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東日本大震災による 受変電設備の被害と対策

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東日本大震災による 受変電設備の被害と対策
東日本大震災による
受変電設備の被害と対策
社団法人 日本配電制御システム工業会
優良工場審査センター 木賊勝信
URL:http://www.jsia.or.jp/
TEL:03-3436-5510 FAX:03-3436-0738
2012年7月20日
2012年8月 9日
2012年8月10日
2012年8月24日
2012年8月31日
東京会場
高松会場
北九州会場
札幌会場
名古屋会場
1
年
月
3
日︵気象庁hp︶
地震の震度分布図
平成
23
11
2
地震波形
日建設計 講演資料 吉宮 弘志 より引用
3
各電気設備の耐震性区分と確保すべき耐震性
• 平成7年に発生した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)を受け「電気設備防災
対策検討会」が設置・開催され、防災基本計画において示された構造物・施設等
の耐震性確保についての基本的考え方に基づき、各電気設備の耐震性区分及
び確保すべき耐震性は次となる。
対象設備
確保すべき耐震性
耐震性区分
Ⅰ
一旦機能喪失した場合に人命に重大な影
響を与える可能性のある設備
(ダム、LNGタンク(地上式、地下式)、油タ
ンク)
●一般的な地震動に際し個々の設備毎に
機能に重大な支障が生じないこと
●高レベルの地震動に際しても人命に重大
な影響を与えないこと
耐震性区分
Ⅱ
耐震性区分Ⅰ以外の電気設備
(水路等、水タンク、発電所建屋・煙突、ボ
イラー及び付属設備、護岸、取放水設備、
変電設備、架空・地中送電設備、架空・地
中配電設備、給電所、電力保安通信設
備)
●一般的な地震動に際し個々の設備毎に
機能に重大な支障が生じないこと
●高レベルの地震動に際しても著しい(長期
的かつ広域的)供給支障が生じないよう、
代替性の確保、多重化等により総合的に
システムの機能が確保されること
4
受変電設備の被害状況
高圧交流負荷開閉器(LBS)端子の破損
変圧器(TR)一次端子の破損
変圧器(TR)二次銅帯の変形
銅帯固定部の破損
変圧器二次側銅帯の接触
変圧器(TR)接地端子の破断
日建設計 講演資料 吉宮 弘志 より引用
5
受変電設備の被害状況
変圧器の揺れにより、二次側端子及び可と
う導体が変形
変圧器二次碍子部が張力により破損
6
受変電設備の被害状況
変圧器固定部の破損により、変圧器が移動し導電部が損壊
7
受変電設備の被害状況
変圧器一次側配線の余長不足により、
LBS端子部が断線により焼損
8
受変電設備の被害状況
耐震ストッパの機能不足
防振架台に防振ゴム付き変
圧器
(震災時は耐振ストッパが未
調整)
防振架台により、変圧器変
位量を吸収できず
9
受変電設備の被害状況
変圧器の揺れにより、一次側圧着端子部の破損及び端子部の破損
10
受変電設備の被害状況
変圧器の揺れにより、二次端子部と筐
体間で相間短絡が発生
一次導体の破断により、鉄心(接地)と短
絡しアークにより変圧器が焼損
11
受変電設備の被害状況
防振装置:スプリング防振装置のため変圧器上部が大きく揺れた。
耐震ストッパー:クリアランス(隙間)は5mm程度の個所があった。
日建設計 講演資料 吉宮 弘志 より引用
12
受変電設備の被害状況
変圧器固定部の不備による損傷例
固定個所が密着し
ており、他に比べ
固定部及び取付け
は強固である。
13
受変電設備の被害状況
変圧器固定部の不備及び二次端子
部分に可とう導体は未使用
変圧器の導体振れ止めが離脱し、
二次端子及び二次側接続銅帯が
変形
14
受変電設備の被害状況
• 油入変圧器1500kVA
防振ゴム部の損傷及び
変圧器本体の歪み
15
受変電設備の被害状況
ストッパが無いため、変圧器移動に
より防振ゴムが破断
破断した防振ゴム
16
対策検討
項目
要因
対策
変圧器の揺れ(変位量)
防震ストッパが正しく設置されてい
ない
・定められた設定値で設置する
・頭(肩)部へストッパを追加する
・本体をワイヤ等で固定する
高圧接続端子部の破断
電線の余長が不足している
(特にS相の破断が多い)
変位量+αの電線長とし端子部の
ストレスを提言する
可とう導体の柔軟性不足
揺れへの余裕が小さい
前後左右への可とう性確保
可とう性の高い電線の使用
LBS
可とう導体
防振架台
17
今後の対応
取付け機器の変位等により、導電部に引張り力が加わるような場合、
例えば、変圧器一次側は余長を設ける事で、圧着端子等の接続部
へのストレスを減少させる事ができる。
18
今後の対応
圧縮端子
圧着端子
銅管端子
圧着端子に曲げ作用が働く個所は、圧縮端子又は銅管端子等を使用する事も対応
策の一つである。
19
今後の対応
丸より線型ケーブル
可とう端子
90°ねじり可とう端子
変圧器二次導体は、可とう性の高い電線(例えばMLFCのような)又は、
より可とう性のある「丸より線型ケーブル」を使用するのも対応策の一つで
ある。
また、可とう端子の場合は90°ねじり、前後左右の可とう性を高めるのも
変位対策として有効である。
20
今後の対応
変圧器
○
×
変圧器をCチャン等の金具を用いて固定する場合、金具固定用ボルトの能力
を満足させるため、ボルトは固定される側と密着させること。
21
今後の対応
上部触れ止め例
変位量を抑えるため、変圧器の上部に盤筐体を利用して触れ止めを設置する。
配線、固定方法等今後の検討課題はあるが、オプションとして盤筐体との連結を可能にする固定アダ
プターの新設を機器メーカで検討中である。
22
今後の対応
変圧器(TR)の耐震ストッパの隙間管理及び配線余長管理対策
・変圧器設置要領書等の制定
・施工区分・責任区分の明確化(施工者、盤製作者、変圧器製作者)
・変圧器耐震ストッパの隙間管理値の設定(2∼3mm)
・変圧器への配線余長の設定
(例えば、変圧器上部の想定振れ幅の1.5倍以上の余長)
・制作図、取説への耐震ストッパの隙間管理値の明示
・品質管理の徹底(試験成績書への項目追加等)
23
浸水に対する対策
• 器具の水没状態
(1) 変圧器
全水没盤
浸水による水没
一部水没
24
浸水に対する対策
• 器具の水没状態
(2) 高圧遮断器
水没(操作部側)
盤内(機器本体)
25
浸水に対する対策
• 器具の水没状態
(3) 配線用遮断器類
前面側水没状況
盤内部 裏面側水没状況
26
浸水に対する対策
• 器具の水没状態
(4) 破損状況
盤内上部高低圧回路
遮断器部回路
* 全体的に水没を除き、機器及び器具の破損は見られない。
27
浸水に対する対策
• 施工状態
(1) 内部機器の固定
(2) 通線口の処理
(3) 地上変台の固定
機器、器具の固定状態は良好である。
また、通線口の処置も問題はない。
28
換気構造
基礎台通気口
通気口面積を比較するため、500mm幅間に、丸孔及び楕円孔の通気口が上記
のように設けられていたと仮定すると、
丸孔の通気口面積 :S=3.14×25×25×5×0.35=3434mm2
(0.35:パンチングメタルの開口率)
楕円孔の通気口面積:S=3.14×25×4.5×20=7065mm2
計算結果から楕円孔は丸孔より7065−3434=3631mm2 (約2倍)大きい。こ
の差が各種要因との相乗により、盤内部への浸水量に差ができたと推定する。
29
換気構造
床板通気口
通気口の形状は、打抜き楕円孔、パンチングメタルの二種類が使用されている。
床板は地上変台の内部であり、水没に直接影響されないが、基礎台の内側に浸
水した水が床板通気口を浸水口として、地上変台内部へ浸水したと考えられる。
30
箱体構造
扉と箱の隙間へは図のように
全周にパッキンを取付ける。
パッキンは密閉性を高める
ため、扉を閉じたとき1mm
程度凹みができる厚みを使用
する。
パッキンは、耐老化性、反発弾性の良い合成ゴム、
又はスポンジ系の中から、扉と箱の隙間寸法に
合わせたものを使用する。
31
通気口の取りやめ又は最小化
(1) 箱体屋根部に断熱材取付け
箱体天井の内部を断熱材で覆い、太陽の
輻射熱による地上変台内部の温度上昇を
抑制する。
(2) 屋根部の二重化
(天井部分の二重構造)
屋根部を二重化し天井板を設けることで、
箱体外被と天井板との間に隙間を設ける
ことができ、太陽の輻射熱による地上変台
内部の温度上昇を抑制する。
32
ダクト換気の採用
給気ダクトを内部又は外部へ設け、外気を床板下部へ送り込み、盤内部に蓄積す
る熱量は機械換気を用いて排気する。
排気
換気ファン
外気吸入
ダクト
33
浸水設備の応急再利用時の注意事項
使用可能な器具の判別
電気設備については、外観の状況、清掃後の絶縁抵抗の回復状態、絶縁耐力試
験の結果を基に、再利用の可否について判断する。
高圧真空遮断器は、構造的にも海水を含んだ汚泥を取り除くことは難しく、事故が
発生した場合不動作が懸念されるため、再利用はせず交換をする必要がある。同
様に、低圧の配線用遮断器や電磁接触器も海水を含んだ汚泥を取り除くことは難
しく、再利用はせず交換をする必要がある。
34
浸水に対する対策
(1) 絶縁抵抗
吸湿処理をした後に、高圧回路においては1000V、低圧回路においては500V絶縁
抵抗計(メガー)で測定し、下記の値以上であることを確認する。
電路の使用電圧区分
対地電圧
(非接地式電路においては線間の電圧)
300Vを超えるもの
絶縁抵抗値(MΩ)
150V以下
0.1以上
150Vを超え300V以下
0.2以上
0.4以上
電気設備技術基準第58条
(2) 絶縁耐力
災害復旧の緊急時対応として、復旧を優先することから常規対地電圧3.81kV
1分間印加による確認を提案する。
常規対地電圧=6.6kV/√3=3.81kV
35
まとめ
各種の電気設備等は規格、基準に基づき制作され設置されている。
しかしながら、これら規格、基準は今回のような地震・津波災害に対応した
内容で制定されていないのが実情である。
電気設備のインフラを含め、要因、対策を生かすことで電気設備に対して
の信頼性向上に寄与できると考える。
36
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