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第 24 回 ISO/TC 4 沖縄総会報告
第 24 回 ISO/TC 4 沖縄総会報告 第 24 回 ISO/TC 4 会議日本代表団団長 高木安廣(NTN 株式会社) 2009 年 6 月 29 日~7 月 3 日にわたり,ISO/TC 4(転がり軸受専門委員会)の本会議,6 つの SC(分科委員会)会議,1つの WG(作業グループ)会議及び1つの Ad hoc 会議(特 別会議)が,沖縄県宜野湾市の沖縄コンベンションセンターにて開催された。日本で開催 される TC 4 会議としては,1995 年の横浜会議以来 14 年ぶりである。 1.会議日程と主な議題 沖縄総会の日程と,各会議の主な議題を表 1 に示す。 表 1 沖縄総会日程と主な議題 月 日 会 議 名 主 な 議 題 6 月 29 日 ISO/TC 4/WG 17 ・TC 213 (製品の寸法及び幾何特性の仕様及び検証)の進捗報告 (月) (GPS) ・TC 4 へのアクションプラン提言 ISO/TC 4/CAG ・TC 4 組織再編提案の討議 6 月 30 日 ISO/TC 4/SC 9 ・改正発行規格の見直し (火) (円すいころ軸受) ISO 355 (円すいころ軸受-主要寸法) ISO 10317 (円すいころ軸受-呼び番号方式) ・NP 投票結果の確認 ISO/TC 4/SC 6 (インサート軸受) ・ISO 9628:2006/PDAM1 (インサート軸受及び偏心固定輪)の審 議 ・ISO/CD 3228 (インサート軸受用鋳造及び鋼板軸受箱)の審議 ・ISO/CD 12225 (インサート軸受ユニット)の審議 ISO/TC 4/SC 11 ・ISO 13012-1&-2 (LM アクセサリー)の見直し確認 (リニア軸受) ・ISO/DIS 12091-1&-2(リニアレールガイド)の審議 7月1日 ISO/TC 4/SC 7 ・技術討議 (水) (球面滑り軸受) ISO 6811(用語)定期見直し ISO 12240-1 (ラジアル球面滑り軸受)定期見直し ISO 12240-2 (アンギュラ球面滑り軸受)定期見直し ISO 12240-3 (スラスト球面滑り軸受)定期見直し ISO 12240-4 (ロッドエンド軸受)定期見直し 月 日 会 議 名 ISO/TC 4/SC 8 主 な 議 題 ・技術討議 (定格荷重及び寿 ISO/TS 16281(合成荷重を受ける軸受に対する定格寿命計算 命) 方法)の正誤票発行 ISO 76(静定格荷重)定期見直し ISO 15312(熱定格回転速度)定期見直し ISO 14728-1(リニア軸受-動定格荷重及び寿命)定期見直し ISO 14728-1(リニア軸受-静定格荷重)定期見直し 7月2日 ISO/TC 4/SC 4 ・ISO/FDIS 5753-1(ラジアルすきま)の審議 (木) (公差) ・ISO/CD 5753-2.2(アキシアルすきま)の審議 ISO/TC 4/Ad hoc ・ISO/WD 12297-1(鋼製ころ)の審議 (鋼製ころ) 7月3日 ISO/TC 4 ・TC 4 幹事国報告 (金) (転がり軸受) ・TC 4/WG 及び TC 4/SC 業務報告,定期見直し結果報告 ・TC 4 の再編 ・次回会議開催予定 2.出席者 今回の沖縄総会へは,10 ヶ国,計 37 名の参加者であった。世界経済同時不況の影響もあ り,前回パリ会議の 11 ヶ国・61 名の参加者と比較すると,大幅に減少した。また,参加国 数ではオランダが不参加の為,パリ会議と比べて 1 ヶ国の減少となった。 会議別・国別の出席者数を表 2 に示す。日本以外の参加者では,中国及びドイツの参加 者が各 6 名と多く,国策としての国際規格への積極関与の姿勢がうかがえた。 会議の席順が,全くの偶然であるがアジア勢と欧州勢が向かい合う形となり,議論も日 本対欧州といった流れになった。 また,欧州勢会議出席メンバーの多くが古参であり,日本の参加者が定期的に代わって ゆくのと比較すると,欧州勢との対応体制の違いを感じた。今後 TC 4 会議にて日本がリー ダーシップをとるに際しては,長期間にわたり参加可能な人材育成と確保が必要であると 考える。 表 2 会議別・国別出席者 メンバー国 6 月 29 日 WG 17 CAG 30 日 7月1日 SC 9 SC 6 SC 11 SC 7 SC 8 2日 3日 SC 4 Ad hoc TC 4 TC 4 幹事 1 1 1 1 1 1 1 1 1 TC 4 議長 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 スウェーデン 1 1 1 1 1 1 1 1 1 アメリカ 2 2 2 2 2 イギリス 1 1 1 1 1 オーストリア 1 1 1 1 ドイツ 6 6 5 フランス 1 1 ロシア 1 ベルギー 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 5 5 4 6 4 2 6 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 中国 6 6 6 6 6 6 6 6 1 4 日本 7 7 6 8 10 7 11 9 2 11 合計 29 29 27 29 31 25 31 29 8 31 TC 4 沖縄会議参加者(TC 4/WG 17 会議後に撮影) 3.会議の概要 各会議共に,意見表を事前に提出していた日本と欧州勢との間にて審議が行われた。各 会議の概要を以下に記載する。 (1)WG 17(GPS:幾何公差仕様) 2009-06-29 09:00-12:00 GPS を TC 4 規格に採り入れてゆく事を確認した。まず ISO 199(スラスト軸受-公差), ISO 492(ラジアル軸受-公差),ISO 582(面取寸法-最大値)の 3 規格にて検討をおこな い,2013 年までに改正作業の完了を目指すこととなった。 GPS の採用に当たっては各国の認識を共通にする必要があり,Workshop meeting(作業部 会)を 2009 年 11 月 16 日~18 日にドイツで開催することが決まった。この会議には TC 213 のメンバーも参加する予定。この Workshop meeting には各国に参加要請があり,日本から はスペシャリストとして 2 名が参加する予定と回答した(参加総計 15 名の予定)。 また,次回 TC 4/WG 17 会議は 2010 年 3 月 15 日~17 日にスウェーデンで行う予定であ る。 (2)CAG(Chairman Advisory Group:TC 4 組織検討) 2009-06-29 13:30-17:00 SC を廃止し TC 4 直下の WG のみの組織へ再編するという提案(ISO/TC 4 N 1430)に対 して事前投票が行われた。今回の会議では,その結果に基づき討議が行われた。 日本が主張していた,SC を廃止し TC 4 直下の WG のみの組織へ再編することの合意は 得られなかったが,現在の SC の業務範囲を見直した SC とする事を TC 4 に提案すること になった。 なお,CAG は TC 4 業務全体に対しての計画及び方向性を決めるため,討議の場として存 続する。 新 SC の内容を以下に記載する。 ・ 従来の SC 4(公差)の業務範囲を拡大し,新 SC 4(用語及び定義・寸法・公差・GPS) とする。 ・ TC 4/WG 17 は新 SC 4 管轄へ移行する。 ・ 従来の SC 5(針状ころ軸受)の業務範囲を拡大し,新 SC 5(自動調心ころ軸受・円筒 ころ軸受・針状ころ軸受)とする。 ・ 従来の SC 6(インサート軸受)の業務範囲を拡大し,新 SC 6(玉軸受・インサート軸 受・鋼球)とし,新 SC 6 の幹事国として日本がノミネートされた。これは,特筆すべ きことで,投票で承認が得られれば,TC 4 において初めて日本が SC 幹事国になる。 (3)SC 9(円すいころ軸受) 2009-06-30 09:00-09:20 昨年提出された 4 件の NP(新業務項目提案)に対する投票について,4 件とも否決され 廃案になったという結果報告があった。 2010 年から 2012 年までの SC 9 の議長に米国の Bhatia 氏を再任した。 (4)SC 6(インサート軸受) 2009-06-30 10:30-11:30 現在進行中の 3 規格に関しての討議を行った。現在の議長国は米国であるが,実質的な 業務は日本が行っている。この為,討議も日本とドイツが中心となって行われ,修正案を 日本が作成し米国へ送付する事となった。その内容を以下に記載する。 ・ 鋳鉄製,鋼板製ハウジングの規格案 DIS 3228 について,300 シリーズは日本案にドイツ 案を加え,200 シリーズは現規格に日本案を加えて,修正 CD として作成する。 ・ ISO 9628:2006/PDAM1(インサート軸受及び偏心固定輪の追補案)の偏心部に関する仕 様を規定した Table 11 及び 12 の削除の要求がドイツからあり,修正案を作成する。 なお,インサート軸受ユニット規格案 CD 12225 に対する投票については,否決され廃案 になったという結果報告があった。 (5)SC 11(リニア軸受) 2009-06-30 13:30-15:30 発行済みのリニア軸受関連規格 2 件の投票結果報告及び作成中の規格案 1 件の審議が行 なわれた。 ・ ISO 10285:2007(スリーブ形リニア玉軸受)の附属書の表について,日本からの修正提 案について検討した。修正するか削除するかは,次回の定期見直し時に SC 11 の幹事が 案を出す。 ・ ISO 13012:2009(スリーブ形リニア玉軸受-附属品)は DIS 及び FDIS 投票結果の報告 を受け,規格の正式発行の確認を行った。 ・ DIS 12090 Part 1 及び Part 2(循環式ボールとローラのリニアレールガイド)について は,各国意見に基づく修正案がいまだ回付されておらず,修正案発行予定は大幅に遅れ ている。会議の場に於いて,アメリカから用語の修正案,ドイツから走行平行度グラフ の修正案が提示された。幹事国より,アメリカ及びドイツの修正案と DIS 投票時の各国 意見を加味して,早急に修正案を回付するとの発言があった。通常は,DIS の次のステ ップとしては FDIS 段階へ進むが,修正事項が数多くあるため再度 DIS 投票とすること が決まった。 (6)SC 7(球面滑り軸受) 2009-07-01 09:00-10:00 5 規格について定期見直しが行われ,各国(日本,イギリス,ロシア)からの意見内容が 紹介された。指摘事項の主なものは編集上のものである。今後の改正には,今回提出され た意見を盛り込み,かつ GPS を適用し,5 年以内に改正することとした。 昨年度に,ISO/TC 4/SC 7 から球面滑り軸受の担当を,TC 123(平軸受)に移すという話 が出ていた。会議にて,その背景の説明を求めたが,“滑り軸受”ということであるので, “転がり軸受”の範疇を扱う TC 4 は相応しくないという説明であった。 日本より,球面滑り軸受の製造は転がり軸受製造業者が主であり,TC 4 のままでよいと の発言を行った。 また,SC 7 の議長が不在なので,いつ決めるのかという質問を日本から行ったが,幹事 国ドイツより,NP が出たときにそれに相応しい議長を決めるという回答があった。 (7)SC 8(定格荷重及び寿命) 2009-07-01 13:30-17:00 昨年度に発行された規格 3 件及び定期見直し規格 4 件に関する討議を行った。 SC 8 の議長が交代し,Mr. Martin Correns (Schaeffler)が今後 6 年間勤めることになった。 ① ISO/TS 16281:2008(合成荷重負荷時の寿命計算) ・ 計算式の指数位置が,使用者の誤解をもたらす可能性があるため,正誤票 ISO/TS 16281:2008/Cor 1:2009 の発行が決定しており,その内容説明があった。 ・ その他の 2 件(ISO/TR 1281-1 及び-2)の計算式指数位置もまぎらわしい箇所があり, 次回改正時には修正して欲しい旨の要望を日本より出した。 ②ISO 76:2006(静定格荷重) ・ SI 単位として,MPa ではなく GPa を使うべきではないのかとの日本意見を出していた が,軸受分野では MPa の方が一般的であるので変更しないことになり,日本も合意し た。 ③ISO 15312:2003(熱定格回転速度) ・ 日本からの修正提案がすべて受理され,次回の変更時に反映されることになった。 ④ISO 14728-1:2004(リニア軸受-動定格荷重) ・ イギリス意見の編集上の提案は受理され,また日本より提案した図面変更 2 点とあわせ, 次回の定期見直し時に反映することになった。 ・ オーストリアから,ISO 14728 で使用されている ki の元になっている概略の曲線グラフ を加えるように要求があった。 ・ ドイツから,Rating life:5×104 meter の附属書への移動提案があったが,日本の反対意 見により現状どおり本文に残すこととなった。 ⑤ISO 14728-2:2004(静定格荷重) ・ 修正意見は,Part 1 と殆ど同じであるため,同様の内容で反映することを確認した。 (8)SC 4(公差) 2009-07-02 09:00-12:30 SC 4 の WG 2(公差の定義)及び WG 3(ラジアル軸受)の作業は終了しており,今回, 解散することを確認した。 また,オーストリアから,GPS に関係する TC 213 のサーバ及び ISO 規格ハンドブック の紹介を受けた。 ①ISO/FDIS 5753-1(ラジアル内部すきま) ・ CD が承認された。今後,FDIS が中央事務局より回付される予定。 ②ISO/CD 5753-2.2 (アキシアル内部すきま) ・ 4 点 接 触 玉 軸 受 の 呼 称 名 が Double-direction single-row angular contact ball bearing (four-point-contact ball bearings)となっているが,日本からの意見で,Four-point-contact ball bearings を最初に記載することになった(Double-direction…の記述のみでは 3 点接触玉 軸受も含まれ,問題が生じるため)。4 点接触玉軸受及び 3 点接触玉軸受の用語及び定義 に関し,オーストリア及び日本から案を提示することになった。 ・ アメリカ及び中国から,アキシアル内部すきまを測定するときの測定荷重又は測定荷重 に相当する変位量を決めるべきとの意見があった。しかし,日本およびオーストリアよ り,各社で内部設計が異なるので決めることは困難であるとの意見を述べ,提案は否決 された。 ・ 附属書 A に記載されている 500~1000mm のアキシアル内部すきまを,本文の Table 1 に加えるというイギリスの提案は,日本が反対したが賛成多数で本文に移されることが 決まった。 ・ 呼称名の問題(4 点接触玉軸受,3 点接触玉軸受)が解決した後,DIS として再回付が 行われる。 ③ISO 492(ラジアル軸受公差) ・ 日本より問題点についてプレゼンテーションを行った。指摘事項は次回の修正(GPS 適 用に伴う修正)の際に加味されることになった。 (9) Ad hoc(鋼製ころ) 2009-07-02 13:30-16:30 TC 4 議長より,エキスパートメンバーを主体とした少人数会議としたいとの要請があり, 日本より 2 名が参加した。 規格素案 WD 12297-1 に対し,JIS と DIN との公差表の違いが最も大きな課題となって おり,以下の項目について討議を行った。 ① 直径方向公差 ドイツから直径方向の公差について,JIS と DIN を複合した提案があり,現行 JIS との差異が小さく合意できる内容であったので,ドイツ案で合意した。 ② 端面振れ 端面振れは等級により規定する方法を提案し,等級 G 2 以下の端面振れのみ 6μm 以下とし,それを超える等級では JIS と同じ値とした。 この Ad hoc 会議の活動を正規の活動とするために,今後は WG 19 として活動する事と なった。 なお,セラミック製ころの規格化は時期尚早として中止となった。 (10)TC 4 本会議 2009-07-03 10:00-16:00 本会議は,経済産業省鬼束課長補佐(産業技術環境局基準認証ユニット産業基盤標準化 推進室)にもご出席いただき,各 SC 及び WG の議長又は幹事(あるいはコンビーナ)よ り決定事項及び進捗状況の報告が行われた。 ① ISO データベースの新案に関する,構造・使用方法・システムについてのプレゼンが TC 4 事務局からあった。また,2009 ISO Update として,ISO ルールの各種変更や注 意点・確認の説明があった。 ② GPS を TC 4 規格に取り入れることを推進する。WG 17 の名称を”Implementation of geometrical product specification (GPS) system into TC 4 standards”とする。 ③ ISO 199,ISO 492 及び ISO 582 の改正のための NP を発行する。Mr.Gergely をプロジ ェクトリーダーとし,GPS の適用に向けて 2009 年 11 月 16~18 日にドイツで Workshop を開催する。 ④ CAG は解散し AG 1(Advisory group 1)を設立する。AG 1 の議長の立候補を受けつ ける。 ⑤ ISO 5593(用語)への GPS 関連用語採用の検討は WG 18 で行い,2009 年 12 月 31 日 までにレポートを出す。 ⑥ SC 8 の議長としてドイツの Mr. Martin Correns を選出した。期間は 2009 年 7 月 15 日 から 6 年間。 ⑦ Ad hoc で討議した鋼製ころとセラミックころの規格化について,セラミックころの規 格化は時期尚早として中止することとなった。鋼製ころについては,WG 19 を設立す る。 ⑧ TC 4 /WG 7(リニア軸受用語)及び TC 4 /WG 14(鋼球及び窒化けい素球)は業務を 終了しており,解散する。 ⑨ SC 11 /WG 1(スリーブ形リニア玉軸受)は業務を終了しており,SC 幹事が解散手続 きをする。 ⑩ ISO 15242-3(振動測定方法)について,図 3 に関する正誤票を発行する。 ⑪ CAG の会議結果を受け, “新 SC 6 の幹事国を日本にする”という案が提示された。 以下にその抜粋を示す。 Ball bearings (including insert bearings) Scope: Standardization of all types and sizes of ball bearings and insert bearings, their accessories and housings, including boundary dimensions and tolerances *(This applies if agreed to transfer the secretariat to JISC.) ⑫ 次回の開催はヨーロッパで 2011 年 6 月に行う予定。また,2013 年は中国で行う予定。 4.あとがき 今回の沖縄総会は,那覇市より北約 10km に位置する,宜野湾市の沖縄コンベンションセ ンターにて開催された。 宜野湾市は東西が 6.1Km,南北が 5.3Km のやや長方形だが,市の中心部には在日米軍基 地があり,ドーナッツ型の市街地となってい る。海岸線はおおむね平たんで,比較的出入 りが少なく珊瑚礁が発達して遠浅をなして おり,約 9 万人の人口を擁した街である。 TC 4 会議は,西海岸線に面した,展示場, 会議場,劇場の,3 つの機能を有したコンベ ンションセンター内にて行われた。エリア内 にはビーチやマリーナ,海浜公園,屋外劇場, 体育館などの施設を有している。 会議会場の沖縄コンベンションセンターの一部 会議開催場所を沖縄とした理由は,日本の梅雨を避けるため,また会議室の費用が首都 圏の会議室などと比較しても安価であったためである。会議開催の前日に当初の思惑通り 沖縄の梅雨は明け,抜けるような青空で晴れ渡り,亜熱帯特有の高温多湿かつ焼けるよう な日差しで毎日 30 度を越える暑さであった。会議後に隣接したビーチへ行き日光浴を楽し む海外メンバーもおり,そうした参加者にとっては沖縄ならではの環境に非常に満足して いた様子であった。反面,連日の暑さに疲労を隠せない参加者もいたようだ。 会議室は,十分なスペースが確保出来,天井も広く,我々の工夫を凝らした座席レイアウ トのせいもあり支障なく会議を行うことが出来た。ただし飲食場所に関しては,レストラ ンはあるにせよ他は現地のローカルな飲食店ばかりで,特に海外勢は言葉の問題もあり多 少苦労をしていたようだ。それでも地元の食堂や居酒屋で食事を楽しんでいた様子であり, また我々日本人参加者も地元の食事とお酒で連日の疲れを発散させたことは言うまでもな い。メンバーの中で特に好評だったのが,コンベンションセンターの近くにある「うみち か食堂」で,昼食に連日通うツワモノもいた。ここは,安さ,美味さ,ボリュームと 3 拍 子揃った,お奨めの食堂である。 会議 2 日目の夕方は,懇親バーベキューを行った。肉,エビ,ホタテなどに野菜類という いたって安価な材料を使ったものであったが,泡盛やビールが飲み放題ということもあり, おにぎりや焼そばも提供され,パーティーは盛り上がり,親交を深めるのに有効であった ことは言うまでもない。ただ,ホスト役の中でも焼き担当は,沖縄の湿度と気温にバーベ キューの熱も加わって,会議とは別の熱気にビールが追いつかない状態だった。いずれに してもこの猛烈な暑さの中での行事は,参加者全員の記憶に強く残るものとなったはずだ。 懇親バーベキュー(6 月 30 日) 4 日目の会議終了後に,バスを仕立てて約 40 分離れた万座ビーチに,食事会の会場を移 した。会場は万座ビーチの湾に面しており,現地に到着したのがちょうど日の入り時刻に 近く,現地に到着するや否や,レストラン前の芝生でウェルカムシャンペンを受け取るの ももどかしく,一斉に砂浜に向かい写真を撮り捲っていた。 レストランに移動したのち,JISC 代表としてのスピーチを,経済産業省 鬼束課長補佐(産 業技術環境局 基準認証ユニット 産業基盤標準化推進室)より頂き,TC 4 議長 Gorenne 氏の挨拶と乾杯で会食が始まった。ここでも美味しい料理とワインなどの酒類が会場を盛 り上げ,さらなる親交を深めることが出来た。 食事会にて経済産業省 鬼束課長補佐の挨拶 (7 月 2 日) 食事会にて TC 4 議長ゴレン氏の挨拶 (7 月 2 日) ディナー帰りに雨(シャワーです)が降り,夜はかなり涼しくなった。ちなみに沖縄の 人はあまり傘を持っていない。つまり,雨脚が強く,傘があっても実質的に役に立たない, 雨(シャワー)が降ってきたら雨宿りすれば良い,との感覚であるようだ。また時間軸も 本土とは若干違うようだ。この時期の沖縄のサンセットは 7 時 30 分頃。那覇でスナック等 の飲み屋が開店するのが 8 時位からとの事で,少し時差のようなものを感じた。 TC 4 本会議風景(7 月 3 日) 小生の実感であるが,一日中英語の会議を終了し外にでると,見慣れた日本の景色とは 異なることもあり,一瞬“日本にいるのか?”と戸惑う毎日であった。海外にいるかのよ うな環境により,適度な緊張感を持って会議に臨むことが出来たように思う。 今回の沖縄会議に際しては,1995 年の横浜会議以来 14 年ぶりということもあり,当時の 関係者の方々もおられず,準備資料もほとんど手元にない中,会議準備にご尽力いただい た日本ベアリング工業会事務局の皆様,及び ISO 専門委員を主体とした ISO 対策転がり軸 受委員会の方々のご協力のもと,無事に終了することが出来たことを,今回の団長として 深くお礼申し上げたい。 なお,会議や食事会の際に,TC 4 議長より, 「完璧な準備と運営に深く感謝する」という 賛辞を頂くなど,各参加者から感謝の声があったことを紹介しておきたい。日本での開催 は大変なことであったが,このような地道で誠実な貢献が今後一層国際標準化活動におい て日本の存在感を示すこととなり,それが我々の発言力を強化することに繋がっていくも のと考える。 最後に,この経済環境下において快く会議開催費用を負担していただき,海外からの参加 者にも十分に満足していただく環境を用意することが出来たのは,日本ベアリング工業会 技術部会各社のご理解によるところが大きい。あらためて心よりお礼申し上げます。 会議終了後の日本代表団