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サケ親魚のそ上行動実験 一 「魚がのぼれる魚道」 をもとめて一

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サケ親魚のそ上行動実験 一 「魚がのぼれる魚道」 をもとめて一
サケ 親 魚のそ 上 行動実験
一「魚がのぼれる 魚道」をもとめて 一
真
山
紘
サケ肩白額にとって ,生育場 であ る海洋から産卵湯であ る淡水域への 移動
は不可欠であ る。 しかも色種によってそれぞれ 異なる産卵 域に, 決められた
タイムスケジュールにしたがって 到達しなければならない。 ところが私達の
目にふれやすい 川の中下流域にさえ ,
にみられる。
そ上 障害となりそうなものが
い たる所
狭 い土地に多くの 人間が住む日本では ,昔からJl@の流域で川水
を高度に利用して 暮らしてきた。 その代表的なものが 水田による米作で ,
こ
の取水のための 頭首工には,大少 さまざまな規模のものがあ るが,ほとんどす
べての河川にみられる。 開発の遅れた 北海道といえどもその 例外ではなく ,
中下流域には頭首工や 床止め落差 エ ,そして上流域になると 砂防 タム や治山
ダムそして発電や 多目的の大型ダムが 作られている。
サケではたとえこのような
角として 採 捕されるため ,
障害物があ ったとしても ,
二
その下流で採卵用視
れまで大きな 問題となってこなかった。
ときに
はそ正親魚がのぼれずにたまるこのような 場所を採 捕 のために利用すること
さえあ った。 結果的には,密漁の被害を少なくするためなどという 理由から
捕獲場を下流に 移設したことによって ,その上流に魚類の移動をまったく 無
。 サケはこの魚種の 生
視した各種ダムが 作られる結果を 招いたともいえよ
態に合った技術の 開発と放流数の 増加によって 飛躍的な資源 増 がもたらされ
う
た。 しかしその生涯の 3 分の 2
を河川ですごし , しかも天然産卵によって 資
, このような 河 Jl@ 発の進展は受難
源が維持されてきたサクラマスにとって
の 歴史を意味した。
サケマスのための
魚道設置に向けて
昭和54 年に水産庁の 補助事業のひとつとしてさ け ・ます通路整備事業が 予
算化され,北海道でもこの 年に 16 個所の工作物に 色道が付設されてこの 事業
が スタートした。 当時北海道には 約 80 個所の白道があ るといわれていたが ,
その多くは,「白がのぼらない 色道」だとか「無用の 長物」などと 評判がよく
44
なかった。 古くからあ るものは本州に 多いアユ用の魚道によく 似た構造で,
プールの中に 水制柱 と呼ばれる流れの 勢いを弱めるためのコンクリートの 性
が何本も立っていたり ,隔壁の切り 欠き (ノッチ ) が流れに対して 左右交互
についているなど サケ に比べはるかに 遊泳力
ている。 サケマスのように
0
弱いア ユ に適した構造になっ
魚道内を連続して 泳ぎのぼる遊泳力
め 強い魚種に
とっては,魚道内の 渦や障害物はそ 上 効率を低下させ ,全体の損傷さえ招き
かれない。 また一方,上り 口やプール間の 落差 (水位差 ) の大き過ぎるもの
もよくみられる。 これはどうやら サケ マスのそ 上 能力を過大評価したためと
思われる。 自然界では小さな 滝の連続する 川の上流にサクラマス 親缶がそ上
していて我々を 驚かすことがあ る。天然の造作物は 周囲のあ らゆる環境の 変
化 @ 応じて生物が 自らの行動に 適した場所を 選択できるようにうまく 作られ
こ
ている。 人工工作物であ る白道では,流量変化ひとつをとってみても ,渇水
から洪水時までのあ らゆる状況に 対応した構造にすることは 不可能であ り,
魚類はそ上に 適した条件になるまで 待つしかないのであ る。 なんとしても 上
流への ぼ りたい サケ マス 親伍 はあ くことなく跳躍をくり 返し,下流からは次
から次へとそ 上してきて,白道のの ぽ 9 ロ付近にそ上白が 群がる。 このよう
なのぼりにくい 白道は,かっこうの 密漁の場となる。 川の中での サケ マス釣
りが一定の制約のもとで 許可されている 北米でも,白道から 約 g0m 以内は禁
漁とされ,産卵親 伍は保護されている。
なんとか サケ マス類, とくに天然産卵による 資源再生産度合の 高いサクラ
マスにとっての ぼ りやすい魚道を 作ろうということから ,水産庁の補助金に
よる魚道設置を 機会に, この事業の実施体であ るⅡ 海道庁水産部が 主体とな
って「魚道研究会」が 作られた。 ここではまず 手始めに,設置河 @lの選定の
ほかに魚道の 構造について 論議された。 魚道の設計のための 基礎的なデータ
ト
がア ユ にくらべ少ない ,
というよりはまったくない サケ マス類について , 早
急 に知見の集積をすることが 筆者にも求められた。
サケマスのための
魚道研究
サケマスについて ,
とくに我国においてそ 正行動にかんする 研究が従来付
なわれてこなかったことについて
は
,
白石 (1972)
は,
ア ユ にくらべ サケ マス
著しく大きいため ,実験装置に多大の労力と 費用がかかり ,その割合にデ
ータが集めにくいこと。 サケのそ七時期が 比較的短く , 他の時期は海中生活
45
一
送っているため ,実験ができないこと。そしてサクラマスについては ,生
態的変異が大きくそ 正時期が一定していない ,などの理由をあげている。
を
おもに天然産卵によって 資源維持を図っている 米国においては ,ダムを作
る場合に,確実に 魚ののぼれる 魚道を作ることが 常識化している。 したがっ
てこのための 研究の歴史や 規模はわが国の 比ではない。 魚道研究のメッカ と
なっているのは ,
いの実験施設であ
ワシントン州
と
オレゴン州の 州@ を流れるコロンビア 川沿
る。 この施設のあ
るボンネビルダム 周辺は,このダムの
設置に よ り減少が予想される 魚類資源を造成するための 国営のふ化場,そし
て大規模な魚道を 含む観光地となっており ,日本から北米のサケ マス増殖施
設を見に行った 人たちが,かならずというほど 立ち寄るところでもあ る。 こ
の公園の一角に
白道実験施設があ
究所ということになっている。
るが,これは連邦政府の陸軍技術部隊の
なぜ陸軍が伍のことを ,
と
研
奇異に感じられる
が,米国では日本の建設省 (北海道でいえば 開発局の機能の 一部) の仕事を
おこなうのが 陸軍のこの組織であ るためらしい。 この施設を利用して 研究す
るのはもっぱら 国や州の水産生物研究機関で ,ここで生まれた数多くの研究
がおもに 1960 年代に発表された。 その中には,魚道の 勾配をはじめとする 構
造にかかわること ,照度や流量など環境の変化とそ 上 との関係,そして 無限
魚道による魚道構造と 魚の疲労との 関係など,色々な魚種を使って 実験され
た
豊富な実験データをもとに ,北米にはつぎつぎと「魚ののぼる
られていったが ,
魚道」が 作
どれも規模が 大きく, そのまま我国に 多い小河川のダムに
付設するには 経済効果だけを 考えても無理であ った。 わが国ではおもにサク
ラマスのそ上できる 魚道構造の基礎的データが 求められていたが ,前述した
ような理由から 実験には制約が 多く,信濃川の河口堰に付設する 魚道設計の
ため,サケと サクラマスを 対象としたデータを 求められていた 白石氏も, お
なじサケ 属 魚類ではあ るがはるかに 小型の飼育 ヒメ マス とビワ マスを用いた
実験で代替えせざるをえなかった。
サケのそ 上 実験への歩み
幸いにして筆者はほんものの サケ を実験魚 として手に入れやすい 立場にあ
る。 とはいえ,その 時期は短い。 札幌から足しげく 通えるところということ
で千歳支場で 実験することとした。 このとき,階段式魚道の 基本的な構造と
して,プール 水深,プール間水位差 (落差), 切り欠けの形と 配置などの設計
指針を明らかにする 必要にせきられていた。 とりあ えず, そ上 効率の よい プ
ール水深を求めようということで ,水深を変えながら サケ のそ七行動を 観察
できる装置を 作ることとした。
体長 60 一 7Ocm の サケ のサイズに合わせた 水槽となると ,
程度自由に方向を 変えながら泳ぐことのできるプール
プールの中であ る
幅が必要で,かなり 大
きなものとなりそうであ る。 実験用器材というものは ,設計どおり 作られた
ものをそのまま 使 ことはほとんどなく ,たいていは実験を進めながら 手直
う
しして,満足のいく 構造となるまで 多く変更されるのがつねであ
め簡単に細工ができるものとなると
,
どうしても木製となる。
る。 このた
ところが頭に
描いた水槽を 木で作るとなると ,まわりを頑強な 角材で補強する 必要があ り,
たとえあ やしげな大工仕事で 完成したとしても ,実験する場所に据え付けた
り,色々条件を 変えるために 実験中に動かしたいとき ,数人の手でなんとか
なる シロ モノではなさそうであ る。千歳支場の技術者諸氏に 十目談を持ちかけ
てもこんな大きなものは 作ったことがないと 頭をひねるばかりで ,早くも設
計 段階で暗礁に 乗り上げてしまった。
けっきょ く, 魚を収容する 大きな水槽を 木製とすることはあ きらめ,当時
事業係長をしていた K 氏の発案により ,サケの親魚や稚魚を活魚輸送すると
きのキャンバス 製水槽のような 構造とすることにした。 そしてこのままでは
流水に弱いので
,合板のコンクリートパネル
( コンパネ ) で水槽の形を 作り ,
まわりを工事の 足場な ビ に使っている 鋼管を組んで 補強し, この中にキャン
バスのタンクをすっぽりと 入れて水を満たそうというわけであ
る。 これなら
頑丈そうであ り,わりと安価にできそうでもあ るし,いったんバ テ してしま
えばどこにでも 運べる。 ここに水を落下させる 上流がわの水槽は , とび込ん
できた サケ を取り上げるだけであ
るからそれほど 大きなものは 必要ないとい
うことで木製とすることとした。 さらにその上にも ひとっ木製の 受水槽を
置き,できるだけ水の流れを整えてから 落下させることとした。 このように
して作られたのが 図 1 に示す サケそ 正実験装置であ る。 コンパネの大きさの
う
制限から,宙を収容するプールは 幅 g0cm, 長さ 180cm, 深さ 150cm で,水槽の
容積は2.4 ㎡となった。
設計図によって 狂文したキャンバスタンク , 22㎜厚の合板 (コンパネ ), 鋼
管とジョイントなどが 届けられて準備が 整い,いよいよ 製作にとりかかった
47
一
図1
サケそ上実験装置の概略図
のは夏の盛りで ,セミの声を聞きながらの 大工仕事となった。 千歳川 には 9
月になると サケ が姿を見せるため 急がなければならない。 サクラマスの 飼育
を担当していた 臨時職員の Y さんは, ここにくるまえⅤ可川での土木工事の 経
瞼 が長かったらしく ,木製水槽の水もれを防ぐためのコ ソ をいろいろ教えて
くれた。 また,同@llそ 正時の サケ マスの生態になぜかくわしく
ラマス 親 魚の行動についていろいろな
,
とくにサク
川での経験 (?) に基づいた昔話をし
てくれ,こちらの 方でもよき師であ った。なんとか木製の 水槽は出来あ がり,
いよいよ 鉄 パイプを組むこととなった。 実験魚と 用水を手に入れるのが 容易
であ るということから ,畜養池 として使っていた 飼育池の上端の 配水部を借
りて実験装置を 組むこととした。 ジョイントを 締め付けながら ,一日がかり
で骨組が完成し , これに水槽を 乗せキャンバスを 取付けると,巨大な 実験装
置が出来あ がった。 実験伍、 としてメタカのような 稚魚しか扱ったことのない
者にとって, このような バカ デカイものを 作るだけでひとつの 仕事を終えた
ような気分になった。 いちばん問題となったのはこれに 流す 水 だったが,畜
養池の用水不足を 補うために千歳川からポンプ 揚水していた 毎分 2 トンほど
の河川水を使い 排水を蓄 養池に落とすことにした。
いよいよ通水ということで ,文場の職員もやじ うまとして集まってきたと
ころでポンプが 動きはじめ, ホースからものすごい 勢いで水が吐き 出され,
上の水槽から 滝のようにプールに 水が落ち始めた。 これぞまさに サケ のそ上
にこのうえない 流れだとまるで サケ のように興奮したそのとき ,無気味な異
音がして, ほぼ満水となっていた 水槽の置かれていた ェ キスパンドメタルの
一
48
@一
足場の台座が 熔接部分から
折れ,装置全体が傾いた
この後のみじめな
気持ちは文章に 記し難い。
けつ きょ
く
,
この年はなにもすることができずに
サケそ上 シーズンが過ぎ
てしまったのであ る。
さて翌年,今度は 絶対だいじょうぶ
な場所として,文場事務室前の
池の横
で,地球の上に直接設置して
再度挑戦することとなった。 畜養池からは 遠く
離れてしまったが ,実験用水として ,稚苗飼育に 使っている毎分 3.7 トンとい
う前年よりずっと 多い河川水と 湧水の混合水を ,配水パイプから 分岐して得
れることとなり ,上の水槽からの越流水深が 15cm となり水理条件がいちだん
とよくなった。 今度は無事通水され ,実験の準備はととのった。プール水深
を 変えるためには ,プール内に底板を沈め, 4 辺に付いた ヒモ を上下させて
所定の水深を 保つようにした。
快訊魚 として,ふ化場から 約 l0knN
下流の捕獲 場 で採捕されたサケ 親魚をも
ちいた。 最近の千歳 川 0 サ ケそ 上のピークは 9 月中旬と早いが ,
このころは
力月遅い10 月中旬で,それでもほかの 川にくらべれば 早いほうだった。 そ
上 実験はふ化場のもっとも 忙しい時期におこなわれるため ,戦場と化してい
る文場構内で 職員は早朝から 採卵戦士として 作戦行動に参加しており ,実験
1
の手伝いを期待できる 状態ではない。 このような中で 採卵の選別時に 供講 缶、
を取り上げて 運んでもらうという ,いちばんやっかいな 仕事をしてもらった。
あ とは一人で , 何からなにまでしなければならない。
鋼管の足場の 上にとび
乗ったり降りたりして ,たも網を無器用に 扱って暴れまくるでかい 缶をすく
っては移し替える。 江水管からの 水しぶきはあ たり一面に飛び 散り全身びし
ょぬれにはなるし ,足場は凍ってツルツルとなる。こんな中で缶の 動きをメ
モ し 続けるのであ るから, まさに体力と 寒さとの闘いであ る。
このように大騒ぎをして 得られた実験結果であ ったが, これまで発表する
機会もなかった。 まえがきがはなはだ 長くなってしまったが ,実験に至った
てんまつと共にここに 報告する次第であ る。
プール水深がサケ
親 魚のそ正行動に
与える影響についての 実験結果
滞留時間が短く ,かつそ 上に伴うエネルギー 消費の少ない 効率のよい プ一
ル水深を明らかにするため
,
刀く
深を変えながらサケ 親 魚のそ正行動の 変化を
観察した。
一
49
一
1 . 実験方法
上 実験 ; 未熟の雌サケ 親魚2R尾をプールに 収容し,水深を変えた実験 区
毎に,収容後 4 時間までのそ 正行動を観察した。 快訊魚は 各実験区 毎に入れ
替え再使用を 避けた。 プールの下端には 網を張って実験魚の 流下を防ぎ , 上
のプールに飛び 込んだ魚は即時取り 上げた。 実験中のすべての 跳躍行動につ
そ
いて,その時刻,跳躍の位置と方向を 記録するとともに ,上流に向けてのそ
七行動については ,その形態を便宜的に,落下水の中を「泳ぎのぼるタイプ」
と,一旦空中に 出て上のプールに「跳ねてのぼるタイプ」に 分けて記録した。
両者の中間的なものも 見られるため ,客観,性を
欠くこともあ るが, そ 上条件
の変化を把握するには 有効であ ることがサクラマス 幼魚では確かめられてい
(真山 1987) 。
る
プール水深は , 30, 50, 75, 100, 150cm と変えたが,実際の 水表面から 底
板 までの水深は , これらに下のプールの 越流水深 12cm が加えられた 値となっ
た
@0
降下実験 ; 未熟の 雌 サケ新色 25尾をプールに 収容し,水深を30, 50, 75,
100cm と変えて,収容後 1 時間までの下端排水部からの 降下 (落下) 状況を観
察した。 降下色は網で 受け,プールにその都度戻して,つねにプール 内に 25
尾の伍がいるようにした。 このため同一色の 複数回の降下を 計数したことも
十分考えられる。
2 . 実験結果
そ正実験 ; プール水深の 相違による そ 工率は, 150 , 100cm と深いときに 12
一 25%
と低く, 75,
50 , 30cm と浅いときに 48 一 68% と高い値が示された
(図
2) 。 時間の経過との 関係を見ると ,浅いプールでは 早い時間帯から 積極的に
そ上するのに 対し,深いときは収容後しばらくは 不活発であ る。
実験中に見られた 跳躍の中には ,プール側方や後方へのものも 観察された。
それぞれの実験 区は ついて跳躍方向別にその 回数を図 3 に示した。 前方への
跳躍が全体に 占める比率は , 30, 50, 100cm のときは 97.9 一 100% と極めて高
いが, 7%m では側方への 跳躍が比較的多かったため 91.4% とわずかながら 低
下した。 150cm では後方への 跳躍が60.0% と多く,前方へはわずか 30.0% にと
どまった。 時間の経過と 跳躍数 との関係は ,そ工率の場合と 同様に , 浅いと
きは早い時間帯から ,そして深いときは 後半になって 跳躍行動が活発化した。
一
50
一
30
図2
50
75
Ⅰ㏄
プール水深 (cm)
Ⅰ
50
プール水深とそ工率の関係 ; 収容 尾数に対する
4 時間後までのそ上尾数の比率
プール水深 (cm)
時間帯 (hr.) 150
0
1
1
2
2
3
3
4
0
幻
Ⅰ
0
OO
20
50
75
0
20
40 0
20
30
0
20
%
㏄
そ上行動回数
図3
プール水深の違いによる跳躍方向別そ七行動回
数の時間帯による変化 ;
跳躍方向,二三コ: 前方,多多
ヨ : 側方,ⅠⅠⅠ: 後方
一
51
一
㏄
50@
75@
●Ⅹ
-% 一
";"
O●
ト-己
Ⅰ
ⅠⅠイⅠⅠ@
そ上 成功率
30@
100
Ⅰ
50
フール 水 ;架 (cm)
図4
プール水深とそ上成功率の関係 ; 黒丸は全跳躍
数に対する, 白丸 は 前方への跳躍数に対する成功
そ 工数の比率
全跳躍数 のうちのそ 上 成功跳躍数の 比率 (成功跳躍率 ) は,図4
に示され
るように, もっとも浅い 30cm では活発なそ 正行動を示したにもかかわらず
水深が不足するためそ 上がむず;
し
,
成功率は 5.4% にとどまった。 一方,
もつとも深い 150cm では前方への 跳躍に限定すれば 25% と高く,水深の増加と
共にそ 上 成功率が増加する 傾向を示した。 しかし後方への 異常跳躍が多発し
たため,全跳躍数に 対するそ 上 成功率は 7.5% と低かった。
前方の落下水に 向けての跳躍に 限って ,
てそれぞれの
表ユ
水深別に示したのが 表
1
そ 上の形態を 2 つのタイプに 分け
であ る。全体に占める「泳ぎの ぽるタ
プール水深 別そ上形態の内訳
そ上成功ジャンプ 回数
泳ぎのぼり
75
跳ねのぼり
そ上失敗ジャン フ 回数
泳ぎのぼり
12
191
14
61
13
53
25
一
R2
跳ねのぼり
25
|
イプ」の度合は ,水深30 ,
●
50cm できわめて高 い のに対
跳ねが多発した。 また,100 ,
150cm でも全体の跳躍数が
O
2
流下回数
して, 75cm では水の落下占
の後方 (下流) 寄りからの
少ないものの ,「跳ねてのぼ
るタイプ」が 比較的多く見
られた。
降下実験 ; 各水深甚 の
●Ⅰも
Ⅰ
時間経過までの 降下 (流下)
30@
回数は,水深 50 , 75, 100cm
ではほとんど 差がないもの
図5
0 , 30cm では極めて高 い降
丁度合が示された
50@
75@
100
プール水深(cm)
プール水深と降下回数の関係 ;
1 時間後までの 流下尾数
(図 5)n
3 . そ上 効率のよいプール 水深について
そ
上 ・降下実験の 結果から効率よい
そ
上をもたらすプール 水深について 検
討してみる。 最も浅い 30cm のときは,プール内の平均流速が 早いため,定流
性 が刺激されて ,跳躍行動の回数は多いものの ,水深が不足するため , そ上
成功率が低い。 しかもプール 内の流速が早いため 浅 い プールにとどまること
ができずに降下するものが 多く, 親色のエネルギー消費の 高いことがうかが
われた。 このことからあ る程度のそ上はみられたものの ,ほかの水深と 比較
すると最もそ 上 効率が悪いと 判断された。
一万,最も深い 150cm の場合は,跳躍数が 少ないことから , そ 七行動を引き
起こしにくい 水理条件にあ ることを示しており ,
みられたことからは ,
しかも後方への 跳躍が多く
ほかの水深の 実験 区 とは異なったプール 内の流れがこ
のような異常跳躍を 誘起したものと 考えられた。水深100cm のときもそ正行動
を引き起こしにくい 点ではlRocm と同様であ った。
そ 工事とそ 上 成功率が高く ,しかも降下度合が低いという, そ上 効率がよ
いプール水深は ,今回の実験の水理条件のもとでは , 50cm
と
75cm であ った。
なお実際に通水中の 水深は,これに越流水深 分 の約 l2cm が加わった値となる。
一
53
このことは 供 試したサケ 親 缶の体長が 60 一 70cm であ ったことから ,色体長と
ほぼおなじ水深であ る。 ヒメ マス 親角 をもちいた白石
(1972) のそ 上 実験で
も,比較的浅 い水深20cm 内外で最もそ 工率が高い。 この報告には 供試缶の体
長の記述がなれが ,産卵親告であることから 20 ∼ 30cm と推定され,やはり 色、
体長とほほ等しい 水深でそ 上 効率が高い。 体長locm 前後のサクラマス 幼%
もちいたそ 上 実験でも同様の 結果が得られている (真山 1987)0
を
欧米で実際に 使われている サケ マス用の缶 遭 は,予想される 最大体長より
深いものが多い。 Stuart(1962) は滝の高さとプール 水深の理想的な 比率は,
1 : 1.25 であ ると指摘していることから ,プール間落差についても 考慮に入れ
る必要があ るようであ る。今回の実験では 落差を 3%m
としたことから ,
この
比率で理想的な 水深をもとめると 約 45cm となる。
米国の伍 道設計の基準では ,サケ属伍 類を対象とする 場合のプール 間落差
は l foot (30cm) であ るが,サケ (シロ ザケ ) だけが例外で ,
ン
(shad) などと共に
g inches
さっ同性ニシ
(23cm) とそ士力が低くみられている。 今回
の実験でそ 上 成功率が低かった 理由のひとつとして ,落差が大き過ぎること
もあげられるかもしれない。
実験を終えて
長い準備期間とものものし い装置を使った 約 1 カ月間の実験が 終わり, 装
置を解体しながらこのさきの 展開について 考えてみたが ,苦労のわりにあま
成果が得られないという 見通ししか浮かんでこなかった。
り
まさに産卵 そ 土中の親魚を 捕らえて 供 試したにもかかわらず , 4 時間もの
いだのそ正行動は 予想以上に低調であ った。 なにをやるにもまず 活発に跳
んでくれないことには 実験にならない。 このようなことは 天然魚を取り 上げ
て,それまで 経験したことのないような 状況下におかれた 場合には避けられ
あ
な い ことかもしれない。
こんなことも 経験したことがあ る。飼育中のサクラマス 幼色、
ってきたばかりの 天然幼魚のそ 正行動を実験水路で 比較すると,本来遊泳力
め強 い はずの天然色が 圧倒的な差で 負けてしまうのであ る。 天然色をもちい
ろ 実験のむずかしさがあ らためて認識されたわけであ
るが,とはいっても 産
卵 まであ と数日しかないそ 上 新伍、
を人為的な環境になれるまでとめ
にはいかない。
一
S4
一
置くわけ
上白がそれほど 違和感なくの ぼ れる川の中の 色道や捕獲
のための色道水路で 観察したほうがより 生きたデータが 得 やすいこと,そし
けつ きょくは, そ
てこれと並行して ,小型の缶、(たとえばサクラマス 幼伍 ) を使用して,小規
模な装置でいろいろ 条件を変えたそ 上 実験をおこなうほうが ,効率よい研究
が進められると 判断されるに 至ったわけであ る。
幸い, この時の実験データはその 後の色道設計に 生かされたし ,
このあ と
のそ 上 実験観察結果も ヒりいれられて,数多くの サケ マス用佳道がこれまで
作られてきた。 完成後の調査結果でも ,色道上流での 産卵が確認されており ,
「缶ののぼれる色道」が 徐々にではあ るが整備されてきている。
(調査課)
引 m 文 献
真山 紘 (1987) : 魚道型実験水路におけるザクラマス
ます ふ所部, (41),
白石芳一 (1972)
幼魚のそ正行動.さけ
137- 153.
(第 1 報 ). 関谷分水
: サケ・マス類の 魚梯そ上 能力について
事業に関する 水産現況調査報告書
T , A . (1962):@ The@leaping@behaviour@of@salmon@and@trout@at@falls
Stuart ,
and@
obstructions
,
Dept .
salmon@ Fisheries@ Research@
Agri ,
(28) ,
一
Fish .
1-46
55
一
Scotland
,
Freshwater@
and
,
Fly UP