...

FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代

by user

on
Category: Documents
8

views

Report

Comments

Transcript

FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代
FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代 RDBMS SQL Server 2005 | 金融 | Microsoft for Business
FIT 記事 No.19 (2006)
金融機関の統合 DB を支える次世代 RDBMS SQL Server 2005
名古屋銀行様: ~お客様サービスの充実」を図るために早期導入プログラムで構築を開始~
「地域社会の繁栄に奉仕する」ことを社是として地域に密着したサービスを
提供する名古屋銀行様 (以下、敬称略) は、伝統的な堅実経営の推進により
顧客から高い信頼を得てきた。また、その一方で、「名古屋ダイレクト」、
「名古屋ビジネスダイレクト」、そして、「名古屋 GAITAME ダイレク
ト」といったインターネットバンキングサービスなど、新たなテクノロジー
を駆使したサービスを展開することで、顧客の利便性向上も図ってきた。
同行の情報系システムは先進的な機能を盛り込んだものであったが、システ
ム基盤製品のリースアップが近づくにつれ、更改を考えざるを得ない状況が
発生した。原因は経営環境の変化だ。新情報系システムが、勘定系、新勘定
系、ATM、テレフォンバンキング、渉外係などのあらゆるチャネルの結束点
としての機能を果たし、お客様の属性、資産状況、取引履歴を統合すること
が求められた。そして、これらの要件を満足する新システムの基盤となる
「新 CRM 基盤」実現のために同行が選択したのは、マイクロソフトが提供
する次世代 RDBMS である SQL Server 2005 だった。
日本マイクロソフト株式会社
第二インダストリー統括本部
テクノロジーソリューション部
金融グループマネージャ
中村 健
トピック
他行に先駆け最新の SQL Server 2005 を導入
SQL Server ロードマップ : ミッションクリティカル分野における RDBMS として評価が高まる SQL Server
次世代データマネジメントプラットフォーム SQL Server 2005 の概要
名古屋銀行における現行システムの概要
現行システムにおける課題と SQL Server 2005 採用のポイント
新 CRM 基盤の姿 : データベース指向システムの実現
本システム構築に向けたマイクロソフトの支援体制
まとめ
他行に先駆け最新の SQL Server 2005 を導入
名古屋銀行の「新 CRM 基盤構築プロジェクト」は、マイクロソフトが提供する Microsoft SQL Server 2005 を前提として推進さ
れている。稼働中の Unix OS + Oracle DBMS をベースとした情報系システムは、新 CRM 基盤システムがサービスインした段階
で完全にリプレースされる予定だ。
現在 SQL Server 2005 は、出荷に向けて開発の最終工程に入っている。名古屋銀行では、マイクロソフトの早期導入プログラムに
より、他行に先駆けシステム構築を推進しており、年内の SQL Server 2005 リリースと同時に情報系システムとして Windows
ServerTM 2003 (64bit)、SQL Server 2005 による新 CRM 基盤がサービスインする予定となっている。なお、今回のプロジェク
トで構築される「新 CRM 基盤システム」は、今後開発がはじまる「新 CRM システム」などの基盤として機能することとなる。
ここでは金融機関の基幹システムとして採用されはじめた SQL Server のロードマップと、名古屋銀行における SQL Server 2005
を中核とした情報系システム構築の概要を報告する。
トップへ戻る
SQL Server ロードマップ: ミッションクリティカル分野における RDBMS として評価が高まる SQL Server
FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代 RDBMS SQL Server 2005 | 金融 | Microsoft for Business
銀行業務を支えるシステムは、「ミッションクリティカル」分野を代表するものとされ、高い信頼性、安全性、そして可用性などが
求められてきた。その中枢となりデータ管理に関わるすべての機能を網羅する RDBMS も同様で、これら多岐にわたる要求に応えら
れる性能が必須となっている。
Microsoft SQL Server が企業システムに活用できる RDBMS として認識されたのは、96 年に提供されたバージョン 6.5 からであ
る。バージョン 6.5 では、 Windows との統合、インターネット対応、レプリケーション機能など時代の要請に応える多くの機能
が搭載された。さらに、99 年の SQL Server 7.0 では、クラスタシステムに対応し、膨大なトランザクション処理を前提とした
ミッションクリティカルシステムに対応しうる高可用性を実現できるようになった。これらにより、金融機関では都市銀行の外為円
決済システムなど、ミッションクリティカルシステムへの SQL Server の適用がはじまった。また、今回紹介する名古屋銀行の新
CRM 基盤でも利用されているデータの統合、分析機能の初期バージョンが追加されたのも SQL Server 7.0 からである。
00 年 11 月にリリースされた SQL Server 2000 では、これらの機能に加え、より安定性が向上し、基幹システムにおける SQL
Server の位置づけはゆるぎないものとなった。企業の基幹業務を担う ERP システム、BANCS 接続システム、名寄せシステム、イ
ンターネットバンキング、オンライン証券システムなど、ミッションクリティカルシステムへの SQL Server の採用事例は枚挙にい
とまがない。
トップへ戻る
次世代データマネジメントプラットフォーム SQL Server 2005 の概要
SQL Server 2000 の登場から 5 年を経て、さらにパワーアップしたデータマネジメントプラットフォームとして 05 年末に出荷さ
れるのが SQL Server 2005 である。SQL Server 2005 では、非常に多くの機能強化・追加をおこなっているが、それらを大別す
ると、図 2 に示すように、3 つのエリアに整理することができる。
まず「エンタープライズデータマネジメント」から解説しよう。早期導入プログラムユーザーがこのエリアにおいて最も関心を示し
たのは、高い可用性を実現する「データベースミラーリング」機能である。
従来の SQL Server では、クラスタシステムによるフェールオーバー、またトランザクションログを地理的に異なった場所にある待
機系システムに転送し、本番系トラブル時に待機系へ切り替えるログ・シッピングという 2 つの方法により高可用性を実現してき
た。今回の SQL Server 2005 では、これらに加え、トランザクションを待機系サーバーに 2 フェーズ・コミットし、トラブル時
に本番系から待機系へ瞬時に切り替える「データベースミラーリング」機能を搭載した。これにより、秒単位でのフェールオーバー
が可能になった。
現在、地方銀行の勘定系システム、公共機関の基幹系システムなどで「データベースミラーリング」機能を前提とした多数のシステ
ム開発案件が進行中である。
2 番目は、「高い開発生産性」だ。従来、データベース開発者とアプリケーション開発者は別々のスキルが必要であった。これは使
用する言語が異なるためである。SQL Server 2005 では、.NET の CLR (Common Language Runtime) が搭載されているた
め、.NET アプリケーション開発者であれば、比較的に容易にデータベース・アプリケーションを実現することができる。
さらに、SQL Server 2005 と同時にリリースされる統合開発環境である Visual Studio 2005 を活用すれば、同一の開発環境上で
クライアントアプリケーション、Web アプリケーション、サーバーコンポーネント、データベース・アプリケーションなどを開
発・デバックすることができる。従来は、開発対象となるアプリケーションごとに開発環境も異なり、必要なスキルセットも違って
いた。開発環境を統合することによる生産性向上は著しい。
3 番目として、「ビジネスデータの分析」機能をさらに充実させた。従来、分析をおこなうためには、RDBMS エンジンに加え、
ユーザーに様々な分析の切り口を提示するための OLAP エンジン、そして、業務データを転送し、分析に利用しやすいよう整形する
ための ETLツールが必要であった。これらのツール類は大変高価なうえに、サードベンダー製品と組み合わせた形で利用するケース
が多かったため、その運用が非常に難しかった。
SQL Server 2005 では、RDBMS エンジンと共に、ETL ツール、OLAP ツール、レポートツールを 1 パッケージ化し、低コスト化
と高い運用性を実現した。
一般ユーザーや経営サイドに活用されなければ、情報系システムの価値は半減する。しかしながら、金融機関の情報系システムで
は、せっかく IT 部門がデータを作成しても十分に活用されていない例が数多く見られる。エンドユーザーに配布されるツールの利
用法が難解で使いこなせないことが原因のひとつであると考えている。SQL Server 2005 の「ビジネスデータ分析」機能は、Excel
とシームレスに連携することができ、Excel ユーザーであれば難なくサーバーサイドの高度なデータを活用することができる。
FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代 RDBMS SQL Server 2005 | 金融 | Microsoft for Business
名古屋銀行の新 CRM システムは、これら 3 つのうち、「開発者の生産性向上」、「ビジネスデータの分析」機能をフル活用した事
例と言えるだろう。
トップへ戻る
名古屋銀行における現行システムの概要
名古屋銀行における現行システムは、それ以前にメインフレームで運用されていたシステムをリプレースし、Unix + Oracle をベー
スとして、99 年にサービスインしたものだ。その概要を図 3 に示す。
現行システムでは、勘定系メインフレームのデータが月次、日次といったタイミングで情報系システムに転送される。次にこれらの
データにより、MCIF と呼ばれる巨大なデータベースが形成される。MCIF は、そのままでは利用者に情報を提供することができな
い。このため情報系システムが下流に位置するさまざまな業務システム向けに、このホストデータを加工、転送する。取引明細デー
タは 15 分おきに営業支援システムに転送され、日次で MCIF に反映される。
これらの情報系システムは、Pro C で書かれたプログラムおよび、PL/SQL、Sagent によるスクリプトから構成されている。これ
らの数百本におよぶプログラムやスクリプトは、バッチ処理によって起動され、下流の情報系システムで利用される約 300 個の
テーブル・キューブを生成し、必要なシステムへ転送する。
図中では省略しているが、このようなデータのやり取りを管理する「ジョブ運用管理システム」や項目管理をおこなう「メタデータ
リポジトリ」なども実装されており、データの変更・追加などのメンテナンス作業を GUI 経由で容易に実施できる。このため、現
行システムは、金融機関において 90 年代に流行した MCIF の概念よりもさらに一歩進んだ DWH やデータハブ、統合データベース
としての性格が強いシステムと言える。
トップへ戻る
現行システムにおける課題と SQL Server 2005 採用のポイント
名古屋銀行における現行の情報系システムは、先進的な機能が盛り込まれたものではあるが、基盤となるソフトウェアなどのリース
アップ時期が近づくにつれ、更改を考えざるを得ない状況になった。この大きな要因となったのが経営環境の変化だ。
名古屋銀行の第十五次経営計画にうたわれている「お客様サービスの充実」を実現するためには、新しい情報系システムが、勘定
系、新勘定系、ATM、テレフォンバンキング、渉外係などのあらゆるチャネルの結束点としての機能を果たし、お客様の属性、資産
状況、取引履歴を統合できなくてはならない。しかしながら、複雑になりすぎた現行情報系システムに対し新しい機能を追加するこ
とは困難な状況であった。同行にとって、SQL Server 2005 の登場は、まさに、これら現状の課題に対するソリューションと位置
づけられるものだった。
SQL Server 2005 採用のポイントは、次の 3 点に集約することができる。
1. SQL Server 2005 における開発生産性の高さ
名古屋銀行の事務システム部は、Windows テクノロジー、SQL Server に精通しており、業務システムのほとんどを.NET
により内製している。そんな中にあって、現行の情報系システムは Unix OS + Oracle DBMS で構築されており、事務シス
テム部から見るとブラックボックス化し、経営の要求に迅速に対応できなくなっていた。
SQL Server 2005 の場合、.NET のスキルがあれば、同時にリリースされる Visual Studio 2005 のみで、クライアントア
プリケーション、Web システム、データベースアプリケーションまで一貫して開発することができる。また、事務システム
部で内製化することにより、迅速な開発、展開、サポートが可能となる。外注化した場合のようにタイムラグが発生せず、必
要なシステムを必要なタイミングで、銀行自らが迅速に構築できる点が高く評価された。
2. 大幅なコスト削減
現行の情報系システムは、Oracle データベースエンジン、サードベンダーの ETL ツールで構成されており、年間ライセンス
のコスト負担が膨大になっていた。しかしながら、この ETL ツールで実現できるのは、勘定系データをバッチ処理で項目移
送して作成した多数のテーブルを下流の情報系システムに配信すること、そして、分析システムのためのキューブを作成する
ことに留まっていた。
SQL Server 2005 に含まれ SQL Server Integration Services、SQL Server Analysis Services などを使えば、これらの
機能のほとんどを置換ることができる。さらに、これらの機能は、SQL Server 2005 に標準機能として包含されているた
め、年間ライセンスコストを大幅に低減することができる。
また、現行システムでは、高度な行員向け分析ツールが用意されていたが、その利用状況を調査した結果、SQL Server
Analysis Services による OLAP キューブと Excel による分析機能で置き換えることが可能であることがわかった。この対
FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代 RDBMS SQL Server 2005 | 金融 | Microsoft for Business
処により、行員が使用する分析ツールに関しても大きなコスト削減を図ることができた。
名古屋銀行による試算では、現行システムと今回構築する新システムを比較した場合、新システムでは、初期導入コストで 4
割、運用コストで 7 割という大幅なコスト削減を見込めることがわかった。
3. コンプライアンス対応
今春に施行された個人情報保護法、08 年春に施行予定の日本版 SOX 法などのコンプライアンス対応は、経営上の大きな
テーマとなっている。
SQL Server 2005 の採用にあたっては、提供される高度なデータ暗号化機能、また、既に名古屋銀行の OA 基盤で展開され
ている Active Directory と連動できる点が高く評価された。日本版 SOX 法草案では、構成要素の 1 つとして「IT への対
応」がかかげられ、その中の全般統制にはセキュリティの重要性が記述されている。こうした点から考えても、ユーザ ID が
OA 基盤と情報系で一元管理できるマイクロソフトのテクノロジーは非常に有効なものと高く評価された。
トップへ戻る
新 CRM 基盤の姿 : データベース指向システムの実現
05 年末にリプレースされる新 CRM 基盤のリプレース完了後の概要を図 4 に示す。
現行の Unix サーバーが NEC 社製 X64 マシンに置き換えられ、Oracle DBMS は SQL Server にリプレースされている。さらに
ETL ツール、分析ツールも SQL Server 2005 上の統合データベースに置き換えられている。データベースエンジンのみならず、こ
れらの BI 関連ツールなどが統合データベース機能として集約されたことにより、開発面や保守、運用面についても効率よい管理が
可能となっている。
なお、SQL Server 2005 への置き換えが完了した後、次のステップでは、.NET による新 CRM システムの開発がはじまる予定と
なっている。
トップへ戻る
本システム構築に向けたマイクロソフトの支援体制
マイクロソフトは、04 年 5 月に SQL Server 2005 (当時はコードネーム "Yukon") の早期導入プログラムの募集を開始し、アジ
アの金融機関で唯一、名古屋銀行との契約を締結した。早期導入プログラムとは、ベータ段階の製品を顧客の実業務システムに適用
してもらい、品質向上をめざすというものである。早期導入プログラム実施にあたってマイクロソフトでは、当該顧客に対し、米国
本社を含めた包括的な技術サポート体制を提供する。このため、導入顧客は、製品リリースと同時に最新テクノロジーを活用した自
社システムをサービスインすることが可能となる。
名古屋銀行の場合、若手技術者 6 名を中心とするプロジェクトチーム (写真) を発足させ、同プロジェクト配下で、インテック、イ
ンテル、NEC、マイクロソフトの 4 社がプロジェクトを支えるという体制をとった。一方、マイクロソフト側は、営業グループ、
技術コンサルタント (Microsoft Consulting Services)、サポート技術者 (Premier Support) からなるプロジェクトチームを編成し
た。そのバックサポートとして米国からは本社開発部門が参加した。
通常、こういったプロジェクトではベンダーがシステムインテグレーターとして参加するケースが多い。しかし、今回の例では、名
古屋銀行側がシステムインテグレーターとしてプロジェクトを主導した。これは前述のとおり、名古屋銀行が Windows テクノロ
ジーに精通していたこと、そして、移行完了後に開発が控えている新 CRM システムなど、新規システム開発のための技術スキルを
つけるという目的があったことによるものだ。
マイクロソフトは、プロジェクトの初期段階から、現状システム把握、プロジェクトスコープの明確化、タスクの洗い出しなどに参
画し、サイジング、設計、アプリケーションサポート、トラブルサポートなどのタスクを支援した。また、同時に SQL Server
2005 の技術トランスファー、米国本社からのフィードバックなどをおこなうという形でプロジェクトを支援した。
トップへ戻る
まとめ
今回は SQL Server 2005 による情報系システムの再構築事例をご紹介した。本プロジェクトは、新 CRM 基盤のサービスイン後も
FIT 記事 No.19 (2006) 金融機関の統合DBを支える次世代 RDBMS SQL Server 2005 | 金融 | Microsoft for Business
進行してゆくが、現在までの成果として、初期導入コストの4割、運用コストの7割削減という顕著な結果を残すことができた。今回
のプロジェクトを通じて、筆者は、金融機関として情報系システムのありかたについて考える時が来ていると感じた。あるコンサル
タントの方の発言にあった「銀行の情報系には必要な情報があふれている。ただ使われていないだけだ。」という言葉も、これを裏
付けているように思われる。
マイクロソフトは、SQL Server 2005、そして企業向けサービス (Microsoft Enterprise Services) を通じて、金融機関を含めたさ
まざまなお客様に対して、使いやすい情報系システム構築のお手伝いをしたいと考えている。
写真手前左より 名古屋銀行事務システム部 稲垣 和男氏、中村 清司氏、鬼頭 正朗 氏
二列目左より 次長 山本 信勝 氏、副業務役 平岡 秀之 氏、係長 柴田 政彦 氏
トップへ戻る
金融 IT 情報誌 FIT No.19「2006 冬号」
本サイトに記載の情報は、日本金融通信社発行「FIT」誌の発行日時点におけるものです。Microsoft は本サイトに記載した内容について
の確約や、発行日以降に内容の正確さについての保証を行いません。本サイトは情報を提供するために作成されたものです。
トップへ戻る
Fly UP