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Economic Indicators 定例経済指標レポート

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Economic Indicators 定例経済指標レポート
EU Trends
ギリシャに春の嵐
発表日:2014年11月19日(水)
~来春の総選挙に備える~
第一生命経済研究所 経済調査部
主席エコノミスト 田中 理
03-5221-4527
◇ ギリシャでは来春にも議会の解散・総選挙が行われる可能性が高まっている。関連法規から、大まか
な政治日程を見通すと、議会の解散が2月中下旬、総選挙が3月中下旬、新大統領選出が5月前後と
なる可能性が高い。さらに、連立協議の決裂で2012年のように再選挙が行われる場合、新大統領の選
出は6月初中旬にずれ込む。
◇ 来春にかけてはギリシャの政治リスクが意識されやすい。総選挙で急進左派連合が政権を奪取すれば、
EUとの関係悪化や改革停滞が懸念される。追加支援協議が年内に決着していない場合、新政権発足
まで棚上げされる恐れがある。急進左派連合が交渉相手となる場合、支援協議はさらに難航しよう。
ギリシャでは次期大統領の選出が難航し、議会の解散・総選挙が行われる可能性が高まっている(詳細
は10月6日付けレポート「ギリシャに政局の秋
~総選挙と政権交代の可能性が高まる~」を参照された
い)。本稿では、政治リスクや政治空白の可能性が高まる時期を探るうえで、大統領の選出と議会の解散
手続きについて改めて整理しておく。
ギリシャ共和国憲法によれば、大統領の任期は5年で、現職が退陣する1ヶ月前までに議会(定数300)
での間接選挙で選出される。1回目の投票で3分の2以上の賛成票(200票)を獲得する候補がいなければ、
5日後に再投票が行われる。2回目の投票で3分の2以上の賛成票(200票)が得られなければ、5日後に
再々投票が行われる。3回目の投票で5分の3以上の賛成票(180票)が得られなければ、10日以内に議会
を解散し、新議会の召集後に速やかに大統領の選出手続きに入る。新議会での1回目の投票(通算で4回
目の投票)で5分の3以上の賛成票(180票)が得られなければ、5日後に再投票が行われる。2回目(通
算5回目)の投票で過半数(150票)が得られなければ、5日後に再々投票が行われる。3回目(通算6回
目)の投票では、最多票と次点の候補者間で決選投票が行われる。決選投票の同数となった場合の憲法規
定はないが、くじ引きを行うとする見解と再び決選投票を行うとの見解がある1(図表1)。
1
国立国会図書館調査及び立法考査局『基本情報シリーズ⑪ 各国憲法集(5)ギリシャ憲法』(2013 年 2 月)
を参照した。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
(図表1)ギリシャ議会での大統領の選出手続き
第1回投票(大統領の任期満了の1ヶ月前までに)
議会の2/3以上(200票)の賛成
第2回投票(第1回投票で選出できなかった場合に5日後)
議会の2/3以上(200票)の賛成
第3回投票(第2回投票で選出できなかった場合に5日後)
議会の3/5以上(180票)の賛成
議会解散(第3回投票で選出できなかった場合に10日以内)
新議会下で選出手続き継続
第4回投票(新議会の召集後速やかに)
議会の3/5以上(180票)の賛成
第5回投票(第4回投票で選出できなかった場合に5日後)
議会の1/2以上(150票)の賛成
第6回投票(第5回投票で選出できなかった場合に5日後)
第5回投票の上位2名で決選投票
第7回投票(第6回投票が同数の場合速やかに)
くじ引きもしくは再び決選投票
出所:ギリシャ憲法より第一生命経済研究所が作成
大統領候補の人選は引き続き難航している模様で、現在の連立与党は3回目までの投票で大統領を選出
するのに必要な180票を集めるのが難しいと見られている。ただ、新政権が発足している状況下では、150
票の獲得は可能とみられ、通算5回目までの投票では新大統領が選出される可能性が高い。こうした規定
に基づき、ラフな政治日程を計算してみる。パプリアス現大統領の任期は来年3月12日。1ヶ月前までに
次期大統領を選出するためには、1回目の投票が1月下旬から2月初旬。3回目の投票が2月中下旬。直
後に議会を解散し、総選挙が行われるのが3月中下旬。速やかに政権が発足すれば、3月下旬から4月上
旬に新議会が召集。通算5回目の投票が行われるのが4月中下旬と言ったところだろうか。政権発足に手
間取る場合、最大2週間程度を連立協議に費やす可能性があり、5月初中旬にずれ込むことになる。
2012年のように総選挙後の連立交渉が決裂し、再選挙が行われる場合には、新大統領の発足時期がさら
にずれ込む。関連規定を確認しておくと、議会の解散から30日以内に総選挙が行われる。単独過半数を獲
得した政党がいる場合、同党の党首が首相に任命され、内閣を組織する。新首相は総選挙から30日以内に
新議会を召集する。単独過半数を獲得した政党がいなければ、第1党の党首に連立政権の交渉権限が付与
され(3日間)、交渉が不調に終われば第2党の党首に連立政権の交渉権限が付与(3日間)、それも不
調に終われば第3党の党首に連立政権の交渉権限が付与される(3日間)。第3党までの交渉が全て不調
に終わった場合、大統領が全党首を集めて連立発足の可能性を模索する。大統領の調停も不調に終われば、
選挙管理内閣を組織したうえで議会を再び解散し、再選挙を行う(図表2)。以下、これを繰り返す。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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2012年の例に倣えば、5月25日に総選挙が行われ、連立交渉が決裂し、6月17日に再選挙が行われた。
(図表2)ギリシャ総選挙での政権発足手続き
総選挙(議会解散から30日以内)
単独過半数を獲得する政党がいれば政権発足へ
連立協議①(単独過半数の獲得政党がいない場合)
第1党党首が連立協議を主導
連立協議②(連立協議①が3日以内に成功しない場合)
第2党党首が連立協議を主導
連立協議③(連立協議②が3日以内に成功しない場合)
第3党党首が連立協議を主導
連立協議④(連立協議③が3日以内に成功しない場合)
全党首を集めて大統領が調停
議会解散(連立協議④が成功しない場合)
選挙管理内閣を組織したうえで議会を解散
再選挙(議会解散から30日以内)
単独過半数を獲得する政党がいれば政権発足へ
連立協議(単独過半数の獲得政党がいない場合)
以下繰り返し
出所:ギリシャ憲法より第一生命経済研究所が作成
現在の世論調査では急進左派連合がリードしているが、単独での過半数獲得は難しい情勢となっている。
連立交渉が難航し、再選挙となる恐れもある。再選挙後の連立交渉も時間が掛かる場合、新大統領の発足
は約1ヶ月後ずれする。通算5回目の投票で決まる場合には6月初中旬にずれ込む計算となる。2012年に
危惧されたように再々選挙となった場合にはさらに1ヶ月ほど後ずれする。こうしてみると、議会の解散
が決まる2月中下旬、総選挙が行われる3月中下旬にかけてはギリシャの政治リスクが意識されやすい。
急進左派連合が政権を奪取すれば、対EU関係の悪化や改革停滞が懸念される。また、追加支援協議が来
年にずれ込む場合、次期政権発足まで協議が棚上げされる恐れもある。急進左派連合が政権に就けば、E
U側の態度も硬化し、支援協議が難航する恐れがさらに高まる。来年春から来年央にかけては、ギリシャ
の政局不安が再燃するリスクに注意が必要だろう。
以上
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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