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インドの自動車産業概況 (2008年4月)

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インドの自動車産業概況 (2008年4月)
インドの自動車産業 – 概況
1
インドは、世界最大の自動車生産国の一つで、2007 年度 の自動車生産台数は 1,100 万台に上る。
また、インドの自動車産業は世界で最も急成長を遂げている産業の一つで、2002 年から 2007 年
までの 5 年間の平均成長率は 15.8% であった。この間、自動車生産台数は、 530 万台から
2
1,100 万台に増加した。国内販売台数は、CAGR 14.1% で 520 万台から 1,010 万台に増えた。
一方、輸出台数はCAGR40.5%で、2002 年の 185,000 台から 2007 年には 101 万台に増えた。こ
うしたインドの自動車産業の成長は、国の全般的な経済成長と政府の支援策によって支えられて
いる。
主要セグメント
インドの自動車産業は、乗用車、商用車、二輪車、三輪車の 4 つのセグメントに分類することが
できる。
2007 年度のセグメント別シェアを見ると、二輪車セグメントが総生産台数の 4 分の 3 以上を占
め、飛びぬけて大きなシェアを占めている。
インド自動車産業 – セグメント別シェア(2007 年度)
乗用車
14%
商用車
5%
5% 三輪車
76%
二輪車
総生産台数: 1,100 万台
出典: SIAM(インド自動車工業会)
現況(2008 年度 4 月∼1 月)
しかし、今年度(2008 年)については、2007 年 4 月から 2008 年 1 月の 10 ヶ月間に自動車生
産量は、前年同時期より 2.6%強減少した。またこの 10 ヶ月間で、輸出台数は 18%増加したの
に対し、国内販売台数は 4.8% 減少した。こうした国内需要の減少の主な要因は、インフレ抑制
のための金融引き締め政策によって金利が上昇したことにあると考えられる。
1
2007 年度 - 2006 年 4 月 1 日から 2007 年 3 月 31 日の会計年度
年平均成長率
2
2
自動車産業データ(2008 年度 4 月∼1 月)
セグメント
台数
乗用車
商用車
二輪車
三輪車
合計
生産
2007 年 4 月2008 年 1 月
1,416,327
437,931
423,595
6,715,292
8,993,145
国内販売
2007 年 4 月前年比
2008 年 1 月
1,255,687
13%
385,339
3%
306,502
-8.5%
6,074,867
-8%
-4.8%
8,022,395
前年比
14%
4%
-8.5%
-5.5%
-2.6%
輸出
2007 年 4 月前年比
2008 年 1 月
172,802
5%
46,667
18%
118,077
-2.2%
664,045
27%
18%
1,001,591
出典: SIAM(インド自動車工業会)
注:国内販売高には輸入車も含まれる
乗用車セグメントの概況
インドは、乗用車生産台数で世界第 11 位の位置を占めている。2007 年度の生産台数は 150 万台
(乗用車 120 万台超、ユーティリティ車 300,000 台含)を超え、前年比 18%の伸びを見せた。
乗用車の生産台数の推移(2002∼2007 年度)
(単位:千台)
1,545
85
1,309
+18%
990
670
多目的車
ユーティリティ車
64
106
1,210
67
67
197
222
182
61
146
723
51
114
1,238
960
1,046
783
乗用車
500
557
FY 02
FY 03
FY 04
FY 05
FY 06
FY 07
出典: SIAM(インド自動車工業会)
インドは小型車(車長 4000 mm 未満)の主要マーケットで、今年度(2008 年)に製造された車
のほぼ 80% が小型車である。
インドの乗用車セグメントでは、国際的な大手 OEM メーカー間の激しい競争が繰り広げられて
いる。現在は、マルチ・スズキ(スズキの子会社)が最大のシェア(47%)を誇っている。トヨ
タとホンダのマーケットシェアは、それぞれ 3.5%、3.8% である。
3
主要メーカーのマーケットシェア
(2008 年度 4 月∼1 月)
その他
18%
トヨダ
マルチ・スズキ
4%
4%
ホンダ
47%
14%
タタ・モーターズ
14%
ヒュンダイ
出典: SIAM(インド自動車工業会)
乗用車: サブセグメント
日本の
自動車メーカーの
プレゼンス
マルチ・スズキ 800
マルチ・スズキ:
ワゴン R、アルト、
ゼンスイフト
マルチ・スズキ:
エスティーム、バレノ
SX4
ホンダ・シティ
ホンダ・シビック
トヨタ・カローラ
ホンダ・アコード
トヨタ・カムリ
-
3
前年比
生産台数
(2007 年
4 月-2008 年
1 月)
$ 5,000 –
$ 6,250
-22.9%
62,426
3400 mm 以下
ミニ (A1)
$ 8,000 –
$ 13,000
19.4%
840,446
3401-4000 mm
コンパクト
(A2)
$ 22,500
10.8%
193,031
4001-4500 mm
中型 (A3)
$ 34,000
8.6%
35,459
4501-4700 mm
$ 62,500
38.6%
4,780
4701-5000 mm
$ 200,000
118%
415
5000 mm 以上
気配値3
1 米ドル($) = 39.96 インドルピー(2008 年 2 月 29 日現在)
4
車長
サブセグメント
エグゼクティブ
(A4)
プレミアム
(A5)
ラグジャリー
(A6)
最近の進展
¾
減税: インド政府はインドを小型車製造ハブにすることを目標に取り組んでいる。毎年の
予算で、小型車税金の段階的引き下げを行っており、小型車に対する物品税は 2004 度
の 32%から 2008 年度は 12%まで引き下げられた。ただし、中・大型車の物品税は 24%
に据え置かれている。
¾
タタ・ナノ発売:タタ・モーターズは 2008 年の末頃に新しい小型車(タタ・ナノ)を
発売する予定である。現在販売されている最も安い小型車の価格はおよそ 5,000 ドルで
あるが、タタ・ナノは 2,500 ドル強という超低価格車である。タタ・ナノの発売により、
車を購入できる世帯が大幅に増えることが予想され、国内需要の増加が見込まれる。
¾
2008 年に発売される新型車: 2008 年、インドでは 60 以上の新型車が発売される予定で
ある。新型車の多くは世界的 OEM メーカーの製品である。新型車の約 3 分の 1 が、ラ
グジャリー、プレミアムセグメントの車で、アウディ RF4 や、ジェネラルモータースの
キャデラック、三菱ギャラン、フォルクスワーゲンのティグアンなどが販売される。ホ
ンダでも、人気のシビック・ハイブリッドを 2008 年に販売する予定である。
今後の展望4
インド経済が年率 8%を上回る成長率で成長を続け、乗用車を購入できる世帯数も増加している
なか、乗用車の国内需要は、今後 5 年間にわたり 17%超の増加率で伸びると予想される。ユー
ティリティ車の需要も 10.5%超の増加率が見込まれる。
乗用車の輸出台数は、小型車輸出の増加が原動力になり、今後 5 年間にわたりほぼ 29%の増加
率で伸びると予測される。世界市場向けの小型車モデルの生産量の増加にともない、インドは小
型車モデルの輸出ハブになることが期待される。
全体的に、乗用車セグメントは、今後 5 年間にわたり 18%超の成長率で伸びると予想される。
4
出典: CRISIL(インド信用格付け情報サービス社)調査
5
商用車セグメントの概況
インドは、商用車生産台数で世界第 10 位の位置を占め、2007 年度の生産台数は 520,000 台を超
えた。
商用車の生産台数の推移 (2002- 2007 年度)
(単位:千台)
520
+26%
391
294
354
275
219
215
204
166
163
121
M&HCVs
LCVs
97
226
66
83
109
FY 02
FY 03
FY 04
139
FY 05
172
FY 06
FY 07
出典: SIAM(インド自動車工業会)
注:LCV – 軽商用車、自動車総重量(GVW) < 7.5 T
M&HCV –中・大 商用車、 GVW > 7.5 T
成長の要因
LCV (軽商用車)の生産は、2002 年度から 2007 年度の 5 年間にわたり、平均 28%の増加率で
増加し、また MHCV(中・大商用車)は 25%で増加した。商用車の需要の増加は、力強い経済
成長と幹線道路インフラの整備が推進力となっている。官民協働を通じた民間の融資により、国
内幹線道路の整備が急速に進んでいる。民間の道路事業への参加は、「国道開発プロジェクト
(National Highway Development Project)」で始まった。1999 年以降、250 億ドル以上が道路
インフラの改善に投資されており、全長 10,000 キロ以上に及ぶ交通量の多い主要回廊の拡張工
事などが実施されている。
定格ペイロードを超える過積載はこれまで運送者の間で慣例となっていたが、これを防止するた
めの厳しい措置が当局によって取られている。こうした措置によりトラックの需要が増大すると
予想されている。しかし、現行の高金利政策のため、今年度は、トラックの需要はいまだ低調な
ままである。一方、旅客運搬車の需要は前年比 28%増となっている。
バスの国内需要は政府の規制によりコントロールされている。国内におけるバスの普及率を考え
れば、成長の可能性は極めて大きいが、政府当局からの商用旅客運搬車のライセンス取得が困難
なために、成長が抑制されている。
2007 年度のバスの台数はわずかに 62,000 台を上回り、トラックはほぼ 458,000 台であった。
商用車セグメントで最も大きなシェアを有するのはタタ・モーターズで、62%のマーケットシェ
アを誇る。日本のメーカー日産は、インドで軽商用車を製造するため、アショク・レイランド社
と合弁企業を立ち上げた。2010 年までの量産開始を予定している。
主要メーカーのマーケットシェア(2008 年度 4 月∼1 月)
アイシャー
その他
6%
6%
マヒンドラ・
マヒンドラ
12%
タタ・モーターズ
15%
62%
アショク・レイランド
出典: SIAM(インド自動車工業会)
今後の展望5
14∼16%の増加率で伸びると見込まれるSCV6の需要増に牽引され、トラックの国内需要の拡大
が予想される。軽商用車の需要は、今後 4 年間にわたり 9∼11%の水準で伸びると予想されるが
中・大商用車は横ばい状態が続くと予想される。トラックの国内需要は 6∼8%、バスは 5∼7%
の増加率で伸びると予想されている。輸出は、今後 5 年間にわたり 24∼26%の増加率で増加す
ると予想される。
5
出典: CRISIL(インド信用格付け情報サービス社)調査
SCV – 小型商用車、有料荷重< 1 T LCV(軽商用車)のサブセグメント
6
7
二輪車セグメントの概況
インドは、中国に次いで、世界第二位の二輪車マーケットである。インドの二輪車セグメントは、
2002 年度から 2007 年度までの 5 年間、CAGR(年平均成長率)15% 超で伸びている。この成長は、
主としてモーターサイクルの伸びによるもので、モーターサイクルの生産台数は、CAGR20%で伸び、
2002 年度の 290 万台から 2007 年には 710 万台に増加した。同時期のスクーター、モペッドの生産台
数については、スクーターがほぼ横ばい状態だったのに対し、モペッドは CAGR2%で減少した。
二輪車の生産台数の推移(2002∼2007 年度)
(単位:千台)
+15%
Mopeds
4,271
427
Scooters
938
5,623
332
5,076
352
848
7,609
380
6,530
348
8,436
380
944
1,021
987
935
7,112
6,208
5,194
4,355
3,876
Motorcycles
2,906
FY 02
FY 03
FY 05
FY 04
FY 06
FY 07
出典: SIAM(インド自動車工業会)
2008 年度 4 月-1 月期に、二輪車の国内販売台数は前年同期比 8%減となった。75∼125cc のモ
ーターサイクルは、2007 年度のモーターサイクル販売台数のほぼ 80%を占めていたが、20%減
少した。モーターサイクルの販売高減少の原因は、現行の高金利であると考えられる。
今後の展望7
二輪車セグメントの成長は鈍化すると予想され、今後 5 年間の成長率は 7∼9% と見込まれる。
輸出台数は今後 5 年間にわたり 15∼18%で増加すると予想される。2008 年度予算で物品税が
16% から 12%に引き下げられることから、国内販売の増加が見込まれる。
主要メーカーのマーケットシェア(2008 年度 4 月∼1 月)
ヤマハ
12%
HMS(ホンダ)
その他
2%
1%
TVS モーターズ
45%
16%
バジャジ
ヒーローホンダ
24%
出典: SIAM(インド自動車工業会)
7
出典: CRISIL(インド信用格付け情報サービス社)調査
8
三輪車セグメントの概況
インドは、世界で最も大きな三輪車マーケットの一つである。2007 年度の生産台数はほぼ 50 万
台であった。これには、400,000 台を超えた国内販売台数と 150,000 台の輸出台数が含まれてい
る。2007 年度の国内販売台数は 11% 増であったが、輸出台数はほぼ倍増した。2002 年度から
2007 年度までの 5 年間の、三輪車セグメントの CAGR(年平均成長率)は 21%であった。
三輪車の用途
• 旅客運搬
o
メーター装備の原動機付き輪タクシーとして、ほとんどの町や都市で旅客運搬用(3
人まで)に使用されている。
o
郊外、農村地帯で乗り合い原付輪タクシーとして使用されている。
• 貨物運搬 ― ペイロード 0.5t から 1t まで
2008 年度 4 月から 1 月までの三輪車の国内販売台数は、前年同期比 8.5%減となった。 一方、
輸出台数は、2%強減少した.
2005 年、タタ・モーターズは、ペイロード 1t 未満のカテゴリー(以前は三輪車のみのカテゴリー)で
四輪車「エース(Ace)」を新発売した。タタ・エースの発売により、ペイロード 5t 未満の貨物運搬用
三輪車の売上高が横ばい状態になった。三輪車より四輪車を嗜好する顧客が増えているためである。
今後の展望
経済性と快適性の点で上回る四輪車の導入により、今後、三輪車の売上は減少すると予想される。
しかし、メーター装備の原動機付き輪タクシーは、町や都市における交通手段として今後も広く
利用される可能性がある。
結論
インドの経済は今後数年にわたり 8%を超える成長率で成長するとみられ、インドの自動車産業もまた力
強い成長が予測される。乗用車セグメントは、新型車の発売が多数予定されており、今後数年で急成長を
遂げると予想される。しかし、競争の激化により、自動車メーカーの収益性が影響を受ける可能性がある。
商用車セグメントでは、低ペイロード(1t 未満)と高ペイロード(25t 以上)の車両の需要が増加する一方
で、LCV(軽商用車)と MCV(中商用車)の需要が減少しており、目下、産業構造の変化に直面している。
この傾向は、今後数年間続くと予想される。商用車セグメントも、世界的 OEMの参入が予想される。
二輪車の国内需要の伸びは落ち着くと思われるが、現在も増加傾向にある輸出の伸びは今後も続
くと考えられる。
インドルピー高がインドの自動車輸出にとって大きな難題となると予想される。費用競争力の低
下により、インドの自動車メーカーは、外資 OEM と競い合える品質と製品特性をもつ製品の開
発に力を注がなければならなくなると思われる。
さらに、自動車産業の高い成長率が、インドの自動車部品産業(2007 年度:140 億ドル)の成
長を後押しすると予想される。
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