格のボラティリティ b2: 0.29 炭素価格の期待変化率 a2: 3.2 %/y LNG 価格と炭素価格の相関係数: 0.2 割引率: 5 %/y 炭素価格のボラティリティ b2: 0.029 炭素価格の期待変化率 a2 : 1.0 %/y 相関係数: 0.6 割引率: 10 %/y 図 6 感度解析結果(CR 石炭火力許容ケース,t=4 年) 20 Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 年~2015 年の EU ETS 排出量価格 12)を基に 0.29 としてきた とはならないことを意味する.このような中,早期の CR が,b2 をその 1/10 の 0.029 とした場合の結果を図 6 に示す 石炭火力投資が期待費用最小となる領域が一部存在し(例 (仮に炭素価格の初期値を 30 US2007$/tCO2 とした場合,20 えば t=4,3) ,CR は事業者にとって経済合理的な選択肢と 年後の 68.3%信頼区間が 16~208 US2007$/tCO2 から 50~65 なる余地が若干ながらある. US2007$/tCO2 へ縮小するケースに相当) .炭素価格の不確実 本論文で設定した CR は,事業者にとって石炭火力(CCS 性が大幅に解消され,LNG 価格が低位,あるいは高位の領 なし)と比較し先行投資が必要になるとした.また CCS 後 域において CCS の投資閾値が低下していることが図 6 から 付の際には調査井掘削費用などを政府負担とするとした. 読み取れる.CCS は CO2 削減に特化した技術であり明示的 この政府負担は本分析では事業者の CO2 貯留費用の低減と あるいは陰伏的な炭素価格が必要であること,また長期の して表現されるが,実社会における説明責任や政策の継続 リードタイムを要し,資本費比率が高く,サンクコストと 性や整合性などを考えれば,政府が CO2 削減,及び CCS なるリスクがあることから,CCS の早期普及には予見性の に対し一定のコミットを行っていると見なせる(より端的 ある炭素価格が重要と言える. には,調査井掘削費用などを政府負担とした状況下で, 「政 炭素価格の期待変化率 a2 は規範的文脈にて言及される気 府が発電費用の低廉性が最優先であり,CO2 削減の優先順 温目標,濃度安定化目標などを参照しつつ 3.2%/y としてき 位は低いという立場をとること」は整合性がとれず考えに た.ただし途上国を含め足元の動向を記述的にとらえれば, くい) .従って,調査井掘削費用などを政府負担とする方策 今後,炭素価格の上昇が緩やかな場合も考えられる.そこ は,予見性のある炭素価格の醸成に資すると考察される. で炭素価格の期待変化率として 1.0%/y を参照した感度解 また,これまで見てきた通り CCS 投資の困難性が確認で 析結果を図 6 に示す(仮に炭素価格の初期値を 30 US2007$/ きるが,このような中,仮に政府が CCS 普及(の可能性拡 tCO2 とした場合,a2 が 3.2%/y の場合 40 年後の期待値は 10 大)を今後目指すのであれば,相対的に投資のハードルが 8 US2007$/tCO2 であるが,a2 が 1.0%/y の場合 40 年後の期待 低い CR 石炭火力への支援を行うことも一方策として有効 値は 45 US2007$/tCO2 である) .図 6 から当該時点の炭素価 と考えられる. 格のみならず,その後の期待変化率も(自明ながら)CCS 投資閾値に影響を与えることが分かる. 6.まとめ 次に LNG 価格と炭素価格の相関係数であるが,2005 年 ~2015 年の EU ETS 排出量価格 LNG 価格,炭素価格の不確実性を明示的に考慮しつつ石 12) と欧州のガス輸入平均価 炭火力(+CCS) ,ガス火力(+CCS)の選択とタイミングに の相関係数を基に算定した 0.2 を用いてきた. ただし, ついて柔軟な意思決定が可能であるとの分析フレームによ 2050 年といったより長期において正の相関が強まること り,電源(+CCS)の投資リスクをリアル・オプション法に も考えられる.そこで相関係数を 0.6 とした場合について て評価分析した.またキャプチャーレディー(CR)石炭火 図 6 に図示した.0.6 はデータ参照期間を変えて算定した相 力に CCS を後付するケースについても分析した.今後の 関係数のおよそ上限に相当する.より妥当な相関係数をヒ CCS 普及見通しに関して,得られた主な結果は次の通りで ストリカルデータから推定・検証するのは容易でないが, ある. 格 11) • 図 6 から分かる通り結果への影響は小さい. 待機することが期待費用最小となる領域が比較的広 最後に割引率に関する感度解析結果を図 6 に示す.図 4 い.これは,ある程度の炭素価格水準であっても不確 及び図 5 含め割引率 5%/y を用いたが,自由化(規制緩和, 実性下において早期の CCS 投資を行うことは事業者 規制変化)を背景に資金調達の困難さや社債の金利が増す にとって期待費用最小とならないことを意味してい などし,事業者がより大きい割引率を参照することも考え る(即ち CCS 投資の困難性を確認できる) . • られる.そこで割引率を 10%/y とした感度解析結果を示し 仮に政府が早期の CCS 普及を目指す場合,当該時点 た.図 6 から相対的に大きい割引率を参照することで,資 の(明示的,陰伏的)炭素価格が単に高い水準である 本費の高い石炭火力+CCS, CR 石炭火力がより敬遠される だけではなく,事業者から見て将来の炭素価格の予見 ことが分かる. 性が高いことも重要である(ただし,世界全体での効 率的な排出削減が望ましく,世界各国間で炭素価格水 5.3 CR 石炭火力に関する考察 準に大きな差異がないことも同時に必要であること 待機すること,即ち既存石炭火力を稼働継続することが に留意が必要である) . 期待費用最小となる領域が広く(例えば図 5 の t=3,0) , これは不確実性下において仮に炭素価格水準が高い水準で さらに,CR 石炭火力に関して主に次の示唆が得られた. あっても早期の CCS 投資は事業者にとって期待費用最小 • 21 CR 石炭火力は完全予見の前提下では石炭火力(CCS Journal of Japan Society of Energy and Resources, Vol. 37, No. 6 なし),石炭火力+CCS に比べコスト高となるが,不 carbon capture and storage investment in Japan: Real 確実性下において経済合理的な選択肢となる余地が options approach, GHGT-12 (2014). 若干ながらある. • 4) IEA, NEA; Projected Costs of Generating Electricity, 2010 Edition, Paris, (2010). CCS 投資の困難性がある中,仮に政府が CCS 普及(の 可能性拡大)を今後目指すのであれば,相対的に投資 5) のハードルが低い CR 石炭火力への支援を行うことも 内閣府, コスト等検証委員会; コスト等検証委員会報 告書, (2011). 一方策として有効と考えられる. 6) DOE/NETL; CO2 Capture-Ready Coal Power Plants, DOE/NETL-2007/1301, (2008). 今後の研究課題として,CCS 費用やリードタイム,さら 7) 日本機械輸出組合; プラントコストインデックス/ロケ ーションファクター報告書, (2015). には CO2 貯留の圧入レートや CCS の設備利用率の不確実 性の明示的考慮が挙げられる.また,本論文は期待費用最 8) RITE; 二酸化炭素地中貯留技術研究開発 成果報告書, (2006). 小化の分析フレームとしたが,卸売電力価格(あるいは固 定価格買取の価格など)と費用の差分である収益に着目し, 9) DOE/NETL; CO2 Saline Storage Cost Model, DOE/NETL-2014/1669, (2014). 期待収益最大化の分析フレームで検討することも今後の研 10) IHS; IHS Upstream Operating Costs Index, (2016). 究課題の一つである. 11) World Bank; Commodity Price Data, http://www.worldbank.org/en/research/commodity-markets. 参考文献 1) M. Hervé-Mignucci; Carbon price uncertainty and power (アクセス日 2016.6.24) plant Greenfield investment in Europe, 14th annual real 2) 12) Intercontinental Exchange; ECX EUA Futures, Front options international conference, (2010). Month, https://www.theice.com/products/197/EUA-Futures. S. Heydari, N. Ovenden and A. Siddiqui; Real options (アクセス日 2016.6.20) analysis of investment in carbon capture and sequestration 13) A. K. Dixit and R. S. Pindyck; Investment under technology, Computational Management Science, 9-1 Uncertainty. Princeton University Press, (1994). 14) D. R. Cox and H. D. Miller; The Theory of Stochastic (2012), 109-138. 3) J. Oda and K. Akimoto; Power plant replacement and Processes. CRC Press, (1977). 22