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手のインタフェース技術論(PDF:401KB)

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手のインタフェース技術論(PDF:401KB)
手 の イ ン タ フェ ー ス 技 術 論
橋本 洋志,産業技術大学院大学 創造技術専攻
e-mail:[email protected] , http://aiit.ac.jp/
1.はじめに
国 の 新 成 長 戦 略( 基 本 方 針 )[1]の 中 で ,も の づ く り 系 に 関 係 す る も の に ,ア ジ ア 経 済 戦
略 ,グ リ ー ン イ ノ ベ ー シ ョ ン ,IT 立 国 日 本 の 推 進 が あ る 。こ れ ら に 対 し て 注 意 す べ き 点 と
して,1 番目は拡大するアジア諸国の中で,我が国の産業が埋もれないためには,新たな
日 本 型 も の づ く り 技 術 を 整 備 し な け れ ば な ら な い 。2,3 番 目 に お け る 中 小 企 業 の 役 割 [2]は ,
グランドデザインを引く大手企業が採用しやすい特色ある要素技術を提供することであ る
が,これが可能な中小企業は希少であるのが現実である。したがって,国全体として本戦
略の潮流を作ろうとする中で,中小企業独自の立ち位置を考えなければならない時期に来
ている。
一方,現代のものづくり系パラダイムは,その要素技術に画期的なブレークスルーを期
待することは難しい。そのため,産業用・一般用製品/機器は,既存の要素技術を賢く組
み合せて,システム全体として新たな機能を発現させるようなシステムインテグレーショ
ン 技 術 に 立 脚 し た も の が 多 く 世 に 出 回 っ て い る 。こ の 成 功 例 と し て ,ア ッ プ ル 社 の iPhone,
iPad が あ げ ら れ る [3]。 こ の 好 評 原 因 と し て , サ ー ビ ス 論 , 工 業 デ ザ イ ン 論 か ら 言 わ れ て
いることがほとんどであるが,述べられていない重要な要因として,手のインタフェース
としての高いユーザビリティがあげられる。この“高さ”を実現したのは,手のしなやか
な機能を活かすことに成功したからである。
本稿は,手の機能を再考しながら,システムとして製品価値を高めるための手のインタ
フェース技術論について述べる。
備考:
□ユーザビリティは,日本語では,
使い勝手,使いやすさなどと訳され
ているが,さらに,社会的容認性,
アクセシビリティなどの要因も含ん
だ 奥 行 き の 深 い 概 念 で あ る [4][5] 。
ここでユーザビリティは,人間が機
器を操作する際の概念であることか
ら,インタフェース設計論と同格で
ある,という見方もできる。
□ イ ン タ フ ェ ー ス は ,機 能 の 異 な る
ものを結び付けるためのものである。
もともと,機能(動作など)が異な
るので,そのインタフェースが機器
の扱いやすさを決定するといっても
過言でなく,すなわち製品価値を決
めるものとして重要な要素である。
図 1 インタフェースの説明概念図
2.手の構造と機能
人 間 の 手 の 構 造 は , 拇 指 , 4 本 の 指( 示 指 , 中 指 ,環 指 ,小 指 ), お よ び 掌 の 部 分 に 分 け
ら れ ,27 個 の 骨 ,筋 ,腱 な ど か ら な る 。掌 は ,広 げ て い る と き は 手 の 甲 は 平 面 上 に 展 開 で
きるが,強く握ると円弧状となる。これを手の横アーチと呼ばれ,手の様々な動作ととも
に変化する。この変化が,物体の握り方を柔軟にさせている。このようなしなやかさは,
手 が 16~21 自 由 度 を 有 し て い る た め で あ る 。こ の 自 由 度 の 数 字 は 天 文 学 的 な 数 字 で ,プ ロ
グ ラ ム ミ ン グ 言 語 の If~Then~Else で 表 現 し よ う と す る こ と は 現 実 的 に 無 理 な 自 由 度 で あ
る [6]。
手 の 機 能 と し て の 動 き は 数 多 く あ り ,そ の 全 て を 系 統 だ て て 述 べ る こ と は 難 し い [7]。例
え ば , 物 体 と 接 触 の 場 合 と 非 接 触 の 場 合 に 大 別 す る 分 類 法 [6], Herig[7]に よ る , 掴 む 手 ,
保つ手,かたちづくる手,探る手,の四種に分ける法もある。いずれも,全ての手の動き
を完全体系化は難しいと述べられている。
手のインタフェース技術論に関る機能に限定して,その中でもシンプルな機能として,
i) 5 本 指 先 を 用 い て 多 点 ( 1~5) 同 時 に 触 る こ と が で き る 。
ii) 2 本 指 以 上 で 指 の 腹 な ど を 用 い て 物 体 を 操 る こ と が で き る ( 図 2)。
iii) 上 記 は 2D,3D 物 体 に 対 し て 作 用 で き る 。
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3.手のインタフェース論
3-1 従 来 の イ ン タ フ ェ ー ス
人間が操作するインタフェースに注目して,次の例を考察
する。
□ PC イ ン タ フ ェ ー ス:キ ー ボ ー ド ,マ ウ ス は 本 質 的 に ,シ ン
グ ル タ ッ チ , 2D 平 面 上 で の 入 力 装 置 で あ る 。
□ 重 機 イ ン タ フ ェ ー ス : ジ ョ イ ス テ ィ ッ ク は ,物 体 の 3 次 元
操 作 を 1D デ バ イ ス 複 数 個 ( 大 抵 は 2 個 ) の 組 み 合 せ で 近
似したものであり,人間のトレーニングが必要である。
図 2 手の 3 次元操作
い ず れ に し て も , シ ン グ ル タ ッ チ , 1 D ま た は 2D 空 間 内 で
の操作であり,手の機能を活かしていない。
3-2 良 い イ ン タ フ ェ ー ス 例
良いインタフェース例を考察を伴って次に示す。
□ iPhone, iPad: マ ル チ タ ッ チ と 接 触 点 の 動 き を 検 出
で き て い る た め , 従 来 の PC イ ン タ フ ェ ー ス よ り 人 間 の
手 の 機 能 を 活 か し て い る 。 た だ し , 2D 空 間 内 の 操 作 ゆ
え , 次 の バ ー ジ ョ ン は 3D 空 間 内 操 作 を 狙 う こ と を 考 え
る の は 自 然 で あ ろ う 。 た だ し , 3D 空 間 操 作 検 出 セ ン サ
と , 3D 操 作 す る と き の ア プ リ ケ ー シ ョ ン 内 容 が 開 発 の
動機と困難さに直結する。
□ 手のハプティックインタフェースによる空間障害物
認 識 [8]:ジ ョ イ ス テ ィ ッ ク と 力 覚 を 融 合 し て 眼 の 見 え な
いユーザに 3 次元空間内の障害物認識を可能とさせる
( 図 2)。 手 の 3 次 元 操 作 ・ 感 覚 を 上 手 に 利 用 し て い る 。
ただし,上記と同じような問題点を抱えている。
□ Double-Screw-Drive 機 構 を 用 い た ロ ボ ッ ト フ ィ ン ガ
ー [9]:イ ン タ フ ェ ー ス を 拡 張 し て ,エ ン ド エ フ ェ ク タ そ
のものまでを包含した新しい形で,しなやかな人間の指
の ミ メ テ ィ ッ ク ロ ボ ッ ト フ ィ ン ガ ー で あ る( 図 3)。エ ン
図 2 空間障害物認識インタ
ドエフェクタが人間の指機構に類似しているため,人間
フェース
の指そのものが入力となるのではなく,人間の意図や命
令と本フィンガーを結ぶインタフェースが必要であるが,
この実現は既存のシステム制御理論で容易
に実現可能である。
4.おわりに
これからの製品/一般商品は高機能
化・複雑化することは避けられない。それ
をよりよく使いやすくすることは商品価値
を高めるには不可欠である。その有力な解
決技術が手のインタフェースであり,この
ノウハウを有することができるのは,大企
業だけでないことを改めて喚起したい。
参考文献
図 3
DSD 機 構 を 用 い た ロ ボ ッ ト フ ィ ン ガ ー [9]
[1] 新 成 長 戦 略 ( 基 本 方 針 ), 経 済 産 業 省 ,
http://www.meti.go.jp/topic/data/ growth_strategy/ index.html
[2] 中 小 企 業 白 書 ( 2010 年 ), 中 小 企 業 庁 , http://www.chusho.meti.go.jp/
[3 ] iPad 早 く も 発 売 100 万 台 ( 米 国 で 発 売 以 来 28 日 間 で 100 万 台 突 破 , iPhone の そ れ の 2 倍 の ペ ー
ス ), 朝 日 新 聞 , 2010 年 5 月 5 日
[4 ] Wiki, http://ja.wikipedia.org/wiki/ ユ ー ザ ビ リ テ ィ
[5 ] 橋 本 洋 志 ,他 , 快 適 生 活 空 間 に お け る UI の 役 割 り , 計 測 自 動 制 御 学 会 SI 部 門 講 演 会 ,2008
[6] 川 崎 晴 久 , ロ ボ ッ ト ハ ン ド マ ニ ピ ュ レ ー シ ョ ン , 共 立 出 版 , 2009
[7] 鎌 倉 矩 子 , 手 の か た ち 手 の う ご き , 医 歯 薬 出 版 , 1989
[8] 橋 本 , 他 : 手 の ハ プ テ ィ ッ ク イ ン タ フ ェ ー ス に よ る 周 辺 障 害 物 認 識 シ ス テ ム を 用 い た 歩 行 器 , 計 測
自 動 制 御 学 会 論 文 集 , vol.43,no.3,pp.1 -9, 2007
[9] 石 井 千 春 准 教 授 の 研 究 , 法 政 大 学 理 工 学 部 機 械 工 学 科 , 連 絡 先 E-mail : [email protected] ,
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