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アジア見通し
2015年 アジア見通し 目次 世界経済の見通し 政策金利の引き上げは 正常化への第一歩 ̶2 市場見通し アジア株の配当利回り がMSCIワールド指数を アウトパフォーム ̶8 消費財 原油価格下落が自動車 業界の追い風に。 働く女性が増え宝飾品 市場は販売拡大 ̶ 12 エネルギー・公益事業 原油需要は一段落。 風力・太陽光発電部門は 引き続き明るい見通し。 ̶ 20 金融 各国の中央銀行は緩和 姿勢。上海と香港の証券 取引所の相互株式注文 取り次ぎプログラムが 始動。 ̶ 26 工業 米国の燃料ブームで 2015年タンカー貿易の 流れと輸送量が一変 ̶ 34 原材料 中国の鉄鋼生産、 抑制策 で2015年は鈍化の兆し ̶ 38 テクノロジー ブルームバーグ ウエラブルのハイプ・サイ アナリストチーム クル、 アップルウオッチ ̶ 50 登場が試金石に ̶ 46 ブルームバーグ・ インテリジェンス 「2015年アジア見通し」 ブルームバーグ・インテリジェンスの 「2015年アジア見通し」 では、2015年のビジネス戦略 および投資戦略を左右する重要なトピックやトレンドに焦点を当てています。 ブルームバーグ・インテリジェンス (BI) は、 5年前に発足したブルームバーグ エル・ピーのリ サーチ部門で200名以上のアナリストを擁しています。本稿では、主に次の3つの論点を取 り上げています。 政策金利引き下げと成長回復:2014年、 アジア各国で経済成長率が低迷するなか、欧州 と並んで日本と中国も、金融緩和策の実施に相次いで踏み切りました。金利引き下げや各 国の政策がアジアおよび世界経済や産業動向にどのような影響を及ぼすのか、検証する 必要があります。 米国の動向と原油安:米国経済は、景気が底を打って以来、緩慢なペースながらも着実な 回復軌道に乗っており、米連邦準備制度理事会(FRB) による政策金利の引き上げが見込 まれています。 こうしたなか、 シェールガスの増産と原油価格の下落が、米国経済の復活に はずみをつけられるかが焦点です。 地政学リスク:投資家の間では、世界各地の地政学リスクに対する警戒感が続くとみられ ています。特にウクライナ問題は、欧州の景気回復やエネルギー市場の動向に多大な影響 を及ぼすことから注視しなければなりません。 また2015年半ばには、 イランの核開発問題 や制裁措置を巡る懸念が再燃する可能性もあります。 BIチームは、今後の産業動向を読み解くための役立つ情報ツールとして、平均20年の経験 を持つシニア・アナリストを中心に、130以上の業種・セクターをカバーし、世界中の企業や 主要なアセットクラスを分析しています。今や、32万人に及ぶブルームバーグユーザーの皆 様が、主要なイベント情報や最新のデータにアクセスし、 チャートやデータ分析など様々な リサーチを活用しています。 また、BIのアナリストを通して、機関投資家や企業プロフェッ ショナルとのネットワークも構築することができます。 詳細については下記までお問い合わせください。 DAVID DWYER [email protected] TIM CRAIGHEAD [email protected] リサーチ・ディレクター DAVID DWYER グローバル PAUL SWEENEY 北米 DREW JONES グローバル・リサーチ (補佐) TIM CRAIGHEAD アジア SAM FAZELI 欧州、 中東、 アフリカ JULIE CHARIELL 政府、法律、ESGリサーチ NOEL HEBERT クレジット JOEL LEVINGTON クレジット コンテンツマネジャー PATRICIA WILSON グローバル・プロダクト マネジャー CHRIS ROGERS グローバル・コンテンツ GALEN MEYER エグゼクティブエディター 世界経済の見通し 政策金利の 引き上げは正常化 への第一歩 アナリスト37名の コンセンサス予想 (2014年11月現在) Mike Mcdonough ブルームバーグ エコノミスト 6 5 4 3 2 1 0 2013 2014 2015 世界のGDP成長率 (年率換算、%) 出所:ブルームバーグ アナリスト24名の コンセンサス予想 (2014年11月現在) 4.0 3.9 3.8 3.7 3.6 3.5 3.4 3.3 3.2 3.1 2013 2014 2015 世界の消費者物価指数 (CPI) 出所:ブルームバーグ 2 米 連 邦 準 備 制 度 理 事 会( F R B )は、 2015年に2006年6月以来となるフェ デラルファンド (FF)金利の引き上げに 踏み切ると予想される。 これにより、金 利正常化に向けた長期的なサイクルが 始動し、世界の金融市場にも影響が及 ぶと考えられる。 米国の利上げは、企業景況感や雇用 情勢の改善が示すように、米国経済が 停 滞 期を脱し本 格 的な回 復 局 面に 入ったことを意味するため、 引き続き極 めて緩和的な水準ではあるものの市場 では好材料と受け止められるだろう。 米国債利回り上昇の影響は瞬く間に 波及し、米国の利上げを契機に、新興 国市場からの資金流出が加速する事 態となった。 とりわけ巨額の経常赤字 を抱える国に深刻な影響が及び、成長 見通しの急激な悪化を招いた。 またこ れに伴い、 インド、 ブラジル、 インドネシ ア、 オーストラリア、南アフリカ、 トルコの 通 貨が、2 0 1 3 年 5月から9月の間で 10%以上下落した反面、潤沢な経常 黒字を計上する韓国では、 ウォンがわ ずかに上昇した。 この2013年のバーナ ンキ・ショックでは、一連の混乱を経て 市場が落ち着きを取り戻すと、新興国 市場への資金回帰の動きがみられ、政 策当局者の間で安心感が広がった。 一方、成長の原動力を低金利の外国 資本に大きく依存してきた新興国市場 にとっては、米国の利上げは2013年の 2015年、FRBが利上げを実施すれば、 混乱の記憶を呼び覚ますものである。 新興国市場は今回も混乱に陥る可能 というのも、2013年5月に当時のバー 性がある。 ナンキFRB議長が量的緩和縮小の可 能性に言及した際には、 米国債10年物 の利回りは同年9月までに3%へと上昇 し、5月の水準と比べ約2倍に跳ね上 がった。 というのも、 日本は国民の4人に1人が 65歳以上の高齢者という人口動態上 の深刻な問題を抱え、公的債務の対 GDP比も約240%という高水準に達し ている。 しかしその一方で、金融引き締 めのFRBと金融緩和の日銀というよう に政策スタンスの違いを反映する形で 円安ドル高基調となっていることから、 日本企業の収益拡大が期待される。 た だし、円安の恩恵を享受した企業が、 収益を成長の原動力となる投資ではな く内部留保に回すことも懸念される。 日本では、 「失われた20年」 からの経済 ̶ 再生に向け、安倍首相による改革策が 進められてきたが、予想外の景気鈍化 を受け昨年12月に急きょ総選挙が実 施され、 アベノミクスは軌道修正を迫 られている。安倍首相が掲げる政策目 標は大胆だが、 すでに遅きに失した感 欧州では、期待インフレの低下を阻止 もある。 するべく、欧州中央銀行(ECB) による 追加的な緩和措置の実施が期待され る。ECBは量的緩和プログラムのなか で、民間部門の資産を買い入れてきた が、その対象に国債を含めることを検 討するとみられる。 一方、中国については、統制された経 済体制を敷いていることから、他の新 興国市場と比較して、FRBの利上げサ イクルの影響は受けにくいと考えられ る。 とはいえ、経済改革に重点を置く政 策や過剰投資問題といった逆風によ り、中国経済の見通しに陰りが生じて いる。 こうしたなか、政府は刺激策の積 極的な実施ではなく低水準の成長を 容認するとみられ、2015年の成長率目 標も7.5%から7%への引き下げが見込 まれている。2013年末に打ち出された 改革目標については未達成の状態であ り、金利や資本勘定の自由化に向けて さらなる取り組みが必要である。不動 産および金融セクターにかかる圧力を 踏まえれば、慎重なペースで自由化を 進めることが求められる。 欧州経済は欧州債務危機時と比べれ ば、 ここ最近安定的に推移しているも のの、政策当局はこの局面を捉えきれ ず、 いまだ回復軌道に乗っていない。 イ タリアの公的債務残高が世界第3位の 規模に膨らんでいるように、多くのユー ロ圏諸国で公的債務の対GDP比が持 続不可能な水準に達し懸念が深まっ ている。危機が長期化していることか ら、2015年には欧州内外の市場が激 しい変動に見舞われる可能性もある。 3 中国経済の見通し 成長下支えに向け、 政策の軸足をシフト 中国政府は2015年、経済成長への下 押し圧力が続くなか、景気刺激を重視 する方向へ政策を転換するとみられ る。 一方、輸出売上は、 データの信頼性な どを踏まえると正確な把握は困難だ が、堅調に推移しているように見受け られる。世界一の輸出大国である中国 も、賃金の伸びや人民元相場の上昇 に伴う競争力低下に直面していること から、海外売上高の伸び率を現在の 10%を超える水準に維持することは 容易ではないと思われる。 出所:ブルームバーグ 量的緩和と物価動向 がアベノミクスの 命運を左右 TOM ORLIK、 FIELDING CHEN ブルームバーグ エコノミスト 習近平国家主席は、中国の経済成長 率は2015年に一段と減速する可能性 があるものの、7%前後の経済成長率 は国際的には依然として極めて高い 水準にあると述べた。 この発言から、 現時点で7.5%に設定されているGDP 中国政府は、2014年の第1−3四半期 成長率目標を中国政府が引き下げる にかけて、的を絞った小型の景気刺激 構えであることが読み取れる。 策に重点を置いて取り組んできたが、 第4四半期には、貸出基準金利(政策 中国における景気の下振れリスクは、 金利) の引き下げに踏み切るなど変化 主 に 不 動 産 セクター に 起 因 する。 がみられた。景気減速の深刻さに警戒 2014年第1−3四半期を通して不動 感を強めた中国政府が、 成長の下支え 産販売と新規建設が落ち込んでいる を狙い軌道修正を図ったことが読み ことから、今後、不動産投資の減速が 取れる。 予想され、 鉄鋼から薄型テレビまで、 あ らゆる需要の縮小につながることが懸 貸出基準金利の0.40%の引き下げは、 念される。 しかし、低所得者向けの住 短期的には、多額債務者の負担を軽 宅政策が進展すれば、商業施設建設 減し、 不動産販売の低迷に歯止めをか の減速による影響は多少吸収される ける効果が期待される。 しかし長期的 と予想される。 には、信用拡大による景気刺激策の持 続は、 すでに高水準の債務を抱える銀 行のリスクを高めることにもつながる。 さらには、国有企業と地方政府に割安 な資金調達手段が提供されているこ とも、構造的な問題である。 人民元の 対米ドル 為替レート 日本経済の見通し 人民元の為替相場は、 2014年、 市場予 想に反する動きを見せた。市場では約 3%の上昇が予想されていたが、2014 年末には元安基調の展開となった。 ま た、 日本円と韓国ウォンの間でも、為替 の切り下げ競争が繰り広げられている が、2015年は、人民元も切り下げに加 わるのかどうかが焦点となる。 人民元の許容変動幅の拡大、経常黒 字の減少、金利格差の縮小といった変 化は、元高一辺倒のトレンドが終了し たことを示唆すると考えられるが、人 民元が大幅に下落する公算は小さい。 というのも、元の急落は、米国の反発 や資本の逃避を招き、金融システムの 安定性に対する懸念を増大させるた めである。 2013年11月の三中全会において発表 された経済改革プログラムに関して は、 その目標達成は依然として道半ば の状態にある。そのため、金融改革は 継続される見通しであり、預金保険制 度の創設開始のほか、預金金利の自 由化に向けた譲渡性預金(CD)の発 行拡大などが目指されている。また、 上海と香港の証券取引所の相互株式 注文取り次ぎプログラムが開始された ことは、国際間取引の進展に向け一歩 前進といえる。 ̶ 6.8 6.6 6.4 6.2 6.0 5.8 5.6 5.4 2010 4 2011 2012 2013 2014 2015 2016 TOM ORLIK ブルームバーグ エコノミスト 日本のCPI 5 出所:ブルームバーグ 4 3 2 1 0 -1 2010 2011 2012 2014年終盤に予想外の動きが重なっ たことを受け、世界第3位の経済大国 である日本の見通しは大きく揺らいで いる。 物価の下押し圧力を背景として、 日銀 が追加緩和を実施した結果、円相場 は7年ぶりの安値まで下落した。 また、 昨年4月に実施された消費増税の影 響を反映する形で、2014年第3四半期 には景気後退局面への逆戻りが確認 された。 これを受け、安倍首相は解散・ 総選挙に踏み切り、結果として与党が 過半数を上回る議席を獲得し圧勝し た。 また、消費税率の引き上げ時期に ついても、 当初予定されていた2015年 10月から2017年4月へ延期されること となった。 総選挙の結果を受けて、 アベノミクスが 軌道修正されたことは評価される。 日 銀が追加緩和を打ち出す一方で、 財政 健全化は後れを取っているが、 いずれ も成長回復に向けた動きといえる。 ま た、 原油価格の急落を背景に、2014年 10月のコアCPIが前年比+1%を割り 込んだことを受け、 日銀は量的緩和を 推進する意欲をあらためて示している。 2015年のGDP成長率については、 コン センサス予想では+1%と、 2014年の+ 0.9%を上回る水準となっている。 2013 2014 2015 2016 一方、巨額の財政赤字と人口の減少 により、景気刺激策の効果が薄れるこ とが危惧されている。また、企業の増 益分が設備投資や雇用の拡大に直結 しないのではないかという懸念も広 まっている。 今後の先行きを占うのは2015年の春 闘である。賃金交渉において経営側の 姿勢が軟化すれば、景気回復にはず みがつき、2015年度のコアCPI予測値 +1.7%という日銀の見通しが現実味 を帯びる。異次元金融緩和の拡大を 巡っては意見の対立が予想されるも のの、黒田総裁は必要であれば追加 緩和も辞さない姿勢を示している。 対米ドル円相場は、 こうした金融政策 を背景に2014年を通して円安基調が 継続し、12%以上の下落となった。 し かし2015年の為替動向は、日本より も米国の金融政策に左右される可能 性が高い。米国で利上げが開始され れば、2国間の金利差が拡大し、円安 が加速するとみられる。 ただし、 日本に とって円安は、 プラス・マイナスの両面 がある。輸出企業では増収が見込まれ る反面、他の企業や消費者にとって は、輸入品価格の上昇を意味する。 日本経済の先行きに影を落とす主な リスク要因は、 やはり国債市場の混乱 である。公的債務残高の対GDP比が 約240%に上っている一方で、 日銀が 年間80兆円のペースで日本国債を買 い入れていることは、国債の事実上の マネタイゼーションである。 そのため、 日銀が今後、市場を動揺させることな く出口戦略を実現するのは困難だと考 えられる。 ̶ 5 韓国経済の見通し インド経済の見通し インド経済、 モディ 改革の勢いにのる 韓国経済、 困難な 局面を乗り越えて FIELDING CHEN ブルームバーグ エコノミスト アナリスト37名の コンセンサス予想 (2014年12月3日現在) 年率(%) 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 7 6 5 4 3 2 1 韓国のGDP 成長率 出所:ブルームバーグ 6 0 韓国経済は、2014年に旅客船セウォ ル号の転覆事故や軟調な世界経済を 起因とする課題に直面しつつも、回復 軌道に乗っている。 住宅部門は引き続き、現行の不動産 融資規制に対する緩和措置から恩恵 を受けると考えられる。 また、米国の需 要拡大に伴い輸出部門も次第に伸長 する見込みである。輸出の増加は、企 4月のフェリー沈没事故が消費の自粛 業の設備投資を後押しするとみられる ムードと企業投資の停滞をもたらし、 が、国内消費は家計債務の膨張によ 2014年第2四半期の成長率は年率換 り、若干の伸びにとどまるとみられる。 算で2%と低迷していたが、第3四半期 の成長率は3.6%に伸長した。同期間 総じて、2015年の韓国経済は緩やか においては、低水準で推移していた消 な回復基調を維持すると思われる。 ア 費支出も力強く持ち直し、投資も住宅 ナリストの予測では、2015年のGDP 市場の回復を追い風に拡大した。一 成長率は、2014年の推定値3.5%をや 方、輸出と設備投資については、世界 や上回る3.6%とされている。緩和余地 経済の回復の弱さを反映し、依然とし が残されていることから、不測の事態 て軟調である。 が生じても、緩和政策を強化すること で状況の打開が可能だと思われる。 し 景気回復を支えたのは、時宜を得た政 かしながら、政府債務が抑制され財政 策対応である。昨年7月には、GDPの 出動に余力がある一方で、 デフレ懸念 約0.8%に相当する総額40.7兆ウォン が追加利下げに対する圧力になる可 の景気刺激策が打ち出された一方で、 能性がある。 政策金利も過去最低の2%に引き下げ られた。 主な下振れリスクは外的要因にある。 米国で2015年に実施が見込まれる利 上げは、韓国国内の金融市場で緊張 を高めるおそれがある。 また円安は輸 出競争力の低下を招きかねず、 中国の 景気減速が韓国製品の需要減につな がる可能性もある。 ̶ TAMARA HENDERSON ブルームバーグ エコノミスト インドの実質GDP成長率は、原油価 格の下落に加え、 インド政府が個人消 費と投資の拡大という 「正しい」政策 方針を掲げるなか、2015年末までに 8%前後の水準にまで回復する見込み だ。また、モンスーン期に十分な雨量 が得られ、政府の改革モメンタムが持 続し、 リスク資産に海外投資家からの 旺盛な需要が集まる 「理想的な」状況 となれば、2桁成長も夢ではない。 2015年の主な不安材料としては、外 的要因があげられる。FRBの利上げに 伴うリスク資産への需要後退が懸念 される。FRBは2014年に国債購入に よる量的緩和を縮小するプロセスを終 了したが、国債購入の減少分が国債の 供給減で相殺されたことが一助とな り、 10年物米国債利回りは縮小プロセ ス開始時より低い水準で推移してい る。 インドでは、2014年5月の総選挙でモ ディ氏率いるインド人民党が圧勝した ことで、家計と投資家の信頼感が押し 上げられ、経済の下降スパイラルから の脱却につながった。原油価格の下落 とルピー高も、経常赤字の急速な拡大 を阻む要因となり、 また過去11カ月間 で4.7パーセントポイント低下した小 売物価も消費者の購買力上昇に寄与 した。 原油価格の急騰も、 インド経済にとっ てのリスク要因だ。インドは石油の輸 入大国であり、石油需要は非弾力的 で、政府による燃料補助金制度が維持 されている。金額ベースでみると、石油 は輸入の3分の1を占める。 ̶ 2013年からの主要な変化は、金融・財 政政策に対する信頼性が高まったこ とだ。モディ新政権が、年度末までの 厳しい財政目標や時宜を得た燃料補 助金の削減など、賢明な策を発表した ことで、選挙後も同政権に対する好感 度は持続した。 また、 ラジャン総裁率いるインド準備 銀行(中央銀行)も、インフレ・ファイ ターとしての評判を確立した。特に、世 界的な金融危機以降、同国の経済成 長が最低水準に落ち込んだ際には利 上げを実施し、 ルピー相場の安定化と インフレ期待の抑制に努めた。 インド政策金利 出所:ブルームバーグ 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 7 市場見通し 市場見通し アジア、米国、欧州の株式相場、経済情勢への懸念と原油価格下落に連動 アナリスト Tim Craighead 2014年12月17日 MSCIアジアパシフィック指数、S&P 500、 ユーロストッ クス600指数は2014年12月軒並み下落した。 ロシア とギリシャの経済情勢の悪化と原油価格の下落が背 景にあげられる。11月後半には、 日本、 中国、欧州の各 中央銀行が緩和策を実施し、米国企業の第3四半期 決算が事前予想を上回ったことから相場は上昇して いた。 アジア市場は2014年年初来全体として後れを 取り4.9%低下、米国は6.7%の上昇、欧州はほぼ横ば いである。 アジアは米国、欧州をアンダーパフォーム ダッシュボード ホーム:中国 アジア株の配当利回りがMSCIワールド指数をアウトパフォーム、米国株の収益性は相対的に縮小 アナリスト Tim Craighead 2014年12月18日 10:27 MSCIアジアパシフィック指数に基づく配当利回りは 2.6%、MSCIワールド指数の2.4%、S&P 500の1.9% を上回る。 アジア株の利回りは、資金引き揚げによる 市場収縮が起きた2014年10月に2.75%まで上昇し た。年初は2.4%前後で、予想配当利回りは8%上昇。 経済成長と収益の見通し悪化を材料に、数値は再び 大幅に下降した。 中国の銀行株はアジア株のなかでも 最も高い利回りとなっている。 ダッシュボード ホーム:中国 ヘルスケアを含むディフェンシブ銘柄がアジア株のバリュエーションをけん引、一方エネルギー部門は足踏み アナリスト Tim Craighead 2014年12月17日 アジア株式相場のバリュエーションは、景気動向に左 右されにくい業種がけん引した一方で、景気循環株は 足取りが重い。ヘルスケアと生活必需品関連銘柄は、 MSCIアジア指数に基づくコンセンサス予想では平均 一株当たり利益(EPS)約20倍を示し、上位を独走。電 気通信サービスおよび公益事業株は約15倍。下位グ ループは12倍を下回る一般消費財および金融関連株 など、最下位はエネルギー株である。 ダッシュボード ホーム:中国 10 株式 アジア株配当利回り、10年物米国債を上回る ヘルスケア、生活必需品関連銘柄が アジア市場の2015年予想EPSのトップ 景気減速への懸念が高まるなか、 アジアの業績予想は8%低下 アナリスト Tim Craighead 2014年12月18日 10:31 MSCIアジアパシフィック指数対象銘柄のForward EPSコンセンサス予想は、9月上旬以降景気減速への 懸念が高まるなか、8%低下。2014年は、中国を筆頭 にほぼすべてのアジア市場で4∼10%下落している が、 日本はこの流れに逆らい、 日経平均銘柄について は円安による輸出増を背景に6%前後の上昇が見込 まれる。 Forward EPS、 日本を除き下降基調 ダッシュボード ホーム:中国 株式 11 消費財 消費財 2015年の中国乗用車販売台数、新車登録制限と景気減速を背景に減速の見込み アナリスト Steve Man 2014年11月13日 中国では、一部の都市で新車登録制限が導入された ことから、乗用車売上は2015年に冷え込むおそれが ある。現在登録制限のない地域でも、将来的な導入を 見越した駆け込み需要がすでに発生し、2015年に 入ってからはその反動減が起きる可能性が高い。経済 成長率もコンセンサス予想によれば、2015年には7% に落ち込むとされ、販売縮小の要因となりうる。新車・ 新型車のおよそ60%を占めるSUV車については、 引き 続き市場平均を上回ることが予想される。 中国の乗用車販売台数の伸びは黄色信号 新型モデル、資材コスト低下が中国自動車業界の利益率を下支え アナリスト Steve Man 2014年11月18日 2015年の中国自動車業界では、若干の利益拡大が見 込まれる。値引きがほぼなく、 比較的高額の価格設定 が可能な新車・新型車によって、旧型モデルの値下げ に伴う利益の圧迫を軽減し、 成長の持続を図る格好で ある。 フォルクスワーゲンは、今後18カ月で7車種の新 車・新型車を中国市場に投入予定。 このほか、 プラス チックや鉄など原材料価格の低下が利益確保に寄与 すると考えられる。 ダッシュボード ホーム:自動車OEM ダッシュボード ホーム:自動車OEM 主要都市で環境汚染対策の強化、中国の新車販売に黄色信号 アナリスト Steve Man 2014年11月17日 中国の乗用車販売は、交通渋滞の緩和や環境汚染の 軽減を狙いとする新車登録制限の導入に踏み切る地 方政府が増えれば失速しかねない。2014年1∼10月 にかけて販売台数が9.7%増(前年同期比) となった背 景には、将来的な制限実施を見込んだ駆け込み需要 が寄与したと考えられる。6つの主要都市ではすでに 制限が設けられ、 うち杭州市、天津市は2014年から新 たに導入、北京市では、 同じく2014年から台数制限が 24万台から15万台に強化された。 ダッシュボード ホーム:自動車OEM 14 自動車 今後18カ月間の新車発売予定(一部メーカー) 中国の新車登録制限 中国市場に新型SUVが相次ぎ登場、売上高33%アップ後も勢いは持続か アナリスト Steve Man 2014年11月18日 ブルームバーグ・インテリジェンスの集計によると、中 国の自動車メーカー各社は、今後18カ月で国内市場 向けに計43の新型/モデルチェンジのSUV車(新型 乗用車の約半分) を発売予定。 うち27台はコンパクト SUV。新型モデル投入によって、SUVの販売台数は 2013年の前年比50%増、2014年1∼9月の前年比 33%増の勢いを持続する可能性が高い。 SUVのシェア は、所得拡大と大家族化が大型モデルの需要を押し 上げ、国内の乗用車売上のおよそ20%に達している。 今後18カ月間のSUV車の新車・新型車の発売予定 ダッシュボード ホーム:自動車OEM 自動車 15 u 消費財 アジアの宝飾品・化粧品市場、女性の社会進出を追い風に拡大 アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月18日 宝飾品、化粧品、衣料品、 バッグなどは、 アジア地域に おける女性の就労拡大と所得増加に伴い販売拡大が 見込まれる。人口動態の変化や経済成長を背景に、 ア ジアでは働く女性が増えている。 日本は、少子高齢化 対策の一環として女性の就労促進に取り組んでおり、 新興国でも都市化の影響で働く女性が増えている。 日本の就労女性の推移 熟年層からの需要増でアジアのアンチエイジングブームに拍車 アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月18日 40∼59歳の人口は、中国では4億人、インドでは2億 6,000万人、 インドネシアでは5,500万人を超える。 こ の先、熟年世代の消費者が目元用クリーム、保湿化粧 品、 フェイシャルマスクといったアンチエイジング関連 製 品の需 要を押し上げ、百 貨 店やコスメショップ (Sasa、 ボンジュールなど) での売上が拡大する見込み が高い。平均余命の伸びによって、 アジアでは今後40 代以上人口が着実に増加すると予想される。 ダッシュボード ホーム:衣料品小売 ダッシュボード ホーム:衣料品小売 中国の観光ブーム、日本の高齢化に伴う需要縮小を穴埋め アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月18日 日本の百貨店では、少子高齢化に伴う需要の縮小を 穴埋めする新たな顧客層として外国人観光客の取り 込みに力を注ぎ始めている。三越伊勢丹ホールディン グスは、 中国語版・英語版のカタログを用意するほか、 2015年までに外貨両替機の設置増強を各店舗で図 ると発表。 さらに、百貨店業界では宿泊施設への配送 サービスを拡充する予定である。2014年9月の訪日中 国人観光客は前年比プラス58%と急増した。 ダッシュボード ホーム:衣料品小売 16 小売 40∼59歳の人口 (単位:百万人) 訪日外国人観光客数の推移(前年比%) インターネットショッピングの拡大によりアジア地域で価格競争が激化 アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月10日 アジアにおけるインターネット利用の普及に伴い、最 安値での買い物が一段と身近になっている。小売業界 を観察する弱気筋は、価格の透明性が増すことで、衣 料品、化粧品、電子機器、家庭用品の利益が圧迫され ると論じている。小売業者がサービスよりも少しでも 安い価格を重視する消費者をつなぎとめるために値 下げを強いられるからである。従来の実店舗型小売 チェーンがインターネット販売を拡大することで、 この 傾向は加速すると考えられる。 2005年以降のアジアのインターネット利用者数 ダッシュボード ホーム:衣料品小売 小売 17 消費財 円安に伴い日本企業による海外M&Aは減速、海外進出にブレーキ アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月16日 円安は買収コストの増加を招くことから、 日本企業に よる海外M&Aの規模が縮小する可能性がある。その 結果、 国内市場の縮小を海外進出によって埋め合わせ る動きが鈍化するおそれもある。 日本円は、2014年10 月半ばまでの2年間で、 ドル、 ポンド、 ユーロに対しおよ そ30%下落した。消費者部門での最近のM&A事例と しては、 ミツカンによるユニリーバ北米パスタソース事 業の買収、 サントリーによる米ウイスキー・メーカー、 ビーム買収などがある。 対米ドル、 ポンド、 ユーロでの円の推移 ダッシュボード ホーム:食品 粉ミルク価格の下落によりミード・ジョンソン、バイオスタイムが利益拡大の見込み アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月18日 ネスレ、 ミード・ジョンソン、ダノン、貝因美嬰童食品 (Beingmate Baby & Food)、 バイオスタイムといったア ジアの乳幼児用食品大手各社では、原価低下に伴う 2015年の利益率改善が見込まれる。全脂粉乳価格 が、2013年4月の1トン当たり2,440ドルをピークに約 60%下落していることから、利益拡大につながる可能 性が高い。調査会社のユーロモニターによると、 アジア の乳幼児用食品業界は、新興市場の所得拡大と比較 的 高めの出生 率を背 景に、2 0 1 9 年にかけて年 間 12.4%の成長が予測される。 ダッシュボード ホーム:食品 最低賃金の引き上げに伴い、アジアの食品小売は利益率縮小か アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月18日 食品小売業界では、製品原価に次ぐコストは一般的に 人件費であり、賃金引き上げとなれば利益を圧迫しか ねない。2015年、 アジア各国で消費拡大を狙う最低 賃金の引き上げが実施されれば、食品小売各社の利 益率にその影響が及ぶ可能性がある。賃金上昇分を、 労働者の生産性向上や製品価格の値上げで埋め合わ せることもおそらく難しいだろう。利益率への影響は、 小売業が細分化し、生産性向上を図るテクノロジーの 導入が容易ではない新興市場でより大きいと考えられ る。 ダッシュボード ホーム:食品 18 食品 2013年4月以降の全脂粉乳価格の推移 売上に占める人件費 売上拡大を目指す欧米企業、アジアでのM&Aを加速か アナリスト Thomas Jastrzab 2014年11月18日 北米、欧州の食品メーカー各社は、国内の少子高齢化 と軟調な経済成長への対応策として、急速に成長する アジア市場での買収を加速させると予想される。 アジ ア太平洋地域の食品売上は2019年にかけて4.5% (CAGR) の成長が見込まれ、一方北米は1.1%、西欧 は0.5%である (ユーロモニター調べ)。 このほか、多国 籍企業がアジア事業を立ち上げ新たな地域への参 入、 あるいは新たな販売形態での流通拡大を図るケー スも考えられる。 アジアにおける加工食品売上(単位:10億米ドル) ダッシュボード ホーム:食品 食品 19 エネルギー・ 公益事業 エネルギー・公益事業 インド政府、燃料補助金削減で石油開発公社に加勢 アナリスト Grace Lee 2014年11月19日 インド政府がディーゼル燃料補助金を2014年で廃止 すると決定したことから、2015年の財政収支は改善が 期待される。補助金制度がほぼ廃止されたことによっ て、ONGC、 オイル・インディアといった上流の国営石 油探査開発会社に資金が振り向けられる可能性もあ る。2013年度時点でディーゼル燃料が全燃料支出 (1 兆6,100億ルピー、260億ドル) に占める割合は57%で あり、 モディ首相は液化石油ガス (LPG) と灯油の補助 金についても見直す可能性がある。インドでは、原油 消費量の80%を輸入に依存していることから、足元で の原油価格の下落が政権の予算運営にとって追い風 となるだろう。 石炭から天然ガスへの転向を図る中国、2015年は目標未達のおそれ 回復基調にあるインド産燃料 アナリスト Grace Lee 2014年11月19日 石炭消費量を引き下げ、天然ガスへと転向を図りつつ ある中国は、 目標値の達成に苦戦すると予想される。 2014年の国内推定天然ガス消費量は1,770億立方 メートル、 目標値に到達するためには2015年にさらに 41%増加させる必要がある。国内経済の減速に伴い 需要が事前予想を下回ることも考えられ、 カナダなど での新規LNGプロジェクトにも悪影響が及ぶ可能性 もある。 中国の天然ガス需要の57%を電力、工業部門 が占めている。 ダッシュボード ホーム:石油・天然ガスE&P ダッシュボード ホーム:石油・天然ガスE&P 液化天然ガス(LNG)取引、米国の輸出開始は日本にとっては好材料 アナリスト Grace Lee 2014年11月18日 米国による供給増と価格の世界的な下落を背景に、 2015年は日本の液化天然ガス買入企業の交渉力が 強まることが予想される。2020∼2025年にかけて満 了を迎え、2013年の年間輸入量の約35%に相当する 複数の契約について、 日本は2015年に次の長期契約 締結に向けた交渉を重ねていくことになる。交渉は、先 頃ロシアと中国で締結された天然ガス買入契約の価 格帯(100万BTU当たり10∼11ドル前後) と、米国の LNG輸出開始を反映した結果になると予想される。 ダッシュボード ホーム:石油・天然ガスE&P 22 エネルギー 中国の天然ガス需給目標 日本のLNG契約輸入量(契約満了年別) 中国石油需要はディーゼル燃料の消費縮小により鈍化傾向 アナリスト Grace Lee 2014年11月19日 中国の石油需要は、2015年に失速が見込まれる。 2014年1∼9月にかけて、国内の石油製品需要の40% を占めるディーゼル燃料の消費量が、工業部門の不 振、天然ガスへの移行、鉄道設備の改善によって0.4% 低下した。 ガソリン需要は、交通渋滞の解消と環境汚 染の軽減を狙う新車登録制限の強化によって伸び悩 みが予 想される。一 方 、原 油の国内需 要の伸びは 2014年に約5%と推定されていたが、備蓄積み増しと 石油製品の輸出拡大を背景に拡大した。 中国の石油製品需要の推移 ダッシュボード ホーム:石油・天然ガスE&P エネルギー 23 エネルギー・公益事業 石炭価格の下落を受け、中国華能集団、華潤電力のROE、キャッシュフローが上向く見通し アナリスト Joseph Jacobelli 2014年11月19日 一般炭価格がここ数年、安値で推移していることを踏 まえれば、中国華能集団(Huaneng)、華電国際電力 (Huadian)、華潤電力 (CR Power) といった従来型の 燃料発電会社のキャッシュフローや株主資本利益率 (ROE) が2015年に改善することが見込まれる。一方、 送電会社が発電会社に支払う買取価格を中央政府が 引き下げるリスクもある。 近年の発電会社の株価は、 おおむねROEと連動し、石 炭価格とは反比例の関係にある。 中国華能集団の株価、ROEと石炭価格 化石燃料価格の下落、アジアにおける電力システム改革を後押し アナリスト Joseph Jacobelli 2014年11月19日 コンセンサス予想によれば2015年、 アジア各国の発 電施設で使用される化石燃料価格は横ばいもしくは 下落が見込まれる。 これを好材料に、特にインフレ率 が低く推移した場合、 中国をはじめとする各国政府が 市場改革を推し進め、同時に発電会社のキャッシュフ ローも上向くことが考えられる。規制電気料金が燃料 価格と密接に連動する日本のような市場では、 コスト 低下の影響は向こう数カ月にとどまるとみられるが、 燃料価格との連動がないか、 あるいは遅れて調整が行 われる中国などでは、燃料価格下落の影響が尾を引く 可能性が考えられる。 ダッシュボード ホーム:電力 ダッシュボード ホーム:電力 原子炉開設が中国で加速、日本でも原子力発電再開を予定 アナリスト Joseph Jacobelli 2014年11月19日 中国は、原子力発電量を現行の約18ギガワットから 2020年までに50ギガワット超に拡大する意向であり、 原子炉開設が2015年に一段と加速する見通しだ。原 子力発電会社のうち一社は、香港での上場を予定して おり、資金調達力の強化が見込まれる。一方、 日本で は2011年の福島原発事故を受けて運転が中止されて いた原子力発電所の一部で、 再稼働に向けた動きがあ る。韓国でも2016年末までに3基の原子炉新設が予 定されており、準備が進められている。台湾では、発電 量の落ち込み回避策として、2018年に廃炉予定の原 子炉を延長して稼働させるかに注目が集まっている。 ダッシュボード ホーム:電力 24 公益事業 発電事業会社の燃料コストの推移 アジア各国の原子力発電量(2014年第3四半期) 東京ガス、大阪ガスは収益拡大、小売自由化を勝ち抜くか アナリスト Joseph Jacobelli 2014年11月19日 コンセンサスのEPS予想によれば、 日本の都市ガス供 給最大手である東京ガスと大阪ガスの2社について、 2015年3月期および向こう3年間において増収が見込 まれている。2016年以降、 ガス市場の自由化拡大によ る競争激化と、燃料コストに連動する規制ガス料金の 廃止が予想されるが、 こうした変化による影響は小さ いとの見方である。2015年、規制緩和に関する議論は 過熱するだろう。 日本のガス供給事業者のEPS ダッシュボード ホーム:ガス エネルギー 25 金融 金融 追加の金融緩和後は日銀、年金基金が株式市場を買い支え アナリスト Francis Chan 2014年11月18日 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) は2014年 10月31日、運用利回りの上昇と年金資産の拡大を目 指し株式の資産構成割合を25%に引き上げたが、 2015年にはその比率がさらに拡大される見通しであ る。一方、 日銀も同じ日に、 マネタリーベースを年間80 兆円(7,000億ドル) のペースで増加すべく、株式の購 入拡大を決定している。 こうした動きは、MUFG(東京 三菱UFJフィナンシャル・グループ)、SMFG(三井住友 フィナンシャル・グループ)、 みずほ (みずほフィナンシャ ル・グループ) が保有する総額11兆円に上る日本株に 影響を及ぼすと予想される。 GPIFの新たな資産構成目標値 低金利環境下のアジア、保険会社はリスク資産、国外資産に目を向ける 2014年11月18日 日本、韓国における金融緩和措置の導入や中国による 的を絞った緩和策の実施により、 アジア各国で債券利 回りが低下している。 こうしたなか、 アジア地域の保険 会社は、 リスク資産や国外資産に目を向け始めてい る。 日本では日本国債利回りが低水準にととどまって いることを背景に、2014年3月以降、第一生命、太陽 生命、大同生命が揃って外国債の保有比率を高めて おり、韓国でも、 サムスン・グループとハンファ・グルー プが外債へのシフトを進めている。 こうした動きにもか かわらず、10年物同国国債の利回りは第3四半期に32 ベーシスポイント低下し、債券と株式の利回り格差の マイナス幅が拡大した。 また中国の保険会社も、信託 商品とインフラ関連投資を拡大している。 中国人民銀行、成長低迷で緩和姿勢を強めるか ダッシュボード ホーム:銀行 28 銀行 10年物国債利回りの変化 (2014年1月1日以降) 日本̶23bps低下 韓国̶82bps低下 中国̶98bps低下 ダッシュボード ホーム:生命保険 ダッシュボード ホーム:銀行 アナリスト Francis Chan 2014年11月18日 中国人民銀行(中央銀行) は、成長低迷が続けば一段 の金融緩和に踏み切る見通しだ。同国GDP成長率が 2014年第3四半期に5年ぶりの低水準となる7.3%増 をつけ、 コンセンサスではさらなる減速が予想されてい るが、同行は預金準備金利や政策金利の引き下げと いった包括的な金融緩和措置には消極的である。包 括的措置としては、預貸率が75%の上限を超える中国 銀行や交通銀行(Bocom) といった国有銀行を含む銀 行の調達コストを軽減することが考えられ、実施され れば貸出拡大が促される見通しだ。 アジア諸国の10年物国債利回り (2014年1月以降の動き) 追加金融緩和に伴う利回り低下で、日本の銀行による国債売りが加速 中国の銀行別預貸率 アナリスト Francis Chan 2014年11月16日 日本の銀行は、価格リスクを最小限に抑えるため、 2015年に日本国債の売りを加速するとみられる。 日銀 はデフレからの脱却に強い決意を示しており、2014年 10月31日に長期国債の年間買い入れ額を80兆円 (6,900億ドル) へと引き上げた後も一段の金融緩和の 余地を残している。 日銀による異次元金融緩和第1弾 が定着し始めた2013年5月以降、10年物国債利回り は43ベーシスポイント低下し0.51%となり、2014年4 月以降にSMFG、 みずほのほか、都市銀行7行が売却 した国債の総額は10.7兆円に上る。 日本国債利回りの推移(%) ダッシュボード ホーム:銀行 銀行 29 金融 中国保険会社、利回り確保のためリスク資産の取り込みを拡大 アナリスト Steven Lam 2014年11月19日 10年物国債の利回りが2013年末以降92ベーシスポ イント低下した中国では、高利回りを求める保険会社 の流動性リスクおよび信用リスクが高まるおそれがあ る。保険業界のデータによれば、保険会社が買い取っ たインフラ債券や信託投資、不動産投資を含む非標 準的資産の規模は2014年9月までの16カ月間で倍増 した。 これに対し、同期間の投資全体の伸びは20%で あった。 いわゆる 「その他の投資」 が中国保険会社の保 有資産全体に占める割合は現在21%となっており、1 年前の15%から上昇している。対照的に、銀行預金と 債券の比率はともに低下している。 低金利環境下のアジア、保険会社はリスク資産、国外資産に目を向ける 中国保険会社の保有資産比率の推移 中国保険会社が保有する 「その他の 投資」 は2014年9月までの16カ月間で 1.8兆人民元(3,000億ドル) に倍増 タイと香港で経済成長の加速に伴い、保険料収入が増大の見通し ダッシュボード ホーム:生命保険 30 保険 アジア地域の10年物国債利回り (2014年1月以降の動き) 10年物国債利回りの変化 (2014年1月1日以降) 日本̶23bps低下 韓国̶82bps低下 中国̶98bps低下 ダッシュボード ホーム:生命保険 ダッシュボード ホーム:生命保険 アナリスト Steven Lam 2014年11月19日 タイ、香港、 シンガポールでは、2015年に予想される成 長加速に伴い生命保険の保険料収入の伸びが加速す る見通しだ。AIAの新契約年換算保険料全体に占める 上記3市場および中国市場の割合は年度上半期で 61%、 プルデンシャル生命では23%に達した。一方、 日 本と韓国では2015年の保険料収入の伸びは2014年 と同等のペースとなる見通しである。2015年に株価が 大きく上昇した場合には、消費者の富裕感が高まり、 その結果アジア地域全般で保険料収入が上昇すると 予想される。 アナリスト Steven Lam 2014年11月18日 日本、韓国における金融緩和措置の導入や中国による 的を絞った緩和策の実施により、 アジア各国で債券利 回りが低下している。 こうしたなか、 アジア地域の保険 会社は、 リスク資産や国外資産に目を向け始めてい る。 日本では日本国債利回りが低水準にととどまって いることを背景に、2014年3月以降、第一生命、太陽 生命、大同生命が揃って外国債の保有比率を高めて おり、韓国でも、 サムスン・グループとハンファ・グルー プが外債へのシフトを進めている。 こうした動きにもか かわらず、10年物同国国債の利回りは第3四半期に32 ベーシスポイント低下し、債券と株式の利回り格差の マイナス幅が拡大した。 また中国の保険会社も、信託 商品とインフラ関連投資を拡大している。 アジア諸国の生保保険料収入の伸びと株式収益率、GDP成長率 中国損保の保険収入、経済改革のあおりを受けた自動車販売減で伸び率が鈍化 アナリスト Steven Lam 2014年11月18日 中国では損害保険会社の保険料の伸びが2014年9月 に7カ月ぶりの低水準に鈍化したが、各都市での自動 車購入制限や景気減速が自動車販売の重しとなるな か、2015年にも一段の減速が見込まれている。さら に、無事故割引などの分野では自由化による競争激化 が予想されるため、価格改革によって利ざやが減少す る可能性もある。2014年上半期を振り返ると、 中国人 民保険集団(PICC) と中国太平洋保険(CPIC) では、 保険引受利益の減少が報告されているが、中国平安 保険では増加となっている。 自動車保険はこの主要3 社において、保険料全体の75%以上を占める項目であ る。 中国の自動車販売伸び率と損保収入保険料の推移 (前年比%、 月次のデータ) ダッシュボード ホーム:P&C生命保険 保険 31 金融 香港の不動産開発会社、底堅い市場と低金利に支えられ収益を保持 アナリスト Robert H Fong 2014年11月19日 サンフンカイ、 長江実業、 ヘンダーソン・ランドに代表さ れる香港の大手不動産開発会社は、不動産開発と賃 貸事業の最適バランスや健全なバランスシート管理 が奏功するなか、底堅い住宅市場を支えに、成熟度の 劣る急成長市場の競合他社をアウトパフォームした。 香港では低金利環境が持続し、政情不安も鎮静化し ていることから、収益を脅かすおそれのあるショック事 象が業界を襲った場合でも、国内開発会社は持ちこた えると予想される。住宅市場が軟化した場合でも、特 別印紙税が撤廃されれば、同市場を支える追加的な 支援措置となるであろう。 香港の民間居住用不動産販売戸数と販売額 中国不動産開発会社は2015年の販売目標を下方修正、住宅着工件数も減少の見通し ダッシュボード ホーム:アジア不動産 32 不動産 アナリスト Robert H Fong 2014年11月20日 日銀は、JPX日経400に連動する指数連動型上場投資 信託(ETF) の買い入れペースを3倍に増やし、年間3兆 円 (250億ドル) とする方針を示している。 だが、不動産 業が同株価指数全体に占めるウェイトがさほど大きく ないことから、今回の措置による不動産開発会社への 影響は限定的となる見通しだ。例えば、三菱地所、三 井不動産、住友不動産のウェイトは3社合わせても 3.4%に過ぎず、各社の年間トータル・リターンに占め る額でみても計1,020億円程度である。 これは、 3社の 2日間強の売買代金に辛うじて相当する規模である。 JPX日経インデックス400の不動産関連構成銘柄 ウェイト上位3社 ダッシュボード ホーム:アジア不動産 ダッシュボード ホーム:アジア不動産 アナリスト Robert H Fong 2014年11月20日 中国における10月末までの不動産販売月次平均戸数 をみると、 碧桂園 (カントリー・ガーデン) や世茂房地産 (シマオ・プロパティー・ホールディングス) など、30社 を超える中国の不動産開発会社(上場開発会社の約 90%) は、2014年の販売目標を達成できない見通しで ある。その場合2015年の販売目標は下方修正され、 規制緩和を受け住宅販売が足元で盛り返しを見せる なかでも、着工件数が同年に減少する可能性は高ま る。2014年の販売目標達成が見込まれるのは、万科 企業と緑城中国を含む4社のみである。 これは、 ほぼす べての開発会社が成約件数の月次目標を達成してい た前年と比べ大きな変化である。 日銀、ETF購入ペースを3倍に拡大も、不動産開発業への影響は軽微 中国不動産開発会社の成約額目標と2014年年初来 10月までの販売実績 中国不動産業、借り入れコスト低下に向け、在庫削減でギアリング比率を抑制 アナリスト Robert H Fong 2014年11月20日 足元の借り入れコストの低下を好機に、借り換えまた は借り入れの拡大を狙う中国の不動産開発会社は、 ギアリング比率の低下に向け在庫削減を迫られること になるだろう。例えば、 ポリ不動産、恒大地産、広州富 力地産では、 ギアリング比率または株主資本に対する 純有利子負債比率が一様に150%を超えている。 ここ 数年は高利回りのオフショアドル建て債券の利率が 最低でも250ベーシスポイント低下しているが、過度 のギアリングに対する懸念から、 グロスベースの支払 利息は業界全体で押し上げられている。 中国10年物国債利回りの推移 ダッシュボード ホーム:アジア不動産 不動産 33 工業 工業 輸送運賃23%上昇か、カギとなるのはドライバルク載積量制限と中国の動向 アナリスト Lee Klaskow、John Mathai 2014年11月19日 2015年のドライバルク船の需要と運賃については、鉄 鉱の海上輸送需要の約75%を占める中国の動向に左 右される見通しだ。 ブルームバーグ・インテリジェンス の分析では、鉄鉱石供給は2015年に8.6%拡大すると されている。 また、 ブルームバーグがまとめたアナリス ト調査でも、定期船運賃が2015年に23%上昇すると 予想される。一方、 ケープサイズ船の運賃は、 同船舶の 2倍の載積能力を持つ超大型鉄鉱石運搬船ヴァーレ マックスが中国への入港を開始した場合、伸び悩みが 懸念される。 コンセンサス予想では、解体処分船を除 く船舶数は2015年に5%程度増加すると見込まれて いる。 ドライバルク船フリートと発注量 供給過剰でコンテナ船の運賃伸び悩む アナリスト Lee Klaskow、Talon Custer 2014年11月19日 コンテナ船部門では、輸送能力の過剰が少なくとも 2002年以降問題となっているが、2015年も状況が改 善される見込みはない。 コンセンサス予想によると、解 体処分船を除くコンテナ船の供給隻数は、解体ペース が鈍化する一方で大型船の納入が予定されることか ら、2015年には6∼8%の伸びを示すとみられる。 2015年の世界経済のGDP成長率は3.5%増にとどま る見通しであることから、 コンテナ船輸送の供給は需 要をしのぐ伸びを示し、運搬レートに下押し圧力がか かると予想される。 コンテナ海運会社はこうした状況 に対応するため、運賃押し上げを狙い提携や合併、 レート引き上げ、割増料金といった措置を模索してい る。 ダッシュボード ホーム:海運 ダッシュボード ホーム:海運 米国の燃料ブームで2015年タンカー貿易の流れと輸送量が一変 アナリスト Lee Klaskow、Talon Custer 2014年12月12日 世界需要の拡大と米国のエネルギー自給率の上昇に より、 タンカー市場は2015年以降に向け変貌を遂げ ている。国際エネルギー機関(IEA) によれば、世界の石 油 需 要は、アジア太 平 洋 地 域の主 導で2 0 1 5 年に 1.2%上昇する見通しだ。 これまで米国に輸出されてき た西アフリカの石油は現在アジアに向かっており、原 油タンカーのトンマイル増加へとつながっている。 ブ ルームバーグ・ニュースがまとめたアナリスト調査によ れば、原油タンカーの定期船運賃は、大型原油タン カー(VLCC)の35%の伸びにけん引され2015年に 23%上昇する見通しである。 ダッシュボード ホーム:海運 36 海運 コンテナ船の解体処分数と運賃 VLCCダーティー・タンカー1日当たりの運搬レート (米ドル) コスト削減で重要なのは船舶容量、海運会社による大型船舶の導入が加速 アナリスト Lee Klaskow 2014年11月19日 海運業界では規模の経済の実現が2015年の主要な テーマとなる見通しだ。運賃伸び悩みと緩慢な経済成 長を前に、海運会社は何らかの手段を講じる必要に迫 られ、 コスト面に目を向けざるを得ない状況に追い込 まれている。 ドライバルク船運航会社は、 ヴァーレマッ クスを利用することで、 より小型のケープサイズ船を使 用した場合に比べ、 ブラジルから中国への鉄鉱輸送コ ストを3分の1削減する戦略に打って出るのではないか と予想される。海運会社は今後も引き続きより規模の 大きいアライアンスの構築、大型船舶の投入、シナ ジー効果創出を狙った合併、 そしてスロット・コスト削 減に努めることになるだろう。 主要海運アライアンス ダッシュボード ホーム:海運 海運 37 原材料 原材料 新銅山、銅スメルターの操業開始と中国当局による銅買い入れ策 アナリスト Kenneth Hoffman、Yi Zhu 2014年11月19日 中国で建設部門の減速が続くなか、同国の銅需要は 2015年も低迷する見通しであり、供給の拡大が銅価 格を抑制する状態が続くと予想される。2014年には 金属を担保とする金融取引への不安や、 その後発覚し た不正に加え、中国の需要低迷が追い打ちとなり、銅 市場は厳しい展開に見舞われた。 こうしたなか、中国 の国家備蓄局による銅買い付けにより一段の需要冷 え込みに辛うじて歯止めがかかった。一方、新銅山の 操業開始により2015年には供給が160万トン増える 見通しであり、 これは、2014年から2020年にかけて見 込まれる新規供給610万トンの27%を占める規模であ る。 ブルームバーグ・インテリジェンス算出の銅の新規供給 生産能力の拡大と加工費上昇を背景に、中国の銅生産量は2015年に増加の見通し ダッシュボード ホーム:銅 40 金属 アナリスト Oliver Nugent、Kenneth Hoffman 2014年11月10日 ブルームバーグ・インテリジェンス推計のニッケル供給 予想によれば、 インドネシアが未加工鉱石の輸出禁止 措置を撤廃した場合でも、 ニッケル供給不足は2020年 まで解消できないとの見通しだ。 世界貿易機関 (WTO) が同国の禁輸措置を早くて2015年終盤には協定違反 と判定する可能性があることから、予想には2015年終 盤の禁輸措置撤廃が織り込まれ、 それ以降、 インドネ シア国内で複数の製錬所が建設されると見込まれてい る。 ニッケル需要は記録的な高水準である年率3.9%へ と拡大する見通しで、過剰生産能力も2018年に14万 9,000トンでピークに達すると予想されるが、新規供給 パイプラインが滞っていることから、2020年には2万ト ンの供給不足が生じる見込みである。 ブルームバーグ・インテリジェンスによる インタラクティブ・カリキュレーター ニッケル供給と需要 ダッシュボード ホーム:非鉄金属 ダッシュボード ホーム:銅 アナリスト Yi Zhu、Kenneth Hoffman 2014年11月16日 中国の精錬銅の生産量は、生産能力の増強が80万ト ン見込まれるほか、溶練費(TC) および精錬費(RC) の 上昇によりマージン拡大が期待できるため増大する 見通しである。江西銅業によれば、年間のTC/RCは 最低でも20%上昇する見通しであり、世界的に生産能 力が拡大した後だけに銅精鉱の潤沢な供給が予想さ れる。 ただ、 こうした生産量の上昇は銅価格の上昇を 阻む要因となるであろう。 インドネシア、輸出規制撤廃でも、ニッケル供給不足は2020年まで不可避 中国の精錬銅生産能力 2015年の中国アルミニウム産業、国外市場の堅調な需要を受けて輸出拡大か アナリスト Yi Zhu、Kenneth Hoffman 2014年11月13日 中国のアルミニウム生産者は、国内価格が長期にわ たって低迷していることから、2015年には輸出拡大に 踏み切ると予想される。欧米では生産能力の伸びが緩 慢で、閉鎖となる生産設備数が増加しているのに加 え、中国国内と比較し良好な需要が期待できる。 この ため、輸出に振り向ければ、中国が直面しているコス ト・キャパシティの低下は解消できる。 また、 アルミニウ ム価格の相場も、欧米の市場に連動するロンドン金属 取引所(LME) が上海先物取引所(SHFE) を上回る状 態が続く見通しである。 世界のアルミニウム生産能力 ダッシュボード ホーム:アルミニウム 金属 41 原材料 中国の鉄鋼過剰生産、抑制策で2015年は鈍化の兆し アナリスト Yi Zhu 2014年11月14日 中国は、鉄鋼過剰生産を解消すべく新規設備を制限 し、環境基準を満たさない設備や、融資基準厳格化で 経営難に陥った施設の閉鎖を実施した。 これを受け 2015年には状況が徐々に改善し始める見通しであ る。実際、2013年には5,000万トンだった生産能力の 純増が、2014年には2,000万トンまで大幅に縮小した とみられる。今後、設備を新設する場合は、汚染源とな る施設や非効率的な施設の閉鎖を掲げる政府目標達 成を目指す厳格な基準を満たす必要があり、2015年 の純増分は限定的となる見通しである。 金属価格の低迷を受け、中国産金会社によるM&A活動が活発化 中国の粗鋼生産能力 (2012年∼2015年) アナリスト Yi Zhu、Kenneth Hoffman 2014年11月17日 中国の産金会社は、過去18カ月間で国内外のM&Aに 20億ドル超を投じてきたが、金相場の下落が続けば、 2015年、そのペースをさらに加速させるとみられる。 軟調な金相場は、 リストラ局面や資金難に直面する業 者を買いあさる好機となっており、中国国内の金需要 もこうした動きを加速させる材料となっている。2013 年の中国の金消費量は1,176トンであったが、 うち国 内生産が占める割合は428トンと全体のわずか3分の 1にすぎない。 ダッシュボード ホーム:貴金属 ダッシュボード ホーム:鉄鋼製造 中国鉄鉱石市場は厳格な環境規制と資金調達難、価格下落に直面 アナリスト Yi Zhu 2014年11月20日 中国の鉄鉱石市場は、価格下落、資金調達難、厳しい 環境規制といった困難な局面で2015年を迎える見通 しだ。資金難から廃業に追い込まれる非公開の中小鉄 鉱石採掘業者が多発している一方で、国有の大手採 掘業者は生産量を維持し、 グリーンフィールドでの建 設活動、 ブラウンフィールドでのプロジェクトを予定通 り進めている。 中国の鉄鉱石生産量は2014年1∼9月 末までに110万トンとなっており、前年比で7.5%増加 している。 ダッシュボード ホーム:鉄鋼原材料供給業 42 金属 中国産金企業による国内外の M&A活動(2014年1月∼10月) 中国の原鉱石生産量 中国本土の香港からの金輸入量、 「黄金週間」を控え5カ月ぶりの高水準 アナリスト Zhuo Zhang、Kenneth Hoffman 2014年11月10日 中国の香港からの金純輸入量は、2014年9月に前年 比で44%の減少となったが、前月比では141%増と なった。9月の純輸入量61.7トンは5カ月ぶりの高水準 であり、10月の「黄金週間」に向け消費者の金買いが 進んだ様子がうかがえる。金価格が同月に前月比で 8.5%低下したことも追い風となった。世界の金需要の 3分の1を占める中国はインドを抜き世界最大の金消 費国となっており、同国の輸入は2013年に過去最高 を記録した。 中国本土の香港からの金輸入、5カ月ぶりの高水準 ダッシュボード ホーム:貴金属 金属 43 原材料 肥料見通し、アジア各国政府の補助金と関税次第 アナリスト Jason Miner、Marc Fields 2014年11月14日 2020年末まで肥料生産能力の世界的な拡大が持続 するとみられるが、 これを吸収できるかどうかはアジア の肥料需要の伸びにかかっている。 しかし、 アジアの肥 料製造業者は2つの不透明要因も抱えている。 インド では新政権が農業部門への補助金の見直しを実施す る可能性が生じており、そうなれば、肥料原料である 炭酸カリウムの使用量に影響が及ぶおそれがある。 ま た中国では、輸出関税の調整を受け2014年最初の8 カ月間で尿素の輸出が62%押し上げられる結果とな り、2015年に講じられる政策措置によっては供給が世 界的に一段と拡大するとの懸念が強まっている。 中国の尿素輸出 ̶ 世界とインドの養分使用の割合 懐疑的な見方に反し、中国は2015年に石炭化学分野で最大の生産国となる見通し ダッシュボード ホーム:基礎・総合化学品 44 化学品 アナリスト Jason Miner、Marc Fields 2014年11月18日 世界各国の石油化学製品製造企業の2015年収益が コンセンサス予想に達した場合、予想の中央値では売 上4%の増加で一株当たり利益(EPS)が23%上昇す ると見込まれている。前年に示されていた同水準の予 想値は実現には至らなかったが、今回のマージン見通 しは前年よりも確度が高い。背景には、米国以外の地 域において一般的に石油化学製品コストの3分の2を 占める石油価格が、2014年半ば以降、3分の1超下落 したことがあげられる。2014年の見通しは、5%の売上 増により19%のEPS上昇が見込まれていたが、実際に はそれぞれ2%と8%増にとどまった。 基礎化学製品および総合化学製品製造企業のEPSと売上伸び率 ダッシュボード ホーム:基礎・総合化学品 ダッシュボード ホーム:農薬 アナリスト Jason Miner、Marc Fields 2014年11月24日 ネクサント社の推定によれば、 中国は向こう5年間で新 たな石油化学製品分野において最大の生産国となり、 世界的な生産能力拡大分の3分の1程度を同国が占め る見通しだ。生産能力増強のほとんどは従来の石油に 代わり石炭をベースとする新たな化学品生産に向けら れたもので、2015年には生産が加速するとみられる。 中国の競合諸国はこうした見通しに懐疑的ながらも、 2015年に実績が示されることとなれば、 戦略の見直し を迫られるであろう。 需要と供給のバランスを図りなが らマージンを確保していくために、今後はこうした企業 や世界の新興企業が生産ペースを適切に管理してい くことが重要となる。 石油化学関連株の収益見通し、前年は未達も石油価格の下落が支援材料に 中国は2020年まで新エチレンの最大生産国となる見通し 進む総合化学製品企業の解体、特殊化学部門はM&Aにより変革を遂げるか アナリスト Jason Miner、Marc Fields 2014年11月18日 総合化学品製造業では少なくとも5大アクティビスト (物言う株主)がパフォーマンスが悪く複雑なポート フォリオの処分や再構築を企業に求めており、特殊化 学品部門は2015年に企業の所有権変更を通じた改 革に直面する可能性が高い。特殊化学品の生産企業 は緩やかなペースで自律的な成長を遂げている一方、 潤沢なキャッシュを保有しており、買収による事業拡 大に乗り出す可能性がある。2014年第1−3四半期を 通して化学企業の買収案件は4倍に増大しており、今 後の買収により特定部門に特化した企業の誕生や、 サ プライヤーの統合が期待できる。 2014年を通し株主の活動が活発化 ダッシュボード ホーム:特殊化学品 化学品 45 テクノロジー テクノロジー ウエアラブルのハイプ・サイクル、2015年のアップル・ウオッチ登場が試金石に アナリスト Jitendra Waral 2014年11月19日 2015年に発売されるアップル・ウオッチは、 ウエアラブ ル (装着型)端末のハイプ・サイクルを左右すると予想 される。 インターナショナル・デジタル・コーポレーショ ン (IDC) の推計によれば、 ウエアラブル端末のセグメン ト別売上は2015年に62億ドルへと116%の大幅な伸 びを示し、家電部門で最も急速な成長が期待される 分野である。 ウエアラブル端末は2015年に他をしのぐ 主流商品となる可能性があるものの、 スマートフォン (3,830億ドル) やタブレット (780億ドル)市場と肩を 並べるには、 いまだ時間を要するとみられる。今後はア プリ開発が、 スマート・ウオッチや他のウエアラブル端 末のサービス内容を差別化する要因となるだろう。 2015年家電製品の世界的な成長率予想 4Kテレビ、大画面化、価格低下はテレビ需要の拡大材料 アナリスト Jitendra Waral 2014年11月19日 テレビ需要は今後、 ウルトラHD(ハイ・デフィニション) の4K対応テレビや大画面化の流れにけん引され拡大 することが予想される。IDCの推計によれば、2014年 売上の5.6%の伸びに大画面化の流れが貢献した。 ネットフリックスとソニーは4Kコンテンツの強化に乗り 出しているほか、 ウルトラHD動画撮影機能を搭載した スマートフォンやアクション・カメラを通じ、 より高画質 な動画への需要が高まると予想される。4Kテレビはま ず中国市場で発売されたが、その後価格の低下に伴 い成熟市場へと販売戦略の主眼が移っている。IDCは 4Kテレビの売上が2015年に400億ドルへと46%増加 し、40インチ超モデルの売上が12%上昇すると予想し ている。 ダッシュボード ホーム:家電 ダッシュボード ホーム:家電 新作ゲームの投入で次世代ゲーム機の売上が大きく伸長、ソニー、 マイクロソフトが勝負に出る アナリスト Jitendra Waral 2014年11月19日 IDCの予想によると、PS4やXbox Oneといった次世代 ゲーム機の売上台数は、 コンテンツの拡充に支えられ て2015年に32%増加し、 2,890万台に達する見通しで ある。 また、IGNのデータでは、独立系のコンテンツ開 発者によるものも含む新作ゲームは2015年に100を 超え、合計で400を上回る規模に達すると見込まれ る。2014年10月現在、vgchartz.comによると、 ソニーの PS4は出荷台数が1,300万台とXbox Oneの670万台 を上回っている。PS4、Xbox Oneともに独占タイトルを 保有しており、 ソニーがプロジェクト・モーフィアスとプ レイステーション・ナウを大々的に推す一方、 マイクロ ソフトはホリデー・シーズンに向け値引きを発表した。 ダッシュボード ホーム:家電 48 家電 世界のテレビ売上予想 次世代ゲーム機出荷数 中国のLCD産業拡大計画、生産能力の増強で500億ドル規模へ アナリスト Jitendra Waral、Simon Chan 2014年11月19日 中国の京東方科技集団(BOE) やTCL集団といった液 晶パネル (LCD) メーカーは生産能力の拡大に乗り出 しており、韓国や台湾、 日本の競合企業から市場シェ アを奪うとみられている。中国は自国のLCD産業を 2016年までに売上高3,000億人民元(500億ドル) の 規模に成長させる計画である。 これに対し、液晶パネ ル国内最大手のBOEは、2015年に大型液晶パネルの 生産能力を月次27万枚へと50%の増強を予定してい るほか、市場調査会社WitsViewのデータによると、 TCL傘下の華星光電は生産枚数24万枚へと生産能力 の拡大を図る見通しである。 中国の第8世代液晶パネル生産能力 ダッシュボード ホーム:家電 家電 49 ブルームバーグ シニア・アナリスト &アナリスト リサーチ部門ディレクター DAVID DWYER グローバル・リサーチ TIM CRAIGHEAD アジア地域リサーチ、 娯楽・宿泊施設 PAUL SWEENEY 北米地域リサーチ、 メディア・インターネット SAM FAZELI 欧州地域リサーチ、 製薬会社 NOEL HEBERT クレジット・リサーチ、 消費財 JOEL LEVINGTON クレジット・リサーチ、工業 JULIE CHARIELL 政府、法律、ESGリサーチ DREW JONES グローバル・リサーチ (補佐) 本稿執筆アナリスト 経済・戦略部門 MICHAEL McDONOUGH チーフ・エコノミスト FIELDING CHEN エコノミスト ROBERT HING FONG 不動産、アジア地域 GEETHA RANGANATHAN メディア、北米地域 KAPILAN JASON MINER THEIVENTHIRAMPILLAI 銀行、欧州・中東地域取引所、 化学 グローバル YI ZHU 金属・鉱業、 アジア地域 ALISON WILLIAMS 銀行、北米地域 投資銀行・資産運用会社、 テクノロジー・メディア・ コミュニケーション部門 グローバル JOHN BUTLER モバイル 医療部門 SAM FAZELI ANTHEA LAI 製薬会社 テクノロジー・メディア、 アジア地域 ASTHIKA GOONEWARDENE ANURAG RANA 製薬会社 ソフトウエア・ITサービス 工業部門 ANAND SRINIVASAN GEORGE FERGUSON ハードウエア・半導体 航空、航空宇宙・防衛 KENNETH SHEA 食品・タバコ TAMARA HENDERSON エコノミスト KEVIN TYNAN 自動車 THOMAS ORLIK エコノミスト エネルギー・公益事業部門 PHILIPP CHLADEK 石油・ガス、欧州地域 消費者部門 DEBORAH AITKEN 高級品・食品・家庭用品 TIM CRAIGHEAD 娯楽・宿泊施設 THOMAS JASTRZAB 小売・食品、 アジア地域 CATHERINE LIM 消費者、 アジア地域 STEVE MAN 自動車・工業、 アジア地域 PRAVEEN MENON インターネット・メディア JAMES EVANS 再生可能エネルギー GRACE LEE 石油・ガス、 アジア地域 JOSEPH JACOBELLI 公益事業・インフラ、 アジア地域 VINCENT PIAZZA 石油・ガス、北米地域 総合石油、 グローバル 金融部門 FRANCIS CHAN 銀行、アジア地域 STEVEN LAM 保険、アジア地域 50 原材料部門 KENNETH HOFFMAN 金属・鉱業 BRIAN MILLER 娯楽・宿泊施設 LEE KLASKOW 輸送・ロジスティクス JITENDRA WARAL テクノロジー・ハードウエア JOHN MATHAI 輸送・ロジスティクス、 アジア地域 KAREN UBELHART 工業・機械 51 ブルームバーグ プロフェッショナル サービスについて 1982年、 ブルームバーグは情報サービス、 ニュース、 メディア企業として、 ビジネスと金融の プロフェッショナルに必要なツールとデータを一つのプラットフォームで提供するというビ ジョンのもと設立されました。 ブルームバーグの成功の裏には、最先端技術を採用した サービスの提供に対するこだわり、他の追随を許さないカスタマーサービスへの取り組み、 絶えず変化する市場への迅速で徹底された適応力があります。 ブルームバーグ プロフェッ ショナル® サービスは、現物およびデリバティブ市場において、株式、通貨、 コモディティ、 マ ネーマーケット、国債、地方債、 モーゲージ、指数、保険そして法律情報など多岐にわたっ て、金融プロフェッショナルのいかなるニーズにも応える柔軟かつ強力なツールです。 ブ ルームバーグ プロフェッショナル サービスは、 リアルタイムデータ、 ニュース、分析ツールを シームレスに統合しています。 また、 ブルームバーグはオンデマンドのマルチメディア・コンテンツや広範な電子トレーディ ング機能、優れたコミュニケーション・プラットフォームを提供します。 ブルームバーグのお 客さまは、金融、 ビジネス、政府における影響力のある意思決定者です。単一プラットフォー ムでの支援と機能をユーザーに定額で提供することから、ビジネスおよび金融のプロ フェッショナルによってゴール達成のための最も信頼できるツールと認められています。 52 必要な時こそ、 プロによる本物のサービスを 最高水準のカスタマーサービスを誇るチームが、 世界160カ国、年中無休24時間体制で、 ブルームバーグ プロフェッショナル サービスの分析機能やデータをお客さまが 最大限に活用できるようサポートいたします。 GAIN AN EDGE. ブルームバーグ インテリジェンス に関する詳細は、各地域の営業担当者までお問い合 わせください。 北京 +86 10 6649 7500 ムンバイ +91 22 6120 3600 ケープタウン +27 21 818 0002 ナイロビ +254 313 440 ドバイ +971 4 364 1000 ニューヨーク +1 212 318 2000 フランクフルト +49 69 9204 1210 サンフランシスコ +1 415 912 2960 香港 +852 2977 6000 シンガポール +65 6212 1000 ヨハネスブルグ +27 11 286 1900 シドニー +61 2 9777 8600 ロンドン +44 20 7330 7500 東京 +81 3 3201 8900 ©2015 Bloomberg Finance L.P. 無断複写・複製・転載を禁じます。S537042756_JP 0215