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12号 - 公益財団法人薬学研究奨励財団

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12号 - 公益財団法人薬学研究奨励財団
薬 奨 ニ ュ ー ス
No. 12
January 2011
[巻頭]
・薬学研究奨励財団の小さな窓を通して
わが国の科学研究を見て思うこと
-当財団研究費助成への応募件数の増加に思う- 寺尾
允男
……………… 1
市川
和孝
……………… 2
・「外野スタンドからエール」
柿沼
喜己
……………… 5
・研究者をめざすのなら薬学研究がおもしろい
永澤
秀子
……………… 6
・薬学部6年制を踏まえて
服部
成介
……………… 7
・新薬学教育制度での研究活動
髙橋
悟
……………… 8
・楽しむことの大切さを思う
国嶋
崇隆
……………… 9
・薬物体内動態に関する研究
設楽
悦久
……………… 10
・経験の蓄積と薬学研究への応用
安東
嗣修
……………… 11
菅
敏幸
……………… 12
[特別寄稿]
・研究者育成がわが国を支える
[薬学への期待]
[薬学研究への道]
[話題]
・第4回国際O-CHA学術会議の開催について
・賛助者芳名
・平成21年度事業報告概要
・編集後記
(財)薬学研究奨励財団
The Research Foundation for Pharmaceutical Sciences (RFPS)
巻
頭
薬学研究奨励財団の小さな窓を通して
わが国の科学研究を見て思うこと
-当財団研究費助成への応募件数の増加に思う-
薬学研究奨励財団 理事長
寺
尾 允
男
2010年度のノ-ベル化学賞が鈴木、根岸両氏に授与され、日本中が喜びに沸きました。わが国
では、これまでに18名の方がノ-ベル賞を受賞されましたが、このうち15名が自然科学系の受賞
者です。改めてわが国の自然科学研究のレベルの高さが示されたことになります。これからも、
これまでのように高いレベルの研究を維持していくためには、将来のわが国の科学研究を担う若
い研究者の育成が重要となります。
最近、国の科学研究費助成への応募をしてもなかなか採用されないということを、若い研究者
から聞くことがあります。ある特定の分野あるいは研究に重点的に研究費が投入され、そのため
にそれ以外の分野の研究が圧迫され、若い研究者が研究費を受けにくくなっているということは
ないでしょうか。
限られた研究予算を、目の前にある有望な研究に優先的に投入することは正しい方向であると
思いますが、あまり行き過ぎると科学全体の発展がいびつになり、長い目で見ればわが国の科学
技術全体のレベルアップにはつながらないと思います。
わが国の来年度予算の編成にあたって、科学研究関連予算も「政策コンテスト」の対象となり
ました。科学技術立国を標榜しているわが国が、研究費や研究者の数を抑制するような政策を
とっていけば、それによるマイナスの影響は10年、20年後に現れることになり、取り返しのつか
ないこととなります。評価委員の正しい判断を願うばかりであります。
薬学研究奨励財団は、設立以来30年間にわたり薬学及び関連諸分野の研究への助成とわが国の
研究者の海外派遣その他、国際学術交流に対する補助を主な事業として活動してまいりました。
これらの事業のうち、研究助成の応募状況をみると、ここ数年、応募件数が顕著に増加していま
す。この現象が、国の研究費の重点配分の影響でないことを願っています。
当財団は、日本薬学会、製薬企業や出版社等の薬学関連企業、私立薬科大学や私立大学薬学部
及び個人篤志家からの寄付金によって事業を行っています。現在のわが国の厳しい経済状況では、
思うようにはご寄付いただけませんが、国の将来のためにこれからも出来るだけ多くの若い研究
者に研究費等の助成、補助するための努力を惜しまないつもりです。
皆様方のご協力をお願い申し上げます。
昭和39年
東京大学大学院化学系研究科薬学専攻博士課程修了
薬学博士
東京大学薬学部助教授
国立衛生試験所部長(放射線化学部、機能生化学部、薬品部)
国立衛生試験所副所長
国立医薬品食品衛生研究所長を歴任
(財)日本公定書協会会長
(社)日本薬学会監事
内閣府食品安全委員会委員
平成21年
歴任
厚労省薬事食品衛生審議会会長
現在、(財)日本公定書協会会長
当財団第五代理事長に就任
1
特別寄稿
研究者育成がわが国を支える
前日本製薬工業協会理事長
市
川 和
孝
一昨年に続いて昨年も日本人学者がノーベ
れ ない状 況で すが、 世界 には約 6400億 ドル
ル賞受賞との報に国中が沸きたちました。学
(06年)もの市場が存在し、しかも年ごとに
界の外にいる私のような者でも日本の研究者
数%程度の伸びを続けています。特に中国な
のレベルの高さを改めて認識する機会になり
どいわゆる新興国の成長は二桁に達して、世
ました。
界の医薬品市場は日米欧の時代から米国と新
受賞者の一人、鈴木博士はテレビのインタ
興国の時代に移りつつあるといっても過言で
ビューで「資源が何もない国は、人と、その
はありません。このような内外の事情から企
人の努力で得た知識しかない」といっておら
業各社は、近年、国外活動の強化に注力して
れましたが、日ごろ私達が漠然と抱く思いを
きました。そしてその成果は納税という形で
このような学者から指摘されると強いインパ
母国に還元されています。あまり知られてい
クトをもって迫ってくるものがあります。
ないことですが法人税額を産業別にみると医
わが国がこれからも国民生活を維持、向上
薬品産業は従前から自動車や電機などに続い
させていくには、国内で新たな需要を生み出
て三番手、四番手についていましたが、世界
すか、外国から稼いでくるかいずれかの方策
的な不況の影響を受けた昨年度は医薬品産業
しかないわけですが、我々の武器は知識しか
が自動車等を抑えて筆頭の納税業種になった
ないのだと言い聞かせた上で改めて周りを見
ものと推測されています。付加価値が高く、
渡す時、日常の生活物資に満ち足りた今のわ
また景気にあまり左右されないこの産業の特
が国にどんな新規需要、どんな成長の分野が
性が遺憾なく発揮された結果だといえましょ
残されているのでしょうか。また、世界には
う。前記の私の考えはこのような事実による
どんな分野があるのでしょうか。国の経済政
ものです。
策の選択も大変難しい局面にあるように思わ
たまたま政府は昨年5月に、環境・エネル
れます。しかし、薬業界に長らく身を置いた
ギー、医療・介護、観光、科学技術等を成長
私は、少なくとも医薬品分野は間違いなく知
分野と位置づける新成長戦略を発表しました。
恵と知識でこれからの日本に貢献できる産業
医療の分野では、革新的新薬の開発・実用化
になりうると信じてきました。
を目指すとしており、国も医薬品産業がもつ
わが国の医薬品市場は、国の医療費対策、
成長の可能性を十分に認識されていることが
とりわけ薬価抑制策のもと過去十年以上にわ
窺われます。今後わが国の創薬活動は、患者
たって7兆円程度で推移しほとんど成長が見ら
さんのためはもとより国民経済のためにも産
2
学官協力してますます活発にしていかなけれ
様々な領域での優れた研究者、技術者をどう
ばなりません。
育成し、確保していくかということに集約で
きるものと考えられます。
ところでこれからの創薬の活性化を考える
時、取組まねばならないテーマとして、生命
最近、文部科学省が日本製薬工業協会の会
科学分野の基礎研究の振興、治験など開発基
員会社を対象に薬学教育に関連した調査をし
盤の整備、迅速な審査体制、革新性を評価す
ました。その中で創薬研究に関わる人材に関
る薬剤価格制度などさまざまな経済的、制度
して寄せられたコメントをみると、当然なが
的課題が指摘されてきました。しかし、これ
ら創薬プロセス、臨床試験、生産、法規など
らの多くはその気になれば予算措置等の対策
の実践教育を望む声が多く見られましたが、
を通じて比較的短期に改善可能なものであり、 それに加えて「研究レベルの高さだけでなく
中長期的に見たときの最大のテーマはなんと
探究心や深く考える姿勢など研究マインドに
いっても優秀な研究人材の養成という点だと
富んだ人材がほしい」、「産業を背負うという
考えられます。
位の意気込みをもった人物がほしい」など研
究者としての姿勢や志の高さを求める声もい
例えば、近年、特に米国では新薬の半分以
くつかありました。
上がベンチャー由来であると報告されている
こともあって、企業経営者の中からはわが国
薬学教育をめぐってはこれまですでに多く
でもシーズが創出できるような優れたベン
の議論が交わされてきたと聞いています。企
チャーが早く育ってほしいという声がしばし
業だけでなく国をも背負うという高い志を
ば上がります。また、企業はこれまで自社の
持って新薬創出に挑戦する研究者、グローバ
研究所に多大な投資をしてきましたが、伝統
ルな活動に対応できる語学力等を持った研究
的に低分子化合物を相手にしてきた体制から
者の育成のためにはどうすればいいのか、今
バイオ医薬品のような高分子を扱う体制への
の教育にどのような改善が要るのか、指導に
拡大、転換を図る上で研究人材の確保が容易
当たられる先生方にすべての課題に優先して
でない状況に直面しています。このことは、
議論していただくことが強く望まれるところ
開発や生産についても同様です。ベンチャー
です。
や企業が抱える問題の本質は、結局のところ
3
スケッチ旅行で訪れたプラハのカレル橋の下の街路を走るトラムとプラハ城
(第94回日本水彩展(2006年)とパリーのル・サロン展(2007年)に入選した作品)
大学在任中は美術館で絵を鑑賞するだけで描いたことはありませんでした。絵を描き始めたのは退職
後に「老後の生活を楽しくするためには趣味を持たねば」と思い渋谷区立松涛美術館の絵画教室で油
絵を習ってからです。松涛美術館の公募展に入選した作品を観に来てくれた前理事長の北川先生から
機関誌に載せるようにすすめられましたが、柴田先生のあとでは小生にはいささか荷が重過ぎると
思ってためらっていました。寺尾理事長から、再び掲載依頼があり、本号に掲載することになりまし
た。今年で81歳になりましたが、幸い健康で最近は教え子に誘われて登山も楽しんでいます。米寿の
記念に個展を開ければと思っています。(辻)
<辻 章夫先生プロフィール>
昭和28年東京大学医学部薬学科卒業、30年修士課程修了、大日本製薬株式会社、国立衛生試験所を経て39年昭和大
学薬学部教授、平成7年3月昭和大学定年退職、昭和大学名誉教授、薬学教育協議会元会長、昭和薬科大学理事。
4
薬学への期待
「外野スタンドからエール」
愛媛大学農学部
教授 柿
沼
喜
己
薬学部を離れて来春10年目を迎える。工学部を経
くされている。製薬企業の存続に関わる新薬の研究
て現在農学部に在籍している。それぞれの学部の教
開発には、薬学研究の進展、優秀な薬学研究者の養
育研究の方針、学生のカラーを受けとめながら、特
成が必須であることは明白であるが、研究者育成の
に差し障りを感じることなく勤めてきたつもりであ
ための薬学教育は昨今どうなっているのだろうか?
る。もともと理学部畑の私であり、学問分野や領域
薬学を離れてしまったせいかあまり様子が聞こえて
に限定される研究をしてきたわけではなく、違和感
こないが、薬学の根幹に関わる問題であり、薬学全
を覚えたことは全くない。当財団との関わり合いは、
体で周到に将来構想が練り上げられているのであろ
少し古くなるが、総合薬品科学科に在職中の、1993
う。さて、農学部の化学系分野に入学してくる学生
年に研究助成、1994年に研究者の海外派遣援助をい
の中には、将来的に製薬会社など医薬品の研究開発
ただいた。いずれも、新しいタイプの酵素(イオン
などに携わることを希望している学生が少なくない。
ポンプ)を腸内細菌に発見したこと、その生理機能
従来から食と健康の化学に対する意識が当然農学系
や分子構造の基礎的な知見に関する業績を評価いた
学生に高いからである。医薬品の作用に関する幅広
だいたものであり、薬の作用など直接薬学に関わる
い生命科学を教育研究の基本とする薬学と、ヒト以
研究テーマではなく、基礎科学の内容である。当財
外の生物も対象に含めて化学物質の作用に関する生
団から援助いただいた研究は、その後、受領対象と
命科学を教授する農学系化学とは、バックグランド
なったイオンポンプのイオン輸送部分のX線結晶構
の上で差違はない。農学系化学の学生も医薬品開発
造解析に成功し、現在反応メカニズムのコアとなる
の戦力になりうることはすでに共通認識であろう。
分子回転反応について一分子回転解析も行われてお
改めて、医薬品開発の「即戦力」としての研究者育
り、該当分野の進展に関わる重要な知見の一つとし
成のために、農学が果たす役割はないのだろうか。
て位置づけられつつある。これらの研究の当初の立
創薬を含めて健康科学産業の研究開発に幅広く貢献
ち上げ時には、当財団の事業が貴重な支えになって
できる、即戦力の人材育成の場の構築をイメージし
おり、改めて感謝申し上げる。現在このイオンポン
ているのは私だけではないだろう。科学立国日本に
プを標的とした創薬に向けた取り組みも行われつつ
おける化学産業の重要性はいまさら強調するまでも
あり、遠からず薬学への貢献に繋がれば幸いである。
ない。生命科学分野の化学産業の人材育成に、薬学
振り返れば、薬学部を離れたのは、2006年の学校
と農学が連携融合した形での新たな教育システムの
教育法及び薬剤師法の改正による6年制施行に向け
形成は不可能だろうか?薬学に は 我 が 国 の 応 用 生
た活発な議論が始められていた時期になるだろうか。
命科学研究者育成充実のためのより多面的な戦略を
医療技術の高度化や医薬分業の進展などに伴って、
期待したい。薬学の益々の発展を祈念して、エール
高い資質を持つ薬剤師養成のための薬学教育の必要
を送る。フレー!フレー!薬学!
性を踏まえて、6年制への移行は当然のことであっ
たのだろう。一方で、製薬業界は2010年問題を抱え
ながら、グローバル化に対峙して合従連衡を余儀な
5
研究者をめざすのなら薬学研究がおもしろい
岐阜薬科大学創薬化学大講座薬化学研究室
教授 永
澤
秀
子
マリーキュリーの伝記を読んで科学者になりたい
薬学研究であるという意識は全くなかった。そんな
と思ったのは小学生の頃である。月日が流れ、科学
中、がんセンターから化研に時々講義にいらしてい
者の端くれとなり、自分のラボを持つことができた
た千原吾郎先生に出会い、がん研究、中でもがんの
今でも、科学者になって自然科学の基本原理に迫る
創薬研究を知るチャンスを得たのである。後年、千
ような大発見をしたいと願った小3少女のあこがれ
原先生ががんにかかられたとき、ご自分で開発され
は、全く色あせていない。高校生の頃には基礎研究
たレンチナンという免疫賦活薬を最後まで服用され
をするには理学部に進学しなければならないと思っ
ていたというお話は、研究者としての私にとって一
ていた。結局、薬学部に入学することになって、自
つの啓示となった。その後、1988年に慶応大学医学
分の思いを叶えられなかったことに挫折を感じた時
部の薬化学研究所(稲山誠一教授)に助手のポスト
があった。くすりには当たり前のようにいつもお世
を得、がん研究に足を踏み入れることになった私は、
話になっていたが、当時の私は、この小さな錠剤や
薬学研究奨励財団より平成2年度研究助成金をいた
カプセルの生い立ちに、気の遠くなるような科学者
だいき、自分が薬学研究者であることを初めて意識
の執念と努力の積み重ねが隠されていることに全く
したのである。その時の申請書の内容は、まさに今
思いが及ばなかった。くすりをつくることが科学研
日の私の研究キーワードである「低酸素」と「腫
究の集大成であるということに思い至ったのは大学
瘍」に関するものであった。20年近くの時を経、が
院を出て、さらに10年くらい経てからのことである。
んとハイポキシア(低酸素)の研究はがん研究領域
高校で出前講義をすると、今でも研究者志望の生徒
の大きな柱のひとつになっている。創薬研究はヒト
の多くが、当時の私と同じような認識を持っている
とモノの両方を深く理解しなければならない。モノ
ことに驚かされる。いわく、研究者になるには理工
を通じてヒトに(病に)アプローチするという方法
学部に進学しなければならないのですね、と。くす
論は日本の薬学の草創期から一貫して継承されてき
りが身近で親しみやすい存在であることは、くすり
た伝統的手法である。モノの学問である有機化学で
を世に送り出す側からすれば、ある意味で思惑通り
培った分子をあやつる技術と知識が、ヒトという複
ということになろうが、そのために研究者にあこが
雑な生命システムにアプローチする上で非常に重要
れる高校生たちにとって、薬学部が専門職養成機関
な武器になるということを痛感しつつも、真に活用
としての存在感しか持たないのであれば、それは解
できているか煩悶する日々である。
かなければならない誤解である。
20年前にこのような薬学研究に足を踏み入れた私
私の研究修行は京大化学研究所の当時生理活性部
の後押しをしてくださった薬学研究奨励財団に深く
門と呼ばれていた研究室(冨士薫教授)からスター
感謝いたします。道半ば、ゴールは遙か彼方かもし
トした。4級不斉炭素を構築するための新しい方法
れませんが、くだんの高校生たちに、「研究者をめ
論の開発とその天然物合成への応用という博士研究
ざすのなら薬学研究がおもしろい」ということを身
テーマは、ケミストを目指していた私にとって非常
をもって示すべく、がんの創薬研究に挑戦し続けた
にエキサイティングなものであり、それがことさら
いと思います。
6
薬学部6年制を踏まえて
北里大学薬学部生化学講座
2001年のヒトゲノム解読はすべての生物学の領域に
教授
服 部
成
介
学生向けなのではじめからわかりやすく一目瞭然であ
大きな影響をもたらした。最近では個人ゲノムも解読
り、言葉遣いを専門家向けにアレンジするだけである。
されるようになり、2008年にはヒトゲノム計画の提唱
薬学に期待されることは、やはり良い医薬品を提供
者であるJ. D. Watson博士のゲノムも公表されている。 することに尽きる。研究室レベルで特異性も高く、阻
ゲノムは個人個人によって異なり、体質を始め、薬物
害効果も抜群の候補化合物でも、最終的な医薬品とし
動態やさまざまな因子も異なることが示されている。
て上市されるまでには、さまざまな高いハードルがあ
これまで大人一回3錠といった画一的な処方は通用し
ることは、云うまでもなく常識である。こうした困難
なくなり、個人個人にあわせたきめ細かい医療が求め
を乗り越えるためには、薬が大好きで、本気で薬に惚
られるようになった。医薬品としても、細胞内シグナ
れている人材を養成することが必要である。私は、理
ル伝達系の解析に基づく抗がん剤が上市されるように
学部を卒業しさまざまな研究機関での勤務を経て本大
なり、としてがん治療の第一選択として採用される分
学に赴任したが、薬学部の学生諸君に触れて強く感じ
子標的医薬品も多くなってきた。
ることは、当然と云えば当然であるが、薬への興味と
このような状況下で、薬剤師に求められる資質はこ
期待が非常に強くまた高いことである。生化学や細胞
れまで以上に高度となることが必要となり、対応する
生物学の講義でも、基本となる分子メカニズムの説明
システムとして薬学部6年制が導入されている。研究
は眠たそうに聞いているのだが、それを応用した薬の
の上では、6年制がプラスに働くことは期待できない
話になると突然目が輝いてくるのである。本学への志
が、薬剤師養成としては約3ヶ月間の病院および薬局
望動機などを尋ねると、面接向けの答えでもあろうが、
実習プラス卒業研究という配分は、医薬品の作用機序
やはり少年時から青年期にかけて身内や親しい友人の
も実務も理解した薬剤師を養成する上でバランスのと
病気とその治療が大きなインパクトを与えているよう
れたものであると思う。薬学6年制も今年で5年目と
であり、薬を中心とした医療に対して大きな期待と憧
なり、学生達が研究室に配属されて約1年が経過した。
れを持っていることがわかる。こうした気持ちを大切
私は現在の講座に赴任して4年目であるが、この間講
にしていきたいと思う。
義体系の変更などに忙殺されてきた。ようやく落ち着
最後となったが、私は1988年度第9回の薬学研究助
きを取り戻して研究などのことを考える余裕ができて
成金を拝受している。当時若手研究者であった私に
きた今日この頃である。
とって大きな研究資金であり、またそれまでの研究が
講義として心がけていることは、最新の知識をわか
高く評価されたということで、とても嬉しかったこと
りやすく、ということである。細胞内シグナル伝達系
を覚えている。貴財団のこれまでの活動に敬意を表し
で重要な因子であるGTP結合タンパク質の活性化メカ
たい。
ニズムの説明などでは、擬人的にタンパク質を表すこ
とで、活性化や不活性化のサイクルを親しみを持って
聞いてくれるようである。専門家が集まる会議でも私
は、講義に使っているのと同じ図を用いている。図は
7
薬学研究への道
新薬学教育制度での研究活動
武庫川女子大学薬学部・健康生命薬科学科
教授 髙
橋
悟
私は昭和57年に京都大学薬学部に入学してから、
は職能教育の面がクローズアップされることも多い
長きにわたり薬学の世界でお世話になってきました。
ですが、一方で問題解決能力の醸成のために研究の
学部では米田文郎先生、原山尚先生の有機薬化学講
重要性が再認識されています。解答が未知の課題に
座で有機化学を教えていただきましたが、合成化合
対し試行錯誤を繰り返す中で、有形無形の応用力が
物の生物有機化学から生体内物質の生化学に興味が
培われるからです。そうは言っても6年制の学生は
うつり、大学院薬学研究科では衛生化学講座の市川
薬剤師技能教育だけを求めているのではないか、と
厚先生、福井哲也先生のご指導を受けました。そこ
疑問がありました。実際に6年制の学生に聞いてみ
では分子固有の活性に加え生理的機能や役割の重要
ると、九保大と武庫川女子大の両方で、研究活動も
性をたたきこまれ、生理生化学の研究を行いました。
やりたいという声が案外たくさんありました。これ
その後、このような機能や役割の研究は、インビト
はうれしいことであり、研究を後押ししてくれるも
ロからインビボへと自然に拡がり、藤沢薬品工業
のでもあります。新制度下では時間的、人員的に研
(現アステラス製薬)、京都薬科大学では生理学、薬
究活動は厳しくなり、ある程度研究の低下はあるか
理学へと研究領域を変化させていきました。その間
もしれませんが、やはり研究活動は維持しなければ
にさまざまな実験手法を経験、習得することができ、
なりません。自分たち薬学界の研究が大きく低下し
その後の九州保健福祉大学や現在の武庫川女子大学
てもいいと思う関係者はおられないでしょう。特に
での研究の基盤になりました。紆余曲折はありまし
制度の変わり目では多くの新しい企画を実行せねば
たが、現在は血管内皮細胞の機能、血管新生の抑制
ならず、また先が読めない不安が大きいので、それ
物質に関する研究に至っています。血管内皮細胞の
らに気がとられてしまうと研究が疎かになりがちで
研究に対し、薬学研究奨励財団から平成16年度に研
す。しかしながら、制度が変わっても、放棄さえし
究助成金をご支援いただき、有効に活用させていた
なければ研究はできるわけであり、制度の安定期ま
だきました。この場をお借りして、お礼申し上げま
で強い意志と努力で新スタイルを模索し、築いてい
す。これからも研究成果を還元し、微力ながらも薬
く必要があります。
研究環境は指導者の行動により変化するものです。
学や医療の進展に貢献できればと思っています。
いくら素晴らしい設備が充実していても、使おうと
あらためて振り返ると、多種多様な領域の研究に
たずさわることができましたが、これは薬学部に環
しなければ意味がありません。多少設備が悪くても、
境、指導者があったからと言えるでしょう。この要
むしろ創意工夫や戦略を錬ることで、面白い研究に
素はこれからの体制にも当てはまることだと思いま
もなります。また、後進の育成のためにも、研究意
す。私が歩いてきたのは旧薬学教育制度の上ですが、
欲のわく環境にするのも、研究の機会を学生に与え
その間に薬学の世界は変革期に突入し、新薬学教育
る環境にするのも、指導者の重要な役割です。つま
制度になりました。新制度下での長期実務実習の導
るところ、根本的に重要なのは「指導者の意識」と
入や大学院生確保の問題、また教員数の減少の問題
いうことです。このような意識をしっかりともって、
など様々な事情により、従来のような研究の推進が
新教育制度においても教育活動だけでなく研究活動
行えない懸念がもたれています。新薬学教育制度で
も薬学での両輪として行っていこうと思います。
8
楽しむことの大切さを思う
金沢大学医薬保健研究域薬学系
教授 国
嶋
崇
隆
大学時代は出来るだけ勉強をしないように心がけ
の研究環境に当初はずいぶん戸惑った。頑張って成
ていた。それが当時の大学生の特権だと信じて実践
果を上げて早く国立大へ移ろうと密かに考えもした
していた。そのおかげで一夜漬けの試験勉強の辛さ
が、慣れれば意外と居心地がよく結局教授になるま
以外は楽しい思い出だけが残っている。4年生に
でそこに留まることになった。この間米国留学の機
なって将来を意識し始めた頃、たまたま生化学系の
会を得たが、この時、生化学が面白いという印象が
研究室に配属することになった。その時まで正直
まだ鮮やかだったこともあり、酵素の反応機構に関
云って生化学がどういう学問か意識したこともなく、
する研究に従事することにした。仮説に基づいて分
ピンとこなかったが、卒業研究を始めてみると意外
子設計した化合物を使い、酵素の触媒メカニズムを
に楽しいと感じた。そこでレーニンジャーの生化学
解明するという、有機化学と生化学の間に位置する
を真面目に読んだところ、その面白さに強く惹かれ
研究であり、生命現象を有機化学で理解することの
た。おそらく教科書をワクワクして読んだのはこの
面白さを認識した。帰国後、生物有機化学研究を明
時が初めてである。研究も良いかもしれないと漠然
確に意識して、タンパク質や脂質などの生体分子の
と感じていたところ、生化学をやりたいならまず有
合成や化学変換に役立つ脱水縮合反応をテーマにし
機化学を勉強しなさいという先生の助言を頂いた。
た。運良く水中でアミド結合を合成する反応を見つ
なるほど、生化学が面白かったのだから有機化学も
け、これを利用した研究を展開してきた。現在は薬
面白いかも知れないと気楽に考え、大学院は有機化
物標的タンパク質の標識化に力を入れている。この
学系の研究室へ進んだ。当時京大化研の助手をされ
研究の一環で、縮合剤自身を重合して固定化する研
ていた落合正仁先生(現、徳島大学教授)のご指導
究に対して薬学研究奨励財団の助成金を頂くことが
を賜り、研究テーマは超原子価ヨウ素化合物に関す
出来た。
る研究だった。「抗がん剤の合成」のように、素人
3年前から現在の金沢大でお世話になっている。
にも理解できそうな平易なものならともかく、生化
薬学に限らず先行き不透明で色々と大変な時代であ
学からはほど遠くあまりに難解なテーマで、その意
り、何をするにもなかなか思うようにはいかない。
義を理解するだけでも数年かかった。大学時代の気
しかし、あまり現状に悩んだり先のことを憂えたり
ままな生活から劇的に変化した大学院生活にはすぐ
しても仕方ない。今やれること、面白いと思うこと
には慣れず、M1の1年間はほとんどリハビリの状
にまずは真剣に取り組めばいずれ何とかなるもので
態であった。その後はうまく順応して、5年後には
ある。そのためにはどんな時でも何でも楽しもうと
無事に博士号を授かり、有機化学の面白さも十分に
いう気持ちが大切である。いつのまにか視力が衰え、
理解できるようになった。落合先生の愛情溢れるご
体力もかなり落ちた気がするが、研究を通して出会
指導のおかげと今も感謝している。
う予想もしない現象や発見にワクワクする気持ちだ
大学院修了後は神戸学院大学薬学部に助手として
けは一向に衰える気配がない。
採用され有機化学者としての研究生活をスタートし
た。しかし、国立とは色々な面で異なる私大薬学部
9
薬物体内動態に関する研究
千葉大学大学院薬学研究院生物薬剤学研究室
准教授
設
楽 悦
久
私は、東京大学大学院薬学系研究科の博士2年次
によりみられる有機アニオントランスポーターの持
に中退し、北里大学薬学部にて助手として採用して
続的阻害に関する研究である。この研究を始めた
いただいて以来、昭和大学薬学部を経て、平成17年
きっかけは、シクロスポリンは確かにトランスポー
より現在の所属先である千葉大学大学院薬学研究院
ターを阻害するのであるが、その臨床血中濃度から
に籍を置き、一貫して薬物動態に関する研究を行っ
予想されるのよりも重大な相互作用を引き起こして
ている。大学院の博士課程から、ずっと肝細胞での
いると考えたことである。もともと、シクロスポリ
有機アニオン系化合物の取り込みに関与するトラン
ンを経口投与したときには、消化管吸収された後に、
スポーターの研究を行っており、10年以上にわたっ
下流に存在する門脈内で循環血よりも高い濃度で存
て、常に肝細胞かトランスポーター発現細胞のどち
在するために、循環血中濃度から予想されるよりも
らかを使っていることになる。同じような研究を続
重大な相互作用を引き起こしているのだろうといっ
けていると、自然と知識が増えてくるものであるが、
た程度の考えであった。しかしながら、シクロスポ
その一方で次々と新しい知見が驚くほどの速さで報
リンが循環血から消失しても、依然としてトランス
告され、取り残されていると思うことがしばしばあ
ポーター阻害は続いていることがわかった。そこで、
る。薬物の肝取り込みに関する研究の中で、トラン
トランスポーターの発現量が低下しているのではな
スポーターを介した薬物の肝取り込み阻害によって
いか、とか、細胞内での局在部位が変化したのでは
生じる薬物間相互作用のメカニズム解明を目指した
ないか、などの様々な可能性を考えて検討を行って
研究に対して、貴財団より研究助成金をいただいた。
きた次第である。シクロスポリンに限れば、臨床で
大学の運営費交付金などが削減される中、多大なご
使用する際に重要な知見を得たつもりでいるが、そ
援助をいただいたことに心より感謝している。また、
の機序を解明することで、同様の相互作用を引き起
研究に対する支援をいただいたことで、心強く感じ
こす医薬品の特徴がわかり、他の医薬品にも応用す
たものである。
ることができると考え、さらなる研究に取り組んで
いる。
薬物動態の研究は、薬物の血中濃度推移そのもの
に関する解析だけでなく、血中濃度または組織中濃
近年においては、6年制課程が始まり、大学院生
度を含む体内動態に変化を与えるメカニズムや、そ
だけでなく、6年制課程の学部生もまた卒業実習の
うした変化を司るタンパク質の機能解析などを含ん
一環として研究に取り組んでくれている。生物薬剤
でいる。したがって、動態研究を行う上では、薬物
学・薬物動態の分野は、薬学独特の考え方であり、
の血中濃度を測るという分析化学の手法を用いた実
薬剤師として活躍する際に、その職能を生かすとい
験をすることもあれば、既存の知見では説明できな
う点で重要なものであると思う。この分野に限らず、
い特徴的な体内動態の知見が得られれば、その機序
疑問点を見いだして、それを解決する手段を考え、
を解明するために、物理化学的な実験や体内動態を
解決に向けて取り組むという過程を通して、問題解
司るタンパク質(酵素、トランスポーターなど)に
決能力を持った人材の育成につながるものと確信し
着目した細胞生物学、分子生物学、生化学的な実験
ている。薬学教員の一人として、今後も学生たちと
などを行う必要が生じる。貴財団より研究助成金を
ともに興味を持って研究に取り組みたいと思う。
いただいた対象は、主に免疫抑制薬シクロスポリン
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経験の蓄積と薬学研究への応用
富山大学大学院医学薬学研究部 応用薬理学
准教授
この度、本薬奨ニュースの「薬学研究への道」に
安
東 嗣
修
全く違う分野にチャレンジしてみようと思いました。
対して寄稿の依頼を受けました。内容に関して,薬
運 よ く 脳 神 経 分 野 ( NIMH ) と 基 礎 生 化 学 分 野
学研究を行っている後輩へのメッセージという項目
(NHLBI)のNIHの2つ研究室でポスドク生活を送
がありましたので、それに関して自分の経験を書か
ることができ、新たな研究の技術の修得はもちろん、
せて頂きます。少しでも、若手研究者の皆様やこれ
研究に対する考え方(研究遂行のアイディアやデー
から若手研究者を育てていく方々の参考になればと
タの解釈の仕方等)を学ぶことが出来ました。また、
思います。
ボスにも恵まれ、各国の友人も多く作ることが出来
私は、大学院博士課程修了後、直ちに米国立衛生
ました。教授が口癖のように「留学は若い時に行
研究所(NIH)[博士課程2年時後半より留学希望
け」と学生時代聞かされ、言葉の壁の不安もありま
のメールを送っていました]に留学し、平成12年12
したが、何とか面接もクリアーし、大学院修了後、
月に母校である富山医科薬科大学(現
直ちに留学して多くの経験を積めたことは非常によ
薬学部に助手(倉石
泰
富山大学)
教授)として赴任してき
かったと思います。
ました。学部、大学院と倉石教授の指導の下、「痛
以上、私の経験を述べさせて頂きましたが、若い
み」や「痒み」の動物モデルの作製から発症機序の
うちにいろいろチャレンジして経験することは、人
解析まで幅広く研究をさせて頂きました。当時,教
脈も含め、その後の研究に多いに役立っていること
授が着任されたばかりの新しい研究であり、実験機
を実感しております。現在、学生時代からの研究
器もほとんどなく、また,実験技術の指導できる先
テーマにしている「痛み」や「痒み」の発生機序の
輩もおらず、ゼロからのスタートでした。このこと
解析を行動実験のみならず、生化学的、細胞生物学
は、私にとって非常にラッキーなことでもありまし
的、免疫組織化学的、電気生理学的手法など様々な
た。といいますのは、研究上必要な技術が先輩から
実験手法でアプローチできるのは、これまでの経験
受け継がれている訳でもありませんでしたので、
の蓄積の由縁であると考えております。是非、若手
やってみたい実験技術の修得のため多分野の先生方
研究者の皆様には多くの経験を自ら行い、また、若
を紹介して頂き、いろいろ勉強させて頂く事が出来
手研究者を育てる先生方に対しては、機会があれば
たということです。このおかげで、研究室にも様々
若手研究者にリスクに囚われずに多くの経験をさせ
な技術導入ができ、また、自分自身においても研究
てあげて頂きたいものです。
の幅が広がったのは言うまでもありません。
最後になりましたが、本薬学奨励財団からは,新
ところで、研究者の多くが海外留学の経験をして
規起痒因子に関する成果の発表及び研究遂行に対し
おり、自分の研究テーマに沿った留学先を選んでい
て海外派遣補助と研究助成金を頂きました。この場
る場合が多いと思います。私の場合は、専門分野が
をお借りしてお礼申し上げます。
薬理学であり、研究内容が「痛み」や「痒み」の発
生機序の末梢レベルでの解析です。しかし、せっか
く留学するなら、まだ20歳代後半ということもあり、
11
話
題
第4回国際O-CHA学術会議の開催について
静岡県立大学薬学部 教授
菅
敏幸
平成22年の10月28日~31日にかけて、静岡市コン
大学院生)によるに妙技の披露があり、会場は大興
ベンションアーツセンター「グランシップ」で第4
奮に包まれました。3日目の効能部門の招待講演は
回国際O-CHA学術会議が開催されました。前回
茶カテキンが医薬品として期待できる興味深い講演
(2007年)の参加人数を100名上回る708名が世界17
が行われました。トップバッターの C. S. Yang 氏
の国と地域より参加し大盛会となった。10月28日の
(ニュージャージ州立大学教授)による抗ガン作用
開会式では、大会委員長の原征彦氏(静岡県立大
に関する発表に始まり、寺尾純二氏(徳島大学教
学・静岡大学客員教授)の開会の挨拶の後、御多忙
授)の動脈硬化抑制、P. W. Tayler 氏(ロンドン大
中にも拘らず川勝平太静岡県知事から、お茶どころ
学教授)の抗菌活性、さらには高橋孝士氏(東京工
静岡から世界に向けてお茶の学術を発信することへ
業大学教授)のコンビナトリアル合成によるカテキ
の 力 強 い エ ー ル を 頂 き ま し た 。 そ の 後 の Plenary
ンライブラリー構築に関する報告があり、どれも世
Lectureは、木苗直秀氏(静岡県立大学学長)とZ.
界トップレベルの内容でした。午後からも、L.S.
Apostolides氏(南アフリカプレトリア大学教授)に
Hwang 氏(台湾国立大学教授)や、 A. Crozier 氏
よって行われ、茶の健康に対する効能についての講
(グラスゴー大学教授)らを含む5つの招待講演が
演が大盛況のうちに終了しました。夕方からは、浙
あり、盛んな議論が展開されました。また、生産部
江大学、静岡県立大学、および静岡大学の学生の口
門の3日目のポスター発表は、100件を越える発表
頭発表を中心としたミニシンポジウムが開催され、
があり、こちらも盛んな情報交換が行われました。
茶をキーワードにした学生の国際交流が深められま
さらに、2日目の効能と3日目の生産部門のポス
した。また、効能部門の招待講演者を中心にした
ター発表では、組織委員による投票により、それぞ
「茶カテキンの吸収と動態に関する特別セッショ
れ10件のポスター賞が選ばれました。ポスター賞受
ン」が非公開で行われ、未発表データも含まれる情
賞者全員は閉会式にて登壇の後、原組織委員長から
報交換が行われました。2日目と3日目は、生産部
一人ずつに賞状と賞品が手渡されました。最後に、
門と効能部門に分かれて、それぞれの専門分野の議
原組織委員長の閉会の辞で閉会となりました。会場
論が行われました。2日目の生産部門では、3つの
となったグランシップでは「世界お茶まつり 2010
セッションに分かれ国内外の10名の招待講演者の講
(World O-CHA(Tea) Festival 2010)」が同時に開催
演が行われました。効能部門では、100近くのポス
されていました。世界お茶まつりは、お茶の産業、
ター発表があり、多くの情報交換が行われました。
文化、学術のより一層の振興を図っていくことを目
さらに、2日目の夜には150名の参加者による懇親
的として、26の国と地域から10万人余の方々が参加
会が開催され、静岡地産の海の幸と山の幸に加えて、
するビックイベントでしたので、本学術会議はお茶
韓国の呈茶のティーセレモニーや手もみ茶の実演と
に関連する様々な分野が集結した国際的かつ熱気あ
試飲も行われ、食を通じた国際的文化交流が活発に
ふれる雰囲気の中、成功裏に終了することができま
なされました。さらに、大道芸で有名な静岡ならで
した。
はのヨーヨーの世界チャンピオン(現役の静岡大学
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