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Technical news Vol.29 特集① ユース年代日本代表の戦い 特集② クロード・デュソー JFA テクニカルアドバイザーインタビュー JFA アカデミー福島での3年間と育成への提言(vol.1) 2008 ナショナルトレーニングキャンプ U-16 2008 ナショナルトレセン U-14 財団法人 日本サッカー協会 ユース年代日本代表の戦い 2 特集② クロード・デュソー JFA テクニカルアドバイザーインタビュー JFA アカデミー福島での3年間と育成への提言(vol.1) 2008 ナショナルトレーニングキャンプ U-16 2008 ナショナルトレセン U-14 49 13 53 連載 キッズドリル紹介・第 24 回 16 連載 一語一会 17 GK プロジェクト活動報告 18 2008 U -18/U -15 GK キャンプ 22 JFA U -17 地域対抗戦 26 JFA アカデミー福島活動報告 28 モデル地区トレセン訪問記 30 各地のユース育成の取り組み 32 指導者養成事業報告 35 海外で活躍する指導者⑨ 46 連載 指導者と審判員、ともに手を取り合って… 48 JFA エリートプログラムキャンプ報告 56 47FA ユースダイレクター研修会報告 58 技術委員会刊行物・販売案内 60 A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA 63 vol.29 1 3 2 4 Technical news 特集① ① U-17 日本女子代表(FIFA U-17 女子ワールドカップ ニュージーランド 2008 より) ② 2008 ナショナルトレセン U-14 より ⓒ AGC/JFAnews ③ U-19 日本代表(AFC U-19 選手権 サウジアラビア 2008 より)ⓒ JUN MATSUO ④ 47FA ユースダイレクター研修会より ○制作協力:エルグランツ㈱ ○印刷:製本:サンメッセ㈱ ※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。 本誌は JFA 指導者登録制度において、所定の手続きを行った JFA 公認指導者の方に無償で配布されています。 1 1 NORIKO HAYAKUSA JUN MATSUO Youth 特集 ① ユース年代日本代表の戦い U - 20 日本女子代表 FIFA U - 20 女子ワールドカップ チリ 2008 【報告者】佐々木則夫(U -20 日本女子代表監督) 切な施設を確保した。 トレーニングの初期段階では、時差と現 地の気候への順応(日本は初冬、 チリは初夏: 高原性気候で最高気温は 30 度以上)に留 意した。中期以降は、チーム戦術と対戦相 手を想定したゲーム戦術の確認を中心に、 試合への準備を行った。 宿泊施設は、基本的に選手は 2 人部屋と して、メディカル、リラックス、キットの 各部屋を別に用意した。食事は 3 食ともに バイキング形式であり、チームの要望に柔 軟に対応してメニューの変更などが行われ た。チームごとに食事スペースが異なって いたため品数自体は豊富ではなかったが、 質・量ともに必要十分なものであった。 1. 日時・場所 2008 年 11 月 10 日〜 14 日:国内事前キャ ンプ(鹿島ハイツ) 2008 年 11 月 15 日〜 19 日:チリ直前キャ ンプ(サンチアゴ) 2008 年 11 月 20 日〜 12 月 1 日:本大会 (サ ンチアゴ、チジャン) 2. 目的 (1)なでしこジャパンにつなげる選手の 育成 (2)FIFA U-20 女子ワールドカップで の上位進出(ベスト 4) 3. 現地直前キャンプ 4. 本大会 (1)グループステージ 日本は、グループステージを 3 戦全勝で 突破した。各試合の概略を下記に示す。 サンチアゴのホテルを宿舎として、La Florida(試合会場) 、地域のサッカー協会や 民間クラブの施設を利用してトレーニング を行った。現地組織委員会から事前に用意 された施設はピッチが正規の大きさより小 さく、現地で調整の上、トレーニングに適 第 1 戦 vs カナダ 2 - 0(前半 2 - 0) (サンチアゴ:La Florida stadium) グループA ナイジェリア イングランド ニュージーランド チリ ナイジェリア グループB アメリカ フランス 中国 アルゼンチン アメリカ 0 2 0 グループC 日本 ドイツ カナダ コンゴ民主共和国 1 0 1 グループD ブラジル 朝鮮民主主義人民共和国 ノルウェー メキシコ 2 1 2 0 △ ● ● ● ○ ● 1 3 2 3 0 3 日本 ● ● ● 2 2 3 ブラジル 2 0 0 ● ● ● 3 3 5 イングランド 1 1 0 △ △ ● フランス 1 1 2 3 ○ 0 0 1 ● ● 2 3 2 1 0 3 2 1 ドイツ ○ ● ● DPR.K 1 2 5 ○ 2 ● ● 3 5 ニュージーランド 3 1 ○ △ 2 1 3 ● 4 0 2 0 2 2 0 中国 ● ○ 2 0 △ 0 カナダ ○ ○ 0 1 ● 4 ノルウェー 3 3 1 ○ ○ ● 0 2 2 2 2 4 チリ ○ ○ ○ 0 0 3 アルゼンチン 3 3 0 3 5 4 ○ ○ △ コンゴ ○ ○ ○ 0 1 0 1 0 0 メキシコ 5 5 2 ○ ○ ○ 0 1 1 勝点 勝 7 5 4 0 2 1 1 0 勝点 勝 6 6 4 1 2 2 1 0 勝点 勝 9 6 3 0 3 2 1 0 勝点 勝 9 6 3 0 3 2 1 0 分 1 2 1 0 分 0 0 1 1 分 0 0 0 0 分 0 0 0 0 敗 0 0 1 3 敗 1 1 1 2 敗 0 1 2 3 敗 0 1 2 3 得点 失点 差 6 4 7 3 3 2 7 8 3 2 0 -5 得点 失点 差 6 5 2 1 2 4 2 6 4 1 0 -5 得点 失点 差 7 8 5 1 2 5 3 5 4 1 12 -11 得点 失点 差 11 10 4 2 2 9 6 4 7 -3 12 -10 順位 1 2 3 4 順位 1 2 3 4 順位 1 2 3 4 順位 1 2 3 4 決勝トーナメント グループステージ FIFA U-20女子ワールドカップ チリ 2008 体格を生かした相手のロングフィード攻 撃をさせないため、 前線からの素早いプレッ シングと守備の連動により、 高い位置でボー ルを奪うことを徹底した。立ち上がり、守 備面ではチーム戦術が機能しボールを奪う ことができた。しかし攻撃時には、消極的 なプレー選択が多く効果的な攻撃を行えな かったが、個人でのしかけなど、積極的な プレーの選択が増えるにつれてボールを動 かし、積極的なアクションから効果的な攻 撃が行えるようになった。28 分に先取点、 40 分に追加点を奪い、その後もゲームを支 配した。 後半は、時折相手のロングフィードで押 し込まれる場面も散見されたが、チャレン ジとカバーを繰り返す連動した守備でボー ルを奪い、無失点でゲームを終えた。 第 2 戦 vs ドイツ 2 -1(前半 1- 0) (サンチアゴ:La Florida stadium) 身体資質とスピード、基本技術など優れ た個のタレントを擁するドイツに対して、 日本は前線からの連動したプレッシングで ボールを奪い、ボールと人が動きながら積 ナイジェリア (グループA1位) フランス (グループB2位) 日本 (グループC1位) 朝鮮民主主義人民共和国 (グループD2位) アメリカ (グループB1位) イングランド (グループA2位) ブラジル (グループD1位) ドイツ (グループC2位) <3位決定戦> 2 3 1 2 1 2 1 2 3 0 2 3 優勝: アメリカ 準優勝: 1 0 フランス 3 - 5 ドイツ 朝鮮民主主義 人民共和国 第3位: ドイツ h 極的にアクションすることでゴールを目指 39 分に FK から同点に追いつき、前半を終 した。前半中盤までは、相手の攻撃は制限 了。後半も、ボールを動かしながら優勢に するものの、相手にコンタクトプレーで競 試合を進めるが、60 分に再びペナルティー り負け主導権を握られる。前半終盤からは、 連動した守備が機能し、有効な攻撃ができ るようになった。 前半41分に先取点を奪い、 後半もやや優勢に試合を進めるが、61 分に 同点に追いつかれ、その後は拮抗した展開 が続いた。しかし、81 分に積極的な突破か ら追加点を挙げゲームを終えた。 エリア内で相手の強引な突破から失点を喫 する。その後も優勢に試合を進め、得点機 を数度つくるも、結局得点を奪えずにゲー ムを終えた。 日本はアジア予選時に比べて、試合内容、 ゲーム展開ともに格段の成長を体現したが、 DPR.K の壁を超えることができずに大会を 終えた。 第 3 戦 vs コンゴ 3 -1(前半 2 -1) (チジャン:Estadio Nelson Oyarzun) 個人とチームの戦術的完成度は低いもの の、優れた身体能力(先天的資質)に裏づ けられた個の力を持つコンゴに対して、日 本は 1、2 戦で出場機会の少なかった選手 を中心に試合に臨んだ。試合序盤は、ボー ルを動かしながら積極的なアクションで シュート場面を多くつくるものの、ミスか ら相手にボールを奪われ、前半 10 分で 2 得点に 1 失点と落ち着きのない展開となっ た。その後も、単純なミスやコミュニケー ション不足からボールを奪われ、攻守とも にちぐはぐな展開が続いた。後半に入り 78 分に 3 点目を奪いゲームを終えた。 (2)決勝トーナメント 準々決勝 vs 朝鮮民主主義人民共和国 1- 2(前半 1-1) (サンチアゴ:La Florida stadium) 優れた身体能力(鍛えられたパワー)と 基本技術、徹底したチーム戦術で戦う朝鮮 民主主義人民共和国(以下、DPR.K)に対 して、日本は前線からの連動したプレッシ ングでボールを奪い、ボールと人が動きな がら積極的にアクションするサッカーで試 合に臨んだ。試合序盤は、相手のロング フィード攻撃にも競り勝ち、ボールを支配 しながらも、決定的なシュート場面をつく れなかった。22 分、ペナルティーエリア内 での相手の強引な突破から失点を喫する。 NORIKO HAYAKUSA 5. 成果と課題 (1)成果 ①チームコンセプトの習得 攻守にアクションするための判断、連動、 連携、規律の質の向上において攻守に主導 権を獲得する内容であった。 これは、北京オリンピックでのなでしこ 同様の狙いでもあり、また導入は U-20 が 先駆けて行った。欧米対策(2007 年 AFC 女子アジアカップ予選、初戦オーストラリ ア)の狙いとして実施し、結果を 2007 年 のスウェーデン遠征、アジアカップ予選 (オーストラリア) 、2008 年 9 月のフラン ス遠征等で実証した。また、今回カナダ、 ドイツ等にも勝利し、欧米チームには 9 勝 1 分けと結果においても表されていた。 ②選手個々の大舞台でのベスト 8 の経験は、 今後の成長の兆しを強く感じた。また、な でしこジャパンへの強化として、強く手応 えも感じた。なでしこ同様、 技術、 個人戦術、 チームコンセプトでの連携等の質から、諸 外国、FIFA 等からも高い評価を得た。 ③ GK のボトムアップも挙げられる。上を 見ればきりがないが、GK3 人は三様、それ ぞれタイプの違う選手ではあるが対人に強 くなり、競り合い、ディフェンスラインの 裏の対応等、今回の経験を踏まえ、質の向 上が見られたのは、今後の見通しが明るい。 (2)課題 ①「ボールを奪い、ゴールを奪う、ゴール を守る」ベースの質、戦うメンタリティー が常にキャンプ時全般の課題となっていた。 選手には習慣化できるようにアプローチし てきたが、なでしこジャパンと比較すると、 ひいき目で見ても満足に至らない質であっ た。また、 相手のリズムのとき、 また殺気だっ た相手のプレッシャーにおいて、 技術、 判断、 コミュニケーション等がぶれてしまう時間 帯等を打開できない状況が、大会を通じて 見られた。特にドイツの立ち上がり、DPR. K、コンゴ戦全般に見られた。 NORIKO HAYAKUSA ②ゴール前の攻防、大会を通じたボール支 配率、シュート数は、どの相手にも勝りつ つも、ゴール数とベスト 8 の結果は満足の いくものではなかった。 その要因としては、攻撃面でシュートの 質、特にキックの強さと質、プレッシャー 下でのシュート、判断等が挙げられる。判 断においては、シュートで終わる意識が強 すぎて、 工夫が見られず崩しきれていなかっ た。 中盤でつくる局面からゴール前のしかけ の工夫、一瞬の隙を突く、観る質、意外性 アイデア(失敗を恐れない突破など)等が 不足していた。この点を達成したゴールは 8 ゴール中 4 ゴールで、支配率から考える と物足りない。 守備としては、 ①相手を数的優位で追い込みながら奪いき れずに、逆に不利に追い込まれた局面。こ の要因として、縦と横のチャレンジとカ バー、局面の変化に対するチャレンジとカ バーができなかった。1 対 1 の対応、第 1 守備者決定の判断の質が挙げられる。また 特にプレスバックの状況に応じた技術の質 が低かった。 ②攻撃から守備の切り替えの速さは、他の チームに比べれば速い方ではあったが、日 本としてはそこが勝負どころだと考えると、 前線での 2 次攻撃につなげる切り替え、遅 らせる対応、後方での予測、バランス、GK と DF との連携の素早い対応が勝つための 生命線と言える。 ③さらに優勝したアメリカと比較すると明 らかであるが、ともに対戦した DPR.K 戦を 検証してみると、日本はミス、ロスが重な る局面が多くあり、アメリカは重なるミス がなかった。また DPR.K の徹底した速い展 開と個の質を、 守備の個人戦術と冷静なチャ レンジとカバーで危なげなく対応できてい た。 フィジカル面の成果として、スタミナは 3 世界でも上位クラスで、小刻みに動きアッ の強化は急務であり、怪我の予防とプレー アの壁にしてやられた反省と、欧米対策の プダウンを繰り返し行う意志とコンセプト の幅を広げるために取り組む必要がある。 手応えのある傾向を今後のなでしこジャパ ンや、2009 年 AFC U-19 女子選手権(FIFA のもと、献身的に表現されていた。初戦の カナダ戦の両サイドの 4 人は、特にすばら しい動きでアップダウンできた。 課題はゴール前の攻防で、パワーを要す るプレーの連続、試合終盤でのパワーを要 するプレーにブレが生じてチャンスを逃し、 ピンチを招く要因となっていた。特に下腿 U-20 女子ワールドカップ予選)へとつなげ る最高の場であった。 この FIFA U-20 女子ワールドカップチリ 大会終了までの過程において、多くの方々 にご支援、ご協力いただき、深く感謝いた します。 6. まとめ 3 大会ぶりの大会としては、総合的には 今後につながる戦いと評価できる。目標で あるベスト 4 は達成できず、DPR.K のリア クションサッカーに予選から 3 連敗とアジ U -17 日本女子代表 FIFA U -17 女子ワールドカップ ニュージーランド 2008 【報告者】上田栄治(JFA 女子委員会委員長) ング不足があったり、また時期的にインフ (日テレ・ベレーザ/日テレ・メニーナ) 、 ルエンザの流行などもあり、 強化が難しかっ 井上由惟子(JEF レディース) 、 亀岡夏美(大 た。 原‐特別指定選手/JFAアカデミー福島) は、 AFC の大会を含めてトレーニングキャン その伸びも顕著であった。また、大分国体 プは 5 回、 約 40 日間活動し、 うち 1 回はオー で優勝した埼玉選抜で左 SB として出場し ストラリアのユースオリンピック大会に参 た竹山裕子(浦和)は、本来は SH である 加した。AFC の大会前にこの大会に参加で が国体での経験がワールドカップにつな きたのは良かった。海外遠征が初めてとい がった。 う選手が多く、3 月に行われる AFC U-16 選手権(マレーシア)のシミュレーション 3. 日本の戦い として、1 月のシドニーの暑さと大会を経 験できた。 (1)グループステージ AFC U-16 選手権はクアラルンプール(マ (10 月 30 日/ハミルトン) レーシア)で行われ、準決勝で中国を破り vs アメリカ(3-2) FIFA U-17 女子ワールドカップの出場を決 第 1 戦は優勝候補のアメリカと対戦した。 め、決勝では DPR.K に敗れ 2 位となった。 女子は今まですべてのカテゴリーで、公式 出場を決めてから本大会までは約 1 年半 戦でアメリカに勝利がなく、強豪アメリカ の期間があり、定期的に強化合宿を行い、 にどの程度戦えるか興味深かった。 また 2007 年夏にアメリカ、2008 年にオー 試合開始早々に相手のロングスローから、 ストラリアへの海外遠征を実施。選手たち GK と相手選手が交錯した中で失点した。 はワールドカップを目標に、所属チームで 嫌な流れとなったが、徐々に日本らしいパ も自分たちの課題に取り組んだ。選手それ スワークを駆使し、ゴールチャンスを多く ぞれがテクニックや体力的な課題を明確に つくった。 同点弾は MF 嶋田千秋(日テレ・ して常に意識し、代表チームと所属チーム メニーナ)の思い切りの良いミドルシュー が連携をとって進めたことは有効だった。 トがバーに跳ね返り、その直前からリバウ L リーグに出場している選手、岩渕真奈 ンドを予測して素早く反応した岩渕がしっ 1. はじめに この大会に参加したチームは 2006 年 9 月に立ち上げた。発足当時は佐々木則夫監 督(なでしこジャパン監督)が指揮してい たが、FIFA 女子ワールドカップのプレーオ フと AFC U-16 女子選手権の日程が重なっ たため、2007 年からは吉田弘監督にバト ンタッチした。約 2 年前に招集された当時 から比べると、このニュージーランドでの パフォーマンスは成長著しいものがあった。 FIFA U-17 女子ワールドカップは、朝鮮 民主主義人民共和国(以下、DPR.K)がし ぶとく戦って優勝した。日本は DPR.K に 2 年前の AFC U-16 選手権ではすべての部分 でかなりの差を感じて敗れたが、今回対戦 できればその差が測れたと悔いが残る。 この大会を目標にした約 2 年間の強化を 振り返って、今後に役立てたい。 2. 大会に向けた強化 2007 年 3 月に AFC U-16 女子選手権が 開催された。選手たちは中学 3 年生がほと んどで、受験のため強化合宿に招集できな い選手がいたり、所属チームでのトレーニ グループA ニュージーランド カナダ デンマーク コロンビア グループB コスタリカ ドイツ 朝鮮民主主義人民共和国 ガーナ ニュージーランド 1 2 1 グループD ブラジル イングランド 韓国 ナイジェリア 4 0 1 3 コスタリカ 5 2 1 ○ ○ ○ 0 1 0 日本 グループC 日本 アメリカ フランス パラグアイ ⃝ ⃝ ● 2 1 2 ● ● ● ○ ○ △ 0 1 0 1 2 カナダ ● △ △ ドイツ 3 7 7 0 1 2 1 0 1 ● 5 △ ● 1 3 アメリカ ブラジル 3 2 2 0 3 ○ 2 1 1 △ ● 1 3 イングランド 0 ● 3 3 0 ○ ● 0 1 デンマーク 1 0 ● △ 2 0 1 △ 1 1 1 1 DPR.K ● △ 2 1 △ 1 フランス 7 1 2 1 0 2 ○ △ 1 1 ● 6 韓国 ● ● ○ 2 3 1 コロンビア 3 1 1 0 3 1 ○ △ △ ガーナ ● ○ △ 1 1 1 1 2 1 パラグアイ 7 3 6 ○ ○ ○ 2 1 2 ナイジェリア 2 1 1 △ ○ ● 2 0 2 勝点 勝 3 5 5 2 1 1 1 0 勝点 勝 0 7 5 4 0 2 1 1 勝点 勝 9 4 4 0 3 1 1 0 勝点 勝 1 6 6 4 0 2 2 1 分 0 2 2 2 分 0 1 2 1 分 0 1 1 0 分 1 0 0 1 敗 2 0 0 1 敗 3 0 0 1 敗 0 1 1 3 敗 2 1 1 1 得点 失点 差 4 2 3 3 4 1 2 5 0 1 1 -2 得点 失点 差 1 9 4 4 8 3 3 4 -7 6 1 0 得点 失点 差 17 6 8 5 5 12 5 1 10 -2 16 -11 得点 失点 差 3 4 6 4 7 3 3 4 -4 1 3 0 順位 3 2 1 4 順位 4 1 2 3 順位 1 2 3 4 順位 4 2 1 3 決勝トーナメント グループステージ FIFA U -17女子ワールドカップ ニュージーランド 2008 デンマーク (グループA1位) 朝鮮民主主義人民共和国 (グループB2位) 0 4 日本 (グループC1位) PK 2 4-5 2 2 1 イングランド (グループD2位) ドイツ (グループB1位) カナダ (グループA2位) 韓国 (グループD1位) アメリカ (グループC2位) <3位決定戦> 延長 3 1 2 4 2 1 1 2 ドイツ 3 - 0 イングランド 優勝: 朝鮮民主主義 人民共和国 準優勝: アメリカ 第3位: ドイツ 特集① ユース年代日本代表の戦い Youth かり決めた。後半も 1 点先行されるが、亀 プステージ 1 位で評価の高かった日本に、 れるコンビネーションで躍動した。また 岡のロングシュートが決まって同点にし、 闘志を燃やして挑むという心構えがあった CB のポジションでラストパスやためをつ 交代出場した吉岡圭(FC VICTORIES)が と思われる。 くったのが岸川奈津希(浦和)で、 リスター 逆転ゴールを決めた。 日本はチャンスを多くつくりシュート数 は 20 対 9 と上回って内容的にもゲームを 支配できたが、パスが弱かったりファース トタッチが悪かったりとボールを失う場面 も多く、GK と DF の連携が悪く危ない場 面もあった。1 対 1 の守備、リスタートの 守備も改善したい。良いプレーやチャンス も数多くつくり、試合に勝ちながらも課題 も出た試合だった。 (2)グループステージ (11 月 2 日/ハミルトン) vs フランス(7-1) 相手のシステムは 1-4-2-3-1 で、日本と ほぼマッチアップする形で、GK をはじめ センターラインに好選手をそろえていた。 前半から攻勢をしかける日本は、相手を翻 弄(ほんろう)してゴールラッシュした。 攻撃陣がタイミング良く縦横に動いて、パ スワークも弾けるようにゴールチャンスを 創造し、フィニッシュの質も良く吉良知夏 (神村学園高等部)がハットトリックを達成 した。 ヨーロッパ 2 位でワールドカップに出場 したフランスに 7-1 で大勝した。攻撃面で は非常に良かったものの、守備面で基本が 徹底されていないことや攻守において GK と DF の連携がまずいという課題も残った。 (3)グループステージ (11 月 5 日/クライストチャーチ) vs パラグアイ(7-2) 2 連勝で準々決勝進出を決めて、第 3 戦 のパラグアイ戦はサブメンバー主体でグ ループ 1 位を狙った。サブにも経験させる こととレギュラーメンバーを休ませる狙い だったが、試合はいつもと違いギクシャク した。CB が退場処分を受け、しかも PK を決められ 1 点を追う形となったが、10 人になった方が緊張も解け、 動きが良くなっ た。結局 7-2 の大差でパラグアイを退けた。 この結果、狙い通り C グループ 1 位となり、 D グループ 2 位のイングランドと対戦する ことになった。日本は 3 連勝し、17 得点 5 失点で、 参加チーム中、 得点が一番多かった。 (4)準々決勝(11 月 9 日/ハミルトン) vs イングランド(2-2 PK4-5) イングランドはグループステージ 2 連勝 後の第 3 戦、 韓国に 0-3 で敗れて 2 位となっ た。韓国に負けたイングランドを軽視した ことはないが、どこかに隙があったのでは ないだろうか。逆にイングランドはグルー 日本は前半に先制したがロスタイムで同 トから 4 得点し、攻撃力のあるところを示 点にされ、後半 37 分に勝ち越したものの した。 またもロスタイムに追いつかれ、延長戦後、 4 試合で 19 得点はすばらしい出来だっ PK で敗れた。この試合で目についたのは、 た。まだまだ、フィニッシュの正確さは磨 イングランドの選手たちのスピード・パ かなくてはならないが、チャンスを多くつ ワー・リーチを生かした、日本を自由にさ くり、積極的にフィニッシュする姿勢は、 せない厳しいディフェンスだった。決して 今までにないものだった。 負けたくないというメンタリティーを発揮 していた。それに比べると日本はボールを (3)個々の課題改善のためのアプローチ 奪い合う場面で、身体を張らず軽かった。 監督が中心になって選手個々の課題の改 大事な試合で軽いプレーをしては、ボール 善についてそれぞれの選手が意識しながら を失うし、奪うこともできない。また正し 所属クラブと連携して取り組んだ。選手に いポジショニング・アプローチ/カバーリ よっては、トレーニングが週に 3 回しかな ングの速さなど、守備の基本の大切さを学 く体力的な問題が浮き彫りになった。吉田 ばなくてはならない。 監督は所属クラブの監督と相談して、高校 残念ながらベスト 4 進出はならなかった。 の男子と一緒のトレーニング、または自宅 しかし世界を相手に、日本の特長を発揮し 周辺での持久走などを実践させた。選手の て評価できる部分と、スピード・パワー・リー 体力的な面の向上は、トレーニングキャン チの差をどのように対抗するかという課題 プごとのフィジカルテストによって確認さ が残った。この差は、日本の女子サッカー れた。 が世界を相手にするときの永遠の課題であ る。 (4)メディカル面のアプローチ 女子選手は膝の深刻な怪我が多いため、 予防のトレーニングを日常的に取り入れた。 4. 日本の成果 ウォーミングアップの前は必ず選手それぞ (1)テクニック れが実践した。 この年代でテクニックは、世界のトップ またこの年代は貧血の選手が多く、分か クラスにある。ボールコントロール、パス らないままでいるとそのパフォーマンスに など、正確に早くプレーすることができる。 影響して選手を正当に評価できない。その 吉田監督は「観て、感じて、プレーする」 ため貧血の検査を実施、その結果により必 ことを強調して、状況によりボールととも 要な選手は適切な処方により改善させ、パ にターンする技術は、 今大会では世界一だっ フォーマンスを向上させた。今回活躍した たと言える。前を向いてしかける、一瞬の 選手の中には、貧血を克服した選手がいた。 隙を逃さずシュートやパスにつながる技術 貧血が隠れていると、能力の高い選手がや は、今後も磨いてほしい。DF でもしかけ る気がないとみなされるケースが多い。今 ることができないと上の世代で成功しない 後もこの年代は気をつけたいものである。 という考えから、DF が判断なしに蹴って しまうことも矯正しようとした。勝つこと 5. 日本の課題 ばかりにこだわるとこのような指導はでき ないが、選手の今後、日本の将来を考える (1)スピード・パワー・リーチの差にどの と手本となる指導である。 ように対抗するか 日本では 12 歳以下の少女が男子と一緒 日本が世界と戦うときに、スピード・パ にプレーする傾向が年々高くなっており、 ワー・リーチの差(体格・体力の差)は永 男子とトレーニングすることもテクニック 遠の課題である。この差に対抗するために、 や判断力のレベルアップにつながっている 「観ながら・頭を働かせ・動きながらプレー と思われる。 すること」が重要である。例えば「ヨーイ・ ドン」で競走したらかなわないが、少しで (2)攻撃のアイデアとフィニッシュ も良いポジションから動きながら走ったら 攻撃力のある嶋田とバランスの取れる亀 相手よりも早く目標に到達できる。 「観なが 岡をボランチに起用し、岩渕・吉良の 2 トッ ら・頭を働かせ・動きながらプレーすること」 プ、SH 左に斉藤あかね(常盤木学園高校) 、 と正確で早いテクニックで、スピード・パ 右に井上、左 SB は本来攻撃的な左利きの ワー・リーチの差に対抗できる。 竹山を配置し、お互いにタイミングを計れ そして重要なのは体格・体力の差を恐れ る選手たちが、意外性のあるアイデアあふ ず挑んでいくメンタリティーで、ボールを 5 奪い合う場面では身体を張る勇気が必要で もっとトレーニングに取り入れる必要があ コミュニケーションのとれる選手の育成を ある。 る。ストライカーはシュートばかりでなく、 目指したい。 ディフェンスラインを突破する工夫やオフ われわれは「なでしこ Vision」で、強化 サイドにかからないようにラインを観なが らタイミングを計るなど習慣化したい。ま た、育成年代、特に 12 歳以下は 8 対 8 の 試合で、ボールを扱う機会やゴール前のプ レーを多くして改善したい。 ばかりでなく、サッカーでなでしこらしい 選手の育成を目指している。なでしこらし さとは、ひたむき・芯が強い・明るい・礼 儀正しいという日本女性の内面的な良さに つながるものである。 (2)守備の基本 すばらしい攻撃面に比較して、守備のポ ジションに関してはタレントが少なく、守 備の基本が習得できていないというのが正 直な感想である。守備の基本を重視してこ の年代でもやっていかなくてはならない。 またリーチの差を補うスライディングタッ クルの技術は、身につけておきたい。 (3)ゴール前の攻守 ゴール前の攻守は常に課題として取り組 まなくてはならない。 得点は多かったがフィ ニッシュの技術は改善の余地がある。守備 においても「観ながら・頭を働かせ・動き ながらプレーすること」を意識して、常に 正しいポジション・速いアプローチ/カバー リングを徹底させたい。ゴール前の攻防を TSG 報告 (1)大会概観 初めて実施された、FIFA U-17 女子ワー ルドカップは、各大陸予選を勝ち抜いた 15 チームと開催国のニュージーランドの 16 チームが参加して、10 月 26 日から 11 月 16 日までの期間で合計 32 試合が、オーク ランド、ウェリントン、ハミルトン、クラ イストチャーチの 4 都市で行われた。 初夏を迎えるニュージーランドは、寒暖 の差が大きかったが、すばらしいスタジア ムと絨毯のような芝生で、技術と戦術を発 揮できるコンディションであった。 大会は 16 チームを 4 グループに分けて リーグ戦を行い、上位 2 チームが決勝トー ナメントに進出した。決勝トーナメントに は、グループ A:デンマーク、カナダ、グルー プ B:ドイツ、朝鮮民主主義人民共和国(以 下、DPR.K) 、グループ C:日本、アメリカ、 グループ D:韓国、イングランド(グルー プ順位順)が進出した。 記念すべき第 1 回大会のファイナルは、 AFC チャンピオンの DPR.K と CONCACAF チャンピオンのアメリカの対戦となった。 結果は、1 点を争う好ゲームが展開され、 延長後半にクリーンシュートを決めた DPR. Kが2-1で勝利。 第1回チャンピオンとなり、 大会の幕を閉じた。 6 6. まとめ 今回、日本らしい戦いができ、良いパ フォーマンスが発揮できた。次回はベスト 4 を目指したい。この年代からベスト 4 の 常連となれば、U-20、なでしこジャパンも 世界大会でベスト 4 とメダル獲得が現実的 になる。 現状の育成にさらに力を入れて、10 歳か ら 15 歳の育成の充実こそ、世界のトップ クラスの扉を開ける鍵となる。 【報告者】今泉守正(ナショナルトレセンコーチ女子担当チーフ) 1. 大会全般 (2)大会結果 大会のベスト 8 に進出したのは、UEFA3 (ドイツ、イングランド、デンマーク) 、AFC3 (4)コミュニケーション サッカーはグループで勝敗を競うのに、 自分の意思を伝えない選手が多い。監督の 話や指示に反応しない、ミスを謝らない、 要求しない、直前の合宿でさえ意思を伝え ない選手が多いのには驚いた。ミスがどう して起きたのか分からずじまいでは進歩は ない。選手が考えないでプレーするのは、 選手たちが指導者に依存して自立していな いのか、指導者の一方的な指導になってい ないか、気をつける必要がある。自立して (DPR.K、韓国、日本) 、CONCACAF2(アメ リカ、カナダ)という内訳であった。準々 決勝は、ドイツ、イングランド、アメリカ、 DPR.K がそれぞれカナダ、日本、韓国、デ ンマークを下した。準決勝は、DPR.K が 2-1 でイングランドに、アメリカが同じく 2-1 でドイツに勝利し、ファイナルへと進 んだ。3 位決定戦はドイツが 3-0 でイング ランドを破り、決勝は、DPR.K が延長戦の 末にアメリカを下して初代チャンピオンに 輝いた。 2. 技術・戦術的分析 参加したチームを大陸ごとに述べる。 (1)AFC(アジア) AFC の 3 チームは、いずれも、攻守とも にオーガナイズされており、世界のトップ と戦う力を有していた。 優勝した DPR.K は、1-4-4-2 のシステム で、4DF はフラット、4MF はダイヤモンド、 2 トップは横並びの伝統的なシステム。⑪ YUN Hyon Hi が ト ッ プ に 張 り、 ⑩ JON Myong Hwa はフレキシブルに動く。⑥ KIM UJ の展開力と⑨ HO Un Byol のドリブルで のしかけから 2 トップにボールを入れて得 点を狙う。守備は、前線からチェイシング を行い、全員がハードワークする。さらに、 アプローチスピードが速い。GK は守備範 囲が広く、その上、平均身長が 170cm 弱 と大柄な選手をそろえていた。大会を通し ての走力に優れており、その運動量のもと 90 分間(延長は 120 分間)攻守ともに切 り替えの速い、ダイナミックなフットボー ルを展開した。 韓国は 1-4-2-3-1 のシステム。攻撃はス キルフルな⑩ JI So Yun を中心に、スピー ド と テ ク ニ ッ ク を 有 す る ⑪ PARK Hee Young、ターゲットプレーヤーの⑱ LEE Min Sun が軸となり、守備的 MF の⑥ LEE Young Ju、⑰ LEE Mi Na が DF の背後にス ルーパスやサイドのスペースへ展開する。 守備は、センター DF の⑧ SHIN Mi Na、⑳ KOH Kyung Yeon が全体をコントロールす る。切り替えが速く、アプローチも速い。 4DF はラインコントロールを行う。 日本は 1-4-4-2 のシステム。2 トップの ⑨吉良、⑩岩渕はテクニック・スピードに 優れる。ボランチ⑥亀岡、⑦島田は、プレー メークに優れ、 まさしく「人とボールが動く」 フットボールを展開した。守備は、ファー スト DF を徹底し、その間に守備ブロック を形成する。切り替えは速い。3 ラインを コンパクトにし、ボール保持者にプレスを かけて選択肢を狭めてボールを奪うチャン スをつくり出していた(詳細は後述) 。 (2)UEFA(ヨーロッパ) UEFA の 4 チームは、それぞれがその国 のフットボールを展開しようと試みていた。 3 チームが決勝トーナメントに進出したが、 グループステージで敗退したフランスも有 力なチームであった。 3位のドイツは、 1-4-4-2 のシステム。 チー ムのシェイプが整っており、全員がハード 特集① ユース年代日本代表の戦い Youth ワークする。攻撃の軸である⑩ Dzsenifer ⑩ Solene BARBANCE を中心に中盤が組み 高い。1 トップを残し、4-5 の守備ブロッ MAROZSAN はテクニックに優れ、運動量 立てを行い、複数のプレーヤーが関わり、 ク を 形 成 す る。 セ ン タ ー DF ⑪ Karli も豊富。さらにキックの質が高く、決定力 スピードアップのタイミングを共有してい HEDLUND、⑳ Lauren GRANBERG は、互 を有している。守備的 MF ⑥ Marie-Louise る。ディフェンスラインのビルドアップ、 いにチャレンジ&カバーを理解し、動き出 BAGEHORN、⑧ Lynn MESTER は展開力 守備的 MF のポゼッション能力がある。GK しが早い。高さへの対応も良い。中盤の⑬ に優れている。スルーパスを中央、サイド のキックが良く、攻撃の起点となる。全体 Danica WU はハードワークする。小さいが に出し、キックの質は高い。両サイドは 的に選択肢を持ったプレーを行う。守備は、 予測力に優れ、セカンドボールを拾う。全 MF・DF 共に突破力を有している。動き出 4-5 の守備ブロックを形成し、ファースト 員がタイトにプレーする。 しのタイミングが良い。幅と深さを使い、 DF のアプローチからボールを奪うチャン コスタリカは、1-4-4-2 のシステム。身 ダイナミックなフットボールを展開する。 スをつくり出す。GK の守備範囲が広く、 体能力は高くないが、個人のテクニックを 守備はファースト DF を徹底。2 トップは 基本テクニックが良い。日本戦は立ち上が ベースにチームで戦う。DPR.K 戦は、 好ゲー 縦を押さえ、サイドに出させてボールを奪 り、お互いがコンパクトな攻守の切り替え ムを展開していたが、残念ながら、終盤、 う。各ラインから縦にボールが入ったら、 の速い好ゲームであったが、前半半ば過ぎ 運動量が見るからに落ちてしまった。この プレスバックして W チームを組みボールを から、日本の攻撃力に守備が崩壊し、大量 年代でのトレーニングの量が不足している 奪う。ディフェンスラインは、基本は受け渡 失点したためアメリカと得失点差で決勝 ように感じられた。攻撃は、 個人のテクニッ しだが、 センターは③ Inka WESELYがマン トーナメント進出を逃したが、 力のあるチー クをベースに、チームでボールを失わない。 マーク、④ Valeria KLEINER がカバー・ス ムであった。 ドリブル or パスの選択肢を常に持ってプ ペースを抑える。共に人に強く、高さも強い。 レーしている。相手を見てプレーし、逆を グループでのチャレンジ&カバーが徹底し (3)CONCACAF(北中米・カリブ海) 取りながら駆け引きしてプレーし、相手 ている。 GKは守備範囲が広く、 クロスに強い。 CONCACAF の 3 チームは、北米のアメ DF に的を絞らせない。また、アイデアが 4 位のイングランドは、1-4-4-2 のシス リカ、カナダはスピードとパワー系の能力 豊富である。守備は、ゾーンの意識を持ち テ ム。 攻 撃 で は 守 備 的 MF の ⑩ Isobel をチームの中心戦略に据えた個でしかけて ながら、マークの受け渡しを行い、ディフェ CHRISTIANSEN、⑧ Jordan NOBBS が いくフットボール。中米のコスタリカは、 ンスラインは常に 1 人余らせる形をつくっ プレーメークする。スピードと得点力のあ 個人のテクニックをチームのベースにおい ていた。ボールに対しては、必ずファース る⑨ Danielle CARTER を生かした中央突破 たフットボールを展開した。 ト DF がアプローチをかけ、自由にプレー や、サイド MF の⑪ Lucy STANIFORTH、 準優勝のアメリカは、1-3-2-3-2 のシス させない。カバーリングプレーヤーがいな ⑦ Rebecca JANE、⑯ Lauren BRUTON は テム。グループステージでは、個のスピー いときは、間合いを取り、スピードアップ 突破力がありチャンスメークする。守備は、 ドとパワーを生かしたフットボールに固執。 させない。このように意図的にボールを奪 センター DF ⑤ Jodie JACOBS、⑥ Gemma グループやチームでのまとまりに欠けてい うチャンスをつくり出していた。 BONNER が全体をコントロールする。3 ラ たが、 決勝トーナメントに入ってからはチー インを保ち、サイドが縦にスライドし、相 ムとしてのまとまりが生まれ、全員がハー (4)CONMEBOL(南米) 手に対して素早くアプローチしてチーム全 ドワークし、個人のスピードとパワー、そ CONMEBOL からは 3 チームが参加して 体がよくオーガナイズされており、ボール して豊富な運動量でファイナルに進出した。 いたが、いずれのチームも決勝トーナメン を奪っていた。 攻撃は、⑩ Kristie MEWIS を中心に、サイ トに進出できなかった。ブラジル、パラグ デンマークは、1-4-2-3-1 のシステム。 ドのスペースを利用してオーソドックスに アイともに、個人のテクニックは高かった 攻撃は基本的なテクニックを有し、ショー 展開した。2 トップの⑧ Vicki DiMARTINO が、チームとして攻守に機能せず、グルー トパスを主体にポゼッションプレーを展開 は、突破力と 5 試合連続得点と決定力があ プステージで敗れた(コロンビアは視察な す る。 プ レ ー メ ー カ ー は ⑫ Pernille り、⑦Courtney VERLOOは高さとスピード、 し) 。 HARDER。動きながらのテクニックを持ち、 テクニックを有していた。守備は、 ディフェ ブラジルは 1-4-4-2 のシステム。個人テ ボールを失わない。周りをよく観てプレー ンスリーダーの ⑥ Cloee COLOHAN を中心 クニックがベースで、ポゼッションプレー する。チャンスメークは、左ワイド MF ⑧ に、前線からアプローチを素早く行い、相 主 体。 攻 撃 は 幅 を 取 り、 ボ ラ ン チ の ⑤ Katrine VEJE。アグレッシブでスピードを 手の選択肢を少なくしてボールを奪う意識 BRUNA、⑮ JULIANA CARDOZO がプレー 生かした突破力がある。4DF は幅を取り、 が高い。守備的 MF ② Lexi HARRIS は身体 メークし、2 トップ⑨ RAQUEL、⑳ ANA ビルドアップする。守備的 MF はボールに 能力が高く、アジリティーも良い。 CAROLINE と攻撃的 MF の⑦ THAIS、⑱ 関わり、組み立てる。1 トップ⑬ Linette カナダは、1-4-2-1-3 の伝統 ANDREASEN は基本スキルを有する。ター 的なシステム。3 トップとトッ ンがうまくシュートを狙う。守備は、全員 プ下の 4 人は、身体能力の高い が規律を持ってハードワークする。4-5 の プレーヤーをそろえていた。攻 守備ブロックを形成し、相手のプレーを遅 撃は、3 トップに対してダイレ らせた後、中央へのパスを牽制しながらサ クトプレー。トップの⑫ Nkem イドへパスを出させてボールを奪う。 EZURIKE をターゲットに、く フランスは、1-4-2-3-1 のシステム。3 さび、両ウイングのスピードを ラインをコンパクトにプレーし、全員が関 生かしたスペースへの展開とな わりをもってプレーする。攻守の切り替え る。攻撃はシンプル。変化はほ が速く、トランジションモメントを理解し とんどない。守備はボールを失 ている。攻撃は、GK を含めたゲームコン うとすぐに奪い返すアクション トロールでポゼッションプレーを展開する。 を起こす。アプローチの意識が 7 JULIANA が流動的に動く。初戦のイングラ ガーナは、1-3-4-3 のシステム。個々の UEFA で実施されているようなリーグ戦文 ンド戦前半 18 分にエース⑩ BEATRIZ が肩 能力を生かしたプレーを展開する。攻撃は 化がその差を生み出すのである。今大会に を怪我してしまい、攻撃の起点を失ってし しなやかな身体とスピードを有してドリブ 出場したドイツは、ブンデスリーガとして まったのが残念である。守備は SW システ ル主体で攻撃する。シュートポイントに入 すでにリーグ戦が存在し、毎週のように公 ムをとり、タイトなマンマークでプレーす るスピードは速い。守備は 1 対 1 の対応が 式戦が行われている。また、出場していな る。 粘り強くできる。 いスペインでも、リーグ戦が実施されてい パラグアイは、1-3-4-3 のシステム。個 る。エスパニョールでは、女子が 6 チーム のテクニックを生かしながらポゼッション (6)OFC(オセアニア) あり(トップからジュニアまで) 、それぞれ プレーを展開する。攻撃では、3DF の③ OFC は、開催国のニュージーランドが出 がリーグ戦を行っている。このように、毎 Cris Mabel FLORES、⑤ Paola GENES は、 場した(視察なし) 。 週のように実施される公式戦を通して、 ビルドアップ能力を有しており、キックの 「サッカーをどう戦うか」ということについ 質が高い。ボランチ⑧ Paola ZALAZAR が て、選手も指導者も育成・養成されていく 3. まとめ プレーメーク。3 トップはテクニックに優 のであろう。 れ、フレキシブルに動く。守備では 3DF は FIFA U-17 女子ワールドカップ ニュー 今大会、日本は準々決勝において、2-2、 2 人がマンマーク。1 人がカバーリング。 ジーランド 2008 は、ニュージーランドの PK 戦の末イングランドに敗れた。2 失点は 4MF はフラット。3-4 の守備ブロックを形 すばらしい環境下で充実した大会となった。 いずれもロスタイムによる失点であった。 成し、ボールを奪うチャンスをつくり出す。 FIFA U-17 女子ワールドカップは、今大会 ゲーム中にいつ、だれが、どこで、何を、 が初めてであり、世界の動向を確認する、 どのようにプレーするのか。ゲームを読ん (5)CAF(アフリカ) また、日本の現在地を確認する上で、重要 でプレーしていくためには、日々のコーチ CAF は、ナイジェリアとガーナが出場し な大会となった。各チームともにイメージ ングとともに前述した試合環境の整備が必 た。共に優れた身体能力を持ち、個人のス は代表と同様のフットボールを展開した。 要であろう。日本において、女子のリーグ ピード・テクニックを有する。いずれも決 大人のフットボールの入り口として、世界 戦環境を即座に整備することは難しいが、 勝トーナメントに進出できなかったが、今 の動向を確認できた。攻守において切り替 男子のリーグ戦に参加させてもらうなど方 後の大会において急成長する可能性が高い。 えの速い、コンパクトなフットボールを目 法を生み出していくことは可能ではないか。 ナイジェリアは、1-4-1-4-1 のシステム。 指すものの、うまくいくときもあるし、ま 大会の MVP として、岩渕が受賞した。 個人テクニックがベースでスピードがあり、 だまだ改善しなければならないプレーも多 これは、日本の育成力を証明することがで 身体能力が高い。ボールが来る前によく観 かった。今大会に出場した選手たちが母国 きたのではないだろうか。FIFA のテクニカ ている。サッカーを感じている。攻守共に に戻り、所属チームでトレーニングを積む ルスタディグループは、 「岩渕のオフ・ザ・ グループ・チームでプレーしようとする。 ことにより、次のカテゴリーである、FIFA ボールの動き、 ゲームを読む力、 運動量と質、 攻撃は、個人スキルが高く、ボールが動い U-20 女子ワールドカップでは、大きな成長 予測は、他のプレーヤーの模範となるであ ている間の動き出しのタイミング、スピー を遂げるであろう。 ろう」と述べている。これからも、指導者 ドアップが良い。ゴールへのしかけが速く、 ただし、その成長度合いは、各大陸で異 が情報を共有し、互いに学び、現在の育成 常にゴールを意識してプレーする。守備は なってくるであろう。というのは、置かれ をより向上していくことが大切であろう。 1 対 1 の対応力・カバーリング能力が高い。 て い る 環 境 で 差 が 出 て く る。 つ ま り、 U -19 日本代表 AFC U -19 選手権 サウジアラビア 2008 【報告者】牧内辰也(U -19 日本代表監督) 1. 日時・場所 2008 年 10 月 23 日〜 11 月 12 日/サウ ジアラビア・ダンマン 2. 大会結果 ※次ページ下表参照 3. 目的 ●ベスト 4 以上入賞、2009 年 FIFA U-20 ワールドカップ(エジプト)出場権獲得 ●アジア予選を通じた選手強化、育成 8 4. 成果と課題 (1)成果 ・攻守のハードワーク ・前線の守備に反応した連動する守備(ボー ルを中心とした守備) ・守備から攻撃への切り替え ・中盤を経由した中央とサイド攻撃の崩し ・リスタート(攻守) (2)課題 ・個人技術、戦術、グループ戦術の理解実践 力 ・プレッシャー下での技術の発揮(前にし かける、運ぶ、失わない、奪う) ・ボランチ、最終ラインを使った組み立て ・個人での局面打開、個人でボールを奪え る力 ・フィジカル ①身体の大きさ厚み、コンタクト、スピー ド… ②プレーの連続性、持久力、敗戦後の回 復力 5. 大会を終えて 2007 年 1 月、U-18 日本代表として立 ち上げから約 1 年 10 カ月、その間約 20 特集① ユース年代日本代表の戦い 回の国内キャンプ、海外遠征、国内外の大 韓国も仙台カップでの敗戦と日本のグ 会参加、そして AFC U-19 選手権予選とさ ループステージの戦いを視野に入れ、 ブロッ まざまな経験を踏まえて臨んだ今回の AFC クをやや後方につくり、奪って 2 トップに U-19 選手権。 われわれの目標は今年エジプトで開催さ れる FIFA U-20 ワールドカップ出場権を獲 得すること。残念ながらその目標は脆くも 崩れ去ってしまった。 「こんなに動きが悪く、身体が重そうで受 け身のサッカーをする姿を見るのはいつ以 来だろう?決して韓国が良いわけではなく、 われわれが悪すぎるのだ…」 。 準々決勝のベンチ前で繰り広げられる試 合展開を前にこの局面をどう打開するか思 いをめぐらしていた。 グループステージのイエメン戦、イラン 戦、サウジアラビア戦とすべて順調にとは 言えないが、皆が一つになり、厳しい局面 を乗り越え、一戦ごとに結束力は高まって いっていた。 戦前の予想ではグループステージ敗退も あり得る厳しいグループとされたが、選手 たちには逆にそれが幸いしたのか「気を抜 いたらいつでもやられてしまう」という思 いが良い意味の緊張感をつくり出していた。 幸いにも先に 2 勝することで、3 戦目の サウジアラビア戦では GK を除きフィール ド選手全員をピッチに立たせることができ た。2 戦の中で受けた累積警告や怪我、状 態の悪い選手は回復に時間を使い、準々決 勝は万全の状態で臨める準備は整ったかに 見えた。 プレッシャーなのか連戦による回復力低 下なのか、 動きが悪く、 思うように走れない。 韓国も決して良い状態ではなかった。それ 以上にこの日のチームはグループステージ で見せたようなアグレッシブさが見られな かった。ボールへの寄せ、連動した守備。 数的優位をつくり奪い取り、素早く展開し 攻撃に移る動きを出し、前半の 20 分を過 ぎると動きが軽くなり、本来の状態に戻る だろうと考えたが、先に失点してしまった ことで余計に浮き足立ってしまった。 くさびを入れカウンターから得点を狙う攻 撃に集中していた。先に得点したことでそ の傾向はさらに強まっていた。 後半メンバー を入れ替え、起点をつくり攻撃に転じよう と試みたが、ミスから失点を重ね、結局自 分たちのリズムをつかめないまま試合終了 のホイッスルを聞くこととなった。 試合に敗れ、世界への出場権を失った ショックもあるが、 「なぜここまで動けな かったのか?走れなかったのか?闘えな かったのか?」 。悲しみというよりも不思議 な気持ちが頭の中を一杯にした。 グループB 韓国 イラク アラブ首長国連邦 シリア グループC 朝鮮民主主義人民共和国 中国 タジキスタン レバノン グループD ヨルダン オーストラリア タイ ウズベキスタン 日本 1 2 0 △ ● ● サウジアラビア 1 4 5 韓国 0 2 0 ● ○ ● 2 1 1 DPR.K 0 1 0 △ △ ● 0 1 4 ヨルダン 2 3 1 ○ ○ ○ 1 2 0 1 1 1 2 2 1 0 0 1 △ ● ● イラク 1 2 4 ○ 0 ○ ● 1 2 中国 △ ● ● 0 6 3 オーストラリア 1 ● 2 0 1 ● △ 1 1 4 2 0 1 1 0 イラン ○ ○ 2 1 ● 2 UAE ● ● 2 2 ● 2 タジキスタン 1 6 1 2 1 1 ろう。 今回、出場権を得られなかったことで、 日本サッカー界の活性化、選手自身が世界 の舞台で活躍する場をなくしたこと、それ に伴い世界から見た日本の現状の把握、課 題抽出などの機会を失ってしまったことの 損失は計り知れない。今回、現場を預かっ た監督として悔やんでも悔やみきれない大 きな代償となった。 今回参加してくれた選手たちは、アジア での自分たちの力量や今後目指していかな ければならない課題、強みにしていくべき ものなどが体感できたと思う。何より出場 権のかかった試合がどんな雰囲気の中で行 われ、その中で何ができ、またできなかっ たのかを身体に刻み込み、今後の糧として 前に進んで行ってほしいと思う。出場時間 の短かった選手や直接プレーする機会のな かった選手たちも同じように感じ取ってく れていることだろう。 また、難しい心理状態の中で最後まで集 中を切らさずチームとして行動を取ってく れた控えの選手たちの立ち居振る舞いが あったからこそチームの一体感が維持でき た。選手個人の成長と同時にチームとして の成長が見られたことは勝敗とは別にうれ しい出来事の一つだった。 グループステージでは選手全員が個々の 役割を理解し、 ハードワークすることでチー ムとしての戦う意識を共有し徹底していた。 誰が出場してもそのことが戦いの中で実践 でき、試合を重ねるごとにチームの結束力 が高まっている印象を受けた。実際 GK 以 △ ○ 1 0 ● 5 タイ ● ○ 3 0 ○ 0 イエメン 5 4 2 1 2 2 ○ ○ ○ シリア ○ ○ ○ 0 1 0 0 1 0 レバノン 4 3 5 ○ ○ ○ 0 1 1 勝点 勝 7 7 3 0 2 2 1 0 勝点 勝 6 3 9 0 2 1 3 0 勝点 勝 5 7 4 0 1 2 1 0 ウズベキスタン 勝点 勝 0 1 0 ● △ ● 1 1 1 0 7 3 7 0 2 1 2 分 1 1 0 0 分 0 0 0 0 分 2 1 1 0 分 0 1 0 1 敗 0 0 2 3 敗 1 2 0 3 敗 0 0 1 3 敗 3 0 2 0 得点 失点 差 10 7 5 1 3 7 3 4 6 -1 11 -10 得点 失点 差 4 3 6 1 2 5 2 5 2 -2 4 -4 得点 失点 差 5 9 6 2 1 4 1 8 8 -2 12 -10 得点 失点 差 3 4 3 3 6 2 4 1 -3 2 -1 2 順位 1 2 3 4 順位 2 3 1 4 順位 2 1 3 4 順位 4 1 3 2 決勝トーナメント グループステージ グループA 日本 サウジアラビア イラン イエメン JUN MATSUO 今大会アジアのサッカーは大きく東西 2 つのグループに分けられた。東アジアを中 心とする組織的に試合を組み立てるグルー プと、西アジア(中東)を中心とする個人 を前面に出すサッカーと言えた。日本、 韓国、 朝鮮民主主義人民共和国(以下、DPR.K) 、 中国、オーストラリア、ウズベキスタンな どが組織と個人を融合させたチームであり、 結果的にすべてのチームが決勝トーナメン トに進出することができた。サウジアラビ ア、UAE などは個性を前面に闘うチーム だった。 決勝トーナメントに進出した 8 カ国中 6 カ国が組織と個人を融合したサッカーで あったことは世界のサッカーの進むべき方 向性と合致しており、アジアでもこの傾向 は続いていくと思われる。 しかし、組織の中の個人を見るとまだレ ベルアップが必要に思えた、技術力を高め プレッシャーの中でも失わずにボールを進 めることができなければ世界の舞台では活 躍できないことも想像させられた。チーム の役割を理解し、自分を生かすプレーが個 性で、個人のやりたいことを優先しチーム を生かすことができないプレーを「わがま ま」であることと理解していない精神的に 幼い選手もこれから淘汰されていくことだ AFC U-19選手権 サウジアラビア 2008 Youth 日本 (グループA1位) 韓国 (グループB2位) 0 3 中国 (グループC1位) PK 0 3-4 0 0 1 ウズベキスタン (グループD2位) UAE (グループB1位) サウジアラビア (グループA2位) 1 2 1 0 オーストラリア (グループD1位) 2 延長 朝鮮民主主義人民共和国 (グループC2位) 1 優勝: UAE 準優勝: 3 0 ウズベキスタン 第3位: オーストラリア 韓国 9 外のフィールドプレーヤーはアジアユース 出場権を勝ち取ってほしいと切に願う。 ただいたにもかかわらず、世界大会への出 の厳しい戦いの場で全員がピッチに立ちプ 最後になりましたが、アジア最終予選に 場権を得ることができず心からお詫び申し レーする経験ができたことは、今後につな 際し、大会期間中の難しく厳しい時期にも 上げます。 がる貴重な経験として生かされることだろ う。そして次の世代での代表選手を目指し、 次回こそ、この悔しさを糧に世界大会への かかわらず招集にご協力いただいたチーム 関係者の皆さま、以前に招集にご協力いた だいたすべての関係者の皆さま。ご協力い これまでチームの立ち上げから、われわ れの活動にご尽力いただいた皆さまの配慮 に心から感謝いたします。 TSG 報告 【報告者】小野 剛(JFA 技術委員長)、布 啓一郎(JFA 技術副委員長) トスキルが強いこと」 、 「攻守にハードワー 進歩しており、日本のレベルアップよりも クができる持久力があること」が挙げられ 他国が日本に追いついてきている危機感を (1)環境 る。それはボールを前に進めるために前を 感じた大会と言えた。 大会が始まるまでの 10 月中は、日中の 向く、そして前に運ぶ技術があり、個人で 気温が 30 度を超える日が続いていた。し しかける力がある。また球際で体を投げ出 2. 技術・戦術(アジアのサッカー) かし大会が進むにつれて過ごしやすくなり、 してでもマイボールにする意思があり、攻 決勝トーナメントに入るころには 30 度を 守の切り替えでさぼる選手がいない。 自チー 今大会のアジアのサッカーは東西に 2 グ 下回る日が多くなった。第 1 試合が始まる ムがゴールを奪い、相手チームからゴール ループに分けられた。それは東アジアを中 16:15(第 2 試合は 18:45 キックオフ)に を守るために、当たり前のことを普通にで 心とする組織的にゲームを組み立てるグ は 25 度前後となり、その後、日没でさら きるチームが勝利に近かった。 ループと、西アジア(中東)を中心とする に気温は下がり、涼しい中でのゲーム環境 決勝は、準決勝でオーストラリアを 3-0 個人を前面に出すサッカーと言える。 で行われた。 で破った UAE と、韓国を 1-0 で破ったウ 会場はダンマンとアルコバルの 2 会場で、 ズベキスタンの対戦となった。今大会の (1)組織と個人を組み合わせる東アジア すべてのゲームが行われた。ピッチはやや UAE は前線に、個に秀でたタレントを有し、 日本、韓国、DPR.K、中国、オーストラ 長い夏芝(冬枯れる)で毎日 2 試合が繰り 守備から攻撃の切り替えの速さから前線の リア、ウズベキスタンが組織と個人を融合 返されたが、芝は良い状態が保たれ、パス 選手が個での打開力を発揮してグループス させたチームであり、 結果的にすべてのチー スピードの意識は必要であったが、技術と テージから全勝で勝ち進んだ。一方、ウズ ムが決勝トーナメントに進出することがで 戦術を発揮できるコンディションであった。 ベキスタンは組織と個をミックスした真面 きた。開催地がサウジアラビアであり中東 目で粘り強いサッカーで決勝に進んだ。そ 勢にアドバンテージがあると考えられたが、 (2)上位進出チームの条件 して UAE がウズベキスタンを 2-1 で破り 気温が予想より低く、東アジア勢は組織的 大会 16 チームを 4 チーム× 4 ブロック 初優勝した。 な攻守を90分間続けられたことは大きかっ に分けてリーグ戦を行い、上位 2 チームが たと思われた。 決勝トーナメントに進む。その中で 2009 (3)拮抗したアジア各国の実力 守備では、FW がプレスに入る位置はゲー 年に開催される FIFA U-20 ワールドカップ グループステージで敗退したが、イラン、 ムの状況によって変化するが、DF がライ (エジプト)の 4 枚の切符がかかっている タイ、シリア、タジキスタンは勇敢なチー ンコントロールを行いコンパクトなブロッ 大会であった。決勝トーナメントへは A グ ムであり、 ボールを奪い合うメンタリティー ク形成からボール中心の守備でボールを奪 ループ:日本、サウジアラビア、B グループ: やゴールに向かう姿勢、相手に対して逃げ い、 切り替えの速さから攻撃につなげるサッ UAE、韓国、C グループ:中国、DPR.K、 ない守備など、すばらしいものを感じた。 カーを志向していた。また攻撃でもボラン D グループ:オーストラリア、ウズベキス また、技術的にも決勝トーナメントに進ん チを起点とした組み立てから意図的な攻撃 タン(グループ順位順)が進出した。そし だチームと見劣りするところはなかった。 を目指していた。 て切符を手にしたのは韓国、UAE、ウズベ 他のチームも含めて 16 チームに大きな差 韓国、DPR.K、中国は 1-4-4-2 のシステ キスタン、オーストラリアであった。 はなく、大会への入り方や小さなことの積 ムであったが、韓国、DPR.K はダブルボラ チームでの戦い方には違いがあるが、こ み重ねが勝敗を分けていた。裏返すと日本 ンチに左右の MF、中国は中盤がワンボラ の 4 チームに共通しているのは、 「ボール はアジアを簡単に勝てる実力を備えている ンチ、ワントップ下の菱形をとっていた。 を前に進める意識が高いこと」 、 「コンタク とは言えない。アジアのサッカーは確実に この 3 カ国の特長は「止める、蹴る」の精 度が高いことが挙げられる。日本選手が逆 足を苦手としている選手が多いが、左右差 異なくキックのできる選手がほとんどであ り、フリーな状態では広い展開力を有して いた。また、サイド DF の攻撃参加も多く、 攻守に一体感のあるチームと言えた。しか しプレッシャーのある中では技術の精度が 低くなることはまだあり、組織でも個人で ボールを前に運ぶことができなくなるとき や、ボールは動かしているが活動性に乏し く、結局ロングフィードのセカンドボール JUN MATSUO を狙うアバウトな攻撃もあった。 1. 大会全般 10 特集① ユース年代日本代表の戦い オーストラリアは 1-4-2-3-1 のワントッ 対して迫力ある攻撃を繰り返し行い、個人 プシステムであった。恵まれた体格を前面 技術の高い個の力を感じるチームであった。 に出して攻守にチームとして機能し、ワイ 守備に関しては 3DF と 4DF の両方を採 ドアタッカーの打開力と FW を起点として インサイドの中盤の攻撃参加からバイタル エリアを攻略しようとしていた。サイド DF も同サイドはサポートに高い位置を とっていたが、ボールを追い越して行く場 面は少なく、バックパスを逆サイドに展開 することが多くなっていた。しかし活動性 に乏しく単調な組み立てが多くなっていた。 また組織の中で個を際立たせることができ る選手も少なかった。守備ではブロックを 形成していたがインターセプトを狙うより もゾーンを埋めて守備をする場面が多く、 上のレベルではゾーンの隙間で起点をつく られると守りきれなくなると思われる。 ウズベキスタンは 1-4-1-4-1 のワントッ プ、ワンボランチのシステムであり、今大 会の中で予想を上回るチームと言えた。攻 守にボールから遠い選手が的確なポジショ ンをとり、 切り替えが速く攻守にハードワー クをいとわない、またコンタクトプレーに 強く、球際で体を張りひたむきにボールに 行く姿勢、闘いは見るものに感動を与えた。 決勝トーナメントに出場した 8 カ国中 6 カ国が組織と個人を融合したサッカーで あったことは世界のサッカーの方向性に 合っており、アジアでもこの傾向は続いて いくと思われる。しかし組織の中の個人を 見るとまだレベルアップが必要に思えた。 技術力を高め、プレッシャーの中でも失わ ずにボールを前に進めることができないと 世界の中で勝ちきることは容易ではないと 感じられた。 用しているチームがあったが、どちらも基 本的には 1 人後方に余らせる守備が多かっ た。3DF のチームは両サイドの MF も下が り、5 バックでスペースを埋める守備が多 く、奪ってシンプルにカウンターを狙うこ とが多い。また、4DF のチームはセンター DF が 1 人余るのでサイド DF を絞らせて いた、しかし MF の守備意識が低いチーム もあり、中央にボールが入るとサイドにス ペースを空けていた。しかしサイドにはリ スクを負うがボールを奪ったら攻撃に早く 切り替える要素を持っていた。またチーム 全体がコンパクトではないため、ボールに 対して数的優位をつくって奪うことは少な い。そしてマンマークが中心でありボール ウォッチャーになることと、FW が背後に 走るとラインが下がりバイタルエリアに大 きなスペースができることが多かった。コ ンビネーションから起点をバイタルエリア 内でつくられること、また中央に寄せられ てからサイドを突かれたクロスに対しては 守備の弱さを現わしていた。 (2)個を前面に闘う西(中東)アジア 決勝トーナメントには開催国のサウジア ラビアと UAE の 2 カ国が進出した。西ア ジアのチームは、 一言に間延びしたサッカー を行っていた。1 年間の半分が暑さに見舞 われる西アジアの国々は 90 分間組織的に 闘うことは難しく、攻撃と守備が間延びし た攻守分離型のサッカーにならざるを得な いこともあるのであろう。しかし個人で闘 う姿勢や前にしかける力は鋭く、前方への フィードに対して鋭い出足でゴールに向か う姿勢があり、個人の打開力は日本を上回 る部分があった。 決勝トーナメントには進めなかったが日 本がグループステージで対戦したイラン (日 本 4-2 イラン)は、コンタクトに強く、個 人で常にゴールに向かう姿勢があり、前方 にフィードしたボールを強引に前に持って 行く攻撃に、日本は対応できずに多くのピ ンチを招いていた。またサウジアラビア (日 本 1-1サウジアラビア) も同じように、前に 3. 日本の闘い (1)マイナス要素をプラスにしたチーム 今回のチームは U-19 日本代表としてす べての選手を招集できたわけではなかった。 金崎夢生(大分)は J リーグヤマザキナビ スコカップ決勝のため招集が見送りとなっ た。香川真司(C 大阪)は A 代表の招集も 含め、グループステージでの帰国となった。 また直前キャンプで高橋峻希(浦和ユース) が故障しての選手変更、サウジアラビアに 入って体調不良で初戦に出場できない選手 もいた。そして第 1 戦のイエメン戦で柿谷 曜一朗(C 大阪)が前半早々に、尾骨を強 打して負傷退場するなどのアクシデントが 多くチームを襲った。しかしベンチも含め チーム全体が冷静に対応し、不安を感じさ せずに闘ったのはさすがであった。第 1 戦 の柿谷と交代で出場した永井謙佑(福岡大 学)は交代早々に得点を挙げ、グループス テージで 4 得点の大活躍をした。危機感を 共有して闘ったチームは 2 連勝して 3 戦目 でフィールド選手は全員ピッチに立つこと ができた。チーム全体に一体感があり、ア クシデントをプラスにしてグループを 1 位 で通過できたことは、スタッフのここまで のチームづくりと、今回招集された 23 人 だけでなく、 日本サッカー全体がレベルアッ プし、選手層が厚くなっている証だと思わ れる。もう一歩の所で世界へは届かなかっ たが、日本らしい堂々とした闘い方は多く Youth の人に支持されていた。 (2)日本の成果 ① 攻守にハードワーク 日本チームの攻守のハードワークは大会 の中でトップクラスであった。宮澤裕樹 (札 幌) 、永井の FW2 人はタイミングの良いス ペースランニングでゴールに迫っていた。 守備でも前線からのプレスを常に行い、相 手チームのビルドアップを混乱させていた。 また水沼宏太(横浜 FM) 、山本康裕(磐田) を中心とした中盤の選手も、プレーの連続 性があり、活動性のある攻撃を展開してい た。そしてディフェンスラインもボールを 追い越して積極的な攻撃参加を頻繁に行い、 多くのチャンスをつくっていた。 守備では高い位置からボールを奪うため に、 攻撃から守備への切り替え時はポジショ ンに関係なくブロックを形成し、DF も積 極的にラインコントロールを行っていた。 また守備から攻撃の切り替えの速さもチー ムで浸透していた。2 戦目のイラン戦では GK 権田修一(F 東京)からの切り替えで 2 点を奪い、相手に大きなダメージを与える ことができた。 また多くのチームが後半の中盤以降に チーム全体で運動量が落ちて、 足に痙攣(け いれん)を起こす選手も多く出ていた。し かし日本は足に痙攣を起こす選手は 1 人も 出ず、運動量が落ちることはなかった。日 本の持久力は高いものがあり、90 分間プ レーをやり続ける隙を与えないサッカーが 展開できたのはすばらしかった。 ② チームの統率(組織力) チーム全体が闘い方を共通理解して役割 を果たすことができていた。 グループステー ジ 3 戦でフィールドプレーヤーは全員プ レーしたが、誰が出ても闘い方は変わらず チームとして機能していた。日本が 90 分 間変わらない闘い方ができるのは、日本人 の理解力、協調性および持久力等がストロ ングポイントとして挙げることができる。 またリスタートに関しても隙を突く姿勢を 常に持ち、クイックリスタートや多くのパ ターンを状況に応じて繰り出し、相手チー ムに脅威を与えていた。 (3)日本の課題 ①シビアな闘いの中での技術(前を向く) 今大会の日本はボールを前に運ぶ力は個 人でもグループでも低かった。ボールを失 わないことは重要であり、無理に同サイド でしかけていくことが有効ではない。しか し第一にゴールに向かう(前を向く)こと なしに、ボールを失わないことを優先して いたら、それはサッカーではない。昨今ポ 11 特集① ユース年代日本代表の戦い Youth ゼッション型チームとダイレクトプレー型 なり、相手にパスを予測され、パスの受け には、特に低年齢で技術を習得するために チームの 2 つの闘い方があるように思われ 手に時間を与えることができていなかった。 は、ボールタッチを増やしていくこと、ま ているが、サッカーにそのような型はない。 日本のサッカーはこのポジションが生命 たゴール前の攻守に責任のあるプレーがで 状況に応じて常にダイレクトプレーがあり、 その中で有効に組み立てる(ポゼッション) ことが必要である。 しかし日本選手はプレッ シャーが掛かると前を向けずにボールを下 げてしまうことが多い。技術レベルの問題 ではプレッシャーの中、また動きながらの 技術の精度を上げることが重要であり、左 右差異なくキックやターンの技術を上げて いかなければならない。日本選手は使う足 が決まっていて、向ける方向が限定されて しまうことが多い。また戦術的にボールを 受ける前に「観ておく」ことがしっかりで きていない面も多く、下げなくてよい所で ボールが下がってしまう。 線と言える。守備ブロックの中でボールを 受けて起点になれる、そしてボールを失わ ずに前にプレーできる精度を高めていく。 そのために動きながらまたプレッシャーの 中での技術の精度を高めること、また左右 差異なくプレーし、 ボールを受ける前に「観 ておく」ことができて、選択肢の多い組み 立てができなくてはならない。そして攻守 に運動量を欠かさない選手を育成していか なければならない。 きるようになるために、ボックス内の攻防 が多くなる少人数のゲームを多く経験して いくことが重要になる。そのためには 8 人 制のサッカーを定着させていき、前を選択 することによりシュートを狙うことができ る、だから前を向かせない厳しい守備が日 常であり、良い習慣を身につけていくこと が必要になる。 また 8 人制サッカーは低年齢だけでなく、 多くの年代で推奨していくことが必要と考 える、特にプロ 1、2 年目の選手はゲーム 経験が不足している。プロチームは人数や 怪我人等、サテライトチームで 11 対 11 を 行うことが難しいときも多いが、8 人制な ら簡易に行うことができボックス内の攻防 が多く、 ヤングプレーヤーを鍛える良いゲー ム環境だと考えられる。 また 11 人制のゲームでも拮抗したゲー ムを増やすためには、能力に応じたリーグ 戦を基軸とした年間カレンダーを作成する ことが必要になる。ゲームこそが選手を育 て、毎週のゲームのレベルによって選手育 成は決まってくる。ミスが隠れてしまうよ うな「ぬるま湯サッカー」では、今後日本 は世界どころかアジアの中でも埋没しかね ない。常に全力で攻守にしのぎを削る厳し いサッカーを日常で行うことがレベルアッ プにつながっていくこととなる。 少人数ゲー ムを含め日常のゲーム環境を整えていくこ とは早急な課題として必要と思われる。 ②前にしかける、シュートを狙う 上位に進出したチームには個人で打開で きる選手が必ずいる。 それはスピードを持っ た選手であり、相手を抜き去る技術がある 選手と言える。スピードは先天的なものが あるが、技術はジュニア年代からフェイン トを含めしっかりと習得していくことや、 常にゴールに向かう姿勢を養わなければな らない。子どもは自分がボールを触りたい。 そしてゴールに向かいシュートを狙う。こ の素養をジュニア(U-12) 、ジュニアユー ス(U-15)年代で失わせてはならない。失 敗をしない小さくまとまった選手よりも、 失敗を恐れずにチャレンジする選手を認め ていくことが重要となる。しかし勝つため に組織をつくることに時間を費やしていた ら、個人のレベルアップは望めない。今大 会を含め中東勢は少々無理でも思い切り シュートをうってくる。韓国、中国、DPR. K の東アジア勢もキックは日本よりも精度 が高いと言える。 まだ世界的に見ればシュー トの精度には問題もあり、 “アジア病” は治っ てはいないが、やり続けていく中でいずれ 怖い存在になるような感じがする。 ③ボランチを使った組み立て 日本のサッカーは状況に応じて人とボー ルが動くサッカーである。そのためにはボ ランチがいかに組み立てに参加するか、ま た豊富な運動量で相手守備陣を混乱させる かが重要になる。運動量に関しては活動性 を保ち十分なプレーをしていたが、起点と しては今大会、十分な機能は果たしていな かった。日本は 1-4-4-2 のダブルボランチ を採用していたが、ボランチでボールを持 ち出し前線に進入していったのは、香川が 入ったときは機能していたが他の選手では 難しかった。また展開に関しても、判断が 遅く、ボランチでボールを持つ時間が長く 12 ④ 個でボールを奪う力 グループステージ第 2 戦のイラン戦と 準々決勝の韓国戦は、球際の闘い、1 対 1 の対応、DF の背後への走り込みにおいて 厳しい闘いを強いられた。守備に関して個 の守備力はすべてのカテゴリーから課題と して挙がってきている。これは日常のゲー ム環境が厳しい環境にないことが大きな問 題であると考える。国際大会だから「アプ ローチを早くして体を当てていけ」と言わ れても、日ごろ行っていないことは急には できない。スペインで 10 数年、育成のコー チを経験をした方と、高円宮杯(U-18)の 決勝トーナメントを視察したが、その方が 「こんなにコンタクトプレーのないゲーム は、 サッカーではないみたいですね」と言っ た言葉が印象に残っている。実際に 1 対 1 の対応はコーディネーション能力であり、 ジュニア、ジュニアユース年代までに高め ておく必要がある。しかしこの年代までに ブロックはつくっているがボールに対して 奪いに行かないでいたら、ユース年代以上 で厳しい球際の守備ができるようにはなら ない。アジア予選でも、 球際での甘いプレー は相手に一気に前へボールを運ばれる。ま た寄せなければミドルシュートをうたれる。 日本人は守備をネガティブにとらえ受け身 になりがちだが、海外チームの守備はボー ルを奪うための狩猟であり、常に先手を取 りに来る。そのための正しいポジションを チーム全体でとり続けて、アラートにボー ルにアプローチする日常を創出しないと、 この問題は解決しないと考える。 4. 個を育てる日本のサッカーの方向性 (1)ゲーム環境の整備 今後の日本サッカーは、個の弱さを組織 でカバーするサッカーからいかに脱却する かに掛かっている。各年代で目先の勝利の ために組織をつくりゲームを行うのではな く、 個の弱さがさらけ出されるゲームになっ ていかなくてはならない。個を育てるため (2)指導者の資質向上 最も重要なのは指導者の質と言える。選 手を優秀なフットボーラーに育てていくに は、指導者のサッカー理解度が重要になる。 日本人は針がどちらかに大きく振れる傾向 が強い、 「ポゼッション」か「ダイレクトプ レー」が良い例だと言える。ボールを大切 にすることが前に進まずにバックパスが多 くなってしまうことにつながる。またゴー ルを目指すことがやみくもにロングフィー ドを繰り返すことにつながる。 本来はポゼッ ションもダイレクトプレーも同じである。 状況に応じたフットボールとは「ボールを 失わずに前へ進める」ことであり、そのた めの個の技術と戦術を年齢に応じて習得さ せることが指導者の役割である。 われわれ指導者はサッカーを理解しなく てはならない。そして身体の成長の仕方と 年齢に応じて何がどのように必要かを具体 的に示唆できなくてはならない。指導者自 身が研鑽して質の高いコーチングをできる ことが、世界に通用するテクニカルでタフ な選手の育成につながると思われる。 2008 ナショナルトレーニング キャンプ U-16 2008 ナショナルトレーニングキャンプ U-16 は、 スポーツ振興基金の助成事業です。 【報告者】吉田靖(ナショナルトレセンコーチ) 1. 日程・場所 11 月 20 日〜 24 日 東日本:J ヴィレッジ(福島県) 西日本:アスコ・ザ・パーク TANBA (兵庫県) 2. 概 要 ナショナルトレーニングキャンプ U-16 は、 11 月 20 日から 24 日までの 4 泊 5 日で、 地域を東西に分けて(東日本:北海道、東北、 関東、北信越/西日本:東海、関西、中国、 四国、九州) 、J ヴィレッジとアスコ・ザ・パー ク TANBA で実施しました。今年度は U-15 の選手を招集し、来年度を含めて 4 回継続 し、実施する予定です(来年度は U-16) 。 最初のミーティングでは、 「世界を意識し てほしい」と選手に話しました。2009 年 は FIFA U-17 ワールドカップがあります。 2011 年にはこの年代を中心に U-18 日本代 表を結成し、FIFA U-20 ワールドカップを 目指してアジア予選を戦うということを意 識してほしい旨を伝えました。 もちろん、その先にオリンピック、FIFA ワールドカップと続くわけで、高い目標を 持って切磋琢磨してほしいということです。 3. テーマ・トレーニング 今回のキャンプのテーマは、 「意図のある 選択肢を持ってプレーする」ことです。 意図のある選択肢とは、例えば、ボール を保持した場合、ゴールを目指しながら、 ボールを運ぶわけですが、 チーム全員がしっ かりした共通のセオリーを持ちながら、 ゴー ルを目指しボールを運ぶようにできるよう にすることです。また、そのセオリーも 1 つの道だけでなく、複数の道を持っていて、 相手の状況により使い分ることができるよ うにすることです。 実際のビルドアップをテーマにしたト レーニングでは(図 1) 、ボールを動かしな がら、前方に効果的にボールを運ぶことを 意識させました。例えばディフェンスライ ンから縦パスを MF、FW に入れていく。 ただ、ディフェンスラインでボールを止め て、探してパスをしていたら、相手に読ま 図1 ビルドアップ Tr.1 Tr.2 7対7+ GK のゲーム 5対5+1フリーマン、1ターゲット GK コーチ GK (1)大きさ 72m × 50m (2)用具 マーカー、ボール、 ビブス (3)方法 ①後方のゾーンでボールを動かしな がら、前方のゾーン→ゴールを決 める。 ②ボランチ2人は2つのゾーンを移 動できる。それ以外は決められた エリアでプレー(ただし相手陣内 に入ったら1人攻撃参加 OK) 。 KEY FACTOR 1. 観る、観ておく 2. ポジショニング(拡がりと厚み) 3. パスの質(特にパススピード) 4. 優先順位(トップ、ボランチ) 5. ボールを動かしながら縦パスを狙う(ボールを止めて探さない) ※まずトップ(ターゲット)を狙う(優先順位)~高い位置に起点をつくる。 ※トップはタイミングよく動き出し、裏を足元に選択肢をつくる(ゴールに近い選手からアク ションを起こす) 。 ※ボランチを効果的に使いながら、意図的にボールを動かして、前へ運ぶ。 ※お互いを観てプレーすることを徹底する(意図的なビルドアップの前提となる) 。 ※逆サイドの選手も関わりを要求する。 ※守備に働きかけなければ攻撃の質は改善できない。 (1)大きさ 47m × 46m (2)用具 マーカー、ボール、ビブス、コーン (3)方法 ①コーチから配球してパスをつなぎながらターゲットを目指す。 (ターゲットに当てリターンをラインゴール) ②後方のフリーマンを使ってよい。 ③ゴールしたらコーチから後方のフリーマンに配球。 (攻撃方向は一定) ④フリーマンとターゲットは兼務(攻撃方向により、ターゲット またはフリーマンとなる) 。 KEY FACTOR 1. 観る、観ておく 2. ポジショニング(拡がりと厚み) 3. パスの質(特にパススピード) 4. 優先順位(トップ、ボランチ) 5. ボールを動かしながら縦パスを狙う(ボールを止めて探さない) ※まずトップ(ターゲット)を狙う(優先順位)~高い位置に起点をつくる。 ※幅、厚みを意識しながら意図的にボールを動かして、前へ運ぶ。 ※お互いを見てプレーすることを徹底する(意図的なビルドアップの前提となる)。 ※守備に働きかけなければ、攻撃の質は改善できない。 13 れボールを奪われてしまいます。相手に狙 方を観る、狭いスペースで前を向く等の基 また、このエリアでは、相手は厳しい守 いを絞らせないためにも、ボールを動かし 本の質が大切になります。そして、しかけ 備の組織をつくってきます。その強固な組 ながら縦パスを入れていくことを要求しま ながら、パス or ドリブルの判断ができるよ 織を崩すには、ドリブル、パス等のオン・ザ・ した。そのためには、パスの質、オフ・ザ・ ボールの動きの質等の基本の質が問われま す。また、相手の状況により、パスコース を選択することも要求しました。例えば相 手のボランチが味方のボランチにマークし てきたら、トップのスペースが空くことが 多いので、そこを狙っていく。相手のボラ ンチがトップのコースを消してきたら、ボ ランチを経由して前にボールを供給してい く。このように、相手の陣形を観ながら、 優先順位を持ってボールを動かしていくよ う選手に求めました。 また、FW、MF にも、お互いがよく味方 の動きを観て、幅、厚みをとり、自分たち の周りに使えるスペースができるように工 夫し、その中でうまくコンビネーションを とりながら、ギャップにタイミングよく顔 を出すことを求めました。 崩しのトレーニング(図 2)では、アタッ キングエリアをどう崩すかにテーマを絞っ て取り組みました。その中でこのエリアで は、積極的にしかけることを選手に要求し ました。そのためには、ゴール、相手、味 うにしなくてはなりません。パスだけでな く、スペースが空いたらドリブルで突破す る。また、ドリブルでしかけ、相手が集中 してきたら、空いている味方を使う。つま り状況に応じてドリブル、パス両方を使い こなせるようにならなくては、この厳しい 守備のエリアは簡単には崩せないでしょう。 ボールだけでなく、ボールのない動きで相 手の守備組織のバランスを崩すことも大切 になってきます。できた隙を素早く突く動 きとしては、2 列目のダイアゴナルラン等 の強く長い動き、オーバーラップ等の人を 越える動きが必要になってきます。全員が 積極的に関わりながら、このエリアをチー AGC/JFA news 図2 崩し Tr.1 5対5+ F のポゼッション Tr.2 6対6(5対5~7対7)の アタック&ディフェンス GK F (1)大きさ 35m × 25m (2)用具 マーカー、ボール、ビブス (3)方法 ①パス 10 本で得点 ②中央のグリッドの中でパスを受けて味方にパスが通ったら得点 (待ち伏せはなし) ③ドリブルで侵入して味方にパスが通っても得点 KEY FACTOR 1. 観る、観ておく 2. ポジショニング 3. ギャップの共有 4. パスの質&コントロールの質 ※この TR で選択肢を持つことを徹底することで TR 2につなげる。 ※ TR の進め方:DF にプレスに行かせる→観ておかないとパスを回せない→パスを 回していくと中央のゾーンが開いてくる→タイミングよく中央のゾーンをつかっ て展開する。 ※外に広がりパスを回しながら中央のゾーンが開くのを狙う(意図のある選択肢) 。 ※中央のゾーンを使ったときに逆に展開すると崩しにつながっていく。 ※ボールの移動中にアクションを起こし、ポジションをとりながら観ておくことを 徹底する。 ※ DF へのアプローチ。 14 (1)大きさ 68m × 52.5m (2)用具 ボール、ビブス、コーン (3)方法 ①6対6の攻防(選手のレベルにより 5対5~7対7に変化) ② DF 側はボールを奪ったらコーンゴー ルにパス オプション:フリーマンを後方につける KEY FACTOR 1. 観る、観ておく 2. ポジショニング (拡がりと厚み) 3. ギャップの共有 4. 優先順位 5. パス&コントロールの質 ※ボールと人が動きながら、相手の状況を見て、DF の裏、バイタルエリアを狙うことで、 意図のある選択肢ができる。 ※トップを起点→相手がしぼる→サイドが開く。右を狙えば左が開くことを理解させる。 ※ボール保持者とトップがお互いに観ることを徹底する。だからタイミングをとって動 き出すことができる→ワンタッチにつながる。だめだったらコントロールになる。 ※味方、相手、スペース、ボールの状況を考えて、より有利なポジションをとっていく (優先順位) 。 ※トップへボールが入ったら、3人目の動き出しを早くして、サポートに行く(ボラン チの1人、サイドハーフの1人) 。 ムとして崩すよう指導しました。 パスするふりをしてドリブル突破を試みる そして攻撃のテーマだけでなく、守備に 等のプレーをするようになりました。もち も働きかけました。守備をテーマにしたト ろん、何日かのトレーニングで劇的に選手 レーニングでは(図 3) 、ボールを積極的に 奪うことを選手に求めました。 攻撃から守備の切り替えを速くして、で きるだけ高い位置でボールを奪うこと。ま た、 中盤、 自陣でもゴールを守るだけでなく、 できるだけ相手に近づいて、 チャンスがあっ たらボールを奪うことを要求しました。そ のためには良いポジションをとり続ける、 アプローチの速さ、チャレンジ&カバー等、 守備の基本が大切になってきます。 このように狙いを持ったトレーニングを 続けて、ゲームでは、トレーニングで行っ たことをトライすることを求め、またその 反省をトレーニングに落としていくことを 繰り返すと、徐々にではありますが、変化 の兆しは見えてきました。最初は味方、相 手の動きを見ながらポジションをとったり、 ボールを動かせなかった選手が、徐々に意 識しながらプレーするようになってきまし た。崩しでは、パス、ドリブルの判断を両 方持ってアタッキングエリアでプレーする ことができなかった選手が、何人かは、最 後のゲームではしかけながらパスしたり、 のプレーが変わることはありません。しか し、今後に向けての良い刺激になったので はないかと思います。 ただ、まだまだ状況に応じたビルドアッ プ、崩しができないのは、基本の質の徹底 ができていないからです。U-15 以前の育成 段階で、パスの質、コントロールの質、観 ること、オフ・ザ・ボールの動き等の基本 の質のレベルアップを図らないといけない と思います。 この年代では、もっと相手、味方を観な がら、なおかつ動きながら、意図のある選 択肢を持ってプレーしてもらいたいと思い ます。 守備のところは甘さが目立ちました。ま だ守備に対して意識が低い選手が多いと思 います。もっと攻守の切り替えを速くする とともに、ボールを奪うために相手に近づ いて守備ができるようにならないといけま せん。相手のミスを待つのではなく、自ら ボールを奪う意識を高める必要があります。 現代サッカーはポジションに関係なく、全 員が守備の仕事を積極的にこなさないとい AGC/JFA news けなくなってきています。より一層の意識 改革が必要です。 ただ、攻撃、守備とも現代サッカーで必 要とされている実践的なトレーニングを集 中して取り組んでいけば、徐々に変化して いく兆しは見えたようであり、世界基準を 意識したより実践的なトレーニングとハイ レベルのゲームを続けていく必要性を感じ ました。 図3 守備 Tr.1 3対3 アタック&ディフェンス (1ボランチ+2CB) ↓ 4対4 アタック&ディフェンス (2ボランチ+2CB) Tr.2 6対6のノーマルゴールと3ミニゴール GK (1)大きさ 44m × 34m (2)用具 マーカー、ボール、 ビブス (3)方法 ①パサーからパスを引き出し 3対3の攻防 ②3対3→4対4の攻防 ② DF 側はボールを奪ったら コーンにパス ③2~3回連続して行う KEY FACTOR パサー 1. ポジショニング 2. アプローチ 3. チャレンジ&カバー 4. ボールを奪うチャンスを 逃さない ※3対3の TR で、正しいポジショニングからチャレンジ&カバーを繰り返し、ボールを奪い に行くことを徹底する。 ※4対4の TR では、 2ボランチと2CB の2ラインを意識して、 協働して守る(コースを切る、 カバーする) 。 ※相手のミスを待つだけでなく、ボールを奪いに行く。やられない守備だけでなく、チャンス があったらボールを奪いに行く。 ※2CB のカバーのポジションは、ラインを意識させる。 ※ CB がカバーに出たら、ボランチがカバーする(一番危ないところから守る) 。 ※攻撃は何が有効なのか考えてプレーする(幅と厚み) 。寄せが甘かったら、 積極的にしかける。 GK (1)大きさ 68m × 52.5m (2)用具 ボール、ビブス、コーン (3)方法 ①6対6の攻防 ② DF 側はボールを奪ったらコーンゴールにパス ③オプションとして、奪ったボールをコーンゴールだけでなく、 1対1や2対2を前のゾーンにつくっておき、そこにパスして ゴールを狙う(ゴールあり) KEY FACTOR 1. ポジショニング 2. アプローチ 3. チャレンジ&カバー 4. ボールを奪うチャンスを逃さない 5. 連続性と連動性 ※マンツーマンだけでなく、スペースの意識をもってポジションをとらせる (両方の選択肢) 。 ※どこで固まりをつくって意図的にボールを奪うか、コミュニケーションを とって守備する。 ※ DF ラインのラインコントロールまでおさえる (コーチがサーバー役になり、 状況を引き出すこともできる) 。 ※縦パスが入った時のポジショニングを理解させる。 15 連載第24回 キッズドリル紹介 1 透明爆弾ゲーム ⇒ ころがしドッヂ(動きづくり) <方法> ・ころがしドッヂのオーガナイズでコーチがさまざまな大きさをイメージして爆弾を転がしたり、投げたりする。 ・子どもたちは避けたり、受け止めたりするイメージで動く。 ※発展して「ころがしドッヂ」へつなげていく。 <ポイント> ・コーチが爆弾の大きさをイメージできるようなジェスチャーで子どもたちに接する。 ・子どもたちが動きをイメージできないようであれば、コーチが中に入ってデモンストレーションすることで サポートする。 2 2008 Jリーグアカデミー キッズ研修会より 勝部雅規(湘南ベルマーレ) フープトンネルを突破せよ!(動きづくり) <方法> ・コーチがフラフープを転がし、そのフラフープが倒れるまでに、子どもたちはタイミングを計り、それをくぐる。 <ポイント> ・フラフープをノーマルで転がす。 ・フラフープにバックスピンをかけて転がす。 ・フラフープトンネルを数列、もしくは数カ所で設定する。 ・右側からくぐる、左側からくぐるなどの条件を設定するのも OK。 渡辺康則(サンフレッチェ広島) 16 一語一会 勝利への道の探索が、 そのまま 人間性の追求につながっていることを いつまでも信じていたいと思う。 人間がスポーツを裏切ることはあっても、 正しい意味でのスポーツは、 けっして人間を裏切るものではないことを、 固く信じたいと思う。 (『11人のなかの1人 』生産性出版) 長沼 健 ⓒ J リーグフォト㈱ 長沼 健(第 8 代日本サッカー協会会長/前日本サッカー協会最高顧問) 17 活動報告 JFA GK プロジェクト JFA Goalkeeper Project since 1998 2008 ナショナルトレーニングキャンプ U-16 東日本より ⓒ AGC/JFAnews U -19 日本代表 今号では AFC U -19 選手権 サウジアラビア 2008 に出場した U -19 日本代表、JFA U -17 地域対抗戦などの報告をお送りします。 AFC U -19 選手権 サウジアラビア 2008 【報告者】慶越雄二(U -19 日本代表 GK コーチ) 1. 概要 2008年10月31日よりサウジアラビアで開催されたAFC U-19選 手権に向けて、10月23日から大阪・舞洲で3日間トレーニングを行 い、25日深夜に関西空港からダンマンに向けて出発。26日に現地 入りし、調整を重ねて31日の初戦に備えた。大会は16カ国が4グ ループでリーグ戦を行い、上位2チームが決勝トーナメント進出。 上位4チームのFIFA U-20ワールドカップの出場権をかけて戦った。 日本はグループAでイエメン、イラン、サウジアラビアの強豪国 と闘い、2勝1分けの1位で抜け出し、グループB2位の韓国と出場権 をかけて戦ったが、0-3で敗戦し、大会を終えた。 2. 大会参加選手 ●権田修一(FC東京) 1989年3月 3日生 187cm/80kg ●松本拓也(順天堂大学) 1989年2月20日生 182cm/67kg ●大谷幸輝(浦和レッズ) 1989年4月 8日生 185cm/80kg 3.GKテーマ (1) 積極的かつ堅実的なゴールキーピング (大胆さと繊細さ) (2) 良い準備(位置と姿勢、観る→状況把握→予測→判断/決断→ 実行) (3) DFとの連携 (コミュニケーション、 コンビネーション) (4) 攻撃への参加 (効果的な配球) (5) つかむか弾くかの判断 (6) クロスの守備 (守備範囲の拡大) (7) セットプレーの守備 (8) リスクマネージメント (9) リーダーシップ (10) フォアザチーム トレーニングでは主に1〜5までを重点的に行い、6〜9のテーマ 18 はゲームの中で修正を加えながら行った。 4. 結果 グループステージ(2勝1分け 1位通過) vs イエメン 5-0、vs イラン 4-2、vs サウジアラビア 1-1 決勝トーナメント(準々決勝敗退) vs 韓国 0-3 5. 成果 ・グループステージの厳しい闘いの中で2人のGKに経験を積ませる ことができ、グループ1位突破に貢献してくれた。これは2連勝し たことが大きかったが、控えの選手であっても遜色ない力を発揮 し、選手層の厚さを示すことができた。 ・大会を通じてシュートストップの面で安定した守備を見せてくれ た。つかむのか・弾くのかの判断もできており、相手にチャンス を与えなかった。 ・単純なクロスやCK、FKとある程度予測された中でのクロスボー ルに対しては広い範囲を守ることができた。 ・配球の面で、GKのキックでのパスで2アシストと、攻撃の起点が GKのキックでのパスで始まりそこから得点が生まれ、チャンス をつくり出すことができた。 6. 課題 ・DFとの連携の部分で特にブレイクアウェイの状況下で、「自分 がプレーするのか・味方にプレーさせるのか」の判断ができずに 交錯する場面や、出られないときの自身のポジション修正とそれ に対しての具体的な指示がタイミング良く出せていなかったので、 相手のロングボールでピンチを招き安定感を欠いてしまった。 ・クロスの状況下で、密集化の中で「つかむのか・弾くのか」の判 断とその技術の発揮に課題を残した。混戦の中でパワーを持って プレーできずピンチを招いてしまった。 ・配球の面で得点を演出することができたが、どうしてもロング ボールを多用しなくてはいけないときに質の高いボールを供給す るまでには至っていない。自分たちの意図した攻撃をしかけて優 位に進めるためにも、「どこに・どのようなボールを」パスする のか。もっと意図した配球と、ゴールキックになったときに自身 とDF、MF両ワイドの選手の切り替えを速くさせれば素早く味方 に渡せて効果的な攻撃をしかけることができた。 ・リズムが悪いときにミスでいらいらしてしまい、冷静さ、安定感 を欠いてしまい、リーダーシップを発揮できなかった。リズムが 悪いときに、味方にいかに具体的なコーチングと、冷静沈着な判 断でプレーするかが課題として残った。 7. まとめ FIFA U-20ワールドカップに進むことができなかったが、この大 会で得た経験と成果、課題をしっかりと受け止めて所属チームで 日々取り組み、2012年のオリンピックに向けて切磋琢磨し、もう 一回り成長した大人の選手として、この年代で成し遂げられなかっ た世界大会への切符を手に入れ、大いに飛躍することを期待する。 最後にこのチームを立ち上げてから約2年間、所属チームの関係 者を含め、現場の指導者の方々、日々、選手の成長に全力を注ぎ、 協力していただき、厚くお礼を申し上げます。このチームのコーチ として選手に次のステージでの経験をさせてあげることができな かったことをお詫び申し上げます。 JFA U -17 地域対抗戦 【報告者】慶越雄二(GKプロジェクト) 1. 概要 ・期間 2007年12月18〜20日 ・場所 時之栖スポーツセンター・裾野グランド ・参加人数 各地域選手20人(うちGK2人) ・地域スタッフ3名、 トレセン地域チーフ ・形式 12月18日、19日は8対8(72m×60m)、 20分ハーフ、A・B2チーム編成の対抗戦 最終日は11対11(フルピッチ)、30分ハーフ 8対8、11対11共にサッカーの競技規則2008/2009 に則る。 地域対抗戦の期間中、2日目の午前中に各地域練習日が組み込ま れており、そこで前日のゲームで出た課題を修正し、午後から同様 に8対8のゲームを行った。最終日は8対8での戦績で順位を決め、 グループ分けを行って11対11のゲームを行った。 2. 8 対 8 のゲーム 8対8のゲーム形式に慣れていない部分と縦が短いためか、初日は あらゆる面での準備の部分ができず、失点を招いているシーンが目 立った。パス&サポートの部分で関わってはいるが狭いエリアでプ レーしてしまい、効果的に展開できないシーンが目についた。しか し、ゲームを重ねるごとにその点は解消され、GKを使ったビルド アップや、奪ってからの配球面、特にオーバーアームスローからの パスでカウンターアタックが多く見られて得点につながったシーン が目立った。ペナルティーエリア内でのブレイクアウェイのシーン も多く、積極的なプレーは見られたが、しっかりした準備のもと、 DFと連携して守るシーンは少なく、勢いだけで行い、PKを招く シーンやDFと重なってしまうシーンが出てしまっていた。 3. 11 対 11のゲーム 8対8で良くなった関わりの部分は継続し、GKからのビルドアッ プが行えていたが、少し時間とスペースができて余裕ができた分、 判断が遅くなり、効果的な展開にならなくなってしまった。優先順 位がなくなって前方の動き出しを見落とし、目の前の選手にパスし てしまいスムーズな展開にならない点や、良いところに出そうとし て探すシーン、良いところを狙いすぎて技術的なミスを犯し、ボー ルを失ってしまって効果的にゲームを進められない部分も目につい た。ブレイクアウェイの状況下で単純に出てくるボールに対しては 問題なく処理できていたが、そこにDFが入ると判断があいまいに なる選手が多かった。 4. 総評 全体的にシュートストップの面ではすばらしい反応でシュートを 防ぐシーンが多く見られた。安定した守備につなげるためにも基本 的な部分での質をさらに上げる必要がある。シューターとの距離が 近くなったときに構えが後傾したり、プレジャンプが激しくなり動 作・タイミングが乱れる。「つかむ・弾く」の技術の部分で、最後 までボールをしっかり注視する選手が少なく、キャッチングのつか むポイントが一定でなく安定しておらず、弾き出しを拳で行ってい る選手が目についた。ブレイクアウェイ、クロスの状況下では単純 なボールであるとチャレンジできていたのだが、密集の状況になる と判断できずに躊躇してしまい、イニシアチブがとれず、フィール ドプレーヤーが「キーパー」と声を出してGKが遅れて反応してし まうシーンも見受けられた。 クロスの面ではスタートポジションがどこなのか理解されていな い選手がほとんどで、状況に応じて小まめにポジションを修正する 選手は少なかった。DFとの連携の部分で最後まで粘り強く対応さ せて守れる選手と守れない選手の差があり、性格的なものを含めて リーダーシップを発揮できない選手が見受けられた。その点に関し てセットプレーでも同様なことが言え、チームによって選手の配置 等は異なるとは思うが、ストーンの選手をどこに配置するのか、ま た最終ラインをどこに設定するのか、最低限行わないと即失点につ ながる場面でも何も行えていない選手がほとんどで、GKが知識と 19 して持っていないのかどうなのか疑問が残った。ブレイクアウェ イ、クロスの状況下でGKが飛び出したときにDFが「プロテクト」 なのか「ゴールカバー」なのかの基本的な戦術が習慣になっている 選手は少なく、GKを含めたチャレンジ&カバーの守備意識を高め る必要性を感じた。 5. まとめ 8対8を行ったことでGKが「サッカーを理解した選手」であるこ との重要性を選手は強く理解したのではなかろうか。常に関わり続 けながらGKから攻撃をしかけていく、「ゴールを守って、ゴール を奪いに行く」という点で、今まであいまいな部分であった配球面 でのキックなのか、スローイングなのかの判断、キックであるとど こへ、どのようなボールを、スローイングだとオーバーアームス ローなのか、アンダーアームースローなのかといった部分が整理さ れ、単純に「投げる・蹴る」の重要性と状況に応じた技術の発揮が 理解されて良かった。しかし、11対11になったときに効果的な配 球につながっていかなかった点は改善の余地がある。いずれにせよ 8対8をやり込むことで目指す方向性が見えてくるのではないか。 最後に、今回180cm後半の選手が4名選出されており、中には初 めてトレセンに選ばれて参加した選手がいた。まだまだ素材の部分 で発掘されていない選手がいるのではなかろうか。視点、観る角度 を変えてアプローチをかければ刺激を受けて成長する選手が出てく る可能性を感じた。 ●寺沢優太(FC.CEDAC/長野県) 1993年7月31日生 181cm/79kg ●渡辺周平(札幌市立星置中学校/北海道) 1994年2月 9日生 185cm/69kg ●山田啓太(鹿島アントラーズユース/茨城県) 1993年1月11日生 187cm/76kg ●大洞信幾(遠野市立遠野中学校/岩手県) 1993年8月 9日生 184cm/80kg ■西日本(東海・関西・中国・四国・九州) 担当コーチ:柳楽雅幸、小林忍 ●田尻 健(ガンバ大阪ジュニアユース/大阪府) 1993年6月11日生 181cm/70kg ●池田 隼(さぬき市立津田中学校/香川県) 1993年9月22日生 178cm/75kg ●大谷友之祐(広島県瀬戸内高校/広島県) 1993年2月 2日生 179cm/65kg ●吉満大介(神村学園高等部/鹿児島県) 1993年2月21日生 185cm/83kg ●石井 綾(名古屋グランパスU15/愛知県) 1993年6月24日生 178cm/68kg 3. トレーニング 代表キャンプと同様にトレーニングにおいてもテーマ性を持たせ 追求していく。 2008 ナショナルトレーニング キャンプ U -16 【報告者】柳楽雅幸(U-16 日本代表 GKコーチ) 育成年代としてだけでなく、大人のサッカーとしての入り口であ ることを理解させ、われわれもトップレベルの選手としてアプロー チを行い、代表活動と同様の位置づけと考えトレーニングを実施し た。 トレーニング① ビルドアップ GKトレーニング シュートストップ GKも積極的にフィールドプレーヤーと同様にトレーニングを実施。 トレーニング② 崩し GKトレーニング ブレイクアウェイ ウォーミングアップとしてのパス&コントロールトレーニングを実施。 トレーニング③ 守備 GKトレーニング クロスの処理 DFとの関わり方、 ファーストDFへのコーチング、守備のバランス トレーニング④ GKトレーニング シュート 攻撃への参加 1. 期間・場所 4. トレーニング全般を通して 2008年11月20日〜24日 東日本:Jヴィレッジ/西日本:アスコ・ザ・パークTANBA 各選手も非常に高いモチベーションを持ってこのキャンプを行う ことができた。しかし、トレーニングにおいての地域差があるよう に感じた。 GKとしてのトレーニングの頻度差があり、基本的なことは理解 しているが、イレギュラーな問題が発生すると対処できないことも ある。また、頭では理解しているものの、実際にプレーしている姿 2. 選出 GK・担当コーチ ■東日本(北海道・東北・関東・北信越) 担当コーチ:川俣則幸、井上祐 20 活動 JFA Goalkeeper Project 報告 JFA GK プロジェクト であることから、構えの基本姿勢やキャッチング、ステッピング、 ポジショニングなどを確実に身につけられるように、GKトレーニ ングだけではなく、チームトレーニングやゲームの中でも取り組ん だ。また、その中で、GKも1/11のサッカー選手としての技術習得 や、戦術理解の必要性も促した。 トレーニングの流れとしては、フィールドプレーヤー(FP)と同 様にパス&コントロール、ポゼッションを行い、そこから分かれて GKトレーニングをし、再び合流する形になった。U-13/14とも前 期に比べてGKトレーニングの時間が十分に確保され、じっくり行 うことができた。 AGC/JFA news 2008 ナショナルトレーニングキャンプ U-16 西日本より を観ると正確にできていない選手もいる。しかしこのキャンプ期間 中に修正・改善できた選手もいた。 育成年代(代表ラージグループキャンプ)の目指す方向性とし て、選手を世界で闘えるように指導し、育成していくことは、非常 に重要である。しかし、このようなキャンプは非日常的な活動であ るため、やはり今後も日常でのトレーニングが大切であるかが問題 になってくるであろう。そのためにも、日常でのトレーニングを整 備していく必要があるのではないだろうか。 2008 ナショナルトレセン U -14 【報告者】望月数馬(ナショナルトレセンコーチ) 4. 成果と課題 GKトレーニングにおいて、個人それぞれ基本姿勢の癖や構える タイミングが遅れること、踏み込み足の方向が悪いためにプレーの 方向が後方になってしまう傾向にあったが、トレーニングを重ねる ごとに改善が見られた。ポジショニングなどの戦術面についても、 トレーニングすることで改善は見られた。全体的に足の技術は高く なってきているが、スローイングの技術は低く、配球場所の選択は 足も手も全体的に判断ミスが多かった。また、GKトレーニングで はできていることが、FPと合流してより実践的なトレーニングでス キルが発揮できていない傾向にあった。しかしながら選手たちのモ チベーションは高く、その中でトレーニングしたことをやろうとし ていた。プレーが成功するごとに、より積極的になって成長してい く姿を見て、地域スタッフも指導の楽しさを実感していたようで あった。 5. 地域 GK スタッフについて 日時:2008年11月20日〜24日 場所:東日本・Jヴィレッジ 中日本・滋賀ビックレイク 西日本・大津町運動公園 前日にシミュレーションを行い、共通理解を持った上でトレーニ ングに入ることができた。GKライセンスを保持している方がほと んどで、GKトレーニングに積極的に関わり、スムーズにトレーニ ングを運ぶことができた。地域スタッフの協力があったからこそ選 手一人ひとりに目が行き届き、非常に有意義なナショナルトレセン となった。 2. ゴールキーパーテーマ 6. 今後に向けて ●積極的なゴールキーピング ●良い準備(ポジショニング、構えなど) ●DFとのコミュニケーションと連携 ●効果的な攻撃への参加 (パス&サポート、ディストリビューション) 選手選考の基準について、もう一度確認する必要があると感じ た。これまでも選手の基準について発信すると、偏ったとらえ方を されてしまうことはあった。しかし、例えば韓国の同世代 (U-13/14)のGKを見ると、明らかに日本の選手よりも身長でも 運動能力でも勝る選手がいることは否定できない。今一度明確な基 準を発信し、身長が大きくなるアスリートを育成し、選考していく ことが必要であると感じた。 1. 日時・場所 3. トレーニングについて U-13/14年代はゴールキーパー(GK)としての基本要素徹底期 21