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ASEAN47ネットワーク港の調査活動について

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ASEAN47ネットワーク港の調査活動について
<国際物流事情>
ASEAN 47 ネットワーク港の調査活動について
小門 武
譲ることにして、ここでは、 ASEAN 海運作業部会や
1. ASEAN ロードマップ
ASEAN( 東 南 アジ ア 諸 国 連 合 ) は、 2015 年 の
ASEAN 経済共同体の構築に向け、さまざまな施策に
1)
47 ネットワーク港の現地調査、またベトナムと共同で
開催したワークショップなどを通して見た ASEAN の
活動状況について、トピックスや雑感を交えながら紹介
したい。
取り組んでいる 。
海運の分野では、域内でのよりオープンで効率的、
2. ASEAN47 ネットワーク港
か つ 競 争力のある 海 運システムを 達 成 するために、
20 項目の施 策から成る「 ロードマップ 2)」 が第 13 回
ASEAN 運 輸大臣会合( 2007 年 11 月)で採択され、
ASEAN 海運作業部会のもとで実施されている。
20 項目の施策のうち、インフラ分野の二つの施策(施
策 6 及び 8)を ASEAN- 日本協力枠組みの一環とし
て独立行政法人国際協力機構( JICA )が協力を行い、
第 10 回 ASEAN 運輸大臣会合( 2004 年 11 月)で、
ASEAN ネットワーク港として 47 港が指定され
ている。インドネシアが 14 港で最も多く、マレーシ
ア( 10 港)、フィリピン( 9 港)、ベトナム( 4 港)、タイ、
ミャンマー(各 3 港)、カンボジア( 2 港)、シンガポー
ル、ブルネイ(各 1 港)となっている。
当センターを中心とする企業共同体が調査業務を受託
した。
施策 -6 「 ASEAN ネットワーク港( 47 港)の整備
優先度の評価ガイドラインの作成」
施策 -8 「 ASEAN ネ ッ ト ワ ー ク 港 の 優 先 整 備 プ ロ
●
Cailan
●
Haiphon
●
Kyaukphyu
Yangon
●
●
Thilawa
●
Danang
Subic ●
●
Bangkok
●
●
●
Laem Chabang
Manila
Phnom Penh
Batangas
●
●
ジェクトの抽出」
●
Sihanoukville Ho
Chi Minh
●
●
Cebu
●
Songkhla
●
また、関連する施策の二つが韓国の協力で実施さ
●
Penang
●
●
Belawan
れた。
Kuantan
●
施策 -5 「 ASEAN 域内海運貿易データベースの作
Dumai
● Johore
●
● ●
Port Kulang
Singapore
施策 -7 「 ASEAN ネットワーク港の課題抽出」
ASEAN 運輸大臣会合
海運 道路 鉄道 航空 観光
●
●
Iloilo
●
Zamboang
Cagayan de Oro
●
Dabao
General Santos
Sandakan
●
Muara
Bintulu
Bitung
●
Sorong
Kuching
●
Balikpapan
●
Tj Pelepas
●
Palembang
成」
●
●
Kota kinabalu
●
Pontianak
Jayapua
●
●
Banjarmasin
Panjang
●
●Tj Priok
●
●
Tj Emas
●
Tj Perak
Makassar
ASEAN47 ネットワーク港
3. ASEAN 海運作業部会
ASEAN 海運作業部会
ロードマップ(20 の施策)
ASEAN 海運作業部会は年 2 回の頻度で開催され
施策 -5(2009 年)
幹事国:マレーシア
協力:韓国
施策 -6(2009 年)
幹事国:ブルネイ
協力:日本
施策 -7(2010 年)
幹事国:マレーシア
協力:韓国
施策 -8(2010 年)
幹事国:ベトナム
協力:日本
ており、各国の運輸省の次官、局長クラスをヘッドとす
る代 表団と ASEAN 事務局、 ASEAN フォワーダー
協会( AFFA )、ASEAN 港湾協会( APA )、船主協会
( FASA )および IMO からの代表で構成される。
また、ASEAN とそれぞれバイラテラルな協力関係に
ある日本、中国、韓国の政府関係者がオブザーバーとし
それぞれの施策の調査結果はそれぞれの報告書に
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て参加している。ただし、議題によってはオブザーバー
OCDI QUARTERLY 81
の退席を要請されることがあり、また、協力国との議論
物データの確認、③港湾管理者あるいはターミナル
の際はあとの 2 カ国は退席するのが通例である。
オペレータの案内による港湾施設見学、④質疑応答、
という手順で進められた。そして 2 日目は、ターミ
議 長 は 各 国 2 年 ず つ の 持 ち 回 り に な っ て お り、
ナルオペレータとの詳細なデータ確認、質疑応答、ま
2008-2009 年 は ベ ト ナ ム、 2010-2011 年 は マ レ ー
た必要に応じてアクセス道路、背後圏の調査などを実
シアが担当している。会議は議長国の諸都市で開催
施した。
される。
ASEAN ネットワーク港と一口に言っても、大はシ
「ロードマップ」の最終案が議論された第 14 回作
ンガポール港から、取扱い貨物のほとんどが国内貨物
業部会(2007 年 8 月)では、施策 -5 から施策 -8 に
である地方港までさまざまであるが、ほとんどのネッ
関する調査は外部の援助機関に依頼することが合意
トワーク港で共通しているのは、貨物量、特にコンテ
された 3) 。この合意を受けて、施策の 6 と 8 は日本
ナ貨物量が増大していることである。47 港のコンテ
が、 5 と 7 は韓国が協力することに至ったのである。
ナ取扱量の合計は約 7 千 300 万 TEU(2008 年)で
あるが、今後、コンテナ貨物量は益々増大していくこ
そして、第 17 回作業部会( 2009 年 3 月)で、施
とが予想されている。このため、多くの港で、コンテ
策 -6 の調査実施計画を説明した。また、韓国調査チー
ナターミナルの拡張あるいは従来バースをコンテナ
ム(KMI 、韓国海事大学、 KL-Net)は、施策 -5 お
ターミナルに転用するための工事や計画が進められ
よび施策 -7 の調査実施計画を説明した。その際、日
ていた。
韓両チーム共、47 ネットワーク港の現地調査を計画
していることから、受入れ港の負担を減らすため、
現地調査は極力合同で行うように要請された。
(雑感)
韓国の調査チームと合同で現地調査を実施したの
は、30 港であった。初めのうちは、なぜかライバル
(雑感)
心のようなものもあり、調査の背景や目的をどちら
会議はすべて英語で行われる。各国の代表は皆さん
のチームが説明するのか、また、限られた時間の中
英語に堪能で、それぞれの国の特色ある英語が飛び
でどのような質問をするのかといった主導権争いの
交うことになる。特にマレーシア、シンガポール代表
ようなこともあったが、お互いの専門分野や能力・
が話すスピードが早く、聞き取るのに苦労する。集中
人柄がわかってくると自然に分担が決まり、スムー
していないと聞き漏らしてしまうので、要注意である。
ズに調査を進めることができるようになった。焼肉
ASEAN の会議に出るには、アメリカ英語、イギリス
英語だけでなく、 ASEAN 各国の英語の特徴に慣れて
や寿司を食べながら、懇親を深めることもできた。
おく必要があると感じる。
和気あいあいと合同調査を進めることができたの
は、受け入れ側である各港の関係者の協力、雰囲気に
4. ASEAN47 ネットワーク港の現地調査
施策 -6「港湾整備優先度の評価ガイドラインの作
成」に先立ち、ASEAN47 ネットワーク港の現在の
状況を把握するため、2009 年 6 月から足掛け 4 ヶ月
をかけ、二人一組の 2 グループに分かれて現地調査
を実施した。ASEAN 海運作業部会の要請もあり、ス
ケジュールの都合のつく限り韓国チーム(三人一組)
と合同で現地調査行った。
現地調査は、1 港当り 2 日の日程を基本とした。
1 日目は、①港湾管理者による当該港の概要説明、
②予め送付しておいた質問票にもとづく港湾施設、貨
現地調査の状況(ポートクラン北港にて)
後列右 3 人:韓国調査チーム、左 2 人:日本調査チーム
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拠るところも大きい。ASEAN 大臣会合で採択された
ワークショップには、 ラオスを含む ASEAN10 ヵ国
ロードマップの一環としての調査であり、ASEAN
の代表 2 名(ブルネイは急用のためキャンセル)と
作業部会の各国トップからの協力依頼・指示が各港に
ASEAN 事 務 局 か ら 1 名、 ま た オ ブ ザ ー バ ー と し
て 韓 国 調 査 チ ー ム の 2 名 が 参 加 し た。 議 長 は、 主
催 者 で あ る VINAMARINE(Vietnam Maritime
Administration)のティエン副長官とトアアイン国際
部長が務めた。各国代表団(2 名)および関係機関の
きちんと出されていたこともあろうが、それに加えて
「何か」があったように思われる。それは、東南アジ
ア特有の「ホスピタリティ」あるいは「オープンマイ
ンド」と表現すれば良いのであろうか。
所属は以下の通りであった。
国
カンボジア
現地調査の状況(ミャンマー / チラワ港にて)
後列左 3 人:韓国調査チーム、4 人目:日本調査チーム
5. ASEAN-Japan ワ ー ク シ ョ ッ プ( ハ ノ イ )
の開催
施策 -8 では、 ASEAN ネットワーク港の優先整 備
プロジェクトを抽出する必要がある。このため、先ず、
現地調査の結果を踏まえ、 47 港において計画中ある
いは必要とされるプロジェクトをリストアップした。実
行中のものも含め 70 件以上のプロジェクトがリストアッ
プされた。やはり多いのはコンテナターミナル関連の
プロジェクトであり、 コンテナターミナルの拡張プロ
ジェクトと、 ガントリークレーン 設 置 等による生 産性
向上プロジェクトが過半数を占めた。その他に、航路
浚渫やバルクターミナルの建設プロジェクトなどがリス
所属
・ 公共事業運輸省 海運部
・ 公共事業運輸省 シアヌークビル港湾公社
インドネシア ・ 運輸通信省 海運総局
ラオス
・ 公共事業運輸省 水上交通局
マレーシア
・ 運輸省
・ ポートクラン港湾公社
ミャンマー
・ 運輸省 海運管理局
・ ミャンマー港湾公社
フィリピン
・ フィリピン港湾公社 (PPA)
・ セブ港湾公社 (CPA)
シンガポール ・ 海事港湾公社 (MPA)
タイ
・ 運輸省 海事局
・ タイ港湾公社 レムチャバン港
ベトナム
・ 運輸省 VINAMARINE
・ ハイフォン港、 サイゴン港
ASEAN
・ 経済協力本部
事務局
韓国
・ 韓国海事研究所 (KMI)
・ 韓国海事大学
日本
・ JICA 東南アジア第 2 部
・ 調査チーム (OCDI、 Ides、 MRI)
1 日目は、各国代表団によるプロジェクト紹介に費や
した。準備期間が十分とれた(約 2 ヶ月)こともあり、
各国代表団から熱のこもったプレゼンテーションがな
された。 2 日目は、前日説明のあったプロジェクトの確
認を行ったあと、我々調査チームから優先整備プロジェ
クトの抽出方法を説明し、承認を得た。
トアップされた。
70 件を超えるプロジェクトから優先整備プロジェクト
を抽出するにあたり、施策 -8 の幹事国ベトナムの首都
ハノイでワークショップを開催した。ワークショップの
目的は、
①各港で計画中あるいは必要とされるプロジェクト情
報を ASEAN 海運作業部会の実務メンバーと共有する
こと。
②優先整備プロジェクトの抽出方法を説明し、承認
を得ること。
である。
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ワークショップ参加者
OCDI QUARTERLY 81
ワークショップの模様
各国代表によるプレゼンテーションの様子
ワー クショップの 開 催 に 先 立 ち、 主 催 者 で あ る
した際には家族にお土産を買って帰るという習慣を
VINAMARINE を全面的に支援するため、調査チー
大切にし、その場を提供することが主催者としての責
ムのメンバー 2 人は 1 ヶ月前に現地入りした。会場の
務であるということにやっと気付いた。海外で仕事を
手配や 食事のメニュー、航空券の送付や空港 送迎な
行う時、また、海外の人々と交流する時は、日本の文
ど、準備しなければならないことが多岐にわたったが、
化の中で養った自分の価値観を少し脇に置き、相手の
VINAMARINE との密接な連携のもと、また、あとで
現地入りした 4 名のメンバーの助けも借りて無事、ワー
習慣や文化を尊重する、相手の言うことに耳を傾ける
ことが大切であることを改めて認識した次第である。
クショップを開くことができた。
6. おわりに
(雑感)
ASEAN ネットワーク港の調査を 2 年間にわたり実
2 日間というタイトな日程にもかかわらず、主催者
側から、「ASEAN 海運作業部会では、3 日間の日程
施した。ネットワーク港の多くは活気に溢れており、
の中で必ず半日の市内ツアーが用意されている。 各国の活発な経済活動のもと、時機を得た対策を講じ
今回のワークショップは 2 日間なので、2 時間程度の
ることにより、今後ますます発展していくであろう。
ミニツアーで良いからプログラムに入れたい」との
今回の調査が、その発展の一助になれば幸いである。
提案があった。私は最初、「ただでさえタイトなスケ
ジュールなのに、市内ツアーを入れる余裕などない」
と反対したが、協議を重ねた結果、2 日目の開始を 1
今回の調査で、多くの関係者の方々に大変お世話
になった。ここに感謝の意を表します。
時間早めるとともに、議長と調査チームが議事録案を
作成する合間を利用して、2 日目の午後に絹織物工場
の見学ツアーを入れ込むことにした。後で聞いたとこ
ろ、特に女性参加者からの評判が高く、絹で有名なタ
イからの参加者も含め、工場に隣接する売店で、「安
い !」と言いつつ値切りながら、スカーフやネクタイ
[ 参考資料 ]
1) Declaration of ASEAN Concord II, 2003 年 10 月 7 日
2) R o a d m a p t o w a r d s a n i n t e g r a t e d a n d c o m p e t i t i v e
maritime transport in ASEAN, 2007 年 11 月
3) http://www.md.go.th
(こかど たけし 主任研究員)
をお土産用に何点も購入していたとのこと。海外出張
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