...

平成21年11月01日 - So-net

by user

on
Category: Documents
25

views

Report

Comments

Transcript

平成21年11月01日 - So-net
院外茶話
vol.54
平成 21 年 11 月 1 日
信じがたい
信じがたいイカの動き
イカの動き
信じがたいタコの
信じがたいタコの目
タコの目
どちらも不思議に見えるけど
人が普通と思ってはいけない
人が普通と思ってはいけない
の足は八本。タコと同じである。
そのタコの場合、裏返ったのは身体ではなく、
眼球の網膜である。
人の場合、脳から伸びて来た視神経の束は、
まず眼球の壁を貫いて、全部が一旦目の中に入
る。入ってから神経線維は折り返して、今度は
網膜と名を変えて平面的な広がりをもつ。
ところがタコの場合、視神経にはこの折り返
しがないので、人間と比べると網膜は裏返しに
なるのである。
たいがいの生き物は、上下や前後の区別がつ
くもので、ミミズですら進む方向を見れば前が
わかる。わかりにくいのは軟体動物で、タコに
前後はあるか。
実際にイカが泳ぐところを見れば、前にも後
ろにも進む。前後という言葉がおかしければ、
足の方にも耳の方にも進んでいく。一体全体ど
ちらが前か。
結論から言うとイカの前進とは、足の方向に
進むことである。普通、足とは後ろについてい
るものだが、足の付け根に口も目もあるのだか
ら、これは多分正しい。
そもそもイカとは、前後の区別がつかない貝
の一種で、動きが活発になるにつれて、中味が
だんだん貝殻の外に出て、ついに裏返しになっ
てしまった。
「カイが裏返ってイカ」
そんなバカな話ではないが、イカをさばくと
きに出てくるヘラのような中骨は、実は貝殻の
名残りである。
あったはずの貝殻が消えて、なかったはずの
足ができた。それは正真正銘の足に違いないが、
うち二本は獲物を捕るときに使う触腕で、本物
ヒトの眼球
タコの眼球
こんな表裏の違いはあるが、驚くべきことに
タコの視力は人と比べて遜色がない。水中でそ
んなによい視力をもったところで、水が濁れば
おしまいなのに。
ともあれ、目は見えてさえいればいいので、
網膜の表裏などかまわないが、病気に強いのは
多分タコの方である。緑内障も網膜剥離も、そ
の原因は神経の折り返しにあるので、多分タコ
はこういう病気にかからない。
こうして見ると視力が同じでも、丈夫な分だ
けタコの目の方が上等なのかも知れない。
タコの網膜が裏返しになった理由。それはわ
からない。本来どちらが表なのかもわからない。
遠い昔、何かのきっかけで、網膜の元になる組
織が逆さまになって、そのまま進化をしてしま
ったのだろう。
そしてタコも人も、今が進化の最先端にいる
ことに間違いはない。人の場合、知能の発達と
か高等動物とか言ってみても、それは優れた生
き物を意味するものではない。精密な作りの眼
球も高い知能も、人はそれを目指したわけでは
なく、もとからあった身体が、その都度環境に
適応しただけの話。
生き物の進化には目的があるわけでもない
し、目指すべき完成像もない。人とタコはたま
たま違った方向に進化をしたに過ぎないのだ
から。
そうだとすると人はどういう生涯を送るべ
きか。生き方を考える上で、最も基本的な要素
が、進化の歴史の中にあるように思うのです。
男はお洒落をしていると、他人に気づかれ
てはならない。
本当にお洒落な人は、同じ服を何着も買っ
て、いつも同じ服を着ているように取り繕う。
ブランドのコートを買ってくると、洗濯機にか
けてヨレヨレにしてから袖を通す。どこかの映
画監督が、こんなことを言っていた。
そこで我もと、ヨレヨレを着込んでスーパ
ーのエスカレーターを上って見れば、汚い親父
が向こうから上がってきて、あれはいったい何
者だ!鏡に映ったおのれじゃないか。グレーの
服も、親父が着るとねずみ色と言われる。これ
は差別じゃないか!
このまま朽ちてはいけない。一大決心をし
て向かったのが銀座。しかし、銀座に買い物に
行くためには、そのための服を買わなければな
らない。バーバリーのコートを買おうと思って
も、偽物のバーバリーを着てブランド店に入る
わけにはいかないのだから。
それでも、慣れた振りをしながら出かけて、
購入したのはちょっとスリムで黒っぽいジー
ンズ。ポケットの内側に皮が張ってあって、ほ
んの少し覗いたレザーの感覚がお洒落。店員に
こう言われて買ってきたけれど、やっぱりねず
み色だった。
それでも気分は変わった。白い綿シャツ、
黒のニット帽。先行くオヤジはモノトーン。ほ
どよいシブ枯れ感の中にもちょっと色気があ
って、二枚目半。上に羽織るは麻のジャケット。
ジャケが変わればこなしが変わる。
娘「パパ、ちょっと静かに歩いてくれない」
父「・・・」
前を行くのは若者二人。パンツはやっぱり
黒だけど、申し合わせたように赤のスニーカー
を履いて、銀のジャケット。
父「二人とも同じだけど、あーゆーのはど
う思う?」
娘「うーん、でも気を遣っている分、パパ
よりいいよ」
父「バカを言うんじゃない。男にはもっと
ナチュラルな気遣いが必要だろう」
娘「じゃあ、聞くけど例えば、今パパのど
こがお洒落なの?」
父「このジーンズのポケットに覗くレザー
が見えないか?」
娘「見えない」
そうだろうと思った。本当のお洒落は目立
たない。そう思い直してはみるものの、せっか
くお洒落をして、誰にも気づかれなかったらど
うしよう。
娘「パパは汚くさえなければいいんだと思
うよ」
父「無下なことを言うな。麻のジャケだっ
てパパがきればだらしなさが、リラックスに見
えるだろう」
娘「ったく」
初夏のオヤジは足元から衣替え。秋と言え
ば紺な着こなし。
父「おい、ちょっと紳士服見に行こう」
娘「あたし、先に帰ってるよ。無駄遣いし
ないようにね」
Fly UP